背面映写可能な産業資材シート、及びその映写システム
【課題】広角的に表示可能な背面映写スクリ−ン機能を有する、可撓性産業資材シートと、それを用いた背面映写システムの提供。
【解決手段】本発明の産業資材シート(3)は、延伸フィラメントを含んでなる編織布(1)の片面以上に、可撓性樹脂層(2)を積層してなる複合基材を含み、可視光透過率を40〜90%として、前記可撓性樹脂層の少なくとも一層に、光拡散性物質からなる粒子を含み、かつ、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たす光学特性とすることによって得られ、さらに、その背面に映像投映装置を配置することによって斜め方向からの観察においても鮮明な映像を認識することが可能な本発明の背面映写システムを得る。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
【解決手段】本発明の産業資材シート(3)は、延伸フィラメントを含んでなる編織布(1)の片面以上に、可撓性樹脂層(2)を積層してなる複合基材を含み、可視光透過率を40〜90%として、前記可撓性樹脂層の少なくとも一層に、光拡散性物質からなる粒子を含み、かつ、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たす光学特性とすることによって得られ、さらに、その背面に映像投映装置を配置することによって斜め方向からの観察においても鮮明な映像を認識することが可能な本発明の背面映写システムを得る。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背面映写による画像映写が可能な産業資材シートと、その映写システムに関するものであり、更に詳しくは、高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、駅舎構内、地下街通路、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などにおける天井部材や壁材、壁看板及びドーム状構造物の構築部材に用いる不燃性産業資材シートに関するものであり、特に照明シェード機能を有し、さらに広角的に表示可能な背面映写スクリ−ン機能を有する、光透過性、かつ建築基準法に適合する不燃性の可撓性産業資材シートと、その背面映写システムとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
商業施設、オフィスビル、学校などにおける照明は、多数の蛍光灯ユニットを天井の縦横に過密配置することによって、室内の明るさと照度の均一性とを保つ方法が主流であるが、しかし、この方法では蛍光灯ユニットの存在が目立ってしまい、施設空間デザインの自在性の障害となっている。そのため蛍光灯ユニットを乳白色のアクリル樹脂製の照明カバーで覆い隠したり、天井全体を白色を基調とする装飾として保護色化するなどの配慮がなされているものの、依然として蛍光灯ユニット自体の存在を目立たなくすることは困難な課題であった。
【0003】
特に高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などでは、照明設備自体を極力露出しない照明デザインが採用されているが、最近の新築施設では、より空間の洗練性と明るさを追求した照明手段として、天井のほぼ全面を照明シェード化することによって、天井全体を発光させる方法によって、蛍光灯ユニットの存在を目立たなくした光天井照明の導入が進んでいる。光天井としては、無機系繊維織物を基材とする長尺膜材を天井全面に施工してなるものが、特に建築物の耐久性と施工性に融通し、しかも照明シェードとして優れた光拡散効果と蛍光灯隠蔽効果とを兼備している。
【0004】
一方、コンビニエンスストア、ファーストフード店、居酒屋、カラオケ店、ガソリンスタンド、金融ATMなどの各種販売業、及びサービス業においては、昼夜問わず内照表示する看板表示システムが多用されており、これらの内照式看板は屋号や広告の効果的表示機能と同時に夜間照明としても機能している。また一方で、駅構内、地下鉄駅構内、地下街、地下連絡通路の壁面には様々な広告看板で埋め尽くされているが、これらの広告看板も照明機能を兼用することで地下空間には欠かせない存在である。また建造物内や地下施設内などにおいては避難誘導などの情報表示も不可欠である。
【0005】
これらの内照式広告看板としては、光拡散性を有するアクリル樹脂板にプリントやマーキングを施し、看板の裏面側に設けた蛍光灯により行燈効果を得るタイプが主流であるが、建築物に附帯する大型看板用途では高い防炎性能と耐衝撃強度が必要であるため、例えば、ポリエステル繊維織物を基材として、その両面を軟質塩化ビニル樹脂フィルムで積層した繊維強化フレキシブル膜材が内照式看板に使用されており、特に屋内用途では無機系繊維織物を基材とする難燃性のフレキシブル膜材が使用されている。
【0006】
また一方で、アミューズメント施設、イベント会場、遊戯施設においては、来場者を円滑に誘導するための順路隔壁を内照式の光壁や行燈壁とする演出によって色と光のエンターティメント性を高める手法が用いられている。また、小型〜中型のドーム状密閉空間に構築されているアミューズメント施設、例えば、熱帯植物園、温水プール、プラネタリウム、水族館、各種テーマ館などの場合、外部からの照明透過光の陰影や色彩は極めて演出性が高いものとなる。
【0007】
光天井照明はシンプルな白色系平坦外観を基調とすることにより落ち着きのある瀟洒な空間を提供することができるので、特に公共施設の待合ロビーやホテルのエントランスに適し、また大ホールなどでのイベントやシンポジウムにおいては観衆や聴衆の興味、集中力を持続させる効果にも寄与する。それ故、光天井に華美なプリントや装飾などを施す事例は少ないが、しかし、冠婚葬祭式場やパーティ・イベント会場においては、光天井のような白色系平坦外観は映写スクリーンとして利用できる可能性を有している。
【0008】
また地下街や地下街連絡通路における雑踏の中では、進行方向の天井に行先表示の目印を求める意識が高く、それにより天井部に出口案内やトイレ位置などの表示プレートが随所に設置されている。それ故、地下街や地下街連絡通路の光天井自体に意匠や広告表示などを直接附帯させることは効果的であるが、しかしながら広告表示の多様性に伴う更新サイクル頻度、及び天井施工の手間との兼ね合いとの理由で、駅舎構内や地下街、地下街連絡通路における広告表示の実情は壁面看板が一般的である。しかし、これらの内照式看板の表示は文字・図柄・写真の組み合わせによる静止図柄の表示が主体で、これら多数の内照式看板が等間隔で連続する様は、俯瞰的に照明機能が抜き出た存在であった。
【0009】
最近、デジタルデータを壁面やスクリーンにプロジェクター映写することで画像や動画を表示する方法が普及している。広告等の商業的利用においてのプロジェクター映写は、人影等が邪魔にならないようにスクリーン背面にプロジェクターを配置した背面投映が主流であり、背面映写用スクリーンとして、透光性と光拡散性を兼備する合成樹脂シートを用いることによってプロジェクター光源を隠しながら鮮明な映像表示を可能とするものである。このような透過型スクリーンとプロジェクターとを、光天井や内照式広告看板に応用することによって、画像を自在に切り替え表示したり、動画を映写したりすることが可能となる。また、例えば特開2004−77634号公報(特許文献1)には、地下街または大型複合商業ビルの天井面にデイスプレィ装置を設けて、これに実際の屋外風景を広角映像で映写することで、地下街やビル内における現在位置や方角の把握を容易とするナビゲーションシステム装置の提案がなされている。
【0010】
このように、天井や内照式看板に動画を表示する提案がいくつかなされているものの、実際に地下街や地下街連絡通路の天井部に画像や動画を投映したり、あるいは地下街連絡通路の壁面看板に画像や動画を投映する利用は困難であった。その理由として歩行者(観察者)の視野と画像鮮明認知性との関係が挙げられる。画像や動画の投映において、歩行者の視点がプロジェクター方向に対向して上下左右60°の視野が最も画像や動画の投映が鮮明に認知可能であるが、観察者が地下街や地下街連絡通路を歩行通過する時の目線は前方に向けられている。このため画像や動画の投映地点到達時に立ち止まって天井を見上げたり、左右に振り向くことは稀である。つまり地下街や地下街連絡通路の天井部や側壁部に画像や動画を効果的に演出するには、極端に斜め方向からも認知可能な画像や動画を投映する必要があるが、これらの投映システムでは斜め方向からの認識性に劣るのが実情であり、特に曲面部を有する天井部や側壁においての投映では、一層投映画像の認知性が劣ることが問題とされている。
【0011】
このような観点において、光拡散性と防眩性を兼備した映写スクリーンが開発され、例えば特開2005−24942号公報(特許文献2)にはプラスチックフィルムを支持体として、これに光拡散層を設けてなる、ヘーズ80%以上、全光線透過率60%以上、鏡面光沢度10%以下である透過型スクリーンが開示されている。このような映写スクリーンを用いることによって、より様々な位置からの画像や動画の認識を可能とするが、この映写スクリーンでは建築基準法に適合する不燃性を有さないため、天井部材や壁材などの建築部材として使用することができない。つまり画像や動画を投映可能な光天井部材、光壁材、内照看板材として、高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、駅舎構内、地下街通路、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などの建築部材に用いるには火災対策として建築基準法に適合する不燃性が必要である。
【0012】
従って、建築基準法に適合する不燃性を有し、かつ光透過性と投映性とを有する産業資材シートであって、さらに投映された映像が斜め方向からも明瞭に認知でき、曲面部にも投映可能な建築材料があれば、それらを光天井部材、光壁材、内照看板材として用いて、高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、駅舎構内、地下街通路、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などに広く利用でき、照明機能と兼用してデジタル画像や動画を投映することで情報伝達にエンターティメント性を附帯させたり、アミューズメント分野においては演出効果が飛躍的に向上するなど様々な活用が期待できる。またさらにアナウンスに替わる視覚的情報提供手段として、イベント開催案内、ニュース報道、更には災害時の緊急避難誘導としての利用なども期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−77634
【特許文献2】特開2005−24942
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、良好な光透過性と鮮明なプロジェクター投映性とを有する産業資材シートであって、しかも投映された映像が斜め方向からも明瞭に認知可能であり、特に曲面部を有する光天井部材、光壁材、内照看板材、ドーム状構造材などの建築材料に適して用いることができ、さらに建築基準法に適合する不燃性を有する産業資材シートと、この産業資材シートの背面にプロジェクターなどの投映装置を配置してなる光天井システム、光壁システム、内照看板システム、ドーム状構造物システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討の結果、
1、延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を積層してなる
複合基材における、前記延伸フィラメントが延伸方向a、及び前記延伸方向aに対す
る延伸垂直方向b、において、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメント
の延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|を下記式1を満たし、前記可
撓性樹脂の屈折率n1と延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|
を下記式2を満たす光学特性とすることによって、面方向から見たときに編織布の陰
影の影響を受けない、高透光性で高強力の産業資材シートが得られること。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
2、前記可撓性樹脂層の少なくとも1層に、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、
パール顔料、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズ、及び樹脂粒子から選ばれた少
なくとも一種の光拡散性物質からなる粒子を含むことで、鮮明な映写投映性を有する
光拡散透過性の産業資材シートが得られること。
3、前記光拡散性シートの可視光透過率(JISZ8722)を40〜90%とするこ
とで、前記光拡散性シートの背面投映性輝度に優れ、しかも映像投映装置の光源を隠
蔽する効果に優れていること
これらに加えて、更に、
4、前記可撓性樹脂の屈折率n1と、前記延伸フィラメントの延伸方向aの屈折率na
の関係を、上記式1を満たす光学特性とすることで、映像中心部分の輝度と映像周辺
部分の輝度差を極小として、特に斜め方向からの観察における映写画像の認識性が飛
躍的に向上して曲面部にも投映可能となること。
を見出して、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち本発明の背面映写可能な産業資材シートは、延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を積層してなる複合基材を含む、可視光透過率(JISZ8722)40〜90%の光拡散透過性シートであって、前記可撓性樹脂層の少なくとも一層が、光拡散性物質からなる粒子を含み、かつ、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たす光学特性を有することが好ましい。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
本発明の背面映写可能な産業資材シートは、前記光拡散性物質からなる粒子が、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズ、及び樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。本発明の背面映写可能な産業資材シートは、前記延伸フィラメントがガラス繊維、または、シリカ繊維からなり、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない不燃特性を有することが好ましい。
本発明の産業資材構造物の背面映写システムは、延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を積層してなる複合基材を含み、可視光透過率(JISZ8722)40〜90%を有する光拡散透過性シートの背面に、映像投映装置を配置して有し、前記可撓性樹脂層の少なくとも一層が、光拡散性物質からなる粒子を含み、かつ、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たす光学特性を有することが好ましい。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
本発明の背面投映システムは、前記光拡散性物質からなる粒子が、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズ、及び樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。本発明の背面投映システムは、前記産業資材構造物が、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない不燃特性を有する天井であること、又は壁であること、又はドームであること、又は看板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、良好な光透過性と鮮明なプロジェクター投映性とを有する産業資材シートの提供を可能とし、しかも投映された映像が斜め方向からも明瞭に認知可能であるため、特に曲面部を有する光天井部材、光壁材、内照看板材、ドーム状構造材などの建築材料に適して用いることができる。また本発明の産業資材シートは、特に建築基準法に適合する不燃性を有するので、この産業資材シートの背面にプロジェクターなどの投映装置を配置してなる光天井システム、光壁システム、内照看板システム、ドーム状構造物システムを、高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、駅舎構内、地下街通路、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などにおける天井部材や壁材、壁看板及びドーム状構造材などに広く利用でき、照明機能と兼用してデジタル画像や動画を投映することで情報伝達にエンターティメント性を附帯させたり、アミューズメント分野においては演出効果が飛躍的に向上させるなど様々な用途での活用が可能となる。またさらにアナウンスに替わる視覚的情報提供手段として、イベント開催案内、ニュース報道、更には災害時の緊急避難誘導としての利用なども可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】延伸フィラメントの延伸方向と延伸垂直方向示す図 (a)延伸方向a (b)延伸垂直方向b
【図2】本発明の光拡散透過性シートの一例を示す図
【図3】広角のレンズから投映した状態を示す図
【図4】斜め方向から投映した状態を示す図
【図5】光の入射角による光拡散性の違いを示す図
【図6】鏡に反射させて投映した状態を示す図
【図7】天井に用いた背面映写システムの一例を示す図
【図8】天井に用いた背面映写システムの利用の一例を示す図
【図9】壁に用いた背面映写システムの一例を示す図
【図10】内側に向けて投映するドームに用いた背面映写システムの一例を示す図
【図11】外側に向けて投映するドームに用いた背面映写システムの一例を示す図
【図12】看板に用いた背面映写システムの一例を示す図
【図13】実施例及び比較例において、光天井に施工した産業資材シートの背面から映写 した映像を垂直方向、及び面に対して15度の角度から観察した状態を示す図 (a)平面施工 (b)曲面施工
【図14】実施例及び比較例において、映写スクリーン機能を評価する際の映像投映装置 と観察者の位置関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の産業資材シートにおいて、編織布に使用する延伸フィラメントとしては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維などの合成繊維による長繊維、ジアセテート繊維、トリアセテート繊維などの半合成繊維による長繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維などの再生繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維などの無機繊維による長繊維などであり、これらは単独使用または混用、混紡であってもよい。また、延伸フィラメントは、マルチフィラメント糸条、もしくはモノフィラメント糸条が好ましく、本発明においてはフィラメント数3〜300本、繊度138〜2223dtex(デシテックス)、特に277〜1112dtexのマルチフィラメント糸条が好ましい。前記延伸フィラメントは、図1(a)の様に延伸方向aを有し、図1(b)の様に延伸方向に対する延伸垂直方向bを有する。ここで、延伸フィラメントとして、合成繊維、半合成繊維、再生繊維の場合には延伸により高分子の結晶構造を任意配向させることで、延伸方向aの屈折率naと延伸垂直方向bの屈折率nbを適宜調整することができる。またガラス繊維の様に非晶質の無機材料を用いる場合には、naとnbは等しくなる。
【0020】
本発明に使用する編織布には織布、または編布が用いられ、織布として、平織、綾織、繻子織、模紗織など公知の織布が挙げられるが、中でも特に平織織布が、得られる産業資材シートの経緯物性バランスに優れて好ましい。編布としてはラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましく用いられる。これら編織物は、糸間間隙を均等において平行に多数配置した経糸、及び糸間間隙を均等において平行に多数配置した緯糸を含んで構成された粗目状の編織物(空隙率5〜50%)、及び非粗目状編織物(空隙率5%未満)を包含する。中でも、補強効果、光拡散効果などの点から、経緯糸条の交絡間に形成される空隙率が0〜5%の高密度編織物が特に好ましく用いられる。前記編織布には、付着する油剤や糊剤を除くために、精練や熱処理を施しても良く、可撓性樹脂加工液に濡れやすくし可撓性脂層との接着性を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、シランカップリング剤処理などを行っても良い。
【0021】
本発明の産業資材シートにおいて可撓性樹脂層としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴムなど熱可塑性樹脂、さらにはビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などを使用することもできる。可撓性樹脂層を編織布に積層する方法としては、例えば、有機溶剤に可溶化した熱可塑性樹脂、水中で乳化重合された熱可塑性樹脂エマルジョン(ラテックス)、あるいは熱可塑性樹脂を水中に強制分散させ安定化したディスパージョン樹脂などの水分散樹脂、軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペーストゾル、未硬化の熱硬化性樹脂組成物液などを用いるディッピング加工(編織布への両面加工)、及びコーティング加工(繊維布帛への片面加工、または両面加工)等が例示される。この可撓性樹脂層上には、更に別の可撓性樹脂層を積層してもよく、特にカレンダー成形法、またはTダイス押出法により成形したフィルム又はシートを、接着剤を介して、あるいは熱ラミネートにより積層する方法が例示される。可撓性樹脂層の目付量は30〜600g/m2であり、可撓性樹脂層は編織布に含浸形成された部分を包含するものである。ここで、少なくとも編織布に直接積層した可撓性樹脂の屈折率n1と、延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が上記式1を満たし、かつ、可撓性樹脂の屈折率n1と、延伸フィラメントの延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が上記式2を満たす様に、可撓性樹脂と延伸フィラメントを適宜選択することが好ましい。
【0022】
また可撓性樹脂層の少なくとも一層には、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズ、及び樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種の光拡散性物質からなる粒子が含まれる。白色顔料は、二酸化チタンや酸化亜鉛などの白色顔料の他、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムなどの白色の無機粒子を包含する。金属フレーク及び金属パウダーは、アルミフレーク、アルミパウダーなどの他、樹脂製あるいはガラス製のフレークやパウダー上にアルミ、銀、ニッケル、錫、インジウムなどの金属をメッキ法により被覆したフレークやパウダーを包含する。パール顔料は、天然雲母に高屈折率の金属酸化物をコートした顔料が例示される。ガラスビーズは、中空ガラスビーズ、中実ガラスビーズ、ガラス粒子は、ガラス粉末、ガラスビーズ破砕体が例示される。樹脂ビーズは、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシ系樹脂等からなる樹脂ビーズが例示され、特に可撓性樹脂層と非相溶の樹脂を用いる。またこれらの樹脂ビーズはコア−シェル複層構造を有していてもよく、また架橋構造を有していてもよい。また樹脂粒子とはこれらの樹脂ビーズを破砕して得られる不定形粒子である。
【0023】
上記これらの光拡散性物質の平均粒子径は、0.1〜50μmが好ましく、白色顔料、金属パウダー、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズ、及び樹脂粒子のアスペクト比は1〜6が好ましく、特に金属フレーク、及びパール顔料においてのアスペクト比は6〜60が好ましい。また可撓性樹脂層に対する添加量は可撓性樹脂100質量部に対して、光拡散性物質からなる粒子を0.1〜100質量部、特に0.1〜50質量部が好ましい。添加量が0.1質量部未満では光拡散性が不充分となり、背面映写した映像の鮮明性が不充分となったり、背面に設置した映像投映装置の光源の存在が目立ち過ぎる問題がある。また添加量が100質量部を超えると可視光透過率が低下して、光天井、光壁、内照看板、ドーム状構造物に用いた場合、十分な照明機能が発揮できなくなると同時に、背面から映像を映写しても充分な輝度が得られないことがある。
【0024】
本発明の産業資材シートは40〜90%の可視光透過率(JISZ8722)を有する光拡散透過性シートである。可視光透過率が40%未満であると光天井、光壁、内照看板、ドーム状構造物に用いた場合、十分な照明機能が発揮できなくなると同時に、背面から映写した映像が暗く充分な輝度が得られないことがあり、また90%を超えると前面及び背面から映写した映像のコントラストや色相の再現性が不充分となる問題を生じることがある。
【0025】
本発明の産業資材シートに関して、図2の光拡散透過性シートを一例として説明する。図2の光拡散透過性シートは、編織布(1)として平織り織布を用い、光拡散性物質からなる粒子を含まない樹脂加工液をディップ加工することにより、光拡散性物質からなる粒子を含まない可撓性樹脂層(2−1)が編織布の両面に形成され、更にその片面上に光拡散物資を含む樹脂加工液をコーティング加工して、光拡散性物質からなる粒子を含む可撓性樹脂層(2−2)が形成されている。このとき、可撓性樹脂層(2−1)を構成する樹脂と延伸フィラメントの選択において、|n1−nb|が0.07以下となるような組み合わせを選択すれば、延伸垂直方向bの屈折率nb、すなわち織布の表面や裏面に垂直な方向の延伸フィラメントの屈折率nbと可撓性樹脂の屈折率n1の差が小さいため、延伸フィラメントと可撓性樹脂の界面での光の屈折がほとんどないか、あるいはわずかしか起こらず、産業資材シート内部に含まれる織布はほとんど視認することができない。この光拡散透過性シートのいずれかの面を前面として、前面側から映写すれば、可撓性樹脂層に含まれる光拡散性物質からなる粒子により光が拡散され、前面側から観て鮮明な映像を投映することができ、また、背面から映写して前面から観た場合でも、織布がほとんど視認されないため延伸フィラメントによる陰影を生じず、前面から映写した場合と同様の鮮明な映像を投映することができる。
【0026】
実際の使用において背面から映写される場合には、映像投映装置とスクリーンの間の距離を充分にとることができず、図3の様に広角の映写レンズから投映したり、図4の様に斜め方向から投映したりすることがある。このとき、スクリーンとして、例えば、単に光拡散性物質からなる粒子を練り混んだ等方的な拡散性を示す拡散板を用いると、広角の映写レンズを有する映像投映装置から映写した場合には中央部が明るく、周辺部が暗くなり、斜めから映写した場合には映像投映装置から近い部分が明るく、遠い部分が暗くなるなど、投映画像に輝度差を生じることがあるが、本発明の産業資材シートにおいてはその様な輝度差はほとんど確認されず、ほぼ均一な輝度の映像を得ることができる。このような効果が得られる原因は定かではないが、以下の様に推察される。
1、例えば図5において、延伸フィラメントの延伸垂直方向の屈折率nbが可撓性樹脂
の屈折率n1の屈折率とほぼ等しい光拡散透過性シートを想定した場合、光拡散透過
性シートの垂直方向から入射した光(Lv)は、可撓性樹脂と延伸フィラメントα(
1−a)、可撓性樹脂と延伸フィラメントβ(1−b)の界面どちらでも、延伸フィ
ラメントの延伸垂直方向から入射するため屈折せず、拡散されない。
2、一方、光拡散透過性シートの斜め方向から入射した光(Ls)は、延伸フィラ
メントα(1−a)に対して延伸方向aから入射し、延伸フィラメントの延伸方向a
の屈折率naと、編織布に積層した可撓性樹脂の屈折率n1との差の絶対値|n1−
na|は0.02を超えて0.07以下であるため、可撓性樹脂と延伸フィラメント
αとの界面で僅かに屈折して適度に拡散され、光が斜めに入射した部分で輝度が上が
る。
3、可撓性樹脂と延伸フィラメントの界面においては、垂直に近い角度で光が入射した
部分では拡散が少なく、より斜めの角度から入射した光が拡散される。そのため、光
拡散物質を練りこんだだけのスクリーンに比べて、光の入射角度による輝度のバラツ
キが少なくなるので、斜め方向からの観察によっても投映映像の認識可能であり、さ
らに曲面部にも投映可能となる。なお、図5では光拡散性物質からなる粒子の表現は
省略している。
【0027】
|n1−na|、|n1−nb|のいずれか一方あるいは両方が0.07を超えると、可撓性樹脂と延伸フィラメントの界面での光拡散が過剰となり、産業資材シートの光線透過率が低下し、背面から映写する際に延伸フィラメントの陰影が目立つようになり、シート背面からの投映に対してシート前面から鮮明な映像を観賞することができなくなることがある。|n1−na|が0.02未満であると、可撓性樹脂と延伸フィラメント界面での適度な光拡散が得られず、広角の映像投映装置から投映した場合には中央部が明るく、周辺部が暗くなり、斜めから投映した場合には映像投映装置から近い部分が明るく、遠い部分が暗くなるなど、輝度差を生じ、斜め方向からの観察においては認識性が劣ることがある。
【0028】
本発明の産業資材シートにおいて、表面の傷つき、汚れの付着、各種添加剤の表面への移行、などを防止する目的で、前記光拡散透過性シートが、その一方の面もしくは両面上に保護樹脂層を有していてもよい。保護樹脂層は防汚性を有する樹脂層であることが好ましく、これらは例えばアクリル系樹脂、フッ素系共重合樹脂、アクリル−シリコン共重合樹脂、アクリルーフッ素共重合樹脂、アクリル−ウレタン共重合樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合樹脂とのブレンド、及びこれらにシリカ微粒子、コロイダルシリカ、オルガノシリケートを含んでなる樹脂層である。この保護樹脂層の形成例としては、溶剤あるいは水に可溶な樹脂の溶液、または樹脂を水などの分散媒に分散したエマルジョン液をスプレーコート、グラビアコート、バーコートなどのコーティング法で塗布・乾燥する事による形成、最外表面をフッ素含有樹脂またはフッ素含有共重合体樹脂とするフィルムを接着剤もしくは熱溶融加工により積層することによる形成である。また、これらの保護樹脂層上には更に、光触媒性無機材料(例えば光触媒性酸化チタン・光触媒性酸化タングステン)を含む光触媒層を設けることが防汚性付与の観点で好ましい。特に蛍光灯の配置を伴う光天井や光壁、光看板などの屋内用途においては可視光活性型の光触媒性無機材料を含む光触媒層を形成することがセルフクリーニングによる防汚性付与の観点で更に好ましい。
【0029】
本発明の産業資材シートにおいて、可撓性樹脂層には必要に応じて公知の添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、可撓性付与剤、充填剤、接着剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、レベリング剤、消泡剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤、蛍光増白剤、蛍光顔料、蓄光顔料などが挙げられる。
【0030】
本発明の産業資材シートは消防法、または建築基準法に規定される難燃性、または不燃性を有する光拡散透過性シートであることが好ましく、このため産業資材シート、及び背面映写システムを搭載した産業資材構造物は、輻射電気ヒーターを用いて50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験(ASTM−E1354:コーンカロリーメーター試験法)において、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えないことを満足する不燃性を有する光拡散透過性シートであることが好ましい。このような不燃性の産業資材シートは、ガラス繊維織布(目付質量200〜300g/m2 、空隙率1%以下の非目抜け平織)を基材として、この1面以上に可撓性樹脂層を設けることで得られる。
【0031】
本発明の背面映写システムは、延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を積層してなる複合基材を含み、40〜90%の可視光透過率(JISZ8722)を有する光拡散透過性シートの背面に、映像投映装置を搭載する産業資材構造物である。前記可撓性樹脂層の少なくとも一層が、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズ、及び樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種の光拡散性物質からなる粒子を含み、かつ、延伸フィラメントが、延伸方向a、及び延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、可撓性樹脂の屈折率n1と延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たすことで背面から映写した画像を前面から観賞する際に光拡散透過性シートに含まれる編織布がほとんど目立たず、色の再現性に優れ、尚且つ斜め方向からの観察においても鮮明な映像を認識することができるので曲面部を有する天井や壁にも投映が可能となる。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
また、光拡散透過性シートが延伸フィラメントを含む編織布で補強された光拡散透過性シートであるため、産業資材構造物として充分な強度と耐久性を有している。本発明の背面映写システムは、産業資材シート(3)を映写スクリーンとし、その背面側に映像投映装置(4)を配し、前記映像投映装置から投映された映像を、産業資材シートを透過させて観賞する構成を有する。背面に充分なスペースがない場合には、図3の様に広角レンズを有する映像投映装置を用いたり、図4の様に上下左右いずれかの方向に配した映像投映装置から斜めに投映したり、図6の様に上下左右いずれかの方向に配した映像投映装置から鏡(5)に反射させて投映する方法を用いることができる。
【0032】
本発明の背面映写システムは、光拡散透過性シートを、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない産業資材シートとすることで、建築基準法に定められる不燃性を求められる用途に本発明の背面映写システムを応用することができる。
【0033】
本発明において、映像投映装置は、スライド映写機、フィルム映写機、プラネタリウム投映機、レーザー投映機、オーバーヘッドプロジェクターおよびビデオプロジェクターなど従来公知の映像投映装置から適宜選択して単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でビデオプロジェクターは、テレビ、ビデオ、DVD、ブルーレイ、及びコンピュータの画像など、各種映像ソースの投映に対応することができるため好ましく用いられる。特にコンピュータの画像をビデオプロジェクターを介して投映する場合には、コンピュータのハードディスクに保存された静止画や動画、コンピュータにLAN経由で配信した情報、静止画、動画、及びライブカメラの映像、コンピュータに内蔵された受信機で受信したテレビの映像、などを随時選択し、必要に応じて複合表示することができる。映像投映装置は固定である必要はなく、投映角度を制御可能に設置したり、レールを走行して直線状に移動可能にしたり、XYステージにより平面を移動可能に設置したり、更にはクレーンなどにより3次元を移動可能に設置することで、投映位置を自在に変更することが可能となる。本発明の背面映写システムは、更に音響装置を併用することで、映像に合わせた音声情報、効果音、バックグラウンドミュージック等を組み合わせた多彩な表現が可能となる。映像表示のタイミングや組み合わせ、映像投映装置の投映角度や位置を変えることによる投映位置の制御、音声の制御に関しては、コンピュータのプログラムによって設定したり、オペレーターが直接制御することが可能であり、自由度が高く表現力に富んだ背面映写システムを構築することができ
【0034】
図7は本発明の産業資材シートを天井に用いた背面映写システムの一例を示すものである。産業資材シートとしては、天井材に求められる不燃性を満たし、且つ充分な強度や耐久性を有した光拡散透過性シートを用いる。そのため、高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、駅舎構内、地下街通路、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などにおける大面積の天井に適して用いることが可能で、更にはエレベーターかご内の天井や鉄道車両の天井などにも用いることができる。光拡散透過性シートは天井の全面に用いても良いし、所望の一部分だけに用いても良い。大面積に同時に投映する場合には、複数の映像投映装置を配置すればよい。光拡散透過性シート(3)の背面には照明装置(6)を配置することで、映写システムを利用しないときには光天井システムとして用いる事もでき、照明を点灯した状態で同時に天井の一部に映像を投映する利用も可能である。また、映像投映装置から単色光を映写して照明装置の代わりとして用いれば、映像投映装置のみで映写システムと光天井システムを兼用することもできる。天井の形状としては、図7の様な平面状に限らず、アーチ型やドーム型など曲面状であっても良く、映像投映角度や観察者の観る角度に係わりなく鮮明な映像を得る事ができる。図8は図7の背面映写システムを地下街通路の天井に用いた例を示すものである。天井一面に光拡散透過性シート(3)が用いられており、普段は照明装置(6)を点灯することで光天井として機能しているが、任意のタイミングで任意の位置に映像を投映することで、例えば地下街の通行人に店舗(9)への来店を促す情報をタイムリーに掲示するなどの利用が可能となる。
【0035】
図9は本発明の産業資材シートを壁に用いた背面映写システムの一例を示すものである。産業資材シートとして、壁材に求められる不燃基準を満たし、且つ充分な強度や耐久性を有した光拡散透過性シートを用いる。天井に用いる場合同様、壁面の全面に用いてもよいし、所望の一部分だけに用いても良い。光拡散透過性シート(3)の背面に照明装置(6)を配置すれば、照明機能を併せ持つ壁面とする事ができ、照明を点灯した状態で同時に壁面の一部に映像を投映する利用も可能である。壁の形状も、天井の場合同様、図9の様な平面状に限らず、曲面状であっても良く、映像投映角度や観察者の観る角度に係わりなく鮮明な映像を得る事ができる。
【0036】
図10は本発明の産業資材シートをドームに用いた背面映写システムの一例を示すものである。産業資材シートとして、ドーム材料として求められる難燃基準及び不燃基準を満たし、且つ充分な強度や耐久性を有した光拡散透過性シートを用いる。光拡散透過性シート(3)は内膜として映写用のドームを構成し、その外側に外膜として遮光性の産業資材シート(7)を用いたドームを有する2層構造となっており、映像投映装置(4)は内幕と外膜の間に配置されている。遮光性の外膜を配することで、昼間でも投映された映像をドーム内部で観賞することができる。大面積に同時に投映する場合には、複数の映像投映装置を配置すれば良い。また、図11の様に1層のドーム構造物として、映像投映装置(4)をドーム内部に配置することで、ドームの外側にむけて映像を表示する産業資材構造物とすることもできる。これら映写用のドームにおいては全体を本発明の産業資材シートによって構成してもよく、一部のみに本発明の産業資材シートを用いても良い。ドーム状の産業資材構造物においては光拡散透過性シート(3)が曲面状に設置されているため、一つの映像投映装置(4)から投映された映像の部分によって光拡散透過性シート(3)に投映される角度が異なり、また、複数の観察者が異なる位置から観察する場合に、それぞれが異なる角度から同じ映像を観察することになるが、本発明の産業資材構造物は投映する角度や観察する角度に係わり無く、鮮明な映像を得ることができる。
【0037】
図12は本発明の産業資材シートを看板に用いた背面映写システムの一例を示すものである。産業資材シートとして、防火地域内の看板材料として求められる不燃基準を満たしており、かつ編織布を含むため充分な強度や耐久性を有した光拡散透過性シートを用いる。下部に配置した映像投映装置から鏡(5)に反射させて、表示部に展張された光拡散透過性シート(3)に投映する。通常の内照式看板とは異なり、任意の静止画や動画を逐次投映することが可能となり、看板、ディスプレイ、案内板など、多目的な表示システムとして活用範囲を大きく拡げることができる。看板の形状も、天井の場合同様、平面状に限らず、曲面を有する立体的な形状であっても良く、映像投映角度や観察者の観る角度に係わりなく鮮明な映像を得る事ができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
以下の実施例および比較例において、編織布として下記の基布を用いた。基布の寸法は全てたて(経糸方向)150cm×よこ(緯糸方向)150cmとした。
(基布1)
フィラメント直径9μm/750dtexの
ガラス繊維(naおよびnb:1.556)を用いたガラス繊維平織り布
織密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
精練(ヒートクリーニング)
シランカップリング処理 メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウ
コーニング社製Z6030)
(基布2)
ナイロン333dtexマルチフィラメント(na:1.578、nb:1.522)
を用いた平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
(基布3)
ポリプロピレン278dtexマルチフィラメント
(na:1.530、nb:1.496)を用いた平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
(基布4)
フィラメント直径9μm/750dtexで基布1とは屈折率の異なるガラス繊維
(naおよびnb:1.524)を用いたガラス繊維平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
精練(ヒートクリーニング)
シランカップリング処理 メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウ
コーニング社製Z6030)
【0040】
実施例及び比較例で作成した産業資材シートについて光天井モデルを作製して以下の評価を行った。光天井に用いた産業資材シートのサイズはたて1.5m×よこ1.5m、であり、産業資材シートは平面施工、及び緩やかな曲面施工の2タイプを作製し、背面に30ワット40型の蛍光灯4本を均等に配置した。また映像投映装置として液晶式ビデオプロジェクター(セイコーエプソン(株)社製EMP−400W)を使用した。
<背面映写の輝度均一性及び斜め方向からの視認性>
たて1.5m×よこ1.5mの産業資材シート(3)を、図13(a)の様に天井に平
面施工しその上方1mの位置に映像投映装置(4)としてビデオプロジェクターを配し
産業資材シートの中心に向けて垂直に映写した。映写された映像について、下方から、
シートの面に対して垂直の角度、及び面に対して15度の角度で5m離れた位置から観
察し、以下の基準で評価した。次いで、図13(b)の様な曲面施工についても、同様
に評価した。なお、図13(a)及び(b)において、蛍光灯の表現は省略した。
1:映像中心部と映像周辺部の輝度差がほとんど無く、垂直方向からの観察に対して
15度の角度で5m離れた位置からの観察においても輝度の低下が少なく、鮮明
な映像が得られる
2:明らかに映像中心部と映像周辺部の輝度差があり、15度の角度で5m離れた位
置からの観察においては垂直方向からの観察に比べて輝度が低下した
3:映像中心部と映像周辺部の輝度差は少なく、垂直方向からと15度の角度で5m
離れた位置からの観察における輝度にも大きな差はないが、全体的に輝度やコン
トラストが低く映像が不鮮明である
<背面映写に対する延伸フィラメントの陰影>
産業資材シートの上方に配置したビデオプロジェクターからの映写を、産業資材シート
下方から観察したときの、延伸フィラメントによる陰影の有無を以下の様に評価した。
1:延伸フィラメントの陰影がほとんど視認できない
2:延伸フィラメントの陰影により映像の鮮明さが阻害される
<映写スクリーン機能>
図14のように産業資材シート(3)と映像投映装置(4)としてビデオプロジェクタ
ーを配置し、ビデオプロジェクター側(前面投映)およびビデオプロジェクターとは反
対側からそれぞれ観察し、前面および背面からの投映に対する映写スクリーンとしての
機能を、映像の鮮明さ、発色性、輝度などの観点から以下の様に評価した。
1:前面および背面からの投映に対する映写スクリーンとして優れている
2:前面からの投映に対する映写スクリーンとして使用可能だが、
背面からの映写には不向きである
3:前面投映・背面投映ともに映写スクリーンとしては用いる事ができない
<可視光透過率>
産業資材シートの可視光透過率を、分光側色計CM−3600d(コニカミノルタ
(株)製)を使用し、JISZ8722に従って測定した。
<引張強度>
産業資材シートから基布の糸目に沿って経糸方向30cm、緯糸方向3cmの短冊(経
方向試料)、経糸方向3cm、幅方向30cmの短冊(緯方向試料)をそれぞれ採取し
JISL1096ストリップ法により引張試験を行い、破断強さ(N/3cm)を求め
た。
<燃焼試験>(ASTM−E1354:コーンカロリーメーター試験法)
輻射電気ヒーターによる50kW/m2の輻射熱を産業資材構造物に20分間照射し、
この発熱性試験において、20分間の総発熱量と発熱速度を測定し、試験後の膜材外観
を観察した。
(a)総発熱量:8MJ/m2以下のものを適合とした。
(b)発熱速度:10秒以上継続して200kW/m2を超えないものを適合とした。
(c)外観観察:直径0.5mmを超えるピンホール陥没痕の発生がないものを適合と
した。
【0041】
[実施例1]
下記配合1の熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し、未硬化の樹脂組成物液1を得た。また、下記配合2の光拡散性物質からなる粒子を含有する熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し、未硬化の樹脂組成物液2を得た。得られた樹脂組成物液1をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布1を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布1に樹脂組成物液1を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布1を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液1を掻き落とし、窒素置換したオーブン内で100℃×30分加熱硬化することで、ディップ加工により、基布1の両面に下記配合1からなる可撓性樹脂を積層したシートを得た。次に、厚さ50μm、たて150cm×よこ150cmのポリエステルフィルムを用意し、その1面上に樹脂組成物液2を0.2mmのクリアランスでコートし、間に空気が入らないよう注意して、先に作成したシートに重ねあわせ、窒素置換したオーブン内で80℃×30分加熱し、さらに100℃×10分加熱して樹脂を固化してからポリエステルフィルムをはがして、光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を形成し、産業資材シートを得た。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.592、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.036(n1>na=nb)であった。
<配合1>熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物
ビニルエステル樹脂 100質量部
(日本ユピカ(株)製 商品名:ネオポール8319)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
<配合2>光拡散性物質からなる粒子を含有する熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物
ビニルエステル樹脂 100質量部
(日本ユピカ(株)製 商品名:ネオポール8319)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(光拡散性物質からなる粒子) 20質量部
(積水化成品工業(株)製:MBX−5:平均粒子径5μm:アスペクト比1.0)
得られた産業資材シートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例1の産業資材シートは、表裏に構成上の差があるため、配合2の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0042】
[実施例2]
下記配合3の熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し、未硬化の樹脂組成物液3を得た。また、下記配合4の光拡散性物質からなる粒子を含有する熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し、未硬化の樹脂組成物液4を得た。得られた樹脂組成物液3をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布2を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布2に樹脂組成物液3を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布2を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、窒素置換したオーブン内で100℃×30分加熱硬化することで、ディップ加工により基布2の両面に下記配合3からなる可撓性樹脂を積層したシートを得た。次に、厚さ50μm、たて150cm×よこ150cmのポリエステルフィルムを用意し、その1面上に樹脂組成物液4を0.2mmのクリアランスでコートし、間に空気が入らないよう注意して、先に作成したシートに重ねあわせ、窒素置換したオーブン内で80℃×30分加熱し、さらに100℃×10分加熱して樹脂を固化してからポリエステルフィルムをはがして、光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を形成し、本発明の産業資材シートを得た。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.554であり、基布2のナイロン繊維の延伸方向の屈折率naとの差の絶対値が0.024(n1<na)、延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値は0.032(n1>nb)であった。
<配合3>熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物
ビニルエステル樹脂 100質量部
(昭和高分子(株)製SSP50−C06)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
<配合4>光拡散性物質からなる粒子を含有する熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物
ビニルエステル樹脂 100質量部
(昭和高分子(株)製SSP50−C06)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
酸化チタン粒子(光拡散性物質からなる粒子) 0.2質量部
(平均粒子径0.4μm:アスペクト比1.0〜4.0の不定形粒子)
得られた産業資材シートを光天井に施工して、各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例2の産業資材シートは表裏に構成上の差があるため、配合4の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0043】
[実施例3]
基布3を用いた以外は実施例2と同様に産業資材シートを作成した。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.554であり、基布を構成するポリプロピレン繊維の延伸方向の屈折率naとの差の絶対値が0.024(n1>n21)、延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値は0.058(n1>n22)であった。得られた産業資材シートを光天井に施工して、各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例3の産業資材シートは表裏に構成上の差があるため、配合4の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0044】
[実施例4]
下記配合5の軟質塩ビ樹脂組成物を20分間混合撹拌してから30分静置して脱泡し樹脂組成物液5を得た。また、下記配合6の光拡散性物質からなる粒子を含有する軟質塩ビ樹脂組成物を20分間混合撹拌してから30分静置して脱泡し樹脂組成物液6を得た。得られた樹脂組成物液5をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布4を広げて浸漬し、引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、基布4に樹脂組成物液5を完全に含浸させた。次いで、オーブン内で160℃×2分加熱して樹脂をゲル化することで、ディップ加工により基布4の両面に配合5の可撓性樹脂を積層したシートを得た。次に、得られたシートの1面上に樹脂組成物液6を0.2mmのクリアランスでコートし、オーブン内で160℃×1分加熱し、さらに180℃×2分加熱してキュアーした。可撓性樹脂の屈折率n1は1.548、基布4のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.024(n1>na=nb)であった。次いで、表裏両面に添加剤移行防止層と接着・保護層からなる保護層を設け、両面の保護層上に更に光触媒層を設けた。添加剤移行防止層は下記配合7からなる加工液をグラビヤコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却して形成した。接着・保護層は、下記配合8からなる加工液をグラビヤコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して形成した。光触媒層は下記配合9からなる加工液をグラビヤコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して形成した。得られた添加剤移行防止層は5g/m2、接着・保護層は1.5g/m2、光触媒防汚層は1.5g/m2であった。
<配合5>軟質塩ビ樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 30質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 40質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
<配合6>光拡散性物質からなる粒子を含有する軟質塩ビ樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 30質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 40質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(光拡散性物質からなる粒子) 30質量部
(積水化成品工業(株)製:MBX−5:平均粒子径5μm:アスペクト比1.0)
<配合7>添加剤移行防止層組成
ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂 20質量部
(商標:カイナー7201:エルフ・アトケム・ジャパン(株))
MEK(溶剤) 80質量部
<配合8>接着・保護層処理液組成
シリコン含有量3mol%のアクリルシリコン樹脂を8質量%(固形分)含有する
エタノール−酢酸エチル(50/50質量比)溶液 100質量部
メチルシリケートMS51(コルコート(株))の20%エタノール溶液
(ポリシロキサン) 8質量部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤 )1質量部
<配合9>光触媒層処理液組成
酸化チタン含有量10質量%に相当する硝酸酸性酸化チタンゾルを分散させた
水−エタノール(50/50質量比)溶液 50質量部
酸化珪素含有量10質量%に相当する硝酸酸性シリカゾルを分散させた
水−エタノール(50/50質量比)溶液 50質量部
得られた産業資材シートを光天井に施工して、各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例4の産業資材シートは表裏に構成上の差があるため、配合6の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0045】
実施例1〜4の産業資材シートは、可視光透光率が高く、産業資材として充分な強度を有し、平面施工、曲面施工ともに背面からの映写に対して、映像中心部と映像周辺部の輝度差がほとんどみられず、斜め15度からの観察でも垂直方向から観察したのと同等の輝度の鮮明な映像が得られ、背面から映写した映像を前面から観察した際に延伸フィラメントの陰影はほとんど視認されなかった。また、実施例1および4は燃焼試験の結果不燃性に適合するものであった。
【0046】
[実施例5]
実施例4と同様に調整した樹脂組成物液5をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布4を広げて浸漬し、引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、基布4に樹脂組成物液5を完全に含浸させた。次いで、オーブン内で160℃×2分加熱して樹脂をゲル化することで、ディップ加工により基布4の両面に配合5の可撓性樹脂を積層したシートを得た。次いで、前記シートの1面上に樹脂組成物液5を0.1mmのクリアランスでコートし、もう一方の1面上に実施例4と同様に調整した樹脂組成物液6を0.1mmのクリアランスでコートし、オーブン内で160℃×1分加熱し、さらに180℃×2分加熱してキュアーした。可撓性樹脂の屈折率n1は1.548、基布4のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.024(n1>n21=n22)であった。更に、表裏両面の可撓性樹脂層の上に保護層を形成し本発明の産業資材シートを得た。保護層は下記配合10のアクリル系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビアコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥して形成した。得られた保護層は表裏面とも5g/m2であった。
<配合10>アクリル系樹脂組成
アクリル系樹脂 20質量部
(三菱レイヨン(株)製:アクリプレン ペレットHBS001)
希釈溶剤(トルエン−MEK 50:50質量比) 80質量部
得られた産業資材シートを光天井に施工して、各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例5の産業資材シートは表裏に構成上の差があるため、配合6の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0047】
[実施例6]
下記配合11の光拡散性物質からなる粒子含有軟質塩ビ樹脂組成物を20分間混合撹拌してから30分静置して脱泡し樹脂組成物液11を得た。得られた樹脂組成物液11をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布2を広げて浸漬し、引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、基布2に樹脂組成物液11を完全に含浸させた。次いで、オーブン内で160℃×2分加熱し、さらに180℃×2分加熱してキュアーして、ディップ加工により基布2の両面に配合11の可撓性樹脂を積層したシートを得た。可撓性樹脂の屈折率n1は1.520、基布2のナイロン繊維の延伸方向の屈折率naとの差の絶対値が0.058(n1<na)、延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値は0.002(n1<nb)であった。更に、表裏両面の可撓性樹脂層の上に保護層を形成し本発明の産業資材シートを得た。保護層は実施例5と同様、配合10のアクリル系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビアコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥して形成した。得られた保護層は表裏面とも5g/m2であった。
<配合11>光拡散性物質からなる粒子を含有する軟質塩ビ樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 120質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(光拡散性物質からなる粒子) 50質量部
(積水化成品工業(株)製:MBX−5:平均粒子径5μm:アスペクト比1.0)
得られた産業資材シートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例6の産業資材シートは、表裏に構成上の差が無いため、映写した映像に関する評価を行う際には、A面B面の区別をせず、一方の面を前面として評価を行った。
【0048】
[実施例7]
配合2の光拡散性物質からなる粒子を含有する熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し、未硬化の樹脂組成物液2を得た。得られた樹脂組成物液2をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布1を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布1に樹脂組成物液2を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布1を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液2を掻き落とし、窒素置換したオーブン内で100℃×30分加熱硬化することで、ディップ加工により、基布1の両面に配合2からなる可撓性樹脂を積層した本発明の産業資材シートを得た。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.592、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.036(n1>na=nb)であった。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例7の産業資材シートは、表裏に構成上の差が無いため、映写した映像に関する評価を行う際には、A面B面の区別をせず、一方の面を前面として評価を行った。
【0049】
実施例5〜7の産業資材シートは、可視光透光率が高く、産業資材として充分な強度を有し、平面施工、曲面施工ともに背面からの映写に対して、映像中心部と映像周辺部の輝度差がほとんどみられず、斜め15度からの観察でも垂直方向から観察したのと同等の輝度の鮮明な映像が得られ、背面から映写した映像を前面から観察した際に延伸フィラメントの陰影はほとんど視認されなかった。また、実施例5および7は燃焼試験の結果不燃性に適合するものであった。
【0050】
[比較例1]
基布1を用いた以外は実施例2と同様に産業資材シートを作成した。可撓性樹脂層の屈折率n1は1.554、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.002(n1<na=nb)であった。得られた産業資材シートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例1の産業資材シートは表裏に構成上の差があるため、配合2の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0051】
[比較例2]
基布4を用いた以外は実施例6と同様に産業資材シートを作成した。可撓性樹脂層の屈折率n1は1.520、基布4のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.004(n1<na=nb)であった。得られた産業資材シートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例2の産業資材シートは、表裏に構成上の差が無いため、映写した映像に関する評価を行う際には、A面B面の区別をせず、一方の面を前面として評価を行った。
【0052】
比較例1および2の産業資材シートは、|n1−na|が0.02未満であり、平面施工、曲面施工ともに背面からの映写に関しては、延伸フィラメントと可撓性樹脂の界面での適度な光拡散が得られず、映像周辺部の輝度が映像中心部の輝度に比べてやや暗くなり、斜め15度から観察した映像は輝度が低く、コントラストの無い不鮮明な映像であった。
【0053】
[比較例3]
実施例2と同様に調整した配合3の樹脂組成物液3をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布1を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布1に樹脂組成物液3を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布1を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、窒素置換したオーブン内で100℃×30分加熱硬化することで、ディップ加工により基布1の両面に配合3からなる可撓性樹脂を積層したシートを得た。次に、厚さ50μm、たて150cm×よこ150cmのポリエステルフィルムを用意し、その1面上に樹脂組成物液3を0.2mmのクリアランスでコートし、間に空気が入らないよう注意して、先に作成したシートに重ねあわせ、窒素置換したオーブン内で80℃×30分加熱し、さらに100℃×10分加熱して樹脂を固化してからポリエステルフィルムをはがして、光拡散性物質からなる粒子を含有しない可撓性樹脂層を形成し、産業資材シートを得た。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.554であり、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.002(n1<na=nb)であった。得られた産業資材シートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例3の産業資材シートは表裏に構成上の差があるため、ディップ後に更に配合3の光拡散性物質からなる粒子を含有しない可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0054】
比較例3の産業資材シートは|n1−na|が0.02未満であり、かつ光拡散性物質からなる粒子を含有しないため、シートでの光拡散がほとんどなく、前面および背面からの投映に対して、映像がほとんど確認できず、映写スクリーンとして用いる事のできないシートであった。特に透光率が高く透視性も高いため、平面施工、曲面施工ともに背面から投映した際に反対側からビデオプロジェクターがはっきり視認できてしまい、照明カバーとしても用いることのできないシートであった。
【0055】
[比較例4]
下記配合12のシリコーンゴム組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し、未硬化の樹脂組成物液12を得た。また、下記配合13の光拡散性物質からなる粒子を含有するシリコーンゴム組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し、未硬化の樹脂組成物液13を得た。得られた樹脂組成物液12をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布4を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布4に樹脂組成物液12を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布4を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、基布4の両面に未硬化の可撓性樹脂12をコートしたシートを得た。次に、厚さ50μm、たて150cm×よこ150cmのポリエステルフィルムを用意し、その1面上に樹脂組成物液13を0.2mmのクリアランスでコートし、間に空気が入らないよう注意して、先に作成したシートに重ねあわせ、オーブン内で80℃×30分加熱し、さらに100℃×10分加熱して樹脂を固化してからポリエステルフィルムをはがして光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を形成し、産業資材シートを得た。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.401、基布4のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.123(n1<na=nb)であった。
<配合12>シリコーンゴム組成物
CY52−110(東レダウコーニングシリコーン(株)社製シリコーンゴム)
A液 50質量部
B液 50質量部
<配合13>光拡散性物質からなる粒子を含有するシリコーンゴム組成物
CY52−110(東レダウコーニングシリコーン(株)社製シリコーンゴム)
A液 50質量部
B液 50質量部
架橋ポリスチレン樹脂粒子 50質量部
(積水化成品工業(株)製:SBX−6:平均粒子径6μm:アスペクト比1.0)
得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例4の産業資材シートは、表裏に構成上の差があるため、配合13の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0056】
比較例4の産業資材シートは、平面施工、曲面施工ともに背面からの投映を前面から観察した際に、映像周辺部と映像中心部の輝度に差はなく斜め15度からの観察でも垂直方向から観察したのと輝度は同程度であったが、延伸フィラメントと可撓性樹脂の屈折率差が大きく、その界面での光の拡散が過剰であり、延伸フィラメントの陰影が視認され、全体的に映像の鮮明さが阻害されており、背面映写用のスクリーンとしては不向きなシートであった。
【0057】
[比較例5]
厚さ50μm、たて150cm×よこ150cmのポリエステルフィルムを用意し、その1面上に実施例4と同様に調整した配合5の樹脂組成物液5を0.22mmのクリアランスでコートし、オーブン内で160℃×1分加熱しゲル化させた。次いで、ゲル化した配合5の組成物上に、実施例4と同様に調整した配合6の樹脂組成物液6を0.22mmのクリアランスでコートし、オーブン内で160℃×1分加熱し、さらに180℃×2分加熱してキュアーして、編織布を含まないシートを得た。更に、実施例4と同様に添加剤移行防止層組成、接着・保護層、光触媒層を両面に形成した。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例5のシートは、表裏に構成上の差があるため、配合6の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0058】
比較例5のシートは、平面施工、曲面施工ともに背面からの映写に関しては、編織布を含まないため延伸フィラメントと可撓性樹脂の界面での適度な光拡散が得られず、映像周辺部の輝度が映像中心部の輝度に比べてやや暗くなった。また、斜め15度から観察した映像は輝度が低く、コントラストの無い不鮮明な映像であった。さらに、編織布によって補強されていないため、産業資材シートとして用いるには強度が不充分なものであった。
【0059】
[比較例6]
実施例1と同様に調整した配合1の樹脂組成物液1をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布1を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布1に樹脂組成物液1を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布1を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、窒素置換したオーブン内で100℃×30分加熱硬化することで、ディップ加工により、基布1の両面に配合1からなる可撓性樹脂を積層したシートを得た。次に、厚さ50μm、たて150cm×よこ150cmのポリエステルフィルムを用意し、その1面上に樹脂組成物液1を0.2mmのクリアランスでコートし、空気が入らないよう注意して先に作成したシートに重ねあわせ、窒素置換したオーブン内で80℃×30分加熱し、さらに100℃×10分加熱して樹脂を固化してからポリエステルフィルムをはがして、可撓性樹脂層に光拡散性物質からなる粒子を含有しない産業資材シートを得た。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.592、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.036(n1>na=nb)であった。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例6の産業資材シートは表裏に構成上の差があるため、ディップ後に更に配合1の光拡散性物質からなる粒子を含有しない可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0060】
比較例6の産業資材シートは、延伸フィラメントと可撓性樹脂の界面での光拡散は認められるものの、光拡散性物質からなる粒子を含む可撓性樹脂層を有さず、前面および背面からの投映に対して、いずれもコントラストの低い不鮮明な映像しか表示することができず、映写スクリーンとして用いる事のできないシートであった。
【0061】
[比較例7]
配合5の代わりに下記配合14の光拡散性物質からなる粒子を含有する軟質塩ビ樹脂組成物を、配合6の代わりに下記配合15の光拡散性物質からなる粒子を含有する軟質塩ビ樹脂組成物を、それぞれ用いた以外は実施例4と同様に産業資材シートを作成した。可撓性樹脂の屈折率n1は1.548、基布4のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.024(n1>n21=n22)であった。
<配合14>光拡散性物質からなる粒子を含有する軟質塩ビ樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 30質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 40質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
酸化チタン粒子(光拡散性物質からなる粒子) 2質量部
(平均粒子径0.4μm:アスペクト比1.0〜4.0の不定形粒子)
<配合15>光拡散性物質からなる粒子を含有する軟質塩ビ樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 30質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 40質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(光拡散性物質からなる粒子) 120質量部
(積水化成品工業(株)製:MBX−5:平均粒子径5μm:アスペクト比1.0)
得られた産業資材シートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例7の産業資材シートは、表裏に構成上の差があるため、配合15の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0062】
比較例7の産業資材シートは前面からの映写に対しては鮮明な映像を投映することができるが、可視光透過率が低いため、平面施工、曲面施工ともに背面からの映写に対しては不鮮明で暗い映像しか投映することができず、背面映写スクリーンとして用いるには不向きなシートであった。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の背面映写可能な産業資材シートは、前面及び背面から投影する映写スクリーンとしての機能を有する光拡散透過性シートであり、且つ産業資材シートとして充分な強度と耐久性を有しているため、これを用いた天井、壁、内照看板、ドーム、テント、シートシャッター、間仕切りなど、さまざまな産業資材構造物に対して背面投映可能なシステムを構築することができ、更に映像を斜め方向から見た際の認識性や曲面部への投映性にも優れるため、歩行者の自然な視線に対する認識性の高い背面投映システムが得られる。特に不燃特性を有する本発明の産業資材シートを、天井材、壁材、内照看板材、ドーム材として用いた産業資材構造物は、高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、駅舎構内、地下街通路、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などに広く利用でき、照明機能と兼用してデジタル画像や動画を投映することで情報伝達にエンターティメント性を附帯させたり、アミューズメント分野においては演出効果が飛躍的に向上するなど様々な活用が期待できる。またさらに迅速な情報提供事例として、災害時の緊急避難誘導としての利用も期待される。
【符号の説明】
【0066】
1:編織布
1−a:延伸フィラメントα
1−b:延伸フィラメントβ
2:可撓性樹脂層
2−1:光拡散性物質からなる粒子を含まない可撓性樹脂層
2−2:光拡散性物質からなる粒子を含む可撓性樹脂層
3:産業資材シート(光拡散透過性シート)
4:映像投映装置
5:鏡
6:照明装置
7:遮光性シート
8:ハウジング
9:地下街の店舗
a:延伸フィラメントの延伸方向
b:延伸フィラメントの延伸垂直方向
Lv:光拡散透過シートに垂直に入射した光
Ls:光拡散透過シートに斜めに入射した光
【技術分野】
【0001】
本発明は、背面映写による画像映写が可能な産業資材シートと、その映写システムに関するものであり、更に詳しくは、高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、駅舎構内、地下街通路、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などにおける天井部材や壁材、壁看板及びドーム状構造物の構築部材に用いる不燃性産業資材シートに関するものであり、特に照明シェード機能を有し、さらに広角的に表示可能な背面映写スクリ−ン機能を有する、光透過性、かつ建築基準法に適合する不燃性の可撓性産業資材シートと、その背面映写システムとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
商業施設、オフィスビル、学校などにおける照明は、多数の蛍光灯ユニットを天井の縦横に過密配置することによって、室内の明るさと照度の均一性とを保つ方法が主流であるが、しかし、この方法では蛍光灯ユニットの存在が目立ってしまい、施設空間デザインの自在性の障害となっている。そのため蛍光灯ユニットを乳白色のアクリル樹脂製の照明カバーで覆い隠したり、天井全体を白色を基調とする装飾として保護色化するなどの配慮がなされているものの、依然として蛍光灯ユニット自体の存在を目立たなくすることは困難な課題であった。
【0003】
特に高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などでは、照明設備自体を極力露出しない照明デザインが採用されているが、最近の新築施設では、より空間の洗練性と明るさを追求した照明手段として、天井のほぼ全面を照明シェード化することによって、天井全体を発光させる方法によって、蛍光灯ユニットの存在を目立たなくした光天井照明の導入が進んでいる。光天井としては、無機系繊維織物を基材とする長尺膜材を天井全面に施工してなるものが、特に建築物の耐久性と施工性に融通し、しかも照明シェードとして優れた光拡散効果と蛍光灯隠蔽効果とを兼備している。
【0004】
一方、コンビニエンスストア、ファーストフード店、居酒屋、カラオケ店、ガソリンスタンド、金融ATMなどの各種販売業、及びサービス業においては、昼夜問わず内照表示する看板表示システムが多用されており、これらの内照式看板は屋号や広告の効果的表示機能と同時に夜間照明としても機能している。また一方で、駅構内、地下鉄駅構内、地下街、地下連絡通路の壁面には様々な広告看板で埋め尽くされているが、これらの広告看板も照明機能を兼用することで地下空間には欠かせない存在である。また建造物内や地下施設内などにおいては避難誘導などの情報表示も不可欠である。
【0005】
これらの内照式広告看板としては、光拡散性を有するアクリル樹脂板にプリントやマーキングを施し、看板の裏面側に設けた蛍光灯により行燈効果を得るタイプが主流であるが、建築物に附帯する大型看板用途では高い防炎性能と耐衝撃強度が必要であるため、例えば、ポリエステル繊維織物を基材として、その両面を軟質塩化ビニル樹脂フィルムで積層した繊維強化フレキシブル膜材が内照式看板に使用されており、特に屋内用途では無機系繊維織物を基材とする難燃性のフレキシブル膜材が使用されている。
【0006】
また一方で、アミューズメント施設、イベント会場、遊戯施設においては、来場者を円滑に誘導するための順路隔壁を内照式の光壁や行燈壁とする演出によって色と光のエンターティメント性を高める手法が用いられている。また、小型〜中型のドーム状密閉空間に構築されているアミューズメント施設、例えば、熱帯植物園、温水プール、プラネタリウム、水族館、各種テーマ館などの場合、外部からの照明透過光の陰影や色彩は極めて演出性が高いものとなる。
【0007】
光天井照明はシンプルな白色系平坦外観を基調とすることにより落ち着きのある瀟洒な空間を提供することができるので、特に公共施設の待合ロビーやホテルのエントランスに適し、また大ホールなどでのイベントやシンポジウムにおいては観衆や聴衆の興味、集中力を持続させる効果にも寄与する。それ故、光天井に華美なプリントや装飾などを施す事例は少ないが、しかし、冠婚葬祭式場やパーティ・イベント会場においては、光天井のような白色系平坦外観は映写スクリーンとして利用できる可能性を有している。
【0008】
また地下街や地下街連絡通路における雑踏の中では、進行方向の天井に行先表示の目印を求める意識が高く、それにより天井部に出口案内やトイレ位置などの表示プレートが随所に設置されている。それ故、地下街や地下街連絡通路の光天井自体に意匠や広告表示などを直接附帯させることは効果的であるが、しかしながら広告表示の多様性に伴う更新サイクル頻度、及び天井施工の手間との兼ね合いとの理由で、駅舎構内や地下街、地下街連絡通路における広告表示の実情は壁面看板が一般的である。しかし、これらの内照式看板の表示は文字・図柄・写真の組み合わせによる静止図柄の表示が主体で、これら多数の内照式看板が等間隔で連続する様は、俯瞰的に照明機能が抜き出た存在であった。
【0009】
最近、デジタルデータを壁面やスクリーンにプロジェクター映写することで画像や動画を表示する方法が普及している。広告等の商業的利用においてのプロジェクター映写は、人影等が邪魔にならないようにスクリーン背面にプロジェクターを配置した背面投映が主流であり、背面映写用スクリーンとして、透光性と光拡散性を兼備する合成樹脂シートを用いることによってプロジェクター光源を隠しながら鮮明な映像表示を可能とするものである。このような透過型スクリーンとプロジェクターとを、光天井や内照式広告看板に応用することによって、画像を自在に切り替え表示したり、動画を映写したりすることが可能となる。また、例えば特開2004−77634号公報(特許文献1)には、地下街または大型複合商業ビルの天井面にデイスプレィ装置を設けて、これに実際の屋外風景を広角映像で映写することで、地下街やビル内における現在位置や方角の把握を容易とするナビゲーションシステム装置の提案がなされている。
【0010】
このように、天井や内照式看板に動画を表示する提案がいくつかなされているものの、実際に地下街や地下街連絡通路の天井部に画像や動画を投映したり、あるいは地下街連絡通路の壁面看板に画像や動画を投映する利用は困難であった。その理由として歩行者(観察者)の視野と画像鮮明認知性との関係が挙げられる。画像や動画の投映において、歩行者の視点がプロジェクター方向に対向して上下左右60°の視野が最も画像や動画の投映が鮮明に認知可能であるが、観察者が地下街や地下街連絡通路を歩行通過する時の目線は前方に向けられている。このため画像や動画の投映地点到達時に立ち止まって天井を見上げたり、左右に振り向くことは稀である。つまり地下街や地下街連絡通路の天井部や側壁部に画像や動画を効果的に演出するには、極端に斜め方向からも認知可能な画像や動画を投映する必要があるが、これらの投映システムでは斜め方向からの認識性に劣るのが実情であり、特に曲面部を有する天井部や側壁においての投映では、一層投映画像の認知性が劣ることが問題とされている。
【0011】
このような観点において、光拡散性と防眩性を兼備した映写スクリーンが開発され、例えば特開2005−24942号公報(特許文献2)にはプラスチックフィルムを支持体として、これに光拡散層を設けてなる、ヘーズ80%以上、全光線透過率60%以上、鏡面光沢度10%以下である透過型スクリーンが開示されている。このような映写スクリーンを用いることによって、より様々な位置からの画像や動画の認識を可能とするが、この映写スクリーンでは建築基準法に適合する不燃性を有さないため、天井部材や壁材などの建築部材として使用することができない。つまり画像や動画を投映可能な光天井部材、光壁材、内照看板材として、高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、駅舎構内、地下街通路、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などの建築部材に用いるには火災対策として建築基準法に適合する不燃性が必要である。
【0012】
従って、建築基準法に適合する不燃性を有し、かつ光透過性と投映性とを有する産業資材シートであって、さらに投映された映像が斜め方向からも明瞭に認知でき、曲面部にも投映可能な建築材料があれば、それらを光天井部材、光壁材、内照看板材として用いて、高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、駅舎構内、地下街通路、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などに広く利用でき、照明機能と兼用してデジタル画像や動画を投映することで情報伝達にエンターティメント性を附帯させたり、アミューズメント分野においては演出効果が飛躍的に向上するなど様々な活用が期待できる。またさらにアナウンスに替わる視覚的情報提供手段として、イベント開催案内、ニュース報道、更には災害時の緊急避難誘導としての利用なども期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−77634
【特許文献2】特開2005−24942
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、良好な光透過性と鮮明なプロジェクター投映性とを有する産業資材シートであって、しかも投映された映像が斜め方向からも明瞭に認知可能であり、特に曲面部を有する光天井部材、光壁材、内照看板材、ドーム状構造材などの建築材料に適して用いることができ、さらに建築基準法に適合する不燃性を有する産業資材シートと、この産業資材シートの背面にプロジェクターなどの投映装置を配置してなる光天井システム、光壁システム、内照看板システム、ドーム状構造物システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討の結果、
1、延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を積層してなる
複合基材における、前記延伸フィラメントが延伸方向a、及び前記延伸方向aに対す
る延伸垂直方向b、において、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメント
の延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|を下記式1を満たし、前記可
撓性樹脂の屈折率n1と延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|
を下記式2を満たす光学特性とすることによって、面方向から見たときに編織布の陰
影の影響を受けない、高透光性で高強力の産業資材シートが得られること。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
2、前記可撓性樹脂層の少なくとも1層に、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、
パール顔料、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズ、及び樹脂粒子から選ばれた少
なくとも一種の光拡散性物質からなる粒子を含むことで、鮮明な映写投映性を有する
光拡散透過性の産業資材シートが得られること。
3、前記光拡散性シートの可視光透過率(JISZ8722)を40〜90%とするこ
とで、前記光拡散性シートの背面投映性輝度に優れ、しかも映像投映装置の光源を隠
蔽する効果に優れていること
これらに加えて、更に、
4、前記可撓性樹脂の屈折率n1と、前記延伸フィラメントの延伸方向aの屈折率na
の関係を、上記式1を満たす光学特性とすることで、映像中心部分の輝度と映像周辺
部分の輝度差を極小として、特に斜め方向からの観察における映写画像の認識性が飛
躍的に向上して曲面部にも投映可能となること。
を見出して、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち本発明の背面映写可能な産業資材シートは、延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を積層してなる複合基材を含む、可視光透過率(JISZ8722)40〜90%の光拡散透過性シートであって、前記可撓性樹脂層の少なくとも一層が、光拡散性物質からなる粒子を含み、かつ、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たす光学特性を有することが好ましい。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
本発明の背面映写可能な産業資材シートは、前記光拡散性物質からなる粒子が、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズ、及び樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。本発明の背面映写可能な産業資材シートは、前記延伸フィラメントがガラス繊維、または、シリカ繊維からなり、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない不燃特性を有することが好ましい。
本発明の産業資材構造物の背面映写システムは、延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を積層してなる複合基材を含み、可視光透過率(JISZ8722)40〜90%を有する光拡散透過性シートの背面に、映像投映装置を配置して有し、前記可撓性樹脂層の少なくとも一層が、光拡散性物質からなる粒子を含み、かつ、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たす光学特性を有することが好ましい。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
本発明の背面投映システムは、前記光拡散性物質からなる粒子が、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズ、及び樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。本発明の背面投映システムは、前記産業資材構造物が、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない不燃特性を有する天井であること、又は壁であること、又はドームであること、又は看板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、良好な光透過性と鮮明なプロジェクター投映性とを有する産業資材シートの提供を可能とし、しかも投映された映像が斜め方向からも明瞭に認知可能であるため、特に曲面部を有する光天井部材、光壁材、内照看板材、ドーム状構造材などの建築材料に適して用いることができる。また本発明の産業資材シートは、特に建築基準法に適合する不燃性を有するので、この産業資材シートの背面にプロジェクターなどの投映装置を配置してなる光天井システム、光壁システム、内照看板システム、ドーム状構造物システムを、高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、駅舎構内、地下街通路、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などにおける天井部材や壁材、壁看板及びドーム状構造材などに広く利用でき、照明機能と兼用してデジタル画像や動画を投映することで情報伝達にエンターティメント性を附帯させたり、アミューズメント分野においては演出効果が飛躍的に向上させるなど様々な用途での活用が可能となる。またさらにアナウンスに替わる視覚的情報提供手段として、イベント開催案内、ニュース報道、更には災害時の緊急避難誘導としての利用なども可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】延伸フィラメントの延伸方向と延伸垂直方向示す図 (a)延伸方向a (b)延伸垂直方向b
【図2】本発明の光拡散透過性シートの一例を示す図
【図3】広角のレンズから投映した状態を示す図
【図4】斜め方向から投映した状態を示す図
【図5】光の入射角による光拡散性の違いを示す図
【図6】鏡に反射させて投映した状態を示す図
【図7】天井に用いた背面映写システムの一例を示す図
【図8】天井に用いた背面映写システムの利用の一例を示す図
【図9】壁に用いた背面映写システムの一例を示す図
【図10】内側に向けて投映するドームに用いた背面映写システムの一例を示す図
【図11】外側に向けて投映するドームに用いた背面映写システムの一例を示す図
【図12】看板に用いた背面映写システムの一例を示す図
【図13】実施例及び比較例において、光天井に施工した産業資材シートの背面から映写 した映像を垂直方向、及び面に対して15度の角度から観察した状態を示す図 (a)平面施工 (b)曲面施工
【図14】実施例及び比較例において、映写スクリーン機能を評価する際の映像投映装置 と観察者の位置関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の産業資材シートにおいて、編織布に使用する延伸フィラメントとしては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維などの合成繊維による長繊維、ジアセテート繊維、トリアセテート繊維などの半合成繊維による長繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維などの再生繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維などの無機繊維による長繊維などであり、これらは単独使用または混用、混紡であってもよい。また、延伸フィラメントは、マルチフィラメント糸条、もしくはモノフィラメント糸条が好ましく、本発明においてはフィラメント数3〜300本、繊度138〜2223dtex(デシテックス)、特に277〜1112dtexのマルチフィラメント糸条が好ましい。前記延伸フィラメントは、図1(a)の様に延伸方向aを有し、図1(b)の様に延伸方向に対する延伸垂直方向bを有する。ここで、延伸フィラメントとして、合成繊維、半合成繊維、再生繊維の場合には延伸により高分子の結晶構造を任意配向させることで、延伸方向aの屈折率naと延伸垂直方向bの屈折率nbを適宜調整することができる。またガラス繊維の様に非晶質の無機材料を用いる場合には、naとnbは等しくなる。
【0020】
本発明に使用する編織布には織布、または編布が用いられ、織布として、平織、綾織、繻子織、模紗織など公知の織布が挙げられるが、中でも特に平織織布が、得られる産業資材シートの経緯物性バランスに優れて好ましい。編布としてはラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましく用いられる。これら編織物は、糸間間隙を均等において平行に多数配置した経糸、及び糸間間隙を均等において平行に多数配置した緯糸を含んで構成された粗目状の編織物(空隙率5〜50%)、及び非粗目状編織物(空隙率5%未満)を包含する。中でも、補強効果、光拡散効果などの点から、経緯糸条の交絡間に形成される空隙率が0〜5%の高密度編織物が特に好ましく用いられる。前記編織布には、付着する油剤や糊剤を除くために、精練や熱処理を施しても良く、可撓性樹脂加工液に濡れやすくし可撓性脂層との接着性を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、シランカップリング剤処理などを行っても良い。
【0021】
本発明の産業資材シートにおいて可撓性樹脂層としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴムなど熱可塑性樹脂、さらにはビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などを使用することもできる。可撓性樹脂層を編織布に積層する方法としては、例えば、有機溶剤に可溶化した熱可塑性樹脂、水中で乳化重合された熱可塑性樹脂エマルジョン(ラテックス)、あるいは熱可塑性樹脂を水中に強制分散させ安定化したディスパージョン樹脂などの水分散樹脂、軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペーストゾル、未硬化の熱硬化性樹脂組成物液などを用いるディッピング加工(編織布への両面加工)、及びコーティング加工(繊維布帛への片面加工、または両面加工)等が例示される。この可撓性樹脂層上には、更に別の可撓性樹脂層を積層してもよく、特にカレンダー成形法、またはTダイス押出法により成形したフィルム又はシートを、接着剤を介して、あるいは熱ラミネートにより積層する方法が例示される。可撓性樹脂層の目付量は30〜600g/m2であり、可撓性樹脂層は編織布に含浸形成された部分を包含するものである。ここで、少なくとも編織布に直接積層した可撓性樹脂の屈折率n1と、延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が上記式1を満たし、かつ、可撓性樹脂の屈折率n1と、延伸フィラメントの延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が上記式2を満たす様に、可撓性樹脂と延伸フィラメントを適宜選択することが好ましい。
【0022】
また可撓性樹脂層の少なくとも一層には、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズ、及び樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種の光拡散性物質からなる粒子が含まれる。白色顔料は、二酸化チタンや酸化亜鉛などの白色顔料の他、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムなどの白色の無機粒子を包含する。金属フレーク及び金属パウダーは、アルミフレーク、アルミパウダーなどの他、樹脂製あるいはガラス製のフレークやパウダー上にアルミ、銀、ニッケル、錫、インジウムなどの金属をメッキ法により被覆したフレークやパウダーを包含する。パール顔料は、天然雲母に高屈折率の金属酸化物をコートした顔料が例示される。ガラスビーズは、中空ガラスビーズ、中実ガラスビーズ、ガラス粒子は、ガラス粉末、ガラスビーズ破砕体が例示される。樹脂ビーズは、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシ系樹脂等からなる樹脂ビーズが例示され、特に可撓性樹脂層と非相溶の樹脂を用いる。またこれらの樹脂ビーズはコア−シェル複層構造を有していてもよく、また架橋構造を有していてもよい。また樹脂粒子とはこれらの樹脂ビーズを破砕して得られる不定形粒子である。
【0023】
上記これらの光拡散性物質の平均粒子径は、0.1〜50μmが好ましく、白色顔料、金属パウダー、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズ、及び樹脂粒子のアスペクト比は1〜6が好ましく、特に金属フレーク、及びパール顔料においてのアスペクト比は6〜60が好ましい。また可撓性樹脂層に対する添加量は可撓性樹脂100質量部に対して、光拡散性物質からなる粒子を0.1〜100質量部、特に0.1〜50質量部が好ましい。添加量が0.1質量部未満では光拡散性が不充分となり、背面映写した映像の鮮明性が不充分となったり、背面に設置した映像投映装置の光源の存在が目立ち過ぎる問題がある。また添加量が100質量部を超えると可視光透過率が低下して、光天井、光壁、内照看板、ドーム状構造物に用いた場合、十分な照明機能が発揮できなくなると同時に、背面から映像を映写しても充分な輝度が得られないことがある。
【0024】
本発明の産業資材シートは40〜90%の可視光透過率(JISZ8722)を有する光拡散透過性シートである。可視光透過率が40%未満であると光天井、光壁、内照看板、ドーム状構造物に用いた場合、十分な照明機能が発揮できなくなると同時に、背面から映写した映像が暗く充分な輝度が得られないことがあり、また90%を超えると前面及び背面から映写した映像のコントラストや色相の再現性が不充分となる問題を生じることがある。
【0025】
本発明の産業資材シートに関して、図2の光拡散透過性シートを一例として説明する。図2の光拡散透過性シートは、編織布(1)として平織り織布を用い、光拡散性物質からなる粒子を含まない樹脂加工液をディップ加工することにより、光拡散性物質からなる粒子を含まない可撓性樹脂層(2−1)が編織布の両面に形成され、更にその片面上に光拡散物資を含む樹脂加工液をコーティング加工して、光拡散性物質からなる粒子を含む可撓性樹脂層(2−2)が形成されている。このとき、可撓性樹脂層(2−1)を構成する樹脂と延伸フィラメントの選択において、|n1−nb|が0.07以下となるような組み合わせを選択すれば、延伸垂直方向bの屈折率nb、すなわち織布の表面や裏面に垂直な方向の延伸フィラメントの屈折率nbと可撓性樹脂の屈折率n1の差が小さいため、延伸フィラメントと可撓性樹脂の界面での光の屈折がほとんどないか、あるいはわずかしか起こらず、産業資材シート内部に含まれる織布はほとんど視認することができない。この光拡散透過性シートのいずれかの面を前面として、前面側から映写すれば、可撓性樹脂層に含まれる光拡散性物質からなる粒子により光が拡散され、前面側から観て鮮明な映像を投映することができ、また、背面から映写して前面から観た場合でも、織布がほとんど視認されないため延伸フィラメントによる陰影を生じず、前面から映写した場合と同様の鮮明な映像を投映することができる。
【0026】
実際の使用において背面から映写される場合には、映像投映装置とスクリーンの間の距離を充分にとることができず、図3の様に広角の映写レンズから投映したり、図4の様に斜め方向から投映したりすることがある。このとき、スクリーンとして、例えば、単に光拡散性物質からなる粒子を練り混んだ等方的な拡散性を示す拡散板を用いると、広角の映写レンズを有する映像投映装置から映写した場合には中央部が明るく、周辺部が暗くなり、斜めから映写した場合には映像投映装置から近い部分が明るく、遠い部分が暗くなるなど、投映画像に輝度差を生じることがあるが、本発明の産業資材シートにおいてはその様な輝度差はほとんど確認されず、ほぼ均一な輝度の映像を得ることができる。このような効果が得られる原因は定かではないが、以下の様に推察される。
1、例えば図5において、延伸フィラメントの延伸垂直方向の屈折率nbが可撓性樹脂
の屈折率n1の屈折率とほぼ等しい光拡散透過性シートを想定した場合、光拡散透過
性シートの垂直方向から入射した光(Lv)は、可撓性樹脂と延伸フィラメントα(
1−a)、可撓性樹脂と延伸フィラメントβ(1−b)の界面どちらでも、延伸フィ
ラメントの延伸垂直方向から入射するため屈折せず、拡散されない。
2、一方、光拡散透過性シートの斜め方向から入射した光(Ls)は、延伸フィラ
メントα(1−a)に対して延伸方向aから入射し、延伸フィラメントの延伸方向a
の屈折率naと、編織布に積層した可撓性樹脂の屈折率n1との差の絶対値|n1−
na|は0.02を超えて0.07以下であるため、可撓性樹脂と延伸フィラメント
αとの界面で僅かに屈折して適度に拡散され、光が斜めに入射した部分で輝度が上が
る。
3、可撓性樹脂と延伸フィラメントの界面においては、垂直に近い角度で光が入射した
部分では拡散が少なく、より斜めの角度から入射した光が拡散される。そのため、光
拡散物質を練りこんだだけのスクリーンに比べて、光の入射角度による輝度のバラツ
キが少なくなるので、斜め方向からの観察によっても投映映像の認識可能であり、さ
らに曲面部にも投映可能となる。なお、図5では光拡散性物質からなる粒子の表現は
省略している。
【0027】
|n1−na|、|n1−nb|のいずれか一方あるいは両方が0.07を超えると、可撓性樹脂と延伸フィラメントの界面での光拡散が過剰となり、産業資材シートの光線透過率が低下し、背面から映写する際に延伸フィラメントの陰影が目立つようになり、シート背面からの投映に対してシート前面から鮮明な映像を観賞することができなくなることがある。|n1−na|が0.02未満であると、可撓性樹脂と延伸フィラメント界面での適度な光拡散が得られず、広角の映像投映装置から投映した場合には中央部が明るく、周辺部が暗くなり、斜めから投映した場合には映像投映装置から近い部分が明るく、遠い部分が暗くなるなど、輝度差を生じ、斜め方向からの観察においては認識性が劣ることがある。
【0028】
本発明の産業資材シートにおいて、表面の傷つき、汚れの付着、各種添加剤の表面への移行、などを防止する目的で、前記光拡散透過性シートが、その一方の面もしくは両面上に保護樹脂層を有していてもよい。保護樹脂層は防汚性を有する樹脂層であることが好ましく、これらは例えばアクリル系樹脂、フッ素系共重合樹脂、アクリル−シリコン共重合樹脂、アクリルーフッ素共重合樹脂、アクリル−ウレタン共重合樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合樹脂とのブレンド、及びこれらにシリカ微粒子、コロイダルシリカ、オルガノシリケートを含んでなる樹脂層である。この保護樹脂層の形成例としては、溶剤あるいは水に可溶な樹脂の溶液、または樹脂を水などの分散媒に分散したエマルジョン液をスプレーコート、グラビアコート、バーコートなどのコーティング法で塗布・乾燥する事による形成、最外表面をフッ素含有樹脂またはフッ素含有共重合体樹脂とするフィルムを接着剤もしくは熱溶融加工により積層することによる形成である。また、これらの保護樹脂層上には更に、光触媒性無機材料(例えば光触媒性酸化チタン・光触媒性酸化タングステン)を含む光触媒層を設けることが防汚性付与の観点で好ましい。特に蛍光灯の配置を伴う光天井や光壁、光看板などの屋内用途においては可視光活性型の光触媒性無機材料を含む光触媒層を形成することがセルフクリーニングによる防汚性付与の観点で更に好ましい。
【0029】
本発明の産業資材シートにおいて、可撓性樹脂層には必要に応じて公知の添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、可撓性付与剤、充填剤、接着剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、レベリング剤、消泡剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤、蛍光増白剤、蛍光顔料、蓄光顔料などが挙げられる。
【0030】
本発明の産業資材シートは消防法、または建築基準法に規定される難燃性、または不燃性を有する光拡散透過性シートであることが好ましく、このため産業資材シート、及び背面映写システムを搭載した産業資材構造物は、輻射電気ヒーターを用いて50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験(ASTM−E1354:コーンカロリーメーター試験法)において、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えないことを満足する不燃性を有する光拡散透過性シートであることが好ましい。このような不燃性の産業資材シートは、ガラス繊維織布(目付質量200〜300g/m2 、空隙率1%以下の非目抜け平織)を基材として、この1面以上に可撓性樹脂層を設けることで得られる。
【0031】
本発明の背面映写システムは、延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を積層してなる複合基材を含み、40〜90%の可視光透過率(JISZ8722)を有する光拡散透過性シートの背面に、映像投映装置を搭載する産業資材構造物である。前記可撓性樹脂層の少なくとも一層が、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズ、及び樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種の光拡散性物質からなる粒子を含み、かつ、延伸フィラメントが、延伸方向a、及び延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、可撓性樹脂の屈折率n1と延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たすことで背面から映写した画像を前面から観賞する際に光拡散透過性シートに含まれる編織布がほとんど目立たず、色の再現性に優れ、尚且つ斜め方向からの観察においても鮮明な映像を認識することができるので曲面部を有する天井や壁にも投映が可能となる。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
また、光拡散透過性シートが延伸フィラメントを含む編織布で補強された光拡散透過性シートであるため、産業資材構造物として充分な強度と耐久性を有している。本発明の背面映写システムは、産業資材シート(3)を映写スクリーンとし、その背面側に映像投映装置(4)を配し、前記映像投映装置から投映された映像を、産業資材シートを透過させて観賞する構成を有する。背面に充分なスペースがない場合には、図3の様に広角レンズを有する映像投映装置を用いたり、図4の様に上下左右いずれかの方向に配した映像投映装置から斜めに投映したり、図6の様に上下左右いずれかの方向に配した映像投映装置から鏡(5)に反射させて投映する方法を用いることができる。
【0032】
本発明の背面映写システムは、光拡散透過性シートを、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない産業資材シートとすることで、建築基準法に定められる不燃性を求められる用途に本発明の背面映写システムを応用することができる。
【0033】
本発明において、映像投映装置は、スライド映写機、フィルム映写機、プラネタリウム投映機、レーザー投映機、オーバーヘッドプロジェクターおよびビデオプロジェクターなど従来公知の映像投映装置から適宜選択して単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でビデオプロジェクターは、テレビ、ビデオ、DVD、ブルーレイ、及びコンピュータの画像など、各種映像ソースの投映に対応することができるため好ましく用いられる。特にコンピュータの画像をビデオプロジェクターを介して投映する場合には、コンピュータのハードディスクに保存された静止画や動画、コンピュータにLAN経由で配信した情報、静止画、動画、及びライブカメラの映像、コンピュータに内蔵された受信機で受信したテレビの映像、などを随時選択し、必要に応じて複合表示することができる。映像投映装置は固定である必要はなく、投映角度を制御可能に設置したり、レールを走行して直線状に移動可能にしたり、XYステージにより平面を移動可能に設置したり、更にはクレーンなどにより3次元を移動可能に設置することで、投映位置を自在に変更することが可能となる。本発明の背面映写システムは、更に音響装置を併用することで、映像に合わせた音声情報、効果音、バックグラウンドミュージック等を組み合わせた多彩な表現が可能となる。映像表示のタイミングや組み合わせ、映像投映装置の投映角度や位置を変えることによる投映位置の制御、音声の制御に関しては、コンピュータのプログラムによって設定したり、オペレーターが直接制御することが可能であり、自由度が高く表現力に富んだ背面映写システムを構築することができ
【0034】
図7は本発明の産業資材シートを天井に用いた背面映写システムの一例を示すものである。産業資材シートとしては、天井材に求められる不燃性を満たし、且つ充分な強度や耐久性を有した光拡散透過性シートを用いる。そのため、高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、駅舎構内、地下街通路、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などにおける大面積の天井に適して用いることが可能で、更にはエレベーターかご内の天井や鉄道車両の天井などにも用いることができる。光拡散透過性シートは天井の全面に用いても良いし、所望の一部分だけに用いても良い。大面積に同時に投映する場合には、複数の映像投映装置を配置すればよい。光拡散透過性シート(3)の背面には照明装置(6)を配置することで、映写システムを利用しないときには光天井システムとして用いる事もでき、照明を点灯した状態で同時に天井の一部に映像を投映する利用も可能である。また、映像投映装置から単色光を映写して照明装置の代わりとして用いれば、映像投映装置のみで映写システムと光天井システムを兼用することもできる。天井の形状としては、図7の様な平面状に限らず、アーチ型やドーム型など曲面状であっても良く、映像投映角度や観察者の観る角度に係わりなく鮮明な映像を得る事ができる。図8は図7の背面映写システムを地下街通路の天井に用いた例を示すものである。天井一面に光拡散透過性シート(3)が用いられており、普段は照明装置(6)を点灯することで光天井として機能しているが、任意のタイミングで任意の位置に映像を投映することで、例えば地下街の通行人に店舗(9)への来店を促す情報をタイムリーに掲示するなどの利用が可能となる。
【0035】
図9は本発明の産業資材シートを壁に用いた背面映写システムの一例を示すものである。産業資材シートとして、壁材に求められる不燃基準を満たし、且つ充分な強度や耐久性を有した光拡散透過性シートを用いる。天井に用いる場合同様、壁面の全面に用いてもよいし、所望の一部分だけに用いても良い。光拡散透過性シート(3)の背面に照明装置(6)を配置すれば、照明機能を併せ持つ壁面とする事ができ、照明を点灯した状態で同時に壁面の一部に映像を投映する利用も可能である。壁の形状も、天井の場合同様、図9の様な平面状に限らず、曲面状であっても良く、映像投映角度や観察者の観る角度に係わりなく鮮明な映像を得る事ができる。
【0036】
図10は本発明の産業資材シートをドームに用いた背面映写システムの一例を示すものである。産業資材シートとして、ドーム材料として求められる難燃基準及び不燃基準を満たし、且つ充分な強度や耐久性を有した光拡散透過性シートを用いる。光拡散透過性シート(3)は内膜として映写用のドームを構成し、その外側に外膜として遮光性の産業資材シート(7)を用いたドームを有する2層構造となっており、映像投映装置(4)は内幕と外膜の間に配置されている。遮光性の外膜を配することで、昼間でも投映された映像をドーム内部で観賞することができる。大面積に同時に投映する場合には、複数の映像投映装置を配置すれば良い。また、図11の様に1層のドーム構造物として、映像投映装置(4)をドーム内部に配置することで、ドームの外側にむけて映像を表示する産業資材構造物とすることもできる。これら映写用のドームにおいては全体を本発明の産業資材シートによって構成してもよく、一部のみに本発明の産業資材シートを用いても良い。ドーム状の産業資材構造物においては光拡散透過性シート(3)が曲面状に設置されているため、一つの映像投映装置(4)から投映された映像の部分によって光拡散透過性シート(3)に投映される角度が異なり、また、複数の観察者が異なる位置から観察する場合に、それぞれが異なる角度から同じ映像を観察することになるが、本発明の産業資材構造物は投映する角度や観察する角度に係わり無く、鮮明な映像を得ることができる。
【0037】
図12は本発明の産業資材シートを看板に用いた背面映写システムの一例を示すものである。産業資材シートとして、防火地域内の看板材料として求められる不燃基準を満たしており、かつ編織布を含むため充分な強度や耐久性を有した光拡散透過性シートを用いる。下部に配置した映像投映装置から鏡(5)に反射させて、表示部に展張された光拡散透過性シート(3)に投映する。通常の内照式看板とは異なり、任意の静止画や動画を逐次投映することが可能となり、看板、ディスプレイ、案内板など、多目的な表示システムとして活用範囲を大きく拡げることができる。看板の形状も、天井の場合同様、平面状に限らず、曲面を有する立体的な形状であっても良く、映像投映角度や観察者の観る角度に係わりなく鮮明な映像を得る事ができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
以下の実施例および比較例において、編織布として下記の基布を用いた。基布の寸法は全てたて(経糸方向)150cm×よこ(緯糸方向)150cmとした。
(基布1)
フィラメント直径9μm/750dtexの
ガラス繊維(naおよびnb:1.556)を用いたガラス繊維平織り布
織密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
精練(ヒートクリーニング)
シランカップリング処理 メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウ
コーニング社製Z6030)
(基布2)
ナイロン333dtexマルチフィラメント(na:1.578、nb:1.522)
を用いた平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
(基布3)
ポリプロピレン278dtexマルチフィラメント
(na:1.530、nb:1.496)を用いた平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
(基布4)
フィラメント直径9μm/750dtexで基布1とは屈折率の異なるガラス繊維
(naおよびnb:1.524)を用いたガラス繊維平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
精練(ヒートクリーニング)
シランカップリング処理 メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウ
コーニング社製Z6030)
【0040】
実施例及び比較例で作成した産業資材シートについて光天井モデルを作製して以下の評価を行った。光天井に用いた産業資材シートのサイズはたて1.5m×よこ1.5m、であり、産業資材シートは平面施工、及び緩やかな曲面施工の2タイプを作製し、背面に30ワット40型の蛍光灯4本を均等に配置した。また映像投映装置として液晶式ビデオプロジェクター(セイコーエプソン(株)社製EMP−400W)を使用した。
<背面映写の輝度均一性及び斜め方向からの視認性>
たて1.5m×よこ1.5mの産業資材シート(3)を、図13(a)の様に天井に平
面施工しその上方1mの位置に映像投映装置(4)としてビデオプロジェクターを配し
産業資材シートの中心に向けて垂直に映写した。映写された映像について、下方から、
シートの面に対して垂直の角度、及び面に対して15度の角度で5m離れた位置から観
察し、以下の基準で評価した。次いで、図13(b)の様な曲面施工についても、同様
に評価した。なお、図13(a)及び(b)において、蛍光灯の表現は省略した。
1:映像中心部と映像周辺部の輝度差がほとんど無く、垂直方向からの観察に対して
15度の角度で5m離れた位置からの観察においても輝度の低下が少なく、鮮明
な映像が得られる
2:明らかに映像中心部と映像周辺部の輝度差があり、15度の角度で5m離れた位
置からの観察においては垂直方向からの観察に比べて輝度が低下した
3:映像中心部と映像周辺部の輝度差は少なく、垂直方向からと15度の角度で5m
離れた位置からの観察における輝度にも大きな差はないが、全体的に輝度やコン
トラストが低く映像が不鮮明である
<背面映写に対する延伸フィラメントの陰影>
産業資材シートの上方に配置したビデオプロジェクターからの映写を、産業資材シート
下方から観察したときの、延伸フィラメントによる陰影の有無を以下の様に評価した。
1:延伸フィラメントの陰影がほとんど視認できない
2:延伸フィラメントの陰影により映像の鮮明さが阻害される
<映写スクリーン機能>
図14のように産業資材シート(3)と映像投映装置(4)としてビデオプロジェクタ
ーを配置し、ビデオプロジェクター側(前面投映)およびビデオプロジェクターとは反
対側からそれぞれ観察し、前面および背面からの投映に対する映写スクリーンとしての
機能を、映像の鮮明さ、発色性、輝度などの観点から以下の様に評価した。
1:前面および背面からの投映に対する映写スクリーンとして優れている
2:前面からの投映に対する映写スクリーンとして使用可能だが、
背面からの映写には不向きである
3:前面投映・背面投映ともに映写スクリーンとしては用いる事ができない
<可視光透過率>
産業資材シートの可視光透過率を、分光側色計CM−3600d(コニカミノルタ
(株)製)を使用し、JISZ8722に従って測定した。
<引張強度>
産業資材シートから基布の糸目に沿って経糸方向30cm、緯糸方向3cmの短冊(経
方向試料)、経糸方向3cm、幅方向30cmの短冊(緯方向試料)をそれぞれ採取し
JISL1096ストリップ法により引張試験を行い、破断強さ(N/3cm)を求め
た。
<燃焼試験>(ASTM−E1354:コーンカロリーメーター試験法)
輻射電気ヒーターによる50kW/m2の輻射熱を産業資材構造物に20分間照射し、
この発熱性試験において、20分間の総発熱量と発熱速度を測定し、試験後の膜材外観
を観察した。
(a)総発熱量:8MJ/m2以下のものを適合とした。
(b)発熱速度:10秒以上継続して200kW/m2を超えないものを適合とした。
(c)外観観察:直径0.5mmを超えるピンホール陥没痕の発生がないものを適合と
した。
【0041】
[実施例1]
下記配合1の熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し、未硬化の樹脂組成物液1を得た。また、下記配合2の光拡散性物質からなる粒子を含有する熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し、未硬化の樹脂組成物液2を得た。得られた樹脂組成物液1をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布1を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布1に樹脂組成物液1を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布1を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液1を掻き落とし、窒素置換したオーブン内で100℃×30分加熱硬化することで、ディップ加工により、基布1の両面に下記配合1からなる可撓性樹脂を積層したシートを得た。次に、厚さ50μm、たて150cm×よこ150cmのポリエステルフィルムを用意し、その1面上に樹脂組成物液2を0.2mmのクリアランスでコートし、間に空気が入らないよう注意して、先に作成したシートに重ねあわせ、窒素置換したオーブン内で80℃×30分加熱し、さらに100℃×10分加熱して樹脂を固化してからポリエステルフィルムをはがして、光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を形成し、産業資材シートを得た。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.592、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.036(n1>na=nb)であった。
<配合1>熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物
ビニルエステル樹脂 100質量部
(日本ユピカ(株)製 商品名:ネオポール8319)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
<配合2>光拡散性物質からなる粒子を含有する熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物
ビニルエステル樹脂 100質量部
(日本ユピカ(株)製 商品名:ネオポール8319)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(光拡散性物質からなる粒子) 20質量部
(積水化成品工業(株)製:MBX−5:平均粒子径5μm:アスペクト比1.0)
得られた産業資材シートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例1の産業資材シートは、表裏に構成上の差があるため、配合2の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0042】
[実施例2]
下記配合3の熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し、未硬化の樹脂組成物液3を得た。また、下記配合4の光拡散性物質からなる粒子を含有する熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し、未硬化の樹脂組成物液4を得た。得られた樹脂組成物液3をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布2を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布2に樹脂組成物液3を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布2を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、窒素置換したオーブン内で100℃×30分加熱硬化することで、ディップ加工により基布2の両面に下記配合3からなる可撓性樹脂を積層したシートを得た。次に、厚さ50μm、たて150cm×よこ150cmのポリエステルフィルムを用意し、その1面上に樹脂組成物液4を0.2mmのクリアランスでコートし、間に空気が入らないよう注意して、先に作成したシートに重ねあわせ、窒素置換したオーブン内で80℃×30分加熱し、さらに100℃×10分加熱して樹脂を固化してからポリエステルフィルムをはがして、光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を形成し、本発明の産業資材シートを得た。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.554であり、基布2のナイロン繊維の延伸方向の屈折率naとの差の絶対値が0.024(n1<na)、延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値は0.032(n1>nb)であった。
<配合3>熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物
ビニルエステル樹脂 100質量部
(昭和高分子(株)製SSP50−C06)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
<配合4>光拡散性物質からなる粒子を含有する熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物
ビニルエステル樹脂 100質量部
(昭和高分子(株)製SSP50−C06)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
酸化チタン粒子(光拡散性物質からなる粒子) 0.2質量部
(平均粒子径0.4μm:アスペクト比1.0〜4.0の不定形粒子)
得られた産業資材シートを光天井に施工して、各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例2の産業資材シートは表裏に構成上の差があるため、配合4の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0043】
[実施例3]
基布3を用いた以外は実施例2と同様に産業資材シートを作成した。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.554であり、基布を構成するポリプロピレン繊維の延伸方向の屈折率naとの差の絶対値が0.024(n1>n21)、延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値は0.058(n1>n22)であった。得られた産業資材シートを光天井に施工して、各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例3の産業資材シートは表裏に構成上の差があるため、配合4の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0044】
[実施例4]
下記配合5の軟質塩ビ樹脂組成物を20分間混合撹拌してから30分静置して脱泡し樹脂組成物液5を得た。また、下記配合6の光拡散性物質からなる粒子を含有する軟質塩ビ樹脂組成物を20分間混合撹拌してから30分静置して脱泡し樹脂組成物液6を得た。得られた樹脂組成物液5をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布4を広げて浸漬し、引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、基布4に樹脂組成物液5を完全に含浸させた。次いで、オーブン内で160℃×2分加熱して樹脂をゲル化することで、ディップ加工により基布4の両面に配合5の可撓性樹脂を積層したシートを得た。次に、得られたシートの1面上に樹脂組成物液6を0.2mmのクリアランスでコートし、オーブン内で160℃×1分加熱し、さらに180℃×2分加熱してキュアーした。可撓性樹脂の屈折率n1は1.548、基布4のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.024(n1>na=nb)であった。次いで、表裏両面に添加剤移行防止層と接着・保護層からなる保護層を設け、両面の保護層上に更に光触媒層を設けた。添加剤移行防止層は下記配合7からなる加工液をグラビヤコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却して形成した。接着・保護層は、下記配合8からなる加工液をグラビヤコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して形成した。光触媒層は下記配合9からなる加工液をグラビヤコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して形成した。得られた添加剤移行防止層は5g/m2、接着・保護層は1.5g/m2、光触媒防汚層は1.5g/m2であった。
<配合5>軟質塩ビ樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 30質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 40質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
<配合6>光拡散性物質からなる粒子を含有する軟質塩ビ樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 30質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 40質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(光拡散性物質からなる粒子) 30質量部
(積水化成品工業(株)製:MBX−5:平均粒子径5μm:アスペクト比1.0)
<配合7>添加剤移行防止層組成
ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂 20質量部
(商標:カイナー7201:エルフ・アトケム・ジャパン(株))
MEK(溶剤) 80質量部
<配合8>接着・保護層処理液組成
シリコン含有量3mol%のアクリルシリコン樹脂を8質量%(固形分)含有する
エタノール−酢酸エチル(50/50質量比)溶液 100質量部
メチルシリケートMS51(コルコート(株))の20%エタノール溶液
(ポリシロキサン) 8質量部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤 )1質量部
<配合9>光触媒層処理液組成
酸化チタン含有量10質量%に相当する硝酸酸性酸化チタンゾルを分散させた
水−エタノール(50/50質量比)溶液 50質量部
酸化珪素含有量10質量%に相当する硝酸酸性シリカゾルを分散させた
水−エタノール(50/50質量比)溶液 50質量部
得られた産業資材シートを光天井に施工して、各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例4の産業資材シートは表裏に構成上の差があるため、配合6の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0045】
実施例1〜4の産業資材シートは、可視光透光率が高く、産業資材として充分な強度を有し、平面施工、曲面施工ともに背面からの映写に対して、映像中心部と映像周辺部の輝度差がほとんどみられず、斜め15度からの観察でも垂直方向から観察したのと同等の輝度の鮮明な映像が得られ、背面から映写した映像を前面から観察した際に延伸フィラメントの陰影はほとんど視認されなかった。また、実施例1および4は燃焼試験の結果不燃性に適合するものであった。
【0046】
[実施例5]
実施例4と同様に調整した樹脂組成物液5をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布4を広げて浸漬し、引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、基布4に樹脂組成物液5を完全に含浸させた。次いで、オーブン内で160℃×2分加熱して樹脂をゲル化することで、ディップ加工により基布4の両面に配合5の可撓性樹脂を積層したシートを得た。次いで、前記シートの1面上に樹脂組成物液5を0.1mmのクリアランスでコートし、もう一方の1面上に実施例4と同様に調整した樹脂組成物液6を0.1mmのクリアランスでコートし、オーブン内で160℃×1分加熱し、さらに180℃×2分加熱してキュアーした。可撓性樹脂の屈折率n1は1.548、基布4のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.024(n1>n21=n22)であった。更に、表裏両面の可撓性樹脂層の上に保護層を形成し本発明の産業資材シートを得た。保護層は下記配合10のアクリル系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビアコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥して形成した。得られた保護層は表裏面とも5g/m2であった。
<配合10>アクリル系樹脂組成
アクリル系樹脂 20質量部
(三菱レイヨン(株)製:アクリプレン ペレットHBS001)
希釈溶剤(トルエン−MEK 50:50質量比) 80質量部
得られた産業資材シートを光天井に施工して、各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例5の産業資材シートは表裏に構成上の差があるため、配合6の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0047】
[実施例6]
下記配合11の光拡散性物質からなる粒子含有軟質塩ビ樹脂組成物を20分間混合撹拌してから30分静置して脱泡し樹脂組成物液11を得た。得られた樹脂組成物液11をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布2を広げて浸漬し、引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、基布2に樹脂組成物液11を完全に含浸させた。次いで、オーブン内で160℃×2分加熱し、さらに180℃×2分加熱してキュアーして、ディップ加工により基布2の両面に配合11の可撓性樹脂を積層したシートを得た。可撓性樹脂の屈折率n1は1.520、基布2のナイロン繊維の延伸方向の屈折率naとの差の絶対値が0.058(n1<na)、延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値は0.002(n1<nb)であった。更に、表裏両面の可撓性樹脂層の上に保護層を形成し本発明の産業資材シートを得た。保護層は実施例5と同様、配合10のアクリル系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビアコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥して形成した。得られた保護層は表裏面とも5g/m2であった。
<配合11>光拡散性物質からなる粒子を含有する軟質塩ビ樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 120質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(光拡散性物質からなる粒子) 50質量部
(積水化成品工業(株)製:MBX−5:平均粒子径5μm:アスペクト比1.0)
得られた産業資材シートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例6の産業資材シートは、表裏に構成上の差が無いため、映写した映像に関する評価を行う際には、A面B面の区別をせず、一方の面を前面として評価を行った。
【0048】
[実施例7]
配合2の光拡散性物質からなる粒子を含有する熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し、未硬化の樹脂組成物液2を得た。得られた樹脂組成物液2をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布1を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布1に樹脂組成物液2を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布1を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液2を掻き落とし、窒素置換したオーブン内で100℃×30分加熱硬化することで、ディップ加工により、基布1の両面に配合2からなる可撓性樹脂を積層した本発明の産業資材シートを得た。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.592、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.036(n1>na=nb)であった。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例7の産業資材シートは、表裏に構成上の差が無いため、映写した映像に関する評価を行う際には、A面B面の区別をせず、一方の面を前面として評価を行った。
【0049】
実施例5〜7の産業資材シートは、可視光透光率が高く、産業資材として充分な強度を有し、平面施工、曲面施工ともに背面からの映写に対して、映像中心部と映像周辺部の輝度差がほとんどみられず、斜め15度からの観察でも垂直方向から観察したのと同等の輝度の鮮明な映像が得られ、背面から映写した映像を前面から観察した際に延伸フィラメントの陰影はほとんど視認されなかった。また、実施例5および7は燃焼試験の結果不燃性に適合するものであった。
【0050】
[比較例1]
基布1を用いた以外は実施例2と同様に産業資材シートを作成した。可撓性樹脂層の屈折率n1は1.554、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.002(n1<na=nb)であった。得られた産業資材シートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例1の産業資材シートは表裏に構成上の差があるため、配合2の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0051】
[比較例2]
基布4を用いた以外は実施例6と同様に産業資材シートを作成した。可撓性樹脂層の屈折率n1は1.520、基布4のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.004(n1<na=nb)であった。得られた産業資材シートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例2の産業資材シートは、表裏に構成上の差が無いため、映写した映像に関する評価を行う際には、A面B面の区別をせず、一方の面を前面として評価を行った。
【0052】
比較例1および2の産業資材シートは、|n1−na|が0.02未満であり、平面施工、曲面施工ともに背面からの映写に関しては、延伸フィラメントと可撓性樹脂の界面での適度な光拡散が得られず、映像周辺部の輝度が映像中心部の輝度に比べてやや暗くなり、斜め15度から観察した映像は輝度が低く、コントラストの無い不鮮明な映像であった。
【0053】
[比較例3]
実施例2と同様に調整した配合3の樹脂組成物液3をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布1を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布1に樹脂組成物液3を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布1を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、窒素置換したオーブン内で100℃×30分加熱硬化することで、ディップ加工により基布1の両面に配合3からなる可撓性樹脂を積層したシートを得た。次に、厚さ50μm、たて150cm×よこ150cmのポリエステルフィルムを用意し、その1面上に樹脂組成物液3を0.2mmのクリアランスでコートし、間に空気が入らないよう注意して、先に作成したシートに重ねあわせ、窒素置換したオーブン内で80℃×30分加熱し、さらに100℃×10分加熱して樹脂を固化してからポリエステルフィルムをはがして、光拡散性物質からなる粒子を含有しない可撓性樹脂層を形成し、産業資材シートを得た。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.554であり、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.002(n1<na=nb)であった。得られた産業資材シートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例3の産業資材シートは表裏に構成上の差があるため、ディップ後に更に配合3の光拡散性物質からなる粒子を含有しない可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0054】
比較例3の産業資材シートは|n1−na|が0.02未満であり、かつ光拡散性物質からなる粒子を含有しないため、シートでの光拡散がほとんどなく、前面および背面からの投映に対して、映像がほとんど確認できず、映写スクリーンとして用いる事のできないシートであった。特に透光率が高く透視性も高いため、平面施工、曲面施工ともに背面から投映した際に反対側からビデオプロジェクターがはっきり視認できてしまい、照明カバーとしても用いることのできないシートであった。
【0055】
[比較例4]
下記配合12のシリコーンゴム組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し、未硬化の樹脂組成物液12を得た。また、下記配合13の光拡散性物質からなる粒子を含有するシリコーンゴム組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し、未硬化の樹脂組成物液13を得た。得られた樹脂組成物液12をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布4を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布4に樹脂組成物液12を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布4を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、基布4の両面に未硬化の可撓性樹脂12をコートしたシートを得た。次に、厚さ50μm、たて150cm×よこ150cmのポリエステルフィルムを用意し、その1面上に樹脂組成物液13を0.2mmのクリアランスでコートし、間に空気が入らないよう注意して、先に作成したシートに重ねあわせ、オーブン内で80℃×30分加熱し、さらに100℃×10分加熱して樹脂を固化してからポリエステルフィルムをはがして光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を形成し、産業資材シートを得た。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.401、基布4のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.123(n1<na=nb)であった。
<配合12>シリコーンゴム組成物
CY52−110(東レダウコーニングシリコーン(株)社製シリコーンゴム)
A液 50質量部
B液 50質量部
<配合13>光拡散性物質からなる粒子を含有するシリコーンゴム組成物
CY52−110(東レダウコーニングシリコーン(株)社製シリコーンゴム)
A液 50質量部
B液 50質量部
架橋ポリスチレン樹脂粒子 50質量部
(積水化成品工業(株)製:SBX−6:平均粒子径6μm:アスペクト比1.0)
得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例4の産業資材シートは、表裏に構成上の差があるため、配合13の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0056】
比較例4の産業資材シートは、平面施工、曲面施工ともに背面からの投映を前面から観察した際に、映像周辺部と映像中心部の輝度に差はなく斜め15度からの観察でも垂直方向から観察したのと輝度は同程度であったが、延伸フィラメントと可撓性樹脂の屈折率差が大きく、その界面での光の拡散が過剰であり、延伸フィラメントの陰影が視認され、全体的に映像の鮮明さが阻害されており、背面映写用のスクリーンとしては不向きなシートであった。
【0057】
[比較例5]
厚さ50μm、たて150cm×よこ150cmのポリエステルフィルムを用意し、その1面上に実施例4と同様に調整した配合5の樹脂組成物液5を0.22mmのクリアランスでコートし、オーブン内で160℃×1分加熱しゲル化させた。次いで、ゲル化した配合5の組成物上に、実施例4と同様に調整した配合6の樹脂組成物液6を0.22mmのクリアランスでコートし、オーブン内で160℃×1分加熱し、さらに180℃×2分加熱してキュアーして、編織布を含まないシートを得た。更に、実施例4と同様に添加剤移行防止層組成、接着・保護層、光触媒層を両面に形成した。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例5のシートは、表裏に構成上の差があるため、配合6の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0058】
比較例5のシートは、平面施工、曲面施工ともに背面からの映写に関しては、編織布を含まないため延伸フィラメントと可撓性樹脂の界面での適度な光拡散が得られず、映像周辺部の輝度が映像中心部の輝度に比べてやや暗くなった。また、斜め15度から観察した映像は輝度が低く、コントラストの無い不鮮明な映像であった。さらに、編織布によって補強されていないため、産業資材シートとして用いるには強度が不充分なものであった。
【0059】
[比較例6]
実施例1と同様に調整した配合1の樹脂組成物液1をたて150cm×よこ150cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布1を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布1に樹脂組成物液1を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布1を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、窒素置換したオーブン内で100℃×30分加熱硬化することで、ディップ加工により、基布1の両面に配合1からなる可撓性樹脂を積層したシートを得た。次に、厚さ50μm、たて150cm×よこ150cmのポリエステルフィルムを用意し、その1面上に樹脂組成物液1を0.2mmのクリアランスでコートし、空気が入らないよう注意して先に作成したシートに重ねあわせ、窒素置換したオーブン内で80℃×30分加熱し、さらに100℃×10分加熱して樹脂を固化してからポリエステルフィルムをはがして、可撓性樹脂層に光拡散性物質からなる粒子を含有しない産業資材シートを得た。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.592、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.036(n1>na=nb)であった。得られたシートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例6の産業資材シートは表裏に構成上の差があるため、ディップ後に更に配合1の光拡散性物質からなる粒子を含有しない可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0060】
比較例6の産業資材シートは、延伸フィラメントと可撓性樹脂の界面での光拡散は認められるものの、光拡散性物質からなる粒子を含む可撓性樹脂層を有さず、前面および背面からの投映に対して、いずれもコントラストの低い不鮮明な映像しか表示することができず、映写スクリーンとして用いる事のできないシートであった。
【0061】
[比較例7]
配合5の代わりに下記配合14の光拡散性物質からなる粒子を含有する軟質塩ビ樹脂組成物を、配合6の代わりに下記配合15の光拡散性物質からなる粒子を含有する軟質塩ビ樹脂組成物を、それぞれ用いた以外は実施例4と同様に産業資材シートを作成した。可撓性樹脂の屈折率n1は1.548、基布4のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.024(n1>n21=n22)であった。
<配合14>光拡散性物質からなる粒子を含有する軟質塩ビ樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 30質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 40質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
酸化チタン粒子(光拡散性物質からなる粒子) 2質量部
(平均粒子径0.4μm:アスペクト比1.0〜4.0の不定形粒子)
<配合15>光拡散性物質からなる粒子を含有する軟質塩ビ樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 30質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 40質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(光拡散性物質からなる粒子) 120質量部
(積水化成品工業(株)製:MBX−5:平均粒子径5μm:アスペクト比1.0)
得られた産業資材シートを光天井に施工して各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例7の産業資材シートは、表裏に構成上の差があるため、配合15の光拡散性物質からなる粒子を含有する可撓性樹脂層を積層した側をA面、その反対面をB面とし、映写した映像に関する評価を行う際には、A面を前面とした場合、B面を前面とした場合それぞれについて評価した。
【0062】
比較例7の産業資材シートは前面からの映写に対しては鮮明な映像を投映することができるが、可視光透過率が低いため、平面施工、曲面施工ともに背面からの映写に対しては不鮮明で暗い映像しか投映することができず、背面映写スクリーンとして用いるには不向きなシートであった。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の背面映写可能な産業資材シートは、前面及び背面から投影する映写スクリーンとしての機能を有する光拡散透過性シートであり、且つ産業資材シートとして充分な強度と耐久性を有しているため、これを用いた天井、壁、内照看板、ドーム、テント、シートシャッター、間仕切りなど、さまざまな産業資材構造物に対して背面投映可能なシステムを構築することができ、更に映像を斜め方向から見た際の認識性や曲面部への投映性にも優れるため、歩行者の自然な視線に対する認識性の高い背面投映システムが得られる。特に不燃特性を有する本発明の産業資材シートを、天井材、壁材、内照看板材、ドーム材として用いた産業資材構造物は、高層ホテル、インテリジェントビル、ステーションビル、エアポート、駅舎構内、地下街通路、大型商業施設、アミューズメント施設、冠婚葬祭式場、総合病院、及び各種公共施設などに広く利用でき、照明機能と兼用してデジタル画像や動画を投映することで情報伝達にエンターティメント性を附帯させたり、アミューズメント分野においては演出効果が飛躍的に向上するなど様々な活用が期待できる。またさらに迅速な情報提供事例として、災害時の緊急避難誘導としての利用も期待される。
【符号の説明】
【0066】
1:編織布
1−a:延伸フィラメントα
1−b:延伸フィラメントβ
2:可撓性樹脂層
2−1:光拡散性物質からなる粒子を含まない可撓性樹脂層
2−2:光拡散性物質からなる粒子を含む可撓性樹脂層
3:産業資材シート(光拡散透過性シート)
4:映像投映装置
5:鏡
6:照明装置
7:遮光性シート
8:ハウジング
9:地下街の店舗
a:延伸フィラメントの延伸方向
b:延伸フィラメントの延伸垂直方向
Lv:光拡散透過シートに垂直に入射した光
Ls:光拡散透過シートに斜めに入射した光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を積層してなる複合基材を含む、可視光透過率(JISZ8722)40〜90%の光拡散透過性シートであって、前記可撓性樹脂層の少なくとも一層が、光拡散性物質からなる粒子を含み、かつ、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たす光学特性を有することを特徴とする、背面映写可能な産業資材シート。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
【請求項2】
前記光拡散性物質からなる粒子が、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズおよび樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種である、請求項1に記載の背面映写可能な産業資材シート。
【請求項3】
前記光拡散透過性シートにおいて、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない不燃特性を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の背面映写可能な産業資材シート。
【請求項4】
延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を積層してなる複合基材を含み、可視光透過率(JISZ8722)40〜90%を有する光拡散透過性シートの背面に、映像投映装置を配置してなる産業資材構造物であって、前記可撓性樹脂層の少なくとも一層が、光拡散性物質からなる粒子を含み、かつ、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たす光学特性を有することを特徴とする、産業資材構造物の背面映写システム。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
【請求項5】
前記光拡散性物質からなる粒子が、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズおよび樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種である、請求項4に記載の背面映写システム。
【請求項6】
前記産業資材構造物が、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない不燃特性を有する天井である、請求項4または5に記載の背面映写システム。
【請求項7】
前記産業資材構造物が、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない不燃特性を有する壁である、請求項4または5に記載の背面映写システム。
【請求項8】
前記産業資材構造物が、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない不燃特性を有するドームである、請求項4または5に記載の背面映写システム。
【請求項9】
前記産業資材構造物が、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない不燃特性を有する看板である、請求項4または5に記載の背面映写システム。
【請求項1】
延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を積層してなる複合基材を含む、可視光透過率(JISZ8722)40〜90%の光拡散透過性シートであって、前記可撓性樹脂層の少なくとも一層が、光拡散性物質からなる粒子を含み、かつ、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たす光学特性を有することを特徴とする、背面映写可能な産業資材シート。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
【請求項2】
前記光拡散性物質からなる粒子が、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズおよび樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種である、請求項1に記載の背面映写可能な産業資材シート。
【請求項3】
前記光拡散透過性シートにおいて、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない不燃特性を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の背面映写可能な産業資材シート。
【請求項4】
延伸フィラメントを含んでなる編織布の片面以上に、可撓性樹脂層を積層してなる複合基材を含み、可視光透過率(JISZ8722)40〜90%を有する光拡散透過性シートの背面に、映像投映装置を配置してなる産業資材構造物であって、前記可撓性樹脂層の少なくとも一層が、光拡散性物質からなる粒子を含み、かつ、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂層の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たす光学特性を有することを特徴とする、産業資材構造物の背面映写システム。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
【請求項5】
前記光拡散性物質からなる粒子が、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズ、ガラス粒子、樹脂ビーズおよび樹脂粒子から選ばれた少なくとも一種である、請求項4に記載の背面映写システム。
【請求項6】
前記産業資材構造物が、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない不燃特性を有する天井である、請求項4または5に記載の背面映写システム。
【請求項7】
前記産業資材構造物が、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない不燃特性を有する壁である、請求項4または5に記載の背面映写システム。
【請求項8】
前記産業資材構造物が、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない不燃特性を有するドームである、請求項4または5に記載の背面映写システム。
【請求項9】
前記産業資材構造物が、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記光拡散透過性シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えない不燃特性を有する看板である、請求項4または5に記載の背面映写システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−191129(P2010−191129A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34820(P2009−34820)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]