説明

育苗ポットへの給水方法および給水容器付き育苗ポット

【課題】 育苗ポットの苗を健苗状態のまま保管、保存あるいは輸送するための育苗ポットへの給水方法を提供する。
【解決手段】 苗18が植えられた育苗ポット12を給水材14が充填された給水容器10に搭載して、給水材14により育苗ポット12に給水する方法であって、給水材14として、水ガラスの水希釈液をゲル状に固化したものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、育苗ポットの苗を健苗状態のまま保管、保存あるいは輸送するための育苗ポットへの給水方法および給水容器付き育苗ポットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、花や野菜苗などの育苗は個々の農家による生産が主体であった。近年、農業の近代化、さらに農家の老齢化等も加わって、セルトレイを中心としたポット育苗体系が確立され、苗生産が農業協同組合や農家の集合体および苗生産業者に移行してきた。そして、苗の安定供給が可能となった現在において、苗生産とその後の栽培との分業化が急速に進んでいる。
【0003】その反面、苗生産の分業化は、天候不良などの環境条件によって圃場の作業が計画通り進行しないと定植が遅延することから、苗に貯蔵性が求められるという問題点を抱えている。
【0004】また、ガーデニングを支える苗販売でも、計画通りに販売が進まないと、スーパーや小売販売の店頭で苗は何日かを過ごすことになる。この場合、管理者は1日何回かの潅水によって販売する苗の維持を図っているが、苗はそれなりに徒長し軟弱化してしまうのが通例である。
【0005】また、育苗場と利用者である植付け圃場あるいは苗販売店との距離が離れていることが多く、苗輸送中における育苗ポットの培土の乾燥、それに伴う苗の萎れや、輸送中に育苗ポットを収納するトレイから育苗ポットが飛び出し転倒することによって苗が損傷するなど、改善すべき問題点が多い。
【0006】そのため、育苗業者は軟弱、徒長を避け、極力乾燥に耐え得る水切り育苗に努めているが、それが店頭での健苗貯蔵につながっていないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】これらの問題を解決するため、育苗ポットを給水容器に搭載し、該給水容器に充填された給水材により育苗ポットに給水する方法が提案されており、このような給水材として有機ゲルや無機ゲルなどの保水剤が用いられている。
【0008】例えば、給水材として粘度の高いゲルを用いる手法(特開平8−134447号公報、特開平10−14423号公報、特開平11−151041号公報)、育苗ポットの底部に密封槽を設け保水剤を充填する手法(特開平9−248066号公報)、ゲル形成材に温水(40℃)を加え給水容器内で瞬時(30秒内)にゲル化する方法(GB2,310,352A)などがあり、これらは給水性あるいは育苗ポットの転倒防止手法として有用である。
【0009】しかしながら、これらの方法は、給水材として有機ポリマーを用いるため粘着性があり、この粘着性のために取扱いにくい。また、低粘度で給水容器に加えても、瞬時にゲル化するため、作業時間が短い。さらに、使用者に到着した後、育苗ポットを給水容器から取り出しにくい等の問題が残る。また、特開平9−248066号公報の手法による場合、特殊な給水用密封容器が必要な上、保水剤として用いられる高吸水性ポリマーが高価であり、また廃棄処理の問題も残る。
【0010】そこで、本発明は、これらの問題点を解消して、育苗ポットの苗を健苗状態のまま保持することができるとともに、輸送中における給水容器からの育苗ポットの飛び出しや転倒を防止し、しかも必要に応じて育苗ポットを給水容器から容易に取り出すことができる、育苗ポットの給水方法および給水容器付き育苗ポットを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の問題点を解決するため鋭意検討した結果、給水材として水ガラスを用いることが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】すなわち、本発明の育苗ポットへの給水方法は、苗が植えられた育苗ポットを給水材が充填された給水容器に搭載して、該給水材により育苗ポットに給水する方法であって、前記給水材として、水ガラスの水希釈液をゲル状に固化したものを用いることを特徴とする。
【0013】また、本発明の給水容器付き育苗ポットは、給水材が充填された給水容器と、該給水容器に搭載された育苗ポットとを備えてなり、該給水材が水ガラスの水希釈液をゲル状に固化したものからなることを特徴とする。
【0014】本発明によれば、このように給水材として水ガラスを用いることにより以下の作用効果が奏される。
【0015】■ 水ガラスはアルカリ性であるが、有機又は無機の酸を加えれば中性化して固化するため、給水材としては中性のものが得られる。
【0016】■ 水ガラスの水への希釈倍率を変更することにより、固化物の硬度を任意に調整することができ、また、ゲル化時間も即時から数時間(4時間程度)程度に調整できる。
【0017】■ 水ガラスの固化物は育苗ポットを固着するが、ゲル状をなし追従性があるので振動等で固着性を失いにくく、また、非粘着性であるため容易に給水容器から育苗ポットを抜き取ることができる。
【0018】■ 水ガラスの固化物は使用者に到着後、必要に応じ給水容器から容易に除去できる。そのまま放置すれば給水容器中で乾燥により硬化するが、硬化した場合でも容易に除去することができる。
【0019】■ 水ガラスはもともとケイ酸ソーダという天然物であるので、環境上何の問題もない。なお、水ガラスは環境問題を起こさない土壌地盤の安定材として常用されている。
【0020】■ 水ガラスの固化物には抱水性があり、育苗ポットの培土を条件にもよるが1ヶ月程度は乾燥させず、しかも徒長を促すほどの給水力はない。
【0021】このように、給水材として水ガラスを用いることにより、育苗ポット中の培土の乾燥を防止し、その結果、苗の萎れを防ぐことができる。また、育苗ポットを給水容器に固着することで輸送中の飛び出しや転倒を防止し、しかも、必要に応じて育苗ポットを給水容器から容易に取り出すことができる。さらに、固化物は大部分が水であるので熱容量が高く保温性にも富んでいる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0023】給水材として用いられる水ガラスは、ケイ酸ソーダともいい、ケイ砂とソーダ灰(あるいは苛性ソーダ)を原料として作られるケイ酸とアルカリからなるガラスで、NaO・nSiOの化学式で示される化合物である。nはモル比でn=0.5〜4の範囲のものが工業的に生産されている。nが1以下の結晶性ケイ酸ソーダも使用できるが、使用しやすい点で、nが1以上の液状をなす非晶質のケイ酸ソーダが適している。より具体的には、JIS K−1408に規定されたケイ酸ソーダ1号、2号、3号などを用いることができる。
【0024】水ガラスは水で適宜に希釈して用いられる。希釈倍率は特に限定されないが、通常、数十倍に希釈して用いる。希釈倍率が高いほど給水材の保水量を高めることができるが、希釈倍率が高すぎると給水材として十分な強度を得にくくなる。通常は、水ガラス1重量部に対して、水を10〜50重量部加えて希釈すればよい。
【0025】水ガラスの水希釈液は、各種の酸又は無機塩を加えることによりゲル状に固化させることができるが、酸を加えてゲル化させることが好ましい。酸を加えることにより、アルカリ性の水ガラスを中和して、水ガラスの水希釈液を中性溶液にすることができ、中性の給水材が得られるからである。使用する酸は特に限定されない。例えば、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸などが挙げられる。
【0026】なお、水ガラスが固化するまでの時間や固化後の硬度は、水ガラスの種類、水との希釈倍率、酸の種類及び量により調整することができる。そのため、使用に際しては、得ようとする給水材の硬度や作業時間を勘案の上、水ガラスの種類や希釈倍率、酸の種類及び量を選択すればよい。
【0027】育苗ポットとしては、培土が充填される鉢部を有し、苗が植えられるものであれば特に限定されず、通常市販されているものを用いることができる。
【0028】例えば、ポリエチレン等の合成樹脂製の鉢(角型、丸型)や、これらの鉢が複数個連結されたもの(連結したカットパック)、あるいはまた、多数の凹状のセル(鉢部)が縦横に配列して設けられたセルトレイなどが挙げられる。上記の合成樹脂製の鉢としては、上面開口部の直径が4〜40cm、高さが4〜30cmのものが挙げられる。セルトレイとしては、例えば、約30cm×約60cmで、セルの口径が11〜45mm、深さが25〜35mm、セル数が40〜800個のものが挙げられる。
【0029】育苗ポットとしては、底部に給水用開孔を備え、この給水用開孔が給水材中に埋没するように給水容器に搭載されるものであることが好ましい。市販の育苗ポットは、通常底部(底面及び底面に近い側面)に穴を有しているため、この穴を給水用開孔として利用することができる。
【0030】育苗ポットに充填される培土は特に限定されず、タキイたねまき培土、タキイセル培土TM−1、タキイ育苗培土(いずれもタキイ種苗(株)製)等の市販の培養土(培土)を用いることができる。
【0031】また、育苗ポットに植えられる苗も特に限定されず、幼苗から成苗までいずれでもよい。花卉、野菜、樹木苗に至るあらゆる苗に適用することができる。
【0032】給水容器としては、育苗ポットを搭載可能な底板を有し、育苗ポットの少なくとも底部が給水材中に埋まるように水ガラスの水希釈液を溜めることができる有底の容器であれば特に限定されない。給水容器の底面形状は、平らな平底状でもよいが、凹凸又は波形を付与して育苗ポットの下方にも給水材が入るようにしてもよい。
【0033】なお、育苗ポットが上記したセルトレイの場合には、通常、1つの給水容器に1つの育苗ポットとなるセルトレイが搭載されるが、合成樹脂製の育苗ポットが小鉢の場合には、1つの給水容器に1つの育苗ポットを搭載しても、複数の育苗ポットを搭載してもよい。
【0034】本発明の給水容器付き育苗ポットを製造するに際しては、水ガラスを水で希釈し酸を加え中性化した水ガラス溶液を作成し、この水ガラス溶液を給水容器に入れ、さらに育苗ポットを給水容器に搭載すればよい。これにより、水ガラス溶液がゲル状に固化して、育苗ポットの少なくとも底部が水ガラスのゲル化物よりなる給水材中に埋まった状態となる。得られた給水容器付き育苗ポットを移動させる際には、水ガラス溶液が完全に固化したことを確認した後に行う。
【0035】ここで、給水容器への育苗ポットの搭載は、水ガラス溶液の固化前には限られず、固化直後であってもよい。即ち、固化直後であれば、育苗ポットを給水材中に押し込んでその底部が給水材中に埋まった状態とすることができるため、そのような作業手順を選択することもできる。
【0036】また、育苗ポットの搭載は、水ガラス溶液を給水容器に入れた後には限られない。すなわち、給水容器に育苗ポットを先に搭載し、その後に水ガラス溶液を加え、ゲル化させてもよい。
【0037】また、水ガラス溶液は、固化した後の水面(即ち、給水材の上面)が育苗ポットの高さを越えないように、しかも、育苗ポットの底部に設けられた給水用開孔が給水材中に埋没されるように、給水容器に加える。
【0038】なお、水ガラス溶液は、中性化した後、必要に応じ着色剤、肥料、栄養剤、成長促進剤、酸素発生剤を添加することも可能であり、また、ゲル化直前にかき混ぜ、ゲル体に気泡を持たせることもできる。
【0039】このようにして得られた給水容器付き育苗ポットにおいて、育苗ポット中の培土は、水ガラス溶液の固化物よりなる給水材から水を吸収できるので、通常の条件(直射日光をできるだけ避け、乾燥していないところ)であれば、2週間から1ヶ月程度、給水しなくても水分を保持できる。
【0040】なお、夏季の異常高温時のように高温を避けられない場合、あるいは直射日光に長時間さらされざるを得ない場合等には、頭上散水することは何ら差し支えない。本発明による給水は、底面潅水法に比べ給水量を制限することに特徴があり、異常現象時はそれなりの対応が必要である。
【0041】また、給水容器に搭載する育苗ポットの数の少ない場合等には、給水容器と育苗ポットの全体をビニール袋等で包み、育苗ポット中の水分および給水材の水分の蒸発飛散を防ぎ、シェルフライフの延命を図ることも可能である。
【0042】ここで、本発明の実施形態に係る給水容器付き育苗ポットの一例を図示して説明する。
【0043】図1は、本発明の1実施形態に係る給水容器付き育苗ポットの断面図であり、符号10は給水容器、符号12は育苗ポット、符号14は給水材、符号16は培土、符号18は苗をそれぞれ示している。
【0044】図1に示すように、合成樹脂製の小鉢よりなる育苗ポット12には、培土16が充填されており、この培土16に苗18が植えられている。育苗ポット12の底部には給水用開孔20が設けられており、この給水用開孔20は、詳細には、育苗ポット12の底面及び側面底部に1ないし複数個設けられている。給水容器10は平底皿状をなし、その中央部に育苗ポット12が載置されている。給水容器10には、水ガラスの水分散液からなるゲル状の給水材14が充填されている。育苗ポット12の底部は給水材14に埋まっており、給水用開孔20が給水材14内に完全に埋没している。そして、給水材14に保持された水分が給水用開孔20から育苗ポット12内の培土16に供給されて培土16の乾燥が防止されている。
【0045】図2は、図1の変更例であり、この例では、育苗ポット12の底部の給水用開孔20は、ポット12の底面に設けられている。また、給水容器10は、平底ではなく、複数の凸条22を設けることにより底面形状が凹凸形状に形成されている。これにより、育苗ポット12の下方にも給水材14が入るようにして、育苗ポット12の底面からの給水を可能にしている。
【0046】
【実施例】以下、実施例をもって本発明を説明するが、これによって本発明を限定するものではない。
【0047】試験例1水ガラス3号1重量部に対し水30重量部を加えて、水ガラスの30倍希釈液を得た。この希釈液100gに、表1に示す各種酸の水溶液を加え、pHメーターでpH7に調整した。いずれの水ガラス溶液も約1時間でゲル状に固化した。
【0048】
【表1】


試験例2水ガラス3号を用いて、水ガラスの10、20、30、40および50倍水希釈液を各100g作成し、リン酸の10倍水希釈液を加え中和した(リトマス試験紙による判定)。各希釈倍率の水ガラス溶液について、中和に要したリン酸水溶液の量とゲル化に要した時間を表2に示す。
【0049】
【表2】


表2に示すように、希釈倍率が高いほどゲル化に要する時間が長くなった。
【0050】実施例1〜5、比較例1,2育苗ポットとして200個のセルを有するセルトレイ(タキイ種苗(株)製)を7トレイ用いて、22日間ハクサイ(品種:ほまれ、タキイ種苗(株)製)を育苗した。
【0051】これとは別に、縦65cm×横35cm×高さ4cmの平底プラスチック製の給水容器に、リン酸の10倍水希釈液で中和した水ガラス3号の5種の中性溶液(10、20、30、40および50倍の各水希釈液)をそれぞれ約4Lづつ入れた。次いで、上記で育苗したセルトレイをそれぞれ1トレイずつこれらの給水容器に水ガラス溶液がゲル化する前に浸漬し、水ガラスをゲル化させることにより、実施例1〜5の給水容器付き育苗ポットを作成した。
【0052】また、これとは別に、上記給水容器に水のみを約4L入れたもの(底面潅水)と、液体を何も入れてないもの(水なし)を用意し、これらの給水容器にも上記で育苗したセルトレイをそれぞれ1トレイずつ搭載して、比較例1,2の給水容器付き育苗ポットを作成した。
【0053】このようにして得られた7種の給水容器付き育苗ポットを、直射日光を遮断したハウス内に設置し、経日による苗の萎れ状況を観察した。結果を表3に示す。
【0054】
【表3】


表3に示すように、給水材として水ガラスを用いた実施例1〜5では、給水していない比較例1のセルトレイの苗に比べると、給水効果において格段の差が認められた。また、比較例2のように水を追加しなくても給水効果を維持することができた。なお、実施例1〜5では給水材の希釈倍率の高いものほど萎れが遅かった。
【0055】実施例6,7及び比較例3育苗ポットとして128個のセル(8セル×16列)を有するセルトレイ(タキイ種苗(株)製)を3トレイ用い、25日間キャベツ(品種:早秋、タキイ種苗(株)製)を育苗した。
【0056】これとは別に、実施例1と同じの給水容器2個に、リン酸の10倍水希釈液で中和した水ガラス3号の35倍水希釈液を各4Lを入れた。次いで上記で育苗したセルトレイを、1つは水ガラス溶液の固化前に搭載し、もう1つは固化直後に搭載して、それぞれ実施例6及び7の給水容器付き育苗ポットを作成した。
【0057】残り1つのセルトレイは、比較例3として、従来より通常に行われている頭上からの散水で健苗状態を保てるよう管理した(通常管理)。
【0058】この3トレイを直射日光を避けたハウス内に置き、2日後から1日おきに、端から2列づつ(16セル)抜き取り、圃場に定植した。この作業を8日間(開始時より16日間)継続実施した。
【0059】これらにつき、定植1ヶ月後と収穫時(同時収穫した)に生育調査を行った。生育調査は、定植1ヶ月後には展開葉数と最大葉の縦横寸法を測定し、収穫時には全重量、結球重量と最大外葉の縦横寸法を測定した。結果を表4に示す。なお、表には、各調査項目について一個体当たりの平均値を示している。
【0060】
【表4】


表4に示すように、給水材として水ガラスを用いた実施例6,7は、通常管理を行った比較例3との間で、収量等殆ど差が認められなかった。また、水ガラスの固化直後にセルトレイを搭載した実施例7でも、水ガラスの固化前にセルトレイを搭載した実施例6と同様の給水効果が得られた。
【0061】実施例8本葉6枚のペチュニア苗(品種:カーニバルローズ、タキイ種苗(株)製)をプラスチック製の育苗ポット(上面開口部の直径10cm)に鉢上げ後、一番花の開花まで育苗した。
【0062】この育苗ポットを24鉢用意し、縦65cm×横45cm×高さ10cmの給水容器に6鉢×4列で搭載し、硝酸で中和した水ガラス3号の20倍水希釈液を約4L給水容器に入れ、水ガラスをゲル化させて実施例8の給水容器付き育苗ポットを作成した。
【0063】これを慣行の方法で滋賀県甲賀郡より茨城県牛久市までトラックで輸送した。その輸送にほぼ1日要した。到着後、輸送された苗を観察したところ苗に痛みは見られず、また萎れや、育苗ポットの横転等もなかった。
【0064】その後、日陰の屋外に置き、1週間観察したが、開花を続け何ら異常は認められなかった。一週間後、給水容器から育苗ポットを抜き取ったが、育苗ポットの外壁に水ガラスのゲル化物が付着していることはなかった。また、このゲル化物は給水容器中で固化していたが、給水容器から除去する際には簡単に取り出すことができた。
【0065】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、給水材として水ガラスを用いることにより、育苗ポット中の培土の乾燥を防止して、苗の萎れを防ぐことができるとともに、育苗ポットを給水容器に固着することで輸送中の飛び出しや転倒を防止することができる。しかも、必要に応じて育苗ポットを給水容器から容易に取り出すことができる。さらに、環境問題を伴うことなく、取り扱いが容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の1実施形態に係る給水容器付き育苗ポットの断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施形態に係る給水容器付き育苗ポットの断面図である。
【符号の説明】
10……給水容器
12……育苗ポット
14……給水材
16……培土
18……苗
20……給水用開孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】苗が植えられた育苗ポットを給水材が充填された給水容器に搭載して、該給水材により育苗ポットに給水する方法であって、前記給水材として、水ガラスの水希釈液をゲル状に固化したものを用いることを特徴とする育苗ポットへの給水方法。
【請求項2】前記給水材として、水ガラスの水希釈液を酸で中和してなる中性溶液を用い、これを給水容器に加えてゲル状に固化させることを特徴とする請求項1記載の育苗ポットへの給水方法。
【請求項3】前記水ガラスが液状をなす非晶質のケイ酸ソーダであることを特徴とする請求項1記載の育苗ポットへの給水方法。
【請求項4】前記育苗ポットの底部に給水用開孔を設け、この給水用開孔が前記給水材中に埋没するように前記給水材を前記給水容器に充填することを特徴とする請求項1記載の育苗ポットへの給水方法。
【請求項5】給水材が充填された給水容器と、該給水容器に搭載された育苗ポットとを備えてなり、該給水材が水ガラスの水希釈液をゲル状に固化したものからなることを特徴とする給水容器付き育苗ポット。
【請求項6】前記給水材が、水ガラスの水希釈液を酸で中和してなる中性溶液を前記給水容器に加えてゲル状に固化させたものであることを特徴とする請求項5記載の給水容器付き育苗ポット。
【請求項7】前記水ガラスが液状をなす非晶質のケイ酸ソーダであることを特徴とする請求項5記載の給水容器付き育苗ポット。
【請求項8】前記育苗ポットの底部に給水用開孔が設けられ、この給水用開孔が前記給水材中に埋没するように前記給水材が前記給水容器に充填されたことを特徴とする請求項5記載の給水容器付き育苗ポット。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【公開番号】特開2001−78597(P2001−78597A)
【公開日】平成13年3月27日(2001.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−260196
【出願日】平成11年9月14日(1999.9.14)
【出願人】(594003104)株式会社テイエス植物研究所 (5)
【Fターム(参考)】