肺感染症および敗血症を防止および処置するための表面活性タンパク質−D
表面活性タンパク質D(SP−D)は、肺の上皮細胞において発現する、コラーゲン性のレクチンドメイン含有タンパク質のコレクチンファミリーのメンバーである。SP−Dタンパク質またはそのフラグメントの投与は、敗血症または肺感染を防止または処置するために有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府援助のR&Dに関する言及)
本明細書中に開示される本発明のいくつかの態様がNIH(国立衛生研究所)補助金番号HL63329のもとでの合衆国政府の援助によりなされた。合衆国政府は本発明のこれらの態様において一定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、生物学的に活性なタンパク質およびその医薬的使用の分野に関連する。より具体的には、本発明は、SP−Dタンパク質、および、敗血症を防止または処置するための個体へのその投与に関連する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
肺の表面活性物質は肺における正常な肺力学およびガス交換のために不可欠である。肺の表面活性物質はII型上皮細胞によって産生され、肺における表面張力を低下させる表面活性物質の能力を与えるリン脂質成分から構成される。加えて、コラーゲン性のレクチンドメイン含有ポリペプチドであるコレクチンと呼ばれる表面活性物質と会合するタンパク質がいくつか存在する。これらの表面活性タンパク質の1つ、すなわち、表面活性タンパク質D(SP−D)と呼ばれる表面活性タンパク質が、表面活性物質の構造および機能ならびに宿主防御に関与していると考えられる。
【0004】
敗血症は、血流における甚だしい細菌感染から生じる高レベルの細菌エンドトキシンによって典型的には引き起こされる重篤な、多くの場合には命を脅かす疾患である。敗血症は、多くの体組織(例えば、腎臓、肝臓、膀胱および皮膚など)から生じ得る一方で、肺における初期感染に由来することが多い。
【0005】
どのような年齢の個体であっても、敗血症に罹る可能性がある。幼児は、その免疫系が未成熟であるために、敗血症に特に罹りやすい。例えば、低出産体重児(1500g未満)はしばしば、重篤な全身性の感染症(Kaufman他(2004)、Clin Microbiol Rev、17:638〜680;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)、および、敗血症に関連したショックを経験し、これらは、子宮内での絨毛性羊膜炎および出生後の肺感染症にさらされることによってよく起こる(Goldenberg他(2000)、N Engl J Med、342:1500〜1507;Wenstrom他(1998)、Am J Obstet Gynecol、178:546〜550;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。その未成熟のために、早産新生児の肺は非常に透過性であり、タンパク質、生物、毒素および媒介因子が肺から全身循環に漏れることを許している(Pringle他(1986)、Clin Obstet Gynecol、29:502〜513;Jobe他(1985)、J Appl Physiol、58:1246〜1251;Bland他(1989)、J Clin Invest、84:568〜576;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。新生児敗血症症候群は、肺炎および絨毛性羊膜炎に関連する場合、満期児および早産児の両方における新生児の発病および死亡の一般的な原因である(Kaufman他(2004)、Clin Microbiol Rev、17:638〜680;Dempsey他(2005)、Am J Perinatal、22:155〜159;Jiang他(2004)、J Microbiol Immunol Infect、37:301〜306;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。以前の研究では、全身的炎症が、早産新生児の子ヒツジにおいて、気管内リポ多糖(LPS)が全身循環に漏れることによって引き起こされた(Kramer他(2002)、Am J Respir Crit Care Med、165:463〜469;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0006】
肺感染および全身的感染に対する新生児の罹りやすさは、その肺構造および免疫系の両方が未成熟であることに関連している。早産児の肺は、表面活性タンパク質(SP)AおよびDを含めて、肺の表面活性タンパク質および生得的な宿主防御タンパク質が不十分である(Mason他(1998)、Am J Physiol、275:L1〜L13;Miyamura他(1994)、Biochim Biophys Acta、1210:303〜307;Awasthi他(1999)、Am J Respir Crit Care Med、160:942〜94910〜12;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。新生児における呼吸困難のために使用される表面活性物質代償調製物はSP−BおよびSP−Cを含有するが、SP−A、SP−Dまたは他の生得的な宿主防御タンパク質を含有しない。肺のコレクチンが、ウイルス病原体、細菌病原体および真菌病原体から肺を守ることにおいて重要な役割を果たしている。SP−AおよびSP−Dはともに抗菌活性および抗炎症活性を有する(Mason他(1998)、Am J Physiol、275:L1〜L13;Crouch他(2001)、Annual Review of Physiology、63:521〜554;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−AおよびSP−Dの低下したレベルが、気管支肺異形成症(BPD)のモデルにおける肺の炎症(Awasthi,S.他(1999)、Am J Respir Crit Care Med、160:942〜949;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)に、また、嚢胞性線維症の小児における肺の炎症(Noah他(2003)、Am J Respir Crit Care Med、168:685〜691;Postle他(1999)、Am J Respir Cell Mol Biol、20:90〜98;von Bredow他(2003)、Lung、181:79〜88;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)に関連しており、そのような肺の炎症は疾患の病理発生に影響を及ぼす可能性があり、敗血症を引き起こす可能性がある。
【0007】
敗血症に対する個体の罹りやすさを低下させる方法、および、敗血症を処置する方法、具体的には、典型的には肺に天然に存在する免疫関連タンパク質の投与の使用によるそのような方法は、敗血症についての危険性があるすべての年齢の患者を処置するために有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、一般には、患者における肺感染および敗血症を防止および処置するための方法、および、SP−Dまたはそのフラグメントあるいはその組換え形態を含有する組成物に関連する。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態において、個体における敗血症を防止または処置する方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを個体に投与することによる方法が提供される。個体は、例えば、哺乳動物であり得、ヒトであり得る。個体は、例えば、成人、小児、幼児、新生または早産新生児であり得る。投与は、例えば、気管内投与、エアロゾル化または全身投与によって行うことができる。敗血症は、例えば、細菌感染症または肺感染症に由来し得る。ポリペプチドは組換えポリペプチドであり得る。組換えポリペプチドは、例えば、組換えヒト表面活性タンパク質Dであり得る。ポリペプチドは、例えば、体重1kgあたり約0.50mg、1mg、2mg、5mgまたは10mgのポリペプチドから、体重1kgあたり約15mg、20mg、30mg、40mg、50mgまたは100mgのポリペプチドの範囲で投与することができる。ポリペプチドは、例えば、体重1kgあたり約2mgのポリペプチドで投与することができる。SP−D配合物は、例えば、気管内投与、エアロゾル化または全身投与によって投与することができ、気管内投与、エアロゾル化または全身投与のために好適な形態であり得る。組換えポリペプチドは約5個のアミノ酸〜約375個のアミノ酸のアミノ酸配列を有することができる。
【0010】
本発明のさらなる実施形態において、個体における敗血症を防止または処置する方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドをコードする核酸を個体に投与することによる方法が提供される。
【0011】
本発明のさらなる実施形態において、個体におけるリポ多糖(LPS)の血漿への漏出を低下させる方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを個体に投与することによる方法が提供される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、個体における大腸菌細胞の血漿への漏出を低下させる方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを個体に投与することによる方法が提供される。
【0013】
本発明のさらなる実施形態において、個体における血漿中のエンドトキシンレベルを低下させる方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを個体に投与することによる方法が提供される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、肺からのエンドトキシンの放出を阻害する方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを投与することによる方法が提供される。
【0015】
本発明のさらなる実施形態において、気管内エンドトキシンの全身的影響から個体を保護する方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを個体に投与することによる方法が提供される。
【0016】
本発明のさらなる実施形態において、全身的炎症を防止する方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを個体に投与することによる方法が提供される。全身的炎症は、例えば、肺からのエンドトキシンの放出によって引き起こされ得る。
【0017】
本発明のなおさらなる実施形態において、肺感染症の個体を処置するための方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントを投与することによる方法が提供される。肺感染症は、例えば、細菌によって引き起こされ得る。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントを投与することによって、敗血症の危険性が低下するように、肺感染症の個体を処置するための方法が提供される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、SP−Dポリペプチドまたはその活性なフラグメントを含む医薬組成物が提供される。医薬組成物におけるSP−Dポリペプチドは、例えば、組換えSP−Dポリペプチドであり得る。組換えSP−Dポリペプチドは、例えば、組換えヒトSP−Dポリペプチドであり得る。SP−Dポリペプチドは、例えば、配列番号2または配列番号3に示される配列を含むことができる。さらに、SP−Dポリペプチドを含む医薬組成物は、例えば、医薬的に許容され得る分散化剤をさらに含むことができる。医薬組成物は、例えば、気管内投与、エアロゾル化または全身投与のために配合することができる。医薬組成物はまた、SP−Dポリペプチドが、例えば、体重1kgあたり約0.50mg、1mg、2mg、5mgまたは10mgのポリペプチドから、体重1kgあたり約15mg、20mg、30mg、40mg、50mgまたは100mgのポリペプチドの範囲で投与されるように配合することができる。医薬組成物は、SP−Dポリペプチドが、例えば、体重1kgあたり約2mgのポリペプチドで投与されるように配合することができる。
【0020】
本発明の他の実施形態において、SP−Dポリペプチドまたはその活性なフラグメントをコードする核酸を含有する医薬組成物が提供される。核酸は、例えば、配列番号1に示される配列を含むことができる。核酸はまた、例えば、アデノウイルスベクター内にコードされ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
肺は、吸入された粒子および微生物によって絶えず攻撃されており、それにもかかわらず、肺は著しく健康なままである。これは、大部分が、肺のコレクチン、表面活性タンパク質A(SP−A)および表面活性タンパク質D(SP−D)によるものである(Kingma,P.S.およびJ.A.Whitsett(2006)、Curr Opin Pharmacol、6:277〜83;Crouch,E.およびJ.R.Wright(2001)、Annu Rev Physiol、63:521〜54;Hawgood,S.およびF.R.Poulain(2001)、Annu Rev Physiol、63:495〜519;Whitsett,J.A.(2005)、Biol Neonate、88:175〜80;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−Dは、SP−Dの炭水化物認識ドメインと、生物表面の炭水化物成分との間における相互作用によって感染性生物を認識し、感染性生物と結合し、このことはさらには、肺胞のマクロファージによる感染性病原体のクリアランスを容易にする(Kishore,U.他(1996)、Biochem J、318:505〜511;Lim,B.L.他(1994)、Biochem Biophys Res Commun、202:1674〜80;Kuan,S.F.他(1992)、J Clin Invest、90:97〜106;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−D遺伝子の標的化された欠失を有するマウス(Sfptd−/−)は、徐々に悪化する肺気腫および炎症を発症し、このことは、感染性粒子と結合することに加えて、SP−Dが、肺の宿主防御細胞を調節することにおいて重要な役割を有し得ることを示している(Korfhagen,T.R.他(1998)、J Biol Chem、273:28438〜29443;Wert,S.E.他(2000)、Proc Natl Acad Sci USA、97:5972〜7;Clark,H.他(2002)、J Immunol、169:2892〜2899;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。肺の免疫系におけるその役割の結果として、SP−Dは、肺における微生物の成長およびその結果として生じた肺の損傷を制限するために設計された治療剤として開発中である。呼吸樹に加えて、SP−Dはまた、より低い濃度で血漿および多くの他の肺以外の組織(血管内皮細胞を含む)でも検出される(Stahlman,M.T.他(2002)、J Histochem Cytochem、50:651〜60;Honda,Y.他(1995)、Am J Respir Crit Care Med、152:1860〜6;Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、290:L1010〜L1017;Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Heart Circ Physiol、290:H2286〜H2294;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−Dの肺外レベルは、肺内SP−Dと類似する様式で感染時および他の炎症状態の期間中において増大する(Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、290:L1010〜L1017;Fujita,M.他(2005)、Cytokine、31:25〜33;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。しかしながら、肺外SP−Dの供給源および機能は大部分が不明である。本明細書中に記載されるように、予備的研究において、SP−Dは、肺のシステムを越えて宿主防御にも関与し、肺以外のシステムでは感染性病原体を排除することができ、また、宿主防御細胞を調節することができることが示される。
【0022】
SP−Dは、生得的な免疫分子のコレクチンファミリーの多量体糖タンパク質であり、気道上皮細胞によって分泌される。SP−Dは、細菌、ウイルス、真菌およびダニ抽出物を含めて、広範囲の様々な微生物病原体に結合し、これらを凝集させ(Kuan他(1992)、J Clin Invest、90:97〜106;Lim他(1994)、Biochem Biophys Res Commun、202:1674〜1680;van Rozendaal他(1999)、Biochim Biophys Acta、1454:261〜269;Hartshorn他(1996)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、271:L753〜L762;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)、また、細菌成分(例えば、LPS、ペプチドグリカンおよびリポテイコ酸など)に直接的に結合する(Crouch他(2001)、Annual Review of Physiology、63:521〜554;van de Wetering,J.K.他(2004)、Eur J Biochem、271:1229〜1249;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。多量体形態のSP−Dは、SP−Dが種々の微生物の表面でリガンドに結合して、それにより、微生物の凝集を誘導し、肺の病原体の免疫細胞媒介による認識およびクリアランスを刺激する微生物間のタンパク質架橋を形成することを可能にする(Hartshorn,K.他(1996)、Am J Physiol、271:L75362;Hartshorn,K.L.他(1998)、Am J Physiol、274:L958〜L969;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。これらの微生物または微生物成分と相互作用することにより、SP−Dは、肺胞のマクロファージの活性化を阻害することによって、肺の感染またはLPSにより誘導される炎症を制限する(Kuan他(1992)、J Clin Invest、90:97〜106;Van Rozendaal,B.A.他(1997)、Biochem Soc Trans、25:S656;van Rozendaal,B.A.他(1999)、Biochim Biophys Acta、1454:261〜9;Schaub,B.他(2004)、Clin Exp Allergy、34:1819〜26;Liu,C.F.他(2005)、Clin Exp Allergy、35:515〜521;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0023】
ほとんどの微生物リガンドがマンノースまたはグルコースを含有しており、SP−Dは、イノシトール、マルトース、マンノースおよびグルコースに優先的に結合することが知られている。SP−Aとは異なり、SP−Dは脂質Aドメインに結合せず(Van Iwaarden他(1994)、Biochem J、303(Pt2):407〜411;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)、しかし、LPSの連続したコアオリゴ多糖に結合する(Crouch他(1998)、Am J Respir Cell Mol Biol、19:177〜201;Crouch他(1998)、Biochim Biophys Acta、1408:278〜289;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。そのうえ、SP−Dの最大の分子寸法はSP−Aよりも5倍大きく、SP−Dは、SP−Aよりも大きい結合表面を有する(Crouch他(1998)、Am J Respir Cell Mol Biol、19:177〜201;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0024】
SP−DはそのC末端のレクチン様ドメインを介して大腸菌属の表面に結合する。さらに、SP−Dが病原体に結合することにより、肺の食細胞による病原体の殺傷が促進される(Mason他(1998)、Am J Physiol、275:L1〜L13;Crouch他(2001)、Annual Review of Physiology、63:521〜554;Kuan他(1992)、J Clin Invest、90:97〜106;Lim他(1994)、Biochem Biophys Res Commun、202:1674〜1680;van Rozendaal他(1999)、Biochim Biophys Acta、1454:261〜269;Crouch他(1998)、Am J Respir Cell Mol Biol、19:177〜201;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−Dを欠失するマウス(Sftpd−/−マウス)は肺の感染および炎症に非常に罹りやすい(LeVine他(2004)、Am J Respir Cell Mol Biol、31:193〜199;LeVine他(2001)、J Immunol、167:5868〜5873;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0025】
SP−Dは肺胞のマクロファージを調節する
感染性生物と結合することはSP−D生理学の重要な特徴であるが、SP−D欠損のマウスモデルにより、肺の宿主防御におけるこのタンパク質のより複雑な役割が明らかにされた。Sftpd遺伝子の欠失を有するマウスは正常に生存したが、高まった表面活性脂質プールサイズを有し、肺の炎症および気腔の拡張を自然発症した(Korfhagen,T.R.他(1998)、J Biol Chem、273:28438〜29443;Wert,S.E.他(2000)、Proc Natl Acad Sci USA、97:5972〜7;Clark,H.他(2002)、J Immunol、169:2892〜2899)。ベースライン状態での肺胞のマクロファージ活性が、反応性酸素化学種およびメタロプロテイナーゼ(MMP)を放出したアポトーシス性マクロファージおよび肥大した泡沫状マクロファージの増大した数によって明らかであるように、Sftpd−/−マウスでは上昇する。ウイルス病原体(インフルエンザAおよび呼吸器合胞体ウイルスを含む)の取り込みおよびクリアランスがSftpd−/−マウスでは不十分であった(LeVine他(2004)、Am J Respir Cell Mol Biol、31:193〜199;LeVine他(2001)、J Immunol、167:5868〜5873)。対照的に、B群連鎖球菌属およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenza)のクリアランスは変化しなかった(LeVine,A.M.他(2000)、J Immunol、165:3934〜3940;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。しかしながら、酸素ラジカルの放出および前炎症性媒介因子(TNFα、IL−1およびIL−6)の産生が、ウイルス病原体または細菌病原体のいずれかにさらされたとき、Sftpd−/−マウスにおいて増大した。このことは、SP−Dがまた、病原体のクリアランスとは無関係である感染性攻撃の間に肺胞のマクロファージを調節することにおいて重要な役割を果たすことを示している(LeVine他(2004)、Am J Respir Cell Mol Biol、31:193〜199;LeVine他(2001)、J Immunol、167:5868〜5873;LeVine,A.M.他(2000)、J Immunol、165:3934〜3940)。
【0026】
肺において、SP−Dは肺胞のII型上皮細胞および他の非線毛性細気管支上皮細胞によって産生され、肺胞のマクロファージおよびII型細胞によって除かれる(Crouch,E.他(1992)、Am J Physiol、263:L60〜L66;Voorhout,W.F.他(1992)、J Histochem Cytochem、40:1589〜97;Crouch,E.他(1991)、Am J Respir Cell Mol Biol、5:13〜18;Dong,Q.およびJ.R.Wright(1998)、J.R.Am J Physiol、274:L97〜105;Herbein,J.F.他(2000)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、278:L830〜L839;Kuan,S.F.他(1994)、Am J Respir Cell Mol Biol、10:430〜436;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。肺外SP−Dの供給源、および、血漿中のSP−Dレベルを制御する機構はこれまで不明である。血漿に存在するSP−Dは、肺以外で産生される可能性があり、また、SP−Dの全身的レベルの制御が、全身的な発現経路の活性化によるか、または、全身的なSP−Dクリアランスを変化させることによるかのいずれかで行われる可能性がある。
【0027】
SP−Dはいくつかの免疫細胞シグナル伝達経路に関わっている。SP−Dは、炭水化物認識ドメイン(CRD)と、CD14におけるN結合型オリゴ糖との間での相互作用を介してLPS受容体のCD14と結合する(Sano,H.他(2000)、J Biol Chem、275:22442〜22451;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−Dはまた、CD14と、LPSの滑面形態および粗面形態の両方との間での相互作用を阻害する(Sano,H.他(2000)、J Biol Chem、275:22442〜51)。加えて、CD14受容体のレベルが、Sftpd−/−マウスから得られた肺胞マクロファージの表面では低下し、これに対して、可溶性CD14のレベルが増大する(Senft,A.P.他(2005)、J Immunol、174:4953〜4959;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。可溶性CD14のレベルが、MMP−9遺伝子またはMMP−12遺伝子の標的化された欠失を有するSftpd−/−マウスでは野生型のレベルに戻った。このことは、SP−Dが、CD14受容体のレベルを、受容体のMMP−9媒介またはMMP−12媒介によるタンパク質分解的切断を阻害することによって制御することを示唆している(Senft,A.P.他(2005)、J Immunol、174:4953〜4959)。
【0028】
SP−Dは、LPS、ペプチドグリカンおよびリポテイコ酸に対する炎症性応答を開始することに関与するtoll様受容体(TLR)−2およびTLR−4の細胞外ドメインと結合する(Ohya,M.他(2006)、Biochemistry、45:8657〜8664;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−AはペプチドグリカンによるTLR−2の活性化を阻害する(Sato,M.他(2003)、J Immunol、111:417〜25;Murakami,S.他(2002)、J Biol Chem、277:6830〜7;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)が、TLR−2またはTLR−4のシグナル伝達に対するSP−Dの影響は現在不明である。
【0029】
Gardaiらは、SP−Dが、シグナル調節タンパク質α(SIRPα)およびカルレチクリン/CD91の相反する作用を介して肺における抗炎症性プロセスおよび前炎症性プロセスを同時に媒介するかもしれないモデルを提案した(Gardai,S.J.他(2003)、Cell、115:13〜23;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。Gardaiらのモデルでは、結合していない状態において、SP−DのCRDが、マクロファージの活性化を、NFκBのP38媒介による活性化を阻害するSIRPαに結合することによって阻害することが示される。対照的に、SP−DのCRDが微生物のリガンドによって占有されるならば、SIRPαに結合することが阻害され、コレクチンがマクロファージ活性化受容体のカルレチクリン/CD91に結合する。カルレチクリン/CD91はその後、前炎症性媒介因子を誘導し、かつ、肺胞のマクロファージを活性化するNFκBのP38媒介による活性化を刺激する。従って、CRDにおける感染性粒子の存在または不在、ならびに、結合した受容体のタイプに依存して、SP−Dは炎症の強化または抑制のいずれかをもたらすことができる。
【0030】
SP−Dは、酸化剤感受性経路を介してNFκBの活性に影響を及ぼす(Yoshida,M.他(2001)、J Immunol、166:7514〜9;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。Sftpd−/−マウスから得られた肺胞のマクロファージは、増大した量の過酸化水素を産生する。Sftpd−/−マウスにおける反応性酸素化学種の増大には、組織脂質ペルオキシドおよび反応性カルボニルをはじめとする酸化ストレスのマーカーにおける増大が伴い、これはさらには、NFκBを活性化し、MMPの産生を増大させた。
【0031】
SP−Dはまた、細菌抗原のMHCクラスII提示およびその後のT細胞の活性化に影響を及ぼす(Hansen,S.他(2006)、Am J Respir Cell Mol Biol;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。興味深いことに、SP−Dは骨髄由来の樹状細胞による抗原提示を高め、これに対して、肺の樹状細胞による抗原提示が阻害された。これらの結果は、全身的な宿主防御細胞に対するSP−Dの影響、および、全身的SP−Dにより調節されるシグナル伝達経路が、肺において認められるものとは異なり得ることを示している。
【0032】
SP−Dの発現
SP−Dは、ヒト第10染色体上のSP−A遺伝子の非常に近くに位置する1つだけの遺伝子(Sftpd)によってコードされる(Crouch,E.他(1993)、J Biol Chem、268:2976〜83;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−Dが肺において最初に認められ、主に呼吸器のII型上皮細胞および他の非線毛性細気管支上皮細胞によって発現される(Crouch,E.他(1992)、Am J Physiol、263:L60〜L66;Voorhout,W.F.他(1992)、J Histochem Cytochem、40:1589〜97;Crouch,E.他(1991)、Am J Respir Cell Mol Biol、5:13〜18;Dong,Q.およびJ.R.Wright(1998)、J.R.Am J Physiol、274:L97〜105;Herbein,J.F.他(2000)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、278:L830〜L839;Kuan,S.F.他(1994)、Am J Respir Cell Mol Biol、10:430〜436)が、SP−DのmRNAおよびタンパク質が多くの肺以外の組織において検出される。SP−Dの免疫染色が、血管内皮、ならびに、耳下腺、汗腺、涙腺、皮膚、胆嚢、胆管、膵臓、胃、食道、小腸、腎臓、副腎皮質、下垂体前葉、子宮頸管腺、精嚢および尿路の上皮細胞において検出される(Stahlman,M.T.他(2002)、J Histochem Cytochem、50:651〜660;Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、290:L1010〜L1017;Fisher,J.H.およびR.Mason(1995)、Am J Respir Cell Mol Biol、12:13〜18;Motwani,M.他(1995)、J Immunol、155:5671〜5677;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−DのmRNAの肺外レベルが炎症に応答して増大し、しかし、その肺外レベルは、肺で検出されるmRNAレベルよりも数倍低く、このことは、異なる機構が肺外対肺内のSftpd発現を制御することを示している(Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、290:L1010〜L1017)。
【0033】
SP−DのmRNAが妊娠中期のマウスまたはラットの肺において最初に検出され、出生前および新生児期の間において増大する(Crouch,E.他(1991)、Am J Respir Cell Mol Biol、5:13〜18)。SP−DのmRNAが、細菌エンドトキシン、吸入微生物および高酸素症によって引き起こされる肺傷害の後で増大する(Cao,Y.他(2004)、J Allergy Clin Immunol、113:439〜444;Mcintosh,J.C.他(1996)、Am J Respir Cell Mol Biol、15:509〜519;Jain−Vora,S.他(1998)、Infect Immun、66:4229〜4236;Aderibigbe,A.O.他(1999)、Am J Respir Cell Mol Biol、20:219〜227;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。マウスのSftpdプロモータは、AP−1ファミリー、フォークヘッド転写因子(FoxA1およびFoxA2)、甲状腺転写因子(TTF)−1、活性化T細胞の核因子(NFAT)についてのコンセンサスな転写因子結合配列、ならびに、CCAATエンハンサー結合タンパク質(C/EBP)についての多数の部位を含有する(Lawson,P.R.他(1999)、Am J Respir Cell Mol Biol、20:953〜963;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。AP−1ファミリーに含まれるタンパク質のJunBおよびJunDはSftpdプロモータ活性を高め、これに対して、c−Junおよびc−FosはSftpdの転写を阻害した(He,Y.他(2000)、J Biol Chem、275:31051〜31060;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。FoxA1およびFoxA2のコンセンサスな結合部位の欠失は転写を阻害した(He,Y.他(2000)、J Biol Chem、275:31051〜31060)。C/EBPはSftpdの転写を活性化する(He,Y.他(2000)、J Biol Chem、275:31051〜31060;Gotoh,T.他(1997)、J Biol Chem、272:3694〜3698;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。C/EBPはまた、全身的な急性期応答にも関与し、このことは、全身的なSP−D発現が、全身的感染に対する生理学的応答の一部であり得ることを示している。NFATもまた、カルシニューリン依存的経路およびTTF−1との直接的な相互作用を介してSftpdプロモータ活性を促進させる(Dave,V.他(2004)、J Biol Chem、279:34578〜34588;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0034】
肺以外の組織におけるSP−Dの役割
肺以外の組織におけるSP−Dの相対的に低い濃度のために、SP−Dの生理学的役割および治療的可能性の研究は大部分が呼吸樹に限られている。SP−Dが低いレベルでヒト血漿に存在しており、多数の研究では、感染時および/または肺毒物にさらされているときの血漿中のSP−Dにおける増大が明らかにされている(Honda,Y.他(1995)、Am J Respir Crit Care Med、152:1860〜6;Kuroki,Y.他(1998)、Biochim Biophys Acta、1408:334〜345;Greene,K.E.他(2002)、Eur Respir J、19:439〜46;Greene,K.E.他(1999)、Am J Respir Crit Care Med、160:1843〜1850;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。この増大は、肺からのSP−Dの漏出を表すと解釈されており、いくつかのグループが現在、血漿中のSP−Dレベルを肺傷害の臨床的バイオマーカーとして使用するための方法を開発中である。しかしながら、これらの研究において肺の傷害および炎症を誘導するために使用された薬剤の多くはまた、全身的な傷害および炎症を誘導する。従って、血漿SP−Dのプールサイズに対する肺供給源対全身的供給源の相対的な寄与は不明である。
【0035】
羊水および女性の生殖管に存在するSP−Dは子宮内感染を防ぐことができる(Oberley,R.E.他(2004)、Mol Hum Reprod、10:861〜870;Leth−Larsen,R.他(2004)、Mol Hum Reprod、10:149〜154;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−Dは涙に存在し、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による角膜上皮細胞への侵入を阻害する(Ni,M.他(2005)、Infect Immun、73:2147〜2156;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。これらの知見は肺外SP−Dについての生理学的目的を示しているが、血漿中のSP−Dが全身的な宿主防御細胞を調節することができること、または、全身的な病原体と結合し、そのクリアランスを促進させることができることは今後、明らかにされなければならない。
【0036】
SP−Dの臨床的適用
肺において、SP−Dは、肺実質の精巧な一体性を維持しながら、侵入途中の病原体のクリアランスを同時に容易にする、肺の感染に対する肺胞のマクロファージによる制御された応答を促進する前炎症的性質および抗炎症的性質の両方を有する。SP−Dの抗炎症的性質により、このタンパク質が、喘息、気管支肺異形成症、嚢胞性線維症、成人呼吸窮迫症候群または慢性的感染に関連する持続した炎症からの損傷を制限し得ることが示される。この指摘の裏付けとして、SP−Dまたは短縮形態のSP−Dの投与は、アレルギー性気道過敏性に苦しむマウスにおけるアレルギー性応答を低下させる(Liu,C.F.他(2005)、Clin Exp Allergy、35:515〜521;Haczku,A.他(2004)、Clin Exp Allergy、34:1815〜1818;Kasper,M.他(2002)、Clin Exp Allergy、32:1251〜1258;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0037】
SP−D欠損が早産に関連し、人工的な表面活性物質の代償治療が呼吸窮迫症候群の早産児において広く使用される(他の肺疾患における表面活性物質治療の臨床研究が進行中である)が、SP−Dは人工的な表面活性物質の構成成分ではない。マウスモデルでは、SP−Dの欠損が肺の感染に対する増大した感受性をもたらすことが明瞭に明らかにされる(LeVine他(2004)、Am J Respir Cell Mol Biol、31:193〜199;LeVine他(2001)、J Immunol、167:5868〜5873;LeVine,A.M.他(2000)、J Immunol、165:3934〜3940)。SP−DをSftpd−/−マウスにおいて回復させることにより、肺の微生物クリアランスおよび炎症における欠陥が取り消される(Zhang,L.他(2002)、J Biol Chem、277:38709〜38713;LeVine,A.M.他(1999)、Am J Respir Cell Mol Biol、20:279〜286;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。加えて、気管内投与された組換えSP−Dは生存を著しく改善し、また、気管内LPSにさらされた早産新生児ヒツジでのLPSの全身的放出、および、ベンチレータ誘導による肺傷害を低下させる(Ikegami,M.他(2006)、Am J Respir Crit Care Med;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。まとめると、これらの研究から、免疫欠陥または表面活性物質欠損を有する患者における肺感染時の抗菌剤としてのSP−Dの潜在的価値が明らかにされる。肺のSP−Dレベルが感染に対する生理学的応答の一部として増大することを考慮すると、このプロセスを感染の初期段階の間に外因性SP−Dにより補うことはまた、無傷の免疫系を有する患者に利益をもたらし得る。
【0038】
肺において、SP−Dは、侵入途中の病原体のクリアランスを促進すること、および、LPS誘導による炎症の損傷化影響を制限することに関与する。しかしながら、肺システムの外部での感染が最も臨床的に顕著な発病および死亡の一部を誘導する。先天性肺炎または周産期に罹った肺炎を有する幼児は、効果的な抗生物質処置が出生後直ちに施されたときでさえ、脾臓敗血症および死亡の危険性が高い(Kaufman他(2004)、Clin Microbiol Rev、17:638〜680;Goldenberg他(2000)、N Engl J Med、342:1500〜1507;Wenstrom他(1998)、Am J Obstet Gynecol、178:546〜550;Dempsey他(2005)、Am J Perinatol、22:155〜159;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。早期発症敗血症における先天性肺炎の高い発生率は、感染が、多くの場合、子宮内または出生時の病原体の吸引によって生じることを示している。絨毛羊膜炎は未熟分娩の危険性を増大させ、また、新生児の敗血症および敗血症関連ショックに強く関連する(Dempsey他(2005)、Am J Perinatol、22:155〜159;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。早産新生児の肺は非常に透過性であり(Jobe他(1985)、J Appl Physiol、58:1246〜1251;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)、肺からの前炎症性媒介因子および生物の全身的拡大を許している(Kramer他(2002)、Am J Respir Crit Care Med、165:463〜469;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。早産児だけにおいて、出生時の体重が1500グラム未満である乳児の約の20%が、病院から退院する前に、全身的感染と診断される(Stoll,B.J.他(2002)、Pediatrics、110:285〜291;Brodie,S.B.他(2000)、Pediatr Infect Dis J、19:56〜65;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。これらの乳児の大部分が、敗血症、感染に対する宿主由来の炎症性応答の臨床的な徴候および症状を発症する(Bone,R.C,(1996)、Jama、276:565〜566;Angus,D.C.他(2001)、Crit Care Med、29:1303〜1310;Glauser,M.P.他(1991)、Lancet、338:732〜736;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。究極的には、感染と診断された早産児のおよそ20%のうち、18%が敗血症のために死亡する(Stoll,B.J.他(2002)、Pediatrics、110:285〜291;Brodie,S.B.他(2000)、Pediatr Infect Dis J、19:56〜65)。
【0039】
B群連鎖球菌およびグラム陰性細菌(大腸菌を含む)は、先天性肺炎を一般に引き起こす生物である(Stoll他(2005)、Pediatr Infect Dis J、24:635〜639;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。細菌そのものではなく、むしろ、微生物の毒素およびLPSの全身的拡大により、ショックをもたらす細胞性応答および体液性応答が開始され得る(Grandel他(2003)、Crit Rev Immunol、23:267〜299;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。敗血症ショックは、多臓器機能障害、多臓器不全および死を多くの場合にはもたらす複雑な病態生理学的状態である(Murphy他(1998)、New Horiz、6:181〜193;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。血液pH、血中塩基過剰(BE)における低下、および、pCO2における増大(これらは本研究でのコントロール群において明らかにされた)は、早産児における敗血症ショックの臨床的経過に典型的である。血管収縮、肺高血圧症、臓器循環の悪化、および、代謝性アシドーシスがしばしば、敗血症の存在に関係する。下記で例示される実施例において、本発明者らは、SP−Dが全身的な生得的免疫系の重要な構成要素であり得ることを示し、また、全身的感染を処置することにおけるSP−Dの治療的可能性を評価するために、全身的宿主防御におけるSP−Dの生理学的機能を明らかにしている。
【0040】
SP−Dによる処置
外因的に調製されたSP−Dは、阻止されないならば、最終的には全身的な敗血症を引き起こし得る様々な疾患(例えば、肺感染症など)を処置するために有用であり得る。SP−Dの投与が個体において敗血症の危険性を低下させ得るかどうかを明らかにするために、早産新生児の子ヒツジに大腸菌由来のリポ多糖エンドトキシンを滴注し、その後、早産新生児の子ヒツジを、本明細書中に記載されるようにSP−Dにより処置した。その後、生存率、生理学的な肺機能、肺の炎症および全身的な炎症、ならびに、血漿中のエンドトキシンレベルを評価した。本明細書中に示されるように、気管内の組換えヒト表面活性タンパク質−D(rhSP−D)は、早産新生児において換気時に肺から放出されたエンドトキシンによって引き起こされるショックを防止した。加えて、SP−D遺伝子を有しないか、または、ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的なSP−D導入遺伝子を発現するか、または、SP−Dの変異型導入遺伝子を発現する遺伝子組換えマウス系統を、このタンパク質の構造/機能研究を可能にするために開発した。本明細書中に示されるように、SP−Dの投与は、全身的LPSにより誘導される炎症を阻害し、また、盲腸結紮および穿刺における炎症を軽減させる。加えて、SP−Dの投与は、致死量のLPSを投与した後における生存および組織傷害を改善し、血漿LPSのクリアランス速度を増大させ、また、LPSの全身的漏出および肺漏出を防止する。従って、SP−D処置は、敗血症を処置または防止するために有用であり得る。
【0041】
子ヒツジにおける実験的研究の結果
組換えヒト表面活性タンパク質−D(rhSP−D)を、実施例1に記載されるような全長のヒトSP−DをコードするcDNAによるCHO DHFR細胞のトランスフェクションによって合成した。SP−Dを、実施例1に記載されるようなイオン交換クロマトグラフィおよびアフィニティ精製を使用して培養培地から単離した。
【0042】
生物学的に活性な組換えヒトSP−Dおよび組換えラットSP−Dがインビトロで以前に作製されている(Erpenbeck他(2005)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、288:L692〜698;Clark他(2002)、J Immunol、169:2892〜2899;Clark他(2002)、Immunobiology、205:619〜631;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。全長の組換えSP−Dを本研究では利用した。2mg/kgのrhSP−Dの用量を早産の子ヒツジに与えた。130dのGAの子ヒツジ(出産予定日、150日)は表面活性物質欠損であり(Docimo他(1991)、Anat Rec、229:495〜498;Ikegami他(1981)、Am J Obstet Gynecol、141:227〜229;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)、生存するための表面活性物質処置および機械的換気を必要とする。表面活性物質プールサイズが時間とともに変化し、新生児動物において最大であり(Ikegami他(1993)、Semin Perinatol、17:233〜240;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)、時間の進行とともに低下して成体レベルになる(Ikegami他(2000)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、279:L468〜L476;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。処置のための表面活性物質の臨床的用量は正常な新生児における表面活性物質プールサイズに類似する(Ikegami他(1980)、Pediatr Res、14:1082〜1085;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。満期新生児の肺におけるSP−Dの正確な量は不明である。出産間近(175dのGA)のヒヒ(出産予定日−185dのGA)におけるSP−Dは気管支肺胞洗浄液(BALF)において0.02mg/肺であり、肺組織において0.2mg/肺であった(Awasthi他(1999)、Am J Respir Crit Care Med、160:942〜949;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。出産間近のヒヒは体重が1kg未満であるので、本研究で使用されたrhSP−Dの用量(2mg/kg)は、満期新生児の子ヒツジについてのSP−Dプールサイズよりも少なくとも10倍高いことが推定された。
【0043】
処置用の動物を調製するために、予定日前の子ヒツジを、実施例2に記載されるように130dの在胎齢で帝王切開によって分娩させた。気管内チューブを気管内に結び、過剰な胎児肺液を除いた。肺におけるリポ多糖(LPS)の均一な分布を容易にするために、実施例3に記載されるように、0.1mg/kgの大腸菌由来LPSを1ml(25mg)のSurvantaと混合し、最初の呼吸の前に子ヒツジに投与し、その後、10mlの空気を投与した。
【0044】
その後、子ヒツジを、実施例4に記載されるように、Survanta単独(コントロール群)、または、SurvantaおよびrhSP−D(処置群)のいずれかにより処置した。動物を、実施例4に記載されるように、注意深くモニターしながら5時間換気した。処置後5時間で、それぞれの動物を、実施例4に記載されるように、静脈内投与による25mg/kgのペントバルビタールで深く麻酔し、100%酸素でしばらく換気した。
【0045】
子ヒツジの組織を分析する方法が実施例5〜実施例12に記載される。実施例5は、子ヒツジの組織を処理およびサンプル分析のために調製する方法を詳しく記載する。実施例6は、使用されたデータ分析方法を詳しく記載する。実施例7は、肺組織を処理するために使用された方法を記載する。
【0046】
rhSP−Dの投与は、新生児の子ヒツジを気管内エンドトキシンの全身的影響から保護することが見出された。5匹の子ヒツジをそれぞれの群において調べた。体重(コントロール:3.2±0.3kg、rhSP−D:3.0±0.2kg)、臍血pH(コントロール:7.33±0.02、rhSP−D:7.31±0.04)および性別(両方の群において3匹のメスおよび2匹のオス)を処置群およびコントロール群の間で等しく分布させた。コントロール群において、5匹中4匹の子ヒツジが、5時間の研究期間が終了する前に死亡した。対照的に、rhSP−Dにより処置されたすべての子ヒツジが生存した(図1)。動物が死亡したとき、死亡直前に得られたデータを群間の比較のために使用した。コントロール群におけるほとんどの死亡が4時間〜5時間の間で生じた。
【0047】
気管内投与後、エンドトキシンが、リムルス細胞分解産物アッセイによって評価されたとき、両方の動物群で、30分が経過したとき、血漿において検出された(図2A)。血漿中のエンドトキシンレベルがコントロールの子ヒツジでは増大し続けたが、rhSP−Dにより処置された子ヒツジでは、実験の継続期間中、増大しなかった。死亡前の収縮期血圧は、3時間が経過したとき、これらの群の間において類似しており、その後、コントロールでは低下し、しかし、rhSP−D処置の動物では低下しなかった(図2B)。
【0048】
LPSの顕著な全身的影響が、低下した血液pH、血中塩基過剰(BE)(図3)、および、増大したpCO2(図4A)によって示されるように、コントロール群において、4時間が経過した後で認められた。対照的に、血液pH、BEおよびpCO2が、rhSP−D処置の動物では5時間の実験の期間中を通して安定したままであった。ヘマトクリット、カリウム、カルシウムおよびグルコースのレベルは両方の群について類似していた。PO2は、この在胎齢では比較的不安定であり、動脈管開存症に関連する可能性があるが、これらの群の間には違いがなかった(データは示されず)。
【0049】
肺胞細胞をBALF液から単離する方法が実施例8に記載される。遠心分離後の肺ホモジネート(BALF)におけるrhSP−Dのレベルおよび血清中のrhSP−Dのレベルを測定する方法が実施例9に記載される。使用された組織学方法が実施例10に記載される。エンドトキシンおよびサイトカインのレベルを実施例11に記載されるように測定した。RNA分析を実施例12に記載されるように行った。
【0050】
前炎症性サイトカインのmRNA(IL−1β、IL−6およびIL−8)のレベルが、rhSP−D処置の動物と比較されたとき、コントロール動物の脾臓および肝臓において増大した。このことは、LPSがrhSP−Dの不在下では肺から全身循環に漏出することを示している(図5Aおよび図5B)。IL−10およびTNFαのmRNAの脾臓および肝臓でのレベルは両方の動物群において低かった(データは示されず)。血漿中のIL−8が気管内LPSの後においてコントロール群では著しく増大し、rhSP−D処置のヒツジでは著しくより低くなっていた(図5D)。血漿中のIL−1βは両方のヒツジ群においてアッセイの検出可能レベルよりも低かった(0.8pg/ml未満)(データは示されず)。
【0051】
下記の表1は、BALFにおけるWBC、炎症性細胞および総タンパク質を示す。BALFにおける好中球の数は両方の群について類似していたが、LPSを受けなかったコントロール動物について以前に示されたよりも10倍大きかった(Kramer,B.W.他(2002)、Am JRespir Crit Care Med、165:463〜469:これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。BALFにおける過酸化水素および総タンパク質は2つの群の間において異なっていなかった。アポトーシス細胞の割合および壊死細胞の割合もまた、両方の群において類似していた(表1)。rhSP−Dの抗炎症性効果と一致して、前炎症性サイトカインのIL−1βのmRNAが、rhSP−Dにより処置された動物の肺では著しく低下した(図5C)。rhSP−Dは、肺ホモジネートの上清におけるIL−1βのレベルを、コントロールにおける21.6±3.6ng/mlから、rhSP−Dによる処置の後での12.6±1.4ng/mlに低下させた(p<0.05)。同様に、rhSP−DはIL−6を7.7±0.8ng/mlから2.3±1.2ng/mlに低下させた(p<0.05)。IL−8は、コントロール群またはrhSP−D処置群のいずれにおいてもELISAによって検出することができなかった。肺の炎症がrhSP−D処置群およびコントロール群の両方において認められた(図5A、B)。図6は、ヘマトキシリンおよびエオシンでの染色による肺の形態学(6Aおよび6B)、ならびに、IL−8の免疫組織化学(6Cおよび6D)およびIL−1βの免疫組織化学(6Eおよび6F)を示すいくつかの組織学的画像を例示する。IL−8(図6Cおよび6D)およびIL−1β(図6Eおよび6F)についての増大した免疫染色が両方の動物群において観測され、しかし、両方のサイトカインについての染色の増大した程度および強度がコントロール群において観測された。このことは、気管内rhSP−D処置が炎症性細胞におけるサイトカインのIL−8およびIL−1βのレベルを低下させたことを示している。
【表1】
【0052】
rhSP−Dの投与はエンドトキシン暴露後の肺力学を変化させなかった。目標の一回換気量を維持するために使用された換気圧は両方の群において類似していた(図4B)。同様に、動的肺コンプライアンスおよび圧力−体積曲線は、図7に示されるように、rhSP−D処置によって変化しなかった。
【0053】
BALF、肺ホモジネートおよび血漿におけるrhSP−Dのレベルを、ELISAによって両方の群において気管内投与後5時間で測定し(下記の表2)、また、BALFにおける免疫ブロットによって測定した(図8)。rhSP−Dの存在が、コントロール群からではなく、rhSP−D群から得られたBALF、肺ホモジネートおよび血漿において明らかにされた。血漿におけるrhSP−Dの存在により、肺からのその漏出が明らかにされる。
【表2】
【0054】
本明細書中に示されるように、気管内rhSP−Dの投与は、早産新生児の子ヒツジを肺内大腸菌LPSの全身的影響から保護することができた。肺の炎症がrhSP−Dによって阻止された一方で、LPSの全身的影響が、血漿中のLPSレベルおよび全身的炎症の証拠によって示されるように、rhSP−Dによって改善された。以前の研究では、気管内LPSによって引き起こされた全身的炎症が、130dのGAで認められたが、141dのGAでは認められなかったので、胎齢依存的であったことが明らかにされた(Kramer,B.W.他(2002)、Am J Respir Crit Care Med、165:463〜469)。
【0055】
マウス研究:肺および全身性の炎症および感染に対するSP−Dの影響
SP−Dが、全身的なLPS誘導の炎症を制限するかを明らかにするために、C57BL/6野生型マウスのモデルを利用した。非致死量の大腸菌0111:B4のLPSを、化学量論量の精製された組換えヒトSP−Dとともに、または、組換えヒトSP−Dを伴うことなく、尾静脈注入によって投与した(それぞれの処置群についてn=5)。LPS(5μg/kg)を、コントロールの緩衝液、または、増大する濃度の組換えヒトSP−Dとともに投与し、サイトカイン応答を注入後2時間で血漿において測定した。SP−DはIL−6およびTNFαのレベルを濃度依存的な様式で著しく低下させ、150μg/kgのSP−DはIL−6レベルおよびTNFαレベルにおける40%および50%の最大減少をそれぞれもたらした(それぞれについてp<0.01)(図9)。
【0056】
LPSが注入前にSP−Dとプレインキュベーションされたので、この実験は、LPS誘導による全身的炎症に対するSP−Dの影響を評価するための最適な条件を表した。血液中に循環するLPSを突き止め、阻害するための全身的SP−Dの可能性を評価するために、SP−DをLPS注入前30分およびLPS注入後30分で尾静脈注入によって投与し、サイトカイン応答を2時間後に血漿において測定した(それぞれの処置群についてn=5)(図10)。SP−DがLPS注入前30分で投与されたとき(p<0.01)、または、LPS注入と一緒に投与されたとき(p<0.01)、全身的なIL−6レベルが著しく低下した。IL−6のレベルはまた、SP−DがLPS後30分で投与されたときにはより低くなっており、しかし、結果は統計学的有意には達しなかった(p=0.09)。まとめると、上記の結果は、循環しているSP−Dにより、全身的なLPS誘導による炎症が阻害され得ること、および、感染時における増大する全身的SP−Dレベルの生理学的目的が、全身的LPSを捕捉し、LPSにより誘導される炎症の損傷化作用を制限することであることを示している。
【0057】
インビトロ研究では、SP−Dが、直接的なLPS結合、CD14阻害およびTLR4結合をはじめとする、LPSのシグナル伝達経路におけるいくつかの段階に影響を及ぼし得ることが示される(Sano,H.他(2000)、J Biol Chem 275:22442〜22451;Senft,A.P.他(2005)、J Immunol、174:4953〜4959;Ohya,M.他(2006)、Biochemistry、45:8657〜8664;Gardai,S.J.他(2003)、Cell、115:13〜23)。SP−DはLPSのコアオリゴ多糖に対する大きい親和性を有しており、しかし、相対的親和性は、用いられた細菌LPSの株に依存して変化する。対照的に、CD14およびTLR4のSP−D結合が、SP−Dと、LPSとの相互作用とは無関係に生じる。従って、SP−Dが、LPS結合に依存または非依存である経路を介して、LPS誘導による全身的炎症を阻害するかを明らかにするために、低SP−D親和性および高SP−D親和性のLPS血清型により誘導される炎症に対するSP−Dの影響を比較した。ELISAに基づくSP−D LPS結合アッセイを使用して、数株の大腸菌株から得られたLPSについてのSP−Dの結合親和性を測定した。大きい結合親和性を有する1つの株(大腸菌0111:B4)、および、低い結合親和性を有する1つの株(大腸菌0127:B8)が特定された(図11A)。低結合性LPSまたは高結合性LPSのいずれかを尾静脈注入した後2時間での全身的IL−6レベルに対するSP−Dの影響を求めた(それぞれの群においてn=5)。高結合性LPSをSP−Dとプレインキュベーションしたとき、血漿中のIL−6レベルが著しく低下し、しかし、SP−Dは、SP−Dに対する低い親和性を有するLPS株により誘導される炎症を阻害しなかった(図11B)。従って、LPSにより誘導される炎症の阻害はSP−DのLPS結合親和性と直接に相関しており、全身的SP−Dが、LPSにより誘導される炎症を、主として直接的なLPS相互作用によって阻害し得ることを示している。加えて、SP−DのLPS結合と、LPS誘導の炎症のSP−D媒介による阻害との間での相関により、これらの研究で認められたLPSの阻害が、SP−D調製物に含まれる混入物の抗炎症的性質のためでないことが示される。
【0058】
Sftpd−/−マウスは、ベースラインのときおよび感染性攻撃の間における増大した肺の炎症によって特徴づけられる(Korfhagen,T.R.他(1998)、J Biol Chem、273:28438〜29443;Wert,S.E.他(2000)、Proc Natl Acad Sci USA、97:5972〜7;Clark,H.他(2002)、J Immunol、169:2892〜2899;LeVine他(2004)、Am J Respir Cell Mol Biol、31:193〜199;LeVine他(2001)、J Immunol、167:5868〜5873)。SP−Dが全身的なLPS誘導の炎症およびSftpd−/−マウスの顕著な前炎症性表現型を阻害するという結果を考慮すると、血漿中のサイトカインレベルが全身的LPS暴露の後でSftpd−/−マウスにおいて上昇すると考えられることが仮定された。従って、Sftpd−/−マウスおよび野生型マウス(同腹子コントロール)の両方を静脈内LPSにより処置し、血漿中のIL−6レベルを注入後2時間で測定した。Sftpd−/−マウスに特徴的である高まった肺の炎症性サイトカインとは際立って対照的に、LPSにより処置されたSftpd−/−マウスにおける血漿中のIL−6レベルは、野生型マウスよりもおよそ80%低かった(図12)。SP−Dは、ベンチレータ誘導の肺傷害を受けたヒツジにおいて肺LPSの全身的放出を制限する(Ikegami,M.他(2006)、Am J Respir Crit Care)ので、この驚くべき結果についての最も単純な説明は、Sftpd−/−マウスが、肺LPSの全身循環への持続した漏出にさらされ、その後、LPS寛容性を発達させるということである。しかしながら、この結果からはまた、SP−Dが全身的免疫系における重要かつ複雑な役割を果たすことが示され得る。
【0059】
LPSと結合し、LPSを肺から除くことに加えて、SP−Dは、ウイルス感染、細菌感染および真菌感染に対する生得的な免疫応答の重要な構成要素である(LeVine他(2004)、Am J Respir Cell Mol Biol、31:193〜199;LeVine他(2001)、J Immunol、167:5868〜5873)。インビトロ研究では、SP−Dが細菌およびウイルスと結合し、これらを凝集させること、また、この凝集が肺胞のマクロファージによる感染性生物の食作用および殺傷を容易にすることが明らかにされる(Hartshorn,K.他(1996)、Am J Physiol、271:L75362;Hartshorn,K.L.他(1998)、Am J Physiol、274:L958〜L969)。全身的SP−Dは全身的細菌と結合し、そのクリアランスを容易にすることができ、このことは最終的には、それほど大きくない炎症性組織損傷および改善された生存を引き起こすと考えられる。このことを調べるために、全身性多菌性敗血症/腹膜炎を誘導する、盲腸結紮および穿刺(CLP)の臨床的に関連したマウスモデルを利用した。処置様式(すなわち、SP−D対コントロール)について知らされていない職員による盲腸の結紮および21ゲージでの穿刺の後、マウスを、腹腔内注入によって与えられるコントロールの緩衝液または2mg/kgのSP−Dにより処置し(n=10、それぞれの群において6週齢〜8週齢のC57/BL6マウス)、血液を手技後6時間で集め、血漿中のIL−6レベルを測定した。SP−Dにより処置されたマウスは、コントロールマウスよりもおよそ40%低い平均血漿IL−6レベルを有した(図13)。この実験における変動性のために、これらの結果は統計学的に有意ではなく(p=0.06)、しかし、その傾向から、SP−Dは生細菌攻撃の間における炎症を軽減し得ることが示される。
【0060】
盲腸穿刺により誘導される敗血症の重篤さのために、マウスの一部が採取時点(6時間または24時間のいずれか)の前に死亡した。CLPに供されたマウスの生存に対するSP−Dの影響についての予備的研究として、コントロールマウス対SP−D処置マウスについてのCLP後の死亡率を求めた。この実験の目的のために、死亡を採取時点前の死として定義した(図14)。死亡率は、コントロールマウスの方がSP−D処置マウスの場合よりも約3倍高かった。これらのデータが、様々な盲腸穿刺サイズ、採取時点、ならびに、SP−D用量および投与経路を使用した実験に由来するので、これらの結果の生理学的および統計学的な重要性は限られている。しかしながら、これらの結果から、全身的SP−Dは、生細菌攻撃の間において、マウスの炎症を軽減することができ、また、マウスの生存を改善することができることが示される。
【0061】
マウス研究:SP−Dの発現およびクリアランス
ベースラインにおいて血液中に低いレベルで存在するが、多数の研究では、ヒトの血漿中のSP−Dレベルが様々な前炎症性状態(例えば、肺または全身性の感染など)において数倍増大することが明らかにされている(Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、290:L1010〜L1017;Fujita,M.他(2005)、Cytokine、31:25〜33)。血漿中のSP−Dレベルがマウスにおいて敗血症時に増大するかを明らかにするために、また、血漿中のSP−Dの起源を明らかにするためのモデルシステムを確立するために、マウスCLPモデルを利用した。敗血症を、盲腸の結紮および30ゲージのニードルによる穿刺によって誘導し、血漿中のSP−Dレベルを手技後48時間でELISAによって測定した(n=5、6週齢〜8週齢)(図15)。血漿中のSP−Dレベルが、CLP後、数倍増大して、およそ40ng/mlの平均値になった。このことは、マウスおよびヒトにおけるSP−Dの全身的レベルが類似した様式で応答することを示している。加えて、これらの結果から、CLPモデルが、全身的SP−Dの産生を評価するための機能的なインビボシステムを提供し得ることが明らかにされる。
【0062】
SP−Dはまた、血管内皮、胃、小腸、腎臓および多数の腺組織において免疫染色によって検出される(Stahlman,M.T.他(2002)、J Histochem Cytochem、50:651〜660;Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Heart Circ Physiol、290:H2286〜H2294)。SP−Dがいくつかの組織タイプで存在し、保護的役割をこれらの存在場所のそれぞれにおいて果たし得るが、血漿において循環するSP−Dは、全身的な宿主防御に寄与する集団である。血管内皮がSP−Dの循環プールに近いこと、および、宿主防御における血管内皮の役割を考えると、血管内皮が血漿SP−Dのプールサイズに寄与し得る。Sftpd遺伝子発現に関する以前の研究は呼吸器上皮に限られている。従って、Sftpdプロモータが血管内皮細胞において活性化されるかを明らかにするために、マウス胎児肺間葉細胞株(MFLM−91U)を利用した。この細胞は、不死化されたマウス胎児肺間葉(日数、E19)に由来し、血管内皮系譜の特徴(すなわち、再構成された基底膜において培養されたとき、血管内皮増殖因子受容体2の発現、および、管腔を伴う毛細管様構造の形成)を示す(Akeson,A.L.他(2000)、Dev Dyn、217:11〜23;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。MFLM細胞を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子につながれたSftpdプロモータを含有するプラスミドにより一過性でトランスフェクションし、Sftpdプロモータ活性を測定した(図16)。ルシフェラーゼ活性が、ルシフェラーゼ遺伝子だけによりトランスフェクションされた細胞と比較されたとき、ルシフェラーゼレポーター遺伝子につながれたSftpdプロモータによりトランスフェクションされたMFLM−91U細胞ではおよそ50倍増大した。このことは、Sftpdプロモータが血管内皮細胞において活性化されることを示している。加えて、これらの結果は、このシステムが、血漿中のSP−Dレベルを全身的な敗血症のときに増大させる調節因子だけでなく、SP−Dの血漿中レベルをベースラインにおいて肺のレベルよりも数倍低く保つ調節因子を明らかにするために使用されることを裏付ける。
【0063】
肺において、SP−Dは肺胞のII型細胞によって産生され、II型細胞または肺胞のマクロファージによって分解または再循環され、これにより、Sftpd−/−マウスでは7時間の半減期がもたらされ、野生型マウスでは13時間の半減期がもたらされる(Crouch,E.他(1992)、Am J Physiol、263:L60〜L66;Voorhout,W.F.他(1992)、J Histochem Cytochem、40:1589〜97;Crouch,E.他(1991)、Am J Respir Cell Mol Biol、5:13〜18;Dong,Q.およびJ.R.Wright(1998)、J.R.Am J Physiol、274:L97〜105;Herbein,J.F.他(2000)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、278:L830〜L839;Kuan,S.F.他(1994)、Am J Respir Cell Mol Biol、10:430〜436;Ikegami,M.他(2000)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、279:L468〜L476;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。血漿におけるSP−Dの半減期を求めるために、SP−Dを尾静脈注入によって投与し、血漿中のSP−DレベルをELISAによって経時的に測定した(図17)。SP−Dが初回通過代謝によって血漿から除かれず、しかし、むしろ、野生型マウスではおよそ6時間の半減期で血漿中に保持された。興味深いことに、血漿SP−Dの半減期がSftpd−/−マウスではおよそ2時間に低下したが、ネック部およびCRDのみの三量体からなるSP−Dの短縮型フラグメントの半減期は62時間の血漿半減期を有する(Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Heart Circ Physiol、290:H2286〜H2294)。このことは、血漿SP−Dの取り込みについての特異的な細胞機構が存在することを示しており、また、この機構がSP−DのN末端ドメインおよび/またはコラーゲンドメインに依存することを示している。
【0064】
血漿SP−Dの取り込みの主要な場所を明らかにするために、SP−DをSftpd−/−マウスに尾静脈注入によって投与し、組織ホモジネートにおけるSP−Dレベルを注入後8時間でSP−DのELISAによって求めた(図18)。脾臓におけるSP−Dのレベルが組織1グラムあたり約320ngのSP−Dに達した。これは、それ以外の組織で観測されたSP−Dレベル(および脾臓におけるバックグラウンドシグナル)よりも顕著に高かった。従って、肺のSP−Dは肺胞のマクロファージおよびII型細胞によって分解または再循環されるが、結果は、全身的SP−Dが脾臓によって循環から除かれることを示している。
【0065】
マウス研究:宿主防御細胞を調節することにおけるSP−Dの構造的ドメインの役割
相対的に大きいSP−Dのコラーゲンドメイン(他のコレクチンと比較したとき)のために、SP−Dのコラーゲンドメインは、肺胞マクロファージのSP−D媒介による調節には不可欠であり得る。このことを調べるために、正常なCRD、ネックドメインおよびN末端ドメインを伴うが、コラーゲンドメインを有しないSP−D変異型タンパク質(rSftpdCDM)を作製した。インビトロアッセイでは、精製されたrSfptdCDMが多量体を形成し、野生型タンパク質と同等またはそれよりも良好な様式で、炭水化物、細菌およびウイルスと結合したことが明らかにされた。rSftpdCDMが肺胞のマクロファージ活性を効果的に調節するかを明らかにするために、変異型の導入遺伝子(rSftpdCDMTg+)を野生型マウスおよびSftpd−/−マウスにおいて発現させた。変異型タンパク質は野生型マウスにおいて肺の形態学またはマクロファージ活性を乱さなかった一方で、変異型タンパク質は、Sftpd−/−マウスに特徴的であるベースラインでの異常なマクロファージ活性を救うことができなかった。増大したレベルのメタロプロテイナーゼを発現する肥大した泡沫状マクロファージが、Sftpd−/−マウス、および、rSftpdCDMタンパク質を発現するSftpd−/−マウス(rSftpdCDMTg+/Sftpd−/−)において容易に認められた(図19)。
【0066】
rSftpdCDMが肺胞のマクロファージ活性を感染性攻撃時において調節するかを明らかにするために、インフルエンザAウイルス(IAV)への気管内暴露に対する、野生型マウス、Sftpd−/−マウスおよびrSftpdCDMTg+/Sftpd−/−マウスの応答を評価した。Sftpd−/−マウスとは対照的に、検出可能なIAVが野生型またはrSftpdCDMTg+/Sftpd−/−の肺ホモジネートからは回収されなかった。加えて、IAV攻撃されたSftpd−/−マウスにおいて観測された増大したIL−6レベル、TNFαレベルおよびIFN−γレベルが、rSftpdCDMTg+/Sftpd−/−マウスでは野生型のレベルに回復した(図20)。まとめると、これらの結果から、rSftpdCDMはベースラインでの肺胞のマクロファージ活性を効果的に調節しないが、rSftpdCDMは正常な肺胞のマクロファージ応答をウイルス攻撃時に容易にし得ることが示される。そのうえ、rSftpdCDMの変異型タンパク質は、LPSにより誘導される炎症においてSP−Dの全身的な抗炎症的性質を誘発するSP−Dの構造的ドメインが、肺における感染性攻撃の間に要求される構造的ドメインと一致するかを明らかにするためのモデルシステムを提供する。
【0067】
大腸菌LPSに対するSP−Dの結合がインビボおよびインビトロの両方で明らかにされている(Kuan他(1992)、J Clin Invest、90:97〜106;Lim他(1994)、Biochem Biophys Res Commun、202:1674〜1680;van Rozendaal他(1999)、Biochim Biophys Acta、1454:261〜269;Crouch他(1998)、Am J Respir Cell Mol Biol、19:177〜201;Pikaar他(1995)、J Infect Dis、172:481〜489;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。早産新生児は、SP−Dを含めて、表面活性物質が不十分である(Miyamura他(1994)、Biochim Biophys Acta、1210:303〜307;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。呼吸窮迫症候群の新生児を処置するための市販されている表面活性物質はSP−BおよびSP−Cを含有するが、SP−AまたはSP−Dを含有しない。早産新生児の肺で見られる増大した炎症性応答は、低いレベルのSP−AおよびSP−Dおよび相対的に少ない数のマクロファージを含めて、宿主防御における欠損から生じ得る(Awasthi他(1999)、Am J Respir Crit Care Med、160:942〜949;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。絨毛羊膜炎および肺の出生後感染に関連する胎児の炎症には、慢性的な肺傷害および気管支肺異形成症の発症が伴う(Li他(2002)、Microbes Infect、4:723〜732;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0068】
SP−Dが、気管内投与されたLPSの後における全身的影響を改善し、死を防止したという知見は、SP−DがLPSに結合し、肺区画から全身区画へのLPS移行を解毒または阻害するという考えを裏付けている。早産のヒト新生児における知見と類似して、敗血症ショックもまた、成人において比較的頻発する死因の1つである(Manocha他(2002)、Expert Opin Investig Drugs、11:1795〜1812;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。早産児の肺でのように、増大した透過性が成人の肺の傷害および換気の後で生じる(Sartori他(2002)、Eur Respir J、20:1299〜1313;Lecuona他(1999)、Chest、116:29S〜30S;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。従って、SP−Dは、感染を有する肺から生じる全身的な炎症性応答を防止するための可能性のある治療的方策を表す。
【0069】
本明細書中に示されるように、rhSP−Dは、早産新生児の子ヒツジにおいて病原体誘導による全身的エンドトキシンショックを防止するために安全に気管内投与することができる。そのような治療は、新生児を肺感染およびその続発症から防ぐことにおいて有用であり得る。
【0070】
加えて、本明細書中に記載される研究では、下記のことが明らかにされる:1)SP−DがLPSを全身循環から捕捉し、LPSにより誘導される全身的炎症を阻害すること;2)SP−Dが、LPSにより誘導される炎症を直接的なSP−D/LPS相互作用によって阻害すること;3)全身的なLPS誘導の炎症がSftpd−/−マウスでは軽減されること;4)SP−Dが生菌の全身的細菌攻撃の間にマウスにおける炎症を軽減し、生存を改善すること;5)血漿中のSP−Dレベルがマウスにおいて敗血症時に増大すること;6)血管内皮細胞がSftpd遺伝子を発現すること;7)全身的SP−Dが脾臓によって除かれること;および8)SP−Dの特異な構造的ドメインにより、肺胞のマクロファージが調節されること。さらには、本明細書中に示されるように、静脈内LPS注入、CLPおよび血管内皮Sftpd発現の実験的モデルが確立され、研究室において機能的である。
【0071】
従って、SP−Dポリペプチドまたはその生物学的に活性なフラグメント、あるいは、それをコードする核酸を、肺感染症および/または敗血症を防止または処置するために個体に投与することができる。いくつかの実施形態において、SP−D処置は、例えば、SP−D処置により、生存、または、致死量のLPSを哺乳動物に投与または導入することに由来する組織傷害が改善されるように、LPSにより誘導される炎症を阻害することができる。他の実施形態において、SP−D処置は、例えば、LPSにより誘導される炎症を、血漿からのLPSのクリアランスを高めることによって阻害することができる。さらに他の実施形態において、SP−D処置は、例えば、肺に投与されたとき、肺傷害がない場合における呼吸樹から全身循環へのLPSの漏出を防止することができる。SP−D処置の実施形態はまた、例えば、多菌性敗血症または細菌攻撃を防止または処置するために全身的様式で、SP−Dポリペプチドまたはその生物学的に活性なフラグメント、あるいは、それをコードする核酸を投与することによって敗血症を処置するために使用することができる。さらに他の実施形態において、SP−D処置は、例えば、急性呼吸窮迫症候群を処置するために、肺に、または、全身的様式で投与することができる。
【0072】
SP−D処置は、単独で、または、他の処置(例えば、抗生物質投与など)との併用で使用することができる。さらに、いくつかの実施形態において、SP−Dまたはそのフラグメントをコードする核酸を個体に投与することができる。SP−Dをコードする核酸は、例えば、アデノウイルスベクターに含有させることができる。そのようなアデノウイルスベクターは、例えば、PCT出願番号PCT/US02/35121(これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)に記載される方法に従って構築することができる。
【0073】
SP−Dタンパク質は、例えば、組換えSP−Dであり得る。いくつかの実施形態において、組換えSP−Dは組換えヒトSP−D(rhSP−D)である。例えば、いくつかの実施形態において、SP−Dポリペプチドはアクセション番号NP_003010の成熟ポリペプチド配列(配列番号2)である。さらなる実施形態において、SP−Dタンパク質は、例えば、アクセション番号NP_003010のSP−D前駆体配列(配列番号3)であり得る。いくつかの実施形態において、SP−Dタンパク質は、例えば、SP−Dタンパク質またはそのフラグメントを大量に調製するために、任意の好適な生物にトランスフェクションすることができる、SP−Dまたはそのフラグメントをコードする核酸から調製することができる。タンパク質は、その後、この技術分野で知られている方法を使用して単離および精製することができる。用語「精製された」は絶対的な純度を要求せず、むしろ、相対的な定義として意図される。単離されたタンパク質は通常、例えば、クーマシー染色によって電気泳動的に均一に精製されている。出発材料または天然物質を、少なくとも1桁、好ましくは2桁または3桁、より好ましくは4桁または5桁精製することが、特に意図される。
【0074】
用語「ポリペプチド」は、例えば、ポリマーの長さに関係なく、アミノ酸のポリマーを示すことができる。従って、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質が、ポリペプチドの定義に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾を指定または排除しない。例えば、グリコシル基、アセチル基、リン酸基および脂質基などの共有結合を含むポリペプチドが、ポリペプチドの用語によって特に包含される。この定義にはまた、アミノ酸の1つまたは複数のアナログ(これらには、例えば、天然に存在しないアミノ酸、非関連の生物学的システムにおいて天然に存在するだけであるアミノ酸、哺乳動物システムに由来する修飾されたアミノ酸などが含まれる)を含有するポリペプチド、置換れた連結を有するポリペプチド、ならびに、この技術分野で知られている他の修飾体(天然に存在するもの、および、天然に存在しないものの両方)が含まれる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態において、用語「精製された」は、核酸、脂質、炭水化物および他のタンパク質(これらに限定されない)をはじめとする他の化合物から分離されている本発明のSP−Dポリペプチドを表す。ポリペプチドは、サンプルの少なくとも50%(好ましくは60%〜75%)が単一のポリペプチド配列を示すときに実質的に純粋である。実質的に純粋なポリペプチドは、典型的には、タンパク質サンプルの約50%(好ましくは60%〜90%、重量/重量)を構成し、より通常的には約95%を構成し、好ましくは、約99%を越える純度である。ポリペプチドの純度または均一性は、この技術分野で広く知られているいくつかの方法によって示される(例えば、サンプルのアガロースゲル電気泳動またはポリアクリルアミドゲル電気泳動、それに続く、ゲルを染色したときに1つだけのポリペプチドバンドを視覚化することなど)。特定の目的のために、より大きい分解能が、この技術分野で広く知られているHPLCまたは他の手段を使用することによって提供され得る。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態において、SP−D配列は核酸前駆体配列のアクセション番号NM_003019(配列番号1)に由来し得る。
【0077】
用語「実質的に相同的な」は、SP−Dをコードするヌクレオチド配列に関して本明細書中で使用されるときには、基準ヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列を示し、この場合、その対応する配列は、基準ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドと実質的に同じ構造を有するポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、実質的に類似するヌクレオチド配列は、基準ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドをコードする。
【0078】
本発明に関連して、「実質的に相同的な」は、基準タンパク質の配列の領域に対して少なくとも50%の同一性、あるいは、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%または少なくとも99%の配列同一性を有するタンパク質をコードする基準配列と比較して、少なくとも50%の配列同一性、あるいは、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を示すことができる。同様に、「実質的に相同的な」はまた、好ましくは、基準タンパク質をコードするヌクレオチド配列の領域に対して少なくとも50%の同一性、より好ましくは少なくとも80%の同一性、一層より好ましくは95%の同一性、さらに一層より好ましくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を示す。用語「実質的に相同的な」は、具体的には、配列が、特定の細胞における発現を最適化するために修飾されているヌクレオチド配列を含むことが意図される。
【0079】
SP−Dヌクレオチド配列に対して「実質的に相同的な」ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドは、好ましくは、基準ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドにハイブリダイゼーションする。基準ヌクレオチド配列は、例えば、核酸前駆体配列のアクセション番号NM_003019(配列番号1)またはそのフラグメントが可能である。用語「ハイブリダイゼーションする」は、核酸配列を溶液中または固体支持体(例えば、セルロースまたはニトロセルロースなど)表面のDNA分子またはRNA分子と相互作用させる方法を示す。核酸配列がDNA分子またはRNA分子と大きい親和性で結合するならば、その核酸配列は、そのようなDNA分子またはRNA分子に「ハイブリダイゼーションする」と言われる。
【0080】
SP−Dタンパク質またはそのフラグメント、あるいは、それらをコードする核酸を含む医薬組成物を、この技術分野で知られている方法に従って調製することができる。本発明のいくつかの実施形態において、SP−Dタンパク質またはSP−D核酸あるいはそれらのフラグメントまたはアナログまたは誘導体を、哺乳動物の体重1kgあたり約0.01mgから、前記哺乳動物の体重1kgあたり約100mgまでの間の量で、エアロゾル形態で対象に導入することができる。いくつかの実施形態において、投薬量は、例えば、約0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kgから、約25mg/kg、50mg/kg、75mg/kgまたは100mg/kgまでであり得る。さらなる実施形態において、投薬量は、0.75mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kgまたは2.0mg/kgから、約5.0mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kgまたは20mg/kgまでの範囲であり得る。具体的な実施形態において、投薬量は1日あたりの投薬量である。当業者は、この投薬量に対応するエアロゾルの体積または重量を対象物のエアロゾル配合物におけるSP−Dタンパク質またはSP−D核酸の濃度に基づいて容易に決定することができる。あるいは、当業者によって容易に理解されるように、適切な投薬量のSP−Dタンパク質またはSP−D核酸を投与される体積に有するエアロゾル配合物を調製することができる。本発明のいくつかの実施形態において、SP−Dタンパク質またはSP−D核酸を直接に肺に投与することは、より少ないSP−Dタンパク質またはSP−D核酸の使用を可能にし、従って、コストおよび望まれない副作用の両方を制限する。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態において、SP−Dタンパク質またはSP−D核酸あるいはそれらのフラグメントまたはアナログまたは誘導体を含む医薬調製物を、哺乳動物の体重1kgあたり約0.01mgから、前記哺乳動物の体重1kgあたり約100mgまでの間の量で、全身的様式で対象に導入することができる。いくつかの実施形態において、投薬量は、例えば、約0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kgから、約25mg/kg、50mg/kg、75mg/kgまたは100mg/kgまでであり得る。さらなる実施形態において、投薬量は、0.75mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kgまたは2.0mg/kgから、約5.0mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kgまたは20mg/kgまでの範囲であり得る。具体的な実施形態において、投薬量は1日あたりの投薬量である。当業者は、この投薬量に対応する医薬調製物の体積または重量を対象物の前記医薬調製物におけるSP−Dタンパク質またはSP−D核酸の濃度に基づいて容易に決定することができる。あるいは、当業者によって容易に理解されるように、適切な投薬量のSP−Dタンパク質またはSP−D核酸を投与される体積に有する医薬配合物を調製することができる。
【0082】
本発明のSP−Dは、分散化剤または分散剤と組み合わせて、乾燥粉末としてのエアロゾル配合物で、あるいは、希釈剤を伴う溶液または懸濁物で投与することができる。本発明のいくつかの実施形態において、SP−Dタンパク質またはSP−D核酸を含む配合物を、医薬組成物および治療用配合物を気道に送達するために設計される広範囲の様々なデバイスにおける使用のために調製することができる。いくつかの実施形態において、好ましい投与経路はエアロゾル形態または吸入形態においてである。本発明のSP−Dはまた、例えば、希釈剤を伴う溶液または懸濁物で全身投与することができる。本発明のいくつかの実施形態において、SP−Dタンパク質またはSP−D核酸を含む配合物を、医薬組成物および治療用配合物を全身送達するために設計される広範囲の様々なデバイスにおける使用のために調製することができる。いくつかの実施形態において、好ましい投与経路は、全身送達によるものである。配合物は、疾患適応に依存して、単回服用または多回服用で投与することができる。使用される予防用配合物または治療用配合物の正確な量は、疾患の段階および重篤度、対象の身体状態および多数の他の要因に依存することが当業者によって理解される。
【0083】
いくつかの実施形態において、SP−D配合物はまた、敗血症または肺感染症を処置するための他の薬剤(例えば、経口投与または静脈内投与される抗生物質など)を含有することができる。
【実施例】
【0084】
下記の実施例は、特許請求される発明を限定するためではなく、特許請求される発明を例示するために提供される。
【0085】
実施例1
組換えSP−Dの調製および精製
rhSP−Dを、全長のヒトSP−DをコードするcDNAによるCHO DHFR細胞のトランスフェクションによって合成した。トランスフェクションされた細胞を、メトトレキサートの濃度を増大させることにより選択した。トランスフェクションされたプールを限界希釈によってクローン化し、高発現クローンを、特にこの目的のために設計されたELISAを使用して特定した。SP−Dクローンを、血清を含有する培地でローラーボトルにおいて成長させ、その後、バイオ生産のためのJRH EX−CELL302培地に切り換えた。血清非含有培地の選択は、高い産生レベルのrhSP−Dを達成することにおいて重要であることが見出された。大規模な緩衝液交換方法に伴う大きい剪断速度を避けるために、タンパク質を、アニオンイオン交換クロマトグラフィを使用して馴化培地から捕捉して、サンプルを濃縮し、グルコースを除いた。具体的には、培地を希釈し、pHを7.4に調節し、その後、QセラミックhyperD F樹脂(Ciphergen、Fremont、CA)に負荷した。徹底的に洗浄して不純物を除いた後、rhSP−Dを、25mM Tris/1.2M NaCl(pH7.4)を使用して溶出した。溶出物を希釈し、カルシウムを5mMの最終濃度に加えた。その後、rhSP−Dを、以前に記載された方法を使用してマルトースアガロースでアフィニティ精製した(Hartshorn他(1996)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、271:L753〜L762;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。最終調製物におけるエンドトキシンレベルを最小限に抑えるために、アニオン交換樹脂およびすべてのクロマトグラフィ設備を0.2NのNaOHにさらすことによって消毒し、マルトースアガロースを酸−エタノール混合物により処理した。精製されたrhSP−Dは、サイズ排除クロマトグラフィにおいて1x106ダルトンを越える多量体として移動した。SDS−PAGEゲルにおいて、このタンパク質は、非還元条件下では三量体として移動し、還元されたときには約48kDaの単量体形態に完全に転換された。組換えhSP−Dはインビトロにおいてカルシウム依存的様式で大腸菌と結合し、凝集させた(データは示されず)。これらの実験で使用されたrhSP−Dは、20mM Tris/200mM NaCl/1mM EDTA(pH7.4)において0.5mg/mlの濃度であった。rhSP−D調製物におけるエンドトキシンレベルは0.1EU/ml〜0.5EU/mlの範囲であった(リムルス細胞分解産物アッセイ、Charles River Laboratories、Wilmington、MA)。予備的研究では、正常な成体マウスおよび早産子ヒツジへの処置用量のrhSP−Dの滴注は肺の炎症を誘導しなかった(データは示されず)。従って、rhSP−Dにおけるエンドトキシンレベルは、炎症を誘導するレベルよりも低かったか、または、存在するエンドトキシンがrhSP−Dに結合し、応答を誘発することができなかったかのいずれかであった。
【0086】
実施例2
内因性SP−Dの精製
内因性SP−Dを、以前に記載されたように気管支肺胞洗浄液から精製する(Kingma,P.S.他(2006)、J Biol Chem 281:24496〜24505;Strong,P.他(1998)、J Immunol Methods、220:139〜149;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。洗浄液から、遠心分離によって脂質が除かれる。脂質を含まない上清を、20mM Tris−HCl(pH7.4)/5mM CaCl2において20mlのマルトシル−セファロースカラムに加える。カラムを、20mM Tris−HCl(pH7.4)、5mM CaCl2および1M NaClの溶液により洗浄し、その後、SP−Dを塩化マンガンにより選択的に溶出する。プールされた分画物を20mM Tris−HCl(pH7.4)および30mM CaCl2の溶液で10倍希釈し、1mlのベッド体積のマルトシル−セファロースカラムに加える。カラムから、LPSを、20mM Tris−HCl(pH7.4)、20mM n−オクチル−d−グルコピラノシド、200mM NaCl、2mM CaCl2および100ug/ml ポリミキシンの溶液により除き、カラムを、20mM Tris−HCl(pH7.4)、0.5mM CaCl2および200mM NaClの溶液により洗浄する。SP−Dを、20mM Tris−HCl(pH7.4)、200mM NaClおよび1mM EDTAの溶液により溶出する。記載された条件のもとで、LPS濃度は典型的には0.1エンドトキシンユニット/μgタンパク質以下である。
【0087】
実施例3
処置用の早産子ヒツジの調製
すべての動物を、以前に記載されたように、Dorsetnの雄ヒツジと交配されたSuffolkの雌ヒツジ(出産予定日、150dのGA)から130日の在胎齢で帝王切開によって分娩させた(Kramer他(2002)、Am J Respir Crit Care Med、165:463〜469;Kramer他(2001)、Am J Respir Crit Care Med、163:158〜165;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。胎児の頭部および頸部が露出した後、気管内チューブを気管内に結び付けた。シリンジによって容易に吸引され得る胎児の肺液を取り戻し、子ヒツジを分娩させ、体重を測定した。
【0088】
実施例4
換気された早産子ヒツジへのLPS暴露
最初の呼吸の前に、子ヒツジに、1ml(25mg)のSurvanta(Ross Products Division、Abbott Laboratories、Columbus、OH)と混合された0.1mg/kgの大腸菌LPS(大腸菌055:B5、Sigma、St.Louis、MO)を与え、その後、10mlの空気をシリンジによって気道内に与えた。LPSを、肺におけるLPSの均一な分布を容易にするために、少量の表面活性物質と混合し、最初の呼吸の前に肺に与えた。その後、最初の呼吸の間および最初の呼吸の後、LPSが末梢の気道に分布させられる。10mlの空気を、胎児の肺液のクリアランスを高めるために、また、LPSが末梢の気道に分布する前にLPSがrhSP−Dと混合することを防止するために、LPS滴注後、気管を介して与えた。25mgのSurvantaを使用して、エンドトキシンを滴注した。
【0089】
実施例5
LPSにさらされた早産子ヒツジの肺へのrhSP−Dの投与
上記で記載されたようなLPS暴露の子ヒツジを、その後、rhSP−Dと組み合わせて(処置群)、または、rhSP−Dと組み合わせることなく(コントロール群)、そのいずれかで所定量のSurvantaにより処置した。Survantaの処置用量を、合計で100mg/kgを与えるように調節した。Survantaのこの後者の用量を、2mg/kgのrhSP−Dを含有する12mlの緩衝液(処置群)または12mlの緩衝液のみ(コントロール群)のいずれかとともに気管チューブにより滴注した。すべての動物を、類似する換気法を使用して時間循環および圧力制限の幼児ベンチレータ(Sechrist Industries、Anaheim、CA)により5時間にわたって換気した。5Fのカテーテルを、臍動脈を介して大動脈内に進め、胎盤から集めたろ過された胎児血液の10ml/kgの輸血を、早産に伴う低いヘマトクリットを正すために分娩後10分以内に投与した。血圧、心拍数、一回換気量(VT)(CP−100:Bicore Monitoring Systems、Anaheim、CA)および体温を継続してモニターした。血液ガス、pH、塩基過剰(BE)、ヘマトクリット、カリウム、カルシウムおよびグルコースのレベルを、少なくとも20分毎に、または、胸の動きおよび一回換気量における変化によって示されるように、換気状態が変化したとき、血液ガス、電解質および代謝物システム(Radiometer Copenhagen USA、West Lake、OH)によって分析した。40回/分の呼吸速度、吸入時間:0.6s、終末呼気陽圧(BEEP)=4cmH2Oは変化しなかった。最大吸気圧(PIP)を、VTを8ml/kg〜9ml/kgで維持するために変化させた。圧力は、気胸を避けるために35cmH2OのPIPに制限された。吸入酸素の割合(Fio2)を、100mmHg〜150mmHgの目標pO2を保つために調節した。10パーセントのデキストロース(100ml/kg/d)を動脈カテーテルにより継続して注入した。動的コンプライアンスを、体重に対して正規化され、換気圧(PIP−PEEP)によって除された、呼吸気流計により測定されたVTから計算した。直腸温度を、加熱用パッド、放射熱およびプラスチック製の身体被覆ラップを用いてヒツジについての正常な体温(38.5℃)で維持した。補助的なケタミン(10mg/kg、筋肉内)およびアセプロムザイン(0.1mg/kg、筋肉内)を使用して、自発呼吸を抑制した。
【0090】
実施例6
肺処理のための調製
5時間後、子ヒツジを静脈内投与による25mg/kgのペントバルビタールにより深く麻酔し、100%酸素によりしばらく換気した。気管内チューブを3分間固定して、酸素吸収により、肺を空気のない状態にすることを可能にした。5時間の研究期間を生存しなかった子ヒツジについては、死を、収縮期血圧が10mmHg未満であること、または、鼓動がないことのいずれかによって決定した。
【0091】
実施例7
データ分析
結果が平均±SEMとして与えられる。rhSP−D処置群および緩衝液コントロール群を、両側t検定を使用して比較した。ログランク検定を群間の生存率比較のために使用した。有意性をp<0.05で認めた。
【0092】
実施例8
肺の処理
胸腔を開き、肺を空気で40cmH2Oの圧力に1分間膨張させ、最大肺体積を記録した。肺を収縮させ、肺のガス体積を、20cmH2O、15cmH2O、10cmH2O、5cmH2Oおよび0cmH2Oで測定した。右下部葉の肺組織をRNA抽出のために液体窒素で凍結した。気管支肺胞洗浄(BAL)を、視覚的に広がるまで左肺を4℃において0.9%NaClで満たすことによって左肺に対して行い、この洗浄を5回繰り返した。BAL液(BALF)をプールし、アリコートを総タンパク質の測定(Lowry他(1951)、J Biol Chem、1951、193:265〜275;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)のために保存した。
【0093】
実施例9
肺胞細胞の調製
BALFを500xgで10分間遠心分離し、ペレット内の細胞を、トリパンブルーを使用して計数した。分別細胞計数を、染色されたサイトスピン調製物に対して行った(Diff−Quick;Scientific Products、McGraw Park、IN)。気道に呼び寄せられた細胞の活性化を、酸性条件下における過酸化水素による第一鉄イオン(Fe2+)から第二鉄イオン(Fe3+)への酸化に基づくアッセイ(Bioxytech H2O2−560アッセイ;OXIS International、Portland、OR)を使用して過酸化水素を測定することによって評価した。
【0094】
アポトーシス細胞を、アネキシンVおよびヨウ化プロピジウムによる染色(Pharmigen、Mountain View、CA)によって検出し、以前に記載されたようにフローサイトメトリによって分析した(Kramer他(2001)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、280:L689〜L694;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0095】
実施例10
BALF、肺組織および血清におけるrhSP−Dの測定
BALF、遠心分離後の肺ホモジネートの上清、および、5時間が経過して集められた血清におけるrhSP−DのレベルをELISAによって分析した。免疫ブロッティングのために、10μlのBALFをSDS/PAGEゲルに負荷し、ニトロセルロースに転写し、ブロットを、ヒツジのSP−Dと交差反応せず、これにより、サンプルにおける内因性SP−Dのレベルの推定を可能にするウサギ抗rhSP−D血清によりプローブした。
【0096】
実施例11
肺の組織学方法
右上部葉を30cmH2Oの圧力で10%ホルマリンにより膨張固定した。パラフィン包埋組織を切片化し(9μm)、ヘマトキシリンおよびエオシンにより染色した。肺組織に対するIL−6、IL−8およびIL−1βの免疫組織化学的検出を、ヒツジIL−6についてはウサギポリクローナル抗体(Chemicon、Temecula、CA)、ヒツジIL−8についてはマウスポリクローナル抗体(Chemicon)、および、ヒツジIL−1βについてはウサギポリクローナル抗体を使用して、以前の記載(Ikegami他(2004)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、286:L573〜L579;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)のように行った。
【0097】
実施例12
血漿におけるエンドトキシンレベルおよびサイトカインレベルの測定
LPSを、カブトガニ変形細胞溶解成分アッセイ(Bio Whittaker、Walkersville、MD)により、0分(臍血)、30分、1時間、2時間および5時間で血漿において定量した。ELISAを、血漿中のIL−8およびIL−1βを、Chemiconから得られる抗体を使用して求めるために使用した。
【0098】
実施例13
肺、脾臓および肝臓におけるRNA分析
総RNAを、グアニジニウムチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出によって右下部肺葉、脾臓および肝臓から単離した。脾臓組織および肝臓組織を使用して、気管内投与されたLPSが全身的な炎症性応答を誘導したかを評価した。RNase保護アッセイを、以前に記載されたように、ヒツジのIL−6、IL−1β、IL−8、IL−10およびTNFαのRNA転写物を使用して行った(Naik他(2001)、Am J Respir Crit Care Med、2001;164:494〜498;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。ヒツジのリボソームタンパク質L32を基準RNAとした。保護されたバンドの密度を、ImageQuantソフトウエア(Molecular Dynamics Inc.,Sunnyvale、CA)を使用してホスホルイメージャーで定量した。
【0099】
実施例14
rhSP−Dの投与による新生児における敗血症の防止
敗血症について危険性のあるヒト新生児を特定する。新生児に、rhSP−Dを、体重1kgあたり1mgのSP−Dでエアロゾル配合物を使用して投与する。投与を1日に4回行う。患者を継続してモニターする。この方法の使用によって、敗血症に対する新生児の感受性が低下する。
【0100】
実施例15
rhSP−Dの投与による幼児における敗血症の処置
敗血症と診断される幼児を特定する。幼児に、rhSP−Dを、エアロゾル配合物を使用して体重1kgあたり4mgのrhSP−Dで投与する。投与を1時間毎に行う。血漿中のエンドトキシンレベルをモニターする。この方法の使用によって、敗血症が治まり、死の危険性が低下する。
【0101】
実施例16
rhSP−Dの30AAフラグメントの投与による幼児における敗血症の処置
敗血症と診断される幼児を特定する。幼児に、SP−Dの領域に対応する30アミノ酸のペプチドを、エアロゾル配合物を使用して体重1kgあたり0.5mgのペプチドで投与する。投与を1時間毎に行う。患者の健康状態を継続してモニターする。この方法の使用によって、敗血症が治まり、死の危険性が低下する。
【0102】
実施例17
rhSP−Dの投与による個体における死の危険性または敗血症を防止するための肺感染症の処置
重篤な肺感染症の個体を特定する。個体は、肺感染症が続くならば、敗血症を発症する危険性がある。患者に、rhSP−Dを、1日に2回投与されるとき、10mg/kgで投与する。患者の血漿におけるエンドトキシンレベルを5日間にわたって1日に2回測定する。患者の健康状態を継続してモニターする。この方法の使用によって、肺感染症が治まり、敗血症を発症する危険性が低下する。
【0103】
実施例18
抗生物質との併用でのrhSP−Dの投与による個体における死の危険性または敗血症を防止するための肺感染症の処置
重篤な肺感染症の個体を特定する。個体は、肺感染症が続くならば、敗血症を発症する危険性がある。患者に、rhSP−Dを、1日に6回投与されるとき、1mg/kgで投与する。患者にはまた、経口による抗生物質処置が与えられる。患者の血漿におけるエンドトキシンレベルを5日間にわたって1日に2回測定する。患者の健康状態を継続してモニターする。この方法の使用によって、肺感染症が治まり、敗血症を発症する危険性が低下する。
【0104】
実施例19
LPSおよびSP−Dによる感染研究のためのプロトコル
マウスを加温し、吸入2%イソフルランにより麻酔した。麻酔を足指つまみ試験によって確認する。尾をアルコールにより調製し、尾に、コントロール緩衝液、SP−D、LPS、または、室温で10分間プレインキュベーションされるSP−Dと一緒でのLPSを注入する。SP−D(1mg/ml)をSP−D緩衝液(20mM Tris−HCl(pH7.4)、200mM NaCl、1mM EDTA)において保存し、1mM CaCl2を伴うPBSにおいて希釈する。LPSを等体積のSP−D緩衝液において保存し、1mM CaCl2を伴うPBSにおいて希釈する。1mM CaCl2および等体積のSP−D緩衝液を伴うPBSをコントロール緩衝液として使用する。
【0105】
実施例20
SP−D分析のための血漿および臓器の調製
LPS、SP−Dまたはコントロール緩衝液を投与した後、マウスに致死量のチオペントンナトリウム(80μg/g)を与え、血液を心臓穿刺または眼窩後技術によって集める。血液を氷上に置き、直ちに遠心分離して、血漿を単離する。心臓、肺、肝臓、脾臓および腎臓を集め、組織学のためにパラホルムアルデヒドに入れるか、または、RNA単離のためにホモジネートする。
【0106】
実施例21
全身的SP−D処置はLPS感染哺乳動物における生存を改善する
マウスに、実施例19に記載されるように尾静脈注入により、致死量のLPS(8mg/kg)をSP−D(2mg/kg)またはコントロール緩衝液とともに与える。生存を72時間にわたって4時間毎にモニターする。瀕死状態(逆立った毛、動くことが完全にできないこと、および、下痢)の動物は非生存体と見なし、致死量のチオペンタンナトリウムにより安楽死させる。研究では、75%の死亡率がLPS処置マウスにおいて72時間までに予測される。この方法の使用によって、処置群の間における72時間での生存における統計学的有意差が認められ、より高い生存率がSP−D処置群において認められ、このことは、全身的SP−D処置がLPS感染哺乳動物の生存を改善することを示している。
【0107】
実施例22
全身的SP−D処置はLPS感染哺乳動物における組織傷害を改善する
マウスを、実施例19に記載されるように尾静脈注入により、SP−D(2mg/kg)またはコントロール緩衝液とともにLPS(4mg/kg)で処置する。肝臓を24時間で集め、組織傷害のマーカー(これには、肝臓でのTNFα、NFκB、iNOSおよびミエロペルオキシダーゼの発現、肝細胞の壊死、ならびに、好中球浸潤が含まれるが、これらに限定されない)を評価する。遺伝子発現研究のために、肝臓をホモジネートし、RNAを単離し、濃度および純度について調べる。cDNAを逆転写酵素重合によって合成し、PCRによって増幅する。遺伝子発現を、リアルタイムPCRによって、または、アガロースゲルでの分離の後でのPCR産物の濃度測定によって定量する。すべての結果がL32コントロールまたはGAPDHコントロールと比較して報告される。この方法の使用によって、LPSにより誘導される組織傷害のマーカーにおける統計学的に有意な低下がSP−D処置マウスにおいて認められ、このことは、全身的SP−D処置がLPS感染哺乳動物における組織傷害を改善することを示している。
【0108】
実施例23
SP−D処置は血漿LPSのクリアランス速度を増大させる
マウスを、実施例19に記載されるように、コントロール緩衝液またはSP−D(150μg/kg)とともにLPS(5μg/kg)で処置する。血液を、注入後の0.5時間、1時間、2時間、4時間および6時間で集める。LPSレベルを、実施例12に記載されるようにリムルスアッセイによってモニターし、LPSの半減期を計算する。この方法の使用によって、クリアランス速度における統計学的に有意な増大、および、LPSの半減期における統計学的に有意な低下がSP−D処置マウスにおいて認められ、このことは、SP−D処置が血漿LPSのクリアランス速度を増大させることを示している。
【0109】
実施例24
SP−D処置は組織特異的場所でのLPS誘導の炎症を阻害する
マウスを、実施例19に記載されるように、コントロール緩衝液またはSP−D(150μg/kg)とともにLPS(5μg/kg)で処置する。臓器(心臓、肺、肝臓、脾臓および腎臓(これらに限定されない)を含む)を注入後2時間で集め、mRNAを組織ホモジネートから単離する。IL−6の遺伝子発現をリアルタイムPCRによって測定する。この方法の使用によって、LPS刺激されたIL−6発現における統計学的に有意な低下がSP−D処置マウスの特定の組織において認められ、このことは、SP−D処置が組織特異的場所でのLPS誘導の炎症を阻害することを示している。
【0110】
実施例25
SP−D処置は特定の細胞タイプにおけるLPS誘導の炎症を阻害する
脾臓白血球の単一細胞懸濁物を100μmの濾過器での分離によってマウス脾臓から単離し、組織培養培地に入れる。場合により、リンパ球集団およびマクロファージ集団への脾臓白血球のさらなる選抜が組織培養プレートへの接着によって達成される。LPS非含有条件で48時間培養した後、白血球を、24時間、LPS(1μg/ml)により、または、SP−D(5μg/ml)とともにLPSにより刺激する。培地を集め、IL−6およびTNFαのレベルを培養上清においてELISAによって測定する。この方法の使用によって、L−6およびTNFαのレベルにおける統計学的に有意な低下がSP−D処置の脾臓白血球において認められ、このことは、SP−D処置が特定の細胞タイプにおけるLPS誘導の炎症を阻害することを示している。
【0111】
実施例26
SP−D処置は肺傷害の不在下でLPSの全身的漏出を防止する
野生型マウスおよびSftpd−/−マウスを吸入イソフルランにより麻酔し、LPS(1mg/kg)を気管内注入によって投与する。血液を、注入後の1時間、2時間、4時間および6時間で集め、血漿中のLPSレベルをリムルスアッセイによって測定する。この方法の使用によって、血漿中のLPSレベルにおける統計学的有意差が2つの群の間で認められ、より高いLPSレベルがSftpd−/−マウスにおいて認められ、このことは、SP−D処置が肺傷害の不在下でLPSの全身的漏出を防止し得ることを示している。
【0112】
実施例27
盲腸結紮および穿刺(CLP)のためのプロトコル
マウスを吸入2%イソフルランで麻酔するか、または、チオペントンナトリウムの非致死的な腹腔内注入によって麻酔する。無菌的調製の後、マウスの盲腸を2cmの腹部切開により露出させ、回盲弁からおよそ0.5cm遠位側で結紮する。結紮された盲腸を25ゲージまたは30ゲージのニードルで穿刺する。盲腸を腹腔に戻し、腹腔を閉じる。1mlの規定生理的食塩水溶液を、サードスペース(third−space)液喪失を補償するために皮下に注入する。擬似処置マウスを、盲腸を隔離し、結紮または穿刺を伴うことなく腹腔に戻すことを除いて、上記のように処置する。CLP後直ちに、マウスを、実施例19に記載されるように注入のために調製する。
【0113】
実施例28
SP−D処置は全身的感染における生存を改善する
CLPを実施例27に記載されるようにマウスに対して行う。続いて、マウスに、SP−D(2mg/kg)またはコントロール緩衝液を、実施例19に記載されるように尾静脈注入により投与する。生存を72時間にわたって4時間毎にモニターする。瀕死状態(逆立った毛、動くことが完全にできないこと、および、下痢)の動物を非生存体と見なし、致死量のチオペンタンナトリウムにより安楽死させる。この方法の使用によって、処置群の間における72時間での生存における統計学的有意差が認められ、より高い生存率がSP−D処置群において認められ、このことは、SP−D処置が全身感染の対象における生存を改善することを示している。
【0114】
実施例29
SP−D処置は全身的感染時における組織傷害を軽減させる
CLPを、実施例27および実施例28に記載されるように、SP−Dを伴って、また、SP−Dを伴うことなくマウスに対して行う。肝臓を24時間で採取し、組織傷害のマーカーを実施例22に記載されるように評価する。この方法の使用によって、LPSにより誘導される組織傷害のマーカーにおける統計学的に有意な低下がSP−D処置マウスにおいて認められ、このことは、SP−D処置が全身的感染の対象における組織傷害を軽減させることを示している。
【0115】
実施例30
SP−D処置は全身的感染における免疫応答を高める
CLPを、実施例27および実施例28に記載されるように、SP−Dを伴って、また、SP−Dを伴うことなくC57BL/6マウスにおいて誘導する。腹膜腔を洗浄し、血液をCLP後6時間で集める。血漿および腹膜洗浄液のLPSレベルをリムルスアッセイによって求める。細菌数を、血液または腹膜洗浄液の連続対数希釈、および、トリプシン消化ダイズ寒天ディッシュに置床することによって求める。コロニーを一晩のインキュベーションの後で計数する。この方法の使用によって、血漿および腹膜のLPSレベルまたは細菌レベルにおける統計学的有意差が2つの群の間で認められ、より低いLPSレベルまたは細菌レベルがSP−D処置マウスにおいて認められ、このことは、SP−D処置が全身的感染の対象における免疫応答を高めることを示している。
【0116】
実施例31
SP−D処置はLPSまたは細菌の全身的拡大を低下させる
CLPを、実施例27および実施例28に記載されるように、SP−Dを伴って、または、SP−Dを伴うことなく、C57BL/6マウスにおいて誘導する。腹膜腔を洗浄し、血液をCLP後6時間で集める。血漿および腹膜洗浄液のLPSレベルをリムルスアッセイによって求める。細菌数を、血液または腹膜洗浄液の連続対数希釈、および、トリプシン消化ダイズ寒天ディッシュに置床することによって求める。コロニーを一晩のインキュベーションの後で計数する。この方法の使用によって、血漿のみでのLPSレベルまたは細菌レベルにおける統計学的有意差が2つの群の間で認められ、より低いLPSレベルまたは細菌レベルがSP−D処置マウスにおいて認められ、このことは、SP−D処置がLPSまたは細菌の全身的拡大を低下させることを示している。
【0117】
実施例32
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)についてのマーカーが敗血症罹患Sftpd−/−マウスにおいて増大する
野生型マウスおよびSftpd−/−マウスを、実施例27に記載されるようにCLPに供する。ARDSのマーカー(これには、例えば、肺胞タンパク質レベル、Sat PCレベル、または、好中球浸潤物が含まれるが、これらに限定されない)を下記のように測定する。24時間で、肺を規定生理的食塩水により洗浄し、洗浄液における肺胞タンパク質レベルをLowryアッセイによって求める。肺胞洗浄によって回収された表面活性脂質の量を、飽和ホスファチジルコリン(Sat PC)レベルを測定することによって求める。簡単に記載すると、Sat PCレベルを、肺胞洗浄液をクロロホルム・メタノールにより抽出し、その後、四塩化炭素におけるOsO4による脂質抽出物の処置、および、シリカカラムクロマトグラフィを行うことによって測定する。細胞浸潤物を測定するために、肺胞洗浄液を遠心分離して、細胞をペレット化し、赤血球を低浸透圧ショックによって溶解する。細胞を再懸濁し、総細胞数を、血球計算器を使用して求める。分別細胞計数を、洗浄液の細胞遠心分離を行い、Wright染料により染色することによって求める。この方法の使用によって、肺胞タンパク質レベル、Sat PCレベルまたは好中球数における統計学的有意差が2つの群の間で認められ、より高いレベルがSftpd−/−マウスにおいて認められる。
【0118】
実施例33
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処置における全身的SP−Dの相対的重要性を研究するためのSftpd−/−マウスにおける肺SP−Dの生成
ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウス(すなわち、SP−C−rtTA/(tetO)7−SP−D/Sftpd−/−またはCCSP−rtTA/(tetO)7−SP−D/Sftpd−/−)を作製する(Zhang,L.他(2002)、J Biol Chem、277:38709〜38713)。SP−CプロモータおよびCCSPプロモータはもっぱら肺において活性化され、(tetO)7−SP−D構築物はSP−Dの発現がドキシサイクリン誘導の制御下にある。Sftpd−/−マウスにおいて認められた肺の異常が、これらの肺特異的導入遺伝子の発現によって完全になくなる。従って、これらの遺伝子組換えマウスはSP−Dの全身的発現の除去を可能にし、これにより、全身的免疫性におけるSP−Dの肺供給源対全身的供給源の相対的な重要性を比較する手段を提供する。
【0119】
実施例34
全身的SP−Dは急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の症状の改善に関与する
ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウス(実施例33)は、正常なレベルの肺SP−Dならびに正常な肺形態学および肺胞マクロファージ機能を有しており、しかし、全身的SP−Dのすべての供給源を有していない。CLPマウスにおけるARDSに対する肺SP−D対全身的SP−Dの相対的な重要性を分離するために、ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウス(実施例33)におけるARDSのマーカーを測定し、野生型マウスおよびSftpd−/−マウスにおけるARDSマーカーレベルと比較する。すべてのマウスをドキシサイクリンにより処置して、ドキシサイクリンの抗菌作用を補償する。実施例27に記載されるように、CLPを、野生型マウス、Sftpd−/−マウス、および、ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウスにおいて誘導する。ARDSのマーカー(これには、肺胞タンパク質レベル、Sat PCレベル、または、好中球浸潤物が含まれるが、これらに限定されない)を、実施例32に記載されるように測定し、これら3つの実験マウス群から得られた組織において比較する。この方法の使用によって、肺胞タンパク質レベル、Sat PCレベル、または、好中球数における統計学的に有意な増大が、野生型マウスにおいて見出されるそのようなレベルと比較して、ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウスにおいて認められ、このことは、全身的SP−DがARDSの症状の改善に関与することを示している。
【0120】
実施例35
SP−Dの全身的供給源は全身的感染時における血漿SP−Dのプールサイズに寄与する
研究では、血漿中のSP−DレベルがCLP後に著しく増大することが示された。研究ではまた、肺のSP−Dレベルが、CLP後、野生型において、また、ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウスにおいて等しいことが示されている(ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウスにおける肺のSP−Dレベルが一般に、ベースラインではより高い)。従って、SP−Dの肺供給源が、両方の実験群においてCLP後の増大した血漿中のSP−Dレベルの唯一の供給源であるならば、この寄与は、完全に肺での漏出に依存することが予想される。
【0121】
敗血症を、野生型マウス、および、ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウス(実施例33)において、これらのマウスを、実施例27に記載されるような技術を使用して、30ゲージのニードルによるCLPに供することによって誘導する。血液を48時間で集め、血漿中のSP−DレベルをSP−DのELISAによって求める。この方法の使用によって、血漿中のSP−Dレベルにおける統計学的に有意な低下が、野生型マウスにおいて見出されるそのようなレベルと比較して、ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウスにおいて認められ、このことは、SP−Dの全身的供給源が敗血症時における血漿SP−Dのプールサイズに寄与することを示している。
【0122】
実施例36
SP−Dの血漿半減期が全身的感染時において増大する
敗血症のSftpd−/−マウスを、実施例27に記載されるような技術を使用して、30ゲージのニードルによるCLPによって作製する。コントロールのSftpd−/−マウスを、擬似処置CLP(すなわち、実施例27に記載されるような結紮または穿刺を伴うことなく盲腸を露出させることによるCLP)によって作製する。48時間後、マウスにSP−D(150μg/kg)を尾静脈注入により投与する。血液を、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間および24時間で集め、血漿中のSP−DレベルをSP−DのELISAによって測定する。その後、血漿SP−Dの半減期を計算する。この方法の使用によって、血漿中のSP−Dレベルにおける統計学的に有意な増大が、コントロールマウスと比較して、CLP処置マウスにおいて認められ、このことは、マウスにおいて血漿中のSP−Dレベルを上昇させるために使用された生理学的機構が血漿SP−Dの分解における低下を介してであることを示している。
【0123】
実施例37
Sfptdプロモータ活性を制御する転写機構の特定
Sfptdプロモータの欠失構築物を使用して、MFLM−91U血管内皮細胞株における発現のために重要であるプロモータの領域を特定する。Sfptd遺伝子の近位側の82塩基対、167塩基対、246塩基対、357塩基対、600塩基対および680塩基対に連結されたルシフェラーゼレポーター遺伝子(図21)を、標準的なトランスフェクションプロトコルを使用してMFLM細胞にトランスフェクションする。トランスフェクションされたDNAの量を正規化するための適切なコントロール、および、トランスフェクション効率のための適切なコントロールが含められる。ルシフェラーゼ活性を、pCMV−β−ガラクトシダーゼ構築物を使用してβ−ガラクトシダーゼ活性に対して正規化する。血管内皮細胞における遺伝子発現を調節する転写因子(これには、E−box、Nf1様およびPea3が含まれるが、これらに限定されない)を欠失分析において特定することができ、これらはSfptdプロモータにおけるコンセンサスな結合部位に対応する(Kou,R.他(2005)、Biochemistry、44:15064〜15073;Ardekani,A.M.他(1998)、Thromb Haemost、80:488〜494;Cieslik,K.他(1998)、J Biol Chem、273:14885〜14890;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。当業者はまた、Sfptd遺伝子の配列分析に基づいて、全身的なSfptd発現を調節する他の転写因子を特定することができる。
【0124】
欠失分析によって特定されたSfptdプロモータの領域は、標準的なDNAseI保護アッセイによってさらに狭められる。MFLM細胞およびマウス肺上皮細胞(MLE−15)から得られた核抽出物を用いたDNAseIフットプリント分析が、血管内皮細胞に対して特異的であるSfptdプロモータの保護された領域または高感受性領域を明らかにするために行われる。特にMFLM細胞から得られた核抽出物によって保護されるか、または、特にMFLM細胞から得られた核抽出物によって高感受性にされるSfptdプロモータのセグメントが、血管内皮細胞において特異的な転写因子DNA結合の部位を特定するために使用される。
【0125】
欠失分析およびDNAseI保護アッセイによって特定された候補の転写因子はさらに、同時トランスフェクション実験によって調べられる。候補の転写因子がpCMV発現ベクターに挿入され、上記で記載されるように、Sfptdルシフェラーゼレポーター構築物とともにMFLM細胞に同時トランスフェクションされ、ルシフェラーゼ活性が測定される。この方法の使用によって、ルシフェラーゼ活性における統計学的有意差が、コントロールのpCMVベクターとともに同時トランスフェクションされたMFLM細胞におけるベースラインでのルシフェラーゼ活性と比較して認められ、このことは、候補のタンパク質が血管内皮細胞においてSfptdプロモータ活性を調節することを示している。
【0126】
これらの知見は、候補の転写因子のコンセンサスな結合部位が変異しているSfptdレポータープラスミドとの同時トランスフェクション実験を繰り返すことによって確認される。これらの実験の結果より、天然のSfptdのコンセンサスな結合部位を用いた同時トランスフェクション実験で以前に認められたルシフェラーゼ活性における統計学的有意差が、コンセンサスな結合部位が変異しているときにはもはや認められないことが明らかにされる。
【0127】
最後に、上記実験でMFLM細胞において明らかにされた転写機構の細胞特異性が、他の細胞タイプ(すなわち、HeLa細胞およびH441細胞)と比較することによって評価される。この方法の使用によって、MFLM細胞において明らかにされた転写機構の細胞特異性が、ルシフェラーゼ活性の調節がMFLM細胞においてのみ認められることを示すことによって確認される。
【0128】
実施例38
LPSは血管内皮細胞においてSfptdプロモータ活性を増大させる
MFLM細胞をLPS(1μg/ml)で処置し、Sfptdプロモータ活性を実施例37に記載されるように測定する。この方法の使用によって、ルシフェラーゼ活性における統計学的に有意な増大が、LPS非処置の細胞におけるベースラインでのルシフェラーゼ活性と比較して、LPS処置細胞において認められ、このことは、LPSが血管内皮細胞においてSfptdプロモータ活性を増大させることを示している。
【0129】
実施例39
全身的SP−Dが脾臓内の特定の細胞タイプによって除かれる
Sfptd−/−マウスに、コントロール緩衝液、SP−D(200μg/kg)、または、LPS(50μg/kg)とともにSP−D(200μg/kg)を、実施例19に記載されるように尾静脈注入により投与する。脾臓を注入後8時間で採取し、パラホルムアルデヒドにおいて固定処理し、パラフィンに包埋し、切片化する。切片を脱パラフィン化し、再水和し、SP−D抗体とインキュベーションする。抗体複合体を、標準的な検出技術(例えば、アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ(Vectastain)、蛍光標識化)を使用して検出する。この方法の使用によって、脾臓における特定の細胞による細胞輸送が特定される。
【0130】
脾臓による全身的SP−Dの取り込みがSP−Dのコラーゲンドメインを必要とするかを明らかにするために、これらの実験を、SP−Dのコラーゲンドメインを欠失する変異型タンパク質(rSftpdCDM)を用いて繰り返す。この方法の使用によって、rSftpdCDMが、全長のタンパク質とは異なる組織経路または細胞経路により輸送され、このことは、SP−Dのコラーゲンドメインが脾臓におけるSP−Dのルーティングおよびプロセシングのために重要であることを示している。
【0131】
実施例40
LPSが血管内皮細胞においてSftpdプロモータ活性を増大させる機構の決定
実施例37に記載されるような分析をLPS処置のMFLM細胞において行う。欠失構築物をLPS処置のMFLM細胞において調べる。Sftpd発現をLPSに応答して増大させるために重要である領域を、DNAseI保護アッセイによって分析する。LPSで処理されたMFLM細胞から得られた核抽出物に対して、コントロール緩衝液で処置されたMFLM細胞から得られた核抽出物を用いて認められる保護された領域および高感受性領域の間の比較を、血管内皮細胞におけるLPS誘導によるSftpd発現のために重要な領域をさらに単離するために行う。候補の転写因子を同時トランスフェクションおよび候補の転写因子の結合部位の変異によって調べる。この方法の使用によって、ルシフェラーゼ活性における統計学的有意差が、非処置のMFLM細胞におけるベースラインでのルシフェラーゼ活性と比較して、LPS処置されたMFLM細胞において認められ、これにより、血管内皮細胞においてLPS誘導のSfptdプロモータ活性を調節する候補タンパク質の特定が示される。
【0132】
実施例41
全身的感染を阻害することに関与するSP−Dの構造的特徴および機構は、肺におけるウイルス攻撃に対する応答において使用されるものと類似する
SP−Dコラーゲン欠失変異体のrSftpdCDMは細菌と結合し、インフルエンザAウイルスによる肺攻撃に対する正常な応答を容易にし、しかし、Sftpd−/−マウスでは、ベースラインでの肺胞のマクロファージ活性(すなわち、明白な感染性攻撃の不在下でのマクロファージ活性)を調節すること、または、表面活性脂質の異常を直すことができない(Kingma,P.S.他(2006)、J Biol Chem、281:24496〜24505)。このタンパク質を、感染の不在下でのSP−Dの調節を感染性攻撃時におけるSP−Dの機能から分離することが必要である実験において使用する。
【0133】
C57BL/6マウスを、実施例19に記載されるように尾静脈注入により、コントロール緩衝液、SP−D(150μg/kg)、または、精製されたrSftpdCDM(75μg/kg、これは150μg/kgのSP−Dと等価なモル量を表す)とともにLPS(5μg/kg)で処置する。血液を注入後2時間で集め、血漿中のIL−6レベルおよびTNFαレベルをELISAによって測定する。この方法の使用によって、rSftpdCDMが全身的なLPS誘導の炎症を阻害することが明らかにされ、このことは、全身的なLPS誘導の炎症を阻害するために使用されるSP−Dの構造的特徴および機構が、肺におけるウイルス攻撃の間に利用されるものと類似すること示している。
【0134】
実施例42
SP−Dのオリゴマー化はLPS誘導の全身的炎症のSP−D媒介による阻害のために要求されない
SP−Dは、N末端ドメイン内の15位および20位のシステイン残基におけるジスルフィド連結によって安定化される十量体として主に組み立てられる。これらの残基を欠失する変異型SP−D(rSP−DSer15/20)は、高次の多量体を形成することができない安定な三量体を形成する(Zhang,L.他(2001)、J Biol Chem、276:19214〜19219;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。rSP−DSer15/20は炭水化物と結合するが、Sftpd−/−マウスにおける異常なマクロファージ活性を直すことができず、このことから、肺のSP−D機能におけるSP−Dのオリゴマー化の重要性が明らかにされる。
【0135】
C57BL/6マウスを、実施例19に記載されるように尾静脈注入により、コントロール緩衝液、SP−D(150μg/kg)、または、精製されたrSP−DSer15/20(150μg/kg)とともにLPS(5μg/kg)で処置する。血液を注入後2時間で集め、血漿中のIL−6レベルおよびTNFαレベルをELISAによって測定する。この方法の使用によって、rSP−DSer15/20が全身的なLPS誘導の炎症を阻害することが明らかにされ、このことは、全身的なLPS誘導の炎症のSP−Dによる阻害がSP−Dの多量体構造に依存しないこと、および、全身的SP−Dの作用機構が、肺においてSP−Dによって利用される機構からかけ離れていることを示している。
【0136】
実施例43
SP−DはSP−D特異的な様式で全身的炎症を阻害する
SP−DおよびSP−Aはともに、肺の宿主防御において重要な役割を果たしており、しかし、SP−Aを欠失するマウス(Sftpd−/−)は、Sftpd−/−マウスに特徴的である肥大した泡沫状マクロファージを発達させず、このことは、SP−Dが、肺胞マクロファージの活性を、SP−Dに対して特異的である機構を介して調節することを示している(LeVine,A.M.他(2000)、J Immunol、165:3934〜3940;LeVine,A.M.他(1999)、Am J Respir Cell Mol Biol、20:279〜286;LeVine,A.M.他(1999)、J Clin Invest、103:1015〜1021;LeVine,A.M.他(1998)、Am J Respir Cell Mol Biol、19:700〜708;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0137】
C57BL/6マウスを、実施例19に記載されるように尾静脈注入により、コントロール緩衝液、SP−D(150μg/kg)、または、SP−A(150μg/kg)とともにLPS(5μg/kg)で処置する。血液を注入後2時間で集め、血漿中のIL−6レベルおよびTNFαレベルをELISAによって測定する。この方法の使用によって、SP−AがLPS誘導の全身的炎症を阻害しないことが明らかにされ、このことは、全身的なLPS誘導の炎症の阻害がSP−Dに対して特異的であり、コレクチンファミリーのタンパク質の共通する性質でないことを示している。
【0138】
実施例44
SP−Dの全身投与による新生児における敗血症の防止
敗血症について危険性のあるヒト新生児を特定する。新生児に、SP−Dを、体重1kgあたり1mgのSP−Dで医薬配合物を使用して全身投与する。投与を1日に4回行う。患者を継続してモニターする。この方法の使用によって、敗血症に対する新生児の感受性が低下する。
【0139】
実施例45
SP−Dの全身投与による幼児における敗血症の処置
敗血症と診断される幼児を特定する。幼児に、SP−Dを、医薬配合物を使用して体重1kgあたり4mgのSP−Dで全身投与する。投与を1時間毎に行う。血漿中のエンドトキシンレベルをモニターする。この方法の使用によって、敗血症が治まり、死の危険性が低下する。
【0140】
実施例46
SP−Dの30AAフラグメントの全身投与による幼児における敗血症の処置
敗血症と診断される幼児を特定する。幼児に、SP−Dの領域に対応する30アミノ酸のペプチドを、医薬配合物を使用して体重1kgあたり0.5mgのペプチドで全身投与する。投与を1時間毎に行う。患者の健康状態を継続してモニターする。この方法の使用によって、敗血症が治まり、死の危険性が低下する。
【0141】
実施例47
SP−Dの全身投与による個体における死の危険性または敗血症を防止するための肺感染症の処置
重篤な肺感染症の個体を特定する。個体は、肺感染症が続くならば、敗血症を発症する危険性がある。患者に、SP−Dを、1日に2回投与されるとき、医薬配合物を使用して10mg/kgで全身投与する。患者の血漿におけるエンドトキシンレベルを5日間にわたって1日に2回測定する。患者の健康状態を継続してモニターする。この方法の使用によって、肺感染症が治まり、敗血症を発症する危険性が低下する。
【0142】
実施例48
抗生物質との併用でのSP−Dの全身投与による個体における死の危険性または敗血症を防止するための肺感染症の処置
重篤な肺感染症の個体を特定する。個体は、肺感染症が続くならば、敗血症を発症する危険性がある。患者に、SP−Dを、1日に6回投与されるとき、医薬配合物を使用して1mg/kgで全身投与する。患者にはまた、経口による抗生物質処置が与えられる。患者の血漿におけるエンドトキシンレベルを5日間にわたって1日に2回測定する。患者の健康状態を継続してモニターする。この方法の使用によって、肺感染症が治まり、敗血症を発症する危険性が低下する。
【0143】
様々な置換および修飾が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書中に開示された発明に対して行われ得ることが当業者には明らかである。様々な修飾が、開示された発明の範囲内において可能であることが認識される。従って、本発明は好ましい実施形態および最適な特徴によって具体的に開示されているが、本明細書中に開示された概念の修飾および変形が当業者によって用いられ得ること、また、そのような修飾および変形が、開示によって定義されるような本発明の範囲内に含まれると見なされることが理解される。
【0144】
別途示されない限り、本明細書において使用される、成分の量、特性(例えば、実験条件など)などを表すすべての数字は、すべての場合において用語「約」によって修飾されているとして理解しなければならない。従って、別に示されない限り、本明細書において示される数値パラメーターは、本発明によって求められようとする所望の性質に依存して変化し得る近似値である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】rhSP−D処置群およびコントロール群を比較するカプラン−マイヤープロットである。コントロール群では、子ヒツジの20%のみが、5時間の研究期間が終了する前に生存していた。対照的に、rhSP−Dにより処置されたすべての子ヒツジが生存した。ログランク検定によってp<0.05。
【図2A】rhSP−D処置群対非処置コントロール群における血漿中のエンドトキシンレベルの線グラフによる比較である。気管内エンドトキシンがコントロール群では循環において検出され、時間とともに増大し、一方、rhSP−Dは、5時間の研究の期間中、血漿中のエンドトキシン濃度を低下させた。
【図2B】rhSP−D処置群対非処置コントロール群における収縮期血圧測定を比較する線グラフである。rhSP−Dによる処置はエンドトキシンショックを防止した。収縮期血圧がrhSP−D処置群では早産新生児の正常なレベルで維持された。対照的に、血圧が、3時間が経過した後、コントロール群では徐々に低下した。*p<0.05(対コントロール)。
【図3A】rhSP−D処置群対非処置コントロール群における血液pHを比較する線グラフである。血液pHがrhSP−D処置により維持された。LPS処置には、低下した血液pHが伴った一方で、rhSP−Dによる処置では、pHが維持され、出生前のエンドトキシン誘導によるショックが防止された。
【図3B】rhSP−D処置群対非処置コントロール群におけるBE(血中塩基過剰)を比較する線グラフである。BEが気管内LPSによって変化した。気管内LPSは代謝性アシドーシスを誘導し、rhSP−D処置は低いBEおよびエンドトキシンショックを防止した。
【図4A】図4はpCO2および換気圧の逐次測定を明らかにする。図4Aは、rhSP−D処置群対非処置コントロール群におけるpCO2を比較する線グラフである。気管内LPSは、3時間が経過した後、pCO2における増大を引き起こした。rhSP−Dにより処置されたとき、pCO2が維持された。
【図4B】rhSP−D処置群対非処置コントロール群における換気圧(PIP−PEEP)を比較する線グラフである。目標の一回換気量を維持するために使用された換気圧の量は両方の群について類似していた。*p<0.05(対コントロール)。
【図5A】図5はrhSP−D処置群対非処置コントロール群における前炎症性サイトカインの発現の比較である。図5Aは、脾臓および肝臓における前炎症性サイトカイン(IL−1β、IL−6およびIL−8)のmRNAが、気管内LPS滴注後、コントロールの子ヒツジでは増大したことを明らかにする棒グラフである。脾臓および肝臓における前炎症性サイトカインのmRNAがrhSP−Dの投与によって低下した。
【図5B】脾臓および肝臓における前炎症性サイトカイン(IL−1β、IL−6およびIL−8)のmRNAが、気管内LPS滴注後、コントロールの子ヒツジでは増大したことを明らかにする棒グラフである。脾臓および肝臓における前炎症性サイトカインのmRNAがrhSP−Dの投与によって低下した。
【図5C】気管内LPSが肺におけるIL−1β、IL−6およびIL−8のmRNAを増大させたことを明らかにする棒グラフである。rhSP−Dにより処置されたとき、IL−1βの発現が低下した。
【図5D】血漿におけるIL−8の濃度を示す線グラフである。血漿中のIL−8レベルがコントロール群では増大した。血漿中のIL−8レベルがrhSP−D処置によって低いレベルで維持された。*p<0.05(対コントロール)。
【図6】ヘマトキシリンおよびエオシンでの染色による肺の形態学(6Aおよび6B)、ならびに、IL−8の免疫組織化学(6Cおよび6D)およびIL−1βの免疫組織化学(6Eおよび6F)を示すいくつかの組織学的画像を含む。コントロール群およびrhSP−D群の両方において、増大した顆粒球、ならびに、IL−8およびIL−1βについての陽性に染色された炎症性細胞が認められる。IL−8およびIL−1βについて免疫染色された炎症性細胞が気管内rhSP−D処置によって低下した。
【図7A】図7は肺機能がrhSP−D処置によって影響されなかったことを明らかにする線グラフである。図7Aは、換気時におけるVT、PIP−PEEPおよび体重から計算された動的肺コンプライアンスを示す。
【図7B】静的肺体積圧力曲線測定値の下降部がコントロール群およびrhSP−D群の間で類似していたことを明らかにする。
【図8】高レベルのrhSP−Dが気管内SP−D滴注後5時間で気管支肺胞洗浄液(BALF)において検出されたことを明らかにする免疫ブロットである(動物#6、#7および#8)。rhSP−Dが、コントロールの子ヒツジから得られたBALFでは見出されなかった(動物#1および#2)。
【図9】LPSとともに投与されたとき、SP−Dが濃度依存的様式で血漿中のIL−6レベルおよびTNFαレベルを著しく低下させたことを明らかにする。図9AはIL−6のデータを示し、図9BはTNFαのデータを示す。
【図10】SP−Dが、SP−D処置の不在下での血漿中のIL−6レベルと比較した場合、LPS用量の前(t=−30)、LPS用量と同時(t=0)またはLPS用量の後(t=+30)で投与されたとき、血漿中のIL−6レベルを低下させたことを示す。
【図11A】図11はLPSにより誘導される炎症の阻害がSP−D LPS結合親和性と直接に相関したことを示す。図11Aは、SP−Dについての2つの異なった大腸菌株のLPS結合親和性を例示する。菌株011:B4は大きいSP−D LPS結合親和性を有し、これに対して、菌株0127:B8は低いSP−D LPS結合親和性を有する。
【図11B】高結合性LPS株(菌株011:B4)をSP−Dとプレインキュベーションすることにより、血漿中のIL−6レベルが著しく低下したことを明らかにし、しかしながら、SP−Dは、SP−Dに対する親和性が低いLPS株(菌株0127:B8)により誘導される炎症を阻害しなかった。
【図12】全身的LPS暴露の後での野生型マウスおよびSftpd−/−マウスにおける血漿中のサイトカインレベルの比較である。LPSにより処置されたSftpd−/−マウスにおける血漿IL−6レベルは野生型マウスの場合よりも約80%低く、これは予想以外の結果であった。
【図13】SP−D処置および非処置の全身的敗血症マウスにおける血漿中のサイトカインレベルの比較である。盲腸結紮および穿刺(CLP)の後、SP−Dにより処置されたマウスは、コントロールマウスよりも低い平均血漿IL−6レベルを示した。
【図14】SP−D処置および非処置の全身的敗血症マウスにおける生存の比較である。CLP後、死亡率は、コントロールマウスの方が、SP−Dにより処置されたマウスの場合よりも著しく高かった。
【図15】敗血症マウスおよびコントロールマウスにおける血漿中のSP−Dレベルの比較である。血漿中のSP−Dレベルが、コントロールマウスと比較して、敗血症誘導マウスにおいて著しく低下した。このことは、マウスのCLPモデルは、全身的SP−D産生を評価するための機能的なインビボシステムを提供し得ることを示す。
【図16】Sftpdプロモータが血管内皮細胞において活性化されることを明らかにする。MFLM−91U細胞(不死化されたマウス胎児肺間葉細胞株)を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子につながれたSftpdプロモータを含有するプラスミド、または、ルシフェラーゼレポーター遺伝子だけを含有するコントロールプラスミドにより一過性にトランスフェクションした。ルシフェラーゼ活性が、コントロールプラスミドによりトランスフェクションされた細胞と比較して、ルシフェラーゼ遺伝子につながれたSftpdプロモータを含有するプラスミドによりトランスフェクションされたMFLM−91U細胞において著しく増大した。
【図17】野生型マウスおよびSftpd−/−マウスにおける経時的な血漿中のSP−Dレベルを示す線グラフである。SP−Dが、野生型マウスでは約6時間の半減期で血漿に残存し、しかし、Sftpd−/−マウスでは、SP−Dの半減期が約2時間に低下した。興味深いことに、ネックドメインおよび炭水化物認識ドメイン(CRD)のみの三量体からなる短縮型SP−Dフラグメントの半減期は62時間である(Sorensen、G.L.他(2006)、Am J Physiol Heart Circ Physiol、290:H2286〜H2294)。まとめると、結果から、血漿中のSP−Dを取り込むための特異的な細胞機構が存在すること、および、この機構はSP−DのN末端ドメインおよび/またはコラーゲンドメインに依存していることが示される。
【図18】SP−Dを尾静脈注入により投与した後のSftpd−/−マウスでの組織ホモジネートにおけるSP−Dレベルを例示する。脾臓におけるSP−Dのレベルが、他の組織で観測されたSP−Dレベルよりも、また、脾臓におけるバックグラウンドレベルに対して著しく高くなった。このことは、全身的SP−Dが脾臓による循環から除かれることを示す。
【図19】野生型マウスおよびSftpd−/−マウス(変異型導入遺伝子rSftpdCDMTg+が発現する)における肺の形態学およびマクロファージ活性を例示する。変異型導入遺伝子rSftpdCDMTg+は、正常なCRD、ネックドメインおよびN末端ドメインを有するが、コラーゲンドメインを有しない変異型SP−Dタンパク質(rSftpdCDM)を発現する。この変異型SP−Dタンパク質は野生型マウスにおいて肺の形態学またはマクロファージ活性を乱さなかった。しかしながら、この変異型SP−Dタンパク質はSftpd−/−マウスのベースライン状態での異常なマクロファージ活性を回復させなかった。増大したレベルのメタロプロテイナーゼを発現する肥大した泡沫状マクロファージが、Sftpd−/−マウス、および、rSftpdCDMタンパク質を発現するSftpd−/−マウスにおいて容易に認められた。図19Aは野生型マウスからの肺組織を例示する。図19Bは野生型バックグラウンドにおけるrSftpdCDMTg+導入遺伝子の発現を例示する。図19CはSftpd−/−マウスからの肺組織を例示する。図19DはSftpd−/−バックグラウンドにおけるrSftpdCDMTg+導入遺伝子の発現を示す。図における矢じりは、肥大した泡沫状マクロファージを示す。
【図20】インフルエンザAウイルス(IAV)に対する気管内暴露に対する、野生型マウス、Sftpd−/−マウスおよびrSftpdCDMTg+/Sftpd−/−マウスの応答を例示する。増大したレベルのIL−6、TNFαおよびIFNγが、IAV攻撃されたSftpd−/−マウスの肺ホモジネートにおいて認められた。しかしながら、これらのレベルはrSftpdCDMTg+/Sftpd−/−マウスの肺ホモジネートでは野生型レベルに戻った。図20Aは、IAV攻撃されたマウスの3つの群における血漿中のIL−6についてのデータを示す。図20Bおよび図20Cは同様に、IAV攻撃されたマウスの3つの群における血漿中のTNFαレベルおよびIFNγレベルについての結果をそれぞれ例示する。
【図21】血管内皮細胞における発現のために重要であるSftpdプロモータの領域を特定するための実験で使用される利用可能なSftpdプロモータ構築物の概略図である。
【技術分野】
【0001】
(連邦政府援助のR&Dに関する言及)
本明細書中に開示される本発明のいくつかの態様がNIH(国立衛生研究所)補助金番号HL63329のもとでの合衆国政府の援助によりなされた。合衆国政府は本発明のこれらの態様において一定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、生物学的に活性なタンパク質およびその医薬的使用の分野に関連する。より具体的には、本発明は、SP−Dタンパク質、および、敗血症を防止または処置するための個体へのその投与に関連する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
肺の表面活性物質は肺における正常な肺力学およびガス交換のために不可欠である。肺の表面活性物質はII型上皮細胞によって産生され、肺における表面張力を低下させる表面活性物質の能力を与えるリン脂質成分から構成される。加えて、コラーゲン性のレクチンドメイン含有ポリペプチドであるコレクチンと呼ばれる表面活性物質と会合するタンパク質がいくつか存在する。これらの表面活性タンパク質の1つ、すなわち、表面活性タンパク質D(SP−D)と呼ばれる表面活性タンパク質が、表面活性物質の構造および機能ならびに宿主防御に関与していると考えられる。
【0004】
敗血症は、血流における甚だしい細菌感染から生じる高レベルの細菌エンドトキシンによって典型的には引き起こされる重篤な、多くの場合には命を脅かす疾患である。敗血症は、多くの体組織(例えば、腎臓、肝臓、膀胱および皮膚など)から生じ得る一方で、肺における初期感染に由来することが多い。
【0005】
どのような年齢の個体であっても、敗血症に罹る可能性がある。幼児は、その免疫系が未成熟であるために、敗血症に特に罹りやすい。例えば、低出産体重児(1500g未満)はしばしば、重篤な全身性の感染症(Kaufman他(2004)、Clin Microbiol Rev、17:638〜680;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)、および、敗血症に関連したショックを経験し、これらは、子宮内での絨毛性羊膜炎および出生後の肺感染症にさらされることによってよく起こる(Goldenberg他(2000)、N Engl J Med、342:1500〜1507;Wenstrom他(1998)、Am J Obstet Gynecol、178:546〜550;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。その未成熟のために、早産新生児の肺は非常に透過性であり、タンパク質、生物、毒素および媒介因子が肺から全身循環に漏れることを許している(Pringle他(1986)、Clin Obstet Gynecol、29:502〜513;Jobe他(1985)、J Appl Physiol、58:1246〜1251;Bland他(1989)、J Clin Invest、84:568〜576;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。新生児敗血症症候群は、肺炎および絨毛性羊膜炎に関連する場合、満期児および早産児の両方における新生児の発病および死亡の一般的な原因である(Kaufman他(2004)、Clin Microbiol Rev、17:638〜680;Dempsey他(2005)、Am J Perinatal、22:155〜159;Jiang他(2004)、J Microbiol Immunol Infect、37:301〜306;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。以前の研究では、全身的炎症が、早産新生児の子ヒツジにおいて、気管内リポ多糖(LPS)が全身循環に漏れることによって引き起こされた(Kramer他(2002)、Am J Respir Crit Care Med、165:463〜469;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0006】
肺感染および全身的感染に対する新生児の罹りやすさは、その肺構造および免疫系の両方が未成熟であることに関連している。早産児の肺は、表面活性タンパク質(SP)AおよびDを含めて、肺の表面活性タンパク質および生得的な宿主防御タンパク質が不十分である(Mason他(1998)、Am J Physiol、275:L1〜L13;Miyamura他(1994)、Biochim Biophys Acta、1210:303〜307;Awasthi他(1999)、Am J Respir Crit Care Med、160:942〜94910〜12;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。新生児における呼吸困難のために使用される表面活性物質代償調製物はSP−BおよびSP−Cを含有するが、SP−A、SP−Dまたは他の生得的な宿主防御タンパク質を含有しない。肺のコレクチンが、ウイルス病原体、細菌病原体および真菌病原体から肺を守ることにおいて重要な役割を果たしている。SP−AおよびSP−Dはともに抗菌活性および抗炎症活性を有する(Mason他(1998)、Am J Physiol、275:L1〜L13;Crouch他(2001)、Annual Review of Physiology、63:521〜554;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−AおよびSP−Dの低下したレベルが、気管支肺異形成症(BPD)のモデルにおける肺の炎症(Awasthi,S.他(1999)、Am J Respir Crit Care Med、160:942〜949;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)に、また、嚢胞性線維症の小児における肺の炎症(Noah他(2003)、Am J Respir Crit Care Med、168:685〜691;Postle他(1999)、Am J Respir Cell Mol Biol、20:90〜98;von Bredow他(2003)、Lung、181:79〜88;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)に関連しており、そのような肺の炎症は疾患の病理発生に影響を及ぼす可能性があり、敗血症を引き起こす可能性がある。
【0007】
敗血症に対する個体の罹りやすさを低下させる方法、および、敗血症を処置する方法、具体的には、典型的には肺に天然に存在する免疫関連タンパク質の投与の使用によるそのような方法は、敗血症についての危険性があるすべての年齢の患者を処置するために有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、一般には、患者における肺感染および敗血症を防止および処置するための方法、および、SP−Dまたはそのフラグメントあるいはその組換え形態を含有する組成物に関連する。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態において、個体における敗血症を防止または処置する方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを個体に投与することによる方法が提供される。個体は、例えば、哺乳動物であり得、ヒトであり得る。個体は、例えば、成人、小児、幼児、新生または早産新生児であり得る。投与は、例えば、気管内投与、エアロゾル化または全身投与によって行うことができる。敗血症は、例えば、細菌感染症または肺感染症に由来し得る。ポリペプチドは組換えポリペプチドであり得る。組換えポリペプチドは、例えば、組換えヒト表面活性タンパク質Dであり得る。ポリペプチドは、例えば、体重1kgあたり約0.50mg、1mg、2mg、5mgまたは10mgのポリペプチドから、体重1kgあたり約15mg、20mg、30mg、40mg、50mgまたは100mgのポリペプチドの範囲で投与することができる。ポリペプチドは、例えば、体重1kgあたり約2mgのポリペプチドで投与することができる。SP−D配合物は、例えば、気管内投与、エアロゾル化または全身投与によって投与することができ、気管内投与、エアロゾル化または全身投与のために好適な形態であり得る。組換えポリペプチドは約5個のアミノ酸〜約375個のアミノ酸のアミノ酸配列を有することができる。
【0010】
本発明のさらなる実施形態において、個体における敗血症を防止または処置する方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドをコードする核酸を個体に投与することによる方法が提供される。
【0011】
本発明のさらなる実施形態において、個体におけるリポ多糖(LPS)の血漿への漏出を低下させる方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを個体に投与することによる方法が提供される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、個体における大腸菌細胞の血漿への漏出を低下させる方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを個体に投与することによる方法が提供される。
【0013】
本発明のさらなる実施形態において、個体における血漿中のエンドトキシンレベルを低下させる方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを個体に投与することによる方法が提供される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、肺からのエンドトキシンの放出を阻害する方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを投与することによる方法が提供される。
【0015】
本発明のさらなる実施形態において、気管内エンドトキシンの全身的影響から個体を保護する方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを個体に投与することによる方法が提供される。
【0016】
本発明のさらなる実施形態において、全身的炎症を防止する方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを個体に投与することによる方法が提供される。全身的炎症は、例えば、肺からのエンドトキシンの放出によって引き起こされ得る。
【0017】
本発明のなおさらなる実施形態において、肺感染症の個体を処置するための方法であって、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントを投与することによる方法が提供される。肺感染症は、例えば、細菌によって引き起こされ得る。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントを投与することによって、敗血症の危険性が低下するように、肺感染症の個体を処置するための方法が提供される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、SP−Dポリペプチドまたはその活性なフラグメントを含む医薬組成物が提供される。医薬組成物におけるSP−Dポリペプチドは、例えば、組換えSP−Dポリペプチドであり得る。組換えSP−Dポリペプチドは、例えば、組換えヒトSP−Dポリペプチドであり得る。SP−Dポリペプチドは、例えば、配列番号2または配列番号3に示される配列を含むことができる。さらに、SP−Dポリペプチドを含む医薬組成物は、例えば、医薬的に許容され得る分散化剤をさらに含むことができる。医薬組成物は、例えば、気管内投与、エアロゾル化または全身投与のために配合することができる。医薬組成物はまた、SP−Dポリペプチドが、例えば、体重1kgあたり約0.50mg、1mg、2mg、5mgまたは10mgのポリペプチドから、体重1kgあたり約15mg、20mg、30mg、40mg、50mgまたは100mgのポリペプチドの範囲で投与されるように配合することができる。医薬組成物は、SP−Dポリペプチドが、例えば、体重1kgあたり約2mgのポリペプチドで投与されるように配合することができる。
【0020】
本発明の他の実施形態において、SP−Dポリペプチドまたはその活性なフラグメントをコードする核酸を含有する医薬組成物が提供される。核酸は、例えば、配列番号1に示される配列を含むことができる。核酸はまた、例えば、アデノウイルスベクター内にコードされ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
肺は、吸入された粒子および微生物によって絶えず攻撃されており、それにもかかわらず、肺は著しく健康なままである。これは、大部分が、肺のコレクチン、表面活性タンパク質A(SP−A)および表面活性タンパク質D(SP−D)によるものである(Kingma,P.S.およびJ.A.Whitsett(2006)、Curr Opin Pharmacol、6:277〜83;Crouch,E.およびJ.R.Wright(2001)、Annu Rev Physiol、63:521〜54;Hawgood,S.およびF.R.Poulain(2001)、Annu Rev Physiol、63:495〜519;Whitsett,J.A.(2005)、Biol Neonate、88:175〜80;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−Dは、SP−Dの炭水化物認識ドメインと、生物表面の炭水化物成分との間における相互作用によって感染性生物を認識し、感染性生物と結合し、このことはさらには、肺胞のマクロファージによる感染性病原体のクリアランスを容易にする(Kishore,U.他(1996)、Biochem J、318:505〜511;Lim,B.L.他(1994)、Biochem Biophys Res Commun、202:1674〜80;Kuan,S.F.他(1992)、J Clin Invest、90:97〜106;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−D遺伝子の標的化された欠失を有するマウス(Sfptd−/−)は、徐々に悪化する肺気腫および炎症を発症し、このことは、感染性粒子と結合することに加えて、SP−Dが、肺の宿主防御細胞を調節することにおいて重要な役割を有し得ることを示している(Korfhagen,T.R.他(1998)、J Biol Chem、273:28438〜29443;Wert,S.E.他(2000)、Proc Natl Acad Sci USA、97:5972〜7;Clark,H.他(2002)、J Immunol、169:2892〜2899;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。肺の免疫系におけるその役割の結果として、SP−Dは、肺における微生物の成長およびその結果として生じた肺の損傷を制限するために設計された治療剤として開発中である。呼吸樹に加えて、SP−Dはまた、より低い濃度で血漿および多くの他の肺以外の組織(血管内皮細胞を含む)でも検出される(Stahlman,M.T.他(2002)、J Histochem Cytochem、50:651〜60;Honda,Y.他(1995)、Am J Respir Crit Care Med、152:1860〜6;Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、290:L1010〜L1017;Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Heart Circ Physiol、290:H2286〜H2294;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−Dの肺外レベルは、肺内SP−Dと類似する様式で感染時および他の炎症状態の期間中において増大する(Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、290:L1010〜L1017;Fujita,M.他(2005)、Cytokine、31:25〜33;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。しかしながら、肺外SP−Dの供給源および機能は大部分が不明である。本明細書中に記載されるように、予備的研究において、SP−Dは、肺のシステムを越えて宿主防御にも関与し、肺以外のシステムでは感染性病原体を排除することができ、また、宿主防御細胞を調節することができることが示される。
【0022】
SP−Dは、生得的な免疫分子のコレクチンファミリーの多量体糖タンパク質であり、気道上皮細胞によって分泌される。SP−Dは、細菌、ウイルス、真菌およびダニ抽出物を含めて、広範囲の様々な微生物病原体に結合し、これらを凝集させ(Kuan他(1992)、J Clin Invest、90:97〜106;Lim他(1994)、Biochem Biophys Res Commun、202:1674〜1680;van Rozendaal他(1999)、Biochim Biophys Acta、1454:261〜269;Hartshorn他(1996)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、271:L753〜L762;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)、また、細菌成分(例えば、LPS、ペプチドグリカンおよびリポテイコ酸など)に直接的に結合する(Crouch他(2001)、Annual Review of Physiology、63:521〜554;van de Wetering,J.K.他(2004)、Eur J Biochem、271:1229〜1249;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。多量体形態のSP−Dは、SP−Dが種々の微生物の表面でリガンドに結合して、それにより、微生物の凝集を誘導し、肺の病原体の免疫細胞媒介による認識およびクリアランスを刺激する微生物間のタンパク質架橋を形成することを可能にする(Hartshorn,K.他(1996)、Am J Physiol、271:L75362;Hartshorn,K.L.他(1998)、Am J Physiol、274:L958〜L969;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。これらの微生物または微生物成分と相互作用することにより、SP−Dは、肺胞のマクロファージの活性化を阻害することによって、肺の感染またはLPSにより誘導される炎症を制限する(Kuan他(1992)、J Clin Invest、90:97〜106;Van Rozendaal,B.A.他(1997)、Biochem Soc Trans、25:S656;van Rozendaal,B.A.他(1999)、Biochim Biophys Acta、1454:261〜9;Schaub,B.他(2004)、Clin Exp Allergy、34:1819〜26;Liu,C.F.他(2005)、Clin Exp Allergy、35:515〜521;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0023】
ほとんどの微生物リガンドがマンノースまたはグルコースを含有しており、SP−Dは、イノシトール、マルトース、マンノースおよびグルコースに優先的に結合することが知られている。SP−Aとは異なり、SP−Dは脂質Aドメインに結合せず(Van Iwaarden他(1994)、Biochem J、303(Pt2):407〜411;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)、しかし、LPSの連続したコアオリゴ多糖に結合する(Crouch他(1998)、Am J Respir Cell Mol Biol、19:177〜201;Crouch他(1998)、Biochim Biophys Acta、1408:278〜289;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。そのうえ、SP−Dの最大の分子寸法はSP−Aよりも5倍大きく、SP−Dは、SP−Aよりも大きい結合表面を有する(Crouch他(1998)、Am J Respir Cell Mol Biol、19:177〜201;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0024】
SP−DはそのC末端のレクチン様ドメインを介して大腸菌属の表面に結合する。さらに、SP−Dが病原体に結合することにより、肺の食細胞による病原体の殺傷が促進される(Mason他(1998)、Am J Physiol、275:L1〜L13;Crouch他(2001)、Annual Review of Physiology、63:521〜554;Kuan他(1992)、J Clin Invest、90:97〜106;Lim他(1994)、Biochem Biophys Res Commun、202:1674〜1680;van Rozendaal他(1999)、Biochim Biophys Acta、1454:261〜269;Crouch他(1998)、Am J Respir Cell Mol Biol、19:177〜201;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−Dを欠失するマウス(Sftpd−/−マウス)は肺の感染および炎症に非常に罹りやすい(LeVine他(2004)、Am J Respir Cell Mol Biol、31:193〜199;LeVine他(2001)、J Immunol、167:5868〜5873;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0025】
SP−Dは肺胞のマクロファージを調節する
感染性生物と結合することはSP−D生理学の重要な特徴であるが、SP−D欠損のマウスモデルにより、肺の宿主防御におけるこのタンパク質のより複雑な役割が明らかにされた。Sftpd遺伝子の欠失を有するマウスは正常に生存したが、高まった表面活性脂質プールサイズを有し、肺の炎症および気腔の拡張を自然発症した(Korfhagen,T.R.他(1998)、J Biol Chem、273:28438〜29443;Wert,S.E.他(2000)、Proc Natl Acad Sci USA、97:5972〜7;Clark,H.他(2002)、J Immunol、169:2892〜2899)。ベースライン状態での肺胞のマクロファージ活性が、反応性酸素化学種およびメタロプロテイナーゼ(MMP)を放出したアポトーシス性マクロファージおよび肥大した泡沫状マクロファージの増大した数によって明らかであるように、Sftpd−/−マウスでは上昇する。ウイルス病原体(インフルエンザAおよび呼吸器合胞体ウイルスを含む)の取り込みおよびクリアランスがSftpd−/−マウスでは不十分であった(LeVine他(2004)、Am J Respir Cell Mol Biol、31:193〜199;LeVine他(2001)、J Immunol、167:5868〜5873)。対照的に、B群連鎖球菌属およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenza)のクリアランスは変化しなかった(LeVine,A.M.他(2000)、J Immunol、165:3934〜3940;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。しかしながら、酸素ラジカルの放出および前炎症性媒介因子(TNFα、IL−1およびIL−6)の産生が、ウイルス病原体または細菌病原体のいずれかにさらされたとき、Sftpd−/−マウスにおいて増大した。このことは、SP−Dがまた、病原体のクリアランスとは無関係である感染性攻撃の間に肺胞のマクロファージを調節することにおいて重要な役割を果たすことを示している(LeVine他(2004)、Am J Respir Cell Mol Biol、31:193〜199;LeVine他(2001)、J Immunol、167:5868〜5873;LeVine,A.M.他(2000)、J Immunol、165:3934〜3940)。
【0026】
肺において、SP−Dは肺胞のII型上皮細胞および他の非線毛性細気管支上皮細胞によって産生され、肺胞のマクロファージおよびII型細胞によって除かれる(Crouch,E.他(1992)、Am J Physiol、263:L60〜L66;Voorhout,W.F.他(1992)、J Histochem Cytochem、40:1589〜97;Crouch,E.他(1991)、Am J Respir Cell Mol Biol、5:13〜18;Dong,Q.およびJ.R.Wright(1998)、J.R.Am J Physiol、274:L97〜105;Herbein,J.F.他(2000)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、278:L830〜L839;Kuan,S.F.他(1994)、Am J Respir Cell Mol Biol、10:430〜436;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。肺外SP−Dの供給源、および、血漿中のSP−Dレベルを制御する機構はこれまで不明である。血漿に存在するSP−Dは、肺以外で産生される可能性があり、また、SP−Dの全身的レベルの制御が、全身的な発現経路の活性化によるか、または、全身的なSP−Dクリアランスを変化させることによるかのいずれかで行われる可能性がある。
【0027】
SP−Dはいくつかの免疫細胞シグナル伝達経路に関わっている。SP−Dは、炭水化物認識ドメイン(CRD)と、CD14におけるN結合型オリゴ糖との間での相互作用を介してLPS受容体のCD14と結合する(Sano,H.他(2000)、J Biol Chem、275:22442〜22451;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−Dはまた、CD14と、LPSの滑面形態および粗面形態の両方との間での相互作用を阻害する(Sano,H.他(2000)、J Biol Chem、275:22442〜51)。加えて、CD14受容体のレベルが、Sftpd−/−マウスから得られた肺胞マクロファージの表面では低下し、これに対して、可溶性CD14のレベルが増大する(Senft,A.P.他(2005)、J Immunol、174:4953〜4959;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。可溶性CD14のレベルが、MMP−9遺伝子またはMMP−12遺伝子の標的化された欠失を有するSftpd−/−マウスでは野生型のレベルに戻った。このことは、SP−Dが、CD14受容体のレベルを、受容体のMMP−9媒介またはMMP−12媒介によるタンパク質分解的切断を阻害することによって制御することを示唆している(Senft,A.P.他(2005)、J Immunol、174:4953〜4959)。
【0028】
SP−Dは、LPS、ペプチドグリカンおよびリポテイコ酸に対する炎症性応答を開始することに関与するtoll様受容体(TLR)−2およびTLR−4の細胞外ドメインと結合する(Ohya,M.他(2006)、Biochemistry、45:8657〜8664;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−AはペプチドグリカンによるTLR−2の活性化を阻害する(Sato,M.他(2003)、J Immunol、111:417〜25;Murakami,S.他(2002)、J Biol Chem、277:6830〜7;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)が、TLR−2またはTLR−4のシグナル伝達に対するSP−Dの影響は現在不明である。
【0029】
Gardaiらは、SP−Dが、シグナル調節タンパク質α(SIRPα)およびカルレチクリン/CD91の相反する作用を介して肺における抗炎症性プロセスおよび前炎症性プロセスを同時に媒介するかもしれないモデルを提案した(Gardai,S.J.他(2003)、Cell、115:13〜23;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。Gardaiらのモデルでは、結合していない状態において、SP−DのCRDが、マクロファージの活性化を、NFκBのP38媒介による活性化を阻害するSIRPαに結合することによって阻害することが示される。対照的に、SP−DのCRDが微生物のリガンドによって占有されるならば、SIRPαに結合することが阻害され、コレクチンがマクロファージ活性化受容体のカルレチクリン/CD91に結合する。カルレチクリン/CD91はその後、前炎症性媒介因子を誘導し、かつ、肺胞のマクロファージを活性化するNFκBのP38媒介による活性化を刺激する。従って、CRDにおける感染性粒子の存在または不在、ならびに、結合した受容体のタイプに依存して、SP−Dは炎症の強化または抑制のいずれかをもたらすことができる。
【0030】
SP−Dは、酸化剤感受性経路を介してNFκBの活性に影響を及ぼす(Yoshida,M.他(2001)、J Immunol、166:7514〜9;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。Sftpd−/−マウスから得られた肺胞のマクロファージは、増大した量の過酸化水素を産生する。Sftpd−/−マウスにおける反応性酸素化学種の増大には、組織脂質ペルオキシドおよび反応性カルボニルをはじめとする酸化ストレスのマーカーにおける増大が伴い、これはさらには、NFκBを活性化し、MMPの産生を増大させた。
【0031】
SP−Dはまた、細菌抗原のMHCクラスII提示およびその後のT細胞の活性化に影響を及ぼす(Hansen,S.他(2006)、Am J Respir Cell Mol Biol;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。興味深いことに、SP−Dは骨髄由来の樹状細胞による抗原提示を高め、これに対して、肺の樹状細胞による抗原提示が阻害された。これらの結果は、全身的な宿主防御細胞に対するSP−Dの影響、および、全身的SP−Dにより調節されるシグナル伝達経路が、肺において認められるものとは異なり得ることを示している。
【0032】
SP−Dの発現
SP−Dは、ヒト第10染色体上のSP−A遺伝子の非常に近くに位置する1つだけの遺伝子(Sftpd)によってコードされる(Crouch,E.他(1993)、J Biol Chem、268:2976〜83;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−Dが肺において最初に認められ、主に呼吸器のII型上皮細胞および他の非線毛性細気管支上皮細胞によって発現される(Crouch,E.他(1992)、Am J Physiol、263:L60〜L66;Voorhout,W.F.他(1992)、J Histochem Cytochem、40:1589〜97;Crouch,E.他(1991)、Am J Respir Cell Mol Biol、5:13〜18;Dong,Q.およびJ.R.Wright(1998)、J.R.Am J Physiol、274:L97〜105;Herbein,J.F.他(2000)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、278:L830〜L839;Kuan,S.F.他(1994)、Am J Respir Cell Mol Biol、10:430〜436)が、SP−DのmRNAおよびタンパク質が多くの肺以外の組織において検出される。SP−Dの免疫染色が、血管内皮、ならびに、耳下腺、汗腺、涙腺、皮膚、胆嚢、胆管、膵臓、胃、食道、小腸、腎臓、副腎皮質、下垂体前葉、子宮頸管腺、精嚢および尿路の上皮細胞において検出される(Stahlman,M.T.他(2002)、J Histochem Cytochem、50:651〜660;Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、290:L1010〜L1017;Fisher,J.H.およびR.Mason(1995)、Am J Respir Cell Mol Biol、12:13〜18;Motwani,M.他(1995)、J Immunol、155:5671〜5677;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−DのmRNAの肺外レベルが炎症に応答して増大し、しかし、その肺外レベルは、肺で検出されるmRNAレベルよりも数倍低く、このことは、異なる機構が肺外対肺内のSftpd発現を制御することを示している(Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、290:L1010〜L1017)。
【0033】
SP−DのmRNAが妊娠中期のマウスまたはラットの肺において最初に検出され、出生前および新生児期の間において増大する(Crouch,E.他(1991)、Am J Respir Cell Mol Biol、5:13〜18)。SP−DのmRNAが、細菌エンドトキシン、吸入微生物および高酸素症によって引き起こされる肺傷害の後で増大する(Cao,Y.他(2004)、J Allergy Clin Immunol、113:439〜444;Mcintosh,J.C.他(1996)、Am J Respir Cell Mol Biol、15:509〜519;Jain−Vora,S.他(1998)、Infect Immun、66:4229〜4236;Aderibigbe,A.O.他(1999)、Am J Respir Cell Mol Biol、20:219〜227;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。マウスのSftpdプロモータは、AP−1ファミリー、フォークヘッド転写因子(FoxA1およびFoxA2)、甲状腺転写因子(TTF)−1、活性化T細胞の核因子(NFAT)についてのコンセンサスな転写因子結合配列、ならびに、CCAATエンハンサー結合タンパク質(C/EBP)についての多数の部位を含有する(Lawson,P.R.他(1999)、Am J Respir Cell Mol Biol、20:953〜963;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。AP−1ファミリーに含まれるタンパク質のJunBおよびJunDはSftpdプロモータ活性を高め、これに対して、c−Junおよびc−FosはSftpdの転写を阻害した(He,Y.他(2000)、J Biol Chem、275:31051〜31060;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。FoxA1およびFoxA2のコンセンサスな結合部位の欠失は転写を阻害した(He,Y.他(2000)、J Biol Chem、275:31051〜31060)。C/EBPはSftpdの転写を活性化する(He,Y.他(2000)、J Biol Chem、275:31051〜31060;Gotoh,T.他(1997)、J Biol Chem、272:3694〜3698;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。C/EBPはまた、全身的な急性期応答にも関与し、このことは、全身的なSP−D発現が、全身的感染に対する生理学的応答の一部であり得ることを示している。NFATもまた、カルシニューリン依存的経路およびTTF−1との直接的な相互作用を介してSftpdプロモータ活性を促進させる(Dave,V.他(2004)、J Biol Chem、279:34578〜34588;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0034】
肺以外の組織におけるSP−Dの役割
肺以外の組織におけるSP−Dの相対的に低い濃度のために、SP−Dの生理学的役割および治療的可能性の研究は大部分が呼吸樹に限られている。SP−Dが低いレベルでヒト血漿に存在しており、多数の研究では、感染時および/または肺毒物にさらされているときの血漿中のSP−Dにおける増大が明らかにされている(Honda,Y.他(1995)、Am J Respir Crit Care Med、152:1860〜6;Kuroki,Y.他(1998)、Biochim Biophys Acta、1408:334〜345;Greene,K.E.他(2002)、Eur Respir J、19:439〜46;Greene,K.E.他(1999)、Am J Respir Crit Care Med、160:1843〜1850;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。この増大は、肺からのSP−Dの漏出を表すと解釈されており、いくつかのグループが現在、血漿中のSP−Dレベルを肺傷害の臨床的バイオマーカーとして使用するための方法を開発中である。しかしながら、これらの研究において肺の傷害および炎症を誘導するために使用された薬剤の多くはまた、全身的な傷害および炎症を誘導する。従って、血漿SP−Dのプールサイズに対する肺供給源対全身的供給源の相対的な寄与は不明である。
【0035】
羊水および女性の生殖管に存在するSP−Dは子宮内感染を防ぐことができる(Oberley,R.E.他(2004)、Mol Hum Reprod、10:861〜870;Leth−Larsen,R.他(2004)、Mol Hum Reprod、10:149〜154;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。SP−Dは涙に存在し、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による角膜上皮細胞への侵入を阻害する(Ni,M.他(2005)、Infect Immun、73:2147〜2156;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。これらの知見は肺外SP−Dについての生理学的目的を示しているが、血漿中のSP−Dが全身的な宿主防御細胞を調節することができること、または、全身的な病原体と結合し、そのクリアランスを促進させることができることは今後、明らかにされなければならない。
【0036】
SP−Dの臨床的適用
肺において、SP−Dは、肺実質の精巧な一体性を維持しながら、侵入途中の病原体のクリアランスを同時に容易にする、肺の感染に対する肺胞のマクロファージによる制御された応答を促進する前炎症的性質および抗炎症的性質の両方を有する。SP−Dの抗炎症的性質により、このタンパク質が、喘息、気管支肺異形成症、嚢胞性線維症、成人呼吸窮迫症候群または慢性的感染に関連する持続した炎症からの損傷を制限し得ることが示される。この指摘の裏付けとして、SP−Dまたは短縮形態のSP−Dの投与は、アレルギー性気道過敏性に苦しむマウスにおけるアレルギー性応答を低下させる(Liu,C.F.他(2005)、Clin Exp Allergy、35:515〜521;Haczku,A.他(2004)、Clin Exp Allergy、34:1815〜1818;Kasper,M.他(2002)、Clin Exp Allergy、32:1251〜1258;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0037】
SP−D欠損が早産に関連し、人工的な表面活性物質の代償治療が呼吸窮迫症候群の早産児において広く使用される(他の肺疾患における表面活性物質治療の臨床研究が進行中である)が、SP−Dは人工的な表面活性物質の構成成分ではない。マウスモデルでは、SP−Dの欠損が肺の感染に対する増大した感受性をもたらすことが明瞭に明らかにされる(LeVine他(2004)、Am J Respir Cell Mol Biol、31:193〜199;LeVine他(2001)、J Immunol、167:5868〜5873;LeVine,A.M.他(2000)、J Immunol、165:3934〜3940)。SP−DをSftpd−/−マウスにおいて回復させることにより、肺の微生物クリアランスおよび炎症における欠陥が取り消される(Zhang,L.他(2002)、J Biol Chem、277:38709〜38713;LeVine,A.M.他(1999)、Am J Respir Cell Mol Biol、20:279〜286;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。加えて、気管内投与された組換えSP−Dは生存を著しく改善し、また、気管内LPSにさらされた早産新生児ヒツジでのLPSの全身的放出、および、ベンチレータ誘導による肺傷害を低下させる(Ikegami,M.他(2006)、Am J Respir Crit Care Med;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。まとめると、これらの研究から、免疫欠陥または表面活性物質欠損を有する患者における肺感染時の抗菌剤としてのSP−Dの潜在的価値が明らかにされる。肺のSP−Dレベルが感染に対する生理学的応答の一部として増大することを考慮すると、このプロセスを感染の初期段階の間に外因性SP−Dにより補うことはまた、無傷の免疫系を有する患者に利益をもたらし得る。
【0038】
肺において、SP−Dは、侵入途中の病原体のクリアランスを促進すること、および、LPS誘導による炎症の損傷化影響を制限することに関与する。しかしながら、肺システムの外部での感染が最も臨床的に顕著な発病および死亡の一部を誘導する。先天性肺炎または周産期に罹った肺炎を有する幼児は、効果的な抗生物質処置が出生後直ちに施されたときでさえ、脾臓敗血症および死亡の危険性が高い(Kaufman他(2004)、Clin Microbiol Rev、17:638〜680;Goldenberg他(2000)、N Engl J Med、342:1500〜1507;Wenstrom他(1998)、Am J Obstet Gynecol、178:546〜550;Dempsey他(2005)、Am J Perinatol、22:155〜159;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。早期発症敗血症における先天性肺炎の高い発生率は、感染が、多くの場合、子宮内または出生時の病原体の吸引によって生じることを示している。絨毛羊膜炎は未熟分娩の危険性を増大させ、また、新生児の敗血症および敗血症関連ショックに強く関連する(Dempsey他(2005)、Am J Perinatol、22:155〜159;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。早産新生児の肺は非常に透過性であり(Jobe他(1985)、J Appl Physiol、58:1246〜1251;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)、肺からの前炎症性媒介因子および生物の全身的拡大を許している(Kramer他(2002)、Am J Respir Crit Care Med、165:463〜469;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。早産児だけにおいて、出生時の体重が1500グラム未満である乳児の約の20%が、病院から退院する前に、全身的感染と診断される(Stoll,B.J.他(2002)、Pediatrics、110:285〜291;Brodie,S.B.他(2000)、Pediatr Infect Dis J、19:56〜65;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。これらの乳児の大部分が、敗血症、感染に対する宿主由来の炎症性応答の臨床的な徴候および症状を発症する(Bone,R.C,(1996)、Jama、276:565〜566;Angus,D.C.他(2001)、Crit Care Med、29:1303〜1310;Glauser,M.P.他(1991)、Lancet、338:732〜736;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。究極的には、感染と診断された早産児のおよそ20%のうち、18%が敗血症のために死亡する(Stoll,B.J.他(2002)、Pediatrics、110:285〜291;Brodie,S.B.他(2000)、Pediatr Infect Dis J、19:56〜65)。
【0039】
B群連鎖球菌およびグラム陰性細菌(大腸菌を含む)は、先天性肺炎を一般に引き起こす生物である(Stoll他(2005)、Pediatr Infect Dis J、24:635〜639;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。細菌そのものではなく、むしろ、微生物の毒素およびLPSの全身的拡大により、ショックをもたらす細胞性応答および体液性応答が開始され得る(Grandel他(2003)、Crit Rev Immunol、23:267〜299;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。敗血症ショックは、多臓器機能障害、多臓器不全および死を多くの場合にはもたらす複雑な病態生理学的状態である(Murphy他(1998)、New Horiz、6:181〜193;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。血液pH、血中塩基過剰(BE)における低下、および、pCO2における増大(これらは本研究でのコントロール群において明らかにされた)は、早産児における敗血症ショックの臨床的経過に典型的である。血管収縮、肺高血圧症、臓器循環の悪化、および、代謝性アシドーシスがしばしば、敗血症の存在に関係する。下記で例示される実施例において、本発明者らは、SP−Dが全身的な生得的免疫系の重要な構成要素であり得ることを示し、また、全身的感染を処置することにおけるSP−Dの治療的可能性を評価するために、全身的宿主防御におけるSP−Dの生理学的機能を明らかにしている。
【0040】
SP−Dによる処置
外因的に調製されたSP−Dは、阻止されないならば、最終的には全身的な敗血症を引き起こし得る様々な疾患(例えば、肺感染症など)を処置するために有用であり得る。SP−Dの投与が個体において敗血症の危険性を低下させ得るかどうかを明らかにするために、早産新生児の子ヒツジに大腸菌由来のリポ多糖エンドトキシンを滴注し、その後、早産新生児の子ヒツジを、本明細書中に記載されるようにSP−Dにより処置した。その後、生存率、生理学的な肺機能、肺の炎症および全身的な炎症、ならびに、血漿中のエンドトキシンレベルを評価した。本明細書中に示されるように、気管内の組換えヒト表面活性タンパク質−D(rhSP−D)は、早産新生児において換気時に肺から放出されたエンドトキシンによって引き起こされるショックを防止した。加えて、SP−D遺伝子を有しないか、または、ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的なSP−D導入遺伝子を発現するか、または、SP−Dの変異型導入遺伝子を発現する遺伝子組換えマウス系統を、このタンパク質の構造/機能研究を可能にするために開発した。本明細書中に示されるように、SP−Dの投与は、全身的LPSにより誘導される炎症を阻害し、また、盲腸結紮および穿刺における炎症を軽減させる。加えて、SP−Dの投与は、致死量のLPSを投与した後における生存および組織傷害を改善し、血漿LPSのクリアランス速度を増大させ、また、LPSの全身的漏出および肺漏出を防止する。従って、SP−D処置は、敗血症を処置または防止するために有用であり得る。
【0041】
子ヒツジにおける実験的研究の結果
組換えヒト表面活性タンパク質−D(rhSP−D)を、実施例1に記載されるような全長のヒトSP−DをコードするcDNAによるCHO DHFR細胞のトランスフェクションによって合成した。SP−Dを、実施例1に記載されるようなイオン交換クロマトグラフィおよびアフィニティ精製を使用して培養培地から単離した。
【0042】
生物学的に活性な組換えヒトSP−Dおよび組換えラットSP−Dがインビトロで以前に作製されている(Erpenbeck他(2005)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、288:L692〜698;Clark他(2002)、J Immunol、169:2892〜2899;Clark他(2002)、Immunobiology、205:619〜631;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。全長の組換えSP−Dを本研究では利用した。2mg/kgのrhSP−Dの用量を早産の子ヒツジに与えた。130dのGAの子ヒツジ(出産予定日、150日)は表面活性物質欠損であり(Docimo他(1991)、Anat Rec、229:495〜498;Ikegami他(1981)、Am J Obstet Gynecol、141:227〜229;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)、生存するための表面活性物質処置および機械的換気を必要とする。表面活性物質プールサイズが時間とともに変化し、新生児動物において最大であり(Ikegami他(1993)、Semin Perinatol、17:233〜240;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)、時間の進行とともに低下して成体レベルになる(Ikegami他(2000)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、279:L468〜L476;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。処置のための表面活性物質の臨床的用量は正常な新生児における表面活性物質プールサイズに類似する(Ikegami他(1980)、Pediatr Res、14:1082〜1085;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。満期新生児の肺におけるSP−Dの正確な量は不明である。出産間近(175dのGA)のヒヒ(出産予定日−185dのGA)におけるSP−Dは気管支肺胞洗浄液(BALF)において0.02mg/肺であり、肺組織において0.2mg/肺であった(Awasthi他(1999)、Am J Respir Crit Care Med、160:942〜949;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。出産間近のヒヒは体重が1kg未満であるので、本研究で使用されたrhSP−Dの用量(2mg/kg)は、満期新生児の子ヒツジについてのSP−Dプールサイズよりも少なくとも10倍高いことが推定された。
【0043】
処置用の動物を調製するために、予定日前の子ヒツジを、実施例2に記載されるように130dの在胎齢で帝王切開によって分娩させた。気管内チューブを気管内に結び、過剰な胎児肺液を除いた。肺におけるリポ多糖(LPS)の均一な分布を容易にするために、実施例3に記載されるように、0.1mg/kgの大腸菌由来LPSを1ml(25mg)のSurvantaと混合し、最初の呼吸の前に子ヒツジに投与し、その後、10mlの空気を投与した。
【0044】
その後、子ヒツジを、実施例4に記載されるように、Survanta単独(コントロール群)、または、SurvantaおよびrhSP−D(処置群)のいずれかにより処置した。動物を、実施例4に記載されるように、注意深くモニターしながら5時間換気した。処置後5時間で、それぞれの動物を、実施例4に記載されるように、静脈内投与による25mg/kgのペントバルビタールで深く麻酔し、100%酸素でしばらく換気した。
【0045】
子ヒツジの組織を分析する方法が実施例5〜実施例12に記載される。実施例5は、子ヒツジの組織を処理およびサンプル分析のために調製する方法を詳しく記載する。実施例6は、使用されたデータ分析方法を詳しく記載する。実施例7は、肺組織を処理するために使用された方法を記載する。
【0046】
rhSP−Dの投与は、新生児の子ヒツジを気管内エンドトキシンの全身的影響から保護することが見出された。5匹の子ヒツジをそれぞれの群において調べた。体重(コントロール:3.2±0.3kg、rhSP−D:3.0±0.2kg)、臍血pH(コントロール:7.33±0.02、rhSP−D:7.31±0.04)および性別(両方の群において3匹のメスおよび2匹のオス)を処置群およびコントロール群の間で等しく分布させた。コントロール群において、5匹中4匹の子ヒツジが、5時間の研究期間が終了する前に死亡した。対照的に、rhSP−Dにより処置されたすべての子ヒツジが生存した(図1)。動物が死亡したとき、死亡直前に得られたデータを群間の比較のために使用した。コントロール群におけるほとんどの死亡が4時間〜5時間の間で生じた。
【0047】
気管内投与後、エンドトキシンが、リムルス細胞分解産物アッセイによって評価されたとき、両方の動物群で、30分が経過したとき、血漿において検出された(図2A)。血漿中のエンドトキシンレベルがコントロールの子ヒツジでは増大し続けたが、rhSP−Dにより処置された子ヒツジでは、実験の継続期間中、増大しなかった。死亡前の収縮期血圧は、3時間が経過したとき、これらの群の間において類似しており、その後、コントロールでは低下し、しかし、rhSP−D処置の動物では低下しなかった(図2B)。
【0048】
LPSの顕著な全身的影響が、低下した血液pH、血中塩基過剰(BE)(図3)、および、増大したpCO2(図4A)によって示されるように、コントロール群において、4時間が経過した後で認められた。対照的に、血液pH、BEおよびpCO2が、rhSP−D処置の動物では5時間の実験の期間中を通して安定したままであった。ヘマトクリット、カリウム、カルシウムおよびグルコースのレベルは両方の群について類似していた。PO2は、この在胎齢では比較的不安定であり、動脈管開存症に関連する可能性があるが、これらの群の間には違いがなかった(データは示されず)。
【0049】
肺胞細胞をBALF液から単離する方法が実施例8に記載される。遠心分離後の肺ホモジネート(BALF)におけるrhSP−Dのレベルおよび血清中のrhSP−Dのレベルを測定する方法が実施例9に記載される。使用された組織学方法が実施例10に記載される。エンドトキシンおよびサイトカインのレベルを実施例11に記載されるように測定した。RNA分析を実施例12に記載されるように行った。
【0050】
前炎症性サイトカインのmRNA(IL−1β、IL−6およびIL−8)のレベルが、rhSP−D処置の動物と比較されたとき、コントロール動物の脾臓および肝臓において増大した。このことは、LPSがrhSP−Dの不在下では肺から全身循環に漏出することを示している(図5Aおよび図5B)。IL−10およびTNFαのmRNAの脾臓および肝臓でのレベルは両方の動物群において低かった(データは示されず)。血漿中のIL−8が気管内LPSの後においてコントロール群では著しく増大し、rhSP−D処置のヒツジでは著しくより低くなっていた(図5D)。血漿中のIL−1βは両方のヒツジ群においてアッセイの検出可能レベルよりも低かった(0.8pg/ml未満)(データは示されず)。
【0051】
下記の表1は、BALFにおけるWBC、炎症性細胞および総タンパク質を示す。BALFにおける好中球の数は両方の群について類似していたが、LPSを受けなかったコントロール動物について以前に示されたよりも10倍大きかった(Kramer,B.W.他(2002)、Am JRespir Crit Care Med、165:463〜469:これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。BALFにおける過酸化水素および総タンパク質は2つの群の間において異なっていなかった。アポトーシス細胞の割合および壊死細胞の割合もまた、両方の群において類似していた(表1)。rhSP−Dの抗炎症性効果と一致して、前炎症性サイトカインのIL−1βのmRNAが、rhSP−Dにより処置された動物の肺では著しく低下した(図5C)。rhSP−Dは、肺ホモジネートの上清におけるIL−1βのレベルを、コントロールにおける21.6±3.6ng/mlから、rhSP−Dによる処置の後での12.6±1.4ng/mlに低下させた(p<0.05)。同様に、rhSP−DはIL−6を7.7±0.8ng/mlから2.3±1.2ng/mlに低下させた(p<0.05)。IL−8は、コントロール群またはrhSP−D処置群のいずれにおいてもELISAによって検出することができなかった。肺の炎症がrhSP−D処置群およびコントロール群の両方において認められた(図5A、B)。図6は、ヘマトキシリンおよびエオシンでの染色による肺の形態学(6Aおよび6B)、ならびに、IL−8の免疫組織化学(6Cおよび6D)およびIL−1βの免疫組織化学(6Eおよび6F)を示すいくつかの組織学的画像を例示する。IL−8(図6Cおよび6D)およびIL−1β(図6Eおよび6F)についての増大した免疫染色が両方の動物群において観測され、しかし、両方のサイトカインについての染色の増大した程度および強度がコントロール群において観測された。このことは、気管内rhSP−D処置が炎症性細胞におけるサイトカインのIL−8およびIL−1βのレベルを低下させたことを示している。
【表1】
【0052】
rhSP−Dの投与はエンドトキシン暴露後の肺力学を変化させなかった。目標の一回換気量を維持するために使用された換気圧は両方の群において類似していた(図4B)。同様に、動的肺コンプライアンスおよび圧力−体積曲線は、図7に示されるように、rhSP−D処置によって変化しなかった。
【0053】
BALF、肺ホモジネートおよび血漿におけるrhSP−Dのレベルを、ELISAによって両方の群において気管内投与後5時間で測定し(下記の表2)、また、BALFにおける免疫ブロットによって測定した(図8)。rhSP−Dの存在が、コントロール群からではなく、rhSP−D群から得られたBALF、肺ホモジネートおよび血漿において明らかにされた。血漿におけるrhSP−Dの存在により、肺からのその漏出が明らかにされる。
【表2】
【0054】
本明細書中に示されるように、気管内rhSP−Dの投与は、早産新生児の子ヒツジを肺内大腸菌LPSの全身的影響から保護することができた。肺の炎症がrhSP−Dによって阻止された一方で、LPSの全身的影響が、血漿中のLPSレベルおよび全身的炎症の証拠によって示されるように、rhSP−Dによって改善された。以前の研究では、気管内LPSによって引き起こされた全身的炎症が、130dのGAで認められたが、141dのGAでは認められなかったので、胎齢依存的であったことが明らかにされた(Kramer,B.W.他(2002)、Am J Respir Crit Care Med、165:463〜469)。
【0055】
マウス研究:肺および全身性の炎症および感染に対するSP−Dの影響
SP−Dが、全身的なLPS誘導の炎症を制限するかを明らかにするために、C57BL/6野生型マウスのモデルを利用した。非致死量の大腸菌0111:B4のLPSを、化学量論量の精製された組換えヒトSP−Dとともに、または、組換えヒトSP−Dを伴うことなく、尾静脈注入によって投与した(それぞれの処置群についてn=5)。LPS(5μg/kg)を、コントロールの緩衝液、または、増大する濃度の組換えヒトSP−Dとともに投与し、サイトカイン応答を注入後2時間で血漿において測定した。SP−DはIL−6およびTNFαのレベルを濃度依存的な様式で著しく低下させ、150μg/kgのSP−DはIL−6レベルおよびTNFαレベルにおける40%および50%の最大減少をそれぞれもたらした(それぞれについてp<0.01)(図9)。
【0056】
LPSが注入前にSP−Dとプレインキュベーションされたので、この実験は、LPS誘導による全身的炎症に対するSP−Dの影響を評価するための最適な条件を表した。血液中に循環するLPSを突き止め、阻害するための全身的SP−Dの可能性を評価するために、SP−DをLPS注入前30分およびLPS注入後30分で尾静脈注入によって投与し、サイトカイン応答を2時間後に血漿において測定した(それぞれの処置群についてn=5)(図10)。SP−DがLPS注入前30分で投与されたとき(p<0.01)、または、LPS注入と一緒に投与されたとき(p<0.01)、全身的なIL−6レベルが著しく低下した。IL−6のレベルはまた、SP−DがLPS後30分で投与されたときにはより低くなっており、しかし、結果は統計学的有意には達しなかった(p=0.09)。まとめると、上記の結果は、循環しているSP−Dにより、全身的なLPS誘導による炎症が阻害され得ること、および、感染時における増大する全身的SP−Dレベルの生理学的目的が、全身的LPSを捕捉し、LPSにより誘導される炎症の損傷化作用を制限することであることを示している。
【0057】
インビトロ研究では、SP−Dが、直接的なLPS結合、CD14阻害およびTLR4結合をはじめとする、LPSのシグナル伝達経路におけるいくつかの段階に影響を及ぼし得ることが示される(Sano,H.他(2000)、J Biol Chem 275:22442〜22451;Senft,A.P.他(2005)、J Immunol、174:4953〜4959;Ohya,M.他(2006)、Biochemistry、45:8657〜8664;Gardai,S.J.他(2003)、Cell、115:13〜23)。SP−DはLPSのコアオリゴ多糖に対する大きい親和性を有しており、しかし、相対的親和性は、用いられた細菌LPSの株に依存して変化する。対照的に、CD14およびTLR4のSP−D結合が、SP−Dと、LPSとの相互作用とは無関係に生じる。従って、SP−Dが、LPS結合に依存または非依存である経路を介して、LPS誘導による全身的炎症を阻害するかを明らかにするために、低SP−D親和性および高SP−D親和性のLPS血清型により誘導される炎症に対するSP−Dの影響を比較した。ELISAに基づくSP−D LPS結合アッセイを使用して、数株の大腸菌株から得られたLPSについてのSP−Dの結合親和性を測定した。大きい結合親和性を有する1つの株(大腸菌0111:B4)、および、低い結合親和性を有する1つの株(大腸菌0127:B8)が特定された(図11A)。低結合性LPSまたは高結合性LPSのいずれかを尾静脈注入した後2時間での全身的IL−6レベルに対するSP−Dの影響を求めた(それぞれの群においてn=5)。高結合性LPSをSP−Dとプレインキュベーションしたとき、血漿中のIL−6レベルが著しく低下し、しかし、SP−Dは、SP−Dに対する低い親和性を有するLPS株により誘導される炎症を阻害しなかった(図11B)。従って、LPSにより誘導される炎症の阻害はSP−DのLPS結合親和性と直接に相関しており、全身的SP−Dが、LPSにより誘導される炎症を、主として直接的なLPS相互作用によって阻害し得ることを示している。加えて、SP−DのLPS結合と、LPS誘導の炎症のSP−D媒介による阻害との間での相関により、これらの研究で認められたLPSの阻害が、SP−D調製物に含まれる混入物の抗炎症的性質のためでないことが示される。
【0058】
Sftpd−/−マウスは、ベースラインのときおよび感染性攻撃の間における増大した肺の炎症によって特徴づけられる(Korfhagen,T.R.他(1998)、J Biol Chem、273:28438〜29443;Wert,S.E.他(2000)、Proc Natl Acad Sci USA、97:5972〜7;Clark,H.他(2002)、J Immunol、169:2892〜2899;LeVine他(2004)、Am J Respir Cell Mol Biol、31:193〜199;LeVine他(2001)、J Immunol、167:5868〜5873)。SP−Dが全身的なLPS誘導の炎症およびSftpd−/−マウスの顕著な前炎症性表現型を阻害するという結果を考慮すると、血漿中のサイトカインレベルが全身的LPS暴露の後でSftpd−/−マウスにおいて上昇すると考えられることが仮定された。従って、Sftpd−/−マウスおよび野生型マウス(同腹子コントロール)の両方を静脈内LPSにより処置し、血漿中のIL−6レベルを注入後2時間で測定した。Sftpd−/−マウスに特徴的である高まった肺の炎症性サイトカインとは際立って対照的に、LPSにより処置されたSftpd−/−マウスにおける血漿中のIL−6レベルは、野生型マウスよりもおよそ80%低かった(図12)。SP−Dは、ベンチレータ誘導の肺傷害を受けたヒツジにおいて肺LPSの全身的放出を制限する(Ikegami,M.他(2006)、Am J Respir Crit Care)ので、この驚くべき結果についての最も単純な説明は、Sftpd−/−マウスが、肺LPSの全身循環への持続した漏出にさらされ、その後、LPS寛容性を発達させるということである。しかしながら、この結果からはまた、SP−Dが全身的免疫系における重要かつ複雑な役割を果たすことが示され得る。
【0059】
LPSと結合し、LPSを肺から除くことに加えて、SP−Dは、ウイルス感染、細菌感染および真菌感染に対する生得的な免疫応答の重要な構成要素である(LeVine他(2004)、Am J Respir Cell Mol Biol、31:193〜199;LeVine他(2001)、J Immunol、167:5868〜5873)。インビトロ研究では、SP−Dが細菌およびウイルスと結合し、これらを凝集させること、また、この凝集が肺胞のマクロファージによる感染性生物の食作用および殺傷を容易にすることが明らかにされる(Hartshorn,K.他(1996)、Am J Physiol、271:L75362;Hartshorn,K.L.他(1998)、Am J Physiol、274:L958〜L969)。全身的SP−Dは全身的細菌と結合し、そのクリアランスを容易にすることができ、このことは最終的には、それほど大きくない炎症性組織損傷および改善された生存を引き起こすと考えられる。このことを調べるために、全身性多菌性敗血症/腹膜炎を誘導する、盲腸結紮および穿刺(CLP)の臨床的に関連したマウスモデルを利用した。処置様式(すなわち、SP−D対コントロール)について知らされていない職員による盲腸の結紮および21ゲージでの穿刺の後、マウスを、腹腔内注入によって与えられるコントロールの緩衝液または2mg/kgのSP−Dにより処置し(n=10、それぞれの群において6週齢〜8週齢のC57/BL6マウス)、血液を手技後6時間で集め、血漿中のIL−6レベルを測定した。SP−Dにより処置されたマウスは、コントロールマウスよりもおよそ40%低い平均血漿IL−6レベルを有した(図13)。この実験における変動性のために、これらの結果は統計学的に有意ではなく(p=0.06)、しかし、その傾向から、SP−Dは生細菌攻撃の間における炎症を軽減し得ることが示される。
【0060】
盲腸穿刺により誘導される敗血症の重篤さのために、マウスの一部が採取時点(6時間または24時間のいずれか)の前に死亡した。CLPに供されたマウスの生存に対するSP−Dの影響についての予備的研究として、コントロールマウス対SP−D処置マウスについてのCLP後の死亡率を求めた。この実験の目的のために、死亡を採取時点前の死として定義した(図14)。死亡率は、コントロールマウスの方がSP−D処置マウスの場合よりも約3倍高かった。これらのデータが、様々な盲腸穿刺サイズ、採取時点、ならびに、SP−D用量および投与経路を使用した実験に由来するので、これらの結果の生理学的および統計学的な重要性は限られている。しかしながら、これらの結果から、全身的SP−Dは、生細菌攻撃の間において、マウスの炎症を軽減することができ、また、マウスの生存を改善することができることが示される。
【0061】
マウス研究:SP−Dの発現およびクリアランス
ベースラインにおいて血液中に低いレベルで存在するが、多数の研究では、ヒトの血漿中のSP−Dレベルが様々な前炎症性状態(例えば、肺または全身性の感染など)において数倍増大することが明らかにされている(Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、290:L1010〜L1017;Fujita,M.他(2005)、Cytokine、31:25〜33)。血漿中のSP−Dレベルがマウスにおいて敗血症時に増大するかを明らかにするために、また、血漿中のSP−Dの起源を明らかにするためのモデルシステムを確立するために、マウスCLPモデルを利用した。敗血症を、盲腸の結紮および30ゲージのニードルによる穿刺によって誘導し、血漿中のSP−Dレベルを手技後48時間でELISAによって測定した(n=5、6週齢〜8週齢)(図15)。血漿中のSP−Dレベルが、CLP後、数倍増大して、およそ40ng/mlの平均値になった。このことは、マウスおよびヒトにおけるSP−Dの全身的レベルが類似した様式で応答することを示している。加えて、これらの結果から、CLPモデルが、全身的SP−Dの産生を評価するための機能的なインビボシステムを提供し得ることが明らかにされる。
【0062】
SP−Dはまた、血管内皮、胃、小腸、腎臓および多数の腺組織において免疫染色によって検出される(Stahlman,M.T.他(2002)、J Histochem Cytochem、50:651〜660;Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Heart Circ Physiol、290:H2286〜H2294)。SP−Dがいくつかの組織タイプで存在し、保護的役割をこれらの存在場所のそれぞれにおいて果たし得るが、血漿において循環するSP−Dは、全身的な宿主防御に寄与する集団である。血管内皮がSP−Dの循環プールに近いこと、および、宿主防御における血管内皮の役割を考えると、血管内皮が血漿SP−Dのプールサイズに寄与し得る。Sftpd遺伝子発現に関する以前の研究は呼吸器上皮に限られている。従って、Sftpdプロモータが血管内皮細胞において活性化されるかを明らかにするために、マウス胎児肺間葉細胞株(MFLM−91U)を利用した。この細胞は、不死化されたマウス胎児肺間葉(日数、E19)に由来し、血管内皮系譜の特徴(すなわち、再構成された基底膜において培養されたとき、血管内皮増殖因子受容体2の発現、および、管腔を伴う毛細管様構造の形成)を示す(Akeson,A.L.他(2000)、Dev Dyn、217:11〜23;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。MFLM細胞を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子につながれたSftpdプロモータを含有するプラスミドにより一過性でトランスフェクションし、Sftpdプロモータ活性を測定した(図16)。ルシフェラーゼ活性が、ルシフェラーゼ遺伝子だけによりトランスフェクションされた細胞と比較されたとき、ルシフェラーゼレポーター遺伝子につながれたSftpdプロモータによりトランスフェクションされたMFLM−91U細胞ではおよそ50倍増大した。このことは、Sftpdプロモータが血管内皮細胞において活性化されることを示している。加えて、これらの結果は、このシステムが、血漿中のSP−Dレベルを全身的な敗血症のときに増大させる調節因子だけでなく、SP−Dの血漿中レベルをベースラインにおいて肺のレベルよりも数倍低く保つ調節因子を明らかにするために使用されることを裏付ける。
【0063】
肺において、SP−Dは肺胞のII型細胞によって産生され、II型細胞または肺胞のマクロファージによって分解または再循環され、これにより、Sftpd−/−マウスでは7時間の半減期がもたらされ、野生型マウスでは13時間の半減期がもたらされる(Crouch,E.他(1992)、Am J Physiol、263:L60〜L66;Voorhout,W.F.他(1992)、J Histochem Cytochem、40:1589〜97;Crouch,E.他(1991)、Am J Respir Cell Mol Biol、5:13〜18;Dong,Q.およびJ.R.Wright(1998)、J.R.Am J Physiol、274:L97〜105;Herbein,J.F.他(2000)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、278:L830〜L839;Kuan,S.F.他(1994)、Am J Respir Cell Mol Biol、10:430〜436;Ikegami,M.他(2000)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、279:L468〜L476;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。血漿におけるSP−Dの半減期を求めるために、SP−Dを尾静脈注入によって投与し、血漿中のSP−DレベルをELISAによって経時的に測定した(図17)。SP−Dが初回通過代謝によって血漿から除かれず、しかし、むしろ、野生型マウスではおよそ6時間の半減期で血漿中に保持された。興味深いことに、血漿SP−Dの半減期がSftpd−/−マウスではおよそ2時間に低下したが、ネック部およびCRDのみの三量体からなるSP−Dの短縮型フラグメントの半減期は62時間の血漿半減期を有する(Sorensen,G.L.他(2006)、Am J Physiol Heart Circ Physiol、290:H2286〜H2294)。このことは、血漿SP−Dの取り込みについての特異的な細胞機構が存在することを示しており、また、この機構がSP−DのN末端ドメインおよび/またはコラーゲンドメインに依存することを示している。
【0064】
血漿SP−Dの取り込みの主要な場所を明らかにするために、SP−DをSftpd−/−マウスに尾静脈注入によって投与し、組織ホモジネートにおけるSP−Dレベルを注入後8時間でSP−DのELISAによって求めた(図18)。脾臓におけるSP−Dのレベルが組織1グラムあたり約320ngのSP−Dに達した。これは、それ以外の組織で観測されたSP−Dレベル(および脾臓におけるバックグラウンドシグナル)よりも顕著に高かった。従って、肺のSP−Dは肺胞のマクロファージおよびII型細胞によって分解または再循環されるが、結果は、全身的SP−Dが脾臓によって循環から除かれることを示している。
【0065】
マウス研究:宿主防御細胞を調節することにおけるSP−Dの構造的ドメインの役割
相対的に大きいSP−Dのコラーゲンドメイン(他のコレクチンと比較したとき)のために、SP−Dのコラーゲンドメインは、肺胞マクロファージのSP−D媒介による調節には不可欠であり得る。このことを調べるために、正常なCRD、ネックドメインおよびN末端ドメインを伴うが、コラーゲンドメインを有しないSP−D変異型タンパク質(rSftpdCDM)を作製した。インビトロアッセイでは、精製されたrSfptdCDMが多量体を形成し、野生型タンパク質と同等またはそれよりも良好な様式で、炭水化物、細菌およびウイルスと結合したことが明らかにされた。rSftpdCDMが肺胞のマクロファージ活性を効果的に調節するかを明らかにするために、変異型の導入遺伝子(rSftpdCDMTg+)を野生型マウスおよびSftpd−/−マウスにおいて発現させた。変異型タンパク質は野生型マウスにおいて肺の形態学またはマクロファージ活性を乱さなかった一方で、変異型タンパク質は、Sftpd−/−マウスに特徴的であるベースラインでの異常なマクロファージ活性を救うことができなかった。増大したレベルのメタロプロテイナーゼを発現する肥大した泡沫状マクロファージが、Sftpd−/−マウス、および、rSftpdCDMタンパク質を発現するSftpd−/−マウス(rSftpdCDMTg+/Sftpd−/−)において容易に認められた(図19)。
【0066】
rSftpdCDMが肺胞のマクロファージ活性を感染性攻撃時において調節するかを明らかにするために、インフルエンザAウイルス(IAV)への気管内暴露に対する、野生型マウス、Sftpd−/−マウスおよびrSftpdCDMTg+/Sftpd−/−マウスの応答を評価した。Sftpd−/−マウスとは対照的に、検出可能なIAVが野生型またはrSftpdCDMTg+/Sftpd−/−の肺ホモジネートからは回収されなかった。加えて、IAV攻撃されたSftpd−/−マウスにおいて観測された増大したIL−6レベル、TNFαレベルおよびIFN−γレベルが、rSftpdCDMTg+/Sftpd−/−マウスでは野生型のレベルに回復した(図20)。まとめると、これらの結果から、rSftpdCDMはベースラインでの肺胞のマクロファージ活性を効果的に調節しないが、rSftpdCDMは正常な肺胞のマクロファージ応答をウイルス攻撃時に容易にし得ることが示される。そのうえ、rSftpdCDMの変異型タンパク質は、LPSにより誘導される炎症においてSP−Dの全身的な抗炎症的性質を誘発するSP−Dの構造的ドメインが、肺における感染性攻撃の間に要求される構造的ドメインと一致するかを明らかにするためのモデルシステムを提供する。
【0067】
大腸菌LPSに対するSP−Dの結合がインビボおよびインビトロの両方で明らかにされている(Kuan他(1992)、J Clin Invest、90:97〜106;Lim他(1994)、Biochem Biophys Res Commun、202:1674〜1680;van Rozendaal他(1999)、Biochim Biophys Acta、1454:261〜269;Crouch他(1998)、Am J Respir Cell Mol Biol、19:177〜201;Pikaar他(1995)、J Infect Dis、172:481〜489;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。早産新生児は、SP−Dを含めて、表面活性物質が不十分である(Miyamura他(1994)、Biochim Biophys Acta、1210:303〜307;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。呼吸窮迫症候群の新生児を処置するための市販されている表面活性物質はSP−BおよびSP−Cを含有するが、SP−AまたはSP−Dを含有しない。早産新生児の肺で見られる増大した炎症性応答は、低いレベルのSP−AおよびSP−Dおよび相対的に少ない数のマクロファージを含めて、宿主防御における欠損から生じ得る(Awasthi他(1999)、Am J Respir Crit Care Med、160:942〜949;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。絨毛羊膜炎および肺の出生後感染に関連する胎児の炎症には、慢性的な肺傷害および気管支肺異形成症の発症が伴う(Li他(2002)、Microbes Infect、4:723〜732;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0068】
SP−Dが、気管内投与されたLPSの後における全身的影響を改善し、死を防止したという知見は、SP−DがLPSに結合し、肺区画から全身区画へのLPS移行を解毒または阻害するという考えを裏付けている。早産のヒト新生児における知見と類似して、敗血症ショックもまた、成人において比較的頻発する死因の1つである(Manocha他(2002)、Expert Opin Investig Drugs、11:1795〜1812;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。早産児の肺でのように、増大した透過性が成人の肺の傷害および換気の後で生じる(Sartori他(2002)、Eur Respir J、20:1299〜1313;Lecuona他(1999)、Chest、116:29S〜30S;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。従って、SP−Dは、感染を有する肺から生じる全身的な炎症性応答を防止するための可能性のある治療的方策を表す。
【0069】
本明細書中に示されるように、rhSP−Dは、早産新生児の子ヒツジにおいて病原体誘導による全身的エンドトキシンショックを防止するために安全に気管内投与することができる。そのような治療は、新生児を肺感染およびその続発症から防ぐことにおいて有用であり得る。
【0070】
加えて、本明細書中に記載される研究では、下記のことが明らかにされる:1)SP−DがLPSを全身循環から捕捉し、LPSにより誘導される全身的炎症を阻害すること;2)SP−Dが、LPSにより誘導される炎症を直接的なSP−D/LPS相互作用によって阻害すること;3)全身的なLPS誘導の炎症がSftpd−/−マウスでは軽減されること;4)SP−Dが生菌の全身的細菌攻撃の間にマウスにおける炎症を軽減し、生存を改善すること;5)血漿中のSP−Dレベルがマウスにおいて敗血症時に増大すること;6)血管内皮細胞がSftpd遺伝子を発現すること;7)全身的SP−Dが脾臓によって除かれること;および8)SP−Dの特異な構造的ドメインにより、肺胞のマクロファージが調節されること。さらには、本明細書中に示されるように、静脈内LPS注入、CLPおよび血管内皮Sftpd発現の実験的モデルが確立され、研究室において機能的である。
【0071】
従って、SP−Dポリペプチドまたはその生物学的に活性なフラグメント、あるいは、それをコードする核酸を、肺感染症および/または敗血症を防止または処置するために個体に投与することができる。いくつかの実施形態において、SP−D処置は、例えば、SP−D処置により、生存、または、致死量のLPSを哺乳動物に投与または導入することに由来する組織傷害が改善されるように、LPSにより誘導される炎症を阻害することができる。他の実施形態において、SP−D処置は、例えば、LPSにより誘導される炎症を、血漿からのLPSのクリアランスを高めることによって阻害することができる。さらに他の実施形態において、SP−D処置は、例えば、肺に投与されたとき、肺傷害がない場合における呼吸樹から全身循環へのLPSの漏出を防止することができる。SP−D処置の実施形態はまた、例えば、多菌性敗血症または細菌攻撃を防止または処置するために全身的様式で、SP−Dポリペプチドまたはその生物学的に活性なフラグメント、あるいは、それをコードする核酸を投与することによって敗血症を処置するために使用することができる。さらに他の実施形態において、SP−D処置は、例えば、急性呼吸窮迫症候群を処置するために、肺に、または、全身的様式で投与することができる。
【0072】
SP−D処置は、単独で、または、他の処置(例えば、抗生物質投与など)との併用で使用することができる。さらに、いくつかの実施形態において、SP−Dまたはそのフラグメントをコードする核酸を個体に投与することができる。SP−Dをコードする核酸は、例えば、アデノウイルスベクターに含有させることができる。そのようなアデノウイルスベクターは、例えば、PCT出願番号PCT/US02/35121(これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)に記載される方法に従って構築することができる。
【0073】
SP−Dタンパク質は、例えば、組換えSP−Dであり得る。いくつかの実施形態において、組換えSP−Dは組換えヒトSP−D(rhSP−D)である。例えば、いくつかの実施形態において、SP−Dポリペプチドはアクセション番号NP_003010の成熟ポリペプチド配列(配列番号2)である。さらなる実施形態において、SP−Dタンパク質は、例えば、アクセション番号NP_003010のSP−D前駆体配列(配列番号3)であり得る。いくつかの実施形態において、SP−Dタンパク質は、例えば、SP−Dタンパク質またはそのフラグメントを大量に調製するために、任意の好適な生物にトランスフェクションすることができる、SP−Dまたはそのフラグメントをコードする核酸から調製することができる。タンパク質は、その後、この技術分野で知られている方法を使用して単離および精製することができる。用語「精製された」は絶対的な純度を要求せず、むしろ、相対的な定義として意図される。単離されたタンパク質は通常、例えば、クーマシー染色によって電気泳動的に均一に精製されている。出発材料または天然物質を、少なくとも1桁、好ましくは2桁または3桁、より好ましくは4桁または5桁精製することが、特に意図される。
【0074】
用語「ポリペプチド」は、例えば、ポリマーの長さに関係なく、アミノ酸のポリマーを示すことができる。従って、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質が、ポリペプチドの定義に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾を指定または排除しない。例えば、グリコシル基、アセチル基、リン酸基および脂質基などの共有結合を含むポリペプチドが、ポリペプチドの用語によって特に包含される。この定義にはまた、アミノ酸の1つまたは複数のアナログ(これらには、例えば、天然に存在しないアミノ酸、非関連の生物学的システムにおいて天然に存在するだけであるアミノ酸、哺乳動物システムに由来する修飾されたアミノ酸などが含まれる)を含有するポリペプチド、置換れた連結を有するポリペプチド、ならびに、この技術分野で知られている他の修飾体(天然に存在するもの、および、天然に存在しないものの両方)が含まれる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態において、用語「精製された」は、核酸、脂質、炭水化物および他のタンパク質(これらに限定されない)をはじめとする他の化合物から分離されている本発明のSP−Dポリペプチドを表す。ポリペプチドは、サンプルの少なくとも50%(好ましくは60%〜75%)が単一のポリペプチド配列を示すときに実質的に純粋である。実質的に純粋なポリペプチドは、典型的には、タンパク質サンプルの約50%(好ましくは60%〜90%、重量/重量)を構成し、より通常的には約95%を構成し、好ましくは、約99%を越える純度である。ポリペプチドの純度または均一性は、この技術分野で広く知られているいくつかの方法によって示される(例えば、サンプルのアガロースゲル電気泳動またはポリアクリルアミドゲル電気泳動、それに続く、ゲルを染色したときに1つだけのポリペプチドバンドを視覚化することなど)。特定の目的のために、より大きい分解能が、この技術分野で広く知られているHPLCまたは他の手段を使用することによって提供され得る。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態において、SP−D配列は核酸前駆体配列のアクセション番号NM_003019(配列番号1)に由来し得る。
【0077】
用語「実質的に相同的な」は、SP−Dをコードするヌクレオチド配列に関して本明細書中で使用されるときには、基準ヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列を示し、この場合、その対応する配列は、基準ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドと実質的に同じ構造を有するポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、実質的に類似するヌクレオチド配列は、基準ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドをコードする。
【0078】
本発明に関連して、「実質的に相同的な」は、基準タンパク質の配列の領域に対して少なくとも50%の同一性、あるいは、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%または少なくとも99%の配列同一性を有するタンパク質をコードする基準配列と比較して、少なくとも50%の配列同一性、あるいは、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を示すことができる。同様に、「実質的に相同的な」はまた、好ましくは、基準タンパク質をコードするヌクレオチド配列の領域に対して少なくとも50%の同一性、より好ましくは少なくとも80%の同一性、一層より好ましくは95%の同一性、さらに一層より好ましくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を示す。用語「実質的に相同的な」は、具体的には、配列が、特定の細胞における発現を最適化するために修飾されているヌクレオチド配列を含むことが意図される。
【0079】
SP−Dヌクレオチド配列に対して「実質的に相同的な」ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドは、好ましくは、基準ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドにハイブリダイゼーションする。基準ヌクレオチド配列は、例えば、核酸前駆体配列のアクセション番号NM_003019(配列番号1)またはそのフラグメントが可能である。用語「ハイブリダイゼーションする」は、核酸配列を溶液中または固体支持体(例えば、セルロースまたはニトロセルロースなど)表面のDNA分子またはRNA分子と相互作用させる方法を示す。核酸配列がDNA分子またはRNA分子と大きい親和性で結合するならば、その核酸配列は、そのようなDNA分子またはRNA分子に「ハイブリダイゼーションする」と言われる。
【0080】
SP−Dタンパク質またはそのフラグメント、あるいは、それらをコードする核酸を含む医薬組成物を、この技術分野で知られている方法に従って調製することができる。本発明のいくつかの実施形態において、SP−Dタンパク質またはSP−D核酸あるいはそれらのフラグメントまたはアナログまたは誘導体を、哺乳動物の体重1kgあたり約0.01mgから、前記哺乳動物の体重1kgあたり約100mgまでの間の量で、エアロゾル形態で対象に導入することができる。いくつかの実施形態において、投薬量は、例えば、約0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kgから、約25mg/kg、50mg/kg、75mg/kgまたは100mg/kgまでであり得る。さらなる実施形態において、投薬量は、0.75mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kgまたは2.0mg/kgから、約5.0mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kgまたは20mg/kgまでの範囲であり得る。具体的な実施形態において、投薬量は1日あたりの投薬量である。当業者は、この投薬量に対応するエアロゾルの体積または重量を対象物のエアロゾル配合物におけるSP−Dタンパク質またはSP−D核酸の濃度に基づいて容易に決定することができる。あるいは、当業者によって容易に理解されるように、適切な投薬量のSP−Dタンパク質またはSP−D核酸を投与される体積に有するエアロゾル配合物を調製することができる。本発明のいくつかの実施形態において、SP−Dタンパク質またはSP−D核酸を直接に肺に投与することは、より少ないSP−Dタンパク質またはSP−D核酸の使用を可能にし、従って、コストおよび望まれない副作用の両方を制限する。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態において、SP−Dタンパク質またはSP−D核酸あるいはそれらのフラグメントまたはアナログまたは誘導体を含む医薬調製物を、哺乳動物の体重1kgあたり約0.01mgから、前記哺乳動物の体重1kgあたり約100mgまでの間の量で、全身的様式で対象に導入することができる。いくつかの実施形態において、投薬量は、例えば、約0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kgから、約25mg/kg、50mg/kg、75mg/kgまたは100mg/kgまでであり得る。さらなる実施形態において、投薬量は、0.75mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kgまたは2.0mg/kgから、約5.0mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kgまたは20mg/kgまでの範囲であり得る。具体的な実施形態において、投薬量は1日あたりの投薬量である。当業者は、この投薬量に対応する医薬調製物の体積または重量を対象物の前記医薬調製物におけるSP−Dタンパク質またはSP−D核酸の濃度に基づいて容易に決定することができる。あるいは、当業者によって容易に理解されるように、適切な投薬量のSP−Dタンパク質またはSP−D核酸を投与される体積に有する医薬配合物を調製することができる。
【0082】
本発明のSP−Dは、分散化剤または分散剤と組み合わせて、乾燥粉末としてのエアロゾル配合物で、あるいは、希釈剤を伴う溶液または懸濁物で投与することができる。本発明のいくつかの実施形態において、SP−Dタンパク質またはSP−D核酸を含む配合物を、医薬組成物および治療用配合物を気道に送達するために設計される広範囲の様々なデバイスにおける使用のために調製することができる。いくつかの実施形態において、好ましい投与経路はエアロゾル形態または吸入形態においてである。本発明のSP−Dはまた、例えば、希釈剤を伴う溶液または懸濁物で全身投与することができる。本発明のいくつかの実施形態において、SP−Dタンパク質またはSP−D核酸を含む配合物を、医薬組成物および治療用配合物を全身送達するために設計される広範囲の様々なデバイスにおける使用のために調製することができる。いくつかの実施形態において、好ましい投与経路は、全身送達によるものである。配合物は、疾患適応に依存して、単回服用または多回服用で投与することができる。使用される予防用配合物または治療用配合物の正確な量は、疾患の段階および重篤度、対象の身体状態および多数の他の要因に依存することが当業者によって理解される。
【0083】
いくつかの実施形態において、SP−D配合物はまた、敗血症または肺感染症を処置するための他の薬剤(例えば、経口投与または静脈内投与される抗生物質など)を含有することができる。
【実施例】
【0084】
下記の実施例は、特許請求される発明を限定するためではなく、特許請求される発明を例示するために提供される。
【0085】
実施例1
組換えSP−Dの調製および精製
rhSP−Dを、全長のヒトSP−DをコードするcDNAによるCHO DHFR細胞のトランスフェクションによって合成した。トランスフェクションされた細胞を、メトトレキサートの濃度を増大させることにより選択した。トランスフェクションされたプールを限界希釈によってクローン化し、高発現クローンを、特にこの目的のために設計されたELISAを使用して特定した。SP−Dクローンを、血清を含有する培地でローラーボトルにおいて成長させ、その後、バイオ生産のためのJRH EX−CELL302培地に切り換えた。血清非含有培地の選択は、高い産生レベルのrhSP−Dを達成することにおいて重要であることが見出された。大規模な緩衝液交換方法に伴う大きい剪断速度を避けるために、タンパク質を、アニオンイオン交換クロマトグラフィを使用して馴化培地から捕捉して、サンプルを濃縮し、グルコースを除いた。具体的には、培地を希釈し、pHを7.4に調節し、その後、QセラミックhyperD F樹脂(Ciphergen、Fremont、CA)に負荷した。徹底的に洗浄して不純物を除いた後、rhSP−Dを、25mM Tris/1.2M NaCl(pH7.4)を使用して溶出した。溶出物を希釈し、カルシウムを5mMの最終濃度に加えた。その後、rhSP−Dを、以前に記載された方法を使用してマルトースアガロースでアフィニティ精製した(Hartshorn他(1996)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、271:L753〜L762;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。最終調製物におけるエンドトキシンレベルを最小限に抑えるために、アニオン交換樹脂およびすべてのクロマトグラフィ設備を0.2NのNaOHにさらすことによって消毒し、マルトースアガロースを酸−エタノール混合物により処理した。精製されたrhSP−Dは、サイズ排除クロマトグラフィにおいて1x106ダルトンを越える多量体として移動した。SDS−PAGEゲルにおいて、このタンパク質は、非還元条件下では三量体として移動し、還元されたときには約48kDaの単量体形態に完全に転換された。組換えhSP−Dはインビトロにおいてカルシウム依存的様式で大腸菌と結合し、凝集させた(データは示されず)。これらの実験で使用されたrhSP−Dは、20mM Tris/200mM NaCl/1mM EDTA(pH7.4)において0.5mg/mlの濃度であった。rhSP−D調製物におけるエンドトキシンレベルは0.1EU/ml〜0.5EU/mlの範囲であった(リムルス細胞分解産物アッセイ、Charles River Laboratories、Wilmington、MA)。予備的研究では、正常な成体マウスおよび早産子ヒツジへの処置用量のrhSP−Dの滴注は肺の炎症を誘導しなかった(データは示されず)。従って、rhSP−Dにおけるエンドトキシンレベルは、炎症を誘導するレベルよりも低かったか、または、存在するエンドトキシンがrhSP−Dに結合し、応答を誘発することができなかったかのいずれかであった。
【0086】
実施例2
内因性SP−Dの精製
内因性SP−Dを、以前に記載されたように気管支肺胞洗浄液から精製する(Kingma,P.S.他(2006)、J Biol Chem 281:24496〜24505;Strong,P.他(1998)、J Immunol Methods、220:139〜149;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。洗浄液から、遠心分離によって脂質が除かれる。脂質を含まない上清を、20mM Tris−HCl(pH7.4)/5mM CaCl2において20mlのマルトシル−セファロースカラムに加える。カラムを、20mM Tris−HCl(pH7.4)、5mM CaCl2および1M NaClの溶液により洗浄し、その後、SP−Dを塩化マンガンにより選択的に溶出する。プールされた分画物を20mM Tris−HCl(pH7.4)および30mM CaCl2の溶液で10倍希釈し、1mlのベッド体積のマルトシル−セファロースカラムに加える。カラムから、LPSを、20mM Tris−HCl(pH7.4)、20mM n−オクチル−d−グルコピラノシド、200mM NaCl、2mM CaCl2および100ug/ml ポリミキシンの溶液により除き、カラムを、20mM Tris−HCl(pH7.4)、0.5mM CaCl2および200mM NaClの溶液により洗浄する。SP−Dを、20mM Tris−HCl(pH7.4)、200mM NaClおよび1mM EDTAの溶液により溶出する。記載された条件のもとで、LPS濃度は典型的には0.1エンドトキシンユニット/μgタンパク質以下である。
【0087】
実施例3
処置用の早産子ヒツジの調製
すべての動物を、以前に記載されたように、Dorsetnの雄ヒツジと交配されたSuffolkの雌ヒツジ(出産予定日、150dのGA)から130日の在胎齢で帝王切開によって分娩させた(Kramer他(2002)、Am J Respir Crit Care Med、165:463〜469;Kramer他(2001)、Am J Respir Crit Care Med、163:158〜165;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。胎児の頭部および頸部が露出した後、気管内チューブを気管内に結び付けた。シリンジによって容易に吸引され得る胎児の肺液を取り戻し、子ヒツジを分娩させ、体重を測定した。
【0088】
実施例4
換気された早産子ヒツジへのLPS暴露
最初の呼吸の前に、子ヒツジに、1ml(25mg)のSurvanta(Ross Products Division、Abbott Laboratories、Columbus、OH)と混合された0.1mg/kgの大腸菌LPS(大腸菌055:B5、Sigma、St.Louis、MO)を与え、その後、10mlの空気をシリンジによって気道内に与えた。LPSを、肺におけるLPSの均一な分布を容易にするために、少量の表面活性物質と混合し、最初の呼吸の前に肺に与えた。その後、最初の呼吸の間および最初の呼吸の後、LPSが末梢の気道に分布させられる。10mlの空気を、胎児の肺液のクリアランスを高めるために、また、LPSが末梢の気道に分布する前にLPSがrhSP−Dと混合することを防止するために、LPS滴注後、気管を介して与えた。25mgのSurvantaを使用して、エンドトキシンを滴注した。
【0089】
実施例5
LPSにさらされた早産子ヒツジの肺へのrhSP−Dの投与
上記で記載されたようなLPS暴露の子ヒツジを、その後、rhSP−Dと組み合わせて(処置群)、または、rhSP−Dと組み合わせることなく(コントロール群)、そのいずれかで所定量のSurvantaにより処置した。Survantaの処置用量を、合計で100mg/kgを与えるように調節した。Survantaのこの後者の用量を、2mg/kgのrhSP−Dを含有する12mlの緩衝液(処置群)または12mlの緩衝液のみ(コントロール群)のいずれかとともに気管チューブにより滴注した。すべての動物を、類似する換気法を使用して時間循環および圧力制限の幼児ベンチレータ(Sechrist Industries、Anaheim、CA)により5時間にわたって換気した。5Fのカテーテルを、臍動脈を介して大動脈内に進め、胎盤から集めたろ過された胎児血液の10ml/kgの輸血を、早産に伴う低いヘマトクリットを正すために分娩後10分以内に投与した。血圧、心拍数、一回換気量(VT)(CP−100:Bicore Monitoring Systems、Anaheim、CA)および体温を継続してモニターした。血液ガス、pH、塩基過剰(BE)、ヘマトクリット、カリウム、カルシウムおよびグルコースのレベルを、少なくとも20分毎に、または、胸の動きおよび一回換気量における変化によって示されるように、換気状態が変化したとき、血液ガス、電解質および代謝物システム(Radiometer Copenhagen USA、West Lake、OH)によって分析した。40回/分の呼吸速度、吸入時間:0.6s、終末呼気陽圧(BEEP)=4cmH2Oは変化しなかった。最大吸気圧(PIP)を、VTを8ml/kg〜9ml/kgで維持するために変化させた。圧力は、気胸を避けるために35cmH2OのPIPに制限された。吸入酸素の割合(Fio2)を、100mmHg〜150mmHgの目標pO2を保つために調節した。10パーセントのデキストロース(100ml/kg/d)を動脈カテーテルにより継続して注入した。動的コンプライアンスを、体重に対して正規化され、換気圧(PIP−PEEP)によって除された、呼吸気流計により測定されたVTから計算した。直腸温度を、加熱用パッド、放射熱およびプラスチック製の身体被覆ラップを用いてヒツジについての正常な体温(38.5℃)で維持した。補助的なケタミン(10mg/kg、筋肉内)およびアセプロムザイン(0.1mg/kg、筋肉内)を使用して、自発呼吸を抑制した。
【0090】
実施例6
肺処理のための調製
5時間後、子ヒツジを静脈内投与による25mg/kgのペントバルビタールにより深く麻酔し、100%酸素によりしばらく換気した。気管内チューブを3分間固定して、酸素吸収により、肺を空気のない状態にすることを可能にした。5時間の研究期間を生存しなかった子ヒツジについては、死を、収縮期血圧が10mmHg未満であること、または、鼓動がないことのいずれかによって決定した。
【0091】
実施例7
データ分析
結果が平均±SEMとして与えられる。rhSP−D処置群および緩衝液コントロール群を、両側t検定を使用して比較した。ログランク検定を群間の生存率比較のために使用した。有意性をp<0.05で認めた。
【0092】
実施例8
肺の処理
胸腔を開き、肺を空気で40cmH2Oの圧力に1分間膨張させ、最大肺体積を記録した。肺を収縮させ、肺のガス体積を、20cmH2O、15cmH2O、10cmH2O、5cmH2Oおよび0cmH2Oで測定した。右下部葉の肺組織をRNA抽出のために液体窒素で凍結した。気管支肺胞洗浄(BAL)を、視覚的に広がるまで左肺を4℃において0.9%NaClで満たすことによって左肺に対して行い、この洗浄を5回繰り返した。BAL液(BALF)をプールし、アリコートを総タンパク質の測定(Lowry他(1951)、J Biol Chem、1951、193:265〜275;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)のために保存した。
【0093】
実施例9
肺胞細胞の調製
BALFを500xgで10分間遠心分離し、ペレット内の細胞を、トリパンブルーを使用して計数した。分別細胞計数を、染色されたサイトスピン調製物に対して行った(Diff−Quick;Scientific Products、McGraw Park、IN)。気道に呼び寄せられた細胞の活性化を、酸性条件下における過酸化水素による第一鉄イオン(Fe2+)から第二鉄イオン(Fe3+)への酸化に基づくアッセイ(Bioxytech H2O2−560アッセイ;OXIS International、Portland、OR)を使用して過酸化水素を測定することによって評価した。
【0094】
アポトーシス細胞を、アネキシンVおよびヨウ化プロピジウムによる染色(Pharmigen、Mountain View、CA)によって検出し、以前に記載されたようにフローサイトメトリによって分析した(Kramer他(2001)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、280:L689〜L694;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0095】
実施例10
BALF、肺組織および血清におけるrhSP−Dの測定
BALF、遠心分離後の肺ホモジネートの上清、および、5時間が経過して集められた血清におけるrhSP−DのレベルをELISAによって分析した。免疫ブロッティングのために、10μlのBALFをSDS/PAGEゲルに負荷し、ニトロセルロースに転写し、ブロットを、ヒツジのSP−Dと交差反応せず、これにより、サンプルにおける内因性SP−Dのレベルの推定を可能にするウサギ抗rhSP−D血清によりプローブした。
【0096】
実施例11
肺の組織学方法
右上部葉を30cmH2Oの圧力で10%ホルマリンにより膨張固定した。パラフィン包埋組織を切片化し(9μm)、ヘマトキシリンおよびエオシンにより染色した。肺組織に対するIL−6、IL−8およびIL−1βの免疫組織化学的検出を、ヒツジIL−6についてはウサギポリクローナル抗体(Chemicon、Temecula、CA)、ヒツジIL−8についてはマウスポリクローナル抗体(Chemicon)、および、ヒツジIL−1βについてはウサギポリクローナル抗体を使用して、以前の記載(Ikegami他(2004)、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、286:L573〜L579;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)のように行った。
【0097】
実施例12
血漿におけるエンドトキシンレベルおよびサイトカインレベルの測定
LPSを、カブトガニ変形細胞溶解成分アッセイ(Bio Whittaker、Walkersville、MD)により、0分(臍血)、30分、1時間、2時間および5時間で血漿において定量した。ELISAを、血漿中のIL−8およびIL−1βを、Chemiconから得られる抗体を使用して求めるために使用した。
【0098】
実施例13
肺、脾臓および肝臓におけるRNA分析
総RNAを、グアニジニウムチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出によって右下部肺葉、脾臓および肝臓から単離した。脾臓組織および肝臓組織を使用して、気管内投与されたLPSが全身的な炎症性応答を誘導したかを評価した。RNase保護アッセイを、以前に記載されたように、ヒツジのIL−6、IL−1β、IL−8、IL−10およびTNFαのRNA転写物を使用して行った(Naik他(2001)、Am J Respir Crit Care Med、2001;164:494〜498;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。ヒツジのリボソームタンパク質L32を基準RNAとした。保護されたバンドの密度を、ImageQuantソフトウエア(Molecular Dynamics Inc.,Sunnyvale、CA)を使用してホスホルイメージャーで定量した。
【0099】
実施例14
rhSP−Dの投与による新生児における敗血症の防止
敗血症について危険性のあるヒト新生児を特定する。新生児に、rhSP−Dを、体重1kgあたり1mgのSP−Dでエアロゾル配合物を使用して投与する。投与を1日に4回行う。患者を継続してモニターする。この方法の使用によって、敗血症に対する新生児の感受性が低下する。
【0100】
実施例15
rhSP−Dの投与による幼児における敗血症の処置
敗血症と診断される幼児を特定する。幼児に、rhSP−Dを、エアロゾル配合物を使用して体重1kgあたり4mgのrhSP−Dで投与する。投与を1時間毎に行う。血漿中のエンドトキシンレベルをモニターする。この方法の使用によって、敗血症が治まり、死の危険性が低下する。
【0101】
実施例16
rhSP−Dの30AAフラグメントの投与による幼児における敗血症の処置
敗血症と診断される幼児を特定する。幼児に、SP−Dの領域に対応する30アミノ酸のペプチドを、エアロゾル配合物を使用して体重1kgあたり0.5mgのペプチドで投与する。投与を1時間毎に行う。患者の健康状態を継続してモニターする。この方法の使用によって、敗血症が治まり、死の危険性が低下する。
【0102】
実施例17
rhSP−Dの投与による個体における死の危険性または敗血症を防止するための肺感染症の処置
重篤な肺感染症の個体を特定する。個体は、肺感染症が続くならば、敗血症を発症する危険性がある。患者に、rhSP−Dを、1日に2回投与されるとき、10mg/kgで投与する。患者の血漿におけるエンドトキシンレベルを5日間にわたって1日に2回測定する。患者の健康状態を継続してモニターする。この方法の使用によって、肺感染症が治まり、敗血症を発症する危険性が低下する。
【0103】
実施例18
抗生物質との併用でのrhSP−Dの投与による個体における死の危険性または敗血症を防止するための肺感染症の処置
重篤な肺感染症の個体を特定する。個体は、肺感染症が続くならば、敗血症を発症する危険性がある。患者に、rhSP−Dを、1日に6回投与されるとき、1mg/kgで投与する。患者にはまた、経口による抗生物質処置が与えられる。患者の血漿におけるエンドトキシンレベルを5日間にわたって1日に2回測定する。患者の健康状態を継続してモニターする。この方法の使用によって、肺感染症が治まり、敗血症を発症する危険性が低下する。
【0104】
実施例19
LPSおよびSP−Dによる感染研究のためのプロトコル
マウスを加温し、吸入2%イソフルランにより麻酔した。麻酔を足指つまみ試験によって確認する。尾をアルコールにより調製し、尾に、コントロール緩衝液、SP−D、LPS、または、室温で10分間プレインキュベーションされるSP−Dと一緒でのLPSを注入する。SP−D(1mg/ml)をSP−D緩衝液(20mM Tris−HCl(pH7.4)、200mM NaCl、1mM EDTA)において保存し、1mM CaCl2を伴うPBSにおいて希釈する。LPSを等体積のSP−D緩衝液において保存し、1mM CaCl2を伴うPBSにおいて希釈する。1mM CaCl2および等体積のSP−D緩衝液を伴うPBSをコントロール緩衝液として使用する。
【0105】
実施例20
SP−D分析のための血漿および臓器の調製
LPS、SP−Dまたはコントロール緩衝液を投与した後、マウスに致死量のチオペントンナトリウム(80μg/g)を与え、血液を心臓穿刺または眼窩後技術によって集める。血液を氷上に置き、直ちに遠心分離して、血漿を単離する。心臓、肺、肝臓、脾臓および腎臓を集め、組織学のためにパラホルムアルデヒドに入れるか、または、RNA単離のためにホモジネートする。
【0106】
実施例21
全身的SP−D処置はLPS感染哺乳動物における生存を改善する
マウスに、実施例19に記載されるように尾静脈注入により、致死量のLPS(8mg/kg)をSP−D(2mg/kg)またはコントロール緩衝液とともに与える。生存を72時間にわたって4時間毎にモニターする。瀕死状態(逆立った毛、動くことが完全にできないこと、および、下痢)の動物は非生存体と見なし、致死量のチオペンタンナトリウムにより安楽死させる。研究では、75%の死亡率がLPS処置マウスにおいて72時間までに予測される。この方法の使用によって、処置群の間における72時間での生存における統計学的有意差が認められ、より高い生存率がSP−D処置群において認められ、このことは、全身的SP−D処置がLPS感染哺乳動物の生存を改善することを示している。
【0107】
実施例22
全身的SP−D処置はLPS感染哺乳動物における組織傷害を改善する
マウスを、実施例19に記載されるように尾静脈注入により、SP−D(2mg/kg)またはコントロール緩衝液とともにLPS(4mg/kg)で処置する。肝臓を24時間で集め、組織傷害のマーカー(これには、肝臓でのTNFα、NFκB、iNOSおよびミエロペルオキシダーゼの発現、肝細胞の壊死、ならびに、好中球浸潤が含まれるが、これらに限定されない)を評価する。遺伝子発現研究のために、肝臓をホモジネートし、RNAを単離し、濃度および純度について調べる。cDNAを逆転写酵素重合によって合成し、PCRによって増幅する。遺伝子発現を、リアルタイムPCRによって、または、アガロースゲルでの分離の後でのPCR産物の濃度測定によって定量する。すべての結果がL32コントロールまたはGAPDHコントロールと比較して報告される。この方法の使用によって、LPSにより誘導される組織傷害のマーカーにおける統計学的に有意な低下がSP−D処置マウスにおいて認められ、このことは、全身的SP−D処置がLPS感染哺乳動物における組織傷害を改善することを示している。
【0108】
実施例23
SP−D処置は血漿LPSのクリアランス速度を増大させる
マウスを、実施例19に記載されるように、コントロール緩衝液またはSP−D(150μg/kg)とともにLPS(5μg/kg)で処置する。血液を、注入後の0.5時間、1時間、2時間、4時間および6時間で集める。LPSレベルを、実施例12に記載されるようにリムルスアッセイによってモニターし、LPSの半減期を計算する。この方法の使用によって、クリアランス速度における統計学的に有意な増大、および、LPSの半減期における統計学的に有意な低下がSP−D処置マウスにおいて認められ、このことは、SP−D処置が血漿LPSのクリアランス速度を増大させることを示している。
【0109】
実施例24
SP−D処置は組織特異的場所でのLPS誘導の炎症を阻害する
マウスを、実施例19に記載されるように、コントロール緩衝液またはSP−D(150μg/kg)とともにLPS(5μg/kg)で処置する。臓器(心臓、肺、肝臓、脾臓および腎臓(これらに限定されない)を含む)を注入後2時間で集め、mRNAを組織ホモジネートから単離する。IL−6の遺伝子発現をリアルタイムPCRによって測定する。この方法の使用によって、LPS刺激されたIL−6発現における統計学的に有意な低下がSP−D処置マウスの特定の組織において認められ、このことは、SP−D処置が組織特異的場所でのLPS誘導の炎症を阻害することを示している。
【0110】
実施例25
SP−D処置は特定の細胞タイプにおけるLPS誘導の炎症を阻害する
脾臓白血球の単一細胞懸濁物を100μmの濾過器での分離によってマウス脾臓から単離し、組織培養培地に入れる。場合により、リンパ球集団およびマクロファージ集団への脾臓白血球のさらなる選抜が組織培養プレートへの接着によって達成される。LPS非含有条件で48時間培養した後、白血球を、24時間、LPS(1μg/ml)により、または、SP−D(5μg/ml)とともにLPSにより刺激する。培地を集め、IL−6およびTNFαのレベルを培養上清においてELISAによって測定する。この方法の使用によって、L−6およびTNFαのレベルにおける統計学的に有意な低下がSP−D処置の脾臓白血球において認められ、このことは、SP−D処置が特定の細胞タイプにおけるLPS誘導の炎症を阻害することを示している。
【0111】
実施例26
SP−D処置は肺傷害の不在下でLPSの全身的漏出を防止する
野生型マウスおよびSftpd−/−マウスを吸入イソフルランにより麻酔し、LPS(1mg/kg)を気管内注入によって投与する。血液を、注入後の1時間、2時間、4時間および6時間で集め、血漿中のLPSレベルをリムルスアッセイによって測定する。この方法の使用によって、血漿中のLPSレベルにおける統計学的有意差が2つの群の間で認められ、より高いLPSレベルがSftpd−/−マウスにおいて認められ、このことは、SP−D処置が肺傷害の不在下でLPSの全身的漏出を防止し得ることを示している。
【0112】
実施例27
盲腸結紮および穿刺(CLP)のためのプロトコル
マウスを吸入2%イソフルランで麻酔するか、または、チオペントンナトリウムの非致死的な腹腔内注入によって麻酔する。無菌的調製の後、マウスの盲腸を2cmの腹部切開により露出させ、回盲弁からおよそ0.5cm遠位側で結紮する。結紮された盲腸を25ゲージまたは30ゲージのニードルで穿刺する。盲腸を腹腔に戻し、腹腔を閉じる。1mlの規定生理的食塩水溶液を、サードスペース(third−space)液喪失を補償するために皮下に注入する。擬似処置マウスを、盲腸を隔離し、結紮または穿刺を伴うことなく腹腔に戻すことを除いて、上記のように処置する。CLP後直ちに、マウスを、実施例19に記載されるように注入のために調製する。
【0113】
実施例28
SP−D処置は全身的感染における生存を改善する
CLPを実施例27に記載されるようにマウスに対して行う。続いて、マウスに、SP−D(2mg/kg)またはコントロール緩衝液を、実施例19に記載されるように尾静脈注入により投与する。生存を72時間にわたって4時間毎にモニターする。瀕死状態(逆立った毛、動くことが完全にできないこと、および、下痢)の動物を非生存体と見なし、致死量のチオペンタンナトリウムにより安楽死させる。この方法の使用によって、処置群の間における72時間での生存における統計学的有意差が認められ、より高い生存率がSP−D処置群において認められ、このことは、SP−D処置が全身感染の対象における生存を改善することを示している。
【0114】
実施例29
SP−D処置は全身的感染時における組織傷害を軽減させる
CLPを、実施例27および実施例28に記載されるように、SP−Dを伴って、また、SP−Dを伴うことなくマウスに対して行う。肝臓を24時間で採取し、組織傷害のマーカーを実施例22に記載されるように評価する。この方法の使用によって、LPSにより誘導される組織傷害のマーカーにおける統計学的に有意な低下がSP−D処置マウスにおいて認められ、このことは、SP−D処置が全身的感染の対象における組織傷害を軽減させることを示している。
【0115】
実施例30
SP−D処置は全身的感染における免疫応答を高める
CLPを、実施例27および実施例28に記載されるように、SP−Dを伴って、また、SP−Dを伴うことなくC57BL/6マウスにおいて誘導する。腹膜腔を洗浄し、血液をCLP後6時間で集める。血漿および腹膜洗浄液のLPSレベルをリムルスアッセイによって求める。細菌数を、血液または腹膜洗浄液の連続対数希釈、および、トリプシン消化ダイズ寒天ディッシュに置床することによって求める。コロニーを一晩のインキュベーションの後で計数する。この方法の使用によって、血漿および腹膜のLPSレベルまたは細菌レベルにおける統計学的有意差が2つの群の間で認められ、より低いLPSレベルまたは細菌レベルがSP−D処置マウスにおいて認められ、このことは、SP−D処置が全身的感染の対象における免疫応答を高めることを示している。
【0116】
実施例31
SP−D処置はLPSまたは細菌の全身的拡大を低下させる
CLPを、実施例27および実施例28に記載されるように、SP−Dを伴って、または、SP−Dを伴うことなく、C57BL/6マウスにおいて誘導する。腹膜腔を洗浄し、血液をCLP後6時間で集める。血漿および腹膜洗浄液のLPSレベルをリムルスアッセイによって求める。細菌数を、血液または腹膜洗浄液の連続対数希釈、および、トリプシン消化ダイズ寒天ディッシュに置床することによって求める。コロニーを一晩のインキュベーションの後で計数する。この方法の使用によって、血漿のみでのLPSレベルまたは細菌レベルにおける統計学的有意差が2つの群の間で認められ、より低いLPSレベルまたは細菌レベルがSP−D処置マウスにおいて認められ、このことは、SP−D処置がLPSまたは細菌の全身的拡大を低下させることを示している。
【0117】
実施例32
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)についてのマーカーが敗血症罹患Sftpd−/−マウスにおいて増大する
野生型マウスおよびSftpd−/−マウスを、実施例27に記載されるようにCLPに供する。ARDSのマーカー(これには、例えば、肺胞タンパク質レベル、Sat PCレベル、または、好中球浸潤物が含まれるが、これらに限定されない)を下記のように測定する。24時間で、肺を規定生理的食塩水により洗浄し、洗浄液における肺胞タンパク質レベルをLowryアッセイによって求める。肺胞洗浄によって回収された表面活性脂質の量を、飽和ホスファチジルコリン(Sat PC)レベルを測定することによって求める。簡単に記載すると、Sat PCレベルを、肺胞洗浄液をクロロホルム・メタノールにより抽出し、その後、四塩化炭素におけるOsO4による脂質抽出物の処置、および、シリカカラムクロマトグラフィを行うことによって測定する。細胞浸潤物を測定するために、肺胞洗浄液を遠心分離して、細胞をペレット化し、赤血球を低浸透圧ショックによって溶解する。細胞を再懸濁し、総細胞数を、血球計算器を使用して求める。分別細胞計数を、洗浄液の細胞遠心分離を行い、Wright染料により染色することによって求める。この方法の使用によって、肺胞タンパク質レベル、Sat PCレベルまたは好中球数における統計学的有意差が2つの群の間で認められ、より高いレベルがSftpd−/−マウスにおいて認められる。
【0118】
実施例33
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処置における全身的SP−Dの相対的重要性を研究するためのSftpd−/−マウスにおける肺SP−Dの生成
ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウス(すなわち、SP−C−rtTA/(tetO)7−SP−D/Sftpd−/−またはCCSP−rtTA/(tetO)7−SP−D/Sftpd−/−)を作製する(Zhang,L.他(2002)、J Biol Chem、277:38709〜38713)。SP−CプロモータおよびCCSPプロモータはもっぱら肺において活性化され、(tetO)7−SP−D構築物はSP−Dの発現がドキシサイクリン誘導の制御下にある。Sftpd−/−マウスにおいて認められた肺の異常が、これらの肺特異的導入遺伝子の発現によって完全になくなる。従って、これらの遺伝子組換えマウスはSP−Dの全身的発現の除去を可能にし、これにより、全身的免疫性におけるSP−Dの肺供給源対全身的供給源の相対的な重要性を比較する手段を提供する。
【0119】
実施例34
全身的SP−Dは急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の症状の改善に関与する
ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウス(実施例33)は、正常なレベルの肺SP−Dならびに正常な肺形態学および肺胞マクロファージ機能を有しており、しかし、全身的SP−Dのすべての供給源を有していない。CLPマウスにおけるARDSに対する肺SP−D対全身的SP−Dの相対的な重要性を分離するために、ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウス(実施例33)におけるARDSのマーカーを測定し、野生型マウスおよびSftpd−/−マウスにおけるARDSマーカーレベルと比較する。すべてのマウスをドキシサイクリンにより処置して、ドキシサイクリンの抗菌作用を補償する。実施例27に記載されるように、CLPを、野生型マウス、Sftpd−/−マウス、および、ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウスにおいて誘導する。ARDSのマーカー(これには、肺胞タンパク質レベル、Sat PCレベル、または、好中球浸潤物が含まれるが、これらに限定されない)を、実施例32に記載されるように測定し、これら3つの実験マウス群から得られた組織において比較する。この方法の使用によって、肺胞タンパク質レベル、Sat PCレベル、または、好中球数における統計学的に有意な増大が、野生型マウスにおいて見出されるそのようなレベルと比較して、ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウスにおいて認められ、このことは、全身的SP−DがARDSの症状の改善に関与することを示している。
【0120】
実施例35
SP−Dの全身的供給源は全身的感染時における血漿SP−Dのプールサイズに寄与する
研究では、血漿中のSP−DレベルがCLP後に著しく増大することが示された。研究ではまた、肺のSP−Dレベルが、CLP後、野生型において、また、ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウスにおいて等しいことが示されている(ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウスにおける肺のSP−Dレベルが一般に、ベースラインではより高い)。従って、SP−Dの肺供給源が、両方の実験群においてCLP後の増大した血漿中のSP−Dレベルの唯一の供給源であるならば、この寄与は、完全に肺での漏出に依存することが予想される。
【0121】
敗血症を、野生型マウス、および、ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウス(実施例33)において、これらのマウスを、実施例27に記載されるような技術を使用して、30ゲージのニードルによるCLPに供することによって誘導する。血液を48時間で集め、血漿中のSP−DレベルをSP−DのELISAによって求める。この方法の使用によって、血漿中のSP−Dレベルにおける統計学的に有意な低下が、野生型マウスにおいて見出されるそのようなレベルと比較して、ドキシサイクリン誘導可能な肺特異的Sftpd導入遺伝子を発現するSftpd−/−マウスにおいて認められ、このことは、SP−Dの全身的供給源が敗血症時における血漿SP−Dのプールサイズに寄与することを示している。
【0122】
実施例36
SP−Dの血漿半減期が全身的感染時において増大する
敗血症のSftpd−/−マウスを、実施例27に記載されるような技術を使用して、30ゲージのニードルによるCLPによって作製する。コントロールのSftpd−/−マウスを、擬似処置CLP(すなわち、実施例27に記載されるような結紮または穿刺を伴うことなく盲腸を露出させることによるCLP)によって作製する。48時間後、マウスにSP−D(150μg/kg)を尾静脈注入により投与する。血液を、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間および24時間で集め、血漿中のSP−DレベルをSP−DのELISAによって測定する。その後、血漿SP−Dの半減期を計算する。この方法の使用によって、血漿中のSP−Dレベルにおける統計学的に有意な増大が、コントロールマウスと比較して、CLP処置マウスにおいて認められ、このことは、マウスにおいて血漿中のSP−Dレベルを上昇させるために使用された生理学的機構が血漿SP−Dの分解における低下を介してであることを示している。
【0123】
実施例37
Sfptdプロモータ活性を制御する転写機構の特定
Sfptdプロモータの欠失構築物を使用して、MFLM−91U血管内皮細胞株における発現のために重要であるプロモータの領域を特定する。Sfptd遺伝子の近位側の82塩基対、167塩基対、246塩基対、357塩基対、600塩基対および680塩基対に連結されたルシフェラーゼレポーター遺伝子(図21)を、標準的なトランスフェクションプロトコルを使用してMFLM細胞にトランスフェクションする。トランスフェクションされたDNAの量を正規化するための適切なコントロール、および、トランスフェクション効率のための適切なコントロールが含められる。ルシフェラーゼ活性を、pCMV−β−ガラクトシダーゼ構築物を使用してβ−ガラクトシダーゼ活性に対して正規化する。血管内皮細胞における遺伝子発現を調節する転写因子(これには、E−box、Nf1様およびPea3が含まれるが、これらに限定されない)を欠失分析において特定することができ、これらはSfptdプロモータにおけるコンセンサスな結合部位に対応する(Kou,R.他(2005)、Biochemistry、44:15064〜15073;Ardekani,A.M.他(1998)、Thromb Haemost、80:488〜494;Cieslik,K.他(1998)、J Biol Chem、273:14885〜14890;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。当業者はまた、Sfptd遺伝子の配列分析に基づいて、全身的なSfptd発現を調節する他の転写因子を特定することができる。
【0124】
欠失分析によって特定されたSfptdプロモータの領域は、標準的なDNAseI保護アッセイによってさらに狭められる。MFLM細胞およびマウス肺上皮細胞(MLE−15)から得られた核抽出物を用いたDNAseIフットプリント分析が、血管内皮細胞に対して特異的であるSfptdプロモータの保護された領域または高感受性領域を明らかにするために行われる。特にMFLM細胞から得られた核抽出物によって保護されるか、または、特にMFLM細胞から得られた核抽出物によって高感受性にされるSfptdプロモータのセグメントが、血管内皮細胞において特異的な転写因子DNA結合の部位を特定するために使用される。
【0125】
欠失分析およびDNAseI保護アッセイによって特定された候補の転写因子はさらに、同時トランスフェクション実験によって調べられる。候補の転写因子がpCMV発現ベクターに挿入され、上記で記載されるように、Sfptdルシフェラーゼレポーター構築物とともにMFLM細胞に同時トランスフェクションされ、ルシフェラーゼ活性が測定される。この方法の使用によって、ルシフェラーゼ活性における統計学的有意差が、コントロールのpCMVベクターとともに同時トランスフェクションされたMFLM細胞におけるベースラインでのルシフェラーゼ活性と比較して認められ、このことは、候補のタンパク質が血管内皮細胞においてSfptdプロモータ活性を調節することを示している。
【0126】
これらの知見は、候補の転写因子のコンセンサスな結合部位が変異しているSfptdレポータープラスミドとの同時トランスフェクション実験を繰り返すことによって確認される。これらの実験の結果より、天然のSfptdのコンセンサスな結合部位を用いた同時トランスフェクション実験で以前に認められたルシフェラーゼ活性における統計学的有意差が、コンセンサスな結合部位が変異しているときにはもはや認められないことが明らかにされる。
【0127】
最後に、上記実験でMFLM細胞において明らかにされた転写機構の細胞特異性が、他の細胞タイプ(すなわち、HeLa細胞およびH441細胞)と比較することによって評価される。この方法の使用によって、MFLM細胞において明らかにされた転写機構の細胞特異性が、ルシフェラーゼ活性の調節がMFLM細胞においてのみ認められることを示すことによって確認される。
【0128】
実施例38
LPSは血管内皮細胞においてSfptdプロモータ活性を増大させる
MFLM細胞をLPS(1μg/ml)で処置し、Sfptdプロモータ活性を実施例37に記載されるように測定する。この方法の使用によって、ルシフェラーゼ活性における統計学的に有意な増大が、LPS非処置の細胞におけるベースラインでのルシフェラーゼ活性と比較して、LPS処置細胞において認められ、このことは、LPSが血管内皮細胞においてSfptdプロモータ活性を増大させることを示している。
【0129】
実施例39
全身的SP−Dが脾臓内の特定の細胞タイプによって除かれる
Sfptd−/−マウスに、コントロール緩衝液、SP−D(200μg/kg)、または、LPS(50μg/kg)とともにSP−D(200μg/kg)を、実施例19に記載されるように尾静脈注入により投与する。脾臓を注入後8時間で採取し、パラホルムアルデヒドにおいて固定処理し、パラフィンに包埋し、切片化する。切片を脱パラフィン化し、再水和し、SP−D抗体とインキュベーションする。抗体複合体を、標準的な検出技術(例えば、アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ(Vectastain)、蛍光標識化)を使用して検出する。この方法の使用によって、脾臓における特定の細胞による細胞輸送が特定される。
【0130】
脾臓による全身的SP−Dの取り込みがSP−Dのコラーゲンドメインを必要とするかを明らかにするために、これらの実験を、SP−Dのコラーゲンドメインを欠失する変異型タンパク質(rSftpdCDM)を用いて繰り返す。この方法の使用によって、rSftpdCDMが、全長のタンパク質とは異なる組織経路または細胞経路により輸送され、このことは、SP−Dのコラーゲンドメインが脾臓におけるSP−Dのルーティングおよびプロセシングのために重要であることを示している。
【0131】
実施例40
LPSが血管内皮細胞においてSftpdプロモータ活性を増大させる機構の決定
実施例37に記載されるような分析をLPS処置のMFLM細胞において行う。欠失構築物をLPS処置のMFLM細胞において調べる。Sftpd発現をLPSに応答して増大させるために重要である領域を、DNAseI保護アッセイによって分析する。LPSで処理されたMFLM細胞から得られた核抽出物に対して、コントロール緩衝液で処置されたMFLM細胞から得られた核抽出物を用いて認められる保護された領域および高感受性領域の間の比較を、血管内皮細胞におけるLPS誘導によるSftpd発現のために重要な領域をさらに単離するために行う。候補の転写因子を同時トランスフェクションおよび候補の転写因子の結合部位の変異によって調べる。この方法の使用によって、ルシフェラーゼ活性における統計学的有意差が、非処置のMFLM細胞におけるベースラインでのルシフェラーゼ活性と比較して、LPS処置されたMFLM細胞において認められ、これにより、血管内皮細胞においてLPS誘導のSfptdプロモータ活性を調節する候補タンパク質の特定が示される。
【0132】
実施例41
全身的感染を阻害することに関与するSP−Dの構造的特徴および機構は、肺におけるウイルス攻撃に対する応答において使用されるものと類似する
SP−Dコラーゲン欠失変異体のrSftpdCDMは細菌と結合し、インフルエンザAウイルスによる肺攻撃に対する正常な応答を容易にし、しかし、Sftpd−/−マウスでは、ベースラインでの肺胞のマクロファージ活性(すなわち、明白な感染性攻撃の不在下でのマクロファージ活性)を調節すること、または、表面活性脂質の異常を直すことができない(Kingma,P.S.他(2006)、J Biol Chem、281:24496〜24505)。このタンパク質を、感染の不在下でのSP−Dの調節を感染性攻撃時におけるSP−Dの機能から分離することが必要である実験において使用する。
【0133】
C57BL/6マウスを、実施例19に記載されるように尾静脈注入により、コントロール緩衝液、SP−D(150μg/kg)、または、精製されたrSftpdCDM(75μg/kg、これは150μg/kgのSP−Dと等価なモル量を表す)とともにLPS(5μg/kg)で処置する。血液を注入後2時間で集め、血漿中のIL−6レベルおよびTNFαレベルをELISAによって測定する。この方法の使用によって、rSftpdCDMが全身的なLPS誘導の炎症を阻害することが明らかにされ、このことは、全身的なLPS誘導の炎症を阻害するために使用されるSP−Dの構造的特徴および機構が、肺におけるウイルス攻撃の間に利用されるものと類似すること示している。
【0134】
実施例42
SP−Dのオリゴマー化はLPS誘導の全身的炎症のSP−D媒介による阻害のために要求されない
SP−Dは、N末端ドメイン内の15位および20位のシステイン残基におけるジスルフィド連結によって安定化される十量体として主に組み立てられる。これらの残基を欠失する変異型SP−D(rSP−DSer15/20)は、高次の多量体を形成することができない安定な三量体を形成する(Zhang,L.他(2001)、J Biol Chem、276:19214〜19219;これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。rSP−DSer15/20は炭水化物と結合するが、Sftpd−/−マウスにおける異常なマクロファージ活性を直すことができず、このことから、肺のSP−D機能におけるSP−Dのオリゴマー化の重要性が明らかにされる。
【0135】
C57BL/6マウスを、実施例19に記載されるように尾静脈注入により、コントロール緩衝液、SP−D(150μg/kg)、または、精製されたrSP−DSer15/20(150μg/kg)とともにLPS(5μg/kg)で処置する。血液を注入後2時間で集め、血漿中のIL−6レベルおよびTNFαレベルをELISAによって測定する。この方法の使用によって、rSP−DSer15/20が全身的なLPS誘導の炎症を阻害することが明らかにされ、このことは、全身的なLPS誘導の炎症のSP−Dによる阻害がSP−Dの多量体構造に依存しないこと、および、全身的SP−Dの作用機構が、肺においてSP−Dによって利用される機構からかけ離れていることを示している。
【0136】
実施例43
SP−DはSP−D特異的な様式で全身的炎症を阻害する
SP−DおよびSP−Aはともに、肺の宿主防御において重要な役割を果たしており、しかし、SP−Aを欠失するマウス(Sftpd−/−)は、Sftpd−/−マウスに特徴的である肥大した泡沫状マクロファージを発達させず、このことは、SP−Dが、肺胞マクロファージの活性を、SP−Dに対して特異的である機構を介して調節することを示している(LeVine,A.M.他(2000)、J Immunol、165:3934〜3940;LeVine,A.M.他(1999)、Am J Respir Cell Mol Biol、20:279〜286;LeVine,A.M.他(1999)、J Clin Invest、103:1015〜1021;LeVine,A.M.他(1998)、Am J Respir Cell Mol Biol、19:700〜708;これらのそれぞれがその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0137】
C57BL/6マウスを、実施例19に記載されるように尾静脈注入により、コントロール緩衝液、SP−D(150μg/kg)、または、SP−A(150μg/kg)とともにLPS(5μg/kg)で処置する。血液を注入後2時間で集め、血漿中のIL−6レベルおよびTNFαレベルをELISAによって測定する。この方法の使用によって、SP−AがLPS誘導の全身的炎症を阻害しないことが明らかにされ、このことは、全身的なLPS誘導の炎症の阻害がSP−Dに対して特異的であり、コレクチンファミリーのタンパク質の共通する性質でないことを示している。
【0138】
実施例44
SP−Dの全身投与による新生児における敗血症の防止
敗血症について危険性のあるヒト新生児を特定する。新生児に、SP−Dを、体重1kgあたり1mgのSP−Dで医薬配合物を使用して全身投与する。投与を1日に4回行う。患者を継続してモニターする。この方法の使用によって、敗血症に対する新生児の感受性が低下する。
【0139】
実施例45
SP−Dの全身投与による幼児における敗血症の処置
敗血症と診断される幼児を特定する。幼児に、SP−Dを、医薬配合物を使用して体重1kgあたり4mgのSP−Dで全身投与する。投与を1時間毎に行う。血漿中のエンドトキシンレベルをモニターする。この方法の使用によって、敗血症が治まり、死の危険性が低下する。
【0140】
実施例46
SP−Dの30AAフラグメントの全身投与による幼児における敗血症の処置
敗血症と診断される幼児を特定する。幼児に、SP−Dの領域に対応する30アミノ酸のペプチドを、医薬配合物を使用して体重1kgあたり0.5mgのペプチドで全身投与する。投与を1時間毎に行う。患者の健康状態を継続してモニターする。この方法の使用によって、敗血症が治まり、死の危険性が低下する。
【0141】
実施例47
SP−Dの全身投与による個体における死の危険性または敗血症を防止するための肺感染症の処置
重篤な肺感染症の個体を特定する。個体は、肺感染症が続くならば、敗血症を発症する危険性がある。患者に、SP−Dを、1日に2回投与されるとき、医薬配合物を使用して10mg/kgで全身投与する。患者の血漿におけるエンドトキシンレベルを5日間にわたって1日に2回測定する。患者の健康状態を継続してモニターする。この方法の使用によって、肺感染症が治まり、敗血症を発症する危険性が低下する。
【0142】
実施例48
抗生物質との併用でのSP−Dの全身投与による個体における死の危険性または敗血症を防止するための肺感染症の処置
重篤な肺感染症の個体を特定する。個体は、肺感染症が続くならば、敗血症を発症する危険性がある。患者に、SP−Dを、1日に6回投与されるとき、医薬配合物を使用して1mg/kgで全身投与する。患者にはまた、経口による抗生物質処置が与えられる。患者の血漿におけるエンドトキシンレベルを5日間にわたって1日に2回測定する。患者の健康状態を継続してモニターする。この方法の使用によって、肺感染症が治まり、敗血症を発症する危険性が低下する。
【0143】
様々な置換および修飾が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書中に開示された発明に対して行われ得ることが当業者には明らかである。様々な修飾が、開示された発明の範囲内において可能であることが認識される。従って、本発明は好ましい実施形態および最適な特徴によって具体的に開示されているが、本明細書中に開示された概念の修飾および変形が当業者によって用いられ得ること、また、そのような修飾および変形が、開示によって定義されるような本発明の範囲内に含まれると見なされることが理解される。
【0144】
別途示されない限り、本明細書において使用される、成分の量、特性(例えば、実験条件など)などを表すすべての数字は、すべての場合において用語「約」によって修飾されているとして理解しなければならない。従って、別に示されない限り、本明細書において示される数値パラメーターは、本発明によって求められようとする所望の性質に依存して変化し得る近似値である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】rhSP−D処置群およびコントロール群を比較するカプラン−マイヤープロットである。コントロール群では、子ヒツジの20%のみが、5時間の研究期間が終了する前に生存していた。対照的に、rhSP−Dにより処置されたすべての子ヒツジが生存した。ログランク検定によってp<0.05。
【図2A】rhSP−D処置群対非処置コントロール群における血漿中のエンドトキシンレベルの線グラフによる比較である。気管内エンドトキシンがコントロール群では循環において検出され、時間とともに増大し、一方、rhSP−Dは、5時間の研究の期間中、血漿中のエンドトキシン濃度を低下させた。
【図2B】rhSP−D処置群対非処置コントロール群における収縮期血圧測定を比較する線グラフである。rhSP−Dによる処置はエンドトキシンショックを防止した。収縮期血圧がrhSP−D処置群では早産新生児の正常なレベルで維持された。対照的に、血圧が、3時間が経過した後、コントロール群では徐々に低下した。*p<0.05(対コントロール)。
【図3A】rhSP−D処置群対非処置コントロール群における血液pHを比較する線グラフである。血液pHがrhSP−D処置により維持された。LPS処置には、低下した血液pHが伴った一方で、rhSP−Dによる処置では、pHが維持され、出生前のエンドトキシン誘導によるショックが防止された。
【図3B】rhSP−D処置群対非処置コントロール群におけるBE(血中塩基過剰)を比較する線グラフである。BEが気管内LPSによって変化した。気管内LPSは代謝性アシドーシスを誘導し、rhSP−D処置は低いBEおよびエンドトキシンショックを防止した。
【図4A】図4はpCO2および換気圧の逐次測定を明らかにする。図4Aは、rhSP−D処置群対非処置コントロール群におけるpCO2を比較する線グラフである。気管内LPSは、3時間が経過した後、pCO2における増大を引き起こした。rhSP−Dにより処置されたとき、pCO2が維持された。
【図4B】rhSP−D処置群対非処置コントロール群における換気圧(PIP−PEEP)を比較する線グラフである。目標の一回換気量を維持するために使用された換気圧の量は両方の群について類似していた。*p<0.05(対コントロール)。
【図5A】図5はrhSP−D処置群対非処置コントロール群における前炎症性サイトカインの発現の比較である。図5Aは、脾臓および肝臓における前炎症性サイトカイン(IL−1β、IL−6およびIL−8)のmRNAが、気管内LPS滴注後、コントロールの子ヒツジでは増大したことを明らかにする棒グラフである。脾臓および肝臓における前炎症性サイトカインのmRNAがrhSP−Dの投与によって低下した。
【図5B】脾臓および肝臓における前炎症性サイトカイン(IL−1β、IL−6およびIL−8)のmRNAが、気管内LPS滴注後、コントロールの子ヒツジでは増大したことを明らかにする棒グラフである。脾臓および肝臓における前炎症性サイトカインのmRNAがrhSP−Dの投与によって低下した。
【図5C】気管内LPSが肺におけるIL−1β、IL−6およびIL−8のmRNAを増大させたことを明らかにする棒グラフである。rhSP−Dにより処置されたとき、IL−1βの発現が低下した。
【図5D】血漿におけるIL−8の濃度を示す線グラフである。血漿中のIL−8レベルがコントロール群では増大した。血漿中のIL−8レベルがrhSP−D処置によって低いレベルで維持された。*p<0.05(対コントロール)。
【図6】ヘマトキシリンおよびエオシンでの染色による肺の形態学(6Aおよび6B)、ならびに、IL−8の免疫組織化学(6Cおよび6D)およびIL−1βの免疫組織化学(6Eおよび6F)を示すいくつかの組織学的画像を含む。コントロール群およびrhSP−D群の両方において、増大した顆粒球、ならびに、IL−8およびIL−1βについての陽性に染色された炎症性細胞が認められる。IL−8およびIL−1βについて免疫染色された炎症性細胞が気管内rhSP−D処置によって低下した。
【図7A】図7は肺機能がrhSP−D処置によって影響されなかったことを明らかにする線グラフである。図7Aは、換気時におけるVT、PIP−PEEPおよび体重から計算された動的肺コンプライアンスを示す。
【図7B】静的肺体積圧力曲線測定値の下降部がコントロール群およびrhSP−D群の間で類似していたことを明らかにする。
【図8】高レベルのrhSP−Dが気管内SP−D滴注後5時間で気管支肺胞洗浄液(BALF)において検出されたことを明らかにする免疫ブロットである(動物#6、#7および#8)。rhSP−Dが、コントロールの子ヒツジから得られたBALFでは見出されなかった(動物#1および#2)。
【図9】LPSとともに投与されたとき、SP−Dが濃度依存的様式で血漿中のIL−6レベルおよびTNFαレベルを著しく低下させたことを明らかにする。図9AはIL−6のデータを示し、図9BはTNFαのデータを示す。
【図10】SP−Dが、SP−D処置の不在下での血漿中のIL−6レベルと比較した場合、LPS用量の前(t=−30)、LPS用量と同時(t=0)またはLPS用量の後(t=+30)で投与されたとき、血漿中のIL−6レベルを低下させたことを示す。
【図11A】図11はLPSにより誘導される炎症の阻害がSP−D LPS結合親和性と直接に相関したことを示す。図11Aは、SP−Dについての2つの異なった大腸菌株のLPS結合親和性を例示する。菌株011:B4は大きいSP−D LPS結合親和性を有し、これに対して、菌株0127:B8は低いSP−D LPS結合親和性を有する。
【図11B】高結合性LPS株(菌株011:B4)をSP−Dとプレインキュベーションすることにより、血漿中のIL−6レベルが著しく低下したことを明らかにし、しかしながら、SP−Dは、SP−Dに対する親和性が低いLPS株(菌株0127:B8)により誘導される炎症を阻害しなかった。
【図12】全身的LPS暴露の後での野生型マウスおよびSftpd−/−マウスにおける血漿中のサイトカインレベルの比較である。LPSにより処置されたSftpd−/−マウスにおける血漿IL−6レベルは野生型マウスの場合よりも約80%低く、これは予想以外の結果であった。
【図13】SP−D処置および非処置の全身的敗血症マウスにおける血漿中のサイトカインレベルの比較である。盲腸結紮および穿刺(CLP)の後、SP−Dにより処置されたマウスは、コントロールマウスよりも低い平均血漿IL−6レベルを示した。
【図14】SP−D処置および非処置の全身的敗血症マウスにおける生存の比較である。CLP後、死亡率は、コントロールマウスの方が、SP−Dにより処置されたマウスの場合よりも著しく高かった。
【図15】敗血症マウスおよびコントロールマウスにおける血漿中のSP−Dレベルの比較である。血漿中のSP−Dレベルが、コントロールマウスと比較して、敗血症誘導マウスにおいて著しく低下した。このことは、マウスのCLPモデルは、全身的SP−D産生を評価するための機能的なインビボシステムを提供し得ることを示す。
【図16】Sftpdプロモータが血管内皮細胞において活性化されることを明らかにする。MFLM−91U細胞(不死化されたマウス胎児肺間葉細胞株)を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子につながれたSftpdプロモータを含有するプラスミド、または、ルシフェラーゼレポーター遺伝子だけを含有するコントロールプラスミドにより一過性にトランスフェクションした。ルシフェラーゼ活性が、コントロールプラスミドによりトランスフェクションされた細胞と比較して、ルシフェラーゼ遺伝子につながれたSftpdプロモータを含有するプラスミドによりトランスフェクションされたMFLM−91U細胞において著しく増大した。
【図17】野生型マウスおよびSftpd−/−マウスにおける経時的な血漿中のSP−Dレベルを示す線グラフである。SP−Dが、野生型マウスでは約6時間の半減期で血漿に残存し、しかし、Sftpd−/−マウスでは、SP−Dの半減期が約2時間に低下した。興味深いことに、ネックドメインおよび炭水化物認識ドメイン(CRD)のみの三量体からなる短縮型SP−Dフラグメントの半減期は62時間である(Sorensen、G.L.他(2006)、Am J Physiol Heart Circ Physiol、290:H2286〜H2294)。まとめると、結果から、血漿中のSP−Dを取り込むための特異的な細胞機構が存在すること、および、この機構はSP−DのN末端ドメインおよび/またはコラーゲンドメインに依存していることが示される。
【図18】SP−Dを尾静脈注入により投与した後のSftpd−/−マウスでの組織ホモジネートにおけるSP−Dレベルを例示する。脾臓におけるSP−Dのレベルが、他の組織で観測されたSP−Dレベルよりも、また、脾臓におけるバックグラウンドレベルに対して著しく高くなった。このことは、全身的SP−Dが脾臓による循環から除かれることを示す。
【図19】野生型マウスおよびSftpd−/−マウス(変異型導入遺伝子rSftpdCDMTg+が発現する)における肺の形態学およびマクロファージ活性を例示する。変異型導入遺伝子rSftpdCDMTg+は、正常なCRD、ネックドメインおよびN末端ドメインを有するが、コラーゲンドメインを有しない変異型SP−Dタンパク質(rSftpdCDM)を発現する。この変異型SP−Dタンパク質は野生型マウスにおいて肺の形態学またはマクロファージ活性を乱さなかった。しかしながら、この変異型SP−Dタンパク質はSftpd−/−マウスのベースライン状態での異常なマクロファージ活性を回復させなかった。増大したレベルのメタロプロテイナーゼを発現する肥大した泡沫状マクロファージが、Sftpd−/−マウス、および、rSftpdCDMタンパク質を発現するSftpd−/−マウスにおいて容易に認められた。図19Aは野生型マウスからの肺組織を例示する。図19Bは野生型バックグラウンドにおけるrSftpdCDMTg+導入遺伝子の発現を例示する。図19CはSftpd−/−マウスからの肺組織を例示する。図19DはSftpd−/−バックグラウンドにおけるrSftpdCDMTg+導入遺伝子の発現を示す。図における矢じりは、肥大した泡沫状マクロファージを示す。
【図20】インフルエンザAウイルス(IAV)に対する気管内暴露に対する、野生型マウス、Sftpd−/−マウスおよびrSftpdCDMTg+/Sftpd−/−マウスの応答を例示する。増大したレベルのIL−6、TNFαおよびIFNγが、IAV攻撃されたSftpd−/−マウスの肺ホモジネートにおいて認められた。しかしながら、これらのレベルはrSftpdCDMTg+/Sftpd−/−マウスの肺ホモジネートでは野生型レベルに戻った。図20Aは、IAV攻撃されたマウスの3つの群における血漿中のIL−6についてのデータを示す。図20Bおよび図20Cは同様に、IAV攻撃されたマウスの3つの群における血漿中のTNFαレベルおよびIFNγレベルについての結果をそれぞれ例示する。
【図21】血管内皮細胞における発現のために重要であるSftpdプロモータの領域を特定するための実験で使用される利用可能なSftpdプロモータ構築物の概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における敗血症の防止および処置を、敗血症の症状を防止または軽減するために効果的な量で行うための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。
【請求項2】
患者が哺乳動物である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
患者がヒトである、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
患者が成人である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
患者が小児である、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
患者が幼児である、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
患者が新生児である、請求項3に記載の使用。
【請求項8】
患者が早産新生児である、請求項3に記載の使用。
【請求項9】
ポリペプチドが気管内手段によって投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
ポリペプチドがエアロゾル化によって投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
ポリペプチドが全身投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
敗血症が細菌感染症に由来する、請求項1に記載の使用。
【請求項13】
敗血症が肺感染症に由来する、請求項1に記載の使用。
【請求項14】
ポリペプチドが体重1kgあたり0.50mg〜100mgの量で投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項15】
ポリペプチドが体重1kgあたり0.50mg〜50mgの量で投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項16】
ポリペプチドが体重1kgあたり0.50mg〜20mgの量で投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項17】
患者における敗血症の防止および処置を、敗血症の症状を防止または軽減するために効果的な量で行うための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有する組換えポリペプチドの使用。
【請求項18】
患者が哺乳動物である、請求項14に記載の使用。
【請求項19】
患者がヒトである、請求項14に記載の使用。
【請求項20】
患者が成人である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
患者が小児である、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
患者が幼児である、請求項19に記載の使用。
【請求項23】
患者が新生児である、請求項19に記載の使用。
【請求項24】
患者が早産新生児である、請求項19に記載の使用。
【請求項25】
組換えポリペプチドが気管内手段によって投与される、請求項14に記載の使用。
【請求項26】
ポリペプチドがエアロゾル化によって投与される、請求項14に記載の使用。
【請求項27】
組換えポリペプチドが全身投与される、請求項14に記載の使用。
【請求項28】
敗血症が細菌感染症に由来する、請求項14に記載の使用。
【請求項29】
敗血症が肺感染症に由来する、請求項14に記載の使用。
【請求項30】
ポリペプチドが少なくとも5アミノ酸の長さである、請求項14に記載の使用。
【請求項31】
患者における敗血症の防止および処置を、敗血症の症状を防止または軽減するために効果的な量で行うための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドをコードする核酸の使用。
【請求項32】
患者が哺乳動物である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
患者がヒトである、請求項31に記載の使用。
【請求項34】
患者が、成人、小児、幼児、新生児および早産新生児の1つから選択される、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
核酸が気管内手段によって投与される、請求項31に記載の使用。
【請求項36】
核酸がエアロゾル化によって投与される、請求項31に記載の使用。
【請求項37】
核酸が全身投与される、請求項31に記載の使用。
【請求項38】
敗血症が細菌感染症に由来する、請求項31に記載の使用。
【請求項39】
敗血症が肺感染症に由来する、請求項31に記載の使用。
【請求項40】
患者の血漿内へのリポ多糖(LPS)の漏出を、血漿内へのLPSの漏出を低下させるために効果的な量で低下させるための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。
【請求項41】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
患者の血漿内への大腸菌細胞の漏出を、血漿内への大腸菌細胞の漏出を低下させるために効果的な量で低下させるための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。
【請求項43】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
患者の血漿中のエンドドキシンレベルを、血漿中のエンドトキシンレベルを低下させるために効果的な量で低下させるための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。
【請求項45】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項42に記載の使用。
【請求項46】
患者の肺からのエンドドキシンの放出を、肺からのエンドトキシンの放出を阻害するために効果的な量で阻害するための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。
【請求項47】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
患者を気管内エンドドキシンの全身的影響から保護するために効果的な量で患者を気管内エンドドキシンの全身的影響から保護するための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。
【請求項49】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
患者における全身的炎症を防止するために効果的な量で患者における全身的炎症を防止するための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項48に記載の使用。
【請求項51】
全身的炎症が肺からのエンドトキシンの放出によって引き起こされる、請求項48に記載の使用。
【請求項52】
患者における肺感染症を処置するために効果的な量で患者における肺感染症を処置するための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項52に記載の使用。
【請求項53】
肺感染症が細菌によって引き起こされる、請求項52に記載の使用。
【請求項54】
患者における肺感染症を処置するために効果的な量で、患者における肺感染症を、敗血症の危険性が低下するように処置するための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。
【請求項55】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項54に記載の使用。
【請求項56】
SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項57】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
医薬的に許容され得る分散化剤をさらに含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項59】
配列番号2を含むSP−Dポリペプチドに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項60】
配列番号3を含むSP−Dポリペプチドに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項61】
SP−Dポリペプチドに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む医薬組成物。
【請求項1】
患者における敗血症の防止および処置を、敗血症の症状を防止または軽減するために効果的な量で行うための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。
【請求項2】
患者が哺乳動物である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
患者がヒトである、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
患者が成人である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
患者が小児である、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
患者が幼児である、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
患者が新生児である、請求項3に記載の使用。
【請求項8】
患者が早産新生児である、請求項3に記載の使用。
【請求項9】
ポリペプチドが気管内手段によって投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
ポリペプチドがエアロゾル化によって投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
ポリペプチドが全身投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
敗血症が細菌感染症に由来する、請求項1に記載の使用。
【請求項13】
敗血症が肺感染症に由来する、請求項1に記載の使用。
【請求項14】
ポリペプチドが体重1kgあたり0.50mg〜100mgの量で投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項15】
ポリペプチドが体重1kgあたり0.50mg〜50mgの量で投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項16】
ポリペプチドが体重1kgあたり0.50mg〜20mgの量で投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項17】
患者における敗血症の防止および処置を、敗血症の症状を防止または軽減するために効果的な量で行うための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有する組換えポリペプチドの使用。
【請求項18】
患者が哺乳動物である、請求項14に記載の使用。
【請求項19】
患者がヒトである、請求項14に記載の使用。
【請求項20】
患者が成人である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
患者が小児である、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
患者が幼児である、請求項19に記載の使用。
【請求項23】
患者が新生児である、請求項19に記載の使用。
【請求項24】
患者が早産新生児である、請求項19に記載の使用。
【請求項25】
組換えポリペプチドが気管内手段によって投与される、請求項14に記載の使用。
【請求項26】
ポリペプチドがエアロゾル化によって投与される、請求項14に記載の使用。
【請求項27】
組換えポリペプチドが全身投与される、請求項14に記載の使用。
【請求項28】
敗血症が細菌感染症に由来する、請求項14に記載の使用。
【請求項29】
敗血症が肺感染症に由来する、請求項14に記載の使用。
【請求項30】
ポリペプチドが少なくとも5アミノ酸の長さである、請求項14に記載の使用。
【請求項31】
患者における敗血症の防止および処置を、敗血症の症状を防止または軽減するために効果的な量で行うための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドをコードする核酸の使用。
【請求項32】
患者が哺乳動物である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
患者がヒトである、請求項31に記載の使用。
【請求項34】
患者が、成人、小児、幼児、新生児および早産新生児の1つから選択される、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
核酸が気管内手段によって投与される、請求項31に記載の使用。
【請求項36】
核酸がエアロゾル化によって投与される、請求項31に記載の使用。
【請求項37】
核酸が全身投与される、請求項31に記載の使用。
【請求項38】
敗血症が細菌感染症に由来する、請求項31に記載の使用。
【請求項39】
敗血症が肺感染症に由来する、請求項31に記載の使用。
【請求項40】
患者の血漿内へのリポ多糖(LPS)の漏出を、血漿内へのLPSの漏出を低下させるために効果的な量で低下させるための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。
【請求項41】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
患者の血漿内への大腸菌細胞の漏出を、血漿内への大腸菌細胞の漏出を低下させるために効果的な量で低下させるための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。
【請求項43】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
患者の血漿中のエンドドキシンレベルを、血漿中のエンドトキシンレベルを低下させるために効果的な量で低下させるための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。
【請求項45】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項42に記載の使用。
【請求項46】
患者の肺からのエンドドキシンの放出を、肺からのエンドトキシンの放出を阻害するために効果的な量で阻害するための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。
【請求項47】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
患者を気管内エンドドキシンの全身的影響から保護するために効果的な量で患者を気管内エンドドキシンの全身的影響から保護するための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。
【請求項49】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
患者における全身的炎症を防止するために効果的な量で患者における全身的炎症を防止するための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項48に記載の使用。
【請求項51】
全身的炎症が肺からのエンドトキシンの放出によって引き起こされる、請求項48に記載の使用。
【請求項52】
患者における肺感染症を処置するために効果的な量で患者における肺感染症を処置するための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項52に記載の使用。
【請求項53】
肺感染症が細菌によって引き起こされる、請求項52に記載の使用。
【請求項54】
患者における肺感染症を処置するために効果的な量で、患者における肺感染症を、敗血症の危険性が低下するように処置するための医薬品を製造するための、SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドの使用。
【請求項55】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項54に記載の使用。
【請求項56】
SP−Dポリペプチドまたはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項57】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
医薬的に許容され得る分散化剤をさらに含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項59】
配列番号2を含むSP−Dポリペプチドに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項60】
配列番号3を含むSP−Dポリペプチドに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項61】
SP−Dポリペプチドに対して少なくとも70%の相同性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む医薬組成物。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2009−514958(P2009−514958A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540095(P2008−540095)
【出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/043055
【国際公開番号】WO2007/056195
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(500469235)チルドレンズ ホスピタル メディカル センター (40)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/043055
【国際公開番号】WO2007/056195
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(500469235)チルドレンズ ホスピタル メディカル センター (40)
【Fターム(参考)】
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