説明

脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を有するカルボン酸エステル化合物及び該エステル化合物の製造方法

【解決手段】脂環式エポキシ基とビニルエーテル基との両方を含有する新規なカルボン酸エステル、その製造方法、これを含有する重合性組成物、およびこれを硬化させて得られる硬化物。
【効果】本発明の脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を含有するカルボン酸エステルは、低臭気性、低皮膚刺激性であり、これを含有する重合性組成物は、コーティング剤、インキ、塗料、接着剤、レジスト、製版材、絶縁材、光学材料などの種々の分野で極めて有用である。この重合性組成物は、硬化収縮率が小さく、カチオン重合開始剤、特に光カチオン重合開始剤を含有する本発明の重合性組成物は硬化時に酸素による重合阻害がほとんど無いという特徴を示す。また、低粘度であるため、希釈性、加工性にも優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を有するカルボン酸エステル化合物、該化合物を含有する重合性組成物およびその硬化物に関する。
本発明の脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を有するエステル化合物は、反応性の高いモノマーである。各種架橋剤や反応性希釈剤として用いられるほか、そのもの自身の重合物も、電気特性、寸法安定性、耐熱性、耐候性、耐薬品性、機械的特性に優れ各種成形品或いは光学材料としての使用も期待されている。
【背景技術】
【0002】
現在、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂などの重合性組成物は主に、インキ、塗料、接着剤、レジスト、製版材などの多くの分野で用いられている。この重合性組成物の主剤としては、アクリル系モノマーや多官能アクリレートが最も一般的である。
【0003】
ところが、アクリル系モノマーには皮膚刺激性や臭気性、酸素による重合抑制作用に付随する諸問題がある。一方、脂環式エポキシ化合物やビニルエーテル化合物等のカチオン重合性化合物には、皮膚低刺激性で低臭気性、かつ酸素の影響が少ないという特性があるが、それらのカチオン重合性化合物を用いてカチオン重合硬化物を得ることについては例示が少ない。
【0004】
例えば、1分子中に脂環式エポキシ基とビニルエーテル基との両方を有するエステル化合物としては、特開平11−171967号公報に4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが開示されているが、タック性、低収縮性または機械特性の点で優れた硬化物を与える硬化性組成物については示されていない。
【特許文献1】特開平11−171967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、低臭気性、低皮膚刺激性であり、またタック性、低収縮性及び機械特性の点で優れた効果物を与えるカチオン重合系重合性組成物を提供することを目的とする。
また、その重合性組成物を硬化した硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、上記の要件を満たす組成物を提供でき、種々の分野において極めて有用である新規な化合物を見いだし、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、新規な脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を有するカルボン酸エステル化合物及びその製造方法に関する。また、本発明は、該化合物を必須成分とする重合性組成物およびその硬化物に関する。
【0008】
さらに言えば、本発明は、以下の[1]に示される脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を有するカルボン酸エステル化合物、[2]〜[5]に示されるカルボン酸エステルの製造方法、[6]に示される重合性組成物及び[7]に示される硬化物に関する。
【0009】
[1] 下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表されるカルボン酸エステル。
一般式(1)
【0010】
【化9】

【0011】
(式中、Rは、下記一般式(3)又は炭素数2〜9のアルキレン基を表す。式中、R〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び炭素数1〜4のアルキル基から選ばれる原子または原子団を表す。)
一般式(3)
【0012】
【化10】

(式中、nは1〜4の整数を表す。)
一般式(2)
【0013】
【化11】

(式中、R11は、下記一般式(4)又は炭素数2〜9のアルキレン基を表す。式中、R12〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び炭素数1〜4のアルキル基から選ばれる原子または原子団を表す。)
一般式(4)
【0014】
【化12】

(式中、mは1〜4の整数を表す。)
[2] エステル交換触媒の存在下、下記一般式(5)又は(6)で表されるヒドロキ
シル基含有ビニルエーテル化合物の群から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(7)
又は下記一般式(8)で表される脂環式エポキシ基含有カルボン酸エステルの群から選ばれる少なくとも1種を反応させて、[1]に記載のカルボン酸エステルを製造する方法。一般式(5)
【0015】
【化13】

(式中、pは0〜4の整数を表す。)
一般式(6)
【0016】
【化14】

(式中、R21は炭素数2〜9のアルキレン基を表す。)
一般式(7)
【0017】
【化15】

(式中、R22は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数3〜4のアルケニル基を表す。)
一般式(8)
【0018】
【化16】

【0019】
(式中、R23は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数3〜4のアルケニル基を表す。)
[3] エステル交換触媒が、ジアルキル錫オキサイド、テトラアルキルチタネート、
金属アセチルアセトナート錯体、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物及び炭酸カリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする[2]に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【0020】
[4] 反応中に発生する炭素数1〜4のアルキルアルコール又は炭素数3〜4のアル
ケニルアルコールを反応系外に留去しながら反応させることを特徴とする[2]または[3]に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【0021】
[5] 反応中に生成する炭素数1〜4のアルキルアルコール又は炭素数3〜4のアル
ケニルアルコールの沸点よりも高い沸点を有する一般式(5)又は(6)で表されるヒドロキシ基含有ビニルエーテルを用いることを特徴とする[4]に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【0022】
[6][1] に記載のカルボン酸エステルを必須成分とすることを特徴とする重合性
組成物。
[7][6]に記載の重合性組成物を硬化して得られる硬化物。
【発明の効果】
【0023】
本発明の脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を含有するカルボン酸エステルは、低臭気性、低皮膚刺激性であり、これを含有する重合性組成物は、コーティング剤、インキ、塗料、接着剤、レジスト、製版材、絶縁材、光学材料などの種々の分野で極めて有用である。この重合性組成物は、硬化収縮率が小さく、カチオン重合開始剤、特に光カチオン重合開始剤を含有する本発明の重合性組成物は、硬化時に酸素による重合阻害がほとんど無いという特徴を示す。また、低粘度であるため、希釈性、加工性にも優れる。
【0024】
本発明の硬化物は、タック性、低収縮性及び機械特性の点で優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明(I)は、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表されるカルボン酸エステルに関する。
【0026】
本発明(II)は、本発明(I)の脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を含有するカルボン酸エステルの製造方法に関する。
本発明(III)は、本発明(II)の脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を含有するカルボン酸エステルを含有することを特徴とする重合性組成物である。
【0027】
本発明(IV)は、本発明(III)の重合性組成物を硬化して得られる硬化物である。
まず、本発明(I)について説明する。
【0028】
本発明(I)は、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される、脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を含有するカルボン酸エステルである。
一般式(1)
【0029】
【化17】

(式中、Rは、下記一般式(3)又は炭素数2〜9のアルキレン基を表す。式中、R〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び炭素数1〜4のアルキル基から選ばれる原子または原子団を表す。)
一般式(3)
【0030】
【化18】

(式中、nは1〜4の整数を表す。)
一般式(2)
【0031】
【化19】

(式中、R11は、下記一般式(4)又は炭素数2〜9のアルキレン基を表す。式中、R12〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び炭素数1〜4のアルキル基から選ばれる原子または原子団を表す。)
一般式(4)
【0032】
【化20】

(式中、mは1〜4の整数を表す。)
一般式(1)において、R〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び炭素数1〜4のアルキル基から選ばれる原子または原子団を表す。ここでいう「炭素数1〜4のアルキル基」としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、ここでいう「それぞれ独立に」とは、R〜R10のそれぞれが、
まったく異なる構造の基であっても、すべてが同じ基であっても、また、一部が同じ基で、その他が異なる基であってもよいこと意味する。他の一般式についても同様である。
【0033】
一般式(1)において、Rは、下記一般式(3)又は炭素数2〜9のアルキレン基を表す。
一般式(3)
【0034】
【化21】

(式中、nは1〜4の整数を表す。)
なお、ここでいう「炭素数2〜9のアルキレン基」は、直鎖状のアルキレン基であっても分岐状のアルキレン基であってもいっこうに差し支えない。
【0035】
炭素数2〜9のアルキレン基の例としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基等を挙げることができる。
【0036】
一般式(2)において、R12〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び炭素数1〜4のアルキル基から選ばれる原子または原子団を表す。ここでいう「炭素数1〜4のアルキル基」としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0037】
一般式(2)において、R11は、下記一般式(4)又は炭素数2〜9のアルキレン基を表す。
一般式(4)
【0038】
【化22】

(式中、mは1〜4の整数を表す。)
ここでいう「炭素数2〜9のアルキレン基」は、直鎖状のアルキレン基であっても分岐状のアルキレン基であってもいっこうに差し支えない。
【0039】
炭素数2〜9のアルキレン基の例としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基等を挙げることができる。
【0040】
次に本発明(II)の製造方法について説明する。
本発明(II)は、エステル交換触媒の存在下、下記一般式(5)又は(6)で表されるヒドロキシル基含有ビニルエーテル化合物の群から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(7)又は下記一般式(8)で表される脂環式エポキシ基含有カルボン酸エステルの群から選ばれる少なくとも1種を反応させて、本発明(I)に記載の脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を含有するカルボン酸エステルを製造する方法である。
一般式(5)
【0041】
【化23】

(式中、pは0〜4の整数を表す。)
一般式(6)
【0042】
【化24】

(式中、R21は炭素数2〜9のアルキレン基を表す。)
一般式(7)
【0043】
【化25】

(式中、R22は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数3〜4のアルケニル基を表す。)
一般式(8)
【0044】
【化26】

【0045】
(式中、R23は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数3〜4のアルケニル基を表す。)
エステル交換触媒としては、エステル基を活性化させアルコールとの反応を起こさせるものなら、基本的にはどのような触媒でも用いることが出来る。例えばアルカリ金属、ア
ルカリ土類金属及びアルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物、及びアルカリ金属及びアルカリ土類金属の弱酸塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルコラート、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、また、Hf,Mn,U,Zn,Cd,Zr,Pb,Ti,CoおよびSnの酸化物、Hf,Mn,U,Zn,Cd,Zr,Pb,Ti,CoおよびSnの水酸化物、Hf,Mn,U,Zn,Cd,Zr,Pb,Ti,CoおよびSnの無機酸塩、Hf,Mn,U,Zn,Cd,Zr,Pb,Ti,CoおよびSnのアルコキシド、Hf,Mn,U,Zn,Cd,Zr,Pb,Ti,CoおよびSnの有機酸塩、Hf,Mn,U,Zn,Cd,Zr,Pb,Ti,CoおよびSnのアセチルアセトナートのような有機錯体、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ジクロライド等の有機錫化合物,ジメチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等の3級アミン等である。
【0046】
これらの中で、ジブチル錫オキサイド,ジオクチル錫オキサイド,ジブチル錫ジクロライド等のジアルキル錫オキサイド、テトラメチルチタネート,テトライソプロピルチタネート,テトラブチルチタネート等のテトラアルキルチタネート、マンガンアセチルアセトナート,ジルコニウムアセチルアセトナート,ハフニウムアセチルアセトナ−ト等の金属アセチルアセトナート錯体、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸カリウムを用いることが好ましい。
【0047】
これらの中で、特に好ましいものとしては、ジブチル錫オキサイド,ジオクチル錫オキサイド,ジブチル錫ジクロライド等のジアルキル錫オキサイド、マンガンアセチルアセトナート,ジルコニウムアセチルアセトナート,ハフニウムアセチルアセトナ−ト等の金属アセチルアセトナート錯体である。
【0048】
一般式(5)において、pは0〜4の整数を表す。
一般式(5)で表されるヒドロキシル基含有ビニルエーテル化合物の具体例としては、以下一般式(9)〜(12)で示される化合物を挙げることができる。
一般式(9)
【0049】
【化27】

一般式(10)
【0050】
【化28】

一般式(11)
【0051】
【化29】

一般式(12)
【0052】
【化30】

【0053】
硬化物の物性或いは原料の入手の容易さを考慮すると、これらの中で好ましい化合物としては、
一般式(9)
【0054】
【化31】

及び
一般式(10)
【0055】
【化32】

【0056】
を挙げることができる。
一般式(6)において、R21は炭素数2〜9のアルキレン基を表す。また、ここでいう「炭素数2〜9のアルキレン基」は、直鎖状のアルキレン基であっても分岐状のアルキレン基であってもいっこうに差し支えない。
【0057】
一般式(6)で表されるヒドロキシル基含有ビニルエーテル化合物の具体例としては、
2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−2−メチルペンチルビニルエーテル等を挙げることができる。
【0058】
これらの中で好ましいものとしては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル等の1級水酸基を有するヒドロキシ基含有ビニルエーテル化合物を挙げることができる。
【0059】
一般式(7)において、R22は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数3〜4のアルケニル基を表す。R22の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、アリル基、メタリル基等を挙げることができる。エステル交換反応の反応性を考慮すると、アリル基、メタリル基が好ましい。
【0060】
一般式(7)において、R〜R10は、前述の通り、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び炭素数1〜4のアルキル基から選ばれる原子または原子団を表す。また、ここでいう「炭素数1〜4のアルキル基」とは炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基であっても分岐状のアルキル基であってもいっこうに差し支えない。
【0061】
一般式(8)において、R23は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数3〜4のアルケニル基を表す。R34の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、アリル基、メタリル基等を挙げることができる。エステル交換反応の反応性を考慮すると、アリル基、メタリル基が好ましい。
【0062】
一般式(8)において、R12〜R20は、前述の通り、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び炭素数1〜4のアルキル基から選ばれる原子または原子団を表す。また、ここでいう「炭素数1〜4のアルキル基」とは炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基であっても分岐状のアルキル基であってもいっこうに差し支えない。
【0063】
本発明(II)の反応の形態としては、一般式(7)又は一般式(8)で表される脂環式エポキシ基含有カルボン酸エステルと一般式(5)又は一般式(6)で表されるヒドロキシル基含有ビニルエーテル化合物とをエステル交換触媒の存在下に加熱するという方法をとる。反応温度は、使用するエステル交換触媒の種類によっても異なるが、30〜200℃、好ましくは50〜150℃の範囲から選ばれ、常圧または加圧下、または必要に応じて減圧下で、不活性ガス雰囲気中で行われることが望ましい。さらに、エステル交換反応は平衡反応であるため、反応を効率的に進行させるためには、生成するアルコールを反応系外に速やかに留出させたほうがよい。
【0064】
また、反応を効率的に進行させるためには、生成したアルコールは速やかに反応系外に留去されることが望ましいが、その際、原料として使用される一般式(5)又は一般式(6)で表されるヒドロキシル基含有ビニルエーテル化合物はできる限り留去されないことが望ましいので、反応中に生成するアルコールの沸点よりも高い沸点を有するヒドロキシ基含有ビニルエーテルを原料として使用することが望ましい。このような化合物を使用すれば、反応中に生成するアルコールの沸点よりも高く、ヒドロキシ基含有ビニルエーテルの沸点より低い温度で上記反応を行うことにより、ヒドロキシ基含有ビニルエーテルを反応系に保ちながら、反応中に生成するアルコールを速やかに反応系外に留去させることができる。
【0065】
一般式(5)又は一般式(6)で表されるヒドロキシル基含有ビニルエーテル化合物の使用量としては、原料である一般式(7)又は一般式(8)で表される脂環式エポキシ基を有するカルボン酸エステルに対して、理論量は最低限必要であり、反応速度、平衡等を考慮すれば、更に過剰モル使用したほうがよい。しかし、このヒドロキシル基含有ビニルエーテル化合物をあまりに大過剰用いても、その過剰量に見合う効果が出ないので経済的に好ましくない。よって通常、一般式(5)又は一般式(6)で表されるヒドロキシル基含有ビニルエーテル化合物は、原料である一般式(7)又は一般式(8)で表される脂環式エポキシ基を有するカルボン酸エステルの理論量に対して、1.05〜5倍モルより好ましくは1.1〜4倍モル程度を使用する。その際の仕込み方法としては反応の最初に仕込んでもよいし、反応途中に順次加えて入ってもよい。
【0066】
エステル交換触媒の使用量としては、原料エステル100質量部に対して0.01質量部〜3質量部、好ましくは0.05質量部〜2質量部程度である。この場合も、少なすぎる場合には反応速度が遅くなるし、多い場合にはその量に見合う効果が得られないばかりか、着色がひどくなり、また副反応のためにかえって収率が低下してしまう場合すらある。また、使用するエステル交換触媒の種類によっては、過剰の使用は、エステル交換触媒との分離に多大な時間や労力を要するという問題がある。
【0067】
本発明(I)のカルボン酸エステルの単離方法としては、使用する触媒の種類によって異なるが、例えば、ジブチル錫ジオキシドを使用した場合には、生成するアルコール及び過剰のヒドロキシル基含有ビニルエーテル化合物を留去後、生成した脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を含有するカルボン酸エステルが蒸留可能な化合物の場合には、蒸留精製を行うだけで、製品として使用できる精製品を得ることが出来る。また、生成した脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を含有するカルボン酸エステルが蒸留できない化合物の場合には、水洗等手段を使用して精製することが可能である。
【0068】
次に、本発明(III)の重合性組成物について説明する。
本発明(III)は、本発明(I)に記載の脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を含有するカルボン酸エステルを必須成分とすることを特徴とする重合性組成物である。
【0069】
また、本発明(III)の重合性組成物には、多くの場合、重合開始剤が含まれるが、マレイミド化合物と混同して光を照射する場合、電子線硬化を行う場合等特殊な場合には重合開始剤を必要としない場合がある。
【0070】
本発明(III)の重合性組成物には、重合開始剤の他必要に応じて種々の重合性化合物、硬化促進剤、染料、顔料、可塑剤、無機充填剤、溶剤などを混合することができる。
用いうる重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などのカチオン重合を起こしうるものであれば特に制限はない。また、ビニルエーテル基は、無水マレイン酸、テトラフルオロエチレン等と混合した際には、ラジカル重合可能であり、このような場合にはラジカル重合開始剤を使用することができる。
【0071】
用いうる熱重合開始剤の具体例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のラジカル開始剤の他、三フッ化ホウ素、二塩化亜鉛、三塩化アルミニウムなどのルイス酸類等のカチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0072】
用いうる光ラジカル重合開始剤の具体例としては、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエート、4−ジメチルアミノエチルベンゾエート等が挙げられる。
【0073】
用いうる光カチオン重合開始剤の具体例としては、特公昭53−32831号、特公昭52−14277号、特公昭52−14278号、特公昭52−14279号、特公昭52−25686号、特公昭61−34752号、特開昭54−53181号、特開昭54−95686号、特公昭61−36530号、特公昭59−19581号、特公昭63−65688号、特開昭55−164204号、特公昭60−30690号、特公昭63−36332号、特公平1−39423号、特公平2−10171号、特公平5−15721号、特公平4−62310号、特公昭62−57653号、特公平3−12081号、特公平3−12082号、特公平3−16361号、特公昭63−12092号、特公昭63−12093号、特公昭63−12095号、特公昭63−12094号、特公平2−37924号、特公平2−35764号、特公平4−13374号、特公平4−759
08号、特公平4−73428号、特公昭53−32831号、特開平2−150848号、特開平2−296514号、米国特許第4,069,055号、米国特許第4,069,056号、米国特許第3,703,296号等に記載されているスルホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、アルソニウム塩、鉄・アレーン錯体などが挙げられる。
【0074】
これらの重合開始剤は、本発明(III)の重合性組成物中に含まれる重合性成分の総量100質量部に対して、通常0.01〜50質量部、好ましくは0.1〜20質量部使用され、後述の本発明(IV)の硬化物を得る直前に混合されてもよいし、本発明(III)の重合性組成物中に予め混合されていてもよい。
【0075】
最後に、本発明(IV)の硬化物について説明する。
本発明(IV)は、本発明(III)の重合性組成物を硬化して得られる硬化物である。
【0076】
本発明(III)の重合性組成物の硬化方法としては、熱硬化及び/又は活性エネルギ
ー線による硬化を挙げることができ、熱硬化及び/又は近赤外線、可視光線、紫外線、電子線による硬化が好ましく、熱硬化及び/又は可視光線、紫外線による硬化が特に好ましい。また、異なる硬化方法を二種以上組み合わせて硬化物を得ることも出来る。
【0077】
活性エネルギー線の内、可視光線又は紫外線による硬化の光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、重水素ランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、ガリウムランプ、カーボンアーク灯、白熱電球、蛍光灯、エキシマランプ、レーザーなどを用いることが出来る。これらの光源の内、高圧水銀灯、メタルハライドランプが特に好ましい。
【0078】
可視光線又は紫外線硬化の光源の波長としては通常200nm〜750nm、好ましくは200nm〜450nmであり、照射量としては通常50mJ/cm〜2000mJ/cm、好ましくは100mJ/cm〜1500mJ/cmである。
【0079】
電子線を用いた硬化では、その照射方式として、スキャニング方式、ブロードビーム方式、カーテンビーム方式、イオンプラズマ方式等を挙げることができ、その照射量としては通常0.1Gy〜200kGyであり、1Gy〜100kGyが好ましい。
【実施例1】
【0080】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ制限されるものではない。
(実施合成例1)
温度計、精留塔の付いた500ml三ツ口丸底フラスコに、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリル251g(1.38mol)、100ppmのKOH入りの4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(沸点187℃)200g(1.72mol)及びジブチル錫オキシド0.5gを入れ、攪拌を行いながらオイルバスを用いて浴温120℃に昇温した。反応の進行とともに、生成してくるアリルアルコール(沸点96.90℃)を精留塔から留出させて100mlナス型フラスコで取得し、6時間反応を行った。反応終了後、GC分析により3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルに対し、97.0%の下記構造式1の化合物が生成していることを確認した。その後、余剰のヒドロキシブチルビニルエーテルを減圧留去した。その後、三ツ口丸底フラスコ内の内容物を、ナス型フラスコ入れ替え、減圧蒸留を行い、本発明のカルボン酸エステルである無色透明な下記構造式1の化合物310.0g(収率93.7%)を得た。
(構造式1)
【0081】
【化33】

【0082】
構造式1の化合物の400MzH−NMRスペクトル及びIRスペクトルをそれぞれ図1及び図2に記した。
(実施合成例2)
温度計、精留塔の付いた500ml三ツ口丸底フラスコに、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリル186g(1.02mol)、100ppmのKOH入りの2−(ヒドロキシエトキシ)エチルビニルエーテル(沸点208℃)168.6g(1.28mol)及びジブチル錫オキシド0.5gを入れ、攪拌を行いながらオイルバスを用いて浴温120℃に昇温した。反応の進行とともに、生成してくるアリルアルコールを精留塔から留出させて100mlナス型フラスコで取得し、6時間反応を行った。反応終了後、GC分析により3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルに対し、90.0%の下記構造式2の化合物が生成していることを確認した。その後、余剰のヒドロキシブチルビニルエーテルを減圧留去した。その後、三ツ口丸底フラスコ内の内容物を、ナス型フラスコ入れ替え、減圧蒸留を行い、本発明のカルボン酸エステルである無色透明な下記構造式2の化合物210.0g(収率85.6%)を得た。
(構造式2)
【0083】
【化34】

【0084】
構造式2の化合物の400MzH−NMRスペクトル及びIRスペクトルをそれぞれ図3及び図4に記した。
(実施合成例3)
温度計、精留塔の付いた500ml三ツ口丸底フラスコに、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル215g(1.38mol)、100ppmのKOH入りの4−ヒドロキシブチルビニルエーテル200g(1.72mol)及びジブチル錫オキシド0.5gを入れ、攪拌を行いながらオイルバスを用いて浴温140℃に昇温した。反応の進行とともに、生成してくるメチルアルコール(沸点64.65℃)を精留塔から留
出させて100mlナス型フラスコで取得し、10時間反応を行った。反応終了後、GC分析により3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸メチルに対し、92.0%
の下記構造式1の化合物が生成していることを確認した。その後、余剰のヒドロキシブチルビニルエーテルを減圧留去した。その後、三ツ口丸底フラスコ内の内容物を、ナス型フラスコ入れ替え、減圧蒸留を行い、本発明のカルボン酸エステルである無色透明な下記構造1の化合物290.0g(収率87.6%)を得た。
(構造式1)
【0085】
【化35】

【0086】
上記構造式1及び2の化合物は、臭気が弱く、皮膚に対する刺激も小さかった。
(実施例1−A)
硬化試験:
構造式1の化合物100質量部に株式会社サンアプロ製カチオン重合開始剤(商品名:CPI−101A)2質量部を混合して、本発明の重合性組成物1を得た。重合性組成物1を、バーコーターを用いて、約30μmの厚さになるようにポリイミドフィルム(商品名;カプトン150EN 東レ・デュポン株式会社製)に塗布した。
【0087】
その後、紫外線露光装置(型式:QRU−2161−J(株)オーク製作所製)を用いて、600mJ/cm、900mJ/cm、1200mJ/cm及び1500mJ/cmの照射量(365nmの値)を露光して重合性組成物1を硬化させ、本発明の硬化物1を得た。
【0088】
その後、この硬化物1のタックの有無及び耐折試験について評価した。評価結果を表1に記した。
(実施例2−A)
硬化試験:
また、同様に、構造式2の化合物100質量部にCPI−101A2質量部を混合して、本発明の重合性組成物2を得た。重合性組成物2を実施例1−Aと同様にして硬化して得られた硬化物2についてもタックの有無及び耐折試験について評価した。その結果を表1に記した。
【0089】
(比較例1−A)
1,4−ブタンジオールジアクリレート(商品名:V♯195、大阪有機化学株式会社製)100質量部中に、光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、チバ・スペシャルティケミカルス株式会社製)2質量部を溶解し、重合成組成物5を得た。重合成組成物5を、バーコーターを用いて、約30μmの厚さになるようにポリイミドフィルム(商品名;カプトン150EN 東レ・デュポン株式会社製)に塗布した。
【0090】
その後、紫外線露光装置(型式:QRU−2161−J(株)オーク製作所製)を用いて、600mJ/cm、900mJ/cm、1200mJ/cm及び1500mJ/cmの照射量(365nmの値)を露光して重合性組成物5を硬化させ、硬化物5を
得た。
【0091】
その後、この硬化物5のタックの有無及び耐折試験について評価した。評価結果を表1に記した。
また、タックの有無及び耐折の評価方法を以下に記した。
タックの有無の評価:
硬化物を室温25℃の部屋で冷却し、塗膜表面が25℃になった後、塗膜を人差し指で押し、タックの有無を確認した。結果を表1に記した。
耐折試験の評価:
ポリイミドフィルム(商品名;カプトン150EN 東レ・デュポン株式会社製)に本発明(IV)の硬化物を被覆した面を外側にして手で折り曲げ、親指と一指し指で挟み込み、その後、光学顕微鏡を用いて、折り曲げ部位にクラックが生じているか否かを評価した。
【0092】
○:折り曲げ部位にクラックが生じなかった。
×:折り曲げ部位にクラックが生じた。
【0093】
【表1】

【0094】
(実施例1−B)
構造式1の化合物50質量部にカチオン重合開始剤(三新化学工業株式会社製 サンエイドSI−60L)1.5質量部を混合して、本発明の重合性組成物3を得た。内面に離型剤(ダイキン工業株式会社製 商品名:ダイフリー)を塗布した2枚のガラス板の間に厚さ1mmのシリコーンチューブを挟んだ注型板に重合性組成物3を注ぎ込み、オーブンを用いて、70℃4時間、80℃4時間、90℃5時間、95℃2時間の計15時間かけて硬化を行い、本発明の硬化物3を得た。この硬化物3を、硬化収縮率を求めるための試料に用いた。
【0095】
(実施例2−B)
構造式2の化合物50質量部にカチオン重合開始剤(三新化学工業株式会社製 サンエイドSI−60L)1.5質量部を混合して、重合性組成物4を得た。内面に離型剤(ダイキン工業株式会社製 商品名:ダイフリー)を塗布した2枚のガラス板の間に厚さ1m
mのシリコーンチューブを挟んだ注型板に重合性組成物4を注ぎ込み、オーブンを用いて、70℃4時間、80℃4時間の計8時間かけて硬化を行い、本発明の硬化物4を得た。この硬化物4を、硬化収縮率を求めるための試料に用いた。
【0096】
(比較例1−B)
1,4−ブタンジオールジアクリレート(商品名:V♯195、大阪有機化学株式会社製)50質量部に、ラジカル重合開始剤であるジラウロイルパーオキサイド1質量部を混合して、重合成組成物6を得た。内面に離型剤(ダイキン工業株式会社製 商品名:ダイフリー)を塗布した2枚のガラス板の間に厚さ1mmのシリコーンチューブを挟んだ注型板に重合性組成物4を注ぎ込み、オーブンを用いて、70℃4時間、100℃4時間の計8時間かけて硬化を行い、硬化物6を得た。この硬化物6を、硬化収縮率を求めるための試料に用いた。
【0097】
硬化収縮率の測定
硬化収縮率の算出方法は以下に記した手法に従い行った。
〔算出方法〕
硬化収縮率= (D - D)/D
:硬化前の樹脂の密度, D:硬化後の樹脂の密度
なお、密度の測定は以下の手法に従い測定した。
〔密度の測定〕
硬化前の樹脂: JIS K 7112に従い、比重瓶を用いて測定した。
硬化後の樹脂: JIS K 7112に従い、水中置換法により測定。
実施例1−B及び実施例2−Bの硬化収縮率の測定結果を表2に記した。
【0098】
【表2】

【0099】
上記の結果から明らかなように、本発明の脂環式エポキシ基とビニルエーテル基を含有するカルボン酸エステルは、低臭気性、低皮膚刺激性である。このカルボン酸エステルを含有する重合性組成物は、硬化収縮率が小さく、基材に硬化物を形成したとき、基材の反りを抑制することができる。カチオン重合開始剤、特に光カチオン重合開始剤を含有する本発明の重合性組成物は、硬化時に酸素による重合阻害がほとんど無いという特徴を示す。これがタックの低減につながっていると考えられる。また、低粘度であるため、希釈性、加工性にも優れる。この重合性組成物を硬化して得られる硬化物は、タックが生じにくい。また折り曲げてもクラックが生じにくいなど、機械特性が優れている。このように本発明のカルボン酸エステル、これを含有する重合性組成物及びその硬化物は、コーティング剤、インキ、塗料、接着剤、レジスト、製版材、絶縁材、光学材料などの種々の分野で極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、構造式1の化合物の400MzH−NMRスペクトルである。
【図2】図2は、構造式1の化合物のIRスペクトルである。
【図3】図3は、構造式2の化合物の400MzH−NMRスペクトルである。
【図4】図4は、構造式2の化合物のIRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表されるカルボン酸エステル。
一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、下記一般式(3)又は炭素数2〜9のアルキレン基を表す。式中、R〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び炭素数1〜4のアルキル基から選ばれる原子または原子団を表す。)
一般式(3)
【化2】

(式中、nは1〜4の整数を表す。)
一般式(2)
【化3】

(式中、R11は、下記一般式(4)又は炭素数2〜9のアルキレン基を表す。式中、R12〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び炭素数1〜4のアルキル基から選ばれる原子または原子団を表す。)
一般式(4)
【化4】

(式中、mは1〜4の整数を表す。)
【請求項2】
エステル交換触媒の存在下、下記一般式(5)又は(6)で表されるヒドロキシル基含有ビニルエーテル化合物の群から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(7)又は下記一般式(8)で表される脂環式エポキシ基含有カルボン酸エステルの群から選ばれる少な
くとも1種を反応させて、請求項1に記載のカルボン酸エステルを製造する方法。
一般式(5)
【化5】

(式中、pは0〜4の整数を表す。)
一般式(6)
【化6】

(式中、R21は炭素数2〜9のアルキレン基を表す。)
一般式(7)
【化7】

(式中、R22は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数3〜4のアルケニル基を表す。)一般式(8)
【化8】

(式中、R23は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数3〜4のアルケニル基を表す。)
【請求項3】
エステル交換触媒が、ジアルキル錫オキサイド、テトラアルキルチタネート、金属アセチルアセトナート錯体、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物及び炭酸カリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする請求項2に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【請求項4】
反応中に発生する炭素数1〜4のアルキルアルコール又は炭素数3〜4のアルケニルアルコールを反応系外に留去しながら反応させることを特徴とする請求項2又は3に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【請求項5】
反応中に生成する炭素数1〜4のアルキルアルコール又は炭素数3〜4のアルケニルアルコールの沸点よりも高い沸点を有する一般式(5)又は(6)で表されるヒドロキシ基含有ビニルエーテルを用いることを特徴とする請求項4に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のカルボン酸エステルを必須成分とすることを特徴とする重合性組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の重合性組成物を硬化して得られる硬化物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−308420(P2008−308420A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156235(P2007−156235)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】