説明

胞子発芽を抑制または遅延する化合物を含む培養培地

【解決手段】本発明は実質的に標的微生物を培養および検出するための培地に関し、前記標的微生物の少なくとも1つの酵素活性または代謝活性の検出を可能にする少なくとも1つの天然または合成の特異的基質と、前記標的微生物の培養および検出を妨げる能力のある、標的以外の微生物の胞子の発芽を抑制または遅延する少なくとも1つの化合物とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、臨床用または産業用の微生物試験の分野である。さらに詳細には、本発明は、試料中に、さらに詳細には、食品または環境に存在する可能性のある標的微生物の培養のための培地に実質的に関し、前記培地は、少なくとも1つの胞子発芽を抑制または遅延する化合物を含む。
【背景技術】
【0002】
本発明は、乾燥製品に関して詳細に以下に記載されるが、この構成は本発明の限定するものとはならない。
【0003】
品質および安全性が世界中の食品加工業の最大の関心事項である。出発原料および最終製品中の微生物叢を検出し、同定し、定量することが、そしてしたがって、その製造からその消費まで、製品の価値を保証することが、可能なはずである。このことから、製品の品質指標が分析され、大腸菌、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌、シュードモナス菌、桿菌、酵母菌、カビなどの腸内細菌のうち、改質細菌叢による全体の汚染レベルを示す。特に、粉乳中のコアグラーゼ陽性ブドウ球菌の調査が今日、不可欠になっている。
【0004】
コアグラーゼ陽性ブドウ球菌のなかでは、黄色ブドウ球菌が最も病原性の強いブドウ球菌属の種類であるが、ヒトに共生している。特に、黄色ブドウ球菌は、食中毒、化膿性の限局性感染、および、ある極端な場合では、移植を受けた、または人工心臓を有する特定のヒトの敗血症の原因となる。
【0005】
コアグラーゼ陽性ブドウ球菌の特異的な計数を可能にする培地を開発する難しさは、
この培地にとって、前記培地に存在するコアグラーゼ陽性ブドウ球菌(約10コロニー形成単位(CFU)/g)のきわめて低い汚染の検出を可能にする、良好な感度をもたせる必要性があるからだけでなく、
他の微生物、特にコアグラーゼ陽性ブドウ球菌に表現型的に近いバシラス属微生物などの微生物の時にはきわめて高くなる濃度を抑制できる必要性もある。
【0006】
これは、実際バシラス属微生物に関して、選択剤によってコアグラーゼ陽性ブドウ球菌とバシラス属とを識別することが特に困難であることがわかっており、このような細菌のうち1つに対して効果のある抑制剤のほとんどが他の細菌に対しても概して効果があるからである。こうして、Baird−Parker−RPF(家兎血漿+ウシフィブリノーゲン)タイプの従来の培地がバシラス属を効果的および系統的に抑制できないことが観察されてきた。
【0007】
さらに、食品加工分野では、製造業者が製品を生産するための処理を乾燥に頼ることが多く、この条件は一般に、特にその栄養型の微生物のほとんどを除去することを可能にする。しかし、バシラス属の細菌には、胞子を形成する能力によって、乾燥時に用いられるような過酷な条件に耐えることができる。バシラス属の細菌はこのため、乾燥させた製品中に発見される。こうして、粉乳中のバシラス属汚染の濃度は高くなり得ることが観察されている。
【0008】
さらに、培地の調製に必要な出発原料のほとんどが、それ自体脱水型(粉末)であることが多い。
【0009】
このような乾燥出発原料はまた、上記のように、乾燥条件に耐えるこのようなバシラス属微生物によって通常は汚染されている。
【0010】
その結果、偽陽性の試験結果が、粉乳などの乾燥製品の微生物学的試験の中で頻繁に観察されており、バシラス属の細菌が、誤って、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌として分析される事実による。
【0011】
逆に、偽陰性のリスクが同じく高く、大量のバシラス属が頻繁にみられ、常に、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌の量よりも相当多く、後者の存在を隠してしまうことが多いためである。
【0012】
このことから、大量のバシラス属があると、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌などの標的細菌を同定、または計数をも目的とする培地の開発の大きな妨げとなり、食品試料などの分析試料中に存在するこのような微生物の存在の不正確な評価になりうるということが明らかであることは容易に理解できる。試料は、分析のため実体から単離された小さな部分または少量として定義される。
【0013】
コアグラーゼ陽性ブドウ球菌の特異的な計数のための培地を開発することを目的として、種々の方法が試験されてきたが、バシラス属の影響を抑えることに関しては、期待されたような成果は得られていない。
【0014】
このため、抗生物質などの選択剤が、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌に対して良好な感度を維持しながら、バシラス属微生物に対して良好な選択性を併せもつことができない。
【0015】
数十年前に遡る2報の文献が、胞子発芽に対するD−アラニンの作用を引用している。
【0016】
こうして、M.Halmann,A.Keynan、1962年、「Stages in germination of spore of Bacillus Licheniformis」、J.Bacteriol.84:1187−1193による文献から、L−アラニンデヒドロゲナーゼがバシラス・リケニフォルミスの胞子発芽の最初の生化学的ステップに必要であり、この最初のステップがD−アラニン、種々の塩類、ピルビン酸エチルおよびオクタノールによって抑制されうることが知られている。
【0017】
また、Yoko Yasusa−Yasakiら、1978年、「Inhibition of Bacillus subtilis Spore Germination by Various Hydrophobic Compounds:Demonstration of Hydrophobic Character of L−alanine Receptor Site」、Journal of Bacteriology、第136巻、No2、p.484−490による文献のなかで、発芽の開始に関与するL−アラニンの抑制剤が、
バシラス・リケニフォルミスおよびバシラス・セレウスに対するオクタノール、
巨大菌に対するフェニルエチルアルコール、
巨大菌、バシラス・セレウスおよび枯草菌に対する8−ヒドロキシキノリン、
バシラス・セレウスに対するエタノールおよびジシクロヘキシルカルボジイミドであることが言及されている。
【0018】
その後発表された試験は、微生物の胞子形成型の発芽機序の特性決定に実質的に焦点を当てており、このうちバシラス属が一例である。
【0019】
前記試験が実際、発芽過程に関与する種々のステップを記載している。
【0020】
発芽機序の知見は、実質的にこれまで、微生物の胞子、特にバシラスの胞子の発芽促進に用いられており、次の目的による。
発芽を加速し、これにより培地中の増殖/検出を改善する。
その栄養型の微生物を除去するための発芽を促進し、これが、培地中には抗生物質の形状で、あるいは、ある産業の洗浄工程において、洗剤または殺菌剤の形状で存在する阻害剤に対して高い感度であり、他の工程では、その部分が、高温処理に基づく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、前述した短所を、すでに明らかになった短所に対して挑む解決法を提供することによって改善することを提案し、胞子の発芽を促進させないが、逆に、これを阻止するか、少なくともこれを遅延することを含む。
【0022】
本発明は、さらに、抗生物質の使用に代わる全く好都合なものであり、この抗生物質の抗菌スペクトルは概して、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌などの標的微生物と、前記標的微生物の検出、同定または計数をも妨害する能力のある、バシラス属などの微生物との識別に必要なスペクトルには適合しない。
【0023】
本発明はまた、培地の栄養価を変えないという利点を有し、これによって上記の特異性の問題の回避と、乾燥製品のようなバシラス属の濃度が高い製品の分析用に特に適する開発された培地の作製を可能にする。
【0024】
その結果、本発明の実質的な目的の1つが、標的微生物の、特に細菌中の培養のための培地の使用にあり、分析される試料に含まれる可能性のある胞子の発芽を阻止、または少なくとも遅延する能力があり、前記標的微生物の増殖に影響がないものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このため、本発明の第1の主題は、標的微生物の培養および検出のための培地から成り、
前記標的微生物の少なくとも1つの酵素活性または代謝活性の検出を可能にする少なくとも1つの天然または合成した特異的基質と、
前記標的微生物の培養および検出を妨害する能力のある、標的微生物以外の微生物の胞子発芽を抑制または遅延する少なくとも1つの化合物を含む培地である。
【0026】
好ましくは、標的微生物は、黄色ブドウ球菌を含むコアグラーゼ陽性ブドウ球菌のうち、細菌である。
【0027】
本発明の目的のために、基質は、炭素または窒素源などの代謝基質であってよく、基質の製品劣化によってpHが変動し、前記変動は、pH指示薬を用いることによって検出可能である。pH指示薬は、微生物の増殖によるpHの変化に従って、色が変化する化学物質である。発色団の例として、ニュートラルレッド、アニリンブルーおよびブロモクレゾールブルーに言及する。第2の実施形態では、pH指示薬は発蛍光団(例えば、4−メチルウンベリフェロン、アミノクマリン誘導体またはレゾルフィン誘導体)である。
【0028】
基質はまた、加水分解され、探索される微生物に特異的な酵素活性の直接的または間接的な検出を可能にする製品になるあらゆる基質から選択されたものでよい。直接的な検出の場合、基質は酵素活性の特異的な第1の部分と、色素産生性または蛍光性である標識物として作用する第2の部分とから成る。
【0029】
本発明の主題である培地は、粉末の形状、ゲルの形状または溶液の形状でもよく、すぐ使用でき、言わば、試験管またはフラスコの中またはシャーレ上にすぐ植菌できる。ゲル培地の場合には、微生物の培養のための微生物学では寒天が従来のゲル化剤であるが、ゼラチンまたはアガロースも使用できる。最後に、培地は自動化細菌学的検査機器用の特別なボトル、カートリッジまたはカード(例として、Vitek(登録商標)カード、Tempo(登録商標)カードおよびBacT/ALERT(登録商標)ボトルに言及し、出願人によって販売されている)にパッケージされてもよい。この場合、遅延または抑制させる化合物は、その使用の前に培地に添加されることが意図される単独の溶液の形状中にあってよい。
【0030】
食品を原料とする試料の間には、全部ではないが、粉乳、穀類、粉末だしまたはケーキ調合剤などの乾燥製品の試料があると言ってもよい。これは、ペストリーの例でもある。最後に、食品試料には、特に動物の餌などの動物飼料に由来するものも可能である。
【0031】
表面試料、水試料または大気試料などの環境に関連する試料が作製されることに言及する。
【0032】
本発明の好ましい実施形態の1つには、バシラス属胞子の発芽を抑制または遅延する前記抑制または遅延する化合物がある。
【0033】
胞子発芽を抑制または遅延する化合物は、D−アラニン、ジフェニルアミン、式C2n+2OH(式中、nは6〜12)のアルコール類、好ましくは、オクタノール、ノナノールまたはデカノール、トリプシン型の酵素阻害剤および/またはそれらの混合物から成る群から有利に選択される。
【0034】
好ましい一実施形態によれば、前記培地中の胞子発芽を抑制または遅延する化合物の濃度は0.01〜1mol/lであり、好ましくは、0.05〜0.1mol/lである。
【0035】
培地はまた、基質の消費を明らかにするためのpH指示薬を含んでもよく、前記pH指示薬は好ましくは、発色団または発蛍光団である。
【0036】
通常、基質は、明らかにされる酵素活性または代謝活性に特異的な第1の部分と、蛍光標識として作用する第2の部分を含む。
【0037】
あるいは、基質は、明らかにされる酵素活性または代謝活性に特異的な第1の部分と、色原体標識として作用する第2の部分を含む。
【0038】
本発明のもう1つの主題は、試料中に存在する可能性のある標的微生物の検出のための方法に関し、
a)本発明による培地と前記試料を接触させる工程と、
b)微生物の細胞増殖に適する条件下で、前記培地をインキュベーションする工程と、
c)前記標的微生物の存在の検出する工程とを含む。
【0039】
特定の一実施形態によれば、本発明による方法は、前記標的微生物の培養および検出を妨害する能力のある、標的微生物以外の微生物の胞子出芽を抑制または遅延する化合物を少なくとも1つ含む溶液を、前記培地に添加することから成る工程を工程a)の前に含むことができることから成る。
【0040】
本発明による方法の工程c)は、蛍光リーダーを用いて培地中の蛍光のレベルの変動を測定することから成る方法で、この変動は、例えば、前記培地のpHの変動に対応する。
【0041】
あるいは、工程c)はコロニーを同定することから成る。この場合、本発明による培地は通常固体であり、特にシャーレ内では寒天培地の形態である。胞子の出芽が遅れるため、対象の細菌は、他の細菌よりも優先され、他の細菌より前に培地上で増殖する。このため、シャーレの初めの読み取りでは(例えば、植菌16時間後)、対象の細菌のコロニーだけが見える。後の読み取りでは(例えば、植菌24時間後)、前記読み取りは小さなコロニーから大きなコロニーを識別することから成る。胞子出芽によって得られる細菌のコロニーは、標的細菌のものよりもサイズが小さく、それ自体、正常に発育している。こうして、標的微生物とそれ以外の微生物を容易に識別できる。
【0042】
特定の一実施形態によれば、本発明による方法は、標的微生物を計数する別の工程を含むことができる。このような計数工程は、最確数(MPN)法に従って実施されるのが好ましい。この方法は、出願者名の欧州特許第1105457号明細書に説明されている。
【0043】
本発明の別の主題は、培地の調製のために、微生物の胞子の発芽を遅延または抑制する少なくとも1つの化合物に関する。
【0044】
全体的に好ましいのは、本発明は黄色ブドウ球菌などのコアグラーゼ陽性ブドウ球菌を同定することを対象とした培地の調製のためのD−アラニンの使用に関する。
【0045】
本発明の最後の主題は、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌の検出、同定またはさらに計数のための培地の使用に関する。
【0046】
抗生物質とは異なり、胞子発芽を抑制または遅延する化合物が概して幅広い温度で安定していることを考慮すれば、本発明による培地の調製は、培地を生産するための方法に関する従来の条件と全面的に両立できるという利点を有する。さらに、このような化合物は、低価格であることが多い。
【0047】
本発明の目的および利点は、図と併せて次の実施例に照らしてみると、さらに明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】D−アラニン有りおよび無しの培地で試験される試料とのインキュベーション後に得られた蛍光のレベルに対するCVの分布を示す度数分布のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0049】
以下に記載される実施例はバシラス型(バシラス・リケニフォルミス、バシラス・チューリンゲンシス/セレウスなど)の微生物の胞子に対するD−アラニンの抑制作用を記載する。
【0050】
これを実施するために、バシラス微生物を含む傾向があり、また黄色ブドウ球菌で汚染されていない粉乳製品の59の試料を試験した。
【0051】
D−アラニンの抑制効果を試験するために、2種類の培地を試験した。
培地1 D−アラニン無しの培地
培地2 培地中に0.05〜0.1mol/lの最終濃度(培地中の最終濃度)でD−アラニンが存在する培地
【0052】
前記培地の成分は次の通りである(g/lで表記、D−アラニン有りまたは無しの培地中の最終濃度)。
動物(ウシおよびブタ)および植物性ペプトン 12.5
糖類および増殖サプリメント 11
バッファー系 10
選択剤(抗生物質、塩類) 10.25
蛍光pH指示薬 0.06
消泡剤 0.4
【0053】
試料は、次のステップに従って、ISO国際標準規格8261:2001(「牛乳および乳製品に関し、微生物学的検査を目的とする保存懸濁液および10倍希釈の試験試料調製のための一般的ガイドライン」に関する)に従って調製した。
a)試料の10gを秤量し、Stomacher(登録商標)バッグに入れ、
b)試料の最初の1/10希釈を得るために、45℃にあらかじめ加温したトリプトン塩の希釈液90mlを添加し、
c)Stomacher(登録商標)機を用いて1分間の擦りつぶしを実施し、
d)このStomacher(登録商標)バッグを水浴に入れ、45℃で5分間攪拌し、
e)試料の1ml(1/10に希釈)を取り、1/40希釈が得られるよう3mlの培地に入れ、
f)37℃で24〜27時間でインキュベーションを実施し、
g)培地は蛍光によって読み取り、最確数法によって試料の微生物汚染レベルを測定した。
【0054】
培地の蛍光の測定から成る読み取りはインキュベーション後に得た。蛍光値の大きな変動は、培地の酸性化を裏づけており、前記酸性化自体は、1つ以上の微生物の増殖から得られる。
【0055】
蛍光値のCVは試験した試料に基づいて算出した(黄色ブドウ球菌により汚染されていなかった)。
【0056】
CVが高くなると、培地の酸性化が大きくなり、これにより培地中に存在する微生物が増殖したことを裏付けている。逆に、CVが低くなると、酸性化が小さくなり、これにより微生物の増殖が少なくなることを反映している。このことから、培地の特異性が優れており、このことから、偽陽性のリスクは低い(偽陽性の結果が黄色ブドウ球菌以外の微生物の細菌による培地の酸性化と関係がある)。
【0057】
この実施例で試験した試料は黄色ブドウ球菌で汚染されていないため、観察された酸性化は、黄色ブドウ球菌以外の種々の微生物の非特異的増殖に関連し、バシラス属(バシラス・リケニフォルミス、バシラス・チューリンゲンシス/セレウス)に属すると同定された。
【0058】
度数分布の形状から得られ、提示されたたプロファイルは、図1に示したように、2つの培地間のCVの分布がかなり異なることを示している。
【0059】
培地1(D−アラニン無し)により得られたCVは0〜24の値に分布するのに対して、培地2(D−アラニン有り)により得られた全ての値は6未満で、大部分は3未満である(わずかに酸性化)。
【0060】
培地中でのD−アラニンの使用によって、培地のインキュベーション後に得られるCV値を大幅に低下させることが可能になる。CVは、試験したこの例では、非特異的な酸性化に関係があることから、培地へのD−アラニンの添加によって、前記培地が胞子形成した試料のこのタイプに存在するバシラス属に関して優れた特異性をもたらす。
【0061】
以下の表1は、培地中にD−アラニン有りまたは無しで得られたカウントを要約している。

【0062】
試験した59の試料では、培地1は得られたカウントの結果が50.85%と良好な特異性を維持したことに留意する(MPN<10)。結果の49.15%が偽陽性であり、バシラス属の増殖によるもので、50CFU/gを上回るカウント結果をもたらしたものが6.78%あった。
【0063】
D−アラニンの培地への添加によって<10の結果の比率を50.85%から89.83%に改善することが可能となった。そこで、偽陽性の結果の比率は、49.15%から10.17%に低下し、D−アラニンの使用によって、50CFU/gを上回る偽陽性の結果は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的微生物の培養および検出のための培地であって、
前記標的微生物の少なくとも1つの酵素活性または代謝活性の検出を可能にする少なくとも1つの天然または合成の特異的基質と、
前記標的微生物の培養および検出を妨げる能力のある、標的以外の微生物の胞子の発芽を抑制または遅延する少なくとも1つの化合物とを含む培地。
【請求項2】
前記胞子の発芽を抑制または遅延する化合物は、D−アラニン、ジフェニルアミン、式C2n+2OH(式中、nは6〜12)のアルコール類、好ましくは、オクタノール、ノナノールまたはデカノール、トリプシン型の酵素阻害剤および/またはそれらの混合物から成る群から選択される請求項1に記載の培地。
【請求項3】
前記培地中の胞子発芽を抑制または遅延する化合物の量が0.01〜1mol/lであり、好ましくは、0.05〜0.1mol/lである請求項1または2に記載の培地。
【請求項4】
基質の消費を明らかにするためのpH指示薬をさらに含み、前記pH指示薬が、好ましくは発色団または発蛍光団である請求項1から3のいずれか1項に記載の培地。
【請求項5】
基質は、明らかにされる酵素活性または代謝活性に特異的な第1の部分と、色原体標識として作用する第2の部分を含む請求項1から4のいずれか1項に記載の培地。
【請求項6】
基質は、明らかにされる酵素活性または代謝活性に特異的な第1の部分と、蛍光標識として作用する第2の部分を含む請求項1から4のいずれか1項に記載の培地。
【請求項7】
前記抑制または遅延化合物は、バシラス属胞子の発芽を抑制または遅延する請求項1から6のいずれか1項に記載の培地。
【請求項8】
標的微生物は、黄色ブドウ球菌などのコアグラーゼ陽性ブドウ球菌である請求項1から7のいずれか1項に記載の培地。
【請求項9】
試料中に存在する可能性のある標的微生物の検出のための方法であって、
a)請求項1〜8のいずれか1項に記載の培地と前記試料を接触させる工程と、
b)微生物の細胞増殖に適する条件下で、前記培地をインキュベーションする工程と、
c)前記標的微生物の存在を検出する工程とを含む方法。
【請求項10】
工程a)の前に、
前記標的微生物の培養および検出を妨げる能力のある、標的微生物以外の微生物の胞子出芽を抑制または遅延する化合物を少なくとも1つ含む溶液を、前記培地に添加する工程を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程c)は、蛍光読取り器を用いた培養培地中の蛍光のレベルの変動の測定から成り、この変動は前記培地のpHの変動に対応する請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
工程c)は、コロニーの同定から成る請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
工程c)は、小さなコロニーと大きなコロニーを区別することから成る請求項9または10に記載の方法。
【請求項14】
試料は食品または環境試料である請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
標的微生物を計数する別の工程を含む請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の培地の調製ための微生物胞子の発芽を抑制または遅延する少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項17】
黄色ブドウ球菌などのコアグラーゼ陽性ブドウ球菌を同定することを対象とした請求項1〜8のいずれか1項に記載の培地の調製のためのD−アラニンの使用。
【請求項18】
黄色ブドウ球菌などのコアグラーゼ陽性ブドウ球菌を検出、同定、又は計数さえもするための請求項1〜8のいずれか1項に記載の培地の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2011−525802(P2011−525802A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515557(P2011−515557)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051201
【国際公開番号】WO2010/004164
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(504238301)ビオメリュー (74)
【Fターム(参考)】