説明

脂肪酸アルキルエステル燃料油の製造方法と製造装置

【課題】廃食油からバイオディーゼル燃料油の製造の中で、低級アルコールとアルカリ触媒を添加し、反応後の脂肪酸アルキルエステル溶液とグリセリン溶液の分離を、バラツキの大きい人為的作業から高効率で精度が得られる検知器による方法と環境負荷の大きい水洗浄による排水処理作業を省略できる方法を提供する。
【解決手段】脂肪酸アルキルエステル溶液とグリセリン液の分離は、LED赤色ランプの650nmの波長を通過する光強度を測定できる検知器を設置によって可能になり、水洗浄による排水処理作業の省略化は比表面積の大きい微粒子のケイ酸アルミニウム化合物などにより、不純物の吸着除去が可能になった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種の脂肪酸を含有する油脂を、脂肪酸アルキルエステル燃料油を製造する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では地球温暖化問題が大きくクローズアップされ、環境に対する負荷の小さい軽油代替燃料として再生可能なエネルギー源として植物から生成された燃料が注目され、研究が盛んにおこなわれている。
【0003】
世界的には化石燃料である軽油の代替燃料の原料である植物は多種多様で現存するが、日本では極限られた地域や小品種に限定されているのが現状である。
【0004】
日本のエネルギー施策は軽油代替燃料として廃食油を原料にして、燃料油化しようとしている。
【0005】
廃食油も元々は大豆・菜種・ひまわり・ゴマ・オリーブ・ひまわりなどの植物から製造されたものであり、京都議定書で定められた炭酸ガスの排出量はゼロカウントされるものである。
【0006】
廃食油を燃料化して、軽油の代替でディーゼルエンジンに使用される事から一般的にはバイオディーゼル燃料、略してBDFと呼ばれている。
【0007】
日本では廃食油から製造されるバイオディーゼル燃料は1年間におよそ10000KL生産され、限定的に使用されているが2007年1月には軽油に5%のバイオディーゼル燃料を混合した品質規格が制定された。
【0008】
廃食油からバイオディーゼル燃料化する技術としてはアルコールで油脂中に含まれるモノグリセリド・ジグリセリド・トリグリセリドとエステル交換反応させる方法が一般的である。
【0009】
廃食油からバイオディーゼル燃料の製造する方法として実際的には、低級アルコールとアルカリ触媒あるいは酸触媒を用いて、エステル交換反応によって生成された脂肪酸エステル、すなわちBDFとグリセリンを分離してBDFを水で洗浄して精製する方法が多く採用されている。
【0010】
バイオディーゼル燃料として使用するために欧米では、EN14214およびASTMD6751等によって厳しい品質基準値が設けられており、エステル交換反応効率の向上の技術を中心に酸化安定性・水分・残留不純物の除去技術の検討が種々行われている。
【0011】
廃食油他の原料油を低級アルコールとして、メチルアルコールに水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムをアルカリ触媒として溶解し30〜65℃の温度範囲で加熱および拡販を30〜24時間行い、エステル交換反応を完結させて、反応槽タンク内で静置し、上部軽液の脂肪酸メチルエステル層と下部重液のグリセリン層を分離した後に、下部重液のグリセリン層を排出する。
【0012】
残留した脂肪酸メチルエステル、液すなわち粗バイオディーゼル燃料中には種々の不純物が混在しており、精製しなければ用途目的であるディーゼルエンジンあるいは周辺の設備に悪影響を及ぼすことが予想される。
【0013】
精製前の脂肪酸メチルエステル中にはケン化反応により生成されたセッケン成分、分離しきれなかったグリセリン・未反応のメチルアルコール・酸性成分とアルカリ成分と反応して生成した塩化合物など様々な不純物が含有されている。
【0014】
不純物を含有した脂肪酸メチルエステルの精製方法には水洗浄法あるいは吸着除去法などの方法が採用されている。
【0015】
中でも水あるいは温水などによる洗浄方法は容易で手間がかからず、安価なために一般的に行われている。
【0016】
しかし最近では、水あるいは温水などによる洗浄法で1回以上の洗浄でないと不純物が十二分に除去できない。あるいは精製後の脂肪酸メチルエステル燃料油中に水分が基準値の500ppm以上残留し、品質基準値をクリアー出来ないことが明らかにされてきた。
【0017】
その他洗浄後の排水はアルカリ触媒を使用するために水素イオン濃度(pH)が高く、固形のセッケン成分や未反応アルコール、残留するグリセリンなどを含有し、排水処理規制の対象として取り扱われる。
【0018】
排水処理は放流する場所である河川や下水などで規制値は違ってくるが、pHの調整や高濃度有機物含有廃水の処理は、当該の廃食油他植物油原料油からバイオディーゼル燃料油を製造する方法として、大きなウェートを占める課題である。
【0019】
排水処理方法として、微生物による生物処理やUFメンブレンフィルターなどによる膜処理方法などが挙げられるが、処理能力・設備費あるいはランニングコストなどで大きな負担となっているのが現状である。
【0020】
他方、廃食油他植物油から低級アルコールとアルカリ触媒を使用して、脂肪酸アルキルエステル燃料油すなわちバイオディーゼル燃料油を製造する装置は大半が人的な操作を多く必要とする手動式の回分型が多く採用されている。
【0021】
手動式の回分型では一般的な所要作業時間である約6〜8時間の間は人が拘束される事になり、無駄が多く、せっかく廃食油などを利用して環境負荷の小さい安価なバイオディーゼル燃料油を製造しようとしているのに、排水処理では環境に対する負荷が非常に大きく、人件費が大きく締めるようでは安価な商品にはなりえない製造装置として改善が求められている。
【0022】
【特許文献1】特開2009−13268
【特許文献2】特開2008−274030
【特許文献3】特開2008−260819
【特許文献4】特開2008−239941
【特許文献5】特開2008−239938
【特許文献6】特開2008−81730
【特許文献7】特開2008−45056
【特許文献8】特開2008−23411
【特許文献9】特開2006−257269
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は飽和脂肪酸あるいは不飽和脂肪酸を含む植物油他廃食油などを原料にして、低級アルコールおよびアルカリ触媒でエステル交換反応を完結し、設備費やランニングコストあるいは環境への負担が大きい水あるいは温水での洗浄による精製工程を必要としない脂肪酸アルキルエステル燃料油すなわち、バイオディーゼルで燃料油の高収率で合理的な製造方法および製造装置を提供する。
【0024】
飽和脂肪酸あるいは不飽和脂肪酸を含む植物油他廃食油などの原料油中には遊離脂肪酸や水分あるいは酸化性分などが含まれており、アルコロシスによるエステル化反応を阻害し、脂肪酸アルキルエステル燃料油すなわちバイオディーゼル燃料油の生成の収率に大きく影響する。
【0025】
植物油他廃食油などの原料油中に遊離脂肪酸が多く含まれると触媒として用いる水酸化カリウムあるいは水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属と反応し、セッケンを生成し、収率を低下させる原因となる。
【0026】
その他、原料油中に遊離脂肪酸が含まれるとエステル反応後の脂肪酸アルキルエステル燃料油の水あるいは温水での洗浄工程でエマルジョン化してしまい、燃料油としては使用できない。
【0027】
原料油中に含まれる遊離脂肪酸の影響を受けないために、硫酸やリン酸などの無機酸やトルエンスルホン酸などの有機酸が酸性触媒として提供されているが、エステル化反応後の生成油からの分離が困難である。
【0028】
その他、スルホン酸系イオン交換樹脂やヘテロポリ酸をシリカゲルや活性炭あるいは酸化アルミニウムなどに担持した固体酸触媒法なども検討されているが、エステル化交換反応の交換率が低い。
【0029】
植物油他廃食油を原料にして、低級アルコールとアルカリ触媒を用いたエステル交換反応後の脂肪酸アルキルエステル化合物はセッケン・水・未反応アルコールあるいは残留グリセリンなどが含有されており、水あるいは温水などによる洗浄による精製を行わないと燃料油として使用できない。
【0030】
水あるいは温水により洗浄した排水は、アルカリ成分により水素イオン濃度が高く、アルコールやグリセリン、あるいは脂肪酸アルキルエステル化合物などの生物化学的酸素要求量(B.O.D)成分が高く、微生物処理などの排水処理が必要である。
【0031】
水あるいは温水による洗浄も確実に燃料油中から不純物を除去するためには、1回のみならず2回以上の工程が必要であり、処理しなければならない排水量も製造する燃料油量の2〜3倍程度になる。
【0032】
水あるいは温水による洗浄作業は添加作業・分離作業・移動作業などすべて人手による事が多く、非常に非合理的な方法が採用されている。
【0033】
本発明は植物油他廃食油などを原料にした酸またはアルカリを触媒にして、アルコールとのエステル交換反応時に生成される脂肪酸アルキルエステル化合物の生成方法を水あるいは温水を用いないで簡単に生成ができ、環境への負担が極端に小さいバイオディーゼル燃料油としてディーゼルエンジンに使用できる品質の燃料油を製造する方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は植物油他廃食油などを原料にして、アルコールおよびアルカリ触媒を用いて製造する脂肪酸アルキルエステル化合物の生成条件を検討し、エステル交換反応の効率を上げ、グリセリン層との分離を確実に行うことのできる装置を考案し、水あるいは温水による精製をやめて、吸着剤で不純物の除去を行うなどにより課題の解決を行った。
【0035】
上記の脂肪酸アルキル化合物のエステル交換反応の収率を挙げるために、2段階による反応や酸性化合物の添加によりエステル交換反応を終結させ、グリセリン層との分離性の向上を図るなどする製造方法を提供する。
【0036】
その他、分離性が向上した脂肪酸アルキルエステル化合物とグリセリン層の分離排出を自動的に検知してバルブ操作を行うための光透過式の波長識別センサーなる検出器を開発して、非合理的な人手による分離作業を必要としない事を特徴とする脂肪酸なるアルキルエステル燃料油、すなわちバイオディーゼル燃料油の製造装置を提供する。
【0037】
上記の自動分離操作で分離された脂肪酸アルキルエステル化合物はセッケン成分や水分あるいは残留する微量のグリセリンなどを含んでいるので精製し、不純物を除去する必要がある。
【0038】
不純物除去の方法には一般的には水または温水による洗浄方法が一般的に採用され実施されているが、洗浄後の脂肪酸アルキルエステル燃料油中に水分が規格値以上残留し除去が難しい。
【0039】
洗浄廃水が製造する燃料油の2〜3倍排出され、pHや生物化学的水素要求量(B.O.D)あるいは化学的酸素要求量(C.O.D)などが排水の基準を大きく上回り、処理が難しくコストも高くなるなど大きな問題が発生した。
【0040】
本発明では脂肪酸アルキルエステル化合物の精製に水または温水などによる洗浄を必要としない、多孔質の無機の微細な粉末を吸着材に用いて、不純物を吸着・ろ過操作により除去することができる事を特徴とする脂肪酸アルキルエステル燃料油、すなわちバイオディーゼル燃料油の製造方法および製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0041】
上述したように本発明は植物油、あるいは廃食油他の油脂類を原料にした脂肪酸アルキルエステル化合物、すなわちバイオディーゼル燃料油を製造する際のエステル交換反応の収率の向上や水洗浄による排水処理作業をなくし、不純物除去の精製工程を吸着材を使用することで人的作業が簡略化され、ランニングコストも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は本発明の作業工程の概要を示す図である。
【図2】図2は本発明の製造装置の図である。
【図3】図3は本発明の光透過式波長測定検出器の詳細図を示す。
【0043】
また、反応収率の向上や水を使用しないことでバイオディーゼル燃料油の品質が高品質で安定化でき、排水処理が不要なので環境への負荷も軽減される。
【0044】
さらに本発明の脂肪酸エステル反応後の上部軽液脂肪酸アルキルエステル化合物と下部重液のグリセリン層の排出部分離作業時のバルブ操作を透過式波長センサーの高透強度の差を測定する検出器を設置する事によって、自動操作が可能になり、自動化装置または大型化装置あるいは連続式などのバイオディーゼル製造装置の開発および製造が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1は本発明の作業工程概要を示す図であるが、本図は一例であって限定されるものではない。
【0046】
本発明は図1の作業工程概要に示されるように廃食油原料タンクから反応タンクに一定量移し入れて、薬液タンク3の薬品を添加し、加熱・撹拌し静置後に光透過式波長検知器4で上部脂肪酸アルキルエステル層軽液と下部グリセリン層重液の波長を測定し、自動のバルブ操作により下部グリセリン層重液のみ排出する。
【0047】
残った脂肪酸アルキルエステル層液に再度薬品を添加し、エステル交換反応を簡潔に導いて同様の静置・自動の分離作業を行う。
【0048】
自動のバルブ操作により分離された脂肪酸アルキルエステル層は、不純物を除去するために吸着精製工程8に送られ、吸着またはろ過作用などにより不純物が除去されて、次のバイオディーゼル燃料油貯槽タンクに移し入れて燃料油として使用される。
【0049】
図2は、本発明を実施する際の図1の作業工程概要図をより具体化した装置図を示すものである。
【0050】
図2の装置図では、原料タンク・反応タンク・光透過式波長測定検出器・吸着塔・製品タンクなどを例示しているが、本発明の特徴である光透過式波長測定検出器の詳細説明をする為に図3を例示した。
【0051】
脂肪酸アルキルエステルの反応残液の精製工程では、水及び温水などによる洗浄を必要としない無機粉末吸着材を用いる精製方法も本発明の特徴の一つである。
【0052】
本発明の飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸を含有する油脂類の原料として、とうもろこし油・ひまわり油・オリーブ油・カカオ油・アーモンド油・パーム油・ヤシ油・パーム核油・桐油・ヒマシ油・ゴマ油・大豆油あるいはこれらの群れの1種または2種以上の混合油や使用油(廃食油)などを含む食用の植物油や非食用のジャトロファ植物からの油も使用できるが、以下の実施例の原料油として菜種油と大豆油の2種類が混合された食用に使用された後の廃食油を使用した。
【0053】
実施例で使用する原料油は不飽和脂肪酸のオレイン酸やリノール酸が50〜70%程度含有され、天ぷらなどに使用されるときの使用時間や温度などにより酸化が進行し、遊離脂肪酸が生成される。
【0054】
廃食油を原料中に直鎖低級アルコールとして炭素数1〜6までの分岐状のメチルアルコール・エチルアルコール・ノルマルプロピルアルコール・イソプロピルアルコール・およびイソブチルアルコールからなる1種または2種以上のアルコールに、アルカリ触媒として水酸化カリウム・水酸化ナトリウム・水酸化マグネシウム・水酸化カルシウム・水酸化リチウム・炭酸カリウム・炭酸水素ナトリウム・炭酸ナトリウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムからなる群れから1種または2種以上が選ばれ、一定量溶解してアルキサイト溶液をエステル交換反応に使用する。
【0055】
実施例では反応効率の高いメチルアルコールと水酸化カリウムを使用し、アルキサイト溶液としてメチルエステル交換反応に使用した。
【0056】
図2の製造装置の特徴として図2中の9光透過式波長測定検知器と、12の吸着塔A及びBが挙げられる。
【0057】
光透過式波長測定検知器の詳細は図3に示したとおり、LEDの赤色波長を発光する発光部と測定対象試料溶液を透過した光を受光する受光部とからなり、透過光を増幅し、数値化する測定器から構成される。
【0058】
光透過式波長測定検知器を取り付けるLED光の発光部と受光部の間には、測定試料対象溶液が通過するセル部が必要で、図3の中では4.ポリカーボネート管として示される。
【0059】
本発明の光透過式波長測定検知器のセル部に、塩化ビニール管やガラス管、あるいは石英管などを使用せずにポリカーボネート管を使用している事も特徴としている。
【0060】
本発明では光透過式波長測定検知器のLED赤色の発光強度設定値を1500として、重液下層のグリセリン通過時と、軽液上層の脂肪酸アルキルエステル液の光透過強度の強弱により、三方コックに連動させて自動的に切り換えられるように設定を行った。
【0061】
廃食油を図2の1の原料タンクに50lを超える量を粗目の布や網などでろ過して移し入れ、60℃昇温後にメチルアルコール10lに水酸化カリウム70gを溶解したアルカリ触媒溶液を添加し、2時間加熱撹拌後に1時間静置した。
【0062】
静置分離された重液下層のグリセリン液と軽液上層の脂肪酸メチルエステル液とは光透過式波長測定検知器と連動した三方コックにより、反応タンク下部より最初に排出されるグリセリン層は製造装置系外のタンクに導入され、次に脂肪酸メチルエステル溶液は吸着塔AまたはBに移し入れられる。
【0063】
因みに光透過式波長測定検知器の赤色LEDの発行強度は1500に設定し、グリセリン層の光透過式強度は200〜300で通過し、脂肪酸メチルエステル層の1900〜2000の光透過測定値から1500付近に戻った時に、自動的に分離作業が完了する。
【0064】
吸着塔内に導入された脂肪酸メチルエステル溶液は、粒状の活性白土の槽内を通過する事により、不純物のセッケン成分や残留グリセリンあるいは残留アルコールなどが吸着除去され、精製された脂肪酸メチルエステル溶液すなわち、バイオディーゼル燃料油として、ヨーロッパで制定されている各項目の規格基準値に合致した製品が製造された。
【実施例1】
【0065】
以下に本発明の製造の条件を選定するための実験および結果を示す。実験はビーカースケールでスターラー及びオイルバスを用いて加熱撹拌を行い、排出されるグリセリン重量部及びJISK2283キャノフェンスケ管で40℃の動粘度を測定しヨーロッパ統一規格EN14214の3.5から5.0mm2/Sの範囲内にある条件を比較検討した。基本的な実験条件は原料廃食油量100g、加熱温度60℃、加熱時間60分として、メチルアルコール量及び水酸化カリウムのアルカリ触媒量の検討を行った。その結果を表1.に示す。
【表1】

【0066】
表1に見られるように、メチルアルコール量と水酸化カリウム量が多いNo.3・4・7・8が本発明の最適条件として選定される。
【実施例2】
【0067】
本実施例では水洗浄による排水処理作業を省略する為に、各種吸着剤を用いて比較検討を行い、その実験結果を表2に示す。
【0068】
実施例2では廃食油100gに対して、メチルアルコール量20gおよび水酸化カリウム1.4gを用いて、55℃で100分間加熱撹拌を基本条件とした。グリセリン排出後の脂肪酸メチルエステル溶液の水洗浄は水10gを添加して、75℃で30分間加熱撹拌後に静置及び分離し、水を排出した。
【0069】
水排出後は残った脂肪酸メチルエステル溶液を90℃以上で、100分間加熱撹拌し、水分除去作業を行った溶液を比較対象試料として用いた。
【0070】
本例で用いた吸着は活性白土(細粒)、活性白土(粗粒)、活性炭、珪藻土、アルミナホワイト、水酸化アルミニウムなどの種類を添加量を変化させて、不純物の除去効果の検討を行った。
【表2】

【0071】
表2.に見られるように、各種の多孔質の吸着材料を用いて不純物を吸着除去して精製した試料と、水洗浄作業後の脂肪酸メチルエステル溶液すなわち、バイオディーゼル燃料油と比較しても全く差異が認められず、水洗浄作業を省略する事が可能である事が確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸を含有する油脂類を原料として、直鎖低級アルコールにアルカリ化合物を触媒として混合し、溶解したアルキサイト溶液を添加し、混合撹拌および加熱などにより、アルキルエステル化反応を完結させる。アルキルエステル化反応が完了した後に、化学反応により生成された脂肪酸アルキルエステル層とグリセリン層を反応槽タンク内で静置する事により比重差で分離する。分離された層は、上部には脂肪酸アルキルエステル化合物で下部にはブリセリン液が位置する。上層部の脂肪酸アルキルエステル化合物を燃料油にするのに、最初にグリセリン液との完全分離及び不純物吸着除去工程への注入および切り替えする必要があり、光透過式波長識別センサーを用いて自動的にバルブ操作を行うようにする。次にグリセリン液と完全分離した脂肪酸アルキルエステル化合物は、不純物を吸着除去するために不純物吸着除去装置内へ注入精製し、脂肪酸アルキルエステル燃料油を製造する事を特徴とする製造方法と製造装置。
【請求項2】
飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸を含有する油脂原料として、とうもろこし油・ひまわり油・オリーブ油・カカオ油・アーモンド油・パーム油・ヤシ油・パーム核油・サフラワー油・紅花油・亜麻仁油・綿実油・菜種油・桐油・ヒマシ油・ゴマ油・大豆油あるいはこれらの群れの1種または2種以上の混合油や使用油なども使用でき、非食用の油脂としてジャトロファ種子を搾油した原油なども使用できる事を特徴とする請求項1に記載の脂肪酸アルキルエステル燃料油の製造方法。
【請求項3】
請求項1のアルキルエステル化反応で用いる直鎖低級アルコールとして、炭素数1から6まで分岐状でメチルアルコール・エチルアルコール・ノルマルプロピルアルコール・イソプロピルアルコール・ノルマルブチルアルコールおよびイソブチルアルコールからなる群れから選ばれた1種または2種以上のアルコールを含有する事を特徴とする脂肪酸アルキルエステル燃料油の製造方法。
【請求項4】
請求項1及び請求項2のアルキルエステル化反応で使用するアルカリ化合物の触媒として、水酸化カルシウム・水酸化ナトリウム・水酸化マグネシウム・水酸化リチウム・炭酸カリウム・炭酸ナトリウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムからなる群れから選ばれた1種または2種以上のアルカリ金属を含有する事を特徴とする脂肪酸アルキルエステル燃料油の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載のアルキルエステル化反応後に精製される脂肪酸アルキルエステル槽と、グリセリン槽を自動的に分離するために反応槽下部に一部透明の配管を設置し、投光部および受光部・検出器・増幅装置からなる光透過式の波長識別センサー馳走を装備し、赤色LEDを光源とする光を波長650mmでの濃茶色のグリセリン層と淡黄色の脂肪酸アルキルエステル層を通過する時の光強度を測定し、光透過強度の小さいグリセリン層と光透過強度の大きい脂肪酸アルキルエステル層の切り替わり点を光強度の数値で設定し、自動的に2つの層の境界面でバルブ操作により切り替えて分離することを特徴とする請求項1〜請求項4に記載された脂肪酸アルキルエステル燃料油の製造装置。
【請求項6】
請求項1に記載されたアルキルエステル化反応後の脂肪酸アルキルエステル層と、グリセリン層を請求項5に記載された光透過式の波長識別センサーで分離された脂肪酸アルキルエステル層を、活性アルミナ・ドロマイト・ケイソウ土・アルミナホワイト・パーライト・水酸化アルミニウム・水不溶性塩基性硫酸アルミニウム・活性白土からなる群れより選ばれた1種または2種以上混合した不純物吸着材を充填した装置で脂肪酸アルキルエステル層を精製し、燃料油化する事を特徴とした請求項1〜5に記載された脂肪酸アルキルエステル燃料油の製造方法及び製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−265335(P2010−265335A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115440(P2009−115440)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(598000611)株式会社錦エンジニアリング (7)
【出願人】(501116871)株式会社ポーラーズ研究所 (5)
【Fターム(参考)】