説明

胃腸微生物叢の監視プロセスおよび方法

ヒトの胃腸系の胃腸管を監視する方法を開示する。方法は、1)微生物を特定の操作的分類単位(OTU)に分類すること;2)オリゴヌクレオチドプローブおよびPCRプライマーを使用してヒトの糞便材料内の特定の微生物(バクテリア、真菌/酵母菌、原生動物、および寄生虫)を検出し定量化すること、を含む。また、本発明は、DNA分離ステップと;2)特定の操作的分類単位(OTU)の蓄積;3)当該OTU内部の配列の識別および定量化;4)ヒトの胃腸系の常在個体群の変化を報告することを含む、キットを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[仮出願への相互参照]
この出願は、2008年4月1日出願の仮出願シリアル番号61/041,581号および同じ2008年4月1日出願の仮出願シリアル番号61/041,584号の利益を主張するものであり、それぞれの内容全体を引用することによりここに組み込むものとする。
【0002】
[配列表]
この出願は、添付の配列表を含む。ここに提出したのは、2009年4月1日に作成したファイルサイズ48KBの電子ファイル「GI Sequences_ST25.txt」であり、その全体を引用することによりここに組み込むものとする。
【0003】
[発明の背景]
1.発明の分野
本発明は、ヒトの胃腸管に対して常在性かつ病原性の微生物叢を、検出し定量化する分子ベースの方法における、特異的なオリゴヌクレオチドのプローブおよびPCRプライマーの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
2.発明の背景
下記の文献は、本発明の保護の対象において有用であり、ここに引用により組み込むものとする。:
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Mackie RI, Sghir A, Gaskins HR. Developmental microbial ecology of the neonatal gastrointestinal tract. Am J Clin Nutr. May 1999; 69(5): 1035S-1045S.
【非特許文献2】Hawrelak JA, Myers SP. The causes of intestinal dysbiosis: a review. Altern Med Rev. Jun 2004; 9(2): 180-197.
【非特許文献3】Galland L, Barrie S. Intestinal dysbiosis and the causes of diseases. J. Advancement Med. 1993; 6: 67-82.
【非特許文献4】Savage DC. Microbial ecology of the gastrointestinal tract. Annu Rev Microbiol. 1977; 31: 107-133.
【非特許文献5】Berg RD. The indigenous gastrointestinal microflora. Trends Microbiol. Nov 1996; 4(11): 430-435.
【非特許文献6】Finegold S, Sutter V, Mathisen G. Normal indigenous intestinal flora. New York: Academic Press; 1983.
【非特許文献7】Leff et al., 1995, Appl. Environ. Microbiol., 61: 1634-1636.
【非特許文献8】Xiao et al, 1999, Appl. Environ. Microbiol., 65: 3386-3391. ヒトの胃腸(gastrointestinal:「GI」)管の微生物叢の個体群は、非常に多様かつ複雑で、高い個体群密度を有する。微生物の主要な群はすべて示されている。圧倒的に多いのはバクテリアであるが、様々な原生動物も存在する。結腸内には、グラム当たり1011個以上のバクテリア細胞、そして400以上の異なる種が存在する。これらのバクテリア細胞は、数にして宿主細胞の少なくとも10倍に及ぶ。この微生物叢の個体群は、宿主の生理学上、栄養学上、免疫学上のプロセスに重要な作用を有する。特に、新生児期間中に病原性バクテリアから保護し、免疫システムの発達を推進する。さらに、宿主に有益な作用を有するGI微生物叢の代謝活性として、食物成分の継続的分解、ビタミンの生産、結腸粘膜を育てる短鎖脂肪酸の生産がある。食餌、病気、ストレス、投薬などの要素が原因となって宿主の健康を損なう可能性があり、その症状には、消化管微生物叢のいわゆる正常均衡が動揺することによるものもあると推定される。プロバイオティクスに基づく機能性食品を設計する際には、標準的な微生物叢の構造および機能、ならびに宿主の食餌へのその反応、遺伝的背景および生涯、を考慮に入れなければならない。また、このバイオマスは、大きな代謝活性およびヒトの健康への多大な影響を有する急速に適応する再生可能な器官として、より厳密に考察されるべきである。したがって、これら消化管微生物叢の種類および活動を特定することに改めて関心が高まっている。
【0006】
正常で健康的な均衡は、病原体に対する移植耐性をもたらす。嫌気性生物は、これら微生物の95%以上を含むので、その分析が最も重要である。消化管の微生物叢も、腸環境異常(dysbiosis)のような疾患を防止するために免疫反応を刺激するかもしれない。腸環境異常とは、疾病を引き起こす微生物生態環境失調状態として定義することができる。具体的には、腸環境異常の概念は、腸内細菌叢のパターンが、とりわけ腸内細菌叢に一般にみられるある微生物の異常増殖が、ヒトの健康に影響を及ぼすという仮定に基づいている。腸環境異常が引き起こしたり悪化させたりすると考えられる症状および疾患には、炎症性腸疾患、炎症性または自己免疫疾患、食物アレルギー、アトピー性湿疹、説明できない疲労感、関節炎、子供と大人双方の精神/情緒障害、栄養不良、および乳・結腸癌がある。
【0007】
GI管内微生物叢の研究のほとんどは、糞便サンプルを利用するものであった。これらは、必ずしも、胃から直腸にいたるGI管全体に沿って個体群を表すものではない。疾患および種は、この管に沿って著しく、一般に低い個体群密度から高い個体群密度へと、変わりうるのである。酸性度が高く流速が速い胃および近位小腸は、内容量のグラムまたはml当たり10〜10のバクテリアを含む。これらは、酸に耐性のある乳酸菌および連鎖球菌のバクテリアが主体となっている。遠位小腸から回盲弁までは、通常、内容量のグラムまたはml当たり10までの範囲のバクテリアを含む。大腸は、滞留時間が長いので高い増殖率で生成し、内容量のグラムまたはml当たり1010〜1011の範囲のバクテリアを含む。この領域で生成するレドックス電位は低く、短鎖脂肪酸量は高い。
【0008】
微生物叢の内容が、GI管の長さにわたって変動するのみならず、これらの微生物が増殖可能な異なる微環境も存在している。少なくとも4つのミクロハビタット、すなわち、腸管腔、上皮を被覆する非攪拌粘液層、絨毛間の陰窩内の深部粘液層、および上皮細胞の表面粘膜が存在する。この多様な共同体を所与の前提とすると、微生物の個体群を特定し、ひいては宿主−微生物間の相互作用を理解するために、多様な環境をどのようにサンプリングすべきかという問題が生じる。サンプルを採取するためのいかなる処置も潜在的に個体群を破壊することになるため、この問題はきわめて難問である。微生物の評価に、多年にわたり糞便サンプリングが利用されてきた。しかし、このサンプルは、本来、結腸内で増殖する微生物をもっともよく表すものと理解されるべきものである。また、98%を超える糞便バクテリアが酸素中では増殖しない。したがって、標準培養技法は、存在する微生物の大部分を欠くものである。
【0009】
細菌学における、顕微鏡法、培養法、識別法のような従来の方法が、腸内微生物叢の分析および/または定量化に利用されている。従来の方法の限界は、それらが、検出感度が低いこと、培養不可能なバクテリアおよび未知の種を検出できないこと、時間がかかること、識別および定量化すべき種の数が多いため再現可能性水準が低いことである。また、ヒトの消化管に存在する異なる種の増殖率および増殖要件が大きく異なることは、培養による定量化が不正確とならざるを得ないことを示している。微生物の検出および識別に対する分子技術の適用は、微生物の生態系とその機能の分析において飛躍的な進歩をもたらした。
【0010】
培養の諸問題を克服すべく、ヒトの胃腸管の微生物叢を特徴づけるために分子ベースの方法が多数用いられている。個々の微生物に対するゲノム配列データを識別および特徴づけることで特定の微生物の識別が可能となるかもしれないが、そのような目標を定めた試験法は、包括的で、経済的に実現可能な、胃腸管の生態系監視システムを提供するものではない。微生物に対する分子診断試験は、病原体が風土性を持つものであるか、非病原性微生物との実質的な遺伝的類似性を備えるものである場合には、その正確性が損なわれるかもしれない。
【0011】
自然分類における微生物の共同体構成の詳細な情報は、PCR増幅、クローニングおよびシーケンシングによりサンプルから直接取得される16S rDNA配列の系統解析から得ることができる。しかし、その結果は、微生物共同体が複雑であること、そして、バクテリアの多様性が培養によって把握することはできないことを示すものであった。
【0012】
上述の状況を考慮するなら、ヒトの胃腸管の常在微生物のバランスの実時間監視を可能にするプロセスおよび方法に対する技術上のニーズが存在することは明白である。また、監視システムは、ヒトの健康に悪影響を及ぼす既知のおよび未知の病原性微生物の検出をも可能にするものでなければならない。
【0013】
[発明の概要]
一側面において、本発明は、ヒトの胃腸管の微生物叢を監視する方法を提供する。この方法は、微生物の操作的分類単位を分類するためにユニバーサルPCRプライマーを識別するステップ、そして、500bp〜1500bpの大きさのPCR産物を生成するために当該ユニバーサルPCRプライマーを胃腸管のサンプルに適用するステップを含む。他の側面において、前記ユニバーサルPCRプライマーは、バクテリアの操作的分類単位に特異性があって、SEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:54〜SEQ ID NO.55のいずれか一つの配列を含む。他の側面において、前記ユニバーサルPCRプライマーは、真菌類および酵母菌の操作的分類単位に特異性があって、SEQ ID NO:82〜SEQ ID NO:83およびSEQ ID NO:92〜SEQ ID NO:93のいずれか一つの配列を含む。さらに他の側面において、前記ユニバーサルPCRプライマーは、寄生原生動物および寄生虫の操作的分類単位に特異性があって、SEQ ID NO:92〜SEQ ID NO:93のいずれか一つの配列を含む。
【0014】
他の側面において、前記ユニバーサルPCRプライマーは、分子ベースの方法を用いて特定の微生物の操作的分類単位のDNA配列を解析することによって、特定の微生物DNA配列についての定性的または定量的なデータを取得し報告する。分子ベースの方法としては、DNAハイブリダイゼーション、DNAアレイ、DNAシーケンシング、PCRアレイ、およびマルチプレックスPCRが挙げられる。オリゴヌクレオチドプローブとしては、特定の操作的分類単位の内部配列に局所化された微生物の差異に対するSEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:309のいずれか一つの配列が挙げられる。
【0015】
さらに他の側面において、本発明は、生態系に対する常在性および/または病原性を有する微生物を監視するプロセスを提供する。このプロセスは、糞便材料中の微生物増殖体を同時に採取および不活性化する方法を用意し、高精度の核酸分析に修正可能な、糞便材料からDNAを抽出する方法を用意し、目標微生物核酸を濃縮する方法を用意することを含む。そして、このプロセスは、属または種レベルで微生物に特異性がある核酸配列の具体的な識別および定量化を準備する。目的となる生態系としては、ヒトの胃腸管が挙げられる。糞便材料は、0.1%〜50%のホルマリンを含有する培地に採取してもよく、目標核酸はDNAであってもよい。
【0016】
さらに他の側面において、本発明は、サンプル中の微生物種を検出する方法を提供する。この方法は、ゲノムDNAを放出するために前記サンプルに細胞を溶解させるステップを含む。特定の操作的分類単位の内部配列に局所化された微生物の差異に対するSEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:309のいずれか一つの配列を含むプライマー対に、前記ステップから得られたゲノムDNAを接触させる。増幅産物を生成するために微生物DNAを増幅する。そして、前記増幅産物を検出し、前記産物が存在すれば前記サンプル中に微生物種が存在することを示し、前記産物が存在しなければ前記サンプル中に微生物種が存在しないことを示す。また、この方法は、前記サンプル中の微生物種のレベルを量ることを含むものとしてもよい。この方法は、少なくとも一つの対照標準と比較することにより前記増幅産物のレベルを量るステップを含み、前記増幅産物のレベルは、前記微生物種のレベルを示す。
【0017】
本発明の前記および他の側面は、表および図面と関連づけて例示される以下の好ましい実施形態の説明から明らかとなるだろう。この技術分野における熟練技術者であれば、ここに開示される新規な概念の主旨および範囲を逸脱することなく多くの変形や変更を行うことができることは、明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
病原体および抗生物質耐性の特定のための迅速な検査が必要とされているため、感染の診断と防止および病院操業全般の改善において分子診断の果たす役割が益々重要なものになりつつある。医師、薬剤師、そして病院管理者でさえ、迅速な微生物学的な結果を必要としているので、多くの研究室が、新しい試験が効率よく実施されることのみならずその結果が患者の管理、病院の操業および研究上の有効性に真の変化をもたらすことを保証する機能横断型実行チームの一部となることに注目している。本発明は、ヒトの胃腸管の微生物個体群を監視するプロセスを提供する。腸生態系についての私たちの理解を増進するため、本発明は、それぞれに固有の利点を有するさまざまな分子法で、小サブユニットおよび大サブユニットのrRNAを標的とするリボソームRNAアプローチを採用する。本発明は、さまざまなやり方で実現することができる。
【0019】
本発明の第1の形態によって、ヒトの胃腸管に対して、常在および/または病原性の微生物共同体を提供する。この形態は、ホルマリンに保存された糞便材料からDNAサンプルを用意する方法を含み、この方法は、ユニバーサルPCRプライマーを用いてDNA配列を操作的分類単位(operational taxonomic units: OTUs)に分類することを含む。微生物の操作的分類単位を検出するためのプライマーを下記配列表中に提示する。
【0020】
非特異性分割ゲノムDNAのホルマリンによる結合および本発明で開示されている前記ユニバーサルPCRプライマーを用いたDNA分離法は、500〜1200塩基対の間の目標配列を増幅する設計となっている。さらに、これらのプライマーは、属/種レベルで微生物の分化を可能にする高い配列異質性を有する領域を側面に配置する。
【0021】
この方法は、単一の所定微生物操作的分類単位に由来する配列を有する単一OTU分離核酸に固有の少なくとも一つの核酸配列を識別することを含むものとすることができる。微生物の操作的分類単位PCRプライマーは、本発明において、バクテリア、真菌/酵母菌、原生動物、および寄生虫に対するものが開示されている。
【0022】
本発明の第1の形態にしたがって、バクテリアDNAのPCR増幅用プライマー対が提供されるが、このプライマー対は、(a)バクテリア16S rDNA遺伝子の一つのストランドから選択された配列を有する少なくとも18のヌクレオチドからなる第1のオリゴヌクレオチドと、(b)前記第1のオリゴヌクレオチド配列の下流側にある前記16S rDNA遺伝子の他のストランドから選択された配列を有する少なくとも18のヌクレオチドからなる第2のオリゴヌクレオチドとを含み、前記第1および第2のオリゴヌクレオチドは、その少なくとも一方が、(i)SEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:2のいずれか一つ、または、(ii)SEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:2のいずれか一つと少なくとも92%の同一性を有するDNA配列から選択される。
【0023】
本発明の他の形態にしたがって、バクテリアDNAのPCR増幅用プライマー対が提供されるが、このプライマー対は、(a)バクテリア23S rDNA遺伝子の一つのストランドから選択された配列を有する少なくとも18のヌクレオチドからなる第1のオリゴヌクレオチドと、(b)前記第1のオリゴヌクレオチド配列の下流側にある前記23S rDNA遺伝子の他のストランドから選択された配列を有する少なくとも18のヌクレオチドからなる第2のオリゴヌクレオチドとを含み、前記第1および第2のオリゴヌクレオチドは、その少なくとも一方が、(i)SEQ ID NO:54〜SEQ ID NO:55のいずれか一つ、または、(ii)SEQ ID NO:54〜SEQ ID NO:55のいずれか一つと少なくとも92%の同一性を有するDNA配列から選択される。
【0024】
本発明の他の形態にしたがって、真菌/酵母菌DNAのPCR増幅用プライマー対が提供されるが、このプライマー対は、(a)真菌または酵母菌の18S rDNA遺伝子の一つのストランドから選択された配列を有する少なくとも18のヌクレオチドからなる第1のオリゴヌクレオチドと、(b)前記第1のオリゴヌクレオチド配列の下流側にある前記18S rDNA遺伝子の他のストランドから選択された配列を有する少なくとも12のヌクレオチドからなる第2のオリゴヌクレオチドとを含み、前記第1および第2のオリゴヌクレオチドは、その少なくとも一方が、(i)SEQ ID NO:82〜SEQ ID NO:83のいずれか一つ、または、(ii)SEQ ID NO:82〜SEQ ID NO:83のいずれか一つと少なくとも92%の同一性を有するDNA配列から選択される。
【0025】
本発明の他の形態にしたがって、真菌、原生動物および寄生虫のDNAのPCR増幅用プライマー対が提供されるが、このプライマー対は、(a)原生動物/虫の18S rDNA遺伝子の一つのストランドから選択された配列を有する少なくとも18のヌクレオチドからなる第1のオリゴヌクレオチドと、(b)前記第1のオリゴヌクレオチド配列の下流側にある前記18S rDNA遺伝子の他のストランドから選択された配列を有する少なくとも12のヌクレオチドからなる第2のオリゴヌクレオチドとを含み、前記第1および第2のオリゴヌクレオチドは、その少なくとも一方が、(i)SEQ ID NO:92〜SEQ ID NO:93のいずれか一つ、または、(ii)SEQ ID NO:92〜SEQ ID NO:93のいずれか一つと少なくとも92%の同一性を有するDNA配列から選択される。
【0026】
他の形態にしたがって、本発明は、定量化可能なラベルを用いて本発明に開示されている微生物の操作的分類単位の個々またはすべてを表すユニバーサルPCRプライマーをラベリングすることによって定量および定性データを提供可能な、ヒトの胃腸管の微生物叢を監視する方法を提供することができる。さらに、これらラベリングされた操作的分類単位は、開示されたユニバーサル配列に内部的にローカライズされた複数(SEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:309)の利用可能なオリゴヌクレオチドプローブ(40bp〜100bp)と関連づけて、胃腸管系内の重要な生物学的標識、病原体、または微生物汚染などの関心の対象たる特定の微生物の存在量に関する情報を提供するために、DNAハイブリダイゼーションまたはアレイベースの方法で用いることもできる。
【0027】
本発明のさらに他の形態において、本発明の形態による少なくとも一つのプライマー、または本発明の他の形態による少なくとも一つのプライマー対、または本発明のさらに他の形態による少なくとも一つのプローブを含む、ヒトの胃腸管の微生物叢を監視するためのキットを提供する。
【実施例】
【0028】
微生物の操作的分類単位を検出するために用いられるプライマーは、配列表に提示されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
[ユニバーサルバクテリアPCR]
腸内細菌(entbac)1(SEQ ID NO:1)について計算した融点は60℃であった。約1052のヌクレオチドのフラグメントサイズはプライマー(SEQ ID NO:2)によりPCRで計算した。腸内細菌2(SEQ ID NO:2)配列は、大腸菌(E.Coli)16S rDNA遺伝子の位置440〜457における配列に対応する。PCRは、“Molecular Cloning: a Laboratory Manual”(Sambrook et al.著、第2版、Cold Spring Harbar Laboratory Press社刊、Cold Spring Harbar、New York(1989年);この文献の記載をここに引用により組み込むものとする)に詳述されている方法により、アニーリング温度55℃で行った。アガロースゲルに対するPCRの電気泳動分析の結果を図1に示す。ゲルの各レーンにおいて解析された材料の詳細を図1に示す。図1に示した結果を以下の表1にまとめて示す。
【0030】
[表1]
ヘリコバクターピロリ(対照DNA)を用いたユニバーサルバクテリアプライマーセット(SEQ ID 1およびSEQ ID 2)の感度の評価。
【0031】

アガロースゲルの電気泳動分析のための採点は、変色したゲルにみられるPCR産物の強度を肉眼で定量化することによる。採点の定義は、以下の通りである:−=バンド検出なし、+/−=ごくかすかなバンド検出、+から++++まで=PCR産物の強度増加に従う。
【0032】
[異なる輸送媒体由来のユニバーサルバクテリアDNAの増幅]
バクテリアユニバーサルプライマー対を使用して3つの異なる輸送媒体から抽出したDNAを増幅した結果を図2に示す。PCRは、Sambrook et al.著書(1989年)に詳述された方法によって、アニーリング温度55℃で実施された。アガロースゲルに対するPCRの電気泳動分析の結果を図2に示す。ゲルの各レーンにおいて解析された材料の詳細を図2に示す。図2に示した結果を以下の表2にまとめて示す。
【0033】
[表2]
異なる輸送媒体から抽出された糞便DNAの、ユニバーサルバクテリアプライマーセット(SEQ ID 1およびSEQ ID 2)を使用した増幅。
【0034】

アガロースゲルの電気泳動分析のための採点は、変色したゲルにみられるPCR産物の強度を肉眼で定量化することによる。採点の定義は、以下の通りである:−=バンド検出なし、+/−=ごくかすかなバンド検出、+から++++まで=PCR産物の強度増加に従う。
【0035】
[ユニバーサルバクテリアDNAの特異性の評価]
バクテリアユニバーサルプライマー対を使用してバクテリア(乳酸菌Lactobacillus)、原生動物(クリプトスポリジウム・パルバムcryptosporidium parvum)、および真菌(カンジダ・アルビカンスCandidia albicans)由来のDNAを増幅し、プライマーセットの特異性を評価した。PCRは、Sambrook et al.著書(1989年)に詳述された方法によって、アニーリング温度55℃で実施された。この分析試験の結果を図3に示す。アガロースゲルに対するPCRの電気泳動分析の結果を図3に示す。ゲルの各レーンにおいて解析された材料の詳細を図3に示す。図3に示した結果を以下の表3にまとめて示す。
【0036】
[表3]
バクテリア、真菌、および原生動物DNAの、ユニバーサルバクテリアプライマーセット(SEQ ID 1およびSEQ ID 2)を使用した増幅。
【0037】



アガロースゲルの電気泳動分析のための採点は、変色したゲルにみられるPCR産物の強度を肉眼で定量化することによる。採点の定義は、以下の通りである:−=バンド検出なし、+/−=ごくかすかなバンド検出、+から++++まで=PCR産物の強度増加に従う。
【0038】
[PCR分析試験におけるオリゴヌクレオチドプローブの特異性の評価]
ヘリコバクターピロリ(SEQ ID NO:283)の特異性検出のためのプライマーを診断PCRに使用した。このプライマーは、ハイブリダイゼーション実験用に独自に設計したものである。このプライマーの特異性は、ヒトのGI管に局所化されたバクテリア種の16S rDNA配列の(SEQ ID NO:283)に対するアラインメントである図4に提示した配列アラインメントから評価することができる。プライマー(SEQ ID NO:50)と、実験的に測定されたヘリコバクターピロリの特異性検出のために使用される順方向プライマー(SEQ ID NO:282)によってPCRで約365のヌクレオチドのフラグメントサイズに対して、60℃の融点が計算された。PCRは、Sambrook et al.著書(1989年)に詳述された方法によって、アニーリング温度50℃で実施された。アガロースゲルに対するPCRの電気泳動分析の結果を図4に示す。ゲルの各レーンにおいて解析された材料の詳細を図4に示す。図4に示した結果を以下の表4にまとめて示す。
【0039】
[表4]
オリゴヌクレオチドプローブを使用したヘリコバクターピロリDNAのPCR増幅


アガロースゲルの電気泳動分析のための採点は、変色したゲルにみられるPCR産物の強度を肉眼で定量化することによる。採点の定義は、以下の通りである:−=バンド検出なし、+/−=ごくかすかなバンド検出、+から++++まで=PCR産物の強度増加に従う。
【0040】
[ヒト糞便材料から抽出されたユニバーサルバクテリアDNAの増幅]
バクテリアユニバーサルプライマー対を使用して21のヒトの糞便サンプルから抽出したDNAを増幅した。その結果を図5に示す。PCRは、Sambrook et al.著書(1989年)に詳述された方法によって、アニーリング温度55℃で実施された。図5に示した結果を以下の表5にまとめて示す。
【0041】
[表5]
ユニバーサルバクテリアプライマーセット(SEQ ID 1およびSEQ ID 2)を使用したヒトの糞便材料から抽出したDNAの増幅


アガロースゲルの電気泳動分析のための採点は、変色したゲルにみられるPCR産物の強度を肉眼で定量化することによる。採点の定義は、以下の通りである:−=バンド検出なし、+/−=ごくかすかなバンド検出、+から++++まで=PCR産物の強度増加に従う。
【0042】
ここに開示し、特許請求した組成物、プロセスおよび方法のすべては、本開示を考慮に入れるならば、無理な実験をすることなく、製造および実効が可能である。この発明の組成物、プロセスおよび方法は、好適な実施形態により説明したが、本発明の思想、主旨および範囲を逸脱することなくここに記載されている組成物、プロセスおよび方法に、そしてその方法ステップないしステップのシーケンスにおいて変形を施すことができることは、当業者であれば明らかであろう。より具体的には、化学的、物理的に双方とも関連する、DNA配列、プライマーまたはプローブなどの特定の組成物を、ここに記載した組成物の代わりに用いてもなお、同様の結果が達成されることは、明らかであろう。このような当業者にとって自明の類似する代替・変形例はすべて本発明の主旨、範囲および思想の内にあると考えられる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの胃腸管の微生物叢を監視する方法であって、
微生物の操作的分類単位を分類するためにユニバーサルPCRプライマーを識別するステップと、
500bp〜1500bpの大きさのPCR産物を生成するために当該ユニバーサルPCRプライマーを胃腸管のサンプルに適用するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記ユニバーサルPCRプライマーは、バクテリアの操作的分類単位に特異性があって、SEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO.54〜SEQ ID NO.55のいずれか一つの配列を含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
前記ユニバーサルPCRプライマーは、真菌類および酵母菌の操作的分類単位に特異性があって、SEQ ID NO:82〜SEQ ID NO:83およびSEQ ID NO:92〜SEQ ID NO:93のいずれか一つの配列を含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項4】
前記ユニバーサルPCRプライマーは、寄生原生動物および寄生虫の操作的分類単位に特異性があって、SEQ ID NO:92〜SEQ ID NO:93のいずれか一つの配列を含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項5】
DNAハイブリダイゼーション、DNAアレイ、DNAシーケンシング、PCRアレイ、およびマルチプレックスPCRを含む分子ベースの方法を用いて、特定の微生物の操作的分類単位のDNA配列を解析することによって、特定の微生物DNA配列についての定性的または定量的なデータを取得し報告することを特徴とする請求項2、3または4の方法。
【請求項6】
オリゴヌクレオチドプローブが含む配列は、特定の操作的分類単位の内部配列に局所化された微生物の差異に対するSEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:309のいずれか一つの配列を含むことを特徴とする請求項5の方法。
【請求項7】
常在性および/または生態系に対する病原性を有する微生物を監視するプロセスであって、a)i)糞便材料中の微生物増殖体を同時に採取および不活性化する方法と、ii)高精度の核酸分析に修正可能な糞便材料からDNAを抽出する方法と、iii)目標微生物核酸を濃縮する方法とを用意し、b)属または種レベルで微生物に特異性がある核酸配列を具体的に識別および定量化する方法を用意することを含むプロセス。
【請求項8】
目的とする生態系が、ヒトの胃腸管を含むことを特徴とする請求項7のプロセス。
【請求項9】
糞便材料は、0.1%〜50%のホルマリンを含有する培地に採取されることを特徴とする請求項8のプロセス。
【請求項10】
目標核酸がDNAであることを特徴とする請求項9のプロセス。
【請求項11】
サンプル中の微生物種を検出する方法であって、
(a)ゲノムDNAを放出するために前記サンプルに細胞を溶解させるステップと、
(b)特定の操作的分類単位の内部配列に局所化された微生物の差異に対するSEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:309のいずれか一つの配列を含むプライマー対に、前記ステップから得られたゲノムDNAを接触させるステップと、
(c)増幅産物を生成するために微生物DNAを増幅するステップと、
(d)前記増幅産物を検出するステップと
を含み、前記産物が存在すれば前記サンプル中に微生物種が存在することを示し、前記産物が存在しなければ前記サンプル中に微生物種が存在しないことを示す
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記サンプル中の微生物種のレベルを量ることをさらに含む請求項11の方法であって、該方法は、
少なくとも一つの対照標準と比較することにより前記増幅産物のレベルを量るステップを含み、
前記増幅産物のレベルは、前記微生物種のレベルを示す
ことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2011−527177(P2011−527177A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502983(P2011−502983)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/002064
【国際公開番号】WO2009/123736
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510261083)
【Fターム(参考)】