説明

脂肪肝疾患用のバイオマーカー及びその使用方法

本発明は、脂肪症及び脂肪性肝炎を含めた脂肪肝疾患の様々なバイオマーカーを提供する。本発明は、脂肪肝疾患の診断方法、脂肪肝疾患に対する素因の判定方法、脂肪肝疾患の進行/軽減のモニタリング方法、脂肪肝疾患を治療するための組成物の有効性の評価方法、脂肪肝疾患のバイオマーカーの調節における活性に関する組成物のスクリーニング方法、脂肪肝疾患の治療方法、並びに脂肪肝疾患のバイオマーカーに基づいた他の方法を含めた、該バイオマーカーの様々な使用方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、それぞれの全体をここに参照により本明細書に組み込む、2007年11月2日に出願された米国仮出願第60/984,942号、及び2008年4月4日に出願された米国仮出願第61/042,459号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、概して、脂肪肝疾患用のバイオマーカー及びそのバイオマーカーに基づいた方法に関する。
【背景技術】
【0003】
肝臓における脂肪変化は、肝細胞内の脂質の過度の蓄積に起因する。脂肪肝は、肝細胞におけるトリグリセリド及び他の脂肪の蓄積である。脂肪肝疾患は、脂肪肝単独(単純な脂肪肝、脂肪症)から肝臓炎症を伴う脂肪肝(脂肪性肝炎)にまでわたり得る。肝臓に脂肪を有することは正常ではないが、それ自体は、害又は永久的損傷をおそらくほとんど引き起こさない。脂肪症は、一般に、慢性肝疾患への進行が稀な良性症状であると考えられる。対照的に、脂肪性肝炎は、肝線維症及び硬変に進行する可能性があり、肝細胞癌を伴う恐れがあり、肝臓関連の病的状態及び死をもたらし得る。
【0004】
脂肪症は、アルコール摂取と共に(アルコール関連脂肪肝)、又はアルコールの不存在下で(非アルコール性脂肪肝疾患、NAFLD)発生する恐れがある。脂肪性肝炎は、アルコール誘発性肝障害に関係し得るか、又はアルコールに無関係であり得る。脂肪性肝炎は存在するがアルコール摂取の履歴が存在しないならば、その症状は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼ばれる。
【0005】
アルコールの非存在下では、単純な脂肪肝(NAFLD)及びNASHの主要な危険因子は、肥満症、糖尿病、及び高トリグリセリドレベルである。NASHでは、脂肪が肝臓で蓄積し、最後には瘢痕組織の原因となる。このタイプの肝炎は、糖尿病、タンパク質栄養失調、肥満症、冠状動脈疾患、及びコルチコステロイド薬剤による治療と関連があると考えられる。肝臓における線維症又は硬変は、NASHの患者の15〜50%に存在する。線維症の患者のほぼ30%は、10年後に硬変を発症する。
【0006】
今では、脂肪肝疾患は、米国における肝機能検査の増加の最も一般的原因である。脂肪肝疾患は、今では、おそらくトランスアミナーゼの穏やかな上昇の主要な理由である。脂肪症は、一般人口のほぼ25〜35%に悪影響を及ぼす。NAFLDは、肥満である患者の80%超で見られる。NASHは、米国人の2〜5パーセントに悪影響を及ぼし、通常の肝生検を受ける患者の1.2〜9%で検出されてきた。肥満外科手術を受ける患者の50%超がNASHを有する。該疾患は男性及び女性を襲い、初期の研究は、症例の>70%が女性におけるものであったと報告するが、最近の研究は、患者の50%が女性であると報告する。脂肪肝はすべての年齢群で発生する。米国では、NASHは青年の間で最も一般的肝疾患であり、成人における慢性肝疾患の3番目に一般的な原因である(C型肝炎及びアルコールの次)。
【0007】
NASHとNAFLDの両方は、おそらく肥満症の米国人の数が増えたことが原因で、より一般的になりつつある。過去10年間で肥満症の割合は成人において倍増し、小児において3倍となった。肥満症は、NASHの人の健康をさらに複雑にする恐れがある糖尿病及び高血中コレステロールの一因にもなる。糖尿病及び高血中コレステロールも、米国人の間でより一般的になりつつある。
【0008】
NASHは、通常、ほとんど又は全く兆候がない無症状の疾患である。患者は、一般に、初期には体調が良いが、該疾患がより進行するか、又は硬変を発症すると、すぐに疲労、体重減少、及び脱力感などの兆候を示し始める。NASHの進行は、何年も、さらには何十年もかかる恐れがある。そのプロセスは停止することがあり、特定の療法を用いることなく自然に逆行する場合もある。又は、NASHは緩徐に悪化する恐れがあり、瘢痕化又は「線維症」の原因となり、肝臓に現れ、蓄積する。線維症が悪化するにつれて硬変を発症し、肝臓は重篤に瘢痕化し、硬化し、正常に機能することができない。NASHの人がすべて硬変を発症するわけではないが、一旦重篤な瘢痕化又は硬変が存在すると、進行を停止することができる療法はほとんどない。硬変の人は、体液貯留、筋消耗、腸管からの出血、及び肝不全を経験する。肝移植は、肝不全を伴う進行した硬変の唯一の療法であり、移植は、NASHの人々においてますます実施されるようになっている。NASHは、C型肝炎及びアルコール性肝疾患の次に、米国における硬変の主要な原因の1つとしての位置を占める。
【0009】
NASHは、通常、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はアスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST)などの、通常の血液検査パネルに含まれる肝臓検査において上昇が認められる人において最初に疑われる。さらなる評価が肝疾患の明白な理由(薬剤、ウイルス性肝炎、又はアルコールの過度の摂取など)を示さない場合、及び肝臓のX線又は画像診断が脂肪を示す場合、NASHが疑われる。NASHの診断を証明し、NASHを単純な脂肪肝から区別する唯一の手段は肝生検である。肝生検は、皮膚を通して針を挿入し、肝臓の小片を切除することを必要とする。その組織が炎症及び損傷のない脂肪を示すならば、単純な脂肪肝又はNAFLDと診断される。その組織の顕微鏡検査が脂肪と共に肝臓細胞の炎症及び損傷を示す場合にNASHと診断される。生検は、瘢痕組織が肝臓で発生したかどうかを判定するために必要とされる。現在、この情報を確実に提供することができる血液検査又は走査はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、より観血的ではない診断法(すなわち、生検を必要としないと見込まれる方法)に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、被検体が脂肪性肝炎を有するかどうかの診断方法であって、被検体からの生物学的試料を分析して、該試料中の脂肪性肝炎用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該1種又は複数のバイオマーカーが表1、3、4B、5B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択されるステップと、被検体が脂肪性肝炎を有するかどうかを診断するために、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該1種又は複数のバイオマーカーの脂肪性肝炎陽性及び/又は脂肪性肝炎陰性基準レベルとを比較するステップとを含む方法を提供する。
【0012】
本発明は、被検体が脂肪症を有するかどうかの診断方法であって、被検体からの生物学的試料を分析して、該試料中の脂肪症用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該1種又は複数のバイオマーカーが表2、3、4B、5B、6B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択されるステップと、被検体が脂肪症を有するかどうかを診断するために、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該1種又は複数のバイオマーカーの脂肪症陽性及び/又は脂肪症陰性基準レベルとを比較するステップとを含む方法も提供する。
【0013】
被検体が脂肪性肝炎を発症しやすいかどうかの判定方法であって、被検体からの生物学的試料を分析して、該試料中の脂肪性肝炎用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該1種又は複数のバイオマーカーが表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択されるステップと、被検体が脂肪性肝炎を発症しやすいかどうかを判定するために、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該1種又は複数のバイオマーカーの脂肪性肝炎陽性及び/又は脂肪性肝炎陰性基準レベルとを比較するステップとを含む方法も提供する。
【0014】
本発明は、被検体が脂肪症を発症しやすいかどうかの判定方法であって、被検体からの生物学的試料を分析して、該試料中の脂肪症用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該1種又は複数のバイオマーカーが表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択されるステップと、被検体が脂肪症を発症しやすいかどうかを判定するために、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該1種又は複数のバイオマーカーの脂肪症陽性及び/又は脂肪症陰性基準レベルとを比較するステップとを含む方法をさらに提供する。
【0015】
さらに、本発明は、被検体における脂肪性肝炎の進行/軽減のモニタリング方法であって、被検体からの第1の生物学的試料を分析して、該試料中の脂肪性肝炎用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該1種又は複数のバイオマーカーが表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択され、該第1の試料が第1の時点で被検体から得られるステップと、被検体からの第2の生物学的試料を分析して、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該第2の試料が第2の時点で被検体から得られるステップと、被検体における脂肪性肝炎の進行/軽減をモニタリングするために、該第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該第2の試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)とを比較するステップとを含む方法を提供する。
【0016】
本発明は、被検体における脂肪症の進行/軽減のモニタリング方法であって、被検体からの第1の生物学的試料を分析して、該試料中の脂肪症用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該1種又は複数のバイオマーカーが表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択され、該第1の試料が第1の時点で被検体から得られるステップと、被検体からの第2の生物学的試料を分析して、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該第2の試料が第2の時点で被検体から得られるステップと、被検体における脂肪症の進行/軽減をモニタリングするために、該第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該第2の試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)とを比較するステップとを含む方法も提供する。
【0017】
脂肪性肝炎を治療するための組成物の有効性の評価方法であって、脂肪性肝炎を有し、現在又は以前に該組成物を用いて治療されている被検体からの生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される脂肪性肝炎用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、(a)被検体から以前に採取した生物学的試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベルであって、以前に採取した生物学的試料が該組成物を用いて治療される前の被検体から得られたレベル、(b)該1種又は複数のバイオマーカーの脂肪性肝炎陽性基準レベル、並びに/或いは(c)該1種又は複数のバイオマーカーの脂肪性肝炎陰性基準レベルとを比較するステップとを含む方法をさらに提供する。
【0018】
本発明は、脂肪性肝炎の治療における組成物の有効性の評価方法であって、被検体からの第1の生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される脂肪性肝炎用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該第1の試料が第1の時点で被検体から得られるステップと、被検体に組成物を投与するステップと、被検体からの第2の生物学的試料を分析して、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該第2の試料が組成物の投与後に第2の時点で被検体から得られるステップと、脂肪性肝炎を治療するための組成物の有効性を評価するために、該第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該第2の試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)とを比較するステップとを含む方法をさらに提供する。
【0019】
本発明は、脂肪性肝炎を治療するための2種以上の組成物の相対的有効性の評価方法であって、脂肪症を有し、現在又は以前に第1の組成物を用いて治療されている第1の被検体からの第1の生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、脂肪性肝炎を有し、現在又は以前に第2の組成物を用いて治療されている第2の被検体からの第2の生物学的試料を分析して、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、脂肪性肝炎を治療するための第1及び第2の組成物の相対的有効性を評価するために、該第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該第2の試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)とを比較するステップとを含む方法も提供する。
【0020】
さらに、本発明は、脂肪性肝炎の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを調節する活性を有する組成物のスクリーニング方法であって、1つ又は複数の細胞を該組成物と接触させるステップと、1つ若しくは複数の細胞の少なくとも一部、又は該細胞を伴う生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される脂肪性肝炎の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と該バイオマーカーのための所定の標準レベルとを比較して、該組成物が該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を調節したかどうかを判定するステップとを含む方法を提供する。
【0021】
本発明は、脂肪性肝炎のための潜在的薬物標的の同定方法であって、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される脂肪性肝炎用の1種又は複数のバイオマーカーと関連がある1つ又は複数の生化学的経路を同定するステップと、1つ又は複数の同定された生化学的経路の少なくとも1つに悪影響を及ぼすタンパク質を同定するステップであって、該タンパク質が脂肪性肝炎のための潜在的薬物標的であるステップとを含む方法をさらに提供する。
【0022】
本発明は、脂肪性肝炎を有する被検体の治療方法であって、脂肪性肝炎において減少する、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される1種又は複数のバイオマーカーの有効量を被検体に投与するステップを含む方法も提供する。
【0023】
本発明は、脂肪症を有する被検体においてNAFLDをNASHから区別する方法であって、被検体からの生物学的試料を分析して、該試料中のNAFLD及び/又はNASH用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該1種又は複数のバイオマーカーが表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、10、11、12、13、及び図1、2、3から選択されるステップと、被検体がNASHを有するかどうかを判定するために、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、NASHを区別するNAFLD陽性基準レベル、及び/又はNAFLDを区別するNASH陽性基準レベルとを比較するステップとを含む方法も提供する。
【0024】
さらに、本発明は、被検体がNASHを有するかどうかの診断方法であって、被検体からの生物学的試料を分析して、該試料中のNASH用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該1種又は複数のバイオマーカーが表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、10、11、12、13、及び図1、2、3から選択されるステップと、被検体がNASHを有するかどうかを診断するために、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該1種又は複数のバイオマーカーのNASH陽性及び/又はNASH陰性基準レベルとを比較するステップとを含む方法を提供する。
【0025】
本発明は、脂肪症を治療するための組成物の有効性の評価方法であって、脂肪症を有し、現在又は以前に該組成物を用いて治療されている被検体からの生物学的試料を分析して、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択される脂肪症用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、(a)被検体から以前に採取した生物学的試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベルであって、以前に採取した生物学的試料が、該組成物を用いて治療される前の被検体から得られたレベル、(b)該1種又は複数のバイオマーカーの脂肪症陽性基準レベル、並びに/或いは(c)該1種又は複数のバイオマーカーの脂肪症陰性基準レベルとを比較するステップとを含む方法も提供する。
【0026】
脂肪症を治療するための2種以上の組成物の相対的有効性の評価方法であって、脂肪症を有し、現在又は以前に第1の組成物を用いて治療されている第1の被検体からの第1の生物学的試料を分析して、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、脂肪症を有し、現在又は以前に第2の組成物を用いて治療されている第2の被検体からの第2の生物学的試料を分析して、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、脂肪症を治療するための第1及び第2の組成物の相対的有効性を評価するために、該第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該第2の試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)とを比較するステップとを含む方法も提供する。
【0027】
本発明は、脂肪症の1種又は複数のバイオマーカーの調節における活性に関する組成物のスクリーニング方法であって、1つ又は複数の細胞を該組成物と接触させるステップと、1つ若しくは複数の細胞の少なくとも一部、又は該細胞を伴う生物学的試料を分析して、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択される脂肪症の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と該バイオマーカーのための所定の標準レベルとを比較して、該組成物が該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を調節したかどうかを判定するステップとを含む方法も提供する。
【0028】
脂肪症のための潜在的薬物標的の同定方法であって、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択される脂肪症用の1種又は複数のバイオマーカーと関連がある1つ又は複数の生化学的経路を同定するステップと、1つ又は複数の同定された生化学的経路の少なくとも1つに悪影響を及ぼすタンパク質を同定するステップであって、該タンパク質が脂肪症のための潜在的薬物標的であるステップとを含む方法も提供する。
【0029】
本発明は、脂肪症を有する被検体の治療方法であって、脂肪症において減少する、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択される1種又は複数のバイオマーカーの有効量を被検体に投与するステップを含む方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】脂肪症被検体と対照被検体を区別するのに重要なバイオマーカー化合物の一実施形態を示す図である。
【図2】脂肪性肝炎被検体を対照被検体から区別するのに重要なバイオマーカー化合物の一実施形態を示す図である。
【図3】脂肪症、脂肪性肝炎及び対照被検体を区別するのに重要なバイオマーカー化合物の実施形態を示す図である。
【図4】表8で同定しているバイオマーカーを使用した、対照及び脂肪症被検体の分類を示す再帰的分割結果の一例を示す図である。
【図5】表9で列挙しているバイオマーカーを使用した、脂肪症及び脂肪性肝炎(NASH、SH)の分類を示す再帰的分割結果の一例を示す図である。
【図6】表10で列挙しているバイオマーカーを使用した、対照及び脂肪性肝炎の分類を示す再帰的分割結果の一例を示す図である。
【図7】表11で列挙しているバイオマーカーを使用した、脂肪症、脂肪性肝炎及び対照被検体を分類するためのバイオマーカーの使用を示す再帰的分割結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、脂肪症及び脂肪性肝炎のバイオマーカー、脂肪症及び/又は脂肪性肝炎の診断(又は診断の支援)方法、肝臓の脂肪症と脂肪性肝炎との区別方法、NAFLDとNASHとの区別方法、脂肪性肝炎、線維症及び硬変に対する素因の判定方法、脂肪性肝炎の進行/軽減のモニタリング方法、脂肪性肝炎を治療するための組成物の有効性の評価方法、脂肪性肝炎のバイオマーカーの調節における活性に関する組成物のスクリーニング方法、脂肪性肝炎の治療方法、並びに脂肪症及び脂肪性肝炎のバイオマーカーに基づいた他の方法に関する。しかし、本発明をさらに詳述する前に、最初に以下の用語を定義する。
【0032】
定義
「バイオマーカー」とは、第1の表現型を有する(例えば、疾患を有する)被検体又は被検体の群からの生物学的試料中に、第2の表現型を有する(例えば、該疾患を有さない)被検体又は被検体の群からの生物学的試料と比較して特異的に存在する(すなわち、増加又は減少している)化合物、好ましくは代謝産物を意味する。バイオマーカーは、任意のレベルで特異的に存在し得るが、一般に、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%以上増加したレベルで存在するか、又は一般に、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%減少した(すなわち、不存在)レベルで存在する。バイオマーカーは、好ましくは統計学的に有意な(すなわち、ウェルチのT検定又はウィルコクソンの順位和検定を使用して測定すると0.05未満のp−値及び/又は0.10未満のq−値)レベルで特異的に存在する。
【0033】
1種又は複数のバイオマーカーの「レベル」とは、該試料中のバイオマーカーの絶対又は相対の量又は濃度を意味する。
【0034】
「試料」又は「生物学的試料」とは、被検体から単離した生物学的材料を意味する。生物学的試料は、所望のバイオマーカーを検出するのに適した任意の生物学的材料を含有してもよく、被検体からの細胞及び/又は非細胞材料を含んでもよい。試料は、例えば、組織、血液、血漿、尿、又は脳脊髄液(CSF)などの任意の好適な生物学的組織又は流体から単離することができる。
【0035】
「被検体」とは任意の動物を意味するが、好ましくは、例えば、ヒト、サル、ヒト以外の霊長類、マウス、又はウサギなどの哺乳類である。
【0036】
バイオマーカーの「基準レベル」とは、特定の疾患状態、表現型、又は特定の疾患状態若しくは表現型の発生に対する素因、又はそれらの欠如、並びに疾患状態、表現型、又は特定の疾患状態若しくは表現型の発生に対する素因、又はそれらの欠如の組合せを示すバイオマーカーのレベルを意味する。バイオマーカーの「陽性」基準レベルとは、特定の疾患状態又は表現型を示すレベルを意味する。バイオマーカーの「陰性」基準レベルとは、特定の疾患状態又は表現型の欠如を示すレベルを意味する。例えば、バイオマーカーの「NASH陽性基準レベル」とは、被検体におけるNASHの陽性診断を示すバイオマーカーのレベルを意味し、バイオマーカーの「NASH陰性基準レベル」とは、被検体におけるNASHの陰性診断を示すバイオマーカーのレベルを意味する。バイオマーカーの「基準レベル」は、バイオマーカーの絶対又は相対の量又は濃度、バイオマーカーの存在又は不存在、バイオマーカーの量又は濃度の範囲、バイオマーカーの最小及び/又は最大の量又は濃度、バイオマーカーの平均の量又は濃度、並びに/或いはバイオマーカーの量又は濃度の中央値でもよく、さらに、バイオマーカーの組合せの「基準レベル」は、また、2種以上のバイオマーカーの互いに対する絶対又は相対の量又は濃度の比でもよい。特定の疾患状態、表現型、又はそれらの欠如用のバイオマーカーの適切な陽性及び陰性基準レベルは、1つ又は複数の適切な被検体における所望のバイオマーカーのレベルの測定により決定することができ、そのような基準レベルは、被検体の特定集団に合わせ得る(例えば、基準レベルは、年齢一致でも性別一致でもよく、その結果、特定の年齢又は性別の被検体からの試料中のバイオマーカーレベルと、特定の年齢又は性別群における特定の疾患状態、表現型、又はそれらの欠如用の基準レベルとを比較し得る)。そのような基準レベルは、また、生物学的試料中のバイオマーカーのレベルを測定するのに使用される特定の技法(例えば、LC−MS、GC−MS等)に合わせることができ、バイオマーカーのレベルは、使用する特定の技法に基づいて異なってもよい。
【0037】
「非バイオマーカー化合物」とは、第1の表現型を有する(例えば、第1の疾患を有する)被検体又は被検体の群からの生物学的試料中に、第2の表現型を有する(例えば、第1の疾患を有さない)被検体又は被検体の群からの生物学的試料と比較して特異的に存在しない化合物を意味する。しかし、そのような非バイオマーカー化合物は、被検体又は被検体の群からの生物学的試料中に、第1の表現型(例えば、第1の疾患を有する)又は第2の表現型(例えば、第1の疾患を有さない)と比較して第3の表現型を有する(例えば、第2の疾患を有する)バイオマーカーでもよい。
【0038】
「代謝産物」、又は「小分子」とは、細胞中に存在する有機及び無機分子を意味する。その用語は、大きいタンパク質(例えば、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000,又は10,000を超える分子量を有するタンパク質)、大きい核酸(例えば、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000,又は10,000を超える分子量を有する核酸)、又は大きい多糖類(例えば、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000,又は10,000を超える分子量を有する多糖類)などの大きい高分子は包含しない。細胞の小分子は、一般に、細胞質又はミトコンドリアなどの他の細胞小器官において溶解して遊離で存在し、小分子は、そこでさらに代謝することができる中間体のプールを形成するか、又は高分子と呼ばれる大きい分子を生成するのに使用される。「小分子」という用語は、食物に由来するエネルギーを有用な形態に変換する化学反応におけるシグナル分子及び中間体を包含する。小分子の例としては、糖、脂肪酸、アミノ酸、ヌクレオチド、細胞内プロセスの間に形成した中間体、及び細胞内に存在する他の小分子が挙げられる。
【0039】
「代謝プロファイル」、又は「小分子プロファイル」とは、標的細胞、組織、器官、生物体、又はそれらの一部分(例えば、細胞区画)内の小分子の完全又は部分的な目録を意味する。目録は、存在する小分子の数量及び/又はタイプを含み得る。「小分子プロファイル」は、単一の技法、又は多数の様々な技法を使用して測定し得る。
【0040】
「メタボローム」とは、所与の生物体中に存在する小分子のすべてを意味する。
【0041】
「脂肪症」とは、炎症が存在しない脂肪肝疾患を意味する。その症状は、アルコール摂取と共に、又はアルコール摂取の不存在下で発生することができる。
【0042】
「非アルコール性脂肪肝疾患」(NAFLD)とは、肝臓に有害であるとみなされる量のアルコール摂取の不存在下でさえ被検体において発生する脂肪肝疾患(脂肪症)を意味する。
【0043】
「脂肪性肝炎」とは、炎症を伴う脂肪肝疾患を意味する。脂肪性肝炎は硬変に進行する恐れがあり、肝細胞癌を伴う恐れがある。その症状は、アルコール摂取と共に、又はアルコール摂取の不存在下で発生することができる。
【0044】
「非アルコール性脂肪性肝炎」(NASH)とは、肝臓に有害であるとみなされる量のアルコール摂取の不存在下でさえ被検体において発生する脂肪性肝炎を意味する。NASHは硬変に進行する恐れがあり、肝細胞癌を伴う恐れがある。
【0045】
I.バイオマーカー
本明細書に記載のNAFLD及びNASHバイオマーカーは、メタボロームプロファイリング技法を使用して発見した。そのようなメタボロームプロファイリング技法は、以下で説明する実施例、並びに本明細書において参照によりそのすべての内容を本明細書に組み込む米国特許第7,005,255号及び米国特許出願第11/357,732号、同第10/695,265号(公開番号2005/0014132)、同第11/301,077号(公開番号2006/0134676)、同第11/301,078号(公開番号2006/0134677)、同第11/301,079号(公開番号2006/0134678)、及び同第11/405,033号でより詳細に記載されている。
【0046】
一般に、代謝プロファイルは、脂肪症と診断されたヒト被検体から、並びに1つ又は複数の他のヒト被検体の群から(例えば、脂肪症と診断されていない健康な対照被検体)、並びにNASHと診断されたヒト被検体からの生物学的試料に関して測定した。脂肪症を有する被検体からの生物学的試料に関する代謝プロファイルと、1つ又は複数の他の被検体の群からの生物学的試料に関する代謝プロファイルとを比較した。統計学的に有意なレベルで特異的に存在する分子を含めた、脂肪症の被検体からの試料の代謝プロファイルに別の群(例えば、脂肪症と診断されていない健康な対照被検体)と比較して特異的に存在する分子は、それらの群を区別するためのバイオマーカーとして同定した。さらに、統計学的に有意なレベルで特異的に存在する分子を含めた、脂肪症の被検体からの試料の代謝プロファイルにNASHと比較して特異的に存在する分子も、それらの群を区別するためのバイオマーカーとして同定した。
【0047】
バイオマーカーについては、本明細書でより詳細に論じる。発見したバイオマーカーは、以下の群(単数又は複数)と一致する。
脂肪症を有する被検体対肝疾患と診断されていない対照被検体を区別するためのバイオマーカー(表2、4B、5B、8、11、12、13、図1を参照のこと(γ−グルタミルチロシン、タウロコレート、ブチリルカルニチン、代謝産物−11235、チロシン、ウリジン、グルタメート、代謝産物−11304、代謝産物−4611、代謝産物−6488、10c−ウンデセノエート、代謝産物−11431、代謝産物−3107、グルタミルバリン、代謝産物−11230、代謝産物−3083、代謝産物−11491、代謝産物−10432、代謝産物−11422、代謝産物−11728、代謝産物−10914、代謝産物−11432、代謝産物−11314、代謝産物−12035、代謝産物−11242、代謝産物−11529、代謝産物−11897、γ−グルタミルフェニルアラニン−、代謝産物−11628、代謝産物−3108、アラニン、グリココレート、アイソバー(Isobar)47(タウロケノデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸)、アイソバー66(グリコケノデオキシコール酸、グリコデオキシコール酸)、ラクテート、マンノース、代謝産物−10026、代謝産物−10951、代謝産物−2347、代謝産物−2821、代謝産物−3016、代謝産物−3019、代謝産物−3025、代謝産物−3026、代謝産物−3073、代謝産物−3077、代謝産物−3098、代謝産物−3165、代謝産物−3330、代謝産物−4167、代謝産物−4361、代謝産物−4759、代謝産物−4806、代謝産物−5346、代謝産物−5769、代謝産物−8506、チロキシン、尿酸)、及び図3(γ−グルタミルチロシン、グルタメート、代謝産物−11728、ブチリルカルニチン、タウロコレート、グルタミルバリンチロシン、代謝産物−11422、キヌレニン、グリココレート、γ−トコフェロール、代謝産物−11431、クレアチン、代謝産物−10914、代謝産物−11235、馬尿酸、代謝産物−11529、代謝産物−4611、代謝産物−01911、代謝産物−11491、グリセロホスホリルコリン(GPC)、尿酸−、γ−グルタミルフェニルアラニン−、代謝産物−11230、10c−ウンデセノエート、代謝産物−11315、ヒスチジン、代謝産物−11304、代謝産物−11432、代謝産物−11242、アラニン、イソシトレート、イソロイシン、ラクテート、ロイシン、マンノース、代謝産物−10026、代謝産物−10812、代謝産物−1496、代謝産物−1911、代謝産物−2395、代謝産物−3016、代謝産物−3026、代謝産物−3073、代謝産物−3098、代謝産物−3330、代謝産物−4274、代謝産物−5769、代謝産物−7187、代謝産物−8506、代謝産物−9855、テオブロミン、チロキシン、尿酸、バリン、キサンチン))、
NASHを有する被検体対肝疾患と診断されていない対照被検体を区別するためのバイオマーカー(表1、6B、10、11、12、13、図2を参照のこと(代謝産物−11728、キヌレニン、グリココレート、ブチリルカルニチン、グルタメート、γ−グルタミルチロシン、馬尿酸、代謝産物−10914、代謝産物−11422、γ−トコフェロール−、代謝産物−11564、グルタミルバリン、代謝産物−11205、代謝産物−11431、尿酸、代謝産物−02272、チロシン、代謝産物−11231、γ−グルタミルフェニルアラニン、マンノース、代謝産物−03951、代謝産物−11315、代謝産物−11529、代謝産物−4611、10c−ウンデセノエート、代謝産物−11432、代謝産物−4147、代謝産物−11227、タウロコレート、代謝産物−11380、3−メチル−2−オキソ酪酸、アラニン、グルタミン、イソシトレート、イソロイシン、ロイシン、メソ−エリスリトール、代謝産物−10026、代謝産物−10812、代謝産物−1086、代謝産物−1110、代謝産物−1335、代謝産物−1496、代謝産物−2041、代謝産物−2272、代謝産物−2395、代謝産物−3073、代謝産物−3087、代謝産物−3098、代謝産物−4274、代謝産物−5769、代謝産物−7187、バリン、キサンチン))、
脂肪性肝炎(NASH)を有する被検体対脂肪症を有する被検体を区別するためのバイオマーカー(表3、4B、9、11、12、13、及び図3を参照のこと(γ−グルタミルチロシン、グルタメート、代謝産物−11728、ブチリルカルニチン、タウロコレート、グルタミルバリンチロシン、代謝産物−11422、キヌレニン、グリココレート、γ−トコフェロール、代謝産物−11431、クレアチン、代謝産物−10914、代謝産物−11235、馬尿酸、代謝産物−11529、代謝産物−4611、代謝産物−01911、代謝産物−11491、グリセロホスホリルコリン(GPC)、尿酸−、γ−グルタミルフェニルアラニン−、代謝産物−11230、10c−ウンデセノエート、代謝産物−11315、ヒスチジン、代謝産物−11304、代謝産物−11432、代謝産物−11242、アラニン、イソシトレート、イソロイシン、ラクテート、ロイシン、マンノース、代謝産物−10026、代謝産物−10812、代謝産物−1496、代謝産物−1911、代謝産物−2395、代謝産物−3016、代謝産物−3026、代謝産物−3073、代謝産物−3098、代謝産物−3330、代謝産物−4274、代謝産物−5769、代謝産物−7187、代謝産物−8506、代謝産物−9855、テオブロミン、チロキシン、尿酸、バリン、キサンチン))。
【0048】
現時点では、一部のバイオマーカー化合物のアイデンティティーは知られていないが、被検体からの生物学的試料中のバイオマーカーの同定にそのようなアイデンティティーは必要ではない。なぜならば、「無名の」化合物は、そのような同定を可能にするように分析技法により十分に特徴付けられてきている。すべてのそのような「無名の」化合物の分析的キャラクタリゼーションは、実施例に列挙している。そのような「無名の」バイオマーカーは、本明細書では、特定の代謝産物番号がその後に続く用語「代謝産物」を使用して命名した。
【0049】
本明細書に開示の方法では任意の数のバイオマーカーを使用し得る。すなわち、開示の方法は、表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、11、12、13、図1、図3のそれぞれ又はすべてのバイオマーカーのすべての組合せ、或いはそれらの任意の一部又は組合せを含めた1種のバイオマーカー、2種以上のバイオマーカー、3種以上のバイオマーカー、4種以上のバイオマーカー、5種以上のバイオマーカー、6種以上のバイオマーカー、7種以上のバイオマーカー、8種以上のバイオマーカー、9種以上のバイオマーカー、10種以上のバイオマーカー、15種以上等のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)の測定を含み得る。別の態様では、開示の方法で使用するためのバイオマーカーの数としては、約30種以下のバイオマーカー、25種以下、20種以下、15種以下、10種以下、9種以下、8種以下、7種以下、6種以下、5種以下のバイオマーカーのレベルが挙げられる。別の態様では、開示の方法で使用するためのバイオマーカーの数としては、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、20種、25種、又は30種のバイオマーカーのレベルが挙げられる。
【0050】
さらに、表に列挙しているバイオマーカーを使用する本明細書に開示の方法は、脂肪肝疾患の臨床診断基準と併用して使用し得る。臨床診断との併用は、開示の方法を促進するか、又は開示の方法の結果を確認し得る(例えば、診断を促進又は確認する、進行若しくは軽減をモニタリングする、及び/又は脂肪肝疾患に対する素因を判定する)。
【0051】
II.脂肪症及び/又は脂肪性肝炎の診断
脂肪症用のバイオマーカーの同定は、肝臓機能障害の1種又は複数の兆候を示す被検体における脂肪症の診断(又は診断の支援)を可能にする。被検体が脂肪症を有するかどうかの診断(又は診断の支援)方法は、(1)被検体からの生物学的試料を分析して、該試料中の脂肪症の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、(2)被検体が脂肪症を有するかどうかを診断する(又は診断を支援する)ために、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該1種又は複数のバイオマーカーの脂肪症陽性及び/又は脂肪症陰性基準レベルとを比較するステップとを含む。使用する1種又は複数のバイオマーカーは、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、図1、図3及びそれらの組合せから選択される。脂肪症の診断を支援するのにそのような方法を使用する場合、該方法の結果は、被検体が脂肪症を有するかどうかの臨床的判定において有用である他の方法(又はそれらの結果)と共に使用し得る。
【0052】
脂肪症の診断(又は診断の支援)に関する一実施形態では、該方法は、(1)被検体からの生物学的試料を分析して、該試料中の脂肪症の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、(2)被検体が脂肪症を有するかどうかを診断する(又は診断を支援する)ために、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該1種又は複数のバイオマーカーの脂肪症陽性及び/又は脂肪症陰性基準レベルとを比較するステップとを含み、使用する1種又は複数のバイオマーカーは、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、図1、図3及びそれらの組合せから選択される。
【0053】
脂肪性肝炎の診断(又は診断の支援)に関する実施形態では、該方法は、(1)被検体からの生物学的試料を分析して、該試料中の脂肪性肝炎の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、(2)被検体が脂肪性肝炎を有するかどうかを診断する(又は診断を支援する)ために、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該1種又は複数のバイオマーカーの脂肪性肝炎陽性及び/又は脂肪性肝炎陰性基準レベルとを比較するステップとを含み、使用する1種又は複数のバイオマーカーは、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2、図3及びそれらの組合せから選択される。
【0054】
NASHの診断(又は診断の支援)に関する実施形態では、該方法は、(1)被検体からの生物学的試料を分析して、該試料中のNASHの1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、(2)被検体がNASHを有するかどうかを診断する(又は診断を支援する)ために、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該1種又は複数のバイオマーカーのNASH陽性及び/又はNASH陰性基準レベルとを比較するステップとを含み、使用する1種又は複数のバイオマーカーは、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2、図3及びそれらの組合せから選択される。
【0055】
生物学的試料を分析するのに任意の好適な方法を使用して、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定し得る。好適な方法としては、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー)、質量分析法(例えば、MS、MS−MS)、酵素又は生化学反応、臨床化学、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、抗体結合、他の免疫化学技法、及びそれらの組合せが挙げられる。さらに、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)は、間接的に、例えば、測定することを望んでいるバイオマーカー(単数又は複数)のレベルと相関する化合物(単数又は複数)のレベルを測定するアッセイを使用することにより測定し得る。
【0056】
表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、10、11、12、13、図1、図2、図3のバイオマーカーの1つ又は複数のレベルは、被検体が脂肪症又は脂肪性肝炎を有するかどうかの診断方法、及び診断の支援方法で測定し得る。例えば、表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、10、11、12、13、図1、図2、図3のすべてのバイオマーカーの組合せ、又はそれらの任意の一部を含めた1種のバイオマーカー、2種以上のバイオマーカー、3種以上のバイオマーカー、4種以上のバイオマーカー、5種以上のバイオマーカー、6種以上のバイオマーカー、7種以上のバイオマーカー、8種以上のバイオマーカー、9種以上のバイオマーカー、10種以上等のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)は、そのような方法で測定して使用し得る。バイオマーカーの組合せのレベルを測定することは、脂肪症の診断及び脂肪症の診断の支援においてより高い感度及び特異度を可能にすることができ、脂肪症に対して同様の、又はオーバーラップするバイオマーカーを有し得る(脂肪症を有さない被検体と比較して)他の肝臓障害(例えば線維症、硬変、肝癌等)からの、脂肪症のより良好な区別を可能にし得る。例えば、生物学的試料における特定のバイオマーカー(及び非バイオマーカー化合物)のレベルの比は、脂肪症の診断及び脂肪症の診断の支援においてより高い感度及び特異度を可能にすることができ、脂肪症に対して同様の、又はオーバーラップするバイオマーカーを有し得る(脂肪症を有さない被検体と比較して)他の肝臓障害からの、脂肪症のより良好な区別を可能にし得る。
【0057】
特定のタイプの試料(例えば、肝臓組織試料、肝生検、尿試料、又は血漿試料)において脂肪症又は脂肪性肝炎の診断(又は脂肪症若しくは脂肪性肝炎の診断の支援)に特異的である1種又は複数のバイオマーカーも使用し得る。例えば、生物学的試料が血漿である場合、被検体が脂肪症を有するかどうかを診断する(又は診断を支援する)のに表2、4B、5B、8、11、12、13、図1、図3に列挙している1種又は複数のバイオマーカーを使用し得る。
【0058】
該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定した後、被検体が脂肪症(又は脂肪性肝炎)を有するかどうかの診断を支援、又は診断するために、該レベル(単数又は複数)と、脂肪症陽性及び/又は脂肪症陰性基準レベル(或いは脂肪性肝炎陽性及び/又は脂肪性肝炎陰性基準レベル)とを比較する。脂肪症陽性基準レベルに適合する、試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値より上及び/又は下、並びに/或いは基準レベルの範囲内であるレベル)は、被検体における脂肪症の診断を示す。脂肪症陰性基準レベルに適合する、試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値より上及び/又は下、並びに/或いは基準レベルの範囲内であるレベル)は、被検体が脂肪症ではないという診断を示す。さらに、脂肪症陰性基準レベルと比較して該試料中に特異的に(特に統計学的に有意なレベルで)存在する該1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、被検体における脂肪症の診断を示す。脂肪症陽性基準レベルと比較して該試料中に特異的に(特に統計学的に有意なレベルで)存在する該1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、被検体が脂肪症ではないという診断を示す。
【0059】
該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)は、生物学的試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、脂肪症陽性及び/又は脂肪症陰性及び/又は脂肪性肝炎陽性及び/又は脂肪性肝炎陰性基準レベルとの単純な比較(例えば、手動比較)を含めた様々な技法を使用して、脂肪症陽性及び/又は脂肪症陰性及び/又は脂肪性肝炎陽性及び/又は脂肪性肝炎陰性基準レベルと比較し得る。生物学的試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)は、また、1種又は複数の統計的分析(例えば、t−検定、ウェルチのT検定、ウィルコクソンの順位和検定、ANOVA、再帰的分割、ランダムフォレスト)を使用して、脂肪症陽性及び/又は脂肪症陰性及び/又は脂肪性肝炎陽性及び/又は脂肪性肝炎陰性基準レベルと比較し得る。
【0060】
さらに、生物学的試料は、1種又は複数の非バイオマーカー化合物のレベル(単数又は複数)を測定するために分析し得る。そのような非バイオマーカー化合物のレベル(単数又は複数)は、また、脂肪症及び/又は脂肪性肝炎に対して同様の、又はオーバーラップするバイオマーカーを有し得る(肝臓障害を有さない被検体と比較して)他の肝臓障害からの脂肪症の区別を可能にし得る。例えば、肝臓障害を有する被検体からの生物学的試料が非バイオマーカー化合物を有さない場合、脂肪症を有する被検体、及び脂肪症を有さない被検体の生物学的試料中に存在する知られている非バイオマーカー化合物は、別の肝臓障害の診断と比較して脂肪症の診断を検証するためにモニタリングすることができる。
【0061】
被検体が脂肪症を有するかどうかの診断(又は診断の支援)方法は、また、被検体がNAFLD及び/又は脂肪性肝炎(例えばNASH)を有するかどうかを診断(又は診断を支援する)ために特異的に実施し得る。そのような方法は、(1)被検体からの生物学的試料を分析して、該試料中のNAFLD(及び/又はNASH)の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、(2)被検体がNAFLD(又はNASH)を有するかどうかを診断する(又は診断を支援する)ために、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、NAFLD陽性及び/又はNAFLD陰性基準レベル(又はNASH陽性及び/又はNASH陰性基準レベル)とを比較するステップとを含む。NAFLDに特異的であるバイオマーカーは、表2、4B、5B、8、11、12、13、図1、図3に列挙しており、NASHに特異的であるバイオマーカーは、表1、4B、6B、10、11、12、13、図2、図3に列挙している。
【0062】
III.NAFLDをNASHから区別する方法
NAFLD対NASHを区別するためのバイオマーカーの同定は、患者におけるNAFLDとNASHとの区別を可能にする。脂肪症を有する被検体においてNAFLDをNASHから区別する方法は、(1)被検体からの生物学的試料を分析して、該試料中のNASHを区別する1種若しくは複数のNAFLDのバイオマーカー、及び/又はNAFLDを区別する1種若しくは複数のNASHのバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、(2)被検体がNAFLD又はNASHを有するかどうかを判定するために、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該1種又は複数のバイオマーカーのNASHを区別するNAFLD陽性基準レベル及び/又はNAFLDを区別するNASH陽性基準レベルとを比較するステップとを含む。使用し得る1種又は複数のバイオマーカーとしては、表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、10、11、12、13、図1、図2、図3及びそれらの組合せから選択されるバイオマーカーが挙げられる。
【0063】
生物学的試料を分析するのに任意の好適な方法を使用して、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定し得る。好適な方法としては、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー)、質量分析法(例えば、MS、MS−MS)、酵素又は生化学反応、臨床化学、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、抗体結合、他の免疫化学技法、及びそれらの組合せが挙げられる。さらに、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)は、例えば、測定することを望んでいるバイオマーカー(単数又は複数)のレベルと相関する化合物(単数又は複数)のレベルを測定するアッセイを使用することにより、間接的に測定し得る。
【0064】
表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、10、11、12、13、図1、図2、図3のバイオマーカーの1つ又は複数のレベルは、被検体が脂肪性肝炎を有するかどうかの診断方法、及び診断の支援方法で測定し得る。例えば、表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、10、11、12、13、図1、図2、図3のすべてのバイオマーカーの組合せ、又はそれらの任意の一部を含めた1種のバイオマーカー、2種以上のバイオマーカー、3種以上のバイオマーカー、4種以上のバイオマーカー、5種以上のバイオマーカー、6種以上のバイオマーカー、7種以上のバイオマーカー、8種以上のバイオマーカー、9種以上のバイオマーカー、10種以上等のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)は、そのような方法で測定して使用し得る。バイオマーカーの組合せのレベルの測定は、NAFLDとNASHとの区別においてより高い感度及び特異度を可能にし得る。
【0065】
特定のタイプの試料(例えば、肝臓組織試料、尿試料、又は血漿試料)においてNAFLDとNASHとの区別に特異的である1種又は複数のバイオマーカーも使用し得る。例えば、生物学的試料が血漿である場合、表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、10、11、12、13、図1、図2、図3に列挙している1種又は複数のバイオマーカーを使用し得る。
【0066】
該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定した後、被検体がNAFLD又はNASHを有するかどうかを判定するために、該レベル(単数又は複数)と、1種又は複数のバイオマーカーのNASHを区別するNAFLD陽性基準レベル陰性及び/又はNAFLDを区別するNASH陽性基準レベルとを比較する。NASHを区別するNAFLD陽性基準レベルに適合する、試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値より上及び/又は下、並びに/或いは基準レベルの範囲内であるレベル)は、被検体におけるNAFLDを示す。NAFLDを区別するNASH陽性基準レベルに適合する、試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値より上及び/又は下、並びに/或いは基準レベルの範囲内であるレベル)は、被検体におけるNASHを示す。該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)が、NASHを区別するNAFLD陽性基準レベルにさらに類似する(又はNASH陽性基準レベルにあまり類似しない)ならば、その結果は被検体におけるNAFLDを示す。1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)がNAFLDを区別するNASH陽性基準レベルにさらに類似する(又はNAFLD陽性基準レベルにあまり類似しない)ならば、その結果は被検体におけるNASHを示す。
【0067】
該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)は、生物学的試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、NAFLD陽性及び/又はNASH陽性基準レベルとの単純な比較(例えば、手動比較)を含めた様々な技法を使用して、NASHを区別するNAFLD陽性基準レベル及び/又はNAFLDを区別するNASH陽性基準レベルと比較し得る。生物学的試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)は、また、1種又は複数の統計的分析(例えば、t−検定、ウェルチのT検定、ウィルコクソンの順位和検定、ANOVA、再帰的分割、ランダムフォレスト)を使用して、NASHを区別するNAFLD陽性基準レベル及び/又はNAFLDを区別するNASH陽性基準レベルと比較し得る。
【0068】
さらに、生物学的試料は、1種又は複数の非バイオマーカー化合物のレベル(単数又は複数)を測定するために分析し得る。そのような非バイオマーカー化合物のレベル(単数又は複数)は、また、NAFLDのNASHからの区別を可能にし得る。
【0069】
III.脂肪性肝炎及び/又は脂肪症に対する素因の判定方法
脂肪症及び脂肪性肝炎用のバイオマーカーの同定は、脂肪性肝炎又は脂肪症の兆候を有さない被検体が脂肪性肝炎又は脂肪症を発症しやすいかどうかの判定も可能にする。例えば、脂肪性肝炎の兆候を有さない被検体が脂肪性肝炎を発症しやすいかどうかの判定方法は、(1)被検体からの生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2、図3に列挙している、該試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、(2)被検体が脂肪性肝炎を発症しやすいかどうかを判定するために、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該1種又は複数のバイオマーカーの脂肪性肝炎陽性及び/又は脂肪性肝炎陰性基準レベルとを比較するステップとを含む。該方法の結果は、被検体が脂肪性肝炎を発症しやすいかどうかの臨床的判定において有用である他の方法(又はそれらの結果)と共に使用し得る。
【0070】
脂肪性肝炎の診断(又は診断の支援)方法に関連して記載したように、生物学的試料を分析するのに任意の好適な方法を使用して、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定し得る。
【0071】
上記の脂肪性肝炎又は脂肪症の診断(又は診断の支援)方法と同様に、例えば、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2、図3のすべてのバイオマーカーの組合せ、又はそれらの任意の一部を含めた1種のバイオマーカー、2種以上のバイオマーカー、3種以上のバイオマーカー、4種以上のバイオマーカー、5種以上のバイオマーカー、6種以上のバイオマーカー、7種以上のバイオマーカー、8種以上のバイオマーカー、9種以上のバイオマーカー、10種以上等のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)は、脂肪性肝炎の兆候を有さない被検体が脂肪性肝炎を発症しやすいかどうかの判定方法で測定して使用し得る。
【0072】
該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定した後、被検体が脂肪性肝炎を発症しやすいかどうかを予測するために、該レベル(単数又は複数)と、例えば、脂肪性肝炎陽性及び/又は脂肪性肝炎陰性基準レベルとを比較する。脂肪性肝炎陽性基準レベルに適合する、試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値より上及び/又は下、並びに/或いは基準レベルの範囲内であるレベル)は、被検体が脂肪性肝炎を発症しやすいことを示す。脂肪性肝炎陰性基準レベルに適合する、試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値より上及び/又は下、並びに/或いは基準レベルの範囲内であるレベル)は、被検体が脂肪性肝炎を発症しやすくないことを示す。さらに、脂肪性肝炎陰性基準レベルと比較して該試料中に特異的に(特に統計学的に有意なレベルで)存在する該1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、被検体が脂肪性肝炎を発症しやすいことを示す。脂肪性肝炎陽性基準レベルと比較して該試料中に特異的に(特に統計学的に有意なレベルで)存在する該1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、被検体が脂肪性肝炎を発症しやすくないことを示す。
【0073】
さらに、脂肪性肝炎を有さない被検体が脂肪性肝炎を発症しやすいかどうかの評価に特異的な基準レベルを測定することも可能であろう。例えば、被検体が脂肪性肝炎を発症する様々な危険度(例えば、低、中、高)を評価するためのバイオマーカーの基準レベルを測定することが可能であろう。そのような基準レベルは、被検体からの生物学的試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベルとの比較のために使用することができる。
【0074】
上記の方法と同様に、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)は、単純な比較、1種又は複数の統計的分析、及びそれらの組合せを含めた様々な技法を使用して、脂肪性肝炎陽性及び/又は脂肪性肝炎陰性基準レベルと比較し得る。
【0075】
被検体が脂肪性肝炎及び/又は脂肪症を有するかどうかの診断(又は診断の支援)方法と同様に、脂肪性肝炎又は脂肪症の兆候を有さない被検体が脂肪症又は脂肪性肝炎を発症しやすいかどうかの判定方法は、生物学的試料を分析して該1種又は複数の非バイオマーカー化合物のレベル(単数又は複数)を測定するステップをさらに含み得る。
【0076】
脂肪性肝炎の兆候を有さない被検体が脂肪性肝炎を発症しやすいかどうかの判定方法は、また、脂肪性肝炎の兆候を有さない被検体がNAFLD及び/又はNASHを発症しやすいかどうかを判定するために特異的に実施し得る。NAFLDに特異的であるバイオマーカーは、表2、4B、5B、8、11、12、13、図1、図3に列挙しており、NASHに特異的であるバイオマーカーは、表1、4B、6B、10、11、12、13、図2、図3に列挙している。
【0077】
さらに、NAFLDを有する被検体がNASHを発症しやすいかどうかの判定方法は、表1、4B、6B、10、11、12、13、図2、図3から選択される1種又は複数のバイオマーカーを使用して実施し得る。
【0078】
IV.脂肪症及び/又は脂肪性肝炎の進行/軽減のモニタリング方法
脂肪症及び脂肪性肝炎用のバイオマーカーの同定は、被検体における脂肪症及び/又は脂肪性肝炎の進行/軽減のモニタリングも可能にする。例えば、被検体における脂肪症の進行/軽減のモニタリング方法は、(1)被検体からの第1の生物学的試料を分析して、表2、3、4B、6B、8、9、11、12、13、図1、図3から選択される脂肪症用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該第1の試料が第1の時点で被検体から得られるステップと、(2)被検体からの第2の生物学的試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該第2の試料が第2の時点で被検体から得られるステップと、(3)被検体における脂肪症の進行/軽減をモニタリングするために、該第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該第2の試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)とを比較するステップとを含む。該方法の結果は、被検体における脂肪症の経過(すなわち、変化があるならば、進行又は軽減)を示す。
【0079】
該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)の経時的な変化(もしあるならば)は、被検体における脂肪症の進行又は軽減を示し得る。被検体における脂肪症の経過を特徴付けるために、該第1の試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)、該第2の試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)、及び/又は該第1及び第2の試料中のバイオマーカーのレベルの比較結果と、脂肪症陽性、脂肪症陰性、NAFLD陽性、NAFLD陰性、高度脂肪症陽性、及び/又はNASH陰性基準レベル、並びにNASHを区別するNAFLD陽性基準レベル及び/又はNAFLDを区別するNASH陽性基準レベルとを比較し得る。脂肪症陽性基準レベルにさらに類似する(又は脂肪症の陰性基準レベルにあまり類似しない)ように、NASH基準レベルにさらに類似するように、又は、被検体がNAFLDを初期に有する場合、NAFLDを区別するNASH陽性基準レベルにさらに類似するように該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)が経時的に増加又は減少する(例えば、該第1の試料と比較して第2の試料において)ことを該比較が示すならば、その結果は脂肪症の進行を示す。脂肪症の陰性基準レベルにさらに類似する(又は脂肪症陽性基準レベルにあまり類似しない)ように、又は、被検体がNASHを初期に有する場合、NAFLD基準レベル及び/又はNASHを区別するNAFLD陽性基準レベルにさらに類似するように該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)が経時的に増加又は減少することを該比較が示すならば、その結果は脂肪症の軽減を示す。
【0080】
本明細書に記載の他の方法と同様に、被検体における脂肪症の進行/軽減のモニタリング方法で行う比較は、単純な比較、1種又は複数の統計的分析、及びそれらの組合せを含めた様々な技法を使用して実施し得る。
【0081】
該方法の結果は、被検体における脂肪症の進行/軽減の臨床的モニタリングにおいて有用である他の方法(又はそれらの結果)と共に使用し得る。
【0082】
脂肪症の診断(又は診断の支援)方法に関連して記載したように、生物学的試料を分析するのに任意の好適な方法を使用して、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定し得る。さらに、表2、4B、5B、8、11、12、13、図1、図3のすべてのバイオマーカーの組合せ、又はそれらの任意の一部を含めた1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)は、被検体における脂肪症の進行/軽減のモニタリング方法で測定して使用し得る。
【0083】
そのような方法は、脂肪症を有する被検体における脂肪症の経過をモニタリングするために実施することができるか、又は脂肪症に対する素因のレベルをモニタリングするために、脂肪症を有さない被検体(例えば、脂肪症を発症しやすいと疑われる被検体)で使用することができる。
【0084】
そのような方法は、脂肪性肝炎を有する被検体における脂肪性肝炎の経過をモニタリングするために実施することができるか、又は脂肪性肝炎に対する素因のレベルをモニタリングするために、脂肪性肝炎を有さない被検体(例えば、脂肪性肝炎を発症しやすいと疑われる被検体)で使用することができる。表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2及び/又は図3のすべてのバイオマーカーの組合せ、又はそれらの任意の一部を含めた1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)は、被検体における脂肪性肝炎の進行/軽減のモニタリング方法で測定して使用し得る。
【0085】
V.脂肪性肝炎及び/又は脂肪症を治療するための組成物の有効性の評価方法
脂肪性肝炎及び脂肪症用のバイオマーカーの同定は、脂肪性肝炎及び/又は脂肪症を治療するための組成物の有効性の評価、並びに脂肪性肝炎及び/又は脂肪症を治療するための2種以上の組成物の相対的有効性の評価も可能にする。そのような評価は、例えば、脂肪性肝炎又は脂肪症を治療するための組成物の有効性研究、並びに誘導選択で使用し得る。
【0086】
例えば、脂肪性肝炎を治療するための組成物の有効性の評価方法は、(1)脂肪性肝炎を有し、現在又は以前に該組成物を用いて治療されている被検体からの生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2及び/又は図3から選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、(2)該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、(a)被検体から以前に採取した生物学的試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)であって、以前に採取した生物学的試料が、該組成物を用いて治療される前の被検体から得られたレベル、(b)該1種又は複数のバイオマーカーの脂肪性肝炎陽性基準レベル(NASH陽性及び/又はNAFLD陽性基準レベルを含めた)、(c)該1種又は複数のバイオマーカーの脂肪性肝炎陰性基準レベル(NASH陰性及び/又はNAFLD陰性基準レベルを含めた)、(d)NAFLDを区別するNASH陽性基準レベル、並びに/或いは(e)NAFLDを区別するNASH陽性基準レベルとを比較するステップとを含む。比較の結果は、脂肪性肝炎を治療するための組成物の有効性を示す。
【0087】
したがって、脂肪性肝炎を治療するための組成物の有効性を特徴付けるために、生物学的試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、(1)脂肪性肝炎陽性基準レベル、(2)脂肪性肝炎陰性基準レベル、(3)該組成物を用いた治療の前の被検体における該1種又は複数のバイオマーカーの以前のレベル、(4)NAFLDを区別するNASH陽性基準レベル、並びに/或いは(5)NASHを区別するNAFLD陽性基準レベルとを比較する。
【0088】
生物学的試料(脂肪性肝炎を有し、現在又は以前に該組成物を用いて治療されている被検体からの)中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、脂肪性肝炎陽性基準レベル及び/又は脂肪性肝炎陰性基準レベルとを比較する場合、脂肪性肝炎陰性基準レベルに適合する、該試料中のレベル(単数又は複数)(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値より上及び/又は下、並びに/或いは基準レベルの範囲内であるレベル)は、該組成物が脂肪性肝炎を治療するための有効性を有することを示す。脂肪性肝炎陽性基準レベルに適合する、試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値より上及び/又は下、並びに/或いは基準レベルの範囲内であるレベル)は、該組成物が脂肪性肝炎を治療するための有効性を有さないことを示す。該比較は、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)に基づいた、脂肪性肝炎を治療するための有効性の程度も示し得る。
【0089】
生物学的試料(NASHを有し、現在又は以前に該組成物を用いて治療されている被検体からの)中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、NAFLDを区別するNASH陽性基準レベル及び/又はNASHを区別するNAFLD陽性基準レベルとを比較する場合、NAFLDを区別するNASH陽性基準レベルに適合する、該試料中のレベル(単数又は複数)(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値より上及び/又は下、並びに/或いは基準レベルの範囲内であるレベル)は、該組成物が脂肪性肝炎を治療するための有効性を有することを示す。NAFLDを区別するNASH陽性基準レベルに適合する、試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、基準レベルと同じ、基準レベルと実質的に同じ、基準レベルの最小値及び/又は最大値より上及び/又は下、並びに/或いは基準レベルの範囲内であるレベル)は、該組成物が脂肪性肝炎を治療するための有効性を有さないことを示す。
【0090】
生物学的試料(脂肪性肝炎を有し、現在又は以前に該組成物を用いて治療されている被検体からの)中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該組成物を用いた治療の前の被検体から以前に採取した生物学的試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)とを比較する場合、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)の任意の変化は、脂肪性肝炎を治療するための組成物の有効性を示す。すなわち、脂肪性肝炎陰性基準レベルにさらに類似する(又は脂肪性肝炎陽性基準レベルにあまり類似しない)ように該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)が該組成物を用いた治療後に増加又は減少するか、又は、被検体がNAFLDを初期に有する場合、NAFLDを区別するNASH陽性基準レベルにさらに類似する(又はNASHを区別するNAFLD陽性基準レベルにあまり類似しない)ように該レベル(単数又は複数)が増加又は減少することを該比較が示すならば、その結果は、該組成物が脂肪性肝炎を治療するための有効性を有することを示す。脂肪性肝炎陰性基準レベルにさらに類似する(又は脂肪性肝炎陽性基準レベルにあまり類似しない)ように該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)が該組成物を用いた治療後に増加又は減少しないか、又は、被検体がNASHを初期に有する場合、NASHを区別するNAFLD陽性基準レベルにさらに類似する(又はNAFLDを区別するNASH陽性基準レベルにあまり類似しない)ように該レベル(単数又は複数)が増加又は減少しないことを該比較が示すならば、その結果は、該組成物が脂肪性肝炎を治療するための有効性を有さないことを示す。該比較は、治療後に該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)で観察された変化の量に基づいた、脂肪性肝炎を治療するための有効性の程度も示し得る。そのような比較を特徴付けるのを助けるために、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)、治療前の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)、並びに/或いは現在又は以前に該組成物を用いて治療されている被検体における該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)の変化は、脂肪性肝炎陽性基準レベル(低級及びNASH陽性基準レベルを含めた)、脂肪性肝炎陰性基準レベル(低級及びNASH陰性基準レベルを含めた)、NASHを区別するNAFLD陽性基準レベル、並びに/或いはNAFLDを区別するNASH陽性基準レベルと比較し得る。
【0091】
脂肪性肝炎の治療における組成物の有効性の別の評価方法は、(1)被検体からの第1の生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2及び/又は図3から選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、該第1の試料が第1の時点で被検体から得られるステップと、(2)被検体に組成物を投与するステップと、(3)被検体からの第2の生物学的試料を分析して、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、前記第2の試料が組成物の投与後に第2の時点で被検体から得られるステップと、(4)脂肪性肝炎を治療するための組成物の有効性を評価するために、該第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該第2の試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)とを比較するステップとを含む。上で示したように、該試料の比較が、脂肪性肝炎陰性基準レベルにさらに類似する(又は脂肪性肝炎陽性基準レベルにあまり類似しない)ように該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)が組成物の投与後に増加又は減少することを示すならば、又は、被検体がNASHを初期に有する場合、NASHを区別するNAFLD陽性基準レベルにさらに類似する(又はNAFLDを区別するNASH陽性基準レベルにあまり類似しない)ように該レベル(単数又は複数)が増加又は減少するならば、その結果は、該組成物が脂肪性肝炎を治療するための有効性を有することを示す。脂肪性肝炎陰性基準レベルにさらに類似する(又は脂肪性肝炎陽性基準レベルにあまり類似しない)ように該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)が該組成物を用いた治療後に増加又は減少しないか、又は、被検体がNASHを初期に有する場合、NASHを区別するNAFLD陽性基準レベルにさらに類似する(又はNAFLDを区別するNASH陽性基準レベルにあまり類似しない)ように該レベル(単数又は複数)が増加又は減少しないことを該比較が示すならば、その結果は、該組成物が脂肪性肝炎を治療するための有効性を有さないことを示す。
【0092】
該比較は、上で論じたように組成物の投与後に1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)で観察された変化の量に基づいた、脂肪性肝炎を治療するためのある程度の有効性も示し得る。
【0093】
脂肪性肝炎を治療するための2種以上の組成物の相対的有効性の評価方法は、(1)脂肪性肝炎を有し、現在又は以前に第1の組成物を用いて治療されている第1の被検体からの第1の生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2及び/又は図3から選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、(2)脂肪性肝炎を有し、現在又は以前に第2の組成物を用いて治療されている第2の被検体からの第2の生物学的試料を分析して、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、(3)脂肪性肝炎を治療するための該第1及び第2の組成物の相対的有効性を評価するために、該第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該第2の試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)とを比較するステップとを含む。その結果は、2種の組成物の相対的有効性を示し、その結果(或いは該第1の試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル及び/又は該第2の試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数))は、相対的有効性を特徴付けるのを支援するために、脂肪性肝炎陽性基準レベル(低級及びNASH陽性基準レベルを含めた)、脂肪性肝炎陰性基準レベル(低級及びNASH陰性基準レベルを含めた)、NASHを区別するNAFLD陽性基準レベル、並びに/或いはNAFLDを区別するNASH陽性基準レベルと比較し得る。
【0094】
有効性の評価方法のそれぞれは、1つ若しくは複数の被検体、又は1つ若しくは複数の被検体の群(例えば、第1の組成物を用いて治療されている第1の群、及び第2の組成物を用いて治療されている第2の群)について実施し得る。
【0095】
本明細書に記載の他の方法と同様に、脂肪性肝炎及び/又は脂肪症を治療するための組成物の有効性(又は相対的有効性)の評価方法で行う比較は、単純な比較、1種又は複数の統計的分析、及びそれらの組合せを含めた様々な技法を使用して実施し得る。生物学的試料を分析するのに任意の好適な方法を使用して、該試料中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定し得る。さらに、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2及び/又は図3、或いはそれらの任意の一部のすべてのバイオマーカーの組合せを含めた、1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)は、脂肪性肝炎を治療するための組成物の有効性(又は相対的有効性)の評価方法で測定して使用し得る。
【0096】
最後に、脂肪性肝炎を治療するための1種又は複数の組成物の有効性(又は相対的有効性)の評価方法は、生物学的試料を分析して、1種又は複数の非バイオマーカー化合物のレベル(単数又は複数)を測定するステップをさらに含み得る。次いで、非バイオマーカー化合物は、脂肪性肝炎を有する(又は有さない)被検体のための非バイオマーカー化合物の基準レベルと比較し得る。
【0097】
VI.脂肪性肝炎及び/又は脂肪症と関連があるバイオマーカーの調節における活性に関する組成物のスクリーニング方法
脂肪性肝炎及び脂肪症用のバイオマーカーの同定は、脂肪性肝炎及び/又は脂肪症の治療において有用であり得る、脂肪性肝炎及び/又は脂肪症と関連があるバイオマーカーの調節における活性に関する組成物のスクリーニングも可能にする。例えば、脂肪性肝炎の治療に有用である組成物のスクリーニング方法は、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2及び/又は図3の1種又は複数のバイオマーカーのレベルの調節における活性に関する試験組成物をアッセイするステップを含む。そのようなスクリーニングアッセイは、in vitro及び/又はin vivoで実施してもよく、例えば、細胞培養アッセイ、器官培養アッセイ、及びin vivoアッセイ(例えば、動物モデルを必要とするアッセイ)などの、試験組成物の存在下でのそのようなバイオマーカーの調節のアッセイに有用である、当技術分野で知られている任意の形態でもよい。
【0098】
一実施形態では、脂肪性肝炎の1種又は複数のバイオマーカーの調節における活性に関する組成物のスクリーニング方法は、(1)1つ又は複数の細胞を該組成物と接触させるステップと、(2)1つ若しくは複数の細胞の少なくとも一部、又は該細胞を伴う生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2及び/又は図3から選択される脂肪性肝炎の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、(3)1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、該1種又は複数のバイオマーカーに関する所定の標準レベルとを比較して、該組成物が該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を調節したかどうかを判定するステップとを含む。上で論じたように、細胞は、該組成物とin vitro及び/又はin vivoで接触し得る。該1種又は複数のバイオマーカーに関する所定の標準レベルは、該組成物の不存在下での該1つ又は複数の細胞中の該1種又は複数のバイオマーカーのレベルでもよい。該1種又は複数のバイオマーカーに関する所定の標準レベルは、また、該組成物と接触していない対照細胞における該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)でもよい。
【0099】
さらに、該方法は、1つ若しくは複数の細胞の少なくとも一部、又は該細胞を伴う生物学的試料を分析して、脂肪性肝炎及び/又は脂肪症の1種又は複数の非バイオマーカー化合物のレベル(単数又は複数)を測定するステップをさらに含み得る。次いで、非バイオマーカー化合物のレベルは、該1種又は複数の非バイオマーカー化合物の所定の標準レベルと比較し得る。
【0100】
1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)(又は非バイオマーカー化合物のレベル)を測定するために、1つ若しくは複数の細胞の少なくとも一部、又は該細胞を伴う生物学的試料を分析するのに任意の好適な方法を使用し得る。好適な方法としては、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー)、質量分析法(例えば、MS、MS−MS)、酵素又は生化学反応、臨床化学、ELISA、抗体結合、他の免疫化学技法、及びそれらの組合せが挙げられる。さらに、該1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)(又は非バイオマーカー化合物のレベル)は、間接的に、例えば、測定することを望んでいるバイオマーカー(単数又は複数)のレベル(又は非バイオマーカー化合物)と相関する化合物(単数又は複数)のレベルを測定するアッセイを使用することにより測定し得る。
【0101】
VII.潜在的薬物標的の同定方法
脂肪性肝炎及び脂肪症用のバイオマーカーの同定は、脂肪性肝炎及び/又は脂肪症のための潜在的薬物標的の同定も可能にする。例えば、脂肪性肝炎のための潜在的薬物標的の同定方法は、(1)表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2及び/又は図3から選択される脂肪性肝炎用の1種又は複数のバイオマーカーと関連がある1つ又は複数の生化学的経路を同定するステップと、(2)1つ又は複数の同定された生化学的経路の少なくとも1つに悪影響を及ぼすタンパク質(例えば、酵素)を同定するステップであって、該タンパク質が脂肪性肝炎のための潜在的薬物標的であるステップとを含む。
【0102】
脂肪性肝炎のための潜在的薬物標的の別の同定方法は、(1)表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2及び/又は図3から選択される脂肪性肝炎用の1種又は複数のバイオマーカーと関連がある1つ又は複数の生化学的経路、並びに脂肪性肝炎の1種又は複数の非バイオマーカー化合物を同定するステップと、(2)1つ又は複数の同定された生化学的経路の少なくとも1つに悪影響を及ぼすタンパク質を同定するステップであって、該タンパク質が脂肪性肝炎のための潜在的薬物標的であるステップとを含む。
【0103】
1種又は複数のバイオマーカー(又は非バイオマーカー化合物)と関連がある1つ又は複数の生化学的経路(例えば、生合成及び/又は代謝(異化)経路)を同定する。生化学的経路を同定した後、該経路の少なくとも1つに悪影響を及ぼす1種又は複数のタンパク質を同定する。好ましくは、該経路の2つ以上に悪影響を及ぼすそれらのタンパク質を同定する。
【0104】
1種の代謝産物(例えば、経路中間体)の蓄積は、代謝産物の下流の「ブロック」の存在を示すことができ、ブロックは、下流の代謝産物(例えば生合成経路の生成物)の低/不存在レベルをもたらし得る。同様に、代謝産物の不存在は、不活性若しくは非機能性酵素(単数又は複数)、又は該生成物を生成するのに必要とされる基質である生化学的中間体の入手不可能性に起因する、代謝産物の上流の経路における「ブロック」の存在を示すことができる。或いは、代謝産物のレベルの増加は、異常タンパク質を生成し、結果的に代謝産物の過剰生産及び/又は蓄積をもたらし、次いで、他の関連する生化学的経路の変化につながり、該経路を通る正常な流束の調節不全をもたらす、遺伝子突然変異を示すことができた。さらに、生化学的中間体代謝産物の蓄積は、毒性であり得るか、又は関連する経路に関して必要な中間体の生成を損ない得る。経路間の関係性が現在知られていない可能性があり、このデータは、そのような関係性を明らかにすることができる。
【0105】
次いで、潜在的薬物標的として同定したタンパク質は、遺伝子療法用の組成物を含めた、脂肪性肝炎を治療するための潜在的候補であり得る組成物を同定するのに使用し得る。
【0106】
VIII.脂肪性肝炎及び/又は脂肪症の治療方法
脂肪性肝炎及び脂肪症用のバイオマーカーの同定は、脂肪性肝炎及び/又は脂肪症の治療も可能にする。例えば、脂肪性肝炎を有する被検体を治療するために、脂肪性肝炎を有さない健康な被検体と比較して脂肪性肝炎において低下する1種又は複数の脂肪性肝炎バイオマーカーの有効量を被検体に投与し得る。投与し得るバイオマーカーは、脂肪性肝炎において減少する、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2、図3のバイオマーカーの1種又は複数を含み得る。一部の実施形態では、投与するバイオマーカーは、脂肪性肝炎において減少し、0.10未満のp−値を有する、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2、図3に列挙している1種又は複数のバイオマーカーである。他の実施形態では、投与するバイオマーカーは、脂肪性肝炎において少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%減少する(すなわち、不存在)、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、図2、図3に列挙している1つ又は複数のバイオマーカーである。
【0107】
IX.脂肪性肝炎及び脂肪症用のバイオマーカーを他の肝臓障害のために使用する方法
本明細書に記載の脂肪症及び脂肪性肝炎用のバイオマーカーの一部は、また、一般に、肝臓障害(例えば肝線維症、硬変、肝癌等)用のバイオマーカーとなり得ると考えられている。したがって、一般に、脂肪症バイオマーカー又は脂肪性肝炎バイオマーカーの少なくとも一部を本明細書に記載の方法で肝臓障害のために使用し得ると考えられている。すなわち、脂肪症及び/又は脂肪性肝炎に関する本明細書に記載の方法は、また、肝臓障害の診断(又は診断の支援)、肝臓障害の進行/軽減のモニタリング方法、肝臓障害を治療するための組成物の有効性の評価方法、肝臓障害と関連があるバイオマーカーの調節における活性に関する組成物のスクリーニング方法、肝臓障害のための潜在的薬物標的の同定方法、及び肝臓障害の治療方法のために使用し得る。そのような方法は、脂肪症に関して本明細書に記載したように実施することができる。
【0108】
X.他の方法
本明細書で論じたバイオマーカーを使用する他の方法も考えられている。例えば、米国特許第7,005,255号及び米国特許出願第10/695,265号に記載されている方法は、本明細書に開示のバイオマーカーの1種又は複数を含む小分子プロファイル使用して実施し得る。
【0109】
本明細書で列挙している方法のいずれでも、使用するバイオマーカーは、0.05未満のp−値を有する表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、10、11、12、13、図1、2、及び3のバイオマーカー、並びに/或いは0.10未満のq−値を有する表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、10、11、12、13、図1、2、及び3のバイオマーカーから選択し得る。本明細書に記載の方法のいずれかで使用されるバイオマーカーは、また、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%(すなわち、不存在)、脂肪症及び/又は脂肪性肝炎において減少する(対照と比較して)か、又は寛解期に減少する(対照又は脂肪症及び/又は脂肪性肝炎と比較して)、表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、10、11、12、13、図1、2、及び3のバイオマーカーから、並びに/或いは少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%以上、脂肪症及び/又は脂肪性肝炎において増加する(対照又は寛解期と比較して)か、又は寛解期に増加する(対照又は脂肪症又は脂肪性肝炎と比較して)、表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、10、11、12、13、図1、図2、図3のバイオマーカーから選択し得る。
【実施例】
【0110】
本発明は、非限定的であることを意図した以下の例示的実施例によりさらに説明する。
【0111】
I.一般的方法
A.脂肪症及び脂肪性肝炎に関する代謝プロファイルの同定
数百の代謝産物の濃度を測定するために各試料を分析した。代謝産物を分析するのにGC−MS(ガスクロマトグラフィー−質量分析法)及びLC−MS(液体クロマトグラフィー−質量分析法)などの分析技法を使用した。多数のアリコートを同時に、及び並列に分析し、適切な治験の品質管理(QC)後、各分析に由来する情報を再結合した。すべての試料を数千の特徴に応じて特徴付けると、最終的に数百の化学種に達した。使用した技法は、新規の化学的に無名の化合物を同定することができた。
【0112】
B.統計的分析
データは、限定的母集団(例えば、脂肪症(NAFLD)及び対照、脂肪性肝炎(NASH)及び対照、NAFLD及びNASH)を区別するのに有用である、限定的母集団又は亜集団(例えば、対照生物学的試料と比較した、又は脂肪症からの寛解期の患者と比較した脂肪症生物学的試料用のバイオマーカー)中に特異的レベルで存在する分子(知られている有名な代謝産物、又は無名の代謝産物)を同定するために、有意性の統計的検定を使用して分析した。限定的母集団又は亜集団における他の分子(知られている有名な代謝産物、又は無名の代謝産物)も同定した。有意性検定に関しては、データを統計的に分析するのに、分散分析(ANOVA)、共分散分析(ANCOVA)及びウィルコクソン符号順位検定を使用した。分類検査に関しては、データを分析するのにランダムフォレスト及び再帰的分割を使用した。
【0113】
C.バイオマーカー同定
統計学的に有意であると判定したものを含めた、分析(例えばGC−MS、LC−MS、MS−MS)において同定した様々なピークは、質量分析法に基づいた化学的同定プロセスに付した。
【0114】
(例1)
バイオマーカーは、(1)ヒト被検体の様々な群からの血漿試料を分析して、該試料中の代謝産物のレベルを測定すること、次いで、(2)その結果を統計的に分析して、2つの群中に特異的に存在していた代謝産物を判定することにより発見した。
【0115】
分析に使用した血漿試料は、健康な被検体からのものであった25の対照試料、脂肪症の患者からの11の試料、及びNASHの患者からの24の試料であった。すべての群の被検体には、男性及び女性が含まれていた。代謝産物のレベルを測定した後、有意性検定(ANOVA、ANCOVA、ウィルコクソン)を使用してデータを分析した。
【0116】
ANOVAは、2種の母集団の間(すなわち、脂肪症対対照、NASH対対照、脂肪症対NASH)の代謝産物の平均レベルにおける有意差を同定するのに使用した。
【0117】
バイオマーカー
以下で表1、2及び3に列挙しているように、脂肪症患者からの血漿試料と対照被検体からの血漿試料との間に特異的に存在していたバイオマーカーを発見し、NASHの患者からの血漿試料と対照被検体からの血漿試料との間に特異的に存在していたバイオマーカーを発見し、脂肪性肝炎(NASH)の患者からの血漿試料と脂肪症の被検体からの血漿試料との間に特異的に存在していたバイオマーカーを発見した。
【0118】
表1、2及び3は、列挙している各バイオマーカーについて、対照平均レベルと比較した脂肪症平均レベル、対照平均レベルと比較したNASH平均レベル、及び脂肪症平均レベルと比較した脂肪性肝炎(NASH)平均レベルのバイオマーカーに関するデータの統計的分析で求めたp−値及びq−値を含む。ライブラリーは、化合物を同定するのに使用した化合物ライブラリーを示す。50番はGCライブラリーを指し、61、200及び201番は、LCライブラリーを指す。化合物IDは、本発明者らの内部化合物データベース内の化合物のための識別番号を指す。データは、平均値の比に基づいたパーセント変化として提示しおり、NASHにおいて対照に対して(表1)、脂肪症において対照に対して(表2)及び/又はNASHにおいて脂肪症に対して(表3)増加又は減少するバイオマーカーを示す。
【0119】
【表1−1】


【表1−2】


【表1−3】


【表1−4】


【表1−5】


【表1−6】

【0120】
【表2−1】


【表2−2】


【表2−3】


【表2−4】

【0121】
【表3−1】


【表3−2】

【0122】
(例2)
被検体のランダムフォレスト分類
試料の群への分類(例えば疾患又は健康、脂肪症又は健康、脂肪性肝炎又は健康、脂肪症又はNASH)にランダムフォレスト分析を使用した。ランダムフォレストは、2種の母集団に関する未知の平均が異なるかどうかを検定するt−検定とは対照的に、新しいデータセット中の個体をいかに首尾よく各群に分類することができるかという推定を示す。ランダムフォレストは、実験単位及び化合物の連続的サンプリングに基づいて分類木のセットを作成する。次いで、すべての分類木からの多数決に基づいて各観測値を分類する。
【0123】
ランダムフォレスト結果は、表1、2、及び/又は3に列挙しているバイオマーカーを使用して、試料を異なる程度の精度で正確に分類することができることを示す。混同行列は、血漿試料を使用して、脂肪症被検体、脂肪性肝炎被検体及び対照被検体を区別することができ(表4)、脂肪症被検体を対照被検体から区別することができ(表5)、脂肪性肝炎被検体を対照被検体から区別することができ(表6)、脂肪症被検体を脂肪性肝炎被検体から区別することができる(表7)ことを証明する。「アウトオブバッグ(Out−of−Bag)」(OOB)エラー率は、ランダムフォレストモデルを使用して、いかに正確に新しい観測値を予測することができるかという推定(例えば、試料が脂肪症を有する被検体からのものであるか、対照被検体からのものであるか)を示す。
【0124】
【表4】

【0125】
作成したランダムフォレストモデルは、38%のOOBエラー率に基づいて、被検体からの試料中のバイオマーカーのレベルの分析から、被検体が脂肪症、脂肪性肝炎を有するかどうか、又は脂肪肝疾患を有さないかどうかを約62%の精度で予測するのに使用することができた。各群を区別するのに最も重要なバイオマーカーであるバイオマーカーは、表4Bに列挙しており、図3に表示している。
【0126】
【表5−1】


【表5−2】

【0127】
【表6】

【0128】
作成したランダムフォレストモデルは、11%のOOBエラー率に基づいて、被検体からの試料中のバイオマーカーのレベルの分析から、被検体が脂肪症を有するかどうか、又は脂肪肝疾患を有さないかどうかを約89%の精度で予測するのに使用することができた。各群を区別するのに最も重要なバイオマーカーであるバイオマーカーは、表5Bに列挙しており、図1に表示している。
【0129】
【表7−1】


【表7−2】

【0130】
【表8】

【0131】
作成したランダムフォレストモデルは、8%のOOBエラー率に基づいて、被検体からの試料中のバイオマーカーのレベルの分析から、被検体が脂肪性肝炎を有するかどうか、又は脂肪肝疾患を有さないかどうかを約92%の精度で予測するのに使用することができた。各群を区別するのに最も重要なバイオマーカーであるバイオマーカーは、表6Bに列挙しており、図2の重要度プロットに表示している。
【0132】
【表9−1】


【表9−2】

【0133】
【表10】

【0134】
作成したランダムフォレストモデルは、54%のOOBエラー率に基づいて、被検体からの試料中のバイオマーカーのレベルの分析から、被検体が脂肪症又は脂肪性肝炎を有するかどうか約46%の精度で予測するのに使用することができた。
【0135】
各群を区別するのに最も重要なバイオマーカーである化合物は、図1、2、3の重要度プロットに示す。図1は、脂肪症被検体と対照被検体を区別するのに最も重要なバイオマーカー化合物を列挙する。図2に列挙しているのは、脂肪性肝炎被検体を対照被検体から区別するのに最も重要なバイオマーカー化合物である。図3に列挙しているのは、脂肪症、脂肪性肝炎及び対照被検体を区別するのに最も重要なバイオマーカー化合物である。
【0136】
(例3)再帰的分割分類及び受信者動作特性曲線(ROC)
被検体の2つの群を最も良好に区別することができるバイオマーカーを明らかにするために再帰的分割を実施した。再帰的分割は、理解しにくい関係性、Y=f(X)を明らかに、又は単に理解するために、「従属」変数(例えば、群又はY)を独立(「説明」)変数(例えば、代謝産物又はX)の集合に関連づける。決定木を生成するために、JMPプログラム(SAS)を用いて再帰的分割を実施した。該木のノード又はブランチへのデータの各「分割」の有意水準をp−値として算出し、それはランダムイベントに対する分割の品質を識別した。それは、生のp−値の負のlog10であるLogWorthとして示した。
【0137】
対照及び脂肪症被検体の分類を示す再帰的分割結果は図4に示す。分類に寄与するバイオマーカーは表8に列挙している。脂肪症及び脂肪性肝炎(NASH、SH)の分類を示す再帰的分割結果は図5に示し、分類で使用したバイオマーカーは表9に列挙している。対照及び脂肪性肝炎の分類を示す再帰的分割結果は図6に示し、バイオマーカーは表10に列挙している。脂肪症、脂肪性肝炎及び対照被検体を分類するためのバイオマーカーの使用を示す再帰的分割結果は図7に示し、該バイオマーカーは表11に列挙している。
【0138】
特定のバイオマーカーの様々な可能なカットポイントに関して偽陽性率に対する真陽性率をプロットする受信者動作特性曲線(又はROC曲線)により、所与のバイオマーカーの感度及び特異度を求めた。曲線下面積は試験精度の測度である。面積1は申し分のない検査を表し、一方、面積0.5は役に立たない検査を表す。診断検査の精度を分類するための大体の目安は、因習的である学術点数制である。
.90〜1=優
.80〜.90=良
.70〜.80=並
.60〜.70=可
.50〜.60=不可
【0139】
ROC曲線は図4、5、6及び7に示す。対照被検体は、>90の精度で脂肪症被検体から区別される(図4)。脂肪症及び脂肪性肝炎被検体は、>82%の精度で区別することができる(図5)。対照及び脂肪性肝炎被検体は>87%の精度で分類される(図6)。3つの群は、バイオマーカーを使用して>70%(NASH)、>77%(脂肪症)、>86%の精度(対照)で分類することができる(図7)。
【0140】
【表11】

【0141】
【表12】

【0142】
【表13−1】


【表13−2】

【0143】
【表14−1】


【表14−2】

【0144】
(例4)バイオマーカー及び性別
バイオマーカーは、(1)女性のヒト被検体の様々な群から、及び男性のヒト被検体の様々な群からの血漿試料を分析して、該試料中の代謝産物のレベルを測定すること、次いで、(2)その結果を統計的に分析して、2つの群中に特異的に存在していた代謝産物を判定することにより発見した。
【0145】
男性に関しては、分析に使用した血漿試料は、健康な被検体からのものであった7の対照試料、脂肪症の患者からの6の試料、及び脂肪性肝炎の患者からの8の試料であった。女性に関しては、分析に使用した血漿試料は、健康な被検体からのものであった18の対照試料、脂肪症の患者からの5の試料、及び脂肪性肝炎の患者からの16の試料であった。男性及び女性研究の両方で代謝産物のレベルを測定した後、有意性検定(ANOVA、ANCOVA、ウィルコクソン)を使用してデータを分析した。
【0146】
ANOVAは、2種の母集団の間(すなわち、脂肪症対対照、脂肪性肝炎対対照、脂肪症対脂肪性肝炎)の代謝産物の平均レベルの有意差を同定するのに使用した。
【0147】
バイオマーカー
以下で表12(男性被検体)及び13(女性被検体)に列挙しているように、脂肪症患者からの血漿試料と対照被検体との間に特異的に存在していたバイオマーカーを発見し、脂肪性肝炎の患者からの血漿試料と対照被検体からの血漿試料との間に特異的に存在していたバイオマーカーを発見し、脂肪症の患者からの血漿試料と脂肪性肝炎(すなわち、NASH)の被検体からの血漿試料との間に特異的に存在していたバイオマーカーを発見した。
【0148】
表12及び13は、列挙している各バイオマーカーについて、対照平均レベルと比較した脂肪症平均レベル、対照平均レベルと比較したNASH平均レベル、NASH平均レベルと比較した脂肪症平均レベルのバイオマーカーに関するデータの統計的分析で求めたp−値及びq−値を含む。ライブラリーは、化合物を同定するのに使用した化合物ライブラリーを示す。50番はGCライブラリーを指し、61番は、LCライブラリーを指す。化合物IDは、本発明者らの内部化合物データベース内の化合物のための識別番号を指す。
【0149】
表12は男性用のバイオマーカーを列挙し、各バイオマーカーについて、上記の群の特定の比較に関するp−値及びq−値を含む。
【0150】
【表15】

【0151】
表13は、女性用のバイオマーカーを列挙し、各バイオマーカーについて、上記の群の特定の比較に関するp−値及びq−値を含む。
【0152】
【表16−1】


【表16−2】


【表16−3】

【0153】
(例5)分析的特徴
無名のバイオマーカー化合物の分析的キャラクタリゼーション
以下の表14は、アイソバー並びに上の表1〜3及び8〜13に列挙している無名の代謝産物のそれぞれの分析的特徴を含む。該表は、列挙している各代謝産物について、代謝産物ID(ID)、上記分析方法を使用して得られた保持時間(RT)、保持指標(RI)、質量、ライブラリー、及び極性を含む。「代謝産物ID」とは、本発明者らの内部化合物ライブラリーデータベース内の化合物のための一意の識別子を指す。「質量」とは、該化合物の定量で使用した親イオンのC12アイソトープの質量を指す。「ライブラリー」の値は、定量に使用した分析方法を示唆し、「50」はGC−MSを示し、「61」、「200」及び「201」はLC−MSを示す。「極性」は、陽性(+)又は陰性(−)としての定量イオンの極性を示す。
【0154】
【表17−1】


【表17−2】


【表17−3】


【表17−4】


【表17−5】


【表17−6】

【0155】
本発明を詳細に、その固有の実施形態を参照しながら記載してきたが、当業者には、本発明の要旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正をなし得ることが明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が脂肪性肝炎を有するかどうかの診断方法であって、
被検体からの生物学的試料を分析して、前記試料中の脂肪性肝炎用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、前記1種又は複数のバイオマーカーが表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択されるステップと、
被検体が脂肪性肝炎を有するかどうかを診断するために、前記試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、前記1種又は複数のバイオマーカーの脂肪性肝炎陽性及び/又は脂肪性肝炎陰性基準レベルとを比較するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記1種又は複数のバイオマーカーが、0.05未満のp値を有する表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3のバイオマーカー、並びに/或いは0.10未満のq値を有する表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3のバイオマーカーから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される2種以上のバイオマーカーのレベルを測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される3種以上のバイオマーカーのレベルを測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される5種以上のバイオマーカーのレベルを測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される10種以上のバイオマーカーのレベルを測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される15種以上のバイオマーカーのレベルを測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
分析した試料が男性被検体からのものであり、バイオマーカーが表12から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
分析した試料が女性被検体からのものであり、バイオマーカーが表13から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が質量分析法、酵素又は生化学反応、臨床化学、ELISA、及び抗体結合からなる群から選択される1種又は複数の技法を使用して分析される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
被検体が脂肪症を有するかどうかの診断方法であって、
被検体からの生物学的試料を分析して、前記試料中の脂肪症用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、前記1種又は複数のバイオマーカーが表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択されるステップと、
被検体が脂肪症を有するかどうかを診断するために、前記試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、前記1種又は複数のバイオマーカーの脂肪症陽性及び/又は脂肪症陰性基準レベルとを比較するステップと
を含む方法。
【請求項12】
前記1種又は複数のバイオマーカーが、0.05未満のp値を有する、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3のバイオマーカー、並びに/或いは、0.10未満のq値を有する、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3のバイオマーカーから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記生物学的試料を分析して、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択される2種以上のバイオマーカーのレベルを測定するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記生物学的試料を分析して、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択される5種以上のバイオマーカーのレベルを測定するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記生物学的試料を分析して、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択される10種以上のバイオマーカーのレベルを測定するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
分析した試料が男性被検体からのものであり、バイオマーカーが表12から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
分析した試料が女性被検体からのものであり、バイオマーカーが表13から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記試料が質量分析法、酵素又は生化学反応、臨床化学、ELISA、及び抗体結合からなる群から選択される1種又は複数の技法を使用して分析される、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
被検体が脂肪性肝炎を発症しやすいかどうかの判定方法であって、
被検体からの生物学的試料を分析して、前記試料中の脂肪性肝炎用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、前記1種又は複数のバイオマーカーが表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択されるステップと、
被検体が脂肪性肝炎を発症しやすいかどうかを判定するために、前記試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、前記1種又は複数のバイオマーカーの脂肪性肝炎陽性及び/又は脂肪性肝炎陰性基準レベルとを比較するステップと
を含む方法。
【請求項20】
被検体が脂肪症を発症しやすいかどうかの判定方法であって、
被検体からの生物学的試料を分析して、前記試料中の脂肪症用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、前記1種又は複数のバイオマーカーが表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択されるステップと、
被検体が脂肪症を発症しやすいかどうかを判定するために、前記試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、前記1種又は複数のバイオマーカーの脂肪症陽性及び/又は脂肪症陰性基準レベルとを比較するステップと
を含む方法。
【請求項21】
被検体における脂肪性肝炎の進行/軽減のモニタリング方法であって、
被検体からの第1の生物学的試料を分析して、前記試料中の脂肪性肝炎用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、前記1種又は複数のバイオマーカーが表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択され、前記第1の試料が第1の時点で被検体から得られるステップと、
被検体からの第2の生物学的試料を分析して、前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、前記第2の試料が第2の時点で被検体から得られるステップと、
被検体における脂肪性肝炎の進行/軽減をモニタリングするために、前記第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、前記第2の試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)とを比較するステップと
を含む方法。
【請求項22】
前記第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)、前記第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)、並びに/或いは前記第1及び第2の試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)の比較の結果と、前記1種又は複数のバイオマーカーの脂肪性肝炎陽性及び/又は脂肪性肝炎陰性基準レベルとを比較するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
被検体における脂肪症の進行/軽減のモニタリング方法であって、
被検体からの第1の生物学的試料を分析して、前記試料中の脂肪症用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、前記1種又は複数のバイオマーカーが表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択され、前記第1の試料が第1の時点で被検体から得られるステップと、
被検体からの第2の生物学的試料を分析して、前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、前記第2の試料が第2の時点で被検体から得られるステップと、
被検体における脂肪症の進行/軽減をモニタリングするために、前記第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、前記第2の試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)とを比較するステップと
を含む方法。
【請求項24】
脂肪性肝炎を治療するための組成物の有効性の評価方法であって、
脂肪性肝炎を有し、現在又は以前に組成物を用いて治療されている被検体からの生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される脂肪性肝炎用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、
前記試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、(a)被検体から以前に採取した生物学的試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベルであって、以前に採取した生物学的試料が前記組成物を用いて治療される前の被検体から得られたレベル、(b)前記1種又は複数のバイオマーカーの脂肪性肝炎陽性基準レベル、並びに/或いは(c)前記1種又は複数のバイオマーカーの脂肪性肝炎陰性基準レベルとを比較するステップと
を含む方法。
【請求項25】
脂肪性肝炎の治療における組成物の有効性の評価方法であって、
被検体からの第1の生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される脂肪性肝炎用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、前記第1の試料が第1の時点で被検体から得られるステップと、
被検体に前記組成物を投与するステップと、
被検体からの第2の生物学的試料を分析して、前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、前記第2の試料が組成物の投与後に第2の時点で被検体から得られるステップと、
脂肪性肝炎を治療するための組成物の有効性を評価するために、前記第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、前記第2の試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)とを比較するステップと
を含む方法。
【請求項26】
脂肪性肝炎を治療するための2種以上の組成物の相対的有効性の評価方法であって、
脂肪症を有し、現在又は以前に第1の組成物を用いて治療されている第1の被検体からの第1の生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、
脂肪性肝炎を有し、現在又は以前に第2の組成物を用いて治療されている第2の被検体からの第2の生物学的試料を分析して、前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、
脂肪性肝炎を治療するための第1及び第2の組成物の相対的有効性を評価するために、前記第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、前記第2の試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)とを比較するステップと
を含む方法。
【請求項27】
脂肪性肝炎の1種又は複数のバイオマーカーの調節における活性に関する組成物のスクリーニング方法であって、
1つ又は複数の細胞を組成物と接触させるステップと、
1つ若しくは複数の細胞の少なくとも一部、又は前記細胞を伴う生物学的試料を分析して、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される脂肪性肝炎の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、
1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と前記バイオマーカーのための所定の標準レベルとを比較して、前記組成物が前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を調節したかどうかを判定するステップと
を含む方法。
【請求項28】
前記バイオマーカーのための所定の標準レベルが、前記組成物の不存在下での1つ又は複数の細胞中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記バイオマーカーのための所定の標準レベルが、前記組成物と接触していない1つ又は複数の対照細胞中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
in vivoで実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
in vitroで実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
脂肪性肝炎のための潜在的薬物標的の同定方法であって、
表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される脂肪性肝炎用の1種又は複数のバイオマーカーと関連がある1つ又は複数の生化学的経路を同定するステップと、
1つ又は複数の同定された生化学的経路の少なくとも1つに悪影響を及ぼすタンパク質を同定するステップであって、前記タンパク質が脂肪性肝炎のための潜在的薬物標的であるステップと
を含む方法。
【請求項33】
脂肪性肝炎において減少する、表1、3、4B、6B、9、10、11、12、13、並びに/或いは図2及び/又は3から選択される1種又は複数のバイオマーカーの有効量を被検体に投与するステップを含む、脂肪性肝炎を有する被検体の治療方法。
【請求項34】
肝疾患又は障害を有する被検体においてNAFLDをNASHから区別する方法であって、
被検体からの生物学的試料を分析して、前記試料中のNAFLD及び/又はNASH用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、前記1種又は複数のバイオマーカーが表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、10、11、12、13、及び図1、2、3から選択されるステップと、
被検体がNASHを有するかどうかを判定するために、前記試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、NASHを区別するNAFLD陽性基準レベル、及び/又はNAFLDを区別するNASH陽性基準レベルとを比較するステップと
を含む方法。
【請求項35】
被検体がNASHを有するかどうかの診断方法であって、
被検体からの生物学的試料を分析して、前記試料中のNASH用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップであって、前記1種又は複数のバイオマーカーが表1、2、3、4B、5B、6B、8、9、10、11、12、13、及び図1、2、3から選択されるステップと、
被検体がNASHを有するかどうかを診断するために、前記試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、前記1種又は複数のバイオマーカーのNASH陽性及び/又はNASH陰性基準レベルとを比較するステップと
を含む方法。
【請求項36】
脂肪症を治療するための組成物の有効性の評価方法であって、
脂肪症を有し、現在又は以前に組成物を用いて治療されている被検体からの生物学的試料を分析して、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択される脂肪症用の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、
前記試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、(a)被検体から以前に採取した生物学的試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベルであって、以前に採取した生物学的試料が前記組成物を用いて治療される前の被検体から得られたレベル、(b)前記1種又は複数のバイオマーカーの脂肪症陽性基準レベル、並びに/或いは(c)前記1種又は複数のバイオマーカーの脂肪症陰性基準レベルとを比較するステップと
を含む方法。
【請求項37】
脂肪症を治療するための2種以上の組成物の相対的有効性の評価方法であって、
脂肪症を有し、現在又は以前に第1の組成物を用いて治療されている第1の被検体からの第1の生物学的試料を分析して、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、
脂肪症を有し、現在又は以前に第2の組成物を用いて治療されている第2の被検体からの第2の生物学的試料を分析して、前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、
脂肪症を治療するための第1及び第2の組成物の相対的有効性を評価するために、前記第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と、前記第2の試料中の前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)とを比較するステップと
を含む方法。
【請求項38】
脂肪症の1種又は複数のバイオマーカーの調節における活性に関する組成物のスクリーニング方法であって、
1つ又は複数の細胞を前記組成物と接触させるステップと、
1つ若しくは複数の細胞の少なくとも一部、又は前記細胞を伴う生物学的試料を分析して、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択される脂肪症の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップと、
前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と前記バイオマーカーのための所定の標準レベルとを比較して、前記組成物が前記1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を調節したかどうかを判定するステップと
を含む方法。
【請求項39】
脂肪症のための潜在的薬物標的の同定方法であって、
表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択される脂肪症用の1種又は複数のバイオマーカーと関連がある1つ又は複数の生化学的経路を同定するステップと、
1つ又は複数の同定された生化学的経路の少なくとも1つに悪影響を及ぼすタンパク質を同定するステップであって、前記タンパク質が脂肪症のための潜在的薬物標的であるステップと
を含む方法。
【請求項40】
脂肪症において減少する、表2、3、4B、5B、8、9、11、12、13、並びに/或いは図1及び/又は3から選択される1種又は複数のバイオマーカーの有効量を被検体に投与するステップを含む、脂肪症を有する被検体の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−503547(P2011−503547A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532284(P2010−532284)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/082013
【国際公開番号】WO2009/059150
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510120621)メタボロン、インコーポレイテッド (1)
【出願人】(510120632)ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション (1)
【Fターム(参考)】