説明

胃腸疾患を治療するための方法

胃腸疾患を治療するためのマクロライドおよびケトライド抗生物質、ならびにその薬学的組成物、方法、および使用が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下で、2008年10月24日に出願された米国仮特許出願第61/108,110号、2008年10月24日に出願された米国仮特許出願第61/108,112号、2008年10月24日に出願された米国仮特許出願第61/108,134号、2008年10月24日に出願された米国仮特許出願第61/108,137号、2008年10月24日に出願された米国仮特許出願第61/108,168号、および2009年3月20日に出願された米国仮特許出願第61/162,109号に対する恩典を主張するものであり、これらの各々の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載の発明は、胃腸疾患の治療に関する。特に、本明細書に記載の発明は、マクロライドおよびケトライド抗生物質を用いた、胃腸疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
小腸の細菌は主にグラム陽性であるが、大腸の細菌は主にグラム陰性である。大腸の初めの部分は主に炭水化物の発酵に関与するが、後半の部分は主にタンパク質とアミノ酸を分解する。細菌増殖は、pHが低い盲腸と上行結腸では速く、それに対してpHがほぼ中性の下行結腸では遅い。身体は、pH、免疫系の活動、および蠕動を変化させることで、種の適切なバランスと場所を維持している。
【0004】
胃炎は胃の内膜の炎症である。多くの原因が考えられる。胃炎は、過剰なアルコール消費、またはアスピリンもしくはイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(別名、NSAID)の長期間の使用によって引き起こされ得る。胃炎は、大きな手術、外傷性の損傷、火傷、または重篤な感染症の後に発症することもある。悪性貧血、および慢性胆汁逆流、または自己免疫障害などの特定の疾患も同様に胃炎を引き起こすことがある。重要なのは、胃炎が、ヘリコバクター・ピロリなどの細菌の感染によって引き起こされ得ることである。最も一般的な症状は、腹部不調または腹痛である。他の症状は、消化不良、腹部膨満、むかつき、および嘔吐、または上腹部の満腹感もしくは灼熱感である。
【0005】
胃腸炎は、胃と小腸の両方が関係し、しばしば急性下痢を引き起こす、胃腸管の炎症である。この炎症は、特定のウイルスの感染によって引き起こされることが最も多いが、細菌または寄生虫によって引き起こされることもある。世界各地で、胃腸炎の不十分な治療のために、年間5〜800万人の人々が亡くなっており、これは、5歳未満の乳幼児の主な死亡原因である。同様に、腸炎は、同様の原因による小腸の炎症を指す。
【0006】
サルモネラ菌、赤痢菌、ブドウ球菌、カンピロバクター・ジェジュニ、クロストリジウム、大腸菌、エルシニアなどをはじめとする、多くの異なる細菌は、胃腸炎を引き起こすことができる。感染源には、調理が不適切な食物、温め直した肉料理、シーフード、乳製品、およびベーカリー製品がある。各生物は、わずかに異なる症状を引き起こすが、全て下痢をもたらす。大腸の炎症である大腸炎も存在し得る。
【0007】
いくつかのサルモネラ菌種は胃腸炎を引き起こすことができ、これには、いくつかの血清型亜型にさらに細かく分けられるS.エンテリカが含まれる。例示的な例としては、腸チフスの原因となる疾患因子の血清型亜型チフィ(以前はチフス菌として知られていた)、およびサルモネラ症と呼ばれることもある一種のヒト胃腸炎を引き起こす血清型亜型チフィムリウム
(別名、ネズミチフス菌)が挙げられる。いくつかの赤痢菌種も胃腸炎の原因である。例示的な例としては、S.ボイディ;赤痢の主な原因であるS.ジセンテリア;S.フレキシネリ;およびS.ソネイが挙げられる。ヒトで胃腸炎を引き起こすカンピロバクターの例示的な種は、C.ジェジュニである。これは、世界中のヒト胃腸炎の最も一般的な原因の1つである。エルシニア種も胃腸炎の原因であり、例示的な例は、人畜共通に感染するY.エンテロコリチカである。Y.エンテロコリチカによって引き起こされる疾患は、エルシニア症と呼ばれる。ヘリコバクターのいくつかの株は、ヒトに対して病原性を持っており、消化性潰瘍、慢性胃炎、十二指腸炎、および胃癌と強く関連する。ヒトでの疾患の原因となる例示的な種は、H.ピロリである。
【0008】
クラリスロマイシン(CLR)は、ヘリコバクター・ピロリに対してインビボで効果を発揮する唯一の既知のマクロライド系抗生物質であると報告されている。他のマクロライド系抗生物質はH.ピロリに対するインビトロ活性を示すが、低いpHではインビボで作用するほどの十分な活性がない。さらに、アジスロマイシン(AZI)やテリスロマイシン(TEL)などの多くの抗生物質は、H.ピロリに対する効力を示すほど十分に高い組織および血液循環レベルを達成しない。理論に束縛されるものではないが、高いタンパク質結合のために、他のマクロライド系抗生物質がそのようなインビボ活性を有することができない可能性があることが本明細書で示唆されている。通常、マクロライド系抗生物質が活性を示すためには、最小限のpHが要求される。
【0009】
驚くべきことに、ケトライドをはじめとするトリアゾール含有マクロライドは、低いpHで、または他のマクロライド系抗生物質の効力のために要求される最小限のpHよりもずっと低いpHレベルで高い抗菌活性を示すことが本明細書において発見された。本明細書に記載の化合物には、胃腸炎疾患の病原体(GDP)、例えば、H.ピロリ(HP)、ならびに胃炎および下痢性疾患の病原体、例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(CJ)、サルモネラ菌種(SAL)および赤痢菌種(SHI)に対する高い抗菌活性があることも本明細書において予期せず発見された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
例示的な一実施形態では、薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、エステル、およびプロドラッグを含む、式(I)の化合物が本明細書に記載される。
【化1】

【0011】
一態様では、R10は水素またはアシルである。別の態様では、XはHであり;かつYはORであり;ここで、Rは単糖または二糖、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、またはC(O)NRであり、ここで、RおよびRは、各々独立に、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、ジメチルアミノアルキル、アシル、スルホニル、ウレイド、およびカルバモイルからなる群から選択されるか;またはXおよびYは、付加された炭素と一緒になってカルバモイルを形成する。
【0012】
別の態様では、Vは、C(O)、C(=NR11)、CH(NR12,R13)、またはN(R14)CHであり、ここで、N(R14)は、式1および2の化合物のC−10炭素に付加されており;ここで、R11はヒドロキシまたはアルコキシであり、R12およびR13は、各々独立に、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、アルコキシ、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ジメチルアミノアルキル、アシル、スルホニル、ウレイド、およびカルバモイルからなる群から選択され;R14は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アラルキル、アルキルアリール、アルコキシ、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ジメチルアミノアルキル、アシル、スルホニル、ウレイド、またはカルバモイルである。
【0013】
別の態様では、Wは、H、F、Cl、Br、I、またはOHである。
【0014】
別の態様では、Aは、CH、C(O)、C(O)O、C(O)NH、S(O)、S(O)NH、C(O)NHS(O)である。別の態様では、Bは(CHであり、ここで、nは0〜10の整数であるか、またはBは炭素数2〜10の不飽和炭素鎖である。別の態様では、Cは、水素、ヒドロキシ、アルキル、アラルキル、アルキルアリール、アルコキシ、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アミノアリール、アルキルアミノアリール、アシル、アシルオキシ、スルホニル、ウレイド、またはカルバモイルである。
【0015】
別の実施形態では、治療有効量の1以上の式(I)の化合物、または様々なその亜属を含む組成物が本明細書に記載される。薬学的組成物は、追加の薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤を含み得る。
【0016】
別の実施形態では、腸炎、胃腸炎、および/または関連疾患を引き起こす病原生物集団によって生じる疾患を治療する方法が本明細書に記載される。これらの方法には、本明細書に記載される治療有効量の1以上の式(I)の化合物、または様々なその亜属を、病原生物によって引き起こされる疾患からの救済を必要とするかまたはこのような疾患に苦しむ患者に投与する工程が含まれる。
【0017】
別の実施形態では、医薬品の製造のための使用が本明細書に記載される。医薬品は、本明細書に記載される治療有効量の1以上の式(I)の化合物、もしくは様々なその亜属、または本明細書に記載の1以上のその組成物を含む。これらの医薬品は、病原生物集団によって生じる疾患、例えば、腸炎、胃腸炎、および/または関連疾患の治療に好適である。
【0018】
別の実施形態では、H.ピロリによって引き起こされる疾患を治療するための化合物、組成物、方法、および医薬品が本明細書に記載されている。
【0019】
これらの組成物、方法、および医薬品の各々の実施形態は、治療有効量の1以上のトリアゾール含有マクロライドまたはケトライド、例えば、1以上の化合物または式(I)を含む。疾患からの救済を必要とするかまたは疾患に苦しむ患者に治療有効量を投与する。
【0020】
別の実施形態では、H.ピロリによって引き起こされる疾患を治療するための方法であって、例えば、限定されるものではないが、オメプラゾール、エソプレマゾールなどの、1以上のプロトンポンプ阻害剤の共投与を含む方法のための化合物、組成物、方法、および医薬品が本明細書に記載されている。
【0021】
別の実施形態では、本明細書に記載の化合物および組成物の経口製剤は、腸溶性コーティングを含む。理論に束縛されるものではないが、腸溶性コーティングは、プロトンポンプ阻害剤が胃酸によってアキラル中間体へと分解されるのを防ぐと本明細書で考えられている。
【0022】
別の実施形態では、腸炎、胃腸炎、および関連疾患を治療するための方法であって、限定されるものではないが、フルオロキノロン抗生物質、メトロニダゾール、バンコマイシンなど、およびその組合せをはじめとする、他の抗生物質の共投与を含む方法のための化合物、組成物、方法、および医薬品が本明細書に記載されている。
【0023】
別の実施形態では、下痢症状を伴う、腸炎、胃腸炎、および関連疾患を治療するための方法であって、腸の運動性を減少させるための他の化合物の共投与を含む方法のための化合物、組成物、方法、および医薬品が本明細書に記載されている。本明細書に記載のマクロライド系化合物は、腸の運動性も減少させ得ると理解される。腸の運動性を減少させる薬剤の例としては、下痢の対症療法に一般に使用されるオピオイド類似体であるロペラミド、および3価のビスマスとサリチル酸塩の不溶性錯体である次サリチル酸ビスマス(BSS)が挙げられるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】pH調整済みブロス中でのMIC測定に基づく、CEM−101、TEL、AZI、およびCLRに対する黄色ブドウ球菌ATCC 25923およびL.モノサイトゲネスEGDの比較感受性。
【図2】ブロス中(左のパネル;pH7.4)またはTHP−1マクロファージによる貪食後(右のパネル)の黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)に対するCEM−101およびAZIの短期的な時間−殺菌効果。両方の薬物を、0.7mg/リットル(上のパネル)または4mg/リットル(下のパネル)のいずれかの細胞外濃度で使用した。CEM−101およびAZIのMICは、それぞれ、0.06および0.5mg/リットルであった。値は全て、3回の独立した実験の平均±標準偏差(SD)である(見えない場合、SD棒は記号よりも小さい)。
【図3】ブロス中(左のパネル)およびTHP−1マクロファージによる貪食後(右のパネル)の黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)に対するCEM−101、TEL、CLR、およびAZIの濃度−効果関係。縦軸は、最初の種菌と比べた24時間での(ブロス)1ml当たりまたは細胞タンパク質1mg(THP−1マクロファージ)当たりのCFUの変化(Δlog CFU)を示す。横軸は、以下のように抗生物質の濃度を示す:(i)上のパネル、ブロス中(左)または培養培地中(右)の重量濃度(mg/リットルで示す)および(ii)下のパネル、pH7.4のブロス中で測定したときのMICの倍数。値は全て、3回の独立した実験の平均±標準偏差(SD)である(見えない場合、SD棒は記号よりも小さい)。曲線当てはめパラメータの大域解析(一元配置分散分析)に基づく統計解析;ブロス中のCEM−101とAZIにのみ有意差がある(P=0.04)。関連する薬理学的記述子の数値およびその差の統計解析を表1に示す。
【図4】食細胞内のL.モノサイトゲネス(EGD株、左のパネル)およびN.ニューモフィラ(ATCC 33153株、右のパネル)に対するCEM−101およびAZIの濃度−効果関係。縦軸は、最初の貪食後種菌と比べた24時間(L.モノサイトゲネス)または48時間(N.ニューモフィラ)での細胞タンパク質1mg当たりのCFUの変化(Δlog CFU)を示す。横軸は、以下のように抗生物質の濃度を示す:(i)上のパネル、重量濃度(mg/リットルで示す);(ii)下のパネル、pH7.4のブロス中で測定したときのMICの倍数。値は全て、3回の独立した実験の平均±標準偏差(SD)である(見えない場合、SD棒は記号よりも小さい)。
【図5】37℃でのTHP−1細胞におけるCEM−101と比較子の蓄積(薬物は全て、10mg/リットルの細胞外濃度である)。(A)蓄積の反応速度論(AZI);Cc、細胞内濃度;Ce、細胞外濃度);(B)蓄積に対するCEM−101(黒塗りの記号および実線)およびAZI(白抜きの記号および点線)の培養培地のpHの影響(30分);(C)AZIおよびCEM−101の細胞蓄積に対するモネンシン(50μM;2時間のインキュベーション)、ベラパミル(150μM;24時間のインキュベーション)、またはゲムフィブロジル(250μM;24時間のインキュベーション)の影響。値は全て、3回の独立した測定の平均±標準偏差(SD)である(見えない場合、SD棒は記号よりも小さい)。
【図6】細胞内活性:他の抗ブドウ球菌剤を用いた比較研究。THP−1マクロファージ中の細胞内黄色ブドウ球菌(ATCC 25923株)に対する抗生物質の比較用量−静菌応答。棒は、MIC(mg/Lで示す)または細胞外静菌用量を表す。
【図7】時間0〜24時間のDlog CFUの用量応答曲線と対数用量で表した、AZI、CLR、およびTELと比べたCEM−101の細胞内活性。
【発明を実施するための形態】
【0025】
一実施形態では、少なくとも一部はGDP株によって引き起こされる疾患を治療するための組成物、方法、および医薬品が本明細書で記載されており、ここで、これらの組成物、方法、および医薬品は、治療有効量の本明細書に記載のトリアゾール含有マクロライドまたはケトライド化合物を含む。別の実施形態では、CLR耐性(CLR−R)の胃疾患を治療するための組成物、方法、および医薬品が本明細書で記載されており、ここで、これらの組成物、方法、および医薬品は、治療有効量の本明細書に記載のトリアゾール含有マクロライドまたはケトライド化合物を含む。
【0026】
別の実施形態では、細胞内で活性のある化合物が本明細書に記載されている。トリアゾール含有マクロライドの細胞内蓄積および細胞内活性は、Pgpまたは多剤耐性タンパク質(MRP)阻害剤による影響を受けないことも本明細書で発見された。したがって、本明細書に記載の化合物は、P−糖タンパク質(原形質または透過性糖タンパク質、Pgp)の基質ではないまたは悪い基質であると考えられている。Pgpは、いくつかの生物による特定の抗生物質に対する耐性をもたらし得る排出機構であることが理解されており、この機構は、例えば、AZIおよびERYについて、両方の抗生物質がP−糖タンパク質の基質となっているマクロファージにおいて報告されている。したがって、本明細書に記載の化合物が細胞内に蓄積することが分かったのは驚くべきことである。細胞内蓄積に加えて、本明細書に記載のトリアゾール含有マクロライドおよびケトライド化合物が高い細胞内活性を有することが発見されたことは驚くべきことである。本明細書に記載の化合物が、限定されるものではないが、膿瘍をはじめとする、細菌感染で見られるpHなどの、より低いpHで、マクロライドに典型的なタンパク質結合よりも低いタンパク質結合を有することが本明細書で分かったことも驚くべきことである。他のマクロライドやケトライドをはじめとする抗菌剤で通常観察される細胞内活性の欠如は、高いタンパク質結合による、および/または膿瘍に存在するような、細胞内コンパートメントの比較的より低いpHによる可能性があることが理解される。
【0027】
しかしながら、能動的な排出によって除去されない場合でも、リソソームコンパートメントのpHが低いために、マクロファージにおける、他のマクロライドやケトライドをはじめとする他の抗菌剤の濃度は、疾患を治療するのに有効でない可能性がある。例えば、(黄色ブドウ球菌がその細胞内段階でとどまる)ファゴリソソームに広がる酸性環境は、AZI、CLRおよびTELなどの抗生物質の活性を障害し得る。本明細書に記載の化合物が低いpHでその抗菌活性を保持することが分かったのは予想外のことである。本明細書に記載の化合物の細胞内活性は、標的生物における耐性の迅速かつ完全な根絶、およびおそらくはまた、予防にとっての、重要な決定因子であり得ることが理解される。
【0028】
効果的な抗微生物療法がないために、細菌が細胞内で生存することになり、これが、細菌のまん延、致命的な治療不全、および慢性的な再発性感染症の確立の主因となっている。これらの状況は、H.ピロリ、C.ジェジュニ、サルモネラ菌、および赤痢菌をはじめとする胃腸疾患を引き起こす多くの生物によって引き起こされる感染の過程で観察される。
【0029】
抗生物質の細胞内蓄積は、細菌に対する有効な活性を示すものであると報告されているが、多くの一連のよく使用される抗生物質の薬力学的評価から、細胞内バイオアベイラビリティや感染コンパートメントにおける活性の調節などの他のパラメータも重要であることが明らかになっている。本明細書に記載のトリアゾール含有マクロライドが、TEL、AZI、およびCLRなどの、既知のマクロライドやケトライドと比べて、驚くべきほどの異なる挙動を示すために、本明細書に記載の観察は、これに関してマクロライドで行なわれたこれまでの観察を確認し、敷延するものである。
【0030】
驚くべきことに、トリアゾール含有マクロライドは、AZIをはじめとする比較子よりもかなり大きい程度に蓄積し、かつより大きな効力(低いE50値およびC値)を一貫して表す一方で、比較子と同様の最大効力(Emax)を示すことが見出されている。理論に束縛されるものではないが、これは、CEM−101に導入された構造的修飾がもたらす改善が、その作用様式の変化にではなく、薬物動態特性や(感染コンパートメントに広がる物理化学的条件に対するその低下した感受性をはじめとする)内活性の調節に関連することを示すと考えられている。したがって、トリアゾール含有マクロライドは、本質的に静菌的なマクロライド特性を示すが、細胞内環境において比較子よりも良好におよび比較子よりもかなり低い細胞外濃度でこの特性を表す。
【0031】
理論に束縛されるものではないが、CEM−101などのトリアゾール含有マクロライドの細胞蓄積は、全てのマクロライドに対して想定される弱い有機塩基のプロトン捕捉という一般的な機構によってもたらされると考えられているが、それは、蓄積が、AZIと同じように、酸性pHまたはプロトンイオノフォアのモネンシンに曝露することによってほぼ完全に抑制されるからである。酸性の膜結合コンパートメントにおける弱塩基の拡散/分離の一般的モデルに基づき、蓄積は、イオン化可能な基の数および非イオン化形態の薬物とイオン化形態の薬物の膜透過性係数の比によって決定される。CEM−101は、2つのイオン化可能な官能基を有するが、アミノフェニルトリアゾールのpKaを計算すると4未満となり、この分子は、中性pHおよびリソソームのpH(約5)でさえも、(CLRやTELと同様に)主としてモノカチオン性であることが示唆される。対照的に、AZIは、pKが6よりも大きい2つのイオン化可能な官能基を有しており、それゆえに、細胞内でジカチオン性である。しかしながら、CEM−101は、2位にフルオロ置換基を有しており、このために、CLRまたはTELよりも親油性になっているはずである。理論に束縛されるものではないが、CLRまたはTELと比べた非イオン化形態のCEM−101とイオン化形態のCEM−101の透過定数の比は、弱い有機塩基の細胞蓄積のレベルを決定するために、イオン化可能な官能基の数と同じぐらい重要であり得ると考えられている。理論に束縛されるものではないが、CEM−101のより大きい細胞蓄積は、1つには、AZIとは対照的に、(本発明者らの培養条件下でTHP−1マクロファージにより発現される)Pgp介在性の排出に対して感受性がないことが原因であり得ると考えられている。
【0032】
多くの既知のマクロライドは大量分布することが観察されており、これは、
酸性コンパートメント、すなわち、リソソームおよび関連する空胞における拡散/分離によって真核生物細胞内に蓄積するその能力に関連すると考えられている。結果として、既知のマクロライドは、これらのコンパートメントに局在する感染の治療のための候補と考えられてきた。したがって、典型的な細胞内病原体によって引き起こされる感染症を治療するのに好適であると仮定することが可能である。しかしながら、黄色ブドウ球菌またはL.モノサイトゲネスなどの通性細胞内病原体を用いた細胞内活性と細胞外活性の直接的な定量的比較により、既知のマクロライドは、特に、その大きい細胞内蓄積を考慮すると、その抗菌能の最低限の部分しか細胞内で発現していないことが示唆される。ファゴリソソームおよび関連する空胞で複製する生物に対するこの最低限に抑えられた抗菌能は、既知のマクロライドの活性を低下させることが知られている酸性pHに関連すると考えられている。別の要因は、H.ピロリ、C.ジェジュニ、サルモネラ菌、および赤痢菌などのいくつかの生物が、他の細胞内コンパートメントで実際に複製し得ることである。さらに、AZIなどの特定のマクロライドは、マクロファージからの能動的な排出を受け、これがさらに、準最適な細胞内活性の一因となっている。
【0033】
対照的に、本明細書に記載のトリアゾール含有化合物の細胞蓄積や細胞内活性は、抗生物質の細胞内薬力学の研究のために開発されたモデルを用いると、ケトライドをはじめとする既知のマクロライドよりも大幅に改善されている。したがって、本明細書に記載の化合物は、そのMICの最大効力を維持しており、かつTEL、AZI、およびCLRと比べて、例えば、H.ピロリ、C.ジェジュニ、サルモネラ菌、および赤痢菌をはじめとする、胃腸疾患を引き起こす生物の細胞内形態に対するより大きい効力を示す。理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載のトリアゾール含有化合物のこの改善された細胞内効力は、低いpHでの保持された活性、および幅広い細胞内コンパートメントに分布する能力と相まって、H.ピロリ、C.ジェジュニ、サルモネラ菌、および赤痢菌をはじめとする、胃腸疾患を引き起こす生物に対するより高い内活性の組合せから生じると考えられている。
【0034】
別の実施形態では、トリアゾール含有マクロライドおよびケトライド化合物は、H.ピロリ、C.ジェジュニ、サルモネラ菌、および赤痢菌をはじめとする、胃腸疾患を引き起こす生物に対する細胞内活性などの、細胞内活性を有する。ルーチンの感受性試験は、通常、細胞外細菌のみに対して決定されるものであり、それゆえ、細胞内生物に対する効力を予測するときに誤解を招く恐れがあることが理解される。別の実施形態では、少なくとも一部は細胞内H.ピロリ、C.ジェジュニ、サルモネラ菌、および赤痢菌によって引き起こされる疾患を治療するための化合物、組成物、方法、および使用が本明細書に記載されている。別の実施形態では、ブドウ球菌感染によって引き起こされる疾患は、胃腸疾患である。H.ピロリ、C.ジェジュニ、サルモネラ菌、および/または赤痢菌は病原性株を含み得ると考えられ、したがって、静菌剤による治療は効果がない可能性があることがさらに理解される。例えば、このような株を治療するとき、再発が問題となることもある。本明細書に記載の化合物が殺菌性でもあり、それゆえ、いずれの症例においても、このようなH.ピロリ、C.ジェジュニ、サルモネラ菌、および/または赤痢菌の株によって引き起こされる疾患を治療するのに有用であることが本明細書で発見されたこと予想外のことである。
【0035】
別の実施形態では、本明細書に記載の化合物、方法、および医薬品は、治療有効量の本明細書に記載の1以上の化合物を含み、ここで、治療有効量は、細胞内抗菌活性を示すのに有効な量である。
【0036】
別の実施形態では、殺菌性の化合物が本明細書に記載されている。別の実施形態では、本明細書に記載の化合物、方法、および医薬品は、治療有効量の本明細書に記載の1以上の化合物を含み、ここで、治療有効量は、インビボでの殺菌活性をはじめとする、殺菌活性を示すのに有効な量である。マクロライドは、通常、静菌性であることが報告されている。静菌化合物は、細菌を死滅させるのではなく、その代わりに、例えば、細菌を死滅させずに細菌の増殖や生殖を阻害する。死滅させるのは、殺菌剤によって達成される。身体から微生物を除去するためには、静菌剤が免疫系とともに作用しなければならないことが理解される。静菌性抗生物質は、細菌タンパク質産生、DNA複製、または他の細菌細胞代謝の局面を妨害することによるものなどの、いくつかのメカニズムを介して細菌の増殖を制限し得る。対照的に、殺菌性抗生物質は細菌を死滅させ、静菌性抗生物質は、その増殖または生殖を遅くするに過ぎない。ペニシリンは、セファロスポリンと同様に、殺菌剤であり、これらは全て、β-ラクタム抗生物質群に属している。これらは、細胞壁前駆体を破壊することにより殺菌剤のように作用し、溶解をもたらす。さらに、アミノグリコシド抗生物質は、通常、殺菌性であると考えられるが、いくつかの生物に対しては静菌性であり得る。これらは、30sリボソームサブユニットに不可逆的に結合することにより作用し、翻訳忠実度を低下させ、不正確なタンパク質合成をもたらす。さらに、これらは、mRNAとリボソームタンパク質の複合体の早過ぎる分離により、タンパク質合成を阻害する。最終的な結果は、細菌細胞死である。他の殺菌性抗生物質としては、フルオロキノロン、ニトロフラン、バンコマイシン、モノバクタム、コトリモキサゾール、およびメトロニダゾールが挙げられる。
【0037】
別の実施形態では、本明細書に記載の化合物、組成物、方法、および医薬品は、治療有効量の本明細書に記載の1以上の化合物を含み、ここで、治療有効量は、H.ピロリ、C.ジェジュニ、サルモネラ菌、および赤痢菌をはじめとする、1以上の胃腸疾患を引き起こす生物に対する殺菌活性を示すのに有効な量である。理論に束縛されるものではないが、静菌剤を用いてこのような疾患を治療するのは、2つの点でうまくいかない可能性があると考えられている。第1に、免疫系が必要なレベルでこの疾患を治す手助けをするようには介入しない可能性があるので、この疾患の進行を静菌剤で止めるだけでは不十分である可能性がある。例えば、いくつかの細菌生物は、細胞内コンパートメントに存在するので、免疫系によって死滅させられない。したがって、治療コースが終わるとすぐに、疾患の急速な再発が起こり得る。第2に、細菌集団の一部が排除される可能性が高いので、残りの集団が、耐性発生について選択される可能性がある。細胞内で活性がある薬剤、および/または細胞内で活性がありかつ殺菌性である薬剤は、このような疾患を治療するのに有効であると本明細書で考えられている。例示的な一実施形態では、標的とされる細菌のMICの20倍の細胞内濃度を達成する本明細書に記載の化合物。全てではないにせよ、ほとんどのマクロライド系抗生物質は、インビトロで殺菌性であるが、インビボでは静菌性でしかないことが報告されている。例えば、以下に記載されるように、化合物の最後の投与の間の時間を延長したとき、汚染微生物数(bioload)の減少レベルは、本明細書に記載のトリアゾール含有化合物では変わらず、殺菌応答を示した。対照的に、TELおよびCLR投与群は、時間間隔を延長したときに、汚染微生物数の増加を示した。したがって、これらの後者2つのマクロライド/ケトライド剤は、より古典的な静菌応答を示した。
【0038】
別の例示的な実施形態では、XおよびYが付加された炭素と一緒になってC(O)基を形成する、式(I)の化合物が本明細書に記載されている。別の実施形態では、XはHであり、YはORであり、ここで、Rは、クラジノシルなどの、単糖ラジカルである。別の実施形態では、Wがフルオロである、式(I)の化合物が本明細書に記載されている。別の実施形態では、AおよびBが一緒になって、限定されるものではないが、プロピレン、ブチレン、およびペンチレンをはじめとするアルキレン基を形成する、式(I)の化合物が本明細書に記載されている。別の実施形態では、AおよびBが一緒になってブチレンを形成する、式(I)の化合物が本明細書に記載されている。別の実施形態では、AおよびBが一緒になってペンチレンを形成する、式(I)の化合物が本明細書に記載されている。別の実施形態では、AおよびBが一緒になってブチレンを形成し、Cが2−ピリジニルまたはアミノフェニル、例えば、3−アミノフェニルである、式(I)の化合物が本明細書に記載されている。別の実施形態では、AおよびBが一緒になって、プロピレン、ブチレン、またはペンチレンを形成し、Cがアミノフェニル、例えば、3−アミノフェニルである、式(I)の化合物が本明細書に記載されている。別の実施形態では、AおよびBが一緒になってペンチレンを形成し、Cが3−ピリジニルまたはベンゾトリアゾールである、式(I)の化合物が本明細書に記載されている。別の実施形態では、Cが任意に置換されたアリールまたはヘテロアリール基である、式(I)の化合物が本明細書に記載されている。別の実施形態では、Vがカルバモイル基である、式(I)の化合物が本明細書に記載されている。別の実施形態では、R10が水素である、式(I)の化合物が本明細書に記載されている。別の実施形態では、XはHであり、YはORであり、ここで、Rは、クラジノシルなどの、単糖ラジカルであり、Cは3−ピリジニルまたはベンゾトリアゾリルである。
【0039】
別の実施形態では、Cは、フェニル、ハロフェニル、ハロアルキルフェニル、アミノフェニルなどの任意に置換されたフェニル、2−ピリジニルや3−ピリジニルなどの任意に置換されたピリジニル、任意に置換されたベンゾトリアゾールなどである。
【0040】
別の実施形態では、AおよびBは一緒になってブチレンまたはペンチレンを形成し、XおよびYは付加された炭素と一緒になってC(O)基を形成する。
【0041】
別の実施形態では、VがC(O)である、前述の実施形態のいずれかに記載の化合物が記載されている。別の実施形態では、WがHまたはFである、前述の実施形態のいずれかに記載の化合物が記載されている。別の実施形態では、AがCHであり、Bが(CHであり、nが2〜4の整数である、前述の実施形態のいずれかに記載の化合物が記載されている。別の実施形態では、Cがアリールまたはヘテロアリールである、前述の実施形態のいずれかに記載の化合物が記載されている。別の実施形態では、Cが3−アミノフェニルまたは3−ピリジニルである、前述の実施形態のいずれかに記載の化合物が記載されている。別の実施形態では、R10が水素である、前述の実施形態のいずれかに記載の化合物が記載されている。別の実施形態では、AおよびBが一緒になってブチレンまたはペンチレンを形成し、XおよびYが付加された炭素と一緒になってC(O)基を形成する、前述の実施形態のいずれかに記載の化合物が記載されている。別の実施形態では、AおよびBが一緒になってブチレンまたはペンチレンを形成し、XおよびYが付加された炭素と一緒になってC(O)基を形成し、WがFである、前述の実施形態のいずれかに記載の化合物が記載されている。
【0042】
別の実施形態では、抗菌組成物が本明細書に記載されており、ここで、この組成物は、有効量の本明細書に記載の1以上の化合物、および薬学的に許容されるそのための担体、賦形剤、もしくは希釈剤、またはその組合せを含む。
【0043】
本明細書で使用されるとき、「組成物」という用語は、通常、指定された量の指定された成分を含む任意の産物、および直接的または間接的に、指定された量の指定された成分の組合せから得られる任意の産物を指す。例として、組成物は、1以上の担体、希釈剤、および/または賦形剤を含み得る。本明細書に記載の化合物は、1以上のそのための担体、希釈剤、および/または賦形剤を含む、本明細書に記載の方法のための従来の投薬形態として、治療有効量で製剤化し得る。このような製剤組成物は、本明細書に記載の方法のための幅広い種類の従来の経路により、当該技術分野で認識される製品を利用して、幅広い種類の投薬形式で投与し得る。一般には、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第16版、1980)を参照されたい。本明細書に記載の組成物を、本明細書に記載の単離された化合物または本明細書に記載の化合物の塩、溶液、水和物、溶媒和物、およびその他の形態から調製し得ることが理解されるべきである。これらの組成物を、本明細書に記載の化合物の様々なアモルファス、非アモルファス、部分結晶、結晶、および/またはその他の形態学的形態から調製し得ることも理解されるべきである。
【0044】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師または他の臨床医が求めている組織システム、動物またはヒトにおける生物学的または医学的応答を誘発する活性化合物または医薬品の量を指し、この生物学的または医学的応答には、治療される疾患または障害の症状の緩和が含まれる。一態様では、治療有効量とは、任意の医学的処置に適用できる妥当なベネフィット・リスク比で疾患または疾患の症状を治療または緩和し得る量のことである。しかしながら、本明細書に記載の化合物および組成物の合計日用量は、健全な医学的判断の範囲内において担当医によって決められ得ることが理解されるべきである。任意の特定の患者に対する特定の治療有効用量レベルは、治療される障害およびその障害の重症度;使用される特定化合物の活性;使用される特定組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康、性別および食事:投与の時間、投与の経路、および使用される特定化合物の排泄速度;治療の持続期間;使用される特定化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;ならびに医学の分野でよく知られている同様の因子をはじめとする種々の因子によって決まるであろう。
【0045】
一実施形態では、本明細書に記載の化合物は、約1〜約10mg/kg患者体重、約2〜約8mg/kg患者体重、または約4〜約6mg/kg患者体重の用量でヒトに経口投与される。別の実施形態では、成人ヒトの日用量は、約100〜約1,000mgであり、これは、1日1回、1日2回、1日3回などで投与し得る。別の実施形態では、成人ヒトの日用量は、約400〜約600mgであり、これは、1日1回、1日2回、1日3回などで投与し得る。このような用量を、1日1回、1日2回、または1日3回投与し得る。例示的な経口単位投薬量は、50、100、200、および400mg(単回または分割)である。理論に束縛されるものではないが、このような例示的投薬量は、例えば、H.ピロリ、C.ジェジュニ、サルモネラ菌、および赤痢菌に関して、本明細書に記載の化合物の殺菌活性を認めるのに十分であり得る、約1μg/mLの血漿レベルを達成するのに十分であると考えられている。本明細書に記載されるように、CEM−101をはじめとする本明細書に記載の化合物は、肺組織などの組織で高濃度に達することが理解される。理論に束縛されるものではないが、CEM−101をはじめとする本明細書に記載の化合物は、マクロライド耐性株、例えば、限定されるものではないが、マクロライドまたはケトライド(例えば、AZI、TEL、および/またはCLR)に耐性のある生物をはじめとする、H.ピロリ、C.ジェジュニ、サルモネラ菌、および赤痢菌の株のMICの少なくとも10倍となる組織レベルを達成し得ると本明細書で考えられている。
【0046】
本明細書に記載の化合物は、本明細書に記載の通りに、または米国特許出願公開第2006/0100164号およびPCT国際公開WO2009/055557号に従って調製することができ、これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
簡潔に述べると、トリアゾール含有ケトライドの合成は、クラリスロマイシン(2)からの12−アシル−イミダゾール中間体4(スキームI)の既知の2工程調製から開始される。中間体4は、対応する3−、4−または5−炭素結合アミノアルコールとの反応によって、11,12−環状カルバメート5a−cに変換される。5a−cを塩化トシルで処理すると、トシレート6a−cが得られる。このトシル基をNaNと置き換えると、対応するアジド化合物7a−cが得られる。クラジノース糖7a−cの8a−8cへの切断は、MeOH中のHClによる処理によって達成される。8a−cの3−ヒドロキシ基のスワン酸化により、対応する保護ケトライド9a−cが得られ、その後、これらをメタノールで脱保護すると、それぞれ、所要のアジドケトライド10a−cが得られる。これらのアジド化合物を、ヨウ化銅の存在下、トルエン中60℃で末端置換アルキンと反応させると、対応する4−置換−[1,2,3]−トリアゾール11a−18a、11b−18b、および11c−18cが位置選択的に得られた。
【0048】
中間体10a−cのアジドは、置換アセチレンとの付加環化反応によって4−置換−[1,2,3]−トリアゾールに変換される。トリアゾール環は、スキームIIの経路Aに示すように、1,4−位置異性体と1,5−位置異性体の混合物を生じさせるアジドとアルキンのヒュスゲン1+3付加環化反応によって形成してもよい。あるいは、スキームIIの経路Bに示すように、反応液へのCuI触媒の添加を用いて、1,4−位置異性体を選択的にまたは排他的に生成させるRostovtsevらの方法に従ってもよい。
【0049】
トリアゾール環側鎖もクラリスロマイシン環系に組み入れられる。一実施形態では、ブチルアルキル側鎖が選択される。ケトライドシリーズの多くのブチル側鎖類似体により、インビトロのMIC結果に基づく抗菌活性が改善されていることが理解される。中間体7bは、スキームIIIに示すように、銅が触媒する末端置換アセチレンとの環化によって、4−置換−[1,2,3]−トリアゾールに直接的に変換される。19a−eのアセテート保護基をメタノール中のLiOHで除去すると、対応する4−置換−[1,2,3]−トリアゾール20a−eが得られる。
【0050】
2位水素とフッ素との置換は、Selectfluor(登録商標)を用いた9bの求電子フッ素化(スキームIV)によって達成される。中間体22のアジド基は、標準的な条件によって、一連の4−置換−[1,2,3]−トリアゾール23a−bに変換される。
【0051】
スキームI
【化2】

スキームII
【化3】

スキームIII
【化4】

スキームIV
【化5】

【0052】
別の実施形態では、以下の化合物が記載されている。
【化6】


【表1】

米国臨床検査標準委員会。Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria that Grow Aerobically,第6版;Approved standard:NCCLS文書M7−A6,2003。
【0053】
別の実施形態では、以下の化合物が記載されている。
【化7】

【表2】

【0054】
別の実施形態では、以下の化合物が記載されている。
【化8】

【表3】

【0055】
前述の実施形態の各々では、1次スクリーニングパネルは、関連する黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌、肺炎レンサ球菌(アジスロマイシンおよびテリスロマイシンに耐性のある株を含む)からなるものであった。全ての病原体に対するMICを、NCCLS指針の通り、ブロス微量希釈法を用いて決定した。本明細書に記載の化合物、例えば、CEM−101は、それぞれテリスロマイシンの1μg/mLおよび8μg/mLと比べて、肺炎レンサ球菌(3773)に対して0.125μg/mL以下および化膿レンサ球菌(1850)に対して0.5μg/mLというMICを有する極めて強力なものであることが分かった。3−O−クラジノースを含有するCEM−101の類似体である、CEM−103(20c)は、活性が低いことが分かった。非ヘテロ芳香族置換トリアゾール含有ケトライドは活性が低かった。
【0056】
ケトライドを、黄色ブドウ球菌(29213(Ery−S)と96:11480(Ery−R))、肺炎レンサ球菌(49619(Ery−S)と163および303(Ery−R))ならびにインフルエンザ菌(49247(Ery−S))のエリスロマイシン感受性株(Ery−S)およびエリスロマイシン耐性株(Ery−R)に対して試験した(表1〜3)。ブロス微量希釈法を用いて、臨床検査標準協会(CLSI)の通り、全ての病原体に対する最小阻害濃度(MIC)を決定した。
【0057】
アルキル側鎖の鎖長は活性に影響を及ぼした(表1)。例えば、3−炭素結合フェニル置換トリアゾール11aは、被験濃度では、Ery−SおよびEry−Rの黄色ブドウ球菌に対する活性が低く、Ery−Rの肺炎レンサ球菌303(ermB)に対しては不活性であったのに対し、対応する4−および5−炭素結合フェニル置換トリアゾール11bおよび11cは、これらの生物に対してより活性があった。同様の傾向は、2−ピリジル置換トリアゾール14a−c、3−アミノ−フェニル置換トリアゾール16a−c、および2,5−ジクロロフェノキシ置換トリアゾール17a−cで観察された。
【0058】
4−炭素結合2−ピリジル置換トリアゾール14bおよび3−アミノ−フェニル置換トリアゾール16bは、肺炎レンサ球菌303に対して最も高い効力を有し、MIC値は両方ともテリスロマイシンと同程度(≦0.125μg/mL)であった。4−炭素結合3−ピリジル置換トリアゾール15bを含有するケトライドは、この株に対する活性が低かった(MIC 64μg/mL)。このシリーズにおいて、抗菌活性は、炭素リンカーを5原子伸長させることにより改善され、例えば、化合物15cの肺炎レンサ球菌303に対するMICは、64μg/mLから4μg/mLに改善された。同様の効果は、黄色ブドウ球菌に対してベンゾトリアゾール含有ケトライド18cでも観察されたが、18cは、肺炎レンサ球菌303に対しては依然として不活性であった。リンカーの長さとトリアゾールの芳香族置換の性質の均衡が、マクロライド耐性の肺炎レンサ球菌および黄色ブドウ球菌に対する全体的な活性に影響を及ぼし得ることが理解される。
【0059】
リンカーの長さと活性の相関はインフルエンザ菌(49247)でも観察されたが、この場合、最も強力なケトライドシリーズは、4−炭素鎖(11b−14b、16b、17b)または5−炭素鎖(15c、18c)のいずれかを介して結合した置換トリアゾールを有していた。興味深いことに、インフルエンザ菌に対する最も強力な芳香族シリーズは、それぞれ、16、2、および8μg/mLというMICを有する、3−、4−または5−炭素リンカー(16a、16b、16c)を有する3−アミノ−フェニルであった。
【0060】
3位にクラジノースを含有するマクロライドは全て、Ery−Sの肺炎レンサ球菌(49619)に対する活性が高かった(表2)。しかしながら、これらの類似体は、Ery−R株に対してはテリスロマイシンよりも強力でなかった。MICは、対応するケトライドよりも、2−ピリジル、2−アミノフェニルまたは2,6−ジクロロフェニルトリアゾール置換基を有するクラジノース含有類似体で有意に高かった(20a、20c、および20d対14b、16b、および17b)。反対に、抗菌活性は、類似体20b(3−ピリジル)および20e(ベンゾトリアゾール)においてケトをクラジノース基と置き換えることによって、ケトライド類似体15b(3−ピリジル)および18b(ベンゾトリアゾール)で再度確立された。MICは、それぞれ、15bおよび18bの64μg/mLから20bおよび20eの1μg/mLおよび2μg/mLに改善された。同様の活性傾向は、Ery−Rの肺炎レンサ球菌163(MefA)でも観察された。
【0061】
化合物例
【化9】

11−N−(4−アジド−ブチル)−6−O−メチル−5−(3−ジメチルアミン−4−デオキシ−6−O−アセチル−glu−コピラノシル)−2−フルオロ−3−オキソ−エリスロノライドA、11,12−カルバメート(15mg、0.019mmol)、6−エチニル−ピリジン−2−イルアミン(4.7mg、0.4mmol)、CuI(1mg、0.005mmol)、およびトルエン(0.2mL)の混合物を70℃に加熱した。16時間後、この混合物を濃縮し、そのままシリカゲルクロマトグラフィー(9:1、クロロホルム:メタノール+1%水酸化アンモニウム)に供すると、14mgの所望の化合物が得られた。MS:C4466FN12、計算値M=903.5、実測値:M+H=904.5。
【0062】
【化10】

11−N−4−(3−アミノフェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−ブチル}−5−デソサミニル−3−オキソ−2−フルオロ−エリスロノライドA、11,12−環状カルバメート(CEM−101)。11−N−(4−アジド−ブチル)−6−O−メチル−5−デソサミニル−3−オキソ−2−フルオロ−エリスロノライドA、11,12−カルバメート(17mg、0.023mmol)、3−エチニル−フェニルアミン(5.4mg、0.046mmol)、CuI(1mg、0.005mmol)、およびトルエン(0.2mL)の混合物を70℃に加熱した。16時間後、この混合物を濃縮し、そのままシリカゲルクロマトグラフィー(9:1、クロロホルム:メタノール+1%水酸化アンモニウム)に供すると、17mgの所望の化合物が得られた。MS C4365FN10、計算値M=844.47、実測値:M+H=845.5。
【0063】
【化11】

11−N−{4−[4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−ブチル}−5−デソサミニル−3−オキソ−2−フルオロ−エリスロノライドA、11,12−環状カルバメート。11−N−(4−アジド−ブチル)−6−O−メチル−5−デソサミニル−3−オキソ−2−フルオロ−エリスロノライドA、11,12−カルバメート(15mg、0.02mmol)、6−エチニル−ピリジン−2−イルアミン(4.7mg、0.4mmol)、CuI(1mg、0.005mmol)、およびトルエン(0.2mL)の混合物を70℃に加熱した。16時間後、この混合物を濃縮し、そのままシリカゲルクロマトグラフィー(9:1、クロロホルム:メタノール+1%水酸化アンモニウム)に供すると、14mgの所望の化合物OP1357が得られた。MS:C4264FN10、計算値M=845.5、実測値:M+H=846.5。
【0064】
【化12】

11−N−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イルメチル−[1,2,3]トリアゾール−1−イル)−ブチル]−6−O−メチル−5−O−ダソサミニル−3−オキソ−エリスロノライドA、11,12−カルバメート。11−N−(4−アジド−ブチル)−6−O−メチル−5−O−デソサミニル−3−オキソ−エリスロノライドA、11,12−カルバメート(3mg、0.0039mmol)、1−プロプ−2−イニル−1H−ベンゾトリアゾール(3mg、0.4mmol)、CuI(1mg、0.005mmol)、およびトルエン(0.2mL)の混合物を80℃に加熱した。16時間後、この混合物を濃縮し、そのままシリカゲルクロマトグラフィー(9:1、クロロホルム:メタノール+1%水酸化アンモニウム)に供すると、3mgの所望の化合物が得られた。MS:C446610、計算値M=866.5、実測値:M+H867.5。
【0065】
【化13】

11−N−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イルメチル−[1,2,3]トリアゾール−1−イル)−ブチル]−6−O−メチル−5−ミカミノシル−3−オキソ−エリスロノライドA、11,12−カルバメート。11−N−(4−アジド−ブチル)−6−O−メチル−5−ミカミノシル−3−オキソ−エリスロノライドA、11,12−カルバメート(3mg、0.004mmol)、1−プロプ−2−イニル−1H−ベンゾトリアゾール(3mg、0.4mmol)、CuI(1mg、0.005mmol)、およびトルエン(0.2mL)の混合物を80℃に加熱した。16時間後、この混合物を濃縮し、そのままシリカゲルクロマトグラフィー(9:1、クロロホルム:メタノール+1%水酸化アンモニウム)に供すると、3mgの所望の化合物が得られた。MS:C446611、計算値M=882.5、実測値:M+H=883.5。
【0066】
方法例
SAL(20株、11の血清型に相当)および赤痢菌(40株;4つの種)を、M100−S18ブレイクポイントを適用して、CLSIブロス微量希釈法により試験した。C.ジェジュニ(20)およびH.ピロリ(23)を、ヒツジ血液を補充して、ミューラー−ヒントン寒天希釈法により試験し、C.ジェジュニの結果をEtest(AB BIODISK,Solna,Sweden)で確認した。重要な比較薬剤、すなわち、AZI、CLR、TEL、レボフロキサシン(LEV)、アモキシシリン/クラブラネート(A/C)およびトリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SMX)を試験した。
【0067】
CEM−101は、食品由来のGDPサルモネラ菌(MIC50、4μg/ml)、赤痢菌(MIC50、8μg/ml)およびC.ジェジュニ(MIC50、1μg/ml)に対する活性を示した。これは、TEL(8〜16μg/ml)、ERY(2〜>4μg/ml)、AZI(4μg/ml)およびA/C(2〜8μg/ml)と同等かまたはそれよりも優れていた(MIC50範囲)。CLRの結果は様々であり(MIC50範囲、0.015〜>16μg/ml)、TMP/SMXも同様であった。LEVは非常に活性が高かった(MIC50、≦0.12μg/ml)。HP CEM−101のMICの結果は、0.03から0.25μg/mlのものと2または4μg/mlのものに分かれた。後者は、CLA−R(≧16μg/ml)株に対応する。
【表4】

【0068】
カンピロバクター・ジェジュニ、ヘリコバクター・ピロリおよび腸内細菌科(サルモネラ菌種、赤痢菌種)をはじめとする、いくつかの特別な生物サブセットを特に試験した。臨床検査標準協会(CLSI)の方法および代替的なEtest(AB Biodisk,Solna,Sweden)法をはじめとする、標準的な品質法を適用した。近年、MLSB−ケトライド類の化合物がいくつかの胃腸(GI)感染症に使用されており、いくつかの潜在的治療剤に対する耐性のために、新規の治療的選択肢の探索が必要となっている。本明細書に記載の化合物を、これらのGI適応症への適用の可能性についてインビトロでスクリーニングした。
【0069】
材料および方法。感受性試験法。C.ジェジュニ、淋菌およびH.ピロリについては、CLSI M7−A7(2006)およびM100−S18(2008)寒天希釈法を以下のように使用した。H.ピロリおよびカンピロバクター種には、5%ヒツジ血液を含むミューラー−ヒントン(MH)寒天。10CFU/スポット種菌。エンドポイントは24時間(C.ジェジュニ)または72時間(H.ピロリ)で読み取る。種に適したインキュベーション環境を適用(CO2を加えるかまたは微好気的にする)。
【0070】
JMI Laboratoriesにより作製された96ウェルの凍結形態アッセイパネルも使用した。このパネルは、腸内細菌科を試験するためのカチオン調整したMブロスからなっていた。比較子薬剤を試験した。
【0071】
表1は、H.ピロリに対するCEM−101活性をまとめたものである。CEM−101を含む5つの薬物を試験することにより、8つの株を比較した。結果は、CEM−101がCLRまたはアミノペニシリン(MIC50、≦0.015μg/ml)よりもわずかに活性が低いことを示した。しかしながら、比較子の活性測定は、Etestの結果であり、基準寒天希釈法の結果ではなかった。CLRについての方法間データ(データは示さない)は、より低いEtest結果(4倍)に向かう傾向を示した。CLR耐性(>16μg/ml)株についてのCEM−101のMICは、2または4μg/mlに過ぎなかった。
【表5】


a.CLSI[2008]により発表された基準。−=解釈上の基準は確立されていない。
b.サルモネラ・ダブリン(1株)、S.エンテリティディス(4株)、S.ハダー(1株)、S.ハイデルベルグ(1株)、S.インファンティス(1株)、パラチフス菌(3株)、チフス菌(3株)、ネズミチフス菌(1株)、B群サルモネラ菌(2株)、C群サルモネラ菌(1株)、およびD群サルモネラ菌(2株)を含む。
c.シゲラ・ボイディ(6株)、ジセンテリア(3株)、S.フレキシネリ(14株)、およびS.ソネイ(17株)を含む。
d.CLSI(M7−A7)により推奨される寒天希釈法を用いて試験した。
e.製造元の推奨を用いたEtest(AB BIODISK,Solna,Sweden)で試験した。
f.23株をCLSI(2006)法により試験し、8株をEtestにより試験した。アンピシリン、メトロニダゾールおよびテトラサイクリンの結果は、Etestにより得られた。
g.トリメトプリム−スルファメトキサゾール
【0072】
試験される生物は全て、2005年から現在までの米国およびヨーロッパの医療施設の患者から収集した。回収した分離株の供給源には、血流、皮膚および軟組織、気道感染ならびに胃腸管が含まれていた。珍しい/稀な生物種および表現型については、2005年以前にまたは他の地理的地域から分離された株を使用する必要があった。以下の生物を試験した:H.ピロリ(23;2つのCLR耐性)、C.ジェジュニ(20;フルオロキノロンおよびテトラサイクリン耐性試料)、サルモネラ菌種(20;11の群)、赤痢菌種(40;4つの種)。
【0073】
表2は、全ての試験した株(4つの種;103の株)についてのCEM−101のMIC分布を示す。H.ピロリについてのCEM−101のMIC結果は最も低かったが(≦0.03〜0.4μg/ml)、腸内細菌科のMICは最大≧16μg/mlにまで及ぶことがあった。
【表6】

【0074】
CEM−101は、製造元の添付文書の指示を用いたEtest(AB BIODISK)により、ブドウ球菌(MIC50、0.06μg/ml)、レンサ球菌(MIC50、0.015μg/ml)、腸球菌(MIC50/90、0.25μg/ml)ならびにERYおよびCLNに耐性のある株をはじめとする他のグラム陽性球菌に対して強力な活性を示す。CEM−101および14の選択された比較抗微生物剤を試験した。
【0075】
比較子化合物についての品質管理(QC)範囲および解釈基準は、CLSI M100−S18(2008)に公表されたものと同様であり;試験したQC株には、黄色ブドウ球菌ATCC 29213、E.フェカリスATCC 29212、肺炎レンサ球菌ATCC 49619、H.ピロリATCC 43504、およびC.ジェジュニ ATCC 33560が含まれる。
【0076】
CEM−101はH.ピロリ(MIC50、0.06μg/ml)、および様々な他の胃腸病原体を阻害した。H.ピロリに対するCEM−101活性(MIC90、0.25μg/ml)は、CLR(MIC90、0.12μg/ml)のCEM−101活性に非常によく似ていた。CEM−101は、C.ジェジュニ(MIC50およびMIC90結果、1〜4μg/ml)に対する他のマクロライドにも非常によく似ていた。CEM−101は、サルモネラ菌種および赤痢菌種によって引き起こされる腸内感染に対する適用の有望性も示し、活性は、AZIの活性と同様であった。
【0077】
実施例。H.ピロリ胃腸炎の動物モデル。メスのC57BL/6マウス(年齢、>7週齢)に、100μl懸濁液(10CFU/ml)の強制飼養によってH.ピロリのSS1株(Lee,et al.,1997,Gastroenterology 112:1386−1397)を接種する。モノクローナル抗体ベースの酵素連結免疫吸着アッセイ(FemtoLab H.pylori Cnx;Connex,Martinsried,Germany)を用いて糞ペレットを解析し、H.ピロリ(SS1)による感染を検出することにより、感染をモニタリングする(Crone,et al., Clin Diagn Lab Immunol.2004 July;11(4):799−800に倣って)。製造元のガイドラインに従って、0.150未満の光学密度(OD)をH.ピロリに対して陰性であると定義し、0.150よりも大きいODを陽性の試験結果とみなした。
【0078】
組織学的方法および組織ホモジネートの培養を用いて、感染レベルおよび存在する胃炎のレベルも測定する。COによる窒息および頸椎脱臼によりマウスを屠殺し、その後、組織学的検査および細菌培養のために胃を切除する。パラフィン包埋切片を、組織検査のためにヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、細菌のコロニー化を評価するために、改変したメイ・グリュンワルド・ギムザ染色液で染色する(Laine,et al.,1997,Gastrointest.Endosc.45:463−467)。改変した胃炎用のシドニー・グレーディング・システム(Lee,et al.,1997)を用いて、胃体部と前庭部で胃炎を評価する。胃炎の重症度および細菌のコロニー化密度を、客観的な観察者による盲検定で評価する。
【0079】
CEM−101をプロトコルの投薬レジメンに従ってプロトンポンプ阻害剤化合物とともにおよびプロトンポンプ阻害剤化合物なしで投与し、上記のように感染の程度をモニタリングする。
【0080】
実施例。ヒトTHP−1マクロファージを用いた。蓄積を微生物学的アッセイで測定した。用量応答法(AAC 2006;50:841−51)を用いて、貪食された黄色ブドウ球菌(ATCC 25923;MIC:CEM−101、0.125mg/L;AZI、0.5mg/L)に対して細胞内活性を決定した。ベラパミル(100μM)およびゲムフィブロジル(250μM)を、それぞれ、P−糖タンパク質およびMRPの阻害剤として用いた(AAC,2007;51:2748−57)。
【0081】
排出輸送体阻害剤とともにおよび排出輸送体阻害剤なしで、24時間インキュベートした後の蓄積および活性を以下の表に示す。表中、Cc/Ceは、見かけの細胞濃度対細胞外濃度比であり、Emaxは、(用量−効果応答実験の非線形回帰[シグモイド]から計算された)貪食後種菌と比べた細胞内cfuの最大減少である。
【表7】

【0082】
実施例。抗生物質の細胞内活性。食細胞内の黄色ブドウ球菌株ATCC 25923に対する抗生物質活性の決定を行なった。食細胞内の黄色ブドウ球菌(ATCC 25923株[MIC:CEM−101、0.125mg/L;AZI、0.5mg/L]に対するCEM−101およびAZIの細胞内活性の調節における能動的排出の影響を評価するために、完全な用量−応答研究を行なった。抗生物質を、(i)その相対的な静菌濃度(Cs)、および(ii)その相対的な最大効力(E)について、24時間で比べた。ベラパミルはAZIの細胞内活性を増加させるが(ゲムフィブロジルは増加させない)、どちらの阻害剤もCEM−101の活性に対してそれほど効果がなく、CEM−101は、AZIとは対照的に、対応する真核生物輸送体の基質ではないことが示唆される。
【0083】
実施例。抗生物質の細胞蓄積。マクロライドの細胞内含有量を、黄色ブドウ球菌ATCC 25923を試験生物として用いて、微生物学的アッセイにより、THP−1マクロファージで測定した。細胞タンパク質を、フォーリン−チオカルト/ビウレット法を用いて並行してアッセイした。総細胞タンパク質含有量を参照してマクロライドの細胞関連含有量を表し、(培養細胞に対して一般に用いられる)5μL/mg細胞タンパク質という変換係数を用いて、見かけの濃度に変換した。
【0084】
THP−1細胞におけるAZIの細胞蓄積と比べたCEM−101の細胞蓄積をまず測定した(図5(パネルA))。24時間で、両方の抗生物質は細胞内に大量に濃縮されたが、CEM−101の方がより大きい値(Cc/Ce)であった。第2段階で、CEM−101がPgpまたはMRP排出輸送体の基質であるかどうかを調べた(図5(パネルB))。Pgp阻害剤(ベラパミル)またはMRP阻害剤(ゲムフィブロジル)を用いると、ベラパミルによって、AZIの細胞蓄積は有意に増加するが、CEM−101の細胞蓄積の有意な変動は観察されない。
【0085】
CEM−101の取込みは経時的に線形であり、24時間以内に約375倍の蓄積レベルに達した(AZI、160倍、CLR、30倍、TEL、21倍)。蓄積は、酸性pHまたはプロトンイオノフォアのモネンシンの添加により抑制されたが、ベラパミルまたはゲムフィブロジル(ぞれぞれ、PgpおよびMRPの選択的阻害剤)によって改変されなかった。パネルBは、これらの実験が酸性pHで行なわれたときに、CEM−101とAZIの両方の蓄積が低下し、pHを7から6にしたときに、この変化がほぼ完全に起こったことを示している。パネルCは、多くの弱い有機塩基の細胞蓄積を減少させることが知られているモネンシンも、CEM−101とAZIの両方の蓄積をほぼ完全に抑制したことを示している。対照的に、P−糖タンパク質排出輸送体(Pgp、別名MDR1)の阻害剤であるベラパミルは、CEM−101の蓄積に影響を及ぼすことなく、AZIの蓄積を増加させ、その一方、多剤耐性タンパク質(MRP)および他の有機アニオン輸送体の阻害剤であるゲムフィブロジルは、どちらの化合物にも影響を及ぼさなかった。ベラパミルもゲムフィブロジルもTELまたはCLRの蓄積に影響を及ぼさなかった(データは示さない)。10mg/LのCEM−101とともに1時間インキュベートし、その後、薬物を含まない培地に移した細胞からのCEM−101の排出を調べた。排出は二峰性に進行し、細胞関連薬物の半分は約10分以内に放出され、次いで、数時間のより緩徐な放出期があった(データは示さない)。
【0086】
実施例。マクロライドは真核生物細胞に蓄積し、細胞内感染の治療に有利であると考えられる。ケトライドは、エリスロマイシン耐性生物に対する活性がある。細胞内形態の黄色ブドウ球菌(S.a.)、リステリア・モノサイトゲネス(L.m.)、およびレジオネラ・ニューモフィラ(L.p.)に対するCEM−101の細胞蓄積および細胞内活性を、AZI、CLR、およびTELと比べて、以下の表に示す。
【表8】

【0087】
実施例。抗生物質のMICおよび細胞外活性を中性pHと酸性pHの両方のMHB中で決定した。THP−1マクロファージによって貪食される黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)に対する細胞内活性を以前に記載された通りに決定した(AAC,2006,50:841−851)。結果を0時間と比べた効力の変化として表した。
【表9】

1−ブロス(細胞外)または感染マクロファージ(細胞内)で行なわれた最初の貪食後種菌と比べた(用量−効果応答の非線形回帰[シグモイド]から計算された)細胞内cfuの最大減少。2−見かけの静菌効果をもたらす細胞外濃度(mg/Lで示したCs)。用量−効果研究から得られた比較薬理学的記述子(Emaxおよび静菌濃度[Cs])。ミュラー−ヒントンブロスでの用量−応答研究。黄色ブドウ球菌ATCC 25923に対しておよびpH7.4のブロス中で、CEM−101は、AZI、CLRおよびTELよりも体系的に活性が高く、pH5.5では、AZI、CLRおよびTELはその効力の有意な減少を示すが、CEM−101はあまり変化を示さない。
【0088】
AZI、CLRおよびTELと比べて、CEM−101活性は、ブロスの酸性pHによる影響をあまり受けず、細胞内の黄色ブドウ球菌に対するより大きい効力(より少ない静菌用量)およびより大きい最大効力(Emax)を示した。
【0089】
実施例。細胞株。マクロファージ様活性を示すヒト骨髄単球性細胞株であるTHP−1細胞(ATCC TIB−202;American Tissue Culture Collection,Manassas,VA)を用いて、実験を行なった(例えば、Barcia−Macay et al.,Antimicrob.Agents Chemother.50:841−851(2006)を参照されたい)。細胞関連マクロライドのアッセイおよび見かけの細胞濃度対細胞外濃度比の計算。マクロライドを、黄色ブドウ球菌ATCC 25923を試験生物として用いて、微生物学的方法によりアッセイした。細胞タンパク質を、フォーリン−チオカルト/ビウレット法を用いて並行してアッセイした。総細胞タンパク質含有量を参照してマクロライドの細胞関連含有量を表し、多くの培養細胞に見られる平均値である5μL/mg細胞タンパク質という変換係数を用いて、見かけの濃度に変換した。
【0090】
細菌株、感受性試験、およびブロスを用いた24時間の用量−応答曲線研究。黄色ブドウ球菌ATCC 25923(メチシリン(methicillin)[メチシリン(meticillin)]感受性)、L.モノサイトゲネス株EGD、およびL.ニューモフィラ株ATCC 33153を本研究で用いた。MICの決定は、24時間インキュベーションした後のミュラー−ヒントンブロス(黄色ブドウ球菌用)およびトリプティックソイブロス(L.モノサイトゲネス用)、または48時間インキュベーションした後のα−ケトグルタル酸緩衝酵母抽出物ブロス(N.ニューモフィラ用)において行なわれた。黄色ブドウ球菌の研究については、無細胞培地中での24時間の濃度−応答実験をミュラー−ヒントンブロスにおいて行なった。
【0091】
細胞感染および抗生物質の細胞内活性の評価。黄色ブドウ球菌およびL.モノサイトゲネスについては従来の方法を用いてまたはL.ニューモフィラについては、少し改変して(i)マクロファージ当たり感染多重度10の細菌および(ii)貪食されていない細菌を排除するための30〜45分間のゲンタマイシン(50mg/リットル)を用いて、THP−1細胞の感染および抗生物質細胞内活性の評価を行なった。
【0092】
統計解析。GraphPad Prismバージョン4.03およびGraphPad Instatバージョン3.06(GraphPad Software,San Diego,CA)を用いて、曲線当てはめ統計解析を行なった。
【0093】
実施例。黄色ブドウ球菌ATCC 25923、リステリア・モノサイトゲネスEGD、およびレジオネラ・ニューモフィラATCC 33153に対する感受性。CEM−101は、従来の感受性試験で、3つの選択された生物(黄色ブドウ球菌、0.06および0.5mg/リットル;L.モノサイトゲネス、0.004および1mg/リットル;ならびにL.ニューモフィラ、0.004および0.016mg/リットル)に対してAZIよりも低いMICを示した。黄色ブドウ球菌およびL.モノサイトゲネスに対するCEM−101、TEL、AZI、およびCLRのMICを、5.5〜7.4の範囲のpH値に調整したブロス中で測定した。抗生物質が、考察される2つの生物に対して細胞外環境でまたは細胞内で曝露され得る値を網羅するように、この範囲が選択された。図1に示すように、4つの薬物は全て、pHが7.4から5.5に減少したときに両方の生物に対する効力の著明な減少を示し、AZIは最も著しい活性の喪失を示した。CEM−101は、最も高い活性を保持し、調べた全てのpH範囲において一貫して最小のMICを示し、値(mg/リットル)は、黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)については0.06(pH7.4)〜0.5(pH5.5)、およびL.モノサイトゲネス(EDG)については0.0039(pH7.4)〜0.25(pH5.5)であった。N.ニューモフィラ(データは示さない)については、ブロスのpHが7.4から6.5に減少したときに、CEM−101のMICは0.005から0.01に増加し、AZIのMICは約0.01から0.25mg/リットルに増加した(増殖しないので、より低いpH値では決定することができなかった)。
【0094】
実施例。細胞外および食細胞内の黄色ブドウ球菌に対する時間および濃度効果。0.7および4mg/リットルという2つの単一固定濃度を用いて、ブロス中でおよびTHP−1マクロファージによる貪食後に、黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)に対するAZIの短期間(6時間)の時間−殺菌曲線と比べた、CEM−101についての短期間(6時間)の時間−殺菌曲線を得た。より低い濃度は、AZIおよびCEM−101の血清濃度と関連があるように選択され、より高い濃度は、対象となる生物に対するAZIのMICを上回るように選択された。図3に示す結果は、これらの条件下では、CEM−101のみが、ブロス中およびTHP−1マクロファージ中、0.7mg/リットルの濃度で、CFUを有意に減少させることができたことを示している。ブロス中、4mg/リットルの濃度で、AZIは、最終的にはCEM−101と同じ抗菌効果を達成したが、速度は遅かった(1時間と比べて5時間)。THP−1マクロファージでは、AZIについて、一貫性のある活性は4mg/リットルの濃度ですら検出されなかったが、CEM−101は、0.7mg/リットルの濃度で見られる大きさと類似した、約1.5log10 CFUの低下をやはり達成した。CEM−101を用いた全ての状況において、CFUの最大減少は1時間以内に得られ、その後も維持された。
【0095】
次に、本発明者らは、CEM−101活性の関連する薬理学的記述子(CLR、AZIおよびTEL活性と比べた相対効力[50%有効濃度{EC50}]、見かけの静菌濃度[C]、および相対最大効力[Emax]を得るために、固定された時点(24時間)で濃度−応答実験を行なった(さらなる詳細は、Barcia−Macay et al.,Pharmacodynamic evaluation of the intracellular activities of antibiotics against Staphylococcus aureus in a model of THP−1 macrophages Antimicrob.Agents Chemother.50:841−851(2006)に記載されている)。データを、(i)重量濃度(mg/リットル)および(ii)MICの倍数(pH7.4のブロス中で決定される)の関数として図2に示す。対応する薬理学的記述子の数値を表に示す。
【表10】

【表11】

図4に示す全てのデータ点(抗生物質の細胞外濃度が0.01倍のMICよりも低いときは抗生物質なしの試料からのデータ)を用いた(5)
もとの種菌[時間=0時間]:0.97±0.24×10CFU/mL(n=3)
++もとの(貪食後)種菌[時間=0時間]:2.74±0.55×10CFU/mgタンパク質(n=3)
抗生物質濃度=∞に関して外挿されたときの、対応するもとの種菌からの時間=24時間の時点でのCFU減少(log10単位で示す);5未満のカウントを生じる試料は、検出レベル未満とみなされた。
(傾斜因子1を用いて)ヒル方程式から得られる、初期値(E)と最大値(Emax)の中間にまで種菌を低下させる濃度(mg/Lまたは×MICで示す);
◇◇グラフ内挿法によって決定される、細菌増殖が見られないようになる濃度(mg/Lまたは×MICで示す)(CFUの数は、もとの種菌と同じである);統計解析。抗生物質間の違いの解析(対応する行の列ごとに;全ての薬物の各パラメータ間の複数の比較についてのテューキー検定による一元配置ANOVA):様々な小文字を伴う数字は、互いに有意に異なる(p<0.05)。ブロスとTHP−1マクロファージの違いの解析(対応する列の行ごとに;対応のない両側t検定):様々な小文字を伴う数字は、互いに有意に異なる(p<0.05)。
【0096】
シグモイド形の各最適関数(ヒル方程式)で示されるように、ブロスとTHP−1マクロファージの両方における活性は濃度依存的に発生した。ブロス中では、CEM−101の相対効力(Emax −1.37log10)は、他の薬物の相対効力(Emax値 −1.00〜−1.41log10)と同様であった。THP−1マクロファージ中では、CEM−101の相対効力は、ブロス中での相対効力(Emax −0.86log10)と比べて有意に減少したが、他の薬物の相対効力と同じ程度には減少せず、本質的には静菌的にしかならなかった(Emax値 0.04〜−0.29log10)。重量ベースでは、CEM−101は、ブロスとTHP−1マクロファージの両方における3つ全ての比較子薬物よりも高い相対効力(低いE50値)および低い静菌濃度(低いC値)を有していた。データを、等効力濃度の関数(MICの倍数)として解析すると、これらのEC50値の差が低下し、MICが、このような状況での主な駆動パラメータであったことを示している。ブロス中では、MICの倍数として解析したときでさえも、CEM−101およびCLRは、依然としてTELおよびAZIよりも有意に低いE50を示した。
【0097】
実施例。食細胞内L.モノサイトゲネスおよびN.ニューモフィラに対する活性。濃度−効果関係および対応する関連する薬理学的記述子に関する情報を得るために、黄色ブドウ球菌に対するアプローチと同じアプローチを用いて、貪食されたL.モノサイトゲネスおよびL.ニューモフィラに対するCEM−101およびAZIの活性を評価した。図4に示すように、ヒル方程式と適合する関係性が全ての場合に見られたが、L.ニューモフィラの増殖が限られていることで、関数の当てはめがややより不明確になった。このデータを重量濃度に対してプロットすると、CEM−101が、L.モノサイトゲネスとN.ニューモフィラの両方についてAZIよりも高い相対効力(低いEC50)を有するように見えた。L.ニューモフィラについてのデータをMICの倍数に対してプロットすると、この差は低下したが、それでも有意なままであり、MICが、この生物に対する細胞内活性の唯一ではないが、重要な駆動因子であることを示した。反対に、データをMICの倍数として表したとき、L.モノサイトゲネスについて、応答の差は見られなかった。関連する薬理学的記述子の数値とその差の総計解析とを表に示す。
【表12】

【表13】

図4に示す全てのデータ点(抗生物質の細胞外濃度が0.01倍のMICよりも低いときは抗生物質なしの試料からのデータ)を用いた(5)。もとの(貪食後)種菌[時間=0時間;CFU/mgタンパク質]:L.モノサイトゲネス、1.67±0.22×10(n=3);L.ニューモフィラ、0.94±0.60×10抗生物質濃度∞に関して外挿されたときの、対応するもとの種菌からの時間=24時間(L.モノサイトゲネス)または48時間(N.ニューモフィラ)の時点でのCFU減少(log10単位で示す);5未満のカウントを生じる試料は、検出レベル未満とみなされた。(傾斜因子1を用いて)ヒル方程式から得られる、初期値(E)と最大値(Emax)の中間にまで種菌を低下させる濃度(mg/Lまたは×MICで示す)。◇◇グラフ内挿法によって決定される、細菌増殖が見られないようになる濃度(mg/Lまたは×MICで示す)(CFUの数は、もとの種菌と同じである)。統計解析:2つの抗生物質間の違いの解析(対応する行の列ごとに;対応のない両側t検定):様々な小文字を伴う数字は、互いに有意に異なる(p<0.05)。
【0098】
実施例。食細胞内の黄色ブドウ球菌ATCC 25923に対する感染THP−1マクロファージにおける用量−応答研究。CEM−101は、AZI、CLRおよびTELよりも強力である(Csが低い)。さらに、CEM−101は、細胞内種菌(Emax 約1log)を低下させることができる。これは、AZI、CLRおよびTELのいずれでも観察されない。
【表14】

【0099】
実施例。細胞内黄色ブドウ球菌ATCC 25923(THP−1マクロファージ)に対するCEM−101と比較子(AZI、CLRおよびTEL)の用量−応答研究例。図7および表を参照されたい。
【表15】

【0100】
実施例。細胞内活性:他の抗ブドウ球菌剤を用いた比較研究。THP−1マクロファージにおける細胞内黄色ブドウ球菌(ATCC 25923株)に対する抗生物質の比較用量−静菌応答を測定した。図6を参照されたい。棒は、MIC(mg/Lで示す)または細胞外静菌用量を表す。
【0101】
方法。マウス腹腔マクロファージに生きたライ菌を感染させ、薬物を添加し、33℃で3日間インキュベートした。3日後、マクロファージを溶解させて、細胞内のライ菌を放出させ、次に、このライ菌を、放射性呼吸測定および生死判別染色によって生存についてアッセイした。CEM−101は、細胞内ライ菌の生存に対する効力を示す。
【0102】
無胸腺nu/nuマウス足蹠における連続的継代により維持された、ライ菌のタイ−53分離株を全ての実験に用いた。純培養試験のために、新しく採取した生きたライ菌を、様々な濃度の薬物(CEM−101、CLRおよびリファンピシン)とともに33℃で7日間培地中でインキュベートした。このインキュベーションの最後に、薬物処理したライ菌を、放射性呼吸測定にかけて、パルミテートの酸化に基づく生存を評価し、生死判別色素による染色を施して、膜損傷の程度を評価した。細胞内試験のために、Swissマウス由来の腹腔マクロファージに新しく採取した生きたライ菌を20:1のMOIで12時間感染させた。感染の最後に、細胞外細菌を洗浄し、薬物を様々な濃度で添加し、33℃で3日間インキュベートした。3日間の最後に、細胞を溶解させて、放射性呼吸測定および生死判別染色のための細胞内ライ菌を得た。
【0103】
対照と比べたとき、0.15μg/mLのCEM−101は、純培養と細胞内培養の両方においてライ菌の生存を有意に(P<0.001)低下させることができた。CEM−101による阻害は、
同一条件下、同一濃度で、CLRで得られる阻害と有意には異ならなかった。
【0104】
実施例。肺炎レンサ球菌、β溶血性レンサ球菌およびビリダンス群レンサ球菌、ブドウ球菌種、および腸球菌に対するCEM−101の高い効力は、標準的な臨床検査標準協会(CLSI)法を用いて行なわれた初期のスクリーニング研究に記載されている。MLSB−ケトライド類を含み得る耐性のメカニズムと発生が急速に増加しつつあるので、野生型(WT)と表現型/遺伝子型が規定された耐性生物サブセットとを試験したときのCEM−101の殺菌活性(MBCおよび死滅曲線)を5つの選択された種類の抗微生物剤とともに評価した。CEM−101、TEL、およびCLRのMBC決定では、40(6つの種の群)についてCLSI法を用いた。KCでは、8つの株(6つの種の群)を用いた。PAEを、1時間または2時間の曝露の間、4倍濃度で試験した(5株);TEL対照。
【0105】
MBCおよび死滅曲線研究:合計40株(10の肺炎レンサ球菌、10の黄色ブドウ球菌、ならびに各々5つのβ溶血性レンサ球菌、ビリダンス群レンサ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌[CoNS]および腸球菌)についてMICを試験し、次いで、CLSI法を用いてMBCを決定した(MICおよびMBC範囲、0.008〜16μg/ml)。最初の種菌の99.9%以上を死滅させる被験薬剤の最低濃度をMBC終点と定義した(表2および3)。8つの選択された株に対する時間殺菌活性を、Moody & Knapp,NCCLS M21−A3およびM26−Aに記載の方法に従って、CEM−101、TEL、CLR、およびAZIについて行なった。これらの化合物を2倍、4倍、8倍のMICで試験し、コロニーカウントをT0、T2、T4、T8およびT24で行なった。
【0106】
CEM−101は、BSA、SAおよびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌についての低いMBC/MIC比(≦4);およびTELよりも2倍大きい効力を示した。SA、腸球菌およびいくつかのマクロライド/CLN耐性(R)株は、より高い比を有していた。KCの結果は、TELと比べてCEM−101についてのより速やかでかつより大きい殺菌活性(濃度依存的)を示した。CEM−101は、TELよりも大きい速度および程度でいくつかのグラム陽性種に対する殺菌活性を示した。

CEM−101、TEL、CLRおよびAZIのMBC/MIC比による分離株の分布
【表16】

【0107】
CEM−101は、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、肺炎レンサ球菌、化膿レンサ球菌(8倍のMICでのみ)およびビリダンス群レンサ球菌のマクロライド感受性株、ならびにマクロライド耐性化膿レンサ球菌に対する速やかな殺菌活性(≧3log10 CFU/mlの低下)を示した。CEM−101は、TELまたはマクロライドのCLRおよびAZIと比べたとき、CFU/mlのより大きい低下とより速やかな死滅とをもたらした。

時間殺菌曲線結果のまとめ。
【表17】

【0108】
CEM−101は、マクロライド感受性レンサ球菌、CoNSおよびマクロライド耐性CLN感受性肺炎レンサ球菌に対して試験したとき、殺菌活性を示した。CEM−101のMBC/MIC比は、黄色ブドウ球菌については高くなることがあるが、いくつかの株は、感受性のある濃度範囲内にとどまるMBC結果を示した。
【0109】
実施例。クラミジアに対する活性。CEM−101、TEL、AZI、CLR、およびドキシサイクリンを粉末として準備し、製造元の指示に従って可溶化した。アッセイを実施するたびに、薬物懸濁液を新たに作製した。
【0110】
肺炎クラミジア:試験した肺炎クラミジアの分離株には、標準株(TW 183)、米国起源の肺炎を有する子供および成人由来の9つの分離株(AR39、T2023、T2043、W6805、CWL 029、CM−1)、日本起源の肺炎を有する子供由来の1つの分離株(J−21)、および米国起源のヒト免疫不全ウイルス感染症と肺炎を有する患者の気管支肺胞洗浄標本由来の2つ(BAL15およびBAL16)が含まれていた。
【0111】
C.トラコマチス:ATCC(E−BOUR、F−IC−CAL3、C−HAR32、J−UW−36、L2434、D−UW−57kx、B−HAR−36)からの標準的な分離株および最近の臨床分離株(N18(子宮頸部)、N19(子宮頸部)、7015(幼児の目))を含む、10のトラコーマ病原体分離株。
【0112】
インビトロ感受性試験:肺炎クラミジアおよびC.トラコマチスの感受性試験は、96ウェルマイクロタイタープレート中で増殖させたHEp−2細胞を用いて細胞培養で行なった。各ウェルに、10〜10IFU/mlになるよう希釈した試験株0.1mlを植菌し、1,700×gで1時間遠心分離し、35℃で1時間インキュベートした。ウェルを吸引し、1mL当たり1μgのシクロヘキサミドと連続2倍希釈した試験薬とを含有する培地0.2mLを重層した。
【0113】
2つ1組のプレートに植菌した。35℃で48〜72時間インキュベートした後、培養物を固定し、リポ多糖属抗原に対するフルオレセインコンジュゲート抗体(Pathfinder,Kallestad Diagnostics,Chaska,Minn)で含有について染色した。最小阻害濃度(MIC)は、含有が見られなかった最小の抗生物質濃度である。抗生物質を含有する培地を吸引し、リン酸緩衝生理食塩水でウェルを2回洗浄し、抗生物質を含まない培地を添加することにより、最小殺菌濃度(MBC)を決定した。培養物を−70℃で凍結させ、解凍させ、新しい細胞に感染させ、72時間インキュベートした後、上記のように固定および染色した。MBCは、感染後に含有を生じない最小の抗生物質濃度である。試験は全て3回1組で実施した。
【表18】

【表19】

【0114】
この研究の結果は、CEM−101が、他のマクロライドおよびケトライドと同程度のC.トラコマチスおよび肺炎クラミジアに対するインビトロ活性を有することを示した。
【0115】
実施例。組織分布。CEM−101は、組織によく吸収され、分布した。ラットでは、250mg/kg/dで、CEM−101の平均の肺濃度および肝臓濃度は、血漿中よりも17倍および15倍高かった。肺濃度および肝臓濃度は、サルでは、200mg/kg/d用量で、血漿濃度よりも503倍および711倍高かった。心臓におけるCEM−101濃度は、肺または肝臓で見られるレベルよりも有意に低く、ラットおよびサルでの血漿濃度よりも、それぞれ、5倍および54倍高いレベルであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃腸疾患を治療するための医薬品の製造における治療有効量の化合物であって、前記化合物が、式
【化1】

および薬学的に許容されるその塩であり、ここで、
10は水素またはアシルであり;
XはHであり;かつYはORであり;ここで、Rは単糖または二糖、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、またはC(O)NRであり、ここで、RおよびRは、各々独立に、水素、ヒドロキシ、アルキル、アラルキル、アルキルアリール、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、ジメチルアミノアルキル、アシル、スルホニル、ウレイド、およびカルバモイルからなる群から選択されるか;またはXおよびYは、付加された炭素と一緒になってカルバモイルを形成し;
Vは、C(O)、C(=NR11)、CH(NR12,R13)、またはN(R14)CHであり、ここで、N(R14)は、式1および2の化合物のC−10炭素に付加されており;ここで、R11はヒドロキシまたはアルコキシであり、R12およびR13は、各々独立に、水素、ヒドロキシ、アキル、アラルキル、アルキルアリール、アルコキシ、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ジメチルアミノアルキル、アシル、スルホニル、ウレイド、およびカルバモイルからなる群から選択され;R14は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アラルキル、アルキルアリール、アルコキシ、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ジメチルアミノアルキル、アシル、スルホニル、ウレイド、またはカルバモイルであり;
Wは、H、F、Cl、Br、I、またはOHであり;
Aは、CH、C(O)、C(O)O、C(O)NH、S(O)、S(O)NH、C(O)NHS(O)であり;
Bは(CHであり、ここで、nは0〜10の整数であるか、またはBは炭素数2〜10の不飽和炭素鎖であり;かつ
Cは、水素、ヒドロキシ、アルキル、アラルキル、アルキルアリール、アルコキシ、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アミノアリール、アルキルアミノアリール、アシル、アシルオキシ、スルホニル、ウレイド、またはカルバモイルである、化合物の使用。
【請求項2】
がアミノ糖またはハロ糖である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
が4−ニトロ−フェニルアセチルまたは2−ピリジルアセチルである、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
Bがアルケニレンである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
Vが−C(O)−である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
WがHまたはFである、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
XおよびYが付加された炭素と一緒になってカルバモイルを形成する、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
WがFである、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
XおよびYが付加された炭素と一緒になってカルバモイルを形成し;かつWがFである、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
AがCHであり、Bが(CHであり、かつnが2〜4の整数である、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
Cが3−アミノフェニルまたは3−ピリジニルである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
Cがアリールまたはヘテロアリールである、請求項1に記載の使用。
【請求項13】
Cが3−アミノフェニルまたは3−ピリジニルである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
10が水素である、請求項1に記載の使用。
【請求項15】
がアミノ糖またはハロ糖である、請求項1に記載の使用。
【請求項16】
が4−ニトロ−フェニルアセチルまたは2−ピリジルアセチルである、請求項1に記載の使用。
【請求項17】
前記胃腸疾患が腸炎もしくは胃腸炎、またはその組合せである、請求項1に記載の使用。
【請求項18】
前記胃腸疾患が、少なくとも一部はサルモネラ菌、赤痢菌、ブドウ球菌、カンピロバクター、ヘリコバクター、クロストリジウム、大腸菌、およびエルシニア、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される生物によって引き起こされる、請求項1に記載の使用。
【請求項19】
前記胃腸疾患が少なくとも一部はH.ピロリによって引き起こされる、請求項1に記載の使用。
【請求項20】
前記胃腸疾患が少なくとも一部はC.ジェジュニによって引き起こされる、請求項1に記載の使用。
【請求項21】
前記胃腸疾患が少なくとも一部はサルモネラ菌によって引き起こされる、請求項1に記載の使用。
【請求項22】
前記胃腸疾患が少なくとも一部は赤痢菌によって引き起こされる、請求項1に記載の使用。
【請求項23】
胃腸疾患を治療するための抗菌組成物であって、請求項1〜16のいずれか1項に記載の有効量の化合物と、薬学的に許容されるそのための担体、賦形剤、もしくは希釈剤、またはその組合せとを含む抗菌組成物。
【請求項24】
胃腸疾患を引き起こす細菌の増殖を阻害するための方法であって、請求項1〜16のいずれか1項に記載の有効量の化合物、あるいは請求項1〜16のいずれか1項に記載の有効量の化合物と、薬学的に許容されるそのための担体、賦形剤、もしくは希釈剤、またはその組合せとを含む抗菌組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項25】
胃腸疾患を引き起こす細菌を死滅させるための方法であって、請求項1〜16のいずれか1項に記載の有効量の化合物、あるいは請求項1〜16のいずれか1項に記載の有効量の化合物と、薬学的に許容されるそのための担体、賦形剤、もしくは希釈剤、またはその組合せとを含む抗菌組成物を投与する工程を含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−506870(P2012−506870A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533397(P2011−533397)
【出願日】平成21年10月24日(2009.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/061976
【国際公開番号】WO2010/048599
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(511100970)センプラ ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】