説明

脂質ラフトの調節

本発明は、脂質ラフト、受容体及び/又はカベオラの機能障害、例えば異常な機能、機能低下又は機能亢進の治療及び/又は予防のための医薬組成物及び/又は医療用食品を製造するための、抗分泌性タンパク質、又は同様の活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片、及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩の使用に関する。脂質ラフト、受容体及び/又はカベオラの機能障害は、血管及び肺の機能障害及び/又は内分泌障害、例えば糖尿病及び関連障害など、本発明によって包含される他の多様な状態によって引き起こされ得、又は該他の多様な状態の原因であり得る。さらに、本発明は、脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害の治療及び/又は予防を必要とする哺乳動物における脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害を治療及び/又は予防するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞膜における脂質ラフト及び/又はカベオラ、並びに化合物の取り込み及び放出を含む脂質ラフト及びカベオラと関連した結合タンパク質、受容体、神経伝達物質、イオンチャネル、水チャネル、細胞骨格及びGタンパク質系の構造的崩壊及び機能障害の治療及び/又は予防のための医薬組成物を製造するための、抗分泌性タンパク質、同様の機能活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片、及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩の、使用に関する。本発明において、医薬組成物は、膜における脂質ラフト、受容体及び/又はカベオラの構造、分布及び複数の機能をモニターするため及び/又はそれらに有益な影響を及ぼすために使用される。このように有益な影響を及ぼす例は、機能低下又は機能亢進等の異常な機能に対抗すること、脂質ラフト及び/又はカベオラを構造的及び機能的に回復及び/又は正常化すること、疾患、傷害、修復プロセス及び他の機能障害での生存及び/又は救出を改善することであり得る。さらに、本発明は、細胞産物の細胞内輸送及び放出をモニターするための、並びに組織構成要素の分布を正常化するための医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
脂質ラフトは、細胞膜で特化された領域を形成する動的な不均一な微小ドメインであり、コレステロール及び糖脂質、最も明白にはGM1等のスフィンゴ脂質が豊富である(Ross & Pawlina,2006;Pollard & Earnshaw,2002)。インビトロでのそれらに関する1つの定義は、希釈され及び低温で使用される界面活性剤トリトンX−100による抽出後に不溶性のままであるものとしている。このような界面活性剤不溶性膜画分は、浮遊勾配によって単離される低密度バンドとして回収される。脂質ラフトの広がりは、細胞膜におけるコレステロールの枯渇又は崩壊によって低下する。脂質ラフトは、細胞骨格と密接に関連しており、細胞骨格に接続されており、細胞の極性化に関与する。脂質ラフトは、例えば、胚、胎児、並びに若齢、成体及び老齢の個体の、全年齢での細胞及び組織中の膜に広く認められる特化された微小ドメインを構成する。
【0003】
受容体、細胞付着タンパク質、イオン輸送体並びに、例えばアクアポリンを含むイオンチャネル複合体、並びにケモカイン受容体、神経伝達物質受容体、ホルモン受容体及び増殖因子受容体等の、粘着及びシグナル伝達のための鍵となる重要なタンパク質は、脂質ラフト中に豊富である。これらのタンパク質及びタンパク質複合体は、例えば受容体によって受容されたメッセージを、例えば細胞の細胞質及び核に伝達する細胞内Gタンパク質系と相互作用している(Dermine et al.,2001;Ross & Pawlina,2006;Pollard & Earnshaw,2002;Helms & Zurzolo,2004;Chini & Parenti,2004;Head et al.,2006;Mahmutefendic et al.,2007)。細胞活性をモニターする上で鍵となるイオンであるCa2+の分布及び濃度は、脂質ラフト及びカベオラと密接に関連することが示されている。コネキシン、CD38、CD19、Thy−1及びCD59等のさらなるタンパク質は通常、細胞機能と相互作用できるグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)によって固定されるタンパク質及び受容体を介して、脂質ラフトに固定される。コレラ毒素に対する標的であるガングリオシドGM1によって説明されるようなスフィンゴ脂質は、脂質ラフトに豊富であり、脂質ラフトを特徴付けている。さらに、シナプス及びニューロン突起の神経伝達物質受容体及び他の構成体並びに増殖因子受容体は、例えばニューロンのような非常に特化した細胞における脂質ラフト中に広く認められる広範な範囲のタンパク質の一員である。細胞機能及び相互作用を制御する上で鍵となる重要なカルシウムイオンチャネル及び輸送体は、かなりの程度まで脂質ラフトに限局される(A Spat,2007)。このことは、脂質ラフトの破壊が、細胞中を移動するCa2+波を伝播する細胞の能力を妨害し又は防止さえするという観察によって説明され得る。さらに、カルシウムイオンバーストは、正常細胞における、及び病理学的に変化した細胞、例えば細胞分裂、細胞生存及び細胞死における、鍵となる能に有意に影響を及ぼす。
【0004】
さらに、脂質ラフトは、細胞内タンパク質輸送、受容体及び脂質の動態において鍵となる役割を担うと考えられている。これらの受容し及び運搬するタンパク質全てによるメッセージ及び作用は、Gタンパク質共役系を介して、酵素系を介して又は細胞骨格を用いて、細胞の内部へ伝達される(Triantafilou & Triantafilou,2004)。脂質ラフトの物理的状態が、例えば、コンピテントシグナル伝達複合体の動的集合を容易にする複数のタンパク質の移動性を集中させ及び束縛するために伝導性であることは公知である。
【0005】
さらに、脂質ラフトは、細胞骨格の活性化、シグナル伝達及び再編成を調節する能力を有すると考えられており、このことは、これらを方向性のある遊走を含む細胞運動を支配し、並びに細胞の形状及び大きさ、及び関連した輸送を維持するための、機構に決定的に重要なものとしている。細胞骨格はさらに、細胞構成要素の細胞内輸送のために、及び細胞にかかる動的及び静的負荷を感知するために、鍵となる重要なものである。
【0006】
従って、脂質ラフトは通常、変動のかなりの範囲を有する5〜50nmのオーダーの直径を有する動的構造である。脂質ラフトの存在を示すための多数のアプローチがあり、例えばコレラ毒素に対して非常に高い親和性を有するGM1の免疫組織化学的及び免疫化学的な証明によるものがある。脂質ラフトの存在及び位置を示す別の方法は、一般に入手可能な細胞生物学の教科書に記載されるように、細胞を破壊した後、規定された温度で界面活性剤不溶性画分を単離して、細胞膜を単離することである。フロティリン、カベオリン及びレジー(reggie)は、脂質ラフトを免疫組織化学的に同定するために使用できる。それらのタンパク質のうち、フロティリンは、脂質滴とさらに結合し得る。原子間力顕微鏡及び関連アプローチは、脂質ラフトの可視化を可能にする技術を加える。膜からのコレステロールの枯渇を引き起すシクロデキストリン及びその変異形に対する細胞の曝露は、脂質ラフトの広がりを示す代替法を構成する。
【0007】
カベオラは、コレステロール及びスフィンゴ脂質の膜における局所的な豊富さ、細胞の環境と内部との間でシグナルを伝達すること及び細胞骨格に結合することによって特徴付けられる動的構造である、脂質ラフトの特化した種類を構成する。他の脂質ラフトとは対照的に、カベオラは通常、より大きく、細胞膜中でフラスコ状の窪み又は陥入として、及び小胞として現れる(Kurzchalia & Parton,1999)。カベオラのサイズは、通常0.1μmのオーダーであるが、かなりの変動を有する。カベオラは、例えば心筋及び平滑筋細胞、内皮細胞、マクロファージ及び脂肪細胞中で、すなわち、実質的に全ての哺乳動物細胞中で、広く認められるが、頻度は非常に変動する。
【0008】
脂質ラフト及びカベオラは、NO(一酸化窒素)発生系を宿し及び該発生系に影響を及ぼすことが開示されている。細胞に又は細胞からシグナルを運搬することに加えて、カベオラは、細胞内で及び細胞の環境で、流体及び多様な化合物を細胞に及び細胞から輸送すること、エンドサイトーシス、及び脂肪酸及びコレステロールの制御、輸送、流出及び維持に関与している(Pohl et al.,2004;Rajendran et al.,2007)。カベオラ成分及び脂質ラフトはさらに、優先的にはアルツハイマー病と関連したタンパク質であり、他の神経変性障害及び神経外傷とも関連したタンパク質であるβアミロイド前駆体タンパク質(βAPP)及びアミロイドβ(Aβ)のプロセッシングに関与している(Graham & Lantos,2002)。
【0009】
腫瘍細胞は、脂質ラフト及びカベオラを有することが公知である。従って、例えば、これらの構造を破壊し又は可変の程度にこれらの構造を崩壊させることによって腫瘍細胞の増殖及び遊走を弱めることが可能である(Marquez,D C et al.,2006;Freeman et al.,2007)。
【0010】
脂質ラフト及びカベオラの重要性は、遺伝子修飾された動物においてさらに解明されてきた。カベオリンを欠失しているノックアウトマウスは、拡張型心筋症及び肺高血圧を発症する(Mathew et al.,2004)。さらに、脂質ラフト及びカベオラは、ステロイドホルモン運搬系等のインスリン刺激性輸送体系と関連している。
【0011】
非常に動的な構造を構成し、密接に関連するが幾つかの側面において異なっている、脂質ラフト及びカベオラが、哺乳動物細胞において広く認められており、多数の重要な機能を発揮すると結論付けられる。現在利用可能なアプローチは、脂質ラフト及びカベオラの破壊又は枯渇を可能にするが、脂質ラフト、並びに脂質ラフト中に組織化されたシグナル伝達及び物質輸送タンパク質の構造、分布、頻度及び/又は機能を回復及び/又は正常化する公知の方法はない。
【0012】
抗分泌性タンパク質は、41kDaタンパク質であり、元々下痢性疾患及び腸管炎症に対する保護を提供すると、云われていた(概説については、Lange and Lonnroth,2001参照)。抗分泌性タンパク質は、配列決定されており、そのcDNAはクローン化されている。等価の活性は、抗分泌性タンパク質配列の位置35と50との間に配置されたペプチドによって主としてもたらされているように見える。免疫化学的及び免疫組織化学的研究によって、抗分泌性タンパク質が身体中のほとんどの組織及び器官に存在し、またそれらによって合成され得ることが明らかとなった。抗下痢性配列を含む合成ペプチドが、特性化されている(WO97/08202;WO05/030246)。抗分泌性因子が、コレラ毒素による処理後の腸管及び中枢神経系の脈絡叢などにおけるような、病原性流体輸送及び/又は炎症反応を正常化することが既に記載されている(WO97/08202)。従って、WO97/08202において、天然抗分泌性因子を食物及び食餌に対して使用することは、浮腫、下痢、脱水症状及び炎症の治療に有用であることが示唆された。WO98/21978には、抗分泌性タンパク質の形成を誘導する食物の生産のための、酵素活性を有する産物の使用が記載されている。WO00/038535にはさらに、抗分泌性タンパク質それ自体の豊富な食品が記載されている。
【0013】
抗分泌性タンパク質及びその断片が、細胞の損失及び/又は獲得と関連した状態の治療において、神経組織の修復、並びに幹細胞及び前駆細胞及びそれらに由来する細胞の増殖、アポトーシス、分化及び/又は遊走を改善することも示されている(WO05/030246)。
【0014】
WO97/08202において詳細に記載されている抗分泌性因子(AF)、特にタンパク質及びペプチドは、下痢等の腸における分泌過剰状態及び疾患を取り除くのに効果的である。分泌過剰状態と関連したAFの効果に関する他の例は、例えば、炎症性腸疾患、脳浮腫、緑内障、高頭蓋内圧、メニエール病及び乳腺炎である。AFは同様に、緑内障の治療用と考えられている(WO97/08202)。
【0015】
近年、異常な細胞機能、過剰な又は異常な負荷、感染に起因して、又は毒性化合物若しくは薬物によって変化している脂質ラフトの構造、広がり、分布及び機能を、特定の特異的タンパク質及び関連化合物を用いてモニターし、正常化さえし得ると認識されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚いたことに、本発明者は、タンパク質抗分泌性因子(AF)及びそれに由来するペプチド、例えばAF−16及びAF−8が、脂質ラフト及びカベオラに限定される又はそれに連する機能をモニターし、調節し及び/又は正常化さえすることが初めて可能であるような方法で、細胞、組織及び/又は器官における異常な細胞機能、過剰な又は異常な負荷、感染に起因して、又は毒性化合物及び/又は薬物によって変化している脂質ラフト、受容体及び/又はカベオラの構造、広まり、分布及び/又は機能に影響することが可能であることをいまや証明することができた。
【0017】
本発明は、異常な機能、不十分な機能、機能低下及び/又は機能亢進等の細胞膜における脂質ラフト、受容体及び/又はカベオラの機能障害の治療及び/又は予防のための医薬組成物を製造するための、抗分泌性タンパク質、抗分泌性活性及び/又は同様の機能活性及び/又は類似の活性を有するその相同体、誘導体及び/又は断片、又は医薬的に活性のあるそれらの塩を含む医薬組成物の使用に関する。
【0018】
本発明は、血管機能障害、心血管系機能障害、肺機能障害、細胞及び組織の過形成及び/又は肥大、心血管系機能障害、心筋症及び肺高血圧、瘢痕組織の形成、過剰な組織の反応性形成、並びにI型及び/又はII型糖尿病等の糖尿病からなる群より選択される何れかの状態など、脂質ラフト、受容体及び/又はカベオラの機能障害と関連した多様な状態の治療及び/又は予防のための医薬組成物を製造するための、抗分泌性タンパク質、同等の及び/又は類似の活性を有するその相同体、誘導体及び/又は断片を含む医薬組成物の使用にも関する。
【0019】
さらに、本発明は、脂質ラフト及び/カベオラの機能障害と関連した多様な状態の治療及び/又は予防のための医薬組成物を製造するための、抗分泌性タンパク質、同様の活性を有するその相同体、誘導体及び/又は断片、又は医薬的に活性のあるそれらの塩を含む医薬組成物の使用であって、ここで該医薬組成物は、例えば、細胞の障壁を通過する構成要素の伝達、組織及び器官の修復、過剰の組織の反応性形成及び/又は上皮細胞被覆の修復及び再生に有益に影響を及ぼすことになる、使用に関する。
【0020】
別の側面おいて、本発明は、アルツハイマー病、何れかの他の神経変性障害及び神経外傷からなる群より選択される、脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害と関連した多様な状態の治療及び/又は予防のための医薬組成物を製造するための、抗分泌性タンパク質、同様の機能活性を有するその相同体、誘導体及び/又は断片、又は医薬的に活性のあるそれらの塩を含む医薬組成物の使用に関する。
【0021】
好ましい実施態様において、前記抗分泌性タンパク質は、次式
X1−V−C−X2−X3−K−X4−R−X5
に従った配列からなり、式中、X1は、Iであり、配列番号6のアミノ酸1〜35であり、又は欠失しており、X2は、H、R又はKであり、X3は、S又はLであり、X4は、T又はAであり、X5は、配列番号6のアミノ酸43〜46、43〜51、43〜80又は43〜163であり、又は欠失している。
【0022】
さらに、本発明は、上述のような脂質ラフト、受容体及び/又はカベオラにおける機能障害と関連した医学的状態を治療及び/又は予防するための方法であって、該方法は、それを必要とする哺乳動物に、抗分泌性タンパク質、同等の活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片、及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩を含む医薬組成物の治療的有効量を投与することを含む方法に関する。
【0023】
本発明は、また、企図される治療目的、並びに患者の年齢、性別、状態等に適した多様な投与用量及び経路にも関連している。
【0024】
さらに、前記医薬組成物はもちろん、2つ又はそれ以上の抗分泌性タンパク質を含むことが可能であり、及び医薬的に許容される添加剤をさらに含む。本発明において、医薬組成物は、眼内、鼻腔内、経口、局所、皮下及び/又は全身性の投与のために製剤化され、例えば、スプレー、エアゾールとして、及び吸入器又は噴霧器による投与のために製剤化することが可能である。血液への全身性投与のために製剤化される場合、該組成物は好ましくは、1回の適用及び体重kg及び1日あたり0.1μg〜1mgの用量など、1回の適用及び体重kg及び1日あたり0.1μg〜10mgの用量で、好ましくはさらに、1回の適用及び体重kg及び1日あたり1〜50μgなど、1回の適用及び体重kg及び1日あたり1〜500μgで製剤化される。このような投与は、単回用量として又は日毎の複数回の適用としての何れかで実施することが可能である。
【0025】
一般的に、本発明は、脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害と関連した多様な状態の治療及び/又は予防のための医薬組成物を製造するための、抗分泌性タンパク質、又は同様の活性を有するその相同体、誘導体及び/又は断片、及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩の使用に関する。好ましい実施態様において、前記組成物は、例えばカベオラ及び脂質ラフトを構造的に、及び機能的に修復するために、疾患、傷害、修復プロセスおよび他の機能不全での生存及び救出を改善するために、カベオラ及び脂質ラフト、すなわち特化した微小ドメインの構造、分布及び機能をモニターし、正常化するのに採用することが可能である。さらに、本発明は、細胞産物の細胞内輸送及び放出をモニターすることを可能にし、及び多様な疾患で組織構成要素の分布を正常化し、及び/又は反応性細胞及び組織の形成をモニターし、並びに異常な組織及び器官の結合を含む瘢痕組織の形成を低下させることを可能にする。さらに、前記組成物は、毒物によってもたらされる作用の治療を可能にし、それらの長期的作用をモニターするために使用することが可能である。好ましい実施態様において、このような状態は、哺乳動物の身体中の細胞、組織及び器官の外傷、中毒、感染、形成異常、変性及び別の機能不全又は疾患からなる群より選択される。
【0026】
本発明の範囲を特定の理論に限定することなしに、抗分泌性タンパク質、同様の活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩を含む本発明の組成物は、細胞膜におけるカベオラ及び/又は脂質ラフトの構造、分布及び/又は機能の正常化に及ぼす有益な影響を通じて、その効果を発揮出来るものと考えられる。
【0027】
定義及び略語
略語
BP:血圧;CSF:脳脊髄液;CNS:中枢神経系、すなわち脳及び脊髄;IFP:間質液圧;PH:肺高血圧;PBS:リン酸緩衝化生理食塩水;AF:抗分泌性因子AF−16;アミノ酸VCHSKTRSNPENNVGLから構成されるペプチド;オクタペプチドIVCHSKTR;セプタペプチドVCHSKTR;ヘキサペプチドCHSKTR;ペンタペプチドHSKTR。
【0028】
定義
タンパク質とは、ペプチド結合によって互いに連結されるアミノ酸残基によって構成される生物学的巨大分子である。アミノ酸の線状ポリマーとしてのタンパク質は、ポリペプチドとも呼ばれる。典型的に、タンパク質は、50〜800個のアミノ酸残基を有し、それゆえ、約6,000〜約数十万Da又はそれ以上の範囲にある分子量を有する。小タンパク質は、ペプチド又はオリゴペプチドと呼ばれる。「タンパク質」及び「ペプチド」という用語は、本文脈において交換可能に使用され得る。
【0029】
本文脈における「医薬組成物」とは、場合により担体若しくはビヒクル等の医薬的に活性のある添加剤との組み合わせで、抗分泌性タンパク質の治療活性量を含む組成物を指す。該医薬組成物は、適切な投与経路のために製剤化され、これは、患者の状態、及び年齢又は好ましい選択等の他の要因に応じて変動し得る。抗分泌性タンパク質を含む医薬組成物は、薬物送達システムとして機能する。投与した医薬組成物は、ヒト又は動物の身体に活性物質を与える。該医薬組成物は、例えば錠剤、丸剤、ロゼンジ剤、カプセル剤、便通ピル(stool pill)、ゲル剤、液剤等の形態にあり得るが、これらに限定されるわけではない。
【0030】
「医薬的に活性のある塩」という用語は、いわゆるHofmeiserシリーズをベースにした、抗分泌性タンパク質に由来する何れかの塩であり得る抗分泌性タンパク質の塩を指す。医薬的に活性のある塩に関する他の例は、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩及び塩化リジンを含むが、本発明は、これらに限定されるわけではない。
【0031】
「抗分泌性」という用語は、本文脈において、分泌、特に腸内分泌を抑制すること又は低下させることを指す。従って、「抗分泌性タンパク質」という用語は、身体において分泌を抑制又は低下できるタンパク質を指す。
【0032】
本文脈において、医療用食品とは、抗分泌性タンパク質を有する組成物と共に調製されている食品を指す。該食品は、液体又は粉末等の流体又は固形の形態にある何れかの適切な食品、又は何れかの他の適切な食材であり得る。このような物の例は、WO0038535において見出され得る。同様に、前記構成要素は、抗分泌性タンパク質の取り込み、形成及び放出を含み得る。
【0033】
本文脈において、「抗分泌性タンパク質」又はその相同体、誘導体及び/又は断片は、特許WO97/08202において規定される「抗分泌性因子」又は「抗分泌性因子タンパク質」という用語と交換可能に使用され得、抗分泌性タンパク質若しくはペプチド又は抗分泌性活性及び/又は同等の機能的活性及び/又は類似の活性を有する相同体、誘導体及び/又は断片を指す。従って、当然ながら本文脈における「抗分泌性因子」、「抗分泌性因子タンパク質」、「抗分泌性ペプチド」、「抗分泌性断片」又は「抗分泌性タンパク質」は、それらの誘導体、相同体及び/又は断片を指すことも可能である。これらの用語は全て、本発明の文脈において交換可能に使用され得る。さらに、本文脈において、「抗分泌性因子」という用語は、「AF」と略記され得る。本文脈における抗分泌性タンパク質は、WO97/08202及びWO00/38535において既に規定された抗分泌性特性を有するタンパク質も指す。抗分泌性因子は、例えばWO05/030246においても記載されている。また、抗分泌性因子という用語によって企図されるものは、以下にさらに開示するSE900028−2及びWO00/38535において記載されるような抗分泌性因子の豊富な卵黄である。
【0034】
本文脈において「噴霧器」とは、霧状の形態で投薬を気道へ送達する医療用装置を指す。「噴霧器」圧縮装置は、液体薬物で満たされた医薬カップ内にチューブを通して空気を送り込む。空気力により、液体は、気道内に深く吸入することが可能なごく小さな霧様粒子にされる。
【0035】
本文脈において「エアゾール」という用語は、細かな固体又は液体の粒子のガス状懸濁物を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
現在のところ適切な治療法が利用可能ではないので、脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害と関連した医学的状態の薬理学的治療を目的とした新たな薬物に関する必要性が存在する。抗分泌性タンパク質は、以下の本文において具現化されるように、有益な効果を有する。
【0037】
本発明は、細胞膜において広く認められる脂質ラフト及び関連構造であるカベオラの構造及び機能のモニター及び調節に関する。脂質ラフトとは、コレステロールが豊富であり、そこで例えばイオンのGM1等のスフィンゴ脂質輸送、細胞付着、増殖、シグナル伝達及び細胞骨格への付着に重要なタンパク質が限定される膜微小ドメインとして定義される。カベオラは、例えば脂質ラフト構成要素の1つ又はそれ以上のクラスターによって形成される内皮細胞、平滑筋細胞、上皮細胞、線維芽細胞及び心筋細胞を含む、例えばの心肺系及び血管系の細胞に豊富な小胞又はフラスコ状構造である(Chan and Ye,2007;Petersen et al.,2007)。単独で又は組み合わせでの何れかで関連するさらなるタンパク質は、フロティリン、カベオリン及びレジー(reggie)であり、幾つかの変異形が各者に関して存在する。
【0038】
カベオラは、例えば、心筋及び平滑筋細胞、内皮細胞、マクロファージ及び脂肪細胞中に広く認められており、カベオラは、コレステロール及びスフィンゴ脂質の膜における局所的な豊富さ、細胞の環境と内部との間でシグナルを伝達すること及び細胞骨格へ結合することによって特徴付けられる動的構造である、特化した種類の脂質ラフトである。他の脂質ラフトとは対照的に、カベオラは、より大きく、細胞膜においてフラスコ状の窪み又は陥入として、及び小胞として通常現れる。カベオラのサイズは、通常0.1μmのオーダーであるが、かなりの変動を有する。
【0039】
さらに、グリコホスファチジルイノシトール結合タンパク質及びその変異形は、前記構造に付着し、該構造と相互作用するアンカータンパク質を構成する。血管機能を仲介する酵素は同様に、指定の構造に局在することが明らかとなっている。これらの動的膜構成要素は、Gタンパク質系及び酵素系を介して、並びに細胞骨格を介して細胞の内部に連結し、それによりこれらの構造が、細胞機能に影響し調節することが可能である。従って、脂質ラフト及びカベオラは、細胞の構造および機能にとって鍵となる重要なものであることが明らかにされている。シグナル伝達タンパク質及び物質輸送タンパク質を含むこのような膜構造の安定化及び正常化をモニターできる公知のアプローチはない。
【0040】
本発明は、細胞膜における脂質ラフト及びカベオラの機能障害の治療及び/又は予防のための医薬組成物及び/又は医療用食品を製造するための、抗分泌性タンパク質、同様の活性を有するその相同体、誘導体及び/又は断片、又は医薬的に活性のあるそれらの塩を含む医薬組成物の使用に関する。また、本発明は、細胞の障壁を通過しての構成要素の伝達、組織及び器官の修復、細胞及び組織の過形成及び/又は肥大、心血管液の機能、瘢痕組織の形成、過剰な組織の反応性形成並びに上皮細胞被覆の修復及び再生のような、脂質ラフト及びカベオラの機能障害と関連する多様な状態の治療及び/又は予防に関する。
【0041】
さらに、本発明は、上述のような脂質ラフト及びカベオラの機能障害の治療及び/又は正常化のための方法であって、該方法は、これを必要とする哺乳動物に、抗分泌性タンパク質又は同様の活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片、及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩を含む医薬組成物及び/又は医療用食品の治療的有効量を投与することを含む、方法に関する。
【0042】
また、本発明は、企図される治療目的、及び患者の年齢、性別、状態等に適した多様な投与用量及び経路にも関連している。
【0043】
本発明に従った治療は、脂質ラフト及びカベオラの機能障害が進行しており及び/又はそれに罹患しており、又は病原性物質の取り込み及び/又は放出に罹患しているリスクのある患者に対して最も有用であるようである。さらに、このような治療は、細胞及び細胞外マトリックス構成要素の異常な代謝回転によって特徴付けられる他の状態にも有益である。
【0044】
抗分泌性タンパク質及びペプチドが、細胞膜において脂質ラフトに対して効果を発揮しているようであるという今般発見された証拠は、当業者を実際に驚かせている。コレステロール及びスフィンゴミエリンの高濃度によって特徴付けられる脂質ラフトと命名された1μmをはるかに下回る平均サイズを有するドメインが多数存在する。脂質ラフトは、物質輸送及び細胞シグナル伝達に関与する多様な膜内在性タンパク質及び表在性膜タンパク質を含有する。このようなシグナル伝達プラットフォームは、膜中に浮遊し、受容体、共役因子、エフェクター、酵素及び化合物、及び基質としての適切な機能に必要な要素を装備され、それにより、特定のイオン、分子及びシグナルを受容及び運搬することが可能である。これらのドメインはさらに、例えば細胞骨格相互と作用しており、さらには、間質液の組成及び代謝回転並びに該間質液の圧力に影響を及ぼす。さらに、脂質ラフトは、カベオラの代謝回転、並びに例えばウイルスの放出及び内部移行にも関連している。一瞬一瞬で、増殖因子受容体、炎症性シグナル受容体、イオンチャネル及び優勢な機能と関連した動的変化を受ける脂質ラフトへの輸送体の細胞膜におけるクラスター形成が存在する。
【0045】
抗分泌性タンパク質及びペプチド(AF)の使用は、実施例に記載した組織、器官及び解剖学的構造に限定されるものではなく、脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害、異常機能、機能低下又は機能亢進によって同様に特徴付けられるさらなる症状及び疾患を含む。
【0046】
抗分泌性タンパク質、ペプチド、誘導体及び相同体は、物質輸送及びシグナル伝達に関与する脂質ラフト及びタンパク質の機能をモニターし、正常化さえする能力を有する。利用される非常に広範な範囲の有効用量計画は、副作用に関する危険性及び予期せぬ合併症が最小であることを示す。従って、脂質ラフト及びカベオラと関連した構造及び機能をモニターし制御するために使用されるアプローチは、細胞及び組織にかかる過剰な負荷の治療を可能にし、並びに個々の反応、及び疾患及び/又は不快の重症度、に適した広範な範囲の用量で患者を治療することが可能である。
【0047】
本発明の医薬組成物は、一文脈において、局所的に、原部位で局所的に(in situ locally)、経口的に、鼻腔内で、皮下的に及び/又は全身的に、血管を介して又は気道を介して適用することによって投与可能である。
【0048】
抗分泌性因子とは、身体に自然に存在するタンパク質の1クラスである。ヒトの抗分泌性因子タンパク質は、41kDaタンパク質であり、脳下垂体から単離される場合、382個のアミノ酸を含む。本発明に従った脂質ラフト正常化及び又はカベオラのモニターに及ぼす有益な効果に関する活性部位は、タンパク質のN末端近くの領域中に局在され、配列番号6のアミノ酸1〜163に、又はこの領域の断片に最も局在され得る。
【0049】
本発明者は、抗分泌性因子が、全ての細胞において広く認められる成分、26Sプロテアソームのサブユニット、より具体的には19S/PA700キャップを構成する、Rpn10とも呼ばれるタンパク質S5aとある程度相同であることを証明した。本発明において、抗分泌性タンパク質とは、同一の機能特性を有する相同的タンパク質の1クラスとして定義される。プロテアソームは、過剰なタンパク質の分解、並びに短命の、望ましくない、変性した、ミスフォールディングの及びさもなくば異常なタンパク質の分解と関連した多数の機能を有する。さらに、抗分泌性因子/S5a/Rpn10は、細胞構成要素、最も明らかにはタンパク質の分布及び輸送に関与する。
【0050】
本発明の抗分泌性タンパク質及び/又はペプチドの相同体、誘導体及び断片は全て、脂質ラフト及び/又はカベオラにおける機能障害の治療及び/又は予防のための薬剤を製造するために、並びに脂質ラフト及び/又はカベオラにおける機能障害と関連した状態を治療するための方法において使用されることが可能である類似の生物活性を有する。本文脈における相同体、誘導体及び断片は、天然の抗分泌性タンパク質の少なくとも4個のアミノ酸を含み、これは、本発明と関連した状態の治療及び/又は予防における抗分泌性因子の生物活性を最適化するために、1つ又はそれ以上のアミノ酸を変化させることによってさらに修飾されていてもよい。
【0051】
抗分泌性タンパク質の断片は一般的に、調製物中のタンパク質の90%以上、例えば95%、96%、97%、98%又は99%が、本発明のタンパク質、ペプチド及び/又はそれらの断片である調製物中に、ペプチド/アミノ酸配列又はそれらの断片を含むものとなる。
【0052】
さらに、本発明の抗分泌性タンパク質、ペプチド、相同体、誘導体及び/又は断片のアミノ酸配列と少なくとも72%、75%、77%、80%、82%、85%、87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるなど、少なくとも70%同一である何れかのアミノ酸配列も、本発明の範囲内にあるとされる。本文脈において、相同的及び同一性という用語は、交換可能に使用され、すなわち別のアミノ酸配列と特定の度合の同一性を有するアミノ酸配列は、特定のアミノ酸配列との特定の度合の相同性を有する。
【0053】
本文脈において、誘導体によって企図するところは、本明細書で定義される抗分泌性活性と等価の活性及び/又は機能的に等価の活性を有し、直接的に又は修飾若しくは部分的置換によって別の物質から誘導されるタンパク質であり、1つ又はそれ以上のアミノ酸が、修飾された又は非天然アミノ酸であり得る別のアミノ酸によって置換されている。例えば、本発明の抗分泌性因子誘導体は、N末端及び/又はC末端保護基を含み得る。N末端保護基の一例には、アセチルが含まれる。C末端保護基の一例には、アミドが含まれる。
【0054】
参照アミノ酸配列と例えば少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するタンパク質、その相同体、ペプチド及び/又は断片によって企図することろは、例えばペプチドが、参照配列と同一であるが、例外は、前記アミノ酸配列が、参照アミノ酸配列の各100個のアミノ酸あたり5個までの点変異を含み得るということである。言い換えれば、参照アミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、参照配列のアミノ酸の5%までを欠失させるか又は別のアミノ酸と置換でき、又は参照配列中のアミノ酸全体の5%までの数のアミノ酸を、参照配列中に挿入し得る。参照配列のこれらの変異は、参照アミノ酸配列のアミノ末端又はカルボキシ末端の位置で、又は参照配列列中のアミノ酸の中で個々に若しくは参照配列内の1つ若しくはそれ以上の連続した基中散在するそれら末端の位置の間のどこかに存在していてもよい。
【0055】
本発明において、局所アルゴリズムプログラムは、同一性を決定するのに最も良く適している。局所アルゴリズムプログラム(Smith−Waterman等)は、1つの配列中のサブ配列を、第二の配列中のサブ配列と比較し、サブ配列の組み合わせ及びそれらのサブ配列のアラインメントを発見し、これにより最高の全体的類似スコアが得られる。許容される場合、内部ギャップは、ペナルティ化される。局所アルゴリズムは、単一ドメイン又は共通して1つだけの結合部位を有する2つのマルチドメインタンパク質を比較するのに十分機能する。
【0056】
同一性及び類似性を決定する方法は、公的に利用可能なプログラムにおいてコード化される。2つの配列間の同一性及び類似性を決定する好ましいコンピュータプログラム方法には、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J et al(1994))BLASTP、BLASTN及びFASTA(Altschul,S.F.et al(1990))が含まれるが、それらに限定されるわけではない。BLASTXプログラムは、NCBI及び他の源(BLAST Manual,Altschul,S.F.et al,Altschul,S.F.et al(1990))から公的に利用可能である。各配列分析プログラムは、デフォルトスコア化マトリックス及びデフォルトギャップペナルティを有する。一般的に、分子生物学者により、使用されるソフトウェアプログラムによって確立されたデフォルト設定が使用されると予想される。
【0057】
抗分泌性タンパク質若しくはペプチド又は本明細書に規定される等価の活性を有する又はそれらの相同体、誘導体及び/又は断片は、5〜16個のアミノ酸、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個又はそれ以上のアミノ酸など、4個又はそれ以上のアミノ酸を含み得る。他の好ましい実施態様において、抗分泌性因子は、42、43、45、46、51、80、128、129又は163個のアミノ酸からなる。好ましい実施態様において、抗分泌性因子は、5、6、7、8又は16個のアミノ酸からなる。
【0058】
別の好ましい実施態様において、本発明の抗分泌性タンパク質若しくはペプチド又は等価の活性を有するそれらの相同体、誘導体若しくは断片は、次式
X1−V−C−X2−X3−K−X4−R−X5
に従った配列からなり、式中、X1は、Iであり、配列番号6のアミノ酸1〜35であり、又は欠失しており、X2は、H、R又はKであり、X3は、S又はLであり、X4は、T又はAであり、X5は、配列番号6のアミノ酸43〜46、43〜51、43〜80又は43〜163であり、又は欠失している。
【0059】
本発明の抗分泌性因子は、インビボ又はインビトロで、例えば組換えで生産し、合成的に及び/又は化学的に合成し、及び/又はブタ脳下垂体若しくはトリの卵由来のような抗分泌性因子の天然源から単離することが可能である。生産後、抗分泌性因子は、化学的又は酵素的切断によって、より小さな抗分泌性活性断片に、又はアミノ酸の修飾によって、さらに処理することができる。精製によって純粋な形態で抗分泌性因子を得ることは今のところ可能ではない。しかしながら、WO97/08202及びWO05/030246において既に記載されているように、生物活性のある抗分泌性因子タンパク質を組換えで生産又は合成で生成することは可能である。WO97/08202には、7〜80個のアミノ酸のこのタンパク質の生物活性のある断片の生産も記載されている。
【0060】
本発明の抗分泌性因子は、N末端及び/又はC末端保護基をさらに含み得る。N末端保護基の一例には、アセチルが含まれる。C末端保護基の一例には、アミドが含まれる。
【0061】
本発明の好ましい実施態様において、抗分泌性因子は、配列番号1〜6から選択されたものであり、すなわちアミノ酸の一般的な1文字略記を使用して、VCHSKTRSNPENNVGL(配列番号1、本文脈ではAF−16とも呼ばれる)、IVCHSKTR(配列番号2)、VCHSKTR(配列番号3)、CHSKTR(配列番号4)、HSKTR(配列番号5)、又は配列番号6に従った抗分泌性タンパク質のアミノ酸配列である。配列番号1、2及び3は、例えばWO05/030246において既に記載されている。付随する配列の列挙において特定されるように、上述の特定された配列中のアミノ酸の幾つかは、他のアミノ酸によって置換され得る。本段落の以下において、特定のアミノ酸配列中の特定のアミノ酸の位置は、左から計算され、最もN末端のアミノ酸を、その特定の配列中の位置1にあるものとして示す。以下に特定したように何れかのアミノ酸置換は、その配列中の何れかの他のアミノ酸置換とは独立して実施され得る。配列番号1において、位置2におけるCは、Sによって置換され得、位置3におけるHは、R又はKによって置換され得、位置4におけるSは、Kと置換され得、及び/又は位置6におけるTは、Aと置換され得る。配列番号2において、位置3におけるCは、Sによって置換され得、位置4におけるHは、R又はKによって置換され得、位置5におけるSは、Lによって置換され得、及び/又は位置7におけるTは、Aによって置換され得る。配列番号3において、位置2におけるCは、Sによって置換され得、位置3におけるHは、R又はKによって置換され得、位置4におけるSは、Lによって置換され得、及び/又は位置6におけるTは、Aによって置換され得る。配列番号4において、位置1におけるCは、Sによって置換され得、位置2におけるHは、R又はKによって置換され得、位置3におけるSは、Lによって置換され得、及び/又は位置5におけるTは、Aによって置換され得る。配列番号5において、位置1におけるHは、R又はKによって置換され得、位置2におけるSは、Lによって置換され得、及び/又は位置4におけるTは、Aによって置換され得る。
【0062】
また、本発明によって企図されるのは、配列番号1〜6の断片の何れかの2つ又はそれ以上の組み合わせである。
【0063】
本発明の一実施態様において、本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤をさらに含む。医薬的に許容される賦形剤及び本発明に従った使用のための該賦形剤の最適濃度に関する選択は、実験によって当業者によって容易に決定され得る。本発明の使用のための医薬的に許容される賦形剤には、溶剤、緩衝剤、保存料、キレート化剤、抗酸化剤及び安定剤、乳化剤、懸濁化剤及び/又は賦形剤が含まれる。本発明の医薬組成物は、例えば、「Remington:The science and practice of pharmacy」,第21版、ISBN 0−7817−4673−6又は「Encyclopedia of pharmaceutical technology」,第2版、Swarbrick J.編、ISBN:0−8247−2152−7に記載の従来の製薬プラクティスに従って製剤され得る。医薬的に許容される賦形剤とは、組成物が投与されるべき個体に対して実質的に無害である物質である。このような賦形剤は通常、健康に関する国家当局によって定められる必要条件を満たす。例えば英国薬局方、米国薬局方及び欧州薬局方等の公的薬局方は、医薬的に許容される賦形剤に関する基準を設定している。
【0064】
以下は、本発明の医薬組成物における最適な使用のための関連医薬組成物に関する概説である。概説は、特定の投与経路に基づいている。しかしながら、医薬的に許容される賦形剤が異なる剤形又は組成物において採用され得る場合において、当然ながら特定の医薬的に許容される賦形剤の適用が、特定の剤形又は賦形剤の特定の機能に限定されるわけではない。本発明が、以下に記載される組成物の使用に限定されるわけではないことは強調されるべきである。
【0065】
非経口的組成物:
全身的適用のため、本発明の組成物は、マイクロスフェア及びリポソームを含む従来の非毒性の医薬的に許容される担体及び賦形剤を含有し得る。
【0066】
本発明に従った使用のための組成物には、固体、半固体及び液体の組成物の全種類が含まれ得る。
【0067】
医薬的に許容される賦形剤には、溶剤、緩衝剤、保存料、キレート化剤、抗酸化剤、及び安定剤、乳化剤、懸濁化剤及び/又は賦形剤が含まれ得る。種々の作用剤の例は、以下に付与される。
【0068】
種々の作用剤の例:
溶剤の例には、水、アルコール、血液、血漿、髄液、腹水及びリンパ液が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0069】
緩衝剤の例には、クエン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、リン酸水素(hydrogen phosphoric acid)、炭酸水素塩、リン酸塩、ジエチルアミン等が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0070】
キレート化剤の例には、EDTAナトリウム及びクエン酸が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0071】
抗酸化剤の例には、ブチル化ヒドロキシルアニソール(BHA)、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、システイン及びそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0072】
賦形剤及び崩壊剤の例には、乳糖、ショ糖、エムデックス(emdex)、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、デンプン及び微結晶セルロースが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0073】
結合剤の例には、ショ糖、ソルビトール、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、キトサン、デンプン、セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0074】
一脈絡において、本発明の医薬組成物は、患者への末梢静脈内注入を介して又は筋肉内注射若しくは皮下注射を介して、又は口腔(buccal)、肺、鼻、皮膚又は経口の経路を介して局所的に投与することが可能である。さらに、外科的に挿入されたシャントを通して患者の脳室中に医薬組成物を投与することも可能である。
【0075】
一実施態様において、本発明に従って使用される医薬組成物は、眼内、局所的、鼻腔内、経口、皮下及び/又は全身投与用に製剤化される。好ましい実施態様において、本発明の組成物は、スプレー、エアゾールで、吸入器若しくは噴霧器で経鼻的に及び/又は気道に吸入するための、懸濁液として、又はさらにより好ましくは粉末として適用することにより投与される。
【0076】
抗分泌性因子を含む粉末の投与は、安定性及び投与量の点においてさらなる利点を有する。本発明の医薬組成物は、また、眼内で、鼻腔内で、経口で、皮下的に局所的に適用され及び/又は血管を介して全身的に適用可能である。好ましい実施態様において、医薬組成物は、静脈内、筋肉内、局所的、経口又は鼻腔内投与用に製剤化される。典型的には、眼に対して局所的適用のために使用される場合、本発明の組成物中の適用される濃度は、1回の適用あたり1μg〜1mg、好ましくは50〜1000μg、好ましくは50〜250μgであり、1日あたり単回の用量として、又は1日あたり反復された数回として(複数の投与)の何れかであるが、それらに限定されるわけではない。
【0077】
血液に全身的に投与される場合、用量は典型的には、1回の適用及び体重kg及び1日あたり、0.1μg〜1mgなど、1回の適用及び体重kg及び1日あたり、0.1μg〜10mgの範囲であり、好ましくは1〜500μg/体重kgであり、さらに好ましくは1〜50μg/体重kgであり、1日あたりの単回用量として又は1日あたりに反復される複数回としての何れかである。抗分泌性因子の豊富な卵黄が、本発明に従って使用される場合、この製剤は、好ましくは経口的に投与される。
【0078】
従って、本発明は、脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害の治療及び/又は予防のための医薬組成物及び/又は医療用食品を製造するための、抗分泌性タンパク質、又は同様の活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片、及び/又は医薬的に許容されるそれらの塩の使用に関する。一実施態様において、該抗分泌性タンパク質は、次式
X1−V−C−X2−X3−K−X4−R−X5
に従った配列からなり、式中、X1は、Iであり、配列番号6のアミノ酸1〜35であり、又は欠失しており、X2は、H、R又はKであり、X3は、S又はLであり、X4は、T又はAであり、X5は、配列番号6のアミノ酸43〜46、43〜51、43〜80又は43〜163であり、又は欠失している。別の実施態様において、本発明は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む抗分泌性タンパク質の使用に関する。別の実施態様において、本発明は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む抗分泌性タンパク質の使用に関する。さらに別の実施態様において、本発明は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む抗分泌性タンパク質の使用に関する。さらに別の実施態様において、本発明は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む抗分泌性タンパク質の使用に関する。なおもさらなる実施態様において、本発明は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む抗分泌性タンパク質の使用に関する。
【0079】
さらに、なおも別の実施態様において、本発明は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である抗分泌性タンパク質又は配列番号6のアミノ酸38〜42を含むその相同体、誘導体及び/又は断片の使用に関する。
【0080】
さらに別の実施態様において、本発明は、配列番号1〜6及び配列番号6に開示されるタンパク質又は配列番号6のアミノ酸38〜42を含むその相同体、誘導体及び/又は断片、又は本明細書に記載される一般式によって開示される配列から選択される2つ又はそれ以上の抗分泌性タンパク質を含む本明細書に開示される医薬組成物の使用に関する。該配列は全て、本発明において使用するのが同等に好ましい。
【0081】
本発明の一実施態様において、医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤をさらに含む。このような賦形剤は、特定の目的に適しているよう選択される何れかの好ましい賦形剤であり得る。賦形剤の例は、本明細書で開示される。
【0082】
本発明の別の実施態様において、前記医薬組成物は、眼内、鼻腔内、経口、局所、皮下及び/又は全身投与用に製剤化される。選択される投与経路は、治療しようとする患者の状態並びに患者の年齢及び性別等に応じて変動することになる。
【0083】
別の実施態様において、医薬組成物は、スプレー、エアゾールとして又は噴霧器若しくは吸入器で投与するために製剤化される。さらに別の実施態様において、本発明は、1回の適用及び体重kg及び1日あたり0.1μg〜1mgなど、1回の適用及び体重kg及び1日あたり0.1μg〜10mgの用量で、好ましくは、1回の適用及び体重kg及び1日あたり1〜500μgで、さらに好ましくは1回の適用及び体重kg及び1日あたり1〜50μgで血液への全身性投与のために製剤化される医薬組成物及び/又は医療用食品に関する。別の実施態様において、該用量は、1回の適用及び体重kg及び1日あたり1〜100μgなど、1回の適用及び体重kg及び1日あたり1〜50μgである。医薬組成物を要する患者へ分配される前記医薬組成物の量は、治療しようとする患者に応じてもちろん変動することになり、各場合に関して、医療診療者等の当業者によって決定されることになる。投与は、単回用量として又は日毎の複数回の適用の何れかで実施可能である。
【0084】
過去何年にもわたって、脂質ラフト、カベオラ及びカベオリンは、筋ジストロフィー(例えば、肢帯筋ジストロフィー)、細胞内コレステロールの不均衡(例えば、ニーマン・ピック病C型)、及び/又はアミロイド前駆体タンパク質(APP)からのアミロイドペプチドの生成における機能障害(例えば、アルツハイマー病)等(それらに限定されるわけではない)のヒトの幾つもの疾患状態に関与することが次第に明らかになってきた。従って、一実施態様において、本発明は、筋ジストロフィー、細胞内コレステロールの不均衡、及び/又はアミロイド前駆体タンパク質からのアミロイドペプチドの生成における機能障害を予防及び/又は治療する上での使用のための、本明細書に記載される医薬組成物の使用も提供する。
【0085】
脂質ラフトは、特異的な化学的性質の脂質が、互いに劇的に会合し、膜タンパク質選択並びに物質輸送及びシグナル伝達複合体の構築にとって重要なプラットフォームを形成し得る1種の細胞内ドメインを表す。
【0086】
幾つもの細胞内受容体が、細胞膜の脂質ラフト及び/又はカベオラ中に存在することは公知であり、例えば、ラフトは、GPCRのそれらのライフサイクルの全段階での制御において、すなわち細胞外経路において、原形質膜において、及びエンドサイトーシス経路において重要であることが示されている。脂質ラフト及び/又はカベオラは、何れかの特定のGPCRのシグナル伝達及び輸送を制御する受容体の安定性の制御に関与することが発見されている。さらに、受容体、イオンチャネル及び水チャネルタンパク質並びに他のシグナル伝達物質の迅速な代謝回転は、モニターされ得る。結果として、一実施態様において、本発明は、細胞膜に局在する1つ又はそれ以上の受容体の受容体安定性を調節し、それらのシグナル伝達及び/又は輸送を調節するための、本発明医薬組成物の使用に関する。
【0087】
多くの受容体の平均的な寿命は、3〜5時間以下である。結果として、新たな受容体タンパク質の一定の生産には、生産された受容体タンパク質を、安全かつ正確に誘導し、細胞膜中の適切な位置で固定することを必要とする。本発明は、このような受容体が細胞膜において位置決めするのを改善し及び/又は促進するための、本発明の医薬組成物の可能性のある使用を開示する。
【0088】
さらに、古典的なステロイドホルモン受容体が、細胞膜における脂質ラフト及び/又はカベオラ中に存在し、従ってこれらの構造物の助力内で、及び助力と共に機能し得ることを、近年の知見は示している。このような受容体の例は、チロシンキナーゼ受容体、すなわちEGFR、及びアンドロゲン受容体シグナル伝達経路、Akt1、IL−6、STAT3、エストロゲン受容体(ER)であるが、それらに限定されるわけではない。従って、本発明は、本発明に従った又はステロイドホルモン受容体の機能障害と関連した状態を治療及び/又は予防する医薬組成物の使用も提供する。
【0089】
インスリンの生理学的レベルに反応する細胞又は組織の低下した能力として定義されるインスリン抵抗性は、II型糖尿病の病態生理学における主要な欠陥であると考えられている。TNFαは、他のサイトカイン及びリンフォカインもそうするようであるのと同様に、この抵抗性において主要な役割を担っていることが公知である。現在ホルモンの独特の作用が細胞膜における脂質ラフト中のシグナル伝達分のコンパートメント化(compartmentalization)に密接に結びついていることが明らかになっている。従って、脂質ラフトの適切な機能は、例えば脂肪細胞におけるインスリンシグナル伝達の適切なコンパートメント化に決定的であることが示されている。インスリンの代謝的シグナル伝達の阻害及び/又は破壊をその順にもたらす脂質ラフトの組織化及び/又は機能の破壊は、おそらくグリコスフィンゴ脂質の異常な発現に少なくとも部分的に起因している。従って、現に好ましい実施態様において、本発明は、インスリンの代謝的シグナル伝達を正常化するための、抗分泌性タンパク質又は抗分泌性活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片、及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩を含む医薬組成物の使用に関する。結果的に、該実施態様において、本発明は、また、糖尿病、例えばII型糖尿病を治療及び/又は予防することに関する。
【0090】
脂質ラフト及びカベオラは、シグナル伝達のための組織化された中心として作用する。インスリン受容体及びTC10の両者は、脂質ラフト中に存在する。非脂質ラフトドメインに対するTC10の誤標的化は、インスリンによるその活性化を予防し、インスリンの作用を遮断する。数多くの研究は、脂質ラフトが、脂肪細胞におけるインスリンシグナル伝達のための組織化中心として作用することを示している。活性化されたインスリン受容体は、カベオリン及びCb1を含む脂質ラフト中の特定のタンパク質のチロシンリン酸化を特異的に触媒する。インスリンシグナル伝達の構成要素は、インスリン受容体、フロティリン及びTC10の幾つか又は全てを含み、脂質ラフト中に構成的に局在化される。
【0091】
インスリンは、促進性のグルコース輸送体Glut4を、細胞内部位から原形質膜へと位置転移させる調節された小胞再循環のプロセスを通じて、脂肪及び筋肉細胞中のグルコース輸送体を刺激する。刺激されていない細胞において、Glut4は、エンドソーム内へのエンドサイトーシスに付され、その後、インスリン受容体の活性化後に原形質膜へ輸送する特化された貯蔵小胞内に選り分けられる。次に、小胞は、膜で特定の部位で結合及び融合し、その結果、輸送体の細胞外曝露が生じる。インスリン受容体からのシグナル伝達カスケードは、多くの細胞内基質のチロシンリン酸化及びPI3キナーゼ経路の活性化、及び被覆体外(exocyst)タンパク質Exo70を含み、多くのエフェクターに順に結合するGタンパク質の活性化を含む。
【0092】
さらに、Exo70、Sec6及びSec8を含むエクソシスト複合体(exocyst complex)は、例えば脂肪細胞におけるなど細胞膜における脂質ラフトドメインでGlut4含有小胞のコンパートメント化に関与する。エクソシスト複合体の一部は、インスリンによる活性化後にGタンパク質によって動員され、細胞におけるインスリン刺激グルコース取り込みに必須である。さらに、最近、脂質ラフトに対するこれらの標的化が、原形質膜でのグルコース取り込み及びGlut4ドッキングに必要であることが示されている。不思議にも、この複合体は、脂質ラフトへのその位置転移の際に該複合体に結合するPDZドメインタンパク質も必要とする。脂質ラフトでのエクソシスト集合体は、インスリンによる細胞の刺激の際にこれらの微小ドメインと一過性に会合するGlut4小胞のための標的部位を設定する。
【0093】
本願の実験セクションにおいて示されているように、本発明者はいまや、抗分泌性因子が、化学的に誘発された糖尿病で症状の発症に対して、有益な効果を発揮することを示すことができた。詳細には、ストレプトゾシンによる処理によって引き起こされた実験的誘発糖尿病に対して、AF−16による処置が有益な影響を及ぼすかどうかに関して調査した。現に好ましい実施態様において、本発明は従って、I型及びII型糖尿病から選択されるような、糖尿病及び/又は糖尿病関連合併症と関連した患者における医学的状態を治療及び/又は予防するための、抗分泌性タンパク質又は同様の活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片、及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩を含む医薬組成物の使用に関する。
【0094】
本発明のさらに好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、筋肉細胞、内皮細胞、脂肪細胞及び/又は赤血球細胞における脂質ラフトの形成及び/機能を正常化するために、該細胞中のGlut4及び/又はエクソシスト集合体の機能障害を治療及び/又は予防するために採用される。結果的に、前記医薬組成物は、本明細書において、I型及びII型糖尿病から選択されるような、糖尿病及び/又は糖尿病関連合併症を治療及び/又は予防するために使用される。
【0095】
カベオラは、細胞内への溶液の受容体仲介取り込み及び細胞を通じてのトランスサイトーシスの両者に関与する細胞質媒体を形成する、原形質膜から出芽することが可能な動的構造である。カベオラは、多くの細胞種において見出されるが、カベオラは、脂肪細胞が特に豊富であり、アクチンフィラメントとしばしば会合した環様構造(カベオラロゼット)内にクラスター形成され得る。カベオラは、脂肪酸の取り込み、並びに脂肪酸輸送及び/又は細胞の脂肪酸結合に関与する。さらに、カベオラ及びカベオリン1は、細胞表面へのコレステロール輸送に関与し、細胞中のコレステロールレベルによって調節されることが十分特徴付けられている。従って、本発明はまた、さらなる実施態様において、脂肪酸の取り込み、脂肪酸輸送、脂肪酸結合及び/又はコレステロールレベルにおける機能障害を伴う患者における医学的状態を治療及び/又は予防するための、抗分泌性タンパク質又は同様の活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片、及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩を含む医薬組成物の使用にも関する。
【0096】
カベオラの機能障害は、ヒトの幾つもの疾患と関連している。例えば、カベオリン1(CAV1)のない細胞は、増大した増殖を示し、CAVの喪失は、腫瘍の発生を加速する。幾つかの乳癌において、CAV1は、ダウンレギュレートされ、CAV1における多くの孤発性変異が、ヒト乳癌の試料中で検出されており、エストロゲン受容体α陽性状態と特に相関する。また、筋特異的カベオリンアイソフォームであるCAV3は、疾患と強く関連する。CAV3における多くの変異は、多くのヒト筋肉障害と関連する。
【0097】
同等に好ましい別の実施態様において、本発明の医薬組成物は、それを必要とする患者における高血圧に対抗し及び/又は高血圧を安定化するよう、カベオラの構築及び/又は機能を正常化するために採用される。実験セクションで示されるように、本発明の医薬組成物による哺乳動物の治療は、哺乳動物の身体の小循環系及び大循環系の両者において緊張過度(hyperotony)に起因する合併症を低下させることが可能である。従って、本発明は、心発作、高血圧、肺疾患、プラーク形成及び/又は心臓及び肺等の循環器系に対する外傷性傷害並びにホルモンの機能障害及び調節不全を治療及び/又は予防するために採用可能である。
【0098】
別の側面において、本発明は、脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害の治療及び/又は予防を必要とする哺乳動物における、脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害を治療及び/又は予防するための方法であって、該方法は、抗分泌性タンパク質、又は同様の機能的活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片、及び/又は医薬的に許容されるそれらの塩を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む方法に関する。一実施態様において、本発明は、抗分泌性タンパク質が、次式X1−V−C−X2−X3−K−X4−R−X5に従った配列からなる方法に関するものであり、式中、X1は、Iであり、配列番号6のアミノ酸1〜35であり、又は欠失しており、X2は、H、R又はKであり、X3は、S又はLであり、X4は、T又はAであり、X5は、配列番号6のアミノ酸43〜46、43〜51、43〜80又は43〜163であり、又は欠失している。別の実施態様において、本発明は、抗分泌性タンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む方法に関する。さらに別の実施態様において、本発明は、抗分泌性タンパク質が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む方法に関する。さらに別の実施態様において、本発明は、抗分泌性タンパク質が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む方法に関する。さらに、本発明は、抗分泌性タンパク質が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む方法に関する。さらに別の実施態様において、本発明は、抗分泌性タンパク質が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む方法に関する。さらに別の実施態様において、本発明は、抗分泌性タンパク質が、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、又は配列番号6のアミノ酸38〜42を含むその相同体、誘導体及び/又は断片である方法に関する。一実施態様において、本発明は、前記医薬組成物が、配列番号1〜6及び配列番号6のタンパク質又は配列番号6のアミノ酸38〜42を含むその相同体、誘導体及び/又は断片、又は本明細書で一般式によって記載される配列から選択される2つ又はそれ以上の抗分泌性タンパク質を含む方法に関する。一実施態様において、医薬組成物は、眼内、鼻腔内、経口、局所、皮下及び/又は全身投与用に製剤化される。さらに別の実施態様において、前記医薬組成物及び/又は医療用食品は、スプレー、エアゾールとして、又は噴霧器若しくは吸入器で投与するために製剤化される。また、本発明の実施態様によって包含されるのは、医薬組成物が、1回の適用及び体重kg及び1日あたり0.1μg〜1mgなど、1回の適用及び体重kg及び1日あたり0.1μg〜10mgの用量で、好ましくは、1回の適用及び体重kg及び1日あたり1〜500μgで、さらに好ましくは1回の適用及び体重kg及び1日あたり1〜50μgで血液に全身投与するために製剤化される方法である。該方法の一実施態様において、投与は、単回用量として又は日毎の複数回の適用としての何れかで実施される。本発明は、脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害の治療及び/又は予防を必要とする哺乳動物における、脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害を治療及び/又は予防するための方法であって、該方法は、抗分泌性タンパク質、又は同様の機能的活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片、及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む、方法に関する。
【0099】
好ましい一実施態様において、本発明は、脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害の治療及び/又は予防を必要とする哺乳動物における、脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害を治療及び/又は予防するための方法であって、該方法は、抗分泌性タンパク質、又は同様の活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片、及び/又は医薬的に許容されるそれらの塩を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む、方法に関する。
【0100】
さらに、本発明の、医薬組成物の有効量を必要とする哺乳動物に医薬組成物の有効量を投与することを含む方法、及び/又は抗分泌性タンパク質又は同様の活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩を含む医薬組成物の医学的第二用途が、脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害と関連すると本明細書で記載される全ての状態(condition)に向けられることは、当然であり、及び明白である。
【実施例】
【0101】
実験セクション
実施例1
体重150〜300gで何れかの性別の未成体及び成体ラットを実験的に処理して、肺高血圧及び肺における反応性変化を誘発させた。肺高血圧(PH)とは、20mmHgまでの正常肺動脈圧を超過する圧力を有するものとして定義され、通常30〜40mmHgの範囲にある。PHは、ヒト及び動物において高い罹患率及び死亡率を伴う進行性の疾患である。実験モデルによって、開始機構の調査が可能である。モノクロタリンによるラットの単回処理は、PHの誘発のための確立されたアプローチである(Mathew et al.,2004参照)。この植物アルカロイドは、肝臓中でピロール代謝産物へと活性化され、半減期は、ちょうど数秒であり、従って肺動脈内皮細胞に主として影響を及ぼし、内皮細胞損傷及び肺血管漏出を引き起こす。この後、翌数日以内で、肺動脈内皮細胞のDNA合成及び肥大の顕著な刺激を引き起こす。これらの内皮細胞は、隣接する平滑筋細胞の遊走及び反応性変化の一因となる増殖及び運動促進因子を分泌すると考えられている。2週間以内で、右心室は、肺血管系におけるクロタリン誘発性変化から生じる高負荷によって肥大した。
【0102】
スプラーグ・ドーリーラットの群に、クロタリンの単回腹腔内注射(60mg/体重kg;Sigma)を行った。2匹に1匹の動物の背中に、Alzet浸透圧小型ポンプ(2001型;充填容積〜235μL;汲み上げ速度〜1μL/時;プレ開始で;15%エタノールの添加されたPBS中に溶解したAF−16の20mg/mLを含有する充填溶液)を皮下的に埋め込んだ。従って、ポンプは、少なくとも10日間、約20μg/時のAF−16を送達していた。一実験において、Alzet2001ポンプを有するラットに、埋め込み時に同様に2mgのAF−16の単回筋肉内注射を行った。比較のため、2匹に1匹のラットは、クロタリン注射時に、ビヒクル、すなわち15%エタノールを有するPBSで充填されたAlzet2001ポンプを埋め込まれた。体重がマッチするラットのさらなる群には、AF−16又はビヒクルの何れかで満たしたポンプのみを埋め込んだが、クロタリンは与えなかった。
【0103】
18日後にラットを麻酔し、ラットの体重を測定した。クロタリンで処理したものは、未処理の正常対照と比較して、齢のわりに痩せて小さく、活動的でなく、ざらざらした被毛であり、低体重であった。クロタリンで処理し、小型ポンプを用いてAFの注入したものは、健常に見え、対象とほぼ同一の体重及び外観であった。右頸静脈を通じて挿入した光ファイバー小型変換器システム(Samba System 3200 & Samba Preclin 420センサー;Samba Sensors AB,V.Frolunda,Sweden)を用いて、右心室の圧力を評価した。平均肺動脈血圧は、ビヒクルで処理された又はAF−16で処置されたラットで約20mmHgであった。対照的に、Alzeポンプによって送達されるクロタリン(単回腹腔内注入;60mg/体重kg;PBS中に溶解されたクロタリン)及びビヒクルで処理したラットでは、その湿重量を、左心室で、非処理の正常ラットの対応する構造の重量を有するものの湿重量とを比較することによって評価して、30mmHgを超過する肺動脈圧及び右心室の肥大が18日間あった。クロタリン処理ラットのAF−16による処置によって、右心室血圧及び肺動脈血圧が正常に近くなり、正常な非処理のラットのものと比較して、右心室の有意な肥大はなかった。これらの結果は、反復すると一致して達成されるので再現可能であった。クロタリン誘導化合物は、例えばカベオリンタンパク質の破壊を引き起こし、カベオラ及び脂質ラフトの崩壊をもたらし、その作用が、PHのこのモデルの内皮細胞シグナル伝達の変化の主な原因となることは公知であった(Mathew R,et al.,2004)。
【0104】
本発明者は、AF−16による処置が、肺血管系の再建をなくし、従ってもしそうでなければクロタリンによる処理後に示される肺の異常及び右心部の肥大の発症を取り除いたと結論付けた。従って、内皮及び平滑筋細胞における脂質ラフト及びカベオラに対して誘発された損傷並びにその後の反応性変化は、AF−16による処置によって軽減し、予想された血管の異常も右心室の肥大も結果的に生じなかった。
【0105】
実施例2
第二の実験において、肺高血圧の発症を取り除くことが上述で証明された用量でのAF−16の投与が、傷害を受けた動脈の治癒プロセスに影響を及ぼすかどうかを調査した。
【0106】
麻酔した成体ラットの背中に、浸透圧小型ポンプ(Alzet2001型;充填容積〜235μL;汲み上げ速度〜1μL/時;プレ開始で;15%エタノールの添加されたPBS中に溶解したAF−16の10mg/mLを含有する充填溶液)を皮下的に埋め込んだ。さらに、埋め込み直後に、1mgのAF−16を筋肉内注射した。その後、右鼠径部の皮膚を剃毛し、切開し、右大腿動脈及び総腸骨動脈を分離した。ピーン鉗子を動脈の周りに配置し、各回に15秒間、3回閉鎖した後、除去した。血管又は何れかの隣接する構造を穿孔しないよう、細心の注意を払った。適切な血液循環を確認するため、大腿動脈及び腸骨動脈並びに静脈の耐容度(patience)をチェックした。次に、傷の余白を合わせて、縫合した。並行して、さらなるラットの右大腿動脈及び腸骨動脈をクランプしたが、活性物質の代わりに、ビヒクル、すなわち15%エタノールを有するPBSを注入した。
【0107】
10日後、動物をもう一度麻酔し、PBS中に溶解した2%エバンスブルー及び3%アルブミン(ウシ血清アルブミン:Sigma)の混合物1mL/体重kgを注入した。15分後、ヘパリンを添加したPBSによる初期的なすすぎの後、ホルマリン緩衝塩類溶液による経心灌流(transcardial perfusion)によって、動物を固定した。右及び左の腸骨動脈及び大腿動脈を注意深く分離し、その末端で結合し、PBS中のホルマリン溶液中に浸漬した。1時間後、細いハサミで長軸方向に血管を開き、動脈壁の管腔表面の青色染色の広まりに関して観察した。未処理の動脈は、その管腔表面に染色を示さなかった。対照的に、右腸骨動脈及び大腿動脈が外傷を受け、ビヒクルで処理されたものは、はっきりと区別できる境界を有する傷害を受けた血管壁全体の連続的なはっきりと区別できる高強度の青色染色を示した。傷害が、スポット様の点を有し、損傷を受けた血管帯域の外見的に染色されていない領域によって隔てられた青色染色され、不規則な形状で、不連続な領域を有していたので、動物の第三の群からの外傷を受けた腸骨動脈及び大腿動脈をAF−16によって処置した。視覚的に判断して、傷害を受けた帯域内の面積の半分より多くが、AF−16で処置されたものにおいて染色されていなかった。そのことは、AF−16が最初の露出部の回復を促進し、細胞による裏打ちに変えたことを意味した。さらに、ビヒクルで処理された動物において傷害を受けている血管と比較して、観察予定の可視的なクロットはほとんどなかった。傷害を受けた領域の光学顕微鏡により、ビヒクルによる処理後のものと比較して、傷害を受けた組織上の及びその組織中の白血球、血小板、マクロファージ及び泡沫細胞の数が、Af−16処理後少ないことが明らかになった。さらに、表面に付着した単核細胞はほとんどなかった。平滑筋細胞は、反管腔側層に侵入しているのが認められたが、ビヒクル後のものと比較してAF−16処理後の侵入の程度は低かった。内皮細胞、線維芽細胞及び平滑筋細胞は、原形質膜のところで、及び細胞膜中でカベオラ及び小胞が豊富なことによって特徴付けられる正常な環境下にあった。これらの表面構造は、血管に対する機械的外傷時及び外傷後に撹乱され、少なくとも10日間は、すなわち本実験において調査された期間は、かなりの程度までそのまま残った。しかしながら、AF−16で処置された動物において、ビヒクルで処理されたものにおいて広く認められる状態と比較して、正常化の顕著な傾向があった。上述の細胞種に関するシグナル伝達が、脂質ラフト及びカベオラを通じて大きく仲介されることは公知である。従って、AF−16による処理が、傷害を受けた血管において炎症性及び反応性の変化を低下させ、このような領域中の細胞の構造及び機能をかなりの程度まで正常化すると結論付けられた。AF−16は、脂質ラフト及びカベオラに干渉することによって、その有益な効果を発揮している。
【0108】
実施例3
一実験において、AF−16の投与が、傷害を受けた皮膚及び軟骨の治癒プロセスに影響を及ぼすかどうかを、モデル系としてのラット耳の凍結融解傷害を使用して、調査した。
【0109】
麻酔した成体ラットの背中に、浸透圧小型ポンプ(Alzet2001型;充填容積〜235μL;汲み上げ速度〜1μL/時;プレ開始で;15%エタノールの添加されたPBS中に溶解したAF−16の20mg/mLを含有する充填溶液)を皮下的に埋め込んだ。さらに、ポンプの埋め込み直後に、1mgのAF−16を筋肉内注射した。その後、液体窒素中で冷却されたピーン鉗子を用いて標準化された様式で耳を圧迫することによって、凍結融解傷害を加えた。比較のため、さらなるラットを同一の方法で並行して処理し、ビヒクル、すなわち15%エタノールのみでペプチドを有さないPBSで処理した。さらに、何れの凍結融解傷害にもさらされていない正常ラットを、AF−16を有するポンプを埋め込んだ非損傷ラットと同様に、参照のために使用した。
【0110】
凍結傷害後にAF−16で2週間処置されたラットは、傷害しているがビヒクルで処理されたものと比較して、浮腫及び炎症をほとんど示さなかった。耳中の傷害を受けた弾性軟骨と隣接する何れかの側で、新たな硝子質軟骨の形成があった。AF−16処置したラットは、2週目で残りの弾性軟骨に壊死がほとんど残っていなく、囲んでいる硝子質軟骨の顕著な形成がほとんどなく、浮腫及び炎症細胞の浸潤がほとんどなかった。コラーゲン量及び炎症細胞密度は、ビヒクルを与えたものと比較して、AF−16処置された動物において低下した。ビヒクル又はAF−16の何れかによる非損傷ラットの処置は、耳の構造を変化させなかった。
【0111】
傷害を受けた皮膚及びその下にある軟骨に関する治癒プロセスの最終結果は、動物をAF−16で処置した場合、より有益であり、瘢痕組織の形成をほとんどもたらさなかったと結論付けられた。凍結傷害は、AF−16を投与したもので観察されるものと比較して、ビヒクル処理された耳における傷害を受けた領域の細胞中のカベオラの数を非常により顕著に減少させた。
【0112】
実施例4
AF−16の投与が、傷害を受けた皮膚及び骨膜の治癒プロセスに影響を及ぼすかどうかに関して、成体ウサギにより調査した。
【0113】
麻酔した成体ニュージーランドアルビノウサギ(雌、体重2.5〜2.8kg)に対し、ガラス繊維で補強されたプラスチック製のヘルメットを、外科的に露出された頭蓋骨に接着した。ウサギには、AF−16又はビヒクルの何れかを、辺縁の耳の静脈中に静脈内注射した。AF−16の用量は、日毎2回で、体重kgあたり最高5mgであった。耳における頭頂部の皮膚創傷及び注射部位を、1週間後に肉眼で調査した。次に、両領域から検体を摘出し、光学顕微鏡による検討のために、固定、包埋、切片化及び染色によって調製した。AF−16による処置は、治癒中の皮膚に浮腫の広まりがほとんどなく、さらに、炎症がほとんどなく、ビヒクル処理した動物由来の対応する検体において証明可能な顕著な肥大性の瘢痕組織がほとんど欠失していた。光学顕微鏡による観察で、AF−16で処置した動物由来の検体では、ビヒクル処理されたものと比較して炎症細胞が少なく、コラーゲンが少ないことを確認した。さらに、AF−16処置された動物由来の検体において、血管は、より成熟しているように見えた。
【0114】
AF−16は、皮膚の深い傷の治癒を改善し、もしそれがなければ特徴付けられた炎症及び浮腫の広まり及び過剰な瘢痕組織を軽減したと結論付けられた。AF処置は、ビヒクル処理されたもののうちで観察されるよりもカベオラの低下した頻度を正常にするように見えた。
【0115】
実施例5
実験的に誘発された胃の創傷の治癒が、AF−16の投与によって影響されるかどうかに関して、成体ラットで調査した。
【0116】
麻酔したラットの背中に、浸透圧小型ポンプ(Alzet2001型;充填容積〜235μL;汲み上げ速度〜1μL/時;プレ開始で;15%エタノールの添加されたPBS中に溶解したAF−16の20mg/mLを含有する充填溶液)を皮下的に埋め込んだ。さらに、ポンプの埋め込み直後に、2mgのAF−16を筋肉内注射した。その後、腹部を剃毛し、腹壁を外科的に開いた。胃を確認し、その腹側面を露出し、隣接する異なる器官及び構造が乾燥し又は機械的に傷害されないよう細心の注意を払った。次に、胃の腺の(遠位の)部分の腹側面を、ガラス管中に収容した80%酢酸に60秒間曝露した。その後、ガラス管を迅速に除去し、曝露した漿膜を大量のPBSですすいだ。次に、縫合で腹部を閉じた。並行して、他のラットを同一方法で処理したが、ポンプ中にビヒクルを有し、注射したビヒクルの同一容量を投与した。1週間後、ラットをもう一度麻酔し、腹部を露出し、外科的に開いた。胃潰瘍の治癒と同様に、接着及び腹水の広まりを調査した。ビヒクルを与えたものと比べ、AF−16で処置されたラットにおいて腹腔中に流体がほとんどなかった。大網と胃、腸、脾臓及び肝臓との間の、並びに腹壁創傷に対する接着の程度は、AF−16で処置されたものにおいて、頻度及び大きさがほとんど目立たず、低下していた。光学顕微鏡により、胃壁がほとんど浮腫性ではないという肉眼的印象を確認した。胃の内側表面を覆っている内皮は、より完全かつ広範囲であり、AF−16処置後により良好に組織化されるように見えた。さらに、AF−16処置後の胃壁には、炎症細胞の浸潤がほとんどなかった。AF−16が、胃壁の創傷の治癒を改善したと結論付けられた。さらに、腹水の広まりは、腹部接着の程度及び重症度と同様に低下した。
【0117】
実施例6
別の実験において、AF−16の投与が、埋め込まれた外来材料の身体中でのバイオインテグレーション(biointegration)に影響を及ぼすかどうかを調査した。
【0118】
麻酔した成体ラットの背中に、浸透圧小型ポンプ(Alzet2001型;充填容積〜235μL;汲み上げ速度〜1μL/時;プレ開始で;15%エタノールの添加されたPBS中に溶解したAF−16の10又は20mg/mLを含有する充填溶液)を皮下的に埋め込んだ。さらに、埋め込み直後に、2mgのAF−16を筋肉内注射した。インプラントは、薄膜(1×2cm)、縫合糸及び発泡材料(0.2×0.5×1cm;増強目的)からなり、全て、分解性ポリウレタン尿素(Artelon(登録商標)、Artimplant,V.Frolunda,Swedenからの贈与として入手)から調製された。並行して、さらなるラットの背中の筋膜のすぐ真下の同一部位に同一材料を埋め込んだ。出血及び過剰な組織損傷を回避するために、できるだけ穏やかに埋め込み手法を実施した。さらに、キトサンのスポンジ及びキトサン膜(Medicarb AB,Bromma,Sweden)を、AF−16又はビヒクルの何れかで処置したラットにおいて上述のとおり埋め込んだ。10日後に検討すると、インプラントのバイオインテグレーションは、薄い染色された切片を肉眼及び光学顕微鏡の両者によって判断して、AF−16で処置された動物においてより優れていることが発見された。インプラントの境界に沿った炎症細胞及びマクロファージはほとんどなく、そしてAF−16で処置した動物から回収した発泡性インプラントに入る線維芽細胞が認められた。さらに、AF−16で処置したラットにおける皮膚創傷の治癒は、ビヒクルで処理されたものと比較して、反応性変化がほとんどなく、より成熟しているように見えた。反応性組織変化をもたらすシグナル伝達は、傷害を受けた組織の細胞の脂質ラフト及びカベオラを通じてのシグナル伝達を含むことが公知である。
【0119】
実施例7
AF−16の投与が、身体の内部器官における虚血反応に影響を及ぼすかどうかを調査するために、実験を実施した。
【0120】
麻酔した成体ラットの背中に、浸透圧小型ポンプ(Alzet2001型;充填容積〜235μL;汲み上げ速度〜1μL/時;プレ開始で;15%エタノールの添加されたPBS中に溶解したAF−16の20mg/mLを含有する充填溶液)を皮下的に埋め込んだ。さらに、ポンプの埋め込み直後に、2mgのAF−16を筋肉内注射した。腎動脈を流れる血流を40分間閉塞し、その後再循環させることによって、左腎において虚血を片側誘発させた。クランプ時間中に、右腎を外科的に摘出した。その後、傷を閉じ、動物には、鎮痛薬を与えたが、さらなる処置は行わなかった。並行して、ビヒクルを与えたがペプチドを投与しなかったさらなるラットを左腎において虚血に曝露し、右腎を摘出した。動物を4日後又は7日後の何れかでもう一度麻酔した。光学顕微鏡のためのさらなる処理のために、腎臓を分離し、検査し、寸法測定及び重量測定し、並びにホルマリン緩衝溶液中で固定した。
【0121】
本実験により、腎臓の虚血性及び反応性変化が、近位尿細管において最も顕著であることが明らかになった。AF−16で処置したものにおいては出血及び壊死がほとんどなかった。
【0122】
実施例8
新生物性腫瘍を用いて実験を実施し、新生物性腫瘍の増殖が、AF−16による処置によって影響を受けるかどうかに関して調査した。
【0123】
麻酔した成体ラットの背中に、浸透圧小型ポンプ(Alzet2001型;充填容積〜235μL;汲み上げ速度〜1μL/時;プレ開始で;15%エタノールの添加されたPBS中に溶解したAF−16の20mg/mLを含有する充填溶液)を皮下的に埋め込んだ。さらに、ポンプの埋め込み直後に、2mgのAF−16を筋肉内注射した。1週間に1回、ポンプを新しいものと交換した。ビヒクルによる処理と比較して、AF−16投与による効果に関して、化学的に誘発し又は移植された異なる腫瘍で調査した。
【0124】
発癌性化学物質を与えたラットは、ビヒクル処理と比較して、AF−16による処置後では、より小さな乳腺腫瘍をより低頻度でしか発症しなかった。反応性及び炎症性変化は、同様に、あまり目立たなかった。さらなる実験腫瘍を同様に調査し、ビヒクルと比較してAF−16で処置されたものにおいて有益な効果が達成された。
【0125】
実施例9
ストレプトゾシンによる処理によって引き起こされる実験的に誘発された糖尿病を有するラットを使用して、実験を実施し、AF−16による処置によって影響を受けるかどうかに関して調査した。
【0126】
麻酔した成体ラットの背中に、浸透圧小型ポンプ(Alzet2001型;充填容積〜235μL;汲み上げ速度〜1μL/時;プレ開始で;15%エタノールの添加されたPBS中に溶解したAF−16の20mg/mLを含有する充填溶液)を皮下的に埋め込んだ。比較のため、さらなるラットをビヒクルで処置したが、ペプチドでは処置しなかった。ストレプトゾシン(Sigma)の単回用量をラットに注射し、尿中のグルコースの出現を市販のスティックでチェックし、尿の上昇した容量の出現を観察した。
【0127】
AF−16による処置は、本発明者の予備的な結果に従って、尿中グルコースの損失を低下させ、尿の容量も低下させた。血中グルコース値は、AF−16後により低いように見えた。
【0128】
従って、AF−16は、化学的に誘発された糖尿病での症状の発症に対して有益な効果を発揮した。
【0129】
実施例10
II型糖尿病を罹患しているヒト被験者に投与されたAFを使用して、実験を実施した。研究は、医師及び患者に対して盲検とした。患者は全員、II型糖尿病を有しており、University Hospital in Lund,Swedenで糖尿病以外の他の疾患の有病率に関して全員、完全に調査された。地域の委員会は、倫理許可を授与した。x名の被験者の1群は、AFを投与するのに対し、比較のための第二群におけるx名の被験者は、対照物質の同一量を投与した。12週間後、血液試料を採取し、分析した。
【0130】
観察すべき結果は、非活性溶液を投与したものと比較して、AFを投与したものに関して、HbA1cのレベルが、0.2単位ほど有意に低下する(p≧0.05)ことであった。このことは、AFを投与した被験者の血中グルコースレベルが、比較(プラセボ)群におけるものについての状態と比較して、より低レベルのままであり、より良好にコントロールされることを意味した。従って、II型糖尿病の最終結果に関する有益な効果が、AFを投与した被験者に関して達成された。
【0131】
実施例11
カルシウムイオン濃度における振動性変化は、脳、脊髄及び網膜中に広く認められる多くの種類の細胞、例えばニューロン、及び星状膠細胞における、シグナル伝達機構の重要な部分を構成する。さらに、膵臓β細胞等の内分泌細胞は、拍動性のインスリン分泌を有することが明らかにされている。内分泌性の膵臓細胞は、例えばグルコースの取り込み時のイオン変化と関連していることも示されている。カルシウムイオンの星状膠細胞の振動のわずかな障害は、例えば、それ自体が、炎症性サイトカインの生成、星状膠細胞の腫脹を伴う局所的なミクログリア細胞の活性化に至り得る細胞外グルタメートの調節を障害し、このような腫脹に起因して、細胞外空間を減少させ、及び最終的には脳の損傷をもたらし得ると考えられている。これらの状態の間では、グルタメートの放出及びニューロン性伝達の両者の低下が存在する。暫定的に、脳におけるこのような低下した伝達及び障害された活性は、神経系の機能障害並びに病理学的精神神経学的活性及び性能と相関しているようである。
【0132】
神経組織の星状膠細胞におけるカルシウムイオン振動を例証するために、実験を実施した。刺激薬、例えばヒスタミン及び/又はモノアミン作動性伝達物質によって振動を誘発し、AF等の特異的タンパク質による活性をモニターする可能性を評価した。その蛍光が細胞内カルシウムイオン濃度と共に定量的及び定性的に変動する、カルシウム結合化合物を用いて、カルシウムイオンの局所的な濃度が明らかにされる。インビトロで主として培養されたニューロンの星状膠細胞の蛍光顕微鏡及び共焦点走査顕微鏡を利用した。さらなる電気生理学的アプローチを使用した。AFの特定の濃度を細胞に添加し、これにより、細胞中の脂質ラフトに局在されるイオン輸送体系に及ぼす効果を評価した。
【0133】
さらに、AF及び関連化合物の添加前、添加時及び添加後の細胞質中でのカルシウムイオン振動の広まり、頻度及び振幅に関して、種々のタイプの筋肉細胞及び結合組織細胞を同様に評価した。
【0134】
典型的な図1に見られ得るように、細胞、組織及び/又は器官中のカルシウム振動の監視は、シグナル伝達事象の機能障害、及び正常化における援助の監視を可能にした。それにより、機能障害及び疾患の治療が可能であった。
【0135】
実施例12
アクアポリンは、膜に組み込まれたタンパク質の1ファミリーであり、全ての生細胞及び生物体において発現した。アクアポリンの主要な機能は、細胞内への及び細胞外への、すなわち細胞の細胞質と細胞外環境との間の水の流れを制御することである。各種の細胞、組織及び器官は、特徴的な分布パターンを有する一組のそれらの特異的なアクアポリンを有している。機能的アクアポリンは、脂質ラフト及びカベオラ中で優先的にクラスター形成されるのに対し、サブユニット及び解離したアクアポリン複合体は、これらの膜構成成分の外側で証明可能であり得た。
【0136】
脳及び脊髄に関して実施される実験は、虚血又は歪み及び機械的負荷へ曝露される場合、アクアポリン、主としてアクアポリン1及びアクアポリン4の発現及び分布が変化することを明らかにした。さらに、脳及び脊髄感染、例えば脳炎時に、これら2つのアクアポリンの分布及び強度のパターンは、免疫組織化学及び免疫化学で明らかにして、変化した。例えば、ニューロン及び支持するグリア細胞と血管構造との間の相互作用は、入り組んでおりかつ複雑であるが、重要であるように思われる。
【0137】
実験で、外傷、感染及び他の病理学的状態の効果に関してより詳細にマッピングを実施した。AFタンパク質、ペプチド、誘導体及び相同体による処置は、局所的に及び全身的に投与され、単回用量として又は複数回の適用によって、又は慢性的に、すなわち治療される対象(subject)の余命の間に送達された。効果は、定量的及び定性的に特徴付けられ、身体の種々のアクアポリンの構造および機能に及ぼす効果の重要性が特徴付けられた。本実験は、イオンチャネル複合体がアクアポリンと相互作用するアクアポリン及びイオンチャネル複合体の広まり、分布及び活性をモニターし及び正常化さえする上で、AFが、大きな影響を有することを示した。それにより、新たな及び重要な治療アプローチを、達成された結果に基づいて開発することができた。
【0138】
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21. WO 05/030246
22. WO 98/21978
23. WO 00/038535
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】欠損GABA受容体を有する細胞中の細胞膜における電位差を示す。ヒスタミン又はAF−16を添加し、これらの化合物の効果を、I/Ioで測定される細胞膜の電位で測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞膜における脂質ラフト、受容体及び/又はカベオラの機能障害の治療及び/又は予防のための医薬組成物を製造するための、抗分泌性タンパク質、抗分泌性活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片、及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩の使用。
【請求項2】
細胞膜中の脂質ラフト、受容体及び/又はカベオラの機能障害が、異常な、不十分な機能低下及び機能亢進からなる群より選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
血管性の機能障害の治療及び/又は予防のための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
心血管系の機能障害の治療及び/又は予防のための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
肺の機能障害の治療及び/又は予防のための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項6】
糖尿病及び糖尿病と関連した合併症の治療及び/又は予防のための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項7】
瘢痕組織の形成の治療及び/又は予防、組織及び器官の修復、過剰な組織の反応性形成及び/又は上皮細胞被覆の修復及び再生のための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項8】
哺乳動物内に埋め込まれた外来材料の改善されたバイオインテグレーションを促進するための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項9】
細胞及び組織の過形成及び/又は肥大の治療及び/又は予防のための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項10】
心筋症及び肺障害の治療及び/又は予防のための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項11】
腫瘍及びその合併症の治療及び/又は予防のための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項12】
内分泌及び外分泌の腺及び組織の機能障害及び疾患の治療及び/又は予防のための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項13】
抗分泌性タンパク質が、次式
X1−V−C−X2−X3−K−X4−R−X5
に従った配列からなり、式中、X1が、Iであり、配列番号6のアミノ酸1〜35であり、又は欠失しており、X2が、H、R又はKであり、X3が、S又はLであり、X4が、T又はAであり、X5が、配列番号6のアミノ酸43〜46、43〜51、43〜80又は43〜163であり、又は欠失している、請求項1〜12の何れか一項に記載の使用。
【請求項14】
医薬組成物が、2つ又はそれ以上の抗分泌性タンパク質を含む、請求項1〜13の何れか一項に記載の使用。
【請求項15】
医薬組成物が、医薬的に許容される添加剤をさらに含む、請求項1〜14の何れか一項に記載の使用。
【請求項16】
医薬組成物が、眼内、鼻腔内、経口、局所、皮下及び/又は全身投与のために製剤化される、請求項1〜15の何れか一項に記載の使用。
【請求項17】
医薬組成物が、スプレー、エアゾールとして、吸入器により又は噴霧器により投与するために製剤化される、請求項1〜16の何れか一項に記載の使用。
【請求項18】
医薬組成物及び/又は医療用食品が、1回の適用及び体重kg及び1日あたり、0.1μg〜10mgの用量で、好ましくは、1回の適用及び体重kg及び1日あたり1〜1000μgで血液に全身投与するために製剤化される、請求項1〜12の何れか一項に記載の使用。
【請求項19】
投与が、単回用量として又は日毎で複数回の適用としての何れかで実施される、請求項1〜18の何れか一項に記載の使用。
【請求項20】
脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害と関連した状態の治療及び/又は予防的治療のための方法であって、ここで抗分泌性タンパク質、同様の活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片、及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩、又は抗分泌性タンパク質、同様の活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩を含む医薬組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与する、上記方法。
【請求項21】
哺乳動物における脂質ラフト及び/又はカベオラの機能障害を治療及び/又は予防に使用するための、抗分泌性タンパク質、同様の活性を有するその誘導体、相同体及び/又は断片、及び/又は医薬的に活性のあるそれらの塩。

【図1】
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【公表番号】特表2009−535330(P2009−535330A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507637(P2009−507637)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000415
【国際公開番号】WO2007/126365
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(508318845)ラントメネン・アーエス−ファクトール・アーベー (6)
【Fターム(参考)】