説明

胚性幹(ES)細胞系での組織モデリング

胚性幹(ES)細胞由来組織モデリング系を提供する。具体的には、目的の組織を構成する細胞種を、分化中のES細胞の一個の培養株中で並行薬物選択することによる、組織のde novo作製のための系や、このような系の移植及び薬物開発における使用を解説する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、概略的には、組織再生で用いるのに適した胚性及び胚性幹細胞由来細胞種の使用と、薬物スクリーニングなど、治療上以外の用途とに関する。
【0002】
背景技術
前駆細胞は医学研究において中心的な関心事となった。体内の数多くの組織は、老化したり、傷害又は疾患で損傷した細胞に替わることのできる前駆体のバックアップの蓄えを有する。再生医療での使用のために数多くの様々な組織の前駆体を単離するために、相当な努力が昨今、なされてきた。比較的に均質な細胞集団が望ましい場合に、幹細胞集団から、使用に向けて分化細胞を生じさせるための供給源及びシステムが、例えば米国特許出願US2003/0040111号に要約されている。哺乳動物の多能及び多分化能胚性幹(ES)細胞や、胚性生殖(EG)細胞は、心筋細胞を含む多種の細胞種に分化するように、培養中に誘導することができる。しかしながら、ES細胞由来心筋細胞は、分化後の胚様体(EB)の全細胞のうちで僅かに1%乃至5%しか、構成しない。その大部分は、腫瘍形成の可能性が高い未分化ES細胞から成る。
【0003】
最近、薬物耐性カセットを作動させるプロモータという、組織特異的遺伝子調節配列の使用に基づく胚性幹(ES)細胞の分化中の培養株から特定の細胞種を遺伝子選抜する方法が解説された;例えば国際出願WO02/051987を参照されたい。このように、対応するベクタを持つトランスジェニックESクローンから発生した特定の分化細胞種を、発生してくる他の細胞種や未分化のES細胞を根絶させる対応する薬物を利用することにより、選抜することができた。今日までのところ、この方法は、分化中のES細胞の培養株から心臓、神経及びインシュリン分泌細胞を高度に精製するために最も特異的かつ効率的であるとして立証されている。
【0004】
しかしながら、幹細胞を治療に用いる際の大きな課題は、各患者の治療に必要な特定の組織種へ成長及び分化していくように制御することである。
【0005】
このように、ヒトへの投与に適した分化細胞及び組織の集団を作製するための新しいアプローチが必要である。前記の技術的問題の解決は、請求の範囲で特徴付けられ、また以下に更に解説される実施態様を提供することにより、達成される。
【0006】
発明の概要
すべての組織が、支持細胞種(例えば線維芽細胞、間質細胞、内皮細胞、グリア細胞等)とあいまって、ある組織の三次元構成的構造、その栄養上の機能、及び、生物全体の他の組織系との相互接続を維持するために重要なその機能上の役割を決定する主たる特異的細胞種から構成されていることが公知である。
【0007】
本発明は、成体生物を構成する組織の大半のレイアウトは、初期胚の発生時という、対応する細胞種が分化中に出現して特定のシグナル伝達分子及び発生してくる受容体に従った相互接続を形成していくときに確立されるという説に基づくものである。このように、ある特定の組織種に寄与する様々な細胞種を、同じ分化中のES細胞培養株から遺伝学的に選抜する場合、これらは、それらの天然の、遺伝学的に決定された特定の筋道に従って相互接続及び構成を形成しなければならない、と予測することができる。このような場合、遺伝子改変されたES細胞の分化中の株一個のうちで、目的の細胞を高レベルで精製することが、in vitroでES細胞の分化経過において組織様構造を「自己集合」させるための主たる前提条件である。
【0008】
本発明に従い、ES細胞由来心筋細胞を胚性線維芽細胞と共培養及び共移植すると、心臓組織様の形成がin vitroにおいて起き、マウスの寒冷梗塞心に注射した場合には移植結果を著しく向上させるということを、驚くべきことに示すことができた。
【0009】
このように、ある局面では、本発明は、胚性幹(ES)細胞由来の第一細胞種を少なくとも1つの胚性第二細胞種の存在下で培養するステップと;前記少なくとも2つの細胞種を統合及び整列させて組織又は組織様構造にするステップとを含み、但しこの場合、好ましくは、前記ES細胞由来の第一細胞種のES細胞が、前記第一細胞種に特異的な第一細胞種特異的調節配列に作動的に連結された選択マーカを含む、組織又は組織様構造をモデリング及び/又は得る方法に関する。従って、効率の高い薬物選択系を用いると、集中的な心筋細胞増殖が起きるために最終的な収量が効果的に上昇(5乃至10倍)し、移植後の腫瘍発生の危険性が取るに足らぬレベルまで低下する。
【0010】
上記に従い、本発明は概略的には、
(a)以前に損傷している組織区域の少なくとも一部分に、分化が惹起されたES細胞由来細胞種と胚性支持細胞との共培養株を含む細胞性接種原を導入する、又は、分化組織を導入する、ステップと:
(b)前記導入された細胞性接種原を、以前に損傷している前記組織区域内に配置された生存細胞又は組織として、in situに移植するステップであって、前記移植の結果、前記哺乳動物の組織及び/又は器官機能が向上する、ステップと
を含む、哺乳動物における組織修復及び/器官機能を向上させる方法に関する。
【0011】
前記支持細胞は好ましくは線維芽細胞及び/又は内皮細胞である。
【0012】
具体的には、心筋梗塞後の哺乳動物における心機能を向上させる方法が提供され、前記方法は:
(a)同じ心臓特異的プロモータの制御下にある耐性遺伝子及びレポータ遺伝子を含む未分化哺乳動物胚性幹(ES)細胞を、in vitroで、前記耐性遺伝子に対する選択的作用薬を含有する培地中で、前記ES細胞の心筋細胞への分化が可能な条件下で、培養するステップと;
(b)前記の分化心筋細胞を単離する、及び/又は、分化しなかった細胞を、選択的には、分化の過程で前記心筋細胞から無関係の細胞種に向かって分化中の細胞と一緒に、除去する、ステップと;
(c)次に、前記心筋細胞を、胚性又はES細胞由来線維芽細胞及び又は内皮細胞と共に、心臓組織の以前に梗塞した区域の少なくとも一部分に共移植するステップと;
(d)前記導入された細胞性接種原を、前記心臓組織において以前に梗塞した区域内に配置された生存細胞として、in situに移植するステップであって、前記移植の結果、前記哺乳動物の心機能が向上する、ステップと
を含む。
【0013】
実際の移植のためには、当該細胞の共移植は同時に行われなくてもよく、いずれを先にして順に行われてよいことは理解されねばならない。
【0014】
胚性細胞が、ES細胞由来細胞種が特定の組織に発達していく支援原として必ずしも入手できる訳ではなく、あるいは、特定の胚性細胞はこの目的に適していないかも知れない。更に、例えば細胞の発生状態が異なるなど、これらの細胞の使用が適していない他の理由が存在するかも知れない。
【0015】
そのような障害の可能性を克服するために、本発明では、ES細胞を由来とする更なる細胞種を提供することも考察した。このように、ES細胞由来組織モデリング系が開発された。提案されたアプローチの核となるものは、目的の組織を構成する細胞種の、分化中のES細胞の一個の培養株の中からの並行薬物選択である。 このようなアプローチの利点の一つは、精製後の細胞種同士の間の相互作用が、無関係の細胞から解放された直後に、「クロストーク」シグナル伝達のための天然の筋道を用いて「天然の」方法でプロセッシングされ、産物として、生存力ある組織様構造を形成する点である。本発明では、原則的には、このようなアプローチの多種の変更例を用いることができる:
a)多重トランスジェニックESクローンに、所望の組織種を構成する細胞種に応じて、特異的プロモータで惹起される薬物選択カセットを持つ特定の数のベクタを安定にトランスフェクトする。このような変更例では、出現する全ての細胞種は、一個の共通のES細胞クローンの先祖を起源とし、その結果の個々の細胞成分間の比は、それらの各々の相対的分化率に依存する;図2A及び3Bを参照されたい。
b)キメラ胚様体(EB)を用いるアプローチでは、数多くのトランスジェニックESクローンが生じるが、この場合、各一個のクローンは、細胞種特異的プロモータのうちの一つにより惹起される薬物耐性カセットを持つベクタを一つのみ、持つ。組織モデリングのためには、ES細胞集合体(EB)を形成させるために分化の初期段階で、関係するクローンを混合しなければならず(「ハンギング・ドロップ」又は「大量培養」)、この場合、薬物選択後、現れる細胞種は、異なる対応するES細胞クローンを起源とし、細胞成分間の最終的な比も、異なるES細胞株間の最初の比に依存し、またこれにより制御することができる;図2B及び3Cを参照されたい。
【0016】
このように、更なる局面では、本発明は、以下のステップ:
(a)一つ以上の多能又は多分化能細胞に、少なくとも1つの選択マーカに作動的に連結された第一及び第二細胞種特異的調節配列を含む組換え核酸分子をトランスフェクトするステップであって、前記第二細胞種が、前記第一細胞種とは異なる、ステップと、
(b)前記細胞の分化が可能な条件下で前記細胞を培養するステップと、
(c)少なくとも2つの分化細胞種の細胞を単離する、及び/又は、分化しなかった細胞を、選択的には、分化の過程で、選択マーカを活性化する目的の細胞種からは無関係の細胞種に向かって分化中の細胞と一緒に、除去する、ステップと;
を含む、組織又は組織様構造をモデリングする及び/又は得る方法に関する。
【0017】
更にこの方法では胚性幹(ES)細胞が好ましいが、胚性生殖(EG)細胞を用いてもよい。同様に、本発明は、本発明の方法により入手可能な、少なくとも2つの細胞種に分化することのできる細胞に関する。同様に、本発明の方法により入手可能な、少なくとも2つの異なる細胞種から成る細胞集合体や、本発明の方法により入手可能な細胞又は細胞集合体を含む組織も、これらの細胞、細胞集合体又は組織を含む器官、インプラント及び移植片と同様に、包含される。
【0018】
組織置換治療におけるヒトES細胞の使用の見込みでは、ES細胞由来分化細胞種の高レベルの精製という問題が、将来的なES細胞ベースの移植学の要の一つである。治療目的に選ばれるES細胞由来の特定の細胞種に求められる高い標準及び基準純度は未だ尚、確立されていない。今日までのところ、マウス・モデルで、遺伝子改変されたES細胞を由来とする分化細胞種の薬物選択に基づくアプローチが、最終的な産物中に未分化ES細胞がないという点や、レシピエント動物での胚性癌の発生率が低いという点で、最も効果的なものだということが立証されている。純度の問題の他にも、レシピエント組織、特に損傷した組織への移植細胞の移植術の質は、(線維芽細胞、間質細胞、内皮細胞、グリア細胞等を接続する)支持細胞に大きく依存するであろう。これらの重要な組織要素はすべて、レシピエントの損傷した組織や主な細胞種では問題があり、またこのことのために、移植細胞を、特にその初期段階で移植するプロセスにとって更なる問題が生じる。このように、ヒトES細胞分化中の組織モデリングは、移植実現性の高い生存力ある組織原型を得る今日的な方法となった。
【0019】
従って、本発明はまた、本発明の方法により入手可能な細胞、細胞集合体、組織又は器官を、損傷した組織又は器官の治療の必要のある対象にインプラントする又は移植するステップを含む、前記対象において損傷した組織又は器官を治療する方法に関する。ある具体的な局面では、本発明は、心筋梗塞後の哺乳動物の心機能を向上させる方法に関し、前記方法は:
(a)哺乳動物胚性幹(ES)細胞に、心臓、線維芽細胞及び選択的には内皮細胞特異的調節配列の制御下にある耐性遺伝子を含み、選択的には前記同じ特異的調節配列の下にある一つ以上のレポータも任意に含む、組換え核酸分子をトランスフェクトするステップと;
(b)前記ES細胞を、in vitroで、耐性遺伝子に対する選択的物質を含有する培地で、前記ES細胞の心筋細胞、線維芽細胞及び選択的には内皮細胞への分化が可能な条件下で培養するステップと;
(c)前記の分化心筋細胞、線維芽細胞及び選択的には内皮細胞から、分化しなかった細胞を、任意的には、無関係の細胞種に向かって分化中の細胞と一緒に、除去するステップと;
(d)任意のステップとして、前記分化中の心筋細胞、線維芽細胞及び選択的には内皮細胞を心臓様の組織に整列させるステップと;
(e)次に、前記心筋細胞、線維芽細胞及び選択的には内皮細胞又は前記組織を、心臓組織の以前に梗塞した区域の少なくとも一部分に共移植するステップと;
(f)前記導入された細胞又は組織を、心臓組織において前記以前に梗塞した区域内に配置された生存細胞としてin situに移植するステップであって、前記移植の結果、前記哺乳動物の心機能が向上する、ステップと
を含む。
【0020】
本発明の方法で用いられる通りの組換え核酸分子を含むベクタ及びベクタの組成物も、このようなベクタ及びベクタ組成物を含む細胞と同様に、本発明の主題である。
【0021】
マウスES細胞などを由来とする様々な種類の組織のin vitroモデリングは、(i)胚発生中の組織形成の初期段階に関するin vitro研究や、このプロセスに対する様々な種類の因子及び化学物質の影響に関するin vitro研究、において、様々な用途を有する。後者は、提案されたアプローチを、(ii)in vitroハイスルプット胚-毒理学検定にとって価値あるものにし、この検定では、多種の物質を、細胞種特異的分化へのそれらの影響能について検査できるだけでなく、特化した組織種における分化細胞の「自己集合」のプロセスを示させることができる。更に、in vitroでのこのような組織様構造の形成は、単体のときの相対物に比較して向上した機能性及び生存率を獲得する。このように、本発明の方法により、(iii)in vitro での高スループットの薬理学的及び薬物動態学的検定法のための良好な基礎が提供され、組織ターゲティング効果が期待される様々な化合物を、組織レベルに対するそれらの直接的機能上効果及び副作用について検査することができるであろう。上述の連坐のすべてでは、科学的及びスクリーニング目的の両方にとって高価かつ倫理上の議論を呼ぶ動物消費の大幅な減少が想定される。マウスES細胞((i)、(ii)、(iii))に関する上述の全項目は、ヒトES細胞からの組織モデリングに完全に応用可能であり、と同時にこれらは、胚研究や、ヒトモデルでのハイスルプット・スクリーニングに提供するのに事実上唯一可能な選択肢であることを強調しておく。
【0022】
このような実施態様の場合、本発明の分化中の細胞を含有するチップ又はアレイの使用が特に適切である。従って、更に本発明は、固体の支持体と、本発明に従って調製された、それに付着させた又はそれから懸架させた細胞、細胞集合体又は組織とを含むアレイにも関し、特に微小電極アレイ(MEA)が関係する。この関係では、このようなアレイを分析するために適合された装置も、本発明の包含するところである。
【0023】
従って、更に本発明は、:
(a)本発明に従って調製された細胞、細胞集合体、組織又は器官を含む検査試料を、検査物質に接触させるステップと;
(b)コントロール試料に比較したときの、前記検査試料中の表現型上の応答を判定するステップであって、コントロール試料に比較したときの、前記検査試料中の表現型上の応答の変化は、前記検査物質が、細胞発生及び/又は組織構造形成に対する効果を有することの指標である、ステップと
を含む、細胞発生及び/又は組織構造形成に影響することのできる検査物質を得る及び/又はプロファイリングするための方法に関する。
【0024】
これらの方法は、好ましくはチップ又はアレイ上で行われるとよいが、ここで解説された組織を得る/モデリングする方法のいずれかの方法で適宜、実施され、このとき、前記検査試料を、前記検査物質に、前記細胞又は細胞集合体が前記方法に供される前、供される間、又は供された後に接触させる。これらのスクリーニング法を、薬物を製造する方法、具体的には創傷治癒及び/又は損傷した組織の治癒を支持する薬物を製造する方法、と組み合わせることも、あるいは、精錬してこのような薬物を製造する方法にすることもできる。これらの方法には、例えば、単離された物質を薬学的に許容可能な担体と混合するステップや、適した容器内に、想定される治療的処理のための対応する処方と一緒に梱包するステップを含めてもよい。
【0025】
本発明の全ての方法に関して、これらの方法を行うために有用であり、かつ、言及されたベクタ又はベクタの組成物、アレイ、多能又は多分化能細胞、及び任意の要素として培地、組換え核酸分子、標準的化合物等を含有する、解説されたキットが提供される。
【0026】
本発明の他の実施態様は、以下の解説から明白となるであろう。
【0027】
発明の説明
多種の幹細胞が、再生医療において非常に魅力的な様式となった。これらは培養で増殖させた後、in vitro 又はin situ で、治療に必要な細胞種に分化させることができる。理論に縛られるつもりはないが、適合的な培養及び正の選抜法で作製した分化細胞集団の中には、ヒトの治療における使用にとって最適状態に及ばないものがある、というのが本発明の仮説である。場合によっては、この集団中で未分化の細胞が、細胞のin vivoでの移植又は機能を損なう可能性がある。更に、未分化の細胞は、治療的移植の部位で悪性腫瘍又は他の腫瘍を形成したり、あるいは移植細胞の遊走を起こす可能性を増すことがある。加えて、又は代替的に、ある特定の胚性細胞種を提供及び移植するだけでは、損傷組織などの再構築を達成するには不充分であることがしばしばある。
【0028】
本発明は、移植及び他の目的に特に有用なde novo組織及び器官を提供するためのプロトコルを提供するプロトコルや、提供する方法に関するものである。
【0029】
本発明に基づく一番目の組の実験では、ピューロマイシンで精製された心筋細胞は、共培養において胚性線維芽細胞と統合及び整列を示して組織様構造になることを示すことができた。しかしながら、このような組織様構造が、天然の心臓組織に匹敵するか、あるいは少なくとも充分近いものであるか、そしてそうであれば、in vitro培養条件下で観察される効果がin vivoでも達成可能であるか、という疑問が残った。
【0030】
更なる実験では、ピューロマイシンで選択されたES細胞由来心筋細胞は、実際に、同系胚性線維芽細胞と共移植されたときに、マウスの心臓の寒冷梗塞区域に成功裏に移植させることができることが実証された。これらのES細胞由来心筋細胞は、よく発達した収縮機構を特徴とする様々な心臓亜型の形態を示す。
【0031】
こうして、心筋細胞などのトランスジェニックES細胞由来細胞種の薬物選択及び品質管理の高効率のシステムが確立された。該薬物選択は、細胞種特異的増殖が集中的に起きるため最終的な収量を効果的に増加(5乃至10倍)させ、また、移植後の腫瘍発生の危険性を取るに足らないレベルまで低下させる。更に、ES細胞由来細胞種を、例えば線維芽細胞などの結合組織に属する胚性細胞種と共培養又は共移植することにより、in vitro及びin vivoで天然の組織及び組織様構造を生じさせることができる。
【0032】
本発明の技術は、部分的には、ヒトの治療のための優れた特徴を持つ細胞集団を提供するために、デザインされている。未分化細胞を枯渇させた後は、様々な分化胚性及びES細胞由来細胞種の集団は、より良好な機能上及び移植上の特徴を持つと共に、処理を受けた対象において望ましくない組織構造及び悪性病変を生ずる可能性が低いと予測される。加えて、様々な胚性及びES細胞由来細胞種の細胞集団が組織に発達していくことは、 in vivoでの状況により関係が近く、このことは、薬物候補のスクリーニングなど、治療以外の用途に顕著な利点を提供する。
【0033】
定義
本説明の目的のために、用語「幹細胞」とは、例えばそれぞれ胚性幹(ES)及び生殖(EG)細胞など、幹細胞又は生殖細胞のいずれかを言う場合がある。最低限、幹細胞は増殖して二個以上の異なる表現型の細胞を形成する能力を有し、また同じ培養株の一部として、又は異なる条件下で培養された場合には、自己再生することができる。胚性幹細胞はまた、典型的にはテロメラーゼ陽性及びOCT-4陽性である。テロメラーゼ活性は、 TRAP 活性検定(Kim et al., Science 266 (1997), 2011)を用い、市販のキット (TRAPeze(R) XK テロメラーゼ検出キット、カタログs7707;ニューヨーク州パーチェス、インテルジェン社;又はTeloTAGGG(TM) テロメラーゼPCR ELISAplus、カタログ2,013,89;インディアナポリス、ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用いて、判定することができる。更にhTERT の発現をmRNAレベルでRT-PCRにより評価することもできる。LightCycler TeloTAGGG(TM) hTERT 定量キット(カタログ3,012,344;ロシュ・ダイアグノスティクス社)が、研究目的用に市販されている。
【0034】
本発明によれば、胚性幹(ES)細胞という用語には、受精後のいずれかの時点での前胚性、胚性、又は胎児組織を由来とすると共に、適した条件下で、例えば8乃至12週齢のSCIDマウスでの奇形腫形成能など、当業で認められた標準的な検査に従って3つの胚葉(内胚葉、中胚葉、及び外胚葉)の全てを由来とする複数の異なる細胞種の後代を生じることができるという特徴を有する、あらゆる多能又は多分化能幹細胞が包含される。
【0035】
「胚性生殖細胞」又は「EG細胞」とは、始原生殖細胞を由来とする細胞である。用語「胚性生殖細胞」は、胚性の多分化能細胞表現型を示す、本発明の細胞を言うために用いられている。用語「ヒト胚性生殖細胞(EG)」又は「胚性生殖細胞」は、ここで定義された通りの多分化能胚性幹細胞表現型を示す、本発明の哺乳動物、好ましくはヒト、の細胞又はその細胞株を言うために、ここでは交換可能に用いられている場合がある。このように、EG細胞は、外胚葉、内胚葉、及び中胚葉から成る細胞に分化することができる。EG細胞はまた、特定の抗体の結合により同定される特異的エピトープ部位に関連するマーカの有無や、特定の抗体の結合がないことで同定される特定のマーカがないことで、特徴付けることができる。
【0036】
「多分化能」とは、生殖細胞系を含む幅広い細胞系譜に分化する発生上の能力を保持した細胞を言う。用語「胚性幹細胞表現型」及び「胚性幹様細胞」はまた、未分化であり、従って多分化能細胞であり、そして、同じ動物の他の成体細胞と視覚的に区別することのできる細胞を言うために、ここで交換可能に用いられている。
【0037】
ES細胞の定義には、Thomson et al. (Science 282 (1998), 1145)により解説されたヒト胚性幹細胞; アカゲザル幹細胞(Thomson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995), 7844)、マーモセット幹細胞(Thomson et al., Biol. Reprod. 55 (1996), 254)及びヒト胚性生殖(hEG)細胞(Shamblott et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95 (1998), 13726)などの他の霊長類由来の胚性幹細胞で例示される多種の胚細胞が含まれる。他の種類の多分化能細胞もこの用語に包含される。3つの胚葉すべてを由来とする後代を生じることのできる哺乳動物起源のあらゆる細胞が、それらが胚性組織、胎児組織、又は他の源を由来とするかに関係なく、包含される。本発明に従って用いられる幹細胞は、好ましくは(しかし必ずしもではないが)核学的に正常であるとよい。しかしながら、悪性の源を由来とするES細胞を用いないことが好ましい。
【0038】
「フィーダ細胞」又は「フィーダ」は、第二の種類の細胞が成長することのできる環境を提供するために、前記別の種類の細胞と共培養されるある種類の細胞を言うために用いられる用語である。フィーダ細胞は、任意的には、支持する側の細胞とは異なる種を由来とする。例えば、いくつかの種類のES細胞は、本開示で後述するように、一次マウス胚性線維芽細胞、不死化マウス胚性線維芽細胞(例えばマウスSTO細胞、例えばMartin and Evans, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72 (1975), 1441-1445)、又は、ヒトES細胞から分化させたヒト線維芽細胞様細胞により、支持することができる。用語「STO細胞」とは、市販のものなどの胚性線維芽マウス細胞を言い、ATCC CRL 1503として寄託されたものが含まれる。
【0039】
用語「胚様体」(EB)は、「集合体」と同義の当業用語である。この用語は、ES細胞が単層培養で過剰成長したときか、又は、浮遊培養に維持されたときに現れる分化及び未分化細胞の集合体を言う。胚葉体は、典型的には、形態学的基準により区別できる複数の胚葉から成る異なる細胞種の混合物である。更に下記を参照されたい。
【0040】
用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」とは、任意の長さのヌクレオチドのポリマを言う。遺伝子及び遺伝子断片、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクタ、単離されたDNA及びRNA、核酸プローブ及びプライマ、が包含される。本開示で用いられる場合、ポリヌクレオチドという用語は、二本鎖及び一本鎖分子を交換可能に言う。他に明示又は求めない限り、ポリヌクレオチドである本発明のいずれの実施態様も、二本鎖と、二本鎖型を形成することが公知の、又は二本鎖型を形成することが予測される、二本の相補な一本鎖型のそれぞれの両者を包含するものである。ホスホールアミデート及びチオホスホールアミデートなどの核酸類似体も包含される。
【0041】
細胞は、あるポリヌクレオチドが、人工操作のいずれかの適した手段により該細胞内に移された場合か、あるいは、該細胞が、該ポリヌクレオチドを受け継いだ、最初に改変された細胞の後代である場合に、「遺伝子改変された」、「トランスフェクトされた」、又は「遺伝子的に形質転換させた」と言われる。当該のポリヌクレオチドは、しばしば、該細胞が当該タンパク質を高レベルで発現できるようにする、目的のタンパク質をコードする転写可能な配列を含むであろう。遺伝子改変は、改変された細胞の後代が同じ改変を有していれば、「遺伝性である」と言われる。
【0042】
「調節配列」又は「制御配列」とは、例えばあるポリヌクレオチドの複製、二重化、転写、スプライシング、翻訳、又は分解など、当該ポリヌクレオチドの機能調節に寄与する分子の相互作用に関与するヌクレオチド配列である。転写制御配列には、プロモータ、エンハンサ、及びリプレッサが含まれる。
【0043】
「αMHC」又は「コラーゲン」プロモータなど、プロモータと言及される特定の遺伝子配列は、作動的に連結した遺伝子発現産物の転写を促進する、言及された遺伝子を由来とするポリヌクレオチド配列である。上流及びイントロン非翻訳遺伝子配列の様々な部分が、場合によってはプロモータ活性に寄与することがあること、そして、これらの部分の全部又はいずれかの一部分が、言及された、遺伝子操作されたコンストラクトに存在していてもよいことが、認識されている。プロモータは、禁止を名言しない限り、当該遺伝子を有するいずれの種の遺伝子配列に基づいていてもよく、また、標的組織での転写促進能を有する限り、任意の付加、置換、又は欠失を導入してもよい。ヒトの治療用にデザインされた遺伝子コンストラクトは、典型的に、ヒト遺伝子のプロモータ配列に対して少なくとも90%同一なセグメントを含む。ある特定の配列を、レポータ遺伝子に作動的に連結させるなどにより、活性及び特異性について検査することができる。図1を参照されたい。
【0044】
遺伝子配列は、それらに予測される機能に従った態様でそれらが作動することが可能な構造的関係に置かれているときに、「作動的に連結している」と言われる。例えば、あるプロモータが、そのコーディング配列の転写開始を助けるのであれば、該コーディング配列は、そのプロモータに作動的に連結している(又は制御下にある)と言うことができる。この機能的関係が維持される限り、プロモータとコーディング領域との間に介在配列があってもよい。
【0045】
コーディング配列、プロモータ、及び他の遺伝子配列の関係において、用語「異種の」は、当該配列が、比較の対象になっている実体の他の部分とは遺伝子型上、異なる実体を由来とすることを指す。例えば、遺伝子操作技術により異なる種の動物に導入されたプロモータ又は遺伝子は、異種ポリヌクレオチドであると言われる。「内因性」遺伝子配列とは、天然で生ずるのと同じ染色体中の位置にある配列であるが、他の配列が、隣接する位置に人工的に導入されてもよい。
【0046】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、本開示では、任意の長さのアミノ酸のポリマを言うために交換可能に用いられている。ポリマは改変されたアミノ酸を含んでいてもよく、直線状でも、又は分枝状でもよく、また途中に非アミノ酸があってもよい。
【0047】
発明の実施態様の詳細な説明
ある局面では、本発明は、胚性幹(ES)細胞由来の第一細胞種を、少なくとも1つの胚性の第二細胞種の存在下で培養するステップと;前記少なくとも2つの細胞種を、組織又は組織様構造に統合及び整列させるステップと、を含む、組織又は組織様構造をモデリング及び/又は得る方法に関する。
【0048】
本発明は、いずれの脊椎動物種の幹細胞を用いても、実施することができる。ヒト;ヒト以外の霊長類、家畜、家畜、及び他のヒト以外の哺乳動物、由来の幹細胞が包含される。本発明での使用に適した幹細胞の中には、例えば胚盤胞など、妊娠後に形成される組織や、妊娠中のいずれかの時点で採取される胎児性又は胚性組織を由来とする霊長類多分化能幹細胞がある。非限定的な例は、胚性幹細胞の初代培養株又は樹立株である。更に本発明は成体幹細胞にも応用可能である。これは、これらの細胞の抽出及び培養が解説されたAnderson et al., Nat. Med. 7 (2001), 393-395 及び Anderson et al., 2001, Gage, F.H., 200 及びProckop, Science 276 (1997), 71-74の文献で言及されている。
【0049】
幹細胞を単離し、増殖させるための培地は、得られた細胞が所望の特徴を有し、更に増殖可能である限り、数ある様々な形式のいずれを有していてもよい。適した源には、イスコーブの改良ダルベッコ培地 (IMDM)、ギブコ社、#12440-053;ダルベッコの改良イーグル培地 (DMEM)、ギブコ社 #11965-092;ノックアウト・ダルベッコの改良イーグル培地 (KO DMEM)、ギブコ社 #10829-018;200 mM L-グルタミン、ギブコ社 # 15039-027;非必須アミノ酸溶液、ギブコ社 11140-050;[ベータ]-メルカプトエタノール、シグマ社 # M7522;ヒト組換え塩基性線維芽細胞成長因子 (bFGF)、ギブコ社 # 13256-029、がある。幹細胞を培養するための例示的な血清含有ES培地及び条件は公知であり、細胞種に応じて適宜、至適化することができる。前項で言及された特定の細胞種のための培地及び培養技術は、ここで引用された参考文献に提供されている。
【0050】
前に述べたように、ES細胞のためのいくつかの源を、当業者に恣意のままに選択できるが、その中でもヒト幹細胞が、本発明の実施態様の大半、特に、移植などの治療目的のためには、好適である。様々な細胞及び組織種を調製するためのヒト胚性幹細胞及びそれらの使用は、Reprod. Biomed. Online 4 (2002), 58-63にも解説されている。胚性幹細胞は、霊長類種のメンバーの胚盤胞から単離することができる(Thomson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995), 7844)。ヒト胚性生殖(EG)細胞は、最後の月経期間から約8乃至11週後に採取されたヒト胎児物質中に存在する始原生殖細胞から調製することができる。適した調製法は、Shamblott et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95 (1998), 13726に解説されている。ヒト胚の生殖巣堤からなど、ヒト胚組織から単離された始原生殖細胞を由来とする、形態及び多分化能の点で胚性幹細胞又は胚性生殖細胞に似た細胞を作製する方法は、米国特許第6,245,566号に解説されている。
【0051】
最近、比較的に大変手に入れやすい組織であるヒト脱落乳歯が、神経細胞、脂肪細胞、及び造歯細胞を含む多種の細胞種に分化することのできる増殖性の高いクローン原性細胞集団であると同定された多能幹細胞を含有することが報告された。Miura et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100 (2003), 5807-5812を参照されたい。in vivo への移植後、これらの細胞は、骨形成を誘導したり、象牙質を生じたり、そしてマウス脳内では神経マーカの発現と共に生存できることが見出された。更に、分裂中期II卵母細胞を由来とするホモ接合型の幹細胞の多系譜能が Lin et al. in Stem Cells 21 (2003), 152-161により解説された。出生直後の筋肉の前駆細胞の多様な源や、新しい骨格及び心筋のin vivoでの形成における幹細胞関与を高めると思われる因子の多様な源が、Grounds et al., J. Histochem. Cytochem. 50 (2002), 589-610でレビューされている。骨髄に帰る数少ない造血幹細胞(HSC)を均質になるまで精製する方法は、米国出願 US2003/0032185に解説されている。これらの成体骨髄細胞は、これらが肝臓、肺、胃腸管及び皮膚の上皮細胞にも分化できるように、膨大な分化能を有することが解説されている。この発見は、遺伝性疾患又は組織修復の臨床治療に貢献するであろう。更に、胚再構築のための核移植などの技術を利用してもよく、この場合、二倍体のドナー核は、除核MII卵母細胞に移植される。レシピエントのそれと遺伝学的に同一なオーダー・メードの胚性幹(ES)細胞株の樹立に役立つ他の手法と併せたこの技術が、Colman and Kind, Trends Biotechnol. 18 (2000), 192-196でレビューされている。移植において同種又は異種細胞に伴う移植片拒絶を避けるためには、同系又は自己由来細胞及びレシピエントを本発明の対応する実施態様で用いることが好ましい。骨髄及び歯由来など、最近発見された幹細胞源を考えると、胚細胞及び組織にたよる必要なく、この要求を満たすことが可能なはずである。代替的には、細胞を遺伝子操作して、関連する移植抗原を抑制してもよい。下記も参照されたい。免疫抑制剤を用いてもよい。
【0052】
幹細胞技術の分野が、Kiessling and Anderson, Harvard Medical School, in ヒト Embryonic Stem Cells: An Introduction to the Science and Therapeutic Potential; (2003) Jones and Bartlett Publishers; ISBN: 076372341Xでレビューされている。
【0053】
ヒト胚などを幹細胞のドナーとして用いることは、少なくとも特定の状況下では正当化可能であると思われるが、これを避けるためには、胚性幹細胞の源として非ヒトトランスジェニック動物、特に哺乳動物、を用いることも可能であろう。例えば、異種移植片ドナーとして用いるためのトランスジェニック・ブタを作製するための組成物及び方法が米国特許第5,523,226号に解説されている。同様に、国際出願 WO97/12035は、異種移植用のトランスジェニック動物を作製する方法を解説している。更に、ヒト患者への異種移植に適した、免疫学的に融和性の動物組織が国際出願WO01/88096に解説されている。ブタから胚性生殖細胞を作製する方法は、例えば米国特許第6,545,199号に解説されている。
【0054】
幹細胞は、分化を促進することなく増殖を促進する培養条件の組合せを用いて、培養で継続的に増殖させることができる。古典的には、幹細胞は、しばしば胚又は胎児組織を由来とする、典型的には線維芽細胞種細胞であるフィーダ細胞の層上で培養される。この細胞株をコンフルエントに近くなるまでプレートし、通常は増殖を防ぐため放射線照射し、その後、特定の細胞により(例えばKoopman and Cotton, Exp. Cell 154 (1984), 233-242; Smith and Hooper, Devel. Biol. 121 (1987), 1-91)又は白血病阻害因子(LIF)の外因的な添加により調整された培地で培養される場合には、支持に用いられる。このような細胞を、適した培養条件を用いて比較的に無限に成長させることができる。
【0055】
国際出願WO03/010303 及びMummery et al., Circulation 107 (2003), 2733-2740は、心筋細胞に分化していくヒト胚性幹(hES)細胞を用いた実験を開示しているが、このとき、前記のhES細胞は、マウス由来の内臓−内胚葉(VE)様細胞と共培養された。これらの実験では、マウス内胚葉細胞は、通常用いられているマウス線維芽細胞フィーダ細胞に取って代わり、自発的な心臓発生を起こさないhES細胞において心筋細胞分化を誘導するために用いられている。
【0056】
従って、Mummeryらは、前記内胚葉細胞のhES細胞との統合及び整列を可能にする組織又は組織様構造を提供する方法を教示するものではない。反対に、マウス内胚葉細胞を使用することが、既に、移植を含む更なる用途に分化筋細胞を用いる場合にはそれらは取り除かれることを示している。更に、これとは対照的に、本発明の方法では、典型的に、同じ種、最も好ましくはヒト、から発生した幹細胞及び胚細胞を利用する。
【0057】
フィーダ細胞、外因性の白血病阻害因子(LIF)、又は調整培地の非存在下では、ES又はEG細胞は自発的に分化して、内胚葉、中胚葉、及び外胚葉のそれぞれに見られる細胞を含む幅広い種類の細胞種になる。しかしながら、成長因子及び分化因子を適当に組み合わせると、細胞分化を制御することができる。例えば、マウスES及びEG細胞は、造血系の細胞をin vitroで生じることができる(Keller et al., Mol. Cell Biol. 13 (1993), 473-486; Palacios et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995), 7530-7534; Rich, Blood 86 (1995), 463-472)。加えて、マウスES 細胞は、ニューロン(Bain et al., Developmental Biology 168 (1995), 342-357; Fraichard et al., J. Cell Science 108 (1995), 3161-3188)、心筋細胞(心臓の筋肉の細胞)(Klug et al., Am. J. Physiol. 269 (1995), H1913-H1921)、骨格筋細胞(Rohwedel et al., Dev. Biol. 164 (1994), 87-101)、血管細胞(Wang et al., Development 114 (1992), 303-316)のin vitro培養株を作製するために用いられてきた。米国特許第5,773,255号は、グルコース応答性インシュリン分泌性膵臓ベータ細胞株に関し、米国特許第5,789,246号は、肝細胞前駆細胞に関する。マウス胚性幹細胞の肝臓分化も、Jones et al., Exp. Cell Res. 272 (2002), 15-22に解説されている。
【0058】
関係する他の前駆細胞には、限定はしないが、軟骨細胞、骨芽細胞、網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイトなどの皮膚細胞、樹状細胞、毛嚢細胞、腎管の上皮細胞、平滑筋及び骨格筋細胞、精巣前駆細胞、及び血管内皮細胞、がある。in vitroでの心臓発生、筋発生、神経発生、上皮及び血管平滑筋分化のための胚性幹細胞分化モデルが、Guan et al., Cytotechnology 30 (1999), 211-226に概略的に解説されている。
【0059】
本発明のいくつかの実施態様では、未分化細胞の成長を促進する、又は、分化の阻害剤として作用する、一種以上の培地成分を回収することにより、分化を促進する。このような成分の例には、いくつかの成長因子、マイトジェン、白血球阻害因子(LIF)、及び塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)がある。更に、所望の細胞系譜に向かった分化を促進する、又は、望ましくない特徴を持つ細胞の成長を阻害する、培地成分を添加することによっても、分化を促進してよい。
【0060】
本発明によれば、当該遺伝子を、所望の細胞種で及び/又は特定の発生段階で優先的に発現させる調節配列の制御下で、所望でない細胞及び細胞種にとって致命的な選択系を用いることにより、即ち、特定の細胞種の細胞を、外部からの作用物質の致命的効果に耐性にするような選択マーカ遺伝子を発現させることにより、分化細胞集団から、比較的に未分化な細胞を枯渇させたり、及び/又は、所望でない細胞種の細胞を枯渇させる。これを達成するために、当該細胞を治療用の所望の系譜に分化させるために用いるプロセスの前に、当該細胞を遺伝子改変して、所望の第一の細胞種に特異的な第一細胞種特異的調節配列に作動的に連結した選択マーカを含むようにする。コンストラクトの一例を図1に挙げる。
【0061】
この目的のためには、いずれの適した発現ベクタも用いることができる。本発明に従って改変される幹細胞を作製するための適したウィルス・ベクタ系は、市販のウィルス成分を用いて調製することができる。一つ又は複数のベクタ・コンストラクトの胚性幹細胞への導入は、例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション、リポフェクション又はウィルス・ベクタの助けを得るなど、公知の方法で行われる。エフェクタ遺伝子を含むウィルス・ベクタは、最後の項で言及される公開文献に概略的に解説されている。代替的には、エレクトロポレーションにより、又は、脂質/DNA複合体を用いることにより、ベクタ・プラスミドを細胞内に導入することができる。例は、ギブコ社/ライフ・テクノロジーズ社から入手可能な製剤リポフェクタミン2000(TM)である。試薬の別の例は、ロシュ・ダイアグノスティックス社から入手可能な、非リポソーム型の脂質と他の化合物を80%エタノールに溶かした混合物であるFuGENE(TM) 6 トランスフェクション・リエージェントである。好ましくは、その開示内容を引用をもってここに援用することとする国際出願 WO02/051987 に解説されたベクタ・コンストラクト及びトランスフェクション法を用いるとよい。
【0062】
耐性遺伝子それ自体は公知である。これらの例は、例えばピューロマイシン(ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ)、ストレプトマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン又はヒグロマイシンなどに対するヌクレオシド及びアミノグリコシド-抗生物質耐性遺伝子である。耐性遺伝子の更なる例は、アミノプテリン及びメトトレキセートに対する耐性をもたらすデヒドロ葉酸-レダクターゼや、例えばビンブラスチン、ドキソルビシン及びアクチノマイシンDなど、多数の抗生物質に対する耐性をもたらす多剤耐性遺伝子である。
【0063】
本発明の特に好適な実施態様では、前記選択マーカはピューロマイシンに対する耐性をもたらす。ピューロマイシンは、トランスジェニックEBの接着性培養株中で心臓細胞以外の細胞を急速に除去するためには特に適している。更に、心臓細胞の薬物選択は、トランスジェニックEBの懸濁培養でも完全に実施することができる。このように、精製済みES細胞由来心筋細胞は、未処理の相当物よりも、培養においてより長時間、生存することも示すことができた。更に、薬物選択プロセス中に未分化ES細胞を除去することは、それだけでも、このような分化ES細胞由来細胞の心筋細胞としての生存力及び寿命に明確な正の効果を有することが示された。加えて、驚くべきことに、周囲の分化しなかった細胞からの解放が心筋細胞の増殖を誘導することも示すことができた。このように、薬物選択は、精製上及び増殖上の両方で効果を有する。
【0064】
本発明のある好適な実施態様では、前記ES細胞由来の第一細胞種の前記ES細胞はレポータ遺伝子を含み、このとき前記レポータは、前記第一細胞種に特異的な細胞種特異的調節配列に作動的に連結している。この種類のベクタは、分化の視覚化や、薬物選択の開始時点の定義、薬物選択の視覚化、及びレシピエント組織に移植された精製済み細胞の運命の追跡、を提供するという利点を有する。本発明の方法に従って利用することが好ましいこのようなベクタは、国際出願WO02/051987に解説されている。通常、レポータ遺伝子の前記細胞種特異的調節配列は、当該マーカ遺伝子の前記第一細胞種特異的調節配列と実質的に同じである。これは、前記マーカ遺伝子及び前記レポータ遺伝子を同じ組換え核酸分子、即ち、幹細胞トランスフェクションに用いられるベクタに、好ましくは前記マーカ遺伝子及び前記レポータ遺伝子が同じシストロン上に含有されるように、入れることにより、有利にも達成することができる。バイシストロン性の心臓特異的薬物選択カセット−レポータ・ベクタの一例を図1に示す。
【0065】
当該レポータは、細胞に損傷を及ぼさず、観察可能又は測定可能な表現型をもたらすものである限り、いずれの種類のものでもよい。本発明によれば、クラゲのエクオレア-ビクトリア(原語:Aequorea-victoria)(国際出願WO95/07463、WO96/27675 及びWO95/121191に解説されている)由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)及びその誘導体「Blue GFP」(Heim et al., Curr. Biol. 6 (1996), 178-182 及び「Redshift GFP」(Muldoon et al., Biotechniques 22 (1997), 162-167)を用いることができる。特に好適なのは強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)である。更なる実施態様は、強化黄色及びシアン蛍光タンパク質(それぞれEYFP及びECFP)並びに赤色蛍光タンパク質(DsRed、HcRed)である。更なる蛍光タンパク質が当業者に公知であり、細胞を損傷させない限り、本発明で用いることができる。蛍光タンパク質の検出は、それ自体公知の蛍光検出法を通じて行われる。例えばKolossov et al., J. Cell Biol. 143 (1998), 2045-2056を参照されたい。蛍光タンパク質の代わりに、特にin vivo用途では、他の検出可能なタンパク質、特にこれらのタンパク質のエピトープ、を用いることもできる。それ自体で細胞自体を損傷する可能性もあるタンパク質は、そのエピトープが細胞を傷付けなければ、そのエピトープを用いることもできる。更に国際出願WO02/051987を参照されたい。
【0066】
安定にトランスフェクトしたES細胞の選択のために、ベクタ・コンストラクトは、例えばネオマイシンなどの抗生物質に対する耐性などをもたらす更なる選択マーカ遺伝子を含有する。もちろん、他の公知の耐性遺伝子も用いることができ、例えば蛍光タンパク質コーディング遺伝子に関連して上述した耐性遺伝子などである。安定にトランスフェクトしたES細胞の選択のための選択遺伝子は、検出可能なタンパク質の発現の制御を調節するものとは異なるプロモータの制御下にある。しばしば、例えばPGK-プロモータなど、構成的に活性なプロモータを用いる。
【0067】
第二の選択遺伝子を用いると、そもそもトランスフェクトに成功したクローン(効率は比較的に低い)を特定する能力に関しては有利である。さもなければ、うやむやになった大半のトランスフェクトされていないES細胞が存在し、分化中にEGFP陽性細胞がまったく検出されないなどの可能性がある。
【0068】
本発明の更なる実施態様では、特定の組織が形成されないように細胞を付加的に操作することができる。これは、例えばドキシサイクリン誘導性リプレッサ配列などのリプレッサ配列を挿入するなどにより、行うことができる。それにより、所望の分化細胞に、多分化能の、潜在的に腫瘍形成性の細胞が混入する可能性をなくすことができる。
【0069】
分化させようとする幹細胞に意図された所望の第一細胞種はいずれの種類のものでもよく、その中には、限定はしないが、ニューロン、グリア細胞、心筋細胞、グルコース応答性インシュリン分泌性膵臓ベータ細胞、肝細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、軟骨細胞、骨芽細胞、網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、樹状細胞、毛嚢細胞、腎臓管上皮細胞、血管内皮細胞、精巣前駆細胞、平滑筋及び骨格筋細胞、がある。上記も参照されたい。
【0070】
本発明のある具体的な好適な実施態様では、前記第一細胞種は心筋細胞である。この実施態様の場合、前記第一細胞種特異的調節配列は、好ましくは、心房及び/又は心室特異的であるとよい。対応する調節配列、即ち心臓特異的プロモータ、が、それぞれ大変初期の心筋細胞及び中胚葉前駆細胞に特異的なNkx-2.5(Lints et al., Development 119 (1993), 419-431);心臓組織に特異的なヒト心臓-α-アクチン(Sartorelli et al., Genes Dev. 4 (1990), 1811-1822)、及び心室心筋細胞に特異的なMLC-2V(O'Brien et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90 (1993), 5157-5161 及び国際出願 WO96/16163)に関して解説されている。心臓特異的アルファ-ミオシン重鎖プロモータが Palermo et al., Cell Mol. Biol. Res. 41 (1995), 501-519; Gulick et al., J. Biol. Chem. 266 (1991), 9180-91855に解説されている;このミオシンの軽鎖-2v (MLC2v)プロモータはLee et al., Mol. Cell Biol. 14 (1994), 1220-1229; Franz et al., Circ. Res. 73 (1993), 629-638にもある。更にYutzey et al., Development 120 (1994), 871-883に解説された心房特異的ミオシン重鎖AMHC1の発現や、発生中のニワトリ心臓における前後方向の方向性の確立も参照されたい。
【0071】
Muellerらは、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)を、サイトメガロウィルス(CMV(enh))の心室特異的な2.1 kbのミオシン軽鎖2v(MLC-2v)プロモータと0.5 kbのエンハンサ配列との転写制御下で用いることによる、in vitroでのES細胞由来心室様心筋細胞の選択を解説している。Mueller et al., FASEB J. 14 (2000), 2540-2548を参照されたい。この公開文献はまた、本発明の in vitroで生じた組織及び組織様構造で同様に行えるであろう電子生理学的な研究も解説している。
【0072】
特に、in vitroの分化心筋細胞に関する実施態様に基づくと、前記少なくとも一つの胚性第二細胞種として線維芽細胞を用いることが好ましい。実施例で示すように、ES細胞由来心筋細胞及び胚性線維芽細胞をそれぞれ共培養及び共移植したところ、心臓組織形成及び成功裡な置換治療法ができた。これらの線維芽細胞は必ずしも、胚を由来としていなくてもよく、本発明の方法に従ってES細胞からde novoで生じさせることもできる。このように、ES細胞に、マーカと、任意に細胞種特異的調節配列、即ち、骨細胞でも活性であるがa2(I)コラーゲン・プロモータなどの線維芽細胞特異的プロモータ、に作動的に連結されたレポータ遺伝子とを含む組換え核酸分子をトランスフェクトする(Lindahl et al., J. Biol. Chem. 277 (2002), 6153-6161; Zheng et al., Am. J. Pathol. 160 (2002), 1609-1617; Antoniv et al., J. Biol. Chem. 276 (2001), 21754-21764;更にFiner et al., J. Biol. Chem. 262 (1987), 13323-13333; Bou-Gharios et al., J. Cell Biol. 134 (1996), 1333-1344 ; Zheng et al., Am. J. Pathol. 160 (2002), 1609-1617; Metsaranta et al., J. Biol. Chem. 266 (1991) 16862-16869も参照されたい)。
【0073】
しかしながら、他の実施態様の場合、線維芽細胞、及び/又は代替的には、例えば内皮細胞等の他の支持細胞及びその由来体も用いてよい。
【0074】
更なる好適な実施態様では、本発明の方法は、更に、前記少なくとも2つの細胞種を、胚性又は胚性幹(ES)細胞由来第三細胞種の存在下で培養するステップを含む。前記第三細胞種は上述のいずれの細胞種でもよい。好ましくは、前記第三細胞種が内皮細胞であるとよい。従って、胚性内皮細胞又はES細胞由来内皮細胞のいずれを用いてもよい。後者の実施態様では、前記内皮細胞は、概略的に前に解説された通りのベクタ・コンストラクトをトランスフェクトされたES細胞を由来とし、この場合、前記細胞種特異的調節配列は内皮細胞特異的プロモータである。例えばGory et al., Blood 93 (1999), 184-192により解説された血管内皮細胞-カドヘリン・プロモータ;Schlaeger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94 (1997), 3058-3063によるTie-2プロモータ/エンハンサ;及び; Kappel et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 276 (2000), 1089-1099などによるFlk-1プロモータ/エンハンサ、を参照されたい。
【0075】
更なる細胞及び組織種特異的プロモータが公知である。例えば、Zhou et al., J. Cell Sci. 108 (1995), 3677-3684に解説された軟骨細胞特異的pro-alpha1 (II) コラーゲン鎖(コラーゲン2)プロモータ断片;Gloster et al., J. Neurosci. 14 (1994); 7319-7330に解説された神経アルファ-1-チューブリン特異的プロモータ;及びBesnard et al., J. Biol. Chem. 266 (1991), 18877-18883 のグリア筋原線維酸性タンパク質(GFAP)プロモータを参照されたい。組織特異的プロモータの更なる例は、グリア細胞、造血系の細胞、ニューロン、好ましくは胚性ニューロン細胞、内皮細胞、軟骨細胞又は上皮細胞やインシュリン分泌性β細胞で活性なものである。「組織特異的」は、「細胞特異的」という用語に包含されるものである。
【0076】
非心臓特異的プロモータの更なる例は、PECAM1、FLK-1 (内皮)、ネスチン(神経前駆細胞)、チロシン-ヒドロキシラーゼ-1-プロモータ(ドーパミン作動性ニューロン)、平滑筋α-アクチン、平滑筋ミオシン(平滑筋)、α1-フェトタンパク質(内皮)、平滑筋重鎖(SMHC 最小プロモータ(平滑筋に特異的、Kallmeier et al., J. Biol. Chem. 270 (1995), 30949-30957)である。
【0077】
発生特異的プロモータという用語は、発生中の特定の時点で活性であるプロモータを言う。このようなプロモータの例は、マウスの心室内で胚発生中に発現すると共に出生前の段階ではα-MHCプロモータに取って替わられるβ-MHCプロモータ、早期中胚葉/心臓発生中のプロモータであるNKx2.5、発生段階後期でも下方調節される調節物質を例外として早期胚心臓のマーカである心房性ナトリウム利尿因子、早期血管形成中に活性である内皮特異的プロモータであるFlk-1、神経前駆細胞(胚性ニューロン及びグリア細胞)及び成体グリア細胞(部分的にはまだ尚分裂可能である)で発現するネスチン遺伝子のイントロン2-セグメント(Lothian and Lendahl, Eur. J. Neurosci. 9 (1997), 452-462U)である。
【0078】
上述の実施態様では、図1乃至3に示したベクタを用いることが好ましい。
【0079】
更に本発明は、ここで記載した方法で定義される細胞の共培養株や、本発明の方法で入手可能な組織にも関する。本発明に従って調製された細胞及び組織は、商業的に重要な研究上、診断上及び治療上の多種の目的のために、用いることができる。本発明の細胞集団は未分化細胞を枯渇させてあるため、これらを用いて、分化後の表現型に特異的な抗体及びcDNAライブラリを調製することができる。抗体を生じさせ、精製し、そして改変する際に用いられる一般的な技術や、免疫検定法及び免疫単離法でのそれらの使用はHandbook of Experimental Immunology (Weir & Blackwell, eds.); Current Protocols in Immunology (Coligan et al., eds.); 及びMethods of Immunological Analysis (Masseyeff et al., eds., Weinheim: VCH Verlags GmbH)に解説されている。mRNA 及び cDNA ライブラリの調製に関与する一般的技術は、RNA Methodologies: A Laboratory Guide for Isolation and Characterization (R. E. Farrell, Academic Press, 1998); cDNA Library Protocols (Cowell & Austin, eds., Humana Press); 及び Functional Genomics (Hunt & Livesey, eds., 2000)に解説されている。
【0080】
しかしながら、本発明の主な目的の一つは、移植で用いられる細胞及び組織の提供である。例えば、本発明の分化細胞は、組織再構築又は再生を必要とするヒトの患者においてそのために用いることができる。本細胞は、それらが目的の組織部位に移植されて、機能的欠陥区域を再構築又は再生できるような態様で、投与される。このように、本発明は、具体的には:
(a)分化が惹起された、好ましくはトランスジェニック幹細胞の共培養株を含む細胞性接種原又は相当する組織を、前記組織のうちで以前に損傷している区域の少なくとも一部分に導入するステップと、
(b)前記導入された細胞性接種原を、前記組織のうちで以前に損傷している区域内に配置された生存細胞又は組織としてin situに移植するステップであって、前記移植の結果、前記哺乳動物の組織及び/又は器官機能が向上する、ステップと
を含む、哺乳動物において組織修復及び/又は器官機能を向上させる方法に関する。
【0081】
特定の細胞種への分化能と、例えばパーキンソン病、脊髄損傷、糖尿病、及び心疾患などの多種の疾患及び状態を治療するそれらの能力という両方の意味で精選した例を用いて、幹細胞の潜在的可能性を描写したものがPfendler and Kawase in Obstet. Gynecol. Surv. 58 (2003), 197-208でレビューされている。これらの状態はすべて、上述した細胞及び組織の使用により、治療可能である。
【0082】
ある具体的な局面では、本発明は、心筋梗塞又は組織損傷の発生後の生きた哺乳動物対象において、心機能を著しく向上させ、心臓組織を修復する方法に関する。本方法は、胚性幹細胞、即ち、哺乳動物胚性幹細胞由来心筋細胞を、胚性線維芽細胞などの支持性胚性細胞と一緒に、心筋のうちで梗塞した又は損傷した区域に導入及び移植する外科的技術である。移植後、当該細胞は安定な移植体を形成し、生きたホスト内の心臓のうちの梗塞した又は損傷した区域内で無限に生存する。本発明の実証済みの有利な効果には、梗塞面積の減少と、心機能の向上がある。図6を参照されたい。
【0083】
従って、更に本発明は、心筋梗塞後の哺乳動物において心機能を向上させる方法にも関し、前記方法は:
(a)同じ心臓特異的プロモータの制御下にある耐性遺伝子及びレポータ遺伝子を含む未分化哺乳動物胚性幹(ES)細胞を、in vitroで、前記ES細胞の心筋細胞への分化が可能な条件下で、前記耐性遺伝子に対する選択的物質を含有する培地で培養するステップと、
(b)前記分化心筋細胞を単離し、及び/又は、分化しなかった細胞を、任意的には分化の過程で前記心筋細胞とは無関係の細胞種に向かって分化中の細胞と一緒に除去するステップと、
(c)その後、前記心筋細胞を、胚性又はES細胞由来線維芽細胞及び/又は内皮細胞と一緒に、心臓組織のうちで以前に梗塞した区域の少なくとも一部分に共移植するステップと、
(d)前記導入された細胞性接種原を、前記心臓組織において以前に梗塞した区域内に配置された生存細胞としてin situで移植するステップであって、前記移植の結果、前記哺乳動物の心機能が向上する、ステップと
を含む。
【0084】
ここで解説した実施態様と同様に、前記耐性遺伝子及び前記レポータ遺伝子は、バイシストロン性ベクタ内に含有されるが、好ましくは、IRESにより分離されているとよい。特に好適なのは、前記耐性遺伝子がピューロマイシンに対する耐性をもたらすものであり、前記マーカがEGFPであり、そして前記プロモータが心臓αMHCプロモータであるようなコンストラクトの使用である。図3を参照されたい。分化が惹起された胚性幹細胞の移植や、心機能の判定は、実施例及び引用文献、あるいは米国特許第6,534,052号に開示されているように、行うことができる。
【0085】
米国特許第5,733,727号は、骨格筋原細胞又は心筋細胞の心筋移植体や、前記移植体を得る上で有用な細胞性組成物及び方法を解説している。これらの心筋移植体は、安定であり、そして、心臓へ組換えタンパク質を直接送達するなどのための使用に向いていると記載されている。この米国特許はES細胞由来の心筋細胞を作製する普通のアプローチや、移植時及び組換えタンパク質の心臓への送達用伝播体としてのそれらの使用しか、解説していないが、その教示は、本発明に従って得られた組織及び組織様構造にも応用できると思われる。このように、具体的には本発明のin vitroで作製された心臓組織様構造を、血管新生を誘導するための血管新生因子(例としては塩基性及び酸性線維芽細胞成長因子、トランスフォーミング成長因子-β、血管内皮成長因子及び肝細胞成長因子)などの治療的タンパク質の送達に用いることができる。同様に、梗塞領域近傍で神経栄養性物質を発現する移植体を、境界域に関連する不整脈発生を緩和するために用いてもよい。心臓への標的送達のためのこれらの、そして数多くの他の候補物質は、当業者に明白であろう。
【0086】
上述したように、本発明に従って、主細胞種などの前記少なくとも2つの細胞種や、対応する支持細胞のいずれも、ES細胞を由来としてもよい。従って、更なる局面では、本発明は、以下のステップ:
(a) 第一及び第二細胞種特異的調節配列を少なくとも1つの選択マーカに作動的に連結して含む組換え核酸分子を、一つ以上の多能又は多分化能細胞にトランスフェクトするステップであって、前記第二細胞種が前記第一細胞種とは異なる、ステップと、
(b)前記細胞を、前記細胞の分化が可能な条件下で培養するステップと、
(c)少なくとも2つの分化細胞種の細胞を単離し、及び/又は、分化しなかった細胞を、任意的には、分化の過程で選択マーカを活性化する目的の細胞種とは無関係の細胞種に向かって分化中の細胞と一緒に除去するステップと、
を含む、組織又は組織様構造をモデリング及び/又は得る方法に関する。
【0087】
前述の方法と同様に、3つ以上の細胞種が生じることが好ましい。従って、本方法は、好ましくは、少なくとも1つの更なる細胞種特異的調節配列を少なくとも1つの選択マーカに作動的に連結して含む組換え核酸分子を、前記一つ以上の細胞にトランスフェクトするステップであって、前記少なくとも1つの更なる細胞種が前記第一及び第二細胞種とは異なる、ステップ、を含むとよい。本方法で用いる場合、前記の組換え核酸分子は、同じベクタ又は異なるベクタ内に含まれる。これらの選択のもとになる原則を図2及び3に示し、実施例で説明する。
【0088】
当該細胞種は、ニューロン、グリア細胞、心筋細胞、グルコース応答性インシュリン分泌性膵臓ベータ細胞、肝細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、軟骨細胞、骨芽細胞、網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、樹状細胞、毛嚢細胞、腎臓管上皮細胞、血管内皮細胞、精巣前駆細胞、平滑筋及び骨格筋細胞から成る群より選択してよい。上記も参照されたい。
【0089】
トランスフェクト後の幹細胞を心筋細胞、線維芽細胞及び任意的には内皮細胞に分化させることによる心臓組織の調製をしたい場合に好ましいプロモータは、前述したものを含む。同様に、神経組織を生じさせる場合は、一つ以上の幹細胞、例えば多能神経幹細胞を用い、本発明に従って遺伝子操作して、ニューロン、アストロサイト、及びオリゴデンドロサイトに分化させることができる。同じ原理は、肝臓又は膵臓組織などの生成にも当てはまる。対応する細胞種特異的プロモータの調節配列は、文献から得ることができる。例えば「メドライン」及びNCBIを参照されたい。
【0090】
本発明の方法を行う場合、前記一つ以上の組換え核酸分子を、前記一つ以上の細胞に同時にトランスフェクトすることも、又は順にトランスフェクトすることもできることは理解されたい。
【0091】
実施例で解説し、また図2及び3に示すように、本発明の方法は様々な方法で行うことができる。第一に、好ましくはここで解説されたように、所望の組織種を構成する細胞種に基づいた特異的プロモータにより作動する薬物選択カセットを持つ特定の数のベクタを安定にトランスフェクトされた多重トランスジェニックES細胞クローンを作成する。このように、前記ES細胞又はその細胞クローンのうちの少なくとも1つがトランスフェクトされ、選択されるが、この場合、前記細胞又は細胞クローンは、少なくとも2つの異なる細胞種特異的調節配列を持つ組換え核酸分子を含有する。このようなバリアントでは、出現する全ての細胞種は、一つの共通の始原ES細胞クローンを起源とし、その結果できる様々な細胞成分間の比は、それらの各々の相対的分化率に左右される。
【0092】
代替的には、少なくとも2つの異なるES細胞又はそのクローンがトランスフェクトされ、選択されるが、この場合、前記少なくとも2つの異なる細胞又は細胞クローンは、異なる細胞種特異的調節配列を持つ組換え核酸分子を含有する。このアプローチにより、数多くのトランスジェニックES細胞クローンが生ずるが、この場合、各一個のクローンは、該細胞種特異的プロモータのうちの一つにより作動する薬物耐性カセットを持つベクタを一個のみ、持つ。
【0093】
組織モデリングの場合、ES細胞集合体(EB)を形成させるためには、関連するクローンは、分化の初期段階(「ハンギング・ドロップ」又は「大量培養」)で混合されねばならず、この場合、薬物選択後に現れる細胞種は様々な対応するES細胞クローンを起源とし、細胞成分間の最終的な比も、様々なES細胞株間の最初の比に依存し、またこの最初の比により制御可能である。この方法の結果、キメラ胚様体(EB)である細胞集合体ができることが好ましい。
【0094】
本発明の方法の具体的な実施態様に関係なく、前記異なる細胞種特異的調節配列に作動的に連結している前記選択マーカのうちの少なくとも2つが同一であることが好ましい。上述したように、一つ又は複数のこれらマーカ遺伝子は、好ましくは、細胞毒性作用薬、好ましくはピューロマイシン、メトトレキセート、又はネオマイシン、に対する耐性をもたらす選択マーカであるとよい。
【0095】
本発明の一番目の局面の方法に関して既に解説したように、前記組換え核酸分子のうちの前記一つ以上は、好ましくは、前記細胞種特異的配列に作動的に連結したレポータを更に含むとよい。上記を参照されたい。ここで同様に好適なのは、異なる細胞種特異的配列に作動的に連結した、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)の異なる色の形、具体的にはEYFP(黄色)、ECFP (青色)及び/又はhcRFP(赤色)、である。同様に、前記選択マーカ及び前記レポータをバイシストロン性ベクタから発現させることも好ましく、この場合、前記選択マーカ及び前記レポータは、前記遺伝子の少なくとも1つに作動的に連結された一つ以上の内部リボソーム進入部位(IRES)で分離されていることが好ましい。
【0096】
上述したように、本発明の方法は、好ましくは、異なる細胞種の、例えば所望の組織又は組織様構造などへの自己集合が可能なように行われるとよい。当該幹細胞は、本発明の好適な実施態様では、胚様体として公知の集合体の形で得られる。国際出願WO02/051987は、胚様体を得るためのプロトコルを解説している。その製造は、好ましくは、「ハンギング・ドロップ」法又はメチルセルロース培養で行われるとよい(Wobus et al., Differentiation 48 (1991), 172-182)。
【0097】
これの代わりに、攪拌フラスコ(攪拌培養)を培養法として用いることができる。従って、未分化ES細胞を攪拌培養に導入し、確立された手法に従って不可逆的に混合する。例えば、1000万個のES細胞を20% FCSを加えた150 mlの培地に導入し、20rpmの速度で一定に攪拌するが、この場合、攪拌運動の方向を規則的に変える。ES細胞の導入から24時間後に、血清を加えた更に100 mlの培地を添加し、その上に100 - 150 ml の培地を毎日交換する(Wartenberg et al., FASEB J. 15 (2001), 995-1005)。これらの培養条件下で、大量のES細胞由来細胞、即ち心筋細胞、内皮細胞、ニューロン等を、培地の組成に応じて得ることができる。細胞を、耐性遺伝子を利用して、それぞれ、まだ攪拌培養中か又は、プレート後のいずれかで、選抜する。
【0098】
この代わりに、ハンギング・ドロップで分化させたEBをプレートせずに、単に懸濁液に入れたままにしておいてもよいかも知れない。これらの条件下ですら、分化の進行を経験的に観察することができた。所望でない細胞種の洗い流しは、機械的な混合のみや、低濃度の酵素(例えばコラゲナーゼ、トリプシン)の添加で行うことができる。単細胞の懸濁は、所望でない細胞種の簡単な洗浄で達成される。
【0099】
ある実施態様では、細胞種の運命や、細胞集合体及び組織の形成、並びに、当該細胞又は細胞集合体の生理学的及び/又は発生上の状況を、例えば等尺性引張測定、心エコー検査等により分析する。好ましくは、細胞又は細胞集合体の状況を、例えば微小電極アレイ(MEA)で細胞外界電位を記録するなどにより、アレイ上の細胞の電気的活性の分化を観察することにより分析するとよい。例えば、心筋細胞に分化していく胚性幹細胞の分化進行プロセス中の電気生理学的特性を、60本の基板一体化電極などから成る微小電極アレイで細胞外界電位を記録することにより、追跡することができる。Banach et al. Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. 284 (2003), H2114-H2123を参照されたい。タングステン微小電極の多重アレイを用いて、呼吸運動パターン発生に寄与する脳内幹ニューロンの同時応答が記録された。Morris et al., Respir. Physiol. 121 (2000), 119-133を参照されたい。
【0100】
更に本発明は、上述の方法により入手可能な細胞、細胞集合体及び組織に関し、前記細胞は、少なくとも2つの細胞種に分化することができる。従って、前記細胞は好ましくは胚性細胞種−−及び/組織特異的細胞、最も好ましくは心臓組織であるとよい。同様に、これらの細胞、細胞集合体及び組織から成る器官は、このような細胞、細胞集合体、組織又は器官を含むインプラント又は移植体と同様に、本発明の主題である。これらの全てを、損傷した組織又は器官の治療を必要とする対象にインプラントする又は移植するステップを含む、対象の損傷した組織又は器官を治療する方法で用いることができる。従って、ここで解説した通りの本発明の組換え核酸分子、細胞、細胞集合体、又は組織のいずれか一つを含む医薬組成物などの組成物は、本発明の範囲に包含される。上述したように、本発明のこれらの組成物及び方法は、胚発生中の組織形成の初期段階を分析したり、又は、このプロセスに対する因子及び化合物の影響を分析するなど、多種の目的に用いることができる。
【0101】
更なる実施態様では、本発明は、言及したES細胞及びES細胞由来細胞種並びに細胞集合体から作製することのできる非ヒトトランスジェニック動物に関する。上記を参照されたい。ES細胞からのトランスジェニック動物の作製は当業で公知である。例えばA. L. Joyner Ed., Gene Targeting, A Practical Approach (1993), Oxford University Pressを参照されたい。非ヒトトランスジェニック動物を作製するための一般的方法は当業で解説されており、例えば国際出願WO94/24274を参照されたい。
【0102】
ある特に好適な局面では、本発明は、心筋梗塞後の哺乳動物において心機能を向上させる方法に関し、前記方法は:
(a)心臓、線維芽細胞及び任意的には内皮細胞特異的調節配列の制御下にある耐性遺伝子を含み、そして同じ特異的調節配列の下にある一つ以上のレポータを任意的に含む組換え核酸分子を哺乳動物胚性幹(ES)細胞にトランスフェクトするステップと、
(b)前記ES細胞の心筋細胞、線維芽細胞及び選択的には内皮細胞への分化が可能な条件下で、前記耐性遺伝子に対して選択的物質を含有する培地で、前記ES細胞をin vitroで培養するステップと、
(c)前記分化心筋細胞、線維芽細胞及び任意的に内皮細胞から、分化しなかった細胞を、任意的には無関係の細胞種に向かって分化中の細胞と一緒に除去するステップと、
(d)任意のステップとして、前記分化中の心筋細胞、線維芽細胞及び任意的に内皮細胞を心臓様組織に統合及び整列させるステップと、
(e)その後、前記心筋細胞、線維芽細胞及び選択的に内皮細胞又は前記組織を、心臓組織のうちで以前に梗塞した区域の少なくとも一部分に共移植するステップと、
(f)前記導入された細胞又は組織を、前記心臓組織のうちの以前に梗塞した区域内に配置された生存細胞としてin situで移植するステップであって、前記移植の結果、前記哺乳動物の心機能が向上する、ステップと
を含む。
【0103】
上述したように、前記心筋細胞、線維芽細胞及び任意に内皮細胞は、好ましくは、同じES細胞を由来とするとよい。しかしながら、異なるES細胞を由来とする心筋細胞、線維芽細胞及び任意に内皮細胞も用いてよい。これらの実施態様では、前記心臓特異的調節配列は、好ましくは、αMHC、MLC2v、MLC1a、MLC2a 及びベータMHCのプロモータから選択されるとよく、前記内皮細胞特異的調節配列は、好ましくは、Tie2、Tie1 及びカテリン(原語:Catherin)のプロモータから選択されるとよく、そして前記線維芽細胞特異的調節配列は、好ましくは、コラーゲンIのプロモータから選択されるとよい。上記を参照されたい。同様に、前記心筋細胞、線維芽細胞及び任意に内皮細胞の前記レポータは、個別に、強化緑色蛍光タンパク質ECFP(青色)、EYFP (黄色)及びhcRFP (赤色)から選択されることが好ましい。更に図3及び実施例を参照されたい。前記耐性遺伝子及び前記レポータは、好ましくは内部リボソーム進入部位(IRES)により分離されているとよい。
【0104】
別の例では、神経上皮細胞を作製し、疾病、自己免疫異常、事故による損傷、又は遺伝性異常により損傷した細胞を増強又は置換するために用いる。マウスES細胞をin vitroでレチノイン酸で分化誘導して、アストロサイト(GFAP)又はオリゴデンドロサイト(O4)マーカに対して陽性となるニューロン前駆細胞及びグリア前駆細胞を形成させた後、機能的ニューロンに分化させることができる(Fraichard et al., J. Cell Science 108 (1995), 3161-3188)。成体脳に移植された細胞が、ホストの線条を神経支配することが観察されている(Deacon et al., Exp. Neurology, 149 (1998), 28-41)。ヒト及びマウスEC細胞株もニューロンに分化することができる。(Trojanowski et al., Exp. Neurology, 144 (1997), 92-97; Wojcik et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90 (1993), 1305-1309)。これらのニューロンを、脳虚血を起こしたラットに移植すると、機能回復の程度が促進された(Borlongan et al., Exp. Neurology 149 (1998), 310-321)。本発明に従うと、この実施態様のために、対応するニューロン及びグリア特異的プロモータを用いる。グリア及びニューロン特異的プロモータについては、例えばKawai et al., Biochim. Biophys. Acta 1625 (2003), 246-252、及びKugler et al., Gene Ther. 10 (2003), 337-347を参照されたい。様々な培養系における胚性幹細胞からの胚様体形成及び造血系発生の効率が、例えばDang et al., Biotechnol. Bioeng. 78 (2002), 442-453で解説されている。本発明の別の用途では、ES細胞又はそれらの分化中又は分化後の派生体を、骨又は軟骨置換などの非細胞性構造の作製に用いることができる。本発明の別の用途では、ES細胞又はそれらの分化中又は分化後の派生を、肝臓組織の作製に用いることができる。細胞種特異的発現のための調節配列を、引用文献や、「メドライン」及びNCBIなどの一般的情報源から得ることができる。
【0105】
必要に応じ、このような細胞を遺伝子治療の目的のために遺伝子改変してもよい。
【0106】
更なる局面では、本発明は、前述した本発明の方法の関係で定義された通りの組換え核酸分子を含むベクタ又はベクタの組成物に関する。具体的には、本発明は、心臓、線維芽細胞及び任意的に内皮細胞特異的調節配列の制御下にある合計で少なくとも2つの単位の耐性遺伝子を含み、そして上に解説した通りの同じ特異的調節配列の下にある一つ以上のレポータを任意的に含む、ベクタ及びベクタの組成物に関する。更に図3Aを参照されたい。これらのベクタ又はベクタ組成物は実質的に単離されていても、あるいは、例えばベクタの増殖などの有用な一つ以上のホスト細胞内など、試料中に存在していてもよい。
【0107】
ある特に好適な実施態様では、本発明は、固体の支持体と、本発明の方法により得られた又は分化過程にある、前記支持体上に付着させたもしくはそこから懸架させた、細胞、細胞集合体又は組織と、を含むアレイに関する。培養細胞及び細胞集合体のための、平面上の微小電極アレイのバイオアレイとしての使用が特に関係する。このようなアレイは、一般に、ガラス製、プラスチック製又はシリコン製の基板と、この基板上に蒸着又はパターン形成された金、プラチナ、ヨウ素-酸化すず、イリジウム等の導電体とから成る。例えばフォトレジスト、ポリイミド、二酸化珪素、窒化珪素等の絶縁層が、導電性電極上に蒸着され、電極上の領域同士の間を相互接続した後、除去されることで記録部位を規定する。細胞はこの表面上で直接培養され、露出した導電体に脱絶縁された記録部位で接触する。電極及び細胞の大きさに応じ、電気活性の記録は、一個の細胞からであったり、あるいは細胞集合体を含む細胞集団からである場合もある。各電極部位は、一般に、高入力インピーダンス、低ノイズ増幅器の入力側に、ACカップリング・コンデンサを付けて、又は付けずに接続されることで、比較的に小さな細胞外シグナルを増幅することができる。このようなバイオセンサの例がNovak et al., IEEE Transactions on Biomedical Engineering BME-33(2) (1986), 196-202; Drodge et al., J. Neuroscience Methods 6 (1986), 1583-1592; Eggers et al., Vac. Sci. Technol. B8(6) (1990), 1392-1398; Martinoia et al., J. Neuroscience Methods 48 (1993), 115-121; Maeda et al., J. Neuroscience 15 (1995), 6834-6845; 及びMohr et al., Sensors and Actuators B-Chemical 34 (1996), 265-269に解説されている。
【0108】
上述したアレイを分析するように作製及び適合された装置も、本発明の主題である。
【0109】
本発明の細胞、細胞集合体、組織、器官及び方法は、薬物スクリーニング及び治療用途における使用に特に適している。例えば、本発明の分化幹細胞は、分化細胞の特徴に影響する因子(例えば溶媒、低分子、薬物、ペプチド、ポリヌクレオチド等)又は環境条件(例えば培養条件又は操作)をスクリーニングするために用いることができる。本発明の具体的なスクリーニング用途は、薬物研究における医薬化合物の検査に関する。それは概略的には標準的テキスト「In vitro Methods in Pharmaceutical Research", Academic Press, 1997及び米国特許第5,030,015号で言及されている。候補医薬化合物の活性の評価は、一般に、本発明の分化細胞を候補化合物と配合するステップと、(未処理細胞、又は、不活性の化合物で処理された細胞に比較したときの)当該化合物に帰因すると思われる細胞の形態、マーカ表現型又は代謝活性における何らかの変化を判定するステップと、その後、観察された変化に、当該化合物の効果を相関させるステップとを含む。このスクリーニングを行われるのは、例えば当該化合物が、特定の細胞種に対して薬理学的効果を有するようにデザインされている場合か、あるいは、どこか他の場所で効果を有するようにデザインされた当該化合物が、意図しない副作用を有するであろう場合である。二種以上の薬物を(細胞に同時又は順番に配合することにより)組み合わせて検査して、可能性ある薬物対薬物の相互作用の効果を検出することができる。いくつかの用途では、初めに化合物を潜在的な毒性についてスクリーニングする(Castell et al., pp. 375-410 in "In vitro Methods in Pharmaceutical Research," Academic Press, 1997)。細胞毒性は、第一に、細胞の生存力、生存、形態や、特定のマーカ、受容体又は酵素の発現又は放出に対する効果により、判定することができる。薬物の染色体DNAに対する効果は、DNA合成又は修復を測定することにより、判定することができる。[H]チミジン又はBrdU 取り込み、特に細胞周期の予定外の時点でのもの、あるいは細胞複製に必要なレベルを超えるレベルでのもの、は薬物効果と矛盾しない。更に望ましくない効果には、分裂中期の延びで判定される、姉妹染色分体交換の異常な速度を含めることができる。更なる詳細については A. Vickers(pp 375-410 in "In vitro Methods in Pharmaceutical Research," Academic Press, 1997)で言及されている。
【0110】
このように、更なる実施態様では、本発明は:
(a)本発明の方法に従って調製された又は分化中の細胞、細胞集合体、組織又は器官を含む検査試料を、検査物質に接触させるステップと、
(b)コントロール試料に比較したときの前記検査試料中の表現型上の応答を判定するステップであって、コントロール試料に比較したときの前記検査試料中の表現型上の応答の変化は、前記検査物質が細胞発生及び/又は組織構造形成に対して効果を有することの指標である、ステップと
を含む、細胞発生及び/又は組織構造形成に影響することのできる検査物質を得る及び/又はプロファイリングする方法に関する。
【0111】
これらの方法は、多種の動物モデルに替わることができ、また、新規なヒトベースの検査及び極限環境のバイオセンサを形成することができる。具体的には、本発明の方法は、毒性、変異原性及び/又は催奇形性のin vitro検査に用いることができる。本発明に従って得られる細胞及び組織は、in vivoでの状況により近いために、本発明の毒性検定で得られる結果は、当該検査化合物のin vivoでの催奇形性にも相関していると予測される。
【0112】
例えば、化合物、特に心臓内活性化合物を、DE 195 25 285 A1; Seiler et al., ALTEX 19 Suppl. 1 (2002), 55-63;Takahashi et al., Circulation 107 (2003), 1912-1916, and Schmidt et al., Int. J. Dev. Biol. 45 (2001), 421-429で解説された方法に従って検査することができ、この後者の文献は、ES細胞の心臓及び筋原性の細胞への分化を濃度依存的に判定することによる、胎芽毒性物質のスクリーニングのための欧州連合バリデーション研究で用いられたES細胞検査(EST)を解説したものである。
【0113】
本発明の方法により生じた、又は、前記方法での分化中に生じた中枢神経系(CNS)の細胞及び組織は、例えば米国特許第6,498,018号で解説されたものなどの細胞培養などで検査することができる。同様に、肝臓に関係する細胞及び組織を検査することができる。例えば米国出願US2003/0003573を参照されたい。胚発生に対する化学的誘導性効果を検出したり、始原生殖細胞から得られた胚性生殖(EG)細胞を用いたマウス及びラット由来の分化後の多分化能胚性幹(ES)細胞に基づく胎芽毒性/催奇形性スクリーニングを目的とした分化を調べるための更なるin vitro検査法は、国際出願WO97/01644に解説されており、本発明の教示に従って適合させることができる。
【0114】
検査のために好適な化合物調合物には、全体的な調合物に対して有意な効果を有する保存剤などの付加的な成分は含まれない。このように、好適な調合物は、生物学的活性化合物と、例えば水、エタノール、DMSO等の生理学的に許容可能な担体とから基本的に成るものである。しかしながら、ある化合物が、医薬品添加物のない液体である場合、その調合物は、基本的に当該化合物のみで成っていてもよい。
【0115】
更に、複数の検定法を、化合物濃度を様々にして並行して行うことで、多様な濃度に対する示差的な応答を得てもよい。当業で公知のように、ある化合物の効果的な濃度の判定では、典型的には、1:10、又は他の対数尺、の希釈度からできる濃度範囲を用いる。当該濃度を、必要に応じて二回目のシリーズの希釈で更に細分化してもよい。典型的には、これらの濃度のうちの一つを、陰性のコントロール、即ちゼロ濃度又は検出レベル未満として用いる。
【0116】
対象となる化合物は、多数の化学的クラスを包含するものであるが、典型的にはこれらは有機分子である。候補物質は、タンパク質との構造上の相互作用、特に水素結合、に必要な官能基を含み、そして典型的には少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシル又はカルボキシル基を、好ましくは当該官能性化学基のうちの少なくとも2つに、含む。候補物質は、しばしば、上記の官能基のうちの一つ以上で置換された環状の炭素もしくは複素環構造及び/又は芳香族もしくはポリ芳香族構造を含む。候補物質はまた、ペプチド、核酸、サッカリド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、これらの誘導体、構造類似体又は組合せを含む生体分子の中にも見られる。
【0117】
化合物及び候補物質は、合成又は天然化合物のライブラリを含め、幅広いソースから得られる。例えば、ランダム化したオリゴヌクレオチド及びオリゴペプチドの発現を含め、幅広い有機化合物及び生体分子のランダムかつ指定された合成には多数の手段を利用することができる。代替的には、細菌、真菌、植物及び動物抽出物の形の天然化合物のライブラリが入手できるか、あるいは容易に作製される。例えば、胚様体及び球状腫瘍の対面培養株における腫瘍誘導性血管新生及びマトリックス-メタロプロティナーゼ発現の、古典的な中国医療で用いられる植物成分による阻害がWartenberg et al., Lab. Invest. 83 (2003), 87-98で解説されている。
【0118】
加えて、天然又は合成で作製されたライブラリ及び化合物は、従来の化学的、物理的及び生化学的手段により容易に改変され、またコンビナトリアル・ライブラリを作製するために用いてよい。公知の薬理学的作用物質に、例えばアシル化、アルキル化、エステル化、アミド化等の指定された又はランダムな化学修飾を行って、構造類似体を作製してもよい。
【0119】
更に当該化合物は、イオン強度、pH、総タンパク質濃度等に影響する成分などの付加的な成分が予め加えられた流体を含む試料中に含まれていてもよい。加えて、該試料を、少なくとも部分的な分画又は濃縮ができるように処理してもよい。例えば窒素下、凍結、又はこれらの組合せなど、当該化合物の分解を減らすように注意するのであれば、生物試料を保存してもよい。用いる試料の体積は、測定可能な検出ができる充分なものであり、通常は約0.1μl乃至1mlの生物試料があれば充分である。
【0120】
検査化合物には、上述した全クラスの分子が含まれ、更に、未知の内容物の試料を含めてもよい。数多くの試料が化合物を溶かした溶液を含むであろうが、適した溶媒に溶解させることのできる固体試料も検定してよい。目的の試料には、環境試料、例えば地下水、海水、鉱山廃棄物等;生物試料、例えば穀物、組織試料等から調製されるライセート;製造試料、例えば医薬の調製中の時間経過;や分析用に調製される化合物のライブラリ、等が含まれる。対象化合物の試料は、潜在的な治療上の価値、即ち薬物候補、について評価される。
【0121】
検査化合物は、任意的には、複数の化合物をスクリーニングするためのコンビナトリアル・ライブラリであってもよい。検査物質のこのような収集物は、約103乃至約105種の多様性を有することができ、通常は本方法の実施にあたって逐次減らされ、選択的には他のものと2回以上、組み合わされる。本発明の方法で同定された化合物は、溶液中で、又は、固体の支持体に結合させた後で、PCR、オリゴマ制限法(Saiki et al., Bio/Technology 3 (1985), 1008-1012)、アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ分析(Conner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80 (1983), 278)、オリゴヌクレオチド・ライゲーション検定法(OLA)(Landegren et al., Science 241 (1988), 1077)等、などの特異的DNA配列の検出に通常用いられるいずれかの手段により、更に評価、検出、クローニング、配列決定等を行うことができる。DNA解析のための分子技術がレビューされている(Landegren et al., Science 242 (1988), 229-237)。従って、本発明の方法は、胚性及び成体幹細胞の転写プロファイリングにも用いることができる。例えばRamalho-Santos et al., Science 298 (2002), 597-600; Tanaka et al., Genome Res. 12 (2002), 1921-1928を参照されたい。
【0122】
インキュベーションには、検査化合物とES細胞又はES由来細胞との間の接触が可能な条件が含まれる。接触はin vitro 及びin vivo 条件の両方で行わせることができる。例えば、「チップ」又は他の固体の支持体上の一個又は数少ないES細胞上で、化合物又は低分子のアレイを検査することが好ましいであろう。上記を参照されたい。例えば、チップ上の心筋細胞又はニューロンは、ある化合物に応答して、そして、有害であるか、又は少なくとも生物学的に活性な環境上の作用物質の検出のために、それぞれ収縮速度又は発火の数の読み取り値を生ずるであろう。
【0123】
ニューロンの生物学的適合性ある電極アレイにより、幹細胞は、アレイ自体の上で更に分化を起こすことができる。これらのアレイにより、既知又は未知の作用物質の存在に応答したES細胞由来ニューロン中の電気的活性のリアルタイムの変化を測定することができる。心筋細胞の電気的活性は、細胞を細胞外微小電極のアレイ上にプレートすることにより、観察することができる(Connolly et al., Biosens. Biores. 5 (1990), 223-234)。該細胞は規則的な収縮を示し、記録される細胞外シグナルは、細胞内電圧記録に対する関係を示す(上記のConnolly et al.)。この非侵襲的方法は長期の観察を可能にすると共に、典型的な全細胞パッチ・クランプ技術よりも簡単かつ丈夫である。
【0124】
従って、本発明のある好適な方法では、判定しようとする表現型上の応答は、好ましくは進行中の分化プロセス中に判定される、電気生理学的特性を含む。この実施態様は、幅広い生物学的活性化合物に関する変調基準パターンや、変調基準パターンのデータベースを提供するために特に適している。次に、該基準パターンを、検査化合物の同定及び分類に用いる。検査化合物の評価を、様々な結果を達成するために用いてよい。
【0125】
細胞内電位で惹起される変化のスペクトル密度シグナチャに従って生物学的作用物質を分類する方法は当業者に公知である。例えば米国特許第6,377,057号を参照されたい。このように、生物学的活性化合物は、それらのイオン・チャンネルに対する効果、膜電位及びイオン電流の変化、及び、励起可能な細胞において当該化合物が惹起する活動電位の周波数成分、に従って分類される。このような惹起される膜電位又は活動電位のスペクトル密度変化は、検査化合物により変調される各チャンネル種に特徴的なものである。膜電位におけるスペクトル変化のパターンは、応答性細胞を化合物に接触させ、膜電位又はイオン電流を経時的に観察することにより、判定される。これらの変化は、化合物又は化合物のクラスの、応答性細胞のイオン・チャンネルに対する効果と相関する。このスペクトル変化のパターンは、当該化合物に固有のシグナチャを提供し、チャンネル変調物質の特徴付けのための有用な方法を提供する。ある化合物の、イオン・チャンネルや、生きた細胞の活動電位に対する効果は、その化合物の分類及び種類に関する有用な情報を提供することができる。このような情報を抽出する方法及び手段は、生物学的に活性な化合物の分析にとって特に重要であり、医薬スクリーニング、薬物発見、環境観察、生物戦争検出及び分類等において具体的な用途を有する。全細胞ベースのバイオセンサの例がGross et al., Biosensors and Bioelectronics 10 (1995), 553-567; Hickman et al. Abstracts of Papers American Chemical Society 207 (1994), BTEC 76; 及びIsrael et al., American Journal of Physiology: Heart and Circulatory Physiology 27 (1990), H1906-H1917に解説されている。
【0126】
Connolly et al., Biosens. Biores. 5 (1990), 223-234は、培養細胞の電気的活性を観察するために開発された微小電極の平面アレイを解説している。この装置では、電極上方の絶縁層に表面トポグラフ的特徴を取り入れることができる。金電極の製造や、窒化珪素から成る絶縁層の蒸着及びパターン形成に、半導体技術が用いられている。これらの電極が、ニワトリ胚筋細胞の心臓細胞培養株を用いて検査され、この培養細胞の物理的拍動が、得られた同時の細胞外電圧測定値と相関付けられた。
【0127】
心臓イオン・チャンネルの分子制御がClapham, Heart Vessels Suppl. 12 (1997), 168-169に解説されている。Oberg and Samuelsson, J. Electrocardiol. 14 (1981), 13942は、心臓活動電位の再分極相についてフーリエ解析を行った。Rasmussen et al., American Journal of Physiology 259 (1990), H370-H389は、アメリカ食用蛙の心房における電気生理学的活性の数学的モデルを解説している。
【0128】
イオン・チャンネル分野全体に関し、大量の文献が存在する。この文献のレビューは一連の書籍、アカデミック・プレス刊、Edward C. Conley 及びWilliam J. Brammarによる"The Ion Channel Factsbook"、第1−4版のシリーズに見られよう。概観が細胞外リガンド-通門イオン・チャンネル(ISBN: 0121844501)、細胞内リガンド-通門チャンネル(ISBN: 012184451X)、内向き整流器及び細胞間チャンネル(ISBN: 0121844528)、及び電圧-通門チャンネル(ISBN: 0121844536)について、Hille, B. (1992) "Ionic Channels of Excitable Membranes", 2.sup.nd Ed. Sunderland MA: Sinauer Associatesに提供されている。
【0129】
別の局面では、本発明により提供された物質及び方法を用いて培養された又は改変された細胞を支持表面上に取り付け、対生物作用物質についてスクリーニングする。ある一例では、細胞を基板に接続して、外部刺激に応答した細胞内の電気生理学的変化を、例えば対生物作用物質のハイスルプットのスクリーニングとして用いるなどのために、測定できるようにする。さらに該細胞に、この細胞内の特定の遺伝子又は遺伝子産物を標的とする、発現させる、又はノックアウトするDNAをトランスフェクトすることもできる。コンピュータなどの測定装置に接続されたこのようなチップを取り付けた細胞を提供することにより、数多くの化合物を高速かつ精確にスクリーニングすることができる。更に、該細胞又はチップを、アレイに並べた測定装置に接続しても、大規模な並行スクリーニングができるであろう。
【0130】
本発明の検定法は、従来の研究室用フォーマットであってもよく、あるいは、ハイスルプットに向けて適合させることもできる。用語「ハイスルプット」(HTS)とは、複数の試料を同時に容易に分析できると共に、ロボット操作の可能性を有するような検定デザインを言う。ハイスルプット検定法の別の好ましい特徴は、所望の分析を達成するための試薬の使用量を減らす、又は、操作回数を抑えるように最適化された検定デザインである。検定フォーマットの例には、96ウェル、384ウェル又はより多くのウェルのプレート、浮遊する飛沫、及び、液体操作実験に用いられる「ラブ・オン・ア・チップ」マイクロチャンネル・チップがある。プラスチック製鋳型及び液体走査装置の小型化が進んでおり、又は、優れた検定装置がデザインされるにつれ、より多くの数の試料が、本発明のデザインを用いて行われようことを、当業者であれば熟知している。
【0131】
本発明の方法においては、前記の細胞は、例えば24−、96−、384−又は1586−ウェル・プレートであってよい微量定量プレートのウェル内など、容器内に容れられることが好ましい。代替的には、当該細胞を、カリパー社(米国マサチューセッツ州ニュートン)が提供するものなど、微小流体装置に導入することができる。別の好適な実施態様では、本発明の方法は、2、3、4、5、7、10又はそれ以上の測定値を、選択的には当該容器内の異なる位置で採集するステップを含む。本発明のスクリーニング法のある実施態様では、分化プロセス及び/又は組織構造形成を活性化又は阻害することが既知の化合物、例えばレチノイン酸など、を試料又は培地に加える。適した化合物については、やはり上記を参照されたい。
【0132】
更に、もちろん上述の方法を、上述のスクリーニング法のうちのいずれか一つ、又は、当業で公知の他のスクリーニング法の、一つ以上のステップと組み合わせることができる。臨床用化合物発見の方法には、例えばリードの同定のための超ハイスルプット・スクリーニング法(Sundberg, Curr. Opin. Biotechnol. 11 (2000), 47-53)や、構造ベースの薬物デザイン(Verlinde and Hol, Structure 2 (1994), 577-587)及びリードの至適化のためのコンビナトリアル化学法(Salemme et al., Structure 15 (1997), 319-324)が含まれる。ある薬物が選択されたら、本方法は、合理的薬物デザインを行うために用いられた方法を改変後の薬物を用いて繰り返して、前記改変後の薬物がより良好な親和性を示すかどうかを、相互作用/エネルギ分析などに従って評価する付加的なステップを有することができる。化合物の前記収集物の相違点が逐次減らされるように、本発明の方法を一回以上、繰り返してもよい。
【0133】
物質は、排出されるか、又は、一種以上の活性もしくは不活性な代謝産物に代謝されるかのいずれかにより除去されるために、それらのin vivoへの投与後、代謝される(Meyer, J. Pharmacokinet. Biopharm. 24 (1996), 449-459)。このように、本発明の方法に従って同定され、得られた実際の化合物又は薬物を用いるのではなく、患者内で彼/彼女の代謝によりその活性型へと転化される対応する調合物をプロドラッグとして用いることができる。プロドラッグ及び薬物の使用に関して払われると思われる予防措置が文献に解説されている。レビューについては、例えばOzama, J. Toxicol. Sci. 21 (1996), 323-329を参照されたい。
【0134】
更に、本発明は、これらの方法のいずれか一つにより同定された、単離された及び/又は作製された化合物を、損傷した組織又は異常な組織又は器官形成、心臓の不全等に関する異常の治療用組成物の調製に用いることに関する。更に上記を参照されたい。好ましくは、当該の単離された化合物又は対応する薬物が創傷治癒及び/又は損傷組織の治癒を支援するとよい。治療の方法としては、当該の同定された物質又はそれを含有する組成物を、このような異常に罹患した対象に投与することができる。上述の方法により同定された、単離された及び/又は作製された化合物を、更に、薬物発見や、薬物又はプロドラッグの調製のためのリード化合物として用いることもできる。これには通常、当該のリード化合物もしくはその誘導体、又は、ここで解説された通りの単離された化合物を改変するステップが含まれ、例えば前記物質を改変して、毒性を起こす、生物学的利用能、可溶性及び/又は半減期を高めると予測されるその一部分を変更、除去及び/又は誘導体化するなど、が含まれる。本方法には、さらに、単離又は改変された前記物質を薬学的に許容可能な担体と混合するステップを含めてもよい。上で引用された様々なステップは当業で公知である。例えばRein, Computer-Assisted Modeling of Receptor-Ligand Interactions (Alan Liss, New York, 1989)など、これらの技術を実施するためのコンピュータ・プログラムを利用することができる。化学的誘導体及び類似体の調製法は当業者に公知であり、例えばBeilstein, Handbook of Organic Chemistry, Springer Edition New York Inc., 175 Fifth Avenue, New York, N.Y. 10010 U.S.A., 及びOrganic Synthesis, Wiley, New York, USAに解説されている。更に、適した誘導体及び類似体のペプチド・ミメティック及び/又はコンピュータ支援されたデザインを、例えば上述した方法などに従って用いることができる。薬物発見におけるリード作製のための方法には、更に、タンパク質の使用や、質量分析法(Cheng et al., J. Am. Chem. Soc. 117 (1995), 8859-8860)及びいくつかの核磁気共鳴(NMR)法(Fejzo et al., Chem. Biol. 6 (1999), 755-769; Lin et al., J. Org. Chem. 62 (1997), 8930-8931)などの検出法が含まれる。これらは、更に、定量的構造-作用関係(QSAR)解析(Kubinyi, J. Med. Chem. 41 (1993), 2553-2564, Kubinyi, Pharm. Unserer Zeit 23 (1994), 281-290)、コンビナトリアル生化学、古典的な化学法及び他のもの(例えばHolzgrabe and Bechtold, Pharm. Acta Helv. 74 (2000), 149-155を参照されたい)を含むか、又はこれらに依拠するであろう。更に、担体の例や調合の方法はレミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンセズに見られよう。
【0135】
本発明の上述した方法のいずれか一つに従って薬物が選択されたら、その薬物又はそのプロドラッグを治療上有効量、合成することができる。ここで用いる場合の用語「治療上有効量」は、患者にとっての意味ある利益、即ち、損傷した組織の治療、治癒、防止又は改善、又は、このような状態の治療、治癒、防止又は改善の速度の上昇、を示すために充分な、当該薬物又はプロドラッグの総量を意味する。加えて、又は代替的に、特に薬物の前臨床検査に関して、用語「治療上有効量」には、ヒト以外の動物検査で生理学的応答を惹起するために充分な薬物又はプロドラッグの総量が含まれる。
【0136】
更に本発明は、ここで前述したベクタ又はベクタの組成物と、多能又は多分化能細胞と、選択的に培地と、組換え核酸分子と、標準的化合物等とを含有する、本発明の上述の方法のいずれか一つを行うために有用な、ここで前述したものなどの具体的な試薬を含有するキット組成物にも関する。このようなキットは、典型的には、少なくとも一個の容器を固く保持しておくために適した区画されたキャリアを含むであろう。前記キャリアは、更に、前記方法を行うために有用な試薬を含むであろう。また前記キャリアには、標識済みの酵素基質等、検出用の手段を容れてもよい。
【0137】
従って、ここで前述した本発明の手段及び方法は多種の用途で用いることができ、その中には、限定はしないが、特定の遺伝子のホモ接合型変異を含有するES細胞を用いた「機能喪失」検定、外因性遺伝子を過剰発現しているES細胞を用いた「機能亢進」検定、invitroでの催奇形性/胎芽毒性化合物の発生分析、病的細胞機能の薬理学的検定及びモデル系の確立、並びに、組織移植片の源として利用することのできる選択的分化細胞の誘導のための分化因子及び成長因子の応用、がある。レビューについては、例えば Guan et al., Altex 16 (1999), 135-141を参照されたい。
【0138】
これら及び他の実施態様が開示されており、また、本発明の説明及び実施例に包含される。本発明に従って用いられる物質、方法、使用法及び化合物のいずれか一つに関する更なる文献を、公共の図書館及びデータベースから、例えば電子装置を用いるなどして検索できよう。例えば、米国国立保健研究所のナショナル・センター・フォー・バイオテクノロジ・インフォメーション及び/又はナショナル・ライブラリ・オブ・メディシンがホストである公共のデータベース「メドライン」を用いてもよい。 例えば欧州分子生物学ラボラトリ(EMBL)の一部であるヨーロピアン・バイオインフォマティックス・インスティテュート(EBI)のものなど、更なるデータベース及びウェブ・アドレスが当業者に公知であり、またインターネット検索エンジンを用いても得ることができる。バイオテクノロジにおける特許情報や、遡及的検索及び現在の知識に有用な特許情報の関連する源の調査の概観は Berks, TIBTECH 12 (1994), 352-364で得られる。
【0139】
上記の開示は本発明を概略的に解説するものである。より完全な理解は、以下の具体的な実施例及び図面を参照されれば得ることができるが、以下の具体的な実施例及び図面は、描写のみを目的として提供されたのであり、本発明の範囲を制限することは意図していない。(本出願全体を通じて引用された文献、発行済み特許、公開済み特許出願や、メーカの明細書、指示等を含む)全引用文献の内容を、引用をもってここに援用することを明示しておく。しかしながら、引用されたいずれの文献も、本発明にとって事実上の従来技術であると自認するものではない。
【0140】
本発明の実施にあたっては、そうでないと明示しない限り、当業の水準である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子導入生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来技術を利用するであろう。
【0141】
幹細胞テクノロジに関する概略的な技術の更なる詳細に関しては、実施者は、標準的なテキスト及びレビュー、例えばTeratocarcinomas and embryonic stem cells: A practical approach (E. J. Robertson, ed., IRL Press Ltd. 1987); Guide to Techniques in Mouse Development (P. M. Wasserman et al., eds., Academic Press 1993); Embryonic Stem Cell Differentiation in Vitro (Wiles, Meth. Enzymol. 225 (1993), 900,); Properties and uses of Embryonic Stem Cells: Prospects for Application to Human Biology and Gene Therapy (Rathjen et al., Reprod. Fertil. Dev. 10 (1998), 31,)などを参照することができる。幹細胞の分化は、Robertson, Meth. Cell Biol. 75 (1997), 173; 及びPedersen, Reprod. Fertil. Dev. 10 (1998), 31でレビューされている。上に既に述べた幹細胞の供給源の他にも、更なる参照が提供されている。Evans and Kaufman, Nature 292 (1981), 154-156; Handyside et al., Roux’s Arch. Dev. Biol., 196 (1987), 185-190; Flechon et al., J. Reprod. Fertil. Abstract Series 6 (1990), 25; Doetschman et al., Dev. Biol. 127 (1988), 224-227; Evans et al., Theriogenology 33 (1990), 125-128; Notarianni et al., J. Reprod. Fertil. Suppl., 43 (1991), 255-260; Giles et al., Biol. Reprod. 44 (Suppl. 1) (1991), 57; Strelchenko et al., Theriogenology 35 (1991), 274; Sukoyan et al., Mol. Reprod. Dev. 93 (1992), 418-431; Iannaccone et al., Dev. Biol. 163 (1994), 288-292を参照されたい。
【0142】
分子遺伝学及び遺伝子操作の方法は、概略的には、現在の版のMolecular Cloning: A Laboratory Manual, (Sambrook et al., (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press); DNA Cloning, Volumes I and II (D. N. Glover ed., 1985); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed., 1984); Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Miller & Calos, eds.); Current Protocols in Molecular Biology and Short Protocols in Molecular Biology, 3rd Edition (F. M. Ausubel et al., eds.); and Recombinant DNA Methodology (R. Wu ed., Academic Press) に解説されている。 Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Methods In Enzymology, vols. 154 and 155 (Wu et al. eds.); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); 論文、Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker eds., Academic Press, London, 1987); Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell eds., 1986)。この開示で言及された遺伝子操作のための試薬、クローニング・ベクタ及びキットは、業者、例えばバイオラド社、ストラタジーン社、インビトロジェン社、及びクロンテック社から入手可能である。細胞培養及び培地収集における一般的技術は、Large Scale Mammalian Cell Culture (Hu et al., Curr. Opin. Biotechnol. 8 (1997), 148); Serum-free Media (Kitano, Biotechnology 17 (1991), 73); Large Scale Mammalian Cell Culture (Curr. Opin. Biotechnol. 2 (1991), 375); and Suspension Culture of Mammalian Cells (Birch et al., Bioprocess Technol. 19 (1990), 251) に概説されている。培地や、培養環境に対するそれらの影響に関する他の観察がマーシャル・マクルーハン氏及びフレッド・アレン氏によりなされている。
【0143】
実施例
実施例1: ES細胞由来心筋細胞の薬物選択のためのトランスジェニックES細胞クローンの作製
ベクタのデザイン
心臓特異的α-ミオシン重鎖(αMHC)(GenBank受託番号:U71441; Subramaniam et al., J. Biol. Chem. 266 (1991), 24613-24620; Sanbe et al., Circ. Res. 92 (2003), 609-616)のプロモータ領域の5.5 kbのBamHI-SalI断片と、ピューロマイシン耐性カセット(Pac)のコーディング領域とを、ヒトサイトメガロウィルス(CMV)初期プロモータ(PCMV IE)をAseI-Eco47 IIIで切断した後で、pIRES2-EGFP ベクタ(クロンテック社(R))のマルチクローニング(MCS)部位に挿入した。その結果のバイシストロン性ベクタ(pαPIG)内で、心臓特異的αMHCプロモータは、薬物選択マーカとしてのPacと、生きたレポータ遺伝子としての強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)の両方の発現を作動させる。IRES(内部リボソーム進入部位)配列により、安定にトランスフェクトされた細胞で両タンパク質の別々の翻訳が提供される。該ベクタは、更に、カナマイシン-及びネオマイシン耐性カセットを、それぞれ細菌及びES細胞の培養株中でのトランスフェクタントの選択のために含有する。
【0144】
ES細胞クローンのトランスフェクション及び選択
5×106個のES細胞(株D3:Doetschman et al., J. Embryol. Exp. Morph. 87 (1985), 27-45)に、SacIで直線化させたpαPIGベクタの30μgのDNAが電気穿孔法により注入された。細胞は、ミトマイシンで失活させたネオマイシン耐性フィーダ細胞の単層を含有する10cmの組織培養皿上に播種された。播種から48時間後に、ネオマイシン(G418)300μg/ml を、安定にトランスフェクトされたES細胞クローンを選択するために培地に加えた。選択開始から8乃至10日後、生存ES細胞のコロニーを採取し、トリプシン処理し、順に48ウェル、24ウェル及び6cmのプレート上で増殖させた。その結果のクローンをスクリーニング用の心臓分化プロトコルで用いた。
【0145】
分化は、例えばMaltsev et al., Circ. Res. 75 (1994), 233-244で解説された通りに標準的な「ハンギング・ドロップ」プロトコルに従って行わせた。発生8乃至10日目に、EGFP蛍光を発現している拍動する胚様体(EB)をピューロマイシン10μg/mlで処理した。ピューロマイシンによる細胞死は、既に処理後12時間で明白であり、この時点で、クローンの数のうちで、EGFP陽性細胞の拍動のある集塊は処理を生き延びただけでなく、強力な拍動率を示した。処理後3乃至5日目で既に、強く拍動しているEGFP陽性細胞集塊は、プレートされたEBやEBの懸濁培養の中の細胞の主な割合を占めた。
【0146】
EGFP及びピューロマイシン耐性カセットの両方の心臓特異的発現を示した2つのクローン(αPIG10及びαPIG44)が選択され、更なる実験に用いられた。
【0147】
実施例2: 精製済みES細胞由来心臓細胞及びマウス胚性線維芽細胞の共培養
ピューロマイシン処理の7乃至10日後に、心臓細胞の拍動するEGFP陽性集塊を遠心分離で採集し、PBSで2回、洗浄し、20分間、37℃で0.1%のコラゲナーゼB(ベーリンガー・マンハイム社)で処理した。10分後、そしてインキュベーションの終了時に、細胞懸濁液を1mlのピペットのブルーチップを通じてやさしくピペットした。結果的に、20%のウシ胎児血清(FCS)を含有する1、2及び再度2容の培地を加え、細胞を遠心分離し、この培地で2回、洗浄し、再懸濁させ、蛍光顕微鏡下で計算した。
【0148】
マウス胚性線維芽細胞を14乃至16日齢の胚から、標準的な手法に従って得た。例えばJoyner A.L. Gene targeting. A Practical Approach. Oxford University Press, 1993を参照されたい。細胞をコンフルエントになるまで成長させ、0.05% トリプシンで処理し、20% FCS を含有する培地で2回、洗浄し、計算した。共培養には、ほぼ50×103個乃至100×103個の線維芽細胞を、等量の精製済みEGFP陽性ES細胞由来心筋細胞に混合し、×24ウェル・プレートの一つのウェル上にプレートするか、又は、実験によっては、マルチ-エレクトロード・アレイ(MEA)上にプレートした。図4に示すように、共播種から1日後に、線維芽細胞は単層を形成したが、EGFP陽性心筋細胞は、線維芽細胞に僅かに付着した僅かに一個又は細胞群しか示さなかった。続く1、2日間の間、ES細胞由来EGFP陽性心筋細胞は、線維芽細胞と完全な統合及び整列を示し、周囲の線維芽細胞に対して縦の形態及び方向性を獲得した(図4)。胚性線維芽細胞に統合された心臓細胞は、MEA実験で示されたように、少なくとも1、2週間の間は生存力及び収縮性を示した(図5)。多電極アレイ(MEA)で支援される細胞外記録のためには、ES細胞由来心筋細胞及び線維芽細胞は、MEAの中心の60本の窒化チタンの電極(直径30μm、間隔200μm)を持つガラス製基板(5cm×5cm)と内側の基準電極とから成る多電極アレイ(MEA;ドイツ、ロイトリンゲン、マルチ・チャンネル・システムズ社)上で培養された。心筋細胞からの細胞外電気生理学的記録は、MEA60 システム(ドイツ、ロイトリンゲン、マルチ・チャンネル・システムズ社)で行われた。このシステムは、MEA-1060 増幅器(帯域幅 10 Hz 乃至 3 kHz;増幅:1200)、培地を37℃に維持するための温度制御器 HC-X、及びMC ラック・ソフトウェアで測定データを記録するためのコンピュータ・システムを含むものである。記録のサンプル速度は4 kHzだった。
【0149】
実施例3: 精製済みES細胞由来心臓細胞及びマウス胚性線維芽細胞の共移植
マウス株SV129が、心筋細胞の作製に用いられるES細胞クローンの起源と適合させるために、標準的な手法(例えばJoyner A.L. Gene targeting. A Practical Approach. Oxford University Press, 1993を参照されたい)により胚性線維芽細胞の調製に用いられた。50×103個乃至100×103個の精製された心筋細胞及び線維芽細胞の両者を混合し、SV129 マウスの寒冷梗塞心臓に、Roell et al., Circulation 105 (2002), 2435-2441に解説された通りに注射した。EGFP蛍光と横紋の両方を示す心筋細胞が、術後10乃至70日後の時間枠内に移植された心臓内で検出された(図6)ことから、移植されたES細胞由来心臓細胞の生存力が裏付けられた。
【0150】
実施例4: 組織モデリング用のトランスジェニックES細胞クローンの基本的デザイン
ベクタのデザイン:
ベクタの基本的要素は、共通のプロモータ及び特異的エンハンサ配列を含む、細胞種特異的ゲノム調節配列(所謂「プロモータ」)である。典型的には、これらは、遺伝子コーディング領域の上流領域に伸び、ときには翻訳されないイントロン-エキソン断片も含む。プロモータは、薬物耐性カセットの細胞特異的活性化を決定するが、この薬物耐性カセットは、ベクタの二番目の基本的要素であると共に、通常はこの後者からプロモータの右側の下流に続く。このような組合せにより、分化しなかったES細胞を、分化の過程で薬物耐性カセットを活性化する目的の細胞種とは無関係の細胞種に向かって分化中の細胞と一緒に、除去することができる。
【0151】
加えて、内部リボソーム進入部位(IRES)を介して薬物耐性カセットに接合した所謂生きた色彩蛍光タンパク質カセットをベクタ内に含めることが推奨される。このようなバイシストロン性ベクタにより、ある一つの細胞種特異的プロモータの下で、同じベクタから薬物耐性遺伝子カセットと生きたレポータ遺伝子カセットの両方を転写させることが可能になる。その後、IRESにより、両方のカセットの独立なリボソーム翻訳が可能となり、所定の分化細胞が観察に向けて視覚化される。今日までのところ、少なくとも3つの色の形の強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)− EYFP(黄色)、ECFP(青色)及びhcRFP(赤色)−を、同じ培養株で少なくとも3つの異なる細胞種を同時に視覚化するために利用することができる。このようなベクタの基本的デザインを図1に示す。
【0152】
トランスジェニックESクローン:
本発明の方法の中核は、目的の組織を構成している細胞種を、分化中のES細胞の一つの培養株の中で並行して薬物選択することである。このようなアプローチの利点は、精製済みの細胞種同士の間の相互作用が、無関係の細胞から解放された直後に、「クロストーク」シグナル伝達への天然のキューを用いて「天然の」方法でプロセッシングされ、所産として生存力ある組織様構造が形成される点である。このようなアプローチの2つの変形例を提供する:
a)所望の組織種を構成する細胞種に応じた特異的プロモータにより作動する薬物選択カセットを持つ特定の数のベクタを安定にトランスフェクトした多重トランスジェニックES細胞クローン。このような変形例では、現れる全ての細胞種は、一個の共通の前駆ES細胞クローンを起源とし、その結果生ずる異なる細胞成分間の比は、 それぞれの各々の相対的分化率に依存する(図2A及び3B);
b)キメラ胚様体(EB):このアプローチにより、数多くのトランスジェニックES細胞クローンが生じ、この場合、各一個のクローンは細胞種特異的プロモータのうちの一つにより作動する薬物耐性カセットを持つベクタを一個のみ、持つ。組織モデリングには、ES細胞集合体(EB)を形成させるために、関係するクローンを、分化の初期段階(「ハンギング・ドロップ」又は「大量培養」)で混合しなければならず、この場合、薬物選択後、現れる細胞種は、異なる対応するES細胞クローンを起源とし、細胞成分間の最終的な比は、やはり、異なるES細胞株間の最初の比に依存し、またそれにより制御することができる(図2B及び3C)。
【0153】
実施例5: ES細胞系における心臓組織モデリング
上記のバイシストロン性ベクタの基本的スキームに基づいたES細胞由来心筋細胞の薬物選択のための系が確立された。この目的のために、α-ミオシン重鎖の心臓特異的プロモータ(αMHCプロモータ)と、ピューロマイシン耐性カセットとが、それぞれ「細胞種特異的プロモータ」及び「細胞種選択用の薬物耐性カセット」(図1及び3A)として、IRES及び強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)をそれぞれ「IRES」及び「生きた蛍光レポータ・カセット」(図1)として持つベクタ pIRES2-EGFP (クロンテック社(R))に挿入された。更に国際出願WO02/051987の実施例1及び2も参照されたい。この系により、移植に適した生存力ある心筋細胞の迅速かつ効率的な精製が可能になる。この系の明白な長所は、分化、心臓特異的選択や、移植細胞の運命を観察できることで立証される。更に、共培養の1、2日のうちで、ピューロマイシン-精製済み心筋細胞は胚性線維芽細胞に完全に統合及び整列することも示された(図4)。このような共培養においては、ES細胞由来精製済み心筋細胞は、少なくとも二週間の間、良好な機能的状態を維持し、この間、自発的な収縮及び外界電位(FA)信号の両方が、多電極アレイ(MEA)測定を通じて記録された(図5)。
【0154】
線維芽細胞は、哺乳動物及び非哺乳動物種の結合組織の鍵となる細胞要素であることが知られている。特にマウス心では、これらは胚性心の最高50%、そして成体心では最高80%を構成する。心臓組織のもう一つの重要な非心臓要素は、重要な栄養上の機能を持つ毛管及び血管のための主要な細胞要素としての内皮細胞により提供される。このように、ES細胞由来の心臓、内皮及び線維芽細胞は、心臓様組織を形成するために充分な一揃いを構成することができると予測される。
【0155】
ベクタ及びES細胞クローンのデザイン:
1)心臓特異的ベクタの場合、上記のαMHCプロモータを用いることも、あるいは他の心臓特異的プロモータ(MLC2v、MLC1a、MLC2a、β-MHC等)を「細胞種特異的プロモータ」とし、そして強化シアン蛍光タンパク質(ECFP、クロンテック社(R))を生きたレポータ遺伝子として、IRES及びピューロマイシン(又はいくつかの他の選択マーカ)カセットと一緒に、図3Aに従って用いることができる。
【0156】
2)内皮細胞特異的ベクタの場合、Tie2 (又は他の内皮細胞特異的プロモータ、例えばTie1、カドヘリン(原語:Cadherin)等)を「細胞種特異的プロモータ」とし、そして強化黄色蛍光タンパク質(EYFP、クロンテック社(R))を生きたレポータ遺伝子として、IRES及びピューロマイシン(又はいくつかの他の選択マーカ)カセットと一緒に、図3Aに従って用いることができる。
【0157】
3)線維芽細胞特異的ベクタの場合、コラーゲンI(又は他の線維芽細胞特異的プロモータ)を「細胞種特異的プロモータ」とし、そしてhcRed蛍光タンパク質(hcRFP、クロンテック社(R))を生きたレポータ遺伝子として、IRES及びピューロマイシン(又はいくつかの他の選択マーカ)カセットと一緒に、図1に従って用いることができる。
【0158】
ES細胞クローンのデザイン、分化及び選択スキームは、上記の2つの主な原則に従って行うことができる:3つのベクタ−一つのクローン」(図3B)又は3つのベクタ−3つのクローン(図3C)である。ES細胞由来細胞種のトランスフェクション及び選択並びに移植は、引用をもってその開示内容をここに援用することとする国際出願WO02/051987 に解説された通りに行われる。具体的にはWO02/051987の実施例1及び2並びにそこで引用された参考文献を参照されたい。
【0159】
3つの異なる生きた蛍光レポータ・ベクタを用いることにより、一個の培養株で組織形成中の分化、選択及び細胞対細胞の接続を、「生きた」モードで追跡することができる。ES細胞株における心臓組織様構造のin vitro 形成は、生化学実験及び電気生理学(MEA)実験で様々な心臓栄養性及び心臓毒性物質の検査にとって重要な生理学的系として用いることができる。更に、それは、心疾患置換治療法において移植材料の重要な源となるかも知れない。
【0160】
実施例6 ES細胞系における心臓−血管選択のための二重トランスジェニック系
この実験の主な目的は、機能の面と、共通の中胚葉起源という両方で相互に密接に関係した2つのES細胞由来細胞種の並行選択であった。この目的のために、安定な二重トランスジェニックES細胞クローンを作製した。このクローンにおいて、一方のベクタは薬物耐性カセットを心臓特異的プロモータの制御下に持ち、 他方、二番目のものは、薬物耐性及び生きた蛍光レポータ・カセットの両方を内皮細胞特異的プロモータの制御下に持つ。心臓及び内皮細胞は、実際の胚発生の大変早い時期に現れ、形成中の心臓にとって機能的かつ解剖学的に大変近い関係する要素を成す。従って、分化中のES細胞の一個の培養株から効果的に選択されるため、これらの細胞種は、実際の胚の心臓発生中に起きるものに似たキューにより作動する自己集合のパターンを示すはずだと予測された。一番目の実験例では、内皮細胞様細胞は、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)の蛍光で同定され、無色の心筋細胞様細胞は、収縮性の集塊の検出により同定されねばならなかった。更なる実験では、上述のクローンと、両者とも心臓特異的プロモータにより作動する赤色蛍光タンパク質(HcRFP)及び薬物耐性カセットを持つ別のトランスジェニック・クローンの両方から成るキメラ胚様体を作製した。このように、後者の実験では、心臓細胞種及び内皮細胞種の両方の分化及び選択を視覚化することができた。
【0161】
ベクタ:
1)ベクタpαMHC-pacのために、ピューロマイシン耐性カセット(Pac)をpCre-Pac ベクタ(Taniguchi et al., Nucleic Acid Research 26 (1998, 679-680)からHind III - Sal I制限酵素により切り出し、αMHC-EGFP ベクタに、EGFPカセットをBamH I - Afl II 酵素で削除してから平滑末端ライゲートした。ES細胞の電気穿孔による注入のために、Hind IIIで直線化して出来たベクタを用いた。
2) ベクタ pTie2 -Pac-IRES-EGFP (pTie2-PIG) のためには、Pac-IRES-EGFP カセットをpPIG ベクタからSal I-Afl IIにより切り出し、pSPTg.T2FXK ベクタ(Schlaeger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94 (1997), 3058-3063)のTie2プロモータとTie2 エンハンサとの間のNotI部位に平滑末端ライゲーションにより挿入した。
【0162】
ES細胞の電気穿孔による注入のために、Tie2 プロモータ-PIG-Tie2 エンハンサ断片を、できたベクタからSal Iにより切り出し、1% アガロース・ゲルでの電気泳動により精製した。
3)ベクタpαMHC-hcRFP のためには、5.5kb の心臓αMHCプロモータ断片をBamH I - SaI I によりpαMHC-BS2SK(Robbins, Trends Cardiovasc. Med. 7 (1997), 185-191) から切り出し、pHcRed1-1(米国、クロンテック社(R))のSmaI 部位に平滑末端ライゲートした。
【0163】
ES細胞培養、形質転換及び分化のプロトコル:
解説された通りにES細胞を培養し、エレクトロポレーションを行った(Kolossov et al., J. Cell Biol. 143 (1998), 2045-2056)。5×106個のES細胞(D3株)に、それぞれ30μgのDNAのpαMHC-Pac 及びTie2 プロモータ-PIG-Tie2 エンハンサ断片を共トランスフェクトした。解説された通りにG418耐性クローンを選択し、増殖させ、分化させた(Kolossov et al., J. Cell Biol. 143 (1998), 2045-2056)。キメラEBの作製には、トランスジェニック・クローンTie2-PIG/αMHC-Pac 及びαMHC-hcRFP/αMHC-Pac からの細胞懸濁液を、1ml当たり、各クローンが最高0.01×106個の細胞の細胞密度になるまで混合した(1滴当たり各クローンの200個の細胞)。
【0164】
EBを蛍光顕微鏡 Axiovert 200M(ドイツ、ツァイス社)で観察した。
【0165】
クローンTie2-PIG/αMHC-Pac:
自発的収縮が発生の8乃至10日目に開始した。11乃至14日目に、最初のEGFP陽性細胞が、収縮性の心臓集塊に重なるか、大変近い区域の拍動性EBのみに検出された。この時点でピューロマイシン(5μg/ml)を加え、その後培地を2乃至3日毎に取り替えた。翌日の間、心臓集塊の収縮の増加が、EGFP発現の増加と共に検出された。と同時に、ピューロマイシン非耐性細胞の集中的な死がみとめられた。典型的には、ピューロマイシン処理から既に4日後に、EGFP陽性細胞は、心臓細胞の活発に拍動する集塊内に埋め込まれたネットワークを形成した。ピューロマイシン処理から10日及びそれ以降に、蛍光強度は劇的に増加した。
【0166】
キメラEB:クローンTie2-PIG/αMHC-Pac+クローンαMHC-hcRFP/αMHC-Pac:
上述したクローン由来のEBと同様に、キメラEBは、拍動区域で同じ時間経過のEGFP発現を示した。同時に、強力なRFP蛍光が、同じ拍動区域に検出され、分化心筋細胞のマーカとなった。驚くべきことに、EGFP及びRFP蛍光集塊は、空間的に重なっているが、明るい緑色−赤色のモザイク構造を呈した拍動集塊とは完全には重なっていなかった。緑色及び赤色の蛍光の両者とも、ピューロマイシン処理の間に著しく増加した。
【0167】
このように、上述した実験は、ES細胞系での心臓分化と内皮細胞分化との間の明白かつ強力な関係を明確に示すものである。収縮活性のないEBは、いずれのEGFP蛍光も発現しなかった。EGFP発現細胞のある大半の区域は、拍動集回に大変近く局在しているか、あるいは、それらと完全に重なっていたように、両方の細胞種とも、高い空間的一致も示した。ピューロマイシン処理後、これらの2つの細胞種間の関係は明白となった。未分化細胞の大半が死んだ後は、EGFP蛍光細胞のネットワークは拍動する心臓集塊内に埋め込まれ、構造上の方向性の兆候をしばしば示した。驚くべきことに、EGFP蛍光の強度が、ピューロマイシン処理中に劇的に増加したことで、心臓細胞に関して本発明で立証されたように、未分化ES細胞から解放された後の内皮細胞の増殖が暗に示された。
【0168】
特に拍動集塊の多色蛍光画像で明白なように、心臓要素と内皮細胞要素との間の密な関係をもとに、これらの構造物を、分化中の多重トランスジェニックES細胞培養株から薬物選択するという手段により作製される心臓血管組織様構造の始原型として考えることができる。
【0169】
最後に、提示されたデータは、多重トランスジェニックES細胞系における多重系譜選択を通じた「組織モデリング」の基本的な実現可能性を指摘するものである。
【0170】
当業者であれば、説明の欄で提供された組成物及び手法を、以下の請求項の範囲で具現化された本発明の精神から逸脱することなく効果的に改変することができることは認識されよう。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】図1は、本発明のES細胞系での組織モデリング用のベクタの主なスキームを示す。
【図2】図2は、(A)一個のトランスジェニックES細胞クローン;(B)は二個のトランスジェニックES細胞クローン、という2つのベクターを示す。
【図3】図3は、(A)ベクター・コンストラクト;(B)一個のトランスジェニックES細胞クローン;(C)三個のトランスジェニックES細胞クローン、という3つのベクタを示す。
【図4】図4は、ES細胞由来のピューロマイシン選択されたEGFP心筋細胞がマウス胚性線維芽細胞と共播種されたことを示す。共培養株におけるA、B - 1、5d; C 及びD - 6d。それぞれ5日目及び6日目での線維芽細胞とのEGFP心筋細胞の整列が明白である。
【図5】図5は、マウス胚性線維芽細胞と、ピューロマイシンで精製されたEGFP陽性のES細胞由来心筋細胞とを、コラゲナーゼ処理で分離させ、MEA上に共播種したことを示す。播種後4日目に拍動するEGFP陽性心臓集塊を線維芽細胞層上に完全に統合させ(A)、規則的FPをこれらの大半から記録した(B)。
【図6】図6は、ピューロマイシンで選択されたES細胞由来心筋細胞が、同系線維芽細胞と共移植された場合に、寒冷梗塞した区域に成功裡に移植されたことを示す。Aは、複合透過蛍光下で見た、移植後40日目の心臓を示す。B、Cでは、移植されたEGFP陽性(C)ES細胞由来心筋細胞がアルファ-アクチニン免疫染色後には横紋を示すことが分かる(B)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胚性幹(ES)細胞由来の第一細胞種を少なくとも1つの胚性第二細胞種の存在下で培養するステップと;前記少なくとも2つの細胞種を統合及び整列させて組織又は組織様構造にするステップとを含む、組織又は組織様構造をモデリングする及び/又は得る方法。
【請求項2】
前記ES細胞由来の第一細胞種のES細胞が、前記第一細胞種に特異的な第一細胞種特異的調節配列に作動的に連結された選択マーカを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択マーカがピューロマイシンに対する耐性をもたらす、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ES細胞由来の第一細胞種の前記ES細胞が、前記細胞種に特異的な第一細胞種特異的調節配列に作動的に連結されたレポータ遺伝子を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記レポータ遺伝子の前記細胞種特異的調節配列が、前記マーカ遺伝子の前記第一細胞種特異的調節配列と実質的に同じである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記レポータが、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)の様々な色の形から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記マーカ遺伝子及び前記レポータ遺伝子が、同じ組換え核酸分子上に含有されている、請求項4乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記マーカ遺伝子及び前記レポータ遺伝子が、同じシストロン上に含有されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第一細胞種が、ニューロン細胞、グリア細胞、心筋細胞、グルコース応答性インシュリン分泌性膵臓ベータ細胞、肝細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、軟骨細胞、骨芽細胞、網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、樹状細胞、毛嚢細胞、腎臓管上皮細胞、血管内皮細胞、精巣前駆細胞、平滑筋及び骨格筋細胞から成る群より選択される、請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第一細胞種が心筋細胞である、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第一細胞種特異的調節配列が心房及び/又は心室特異的である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの胚性第二細胞種が線維芽細胞又は内皮細胞である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つの細胞種を胚性又は胚性幹(ES)細胞由来の第三細胞種の存在下で培養するステップを更に含む、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記第三細胞種が内皮細胞又は線維芽細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかで定義される共培養細胞。
【請求項16】
請求項1乃至14のいずれかに記載の方法により得られる組織。
【請求項17】
(a)以前に損傷している組織区域の少なくとも一部分に、分化が惹起された請求項15に記載の細胞の共培養細胞、又は、請求項16に記載の組織、を含む細胞性接種原を導入する、ステップと:
(b)前記導入された細胞性接種原を、以前に損傷している前記組織区域内に配置された生存細胞又は組織として、in situに移植するステップであって、前記移植の結果、前記哺乳動物の組織及び/又は器官機能が向上する、ステップと
を含む、哺乳動物における組織修復及び/又は器官機能を向上させる方法。
【請求項18】
(a)同じ心臓特異的プロモータの制御下にある耐性遺伝子及びレポータ遺伝子を含む未分化哺乳動物胚性幹(ES)細胞を、in vitroで、前記耐性遺伝子に対する選択的作用薬を含有する培地中で、前記ES細胞の心筋細胞への分化が可能な条件下で、培養するステップと;
(b)前記分化心筋細胞を単離する、及び/又は、分化しなかった細胞を、選択的には、分化の過程で前記心筋細胞からは無関係の細胞種に向かって分化中の細胞と一緒に、除去する、ステップと;
(c)次に、前記心筋細胞を、胚性又はES細胞由来線維芽細胞と共に、心臓組織の以前に梗塞した区域の少なくとも一部分に共移植するステップと;
(d)前記導入された細胞性接種原を、前記心臓組織において以前に梗塞した区域内に配置された生存細胞として、in situに移植するステップであって、前記移植の結果、前記哺乳動物の心機能が向上する、ステップと
を含む、心筋梗塞後の哺乳動物における心機能を向上させる方法。
【請求項19】
前記耐性遺伝子及び前記レポータ遺伝子がバイシストロン性ベクタ内に含有され、かつIRESで分離されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記耐性遺伝子がピューロマイシンに対する耐性をもたらし、前記マーカがEGFPであり、そして前記プロモータが心臓αMHCプロモータである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(a)一つ以上の多能又は多分化能細胞に、少なくとも1つの選択マーカに作動的に連結された第一及び第二細胞種特異的調節配列を含む組換え核酸分子をトランスフェクトするステップであって、前記第二細胞種が、前記第一細胞種とは異なる、ステップと、
(b)前記細胞の分化が可能な条件下で前記細胞を培養するステップと、
(c)少なくとも2つの分化細胞種の細胞を単離する、及び/又は、分化しなかった細胞を、選択的には、分化の過程で選択マーカを活性化する目的の細胞種からは無関係の細胞種に向かって分化中の細胞と一緒に、除去する、ステップと;
を含む、組織又は組織様構造をモデリング及び/又は得る方法。
【請求項22】
前記一つ以上の細胞に、少なくとも1つの選択マーカに作動的に連結された少なくとも一つの更なる細胞種特異的調節配列を含む組換え核酸分子をトランスフェクトするステップであって、前記少なくとも1つの更なる細胞種が、前記第一及び第二細胞種とは異なる、ステップ、を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞が胚性幹(ES)又は胚性生殖(EG)細胞である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記組換え核酸分子が、同じベクタ又は異なるベクタ内に含まれている、請求項21乃至23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記細胞種が、ニューロン細胞、グリア細胞、心筋細胞、グルコース応答性インシュリン分泌性膵臓ベータ細胞、肝細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、軟骨細胞、骨芽細胞、網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、樹状細胞、毛嚢細胞、腎臓管上皮細胞、血管内皮細胞、精巣前駆細胞、平滑筋及び骨格筋細胞から成る群より選択される、請求項21乃至24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記プロモータが、αMHC、MLC2V、カテリン(原語:catherin)、Tie-2 及びコラーゲン・プロモータから成る群より選択される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項27】
前記一つ以上の組換え核酸分子が、前記一つ以上の細胞に同時又は順番にトランスフェクトされる、請求項21乃至26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
少なくとも2つの異なる細胞又はそのクローンがトランスフェクト及び選択され、但し前記少なくとも2つの異なる細胞又は細胞クローンが、異なる細胞種特異的調節配列を持つ組換え核酸分子を含有する、請求項21乃至26のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも2つの異なる細胞又は細胞クローンが、細胞集合体の形成を可能にするために分化の初期段階で混合される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞集合体がキメラ胚様体(EB)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞又はその細胞クローンの一つがトランスフェクト及び選択され、但し前記細胞又は細胞クローンが、少なくとも2つの異なる細胞種特異的調節配列を持つ組換え核酸分子を含有する、請求項21乃至30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記異なる細胞種特異的調節配列に作動的に連結された前記選択マーカのうちの少なくとも2つが同一である、請求項21乃至31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記異なる細胞種特異的調節配列に作動的に連結された前記選択マーカのうちの少なくとも一つが、ピューロマイシン、ブレオマイシン、ヒグロマイシン、メトトレキセート、又はネオマイシンに対する耐性をもたらす、請求項21乃至32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記組換え核酸分子のうちの一つ以上が、前記細胞種特異的配列に作動的に連結されたレポータを更に含む、請求項21乃至33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記レポータが、強化緑色タンパク質(EGFP)の様々な色の形から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
EYFP(黄色)、ECFP(青色)及び/又はhcRFP (赤色)が異なる細胞種特異的配列に作動的に連結されている、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記選択マーカ及び前記レポータが、バイシストロン性ベクタから発現する、請求項34乃至36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
一つ以上の内部リボソーム進入部位(IRES)を更に含み、但し前記IRESが前記選択マーカ及び前記レポータを分離している、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
異なる細胞種の自己集合を起こさせるステップを更に含む、請求項21乃至38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記細胞又は細胞集合体の生理学的及び/又は発生上の状況を分析するステップを更に含む、請求項1乃至14又は21乃至39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記状況が、アレイ上の前記細胞の電気的活性の分化を観察することにより、分析される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記状況が、微小電極アレイ(MEA)で細胞外界電位を記録することにより分析される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
請求項21乃至42のいずれかに記載の方法により得られる一つ又は複数の細胞であって、少なくとも2つの細胞種に分化することができる、前記一つ又は複数の細胞。
【請求項44】
請求項21乃至42のいずれかに記載の方法により得られる少なくとも2つの異なる細胞種の細胞集合体。
【請求項45】
請求項1乃至42のいずれかに記載の方法により得られる、あるいは、請求項43に記載の細胞又は請求項44に記載の細胞集合体を含む、組織。
【請求項46】
請求項43に記載の細胞、請求項44に記載の細胞集合体、又は、請求項45に記載の組織、を含む器官。
【請求項47】
請求項43に記載の細胞、請求項44に記載の細胞集合体、請求項45に記載の組織、又は、請求項46に記載の器官、を含むインプラント又は移植片。
【請求項48】
請求項21乃至42のいずれかに記載の組換え核酸分子、請求項43に記載の細胞、請求項44に記載の細胞集合体、又は、請求項45に記載の組織、を含む物質の組成物。
【請求項49】
胚発生中の組織形成の初期段階、又は、このプロセスに対する因子及び化合物の影響、を分析するための、請求項1乃至14又は21乃至42のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項50】
請求項43に記載の細胞、請求項44に記載の細胞集合体、請求項45に記載の組織、又は、請求項46に記載の器官、を、損傷した組織又は器官の治療を必要とする対象にインプラント又は移植するステップを含む、対象における損傷した組織又は器官を治療する方法。
【請求項51】
(a)哺乳動物胚性幹細胞(ES)細胞に、心臓、線維芽細胞及び/又は内皮細胞特異的調節配列の制御下にある耐性遺伝子を含み、そして前記同じ特異的調節配列の下にある一つ以上のレポータも任意に含む、組換え核酸分子をトランスフェクトするステップと;
(b)前記ES細胞を、in vitroで、前記耐性遺伝子に対する選択的物質を含有する培地で、前記ES細胞の心筋細胞、線維芽細胞及び/又は内皮細胞への分化が可能な条件下で培養するステップと;
(c)前記分化心筋細胞、線維芽細胞及び/又は内皮細胞から、分化しなかった細胞を、任意には、無関係の細胞種に向かって分化中の細胞と一緒に、除去するステップと;
(d)任意のステップとして、前記分化中の心筋細胞、線維芽細胞及び/又は内皮細胞を心臓様の組織に整列及び統合させるステップと;
(e)次に、前記心筋細胞、線維芽細胞及び/又は内皮細胞又は前記組織を、心臓組織の以前に梗塞した区域の少なくとも一部分に共移植するステップと;
(f)前記導入された細胞又は組織を、心臓組織において前記以前に梗塞した区域内に配置された生存細胞としてin situに移植するステップであって、前記移植の結果、前記哺乳動物の心機能が向上する、ステップと
を含む、心筋梗塞後の哺乳動物の心機能を向上させる方法。
【請求項52】
前記心筋細胞、線維芽細胞及び/又は内皮細胞が、同じES細胞を由来とする、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記心筋細胞、線維芽細胞及び/又は内皮細胞が、異なるES細胞を由来とする、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記心臓特異的調節配列がαMHC、MLC22v、MLC1a、MLC2a 及びβMHCのプロモータから選択され、前記線維芽細胞特異的調節配列がTie2、Tie1 及びカテリン(原語:Catherin)のプロモータから選択され、そして前記内皮細胞特異的調節配列がコラーゲンIプロモータのプロモータから選択される、 請求項51乃至53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記心筋細胞、線維芽細胞及び/又は内皮細胞の前記レポータが、強化緑色蛍光タンパク質ECFP(青色)、EYFP (黄色)及びhcRFP(赤色)から個別に選択される、請求項51乃至54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記耐性遺伝子及び前記レポータが、内部リボソーム進入部位(IRES)により分断されている、請求項51乃至55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
請求項51乃至56のいずれかに記載の組換え核酸分子を含むベクタ又はベクタ組成物。
【請求項58】
請求項57に記載のベクタ又はベクタ組成物を含む一個の細胞又は複数の細胞。
【請求項59】
固体の支持体と、それに付着させた又はそこから懸架させた、請求項43に記載の細胞、請求項44に記載の細胞集合体、又は、請求項45に記載の組織、とを含むアレイ。
【請求項60】
微小電極アレイ(MEA)である、請求項59に記載のアレイ。
【請求項61】
請求項59又は60に記載のアレイを分析するための装置。
【請求項62】
(a)請求項43に記載の細胞、請求項44に記載の細胞集合体、請求項45に記載の組織、請求項46に記載の器官、又は、請求項59もしくは60に記載のアレイ、を含む検査試料を、検査物質に接触させるステップと;
(b)コントロール試料に比較したときの、前記検査試料中の表現型上の応答を判定するステップであって、コントロール試料に比較したときの、前記検査試料中の表現型上の応答の変化は、前記検査物質が、細胞発生及び/又は組織構造形成に対する効果を有することの指標である、ステップと
を含む、細胞発生及び/又は組織構造形成に影響することのできる検査物質を得る及び/又はプロファイリングするための方法。
【請求項63】
前記検査試料を、前記検査物質に、前記細胞又は細胞集合体が請求項1乃至14又は21乃至42のいずれかに記載の方法に供される前、供される間、又は供された後に接触させる、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記接触させるステップが、前記検査試料を、少なくとも一つの第二検査物質に、前記第一検査物質の存在下で接触させるステップを更に含む、請求項62又は63に記載の方法。
【請求項65】
好ましくは第一スクリーニングで、前記検査物質が含まれ、検査物質の収集物として提供される、請求項62乃至64のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
検査物質の前記収集物が、約103乃至約105種の多様性を有する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
検査物質の前記収集物の多様性が、逐次減らされる、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
請求項59又は60に記載のアレイ上で行われる、請求項61乃至67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
表現型上の応答が、進行中の分化プロセス中の電気生理学的特性を含む、請求項61乃至68のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
前記一つ以上の細胞が、標的遺伝子の発現を(過剰)発現させる又は阻害するように、遺伝子操作される、請求項1乃至14、21乃至42又は62乃至69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
分化プロセス及び/又は組織構造形成を活性化又は阻害することが公知の化合物が培地に添加される、請求項1乃至14、21乃至42又は62乃至70のいずれかに記載の方法。
【請求項72】
前記一つ以上の細胞又は組織が容器内に容れられている、請求項1乃至14、21乃至42又は62乃至71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
3回以上の測定値を、任意的には前記容器内の異なる位置で取るステップを含む、請求項1乃至14、21乃至42又は62乃至72のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
前記容器が、微量定量プレート内のウェルである、請求項72又は73のいずれかに記載の方法。
【請求項75】
前記微量定量プレートが、24−、96−、384−又は1586−ウェル・プレートである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
請求項62乃至75のいずれかに記載のステップを含む、薬物を製造する方法。
【請求項77】
請求項62乃至76のいずれかに記載のステップを含む、創傷治癒及び/又は損傷組織の治癒を支援する作用薬を製造する方法。
【請求項78】
前記物質を改変して、毒性を起こす、生物学的利用能、可溶性及び/又は半減期を高めると予測されるその一部分を変更、除去及び/又は誘導体化するステップを更に含む、請求項76又は77に記載の方法。
【請求項79】
単離された又は改変された物質を、薬学的に許容可能な担体と混合するステップを更に含む、請求項76乃至78のいずれかに記載の方法。
【請求項80】
請求項1乃至14、21乃至42、50乃至56又は62乃至79のいずれかに記載の方法を行うために有用であり、かつ、請求項57に記載のベクタ又はベクタの組成物、多能又は多分化能細胞、及び任意に培地、組換え核酸分子、又は標準的化合物、を含有する、キット又は組成物。
【請求項81】
請求項43に記載の細胞、請求項44に記載の細胞集合体、請求項45に記載の組織又は請求項46に記載の器官、請求項47に記載のインプラントもしくは移植片、請求項57に記載のベクタもしくはベクタの組成物、請求項48に記載の組成物、請求項59もしくは60に記載のアレイ又は請求項61に記載の装置の、薬物発見又は薬物動態学的もしくは薬理学的プロファイリングにおける使用。


【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−532474(P2008−532474A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516014(P2006−516014)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006698
【国際公開番号】WO2004/113515
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(505460260)
【氏名又は名称原語表記】AXIOGENESIS AG
【住所又は居所原語表記】Nattermannallee 1,Gebaude S20,50829 Koln,Germany
【Fターム(参考)】