説明

脂環式ジエポキシドの調製

本発明に記載の実施態様は、脂環式ジエポキシド化合物及びそのような化合物の形成方法を提供する。このような方法は、反応容器に適切なジエンと適切なジエノフィルを入れ、これらを反応させ、続いてエポキシド化される、所望の脂環式ジエポキシド前駆体を形成させ、回収することを含む。このような化合物は、非異性体残基に関し、少なくとも95パーセント又は少なくとも98パーセントを有する脂環式ジエポキシドを含み、基本的に異性体の脂環式ジエポキシド残基が全くない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する親出願の相互参照)
親出願は、参照によりその全体がここに取り込まれる2008年10月10日に出願の米国仮出願番号第61/104317号について、米国特許法第119条の優先権の利益を有し、主張する。
【0002】
本発明は、一般的には、脂環式のエポキシドの調製に関し、より具体的には、高純度の脂環式ジエポキシドの調製に関する。
【背景技術】
【0003】
日本、大阪のダイセル化学工業LTDの欧州特許第2039692A1号は、エステル結合を介して両末端にそれぞれ結合している3,4−エポキシシクロヘキシルメタノール及び3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸を除く、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2,8,9−ジエポキシリモネン及びε−カプロラクトンオリゴマーに対応する化合物(全て、ダイセル化学工業株式会社から、それぞれ、CEL−2021P、CEL−3000及びCEL−2081の商品名で利用可能である)から、得られたエポキシ硬化物の性質、温度安定性、透過性、及び十分な誘電率が、そのような化合物の脂環式骨格から得られる、種々の硬化剤又は硬化触媒の存在下の反応を通して、硬化物が得られることを報告している(段落[0002]を参照されたい)。しかし、出願の段落[0003]中、幾つかの出願における性質の劣化に関連する問題又は硬化のための低反応性が、このような例示的な物質について記載されている。
【0004】
欧州特許2039692A1号は、段落[0004]において、3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の調製について、それぞれ、硬化における不十分な反応性とそこで調製された硬化物の不十分な温度安定性という両者の欠点がある、特開第2004−99467号、特開第2004−204228号及びロシアの文献Neftekhimiya, 1972, 12, 353の3つの引例を言及している。段落[0007]において、出願は、多大な調査の後、3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル化合物を調製するための前述の方法は、それぞれまた、「シクロヘキサン環状のエポキシ基の位置の点で典型的には異なる少なからぬ量の異性体」が生じるという欠点があることが見出されたことを開示している。さらに、この段落は、発明者によって発見された代替の方法によって、彼らが異性体の量が非常に小さい3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル化合物を使用することができること及びこのような化合物の硬化によって「非常に高い硬化反応速度」を有する「それゆえに温度安定性のような大幅に改善された性質を有するための高いガラス転移温度を有する硬化物」が得られた。
【0005】
結果として、段落[0008]において、欧州特許第2039692A1号は、「本発明において、脂環式ジエポキシド化合物は、下記式(1):

で表される、3,4’,3’,4’−ジエポキシシクロヘキシル化合物を含む」と提示している。
【0006】
ここで、「式(1)において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、及びR18は、同一であるか又は互いに異なってそれぞれが水素原子、ハロゲン原子、酸素原子又はハロゲン原子、又は置換された若しくは置換されていないアルコキシ基を有し得る炭化水素基を表す。脂環式ジエポキシ化合物は、3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体を不純物として含み得る。脂環式ジエポキシド化合物中に異性体が含まれる場合、異性体の内容物は、3,4,3’,4’−ジエポキシシクロヘキシル化合物及びその異性体の合計ピーク面積に基づくピークエリア比の点において20%よりも低い。」
【0007】
上述の欧州特許2039692A1号の発明は有用で、そこに記載される結果と物質を得ることができる一方で、エポキシ異性体に関して、このような3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の純度は、わずか「20%以下」に限定され、出願の実施例で提供される通り、9%の最小量まで限定されている(段落[0072]の調製実施例1を参照されたい)。したがって、所望の生成物のジエポキシド異性体が基本的に存在しない3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキサン並びに他の脂環式ジエポキシドの調製法は有用であると考えられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明の実施態様に記載の経路A(GC−MS1)及び経路B(GC−MS2)から得た反応生成物のガスクロマトグラフ−質量分析(GC−MS)解析のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下で用いる際、他に定義しない場合、以下の略語は下記の表に要約される意味を有する。
表1

【0010】
他に示さない場合、材料の量、反応条件、速度等を言及して、ここで使用される全ての数字、値及び/又は表現は、全ての例において、「約」なる用語によって修正されるものとして理解されるべきであり、前述の表示が存在しない場合、このような数字は、このような値を得る際に生じる測定の、他の事象における、種々の不安定性をおよそ反映していると理解されるべきである。さらに、ここで数値範囲が開示されている場合、このような範囲は、連続的であり、このような範囲の最小値と最大値の間の全ての値を含む。さらに、範囲又は比率が整数を指す場合、このような範囲又は比率の最小値と最大値の間の全ての整数が含まれる。さらに、複数の範囲又は比率が特徴又は性質を記述するために提供される場合、このような範囲又は比率は、さらにこのような特徴又は性質を記述するために組み合わせることができる。
【0011】
本発明に記載の実施態様は、高純度の脂環式ジエポキシド(例えば、95%以上又は98%以上)に関し、このようなジエポキシドの調製方法に関する。前述の通り、欧州特許第2039692A1号は、下のスキーム1に示す通り、 3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の調整方法を提供する。

【0012】
確認することができるように、スキーム1の4,4’−ビ(シクロヘキサノール)の脱水によって所望のBCH並びにその異性体である、1,1’−ビ(シクロヘキサン)−2,3’−ジエンを得る。異性体混合物の酸化は次いで示す通りジエポキシドの異性体混合物を提供する。ジエン異性体の分離は、最大で91:1の所望のジエン対異性体の比率を提供することが認められているので(欧州特許第2039692A1号を参照されたい)、ジエポキシドの最大の比率もまた得られる。
【0013】
下記のスキーム2の経路A及びBはしたがって、このような異性体のジエン及びジエポキシドの形成を回避するために考案、研究及び開発された。

【0014】
具体的には、経路A及びBの利点がある本発明に記載の実施態様は、スキーム1において確認される所望ではないジエン異性体(1,1’−ビ(シクロヘキサン)−2,3’−ジエン)中間体の形成なしにECHの生成を可能にする。結果として、形成したECHは、基本的に欧州特許第2039692A1号及び他の以前に知られた方法において存在するジエポキシド異性体を基本的に全く含まない。さらに、以下に論じるように、スキーム2の開示は、ECH以外の脂環式ジエポキシドを調製するために提供される本発明に記載の他の実施態様の開発のために提供するために使用され得る。
【0015】
スキーム2において更に言及するように、調査の際、経路A及びBのそれぞれが、スキーム1の「確立された経路」によって得られるよりも高い純度で所望のECHを形成するために首尾良く使用され得ることが見出された。このような調査は、最初のディールズアルダー反応が、それぞれの経路で示されるECHジエン前駆体から速やかに分離され得る副生成物の混合物を提供するそれぞれの経路によって所望の高純度の生成物を提供するので、それぞれの経路で所望の高純度の生成物を得たことを示した。例えば、経路Bに示す4−ビニル−1−シクロヘキセン(VCH)と1,3−ブタジエン(BD)のディールズアルダー反応について、2−エチニル−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン(EOHN)、シクロオクタジエン(COD)及び種々のブタジエンオリゴマーのような副生成物が所望のECH前駆体4,4’−ビ−シクロヘキセン(BCH)に加えて形成する。

【0016】
ここで図1では、経路Bに記載の反応に対応して、GC−MS2において、唯一の副生成物EOHNが所望のBCH(EOHNについて13.129、BCHについて14.209)に近接した溶出時間(分)を有することを見出すことができるが、観察された相対量の少ないEOHNを速やかにBCHから分離することができることが見出された。
【0017】
スキーム2の経路Aは、VCHにおける2個の二重結合の存在、及び特に環の二重結合がEOHNの形成に寄与しているとの仮説に基づいて開発された。したがって、ここで経路Aに言及する際、BDと1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(EpVCH)との反応は、EOHNが副生成物としてほとんど存在せずに、起きるはずである。図1に言及する際、経路Aに記載の反応に対応する、GC−MS1とGC−MS2を比較して、EOHNピークが存在しないことが示され、さらに、経路AによってEOHNが形成した場合でも、EpBCH(GC−MS1)とEOHN(GC−MS2)の溶出時間の差異は、GC−MS2において観察されたBCH及びEOHN(例えば、16.280−13.129=1.080分)の溶出時間についての差異よりも大幅に大きいであろう。さらに、経路Aで示す通り、主な生成物は、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−シクロヘキセン(EpBCH)であり、示す通り、両者は、ジエポキシドアナログ、ECHに速やかに変換される。したがって、大量のBCHが形成した場合でも、基本的に純粋な生成物として所望のECHを得るためにEpBCHからそれを分離する必要はない。
【0018】
この問題を克服できるかどうかを決定するために、実験は変化する反応温度(実施例T1−T4を参照されたい)、反応温度又は時間(実験D1−D4を参照されたい)及びBDに対するVCHのモル比(実験M1からM7を参照されたい)の影響を評価するために実施された。
【0019】
温度(実施例T1−T4を参照されたい)に関し、(1)温度の上昇に伴い、BCHを生成するために消費されるBDのパーセンテージが増加し;(2)CODを生成するために消費されるBDのパーセンテージが温度の上昇にともないわずかに増加し;(3)300℃において、BDとVCHがポリマー化し;(4)CODに対するBCHの選択性が温度の増加に伴って増加し;(5)EOHNに対するBCHの選択性が温度上昇に伴い減少する。
【0020】
ここで反応時間を変更する効果について(実験D1−D4を参照されたい)、(1)より長い反応時間に伴いCODに対するBCHの選択性が増加し;(2)より長い反応時間に伴いEOHNに対するBCHの選択性は基本的に変化せず;(3)より長い反応時間に伴いBCH及びCODを生成するために消費されるBDのパーセンテージは明確な傾向がないことが見出された。
【0021】
モル比の評価に言及する際(実施例M1−M7を参照されたい)、(1)BCHを生成するために消費されるBDのパーセンテージは増加するVCH/BDのモル比に関連して増加し;(2)CODを生成するために消費されるBDのパーセンテージは増加するVCH/BDのモル比に関連して基本的に不変であり;(3)CODに対するBCHの選択性は増加するVCH/BDのモル比に関連して増加し;(4)EOHNに対するBCHの選択性は増加するVCH/BDのモル比に関連して基本的に不変であることが見出された。
【0022】
したがって、本発明に記載の実施態様は、このような実施態様がディールズアルダー化学を介した4,4’−ビ−1−シクロヘキセン(BCH)の調製を含み、開始物資の、1,3−ブタジエン(BD)に対するVCHの比が1より大きく、20から1と同じである、最適な収率と純度を提供する。幾つかの実施態様では、この比は、5:1又はそれより大きく、更に他の実施態様では、開始物質の比は、10:1又はそれより大きい。上記のVCHの反応の最適温度は、幾つかの実施態様について、200℃から400℃であり、他の実施態様について210℃から230℃である。反応時間に関し、本発明に記載の実施態様は、一般的には1から10時間であり、一方で他の実施態様は3から6時間である。有利なことに、このような実施態様の副生成物はVCH開始物質なので、所望のBCH中間体の分離後、単離したVCHは次の反応の原料となり得る。その代わりに、本発明の幾つかの実施態様は、VCHの形成の利点を得るためのセミバッチ及び/又は連続反応を含む。
【0023】
有利なことに、BCHは前述の反応法、例えば、分留法、から高純度で単離し得るので、適切な過カルボン酸法を用いた高純度BCHの酸化は、同等に高純度なジエポキシドを与えるであろう。このように、BCHが最初に形成し、ECHは、適切な過カルボン酸酸化の結果として生じるであろう。
【0024】
VCHは、BD自身の反応の生成物の一つであるため、本発明に記載の実施態様はBCHの形成中のインサイツのVCHの形成を含む。このように、反応容器に所望量のBDを入れ、1時間から10時間の間200℃から270℃の反応温度まで反応容器を加熱し、次いで冷却後所望のBCHを単離することは、インサイツのVCHの形成を含む。さらに、適切な条件下、適切な過カルボン酸を所望のBCHと接触させ、所望のECHを形成させ得る。
【0025】
前述の通り、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(EpVCH)と1,3−ブタジエン(BD)の反応もまた調べた。上で論じたVCH−BD調査から得たデータを用いて、EpVCHの安定性を評価した後に、実施例EpVCH1−4に示す反応を実施した。このような評価は、EpVCHが、240℃(ダウ技術データシートを参照されたい)以上の温度で不安定であることを報告する加速反応熱量測定(ARC)試験に照らして実施された。これらの評価はEpVCHの最初のサンプルのGC−MS解析及び次いでそのサンプルを210℃まで加熱し、1、2及び4時間保持することを含む。210℃におけるそれぞれの期間の終点で、一部を回収し、冷却し、別のGC−MS解析にかけた。基本的には、EpVCHの純度の変化は観察されなかった(最初の解析は98.0%であり、4時間後97.2%の純度が観察された)。
【0026】
再び実施例EpVCH1−4に言及する際、反応の全ては230℃で3時間行い、要約表に示すとおり、BDに対するEpVCHの比率は、1:1から20:1まで変化させた。表と付随するチャートに示す通り、BDに関連してEpVCHの量を増加するために反応物の割合を変えることは、大幅にCOD及びEOHNの相対量を減少させる。さらに、これらの反応で形成したEpBCHは、このような副生成物からより速やかに分離され(図1GC−MS1を参照されたい)、BCHが形成される場合、少なくとも1(例えば、1又は2)の過カルボン酸基(例えば、過ギ酸、過酢酸、過プロピオン酸、過ブチル酸、過イソブチル酸、メタクロロ過安息香酸、及び過吉草酸)を有する一又は複数のC−C12の過カルボン酸から選択される過カルボン酸のような、任意の適切な過カルボン酸を用いて、BCH及びEpBCHの両者が速やかにエポキシ化されるため、EpBCHからそれを分離する必要が無い。
【0027】
このように本発明に記載の幾つかの実施態様は、ディールズアルダー化学を介して4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−シクロヘキセン(EpBCH)の調製を含み、1,3−ブタジエン(BD)に対する開始物質、EpVCHの比率は、5より大きく、20から1までである。幾つかの実施態様では、この比率は5:1又はそれより大きく、他の更なる実施態様では、開始物質の比は、10:1又はそれより大きい。上記のEpVCHの反応の適切な温度は、幾つかの実施態様について、200℃から240℃であり、他の実施態様について、210℃から230℃である。反応時間に関して、本発明に記載の実施態様は、一般的には1から10時間であり、一方で他の実施態様では、3から6時間である。
【0028】
VCH/BD経路に関して言及した通り、実施例EpVCH1−4において示した反応の後、結果として生じた中間体のEpBCHとBCHをエポキシ化した。このように、本発明のこれらの実施態様は、存在するBCHの量がEpBCHの量のわずかに0.1%であり得るEpBCHとBCHの混合物の最初の形成と、続く適切な過カルボン酸を含む混合物のエポキシ化を含む。
【0029】
さらに、本発明に記載の実施態様は、その低い沸点のために、冷却した容器中の反応混合物に1,3−ブタジエンを添加することを提供する。それゆえ、このような実施態様は一般的に、用いた反応容器の温度を上げる場合、20気圧の反応圧力を用いる。他のより低い又はより高い圧力を用いてもよいが、このような圧力は少なくとも一部は、反応温度の関数であるが、反応混合物中のBDの有効量を維持するために用いることができる。このようなBDの有効量は、VCH又はEpVCHと反応させるために十分な量であり、BCHとEpBCHを形成する。
【0030】
さらに、ここでバッチ型の反応だけが記載されているが、半バッチ、及び連続スキームのような代替の反応スキームが効果的であり得る。BDは、液流として 又は、反応が開始し、持続している間、反応容器のバックグラウンドBDレベルを調整するための質量流速調整器を用いたガスとして、反応容器へ測定してもよい。
【0031】
さらに、反応溶媒を使用することなく、BCH又はEpBCHの形成を提供する本発明の実施態様は、適切な溶媒を含む実施態様よりも高い収率の結果を得るが、適切な溶媒の使用は、本発明の範囲及び精神の範疇である。このように、本発明に記載の幾つかの実施態様は、反応生成物が速やかに高純度で単離され得るように、BCH又はEpBCHと大幅に沸点が異なる溶媒、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メタノール、エタノール、プロパノール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、ペンタン、ヘキサン、ノナン及びデカンの使用を含む。幾つかの場合、選択した適切な溶媒の使用は、望まない反応の副生成物又は残渣の開始物質を除くことを可能にし得る。
【0032】
さらに、所望の中間体のエポキシ化に続く1,3−ブタジエンとVCH及びEpVCHの反応だけが詳細に記載されたが、ここに提供される教示を使用する他の反応は、本発明の範囲と精神の範疇である。このような他の反応は、限定されるものではないが、ここの下にさらに詳細に記載される、スキーム3から7に提供される反応スキームを含む。さらに、VCHはここで開始反応剤を表すのに対し、VCHはまた生成物であり、したがって、本発明に記載の幾つかの実施態様は、反応容器に、BDとシクロペンタジエンを入れ、加熱する反応を含むことが示された。このような反応は、VCHを形成するのに対し、それはまた所望の生成物から一般的には分離し得る種々の副生成物を形成し得る。例えば、ブタジエンとシクロペンタジエンのディールスアルダー反応において報告されている通りである。Tsuchida, Shoichi; Hamanaka, Sawako; Ogawa, Masaya. Fac. Eng., Kansai Univ., Suita, Japan, Sekiyu Gakkaishi (1972), 15(3), 189-92によるトリマーの決定、ブタジエンとシクロペンタジエンのディールスアルダー反応から、ビシクロヘキセニル、ビノルボルネニル、シクロペンタ−、メタノ−、及びビニルオクタリン、及びフルオレン誘導体を含む、14トリマーを産生するモノマージエンとさらに反応した、中間体ダイマーの4−ビニル−1−シクロヘキセン、5−ビニルノルボルネン、3a,4,7,7a−テトラヒドロインデン、及びジシクロペンタジエンを得た。
【0033】
上記の発見の結果、他の脂環式ジエポキシド化合物の研究が実施され、下のスキーム3に示す通り、テトラヒドロインデン(THI)を生成する適切な条件下、エンド/エキソ−ビニルノルボルネンの転移を利用する本発明に記載の実施態様が提供される。THIが未反応のエキソ−VNBから速やかに分離されるので、基本的に純粋なTHIが過カルボン酸と接触して、ビシクロノナジエンジエポキシドを形成し得る。

【0034】
本発明に記載の別の実施態様は、下記のスキーム4に表される。具体的には、ジシクロペンタジエンは、ディールスアルダー反応を介してシクロペンタジエンと反応しトリシクロペンタジエンの構造異性体(I)を形成することを示す。トリシクロペンタジエンの構造異性体(I)は、次いで過カルボン酸と接触して対応するトリシクロペンタジエンジエポキシドの構造異性体(II)を形成する。

【0035】
次に下記スキーム5を参照すると、本発明に記載の更に別の態様が提供される。示す通り、3,4−エポキシ−ブテン(III)(2−エテニルオキシレンとしても知られる)は、ディールスアルダー反応を介してシクロペンタジエンと反応し、5−エチレンオキシド−2−ノルボルネン(IV)を形成する。5−エチレンオキシド−2−ノルボルネン(IV)は、さらにディールスアルダー反応を介してシクロペンタジエンと反応し、過カルボン酸と接触して、対応するオキシラン−エチレンオキシド機能化テトラシクロドデセン(VI)を形成し得る、エチレンオキシド機能化テトラシクロドデセン(V)を形成し得る。その代わりに、5−ビニル−2−ノルボルネン(VII)は、一部が過カルボン酸と反応して、5−エチレンオキシド−2−ノルボルネン(IV)を形成するか、又は、完全に過カルボン酸と反応して、対応する2,3−オキシラン−5−エチレンオキシド−ノルボルネン(VIII)を形成し得る。5−エチレンオキシド−2−ノルボルネン(IV)は、それ自身がさらに、過カルボン酸と接触して、対応する2,3−オキシラン−5−エチレンオキシド−ノルボルネン(VIII)を形成し得る。5−ビニル−2−ノルボルネン(VII)は、ディールスアルダー反応を介して、シクロペンタジエンと反応して、過カルボン酸と接触して対応するオキシラン−エチレンオキシド機能化テトラドデセン(VI)を形成し得る、対応するビニル機能化テトラシクロドデセン(IX)を形成し得る。

【0036】
本発明に記載の実施態様は、またアルファ、オメガ−ジエン(α,ω−ジエン)から選択されるジエノフィルを含む。下記のスキーム6を参照すると、アルファ、オメガ−ジエン(X)のnは、少なくとも1(例えば、1から1000、1から100、1から50又は1から20である)である。示す通り、アルファ、オメガ−ジエン(X)は、ディールスアルダー反応を介して、シクロペンタジエンと反応し、5−ビニル末端アルキル−2−ノルボルネン(XI)を形成する。5−ビニル末端アルキル−2−ノルボルネン(XI)は、過カルボン酸と接触し、対応する5−ビニル末端アルキル−2,3−オキシラン−ノルボルネン(XII)を形成し得る。5−ビニル末端アルキル−2,3−オキシラン−ノルボルナン(XII)は、さらにシクロペンタジエンと反応して、過カルボン酸と接触し、式(XIV)で表される、ビス(2,3−オキシラン−ノルボルナン)末端アルキルを形成し得る、式(XIII)で表される2,3−オキシラン−ノルボルナン/ノルボルネン末端アルキルを形成し得る。

【0037】
本発明に記載の実施態様は、またノルボルネンシクロヘキシルジエポキシドとその調製を含む。下記のスキーム1を参照すると、EpVCHは、シクロペンタジエンと反応して、過カルボン酸と接触して対応するノルボルネンシクロヘキシルジエポキシド(XVII)を形成する、5−EpVCH−2−ノルボルネン(XVI)を形成する。その代わりに、VCHは、シクロペンタジエンと反応して対応する、過カルボン酸と接触して、対応するノルボルネンシクロヘキシルジエポキシド(XVII)を形成する、5−(3−シクロヘキセン)−2−ノルボルネン(XVIII)を形成し得る。

【0038】
ここに記載される脂環式ジエポキシド化合物は、本発明(エポキシ化合物)に記載の脂環式ジエポキシ化合物の実施態様を含むエポキシ樹脂組成物の形成に有用であることは認識されるべきである。欧州特許出願第2039692A1号は、ジエポキシド異性体の9%から20%を有する脂環式ジエポキシド化合物が、(高い硬化速度で)より速く硬化し得、硬化の結果として、出願時において知られる同等物と比較して、より高いガラス転移温度を有し、温度安定性のような大幅に優れた性質を有する硬化物を与えることを示し、本発明に記載の、本発明に記載の方法を用いて調製された脂環式ジエポキシド化合物の実施態様は、論理的にはこのような出願に開示されたものより優れた性質を有する硬化樹脂を提供する。この有利な結果は、少なくとも95%の純度であり、幾つかの実施態様では少なくとも98%の純度である、本発明に記載の脂環式ジエポキシド化合物の実施態様から導出される(ここで、パーセント純度は、発明の方法の実施態様を用いて得られた所望の化合物の量を表す)。さらに、前述の結果は、また、所望の化合物の脂環式ジエポキシドの異性体が基本的にない本発明に記載の脂環式ジエポキシド化合物の実施態様から導出し得ると思われる。
【0039】
本発明の実施態様に記載の脂環式ジエポキシ化合物はまた、ここで以前に言及した、このような出願の、このような段落、及び他の段落が、参照によりこの出願に取り込まれる欧州特許出願第2039692A1号の段落[0047]から[0064]中に記載の方法において、組成物及び硬化物中に取り込まれ得るということになる。
【実施例】
【0040】
下記の実施例は、説明の目的のためだけに提供され、如何なる場合も発明を限定することを意図するものではない。他に示さない場合、以下の実施例及び請求項において、全ての部位とパーセンテージは重量で、全ての温度は、セルシウス温度で、圧力は大気圧又は大気圧に近く、反応条件と材料は、無水である。
【0041】
実施例のそれぞれについて、その実施例の特定の表中に示すそれぞれのVCH又はEpVCH及びBDの量を、120mLのオートクレーブステンレススチール反応容器に添加した。オートクレーブを次いで回収し、溶解した酸素を除くために十分な時間不活性ガス(例えば、アルゴン又は窒素)でパージした。容器を次いで攪拌しながら示した特定の温度まで加熱し、示した時間この温度で維持した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、GC−MSでその組成を決定するために解析した。得られた組成は、下記の表とチャートの一又は両者に示す。




【0042】
EpVCH実験1−4は、スキーム2に示す経路Aの反応が、前の実施例の方法で、示したモル比に影響するように、上表に示す特定の量のEpVCHとBDを反応容器に入れたことを示す。次いで3時間、反応温度を230℃とし、室温まで反応容器を冷却した。反応容器からのサンプルを取り除き、前の実施例の方法でGC−MS解析を実施した。特定した生成物のそれぞれの領域と、開始剤を決定し、それぞれの反応条件の選択性を決定した。例えば、最初の「選択性」のカラムでは、選択性について、1.86%が報告され、このような数字は、EpBCH、BCH及びEOHNのGC−MS領域の合計で除算し、100倍したEOHNのGC−MS領域を示す。示す通り、BCHに対するEpVCHのモル比が1/1より大きい場合、反応の選択性は増加する。4つの実験の何れかにおいて形成した所望のEpBCHの量は、比較的小さいように思われるかもしれないが、EpVCH開始剤の大部分は、回収でき、開始剤のモル比が5/1を越える場合は、副生成物として形成するEOHNの量は、基本的にゼロまで減少する。
【0043】
合成実施例1:
3−エポキシ−5−ビニルノルボルネン(EVNBA)及び3−エポキシ−5−エチルエポキシノルボルネン

m−クロロ過カルボン酸(4208g、18.77mol、1.19等量)を、機械式スターラー、温度計、及び付加的な漏斗を有する72−Lのフラスコに入れた。全ての固体が溶解した際、攪拌した混合物を4℃まで冷却し、次いで温水で16℃まで加熱した。次いで混合物を再度5℃まで冷却し、幾らか沈殿させた。更に3.5Lのジクロロメタンを添加した。混合物をエンド−/エキソ−ビニルノルボルネン(1900g、15.81mol)の添加を開始する前に、4℃までさらに冷却した。250mlのビニルノルボルネン(VNB)を添加した後、反応混合物を6℃まで加熱し、透明にした。600mlのVNBを添加した後、混合物は、不透明になり始めた。反応は、700mlのVNBを添加した後、乳白色になった。
【0044】
添加時間は、4℃から12℃までの温度で6.5時間であった。GC解析は、28%が未反応のVNB、41%がエポキシビニルノルボルネン(EVNBA)、及び22%がジエポキシ異性体であることを示した。過酸化物のKI−デンプン紙試験は陽性であった。
【0045】
4℃未満で18時間攪拌した後、過酸化物のKI−デンプン紙試験は陰性であった。GC解析は、生成物混合物:28%VNB、44%EVNBA、及び27%ジエポキシのわずかな変化を示した。付加的なmCPBAが、EVNBAではなくVNBと優先的に反応することを確認した後、更なる877gのmCPBA(合計で5085g、22.69mol)を固体として3分割し、反応混合物に添加した。更なるジクロロメタンを固体を洗浄するためだけに添加した。固体のmCPBAの添加により、温度が4℃まで低下させた後、穏やかな発熱により、温度が7℃まで上昇した。GC解析は、4%のVNB、63%のEVNBA、及び32%のジエポキシを示した。KI−デンプン紙試験は、過酸化物に対し、陽性であった。反応混合物を、12℃未満で、更に39時間攪拌した。KI−デンプン紙試験は過酸化物に対し、陰性であった。GC解析は、1.4%のVNB、70%のEVNBA、及び26&のジエポキシ異性体を示した。反応混合物を2つの部分に分割した。16.4リットルの飽和炭酸水素ナトリウム溶液及び1kgの固体の炭酸水素ナトリウムを各部分に添加した。溶液が透明でなかった場合、更に1000gの炭酸水素ナトリウムを添加した後、9Lの水を添加した。混合物を両者が透明になるまで、30分間攪拌した。相を分離し、ジクロロメタン相を、不要の炭酸水素ナトリウムから注いだ。それぞれの有機相を2x16Lの食塩水で洗浄しpH7にした。不溶の炭酸水素ナトリウムを50Lの水で溶解し、約4Lのジクロロメタンを分離した。相を分離した後、水相を2x4Lのジクロロメタンで溶出した。ジクロロメタン部分を、2x12Lの食塩水で洗浄しpH6にした。全てのジクロロメタンの部分を回収し、回転濃縮し、幾らかの固体を含む2654gの黄色の液体を得た。GC解析は、1.0%VNB、75.7%のEVNBA、及び20.2%のジエポキシ異性体を示した。NMR解析は、組成物が、3.1%のm−クロロ安息香酸、55.5%のEVNBA、14.6%のジクロロメタン、及び26.7%のジエポキシ異性体であることを示した。粗生成物を濾過し、次いで14インチのVigreuxのカラムを通して真空蒸留し、1002g(99%より大きい)−3−エポキシ−5−ビニルノルボルナン(EVNBA)及び109.08(99.6%)の3−エポキシ−5−エチルエポキシノルボルナン(ジエポキシド)を得た。
【0046】
合成実施例2:
ノルボルネンエポキシノルボルナンの合成(6−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル−3−オキサトリクロロ[3.2.1.02,4]オクタン)

2−リットルのステンレススチールオートクレーブ反応器に、0.99kg(7.26mol)の3−エポキシ−5−ビニルノルボルナンと0.06kg(0.45mol)のジシクロペンタジエンを添加した。攪拌を開始し、反応器から、空気を除き、5psigの窒素を導入した。180℃までの加熱を開始し、180℃に達したら、反応器を、4時間この温度で維持した。この時間の終わりに、反応器を室温まで冷却し、解放した。GC面積によって測定した通り、導入した主要な同定された構成物は、0.6%のジシクロペンタジエン、81.6%の3−エポキシ−5−ビニルノルボルナン、1.3%のエポキシエチルエポキシノルボルナン、13.6%のノルボルネニルエポキシノルボルナンであった。合計、4つの反応を完了し、蒸留して、アッセイで96%よりも大きい(GC面積)、0.3kgのノルボルネニルエポキシノルボルナンを生成した。
【0047】
合成実施例3:
ノルボルネンエポキシノルボルナンの変換(6−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル−3−オキサトリクロロ[3.2.1.02,4]オクタン)から、ビス(エポキシノルボルナン)(6,6’−ビ(3−オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタン))

機械式スターラーを備えた3口の1Lの丸底フラスコに、77g(312mmol)のm−CPBAと塩化メチレン(600mL)を添加した。混合物を水中で攪拌し、均質になるまで20℃で維持した。ノルボルネンエポキシノルボルナン(52.5g、260mmol)を100mLの塩化メチレンに溶解した。ノルボルネン溶液を添加漏斗を介して3口フラスコに滴下して添加した。内部温度が決して25℃を越えないように注意した。添加が完了した後、白色懸濁液を、室温で終夜(14時間)攪拌した。飽和のNaHCO溶液を、50mLに分けて、周期から他の周期までの感覚が少なくとも30である、4周期で添加した。全てを添加した後、混合物を1時間攪拌した。有機相を分離し、250mLの飽和のNaHCO溶液でもう一度洗浄した。回収した水相を100mLの塩化メチレンで一度洗浄した。濾過後、全ての揮発物を減圧下で除き、白色固体を得た。所望のビス(エポキシノルボルナン)の定量的な収率を得た(GCにより97%よりも大きい)。化合物は更にアルミニウムカラムに再溶解したビス(エポキシノルボルナン)を搭載し、酢酸エチルで溶出するクロマトグラフにより精製した。全てのわずかな黄色の不純物を除き、最終溶液のGC解析は、化合物が99%より大きな純度であることを示唆する。全ての溶媒を除き、50gのジエポキシド異性体を白色粉末として得た。
【0048】
合成実施例4:
3−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン(シクロヘキシルエポキシノルボルネン)の生成と6−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−3−オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタンへの変換

8リットルのステンレスのオートクレーブ反応器に、5.0kg(40.3mol)のビニルヘキセンモノキシド−Cを入れた。攪拌を開始し、反応器から空気を除き、5psigの窒素を導入した。220℃までの加熱を開始し、220℃に達したら、反応器を、4.6時間この温度で維持した。この時間の間、0.45kg(3.6mol)のビニルシクロヘキセンモノオキシド−Cと0.48kg(3.6mol)のジシクロペンタジエンを3.37g/分の一定速度で反応器に添加した。この時間の終わりに、反応器を室温まで冷却し、解放した。GC面積によって測定した通り、導入した主要な同定された構成物は、0.5%のジシクロペンタジエン、73.5%のビニルシクロヘキセンモノオキシド−C、及び、21%のシクロヘキシルエポキシノルボルネンであった。合計、2つの反応を完了し、蒸留して、アッセイで96%よりも大きい(GC面積)、2.2kgのシクロヘキシルエポキシノルボルネンを生成した。生成物の一部をm−クロロ過安息香酸を用いて、エポキシ化して6−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−3−オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタンとした。
【0049】
合成実施例5:
5−ブチル−5−エン−1−イルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ブテニルノルボルネン)と5,5’−エチル−1,4−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン)(エチルビスノルボルネン−NB−Et−NB)の合成

8−リットルのスチールオートクレーブ反応器に、2.1kg(25.6mol)の1,5−ヘキサジエンを入れた。攪拌を開始し、反応器から空気を除き、5psigの窒素を導入した。200℃までの加熱を開始し、200℃に達したら、反応器を、3.25時間この温度で維持した。この時間の間、0.05kg(0.7mol)の1,5−ヘキサジエンと0.43kg(3.3mol)のジシクロペンタジエン(DCPD)を2.48g/分の一定速度で反応器に添加した。この時間の終わりに、反応器を室温まで冷却し、解放した。GC面積によって測定した通り、導入した主要な同定された構成物は、74.5%の1,5−ヘキサジエン、1.7%のジシクロペンタジエン、及び、19.5%のブテニルノルボルネン、0.2%のシクロペンタジエントリマー、1.4%のブテニルテトラシクロドデセン、1.3%のエチルビスノルボルネンであった。合計、5つの反応を完了し、蒸留して、アッセイで99%よりも大きい(GC面積)、1.6kgのブテニルノルボルネンを生成し、容器に残った部分は、主に5.7%のシクロペンタジエントリマー、26.3%のブテニルテトラシクロドデセン、及び51.2%のエチルビスノルボルネンであった。
【0050】
合成実施例6:
5−ヘキシ−5−エン−1−イルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ヘキセニルNB)

8−リットルのステンレスのスチールオートクレーブ反応器に、2.9kg(26.3mol)の1,7−オクタジエンを入れた。攪拌を開始し、反応器から空気を除き、5psigの窒素を導入した。200℃までの加熱を開始し、200℃に達したら、反応器を、12時間この温度で維持した。この時間の間、0.26kg(2.4mol)の1,7−オクタジエンと1.58kg(12.0mol)のジシクロペンタジエンを2.56g/分の一定速度で反応器に添加した。この時間の終わりに、反応器を室温まで冷却し、解放した。GC面積によって測定した通り、導入した主要な同定された構成物は、30.4%の1,7−オクタジエン、1.7%のジシクロペンタジエン、39.2%のヘキセニルノルボルネン、1.0%のシクロペンタジエントリマーであり、残りの構成物は、殆どがヘキセニルテトラシクロドデセン及びブチルビスノルボルネンとして同定されたより重い物質であった。蒸留により精製して、アッセイで99%よりも大きい(GC面積)、2.7kgのヘキセニルノルボルネンを生成した。
【0051】
合成実施例7:
5,5’−ブタン−1,4−ジイルビス(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン)(ブチルビスノルボルネン−NB−Bu−NB)の合成

8−リットルのステンレスのスチールオートクレーブ反応器に、3.97kg(22.5mol)のヘキセニルノルボルネンを入れた。攪拌を開始し、反応器から空気を除き、5psigの窒素を導入した。200℃までの加熱を開始し、200℃に達したら、反応器を、2.9時間この温度で維持した。この時間の間、0.10kg(0.6mol)のヘキセニルノルボルネンと0.38kg(2.9mol)のジシクロペンタジエンを2.77g/分の一定速度で反応器に添加した。この時間の終わりに、反応器を室温まで冷却し、解放した。GC面積によって測定した通り、導入した主要な同定された構成物は、1.3%のジシクロペンタジエン、73.0%のヘキセニルノルボルネン、0.2%のシクロペンタジエントリマー、11.0%のヘキセニルテトラシクロドデセン、及び11.2%のブチルビスノルボルネンであった。蒸留により精製して、0.2kgの53%のヘキセニルテトラシクロドデセン及び44.8%のブチルビスノルボルネン(GC面積)を得た。
【0052】
合成実施例8:
5,5’−ブタン−1,4−ジイルビス(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン)(NB−Bu−NB)の6,6’−ブタン−1,4−ジイルビス(3−オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタン)((エポキシ−NBane)Bu)への変換

m−クロロ過安息香酸(10.24g、70−75%、0.0415mol、2.27等量)を250mlの機械式スターラー、温度計、窒素の注入口、及び添加漏斗を備えたフラスコに入れた。100mlのジクロロメタンを添加した。固体が溶解したら、攪拌した混合物を15℃まで冷却した。混合物を次いで0℃まで冷却した。1,4−ビス(2−ノルボルナニル)ブタン(4.43g、0.0183mol)を1分以内に素早く添加した。クロロ過安息香酸の沈殿が生じたら、温度を13℃まで上げた。反応を約0から3℃で2時間攪拌した。GC解析は、1.1%の未反応の開始物質を伴う89.9%のエポキシ生成物を示した。混合物を1.5時間掛けて室温まで温めた。GC解析は、それ以上の反応の進行を示さなかった。固体を濾過して、ジクロロメタンで洗浄した。回収したジクロロメタン溶液を3x50mlの飽和炭酸水溶液で洗浄して、pH9とし、次いで、30mlの10%の亜硫酸水素ナトリウムと30mlの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の混合物で2回で洗浄した。ジクロロメタン溶液は、依然、過酸化物についてKI/デンプン紙試験が陽性を示した。ジクロロメタン溶液をついで100mlの10%亜硫酸ナトリウムで洗浄し、KI/デンプン紙試験で陰性を示した。ジクロロメタン溶液を50mlの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、100mlの食塩水で洗浄してpH8とし、次いで硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液を濾過し、回転濃縮して5.1gのオイルを得た。GC解析は、87.5%のジエポキシ化合物を示す広いシグナルを示した。オイルは一晩掛けて結晶化した。固体をペンタンに取り、濾過して白色固体を得た。GC解析は、合計89.5%のジエポキシ化合物の主要な構成成分を示した。ペンタン洗浄から得た2つの続く沈殿は、GC解析で、合計87.7−88.4%異性体内容物を示した。回収した合計の生成物は、2.52gであった。これを10mlのペンタンで処理し、完全に混合し、濾過した。固体を5mlのペンタンで洗浄した。GC解析は、合計91%のジエポキシ化合物を示す二重ピークシグナルを示した。GC解析を行ったペンタン濾液からの付加的な物質は、96.9%の全異性体に対して、55.2%及び41.7%の2つの異性体シグナルを示した。これは、前に回収した固体と合わせて、1.77g(35%の収量)であった。
【0053】
合成実施例9:
ノルボルネンエポキシノルボルナンのビス(エポキシノルボルナン)への変換
機械式スターラーを備えた3口の1Lの丸底フラスコに、77g(312mmol)のm−CPBAと塩化メチレン(600mL)を添加した。混合物を水中で攪拌し、均質になるまで20℃で維持した。ノルボルネンエポキシノルボルナン(52.5g、260mmol)を100mLの塩化メチレンに溶解した。ノルボルネン溶液を添加漏斗を介して3口フラスコに滴下して添加した。内部温度が決して25℃を越えないように注意した。添加が完了した後、白色懸濁液を、終夜(14時間)攪拌した。飽和のNaHCO溶液を、50mLに分けて、周期から他の周期までの感覚が少なくとも30である、4周期で添加した。全てを添加した後、混合物を1時間攪拌した。有機相を分離し、250mLの飽和のNaHCO溶液でもう一度洗浄した。回収した水相を100mLの塩化メチレンで一度洗浄した。全ての有機相を回収し、無水のNaSOで乾燥した。濾過後、全ての揮発物を減圧下で除き、白色固体を得た。所望のビス(エポキシノルボルナン)の定量的な収率を得た(GCにより97%よりも大きい)。化合物は更にアルミニウムカラムに再溶解したビス(エポキシノルボルナン)を搭載し、酢酸エチルで溶出するクロマトグラフにより精製した。全てのわずかな黄色の不純物を除き、最終溶液のGC解析は、化合物が99%より大きな純度であることを示唆する。全ての溶媒を除き、50gのジエポキシド異性体を白色粉末として得た。
【0054】
これまでに、本発明に記載の実施態様は、高純度の脂環式ジエポキシドの形成を提供することが開示されていると理解されるべきである。このような実施態様は、適切な有機過酸を使用して速やかにエポキシ化される高純度の前駆体を形成し得る反応を使用する。更に、スキーム1に示した確立された経路とは異なり、本発明に記載の実施態様は、所望の生成物から分離することが非常に難しい、1,1’−ビス(シクロヘキサン)−2,3’−ジエンのようなジエポキシドの種々の異性体を形成しない。結果として、本発明に記載の実施態様は、基本的に異性体の副生成物や残基が存在しない、有用な脂環式ジエポキシドを提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器に、第一の量の適切なジエンと第二の量の適切なジエノフィルを入れ、反応混合物を形成させ、ここで、第二の量に対する第一の量のモル比が、5:1より大きく、20:1より小さいか又は等しく;
200℃から270℃までの反応温度まで反応混合物を加熱し;
1時間から10時間反応温度で反応混合物を維持し;
反応混合物を室温まで冷却し、所望の脂環式ジペプチド前駆体を回収し;
所望の脂環式ジエポキシド前駆体をエポキシ化することを含む、
脂環式ジエポキシドを形成するための方法。
【請求項2】
反応容器に第一の量の適切なジエンを入れることが、反応容器にVCHを入れることを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
反応容器に第一の量の適切なジエンを入れることが、反応容器にEpVCHを入れることを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
反応容器に第二の量の適切なジエノフィルを入れることが、反応容器にBDを入れることを含む、請求項2又は3の方法。
【請求項5】
反応容器に第二の量の適切なジエノフィルを入れることが、反応容器にBDを入れることを含み、第二の量に対する第一の量の比が3:1より大きいか又は等しく、20:1より小さいか又は等しい、請求項2の方法。
【請求項6】
反応混合物をある温度まで加熱することが、反応混合物を220℃から250℃までの温度まで加熱することを含む、請求項1から3及び5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記脂環式ジエポキシドが少なくとも95パーセントの純度を有する、以下の一般式、

で表される脂環式ジエポキシド。
【請求項8】
前記脂環式ジエポキシドが少なくとも98パーセントの純度を有する請求項7の脂環式ジエポキシド。
【請求項9】
前記脂環式ジエポキシドが、基本的にジエポキシド残基を含まない請求項7の脂環式ジエポキシド。
【請求項10】
反応容器に、第一の量の1,3−ブタジエンを入れ;
200℃から270℃までの反応温度まで反応混合物を加熱し;
1時間から10時間反応温度で反応混合物を維持し;
反応混合物を室温まで冷却し、所望の脂環式ジペプチド前駆体を回収し;
所望の脂環式ジエポキシド前駆体をエポキシ化することを含む、
以下の式:

によって表される脂環式ジエポキシドを形成するための方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−505256(P2012−505256A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531252(P2011−531252)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/060471
【国際公開番号】WO2010/042939
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】