説明

背もたれ付き椅子

【課題】デザイン上の統一性を阻害しない状態で背もたれに引手部を設ける。
【手段】背もたれ3は背板10とバックサポート11とを主要要素として構成されており、背もたれ3の上部には後ろ向きに突出したオーバーハング部3aが形成されている。いる。背板10はメインメンバー14とトップメンバー15とに分離構成されており、メインメンバー14の後ろにバックサポート11が配置されている。バックサポート11の上端部には後ろ向きのオーバーハング部65が形成されており、これに下向きか開口した引手穴68を設けている。バックサポート11のオーバーハング部65はトップメンバー15の後ろ壁80で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれに引手機能を設けた椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人が椅子を手で引いて移動させる場合、背もたれの上部に手を当てて引っ張っている。そして、一般には、背もたれの上端を手で掴んで引いている。しかし、背もたれに表皮材が張られるていると、手を背もたれの上端に繰り返し当てているうちに、表皮材が汚れてしまうことがある。
【0003】
他方、背もたれの上端部に引手部を設けることが行われ、或いは、提案されている。その例として特許文献1には、背もたれの背面に横長の棒状材より成る引手を取り付けることが開示されている。また、特許文献1の図8に開示されているように、背板の上端に前後開口の引手穴を空けることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−136570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成は引手機能の面では問題はなく、また、背もたれとは別部材であるため、背もたれの表面に表皮材が張られていても汚れの問題はない。しかし、引手は背もたれの背面に突出した状態で取付けられているため、人に違和感を与えるおそれがあり、必ずしも美感に優れているとは言えない。
【0006】
本願発明は、このような現状を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく請求項1の発明に係る椅子は、背もたれの背面部の上部に、人が下方から手先を挿入できる引手穴を、前後方向と上方には開口せず下方に開口するように設けている。なお、この請求項1の構成では、引手穴は下方にのみ開口していてもよいし、下方と左右方向とに開口していてもよい。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1において、前記背もたれの上部には後ろ向きに突出したオーバーハング部が略左右全長にわたって延びるように形成されており、前記オーバーハング部に前記引手穴を設けている。
ている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2において、前記背もたれは背板とこれが取り付くバックサポートとを有しており、前記バックサポートの上端部に後ろ向きに突出したオーバーハング部を形成してこれに前記引手穴を設け、かつ、前記バックサポートのオーバーハング部は前記背板に設けた後ろ壁部で後ろから覆われている。
【発明の効果】
【0010】
本願発明の引手穴は下向きに開口していて前後方向と上方とには開口していないため、引手穴が目立つことはなくて人に違和感を与えることはない。すなわち、デザインに溶け込んだ状態で引手穴を設けることができるのであり、このため、背もたれを美感に優れたものとすることができる。また、引手穴の内面は人目に触れることはないため、仮に引手穴が汚れても美感の悪化は生じない。従って、表皮材を張っている背もたれに好適である。
【0011】
請求項2のように背もたれの背面にオーバーハング部を形成してこれに引手穴を設けると、背もたれの全体が厚くなることを防止できるため好適である。また、請求項3のようにバックサポートにオーバーハング部を形成してこれに引手穴を設けると、バックサポートは強度メンバーであって頑丈な構造であるため、強度に優れている。従って、例えば引手穴に手を掛けて椅子を持ち上げるといったことも可能である。
【0012】
また、請求項3では、バックサポート11のオーバーハング部は背板の後ろ壁部で後ろから覆われているため、バックサポートにオーバーハング部を形成したことに起因して美感が悪化するような問題はない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】椅子の外観図であり、(A)は前方から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図、(C)は側面図である。
【図2】椅子の分離斜視図である。
【図3】クッションを省略した状態での背もたれの外観図であり、(A)は前方から見た斜視図、(B)は側面図、(C)は後ろから見た斜視図である。
【図4】(A)は背もたれの背面部を下方から見た斜視図、(B)は背もたれの分離側面図である。
【図5】背もたれを後ろから見た分離斜視図である。
【図6】背もたれの構成要素を分離して後ろから見た分離斜視図である。
【図7】背もたれの分離斜視図である。
【図8】メインメンバーを裏返してバックサポートと並べた正面図である。
【図9】(A)はメインメンバーとバックサポートとの分離斜視図、(B)はバックサポートの下部の部分斜視図、(C)はメインメンバーの下部の部分斜視図である。
【図10】(A)はメインメンバーの部分背面図、(B)はメインメンバーを後ろから見た部分斜視図、(C)はクッションの端部の部分正面図、(D)はクッションの取付け態様を示す平断面図である。
【図11】(A)はバックサポートの部分正面図、(B)はバックサポートを前から見た部分斜視図、(C)はバックシートの端部の部分正面図、(D)はバックシートの取付け態様を示す平断面図である。
【図12】(A)(B)とも要部の分離斜視図である。
【図13】(A)は背もたれを左右中央部で切断した分離図、(B)は継手の斜視図である。
【図14】(A)は背もたれの左右中央部での側断面図、(B)はトップメンバーの側端部の斜視図、(B)はトップメンバーの側端部の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は事務用に多用されている回転式ロッキング椅子に適用している。本願では方向を特定するため「前後」「左右」といった文言を使用するが、これは普通の姿勢で着座した人の向きを基準にしている。正面視は着座した人と対向した方向になる。
【0015】
(1).椅子の概要
まず、主として図1〜6を参照して椅子の概要を説明する。図1に示すように、椅子は大きな要素として脚1と座2と背もたれ3とを備えている。脚1は放射方向に延びる枝足を有しているが図示は省略しており、ガスシリンダよりなる脚支柱4のみを表示している。図示していないが、脚1を構成する各枝足の先端にはキャスタを設けており、このため椅子を容易に押し引き移動させることができる。脚支柱4の上端にはベース5が固定されており、ベース5の上方に座2が配置されている。
【0016】
図2に示すように、座2は樹脂製の座インナーシェル(座板)6とその上面に張った座クッション7とから成っており、図2に示す中間支持体8に前後位置調節可能に取付けられている。中間支持体8の前部はフロントリンク9を介してベース5の前部に連結されており、フロントリンク9は側面視でベース5と中間支持体8との両方に対して相対回動する。従って、フロントリンク9が回動することにより、中間支持体8及び座2は上下動しながら前後動する。
【0017】
背もたれ3は、着座者の体圧がかかるショル状の背板(背インナーシェル)10とこれが取付けられたシェル状のバックサポート(背アウターシェル)11とを有しており、背板10の前面に背クッション12が張られている。背クッション12はクロス等の表皮材13で前から覆われている。そして、図2に明示するように、背板10はバックサポート11の手前に配置されたメインメンバー14とその上に重ね配置されたトップメンバー15との2つの部材(パーツ)で構成されている。両メンバー14,15は、樹脂より成る射出成形品である。
【0018】
背もたれ3の上端部に後ろ向きに突出したオーバーハング部3aが左右全長にわたって形成されている。このため、背もたれ3はオーバーハング部3aの部位がその下方の部位よりも厚くなっている。本実施形態では、メインメンバー14が背もたれ3の大部分を占めて、トップメンバー15は背もたれ3の上部を構成している。
【0019】
メインメンバー14の前面とトップメンバー15の前面は滑らかに連続している。従って、着座した人は一体構造の背もたれと同様に違和感なく凭れる掛かることができる。本実施形態のトップメンバー15は後ろに曲がって下向きにUターンした形状をしており、従って、おおよそ下向き開口U字に近い側面視形態になっている。
【0020】
背板10におけるメインメンバー14の上端とバックサポート11の上端とは略同じ高さになっており、背板10のトップメンバー15はバックサポート11の上面に重なっている。そして、背板10のトップメンバー15は、バックサポート11の上部後方に回り込むようにオーバーハングしている。
【0021】
図3に明示するように、バックサポート11の下端には前向きに延びる左右一対のアーム16が一体に形成されており、左右のアーム16は門形のジョイント17で連結されている。そして、左右のアーム16はその前端部を中心にして後傾するようにベース5に連結されており、かつ、左右のアーム16は金具18(図1(B)に僅かに露出している。)を介して中間支持体8の後部と連結している。このため、背もたれ3が後傾すると、中間支持体8(座2)は金具18に引かれて後退しつつ上昇する。ベース5の後部にはロッキングに対して抵抗を付与する弾性体が配置されている。
【0022】
バックサポート11の下端部はアーム16の付け根よりも下方に突出している。また、バックサポート11の下部の背面にはロアカバー19が装着されている。バックサポート11は後ろからバックシート20で覆われており、ロアカバー19もバックシート11で覆われている。なお、アーム16はバックサポート11とは別部材に構成することも可能である。図1(A)に示すように、表皮材13の上部は左右横長の引き込み部21で後ろ側に引っ張り保持されている。
【0023】
(2).メインメンバー
以下、背もたれ3の詳細を説明する。まず、図7〜11を中心にしてメインメンバー14とバックサポート11とを説明する。図8に明示するように、バックサポート11とメインメンバー14とは上端の横幅より下端の横幅が小さく、従って、両者とも正面視で逆台形の形状を成している。例えば図7(B)に明示するように、バックサポート11とメインメンバー14とは、いずれも平面視で前向き凹状に緩い曲率で湾曲しており、かつ、両者とも着座者の腰部が当たる部分が最も前に位置するように側面視で前向き凸状に湾曲している。
【0024】
例えば図2に示すように、メインメンバー14の左右両側部には前向きに突出した角形のサイド突条23が形成され、メインメンバー14の下端にも前向きに突出した角形のボトム突条24が形成されている。両突条23,24は互いに連続している。両突条23,24は後ろ向きに開口してチャンネル状の形態を成しており。
【0025】
例えば図10(D)に示すように、め4において背クッション12はサイド突条23及びボトム突条24の内側に配置されており、従って、サイド突条23とボトム突条24とは補強機能と背クッション12の位置決め機能とを有している。背クッション12を覆う表皮材13はメインメンバー14の後ろに巻き込まれており、表皮材13の端縁はバックサポート11で隠れている。
【0026】
そして、表皮材13の端縁には樹脂板のような帯板状の縁板25が縫着や接着等の手段で固定されている一方、メインメンバー14の背面のうち突条23,24のやや内側に位置した部位にはキャッチ突起26を適宜間隔で数形成しており、縁板25に形成したキャッチ穴27をキャッチ突起26に嵌め込んでいる。なお、縁板25はねの全体を表皮材13に重ねた縫着しており、このため、表皮材13は縫着部の箇所で折り返されている。
【0027】
(3).バックサポート
例えば図7及び図8に示すように、バックサポート11の左右両側縁は略前向きに突出した側壁11′になっており、また、バックサポート11の下部には、メインメンバー14におけるボトム突条24の後ろに位置した左右横長のロアリブ30が前向き突設されている。ロアリブ30の下面には多数の補強リブが連接されている。図10(D)に示すように、バックサポート11の側壁11′はメインメンバー14におけるサイド突条23の後ろに位置している。
【0028】
バックサポート11の前面には、アーム16に連続する左右一対ずつの内側縦リブ31及び外側縦リブ32が前向きに突設されており、ロアリブ30は内側縦リブ31に接続さている。また、左右の外側縦リブ32の上端は上部水平リブ33を介して連続しており、左右の内側縦リブ31の上端は下部水平リブ34を介して連続していま。また、下部水平リブ34は左右の外側縦リブ32にも連続している。
【0029】
これらのリブ30〜34は補強機能を有すると共に、背板10が着座者の体圧で後ろ向きに凹むように変形したときの変形量を規制するストッパーの役割も果たしている。また、内外の縦リブ31,32は背板10を取付ける機能も果たしている(この点は後述する)。
【0030】
既述のようにバックサポート11はバックシート20で後ろから覆われている。図11(C)(D)に示すように、バックシート20の周縁にも樹脂板等の帯の縁板35が縫着等で固定されている一方、バックサポート11の前面のうち左右両側部にはキャッチ突起36が上下適宜間隔で前向きに突設されており、縁板35に空けたキャッチ穴37をキャッチ突起36に嵌め込んでいる。キャッチ突起36には抜け止めのための膨出部36aが形成されている。
【0031】
(4).バックサポートへの背板の取付け手段
背板10はバックサポート11に簡単に着脱できる。この点を主として図9を参照して説明する。メインメンバー14はバックサポート11に左右ずれ不能に保持する必要がある。そこで、メインメンバー14の左右両側部と下部とに略角形の位置決め突起42,43を後ろ向きに突設して、上部位置決め突起42はバックサポート11に設けた左右一対の上部挟持体44の間に嵌め入れ、下部位置決め突起43はバックサポート11における内外縦リブ31,32の間に嵌め入れている。
【0032】
また、メインメンバー14を前向き移動不能に保持する手段として、メインメンバー14のうち上部位置決め突起42の外側に上部係合体45を後ろ向きに突設し、この上部係合体45の先端部に平面視で傾斜した上部係合爪46を一体に設けている一方、バックサポート11の前面には、上部係合爪46が引っ掛かる平面視L形の上部係合受け部47を形成している。上部係合受け部47は補強のため底板47aを設けている。
【0033】
上部係合爪46はメインメンバー14に手前に行くほど左右外側にずれるように平面視で傾斜したヒレ状の形態であり、このため、その先端が上部係合体45に近づくように撓み変形し得る(弾性に抗して窄まり変形し得る。)。そして、メインメンバー14が左右移動不能に保持された状態で上部係合爪46の先端が上部係合受け部47に後ろから当接する。
【0034】
メインメンバー14の背面のうち下部位置決め突起43より下方の下端部には、下部係合体48を後ろ向きに突設しており、この下部係合体48に、平面視で傾斜した左右一対の下部係合爪49を一体に設けている。左右の下部係合爪49はヒレ状(舌状)の形態であり、両者は手前に行くほど互いの間隔が広がるように傾斜している。すなわち、下部係合体48と左右の下部係合爪49とで矢印形が形成されている。下部係合爪49も上下係合爪46と同様に、その付け根を中心に回動するように弾性に抗して撓み変形し得る。
【0035】
メインメンバー14の下部係合体48は、バックサポート11における内外縦リブ31,32の間の溝に入り込む。そして、内外の縦リブ31,32に、下部係合爪49が後ろ側から当接する左右一対の下部係合受け部50を相対向するように形成している。
【0036】
上下の係合爪46,49は、基本的には、背板10を上からずらし移動させるたことで係合受け部47,50に係合させられる。但し、場合によっては、上からずらし移動させても上下の係合爪46,49のうちいずれか一方又は両方が係合受け部47,50に嵌まらない場合が有り得る。この場合は、図10に矢印Aで示すように、メインメンバー14をバックサポート11に対して後ろ向きに押し付けることにより、係合受け部47,50に係合させることができる。この場合は、係合爪46,49を弾性変形させて係合受け部47,50に引っ掛けることになる。
【0037】
メインメンバー14は、その上端においても、バックサポート11に対して左右動不能及び下向き移動不能に保持されている。すなわち、メインメンバー14の上端のうち左右両端寄り部位に後ろ向きの上端突起53と、上端突起53に連続した上下開口の上枠部54とを後ろ向きに突設している一方、バックサポート11には、上端突起53が嵌まる上端凹部55と、上枠部54に下方から嵌まり込む雄型受け部58とが形成されている。雄型受け部58の下方は前後に開口した内枠部56になっている。
【0038】
上端突起53の上面は上フランジ63になっており、他方、バックサポート11における上端凹部55の上部は、上フランジ63が前から重なる上段部55aになっている。また、メインメンバー14の上枠部54は左右横長の前後横バー部54a,54bを有しており、両者の間に雄型受け部58が位置している(図17参照)。内枠部56は、左右側板57と上板58と下面59とを有していて上下に長い長方形の形態を成している。
【0039】
メインメンバー14のうち上枠部54の真下部位には、トップメンバー15を上向き動不能に保持する係合手段の一例してアッパー係合爪60が形成されている。アッパー係合爪60は弾性に抗して変形することにより、その下端を中心にして前後に回動し得る。他方、バックサポート11における内枠部56の内部のうち、やや上下中間位置より上方の部位には横長の支軸61が一体に形成されており、この支軸61に、例えば図14(A)や図18に示すレバー62が回動自在に取付けられている。
【0040】
そして、トップメンバー15はアッパー係合爪60によって上向き移動不能に保持されると共に、レバー62を回動操作することでトップメンバー15に対するアッパー係合爪60の係合を解除することができる。この点は本願発明との直接の関係はないので説明は省略する。
【0041】
例えば図14に示すように、メインメンバー14の上端には後ろ向きに突出した庇状の上フランジ63が形成されている。上枠部54は上フランジ63に連続した状態に形成されている。他方、例えば図10(A)に示すように、バックサポート11の上端にも上フランジ64を形成しており、内枠部56の上端は上フランジ64から少し突出している。
【0042】
例えば図6に示すように、バックサポート11の上部のうち左右の内枠部56の間には、後ろ向き突出部65が形成されている。後ろ向き突出65は上フランジ64に連続した背面板66と、背面板66及びバックサポート11の基板に連続した下面板67とを有しており、図5(A)に示すように、下面板67には人が手先を差し込むことができる引手穴68を設けている。
【0043】
このため、人はバックサポート11の後ろ向き突出部65に手を掛けて椅子を引き寄せたり引いて移動させたりすることができる。そして、バックサポート11は堅牢な構造の強度メンバーであるため、例えば、人が引手穴68に手先を挿入して椅子を持ち上げても、強度的な問題は生じない。さて、椅子を移動させる場合、手で背もたれの上面部を掴むことが多く、この場合、繰り返していると背もたれの上面が汚れる問題がある。これに対して本実施形態のように引手穴68を設けると、背もたれの上面の汚れを防止できる。
【0044】
(5).トップメンバーの構造及びメインメンバーとの関係
次に、従前の図に加えて図13及び図14を参照してトップメンバー15とその取付け構造を簡単に説明する。例えば図12から理解できるように、バックサポート11は、メインメンバー14の上フランジ63及びバックサポート11の上フランジ64に対向する重合面71を有しており、重合面71の左右中間部と左右両端部とに第1下向き突起72を設け、第1下向き突起72をメインメンバー14の上フランジ63に形成した位置決め穴73に嵌め入れている。
【0045】
本実施形態では、メインメンバー14の上面とバックサポート11の上面とは略同じ高さになっており、トップメンバー15が両方に重なっている。高さが相違するトップメンバー15を1種類のメインメンバー14に接続できるが、トップメンバー15はその高さに関係なくバックサポート11に重なっているため、デザイン的な統一性を確保しつつ背もたれ3の高さを変更できるのである。
【0046】
例えば図12や図13に示すように、トップメンバー15のうち第1下向き突起72の少し内側の部位には、ガイドリブ74を設けている。ガイドリブ74の前面は上に行くほど手前にずれるように傾斜しており、背板10の取付けに際しては、ガイドリブ74がバックサポート7の雄型受け部58に上から当たることにより、背板10はバックサポート7に重なるように後ろ向き移動がガイドされる。
【0047】
図12に示すように、トップメンバー15の左右両側部には、メインメンバー14のサイド突条23に連続したトップ突条75が形成されており、トップ突条75の下端に第2下向き突起76を設けている。他方、メインメンバー14におけるサイド突条23の上端部は上向きに開口した筒状部77になっており、この筒状部77に第2下向き突起76を嵌め入れている。なお、突起と筒状部との関係を逆にしてもよいし、別部材の継手で連結することも可能である。
【0048】
トップメンバー15の重合面71はその左右両端部が切欠かれた状態になっており、このため、トップメンバー15の左右両側部には上端近くまで延びる横向きのサイド凹所78が開口している。そして、バックサポート11の左右両端部に差し込み装着した上下長手のプラグ79をトップメンバー15のサイド凹所78に嵌合させている。
【0049】
例えば図10(A)に示すように、バックサポート11の左右両端部には前向きに開口した溝形の耳部11aを形成しており、耳部11aに形成した蟻溝11bにはプラグ79の足部79a(図13(B)参照)が嵌め込まれている。プラグ79における足部79aの下端には後ろ向きの爪79bが形成されている一方、図9(A)に示すように、バックサポート11の耳部には、プラグ79の爪79bが下方から引っ掛かり係合する爪キャッチ11cを前向きに突設している。
【0050】
トップメンバー15のうち重合面71より上の部分には、軽量化及び樹脂の使用量節減のため前向き開口の空所と後ろ向き開口の空所が多数形成されている。トップメンバー15は相当の部分がバックサポート11の後ろにオーバーハングしており、また、トップメンバー15の後端にはバックサポート11の後ろ向き突出部65を後ろから覆う後ろ壁80が形成されている。
【0051】
従って、後ろ壁80を主要要素としてトップメンバー15の(或いは背板10の)オーバーハング部3aが形成されており、背もたれ3のオーバーハング部3aはトップメンバー15で構成されている。トップ突条75は後ろ壁80の下端まで延びており、更に、後ろ壁80の下端にはトップ突条75に連続したバック突条81が形成されている。
【0052】
背クッション12は、メインメンバー14から上向きに延びてトップメンバー15も覆っている。従って、図14(A)に示すように、背クッション12はトップメンバー15のバック突条81まで延びている。そして、表皮材13は後ろ壁80の内面まで巻き込まれており、縁板25をキャッチ突起26に嵌合させている。図14(B)(C)から理解できるように、表皮材13はトップメンバー15のサイド凹所78の内部にも入り込んでおり、サイド凹所78の内壁78aに設けたキャッチ突起26に縁板25を嵌め込んでいる。このため、表皮材13は凹所78の外側部において張った状態に保持されている。
【0053】
図13(A)及び図14(A)に示すように、第1下向き突起72は側面視で下窄まりのテーパ形状になっている一方、メインメンバー14の位置決め穴73は側面視で上向きに広がったテーパ状になっており、このため、第1下向き突起72は位置決め穴73にスムースに誘い込まれる。第1下向き突起72は係合爪82を形成し、位置決め穴73の背面部には補助係合穴83を形成している。左右中間部の第1下向き突起72では係合爪82は後ろ向きに突出しており、左右両側の第1下向き突起72では係合爪82は前向きに突出している。
【0054】
これら係合爪82が補助係合穴83に嵌合していることにより、トップメンバー15はメインメンバー14に対して上向き離脱不能に保持されている。補助係合穴83に対する係合爪82の嵌合解除は、係合爪82をマイナスドライバ等で押すことで行える。
【0055】
(6).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば適用対象は回転椅子に限定されず、パイプ椅子などの各種の椅子に適用できる。また、背もたれがロッキングしない椅子にも適用できることはいうでもない。実施形態では背板をメインメンバーとトップメンバーとの2つの部材で分離構成したが、背板が一体構造であってもよいことはいうまでもない。
【0056】
実施形態のようにバックサポートにオ後ろ向き突出部を設ける場合、バックサポートの後ろ向き突出部は左右略全長にわたって延びるように形成することも可能である。また、背板がバックサポートの前面のみに重なるように形成して、背板の前面とバックサポートの後ろ向き突出部(オーバーハング部)とを表皮材で一連に覆うことも可能である。更に、バックサポートを使用せずに背板を強度メンバーとして機能させることも可能である(この場合は、背板の上端部にオーバーハング部を形成して、その下面に引手穴を設けたらよい。)。
【0057】
また、引手穴は下方と左右方向との両方向に開口していてもよい。換言すると、背もたれの上部に下向きに突出したオーバーハング部を設け、このオーバーハング部を引手として利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本願発明は椅子に適用して有用性を発揮する。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0059】
2 座
3 背もたれ
3a 背もたれのオーバーハング部
10 背板
11 バックサポート
12 背クッション
13 表皮材
14 背板を構成するメインメンバー
15 背板を構成するトップメンバー
65 バックサポートの後ろ向き突出部
66 バックサポートの後ろ向き突出部を構成する背面板
67 バックサポートの後ろ向き突出部を構成する下面板
68 引手穴
80 トップメンバーのオーバーハング部を構成する後ろ壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれの背面部の上部に、人が下方から手先を挿入できる引手穴を、前後方向と上方には開口せず下方に開口するように設けている、
背もたれ付き椅子。
【請求項2】
前記背もたれの上部には後ろ向きに突出したオーバーハング部が略左右全長にわたって延びるように形成されており、前記オーバーハング部に前記引手穴を設けている、
請求項1に記載した背もたれ付き椅子。
【請求項3】
前記背もたれは背板とこれが取り付くバックサポートとを有しており、前記バックサポートの上端部に後ろ向きに突出したオーバーハング部を形成してこれに前記引手穴を設け、かつ、前記バックサポートのオーバーハング部は前記背板に設けた後ろ壁部で後ろから覆われている、
請求項2に記載した背もたれ付き椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−135488(P2012−135488A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290789(P2010−290789)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】