説明

肺炎および人工呼吸器関連気管気管支炎を治療および予防するための方法

本発明は、人工呼吸器関連肺炎等の肺炎を含む、気道の細菌感染を治療するための方法、および人工呼吸器関連気管気管支炎を治療するための方法であって、それらを必要とする個人の気道に、エアロゾルとして有効量の塩製剤を投与することを含む、方法に関する。本製剤は、気道を感染させ得るか、肺炎を引き起こし得るか、または人工呼吸器関連気管気管支炎を引き起こし得る病原体の感染を減少させるために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2010年1月25日に出願された米国出願第61/298,092および2009年3月26日に出願された米国出願第61/163,767の利益を主張する。上の出願の全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
感染病原体の大きな多様性によって引き起こされる一般的な疾病、肺炎は、非常に高い罹患率および死亡率を占める。肺炎は、世界中で第3の死の主要原因であり、先進工業国における感染病による死の主要原因である。発展途上国では、約2億人の子どもの死因(全ての死因の20%)は、肺炎に起因する。Lancet Infect Dis.,2:25−32(2002)。先進工業国で市中肺炎(CAP)を有する患者の大多数は、低い死亡率(通常、1%未満)の外来患者として処理される。患者管理を必要とする患者に関して、総合的な死亡率は、約12%にまで増加する。
【0003】
院内肺炎(病院内肺炎、HAP、医療ケア関連肺炎、HCAP)の死亡率は、大幅に増加している。HAPは、全ての院内感染の15%の割合を占め、その死亡率は30%を超えるが、それに起因する死亡率はより低い。Am J Respir Crit Care Med.,157:1165−1172(1998)、Am J Med.,94:281−288(1993)、Chest.,119:373S−384S(2001)。機械的人工呼吸を必要とすることは、高い死亡率を有するHAPの進行への危険性の高い要因である。人工呼吸器関連肺炎(VAP)と呼ばれるこの種のHAPは、挿管された全患者の47%に至るまでに起こり、患者集団間で変化する。Curr Opin Pulm Med.,11:236−241(2005)。VAPは、病院での在院日数の増加をもたらすため、医療費を劇的に増加させる。加えて、34%の混合した内科/外科集中治療室患者から57.1%の心臓外科患者に及ぶ高い死亡率が報告されている。JAMA.,290:367−373(2003)、Crit Care Med.,31:1964−1970(2003)。
【0004】
細菌は、成人の肺炎の最も一般的な原因である。ほとんどのCAPの事例は、肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌、および肺炎マイコプラズマの感染に起因する。Lancet.,362:1991−200(2003)、Curr Opin Pulm Med.,6:226−233(2000)。遅発性VAPの事例の大多数は、抗生物質耐性亜類型を含む黄色ブドウ球菌、シュードモナス菌種、クレブシエラ菌種、ならびにアシネトバクター属種によって引き起こされる。Crit Care.,9:459−464(2005)。
【0005】
機械的に人工呼吸を受ける患者は、人工呼吸器関連気管気管支炎(VAT)を発生する危険性もある。例えば、Torres et al.,Critical Care,9:255−256(2005)、Craven D.,Critical Care,12:157(2008)、Craven et al., Chest,135:521−528(2009)を参照されたい。VAPのようなVATは、気道の微生物コロニー形成の特徴があり、VAPに進行し得る。Craven et al.,Chest,135:521−528(2009)。VATは、集中治療室での在院日数および機械的人工呼吸の追加日数の増加と関連する。Craven D.,Critical Care,12:157(2008)。臨床研究は、VATを抗生物質で治療することが、VAPの発生率を減少させ、機械的人工呼吸の日数を減少させ、かつ死亡率を減少させることを示した。Craven D.,Critical Care,12:157(2008)。
【0006】
CAPおよびHAPは、健康保険に対する莫大な経済的負担を示す。CAP単独で、1年で、10億を超える人が医師を訪れ、64億日の活動制限、および600,000を超える入院患者により、米国で約200億米ドルの費用をもたらす。Clin Infect Dis.,18:501−513(1994)、Am J Med.,78:45−51(1985)。
【0007】
CAP(例えば、肺炎連鎖球菌)およびVAP(例えば、緑膿菌、黄色ブドウ球菌)を引き起こす病原体の抗菌薬耐性の増大、ならびに肺炎に対する増大した易罹患性を有する人の数の増加は、この問題をさらに悪化させる。Treat Respir Med.,4 Suppl 1:19−23.:19−23(2005)、Infection.,33:106−114(2005)、Curr Opin Pulm Med.,11:236−241(2005)、Am J Respir Crit Care Med.,170:786−792(2004)、Curr Opin Pulm Med.,11:226−230(2005)。肺炎に関する新規の予防および治療戦略の開発が、緊急に必要とされている。抗生物質に限定されない肺炎を治療するための革新的な治療法の開発の極度の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、肺炎を治療するための方法に関し、肺炎を有するか、または肺炎様の症状を示す個人に、治療的に有効な量のカルシウム塩を含む有効量の製剤を投与することを含み、製剤は、エアロゾルとして、個人の気道(例えば、肺)に投与される。
【0009】
本発明は、肺炎を引き起こす病原体の感染を減少させる方法に関し、肺炎を有するか、肺炎様の症状を示すか、または肺炎を引き起こす可能性のある病原体の感染の危険性のある個人に、治療的に有効な量のカルシウム塩を含む有効量の製剤を投与することも含み、製剤は、エアロゾルとして、個人の気道(例えば、肺)に投与される。
【0010】
本発明は、さらに肺炎を予防する方法に関し、肺炎に罹患する危険性のある個人に、治療的に有効な量のカルシウム塩を含む有効量の製剤を投与することを含み、製剤は、エアロゾルとして、個人の気道(例えば、肺)に投与される。
【0011】
肺炎は、好ましくは、細菌性肺炎である。例えば、細菌性肺炎は、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、ストレプトコッカスアガラクチア、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、カタル球菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマ、レジオネラニューモフィラ、エンテロバクター種、アシネトバクター種、アシネトバクターバウマンニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ステノトロフォモナスマルトフィリア、バークホルデリア種、およびそれらの組み合わせによって引き起こされ得る。いくつかの実施形態では、肺炎は、市中肺炎(CAP)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、院内肺炎(HAP)、または医療ケア関連肺炎(HCAP)である。
【0012】
特定の態様では、本発明は、人工呼吸器関連肺炎(VAP)を治療するための方法に関し、VAPを有する個人に、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含み、該カルシウム塩製剤は、エアロゾルとして、該個人の肺に投与される。
【0013】
別の特定の態様では、本発明は、人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防のための方法に関し、挿管された患者等のVAPの危険性のある個人に、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含み、該カルシウム塩製剤は、エアロゾルとして、該個人の肺に投与される。
【0014】
本発明は、VATを治療するための方法に関し、VATを有するか、またはVAT様の症状を示す個人に、治療的に有効な量のカルシウム塩を含む有効量の製剤を投与することを含み、製剤は、エアロゾルとして、個人の気道(例えば、肺)に投与される。
【0015】
本発明は、VATを予防するための方法に関し、挿管された患者等のVAPの危険性のある個人に、治療的に有効な量のカルシウム塩を含む有効量の製剤を投与することを含み、製剤は、エアロゾルとして、個人の気道(例えば、肺)に投与される。
【0016】
本発明は、(予防的治療を含む)細菌性気道感染を治療するための方法に関し、気道の細菌感染を有するか、気道の細菌感染の症状を示すか、または気道の細菌感染に罹患する危険性のある個人に、有効量のカルシウム塩製剤および抗生物質薬剤を投与することを含む。本発明は、気道感染を引き起こす細菌性病原体の感染を減少させるための方法に関し、気道の細菌感染を有するか、気道の細菌感染の症状を示すか、または気道の細菌感染に罹患する危険性のある個人に、有効量のカルシウム塩製剤および抗生物質薬剤を投与することも含む。
【0017】
カルシウム塩は、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム等、およびそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、体重1キログラム当たり約0.001mg〜体重1キログラム当たり約10mgのカルシウム用量が、気道(例えば、肺)に投与される。製剤は、液剤または乾燥粉末であり得る。
【0018】
特定の実施形態では、カルシウム塩製剤は、ナトリウム塩をさらに含む。ナトリウム塩は、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、重リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等、およびそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、カルシウム塩製剤中のカルシウムとナトリウムとの比率は、約8:1である。いくつかの実施形態では、肺に投与されるナトリウム用量は、体重1キログラム当たり約0.001mg〜体重1キログラム当たり約10mgである。
【0019】
本発明は、本明細書に記載される、治療における使用のための塩製剤、ならびに気道、肺炎、VAP、もしくはVATの細菌感染等の、本明細書に記載される疾病の伝染の治療、予防、および/または減少のための薬剤の製造のための塩製剤の使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本明細書に記載される研究で使用される通過モデルの概略図である。
【図2】カルシウムが、細菌通過アッセイにおいて、粘液模倣物(アルギン酸ナトリウム)の全域で肺炎桿菌の運動を阻止することを示すグラフである。粘液模倣物を、0.90%の塩化ナトリウム溶液中の1.29%の塩化カルシウム(0.12M)または0.90%の塩化ナトリウムに曝露させ、肺炎桿菌を先端面に添加した。基底面バッファ中の細菌の力価を時間とともに決定した。
【図3】カルシウムが、細菌通過アッセイにおいて、粘液模倣物(アルギン酸ナトリウム)の全域で肺炎連鎖球菌の運動を阻止することを示すグラフである。粘液模倣物を、0.90%の塩化ナトリウム溶液中の1.29%の塩化カルシウム(0.12M)または0.90%の塩化ナトリウムに曝露させ、肺炎連鎖球菌を先端面に添加した。基底面バッファ中の細菌の力価を時間とともに決定した。
【図4】マグネシウムが、細菌通過アッセイにおいて、粘液模倣物(アルギン酸ナトリウム)の全域で肺炎桿菌の運動を減少させることを示すグラフである。粘液模倣物を、0.90%の塩化ナトリウム溶液中の0.12Mの塩化マグネシウム、または0.90%の塩化ナトリウムに曝露させ、肺炎桿菌を先端面に添加した。基底面バッファ中の細菌の力価を時間とともに決定した。塩化マグネシウムは、粘液模倣物の全域で運動を阻止したが、カルシウムよりも小さい範囲であった。(図2と比較)
【図5】亜鉛およびアルミニウムが、細菌通過アッセイにおいて、粘液模倣物(アルギン酸ナトリウム)の全域で肺炎桿菌の運動を減少させたことを示すグラフである。粘液模倣物を、0.90%の塩化ナトリウム溶液中の0.12Mの塩化カルシウム、0.90%の塩化ナトリウム溶液中の0.12Mの塩化アルミニウム、0.90%の塩化ナトリウム溶液中の0.12Mの塩化亜鉛、または0.90%の塩化ナトリウムに曝露させ、肺炎桿菌を先端面に添加した。基底面バッファ中の細菌の力価を時間とともに決定した。亜鉛およびアルミニウムは、粘液模倣物の全域で運動を阻害したが、カルシウムよりも小さい範囲であった。
【図6】塩化カルシウムへのアルギン酸ナトリウム模倣物の予防的曝露が、アルギン酸ナトリウム粘液模倣物の全域で肺炎桿菌の運動を阻害することを示すグラフである。細菌を噴霧の40分前、噴霧の直前、または噴霧の40分後に添加した。
【図7】塩化カルシウムが、用量依存的様式で、粘液模倣物を通る細菌の運動を阻害することを示すグラフである。塩化カルシウムの用量効果が示され、粘液模倣物を通る細菌運動を減少させる。
【図8】塩化カルシウム単独が、0.90%の塩化ナトリウムなしで、用量依存的様式で、粘液模倣物を通る細菌の運動を阻害することを示すグラフである。塩化カルシウムの用量効果が、粘液模倣物を通る細菌運動を減少させることが示される。
【図9】細菌通過アッセイにおいて、粘液模倣物(アルギン酸ナトリウム)の全域で緑膿菌の低下した運動を示すグラフである。粘液模倣物を、0.90%の塩化ナトリウム溶液中の1.29%の塩化カルシウム(0.12M)または0.90%の塩化ナトリウムに曝露させ、緑膿菌を先端面に添加した。基底面バッファ中の細菌の力価を時間とともに決定した。
【図10A】細菌通過アッセイにおいて、粘液模倣物(アルギン酸ナトリウム)の全域で分類不能なインフルエンザ菌(NHTI)の低下した運動を示すグラフである。粘液模倣物を、0.90%の塩化ナトリウム溶液中の0.12Mの塩化カルシウム、または0.9%の塩化ナトリウムに曝露させ、NHTIを先端面に添加した。
【図10B】細菌通過アッセイにおいて、粘液模倣物(アルギン酸ナトリウム)の全域で黄色ブドウ球菌の低下した運動を示すグラフである。粘液模倣物を、0.90%の塩化ナトリウム溶液中の0.12Mの塩化カルシウムまたは0.9%の塩化ナトリウムに曝露させ、黄色ブドウ球菌を先端面に添加した。
【図11A】生体外模擬咳システムを示す概略図である。直径0.01マイクロメートル超の粒子を除去するように濾過された、瓶詰めされた圧縮空気を使用して、咳操作の流れを模倣する設定圧力まで加圧チャンバを充填する。咳操作を開始するために、電磁弁を作動させ、気流速度を記録する呼吸速度計、および低抵抗HEPAフィルタを通して圧縮空気を放出する。空気が粘液模倣物上を通過する気流とともに溝に入り、エアロゾル粒子を産生する。ドリップトラップは、産生されたエアロゾルが膨張可能な保持チャンバに入る間、粘液模倣物の任意のバルク動作が、保持チャンバに入るのを防止する。咳の終了後、光学粒子計数器が、保持チャンバ中のエアロゾル粒子を分粒および計数する。
【図11B】塩化カルシウムは、生体外モデルにおける生体粒子形成の抑制下で、0.90%の生理食塩水よりも効果的であることを示すグラフである。平均(±標準誤差)累積粒子数を、気管溝モデルにおける粘液模倣物(MM)上での模擬咳後に測定した(1条件につきn=4)。模擬咳の前に噴霧エアロゾルで局所的に模倣物を治療し、光学粒子計数器を用いて粒子(0.3〜25μm)を列挙することによって、各々の試験製剤の効果を試験した。
【図11C】0.90%の塩化ナトリウム溶液中の1.29%の塩化カルシウム(0.12M)への曝露による、生体粒子形成を含有する病原体の抑制を示すグラフである。粘液模倣物を肺炎桿菌と混合し、咳システムに添加した。模擬咳に従って、生体粒子を液体培養液中に収集し、CFUの数を判定した。カルシウムエアロゾルで治療された模倣物は、治療されていない対照と比較して、肺炎桿菌を含有する粒子の数を75%減少させた。
【図12A】肺炎連鎖球菌に感染し、感染の2時間後に、15分間、CaCl生理食塩水エアロゾル(0.90%の塩化ナトリウム中の1.29%の塩化カルシウム(0.12M))で処理されたマウスは、処理されていない対照よりも低い細菌負荷を有することを示すグラフである。各々のデータ点は、単一の動物から得られたデータを表す。各々の群のバーは、群の幾何平均を表す。
【図12B】肺炎連鎖球菌の感染の2時間前に、15分間、CaCl生理食塩水エアロゾル(0.90%の塩化ナトリウム中の1.29%の塩化カルシウム(0.12M))で処理されたマウスは、治療されていない対照よりも低い細菌負荷を有することを示すグラフである。各々のデータ点は、単一の動物から得られたデータを表す。各々の群のバーは、群の幾何平均を表す。
【図13A】肺炎連鎖球菌に感染し、感染の2時間前に、15分間、MgCl−生理食塩水エアロゾル(0.90%の塩化ナトリウム中の0.12Mの塩化マグネシウム)で処理されたマウスは、治療されていない対照と同様の細菌負荷を有することを示すグラフである。複数の実験からの総合データが示される。各々のデータ点は、単一の動物から得られたデータを表す。各々の群のバーは、群の幾何平均を表す。データを、マンホイットニーのU検定を用いて統計的に分析した(ns=有意ではない)。
【図13B】肺炎連鎖球菌に感染し、感染の2時間前に、15分間、生理食塩水エアロゾル(0.90%の塩化ナトリウム)で事前処理されたマウスは、CaCl生理食塩水エアロゾル(0.9%の塩化ナトリウム中の1.29%の塩化カルシウム(0.12M))で事前処理された動物よりも高い細菌負荷を有することを示すグラフである。複数の実験からの総合データが示される。各々のデータ点は、単一の動物から得られたデータを示す。各々の群のバーは、群の幾何平均を表す。データを、マンホイットニーのU検定を用いて統計的に分析した。
【図14A】塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムを含む製剤(8:1の比率でのCa2+:Na)が、肺細菌負荷を減少させたことを示す。マウスを、PariLC Sprint噴霧器を用いて、示された製剤で治療し、続いて、肺炎連鎖球菌に感染させた。各々の動物における肺細菌負荷が示される。各々の円は、単一の動物からのデータを表し、バーは、95%の信頼区間を有する幾何平均を示す。NaCl、0.5X、および1Xの群に関するデータは、2つまたは3つの独立した実験から集められている。2Xおよび4Xの群からのデータは、単一の実験からである。
【図14B】より長時間の噴霧でカルシウム用量を増加させることは、治療効力に重大な影響を及ぼさなかったことを示す。マウスを、Pari LC Sprint噴霧器を用いて、生理食塩水(NaCl)またはカルシウム:ナトリウム製剤(1X浸透圧=等浸透圧、8:1のモル比で8:1のCa2+:Na)で治療し、続いて、肺炎連鎖球菌に感染させた。各々の動物における肺細菌負荷が示される。各々の円は、単一の動物からのデータを表し、バーは、幾何平均を示す。3分を超える投薬時間は、対照と比較して、細菌負荷を著しく減少させた(一方向性ANOVA、テューキーの多重比較事後試験)。
【図14C】アンピシリン、製剤10(1X)、生理食塩水、および製剤10プラスアンピシリン(アンピシリン+1X)による細菌感染の阻害を示すグラフである。データを、3つの独立した実験から収集し(1つの実験、1つの群につき、n=5〜6)、各々の実験を、個別の生理食塩水対照に規準化した。各々のデータ点は、単一の動物に対する治療されていない対照の割合を表し、バーは、95%の信頼区間プラスまたはマイナスの幾何平均を示す。データの群を、マンホイットニーのU検定で分析した。***は、生理食塩水対照と比較して、p<0.001を示す。
【図15】乾燥粉末治療が、マウスモデルにおける細菌性肺炎の重症度を減少させたことを示すグラフである。マウスを、指示された乾燥粉末製剤で治療し、続いて、肺炎連鎖球菌に感染させた。各々の動物における肺細菌負荷が表される。各々の円は、単一の動物からのデータを表し、バーは、群に対して幾何平均を示す。データを、各々の個別の実験において、ロイシン対照に規準化した。データは、2つの独立した実験から集められている。両側スチューデントのt検定で、治療群をロイシン対照群と比較した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、肺炎および/またはVATの治療、予防、ならびに伝染の減少のための方法に関する。本明細書に記載されるように、塩製剤(例えば、カルシウム塩を含む製剤、カルシウム塩およびナトリウム塩を含む製剤)を肺に投与することによる肺炎の治療および防止に関する生体外および生体内研究の結果は、食塩水が、肺炎(例えば、肺炎連鎖球菌、肺炎桿菌、緑膿菌)を引き起こす病原体の粘液層を通過する能力を阻害することができることを示した。感染を確立し、肺炎またはVATを引き起こすために、病原体が気道を通過しなくてはならないので、この結果は、感染速度を低下させ、肺炎を治療もしくは予防するのに有用である。本明細書に記載される研究は、肺炎またはVATを引き起こす病原体の感染前もしくは感染後に、マウスの肺に塩製剤を投与することが、肺炎ならびに/またはVATを治療および予防する効力を示すマウスの病原体負荷を減少させることも示す。
【0022】
「肺炎」という用語は、肺の炎症性疾患を指す当分野の用語である。肺炎は、細菌、ウイルス、菌類、または寄生虫、ならびに肺への化学的もしくは物理的損傷を含む、様々な原因から引き起こされ得る。肺炎に関連する典型的な症状には、咳、胸痛、発熱、および呼吸困難が含まれる。肺炎の臨床診断は、当分野で周知であり、X線および/または痰の検査を含み得る。
【0023】
「細菌性肺炎」という用語は、例えば、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、ストレプトコッカスアガラクチア、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、カタル球菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマ、レジオネラニューモフィラ、エンテロバクター種、アシネトバクター種、アシネトバクターバウマンニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ステノトロフォモナスマルトフィリア、バークホルデリア種、およびそれらの組み合わせの気道の感染を含む、細菌感染によって引き起こされる肺炎を指す。
【0024】
「ウイルス性肺炎」という用語は、ウイルス感染によって引き起こされる肺炎を指す。一般にウイルス性肺炎を引き起こすウイルスには、例えば、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、アデノウイルス、およびメタ肺炎ウイルスが含まれる。単純ヘルペスウイルスは、一般集団ではまれな肺炎の原因であるが、新生児によく見られる。弱体化した免疫システムを有する人々は、サイトメガロウイルス(CMV)によって引き起こされる肺炎の危険性もある。
【0025】
肺炎は、肺内の解剖学的変化の存在、微生物学的分類、放射線学的分類、ならびに組み合わせの臨床的分類を含む、いくつかの方法で分類され得る。組み合わせの臨床的分類は、年齢、ある特定の微生物に対する危険因子、肺の基礎疾患および全身の基礎疾病の存在、ならびにその人が先頃入院したか等の要因を組み合わせる。肺炎には、市中肺炎(CAP)および病院内肺炎(HAP)の2つの広義のカテゴリーがある。第3のカテゴリー、医療ケア関連肺炎(HCAP)は、先頃医療制度に接触することが多かった病院外に住んでいる患者に生じ、肺炎の2つの広義のカテゴリーの間に存在する。
【0026】
本明細書で使用される、「市中肺炎(CAP)」という用語は、先頃入院していない対象における感染性肺炎を指す。CAPは、最も一般的な肺炎型である。肺炎連鎖球菌は、世界中で、市中肺炎を引き起こす最も一般的な病原体である。CAPは、英国において4番目に一般的な死因であり、米国において6番目に一般的な死因である。
【0027】
本明細書で使用される、「病院内肺炎(HAP)」という用語は、入院の少なくとも72時間後に発症する、別の疾患または医療手当での入院中もしくは入院後に感染した肺炎を指す。入院患者は、機械的人工呼吸、長期に渡る栄養失調、心臓および肺の基礎疾患、胃酸の減少、ならびに免疫性障害を含む、肺炎に対して多くの危険因子を有し得る。加えて、病院内に存在する微生物は、追加の危険因子である。病院内微生物には、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、シュードモナス菌種、エンテロバクター種、およびセラチア種等の薬物耐性菌が含まれ得る。「人工呼吸器関連肺炎(VAP)」は、HAPのサブセットである。本明細書で使用される、「人工呼吸器関連肺炎(VAP)」は、挿管または機械的人工呼吸の少なくとも48時間後に生じる肺炎である。
【0028】
「人工呼吸器関連気管気管支炎(VAP)」という用語は、挿管された患者に生じる疾病のスペクトルを指す当分野の用語であり、罹患患者は、通常、低い気道感染の臨床的兆候を示す。例えば、Craven et al.,Chest,135:521−528(2009)を参照されたい。VATは、気道の微生物コロニー形成の特徴があり、VATの一般的な病原体には、緑膿菌、アシネトバクターバウマンニ、およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が含まれる。
【0029】
本明細書で使用される、「エアロゾル」という用語は、典型的には、約0.1〜約30ミクロンの体積中央値幾何学的直径、または約0.5〜約10ミクロンの質量中央値空気力学的直径を有する、粒子(液体および液体ではない粒子、例えば、乾燥粉末を含む)の微細噴霧の任意の調製を指す。好ましくは、エアロゾル粒子の体積中央値幾何学的直径は、約10ミクロン未満である。エアロゾル粒子の好ましい体積中央値幾何学的直径は、約5ミクロンである。例えば、エアロゾルは、約0.1〜約30ミクロン、約0.5〜約20ミクロン、約0.5〜約10ミクロン、約1.0〜約3.0ミクロン、約1.0〜5.0ミクロン、約1.0〜10.0ミクロン、約5.0〜15.0ミクロンの体積中央値幾何学的直径を有する粒子を含有し得る。好ましくは、質量中央値空気力学的直径は、約0.5〜約10ミクロン、約1.0〜約3.0ミクロン、または約1.0〜5.0ミクロンである。
【0030】
本明細書で使用される、「気道」という用語には、上気道(例えば、鼻孔、鼻腔、咽喉、咽頭)、呼吸気道(例えば、喉頭、気管、気管支、細気管支)、および肺(例えば、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、肺胞)が含まれる。
【0031】
本明細書で使用される、「1X」浸透圧は、正常なヒト血液および細胞に対して等浸透圧である溶液を指す。正常なヒト血液および細胞と比較して、低浸透圧性または高浸透圧性である溶液は、適切な乗数を用いる1X溶液に関して説明される。例えば、低浸透圧性溶液は、0.1X、0.25X、または0.5Xの浸透圧を有し得、高浸透圧性溶液は、2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X、または10Xの浸透圧を有し得る。
【0032】
本明細書で使用される、「乾燥粉末」という用語は、吸入装置内に分散され、続いて、対象によって吸入されることができる、微細に分散された呼吸可能な乾燥粒子を含有する組成物を指す。そのような乾燥粉末もしくは乾燥粒子は、約15%以下の水または他の溶媒を含有するか、実質的に水もしくは他の溶媒を含まないか、または無水であり得る。
【0033】
本明細書に記載される本発明は、気道(例えば、経肺投与)に塩製剤を投与することを含む、肺炎および/もしくはVATの伝染を治療、予防、または減少させるための方法を提供する。塩製剤の肺送達は、様々な病原体(例えば、肺炎連鎖球菌、肺炎桿菌、緑膿菌)によって引き起こされる肺炎もしくはVATの伝染を治療、予防、または減少させるのに好適である安全で低費用の医学的介入を提供する。
製剤
【0034】
本明細書に記載される方法で使用する塩製剤(例えば、カルシウム塩製剤)は、活性成分として、少なくとも1つの塩を含有し、任意で、追加の塩または薬剤を含有し得る。特定の理論に縛られることを望むことなく、治療的および予防的有用性は、塩製剤の投与後の、気道内、例えば、肺粘液または気道ライニング流体中のカチオン(Ca2+等の塩由来のカチオン)量の増加に由来する。
【0035】
塩製剤には、気道に投与される時に非毒性である、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、シリコン、スカンジウム、チタニウム、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、亜鉛、スズ、銀の要素、および同様の要素の塩形態が含まれ得る。塩製剤は、溶液、乳濁液、懸濁液、または乾燥粉末等の任意の所望の形態であり得る。溶液および乾燥粉末等の好ましい塩製剤は、エアロゾル化され得る。好ましい塩製剤は、ナトリウム塩(例えば、生理食塩水(0.15MのNaClまたは0.90%の溶液))、カルシウム塩、もしくはナトリウム塩およびカルシウム塩の混合物を含有する。製剤が、カルシウム塩、ナトリウム塩、またはカルシウム塩もしくはナトリウム塩の組み合わせを含む時、所望の場合に1つ以上の他の塩も含有し得る。塩製剤は、所望に応じて、複数回用量を含むか、または単位用量組成物であり得る。
【0036】
好適なナトリウム塩には、例えば、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、重リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0037】
好適なカルシウム塩には、例えば、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム等、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0038】
好適なマグネシウム塩には、例えば、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、アルギン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ソルビン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、塩化マグネシウム等、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0039】
好適なカリウム塩には、例えば、重炭酸カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、ホウ酸カリウム、重亜硫酸カリウム、重リン酸カリウム、アルギン酸カリウム、安息香酸カリウム等が含まれる。さらなる好適な塩には、硫酸銅、塩化クロム、塩化第一スズ、および同様の塩が含まれる。他の好適な塩には、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、および塩化銀が含まれる。
【0040】
塩製剤は、概して、生理学的に許容可能な担体もしくは賦形剤中で調製されるか、またはそれらを含む。溶液、懸濁液、または乳濁液の形態の塩製剤においては、任意の好適な担体もしくは賦形剤が含まれ得る。好適な担体には、水、生理食塩水、エタノール/水溶液、エタノール溶液、緩衝化媒体、推進剤等を含む、水性、アルコール性/水性、およびアルコール溶液、乳濁液、または懸濁液が含まれる。乾燥粉末の形態の塩製剤において、好適な担体または賦形剤には、例えば、糖類(例えば、ラクトース、トレハロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール、キシリトール、ソルビトール)、アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(DPPS)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、脂肪アルコール、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、表面活性脂肪酸、トリオレイン酸ソルビタン(スパン85)、グリココール酸、界面活性剤、ポロキサマー、ソルビタン脂肪酸エステル、チロキサポール、リン脂質、アルキル糖類、リン酸ナトリウム、マルトデキストリン、ヒト血清アルブミン(例えば、組み換えヒト血清アルブミン)、生分解性ポリマー(例えば、PLGA)、デキストラン、デキストリン等が含まれる。所望の場合、塩製剤は、添加剤、防腐剤、または流体、栄養物もしくは電解質補給物も含有し得る(概して、Remington's Pharmaceutical Sciences,17th Edition,Mack Publishing Co.,PA,1985を参照されたい)。
【0041】
塩製剤は、好ましくは、気道への製剤の有効量の便利な投与を可能にする塩の濃縮物(例えば、カルシウム塩、ナトリウム塩)を含有する。例えば、対象の気道に有効量を送達するために大量の製剤が噴霧されることを要求するように、液剤がそれほど希釈されないことが概して望ましい。長時間の投与は好まれず、概して、製剤は、約120分以下、約90分以下、約60分以下、約45分以下、約30分以下、約25分以下、約20分、以下約15分、約10分、以下約7.5分、約5分以下、約4分以下、約3分以下、約2分以下、約1分以下、約45秒以下、もしくは約30秒以下で、有効量を気道または鼻腔に投与するのを可能にするのに十分な程度に濃縮されるべきである。例えば、塩液剤(例えば、カルシウム塩製剤)は、約0.01%〜約30%の塩(w/v)、0.1%〜約20%の塩(w/v)、0.1%〜約10%の塩(w/v)を含有し得る。液剤は、約0.001M〜約1.5Mの塩、約0.01M〜約1.0Mの塩、約0.01M〜約0.90Mの塩、約0.01M〜約0.8Mの塩、約0.01M〜約0.7Mの塩、約0.01M〜約0.6Mの塩、約0.01M〜約0.5Mの塩、約0.01M〜約0.4Mの塩、約0.01M〜約0.3Mの塩、約0.01M〜約0.2Mの塩、約0.1M〜約1.0Mの塩、約0.1M〜約0.90Mの塩、約0.1M〜約0.8Mの塩、約0.1M〜約0.7Mの塩、約0.1M〜約0.6Mの塩、約0.1M〜約0.5Mの塩、約0.1M〜約0.4Mの塩、約0.1M〜約0.3Mの塩、または約0.1M〜約0.2Mの塩を含有し得る。
【0042】
さらなる例では、塩液剤は、約0.115M〜1.15MのCa2+イオン、約0.116M〜1.15MのCa2+イオン、約0.23M〜1.15MのCa2+イオン、約0.345M〜1.15MのCa2+イオン、約0.424M〜1.15MのCa2+イオン、約0.46M〜1.15MのCa2+イオン、約0.575M〜1.15MのCa2+イオン、約0.69M〜1.15MのCa2+イオン、約0.805M〜1.15MのCa2+イオン、約0.849M〜1.15MのCa2+イオン、または約1.035M〜1.15MのCa2+イオンを含有し得る。ある特定のカルシウム塩(例えば、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム)の溶解度は、溶液の調製を制限し得る。そのような状況において、液剤は、所望のモル濃度を達成するのに必要とされるであろう同等量のカルシウム塩を含有する懸濁液の形態であり得る。
【0043】
塩製剤がカルシウム塩およびナトリウム塩を含有する製剤等のナトリウム塩を含有する時、薬学的液剤中のNaイオンは、所望のCa2+:Naの比率によって決まり得る。例えば、液剤は、約0.053M〜0.3MのNaイオン、約0.075M〜0.3MのNaイオン、約0.106M〜0.3MのNaイオン、約0.15M〜0.3MのNaイオン、約0.225M〜0.3MのNaイオン、約0.008M〜0.3MのNaイオン、約0.015M〜0.3MのNaイオン、約0.016M〜0.3MのNaイオン、約0.03M〜0.3MのNaイオン、約0.04M〜0.3MのNaイオン、約0.08M〜0.3MのNaイオン、約0.01875M〜0.3MのNaイオン、約0.0375M〜0.3MのNaイオン、約0.075M〜0.6MのNaイオン、約0.015M〜0.6MのNaイオン、または約0.3M〜0.6MのNaイオンを含有し得る。
【0044】
乾燥粉末製剤は、少なくとも約10重量%の塩、少なくとも約20重量%の塩、少なくとも約30重量%の塩、少なくとも約40重量%の塩、少なくとも約50重量%の塩、少なくとも約60重量%の塩、少なくとも約70重量%の塩、少なくとも約75重量%の塩、少なくとも約80重量%の塩、少なくとも約85重量%の塩、少なくとも約90重量%の塩、少なくとも約95重量%の塩、少なくとも約96重量%の塩、少なくとも約97重量%の塩、少なくとも約98重量%の塩、または少なくとも約99重量%の塩を含有し得る。例えば、いくつかの乾燥粉末製剤は、約20重量%〜約80重量%の塩、約20重量%〜約70重量%の塩、約20重量%〜約60重量%の塩を含有するか、または塩から実質的に成る。
【0045】
好ましい塩製剤は、カルシウム塩を含有する。ある特定のカルシウム塩は、溶解時に、カルシウム塩1モルにつき、2モル以上のCa2+を供給する。そのようなカルシウム塩は、カルシウム密度が高い液体もしくは乾燥粉末製剤を産生するのに特に好適であり得、したがって、有効量のカチオン(例えば、Ca2+、Na、またはCa2+およびNa)を送達することができる。例えば、1モルのクエン酸カルシウムは、溶解時に、3モルのCa2+を供給する。カルシウム塩が、低分子量を有する塩であり、かつ/または低分子量アニオンを含有することも概して好ましい。カルシウムイオンおよび低分子量アニオンを含有するカルシウム塩等の低分子量カルシウム塩は、高分子塩および高分子量アニオンを含有するカルシウム塩に対して高密度のカルシウムである。カルシウム塩が、約1000g/mol未満、約950g/mol未満、約900g/mol未満、約850g/mol未満、約800g/mol未満、約750g/mol未満、約700g/mol未満、約650g/mol未満、約600g/mol未満、約550g/mol未満、約510g/mol未満、約500g/mol未満、約450g/mol未満、約400g/mol未満、約350g/mol未満、約300g/mol未満、約250g/mol未満、約200g/mol未満、約150g/mol未満、約125g/mol未満、または約100g/mol未満の分子量を有することが概して好ましい。さらには、またはあるいは、カルシウムイオンが、カルシウム塩の全体の重量に対して重量の相当部分に寄与することが概して好ましい。カルシウムイオンが、全体のカルシウム塩の少なくとも10%、全体のカルシウム塩の少なくとも16%、少なくとも20%、少なくとも24.5%、少なくとも26%、少なくとも31%、少なくとも35%、または少なくとも38%の重さであることが概して好ましい。
【0046】
いくつかの塩製剤は、該カルシウム塩のカルシウムと全体の重量との重量比が約0.1〜約0.5であるカルシウム塩を含有する。例えば、該カルシウム塩のカルシウムと全体の重量との重量比は、約0.15〜約0.5、約0.18〜約0.5、約0.2〜約5、約0.25〜約0.5、約0.27〜約0.5、約0.3〜約5、約0.35〜約0.5、約0.37〜約0.5、または約0.4〜約0.5である。
【0047】
いくつかの塩製剤は、カルシウム塩およびナトリウム塩、例えば、0.15Mの塩化ナトリウム中の0.12Mの塩化カルシウム、または0.90%の生理食塩水中の1.3%(w/v)の塩化カルシウムを含有する。カルシウム塩およびナトリウム塩を含有するいくつかの塩製剤は、カルシウム:ナトリウム(モル:モル)の比率に特徴付けられる。カルシウム:ナトリウム(モル:モル)の好適な比率は、約0.1:1〜約32:1、約0.5:1〜約16:1、または約1:1〜約8:1に及び得る。例えば、カルシウム:ナトリウム(モル:モル)の比率は、約0.77:1、約1:1、約1:1.3、約1:2、約4:1、約8:1、または約16:1であり得る。特定の例では、塩製剤は、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムを含有し、約8:1(モル:モル)の比率のカルシウム:ナトリウムを有する。
【0048】
ある特定の態様では、塩製剤は、カルシウム塩およびナトリウム塩を含有し、Ca+2とNaとの比率は、約4:1(モル:モル)〜約16:1(モル:モル)である。例えば、製剤は、約5:1(モル:モル)〜約16:1(モル:モル)、約6:1(モル:モル)〜約16:1(モル:モル)、約7:1(モル:モル)〜約16:1(モル:モル)、約8:1(モル:モル)〜約16:1(モル:モル)、約9:1(モル:モル)〜約16:1(モル:モル)、約10:1(モル:モル)〜約16:1(モル:モル)、約11:1(モル:モル)〜約16:1(モル:モル)、約12:1(モル:モル)〜約16:1(モル:モル)、約13:1(モル:モル)〜約16:1(モル:モル)、約14:1(モル:モル)〜約16:1(モル:モル)、約15:1(モル:モル)〜約16:1(モル:モル)のCa+2とNaとの比率を含有し得る。
【0049】
ある特定の態様では、塩製剤は、カルシウム塩およびナトリウム塩を含有し、Ca+2とNaとの比率は、約4:1(モル:モル)〜約8:1(モル:モル)である。例えば、製剤は、約5:1(モル:モル)〜約8:1(モル:モル)、約6:1(モル:モル)〜約8:1(モル:モル)、約7:1(モル:モル)〜約8:1(モル:モル)のCa+2とNaとの比率を含有し得る。
【0050】
ある特定の態様では、塩製剤は、カルシウム塩およびナトリウム塩を含有し、Ca+2とNaとの比率は、約4:1(モル:モル)〜約5:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)〜約6:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)〜約7:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)〜約8:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)〜約9:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)〜約10:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)〜約11:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)〜約12:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)〜約13:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)〜約14:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)〜約15:1(モル:モル)である。
【0051】
塩製剤は、約4:1(モル:モル)〜約12:1(モル:モル)、約5:1(モル:モル)〜約11:1(モル:モル)、約6:1(モル:モル)〜約10:1(モル:モル)、約7:1(モル:モル)〜約9:1(モル:モル)のCa+2とNaとの比率を含有し得る。
【0052】
特定の例では、Ca+2とNaとの比率は、約4:1(モル:モル)、約4.5:1(モル:モル)、約5:1(モル:モル)、約5.5:1(モル:モル)、約6:1(モル:モル)、約6.5:1(モル:モル)、7:1(モル:モル)、約7.5:1(モル:モル)、約8:1(モル:モル)、約8.5:1(モル:モル)、約9:1(モル:モル)、約9.5:1(モル:モル)、約10:1(モル:モル)、約10.5:1(モル:モル)、約11:1(モル:モル)、約11.5:1(モル:モル)、約12:1(モル:モル)、約12.5:1(モル:モル)、約13:1(モル:モル)、約13.5:1(モル:モル)、約14:1(モル:モル)、約14.5:1(モル:モル)、約15:1(モル:モル)、約15.5:1(モル:モル)、または約16:1(モル:モル)である。
【0053】
より特定の例では、Ca+2とNaとの比率は、約8:1(モル:モル)または約16:1(モル:モル)である。
【0054】
この種類の水性の塩液剤は、製剤中に存在するカルシウム塩およびナトリウム塩の浸透圧ならびに濃縮によって変化し得る。例えば、塩製剤は、0.053MのCaClおよび0.007MのNaCl(0.59%のCaCl、0.04%のNaCl)を含有し、かつ低浸透圧性であり得るか、0.106MのCaClおよび0.013MのNaCl(1.18%のCaCl、0.08%のNaCl)を含有し、かつ等浸透圧性であり得るか、0.212MのCaClおよび0.027MのNaCl(2.35%のCaCl2、0.027%のNaCl)を含有し、かつ高浸透圧性であり得るか、0.424MのCaClおよび0.054MのNaCl(4.70%のCaCl2、0.054%のNaCl)を含有し、かつ、高浸透圧性であり得るか、または0.849MのCaClおよび0.106MのNaCl(9.42%のCaCl、0.62%のNaCl)を含有し、かつ高浸透圧性であり得る。
【0055】
塩製剤は、所望に応じて、低浸透圧性、等浸透圧性、または高浸透圧性であり得る。例えば、本明細書に記載される塩製剤のいずれかは、0.1Xの浸透圧、約0.25Xの浸透圧、約0.5Xの浸透圧、約1Xの浸透圧、約2Xの浸透圧、約3Xの浸透圧、約4Xの浸透圧、約5Xの浸透圧、約6Xの浸透圧、約7Xの浸透圧、約8Xの浸透圧、約9Xの浸透圧、約10Xの浸透圧、少なくとも約1Xの浸透圧、少なくとも約2Xの浸透圧、少なくとも約3Xの浸透圧、少なくとも約4Xの浸透圧、少なくとも約5Xの浸透圧、少なくとも約6Xの浸透圧、少なくとも約7Xの浸透圧、少なくとも約8Xの浸透圧、少なくとも約9Xの浸透圧、少なくとも約10Xの浸透圧、約0.1X〜約1X、約0.1X〜約0.5X、約0.5X〜約2X、約1X〜約4X、約1X〜約2X、約2X〜約10X、または約4X〜約8Xの浸透圧を有し得る。
【0056】
所望の場合、塩製剤には、CFの習慣的管理に有用である、去痰剤もしくは粘液溶解剤、界面活性剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗ヒスタミン剤、咳抑制剤、気管支拡張剤、抗炎症剤、ステロイド、ワクチン、免疫賦活剤、去痰薬、巨大分子剤、治療剤等の1つ以上の追加の薬剤が含まれ得る。
【0057】
好適な去痰剤または粘液溶解剤の例として、MUC5ACおよびMUC5Bムチン、DNA−ase、N−アセチルシステイン(NAC)、システイン、ナシステリン、ドルナーゼアルファ、ゲルゾリン、ヘパリン、硫酸ヘパリン、P2Y2作動薬(例えば、UTP、INS365)、高浸透圧性生理食塩水、およびマンニトールが挙げられる。
【0058】
好適な界面活性剤には、L−アルファ−ホスファチジルコリンジパルミトイル(「DPPC」)、ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(DPPS)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、脂肪アルコール、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、表面活性脂肪酸、トリオレイン酸ソルビタン(スパン85)、グリココール酸、界面活性剤、ポロキサマー、ソルビタン脂肪酸エステル、チロキサポール、リン脂質、およびアルキル糖類が含まれる。
【0059】
所望の場合、塩製剤は、抗生物質を含有し得る。例えば、細菌性肺炎またはVATを治療するための塩製剤は、マクロライド(例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、およびエリスロマイシン)、テトラサイクリン(例えば、ドキシサイクリン、チゲサイクリン)、フルオロキノロン(例えば、ゲミフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシン、およびモキシフロキサシン)、セファロスポリン(例えば、セフトリアキソン、セフォタキシム、セフタジジム、セフェピム)、アンピシリン-スルバクタム、ピペラシリン-タゾバクタム、およびクラブラン酸チカルシリン等の任意でβ−ラクタマーゼ阻害剤を有するペニシリン(例えば、アモキシシリン、クラブラン酸アモキシシリン、アンピシリン、ピペラシリン、およびチカルシリン)(例えば、スルバクタム、タゾバクタム、およびクラブラン酸)、アミノグリコシド(例えば、アミカシン、アルベカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルミシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、およびアプラマイシン)、ペネムもしくはカルバペネム(例えば、ドリペネム、エルタペネム、イミペネム、およびメロペネム)、モノバクタム(例えば、アズトレオナム)、オキサゾリジノン(例えば、リネゾリド)、バンコマイシン、グリコペプチド抗生物質(例えば、テラバンシン)、結核性マイコバクテリア抗生物質等の抗生物質をさらに含むことができる。
【0060】
所望の場合、塩製剤は、ヒト型結核菌等のマイコバクテリアの感染を治療するための薬剤を含有し得る。マイコバクテリア(例えば、ヒト型結核菌)の感染を治療するための好適な薬剤には、アミノグリコシド(例えば、カプレオマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン)、フルオロキノロン(例えば、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン)、イソジアニドおよびイソジアニド類似体(例えば、エチオナミド)、アミノサリチル酸、サイクロセリン、ジアリルキノリン、エタンブトール、ピラジンアミド、プロチオナミド、リファンピン等が含まれる。
【0061】
所望の場合、塩製剤は、オセルタミビル、ザナミビルアマンタジンまたはリマンタジン、リバビリン、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカビル、Cytogam(登録商標)(Cytomegalovirus Immune Globulin)、プレコナリル、ルピントリビル、パリビズマブ、モタビズマブ、シタラビン、ドコサノール、デノチビル、シドホビル、およびアシクロビル等の好適な抗ウイルス剤を含有し得る。塩製剤は、ザナミビル、オセルタミビル、アマンタジン、またはリマンタジン等の好適な抗インフルエンザ薬剤を含有し得る。
【0062】
好適な抗ヒスタミン剤には、クレマスチン、アゼラスチン、ロラタジン、フェキソフェナジン等が含まれる。
【0063】
好適な咳抑制剤には、ベンゾナテート、ベンプロペリン、クロブチノール、ジフェンヒドラミン、デキストロメトルファン、ジブナート、フェドリレート、グラウシン、オキソラミン、ピペリジオン、コデイン等のオピオイド等が含まれる。
【0064】
好適な気管支拡張剤には、短時間作用型ベータ作動薬、長時間作用型ベータ作動薬(LABA)、長時間作用型ムスカリン性拮抗薬(LAMA)、LABAおよびLAMAの組み合わせ、メチルキサンチン等が含まれる。好適な短時間作用型ベータ作動薬には、アルブテロール、エピネフリン、ピルブテロール、レバルブテロール、メタプロテレノール、Maxair(ピルブテロール)等が含まれる。好適なLABAには、サルメテロール、ホルモテロールおよび異性体(例えば、アルホルモテロール)、クレンブテロール、ツロブテロール、ビランテロール(Revolair(商標))、インダカテロール等が含まれる。LAMAの例として、チオトロピウム、グリコピロレート、アクリジニウム、イプラトロピウム等が挙げられる。LABAおよびLAMAの組み合わせの例として、インダカテロールとグリコピロレート、インダカテロールとチオトロピウム等が挙げられる。メチルキサンチンの例として、テオフィリン等が挙げられる。
【0065】
好適な抗炎症剤には、ロイコトリエン阻害剤、PDE4阻害剤、他の抗炎症剤等が含まれる。好適なロイコトリエン阻害剤には、モンテルカスト(シスチニルロイコトリエン阻害剤)、マシルカスト、ザフィルルカスト(ロイコトリエンD4およびE4受容体阻害剤)、ジロートン(5−リポキシゲナーゼ阻害剤)等が含まれる。好適なPDE4阻害剤には、シロミラスト、ロフルミラスト等が含まれる。他の抗炎症剤には、オマリズマブ(抗IgE免疫グロブリン)、IL−13およびIL−13受容体阻害剤(AMG−317、MILR1444A、CAT−354、QAX576、IMA−638、アンルキンズマブ(Anrukinzumab)、IMA−026、MK−6105、DOM−0910等)、IL−4およびIL−4受容体阻害剤(ピトラキンラ、AER−003、AIR−645、APG−201、DOM−0919等)、カナキヌマブ等のIL−1阻害剤、AZD1981(AstraZenecaより市販)等のCRTh2受容体拮抗薬、AZD9668(AstraZenecaより市販)等の好中球エラスターゼ阻害剤、ロスマピモド(Losmapimod)等のP38キナーゼ阻害剤等が含まれる。
【0066】
好適なステロイドには、コルチコステロイド、コルチコステロイドおよびLABAの組み合わせ、コルチコステロイドおよびLAMAの組み合わせ等が含まれる。好適なコルチコステロイドには、ブデソニド、フルチカゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、ベクロメタソン、モメタゾン、シクレソニド、デキサメサゾン等が含まれる。コルチコステロイドおよびLABAの組み合わせには、サルメテロールとフルチカゾン、ホルモテロールとブデソニド、ホルモテロールとフルチカゾン、ホルモテロールとモメタゾン、インダカテロールとモメタゾン等が含まれる。
【0067】
好適な去痰薬には、グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸、塩化アンモニウム、ヨウ化カリウム、チロキサポール、五硫化アンチモン等が含まれる。
【0068】
経鼻的に吸入されるインフルエンザワクチン等の好適なワクチン。
【0069】
好適な巨大分子には、タンパク質および大ペプチド、多糖およびオリゴ糖、ならびに治療、予防または診断活性を有するDNAおよびRNA核酸分子ならびにそれらの類似体が含まれる。タンパク質には、モノクローナル抗体等の抗体が含まれ得る。核酸分子には、遺伝子、転写もしくは翻訳を阻害するために、相補的DNA、RNA、またはリボソームに結合するSiRNA等のアンチセンス分子が含まれる。
【0070】
CFの習慣的管理に有用である選択された治療には、抗生物質/マクロライド抗生物質、気管支拡張剤、吸入LABA、および気道分泌物排除を促進する薬剤が含まれる。抗生物質/マクロライド抗生物質の好適な例として、トブラマイシン、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、コリスチン等が挙げられる。気管支拡張剤の好適な例として、アルブテロール等の吸入短時間作用型ベータ作動薬が挙げられる。吸入LABAの好適な例として、サルメテロール、ホルモテロール等が挙げられる。気道分泌物排除を促進する薬剤の好適な例として、ドルナーゼアルファ、高浸透圧性生理食塩水等が挙げられる。
【0071】
乾燥粉末製剤は、気道の選択領域への局所的送達のために、適切な粒径、面粗度、およびタップ密度で調製される。例えば、より高い密度またはより大きい粒子を、上気道送達のために使用することができる。同様に、異なる大きさの粒子の混合物を、1回の投与で肺の異なる領域を標的化するために投与することができる。
【0072】
本明細書で使用される、「空気力学的に軽粒子」という語句は、約0.4g/cm未満のタップ密度を有する粒子を指す。乾燥粉末の粒子のタップ密度は、標準USPタップ密度測定によって得られ得る。タップ密度は、エンベロープ質量密度の一般的な評価基準である。等方性粒子のエンベロープ質量密度は、その内部に封入され得る最小球体エンベロープ体積で割った粒子の質量と定義される。低タップ密度に寄与する特徴として、不規則な表面組織および多孔質構造が挙げられる。
【0073】
大粒子を有する乾燥粉末製剤(「DPF」)は、より低い凝集性(Visser,J.,Powder Technology 58:1−10(1989))、より簡単なエアロゾル化、および潜在的により低い食作用等の流動性特性を改善した。Rudt,S.and R.H.Muller.J.Controlled Release,22:263−272(1992)、Tabata Y.,and Y.Ikada.J.Biomed.Mater.Res.22:837−858(1988)。空気力学的直径の任意の所望の範囲を有する乾燥粉末が産生され得るが、吸入療法のための乾燥粉末エアロゾルは、概して、主に5ミクロン未満の範囲の質量中央値空気力学的直径で産生される。Ganderton D.,J.Biopharmaceutical Sciences,3:101−105(1992)、Gonda,I.「Plysico−Chemical Principles in Aerosol Delivery」in Topics in Pharmaceutical Sciences 1991,Crommelin,D.J.and K. K.Midha,Eds.,Medpharm Scientific Publishers,Stuttgart,pp.95−115(1992)。大きな「担体」粒子(塩製剤を含有しない)は、効率的なエアロゾル化を達成することを支援するために、治療的エアロゾルとともに共送達され得る。French,D.L.,Edwards,D.A.and Niven,R.W.,J.Aerosol Sci.27:769−783(1996)。秒から月に及ぶ分解および放出時間を伴う粒子は、当分野において確立した方法で設計および製作され得る。
【0074】
概して、乾燥粉末である塩製剤は、噴霧乾燥、凍結乾燥、ジェット製粉、単回および2回の乳化性溶剤蒸発、ならびに超臨界流体によって産生され得る。好ましくは、塩製剤は、製剤の塩および他の成分を含有する溶液を調製し、溶液を閉鎖チャンバに噴霧し、かつ溶媒を加熱ガス流で除去することを伴う噴霧乾燥によって産生される。
【0075】
塩化カルシウムおよび乳酸カルシウム等の水または水性溶媒中で十分な溶解度を有する塩を含有する噴霧乾燥粉末は、従来の方法を用いて容易に調製され得る。クエン酸カルシウムおよび炭酸カルシウム等のいくつかの塩は、水および他の水性溶媒中で低い溶解度を有する。そのような塩を含有する噴霧乾燥粉末は、任意の好適な方法を用いて調製され得る。1つの好適な方法は、乾燥粉末製剤に対して所望の塩を産生するために、溶液中でより可溶性の他の塩を混合すること、かつ反応(沈殿反応)を可能にすることを含む。例えば、クエン酸カルシウムおよび塩化ナトリウムを含む乾燥粉末製剤が所望される場合、高溶解度の塩である塩化カルシウムおよびクエン酸ナトリウムを含有する溶液が調製され得る。結果としてクエン酸カルシウムに導く沈殿反応は、3 CaCl+2 NaCit→CaCit+6 NaClである。カルシウム塩を添加する前に、ナトリウム塩を完全に溶解し、かつ溶液を連続的に撹拌することが好ましい。沈殿反応を、例えば、溶液を噴霧乾燥することで、所望に応じて、終了させるか、または終了前に停止することができる。得られた溶液は、完全に溶解した塩を伴って透明に見え得るか、または沈殿物が形成し得る。反応条件により、素早くまたは長い期間をかけて沈殿物が形成し得る。軽い沈殿物を含有する溶液、または安定した均質懸濁液の形成をもたらすスラリーでさえも、噴霧乾燥され得る。
【0076】
あるいは、静的混合後の飽和または過飽和溶液を得るために、2つの飽和もしくは亜飽和溶液を静的ミキサー内に供給する。好ましくは、噴霧乾燥後の溶液が過飽和される。2つの溶液は、水性または有機であり得るが、好ましくは、実質的に水性である。静的混合後の溶液は、次いで、噴霧乾燥機の噴霧装置内に供給される。好ましい実施形態では、静的混合後の溶液は、即座に噴霧装置内に供給される。噴霧装置のいくつかの例として、二流体ノズル、回転噴霧器、または圧力ノズルが挙げられる。好ましくは、噴霧装置は、二流体ノズルである。1つの実施形態では、二流体ノズルは、内部混合ノズルであり、ガスが、最も外側の開口部に出る前に、液体フィードに作用することを意味する。別の実施形態では、二流体ノズルは、外部混合ノズルであり、ガスが、最も外側の開口部に出た後に、液体フィードに作用することを意味する。
【0077】
乾燥粉末製剤は、最終製剤内に個々の成分をブレンドすることによっても調製され得る。例えば、カルシウム塩を含有する第1の乾燥粉末を、ナトリウム塩を含有する第2の乾燥粉末とブレンドし、カルシウム塩およびナトリウム塩を含有する乾燥粉末塩製剤を産生し得る。所望の場合、賦形剤(例えば、ラクトース)および/または他の活性成分(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤)を含有する追加の乾燥粉末がブレンド物中に含まれ得る。ブレンド物は、塩、賦形剤、および他の成分(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤)の任意の所望の相対量または比率を含有し得る。
【0078】
所望の場合、乾燥粉末は、i)送達される薬剤(例えば、塩)と送達時の薬剤の安定化および活性の保持を提供するポリマーとの間の相互関係、ii)ポリマー分解速度、ひいては薬剤放出特性、iii)表面特性および化学修飾を介する標的化能力、ならびにiv)粒子空隙率、を含む粒子特性を最適化するように作られたポリマーを用いて調製され得る。ポリマー粒子は、単回および2回の乳化性溶剤蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出、溶媒蒸発、相分離、単純および複合コアセルベーション、界面重合、ならびに当技術分野で周知の他の方法を用いて調製され得る。粒子は、当分野で知られているミクロスフェアまたはマイクロカプセルを作製するための方法を用いて作製され得る。
【0079】
カルシウム塩を含有する乾燥粉末塩製剤は、概して、少なくとも約5重量%のカルシウム塩、10重量%のカルシウム塩、約15重量%のカルシウム塩、少なくとも約19.5重量%のカルシウム塩、少なくとも約20重量%のカルシウム塩、少なくとも約22重量%のカルシウム塩、少なくとも約25.5重量%のカルシウム塩、少なくとも約30重量%のカルシウム塩、少なくとも約37重量%のカルシウム塩、少なくとも約40重量%のカルシウム塩、少なくとも約48.4重量%のカルシウム塩、少なくとも約50重量%のカルシウム塩、少なくとも約60重量%のカルシウム塩、少なくとも約70重量%のカルシウム塩、少なくとも約75重量%のカルシウム塩、少なくとも約80重量%のカルシウム塩、少なくとも約85重量%のカルシウム塩、少なくとも約90重量%のカルシウム塩、または少なくとも約95重量%のカルシウム塩を含有する。
【0080】
あるいは、またはさらには、そのような乾燥粉末製剤は、少なくとも約5重量%のCa+2、少なくとも約7重量%のCa+2、少なくとも約10重量%のCa+2、少なくとも約11重量%のCa+2、少なくとも約12重量%のCa+2、少なくとも約13重量%のCa+2、少なくとも約14重量%のCa+2、少なくとも約15重量%のCa+2、少なくとも約17重量%のCa+2、少なくとも約20重量%のCa+2、少なくとも約25重量%のCa+2、少なくとも約30重量%のCa+2、少なくとも約35重量%のCa+2、少なくとも約40重量%のCa+2、少なくとも約45重量%のCa+2、少なくとも約50重量%のCa+2、少なくとも約55重量%のCa+2、少なくとも約60重量%のCa+2、少なくとも約65重量%のCa+2、もしくは少なくとも約70重量%のCa+2の量のCa+2を提供するカルシウム塩を含有し得る。
【0081】
乾燥粉末塩製剤がカルシウム塩およびナトリウム塩を含有する時、乾燥粉末製剤中のナトリウム塩の量は、所望のカルシウム:ナトリウムの比率に依存し得る。例えば、乾燥粉末製剤は、少なくとも約1.6重量%のナトリウム塩、少なくとも約5重量%のナトリウム塩、少なくとも約10重量%のナトリウム塩、少なくとも約13重量%のナトリウム塩、少なくとも約15重量%のナトリウム塩、少なくとも約20重量%のナトリウム塩、少なくとも約24.4重量%のナトリウム塩、少なくとも約28重量%のナトリウム塩、少なくとも約30重量%のナトリウム塩、少なくとも約30.5重量%のナトリウム塩、少なくとも約35重量%のナトリウム塩、少なくとも約40重量%のナトリウム塩、少なくとも約45重量%のナトリウム塩、少なくとも約50重量%のナトリウム塩、少なくとも約55重量%のナトリウム塩、または少なくとも約60重量%のナトリウム塩を含有し得る。
【0082】
あるいは、またはさらには、乾燥粉末塩製剤は、少なくとも約0.1重量%のNa、少なくとも約0.5重量%のNa、少なくとも約1重量%のNa、少なくとも約2重量%のNa、少なくとも約3重量%のNa、少なくとも約4重量%のNa、少なくとも約5重量%のNa、少なくとも約6重量%のNa、少なくとも約7重量%のNa、少なくとも約8重量%のNa、少なくとも約9重量%のNa、少なくとも約10重量%のNa、少なくとも約11重量%のNa、少なくとも約12重量%のNa、少なくとも約14重量%のNa、少なくとも約16重量%のNa、少なくとも約18重量%のNa、少なくとも約20重量%のNa、少なくとも約22重量%のNa、少なくとも約25重量%のNa、少なくとも約27重量%のNa、少なくとも約29重量%のNa、少なくとも約32重量%のNa、少なくとも約35重量%のNa、少なくとも約40重量%のNa、少なくとも約45重量%のNa、少なくとも約50重量%のNa、もしくは少なくとも約55重量%のNaの量のNaを提供するナトリウム塩を含有し得る。
【0083】
乾燥粉末塩製剤(疎水性アミノ酸ロイシン等)における好ましい賦形剤は、約50%(w/w)以下の量の製剤中に存在し得る。例えば、乾燥粉末製剤は、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約18重量%以下、約16重量%以下、約15重量%以下、約14重量%以下、約13重量%以下、約12重量%以下、約11重量%以下、約10重量%以下、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、または約1重量%以下の量のアミノ酸ロイシンを含有し得る。例示的な賦形剤には、ロイシン、マルトデキストリン、マンニトール、ロイシン、マルトデキストリン、およびマンニトールの任意の組み合わせ、もしくは本明細書に開示されるか、または当分野で一般的に使われる任意の他の賦形剤が含まれ得る。
【0084】
いくつかの好ましい塩組成物の組成物が表1に示される。表1に開示される組成物は、本発明の方法に従って投与され得る塩組成物の非限定的な例である。
【表1】





【0085】
方法
肺炎の治療
本発明は、肺炎(例えば、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎)の伝染を治療、予防、および減少させるための方法を提供する。肺炎の伝染を治療、予防、または減少させるために、有効量の塩製剤(すなわち、1つ以上の塩)が、個人(例えば、ヒトもしくは他の霊長類、またはブタ、ウシ、ヒツジ、ニワトリ等の家畜等の哺乳動物)に投与される。好ましくは、塩製剤は、エアロゾルの吸入によって投与される。本発明は、呼吸器の慢性基礎疾患(例えば、喘息、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症)を有する個人における肺炎の伝染の治療、予防、および減少のための方法も提供する。
【0086】
1つの態様では、本発明は、肺炎を有する個人に、有効量の塩製剤を投与することを含む、肺炎を治療するための方法である。塩製剤は、個人の気道(例えば、肺)に投与される。個人は、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、ストレプトコッカスアガラクチア、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、カタル球菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマ、レジオネラニューモフィラ、エンテロバクター種、アシネトバクター種、アシネトバクターバウマンニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ステノトロフォモナスマルトフィリア、バークホルデリア種、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される細菌の感染等の細菌感染によって引き起こされる肺炎を有し得る。特定の実施形態では、個人は、肺炎連鎖球菌、肺炎桿菌、または緑膿菌に感染する。より特定の実施形態では、個人は、肺炎連鎖球菌に感染する。個人は、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、メタ肺炎ウイルス、サイトメガロウイルス、および単純ヘルペスウイルスから成る群から選択されるウイルスの感染等のウイルス感染によって引き起こされる肺炎を有し得る。
【0087】
個人は、肺炎連鎖球菌の感染によって引き起こされる肺炎等の市中肺炎を有し得る。個人は、人工呼吸器関連肺炎等の医療ケア関連肺炎を有し得る。
【0088】
好ましくは、肺炎を治療する方法は、肺炎を有する個人に、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含む。より好ましくは、カルシウム塩製剤は、塩化ナトリウム等のナトリウム塩も含む。カルシウム塩およびナトリウム塩を含有する製剤を含む好適なカルシウム塩製剤が、本明細書に記載される。
【0089】
特定の実施形態では、本発明は、VAPを有する患者の気道に、本明細書に記載される有効量のカルシウム製剤を投与することを含む、VAPを治療するための方法である。カルシウム製剤は、好ましくは、例えば、噴霧器を用いて、エアロゾルとして、個人の気道に投与される。例えば、カルシウム塩製剤を、人工呼吸器回路の吸気肢に接続する噴霧器を用いて、機械的人工呼吸器を装着している患者に投与することができる。好ましくは、カルシウム塩製剤は、VAPが疑われる時、例えば、膿性痰が検出された時に、VAPを有する患者に投与される。所望の場合、方法は、VAPを有する患者に、1つ以上の抗生物質を投与することをさらに含み得る。任意で、相乗作用量の塩製剤および抗生物質が投与される。カルシウム塩製剤等の塩製剤および抗生物質は、共治療薬として投与される時に相乗作用を示し得、より少ない抗生物質の投与、より良好な病原体の排除、抗生物質治療の期間短縮、または抵抗が現れる可能性の減少をもたらす、優れた治療を提供し得る。抗生物質を、経口で、静脈内に、または吸入によって等の任意の好適な投与の様式を用いて投与することができる。当技術分野の臨床医は、VAPを有する患者が、多剤耐性(MDR)病原体の危険因子を示すかを判定することができる。患者がMDRの危険因子を示さない時、ある特定の実施形態では、患者に、セフトリアキソン、アンピシリン-スルバクタム、ピペラシリン-タゾバクタム、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、およびエルタペネムから成る群から選択される1つ以上の抗生物質が投与される。患者がMDRの危険因子を示す時、ある特定の実施形態では、患者に、セフェピム、セフタジジム、イミペネム、メロペネム、ドリペネム、ピペラシリン-タゾバクタム、およびアズトレオナムから選択される少なくとも1つの抗生物質、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、およびアミカシンから選択される少なくとも1つの抗生物質、ならびにリネゾリドおよびバンコマイシンから選択される少なくとも1つの抗生物質を含有する抗生物質の組み合わせが投与される。
【0090】
特定の実施形態では、方法は、VAPを有する患者の気道に、有効量のカルシウム塩製剤および1つ以上の抗生物質(トブラマイシン等)を投与することを含む。カルシウム塩製剤および抗生物質は、別個の製剤として投与されるか、または本明細書に記載される単一の製剤の成分であり得る。
【0091】
肺炎の予防法
別の態様では、本発明は、肺炎の危険性があるか、または肺炎を引き起こす病原体の感染の危険性のある個人に、有効量の塩製剤投与することを含む、肺炎の予防もしくは防止のための方法である。塩製剤は、個人の気道(例えば、肺、呼吸気道)に投与される。肺炎を引き起こす病原体(例えば、細菌、ウイルス)の感染の速度または発生を予防もしくは減少させるために、この方法を使用することができる。
【0092】
治療されるべき個人は、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、ストレプトコッカスアガラクチア、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、カタル球菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマ、レジオネラニューモフィラ、エンテロバクター種、アシネトバクター種、アシネトバクターバウマンニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ステノトロフォモナスマルトフィリア、バークホルデリア種、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される細菌の感染の危険性があり得る。特定の実施形態では、個人は、肺炎連鎖球菌、肺炎桿菌、または緑膿菌の感染の危険性がある。より特定の実施形態では、個人は、肺炎連鎖球菌の感染の危険性がある。個人は、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、メタ肺炎ウイルス、サイトメガロウイルス、および単純ヘルペスウイルスから成る群から選択されるウイルスの感染の危険性があり得る。
【0093】
概して、個人は、一般集団よりも頻繁にそのような病原体に曝露される時に、または感染に抵抗する能力の低下を有する時に、気道の感染を引き起こす病原体(例えば、ウイルス、細菌)の感染の危険性がある。そのような感染の危険性がある個人には、例えば、医療従事者、免疫抑制者(例えば、医学的に、他の感染によって、または他の理由のため)、集中治療室の患者、高齢および若年(例えば、幼児)の個人、呼吸器の慢性基礎疾病(例えば、喘息、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症)を有する個人、手術または外傷を受けた個人、ならびに介護者および感染者の家族が含まれる。
【0094】
したがって、方法は、肺炎連鎖球菌の感染によって引き起こされる肺炎等のCAPの予防または防止に好適である。方法は、人工呼吸器関連肺炎等の医療ケア関連肺炎の予防または防止に特に好適である。例えば、肺炎を引き起こす病原体の感染率を減少または予防するために、医療従事者に、本明細書に記載される塩製剤を投与することができる。この態様の特定の実施形態では、本発明は、人工呼吸を受けている個人に、有効量の塩製剤を投与することを含む、人工呼吸器関連肺炎の予防または防止のための方法である。塩製剤は、個人の気道(例えば、肺)に投与される。塩製剤を、人工呼吸の前、人工呼吸の進行中(例えば、個人が人工呼吸を受けている間、定期的に)、および/または人工呼吸が中断された後に、投与することができる。
【0095】
好ましくは、肺炎の予防または防止の方法は、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含む。より好ましくは、カルシウム塩製剤は、塩化ナトリウム等のナトリウム塩も含む。カルシウム塩およびナトリウム塩を含有する製剤を含む好適なカルシウム塩製剤が、本明細書に記載される。
【0096】
特定の実施形態では、本発明は、VAPを発生する危険性のある患者の気道に、本明細書に記載される有効量のカルシウム製剤を投与することを含む、VAPの発生を予防または減少させるための方法である。機械的人工呼吸器を装着している患者、特に、48時間以上機械的に人工呼吸を受けている患者は、VAPを発生する危険性がある。カルシウム製剤は、好ましくは、例えば、噴霧器を用いて、エアロゾルとして、個人の気道に投与される。好ましくは、カルシウム塩製剤は、機械的人工呼吸を開始する時、例えば、挿管時、それから、患者が機械的人工呼吸器を装着したままでいる間に定期的に(例えば、1日に1回、2回、3回、または4回)患者に投与される。例えば、カルシウム塩製剤を、人工呼吸器回路の吸気肢に接続する噴霧器を用いて、機械的人工呼吸器を装着する患者に投与することができる。所望の場合、方法は、患者に、VAPを予防するための1つ以上の抗生物質等の1つ以上の他の治療薬を投与することをさらに含むことができる。抗生物質を、経口で、静脈内に、または吸入によって等の任意の好適な投与の様式を用いて投与することができる。
【0097】
特定の実施形態では、方法は、VAPを発生する危険性のある患者の気道に、有効量のカルシウム塩製剤および1つ以上の抗生物質を投与することを含む。カルシウム塩製剤および抗生物質を、別個の製剤として投与することができるか、または本明細書に記載される単一の製剤の成分であり得る。任意で、相乗作用量の塩製剤および抗生物質が投与される。カルシウム塩製剤等の塩製剤および抗生物質は、共治療薬として投与される時に相乗作用を示し得、より少ない抗生物質の投与、より良好な病原体の排除、抗生物質治療の期間短縮、または抵抗が現れる可能性の減少をもたらす、優れた治療を提供し得る。
【0098】
VATの治療
本発明は、VATの伝染の治療、予防、および減少のための方法を提供する。VATの伝染を治療、予防、または減少させるために、有効量の塩製剤(すなわち、1つ以上の塩)が、個人(例えば、ヒトもしくは他の霊長類、またはブタ、ウシ、ヒツジ、ニワトリ等の家畜等の哺乳動物)に投与される。好ましくは、塩製剤は、エアロゾルの吸入によって投与される。
【0099】
1つの態様では、本発明は、VATを有する個人に、有効量の塩製剤を投与することを含む、VATを治療するための方法である。塩製剤は、個人の気道(例えば、肺)に投与される。個人は、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、ストレプトコッカスアガラクチア、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、カタル球菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマ、レジオネラニューモフィラ、エンテロバクター種、アシネトバクター種、アシネトバクターバウマンニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ステノトロフォモナスマルトフィリア、バークホルデリア種、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される細菌の感染等の細菌感染によって引き起こされるVATを有し得る。特定の実施形態では、個人は、肺炎連鎖球菌、肺炎桿菌、または緑膿菌に感染する。より特定の実施形態では、個人は、肺炎連鎖球菌に感染する。
【0100】
好ましくは、VATを治療する方法は、VATを有する個人に、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含む。より好ましくは、カルシウム塩製剤は、塩化ナトリウム等のナトリウム塩も含む。カルシウム塩およびナトリウム塩を含有する製剤を含む好適なカルシウム塩製剤が、本明細書に記載される。カルシウム製剤は、好ましくは、例えば、噴霧器を用いて、エアロゾルとして、個人の気道に投与される。例えば、カルシウム塩製剤を、人工呼吸器回路の吸気肢に接続する噴霧器を用いて、機械的人工呼吸器を装着している患者に投与することができる。好ましくは、カルシウム塩製剤は、VATが疑われる時、例えば、膿性痰が検出された時等の下気道の臨床的兆候が見られる時に、VATを有する患者に投与される。所望の場合、方法は、VATを有する患者に、1つ以上の抗生物質を投与することをさらに含むことができる。抗生物質を、経口で、静脈内に、または吸入によって等の任意の好適な投与の様式を用いて投与することができる。任意で、相乗作用量の塩製剤および抗生物質が投与される。カルシウム塩製剤等の塩製剤および抗生物質は、共治療薬として投与される時に相乗作用を示し得、より少ない抗生物質の投与、より良好な病原体の排除、抗生物質治療の期間短縮、または抵抗が現れる可能性の減少をもたらす、優れた治療を提供し得る。
【0101】
カルシウム塩製剤を、VATの伝染を減少させるために(例えば、機械的人工呼吸器から患者を引き離す前に医療従事者を保護するために)、患者に投与することができる。カルシウム塩製剤は、挿管された患者と医療従事者との間の物理的接触を介する病原体の伝播、ならびに粘液および他の分泌液を介する病原体の感染を予防するために投与される。
【0102】
当技術分野の臨床医は、VATを有する患者が、多剤耐性(MDR)病原体の危険因子を示すかを判定することができる。患者がMDRの危険因子を示さない時、ある特定の実施形態では、患者に、セフトリアキソン、アンピシリン-スルバクタム、ピペラシリン-タゾバクタム、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、およびエルタペネムから成る群から選択される1つ以上の抗生物質が投与される。患者がMDRの危険因子を示す時、ある特定の実施形態では、患者に、セフェピム、セフタジジム、イミペネム、メロペネム、ドリペネム、ピペラシリン-タゾバクタム、およびアズトレオナムから選択される少なくとも1つの抗生物質、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、およびアミカシンから選択される少なくとも1つの抗生物質、ならびにリネゾリドおよびバンコマイシンから選択される少なくとも1つの抗生物質を含有する抗生物質の組み合わせが投与される。
【0103】
特定の実施形態では、方法は、VATを有する患者の気道に、有効量のカルシウム塩製剤および1つ以上の抗生物質を投与することを含む。カルシウム塩製剤および抗生物質を、別個の製剤として投与することができるか、または本明細書に記載される単一の製剤の成分であり得る。
【0104】
VATの予防
別の態様では、本発明は、VATの危険性があるか、または挿管された患者等のVATを引き起こす病原体の感染の危険性のある個人に、有効量の塩製剤投与することを含む、VATの予防もしくは防止のための方法である。塩製剤は、個人の気道(例えば、肺、呼吸気道)に投与される。VATまたはVATを引き起こす病原体の感染の速度または発生を予防もしくは減少させるために、方法を使用することができる。
【0105】
治療されるべき個人は、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、ストレプトコッカスアガラクチア、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、カタル球菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマ、レジオネラニューモフィラ、エンテロバクター種、アシネトバクター種、アシネトバクターバウマンニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ステノトロフォモナスマルトフィリア、バークホルデリア種、マイコバクテリア、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される細菌の感染に関連するVATの危険性があり得る。特定の実施形態では、個人は、肺炎連鎖球菌、肺炎桿菌、または緑膿菌の感染に関連するVATの危険性がある。より特定の実施形態では、個人は、肺炎連鎖球菌の感染に関連するVATの危険性がある。
【0106】
この態様の特定の実施形態では、本発明は、人工呼吸を受けている個人に、有効量の塩製剤を投与することを含む、VATの予防または防止のための方法である。塩製剤は、個人の気道(例えば、肺)に投与される。塩製剤を、人工呼吸の前、人工呼吸の進行中(例えば、個人が人工呼吸を受けている間、定期的に)、および/または人工呼吸が中断された後に、投与することができる。
【0107】
好ましくは、VATの予防または防止の方法は、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含む。より好ましくは、カルシウム塩製剤は、塩化ナトリウム等のナトリウム塩も含むことができる。カルシウム塩およびナトリウム塩を含有する製剤を含む好適なカルシウム塩製剤が、本明細書に記載される。
【0108】
特定の実施形態では、本発明は、VATを発生する危険性のある患者の気道に、本明細書に記載される有効量のカルシウム製剤を投与することを含む、VATの発生を予防または減少させるための方法である。機械的人工呼吸器を装着している患者、特に、48時間以上機械的に人工呼吸を受けている患者は、VATを発生する危険性がある。カルシウム製剤は、好ましくは、例えば、噴霧器を用いて、エアロゾルとして、個人の気道に投与される。好ましくは、カルシウム塩製剤は、機械的人工呼吸を開始する時、例えば、挿管時、それから、患者が機械的人工呼吸器を装着したままでいる間に定期的に(例えば、1日に1回、2回、3回、または4回)患者に投与される。例えば、カルシウム塩製剤を、人工呼吸器回路の吸気肢に接続する噴霧器を用いて、機械的人工呼吸器を装着する患者に投与することができる。所望の場合、方法は、患者に、VATを予防するための1つ以上の抗生物質等の1つ以上の他の治療薬を投与することをさらに含むことができる。抗生物質を、経口で、静脈内に、または吸入によって等の任意の好適な投与の様式を用いて投与することができる。
【0109】
特定の実施形態では、方法は、VATを発生する危険性のある患者の気道に、有効量のカルシウム塩製剤および1つ以上の抗生物質を投与することを含む。カルシウム塩製剤および抗生物質を、別個の製剤として投与することができるか、または本明細書に記載される単一の製剤の成分であり得る。
【0110】
気道の細菌感染の治療
本発明は、気道の細菌感染(例えば、肺炎)の伝染の治療(予防的治療を含む)および減少のための方法を提供する。気道の細菌感染(例えば、肺炎)の伝染を治療、予防、または減少させるために、有効量の塩製剤(すなわち、1つ以上の塩)および抗生物質薬剤が、個人(例えば、ヒトもしくは他の霊長類、またはブタ、ウシ、ヒツジ、ニワトリ等の家畜等の哺乳動物)に投与される。好ましくは、塩製剤は、エアロゾルの吸入によって投与される。
【0111】
1つの態様では、本発明は、気道の細菌感染を有する個人に、有効量の塩製剤および抗生物質を投与することを含む、気道の細菌感染(例えば、肺炎)を治療するための方法である。塩製剤は、好ましくは、個人の気道(例えば、肺)に投与される。抗生物質を、経口で、全身的に、または吸入によって等の任意の好適な経路で投与することができる。任意で、相乗作用量の塩製剤および抗生物質が投与される。カルシウム塩製剤等の塩製剤および抗生物質は、共治療薬として投与される時に相乗作用を示し得、より少ない抗生物質の投与、より良好な病原体の排除、抗生物質治療の期間短縮、または抵抗が現れる可能性の減少をもたらす、優れた治療を提供し得る。例えば、個人の気道は、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、ストレプトコッカスアガラクチア、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、カタル球菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマ、レジオネラニューモフィラ、エンテロバクター種、アシネトバクター種、アシネトバクターバウマンニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ステノトロフォモナスマルトフィリア、バークホルデリア種、マイコバクテリア、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される病原体に感染し得る。より特定の実施形態では、個人は、肺炎連鎖球菌に感染する。個人は、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、メタ肺炎ウイルス、サイトメガロウイルス、および単純ヘルペスウイルスから成る群から選択されるウイルスの感染等のウイルス感染を有し得る。
【0112】
ある特定の実施形態では、肺炎(VAP)、人工呼吸器関連気管気管支炎(VAT)、または院内肺炎(HAP)は、ニューモニエ、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、分類不能なインフルエンザ菌(NTHI)、緑膿菌、アシネトバクター種、大腸菌、カンジダ種(真菌)、セラチア、エンテロバクター種、およびステノトロフォモナスによって引き起こされる。あるいは、VAPまたはVATは、肺炎の原因に関連したグラム陽性菌もしくはグラム陰性菌によって引き起こされ得る。
【0113】
ある特定の実施形態では、市中関連肺炎(CAP)は、以下の細菌の少なくとも1つによって引き起こされる:モラクセラカタラーリス、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミドフィラ、または肺炎クラミジア、連鎖球菌性肺炎、インフルエンザ菌、クラミドフィラ、マイコプラズマ、およびレジオネラ。あるいは、または前述の細菌に加えて、CAPは、以下の菌類の少なくとも1つによっても引き起こされ得る:コクシジウム症、ヒストプラスマ症、およびクリプトコッカス症。あるいは、CAPは、肺炎の原因に関連した陽性菌またはグラム陰性菌によって引き起こされ得る。
【0114】
好ましくは、肺炎を治療する方法は、肺炎を有する個人に、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含む。より好ましくは、カルシウム塩製剤は、塩化ナトリウム等のナトリウム塩も含む。カルシウム塩およびナトリウム塩を含有する製剤を含む好適なカルシウム塩製剤が、本明細書に記載される。所望の場合、製剤は、1つ以上の抗生物質をさらに含むことができる。
【0115】
別の態様では、本発明は、気道の細菌感染(例えば、肺炎)の危険性があるか、または気道の細菌感染(例えば、肺炎)を引き起こす病原体の感染の危険性のある個人に、有効量の塩製剤および抗生物質を投与することを含む、気道の細菌感染(例えば、肺炎)の予防または防止のための方法である。塩製剤は、個人の気道(例えば、肺、呼吸気道)に投与される。抗生物質を、経口で、全身的に、または吸入によって等の任意の好適な経路で投与することができる。任意で、相乗作用量の塩製剤および抗生物質が投与される。方法を、気道の細菌感染(例えば、肺炎)を引き起こす病原体の感染の速度または発生を予防もしくは減少させるために使用することができる。
【0116】
治療されるべき個人は、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、ストレプトコッカスアガラクチア、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、カタル球菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマ、レジオネラニューモフィラ、エンテロバクター種、アシネトバクター種、アシネトバクターバウマンニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ステノトロフォモナスマルトフィリア、バークホルデリア種、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される細菌の感染の危険性があり得る。より特定の実施形態では、個人は、肺炎連鎖球菌の感染の危険性がある。個人は、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、メタ肺炎ウイルス、サイトメガロウイルス、および単純ヘルペスウイルスから成る群から選択されるウイルスの感染の危険性があり得る。
【0117】
したがって、方法は、肺炎連鎖球菌の感染によって引き起こされる肺炎等のCAPの予防または防止に好適である。方法は、人工呼吸器関連肺炎等の医療ケア関連肺炎の予防または防止に特に好適である。例えば、肺炎を引き起こす病原体の感染の速度を減少または予防するために、医療従事者に、本明細書に記載される塩製剤を投与することができる。この態様の特定の実施形態では、本発明は、本発明は、人工呼吸を受けている個人に、有効量の塩製剤を投与することを含む、人工呼吸器関連肺炎の予防または防止のための方法である。塩製剤は、個人の気道(例えば、肺)に投与される。塩製剤を、人工呼吸の前、人工呼吸の進行中(例えば、個人が人工呼吸を受けている間、定期的に)、および/または人工呼吸が中断された後に、投与することができる。
【0118】
好ましくは、肺炎の予防または防止の方法は、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含む。より好ましくは、カルシウム塩製剤は、塩化ナトリウム等のナトリウム塩も含む。カルシウム塩およびナトリウム塩を含有する製剤を含む好適なカルシウム塩製剤が、本明細書に記載される。
【0119】
伝染を減少させる
本発明は、肺炎もしくはVATを引き起こす病原体に感染したか、肺炎もしくはVATの危険性があるか、または肺炎もしくはVATを引き起こす病原体(例えば、細菌、ウイルス)への感染の危険性のある個人に、有効量の塩製剤を投与することを含む、VAPもしくはVAT等の肺炎(例えば、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎)の伝染を減少させる(例えば、感染を減少させる)ための方法を提供する。塩製剤は、個人の気道(例えば、肺)に投与される。特定の実施形態では、塩製剤は、患者が機械的人工呼吸から引き離されている時に生じる感染を減少させるために投与される。このような状況において、レスピレータは切り離されるが、挿管チューブは定位置のままである。挿管チューブは、気道よりも狭い直径を有し、チューブを通過する空気の速度は高く、感染粒子が吐き出される危険性を引き起こす。
【0120】
個人は、細菌感染によって引き起こされるか、それに関連する肺炎もしくはVATを有し得るか、または本明細書に記載されるそのような感染の危険性があり得る。例えば、個人は、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、ストレプトコッカスアガラクチア、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、カタル球菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマ、レジオネラニューモフィラ、エンテロバクター種、アシネトバクター種、アシネトバクターバウマンニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ステノトロフォモナスマルトフィリア、バークホルデリア種、マイコバクテリア、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される細菌に感染し得るか、または感染の危険性があり得る。特定の実施形態では、個人は、肺炎連鎖球菌、肺炎桿菌、もしくは緑膿菌に感染するか、または感染の危険性がある。より特定の実施形態では、個人は、肺炎連鎖球菌に感染するか、または感染の危険性がある。個人は、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、メタ肺炎ウイルス、サイトメガロウイルス、もしくは単純ヘルペスウイルスから成る群から選択されるウイルスに感染し得るか、または感染の危険性があり得る。
【0121】
個人は、肺炎連鎖球菌の感染によって引き起こされる肺炎等の市中肺炎を有し得るか、または得る危険性があり得る。個人は、人工呼吸器関連肺炎等の医療ケア関連肺炎を有し得るか、もしくは得る危険性があるか、または個人は、VATを得る危険性があり得る。
【0122】
好ましくは、肺炎またはVATの伝染を減少させるための方法は、個人に、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含む。より好ましくは、カルシウム塩製剤は、塩化ナトリウム等のナトリウム塩も含む。カルシウム塩およびナトリウム塩を含有する製剤を含む好適なカルシウム塩製剤が、本明細書に記載される。
【0123】
塩製剤を投与する
塩製剤は、気道(例えば、気道の粘膜面)への投与を目的とし、溶液、懸濁液、噴霧、ミスト、泡、ゲル、蒸気、液滴、粒子、または乾燥粉末形態等の任意の好適な形態で投与することができる。好ましくは、塩製剤は、気道への投与のためにエアロゾル化される。塩製剤を、任意の好適な方法および/または装置を用いて口腔を介する投与のためにエアロゾル化することができ、多くの好適な方法および装置は、当分野で習慣的であり、かつ周知である。例えば、スペーサもしくは保持チャンバ、噴霧器、アトマイザ、連続噴霧器、口腔スプレー、または乾燥粉末吸入器(DPI)の有無に関わらず、塩製剤を、定量用量吸入器(例えば、HFA推進剤もしくは非HFA推進剤を含む加圧式定量用量吸入器(pMDI))を用いて、エアロゾル化することができる。スペーサもしくは保持チャンバ、鼻アダプタもしくはプロングを有するか、または有さない噴霧器、アトマイザ、連続噴霧器、またはDPIの有無に関わらず、塩製剤を、鼻ポンプもしくは噴霧器、定量用量吸入器(例えば、HFA推進剤もしくは非HFA推進剤を含む加圧式定量用量吸入器(pMDI))を用いて、鼻腔を介する投与のためにエアロゾル化することができる。塩製剤を、例えば、鼻洗浄を介して鼻粘膜面に、かつ例えば、口腔洗浄を介して口腔粘膜面に送達することができる。塩製剤を、例えば、鼻アダプタを有する噴霧器および振動または脈動気流を有する鼻噴霧器を介して、洞の粘膜面に送達することができる。
【0124】
気道の形状は、塩製剤のエアロゾルを産生し、かつ肺に送達するための好適な方法を選択する時に、考慮すべき重要な点である。肺は、粉塵等の吸い込まれた異物の粒子を取り込むように設計されている。堆積の3つの基本的機構がある:固着、沈降、およびブラウン運動(J.M.Padfield.1987.In:D.Ganderton & T.Jones eds.Drug Delivery to the Respiratory Tract,Ellis Harwood,Chicherster,U.K.)。上気道内の固着は、粒子が気流内、特に気道分枝で留まることが不可能である時に生じる。固着した粒子は、気管支壁を被覆する粘液層上に吸着し、最終的には、粘液線毛作用によって肺から排除される。固着は、大抵は、空気力学的直径5μmを超える粒子とともに生じる。より小さい粒子(空気力学的直径約3μm未満のもの)は、気流内に留まり、肺の深くへ運ばれる傾向がある。沈降は、しばしば、気流がより緩慢である下部呼吸器系で生じる。非常に小さい粒子(約0.6μm未満のもの)は、ブラウン運動によって堆積することができる。堆積は肺胞を標的にすることができないため、ブラウン運動による堆積は概して望ましくない(N.Worakul & J.R.Robinson.2002.In:Polymeric Biomaterials,2ndEd.S.Dumitriu ed.Marcel Dekker.New York)。
【0125】
投与において、深肺(概して、直径約0.6ミクロン〜5ミクロンの粒子)、上気道(概して、直径約3ミクロン以上の粒子)、または深肺および上気道等の気道の所望の領域への優先的送達に適切な粒子の大きさを有するエアロゾルを産生するために、好適な方法(例えば、噴霧、乾燥粉末吸入器)が選択される。
【0126】
有効量の塩製剤は、VAP、肺炎様の症状、VAT等の肺炎(細菌性肺炎もしくはウイルス性肺炎)を有するか、または肺炎もしくはVATを引き起こす病原体の感染の危険性のある個人等の、それを必要とする個人に投与される。入院しており、かつ特に人工呼吸を受けている個人は、肺炎を引き起こす病原体の感染の危険性がある。「有効量」の塩製剤が投与される。有効量とは、肺炎様の症状を減少させる、個人の病原体を減少させる、肺粘液もしくは気道ライニング流体を通過する病原体を阻害する、肺炎を引き起こす病原体の感染の発生もしくは速度を減少させる、肺炎を引き起こす病原体を含有する吐出粒子の排出を減少させる、および/または粘液線毛排除を増加させるのに十分な量等の、所望の治療または予防効果を達成するのに十分な量である(Groth et al,Thorax,43(5):360−365(1988))。塩製剤は、概して、吸入によって気道(例えば、肺)に投与されるため、投与される用量は、塩製剤(例えば、カルシウム塩濃縮物)の組成物、エアロゾル化(例えば、噴霧速度および効率性)ならびに曝露時間(例えば、噴霧時間)に関連している。例えば、濃縮された塩液剤および短い(例えば、5分)噴霧時間を用いて、または希釈した塩液剤および長い(例えば、30分以上)噴霧時間を用いて、あるいは乾燥粉末製剤ならびに乾燥粉末吸入器を用いて、実質的に同等の用量を投与することができる。当技術分野の臨床医は、これらの考慮すべき点および他の要因、例えば、個人の年齢、感受性、耐性、ならびに総合的な健康に基づいて、適切な投与量を判定することができる。塩製剤を、示されるように、単回投与または複数回投与で投与することができる。
【0127】
本明細書に記載されるように、塩製剤の治療および予防効果は、塩製剤の投与後の、気道(例えば、肺)内のカチオン(Ca2+等の塩のカチオン)の増加量の結果である。したがって、提供されるカチオンの量は、選択される特定の塩によって変化し得、投薬は、肺に送達される所望の量のカチオンに基づき得る。例えば、1モルの塩化カルシウム(CaCl)は、1モルのCa2+を提供するために解離するが、1モルのリン酸三カルシウム(Ca(PO)は、1モルのCa2+を提供することができる。概して、有効量の塩製剤は、約0.001mgのCa+2/kg体重/用量〜約2mgのCa+2/kg体重/用量、約0.002mgのCa+2/kg体重/用量〜約2mgのCa+2/kg体重/用量、約0.005mgのCa+2/kg体重/用量〜約2mgのCa+2/kg体重/用量、約0.01mgのCa+2/kg体重/用量〜約2mgのCa+2/kg体重/用量、約0.01mgのCa+2/kg体重/用量〜約60mgのCa+2/kg体重/用量、約0.01mgのCa+2/kg体重/用量〜約50mgのCa+2/kg体重/用量、約0.01mgのCa+2/kg体重/用量〜約40mgのCa+2/kg体重/用量、約0.01mgのCa+2/kg体重/用量〜約30mgのCa+2/kg体重/用量、約0.01mgのCa+2/kg体重/用量〜約20mgのCa+2/kg体重/用量、約0.01mgのCa+2/kg体重/用量〜約10mgのCa+2/kg体重/用量、約0.01mgのCa+2/kg体重/用量〜約5mgのCa+2/kg体重/用量、約0.01mgのCa+2/kg体重/用量〜約2mgのCa+2/kg体重/用量、約0.02mgのCa+2/kg体重/用量〜約2mgのCa+2/kg体重/用量、約0.03mgのCa+2/kg体重/用量〜約2mgのCa+2/kg体重/用量、約0.04mgのCa+2/kg体重/用量〜約2mgのCa+2/kg体重/用量、約0.05mgのCa+2/kg体重/用量〜約2mgのCa+2/kg体重/用量、約0.1mgのCa+2/kg体重/用量〜約2mgのCa+2/kg体重/用量、約0.1mgのCa+2/kg体重/用量〜約1mgのCa+2/kg体重/用量、約0.1mgのCa+2/kg体重/用量〜約0.5mgのCa+2/kg体重/用量、約0.2mgのCa+2/kg体重/用量〜約0.5mgのCa+2/kg体重/用量、約0.18mgのCa+2/kg体重/用量、約0.001mgのCa+2/kg体重/用量、約0.005mgのCa+2/kg体重/用量、約0.01mgのCa+2/kg体重/用量、約0.02mgのCa+2/kg体重/用量、または約0.5mgのCa+2/kg体重/用量の用量を送達する。いくつかの実施形態では、カルシウム塩(例えば、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム)を含む塩製剤は、約0.1mgのCa2+/kg体重/用量〜約2mgのCa2+/kg体重/用量、もしくは約0.1mgのCa2+/kg体重/用量〜約1mgのCa2+/kg体重/用量、もしくは約0.1mgのCa2+/kg体重/用量〜約0.5mgのCa2+/kg体重/用量、または約0.18mgのCa2+/kg体重/用量の用量を送達するのに十分な量で投与される。
【0128】
いくつかの実施形態では、気道(例えば、肺、呼吸気道)に送達されるカルシウムの量は、約0.01mg/kg体重〜約60mg/kg体重/用量、または約0.01mg/kg体重/用量〜約50mg/kg体重/用量、約0.01mg/kg体重/用量〜約40mg/kg体重/用量、約0.01mg/kg体重/用量〜約30mg/kg体重/用量、約0.01mg/kg体重/用量〜約20mg/kg体重/用量、0.01mg/kg体重/用量〜約10mg/kg体重/用量、約0.1mg/kg体重/用量〜約10mg/kg体重/用量、または約1mg/kg体重/用量〜約10mg/kg体重/用量、または約0.01mg/kg体重/用量〜約1mg/kg体重/用量、または約0.1mg/kg体重/用量〜約1mg/kg体重/用量である。
【0129】
他の実施形態では、上気道(例えば、鼻腔)に送達されるカルシウムの量は、約0.01mg/kg体重/用量〜約60mg/kg体重/用量、または約0.01mg/kg体重/用量〜約50mg/kg体重/用量、約0.01mg/kg体重/用量〜約40mg/kg体重/用量、約0.01mg/kg体重/用量〜約30mg/kg体重/用量、約0.01mg/kg体重/用量〜約20mg/kg体重/用量、0.01mg/kg体重/用量〜約10mg/kg体重/用量、約0.1mg/kg体重/用量〜約10mg/kg体重/用量、または約1mg/kg体重/用量〜約10mg/kg体重/用量、または約0.01mg/kg体重/用量〜約1mg/kg体重/用量、または約0.1mg/kg体重/用量〜約1mg/kg体重/用量である。
【0130】
いくつかの実施形態では、ナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含む塩製剤は、約0.001mgのNa/kg体重/用量〜約10mgのNa/kg体重/用量、または約0.01mgのNa/kg体重/用量〜約10mgのNa/kg体重/用量、または約0.1mgのNa/kg体重/用量〜約10mgのNa/kg体重/用量、または約1.0mgのNa/kg体重/用量〜約10mgのNa/kg体重/用量、または約0.001mgのNa/kg体重/用量〜約1mgのNa/kg体重/用量、または約0.01mgのNa/kg体重/用量〜約1mgのNa/kg体重/用量、約0.1mgのNa/kg体重/用量〜約1mgのNa/kg体重/用量、約0.2mgのNa/kg体重/用量〜約0.8mgのNa/kg体重/用量、約0.3mgのNa/kg体重/用量〜約0.7mgのNa/kg体重/用量、または約0.4mgのNa/kg体重/用量〜約0.6mgのNa/kg体重/用量の用量を送達するのに十分な量で投与される。
【0131】
いくつかの実施形態では、気道(例えば、肺、呼吸気道)に送達されるナトリウムの量は、約0.001mg/kg体重/用量〜約10mg/kg体重/用量、または約0.01mg/kg体重/用量〜約10mg/kg体重/用量、または約0.1mg/kg体重/用量〜約10mg/kg体重/用量、または約1mg/kg体重/用量〜約10mg/kg体重/用量、または約0.001mg/kg体重/用量〜約1mg/kg体重/用量、または約0.01mg/kg体重/用量〜約1mg/kg体重/用量、または約0.1mg/kg体重/用量〜約1mg/kg体重/用量である。
【0132】
他の実施形態では、上気道(例えば、鼻腔)に送達されるナトリウムの量は、約0.001mg/kg体重/用量〜約10mg/kg体重/用量、または約0.01mg/kg体重/用量〜約10mg/kg体重/用量、または約0.1mg/kg体重/用量〜約10mg/kg体重/用量、または約1mg/kg体重/用量〜約10mg/kg体重/用量、または約0.001mg/kg体重/用量〜約1mg/kg体重/用量、または約0.01mg/kg体重/用量〜約1mg/kg体重/用量、または約0.1mg/kg体重/用量〜約1mg/kg体重/用量である。
【0133】
所望の治療効果を提供する用量間の好適な間隔を、状態の重症度(例えば、感染)、対象の総合的な健康、および対象の塩製剤への耐性、ならびに他の考慮すべき点に基づいて判定することができる。これらおよび他の考慮すべき点に基づいて、臨床医は、用量間の適切な間隔を判定することができる。概して、塩製剤は、必要に応じて、1日に1回、2回、3回投与される。
【0134】
所望および示される場合、塩製剤を、本明細書に記載される去痰剤、界面活性剤、咳抑制剤、去痰薬、ステロイド、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤、抗生物質、抗ウイルス剤の任意の1つ以上等の、1つ以上の他の治療薬とともに投与することができる。他の治療薬を、経口で、非経口で(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下注射)、局所的に、吸入によって(例えば、気管支内、鼻腔内、経口吸入、鼻腔内滴下)、直腸的に、経膣的に等の任意の好適な経路で投与することができる。塩製剤を、他の治療薬の投与の前に、実質的に同時に、またはその後に投与することができる。好ましくは、塩製剤および他の治療薬は、薬理活性の実質的重複を提供するように投与される。
【0135】
本明細書に記載されるように、病原体が粘液模倣物を介して移染する通過アッセイは、本明細書に記載される研究において、気道感染(例えば、肺)感染の過程をモデル化するために使用された。本明細書に記載される研究で使用される粘液模倣物は、アルギン酸ナトリウムである。通過アッセイで使用することができる他の好適な粘液模倣物には、ホウ酸ナトリウムと架橋するローカストビーンガムまたは他の合成模倣物が含まれる。生物学的に誘導された粘液(例えば、ヒトまたは動物からの粘液)も、粘液模倣物の代わりに通過アッセイで使用することができる。
【0136】
本明細書に引用される全ての文献の全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0137】
例証
実施例1.生体外研究
肺感染のモデルを使用して、生体外研究を行った。病原体が粘液模倣物を通って移染する通過アッセイを使用した。このモデルにおいて、粘液層の広域の病原体の移染を評価した。生体内で感染を確立し、肺炎を引き起こすために、病原体は、気道の内側を覆った粘液層を通過しなければならないので、アッセイは、肺感染の過程をモデル化する。
【0138】
通過アッセイ
このモデルにおいて、200μLの4%のアルギン酸ナトリウム(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)を12mmのTranswell膜(Costar、3.0μmの細孔の大きさ)の先端面に添加し、続いて、噴霧製剤に曝露させた。沈降チャンバを用いて塩液剤をチャンバ内に噴霧し、5分間超、重力で定着させた。各組のウェルに送達される塩製剤の濃度を制御するために、噴霧の数を変えた。複数の用量が送達された時に、5分間隔で塩製剤を噴霧し、エアロゾルを各々の曝露の間に沈降させた。塩製剤の送達後に、10μLの肺炎桿菌、肺炎連鎖球菌、緑膿菌、黄色連鎖球菌、または分類不能なインフルエンザ菌(生理食塩水中、〜10CFU/mL)を模倣物の先端面に添加した。細菌の添加後の様々な時点で、一定分量の基底面バッファを除去し、血液寒天プレート上で連続的に希釈およびプレーティングすることによって、各々の一定分量内の細菌の数を判定した。この方法の概略図が図1に示される。いくつかの実験では、各ウェルに送達された塩の濃度を定量化した。この目的のために、各々のTranswellに隣接し、かつ同一用量の製剤に曝露した12ウェル細胞培養プレートの空ウェルを滅菌水ですすいだ。試料を浸透圧法で分析し、単位面積当たりのカルシウムの濃度を標準曲線から判定した。
【0139】
1A.カルシウムは、アルギン酸ナトリウム粘液模倣物の全域で、肺炎桿菌および肺炎連鎖球菌の運動を減少させる。
【0140】
アルギン酸ナトリウム粘液模倣物を、0.90%の塩化ナトリウム溶液中の1.3%の塩化カルシウム(0.12M)から産生されたエアロゾルに曝露させ、模倣物の全域での頂端チャンバから基底外側チャンバの肺炎桿菌の運動を、3つの独立した実験で判定した。各々の実験において模倣物に送達した近似用量のカルシウムは、この製剤および同一の実験設定で作製された歴史的測定に基づいて、1cm当たり3〜5μgのカルシウムであった。生理食塩水で処理された対照ウェルにおいて、先端面への細菌の添加の120分後に、まず細菌を基底外側チャンバから回収し、力価は、120〜240分の間で著しく増加した(図2)。対照的に、カルシウム処理された模倣物を通る細菌の運動が、著しく遅延および減少した[4時間の時点で、対照の6%±2.4%(n=3)]。各々の試験製剤に対する濃度曲線下面積(AUC)を各々の実験のために計算し、かつ統計的に比較する時に、生理食塩水対照と比較して、カルシウム処理のAUCにおいて有意な減少があった(p<0.001、スチューデントのt検定)。
【0141】
肺炎桿菌(グラム陰性、桿菌様)から生み出された所見が、異なる形状の第2の細菌に適用されるかを判定するために、肺炎連鎖球菌(グラム陽性、双球菌の鎖)を同一のアッセイで試験した(図3)。肺炎桿菌で得られた結果と同様に、カルシウムへの模倣物の曝露は、肺炎連鎖球菌の運動を減少させ[4時間の時点で、対照の2.0%±2.0%(n=3)、p<0.05)、AUCの比較用]、カルシウム処理による細菌運動の阻害は、複数の細菌種に適用可能であることを示した。この効果は、カルシウムによって引き起こされたアルギン酸ナトリウムの生物物理学的特性の変化によって決定されると思われ、概念は、界面応力流動計を用いて生み出された追加のデータによって支援される。
【0142】
1B.マグネシウムは、アルギン酸ナトリウム粘液模倣物の全域で肺炎桿菌の運動を減少させるが、カルシウムよりも低い程度である。
【0143】
カルシウム処理で観察された効果が、第2の二価カチオンで再現されるかを決定するために、噴霧塩化マグネシウム溶液の効果を評価した。試験した製剤は、塩化マグネシウムのモル濃度を塩化カルシウムのそれに一致させた、0.90%の塩化ナトリウム中に溶解された0.12Mの塩化マグネシウムを含有した。塩化カルシウムのように、塩化マグネシウムエアロゾルへのアルギン酸ナトリウム模倣物の曝露は、肺炎桿菌の運動を減少させたが、しかしながら、効果の大きさは、塩化カルシウムで観察されたものよりも著しく小さかった(p<0.05、3つの独立した実験からの生理食塩水およびマグネシウム処理に対するAUCの比較用、図4)。具体的には、塩化マグネシウム処理後に基底外側チャンバから回収された細菌の力価は、240分の時点で、生理食塩水対照の54.5%±17.4%であった(n=3)。対照と比較して、120分の時点で、塩化マグネシウムによるより大きい減少が観察された[120分の時点で、生理食塩水対照の5.6%±2.4%(n=3)]。後者の結果は、塩化マグネシウム処理が、模倣物内の細菌の侵入または運動のいずれかを最初に遅延させ得るが、効果は、塩化カルシウムが使用された時よりも素早く克服されることを示唆する。
【0144】
1C.亜鉛およびアルミニウムは、アルギン酸ナトリウム粘液模倣物の全域で肺炎桿菌の運動を減少させるが、カルシウムよりも低い程度である。
【0145】
原子価と細菌運動の阻害との間の関連性が存在するかをさらに試験するために、アルギン酸ナトリウムを、0.90%の塩化ナトリウム中で作製された0.12Mの塩化亜鉛(二価カチオン)または0.12Mの塩化アルミニウム(三価カチオン)溶液のいずれかに曝露させた追加試験を実行した。ウェルを3重に曝露させたことを除いて、製剤を上述のように送達し、単一の実験を実行した。塩化マグネシウム処理と同様に、塩化亜鉛および塩化アルミニウムの両者ともに、模倣物の全域で細菌運動への適度の効果を有した(4時間の時点で、対照の〜50%)が、結果は、対照ウェルの1つの変動性の理由から、統計的に有意ではなかった。(図5)
【0146】
上で示されたデータは、物質の生物物理学的特性を変えることによって、粘液層の全域の細菌の運動に影響を与え得ることを示す。
【0147】
1D.塩化カルシウムへのアルギン酸ナトリウム模倣物の予防的曝露は、アルギン酸ナトリウム粘液模倣物の全域で、肺炎桿菌の運動を阻害する。
【0148】
追加の研究は、塩化カルシウム製剤が、予防的というよりはむしろ、細菌の添加(処理)後に適用された時に、模倣物を通る細菌の運動に影響を与えるかを試験した。アルギン酸ナトリウム模倣物を、単一の用量の3つの異なる塩化カルシウム製剤に曝露させた:0.90%の塩化ナトリウム中の0.12Mの塩化カルシウム、0.90%の塩化ナトリウム中の0.58Mの塩化カルシウム、および0.90%の塩化ナトリウム中の1.2Mの塩化カルシウム。顕著に、単一の用量でこれらの製剤とともに送達されたカルシウムの量は、0.9%の塩化ナトリウム中の0.12Mの塩化カルシウムとともに上の実験で送達されたカルシウムの用量に匹敵する。肺炎桿菌を、製剤への曝露の40分前、直後、または40分後のいずれかで模倣物の先端面に添加し、240分後に基底外側チャンバから回収した細菌の力価を判定した。上に示されたデータと同様に、細菌を製剤の添加の直後に模倣物に添加した時に、0.90%の塩化ナトリウム中の0.58Mの塩化カルシウムおよび0.90%の塩化ナトリウム中の1.2Mの塩化カルシウムの処理の両者において、生理食塩水で処理された対照と比較して、力価の減少が観察された(図6)。高濃度の塩化カルシウム(1.2Mの塩化カルシウム)への曝露の40分後に細菌を添加した時、同様の減少が見られた。対照的に、製剤曝露の40分前に細菌を添加した時、試験した製剤のいずれも、模倣物を通る細菌の運動を減少させなかった。これらのデータは、アルギン酸ナトリウム模倣物への塩化カルシウムの添加が、模倣物への細菌の侵入を阻止する障壁の機能を果たす表面効果をもたらすという考えを支援する。
【0149】
1E.塩化カルシウムは、用量依存的様式で、粘液模倣物を通る細菌の運動を阻害する
【0150】
先のデータは、異なる濃度の塩化カルシウムから成る製剤が、アルギン酸ナトリウム模倣物を通る細菌運動を効果的に減少させることができたことを示した。これらの研究では、噴霧を介する曝露の数は異なり、直接比較を困難にした。そのようなものとして、以下の塩化カルシウム製剤を試験した:0.90%の塩化ナトリウム中の0.12Mの塩化カルシウム、0.90%の塩化ナトリウム中の0.380Mの塩化カルシウム、0.90%の塩化ナトリウム中の0.58Mの塩化カルシウム、0.90%の塩化ナトリウム中の0.81Mの塩化カルシウム、および0.90%の塩化ナトリウム中の1.2Mの塩化カルシウム。この研究では、単一の用量の各々の製剤を、アルギン酸ナトリウム模倣物の先端面に送達し、曝露直後に細菌を添加した。0.58M以上の塩化カルシウムを有する製剤への曝露は、模倣物の全域で、アッセイの検出の限界まで運動を著しく減少させた。対照的に、0.12Mおよび0.38M処理は、効果がなかった。これらのデータ(図7)は、細菌の阻害のために必要とされる臨界濃度のカルシウムが、0.38Mおよび0.58M溶液によって送達される量の間にあることを示す。他の分析から、これは、1cm当たり約3〜4μgのカルシウムであり、製剤を含有する任意のカルシウムを伴うこの量以上のカルシウムの送達は、塩化カルシウムで観察されたものと同様の効果があることを仮定する。
【0151】
1F.塩化カルシウム単独が、用量依存的様式で、粘液模倣物を通る細菌の運動を阻害する。
【0152】
上で試験した製剤の全てを等張食塩水中で製剤化した。したがって、見られた阻害効果は、一致して、または二者択一的に、ナトリウムおよびカルシウムイオンの二重作用によって引き起こされたかもしれず、効果は、カルシウムによって完全に決定されたかもしれない。これらの仮説を区別するために、生理食塩水よりもむしろ水に基づく追加のカルシウム製剤を試験した。試験した特定の製剤は、以下の通りである:水中の0.12Mの塩化カルシウム、水中の0.23Mの塩化カルシウム、水中の0.58Mの塩化カルシウム、水中の1.2Mの塩化カルシウム。生理食塩水に基づく製剤で得られたデータと同様に、0.58Mおよび1.2M溶液の両者の送達が、模倣物の全域で、検出の限界を下回るまで細菌の運動を減少させた一方で、0.12Mおよび0.23M製剤は、対照と比較して効果がなかった(図8)。上の所見と相まって、これは、製剤を含有するカルシウムの阻害効果が、模倣物とのカルシウムイオン相互作用の結果であり、複数のイオンの複合効果によるものではないことを示す。
【0153】
1G.塩化カルシウムは、アルギン酸ナトリウム粘液模倣物の全域で、緑膿菌の運動を減少させる
【0154】
先の研究は、塩化カルシウムへのアルギン酸ナトリウム粘液模倣物の曝露が、粘液層の全域で、肺炎桿菌および肺炎連鎖球菌の非ムコイド株の運動を減少させたことを示した。この効果の広範囲の性質をさらに特徴付けるために、緑膿菌、嚢胞性線維症を有する患者の感染のよくある原因であるグラム陰性日和見病原体の運動を試験した。アルギン酸ナトリウムを、等張食塩水:0.90%の塩化ナトリウム中の0.12MのCaClの塩化カルシウムの異なる濃度に曝露させ、緑膿菌を模倣物の先端面に添加した。塩化カルシウムでの処理は、緑膿菌の運動を著しく減少させた(図9、4時間の時点で、生理食塩水対照の14.7±13%、n=2)。NaCl中のCaClを含有する製剤へのアルギン酸ナトリウム模倣物の曝露が、このアッセイにおいて、肺炎桿菌および肺炎連鎖球菌の運動を阻害することができることを示す先のデータとともに、これらのデータは、治療の広範囲の性質をさらに支援する。
【0155】
1H.塩化カルシウムは、アルギン酸ナトリウム粘液模倣物の全域で、黄色ブドウ球菌および分類不能なインフルエンザ菌(NTHI)の運動を減少させる
【0156】
先の研究は、塩化カルシウムへのアルギン酸ナトリウム粘液模倣物の曝露が、粘液層の全域で、肺炎桿菌、肺炎連鎖球菌、および緑膿菌の運動を減少させたことを示した。この効果の広範囲の性質をさらに特徴付けるために、黄色ブドウ球菌、肺炎のよくある原因であるグラム陽性病原体、および分類不能なインフルエンザ菌(NTHI)、肺炎の原因であり、かつ易感染性患者の悪化に関連するグラム陰性病原体の運動を試験した。アルギン酸ナトリウムを、等張食塩水:0.90%の塩化ナトリウム中の0.12MのCaCl2の塩化カルシウムの異なる濃度に曝露させ、黄色ブドウ球菌またはNTHIを、模倣物の先端面に添加した。塩化カルシウムでの処理は、NTHI(図10A、4時間の時点で、生理食塩水対照の0.3%、n=2)および黄色ブドウ球菌(図10B、4時間の時点で、生理食塩水対照の0.06%、n=2)の運動を完全に阻止した。NaCl中のCaCl2を含有する製剤へのアルギン酸ナトリウム模倣物の曝露が、このアッセイにおいて、他の病原体の運動を阻害することができることを示す先のデータとともに、これらのデータは、治療の広範囲の性質をさらに支援する。
【0157】
1I.塩化カルシウムは、病原体を含有する粒子の形成を減少させる
【0158】
粘液模倣物の表面粘弾性特性の変化が、粒子形成における差異となり、それゆえに伝染に影響を与えるかを試験するために、模擬咳システムを用いた研究を実施した。G.Zayas,J.Dimitry,A.Zayas,D.O'Brien,M.King,BMC Pulm Med5,11(2005)。模擬咳システムは、空気を、定義された圧力で、呼吸気流計を通して、システムの概略図の粘液模倣物で内側を覆ったモデル気管の全域を通過させることを含む。システムの概略図が図11Aに示される。システムを通過する空気圧は、咳の流れの特性および体積を模倣するようである。粒子形成上で異なるエアロゾルの効果を試験するために、生理食塩水またはカルシウムエアロゾルを粘液模倣物(ローカストビーンガム)の表面に局所的に送達し、続いて、システムを通して咳をシミュレートし、光学粒子計数器(CI−500B Climet Instruments,Redlands,CA)で粒子を収集した。0.90%の塩化ナトリウム中の0.12MのCaClへの模倣物の曝露は、対照条件と比較して、粒子の数を93%減少させた(図11B、n=4、p<0.01一方向ANOVA)が、その一方で、0.90%の塩化ナトリウム処理は、適度の効果のみであった(対照の34%、n=4)。次に、減少した粒子数がエアロゾル化した細菌の数の減少と相関するかを、同一のシステムを用いて試験した。粘液模倣物を肺炎桿菌と混合し、咳システムのモデル気管に添加した。0.90%の塩化ナトリウム中の0.12MのCaClへの模倣物の曝露後、または模倣物を未処理のまま放置した後、咳をシミュレートし、粒子を液体培養液中に収集した。培養液中に収集した細菌(粒子)を希釈し、寒天プレートにプレーティングし、各々の条件における細菌の数を数えた。咳シミュレーション前の0.90%の塩化ナトリウム中の0.12MのCaClへの模倣物の曝露は、処理されていない対照と比較して、形成される粒子の数を75%制御した(図11C)。これらの所見は、塩エアロゾルを粘液表面に局所的に投与することが、病原体の空気伝播を制限し、疾病の伝染および伝播を減少させる役割を果たすことができることを示す。
【0159】
実施例2.生体内研究
塩製剤が生体内で肺炎を治療するのに効果的であるかを評価するために、マウス研究を実施した。
【0160】
マウスモデル
特定の無菌の雌のC57BL/6マウス(6〜7週齢、16〜22g)をこれらの研究で使用した。マウスに、自由な食物および水へのアクセスを与えた。感染のために、肺炎連鎖球菌(Serotype3、ATCC6303)を血液寒天プレート上に画線し、37℃、さらに5%のCOで一晩成長させた。感染前に、ケタミンおよびキシラジンの混合物の腹腔内注入で動物を麻酔した。肺炎連鎖球菌の単一のコロニーを無菌生理食塩水中に再懸濁してOD600=0.3とし、ついで、生理食塩水中に1:4に希釈した。コロイド状炭素を1%および50μLの得られた溶液(〜1x10CFU)に添加し、麻酔されたマウスの左肺内に滴下注入し、感染を生成した。感染の後、接種菌液の細菌力価を連続希釈で判定し、血液寒天プレート上にプレーティングした。24時間後、マウスを安楽死させ、連続的に希釈した肺ホモジネートを血液寒天プレート上にプレーティングすることで、感染動物の肺の細菌負荷を判定した。
【0161】
塩製剤エアロゾル送達システム
塩エアロゾルをパイチャンバ曝露システムに送達するために、高出力噴霧器を用いる全身曝露システムを利用した。単一のチューブが、各々のチャンバの4個の入口を介して、エアロゾルを中心のマニフォールドに、かつ最終的に11個のマウス保持チャンバの1つに送達するように、各々のパイチャンバ曝露チャンバを修正した。システムを通る前流量は11.7L/minであり、動物をカチオン性エアロゾルに15分間曝露させた。
【0162】
エアロゾル特徴付け
R3レンズ(0.5〜175μMの大きさの範囲)を装備したSympatec Helos粒径分析器上に設置された吸入器アダプタを使用して、高出力噴霧器によって産生されたエアロゾルの粒子分粒を実行した。噴霧器を45mLの等張食塩水(JT Baker,Phillipsburg,NJ)で満たし、噴霧器に接続した管類の出口を、吸入器アダプタから〜1cmに配置した。各々の試験を5秒間測定し(Copt16.5〜29.31%)、容積中央値直径(MMD、x50)および幾何学的標準偏差を各々の測定において記録した。呼吸速度計ならびに電圧増幅器および電圧計に接続するValidyne圧力トランスデューサーを使用して、各々のテストランの間に流量を判定した。1CFM=1Vのようにシステムを較正した。
【0163】
収集イオンフィルタ上の質量堆積を測定することによって、噴霧器出力速度を判定した。フィルタを収集の直前および30秒の収集の直後に秤量した。各々の測定において等張食塩水の新鮮な溶液を使用して、3つのテストランを実行した。
【0164】
塩製剤エアロゾル投与推定値
推定のCaCl用量レベルおよびエアロゾル濃度が表2に示される。
【表2】


曝露期間中の動物への達成された用量レベルを、以下の式を用いて推定した:
【化1】


= 達成された用量レベル(mg/kg/day)
= 動物に送達された実際のエアロゾル濃度(mg/Lの空気)
RMV = Bideらの方法に従っての毎分呼吸量(L/分):RMV(L/分)=0.499×BW(kg)0.809(曝露期間の推定平均)
T = 1日の曝露の時間、期間(分)
BW = 平均体重(kg)。
【0165】
マウス治療研究
感染当日に、マウスを無作為に異なる研究班に割り当てた。感染時間に対して異なるエアロゾル曝露時間を利用して、エアロゾルの効果を予防法ならびに治療計画の両者において試験した(図12Aおよび12B)。各々の曝露のために、エアロゾルが中央のマニフォールド、続いて各個々の動物に送達される特注の全身パイチャンバシステム内にマウスを入れた。エアロゾル曝露は、CaClの6.4mg/kg/dayの推定用量を送達した0.90%の塩化ナトリウム中の0.12Mの塩化カルシウムの15分間の曝露から成った。感染の24時間後にイソフルレン吸入で動物を安楽死させ、肺を外科的に除去し、滅菌水中に設置した。組織片が見えなくなるまで、肺をガラス乳鉢および乳棒を用いて均質化した。肺ホモジネートを滅菌水中に連続的に希釈し、血液寒天プレート上にプレーティングして、コロニー形成単位(CFU)を数えた。プレートを37℃、さらに5%のCOで一晩インキュベートし、翌日CFUを計数した。
【0166】
班の間の差異をマンホイットニーのU検定で評価した。
【0167】
2A.塩化カルシウム製剤でのマウスの予防的曝露および治療は、マウス肺の細菌負荷を減少させる
【0168】
肺炎連鎖球菌マウスモデルを採用し、潜在的病原体非依存を試験し、細菌感染への塩の治療効果を評価した。図12Aに示されるように、0.90%の塩化ナトリウム中の0.12Mの塩化カルシウムの全身曝露による、感染2時間後の治療(2.3mgのCa/kg堆積用量)は、治療されていない対照(n=15)と比較して、24時間後(n=15)に著しく低い細菌負荷をもたらした。マウス(n=12)を設置の2時間前に食塩水で治療し、続いて気道内設置で肺炎連鎖球菌に感染させることによって、マウス肺炎モデルの予防を評価した。図12Bは、治療されていない対照(n=12)および感染2時間後に治療された感染動物(n=15)と比較して、感染24時間後の細菌負荷は、任意の他と比較して、予防班において統計的に低かったことを示す。
【0169】
2B.細菌性肺炎の予防的治療は、特に塩化カルシウムによって決定され、概して、二価カチオンによってではない。
【0170】
2.0%の塩化マグネシウムおよび0.90%の塩化ナトリウム(n=12)の食塩水、ならびに0.90%の塩化ナトリウム単独(n=12)の食塩水で感染の2時間前に動物を治療することによって、マウス肺炎モデルにおける治療研究を繰り返してエアロゾル化したカチオンの本質の役割を評価した。MgCl製剤(図13A)および生理食塩水製剤(図13B)溶液で治療された動物は、感染の24時間後、治療されていない対照と同様の細菌負荷を有し、細菌性肺炎を治療する塩製剤の効力は、CaCl含有製剤に特異的であり、カチオンに対して一般的ではないことを示した(一価または二価に関わらず)。
【0171】
2C.細菌感染の治療におけるカルシウム:ナトリウム製剤の治療活性
【0172】
この例では、細菌感染の治療における塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムを含む製剤の治療活性をマウスモデルを使用して検査した。データは、カルシウム:ナトリウム製剤は、マウスモデルにおいて肺炎連鎖球菌感染を治療するのに効果的であったことを示した。
【0173】
方法:
トリプシン大豆寒天(TSA)血液プレート上で培養物を37℃、さらに5%のCOで一晩成長させることによって細菌を調製した。単一のコロニーを無菌PBS中にOD600〜0.3に再懸濁し、続いて、無菌PBS中で1:4に希釈した[〜2×10コロニー形成単位(CFU)/mL]。麻酔にかかっている間、マウスを気道内注入によって50μLの細菌性懸濁液(〜1×10のCFU)に感染させた。
【0174】
個々に11匹までの動物を保持するパイチャンバケージに接続する高出力噴霧器またはPari LC Sprint噴霧器のいずれかを用いて、C57BL6のマウスを、全身曝露システムでエアロゾル化した液剤に曝露させた。治療をSerotype3肺炎連鎖球菌の感染の2時間前に実行した。別途提示されない限り、曝露時間は3分間であった。感染の24時間後、マウスをペントバルビタール注射液で安楽死させ、肺を収集し、無菌PBS中に均質化した。肺ホモジネート試料を無菌PBS中で連続的に希釈し、TSA血液寒天プレート上にプレーティングした。翌日、CFUを数えた。
【0175】
結果:

(a)カルシウム:ナトリウム製剤(8:1のモル比でのCa2+:Na)は、用量反応様式で細菌負荷を減少させた

カルシウム:ナトリウム製剤の治療活性を同一のモデルおよび幅広い用量範囲で評価した。投与時間を一定に維持しながら、異なるカルシウム用量を、Ca2+:Naの異なる濃度、ひいては異なる浸透圧から成る製剤を用いて送達した。8:1のモル比でのCa2+:Naを含有する製剤は、用量反応様式で細菌負荷を減少させ、最大の減少が低用量のカルシウムで観察された(0.32mgのCa2+/kgの用量および0.5Xの浸透圧で約4倍の減少(製剤9、表1)、ならびに0.72mgのCa2+/kgの用量および1.0Xの浸透圧で約5倍の減少)(製剤10、表1)(図14A)。興味深いことに、これらの減少は、製剤Aで見られた減少に匹敵した(1.29%のCaClおよび0.9%のNaCl)が、しかしながら、著しく低用量での減少であった。浸透圧が製剤Aと同等である2Xの浸透圧製剤(製剤11、表1)は、1,58mgのCa2+/kgの用量で投与した時に、細菌力価を減少させる比較的穏当な効果があった(〜1.6倍の減少)。

(b)より長時間の噴霧を介して用量を増加することは、カルシウム:ナトリウム製剤の治療活性に著しく影響を及ぼさなかった
【0176】
図14Aは、カルシウムとナトリウムとの8:1の比率でのカルシウム:ナトリウム製剤は、1.58mg未満のCa2+/kgの用量で細菌感染の重症度を減少させたことを示した。具体的には、1X製剤(製剤10、〜0.72mgのCa2+/kg)は、最も高度に効果的であった。結果が図14Aに示された研究は、3分間の投与時間を試験した。投与量の効果をさらに検査するために、投与期間を増加することによって、Ca2+の用量範囲を試験した。動物を、Ca2+:Na製剤(1Xの浸透圧=等浸透圧、8:1のモル比)で異なる時間(1.5分〜12分)治療した。これらの投与時間は、1.5、3、6、および12分の投与時間に対して、それぞれ、約0.36、0.72、1.44、および2.88mgのCa2+/kgでのCa2+投与量をもたらした。図14Bに示されるように、最短の投与時間で、対照動物(生理食塩水を3分間投与した)と比較して、細菌力価の減少が観察されなかった一方で、3、6、および12分の投与は、それぞれ、統計的に有意なレベルで細菌力価を減少させた。

【0177】
2D.細菌感染の治療におけるカルシウムおよびアンピシリンの相乗活性
【0178】
全身曝露チャンバを用いて、マウス(C57BL6)をCa:Na製剤10(1Xの浸透圧、8:1のモル比のCa2+:Na、〜0.72mgのCa/kgの送達用量)、生理食塩水中のアンピシリン(0.9%のNaClでの96.75mg/mL、〜3mg/kgの送達用量)、または1X(製剤10)中で溶解したアンピシリン(96.75mg/mL)の噴霧溶液に曝露させた。肺炎球菌の感染の2時間前に、マウスを各々の製剤に曝露させた。1XのCa:Na製剤およびアンピシリン単独の両者ともに、生理食塩水対照に対して、感染マウスの肺中の細菌負荷を減少させた(p<0.001マンホイットニーのU検定)。1X製剤は、細菌力価を約4.5倍減少させ、かつアンピシリンは、力価を33倍減少させた。予想外に、2つの治療の組み合わせは、単一の治療のいずれよりも、細菌力価のより大きな減少をもたらし、本明細書に記載されるカルシウム製剤中の吸入抗生物質を送達する治療的有用性を示した。
【0179】
実施例3.生体内マウスモデル
トリプシン大豆寒天(TSA)血液プレート上で培養物を37℃、さらに5%のCOで一晩成長させることによって細菌を調製した。単一のコロニーを無菌PBS中にOD600〜0.3に再懸濁し、続いて、無菌PBS中で1:4に希釈した[〜2×10コロニー形成単位(CFU)/mL]。麻酔にかかっている間、マウスを気道内注入によって50μLの細菌性懸濁液(〜1×10のCFU)に感染させた。
【0180】
個々に11匹までの動物を保持するパイチャンバケージに接続した高出力噴霧器またはPari LC Sprint噴霧器のいずれかを用いて、C57BL6のマウスを、全身曝露システムでエアロゾル化した液剤に曝露させた。肺炎連鎖球菌の感染の2時間前に、マウスを乾燥粉末製剤(表3)で治療した。対照として、動物を同様の量の100%のロイシン乾燥粉末に曝露させた。感染の24時間後、マウスをペントバルビタール注射液で安楽死させ、肺を収集し、無菌PBS中に均質化した。肺ホモジネート試料を無菌PBS中で連続的に希釈し、TSA血液寒天プレート上にプレーティングした。翌日、CFUを数えた。
【0181】
対照動物と比較して、カルシウム乾燥粉末で治療された動物は、感染の4時間後、減少した細菌力価を示した。具体的に、硫酸カルシウムおよび塩化ナトリウム(製剤3−2)から成る製剤で治療された動物は、5倍低い細菌力価を示し、クエン酸カルシウムおよび塩化ナトリウム(製剤3−1)から成る製剤で治療された動物は、0.4倍低い細菌力価を示し、かつ乳酸カルシウムおよび塩化ナトリウム(製剤3−3)から成る製剤で治療された動物は、5.9倍低い細菌力価を示した。(図15)これらのデータは、液剤と同等またはより優れた効力を有する乾燥粉末製剤を、細菌感染およびウイルス感染を広範に治療するために製造することができる。
【表3】

【0182】
この発明が、その好ましい実施形態に関して特に示され、かつ記載された一方で、形態および詳細の多様な変更が、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱することなく、その中で行われ得ることが当業者によって理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺炎を治療するための方法であって、肺炎を有する個人に、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含み、前記カルシウム塩製剤は、エアロゾルとして、前記個人の肺に投与される、方法。
【請求項2】
前記肺炎は、細菌性肺炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細菌性肺炎は、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、ストレプトコッカスアガラクチア、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、カタル球菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマ、レジオネラニューモフィラ、エンテロバクター種、アシネトバクター種、アシネトバクターバウマンニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、バークホルデリア種、ステノトロフォモナスマルトフィリア、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される病原体によって引き起こされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細菌性肺炎は、肺炎連鎖球菌によって引き起こされる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記肺炎は、市中肺炎(CAP)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、院内肺炎(HAP)、および医療ケア関連肺炎(HCAP)から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記カルシウム塩は、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびグルコン酸カルシウムから成る群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
体重1キログラム当たり約0.01mg〜体重1キログラム当たり約10mgのカルシウム用量が、肺に投与される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記製剤は、液剤または乾燥粉末である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記カルシウム塩製剤は、ナトリウム塩をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ナトリウム塩は、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、重リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、およびメタケイ酸ナトリウムから成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記カルシウム塩製剤中のカルシウムとナトリウムとの比率は、約8:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
体重1キログラム当たり約0.001mg〜体重1キログラム当たり約10mgのナトリウム用量が、肺に投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
肺炎を引き起こす病原体の感染を減少させるための方法であって、肺炎を有するか、肺炎様の症状を示すか、または肺炎に罹患する危険性のある個人に、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含み、前記カルシウム塩製剤は、エアロゾルとして、前記個人の肺に投与される、方法。
【請求項14】
前記肺炎は、細菌性肺炎である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記細菌性肺炎は、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、ストレプトコッカスアガラクチア、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、カタル球菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマ、レジオネラニューモフィラ、エンテロバクター種、アシネトバクター種、アシネトバクターバウマンニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、バークホルデリア種、ステノトロフォモナスマルトフィリア、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される病原体によって引き起こされる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細菌性肺炎は、肺炎連鎖球菌によって引き起こされる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記肺炎は、市中肺炎(CAP)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、院内肺炎(HAP)、および医療ケア関連肺炎(HCAP)から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
肺炎を予防する方法であって、肺炎に罹患する危険性のある個人に、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含み、前記カルシウム塩製剤は、エアロゾルとして、前記個人の肺に投与される、方法。
【請求項19】
前記肺炎は、細菌性肺炎である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記細菌性肺炎は、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、ストレプトコッカスアガラクチア、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、カタル球菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマ、レジオネラニューモフィラ、エンテロバクター種、アシネトバクター種、アシネトバクターバウマンニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、バークホルデリア種、ステノトロフォモナスマルトフィリア、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される病原体によって引き起こされる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細菌性肺炎は、肺炎連鎖球菌によって引き起こされる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記肺炎は、市中肺炎(CAP)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、院内肺炎(HAP)、および医療ケア関連肺炎(HCAP)から成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記カルシウム塩は、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびグルコン酸カルシウムから成る群から選択される、請求項13および18〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
体重1キログラム当たり約0.01mg〜体重1キログラム当たり約10mgのカルシウム用量が、肺に投与される、請求項13および18〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記カルシウム塩製剤は、ナトリウム塩をさらに含む、請求項13および18〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ナトリウム塩は、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、重リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、およびメタケイ酸ナトリウムから成る群から選択される、請求項13または25に記載の方法。
【請求項27】
前記カルシウム塩製剤中のカルシウムとナトリウムとの比率は、約8:1である、請求項13または26に記載の方法。
【請求項28】
体重1キログラム当たり約0.001mg〜体重1キログラム当たり約10mgのナトリウム用量が、肺に投与される、請求項13または27に記載の方法。
【請求項29】
人工呼吸器関連肺炎(VAP)を治療するための方法であって、VAPを有する個人に、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含み、前記カルシウム塩製剤は、エアロゾルとして、前記個人の肺に投与される、方法。
【請求項30】
前記エアロゾルは、液体エアロゾルである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記カルシウム塩は、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびグルコン酸カルシウムから成る群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
体重1キログラム当たり約0.01mg〜体重1キログラム当たり約10mgのカルシウム用量が、肺に投与される、請求項29または31に記載の方法。
【請求項33】
1種以上の抗生物質を前記個人に投与することをさらに含む、請求項29〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
セフトリアキソン、アンピシリン-スルバクタム、ピペラシリン-タゾバクタム、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、およびエルタペネムから成る群から選択される1種以上の抗生物質が投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
抗生物質の組み合わせが投与され、前記組み合わせは、
a)セフェピム、セフタジジム、イミペネム、メロペネム、ドリペネム、ピペラシリン-タゾバクタム、およびアズトレオナムから選択される少なくとも1種の抗生物質と、
b)シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、およびアミカシンから選択される少なくとも1種の抗生物質と、
c)リネゾリドおよびバンコマイシンから選択される少なくとも1種の抗生物質と、を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防のための方法であって、VAPの危険性のある個人に、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含み、前記カルシウム塩製剤は、エアロゾルとして、前記個人の肺に投与される、方法。
【請求項37】
前記カルシウム塩は、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびグルコン酸カルシウムから成る群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
体重1キログラム当たり約0.01mg〜体重1キログラム当たり約10mgのカルシウム用量が、肺に投与される、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
VAPの危険性のある前記個人は、少なくとも48時間、機械的人工呼吸を受けることが予想される個人である、請求項36〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記カルシウム塩製剤は、挿管時に、かつその後定期的に投与される、請求項36〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
1種以上の抗生物質を、前記個人に投与することをさらに含む、請求項36〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
人工呼吸器関連気管気管支炎(VAT)の予防のための方法であって、VATの危険性のある個人に、有効量のカルシウム塩製剤を投与することを含み、前記カルシウム塩製剤は、エアロゾルとして、前記個人の肺に投与される、方法。
【請求項43】
前記カルシウム塩は、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびグルコン酸カルシウムから成る群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
体重1キログラム当たり約0.01mg〜体重1キログラム当たり約10mgのカルシウム用量が肺に投与される、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
VATの危険性のある前記個人は、少なくとも48時間、機械的人工呼吸を受けることが予想される個人である、請求項42〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記カルシウム塩製剤は、挿管時に、かつその後定期的に投与される、請求項42〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
1種以上の抗生物質を、前記個人に投与することをさらに含む、請求項42〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記製剤は、液剤である、請求項1、13、24、29、または36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記製剤は、乾燥粉末である、請求項1、13、24、29、または36のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−522009(P2012−522009A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502302(P2012−502302)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/028901
【国際公開番号】WO2010/111641
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511229455)パルマトリックス,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】