説明

胃腸疾患および胃腸障害の処置のための長期持続性グルカゴン様ペプチド2(GLP−2)

【課題】本発明は、グルカゴン様ペプチド2(GLP−2)誘導体を提供することを、本発明の課題とする。
【解決手段】本発明は、胃腸障害または胃腸疾患(例えば、炎症性腸疾患、および食道から肛門までの胃腸管の任意のセグメントの他の胃腸機能)の処置または予防のための、延長したインビボ半減期を有するGLP−2ペプチド融合体を提供する。本発明はまた、胃腸組織増殖促進因子誘導体であって、以下:胃腸組織増殖促進活性を有するGLP−2ペプチドまたはそのアナログもしくはフラグメント;および該ペプチドに結合される反応性要素、を含み、該誘導体は、インビボで、血液成分上の官能基と共有結合し得る、胃腸組織増殖促進因子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、グルカゴン様ペプチド2(GLP−2)誘導体に関する。特に、本発明は、食道から肛門までの、胃腸管の任意の分節由来の、胃腸障害および胃腸疾患(例えば、炎症性の腸疾患および他の胃腸機能)の処置または予防のために、延長されたインビボ半減期を有するGLP−2ペプチド誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
GLP−2は、多面的なプログルカゴン遺伝子から組織特異的様式で発現される33アミノ酸ペプチドであり、したがってペプチドホルモンのグルカゴンスーパーファミリーの一部である。プログルカゴンの代替可能な翻訳後のプロセシングは、膵臓、腸および脳で生じる。プログルカゴンにおける酵素的な切断は、栄養代謝に関与する多数の多機能性ペプチドホルモンを産生する。プログルカゴン由来の主要な生物活性ホルモンは、膵臓のα細胞、および腸のL細胞におけるGLP−1およびGLP−2ならびに脳にある。それは、初めにDruckerらにより強力な腸向性性質を有することが発見された(非特許文献1を参照のこと)。天然の腸由来ペプチドのような、GLP−2は、小腸および大腸の粘膜上皮に対して有意な回復活性を有することが実証されている。それはまた、腸が栄養分を消化および吸収する能力を増加することが実証されており、これは腸不全の処置における強力な治療的役割を示唆する。実際に、いくつかの研究により、GLP−2の投与が、結腸炎、腸炎、総非経口および広範囲の切除のげっ歯類モデルにおける腸の損傷を減少または予防することが現在確認されている。極めて最近では、GLP−2の第2相臨床試験はまた、短期の腸の症状を有する患者が、明らかに所望でない副作用が無く、GLP−2投与の30日後に腸内の栄養を吸収する増強された能力を示すことが実証されていることが報告されている。
【0003】
GLP−2の排除に対する主要な代謝性経路は、酵素的分解を介する。GLP−2は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP−IV)によりその2つのN末端アミノ酸の除去を介して急速に分解されることが示されており、これはGLP−2がペプチドの完全な不活性化を導くことに起因して、主要な制限を表す。結果として、GLP−2の半減期は、従って、きわめて短く、そして現在のGLP−2処置は、注入または頻繁な注射を必要とする。腎クリアランスはまた、GLP−2のクリアランスに関与されることが示されている。GLP−2の主要な作用は、細胞増殖の刺激を含み、そしてGLP−2レセプターの活性化を細胞増殖と、直接的または間接的に共役する機構は、試験されていない。
【0004】
ネイティブGLP−2のペプチドアナログが、GLP−2レセプターアゴニストとして小腸において増強した栄養活性を有することが示されている(例えば、米国特許第5,990,077号を参照のこと)。
【0005】
非常に有用であるが、上記で記載するように、GLP−2ペプチドおよびアナログの決定的な不利益は、それらの非常に短いインビボ半減期であり、これは代表的にわずか2分である。
【0006】
炎症腸疾患(IBD)は、小腸および大腸における炎症および潰瘍化を引き起こす慢性障害の群である。それは、命までもを脅かし得、そして現在公知の治療は存在しない。IBDは、一般に、緩解および発赤の慢性周期を生じる、結腸に制限される潰瘍性大腸炎(UC)および胃腸管全体を含み得るクローン病(CD)をいう。多数の薬学的産物は、IBDの処置(例えば、炎症を抑制すること、再発を予防すること、症状(例えば、疼痛または下痢)を制御すること、または、広範な疾患または外科術に起因してあまり吸収されない必須栄養物を交換または補充すること)は公知である。現在の治療選択肢は、広範な種々の薬学的産物様アミノ酸サリチル酸薬剤、コルチコステロイド薬剤、免疫モジュレーター薬剤および抗TNFα薬剤を含み、そして失った体液および栄養を交換することに加えて、炎症を減少および症状を軽減するように設計されている。しかしながら、これらの産物のほとんどは、一般的に体に対するそれらの所望でない副作用に起因して、IBDにおける制限された使用を有する。
【0007】
アメリカ合衆国およびヨーロッパにおいて、約100万人の患者が、毎年IBDについて処置され、その大半は、一般に、クローン病または潰瘍性大腸炎のいずれかに罹患している。実際に、腸の大部分の除去に関する根治手術を受けることは、IBDに罹患する患者にとって珍しくない。IBDの直接の年間保険医療費は、約7億USドルであり、そして、直接的および間接的の両方の全経済的影響は、世界的に、1年間で約20億ドルと約30億ドルの間の費用を見積もる。現存の処置は、しばしば軽減を提供するが、いくつかの欠点を有する。
【0008】
米国特許第5,789,379号は、長期持続性化合物(ALX−600TM)として開発されたものの中のGLP−2を教示し、そして、現在は、臨床試験中である。しかし、たとえGLP−2のDPP−IV分解がいくらか予防されそうであっても、その半減期は、腎クリアランスによって制限されたままであり、そして、上記のように、2分を超えない。
【0009】
キメラ抗体(RemicadeTM)は、クローン病の短期間の処置のために、ヒト腫瘍壊死因子α(TNF−α)に特異的に結合するように開発された。この抗体は、コルチコステロイド、他の免疫抑制剤および/または抗生物質を用いた従来の治療に対して不十分な応答を有する患者における重篤なクローン病に対する中程度の症状の減少を示す。にもかかわらず、これら処置を用いると、深刻な副作用が観察される。例えば、それは、過敏性反応、敗血症を含む重篤な感染、ならびに胎児感染に関連している。その投与は、さらに、TNF−ブロッキングを介して、患者に感染させやすくし得る。
【0010】
近年のIBD有病率の増加に伴い、ゆえに、GLP−2と実質的に同一の活性、低毒性および治療的利点を維持し得るが、より長いインビボ半減期を有し、従って、種々の疾患(例えば、炎症性腸疾患、2つの主要な炎症性腸疾患を示すクローン病および潰瘍性大腸炎)の処置において、それらの連続投与をする必要性を回避する、GLP−2ペプチド誘導体またはアナログを開発することが非常に所望される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Proc.Natl.Acad.Sci.,1996,93(115),7911−7916
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明に従って、ここで、対応する非改変のGLP−2胃腸組織増殖促進因子と比較した場合、延長されたインビボ半減期を有する、GLP−2胃腸組織増殖促進因子誘導体を提供する。さらに具体的には、このGLP−2誘導体は、そこに結合され、そして、インビボまたはエキソビボのいずれかで、安定な共有結合を形成するために血液成分上の利用可能な官能基と反応し得る反応性要素を含む。GLP−2誘導体と血液成分との間に形成される共有結合は、ジペプチジルペプチダーゼIVのような酵素によりGLP−2の所望でない切断を防止し、それによりインビボ半減期および活性を延長する。この反応性要素は、GLP−2ペプチドのN末端、GLP−2ペプチドのC末端、またはペプチド鎖に沿
う任意の他の利用可能な部位に結合され得る。
【0013】
好ましい血液成分は、免疫グロブリン(IgGおよびIgMを含む)、血清アルブミン、フェリチン、ステロイド結合タンパク質、トランスフェリン、チロキシン結合タンパク質、α−2−マクログロブリン、ハプトグロビンなどのようなタンパク質を含み、血清アルブミンおよびIgGがより好ましく、そして、血清アルブミンが最も好ましい。
【0014】
好ましい反応性要素は、インビボまたはインビトロ(またはエキソビボ)のいずれかで、血液成分上に存在するアミノ基、ヒドロキシ基、またチオール基と反応することによって、血液成分と共有結合を形成し得る。最も好ましい実施形態において、タンパク質上の官能基はチオール基であり、そして、反応性要素は、Michaelアクセプター(例えば、アクロレイン誘導体、ハロアセテート、ハロアセトアミド、α,β−不飽和ケトン、α,β−不飽和エステル、α,β−不飽和アミド、α,β−不飽和チオエステルなど)、マレイミドまたはマレイミド含有基(例えば、γ−マレイミドブチリルアミド(GMBA)、またはマレイミドプロピオン酸(MPA))であり、最も好ましくはMPAである。
【0015】
本発明の別の局面において、薬学的に受容可能なキャリアと組合せた本発明のGLP−2胃腸増殖促進因子誘導体を含む薬学的組成物が提供される。このような組成物は、腸障害または腸疾患(例えば、炎症性腸疾患および他の胃腸機能)の処置または予防に有用である。この組成物はまた、胃腸組織増殖促進因子ペプチド誘導体の内因的な生成を、細胞に誘導させるための遺伝子治療に使用され得、これは、次いで、所望の生物学的効果を生成するために、被験体中に移植され得る。最後に、この組成物はまた、大腸組織増殖の増大のための薬学的組成物または獣医学的組成物を製造するために、使用され得る。
【0016】
本発明のさらなる実施形態において、腸障害または腸疾患(例えば、炎症性腸疾患および胃腸機能)の予防または処置のための方法を提供する。この方法は、被験体(好ましくは哺乳動物、動物またはヒト)に、有効量の本発明のGLP−2胃腸組織増殖促進因子誘導体またはその結合体を、単独でまたは薬学的に受容可能なキャリアと組合せて投与する工程を包含する。
【0017】
本発明のさらなる局面において、血液成分に共有結合された本発明のGLP−2胃腸組織増殖促進因子誘導体を含む結合体を、提供する。
【0018】
本発明のさらなる局面において、被験体におけるGLP−2胃腸組織増殖促進因子のインビボ半減期を延長する方法を提供し、本方法は、本GLP−2胃腸組織増殖促進因子誘導体を血液成分に共有結合させる方法を包含する。この共有結合は、インビボまたはインビトロで起こり得る。
【0019】
好ましい胃腸組織増殖促進因子化合物は、GLP−2およびGLP−2アナログ、GLP−2フラグメントが胃腸組織増殖促進因子活性を有するのであれば、このようなアナログまたはフラグメントのようなペプチドである。これらのペプチド、アナログおよびフラグメントの詳細な配列は、以下に示される。
【0020】
本発明の化合物誘導体のさらなる使用は、本発明の化合物誘導体と組合せて使用される場合(特に、この化合物がGLP−2、GLP−2アナログまたはGLP−2フラグメントである場合)、ホルモンの腸刺激(intestinotrophic)活性を決定し得る。このような方法は、以下の工程を包含する:(a)腸刺激量のGLP−2誘導体とホルモンを、試験被験体に同時投与する工程;(2)試験被験体における小腸組織および大腸組織の引き続く増殖を評価する工程;(3)試験被験体中の小腸組織および/または大腸組織の増殖が、非改変のGLP−2、GLP−2アナログまたはGLP−2誘導体で処置したコントロール被験体と比較して増大されているかどうかを決定する工程。
【0021】
連結する基が存在する場合、好ましくは、以下のように定義されるが、これらに限定されない:直鎖C1〜10アルキルもしくは分枝C1〜10アルキル部分的にペルフルオロ化された、直鎖C1〜10アルキルもしくは分枝C1〜10アルキル;1つ以上の炭素原子がO、NもしくはSで置換されて、エーテルもしくはチオエーテルを形成する、C1〜10アルキルもしくはフルオロアルキル;置換基が同一であるかもしくは異なり、そして、CH、O、S、NH、NR(ここで、RはH、C1〜10アルキルもしくはC1〜10アシルである)である、o−置換、m−置換またはp−置換されたフェニル;または、−置換された複素環(例えば、フラン、チオフェン、ピラン、オキサゾールもしくはチアゾール)
従って、本発明においては、以下が提供される:
(項目1) 胃腸組織増殖促進因子誘導体であって、以下:
胃腸組織増殖促進活性を有するGLP−2ペプチドまたはそのアナログもしくはフラグメント;および
該ペプチドに結合される反応性要素、
を含み、該誘導体は、インビボで、血液成分上の官能基と共有結合し得る、胃腸組織増殖促進因子。
(項目2) 項目1に記載の誘導体であって、ここで、前記GLP−2が、以下の配列:
【化1】


であり、ここで、
は、HisまたはTyrであり;
は、Ala、Gly、D−Ala、Pro、Ile、Nor−Val、α−アミノ酪酸、またはDPP−IV酵素に耐性の該アナログ上に付与されるAla−交換アミノ酸であり;
は、Asp、Glu、ProもしくはHProであるか;またはX−XがXy
(CH(OH)CH)X;Xy(CHNH)XもしくはXy(CHCH)Xであり、ここで、XおよびXは、上記のとおりであり;
は、GlyまたはAlaであり;
は、SerまたはAlaであり;
は、Glu−X10−Asn−Thr−Ile、Gly−X10−Asn−Thr−ValまたはTyr−Ser−Lys−Tyrであり;
10は、Met、Leu、Ileまたは酸化的に安定なMet置換アミノ酸であり;
14は、LeuまたはLysであり;
16は、Asn、LysまたはAlaであり;
17は、LeuまたはLysであり;
19は、AlaまたはThrであり;
20は、Arg、Lys、HisまたはAlaであり;
21は、AspまたはLysであり;
27は、IleまたはLeuであり;
28は、GlnまたはHisであり;
は、Ile−Asn、Ile−AlaまたはVal−Glnであり;
は、共有結合であるか、あるいはIle、Ile−Thr、Ile−Thr−AspまたはIle−Thr−Asnであり;
は、NHまたはN末端ブロッキング基であり;
は、COOH、CONHまたはC末端ブロッキング基であり;
は、1つまたは2つのArg、Lys、およびHisであり;
は、1つまたは2つのArg、Lys、およびHisであり;そして
mおよびnは、独立して、0または1である、誘導体。
(項目3) 項目2に記載の誘導体であって、XはHisであり;Xは、AlaまたはGlyで
あり、XはAspであり;XはGlyであり;XはSerであり;PはGlu−X10−Asn−Thr−Ileであり;X10はMetであり;X16は、AsnまたはLysであり;X19はAlaであり;X20はArgであり;X27はIleであり;X28はGlnであり;PはIle−Asnであり;PはIle−Thr−Aspであり、そしてRはCONHである、誘導体。
(項目4) 項目1に記載の誘導体であって、前記反応性要素が、マレイミドまたはマレイミド含有
基である、誘導体。
(項目5) 項目3に記載の誘導体であって、前記GLP−2が、以下:
【化2】




からなる群より選択される、誘導体。
(項目6) 項目1に記載の誘導体であって、以下:
【化3】






からなる群より選択される、誘導体。
(項目7) 項目1に記載の誘導体であって、前記血液成分が、血液タンパク質を含む、誘導体。
(項目8) 項目1に記載の誘導体を、薬学的に受容可能なキャリアとともに含む、薬学的組成物。
(項目9) 項目8に記載の組成物であって、胃腸障害または胃腸疾患の予防の処置のための、組成
物。
(項目10) 被験体における胃腸障害または胃腸疾患の予防の処置のための方法であって、該方法は、
該被験体に、有効量の項目1に記載の誘導体を単独で、または有効量の項目1に記載
の誘導体を薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて投与する工程を包含する、方法。
(項目11) 被験体における胃腸組織増殖の促進のための方法であって、該方法は、該被験体に、有効
量の項目1に記載の誘導体を単独で、または有効量の項目1に記載の誘導体を薬学的
に受容可能なキャリアと組み合わせて投与する工程を包含する、方法。
(項目12) 血液成分に共有結合された、項目1に記載の誘導体を含む、結合体。
(項目13) 項目12に記載の結合体であって、前記反応性要素が、マレイミドまたはマレイミド含
有基であり、前記血液成分が、血液タンパク質である、誘導体。
(項目14) 項目13に記載の結合体であって、前記血液タンパク質が、血清アルブミンである、結
合体。
(項目15) 項目12に記載の結合体であって、前記誘導体が、項目6に規定される誘導体である
、結合体。
(項目16) 胃腸組織増殖促進活性を有するGLP−2ペプチドのインビボ半減期を延長する方法であ
って、該方法は、該ペプチドを血液成分に共有結合させる工程を包含する、方法。
(項目17) 項目16に記載の方法であって、前記ペプチドが、GLP−2、または胃腸組織増殖促
進活性を有する、GLP−2のアナログもしくはフラグメントを含む、方法。
(項目18) 項目16に記載の方法であって、前記GLP−2ペプチドが、項目5に規定される誘
導体である、方法。
(項目19) 被験体における胃腸障害または胃腸疾患の予防の処置のための方法であって、該方法は、
該被験体に、有効量の項目12に記載の結合体を単独で、または有効量の項目12に
記載の結合体を薬学的キャリアと組み合わせて投与する工程を包含する、方法。

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、生理食塩水、または5μgの実施例1〜8の化合物で、毎日2回、10日間処置したマウスの小腸湿重量における変化を示す(n=10/集団)。結果は、平均Δ重量対コントロール±SEMとして表す。
【図2】図2は、生理食塩水、または5、25、50μgの実施例5、7および8の化合物で、1日2回、10日間処置したマウスの小腸および大腸の湿重量における変化を示す。(n=10/集団)。結果は、平均重量±SEMとして表す。
【図3】図3は、500nmol/kgの単回静脈内用量または単回皮下用量後の、Sprague−Dawleyラットにおける、実施例5および実施例8の化合物についての平均血漿濃度を示す(n=4/集団)。
【図4】図4は、ポリクローナル抗体抗GLP−2抗体を使用して、ラット血漿タンパク質に結合体化した実施例8の化合物の検出、および抗ラットアルブミンを用いて得たパターンとの比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
インビボでの生体結合体化(bioconjugation)は、体内における、GLP−2誘導体に標的血液成分の生物物理学的パラメーターを与えることを介して、生物学的活性の延長された持続期間を提供しながら、元の改変されていないGLP−2胃腸組織増殖促進因子ペプチドの生物学的活性の実質的な保持、または、ある場合には増加を可能にする様式で、分子(例えば、本発明の胃腸組織増殖促進因子化合物誘導体)を標的血液成分(好ましくはタンパク質)に共有結合させるプロセスである。
【0024】
本発明の目的のために、用語「アナログ」または「フラグメント」は、ネイティブな配列(例えば、GLP−2配列)に由来する異なるアミノ酸配列を有するが、類似する活性または匹敵する活性を有するペプチドを含むアミノ酸配列を含むことを意味する。このようなアナログは、好ましくは少なくとも60%、そしてより好ましくは少なくとも80%、そして最も好ましくは少なくとも95%の、同数のアミノ酸残基を有するGLP−2またはGLP−2のフラグメントのいずれかと同じアミノ酸配列を有する。
【0025】
より好ましい実施形態において、本発明の胃腸組織増殖促進因子ペプチド誘導体は、直接的または結合基を介してのいずれかで反応性要素に結合することによって改変されているGLP−2胃腸組織増殖促進因子ペプチドを含み、反応性要素は、血液成分(好ましくは血液タンパク質)と共有結合を形成し得る。反応性要素は、水性の環境において安定でなければならず、そしてそれらの好ましい実施形態は、カルボキシ基、ホスホリル基、イミデート基、またはエステルまたは混合した無水物のいずれかとしてのアシル基を含む。共有結合は、一般的に反応性要素と血液成分のアミノ基、ヒドロキシ基、チオール基との間で形成される。アミノ基は、好ましくはカルボキシ基、ホスホリル基またはアシル基のような反応性要素と共有結合を形成し;ヒドロキシ基は、好ましくは活性化エステルのような反応性要素と共有結合を形成し;そしてチオール基は、好ましくは、エステルまたは混合した無水物のような反応性要素と共有結合を形成する。好ましい血液成分としては、血清アルブミン、免疫グロブリンまたはそれらの組み合わせのような移動性の血液成分が挙げられ、そして好ましい反応性要素としては、マレイミド基のような無水物が挙げられる。最も好ましい実施形態において、血液成分は、血清アルブミンである。
【0026】
血液成分は、好ましくは移動性であり、これは、この血液成分が任意の長期間(一般的に5分、より通常には1分を超えない)ある位置に固定していないことを意味する。これらの血液成分は、膜結合性ではなく、そして少なくとも0.1μg/mlの最小濃度で長期間血液中に存在する。好ましい移動性血液成分としては、血清アルブミン、トランスフェリン、フェリチンならびにIgMおよびIgGのような免疫グロブリンが挙げられる。移動性血液成分の半減期は、少なくとも約12時間である。
【0027】
本発明の胃腸組織増殖促進因子誘導体は、GLP−2ペプチドであるので、保護基は、GLP−2誘導体の合成プロセスの間必要であり得る。これらの保護基は、ペプチド合成の分野では従来的であり、そして他の官能基との反応からペプチド誘導体を保護し得る化学的部分として一般的に記載され得る。様々な保護基は、市販され、そしてその例は、本明細書中に参考として援用される米国特許第5,493,007号に見出され得る。適切な保護基の代表的な例としては、アセチル、フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)などが挙げられる。表1は、アミノ酸の3文字および1文字の両方の略語を提供する。
【0028】
【表1】


本発明のGLP−2誘導体は、血液成分との結合体化後、ペプチダーゼ安定化ペプチドを形成する。1つ以上のさらなるアミノ酸が、反応性実体のペプチドへの結合を促進するために反応性実体の添加前にペプチドに付加または置換され得ることもまた意図される。このような付加または置換は、N末端、C末端またはこれらの間においてなされ得る。このように得られたペプチド誘導体は、被験体(動物またはヒト)に投与され得、その結果、血液成分との結合体化がインビボで生じるか、またはこの誘導体は、被験体(動物またはヒト)の血液成分にインビトロで最初に結合体化し得、そして以下に規定されるような得られた結合体もしくはペプチターゼ安定化ペプチドが、被験体に投与される。
【0029】
GLP−2配列に存在するか、GLP−2配列で置換されたかまたはGLP−2配列に付加された任意のアミノ酸は、D−アミノ酸またはL−アミノ酸あるいはそれらの組み合わせであり得る。L−アミノ酸が一般的に好ましい。ネイティブなGLP−2配列の2位でのグリシン置換は、DPP−IV酵素に対するより優れた耐性を類似体に与えるので、好ましい実施形態を代表する。グリシンはまた、同一の目的のためにD−アラニンまたはプロリンに差し替えられ得る。さらに、ネイティブなGLP−2配列の3位でのN−α−メチルアスパラギン酸置換ならびにメチルアミノ、ヒドロキシエチル、ヒドラジノ、エチレンまたはスルホンアミドのような他のペプチド模倣物は、アミド結合の等配電子置換と同一の結果を達成し得る。
【0030】
本発明はまた、GLP−2フラグメントを含み、このフラグメントは、天然に存在するGLP−2ペプチドの配列に対して実質的に相同な配列を含むが、GLP−2のネイティブなペプチド上に天然に見出されるアミノ末端および/またはカルボキシ末端で、1つ以上のさらなるアミノ酸を欠如し得る。従って、本発明は、天然に存在するGLP−2配列に通常存在する1つ以上のアミノ酸を欠如し得るGLP−2のポリペプチドフラグメントであって、このようなポリペプチドは、好ましくはGLP−2の胃腸組織増殖促進活性と少なくとも実質的に等しい胃腸組織増殖促進活性を有する、GLP−2のポリペプチドフラグメントに関する。
【0031】
本発明はまた、重要でないアミノ酸置換を有する(従って天然の配列とは異なるアミノ酸配列を有する)上記のアナログまたはフラグメントの明白なまたは平凡な改変体であって、GLP−2の胃腸組織増殖促進活性に実質的に類似する胃腸組織増殖促進活性を有する、改変体を包含する。明白なまたは平凡な置換の例としては、別の残基に対する1つの塩基性残基の置換(すなわちLysに対してArg)、別の残基に対する1つの疎水性残基の置換(すなわちIleに対してLeu)、別の残基に対する1つの芳香族残基の置換(すなわちTyrに対してPhe)などが挙げられる。さらに、他の平凡な改変体は、元の配列の実質的な構造的アナログを生じる保存的置換が得られる、アナログを含む。このような保存的置換の例としては、限定されないが、アスパラギン酸に対してグルタミン酸および逆もまた同様;アスパラギンに対してグルタミンおよび逆もまた同様;またはスレオニンに対してセリンおよび逆もまた同様;アルギニンに対してリジンおよび逆もまた同様;あるいはお互いに対してイソロイシン、バリンまたはロイシンのいずれか、が挙げられる。
【0032】
ペプチダーゼ安定化GLP−2誘導体は、インビボで、ペプチダーゼ存在下で、対応する非安定化GLP−2アナログよりもより安定である。ペプチダーゼ安定性は、血清または血液中のネイティブなGLP−2アナログの半減期と、血清または血液中の反応性実体を含む対応する誘導体の半減期との比較によって決定される。半減期は、誘導体ペプチドまたは非改変ペプチドの投与後、血清または血液をサンプリングし、そしてそれぞれの化合物の活性を決定することによって決定される。
【0033】
より詳細には、本発明は、GLP−2ならびにそのアナログおよびフラグメントの顕著な治療的特性を実質的に維持または改善しながら、血液成分との選択的な結合体化を介する、そのバイオアベイラビリティ、延長されたインビボ半減期および分布を改善するための、GLP−2ならびにそのアナログおよびフラグメントの改変に関する。
【0034】
ヒトGLP−2は、以下の配列を有することが知られている:
【0035】
【化4】


本発明は、特に以下のための、延長されたインビボ半減期を有するGLP−2誘導体の治療的使用および関連の使用に関する:
−小腸組織および/または大腸組織の成長の促進;
−GLP−2誘導体の血中レベルの増大;
−胃腸機能の回復または維持;
−損傷したまたは潰瘍形成した/炎症した腸粘膜の治癒および再成長の促進;
−腸疾患の危険性の軽減;
−栄養状態の増強;
−栄養または胃腸の障害または疾患の処置または予防;
−体重減少の軽減;
−インターロイキン−1の発現の軽減;
−結腸の長さ、結腸の粘膜面積および完全性、ならびに陰窩の深さの増大;
−セリアック病、感染後絨毛萎縮および短胃症候群(short gut syndrome)のような疾患に罹患した被験体における絨毛成長の促進;
−健康な被験体における小腸および大腸の増殖促進、例えば、ウシにおいて栄養吸収の増加を可能にして、早期の離乳または牛乳および肉の産生を増加させるため;など。
【0036】
本発明のGLP−2誘導体によって誘発される成長における効果は、模倣物で処置されたコントロールとの比較による小腸の重量の増加として明らかにされる。特に、本GLP−2誘導体は、本明細書中に例示されたマウスモデルにおいて評価されるとき、このアナログがビヒクルのみを受容するコントロール動物と比較して、少なくとも10%の小腸重量の増加を媒介する場合に、「腸栄養性(intestinotrophic)」活性を有すると考えられる。特に治療上の使用のために適切なこれらの誘導体は、小腸重量の少なくとも20%の増加を媒介する、誘導体であるが、より好ましくは、50%以上の小腸重量における増加を媒介する誘導体である。腸栄養性活性は、空腸(遠位空腸および特に近位空腸を含む)との関連において、最も有意に注目され、そしてまた、回腸についても注目される。
【0037】
腸栄養性活性の提示に加えて、本発明のGLP−2誘導体は、GLP−2ペプチド「骨格」内の1つ以上の部位において、アミノ酸置換を組み込み、この「骨格」は、本質的に哺乳動物GLP−2種であるか、または哺乳動物GLP−2種の改変体であり、ここでそのC末端および/もしくはN末端は、インビボでの所望でない生化学的攻撃および分解からペプチド末端を保護するために、1つ以上の塩基性残基の付加によって改変されているか、またはペプチド化学の分野において通常使用される型のブロック基を取り込むように改変されている。従って、本発明のペプチド誘導体は、以下に挙げられる(限定されないが)任意の哺乳動物GLP−2種に関して、アミノ酸置換を取り込む:ヒトGLP−2、ウシGLP−2、ラットGLP−2、イヌGLP−2、雄ウシ(ox)GLP−2、ブタGLP−2、モルモットGLP−2およびハムスターGLP−2であって、これらの配列は、多くの著者によって報告されており、Buhlら、J.Biol.Chem.、1988、263(18):8621が挙げられる。より好ましい実施形態において、リジン残基は、GLP−2ペプチド配列のC末端に付加される。
【0038】
本発明の1つの局面において、本発明に基づく誘導体化のために適切なGLP−2の腸栄養性アナログは、以下の配列を有し:
【0039】
【化5】


ここで、
は、HisまたはTyrであり;
は、DPP−IV酵素に対する抵抗性を前記のアナログに与えるAla、Gly、D−Ala、Pro、Ile、Nor−Val、α−アミノ酪酸、またはAla置換アミノ酸である;
は、Asp、Glu、Pro HProであるか;またはX−Xは、X2ψ(CH(OH)CH)X;X2ψ(CHNH)XまたはX2ψ(CHCH)Xであって、ここで、XおよびXは、上記に規定されるとおりであり;
は、GlyまたはAlaであり;
は、SerまたはAlaであり;
は、Glu−X10−Asn−Thr−Ile、Gly−X10−Asn−Thr−ValまたはTyr−Ser−Lys−Tyrであり;
10は、Met、Leu、Ileまたは酸化的に安定なMet置換アミノ酸であり;
14は、LeuまたはLysであり;
16は、Asn、LysまたはAlaであり;
17は、LeuまたはLysであり;
19は、AlaまたはThrであり;
20は、Arg、Lys、HisまたはAlaであり;
21は、AspまたはLysであり;
27は、IleまたはLeuであり;
28は、GlnまたはHisであり;
は、Ile−Asn、Ile−AlaまたはVal−Glnであり;
は、共有結合であるか、またはIle、Ile−Thr、Ile−Thr−AspもしくはIle−Thr−Asnであり;
は、NHまたはN末端ブロック基であり;
は、COOH、CONHまたはC末端ブロック基であり;
は、1つまたは2つのArg、LysおよびHisであり;
は、1つまたは2つのArg、LysおよびHisであり;そして
mおよびnは、独立して0または1である。
【0040】
好ましい実施形態において、Xは、Hisであり;Xは、AlaまたはGlyであり;Xは、Aspであり;Xは、Glyであり;Xは、Serであり;Pは、Glu−X10−Asn−Thr−Ileであり;X10は、Metであり;X16は、AsnまたはLysであり;X19は、Alaであり;X20は、Argであり;X27は、Ileであり;X28は、Glnであり;Pは、Ile−Asnであり;Pは、Ile−Thr−Aspであり、Rは、CONHでありそしてmは、0である。さらに好ましい実施形態において、nは1であり、そしてYはLysである。
【0041】
好ましい実施形態において、タンパク質上の官能基は、チオール基であり、そして反応性実体は、マレイミドまたはマレイミド含有基(例えば、γ−マレイミド−ブチリルアミド(GMBA)、マレイミドプロピオン酸(MPA)、(2−アミノ)エトキシ酢酸(AEA)−MPA、エチレンジアミン(EDA)−MPAまたは[2−(2−アミノ)エトキシ)]エトキシ酢酸(AEEA)−MPAおよびこれらの組み合わせ)である。組み合わせの例としては、限定されないが、(AEEA−EDA)−MPA;(AEEA−AEEA)−MPA、(AEA−AEEA)−MPAなどが挙げられる。
【0042】
マレイミド基は、反応混合物のpHが6.5と7.4との間に維持される場合、ペプチドのスルフヒドリル基に対して最も選択的である。pH7.0で、スルフヒドリルとのマレイミド基の反応速度は、アミンとの反応速度よりも1000倍速い。マレイミド基とスルフヒドリルとの間の、生理学的条件下で切断され得ない安定なチオエーテル結合が形成される。
【0043】
本発明の胃腸組織増殖促進因子誘導体は、血液成分の特異的標識化を提供する。このような特異的標識化(特に、マレイミドを用いる)は、いくつかの利点を提供する。遊離チオール基は、インビボでアミノ基より少なく、そして結果として、マレイミド誘導体は、より少数のタンパク質に共有結合する。例えば、血清アルブミンにおいて、1分子あたり1つのみの遊離チオール基が存在する。従って、GLP−2−マレイミド−アルブミン結合体は、約1:1のモル比の、アルブミンに対するペプチドを含む傾向がある。アルブミンに加えて、IgG分子(クラスII)はまた、遊離チオールを有する。IgG分子および血清アルブミンは、血液中で大多数の可溶性タンパク質を構成するので(すなわち99%)、それらはまた、マレイミド置換GLP−2に共有結合するために利用可能な大多数の遊離のチオール基を構成する。
【0044】
さらに、遊離チオール含有血液タンパク質の間でさえ、マレイミドでの特異的標識化は、アルブミン自体の独特の特性に起因して、ペプチドマレイミド−アルブミン結合体の優先的な形成を導く。アルブミンの単一の遊離チオール基(種の間で高度に保存される)は、アミノ酸残基Cys34に位置する。アルブミンのCys34は、他の遊離チオール含有タンパク質上の遊離チオールと比較して増加した反応性を有することが最近証明されている。これは、アルブミンのCys34についての5.5の異常な低いpK値に部分的に起因する。これは、一般的なシステイン残基についての代表的なpK値(これは代表的には、約8である)よりもかなり低い。この低いpKに起因して、通常の生理学的条件下で、アルブミンのCys34は、主に陰イオン化形態であり、その反応性を劇的に上昇させる。Cys34の低いpK値に加えて、Cys34の反応性を増強する別の因子は、アルブミンのV領域の1つのループの表面に近接する疎水性ポケットに存在する位置である。この位置は、Cys34を、全ての種類のリガンドに非常にアクセス可能にし、そしてフリーラジカルトラップおよび遊離のチオールスカベンジャーとしてのCys34の生物学的な役割において重要な因子である。結果として、反応速度の加速は、他の遊離チオール含有タンパク質を有するペプチド−マレイミドの反応速度と比較して1000倍ほど高くあり得る。
【0045】
ペプチド−マレイミド−アルブミン結合体の別の利点は、Cys34において特異的に、アルブミンに対してペプチドを1:1でロードすることに伴う再現性である。従来の活性化技術(例えば、グルタルアルデヒド、DCC、EDCおよび他の化学的アクチベータ(例えば、遊離アミンの化学的アクチベータ)を用いる技術)は、この選択性を欠いている。例えば、アルブミンは、52個のリジン残基を含み、このうち25〜30個は、アルブミンの表面上に位置し、そして結合体にとってアクセス可能である。これらのリジン残基を活性化すること、あるいは、これらのリジン残基を介して結合するようにペプチドを修飾することは、結合体の不均一な集団を生じる。等モル比(すなわち、1:1)のペプチド:アルブミンが使用される場合でさえ、最終的な結果は、ランダムな結合体生成物の生成であり、いくつかは、アルブミンの各分子に連結した不正確な数のペプチドを含み、そして各々の結合体は、25〜30個の利用可能なリジン部位のいずれか1つにおいてランダムに結合したペプチドを有する。結果として、正確な組成の特徴付けは、再現性の非存在はもちろんのこと、実際には不可能である。さらに、アルブミンのリジン残基を介した結合体化は、アルブミン1分子当たり、より多くの治療剤を送達する利点を少なくとも有すると考えられたが、研究により、アルブミンに対する治療剤の1:1の比が好ましいことが示されている。Stehleら、Anti−Cancer Drugs、1997、8、677−685(これは、本明細書中でその全体が援用される)による論文において、グルタルアルデヒドを介して結合体化したアルブミンに対する抗癌メトトレキセートの1:1の比が、最も見込みのある結果を生じたことが報告された。これらの結合体は、腫瘍細胞によって取り込まれたが、一方、5:1〜20:1のメトトレキセート分子を保有する結合体は、変更されたHPLCプロフィールを有し、そしてインビボで肝臓によって迅速に取りこまれた。従って、より高い比では、治療剤のためのキャリアとしてのアルブミンの有効性を減少すると考えられる。
【0046】
本発明のGLP−2ペプチド誘導体、および特にマレイミド反応性実体を含むGLP−2ペプチドの制御された投与によって、アルブミンおよびIgGの、特異的なインビボでの標識および結合が制御され得る。代表的な投与において、投与されたペプチド誘導体の80〜90%がアルブミンに結合し、そして5%未満がIgGに結合することが示された。存在する遊離チオール(例えば、グルタチオン)の微量結合もまた生じる。このような特異的結合は、投与される治療剤の推定半減期の正確な計算を可能にするので、インビボでの使用のために好ましい。
【0047】
マレイミド置換されたGLP−2ペプチドは、一般に、水溶液の存在下および遊離アミンの存在下で、非常に安定である。マレイミド置換されたGLP−2ペプチドは、遊離チオールと反応するので、保護基が、マレイミド置換されたGLP−2ペプチドがそれら自身と反応することを防止する必要はない。
【0048】
上記のように、血液成分に対するGLP−2誘導体の所望の結合体は、動物またはヒトであり得る被験体にこれらの誘導体を直接投与することによって、インビボで調製され得る。この投与は、ボーラスの形態で行われ得るか、または規制流れ(metered flow)などを使用する注入により、ゆっくりと時間をかけて導入され得る。
【0049】
あるいは、この結合体はまた、血液または市販の精製血液成分を、本発明のGLP−2誘導体と合わせ、血液成分上の官能基に対するGLP−2誘導体の共有結合を可能にし、次いで結合体化した血液または結合体化した精製血液成分を宿主に戻すか、または投与することによって、エキソビボで調製され得る。さらに、上記はまた、個々の血液成分または限定数の成分(例えば、赤血球、免疫グロブリン、血清アルブミンなど)を最初に精製し、そしてこれらの成分を本発明の化合物誘導体とエキソビボであわせることによっても、達成され得る。次いで、標識された血液または血液成分は、インビボで治療的に有効な結合体を提供するために、被験体に戻され得る。血液はまた、エキソビボでの扱いの間の凝集を予防するために、処理され得る。
【0050】
(ペプチド合成)
GLP−2ペプチドは、いずれかの当業者に周知の固相ペプチド化学の標準的な方法によって、合成され得る。例えば、ペプチドは、Stewardら、Solid Phase Peptide Synthesis、第二版、Pierce Chemical Company、Rockford、Ill.(1984)に記載される手順に従って、Rainin PTI SymphonyTM合成機を使用して、固相化学技術によって合成され得る。同様に、ペプチドフラグメントが合成され得、引き続いて一緒に合わせられるかまたは連結されて、より大きなペプチド(セグメント凝縮)を形成し得る。これらの合成ペプチドフラグメントはまた、特定の位置でアミノ酸置換および/またはアミノ酸欠失を有して作製され得る。
【0051】
固相ペプチド合成について、多くの技術の要約が、Stewartら、「Solid Phase Peptide Synthesis」、W.H.Freeman Co.(San Francisco)、1963およびMeienhofer、Hormonal Protein and Peptides、1973、2、46に見出され得る。古典的な溶液合成については、例えば、Schroderら、「The Peptides」、第1巻、Acacemic Press(New York)を参照のこと。一般に、このような方法は、ポリマー上の成長するペプチド鎖に、1以上のアミノ酸または適切に保護されたアミノ酸の連続的付加を含む。通常、第一のアミノ酸のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかが、適切な保護基によって保護される。次いで、保護されたアミノ酸および/または誘導体化アミノ酸は、不活性な固体支持体に結合されるか、または、適切に保護された相補的な(アミノまたはカルボキシル)基を有する配列中に次のアミノ酸を、アミド結合の形成に適切な条件下で付加することによって、溶液中で使用されるかのいずれかである。次いで、保護基を、この新たに付加されたアミノ酸残基から除去し、(適切に保護された)次のアミノ酸を付加するなどする。
【0052】
全ての所望のアミノ酸が、適切な配列に連結された後、任意の残りの保護基(および任意の固体支持体)を引き続いて除去するか、または同時に最終ポリペプチドを得る。この一般的手順の簡単な改変によって(例えば、(キラル中心をラセミ化しない条件下で)保護トリペプチドを適切に保護されたジペプチドに結合させて、脱保護後にペンタペプチドを形成すること(セグメント凝縮)によって)、成長する鎖に同時に1つより多くのアミノ酸を付加することが可能である。
【0053】
本発明のGLP−2誘導体を調製する特に好ましい方法としては、固相ペプチド合成が挙げられ、ここでこのアミノ酸α−N末端は酸感応基または塩基感応基によって保護される。このような保護基は、ペプチド連結形成の条件に安定であるが、成長ペプチド鎖またはこれらに含まれる任意のキラル中心のラセミ化を破壊することなくに容易に除去可能な性質を有するべきである。N−保護基およびカルボキシ保護基の例は、Greene,「Protective Groups In Organic Synthesis」(John Wiley&Sons,New York pp.152〜186(1981))に開示され、これは参考として本明細書中で援用される。N−保護基の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:低級アルカノイル基(例えば、ホルミル、アセチル(「Ac」)、プロピオニル、ピバロイル(pivaloyl)、t−ブチルアセチルなど);他のアシル基(例えば、2−クロロアセチル、2−ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタルリル、o−ニトロフェノキシアセチル、o−クロロブチリル、ベンゾイル、4−クロロベンゾイル、4−ブロモベンゾイル、4−ニトロベンゾイル、などを含む);スルホニル基(たとえば、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル、o−ニトロフェニルスルホニル、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(pmc)など);カルバメート形成基(例えば、t−アミルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p−クロロベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、2−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4−エトキシベンジルオキシカルボニル、2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,4,5−トリメトキシベンジルオキシカルボニル、1−(p−ビフェニリル)−1−メチルエトキシカルボニル、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル(boc)、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、4−ニトロフェノキシカルボニル、フルオレニル−9−メトキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル(isobornyloxycarbonyl)、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル(adamantyloxycarbonyl)、シクロヘキシルオキシカルボニル、フェニルチオカルボニルなど);アリールアルキル基(例えば、ベンジル、ビフェニルイソプロピルオキシカルボニル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)など)およびシリル基(例えば、トリメチルシリルなど)。好ましいα−N−保護基は、o−ニトロフェニルスルフェニル;9−フルオレニルメチルオキシカルボニル;t−ブチルオキシカルボニル(boc)、イソボルニルオキシカルボニル;3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル;t−アミルオキシカルボニル;2−シアノ−t−ブチルオキシカルボニルなどであり、9−フルオレニル−メチルオキシカルボニル(Fmoc)がより好ましい。その一方、好ましい側鎖N−保護基としては、リジンおよびアルギニンのような側鎖アミノ基に対しては2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(pmc)、ニトロ、p−トルエンスルホニル、4−メトキシベンゼン−スルホニル、Cbz、Boc、およびアダマンチルオキシカルボニル;チロシンに対してはベンジル、o−ブロモベンジルオキシカルボニル、2,6−ジクロロベンジル、イソプロピル、t−ブチル(t−Bu)、シクロヘキシル、シクロペニルおよびアセチル(Ac);セリンに対してはt−ブチル、ベンジルおよびテトラヒドロピラニル;ヒスチジンに対しては、トリチル、ベンジル、Cbz、p−トルエンスルホニル、および2,4−ジニトロフェニル;トリプロファンに対してはホルミル;アスパラギン酸およびグルタミン酸に対してはベンジルおよびt−ブチル;そしてシステインに対してはトリフェニルメチル(トリチル)が挙げられる。
【0054】
カルボキシ保護基は、慣習的に、カルボン酸保護エステルまたはアミド基と呼ばれる。このようなカルボキシ保護基は、当業者に周知であり、米国特許第3,840,556号および同第3,719,667号(これらの開示は、参考として本明細書中で本明細書中によって援用される)に記載されるようにペニシリンおよびセファロスポリンの分野におけるカルボキシル基の保護において広範に使用されている。代表的なカルボキシ保護基としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:C〜C低級アルキル;アリールアルキル(例えば、フェネチルまたはベンジルおよび(アルコキシベンジル基またはニトロベンジル基のような)これらの置換された誘導体;アリールアルケニル(例えば、フェニルエテニル);アリールおよび(5−インダニルのような)この置換された誘導体;ジアルキルアミノアルキル(例えば、ジメチルアミノエチル);アルカノイルオキシアルキル基(例えば、アセトキシメチル、ブチリルオキシメチル、バレリルオキシメチル(valeryloxymethyl)、イソブチリルオキシメチル、イソバレリルオキシメチル、1−(プロピオニルオキシ)−1−エチル、1−(ピバロイルオキシ)−1−エチル、1−メチルー1−(プロピオニルオキシ)−1−エチル、ピバロイルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル);シクロアルカノイルオキシアルキル基(例えば、シクロプロピルカルボニルオキシメチル、シクロブチルカルボニルオキシメチル、シクロペンチルカルボニルオキシメチル、シクロヘキシルカルボニルオキシメチル);アロイルオキシアルキル(例えば、ベンゾイルオキシメチル、ベンゾイルオキシエチル);アリールアルキルカルボニルオキシアルキル(例えば、ベンジルカルボニルオキシメチル、2−ベンジルカルボニルオキシエチル);アルコキシカルボニルアルキルまたはシクロアルキルオキシカルボニルアルキル(例えば、メトキシカルボニルメチル、シクロヘキシルオキシカルボニルメチル、1−メトキシカルボニル−1−エチル);アルコキシカルボニルオキシアルキルまたはシクロアルキルオキシカルボニルオキシアルキル(例えば、メトキシカルボニルオキシメチル、t−ブチルオキシカルボニルオキシメチル、1−エトキシカルボニルオキシ−1−エチル、1−シクロヘキシルオキシカルボニルオキシー1−エチル);アリールオキシカルボニルオキシアルキル(例えば、2−(フェノキシカルボニルオキシ)エチル、2−(5−インダニルオキシカルボニルオキシ)−エチル);アルコキシアルキルカルボニルオキシアルキル(例えば、2−(1−メトキシ−2−メチルプロパン−2−オイルオキシ(oyloxy))−エチル);アリールアルキルオキシカルボニルオキシアルキル(例えば、2−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)エチル);アリールアルケニルオキシカルボニルオキシアルキル(例えば、2−(3−フェニルプロペン−2−イルオキシカルボニルオキシ)エチル);アルコキシカルボニルアミノアルキル(例えば、t−ブチルオキシカルボニルアミノメチル);アルキルアミノカルボニルアミノアルキル(例えば、メチルアミノカルボニルアミノメチル);アルカノイルアミノアルキル(例えば、アセチルアミノメチル);複素環式カルボニルオキシアルキル(例えば、4−メチルピペラジニルカルボニルオキシメチル);ジアルキルアミノカルボニルアルキル(例えば、ジメチルアミノカルボニルメチル、ジエチルアミノカルボニルメチル);(5−(低級アルキル)−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)アルキル(例えば、(5−t−ブチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル);および(5−フェニル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)アルキル(例えば、(5−フェニル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル。代表的なアミドカルボキシ保護基としては、アミノカルボニル基および低級アルキルアミノカルボニル基が挙げられるがこれらに限定されない。上記のカルボキシ保護基の中で、低級アルキル、シクロアルキルエステルもしくはアリールアルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、sec−ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル、イソアミルエステル、オクチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエチルエステルなど)またはアルカノイルオキシアルキル、シクロアルカノイルオキシアルキル、アロイルオキシアルキルまたはアリールアルキルカルボニルオキシアルキルエステルが好ましい。好ましいアミドカルボキシ保護基は、低級アルキルアミノカルボニル基である。
【0055】
固相ペプチド合成法において、α−C−末端アミノ酸は、適切な固体支持体または樹脂に結合される。上記の合成に有用な適切な固体支持体は、試薬および段階的な濃縮−脱保護反応の反応条件に不活性であり、そして使用される媒体に不溶である、材料である。α−C末端カルボキシペプチドの合成に好ましい固体支持体は、4−ヒドロキシメチルフェノキシアセチル−4’−メチルベンジヒドリルアミン樹脂(HMP樹脂)である。このα−C末端アミドペプチドのための好ましい固体支持体は、Fmoc−保護Ramage Resinである。
【0056】
固体支持体が、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmoc−アミノメチル)−フェノキシ−アセトアミドエチル樹脂である場合、上記のようにα−C−末端アミノ酸によるカップリングの前に、このFmoc基は2級アミン(好ましくはピペリジン)によって切断される。脱保護された4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmoc−アミノメチル)フェノキシ−アセトアミドエチル樹脂にカップリングする好ましい方法は、DMF中のO−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロ−ホスフェート(HBTU、1当量)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、1当量)、および必要に応じて1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT、1当量)である。連続的な保護アミノ酸のカップリングは、当該分野で周知の従来の様式で自動ポリペプチド合成機で実行され得る。
【0057】
成長ペプチドのα−N−末端側からのFmoc保護基の除去は、例えば、2級アミン(好ましくはピペリジン)での処理によって従来どおりに達成される。次いで、それぞれの保護アミノ酸は、約3倍の過剰モル濃度において導入され、そしてそのカップリングは好ましくはDMF中で実行される。このカップリング剤は、通常、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU、1当量)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、1当量)、および必要に応じて1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT、1当量)である。
【0058】
固相合成の最後、このペプチドは、連続的な操作かまたは単一の操作のいずれかで樹脂から除去され、そして脱保護される。このポリペプチドの除去および脱保護は、樹脂結合ポリペプチドを、チオアニソール、トリイソプロピルシラン、フェノール、およびトリフルオロ酢酸を含む切断試薬で処理することによる一回の操作において従来どおりに達成され得る。ポリペプチドのα−C−末端がアルキルアミドである場合、この樹脂は、アルキルアミンを用いるアミノ分解によって切断される。あるいは、このペプチドは、エステル交換(例えば、メタノールを用いて)によって除去され得、続いてアミノ分解または直接アミド基転移によって除去され得る。この保護ペプチドは、この時点で精製され得るかまたは直接、次の工程に移される。この側鎖保護基の除去は、上記の切断混合物を使用して達成される。十分に脱保護されたペプチドは、以下のいずれかまたはすべての型を使用する一連のクロマトグラフィー工程によって精製され得る:弱酸樹脂(酢酸型)によるイオン交換;非誘導化ポリスチレン−ジビニルベンゼン(例えば、Amberlite XADTM)による疎水性吸着クロマトグラフィー;シリカゲル吸着クロマトグラフィー;カルボキシメチルセルロースによるイオン交換クロマトグラフィー;分配クロマトグラフィー(例えば、Sephadex G−25TM、LH−20TMまたは向流分配);高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、特に、オクチルシリカまたはオクタデシルシリルシリカが、カラム充填相に結合されている逆相HPLC。当業者の誰もが、どのクロマトグラフィー工程または順序が、GLP−2ペプチドの満足な精製を得るのに必要とされるかを容易に決定し得る。
【0059】
これらのペプチドの分子量は、Quadrupole Electro Spray質量分析器を使用して測定される。
【0060】
本発明のGLP−2誘導体の生成のための合成プロセスは、GLP−2誘導体に含まれる種々の要素の性質(すなわち、このGLP−2の配列、連結基および反応性実体)に依存して大きく変化する。この合成手順は、単純性、高収率および反復性を保証するよう選択され、そして高度に精製された生成物を得る。通常、この化学的に反応性の実体は、その合成の最終段階でカップリングされる(例えば、カルボキシル基と、活性エステルを形成するためのエステル化)。本発明のGLP−2誘導体の生成のための特定の方法は、以下に記載される。
【0061】
この化学的に反応性の実体は、ポリペプチドが対応するネイティブのGLP−2ペプチドの実質的な比率、活性および/または有益な影響を(全てではないにしても)保持しながら血液成分に共有結合され得る側に配置されなければならない。
【0062】
より好ましい実施形態において、各GLP−2誘導体は、以下の基準に従って合成される:末端カルボキシル基が、ペプチド上で利用可能であり、薬理学的活性の保持に重大な意味を持たず、かつ他の感応性官能基がペプチド上に存在しない場合、カルボン酸が、連結基−反応性実体の修飾のための結合部分として選択される。この末端カルボキシル基が、薬理学的活性に関与するか、またはどのカルボン酸も利用可能でない場合、薬理学的活性の保持に重要な意味を持たない任意の他の感応性官能基が、連結基−反応性実体の修飾のための結合部分として選択される。いくつかの感応性官能基が、ペプチド上で利用可能である場合、保護基の組合せは、連結基/反応性実体の付加および全ての保護された感応性感応基の脱保護後に薬理学的活性の保持がなお得られるような方法において使用される。感応性感応基がペプチド上で利用可能でない場合、合成の努力によって、生物学的活性の保持およびレセプター特異性または標的特異性の保持が得られるような方法での元のペプチドの修飾が可能となる。この場合、この修飾は、好ましくはペプチドの反対の末端で生じる。
【0063】
本発明に従って、GLP−2誘導体は、上部胃腸管組織の増大から利益をうける患者に投与され得る。さらに、上部胃腸管組織の増大した機能から利益をうける患者(組織増殖の増大の結果であるかどうかにかかわらず)は、本発明を用いて処置するための候補である。一般的に、増加した上部胃腸管の質量および/または増加した上部胃腸管の粘膜機能のいずれかから利益をうける患者は、本発明のGLP−2ペプチド誘導体を用いた処理の候補である。本発明のGLP−2ペプチド誘導体を用いて処理され得る特定の状態は、胃または食道の炎症性疾患、ならびに上部胃腸管の部分的または完全に近い切除を受けている患者の様々な形態を含む。本発明のGLP−2誘導体またはその混合物によって処置され得る、胃および食道を含む上部胃腸管の状態の非網羅的な列挙としては、以下のような胃の障害が挙げられる:急性胃炎、急性出血性胃炎、急性ストレス性胃炎、ウイルス性胃炎、寄生虫性胃炎、真菌性胃炎、胃疾患(急性)、出血性胃疾患、急性helicobacter pylori胃炎、A型、B型またはC型胃炎、過分泌性胃炎、Helicobacter pyloriに続発する非特異的胃炎、Helicobacter pylori−関連胃炎、化学物質胃炎、反応性胃炎、逆流性胃炎、胆汁性胃炎、化生性萎縮性胃炎および環境化生性萎縮性胃炎、特発性全胃炎(pangastritis)、びまん性肉体性胃炎(diffuse corporal gastritis)、自己免疫性慢性胃炎および自己免疫関連胃炎、ヘリコバクターピロリ以外の細菌性胃炎(Gastrospirillum hominis、フレグモーネ、マイコバクテリア、梅毒性)、幽門洞切除後(postantrectomy)萎縮性胃炎、好酸球性胃炎、および任意の他の感染性胃炎;クローン病、サルコイドーシス、孤立性肉芽腫性胃炎、リンパ球性(lymphocylic)胃炎、メネトリエ病(Menetriere’s disease)など、および以下のような真菌またはウイルスまたは細菌からの感染性食道炎のような食道の障害:Candida species(esp.albicans)、Aspargillus sp.、Histoplasma capsulatum、Blastomyces dermatitidesのような真菌、または単純ヘルペスウイルス(1型)、サイトメガロウイルス、Varicella−zosterウイルスのようなウイルス、またはMycobacterium tuberculosis、Actinomyces Israelii、Streptococcus viridans、Lactobacillus acidophilusおよびTreponema pallidum.のような細菌。食道の他の障害としては、限定しないが以下が挙げられる:非感染性食道炎、酸逆流、胆汁逆流、化学的損傷(医薬、毒、酸、アルカリなどによる)、サーコイドーシス、クローン病、ベーチェット病、対宿主性移植片病、AIDS関連感染症(Cryptosporidium sp.、Microsporidium sp.、Isospora beill、Glardia Lamblia、Salmonella sp.、Shigella sp.、Campylobacter sp.、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium avium complex、Clostridium difficile、サイトメガロウイルスおよび単純ヘルペス)。
本発明のGLP−2ペプチド誘導体を用いて処置され得る他の疾患または状態としては、以下が挙げられる:小腸管粘膜における異常性(これは潰瘍および炎症性障害を含む);吸収不良症候群を含む先天性または後天性消化障害および吸収障害;ならびに小腸粘膜機能の欠損による疾患および状態(特に延長した腸管外栄養補給を受けている患者、または外科手術の結果、小腸の切除を受けたかまたは短腸症候群(short−gut syndrome)および窩(cul−de−sac)症候群を罹患する患者)。一般的に、増加した小腸の質量、そしてその結果起こる増加した小腸粘膜機能のいずれかから利益をうける患者は、GLP−2ペプチド誘導体を用いての処置に対する候補である。本発明のGLP−2誘導体を用いて処置され得る特定の状態は、以下を含む様々なスプルーが挙げられる:小麦からグリアジンへの毒性反応の結果生じ、そして小腸の絨毛(villae)の損失が顕著である、セリアックスプルー;感染の結果生じ、絨毛の部分的な平坦化が顕著である、熱帯性スプルー;分類不能型免疫不全または低ガンマグロブリン血を有する患者において共通して観察され、そして絨毛の長さの有意な減少が顕著である、低ガンマグロブリン血スプルー。本発明の誘導体を用いて処置され得るか、またはこれらが予防的に有用であり得る他の状態としては、以下が挙げられる:放射線腸炎、感染性または感染後の腸炎、限局性腸炎(クローン病)、毒または化学療法薬に起因する小腸損傷および短腸症候群を有する患者。
【0064】
別の局面において、本発明のGLP−2ペプチド誘導体を用いた処置のための患者の候補は、膵島の増殖(そして特に膵島の増殖または再生)から利益を得る患者である。このような患者としては、膵島の不在もしくは減少、または低下した膵島機能が顕著である疾患または状態を罹患した患者が挙げられる。特別な患者の候補は、1型または2型糖尿病を罹患する患者、ならび膵臓の浸潤、炎症または破壊に起因する糖尿病の2次的形態を有する患者である。
【0065】
本発明のGLP−2誘導体は、その治療効果を最適化するよう単独でかまたは組み合わせで使用され得る。これらは、生理学的に受容可能な媒体(例えば、脱イオン水、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、生理食塩水、水性エタノールまたは他のアルコール、血漿、タンパク溶液、マンニトール、水性グルコース、アルコール、植物油など)中で投与され得る。含まれ得る他の添加物としては、緩衝液(ここでこの培体は一般的には約5〜10の範囲のpHに緩衝され、この緩衝液は一般的には約50〜250mMの濃度範囲である)、塩(ここで塩の濃度は一般的には約5〜500mMの範囲である)、生理学的に受容可能な安定剤などが挙げられる。この組成物は、便利な貯蔵および輸送のために凍結乾燥され得る。
【0066】
本発明のペプチド誘導体は、経口的に、非経口的(例えば、脈管内(IV)、動脈内(IA)、筋肉内(IM)、皮下(SC)など)に投与され得る。投与は、注入によって適切な状況においてなされ得る。いくつかの例では、官能基の反応が比較的遅い場合、投与は、経口、経鼻、直腸、経皮またはエアロゾルであり得、ここでこの結合体の性質は、脈管系への輸送を可能にする。所望の場合、1度以上の注射が使用され得るが、通常は1度の注射が行われる。このペプチド誘導体は、任意の首尾良い手段によって投与され得、その手段としては、注射器、外套針、カテーテルなどが挙げられる。投与の特定の様式は、投与量によって、1度のボーラス投与であるか連続的な投与であるかなどによって変化する。好ましくは、投与は、脈管内投与であり、ここで注入の部位は、本発明にとって重要ではなく、好ましくは速い血流が存在する部位(例えば、静脈内、末梢静脈または中心静脈)である。他の経路は、投与が遅延放出技術または保護マトリクスと結び付けられた用途を見出し得る。この意図は、ペプチドが血液中に効果的に拡散され、その結果、血液成分と反応し得ることである。この結合体の濃度は、広範に変化し、一般的には約1pg/ml〜50mg/mlの範囲である。代表的に、脈管内総投与量は、通常約0.1mg/ml〜約10mg/mlの範囲であり、より一般的には約1mg/ml〜約5mg/mlの範囲である。
【0067】
長寿命の血液成分(例えば、免疫グロブリン、血清アルブミン、赤血球および血小板)への結合によって多くの利点を生じる。本発明のGLP−2誘導体の活性は、数日間、延長され、そして潜在的には数週間にまで延長される。1回のみの投与が、この期間の間で必要とされる。より大きい特異性が、活性成分が大分子に最初に結合することによって達成され、細胞内に取り込まれて、他の生理学的プロセスと干渉する可能性はほとんどない。
【0068】
哺乳動物宿主の血液は、GLP−2の活性および/またはGLP−2誘導体の存在についてモニタリングされ得る。異なる時間で宿主の血液サンプルを取り出すことによって、GLP−2ペプチドが治療的に活性であるのに十分な量で長寿命血液成分に結合するか否かが測定され得、その後、血液中のGLP−2のレベルが測定され得る。所望の場合、GLP−2ペプチドが共有結合される血液成分もまた測定され得る。特異的なマレイミド置換されたペプチドは、血清アルブミンおよびIgGの半減期を計算するのが容易である。モニタリングはまた、ペプチド活性のアッセイ、HPLC−MSまたはペプチドに対する抗体を使用することによって行われ得る。
【0069】
本発明の別の局面は、GLP−2ペプチドに特異的な抗体を使用して生物学的サンプル(例えば、血液)においてGLP−2ペプチドまたはその結合体の濃度を測定する方法、およびこのようなGLP−2ペプチドまたは結合体と潜在的に関連する毒性に対する処置としてのこのような抗体の使用に関する。これは、患者におけるGLP−2ペプチドのインビボでの安定性および寿命が延長されることにより、処置の間の新たな問題(毒性に対する可能性の増加を含む)が引き起こされ得るという理由で有利である。抗GLP−2抗体(モノクローナルまたはポリクローナルのいずれか)の使用は、GLP−2に対して特異性を有しており、任意のこのような問題の媒介を補助し得る。この抗体は、産生され得るかまたは、特定のGLP−2誘導体、または薬剤の免疫原性フラグメント、または薬剤の抗原決定基に対応する合成された免疫原で免疫化された宿主から誘導され得る。好ましい抗体は、GLP−2ペプチド誘導体のネイティブ形態、誘導体形態および結合体形態に対して高い特異性および親和性を有する。このような抗体はまた、酵素、蛍光色素、または放射標識で標識化され得る。
【0070】
GLP−2誘導体に対する抗体特異性は、誘導体化GLP−2特異的抗体の導入のために精製されたGLP−2ペプチドを使用することによって生成され得る。抗体の誘導によって、動物への注射による免疫応答の刺激だけでなく、合成抗体または他の特異的結合分子の生成における類似の工程(例えば、遺伝子組換え免疫グロブリンライブラリのスクリーニング)が意図される。モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の両方が、当該分野において周知の手順によって作製され得る。
【0071】
この抗体はまた、血流におけるGLP−2ペプチドの存在をモニタリングするのに使用され得る。血液サンプルおよび/または血清サンプルは、SDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングによって分析され得る。このような技術は、血液成分に対するGLP−2誘導体の結合の測定のための血液または血清の分析を可能にする。
【0072】
抗治療薬剤抗体がまた、GLP−2誘導体の投与によって誘導された毒性の処置に使用され得、エキソビボまたはインビボで使用され得る。エキソビボ法としては、固体支持体に固定された抗治療薬剤抗体を使用する毒性についての免疫透析処置が挙げられる。インビボ法としては、抗体−薬剤複合体のクリアランスを誘導するのに有効量の抗治療薬剤抗体の投与が挙げられる。
【0073】
この抗体は、GLP−2誘導体およびこれらの結合体を、滅菌条件下で血液を抗体に接触させることによって、エキソビボで患者の血液から除去するのに使用され得る。例えば、抗体は固定され得るかまたはそうでなければカラムマトリクスに固定され得、そして患者の血液が患者から取り出され、このマトリクスを通され得る。このGLP−2誘導体は、抗体および低濃度のGLP−2を含む血液に結合し、次いで、患者の循環系に戻され得る。除去されるGLP−2誘導体の量は、圧力および流速を調節することによって制御され得る。患者の血液の血清成分からのGLP−2誘導体の優先的な除去は、例えば、抗治療抗体を含むマトリクスを介して血清成分を通過する前に、半透膜の使用によってかまたは当該分野において公知の方法による細胞成分からの血清成分の最初の分離によってもたらされ得る。あるいは、GLP−2結合体化血液細胞(例えば、赤血球)の優先的な除去は、患者の血液の血清成分を除去するために、患者の血液中の赤血球を回収することおよび濃縮することならびにこれらの細胞と固定化された抗GLP−2抗体と接触させることによってもたらされ得る。
【0074】
この抗GLP−2抗体は、処置のためにGLP−2誘導体またはその結合体を受ける患者にインビボで非経口的に投与され得る。この抗体は、GLP−2誘導体および結合体と結合する。一旦結合すると、このGLP−2活性は完全にブロッキングされない場合、妨害され、それによって患者の血流におけるGLP−2誘導体の生物学的に有効な濃度を減少させ、そして有害な副作用を最小限に抑える。さらに、結合された抗体GLP−2複合体は、患者の血流からのGLP−2誘導体および結合体のクリアランスを容易にする。
【0075】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を例示するために提供され、決して本発明の範囲を制限するものとして解釈されない。他に示されない限り、L−配置の光学活性保護化アミノ酸を使用した。
【0076】
(合成)
GLP−2ペプチドおよびその誘導体の合成を、GLP−2誘導体の生成の間に手動で介入し、SymphonyTMペプチド合成器における自動固相手順を使用して実施した。この合成を、Fmoc保護RamageTMアミドリンカー樹脂上でFmoc保護化アミノ酸を使用して実施した。カップリングを、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液におけるアクチベーターとして、そしてジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を塩基として使用することによって達成した。このFmoc保護基を、20%のピペリジン/DMFを使用して除去した。必要な場合、Boc−保護化アミノ酸を、ペプチドを樹脂から切断した後に遊離Nα−末端を生成するためにN−末端で使用した。合成の間に使用した全てのアミノ酸は、他に記載されない限り、L−立体化学を有した。ガラス反応容器は、SigmacotedTMであり、合成の際に使用した。
【実施例】
【0077】
(実施例1)
【0078】
【化6】


工程1:固相ペプチド合成を、100μmolのスケールで行なった。以下の保護化アミノ酸を、連続的に樹脂に添加した:
【0079】
【化7】



これらを、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、そして配列に従って、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を用いて活性化した。Fmoc保護基の除去を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中の20%(v/v)ピペリジンの溶液を用いて、20分間で成し遂げた。
【0080】
工程2:ペプチドを、85% TFA/5% TIS/5% チオアニゾールおよび5%フェノールを用いて樹脂から分割し、続いて、ドライアイスで冷却した(0〜4℃)EtOによって沈殿した。この粗製ペプチドを、ポリプロピレンの焼結漏斗上に収集し、乾燥させ、40%の水中のアセトニトリルの混合物(0.1% TFA)に再溶解し、そして凍結乾燥して精製プロセスにおいて使用される対応する粗製物質を生成した。
【0081】
(実施例2)
【0082】
【化8】


工程1:固体相ペプチド合成を、100μmolのスケールで行なった。以下の保護化アミノ酸を、連続的に樹脂に添加した:
【0083】
【化9】




工程2:この工程を、実施例1の工程2と同様の様式で実行した。
【0084】
(実施例3)
【0085】
【化10】


工程1:この工程を、樹脂に添加した第1のアミノ酸がFmoc−Lys(Aloc)−OHであることを除いて、上記の実施例1の工程1と同様の様式で実行した。
【0086】
工程2:Lys(Aloc)基の選択的脱保護化を、手動で実行し、そして樹脂を、5mLのC:CHCl(1:1):2.5% NMM(v:v):5% AcOH(v:v)中に溶解した3当量のPd(PPhの溶液を用いて2時間処理することによって達成した。次いで、樹脂を、CHCl(6×5mL)、DCM中20% AcOH(6×5mL)、DCM(6×5mL)、およびDMF(6×5mL)を用いて洗浄する。
【0087】
工程3:次いで、合成を、3−マレイミドプロピオン酸の添加のために再自動化した。全カップリングの間、樹脂を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用いて3回洗浄し、そしてイソプロパノールを用いて3回洗浄した。
【0088】
工程4:ペプチドを、85% TFA/5% TIS/5% チオアニゾールおよび5% フェノールを用いて樹脂から分離し、続いてドライアイスで冷却した(0〜4℃)EtOによって沈殿した。この粗製ペプチドを、ポリプロピレンの焼結漏斗上に収集し、乾燥させ、40%の水中のアセトニトリルの混合物(0.1% TFA)に再溶解し、そして凍結乾燥して精製プロセスにおいて使用される、対応する粗製物質を生成した。
【0089】
(実施例4)
【0090】
【化11】


工程1:固相ペプチド合成を、100μmolのスケールで行なった。以下の保護化アミノ酸を、実施例1の工程1に記載される手順に従って、連続的に樹脂に添加した:
【0091】
【化12】


工程2〜4:これらの工程を、実施例3の工程2〜4と同様の様式で実行した。
【0092】
(実施例5)
【0093】
【化13】


工程1:固相ペプチド合成を、100μmolのスケールで行なった。以下の保護化アミノ酸を、実施例1の工程1に記載される手順に従って、連続的に樹脂に添加した:
【0094】
【化14】




工程2:この工程を、実施例1の工程2と同様の様式で実行した。
【0095】
(実施例6)
【0096】
【化15】


工程1:この工程を、2位のアラニン残基がグリシンと置換されていることを除いて、実施例2の工程1と同様の様式で実行した。
【0097】
工程2:この工程を、実施例1の工程2と同様の様式で実行した。
【0098】
(実施例7)
【0099】
【化16】


工程1:固相ペプチド合成を、100μmolのスケールで行なった。以下の保護化アミノ酸を、実施例1の工程1に記載される手順に従って、連続的に樹脂に添加した:
【0100】
【化17】


工程2〜4:これらの工程を、実施例3の工程2〜4と同様の様式で実行した。
【0101】
(実施例8)
【0102】
【化18】


工程1:この工程を、樹脂に添加した第1のアミノ酸がFmoc−Lys(Aloc)−OHであったことを除いて、上記の実施例5の工程1と同様の様式で実行した。
【0103】
工程2〜4:これらの工程を、実施例3の工程2〜4と同様の様式で実行した。
【0104】
(実施例9)
【0105】
【化19】


工程1:この工程を、実施例7の工程1と同様の様式で実行した。
【0106】
工程2:Lys(Aloc)基の選択的脱保護化を、手動で実行し、そして樹脂を、5mLのC:CHCl(1:1):2.5% NMM(v:v):5% AcOH(v:v)に溶解した3当量のPd(PPhの溶液を用いて2時間処理することによって達成した。次いで、この樹脂を、CHCl(6×5mL)、DCM中20% AcOH(6×5mL)、DCM(6×5mL)、およびDMF(6×5mL)を用いて洗浄する。
【0107】
工程3:次いで、この合成を、Fmoc−AEEA−OH(Fmoc−アミノエトキシエトキシ酢酸)の添加について再自動化した。各カップリングの間に、樹脂を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用いて3回洗浄し、そしてイソプロパノールを用いて3回洗浄した。適切な脱保護化後、MPA(3−マレイミドプロピオン酸)を、スペーサーにアンカーし、そして再度樹脂を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用いて3回洗浄し、そしてイソプロパノールを用いて3回洗浄した。
【0108】
工程4:このペプチドを、85% TFA/5% TIS/5% チオアニゾールおよび5%フェノールを用いて樹脂から分離し、続いて、ドライアイスで冷却した(0〜4℃)EtOによって沈殿した。この粗製ペプチドを、ポリプロピレンの焼結漏斗上に収集し、乾燥させ、40%の水中のアセトニトリルの混合物(0.1% TFA)に再溶解し、そして凍結乾燥して、精製プロセスにおいて使用される対応する粗製物質を生成した。
【0109】
(実施例10)
【0110】
【化20】


工程1:この工程を、樹脂に添加した第1のアミノ酸がFmoc−Lys(Aloc)−OHであったことを除いて、上記の実施例5の工程1と同様の様式で実行した。
【0111】
工程2〜4:これらの工程を、実施例9の工程2〜4と同様の様式で実行した。
【0112】
(実施例11)
【0113】
【化21】


工程1:この工程を、合成の終わりに、Fmoc−AEEA−OHが、MPA−OHの前に樹脂に添加されることを除いて、実施例6の工程1と同様の様式で実行した。
【0114】
工程2:この工程を、実施例1の工程2と同様の様式で実行した。
【0115】
(実施例12)
【0116】
【化22】


工程1:この工程を、合成の終わりに、Fmoc−AEEA−OHが、MPA−OHの前に樹脂に添加されることを除いて、実施例1の工程1と同様の様式で実行した。
【0117】
工程2:この工程を、実施例1の工程2と同様の様式で実行した。
【0118】
(実施例13)
【0119】
【化23】


工程1:この工程を、樹脂に添加した第1のアミノ酸がFmoc−Lys(Aloc)−OHであったことを除いて、上記の実施例1の工程1と同様の様式で実行した。
【0120】
工程2〜4:これらの工程を、実施例9の工程2〜4と同様の様式で実行した。
【0121】
(実施例14)
【0122】
【化24】


工程1:この工程を、実施例4の工程1と同じ様式で行った。
【0123】
工程2〜4:これらの工程を、実施例9の工程2〜4と同じ様式で行った。
【0124】
(実施例15)
【0125】
【化25】


工程1:固体相ペプチド合成を、100μmolのスケールで行った。以下の保護アミノ酸を、実施例1の工程1に記載する手順に従って、樹脂に連続的に添加した:
【0126】
【化26】




工程2〜4:これらの工程を、実施例3の工程2〜4と同様の様式で行った。
【0127】
(実施例16)
【0128】
【化27】


工程1:固体相ペプチド合成を、100μmolのスケールで行った。以下の保護アミノ酸を、実施例1の工程1に記載する手順に従って、樹脂に連続的に添加した:
【0129】
【化28】


工程2〜4:これらの工程を、実施例3の工程2〜4と同様の様式で行った。
【0130】
(実施例17)
【0131】
【化29】


工程1:固体相ペプチド合成を、100μmolのスケールで行った。以下の保護アミノ酸を、実施例1の工程1に記載する手順に従って、樹脂に連続的に添加した:
【0132】
【化30】



工程2〜4:これらの工程を、実施例3の工程2〜4と同様の様式で行った。
【0133】
(実施例18)
【0134】
【化31】


工程1:この工程を、実施例15の工程1と同じ様式で行った。
【0135】
工程2〜4:これらの工程を、実施例9の工程2〜4と同じ様式で行った。
【0136】
(実施例19)
【0137】
【化32】


工程1:この工程を、実施例16の工程1と同じ様式で行った。
【0138】
工程2〜4:これらの工程を、実施例9の工程2〜4と同じ様式で行った。
【0139】
(実施例20)
【0140】
【化33】


工程1:この工程を、実施例17の工程1と同じ様式で行った。
【0141】
工程2〜4:これらの工程を、実施例9の工程2〜4と同じ様式で行った。
【0142】
(精製手順)
各化合物を、Varian(Dynamax)調製二元HPLCシステムを用いて、調製逆相HPLCによって精製した。この精製を、水/TFA混合物(HO中0.1%TFA(溶媒A))およびアセトニトリル/TFA(CHCN中0.1% TFA(溶媒B))で平衡化したPhenomenex Luna 10μフェニル−ヘキシル、50mm×250mmカラム(粒子10μ)を用いて行った。溶出を、28〜38%B勾配で180分間にわたって実行することによって50mL/分で達成した。ペプチドを含む画分を、214nmおよび254nmでUV吸光度(Varian Dynamax UVD II)によって検出した。
【0143】
この画分を、25mLのアリコートで収集した。所望の産物を含む画分を、LC/MS上に直接注入した後に質量検出によって同定した。選択した画分を、分析HPLC(20分間にわたり、20〜60% B;Phenomenex Luna 5μ フェニル−ヘキシル、10mm×250mmカラム、0.5mL/分)によって連続的に分析して、プールについて90%以上の純度で画分を同定した。このプールを、液体窒素を用いて凍結乾燥し、そして少なくとも2日間連続的に凍結乾燥して白色の粉末を得た。
【0144】
(インビボでの結果)
実施例1〜8の化合物の腸栄養活性を、正常マウスモデルにおいて評価した。5週齢の雄性CD−1マウス(20〜25g)を、0.9%NaCl水溶液中に溶解した、5μg/用量の各化合物で、1日に2回、10日連続で処理した。これらの化合物を、腰領域の背側野に皮下注射を介して投与した。コントロール動物は、0.25ml/用量の0.9% NaClを受けた。
【0145】
11日目、マウスを4時間絶食させ、そしてCOで麻酔した。小腸を除去し、清浄化しそして秤量した。小腸重量の有意な増加を、実施例1、3、5,7および8の化合物で処置した動物において、観察した。結果を、図1に示す。実施例1および3のネイティブなGLP−2ペプチドと比較した場合、見られ得るように、より明白な腸栄養効果を、2位のグリシン残基で安定化した実施例5,7および8の化合物を用いて得た。
【0146】
(選択したGly−GLP−2アナログを用いる用量応答)
6週齢の雌性CD−1マウス(20〜25g)を、5、25または50μg/用量の、実施例5,7および8の化合物を、1日に2回、10日連続で処理した。これらの化合物を、0.083Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)中に溶解し、そして腰領域の背側野に皮下注射を介して投与した。コントロール動物は、0.25ml/用量のリン酸ナトリウム緩衝液を受けた。
【0147】
11日目、給餌したマウスを、HalothaneTMで麻酔し、そして小腸、大腸および胃を、側腹切開後の各マウスから回収した。次いで、これらの組織を清浄化しそして秤量した。
【0148】
コントロールマウスと比較した、処置した群の全てにおいて、小腸の重量における統計学的に有意な増加(53%〜88%)を実証した(図2を参照のこと)。しかし、実施例5および7の化合物では、用量応答は観察されなかったが、実施例8の化合物について、かなりの用量応答に注目した。
【0149】
処置した全ての群について、大腸の重量を、27〜48%増加させた。また、実施例5および7の化合物について、用量応答は観察されなかったが、実施例8の化合物について、かなりの用量応答に注目した(図2を参照のこと)。
【0150】
これらの結果は、実施例7および8のGLP−2誘導体が、対応する、実施例5の遊離ペプチドに類似した腸栄養活性を示すことを、実証する。
【0151】
(ラットにおける薬物動態学プロファイル)
実施例5および8の化合物の薬物動態学のプロファイルを、正常ラットにおいて、単回の静脈内注射または皮下注射に続いて研究した。血漿濃度を、市販の抗体(抗ヒトGLP−2)を用いるラジオイムノアッセイによって決定した。
【0152】
(動物実験)
試験物を、0.083Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)中に溶解し、用量レベル500nmol/kgで単回の静脈内注射または皮下注射によって8〜11週齢の雄性Sprague−Dawleyラットに投与した。連続血液サンプル(150〜200μl)を、EDTAおよびDPP−IVインヒビターを含有するチューブに、以下の時間点で収集した:投薬前、試験試薬投与後5分および30分、ならびに試験試薬投与後1、2、4、8、24、48、72および96時間。全血を遠心分離し、血漿サンプルを回収し、そして−80℃で分析まで保存した。
【0153】
(血漿分析)
実施例5および8の化合物の血漿濃度を、ウサギポリクローナル抗体(抗ヒトGLP−2(Peninsula Laboratories,RGG7167))およびトレーサーとしてのヨード化ヒトGLP−2を使用するラジオイムノアッセイによって決定した。
【0154】
(薬物動態学分析)
記述の薬物動態学パラメーターを、血漿濃度−時間データの分析に基づく、標準のモデル非依存性法(GibaldiおよびPerrier,1982)によって決定した。薬物動態学分析を、Microsoft Excel 97について書かれたマクロを使用して行った。以下のパラメーターを計算した:
−Cmaxは、最大血漿濃度である;
−Tmaxは、Cmaxが観察される場合の時間である;
−T1/2は、終末半減期である;
−AUC(0−inf)は、0時〜無限時までの血漿濃度−時間曲線より下の面積である;
−Fは、完全なバイオアベイラビリティである;
−CLは、全身性クリアランスである;
−MRTは、滞留時間の平均である;および
−Vssは、分布の安定状態容積である。
【0155】
血漿濃度プロファイルを、図3に示し、そして、対応する薬物動態学パラメーターを、以下の表2に示す。これらの結果は、本発明に従って誘導体化されたGLP−2が、対応する遊離Gly−GLP−2ペプチドの排出および分布を効率的に減少させ、これにより全身循環におけるより高い血漿濃度およびより長い半減期を生成することを示す。
【0156】
(表2)
Sprague−Dawleyラットにおける、単回500nmol/kg用量に続く実施例5および8の化合物の平均薬物動態学パラメーターの比較
【0157】
【表2】


媒体として示す
基準平均として示す。
【0158】
(イムノブロッティング)
ラット薬物動態学研究より得られた血漿サンプルを、イムノブロッティングにより分析した。血漿タンパク質を、非還元条件下で、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)をLaemmli(1970)に従って使用して分離した。血漿サンプルを、最初に滅菌水で1:10に希釈し、そして20μlを、10μlの3×Laemmli緩衝液(30mM TrisCl、3mM EDTA、15% SDS(pH6.8))および2μlのブロモフェノールブルー溶液(0.1%ブロモフェノールブルー、50%グリセロール)と、混合した。混合物を、沸騰する湯浴中に3分間置き、そしてゲル上にロードした。タンパク質を、10ウェルコームを用いるミニゲル系(1.5×4.8mm)を使用して、3%スタッキングゲル中で最初に濃縮し、次いで、8%分離ゲルを通って移動した。スタッキングゲル中でタンパク質を濃縮するための15mA/ゲルの定電流下、および分離ゲル中での約1.5hにわたる20mA/ゲルの定電流下での電気泳動を、行った。
【0159】
引き続き、セミドライ転写装置を100mA/ゲルで1時間使用して、タンパク質を、ニトロセルロース膜上に転写した。転写効率を、1%の赤色PonceauTM溶液で膜を可逆的に染色することによりチェックした。
【0160】
(免疫化学的検出)
膜を、5%低脂肪乳を含有するTris緩衝化生理食塩水(TBS)中に4℃で一晩浸した。TBS−0.05% Tween20TMで5分間を3回の洗浄後、ブロットを、1%のラット血漿を含有するTBS−0.5% Tween20TMで1:2,500に希釈したウサギポリクローナル抗体(抗GLP−2(Peninsula Lab.,RGG7167))を用いて、室温で90分間インキュベートした。ブロットを、TBS−0.05% Tween20TMで10分間の洗浄を3回行い、次いで、TBS−0.05% Tween20TM中1:100,000希釈したペルオキシダーゼ標識化ロバ抗ウサギIgG(Jackson,711−036−152)を用いて、室温で1時間インキュベートした。3回の洗浄後、ペルオキシダーゼの化学発光物質(chemioluminescent)(ECLTMキット Amersham Pharmacia Biotech)を使用する曝露を行った。フィルムを、5〜10分間感光させた。
【0161】
膜を、TBS−0.05% Tween20TM中1:400,000希釈したペルオキシダーゼ標識化ウサギ抗ラットアルブミン(Accurate Chemical,YN−RRaALBP)と、代替的にインキュベートした。TBS−0.05% Tween20TMでの3回の洗浄後、上記のように、曝露を行った。
【0162】
(結果)
予備的なスクリーニングは、市販の抗体(抗GLP−2)が、タンパク質に結合体化された実施例7の化合物を検出するに十分感受性ではなかったことを、ウエスタンブロッティングによって実証した。従って、実施例8の化合物を注入されたラットの血漿サンプルのみがこの方法によって分析された。
【0163】
図4に示される結果は、実施例8の化合物が、iv投与後のラットアルブミンに効率的に結合体化することを示す。弱いシグナルをまた、sc投与後のアルブミンにおいて観察した(示さず)。抗ラットアルブミン抗体との比較は、抗GLP−2抗体によって検出されるバンドのほとんど(1つを除く)が、種々のアルブミン種(モノマー、ダイマーおよびポリマー)に起因することを示す。
【0164】
本発明は、その特定の実施形態と関連して記載されるが、さらなる改変が可能であることが理解され、そして本願は、一般に、本発明の原理に従う本発明の任意のバリエーション、使用または適応をカバーすることが意図され、そして、本発明が属する分野内で公知または慣習的に実行されているもの、および本明細書中で前述した本質的特徴に適用され得るもの、および添付の特許請求の範囲に従うようもののような、本明細書の記載から逸脱する本発明の任意のバリエーション、使用または適応を含むことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−150276(P2010−150276A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46750(P2010−46750)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【分割の表示】特願2008−88237(P2008−88237)の分割
【原出願日】平成14年2月15日(2002.2.15)
【出願人】(507340636)コンジュケム バイオテクノロジーズ インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】