説明

肺がんのリンパ節転移の検査方法、肺がんのリンパ節転移判定装置およびコンピュータプログラム

【課題】肺がんのリンパ節転移の有無をより高い精度で検査することができる肺がんのリンパ節転移の検査方法、肺がんのリンパ節転移判定装置およびコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】肺がん患者から採取された、肺がんの転移が疑われるリンパ節組織を用いて調製された測定試料に含まれるストラティフィンのmRNAの発現量を取得し、取得したストラティフィンのmRNAの発現量が過剰である場合に、前記リンパ節組織に肺がんが転移していると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺がんのリンパ節転移の検査方法、肺がんのリンパ節転移判定装置およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
肺がんの診断において、リンパ節転移の有無は、機能温存手術のための切除範囲の決定や術後の化学療法の決定のための有益な情報となる。多くの医療機関などにおいては、かかるリンパ節転移の有無の検査は、リンパ節組織から作製された切片を顕微鏡で観察する組織診によって行なわれている。
しかしながら、組織診は、リンパ節組織中に癌細胞が実際に存在しているときであっても、がん細胞を含まない切断面で作製された切片が用いられた場合や、リンパ節転移が微小転移である場合には、正確な診断結果を得ることができないことがある。
また、組織診は、診断する病理医の熟練度によって、その診断結果にばらつきが生じることがある。
そこで、分子マーカーの発現に基づいて肺がんを検査する方法が提案されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、肺がんのリンパ節転移の分子マーカーとして、TACSTD1、CK19、CEAなどが記載されている。ここでは、リンパ節組織中において、これら分子マーカーの発現レベルが高まるほど、肺がんがリンパ節に転移している可能性が高まることを用いて、肺がんのリンパ節転移の有無を検査する方法が開示されている。しかしながら、より高い精度で肺がんのリンパ節転移の有無を検査するために、さらなる分子マーカーや方法の開発が望まれている。
【0004】
一方、ストラティフィン(14‐3‐3σ)という遺伝子の発現が、がんの抑制に関与しているという報告がある。
例えば、非特許文献2には、乳がんのがん細胞では、正常細胞と比べて、前記ストラティフィンのmRNAの発現が抑制されていることが開示されている。
また、非特許文献3には、肺がんの原発巣におけるストラティフィンのタンパク質レベルでの発現と、転移リンパ節組織におけるストラティフィンのタンパク質レベルでの発現とを比較すると、ストラティフィンは、肺がんの転移リンパ節組織において、ダウンレギュレーションしていることが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Liqiang Xiら、「A Combination of Molecular Markers Accurately Detects Lymph Node Metastasis in Non‐Small Cell Lung Cancer Patients」、Clinical Cancer Research、2006年4月15日、第12巻、p.2484-2491
【非特許文献2】Anne T. Fergusonら、「High frequency of hypermethylation at the 14−3−3 σ locus leads to gene silencing in breast cancer」、Proceedings of the National Academy of Science、2000年5月23日、第97巻、p.6049−6054
【非特許文献3】Dan−juan Liら、「Identificating 14−3−3 sigma as a lymph node metastasis−related protein in human lung squamous carcinoma」、Cancer Letters、2009年、第279巻、p.65−73
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、肺がんのリンパ節転移の有無をより高い精度で検査することが可能な肺がんのリンパ節転移の検査方法、肺がんのリンパ節転移判定装置およびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述のように、従来、がんの転移リンパ節組織においては、ストラティフィンの発現量が低下していると考えられていた。しかしながら、本発明者らは、肺がんの転移が組織学的に認められたリンパ節(以下、「転移陽性リンパ節」ともいう)および肺がんの転移が組織学的に認められないリンパ節(以下、「転移陰性リンパ節」ともいう)それぞれにおけるmRNAの発現プロファイルを調べたところ、転移陽性リンパ節におけるストラティフィンのmRNA量が転移陰性リンパ節におけるストラティフィンのmRNA量よりも多いことを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の肺がんのリンパ節転移の検査方法は、肺がん患者から採取された、肺がんの転移が疑われるリンパ節組織を用いて調製された測定試料に含まれる、ストラティフィンのmRNAの発現量を取得し、
取得したストラティフィンのmRNAの発現量が過剰である場合に、前記リンパ節組織に肺がんが転移していると判定することを特徴としている。
【0009】
本発明の肺がんのリンパ節転移判定装置は、肺がんの転移が疑われるリンパ節組織を用いて調製された測定試料に含まれる、ストラティフィンのmRNAの発現量を取得する測定部と、前記測定部で得られたストラティフィンのmRNAの発現量が過剰である場合に、前記リンパ節組織に肺がんが転移していると判定する判定部と、前記判定部で得られた判定結果を出力する出力部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のコンピュータプログラムは、コンピュータに、肺がんの転移が疑われるリンパ節組織を用いて調製された測定試料に含まれる、ストラティフィンのmRNAの発現量を受け取る受領ステップと、受領ステップで得られたストラティフィンのmRNAの発現量が過剰である場合に、前記リンパ節組織に肺がんが転移していると判定する判定ステップと、前記判定ステップで得られた判定結果を出力する出力ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の肺がんのリンパ節転移の検査方法、肺がんのリンパ節転移判定装置およびコンピュータプログラムによれば、肺がんのリンパ節転移の有無をより高い精度で検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】肺がんのリンパ節転移の判定を実行する判定装置の一実施形態である。
【図2】肺がんのリンパ節転移判定の一例を示すフローチャートである。
【図3】試験例1において、リンパ節転移の有無およびマーカーの種類とPCRサイクル数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1.肺がんのリンパ節転移の検査方法]
本発明の肺がんのリンパ節転移の検査方法(以下、単に、「検査方法」ともいう)は、肺がん患者から採取された、肺がんの転移が疑われるリンパ節組織を用いて調製された測定試料に含まれる、ストラティフィンのmRNAの発現量を取得し、取得したストラティフィンのmRNAの発現量が過剰である場合に、前記リンパ節組織に肺がんが転移していると判定することを特徴としている。
【0014】
ストラティフィンは、細胞周期をG2/M期で停止させる機能を有すると考えられているタンパク質である。かかるストラティフィンは、14−3−3σとも称されている。前記ストラティフィンのmRNAの塩基配列は、GenBankアクセッション番号:NM_006142として、米国生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)により提供されているデータベースGenBankより入手することができる。なお、前記GenBankアクセッション番号は、2010年3月14日時点での最新リリースでの番号である。
【0015】
[1−1.発現量の取得]
本発明の検査方法では、まず、肺がん患者から採取された、肺がんの転移が疑われるリンパ節組織を用いて調製された測定試料に含まれる、ストラティフィンのmRNAの発現量を取得する。
【0016】
前記測定試料は、ストラティフィンのmRNAの発現量の測定に適した試料であればよい。かかる測定試料は、例えば、リンパ節組織に含まれる細胞を適切な前処理液と混合し、得られた混合物中の細胞に対して、化学的処理および/または物理的処理を施すこと、市販のRNA抽出キットを用いてリンパ節組織に含まれる細胞からRNAを抽出することなどによって得ることができる。前記測定試料の調製は、簡便かつ短時間で測定試料を調製することができることから、前処理液を用いる方法により行なうことが好ましい。
【0017】
前記リンパ節組織としては、肺に所属するリンパ節を含む組織であればよい。前記リンパ節としては、例えば、上縦上部リンパ節、気管傍リンパ節、気管前リンパ節、前縦隔リンパ節、気管後リンパ節、気管気管支リンパ節、大動脈下リンパ節、大動脈傍リンパ節、気管分岐部リンパ節、食道傍リンパ節、肺靱帯リンパ節などの縦隔リンパ節;主気管支周囲リンパ節、葉気管支間リンパ節、葉気管支周囲リンパ節などの肺門リンパ節;区域気管支周囲リンパ節、亜区域気管支周囲リンパ節などの肺内リンパ節などが挙げられる。これらのリンパ節は、本実施の形態に係る検査方法の適用対象となる患者の状態などに応じて適宜選択することができる。
【0018】
前処理液は、リンパ節組織に含まれる細胞中のmRNAを可溶化させることができる溶液であればよい。前記前処理液は、RNAの分解を抑制する観点から、酸性pHを有することが好ましく、pH2.5〜pH5.0を有することが好ましく、pH3.0〜pH4.0を有することがより好ましい。かかる前処理液としては、例えば、緩衝液などを含む溶液などが挙げられる。前記緩衝液としては、例えば、グリシン−塩酸緩衝液などが挙げられる。なお、前処理液中の緩衝液の濃度は、前処理液のpHを酸性pHに保つことができる範囲であればよく、適宜設定することができる。
【0019】
また、前処理液は、リンパ節組織に含まれる細胞からのmRNAの抽出効率を向上させる観点から、界面活性剤をさらに含有していることが好ましい。前記界面活性剤は、リンパ節組織に含まれる細胞の細胞膜や核膜を損傷させ、細胞中の核酸を抽出しやすくすることができるのであれば、特に限定されるものではない。前記界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。かかる非イオン性界面活性剤のなかでは、リンパ節組織に含まれる細胞からのmRNAの抽出効率を向上させる観点から、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤が好ましく、式(I):
【0020】
1−R2−(CH2CH2O)−H (I)
【0021】
(式中、R1は炭素数10〜22のアルキル基、炭素数10〜22のアルケニル基、炭素数10〜22のアルキニル基または炭素数10〜22のイソオクチル基を示し、R2は、酸素原子またはフェニレンオキシ基を示し、nは8〜120の整数を示す)
で表されるポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤がより好ましい。前記ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンイソオクテルフェニルエーテルなどが挙げられる。かかるポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン基の付加モル数23)(シグマ−アルドリッチ社製、商品名:Brij35)などを用いることができる。前処理液中の界面活性剤の濃度は、リンパ節組織に含まれる細胞からmRNAを十分に抽出させる観点から、0.1〜6体積%が好ましく、より好ましくは1〜5体積%である。
【0022】
なお、前記ストラティフィンのmRNAの発現量を後述の核酸増幅法によって取得する場合、前処理液は、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」という)を含有することが好ましい。これにより、核酸増幅法に用いられる核酸合成酵素の活性の低下を抑制することができる。しかも、前記核酸合成酵素の反応を阻害する物質(阻害物質)がリンパ節組織中に含まれている場合であっても、当該阻害物質の影響を効果的に低減させることができる。前処理液中のDMSOの濃度は、かかる効果を十分に発揮させる観点から、1〜50体積%が好ましく、5〜30体積%がより好ましく、10〜25体積%がさらに好ましい。
【0023】
測定試料の調製の際に用いる前処理液の量は、前処理液の種類などによって異なるので、前処理液の種類などに応じて適宜設定することできる。通常、測定試料の調製の際に用いる前処理液の量は、リンパ節組織1mgあたり0.0001〜0.0005mLである。
リンパ節組織に含まれる細胞と前処理液との混合は、例えば、室温でリンパ節組織に含まれる細胞と前処理液とを撹拌させることにより行なうことができる。
【0024】
前記化学的処理としては、例えば、界面活性剤などによる細胞の可溶化処理、クロロホルムなどの有機溶媒によるRNAの分離処理などが挙げられる。また、前記物理的処理としては、ホモジナイザーなどを用いた破砕処理、凍結融解処理などが挙げられる。前記化学的処理および/または物理的処理で得られた産物は、必要に応じて、遠心分離、フィルター濾過、カラムクロマトグラフィーなどの精製方法によって精製してもよい。
【0025】
ストラティフィンのmRNAの発現量の取得は、例えば、核酸増幅法、ストラティフィンのmRNAに対応する核酸が配置されたDNAマイクロアレイを用いたDNAマイクロアレイハイブリダイゼーション法など公知の方法によって行なうことができる。
【0026】
なお、本明細書において、前記核酸増幅法によって行なう場合における「ストラティフィンのmRNAの発現量」とはストラティフィンのmRNAの発現量に関するデータであれば特に限定されない。ストラティフィンのmRNAの発現量とは、例えば、増幅されたmRNAに基づく光学的測定値(例えば、蛍光強度、濁度、吸光度など)、前記光学的測定値が所定の基準値に達したときのサイクル数または時間、核酸増幅反応による光学的測定値の変化量が所定の基準値に達した時のサイクル数または時間、前記光学的測定値やサイクル数などと検量線とから算出されたmRNAの定量値(発現量)などをいう。また、本明細書において、前記DNAチップを用いる方法によって行なう場合における「ストラティフィンのmRNAの発現量に関するデータ」とは、例えば、DNAチップ上の前記核酸とハイブリダイズしたストラティフィンのmRNAに基づく蛍光強度、前記蛍光強度と検量線とから算出されたmRNAの定量値(発現量)などをいう。核酸増幅反応による光学的測定値の変化量とは、核酸増幅反応の1サイクルの反応前後における光学的測定値の変化量をいう。
ここで、前記所定の基準値は、前記データの種類に応じて適宜設定することができる。例えば、前記データがサイクル数である場合、核酸増幅反応が対数増殖を示す時の蛍光強度の変化量を基準値として設定することができる。
【0027】
前記ストラティフィンのmRNAの発現量は、ストラティフィンのmRNAの発現量に関するデータなどの取得が容易であることから、核酸増幅法によって取得してもよい。
【0028】
前記核酸増幅法は、例えば、測定試料と、ストラティフィンのmRNA、当該mRNAの一部、前記mRNAに対応する核酸(例えば、cDNAなど)を増幅するためのプライマー対(またはプライマーセット)と、核酸合成酵素とを含む反応液を適切な反応条件下に維持することにより行なうことができる。
【0029】
前記核酸増幅法としては、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法、鎖置換反応法、リガーゼ連鎖反応法、転写増幅法などが挙げられる。前記ポリメラーゼ連鎖反応法としては、例えば、定量的RT−PCR(Reverse Transcription PCR)法などが挙げられる。前記鎖置換反応法としては、例えば、定量的RT−LAMP(Reverse Transcription LAMP)法(例えば、米国特許6410278号明細書などを参照)などが挙げられる。転写増幅法としては、例えば、TAS法などが挙げられる。これらのなかでは、前記データの取得が容易であることから、定量的RT−PCR法および定量的RT−LAMP法が好ましい。
【0030】
前記定量的RT−PCR法としては、TaqMan法(「TaqMan」はロシュモレキュラーシステムス社の登録商標である)、インターカレーター〔例えば、商品名:SYBR Green(モレキュラー・プローブ・インク(Molecular Probe Inc.)製)〕を用いるインターカレーター法などが挙げられる。前記定量的RT−PCR法においては、核酸の増幅に伴って反応液の光学的状態が変化することから、前記反応液の光学的測定値をリアルタイムに測定することにより、迅速、かつ簡便に前記発現量を取得することができる。
【0031】
定量的RT−LAMP法においては、ストラティフィンのmRNAに対応するcDNAの増幅に伴って、反応液に含まれる液体成分に対して不溶性であるピロリン酸マグネシウムが生成される。したがって、定量的RT−LAMP法では、前記ストラティフィンのmRNAの発現量に関するデータを、反応液の濁度または吸光度が所定の基準値に達するまでの時間に基づいて算出することができる。
【0032】
前記プライマー対(またはプライマーセット)に含まれるプライマーは、ストラティフィンのmRNAの塩基配列に基づいて、核酸増幅法の種類に応じて設計される。核酸増幅法が定量的RT-PCR法である場合、前記プライマー対(またはプライマーセット)としては、特に限定されないが、例えば、配列番号:1に示される塩基配列(5'-GCAGGCCGAACGCTATGA-3')からなるフォワードプライマーと、配列番号:2に示される塩基配列(5'-GCAGGTTTCGCTCTTCGCA-3')からなるリバースプライマーとからなるプライマー対などが挙げられる。前記プライマー対(またはプライマーセット)に含まれるプライマーは、前記反応液の光学的測定値の測定が容易であることから、標識物質により標識されていることが好ましい。前記標識物質としては、特に限定されないが、放射性同位体、蛍光物質、リガンド、色素などが挙げられる。
【0033】
核酸合成酵素は、核酸増幅法の種類に応じた酵素であればよい。なお、本明細書においては、前記核酸合成酵素とは、例えば、RNA依存性DNAポリメラーゼ(以下、「逆転写酵素」という)、DNA依存性DNAポリメラーゼ(以下、「DNAポリメラーゼ」という)、鎖置換型DNAポリメラーゼ、リガーゼなどをいう。核酸増幅法が定量的RT-PCR法である場合、前記核酸合成酵素として、逆転写酵素およびDNAポリメラーゼが用いられる。前記逆転写酵素としては、例えば、AMV逆転写酵素、M−MLV逆転写酵素などが挙げられる。また、前記DNAポリメラーゼとしては、Taq DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼなどが挙げられる。なお、定量的RT−PCR法では、前記核酸増幅酵素として、逆転写酵素活性およびDNA合成活性の両方を有する酵素を用いてもよい。
【0034】
核酸増幅法における反応条件は、核酸増幅法の種類、用いられるプライマー対の種類などによって異なるので、一概には決定することができない。かかる反応条件は、モレキュラー・クローニング・ア・ラボラトリー・マニュアル第2版〔Sambrookら、1989年発行〕などに記載の方法を参照して、核酸増幅法の種類、用いられるプライマー対の種類などに応じて適宜設定することができる。
【0035】
[1−2.肺がんの転移判定]
つぎに、取得したストラティフィンのmRNAの発現量が過剰である場合に、前記リンパ節組織に肺がんが転移していると判定する。
【0036】
ストラティフィンのmRNAの発現量が過剰であるか否かは、前記発現量に関するデータと、前記データの種類に応じた閾値とを比較して示すことができる。ここで、「ストラティフィンのmRNAの発現量が過剰である」とは、例えば、発現量に関するデータがストラティフィンのmRNAの発現量が閾値に対応する発現量より大きいことを示すことをいう。例えば、前記データが、核酸増幅反応による蛍光強度の変化量が所定の基準値に達したときのサイクル数である場合、「サイクル数<閾値」のとき、ストラティフィンのmRNAの発現量が過剰であることを意味する。このとき、前記リンパ節組織に肺がんが転移していると判定することができる。そして、「サイクル数>閾値」のとき、ストラティフィンのmRNAの発現量が過剰ではないことを意味する。このとき、前記リンパ節組織に肺がんが転移していないと判定することができる。
また、前記データが、前記mRNAの定量値(発現量)である場合、「mRNAの定量値(発現量)>閾値」のとき、ストラティフィンのmRNAの発現量が過剰であることを意味する。このとき、前記リンパ節組織に肺がんが転移していると判定することができる。そして、「mRNAの定量値(発現量)<閾値」のとき、ストラティフィンのmRNAの発現量が過剰ではないことを意味する。このとき、前記リンパ節組織に肺がんが転移していないと判定することができる。
【0037】
閾値は、前記発現量に関するデータの種類に応じて、種々の方法によって設定することができる。すなわち、閾値は、肺がんの転移が認められるリンパ節群と転移が認められないリンパ節群とに分類可能な所定の発現量を示す値に経験的に設定することができる。より具体的には、発現量に関するデータがサイクル数である場合、肺がんの転移が組織学的に認められた複数のリンパ節および肺がんの転移が組織学的に認められない複数のリンパ節それぞれについてサイクル数を取得し、リンパ節転移が認められたリンパ節群とリンパ節転移が認められないリンパ節群とを2群に分類するようなサイクル数を閾値として設定することができる。
【0038】
[2.肺がんのリンパ節転移判定装置]
つぎに、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施の形態に係る検査方法を実施するのに好適な装置の一例として、本発明の一実施の形態に係る肺がんのリンパ節転移判定装置(以下、「判定装置」ともいう)について詳細に説明する。
なお、本実施の形態に係る判定装置は、前記mRNAの発現量に関するデータとして、蛍光強度の変化量が所定の基準値に達した時のサイクル数を用い、当該サイクル数とサイクル数の閾値とを比較して判定を行なう装置である。
【0039】
[2−1.判定装置の構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る判定装置1の全体構成を示すブロック図である。
本実施の形態に係る判定装置1は、核酸増幅測定装置100と、この核酸増幅測定装置100と接続された情報処理装置200とから構成されている。
核酸増幅測定装置(測定部)100は、定量的RT−PCR法などを行なうことが可能なPCR装置からなる。この核酸増幅測定装置100は、ストラティフィンのmRNAを増幅するとともに、増幅されたmRNAに基づく蛍光強度と、定量的RT−PCR法におけるサイクル数とを測定するものである。
この核酸増幅測定装置100には、情報処理装置(コンピュータ)200が接続されている。
この情報処理装置200は、核酸増幅測定装置100の動作を制御するとともに、この核酸増幅測定装置100で測定された前記蛍光強度のデータおよび前記サイクル数のデータを用い、リンパ節転移が陽性であるかどうかを判定する。
【0040】
情報処理装置200は、情報処理装置本体(判定部)210と、必要なデータを情報処理装置本体210に入力する入力デバイス230と、入出力データなどを表示する表示部(出力部)220とを備えている。この情報処理装置200には、必要に応じて、外部記録媒体240が含まれる。
【0041】
情報処理装置本体210は、CPU210aと、ROM210bと、RAM210cと、ハードディスク210dと、読出装置210eと、入出力インタフェース210fと、画像出力インタフェース210hと、バス210iとを備えている。
情報処理装置本体210内において、CPU210a、ROM210b、RAM210c、ハードディスク210d、読出装置210e、入出力インタフェース210fおよび画像出力インタフェース210hは、それぞれバス210iにて、データの送受信可能なように接続されている。
【0042】
CPU210aは、ROM210bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM210cにロードされたコンピュータプログラムを実行することができる。ROM210bには、CPU210aによって実行されるコンピュータプログラムおよびCPU210aがコンピュータプログラムを実行するためのデータなどが記録されている。RAM210cは、ROM210bおよびハードディスク210dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、RAM210cは、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU210aの作業領域として利用される。
ハードディスク210dには、オペレーティングシステム(OS)やアプリケーションプログラムなど、CPU210aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。
ハードディスク210dにインストールされているプログラムには、肺がんのリンパ節転移の検査方法を実現するためのアプリケーションプログラム240aおよび核酸増幅測定装置100を制御するプログラムが含まれている。また、ハードディスク210dには、肺がんのリンパ節転移の検査方法を実現するためのプログラムの実行に用いるデータとして、閾値などが記憶されている。
【0043】
読出装置210eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、DVD−ROMドライブなどによって構成されており、外部記録媒体240に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。なお、アプリケーションプログラム240aは、外部記録媒体240に記録されていてもよく、情報処理装置本体210内に設けられたROM210bまたはRAM210cに保存されていてもよい。
また、CPU210aが外部記録媒体240から当該アプリケーションプログラム240aを読み出し、アプリケーションプログラム240aをハードディスク210dにインストールする構成を採用することも可能である。
【0044】
また、ハードディスク210dには、例えば、米国マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーションシステムがインストールされている。以下の説明においては、上述した判定に係るアプリケーションプログラム240aは、当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0045】
入出力インタフェース210fは、例えば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェースおよびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インタフェース210fには、キーボードやマウスなどの入力デバイス230が接続されている。また、入出力インタフェース210fには核酸増幅測定装置100が接続されている。これにより、情報処理装置本体210は、入出力インタフェース210fを介して核酸増幅測定装置100とデータの送受信が可能である。
【0046】
画像出力インタフェース210hは、LCD、CRTなどで構成された表示部220に接続されており、CPU210aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部220に出力する。表示部220は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。また、表示部220は、後述するCPU210aから与えられた判定結果を表示する。
【0047】
ここで、上記判定装置1にて実施されるアプリケーションプログラム240aの動作フローの一例について、図2を用いて説明する。
【0048】
まず、CPU210aは、核酸増幅装置100から入出力インタフェース210fを介して、核酸増幅反応時の蛍光強度の変化量のデータおよびサイクル数のデータを受領する(ステップS1)。
【0049】
つぎに、ステップS2において、CPU210aは、核酸増幅反応時の蛍光強度の変化量のデータおよびサイクル数のデータに基づき、核酸増幅反応時の蛍光強度の変化量が基準値0.08に達したときのサイクル数(サイクル数A)を算出する。
【0050】
ついで、ステップS3において、CPU210aは、予めアプリケーションプログラム240aのデータとしてハードディスク210dに記憶させていたサイクル数の閾値(31.4サイクル)のデータと、前記サイクル数Aのデータとを比較する。本ステップS3では、前記サイクル数Aがサイクル数の閾値(31.4サイクル)よりも小さいかどうかについて、比較判断される。
前記サイクル数Aが31.4サイクルよりも小さい場合(Yes)、CPU210aは、ステップS4−1に処理を進める。一方、サイクル数Aが31.4サイクルよりも小さいものではない場合(No)、CPU210aは、ステップS4−2に処理を進める。
【0051】
ステップS4−1では、CPU210aは、リンパ節組織に肺がんが転移している(リンパ節転移陽性)と判定する。また、ステップS4−2では、CPU210aは、リンパ節組織に肺がんが転移していない(リンパ節転移陰性)と判定する。
【0052】
その後、ステップS5において、CPU110aは、上記の判定結果を、RAM210cに格納するとともに画像出力インタフェース210hを介して、表示部220に出力する。
【0053】
なお、本実施形態において、核酸増幅反応時の蛍光強度の変化量のデータおよびサイクル数のデータは、核酸増幅測定装置100から入出力インタフェース210fを介して取得するようにしていたが、これに限定されるものではなく、核酸増幅反応時の蛍光強度の変化量のデータおよびサイクル数のデータを入力デバイス230により入力し、CPU210aがこれら入力された値から核酸増幅反応時の蛍光強度の変化量が基準値に達したときのサイクル数(サイクル数A)を算出して取得するようにしてもよい。なお、核酸増幅反応時の蛍光強度の変化量とは、例えば、核酸増幅反応の1サイクルの反応前後における蛍光強度の変化量をいう。
また、本実施形態において、核酸増幅反応時の蛍光強度の変化量が基準値に達したときのサイクル数(サイクル数A)は、CPU210aが核酸増幅反応時の蛍光強度の変化量のデータおよびサイクル数のデータから算出して取得するようにしているが、これに限定されるものではなく、核酸増幅反応時の蛍光強度の変化量が基準値に達したときのサイクル数(サイクル数A)を入力デバイス230により入力して取得するようにしてもよい。
【0054】
なお、本実施形態において、CPU210aは、核酸増幅反応時の蛍光強度の変化量のデータおよびサイクル数のデータに基づき、核酸増幅反応時の蛍光強度の変化量が基準値に達したときのサイクル数を算出しているが、これに限定されるものではなく、蛍光強度やサイクル数などと検量線とからストラティフィンのmRNAの定量値を算出するようにしてもよい。この場合、ステップS3において、前記定量値が所定の閾値よりも大きい場合にステップS4−1に処理を進め、定量値が所定の閾値よりも小さい場合にステップS4−2に処理を進めるようにすることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(調製例1)
肺がんの転移が組織学的に認められた15個のリンパ節〔陽性検体(転移陽性リンパ節)1〜15〕および肺がんの転移が組織学的に認められない20個のリンパ節〔陰性検体(転移陰性リンパ節)1〜20〕を用いて、下記のようにして測定試料を調製した。陽性検体1〜15それぞれのリンパ節の部位および名称を表1に、陰性検体1〜20それぞれのリンパ節の部位および名称を表2に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
まず、前記リンパ節(約30〜370mg/個)に可溶化液[組成:200mMグリシン−塩酸(pH3.4)、5体積%ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン基の付加モル数23)(シグマ−アルドリッチ社製、商品名:Brij35)、20体積%ジメチルスルホキシドおよび0.05体積%消泡剤〔信越化学工業(株)製、商品名:KS−538〕]4mLを添加した。つぎに、ブレンダーで前記リンパ節をホモジナイズした。得られたホモジネートを、室温で10000×g、1分間遠心分離し、上清を得た。その後、RNA抽出・精製用キット(キアゲン社製、商品名:RNeasy Miniキット、カタログ番号74014)を用いて、前記上清400μLからRNAを抽出・精製してRNA溶液60μLを得た。得られた各RNA溶液について、波長260nmにおける吸光度を測定した。得られたRNA溶液を測定試料として用いた。
【0060】
(試験例1)
調製例1で得られた各測定試料と、ストラティフィン用プライマー対と、定量RT−PCRキット(キアゲン社製、商品名:Quanti Tect SYBR Green RT−PCRキット、カタログ番号204245)とを用い、リアルタイムPCR装置(アプライドバイオシステムズ社製、商品名:ABI Prism 7500)でリアルタイムRT−PCR法を行ない、各測定試料について、増幅産物に基づく蛍光強度の変化量が基準値に達したときのPCRサイクル数を決定した。得られたPCRサイクル数を、測定試料におけるストラティフィンのmRNAの発現量の指標として用いた(実施例1)。
【0061】
また、ストラティフィン用プライマー対の代わりに、CEA用プライマー対(比較例1)またはTACSTD1用プライマー対(比較例2)を用いたことを除き、前記と同様に操作を行ない、各測定試料について、増幅産物に基づく蛍光強度の変化量が基準値に達したときのPCRサイクル数を決定した。CEAおよびTACSTD1は、いずれも、肺がんのリンパ節転移に対する既知の分子マーカーである。
【0062】
なお、対照として、ストラティフィン用プライマー対の代わりに、β−アクチン用プライマー対を用いたことを除き、前記と同様に操作を行ない、各測定試料について、増幅産物に基づく蛍光強度の変化量が基準値に達したときのPCRサイクル数を決定した。
【0063】
また、実施例1、比較例1および2それぞれについて、陽性検体の測定試料を用いたときのPCRサイクル数の最小値と陰性検体の測定試料におけるPCRサイクル数の最大値との間の差(陽性検体と陰性検体と間のPCRサイクル数の差)を算出した。
【0064】
ストラティフィンのmRNAを増幅する場合における蛍光強度の変化量の基準値は0.08、CEAのmRNAを増幅する場合における基準値は0.02、TACSTD1のmRNAを増幅する場合における基準値は0.02である。なお、これらの基準値は、ストラティフィンのmRNA、CEAのmRNAおよびTACSTD1のmRNAそれぞれにおける核酸増幅反応において、核酸増幅反応が対数増殖期にあるときの蛍光強度の変化量である。また、これら基準値は、単位鎖長あたりの蛍光強度の変化量に換算したとき、ほぼ同じ値になるように設定している。
【0065】
リアルタイムRT−PCR法で用いたプライマー対を表3に、反応液の組成を表4に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
また、リアルタイムRT−PCR法におけるサーマルプロファイルは、50℃で30分間の保温および95℃で10分間の保温後、94℃で15秒間の変性と53℃で30秒間のアニーリングと72℃30秒間の伸長とを1サイクルとする40サイクルの反応である。
【0069】
試験例1において、リンパ節転移の有無およびマーカーの種類とPCRサイクル数との関係を図3に示す。図中、「PCRサイクル数」は、陽性検体の測定試料または陰性検体の測定試料を用いたリアルタイムRT−PCR法において、増幅産物に基づく蛍光強度の変化量が各基準値に達したときのサイクル数である。また、図3中、「+」は陽性検体の測定試料を用いたときのPCRサイクル数、「−」は陰性検体の測定試料を用いたときのPCRサイクル数を示す。
【0070】
図3に示された結果から、分子マーカーとしてストラティフィンを用いた場合(実施例1)の陽性検体と陰性検体と間のPCRサイクル数の差は、CEA(比較例1)やTACSTD1(比較例2)を用いた場合の陽性検体と陰性検体と間のPCRサイクル数の差と比べて大きいことがわかる。かかる結果から、陽性検体と陰性検体との間におけるストラティフィンのmRNAの発現量の差は、陽性検体と陰性検体との間におけるCEAまたはTACSTD1のmRNAの発現量の差と比べて大きいことがわかる。また、陽性検体と陰性検体との間におけるストラティフィンのmRNAの発現量の差が大きいことから、肺がんのリンパ節転移陽性検体と陰性検体とを区別するための閾値が設定しやすいと考えられる。したがって、ストラティフィンによれば、CEAやTACSTD1と比べて、陽性検体と陰性検体とを明確に区別化することができることから、リンパ節組織への肺がんの転移の有無を高い精度で検査することができることが示唆される。
【0071】
さらに、図3に示された結果から、ストラティフィンを用いた場合の陽性検体間および陰性検体間それぞれにおけるPCRサイクル数のばらつきの範囲は、CEAを用いた場合よりも小さいことがわかる。かかる結果から、陽性検体間および陰性検体間それぞれにおけるストラティフィンのmRNAの発現量のばらつきは、陽性検体間および陰性検体間それぞれにおけるCEAのmRNAの発現量のばらつきと比べて小さいことがわかる。そのため、肺がんのリンパ節転移の検査に際して、分子マーカーとしてストラティフィンを用いた場合、検体における当該ストラティフィンのmRNAの発現量に関する情報に基づいて、当該検体を陽性検体または陰性検体に容易に分類することができると考えられる。
【0072】
以上の結果から、ストラティフィンによれば、既知の分子マーカーであるCEAやTACSTD1と比べて、肺がんのリンパ節転移を高い精度で検査することができることが示唆される。
【符号の説明】
【0073】
1 判定装置
100 核酸増幅測定装置
200 情報処理装置(コンピュータ)
210 情報処理装置本体
220 表示部
230 入力デバイス
240 外部記録媒体
210a CPU
210b ROM
210c RAM
210d ハードディスク
210e 読出装置
210f 入出力インタフェース
210h 画像出力インタフェース
210i バス
240a アプリケーションプログラム
【配列表フリーテキスト】
【0074】
配列番号:1は、ストラティフィン用フォワードプライマーの配列である。
配列番号:2は、ストラティフィン用リバースプライマーの配列である。
配列番号:3は、CEA用フォワードプライマーの配列である。
配列番号:4は、CEA用リバースプライマーの配列である。
配列番号:5は、TACSTD1用フォワードプライマーの配列である。
配列番号:6は、TACSTD1用リバースプライマーの配列である。
配列番号:7は、β−アクチン用フォワードプライマーの配列である。
配列番号:8は、β−アクチン用リバースプライマーの配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺がん患者から採取された、肺がんの転移が疑われるリンパ節組織を用いて調製された測定試料に含まれる、ストラティフィンのmRNAの発現量を取得し、
取得したストラティフィンのmRNAの発現量が過剰である場合に、前記リンパ節組織に肺がんが転移していると判定する、肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項2】
ストラティフィンのmRNAの発現量は、核酸増幅法によって取得される、請求項1に記載の肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項3】
核酸増幅法が、ポリメラーゼ連鎖反応法、鎖置換反応法、リガーゼ連鎖反応法、転写増幅法のいずれかである、請求項2に記載の肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項4】
ストラティフィンのmRNAの発現量は、核酸増幅法による核酸増幅反応のサイクル数に基づく値である、請求項2に記載の肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項5】
核酸増幅反応のサイクル数と所定の閾値とを比較し、サイクル数が所定の閾値より小さい場合に、前記リンパ節組織に肺がんが転移していると判定する、請求項4に記載の肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項6】
核酸増幅反応のサイクル数が所定の閾値より大きい場合に、前記リンパ節組織に肺がんが転移していないとさらに判定する、請求項5に記載の肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項7】
ストラティフィンのmRNAの発現量は、核酸増幅法によって算出されたストラティフィンのmRNAの定量値である、請求項2に記載の肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項8】
算出されたストラティフィンのmRNAの定量値と所定の閾値とを比較し、定量値が所定の閾値より大きい場合に、前記リンパ節組織に肺がんが転移していると判定する、請求項7に記載の肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項9】
定量値が所定の閾値より小さい場合に、前記リンパ節組織に肺がんが転移していないとさらに判定する、請求項8に記載の肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項10】
リンパ節組織は、肺に所属するリンパ節を含む組織である、請求項1〜9のいずれかに記載の肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項11】
肺に所属するリンパ節は、上縦上部リンパ節、気管傍リンパ節、気管前リンパ節、前縦隔リンパ節、気管後リンパ節、気管気管支リンパ節、大動脈下リンパ節、大動脈傍リンパ節、気管分岐部リンパ節、食道傍リンパ節、肺靱帯リンパ節などの縦隔リンパ節;主気管支周囲リンパ節、葉気管支間リンパ節、葉気管支周囲リンパ節などの肺門リンパ節;区域気管支周囲リンパ節、亜区域気管支周囲リンパ節のいずれかである、請求項10に記載の肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項12】
リンパ節組織を用いて調製された測定試料は、肺がんの転移が疑われる組織を前処理液中でホモジナイズして得られた試料である、請求項1〜11のいずれかに記載の肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項13】
前処理液のpHは、2.5〜5.0である、請求項12に記載の肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項14】
前処理液は、緩衝液を含む、請求項12または13のいずれかに記載の肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項15】
前処理液は、界面活性剤を含む、請求項12〜14のいずれかに記載の肺がんのリンパ節転移の検査方法。
【請求項16】
肺がんの転移が疑われるリンパ節組織を用いて調製された測定試料に含まれる、ストラティフィンのmRNAの発現量を取得する測定部と、
前記測定部で得られたストラティフィンのmRNAの発現量が過剰である場合に、前記リンパ節組織に肺がんが転移していると判定する判定部と、
前記判定部で得られた判定結果を出力する出力部と
を備える肺がんのリンパ節転移判定装置。
【請求項17】
コンピュータに、
肺がんの転移が疑われるリンパ節組織を用いて調製された測定試料に含まれる、ストラティフィンのmRNAの発現量を受け取る受領ステップと、
受領ステップで得られたストラティフィンのmRNAの発現量が過剰である場合に、前記リンパ節組織に肺がんが転移していると判定する判定ステップと、
前記判定ステップで得られた判定結果を出力する出力ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−31(P2012−31A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136345(P2010−136345)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】