説明

背もたれ付き椅子及び椅子の背板用トップメンバー

【課題】背もたれの高さが異なる複数種類の椅子を製造するにおいて、コスト抑制を図る。
【手段】背もたれは背板10とバックサポート11とを有しており、背板10の前面には背クッションが張られている。背板10はその大部分を構成するメインメンバー14と、メインメンバー14の上に重ね配置されたトップメンバー15とに分離構成されている。トップメンバー15のみを複数種類製造しておくことにより、異なる高さの背もたれ3が組み立てられる。トップメンバー15はバックサポート11の上面に重なっており、このため高さが相違してもデザイン的な統一感は阻害されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれ付き椅子及びこれに使用する背板用トップメンバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の背もたれは様々なタイプがあり、着座者の体圧を支持する構造で見ると、樹脂製や木質板製等の背板で支持するものと、フレームに張られたメッシュ材で支持するものとがある。前者の背板を有するものは、更に、背板の前面が露出しているものと、前面にクッションが張られたものとに大別される。
【0003】
そして、背もたれは、例えば、ローバックタイプとハイバックタイプとの2種類、或いは、ローバックタイプとミドルバックタイプとハイバックタイプとの3種類というように、高さが異なるタイプ(仕様)を複数種類用意している場合がある。このように背もたれの高さを異ならせる場合、背板を有する背もたれでは、それぞれ異なる高さの背板を製造している。
【0004】
他方、特許文献1には後付け式のショルダーレストが開示されており、ショルダーレストを取り付けることにより、背もたれの高さを高くできる。また、特許文献1では、異なる高さのショルダーレストを複数種類用意しておくことにより、背もたれの高さを3種類以上に変更することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3811594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の背もたれは、ショルダーレストが取付けられていない状態を基本態様とするものであり、椅子はこの状態で流通し、使用される。そして、ショルダーレストを取付けることで背もたれの高さが高くなるが、基本態様の状態でショルダーレストを取付けできる形態になっておらねばならない。このため、デザインが特定されることになる。
【0007】
逆にいうと、特許文献1は、背もたれがインナーシェル(背板)とその後ろに配置されたアウターシェルとを有するものにおいて、インナーシェルとアウターシェルとの間の空間が存在することを利用してショルダーレストを取付けたものである。従って、インナーシェルとアウターシェルとの間に空間が存在していない背もたれや、アウターシェルを備えていない背もたれには適用できない。
【0008】
すなわち、特許文献1は背もたれの特定のデザインを利用した発明であり、背もたれ一般に広く適用できるものではない。そこで、背板(インナーシェル)を有する背もたれにおいて高さが異なるタイプを用意する場合は、従来は、高さが異なる背板を複数種類製造しておき、必要に応じて選択して使用している。
【0009】
しかし、背板の大きさは背もたれの大きさとほぼ等しいものであり、相当の大きさ(面積)があるため、複数種類を製造するのは手間やコストが嵩む。具体的に述べると、背板を樹脂製として射出成形法で製造する場合、大型の金型を複数種類用意して大型の成形装置で製造せねばならないため、製造コストが嵩む。
【0010】
また、顧客の求めに対応して迅速に納品するには複数種類の背板を在庫としてストックしておかねばならないが、背板は大きくて嵩張るため、需要が偏ると使用されない背板は広いスペースで保管し続けなければならないため、保管コストも嵩むことになる。また、金型及び成形機が大型化すると運転準備に手間や時間がかかることが多いため、在庫が払拭して追加製造する場合の納期も遅れがちである。
【0011】
更に、椅子の組み立てに際しては、予め特定の高さの背板を用意しておくことになるため、種類の違いに対応するには別の高さの背板を用意し直さねばならず、このため、背もたれの高さが相違する異なる仕様の椅子を組み立てるにおいて、作業性が悪いという問題もある。また、ユーザーが高さの異なる背もたれを欲した場合は、椅子自体を買い換えねばならず、ユーザーの負担が大きいという点も問題であった。
【0012】
本願発明はこのような現状を改善すべく成されたものである。また、本願は従来にない新規な構造を多く開示しており、これらも本願の課題として捉え得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明には背もたれ付き椅子が含まれており、この椅子の背もたれは背板を有している。請求項1の発明は椅子に関するものであり、この請求項1の発明において、背板は、当該背板の少なくとも下部を構成するメインメンバーとその上に分離可能に接続された1段又は複数段の着脱式メンバーとで構成されており、前記着脱式メンバーとメインメンバーとの前面は一体状に連続していると共に、着脱式メンバーがメインメンバーに対して屈曲しないように背板は全体として剛性を有している。
【0014】
なお、ここにいう剛性を有しているとは、着座者の体圧で全く弾性変形しないという意味でなく、メインメンバーと着脱式メンバーとが一体物のような状態になっているという意味である。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1において、前記メインメンバーと着脱式メンバーとの前面には1枚のクッションが跨がった状態で張られている。請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記メインメンバーはその後ろに配置したバックサポートに分離可能に取付けられており、前記メインメンバーの上部又は前記着脱式メンバーに、前記バックサポートを上から覆うオーバーハング部が形成されている。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれかにおいて、前記着脱式メンバーは1つのトップメンバーから成っており、前記トップメンバーの左右両側部と前記メインメンバーの左右両側部とに、トップメンバーを下向き動させると互いに嵌合し合うサイド姿勢保持手段を設けている。
【0017】
本願発明は背板を構成するトップメンバーも含んでおり、これは請求項5で特定されている。すなわち請求項5の発明は、背板の下部を含むメインメンバーの上に接続されて背板の上部を構成するトップメンバーであって、前記メインメンバーに接続するための接続手段を有しており、かつ、前記接続手段により、前記メインメンバーに屈曲しない状態で接続される。
【発明の効果】
【0018】
本願発明の椅子は、背板は上下に並んだ複数のメンバーで構成されているが、本願発明の特徴は、背板はメインメンバーと着脱式メンバーとが接続された状態で使用されることであり、メインメンバーと着脱式メンバーとが一体化して1つの背板を構成していることにより、背もたれはデザイン的な統一性が保持され、従って、適用対象が広くて一般性に優れている。
【0019】
また、メインメンバーは1種類として、着脱式メンバーを高さが相違するものを複数種類用意しておくことにより、高さの異なる背もたれを製造することができるため、メインメンバーも着脱式メンバーも、1枚板に製造された背板に比べて高さは遙かに小さくなる。その結果、背板を樹脂製とした場合、金型を小型化してコスト削減に貢献し得る。また、従来よりも小型の成形機を使用することも可能になり、この面においてもコスト削減に貢献可能である。
【0020】
また、背もたれの高さが相違する椅子を複数種類提供する場合、在庫としては、1種類のメインメンバーと高さが相違する複数種類の着脱式メンバーを用意しておくことになるが、着脱式メンバーは単一構造の背板に比べて遙かに小さいため、需要が偏って特定の高さの着脱式メンバーが長期保管される事態が生じても、保管のスペースは単一構造の背板を保管する場合に比べて遙かに小さいため、保管のコストを抑制できる。また、着脱式メンバーが樹脂製である場合、既述のとおり金型及び成形機を小型化できるが、小型・中型の成形機は広く普及しているため、追加製造する場合の納期短縮にも貢献できる。
【0021】
また、複数種類の着脱式メンバーのうちの何れかをメインメンバーに接続することで所望の高さの背板になるが、着脱式メンバーは単一構造の背板に比べて遙かに小さいため、持ち運びは容易であると共に載置スペースも僅かで良く、このため、組み立て現場に複数種類の着脱式メンバーを置いて任意に選択して使用することも容易である。その結果、背もたれの高さが異なる複数種類の椅子を組み立てるにおいて、作業能率が良い。
【0022】
本願発明は、背板の前面を露出させたまま椅子に適用することも可能であり、この場合は、例えばメインメンバーと着脱式メンバーとの色を変えるといったことも可能である。また、背板の前面にクッションを張ることも可能である。このように背もたれがクッションを有する場合、メインメンバーと着脱式メンバーとに別々のクッションを設けて個別にクロスで覆うことも可能であるが、請求項2の構成を採用すると、デザイン的な一体性を確保できて好適である。
【0023】
背板はそれ自体が強度メンバーとして機能する場合もあるが、シェル状等のバックサポートに取付けている場合も多い。すなわち、このように背板をバックサポートに取り付けることにより、背板の加工が容易になると共に撓み性を持たせてもたれ心地を向上できたり、クッションを美麗に取付けできたりするなどの利点がある。
【0024】
そして、従来の椅子は、バックサポートの前面に背板を取付けており、従って、背もたれの高さを変える場合は、バックサポートの高さも変えないとデザイン上の統一性が欠けることになり、この面もコストアップの原因になっていた。これに対して請求項3の発明を採用すると、着脱式メンバーの高さに関係なくバックサポートはメインメンバー又は着脱式メンバーの重合部で上から覆われているため、バックサポートは1種類のままでデザインの統一性は保持される。従って、請求項3の発明は高さが相違する複数種類の背もたれを提供するにおいてより好適である。
【0025】
また、請求項3では、メインメンバーはバックサポートから分離可能であるため、例えば、背板をユーザーが交換するといったことも可能になる。従って、ユーザーの好みに応じて背もたれの高さを変えたり、背もたれが汚損した場合に背板をユーザーが交換することも容易に実現できる。従って、本願発明の椅子はユーザーフレンドリーである。
【0026】
請求項4のようにサイド姿勢保持手段を設けるとメインメンバーとトップメンバーとの一体性が高まるため、例えば背板に平面視でねじるような外力が作用しても、トップメンバーとメインメンバーとを一体化した状態に保持できる利点である。
【0027】
本願発明は、請求項5に記載したように背板の上部を構成するトップメンバーも包含しているが、高さが相違する複数種類のトップメンバーを用意しておき、メインメンバーとセットで販売することにより、ユーザーは好み等に応じて背板を交換することができる。これにより、ユーザーの要望に応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】椅子の外観図であり、(A)は前方から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図、(C)は側面図である。
【図2】クッションを省略した状態での図1と同様の図である。
【図3】椅子の分離斜視図である。
【図4】クッションを省略した状態での背もたれの外観図であり、(A)は前方から見た斜視図、(B)は側面図、(C)は後ろから見た斜視図である。
【図5】(A)は背もたれの背面部を下方から見た斜視図、(B)は分離側面図である。
【図6】背もたれを後ろから見た分離斜視図である。
【図7】背もたれの構成要素を分離して後ろから見た分離斜視図である。
【図8】背もたれの分離斜視図である。
【図9】メインメンバーを裏返してバックサポートと並べた正面図である。
【図10】(A)はメインメンバーとバックサポートとの分離斜視図、(B)はバックサポートの下部の部分斜視図、(C)はメインメンバーの下部の部分斜視図である。
【図11】(A)はメインメンバーの部分背面図、(B)はメインメンバーを後ろから見た部分斜視図、(C)はクッションの端部の部分正面図、(D)はクッションの取付け態様を示す平断面図である。
【図12】(A)はバックサポートの部分正面図、(B)はバックサポートを前から見た部分斜視図、(C)はバックシートの端部の部分正面図、(D)はバックシートの取付け態様を示す平断面図である。
【図13】(A)は背もたれの下半部の側断面図、(B)はバックサポート11の下部の側断面図である。
【図14】(A)(B)とも要部の分離斜視図である。
【図15】(A)は背もたれを左右中央部で切断した分離図、(B)は継手の斜視図である。
【図16】(A)は背もたれの左右中央部での側断面図、(B)はトップメンバーの側端部の斜視図、(B)はトップメンバーの側端部の底面図である。
【図17】レバーの配置箇所の側断面図である。
【図18】レバーの箇所を表示した図であり、(A)は破断斜視図、(B)は係合解除状態での側断面図である。
【図19】レバーの配置箇所における分離断面図である。
【図20】背もたれの下部の破断斜視図である。
【図21】(A)はバックサポートとロアカバーとの分離斜視図、(B)はバックサポートを下方から見た部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は事務用に多用されている回転式ロッキング椅子に適用している。本願では方向を特定するため「前後」「左右」といった文言を使用するが、これは普通の姿勢で着座した人の向きを基準にしている。正面視は着座した人と対向した方向になる。
【0030】
(1).椅子の概要
まず、主として図1〜7を参照して椅子の概要を説明する。図1に示すように、椅子は大きな要素として脚1と座2と背もたれ3とを備えている。脚1は放射方向に延びる枝足を有しているが図示は省略しており、ガスシリンダよりなる脚支柱4のみを表示している。脚支柱4の上端にはベース5が固定されており、ベース5の上方に座2が配置されている。
【0031】
図3に示すように、座2は樹脂製の座インナーシェル(座板)6とその上面に張った座クッション7とから成っており、図2,3に示す中間支持体8に前後位置調節可能に取付けられている。中間支持体8の前部はフロントリンク9を介してベース5の前部に連結されており、フロントリンク9は側面視でベース5と中間支持体8との両方に対して相対回動する。従って、フロントリンク9が回動することにより、中間支持体8及び座2は上下動しながら前後動する。
【0032】
背もたれ3は、着座者の体圧がかかるシェル状の背板(背インナーシェル)10とこれが取付けられたシェル状のバックサポート(背アウターシェル)11とを有しており、背板10の前面に背クッション12が張られている。背クッション12はクロス等の表皮材13で前から覆われている。そして、図3に明示するように、背板10は、バックサポート11の手前に配置されたメインメンバー14とその上に重ね配置されたトップメンバー15との2つの部材(パーツ)で構成されている。両メンバー14,15は、樹脂を材料にして製造された射出成形品である。
【0033】
本実施形態では、メインメンバー14が背もたれ3の大部分を占めて、トップメンバー15は背もたれ3の上部を構成している。もとより、メインメンバー14とトップメンバー15との高さの比率や実際の寸法は任意に設定できるのであり、例えば、メインメンバー14が背もたれの下側2/3程度の高さを占めて、トップメンバー15が背もたれ3の上側1/3程度の高さを占めることも可能である。
【0034】
メインメンバー14の前面とトップメンバー15の前面は滑らかに連続している。従って、着座した人は一体構造の背もたれと同様に違和感なく凭れる掛かることができる。本実施形態のトップメンバー15は後ろに曲がって下向きにUターンした形状をしており、従って、おおよそ下向き開口U字に近い側面視形態になっている。
【0035】
背板10におけるメインメンバー14の上端とバックサポート11の上端とは略同じ高さになっており、背板10のトップメンバー15はバックサポート11の上面に重なっている。そして、背板10のトップメンバー15は、バックサポート11の上部後方に回り込むようにオーバーハングしている。すなわち、トップメンバー15は平面視でバックサポート11と重なり合うオーバーハング部15aを有している。
【0036】
図4に明示するように、バックサポート11の下端には前向きに延びる左右一対のアーム16が一体に形成されており、左右のアーム16は門形のジョイント17で連結されている。そして、左右のアーム16はその前端部を中心にして後傾するようにベース5に連結されており、かつ、左右のアーム16は金具18(図2(B)に僅かに露出している。)を介して中間支持体8の後部に連結されている。このため、背もたれ3が後傾すると、中間支持体8は座2は金具18に引かれて後退しつつ上昇する。ベース5の後部にはロッキングに対して抵抗を付与する弾性体が配置されている。
【0037】
バックサポート11の下端部はアーム16の付け根よりも下方に突出している。また、バックサポート11の下部の背面にはロアカバー19が装着されている。バックサポート11は後ろからバックシート20で覆われており、ロアカバー19もバックシート11で覆われている。なお、アーム16はバックサポート11とは別部材に構成することも可能である。図1(A)に示すように、表皮材13の上部には後ろ向き引き込み部21を設けている。
【0038】
(2).メインメンバー
以下、背もたれ3の詳細を説明する。まず、図8〜12を中心にしてメインメンバー14とバックサポート11とを説明する。図9に明示するように、バックサポート11とメインメンバー14とは上端の横幅より下端の横幅が小さく、従って、両者とも正面視で逆台形の形状を成している。例えば図8(B)に明示するように、バックサポート11とメインメンバー14とは、いずれも平面視で前向き凹状に緩い曲率で湾曲しており、かつ、両者とも着座者の腰部が当たる部分が最も前に位置するように側面視で前向き凸状に湾曲している。
【0039】
例えば図3に示すように、メインメンバー14の左右両側部には前向きに突出した角形のサイド突条23が形成され、メインメンバー14の下端にも前向きに突出した角形のボトム突条24が形成されている。両突条23,24は互いに連続している。両突条23,24は後ろ向きに開口してチャンネル状の形態を成しており(従って、突条はチャンネル状部と呼ぶことも可能である)、このため突条23,24は外壁と内壁を有している。また、両突条23,24の外壁と内壁とは多数のリブで連結されている。
【0040】
例えば図11(D)に示すように、背クッション12はサイド突条23及びボトム突条24の内側に配置されており、従って、サイド突条23とボトム突条24とは補強機能と背クッション12の位置決め機能とを有している。背クッション12を覆う表皮材13はメインメンバー14の後ろに巻き込まれており、表皮材13の端縁はバックサポート11で隠れている。
【0041】
そして、表皮材13の端縁には樹脂板のような帯板状の縁板25が逢着や接着等の手段で固定されている一方、メインメンバー14の背面のうち突条23,24のやや内側に位置した部位にはキャッチ突起26を適宜間隔で数形成しており、縁板25に形成したキャッチ穴27をキャッチ突起26に嵌め込んでいる。キャッチ突起26は正面視で十字形に形成されており、先端部には縁板25の抜け止めのための膨出部26aを形成している。縁板25は、その全体を表皮材13に重ねた状態で縫着されており、従って、実際には表皮材13の縁部は折り返され状態になっている。
【0042】
縁板25をキャッチ突起26に着脱することで背クッション12を交換できるが、縁板25を着脱できることは人が一目で理解できるため、ユーザーが背クッション12や表皮材13を交換することも簡単である。なお、縁板25は適当な長さに分断されている。キャッチ突起26は十字形には限らず、茸形や鉤形などの種々の形状を選択できる。背クッション12はトップメンバー15の裏側まで延びているが、この点は後述する。
【0043】
表皮材13は、縁板25をキャッチ爪26に嵌脱することで背板10に簡単に着脱できる。また、背クッション12は突条23,24でずれ不能に置決めされているため、表皮材13を背板10に取り付けると、背クッション12は離脱不能に保持される。キャッチ穴27は縁板25の長手方向に長い長穴になっている。このため、各縁板25に多少の位置ずれがあっても支障なく取付けできる。
【0044】
図示していないが、表皮材13の内面に薄いウレタン層のような緩衝層をラミネート等で接着することも可能である。このように緩衝層を設けると、突条23と背クッション12との間に段差が生じても、人に違和感を与えない利点がある。
【0045】
(3).バックサポート
例えば図8及び図9に示すように、バックサポート11の左右両側縁は略前向きに突出した側壁11′になっており、また、バックサポート11の下部には、メインメンバー14におけるボトム突条24の後ろに位置した左右横長のロアリブ30が前向き突設されている。ロアリブ30の下面には多数の補強リブが連接されている。図11(D)に示すように、バックサポート11の側壁11′はメインメンバー14におけるサイド突条23の後ろに位置している。図11(D)(及び図12(D))では表皮材13と側壁11′との間に空間が空いているが、表皮材13はある程度の厚さがあるので、実際には側壁11′の先端は表皮材13に当接していることが多い。
【0046】
バックサポート11の前面には、アーム16に連続する左右一対ずつの内側縦リブ31及び外側縦リブ32が前向きに突設されており、ロアリブ30は内側縦リブ31に接続さている。また、左右の外側縦リブ32の上端は上部水平リブ33を介して連続しており、左右の内側縦リブ31の上端は下部水平リブ34を介して連続している。また、下部水平リブ34は左右の外側縦リブ32にも連続している。
【0047】
これらのリブ30〜34は補強機能を有すると共に、背板10が着座者の体圧で後ろ向きに凹むように変形したときの変形量を規制するストッパーの役割も果たしている。また、内外の縦リブ31,32は背板10を取付ける機能も果たしている(この点は後述する)。
【0048】
既述のようにバックサポート11はバックシート20で後ろから覆われている。図12(C)(D)に示すように、バックシート20の周縁には樹脂板等の帯の縁板35が逢着等で固定されている一方、バックサポート11の前面のうち左右両側部にはキャッチ突起36が上下適宜間隔で前向きに突設されており、縁板35に空けたキャッチ穴37をキャッチ突起36に嵌め込んでいる。キャッチ突起36には抜け止めのための膨出部36aが形成されている。キャッチ穴37は縁板35の長手方向に長い長穴になっている。
【0049】
バックシート20の下端縁の固定手段としては、図13(B)に示すように、バックサポート11とロアカバー19との間に下向き開口のキャッチ溝39を形成し、このキャッチ溝39に縁板35を下方から嵌め入れている。
【0050】
(4).バックサポートへの背板の取付け手段
背板10はバックサポート11に簡単に着脱できる。この点を主として図10を参照して説明する。背板10はバックサポート11に左右ずれ不能に保持する必要がある。そこで、背板10を構成するメインメンバー14の左右両側部と下部とに略角形の位置決め突起42,43を後ろ向きに突設して、上部位置決め突起42はバックサポート11に設けた左右一対の上部挟持体44の間に嵌め入れ、下部位置決め突起43はバックサポート11における内外縦リブ31,32の間に嵌め入れている。
【0051】
また、背板10を前向き移動不能に保持する手段として、メインメンバー14のうち上部位置決め突起42の外側に上部係合体45を後ろ向きに突設し、この上部係合体45の先端部に平面視で傾斜した上部係合爪46を一体に設けている一方、バックサポート11の前面には、上部係合爪46が引っ掛かる平面視L形の上部係合受け部47を形成している。上部係合受け部47は補強のため底板47aを設けている。
【0052】
上部係合爪46は、手前に行くほど左右外側にずれるように平面視で傾斜したヒレ状の形態であり、このため、その先端が上部係合体45に近づくように撓み変形し得る(弾性に抗して窄まり変形し得る。)。そして、メインメンバー14が左右移動不能に保持された状態で上部係合爪46の先端が上部係合受け部47に後ろから当接する。
【0053】
メインメンバー14の背面のうち下部位置決め突起43より下方の下端部には、下部係合体48を後ろ向きに突設しており、この下部係合体48に、平面視で傾斜した左右一対の下部係合爪49を一体に設けている。左右の下部係合爪49はヒレ状(舌状)の形態であり、両者は手前に行くほど互いの間隔が広がるように傾斜している。すなわち、下部係合体48と左右の下部係合爪49とで矢印形が形成されている。下部係合爪49も上下係合爪46と同様に、その付け根を中心に回動するように弾性に抗して撓み変形し得る。
【0054】
メインメンバー14の下部係合体48は、バックサポート11における内外縦リブ31,32の間の溝に入り込む。そして、内外の縦リブ31,32に、下部係合爪49が後ろ側から当接する左右一対の下部係合受け部50を相対向するように形成している。
【0055】
上下の係合爪46,49は、基本的には、背板10を上からずらし移動させるたことで係合受け部47,50に係合させられる。但し、場合によっては、上からずらし移動させても上下の係合爪46,49のうちいずれか一方又は両方が係合受け部47,50に嵌まらない場合が有り得る。この場合は、図10に矢印Aで示すように、メインメンバー14をバックサポート11に対して後ろ向きに押し付けることにより、係合受け部47,50に係合させることができる。この場合は、係合爪46,49を弾性変形させて係合受け部47,50に引っ掛けることになる。
【0056】
ユーザーが背板10を交換する場合、取り扱い説明書の手順に従って作業しても、下向き動のみでは、係合爪46,49のうち一方又は両方を係合受け部47,50に嵌め込みできない場合ある。このような場合、本実施形態では、不完全な取付け状態であっても、背板10をバックサポート11に向けて強引に押し付けることにより、背板10をバックサポート7に取り付けることができる。この点、本実施形態の利点である。
【0057】
メインメンバー14は、その上端においても、バックサポート11に対して左右動不能及び下向き移動不能に保持されている。すなわち、メインメンバー14の上端のうち左右両端寄り部位に後ろ向きの上端突起53と、上端突起53に連続した上下開口の上枠部54とを後ろ向きに突設している一方、バックサポート11には、上端突起53が嵌まる上端凹部55と、上枠部54に下方から嵌まり込む雄型受け部58とが形成されている。雄型受け部58の下方は前後に開口した内枠部56になっている。
【0058】
上端突起53の上面は上フランジ63になっており、他方、バックサポート11における上端凹部55の上部は、上フランジ63が前から重なる上段部55aになっている。また、メインメンバー14の上枠部54は左右横長の前後横バー部54a,54bを有しており、両者の間に雄型受け部58が位置している(図17参照)。内枠部56は、左右側板57と上板58と下面59とを有していて上下に長い長方形の形態を成している。
【0059】
メインメンバー14のうち上枠部54の真下部位には、トップメンバー15を上向き動不能に保持する係合手段の一例してアッパー係合爪60が形成されている。アッパー係合爪60は弾性に抗して変形することにより、その下端を中心にして前後に回動し得る。他方、バックサポート11における内枠部56の内部のうち、やや上下中間位置より上方の部位には横長の支軸61が一体に形成されており、この支軸61に、例えば図14(A)や図18に示すレバー62が回動自在に取付けられている。
【0060】
そして、トップメンバー15はアッパー係合爪60によって上向き移動不能に保持されると共に、レバー62を回動操作することでトップメンバー15に対するアッパー係合爪60の係合を解除することができる。この点は後述する。
【0061】
例えば図14に示すように、メインメンバー14の上端には後ろ向きに突出した庇状の上フランジ63が形成されている。上枠部54は上フランジ63に連続した状態に形成されている。他方、例えば図10(A)に示すように、バックサポート11の上端にも上フランジ64を形成しており、内枠部56の上端は上フランジ64から少し突出している。
【0062】
例えば図6に示すように、バックサポート11の上部のうち左右の内枠部56の間には、後ろ向き突出部65が形成されている。後ろ向き突出65は上フランジ64に連続した背面板66と、背面板66及びバックサポート11の基板に連続した下面板67とを有しており、図5(A)に示すように、下面板67には人が手先を差し込むことができる引手穴68を設けている。
【0063】
このため、人はバックサポート11の後ろ向き突出部65に手を掛けて椅子を引き寄せたり引いて移動させたりすることができる。そして、バックサポート11は堅牢な構造の強度メンバーであるため、例えば、人が引手穴68に手先を挿入して椅子を持ち上げても、強度的な問題は生じない。さて、椅子を移動させる場合、手で背もたれの上面部を掴むことが多く、この場合、繰り返していると背もたれの上面が汚れる問題がある。これに対して本実施形態のように引手穴68を設けると、背もたれの上面の汚れを防止できる。
【0064】
(5).トップメンバーの構造及びメインメンバーとの関係
次に、従前の図に加えて図15〜図20も参照してトップメンバー15とその取付け構造を説明する。例えば図14から理解できるように、バックサポート11は、メインメンバー14の上フランジ63及びバックサポート11の上フランジ64に対向する重合面71を有しており、重合面71の左右中間部と左右両端部とに第1下向き突起72を設け、第1下向き突起72をメインメンバー14の上フランジ63に形成した位置決め穴73に嵌め入れている。
【0065】
本実施形態では、メインメンバー14の上面とバックサポート11の上面とは略同じ高さになっており、両者がトップメンバー15で上から覆われている。従って、本実施形態では、請求項に記載したオーバーハング部15aをトップメンバー15に形成している。高さが相違するトップメンバー15を1種類のメインメンバー14に接続できるが、トップメンバー15はその高さに関係なくバックサポート11を覆うため、デザイン的な統一性を確保しつつ背もたれ3の高さを変更できるのである。
【0066】
なお、トップメンバー15のオーバーハング部15aはバックサポート11と平面視で重なっているが、基本的には、当接せずに近接している。これは、着座者の体圧によってトップメンバー15とバックサポート11とが相対動したときに、異音(擦れ音や当接音)が発生することを防止するためである。トップメンバー15に下向きの大きな荷重がかかったときは、オーバーハング部15aがバックサポート11に当接して荷重を指示する。
【0067】
図14に示すように、トップメンバー15の左右両側部には、メインメンバー14のサイド突条23に連続したトップ突条75が形成されており、トップ突条75の下端に第2下向き突起76を設けている。他方、メインメンバー14におけるサイド突条23の上端部は上向きに開口した筒状部77になっており、この筒状部77に第2下向き突起76を嵌め入れている。第2下向き突起76と筒状部77とは、請求項4に記載したサイド姿勢保持手段の一例である。なお、突起と筒状部との関係を逆にしてもよいし、別部材の継手で連結することも可能である。
【0068】
トップメンバー15の重合面71はその左右両端部が切欠かれた状態になっており、このため、トップメンバー15の左右両側部には上端近くまで延びる横向きのサイド凹所78が開口している。そして、バックサポート11の左右両端部に装着した上下長手のプラグ79を、トップメンバー15のサイド凹所78に嵌め入れており、これにより、体裁を良くしている。
【0069】
例えば図10(A)に示すように、バックサポート11の左右両端部には前向きに開口した溝形の耳部11aを形成しており、耳部11aに形成した蟻溝11bにはプラグ79の足部79a(図15(A)参照)が嵌め込まれている。プラグ79における足部79aの下端には後ろ向きの爪79bが形成されている一方、図10(A)に示すように、バックサポート11の耳部には、プラグ79の爪79bが下方から引っ掛かり係合する爪キャッチ11cを前向きに突設している。
【0070】
本実施形態ではプラグ79でトップメンバー15のサイド凹所78を塞いでいるが、高さが低いトップメンバー15を使用する場合は、プラグ79は使用せず、トップメンバー15のサイド凹所78はバックサポート7の耳部11aのみで塞がれる。なお、図では表示していないが、バックシート20の左右上端部にはプラグ79を上方から覆う袋状部が設けられている。
【0071】
トップメンバー15のううち重合面71より上の部分には、軽量化及び樹脂の使用量節減のため前向き開口の空所と後ろ向き開口の空所が多数形成されている。トップメンバー15は相当の部分がバックサポート11の後ろにオーバーハングしており、かつ、トップメンバー15の後端にはバックサポート11の後ろ向き突出部65を後ろから覆う後ろ壁80が形成されている。トップ突条75は後ろ壁80の下端まで延びており、更に、後ろ壁80の下端にはトップ突条75に連続したバック突条81が形成されている。
【0072】
背クッション12は、メインメンバー14から上向きに延びてトップメンバー15も覆っている。従って、図16(A)に示すように、背クッション12はトップメンバー15のバック突条81まで延びている。そして、表皮材13は後ろ壁80の内面まで巻き込まれており、縁板25をキャッチ突起26に嵌合させている。図16(B)(C)から理解できるように、表皮材13はトップメンバー15のサイド凹所78の内部にも入り込んでおり、サイド凹所78の内壁78aに設けたキャッチ突起26に縁板25を嵌め込んでいる。このため、表皮材13は凹所78の外側部において張った状態に保持されている。
【0073】
本実施形態では、表皮材13は縁板25をキャッチ突起26に着脱する簡単な作業で背板10に着脱できるため、ユーザーが表皮材13を交換することも簡単にな行える。従って、表皮材13が汚損・破損した場合の交換や、異なる色のものを欲した場合の交換を簡単に実現できる。
【0074】
図16(A)に示すように、トップメンバー15における後ろ壁80には突起26′を設けている一方、背クッション12には、突起26′に嵌合する凹所(又は貫通穴穴)26″を設けている。これら突起26′と穴26″との嵌め合わせにより、背クッション12はその上端部においてもずれ不能に保持されている。このため、背クッション12は取付けに際して正確に位置決めされると共に、人の身体が当たってずれることもない。
【0075】
図15(A)及び図16(A)に示すように、第1下向き突起72は側面視で下窄まりのテーパ形状になっている一方、メインメンバー14の位置決め穴73は側面視で上向きに広がったテーパ状になっており、このため、第1下向き突起72は位置決め穴73にスムースに誘い込まれる。第1下向き突起72には係合爪82を形成し、位置決め穴73の背面部には補助係合穴83を形成している。左右中間部の第1下向き突起72では係合爪82は後ろ向きに突出しており、左右両側の第1下向き突起72では係合爪82は前向きに突出している。
【0076】
これら係合爪82が補助係合穴83に嵌合していることにより、トップメンバー15はメインメンバー14に対して上向き離脱不能に保持されている。補助係合穴83に対する係合爪82の嵌合解除は、係合爪82をマイナスドライバ等で押すことで行える。
【0077】
例えば図14や図17に示すように、トップメンバー15の後ろ壁部80の前面のうち第1下向き突起72の少し内側の部位には、ガイドリブ74を設けている。ガイドリブ74の前面は上に行くほど手前にずれるように傾斜しており、背板10の取付けに際しては、ガイドリブ74がバックサポート7の雄型受け部58に上から当たることにより、背板10はバックサポート7に重なるように後ろ向き移動がガイドされる。
【0078】
(6).背板の係止構造
背板10は通常はバックサポート11に対して上向き離脱不能に保持されると共に、取り外しは容易に行える。この機能は、既述のレバー62とアッパー係合爪60とを主要部材として達成される。この点を次に説明する。
【0079】
図17及び図18(A)は背板10(メインメンバー14)がバックサポート11に対して離脱不能に保持された状態を表示しており、この状態では、アッパー係合爪60の上にバックサポート11の雄型受け部58が位置しているため、メインメンバー14(背板10)を上向き移動させることはできない。アッパー係合爪60の上面には、雄型受け部58の手前に位置したリブ(ストッパー)84を形成しており、このためアッパー係合爪60が後ろに向いて回動する姿勢が規制されている。
【0080】
また、雄型受け部58の上面は側断面視で円弧状になっており、上端にはリブ85を突設している。雄型受け部58のリブ85の上面にトップメンバー15の重合面71が近接しており、かつ、雄型受け部58のリブ85の後ろに上枠部54における後部横バー54bが位置している。また、後部横バー54bはトップメンバー15における重合面71の奥部に形成した前向き溝86に嵌まっている。これによってもトップメンバー15はメインメンバー14に対して上向き分離不能に保持されている。
【0081】
アッパー係合爪60は付け根部が細くなっており、このため、付け根を支点にして前後方向に回動するように弾性変形する。そして、アッパー係合爪60の後面は側面で上に行くほど後退するように湾曲しており、かつ、上端には後ろ向きに突出した顎部87が形成されており、顎部87の後端に下方及び後方に開口した切欠き部88を形成している。
【0082】
他方、レバー62はアッパー係合爪60の後ろに配置された支軸61に回動自在に取付けられている。すなわち、レバー62のうち上下中間高さより僅かに上の部位に後ろ向きに開口した軸受け溝穴89を形成し、この軸受け溝穴89を支軸61に嵌め込んでいる。このため、レバー62は支軸61の軸心周りに回動し得る。
【0083】
支軸61は側面視で傾斜した姿勢の平板状部61aを有しており、レバー62における軸受け溝穴89のうち支軸61の平板状部61aに対応した部位には相対向する方向に突出する上下のストッパー90を設けている。上下ストッパー90の間の間隔は平板状部61aの厚さより僅かに大きい寸法に設定している。
【0084】
従って、レバー62は、上端が後ろで下端が前になる傾斜姿勢とすることで支軸61に取付けることができる。そして、レバー62はバックサポート11の内枠部56で囲われており、いったん支軸61に取付けると、上端が後ろで下端が前になる姿勢にすることはできない。従って、レバー62が支軸61から外れることはない。
【0085】
レバー62の上端には、アッパー係合爪60の切欠き部88に嵌合可能な角部91を形成している。そして、図18(B)に示すように、レバー62の下部に指先を当てて後ろに引くと、アッパー係合爪60はその上端が前に押されることで弾性に抗して変形し、レバー62を引き切ると、上端の角部91でアッパー係合爪60の切欠き部88に嵌まり、アッパー係合爪60は手前に回動した状態に保持される。レバー62の回動によってアッパー係合爪60が容易に変形するように、アッパー係合爪60の上部後端は側面視で丸みを帯びている。
【0086】
レバー62によってアッパー係合爪60が手前に回動した状態では、アッパー係合爪60はバックサポート11における雄型受け部58の手前に位置しており、従って、メインメンバー14を上に移動させることができる。換言すると、背板10をバックサポート11から取り外すことができる。
【0087】
背板10をバックサポート11から取り外すと、レバー62はほぼ鉛直姿勢に戻る。この状態では、レバー62は雄型受け部58の下方に位置している。そして、トップメンバー15をその重合面71がバックサポート11の上面に近接するように下降させると、アッパー係合爪60は雄型受け部58のガイド作用によっていったん手前に回動し、次いで、トップメンバー15を下降させ切ると、アッパー係合爪60は弾性復元力によって戻り変形し、その上端が雄型受け部58の下方に位置する。
【0088】
このように、背板10はバックサポート11に対して離脱不能に保持されると共に、レバー62を回動操作してバックサポート11に対するメインメンバー14の係合を解除するだけで、簡単に取り外すことができる。また、背板10は、バックサポート11に対して重ね配置するだけのワンタッチ的な操作により、バックサポート11に離脱不能な状態に取り付けることができる(特に、ガイドリブ74により、背板10はバックサポート7の前面に重なるように誘い込まれる。)。このため、ユーザーであっても背板10を簡単に交換できる。
【0089】
(7).ロアカバー
次に、図13に加えて図20及び図21を参照してロアカバー19を説明する。さて、バックサポート11はそのアーム16を除いてバックシート20で覆われている。そして、例えば図4(B)から理解できるように、バックサポート11の下端部はアーム11の付け根よりも下方及び左右側方にはみ出ているため、バックシート20でバックサポート11の下端部を覆うことができ、このため美感に優れている。この場合、当然のことながらバックシート20の下端はバックサポート11に着脱可能に係止(固定)せねばならない。
【0090】
この係止手段としては、バックサポート11の下端部の前面や下端にキャッチ突起を形成したり、バックサポート11の下端部に前向き開口の横長スリットを形成してこのスリットに縁板35を嵌め込むといったことも考えられるが、いずれにしても金型が複雑化する問題がある。すなわち、金型を使用した射出成形法でバックサポートを成形するにおいて、金型はスライド型を使用した複雑な構造にせねばならず、このためコストが嵩む。
【0091】
この点、図13(B)を参照して説明したように、バックサポート7とロアカバー19との間の縁板35を挿入すると、バックサポート7はスライド型を使用することなく、密着・離反自在な雌型と雄型とによって容易に形成できる。そして、バックサポート7の下部はロアカバー19で覆われているため美感も確保できる。
【0092】
また、例えば図21に示すように、バックサポート11の下端部には軽量化や樹脂使用量節約のための後ろ向きに開口して多数の凹所95を形成しているが、これらはロアカバー19が覆われているため、美感の問題を考慮することなく後ろ向き開口の凹所96を形成することができるのである。そして、ロアカバー19はバックサポート11の下部に重ねて上向き動させることで取付けられる。この点を説明する。
【0093】
ロアカバー19は左右横長の形態であり、バックサポート11の下端部には、ロアカバー19が重なるように段落ちしたカバー取付け部95が形成されている。そして、まず、ロアカバー19の左右両端に上向きのサイド突起97を形成する一方、バックサポート11には、サイド突起97が嵌合する下向き開口のサイド穴98が形成されている。
【0094】
また、ロアカバー19のうち左右側部寄りの2カ所に、底面視L型の係止片99を形成している一方、バックサポート11には、係止片99が下方から嵌まる蟻溝(係合溝)100を形成している。これらサイド突起97とサイド穴98との嵌め合わせ及び係止片99と蟻溝100との嵌め合わせにより、ロアカバー19は後ろ向きに離脱不能に保持されている。また、ロアカバー19のうち係止片99の内側には上下長手の縦長リブ101が形成されている一方、バックサポート11には縦長リブ101が下方から嵌入する縦長溝102が形成されており、これら縦長リブ101と縦長溝101との嵌まり合いにより、ロアカバー19は左右動不能に保持されている。
【0095】
ロアカバー19の左右中間部には、背面視で下向きに開口したスリット103を形成することでキャッチレバー104が形成されている。キャッチレバー104の上端には前向きに突出した爪104aを形成している。他方、バックサポート11には、キャッチレバー104の爪104aが上から引っ掛かるキャッチ板105を設けている。
【0096】
係止板105は、バックサポート11に後ろ向き開口の上下角穴106,107を空けることで形成されている。従って、上部角穴106はキャッチレバー104が引っ掛かる係合穴と見ることも可能である。爪104aは、下方から移動によってキャッチ板105を乗り越えるように前面が側面視湾曲している。
【0097】
ロアカバー19のうちキャッチレバーの104の真下部位には窓穴108が空いており、この窓穴108の箇所に操作レバー109を配置している。操作レバー109の上端はキャッチレバー104の下端と連続しており、かつ、キャッチレバー104の下端部は左右の細幅部110を介してバックサポート11に繋がっている。従って、操作レバー109を押すと、キャッチレバー104は爪104aが後退するように回動する。
【0098】
また、バックサポート11のうち蟻溝100と縦長溝102との間には前後に開口したサイド係合穴110が形成されている一方、ロアカバー19には、サイド係合穴110に嵌まるサイド係合爪111を形成している。係合爪111はその下端が水平状になっており、ロアカバー19をバックサポート7に装着すると、係合爪111はいったんバックサポート7から逃げ移動し、次いで係合穴110に勘合する。これにより、ロアカバー19はバックサポート7に離脱不能に保持される。
【0099】
以上の説明から理解できるように、ロアカバー19は、バックサポート11のカバー取付け部95に重ねて上向きスライドさせることでバックサポート11に取付けられる。その状態ではキャッチレバー104の爪104aがキャッチ板105に上から引っ掛かっているため、ロアカバー19は脱落不能に保持されている。そして、バックシート20を外した状態で操作レバー109を前向きに押すとと共に、サイド係合爪111を前から雄と、バックサポート11に対する爪104,111の引っ掛かりが解除されてロアカバー19を取り外すことができる。
【0100】
(8).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば適用対象は回転椅子に限定されず、固定式椅子などの各種の椅子に適用できる。また、背もたれがロッキングしない椅子にも適用できることはいうまでもない。実施形態では背板をメインメンバーとトップメンバーとの2つの部材で構成したが、複数の着脱式メンバーを備えた構成とすることも可能である。例えば、着脱式メンバーを、メインメンバーに上から重なるミドルメンバーとその上に重なるトップメンバーとの2つの部材で構成することも可能である。
【0101】
いずれにして、各メンバーの形態はデザイン等の要請に応じて任意に変更可能である。例えば、メインメンバーや着脱式メンバーを多数のスリットが空いた形態にすることが可能である。バックサポートを設けずに、背板を脚部に直接的に取り付けることも可能である。バックサポートを設ける場合、バックサポートは例えば前後に開口したフレーム形状にするなど、種々の形態・構造を採用できる。
【0102】
バックサポートを有する場合、メインメンバーはビス等のファスナーでバックサポートに固定することも可能であるが、実施形態のような嵌め合わせ構造を採用すると工具が不要であるため着脱の作業が簡単である。この場合、メインメンバーの位置決め手段及び抜け止め手段は、各種のキャッチ方式(係合手段)を採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本願発明は椅子に適用して有用性を発揮する。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0104】
2 座
3 背もたれ
10 背板
11 バックサポート
12 背クッション
13 表皮材
14 メインメンバー
15 着脱式メンバーであるトップメンバー
19 ロアカバー
20 バックシート
45 背板保持手段を構成する上部係合体
47 背板保持手段を構成する上部係合受け部
48 背板保持手段を構成する下部係合体
50 背板保持手段を構成する下部係合受け部
54 背板をバックサポートに取り付ける上枠部
58 雄型受け部
60 背板保持手段を構成するアッパー係合爪
62 背板取り外し手段を構成するレバー
72 トップメンバー保持手段を構成する第1下向き突起
73 トップメンバー保持手段を構成する位置決め穴
76 サイド姿勢保持手段を構成する第2下向き突起
77 サイド姿勢保持手段を構成する筒状部
82 トップメンバー離反防止用の係合爪
83 トップメンバー離反防止用の補助係合穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれを構成する背板が、当該背板の少なくとも下部を構成するメインメンバーとその上に分離可能に接続された1段又は複数段の着脱式メンバーとで構成されており、前記着脱式メンバーとメインメンバーとの前面は一体状に連続していると共に、着脱式メンバーがメインメンバーに対して屈曲しないように背板は全体として剛性を有している、
背もたれ付き椅子。
【請求項2】
前記メインメンバーと着脱式メンバーとの前面には1枚のクッションが跨がって状態に張られている、
請求項1に記載した背もたれ付き椅子。
【請求項3】
前記メインメンバーはその後ろに配置したバックサポートに分離可能に取付けられており、前記メインメンバーの上部又は前記着脱式メンバーに、前記バックサポートを上から覆うオーバーハング部が形成されている、
請求項1又は2に記載した背もたれ付き椅子。
【請求項4】
前記着脱式メンバーは1つのトップメンバーから成っており、前記トップメンバーの左右両側部と前記メインメンバーの左右両側部とに、トップメンバーを下向き動させると互いに嵌合し合うサイド姿勢保持手段を設けている、
請求項1〜3のうちのいずれかに記載した背もたれ付き椅子。
【請求項5】
背板の下部を含むメインメンバーの上に接続されて背板の上部を構成するトップメンバーであって、前記メインメンバーに接続するための接続手段を有しており、かつ、前記接続手段により、前記メインメンバーに屈曲しない状態で接続される、
椅子の背板用トップメンバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−135493(P2012−135493A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290794(P2010−290794)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】