説明

脆弱な堆積膜厚の確認ラベル

【課題】脆弱な堆積膜厚さをリアルタイムで確認できるとともに、指示模様状態と作業の対応状況を証拠として記録保存できる、脆弱な堆積膜厚の確認ラベルを提供する。
【解決手段】表面に作業記録記入欄14が形成され、裏面に再剥離を可能とする第1粘着剤層が形成されたラベル本体3と、裏面に再剥離を可能とする第2粘着剤層が形成され、ラベル本体に着脱自在に接着されてラベル本体の作業記録記入欄を被覆するカバーシール5を備えている。ラベル本体は、表面にグラデ−ションパターン15が形成され、グラデ−ションパターン欄は明度差変化によって形成される濃淡勾配をもち、グラデーションパターン欄の濃淡勾配の勾配位置を段階的に表示する基準表示部17をグラデ−ションパターン欄に複数個設け、基準表示部の段階を表示する識別符号18を基準表示部に付している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆弱な堆積膜厚の確認ラベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種部材や機器・設備の表面にある傷(きず)、微細な割れ、ピンホールのような表面に開口してある欠陥の検査方法として浸透探傷試験法が知られている。その検査方法については、JIS Z-2343-1 2001に規定され、通常は、次のような方法で検査が行なわれる。
(1)検査体(被試験体)に予測される欠陥の種類、大きさ、表面粗さ、寸法、数量などから試験手順を検討する。
(2)検査体表面の汚れ、ゴミ等を除去し、欠陥部位を開口させてから、刷毛、スプレー等を用いて浸透液を欠陥部に十分浸透させる。
(3)欠陥部に浸透した浸透液以外の検査体表面に存在する余剰の浸透液を除去する。
(4)現像剤を均一に塗布することにより、欠陥部に残留する浸透液を吸い上げ出現する指示模様を目視によって観察する。
【0003】
浸透探傷試験では、現像剤を均質な状態に維持し検査面に一様に塗布しなければならず、現像剤の適用は余剰浸透液の除去後、規定時間内に速やかに実施する必要がある。
【0004】
浸透探傷試験に用いる速乾性現像剤で形成される塗布膜は、炭酸カルシウム、シリカ等白色で反射率の高い現像主剤の微粒子粉体の積層により形成されているので、固着力が小さく崩れやすい状態にあり直接計測器を接触して厚さを測定することは困難である。このように、現像剤で形成される塗布膜は非常に脆弱であることから、その塗布膜厚さは非接触で確認するほかなく、また、現像剤には各社製品差があり使用する現像剤の特性を把握しておく必要がある。
【0005】
浸透探傷試験における速乾性現像剤の塗布作業は、検査体(被試験体)の材質、下地状態のほか温度やスプレー距離で塗布膜厚さや堆積密度などの成形状態が変わる。とくに目視によって現像剤を均一適量塗布する作業は難しく相当の技量を要し、観察判断に直接影響することからNDT(Non-destructive-testing:非破壊試験)技術者の技量を示す最も重要な作業である。この点、光線透過率が高く表面反射も大きい速乾性の現像剤を塗布する場合には、ステンレスのように輝きのある面と黒皮鋼板や鋳物のようにくすんだ面では現像剤の膜厚変化を目視によって判断し、同じ塗布膜厚さに仕上げることは熟練者にとっても困難性を伴う作業となる。
【0006】
このため、作業者や環境が変わっても現像剤の塗布膜厚さを予め決められた目標とする膜厚に反復形成できる、浸透探傷試験の現像剤塗布作業における適正にして簡易な指標(手段)の出現が望まれている。
【0007】
従来、欠陥指示模様の色調を著しく濃くし、かつ指示模様の色褪せを少なくした浸透探傷試験用速乾式乾燥剤や(特許文献1)、分散媒に対する粉末の比率を2〜7%とした現像液を、現像液量30〜40%でガス量60〜70%として、噴霧用ガスとともにスプレー缶に封入し、先端にスプレーノズルを突設した浸透探傷用手段(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−298104号公報
【特許文献2】特開平5−346409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2にあっては、依然として
(1)
浸透探傷試験の現像剤塗布作業中に塗膜厚さをリアルタイムで確認できない;
(2)
浸透探傷試験手順の現像剤塗布作業における従来の規定等では、適正にして簡易な指標とはならない;
(3)
浸透探傷試験に用いる現像剤には製品差があり塗布量は一定しないため塗布斑が生じやすい;
(4)現像剤の塗布作業時の温度・吹き付け距離・試験面の位置角度など、作業環境によって現像剤の堆積密度や塗布膜厚さに違いが出る;
(5)他の者による現像状態の確認ができない他、現像剤の膜厚状態を写真などにより証拠として記録できない;
等の問題点が指摘されていた。
【0010】
したがって、本発明の目的は、脆弱な(固着力が小さく崩れやすい)堆積膜厚さをリアルタイムで確認できるとともに、指示模様状態と作業の対応状況を証拠として記録保存できる、脆弱な堆積膜厚の確認ラベルを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、基準表示部に付された識別符号を目安に塗布剤の塗布作業を行なうことにより、作業者や環境が変わっても塗布剤の塗布膜厚さを予め決められた目標とする均一な膜厚で安定して反復形成でき、塗布作業における適正にして簡易な指標となる、脆弱な堆積膜厚の確認ラベルを提供することにある。
【0012】
本発明のもう一つ他の目的は、光線透過率の高い速乾性の塗布剤を塗布する場合においても、目視にて塗布剤を一定の塗布膜厚に仕上げることを可能とする、脆弱な堆積膜厚の確認ラベルを提供することにある。
【0013】
本発明のさらにもう一つ他の目的は、明度差基準となるグラデ−ションパターン欄に形成した基準表示部を示す識別符号を目安に塗布作業を行なうことにより、作業者や作業環境が変わっても目標とする膜厚で塗布剤を塗布することを可能とする、脆弱な堆積膜厚の確認ラベルを提供することにある。
【0014】
本発明のさらにもう一つ他の目的は、製品差のある塗布剤の塗布斑を回避できる、脆弱な堆積膜厚の確認ラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る脆弱な堆積膜厚の確認ラベルは、表面に作業記録記入欄が形成され、裏面に再剥離を可能とする第1粘着剤層が形成されたラベル本体と、裏面に再剥離を可能とする第2粘着剤層が形成され、前記ラベル本体に着脱自在に接着されて前記ラベル本体の前記作業記録記入欄を被覆するカバーシールを備え、前記ラベル本体は、表面にグラデ−ションパターン欄が形成され、該グラデ−ションパターン欄は明度差変化によって形成される濃淡勾配をもち、前記グラデーションパターン欄の濃淡勾配の勾配位置を段階的に表示する基準表示部を前記グラデ−ションパターン欄に複数個設け、前記基準表示部の段階を表示する識別符号を前記基準表示部に付したことを特徴としている。
【0016】
前記ラベル本体は、薄く柔軟性のある部材、例えば、紙、金属箔、樹脂フィルムにより形成され、ラベル本体の表面は安定した反射率を持って形成されている。ラベル本体の表面には、無彩色または有彩色(複数の色彩を含む)により、明度差変化を有する前記グラデーションパターン欄が印刷され、その明度差変化の勾配位置を段階的に表示する前記基準表示部を一定明度を持って複数本設けている。
【0017】
塗布剤等の堆積厚さによる表面反射と隠蔽力(本明細書中において「隠蔽力」とは堆積した塗布剤等の膜厚により基準表示部を隠蔽することをいう。以下同じ。)変化に比例して、グラデーションパターン欄の基準表示部を順次隠蔽することによりグラデーションパターン欄と基準表示部間の色差が少ない側から大きい順に隠れる視覚的位置変化を利用して塗布作業(例えば、浸透探傷試験における現像剤塗布作業)等の目安とする。
【0018】
さらに、探傷試験の作業ラベルとして使用できるように、検査体表面の欠陥の種類、寸法、形状等により現われる指示模様と比較照合する比較マーク欄を前記グラデ−ションパターン欄の隣接部位に形成することができる。
【0019】
前記基準表示部は、直線、円周、ドット、図形、記号等のマークから選ばれた一種を用いて形成され、かつ同一の太さ、濃度、大きさにより形成される。
【0020】
前記グラデ−ションパターン欄の濃淡勾配は上下方向に形成することができる。
【0021】
前記グラデ−ションパターン欄の濃淡勾配は同心円方向に形成してもよい。
【0022】
前記基準表示部は、前記該グラデーションパターン欄の濃淡勾配が上下方向に形成される場合には、濃淡勾配方向と直交する方向に平行に設けた複数本の直線、ドットラインにより形成することができる。
【0023】
前記基準表示部は、前記該グラデーションパターン欄の濃淡勾配が同心円方向に形成される場合には、濃淡勾配方向に設けた半径の異なる同心円により形成することもできる。
【0024】
脆弱な堆積膜厚の確認ラベルは、表面に作業記録記入欄が形成され、裏面に再剥離を可能とする第1粘着剤層が形成されたラベル本体と、裏面に再剥離を可能とする第2粘着剤層が形成され、前記ラベル本体に着脱自在に接着されて前記ラベル本体の前記作業記録記入欄を被覆するカバーシールを備え、前記ラベル本体は、表面にグラデ−ションパターン欄が形成され、該グラデ−ションパターン欄は明度差変化によって形成される濃淡勾配をもち、前記グラデーションパターン欄の濃淡勾配の勾配位置を段階的に表示する基準表示部を等間隔で前記グラデ−ションパターン欄に複数個設け、前記基準表示部の段階を表示する識別符号を前記基準表示部に付し、検査体表面の欠陥の種類、寸法、形状等により現われる指示模様と比較照合する比較マーク欄を設けて形成することもできる。
【0025】
脆弱な堆積膜厚の確認ラベルを使用するに当っては、現像剤の塗布作業の後に目標とするラベル本体に隠蔽された前記基準表示部に付される前記識別符号と前記比較マーク欄の現像剤を払拭し検査結果とともに現像状態を写真等で記録保存することが適当である。
【発明の効果】
【0026】
上記構成を備えた本発明によれば次の効果を奏する。
(1)
脆弱な堆積膜厚をリアルタイムで確認できるとともに、指示模様状態と作業の対応状況を証拠として記録保存できる、脆弱な堆積膜厚の確認ラベルが得られる。
(2)
基準表示部に付された識別符号を目安に塗布剤の塗布作業を行なうことにより、作業者や環境が変わっても塗布剤の塗布膜厚さを予め決められた目標とする均一な膜厚で安定して反復形成でき、塗布剤の塗布作業における適正にして簡易な指標となる、脆弱な堆積膜厚の確認ラベルが得られる。
(3)
非熟練者が、光線透過率が高く表面反射も大きい速乾性の塗布剤を塗布する場合においても、目視にて脆弱な塗布剤を一定の塗布膜厚に仕上げることを可能とする、脆弱な堆積膜厚の確認ラベルが得られる。
(4)
明度差基準となるグラデ−ションパターン欄に形成した基準表示部を示す識別符号を目安に塗布作業を行なうことにより目標とする膜厚で塗布剤を塗布することを可能とする、脆弱な堆積膜厚の確認ラベルが得られる。
(5)
製品差のある塗布剤の塗布斑を回避できる、脆弱な堆積膜厚の確認ラベルが得られる。
(6)塗布作業の結果を記録することができ塗布作業の信頼性が向上する、脆弱な堆積膜厚の確認ラベルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る脆弱な堆積膜厚の確認ラベルを、浸透探傷試験の際に塗布する現像剤の塗布作業ラベルとして形成したラベルの正面図である。
【図2】図1に示す現像剤塗布作業ラベルを構成するカバーシールを剥離した状態を示す正面図である。
【図3】現像剤塗布作業ラベルの側面拡大略図である。
【図4】現像剤塗布作業ラベルが第1粘着剤層と第2粘着剤層を有していることを示す部分拡大略図である。
【図5】現像剤塗布作業ラベルからセパレータを分離している状態を示す斜視図である。
【図6】現像剤塗布作業ラベルの使用状態を示し、検査体に現像剤塗布作業ラベル3枚を3次元方向に貼付した状態を示す斜視図である。
【図7】現像剤塗布作業ラベルに現像剤を塗布している状態を示す斜視図である。
【図8】現像剤塗布作業ラベルのカバーシールを剥がし作業記録記入欄に作業内容を記入している状態を示す斜視図である。
【図9】現像剤塗布作業ラベルに現像剤を塗布し、基準表示部に付された識別符号「3」以下の基準表示部が現像剤にて隠蔽されていることを示す斜視図であり、識別符号「4」と比較マーク欄の現像剤を拭き取った状態を示す図である。
【図10】現像剤塗布作業ラベル4枚を検査体の検査部位に十字に配置した使用状態を示す平面図である。
【図11】現像剤塗布作業ラベル8枚を検査体の検査部位に放射状に配置した使用状態を示す平面図である。
【図12】現像剤塗布作業ラベル2枚を検査体である配管フランジの曲面に貼り付けた状態を示す斜視図である。
【図13】検査体における異方向の塗布誤差を確認するため、現像剤塗布作業ラベルを異方向に2枚貼り付けた状態を示す斜視図である。
【図14】現像剤塗布作業ラベルの他の例を示す正面図である。
【図15】図14に示す現像剤塗布作業ラベルを構成するカバーシールを剥離した状態を示す正面図である。
【図16】現像剤塗布作業ラベルの他の例を示す正面図である。
【図17】図16に示す現像剤塗布作業ラベルを構成するカバーシールの一部を剥離した状態を示す正面図である。
【図18】図16に示す現像剤塗布作業ラベルを構成するカバーシールを剥離した状態を示す正面図である。
【図19】現像剤塗布作業ラベルの他の例を示す正面図である。
【図20】図19に示す現像剤塗布作業ラベルを構成するカバーシールを剥離した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0028】
本願に係る確認ラベルは脆弱な堆積物の厚さ測定に利用でき、浸透探傷試験現像剤の塗布膜厚さを目視で正確均一に形成する探傷試験用のラベルとしてばかりでなく、脆弱な堆積物の厚さを測定することにより、液体やガス機器類の漏れ検査現像剤塗布用ゲージ、速乾式現像剤と同様な圧縮ガス利用による塗料のスプレーや静電気による粉体塗料塗布作業の塗布膜厚さ目安ゲージ、粉塵の堆積厚さによる粉塵量の測定や空気清浄機フィルタの目詰まり状態指示ゲージ等として利用できる。
【0029】
以下に、本願に係る脆弱な堆積膜厚の確認ラベルを現像剤塗布作業ラベルに適用した例について図面を用いて説明する。
【0030】
(実施例1)
現像剤塗布作業ラベルを使用するに当り、本ラベルで予め使用する現像剤を用いて塗布量の予備試験を行い、当該現像剤の最適塗布膜厚さを指示する基準表示部を決定し、「現像剤の塗布特性確認」を行なう。
【0031】
図1乃至図4おいて、現像剤塗布作業ラベル1は、ラベル本体3とカバーシール5より構成される。
【0032】
前記ラベル本体3は、表面11の上部に作業記録記入欄14が形成され、裏面12に再剥離を可能とする第1粘着剤層13が形成されている。前記ラベル本体3は、表面の中央にグラデ−ションパターン欄15が形成され、該グラデ−ションパターン欄15は明度差変化によって形成される濃淡勾配をもって形成されている。前記グラデーションパターン欄の濃淡勾配の勾配位置を段階的に表示する基準表示部17が前記グラデ−ションパターン欄に等間隔L1を持って複数個設けている(図3参照)。また、前記基準表示部17の段階を表示する識別符号18を前記基準表示部17に付して形成している。符号7は第1粘着剤層13に接着しているセパレータである。
【0033】
前記ラベル本体3は柔軟性のあるフィルム材により形成され、該フィルム材は一定の反射率を持ち、このフィルム材の表面に、無彩色または有彩色(複数の色彩を含む)により、明度差変化を有する前記グラデーションパターン欄15が印刷され、その明度差変化の勾配位置を段階的に表示する前記基準表示部17を一定明度を持って8本設けている。
【0034】
かくして、塗布剤等の堆積厚さによる表面反射と隠蔽力変化に比例して、前記グラデーションパターン欄15の基準表示部17を順次隠蔽することによりグラデーションパターン欄と基準表示部間の色差が少ない側から大きい順に隠れる視覚的位置変化を利用して現像剤塗布作業の目安とする。
【0035】
さらに、探傷試験の現像剤塗布作業ラベルとして使用できるように、検査体表面の欠陥の種類、寸法、形状等により現われる指示模様と比較照合する比較マーク欄19を前記グラデ−ションパターン欄15の下部に形成してある。該比較マーク欄19は、割れによらない線状浸透指示模様と対比する8種類の対比欄を備えて形成される。すなわち、線幅と長さの比を1対3として形成し、「0.5」「1」「1.5」「2」「2.5」「3」「4」「5」の番号を付してある、
「0.5」(=0.5×1.5mm)
「1」(=1×3mm)
「1.5」(=1.5×4.5mm)
「2」(=2×6mm)
「2.5」(=2.5×7.5mm)
「3」(=3×9mm)
「4」(=4×12.5mm)
「5」(=5×15mm)
の横長の8種類のブランクにより形成した線状浸透指示模様対比欄19aを備えている。なお、「0.5」「1」「1.5」「2」「2.5」「3」「4」「5」の各線状浸透指示模様対比欄より小さい浸透指示模様は円形状浸透指示模様として浸透指示模様および傷を決定する。符号19bは、前記比較マーク欄19の下欄に形成された距離目盛りであり、この距離目盛り19bは、連続浸透指示模様として分類時の最小間隔2ミリ単位で形成され、指示模様と傷の大きさの測定に用いる。
【0036】
前記基準表示部17は、同一の太さ、濃度、長さの直線により形成されている。
【0037】
前記グラデ−ションパターン欄15の濃淡勾配は図1の上下方向に形成され、図1におけるX−Y方向を濃淡方向として形成され、前記基準表示部は、前記グラデ−ションパターン欄の濃淡勾配方向(図1のX−Y方向)と直交する方向に等間隔にして平行に設けた8本の直線により形成される。
【0038】
前記カバーシール5は、裏面22に再剥離可能な粘着剤層23が形成され、前記ラベル3の表面11の上部に着脱自在に接着され、前記ラベル3の前記作業記録記入欄14を被覆する。符号21aは表面21の右上部に形成した摘み部であり、この摘み部21aを摘んで前記カバーシール5を前記ラベル3より引き剥がす。
【0039】
前記作業記録記入欄14は、作業箇所(例えば、「タンク下側」)や部品名等を記入するのに適する「Work欄」14a、検査部位(例えば、「R−7」)や位置等を記入するのに適する「Place欄」14b、検査部位の補助番号・ラベルのロット番号(例えば、「123456」)・現像時間等を記入するのに適する「No.欄」14cを備えている(図2、図8、図9)。記入内容は受渡しを行なう当事者間で決定した内容とする。
【0040】
(塗布作業ラベルの使用方法)
(1)
使用する現像剤の特性の確認(塗布特性の確認):
使用する現像剤の特性を予め(前もって)確認しておく。浸透探傷試験に用いる現像剤には各社製品差があり塗布量は一定しない。このため、一枚の塗布作業ラベル1で予め使用する現像剤の塗布量の予備試験を行い[現像剤を一定回数スプレーした場合にどの基準表示部(8本のラインのうちのどのライン)までが隠蔽するかを確認し、当該現像剤の最適塗布膜厚さを指示する基準表示部の識別番号を決定することにより、当該現像剤の特性確認を行なう。現像剤は、製品の種類や作業温度などによって塗布膜の成形状態が異なる。使用する現像剤の種類や作業環境が変わった場合には、「塗布特性確認」をあらためて実施して新たに基準表示部(の位置)を決定する。特性確認後にはじめて次の(2)以下の浸透探傷試験に入る。
(2)前処理:
スクレーバーやエッチングにより検査部位の表面の汚れを除去し、洗浄液により探傷を探る部位の脱脂洗浄を行う。
(3)浸透処理:
浸透液(染色浸透探傷剤)をスプレーまたは筆塗りして、規定の浸透時間まで静置する。
(4)余剰浸透液の除去:
ウエスやペーパータオルを使用し検査部位の表面の余剰浸透液を拭う。さらに、表面の汚れを拭取り乾燥させる。
(5)現像作業の準備:
塗布作業ラベルをセパレータより剥離しながら検査部位近くに必要枚数貼り付ける(図5、図6、図10〜図13)。カバーシール5を剥がし、作業記録記入欄14に必要事項(作業箇所、検査部位等)を記入し、再びカバーシール5で作業記録記入欄14を被覆(カバー)する。
(6)現像剤の塗布:
検査部位と塗布作業ラベルに、規定の基準表示部が隠蔽するまで現像剤をスプレーしてから所定の現像時間静置する(図6、図7)。この場合、基準表示部17を見ながら検査部位と塗布作業ラベルに現像剤を均一にスプレーする。現像剤の塗布量は、上記(1)の特性確認試験において予め決定(規定)した基準表示部17が隠れる位置で判断する。現像剤の種類・作業温度・スプレー距離が塗布膜厚さに影響することに配慮しながら、現像剤に含まれる溶剤の気化を確認して繰り返し作業を行なう。
(7)現像待ち時間中に、カバーシールを剥がし、作業記録記入欄14に記録がない場合には試験内容などの必要事項(作業箇所、検査部位、検査部位の補助番号乃至ラベルのロット番号等)を記入する(図9)。
(8)目標の塗布レベルにおいて隠蔽された基準表示部17の識別符号(ここでは隠蔽された識別符号「3」の基準表示部17の直上にあたる基準表示部17識別符号「4」の数字のみ)と比較マーク蘭の現像剤を拭い取り、写真写りが良くなるよう配慮する(図9)。
(9)観察:
規定の現像時間経過後、直ちに現像剤塗布面に現われた傷による浸透指示模様を観察する。
(10)写真撮影・記録:
検査部位と塗布作業ラベルを1カットに含めて写真撮影して検査部位の欠陥状態・現像剤の膜厚状態を撮影し、写真を観察結果報告書に記録または添付する。
(11)かくして、本ラベルを数値化指標として用いて塗布作業を管理記録する。
【0041】
検査体(被試験物体)表面の観察では次の点が肝要である。
(1)現像剤塗布から観察するまで規定の待ち時間をとること;
(2)現像剤塗付膜の堆積厚さを規定厚さに形成すること;
(3)観察面の現像剤膜に厚さによる斑がないこと;
である。
【0042】
特に、現像剤は直接被試験体表面にごく薄く塗布しなければならない。このため被試験体表面に生じている模様や色が現像剤塗布厚さ量の判断に影響を及ぼさない様に、本発明では表面が安定した反射率を有するラベル面を基準としており、反復して現像作業を繰り返しても膜厚指示に誤差が生じ難く常に均一な現像剤塗布膜厚さを維持できる。
【0043】
現像剤の塗布膜厚に斑があると観察判断に誤りが生じるほか、塗布量が多過ぎる場合には、JIS Z 2343-1 2001の8.9項の通り再試験を行なわなければならない。この場合には、被試験物体から全ての現像剤を取り除き、再度、探傷試験手順の始めから、被試験物体表面に対し洗浄、浸透液剤塗布、余剰浸透液除去などの前処理を再び行い、現像処理工程が開始できる状態までやり直さなければならない。このように、現像作業の失敗は多くの時間と試験資材の無駄が生じることになるが、本発明では、このような作業ミスや無駄を省くことができる。
【0044】
本願の確認ラベルを、浸透探傷試験における現像剤塗布作業ラベルとした場合には、次のラベル効果が得られる。
(1)浸透探傷試験の現像剤塗布作業中に塗膜厚さをリアルタイムで確認できる、浸透探傷試験における現像剤塗布作業ラベルが得られる。
(2)基準表示部に付された識別符号(番号)を目安に現像剤の塗布作業を行なうことにより、作業者や環境が変わっても現像剤塗布膜厚さを予め決められた目標とする均一な膜厚で安定して反復形成でき、浸透探傷試験の現像剤塗布作業における適正にして簡易な指標となる、浸透探傷試験における現像剤塗布作業ラベルが得られる。
(3)非熟練者が光線透過率が高く表面反射も大きい速乾性の現像剤を塗布する場合でも目視にて現像剤を一定の塗布膜厚に仕上げることを可能とする、浸透探傷試験における現像剤塗布作業ラベルが得られる。
(4)明度差基準となるグラデ−ションパターン欄(層)に形成した基準表示部を示す識別符号を目安に塗布作業を行なうことで、作業者や作業環境が変わっても目標とする膜厚で現像剤を塗布することを可能とする、浸透探傷試験における現像剤塗布作業ラベルが得られる。
(5)製品差のある現像剤の塗布斑を回避できる、浸透探傷試験における現像剤塗布作業ラベルが得られる。
(6)現像剤の膜厚は傷の状態を判断する重要な要素であり、現像剤塗布作業ラベルと共に探傷試験の観察結果を写真等に記録することで、探傷試験の作業内容の表示、現像作業の結果、指示模様の形状とサイズが比較一覧できるなど、検査報告書等に必要な情報が写真等に記録できるので検査品質と探傷試験の信頼性が向上する。
【0045】
(実施例2)
図14、図15に現像剤塗布作業ラベルの第2の実施例を示す。
【0046】
実施例2では現像剤塗布作業ラベル51が、
(1)表面に作業記録記入欄64が形成され、裏面に再剥離を可能とする第1粘着剤層が形成されたラベル本体53と、裏面に再剥離を可能とする第2粘着剤層が形成され、ラベル本体に着脱自在に接着されてラベル本体の作業記録記入欄を被覆するカバーシール55を備えている点;
(2)ラベル本体53は、表面にグラデ−ションパターン欄65が形成され、グラデ−ションパターン欄は明度差変化によって形成される濃淡勾配をもち、グラデーションパターン欄の濃淡勾配の勾配位置を段階的に表示する基準表示部67をグラデ−ションパターン欄に複数個設けている点;、
(3)基準表示部の段階を表示する識別符号68を基準表示部に付した点;
(4)探傷試験の作業ラベルとして使用できるように、検査体表面の欠陥の種類、寸法、形状等により現われる指示模様と比較照合する比較マーク欄69をグラデ−ションパターン欄の下部に形成した点;
(5)グラデ−ションパターン欄65の濃淡勾配が上下方向に形成され、基準表示部67は、濃淡勾配方向と直交する方向に形成されている点;
(6)第1粘着剤層に接着しているセパレータ57を具備している点;
は第1の実施例と同じであるが、実施例2が
(7)基準表示部がドットラインにより形成されている点;
が第1の実施例と異なる。
【0047】
(実施例3)
図16〜図18に現像剤塗布作業ラベルの第3の実施例を示す。
【0048】
実施例3では現像剤塗布作業ラベル101が、
(1)表面に作業記録記入欄114が形成され、裏面に再剥離を可能とする第1粘着剤層が形成されたラベル本体103と、裏面に再剥離を可能とする第2粘着剤層が形成され、ラベル本体に着脱自在に接着されてラベル本体の作業記録記入欄を被覆するカバーシール105を備えている点;
(2)ラベル本体103は、表面にグラデ−ションパターン欄115が形成され、グラデ−ションパターン欄は明度差変化によって形成される濃淡勾配をもち、グラデーションパターン欄の濃淡勾配の勾配位置を段階的に表示する基準表示部117をグラデ−ションパターン欄に複数個設けている点;、
(3)基準表示部の段階を表示する識別符号118を基準表示部に付した点;
(4)探傷試験の作業ラベルとして使用できるように、検査体表面の欠陥の種類、寸法、形状等により現われる指示模様と比較照合する比較マーク欄119をグラデ−ションパターン欄の下部に形成した点;
(5)グラデ−ションパターン欄115の濃淡勾配が上下方向に形成され、基準表示部117は、濃淡勾配方向と直交する方向に形成されている点;
(6)第1粘着剤層に接着しているセパレータ107を具備している点;
は第1の実施例と同じであるが、実施例2が
(7)基準表示部が7本の平行な直線により形成され、各直線の間隔M1〜M7を、濃淡勾配が「濃」から「淡」に行くにしたがい間隔を大とした点;
が第1の実施例と異なる。
【0049】
(実施例4)
図19、図20に現像剤塗布作業ラベルの第4の実施例を示す。
【0050】
実施例4では現像剤塗布作業ラベル151が、
(1)表面に作業記録記入欄164が形成され、裏面に再剥離を可能とする第1粘着剤層が形成されたラベル本体153と、裏面に再剥離を可能とする第2粘着剤層が形成され、ラベル本体に着脱自在に接着されてラベル本体の作業記録記入欄を被覆するカバーシール155を備えている点;
(2)ラベル本体153は、表面にグラデ−ションパターン欄165が形成され、グラデ−ションパターン欄は明度差変化によって形成される濃淡勾配をもち、グラデーションパターン欄の濃淡勾配の勾配位置を段階的に表示する基準表示部167をグラデ−ションパターン欄に複数個設けている点;、
(3)基準表示部の段階を表示する識別符号168を基準表示部に付した点;
(4)探傷試験の作業ラベルとして使用できるように、検査体表面の欠陥の種類、寸法、形状等により現われる指示模様と比較照合する比較マーク欄169をグラデ−ションパターン欄の下部に形成した点;
(5)第1粘着剤層に接着しているセパレータ157を具備している点;
は第1の実施例と同じであるが、実施例4が
(6)グラデーションパターン欄の濃淡勾配が同心円方向に形成され、基準表示部が濃淡勾配方向に設けた半径の異なる同心円により形成した点;
が第1の実施例と異なる。グラデーションパターン欄は外へ行く程印影が濃く形成されている。かくして、現像剤の塗布方向を意識しなくてよく、塗布作業を円滑に行なうことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 現像剤塗布作業ラベル
3 ラベル本体
5 カバーシール
7 セパレータ
11 表面
12 裏面
13 第1粘着剤層
14 作業記録記入欄
15 グラデ−ションパターン欄
17 基準表示部
18 識別符号
19 比較マーク欄
21 表面
21a 摘み部
22 裏面
23 第2粘着剤層
51 現像剤塗布作業ラベル
53 ラベル本体
55 カバーシール
57 セパレータ
64 作業記録記入欄
65 グラデ−ションパターン欄
67 基準表示部
68 識別符号
69 比較マーク欄
101 現像剤塗布作業ラベル
103 ラベル本体
105 カバーシール
107 セパレータ
114 作業記録記入欄
115 グラデ−ションパターン欄
117 基準表示部
118 識別符号
119 比較マーク欄
151 現像剤塗布作業ラベル
153 ラベル本体
155 カバーシール
157 セパレータ
164 作業記録記入欄
165 グラデ−ションパターン欄
167 基準表示部
168 識別符号
169 比較マーク欄


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に作業記録記入欄が形成され、裏面に再剥離を可能とする第1粘着剤層が形成されたラベル本体と、
裏面に再剥離を可能とする第2粘着剤層が形成され、前記ラベル本体に着脱自在に接着されて前記ラベル本体の前記作業記録記入欄を被覆するカバーシールを備え、
前記ラベル本体は、表面にグラデ−ションパターン欄が形成され、
該グラデ−ションパターン欄は明度差変化によって形成される濃淡勾配をもち、
前記グラデーションパターン欄の濃淡勾配の勾配位置を段階的に表示する基準表示部を前記グラデ−ションパターン欄に複数個設け、
前記基準表示部の段階を表示する識別符号を前記基準表示部に付したことを特徴とする脆弱な堆積膜厚の確認ラベル。

【請求項2】
前記ラベル本体は、薄く柔軟性のある部材により形成され、前記ラベル本体の表面は安定した反射率を持って形成され、前記ラベル本体の表面には、無彩色または有彩色により、明度差変化を有する前記グラデーションパターン欄が印刷され、その明度差変化の勾配位置を段階的に表示する前記基準表示部を一定明度を持って複数本設けていることを特徴とする請求項1記載の脆弱な堆積膜厚の確認ラベル。

【請求項3】
塗布剤等の堆積厚さによる表面反射と隠蔽力変化に比例して、前記グラデーションパターン欄の前記基準表示部を順次隠蔽することにより前記グラデーションパターン欄と前記基準表示部間の色差が少ない側から大きい順に隠れる視覚的位置変化を利用して塗布作業の目安とすることを特徴とする請求項2記載の脆弱な堆積膜厚の確認ラベル。

【請求項4】
さらに、探傷試験の作業ラベルとして使用できるように、検査体表面の欠陥の種類、寸法、形状等により現われる指示模様と比較照合する比較マーク欄を前記グラデ−ションパターン欄の隣接部位に形成したことを特徴とする請求項3記載の脆弱な堆積膜厚の確認ラベル。

【請求項5】
前記基準表示部が、直線、円周、ドット、図形、記号等のマークから選ばれた一種を用いて形成され、かつ同一の太さ、濃度、大きさにより形成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか一項に記載の脆弱な堆積膜厚の確認ラベル。

【請求項6】
前記グラデ−ションパターン欄の濃淡勾配が上下方向に形成されていることを特徴とする
請求項5記載の脆弱な堆積膜厚の確認ラベル。

【請求項7】
前記グラデ−ションパターン欄の濃淡勾配が同心円方向に形成されていることを特徴とする請求項5記載の脆弱な堆積膜厚の確認ラベル。

【請求項8】
前記該グラデーションパターン欄の濃淡勾配が上下方向に形成され、前記基準表示部が前記該グラデーションパターン欄の濃淡勾配方向と直交する方向に平行に設けた複数本の直線、ドットラインのいずれかにより形成されていることを特徴とする請求項5記載の脆弱な堆積膜厚の確認ラベル。

【請求項9】
前記該グラデーションパターン欄の濃淡勾配が同心円方向に形成され、前記基準表示部が前記該グラデーションパターン欄の濃淡勾配方向に設けた半径の異なる同心円により形成されていることを特徴とする請求項5記載の脆弱な堆積膜厚の確認ラベル。

【請求項10】
表面に作業記録記入欄が形成され、裏面に再剥離を可能とする第1粘着剤層が形成されたラベル本体と、
裏面に再剥離を可能とする第2粘着剤層が形成され、前記ラベル本体に着脱自在に接着されて前記ラベル本体の前記作業記録記入欄を被覆するカバーシールを備え、
前記ラベル本体は、表面にグラデ−ションパターン欄が形成され、
該グラデ−ションパターン欄は明度差変化によって形成される濃淡勾配をもち、
前記グラデーションパターン欄の濃淡勾配の勾配位置を段階的に表示する基準表示部を等間隔で前記グラデ−ションパターン欄に複数個設け、
前記基準表示部の段階を表示する識別符号を前記基準表示部に付し、
検査体表面の欠陥の種類、寸法、形状等により現われる指示模様と比較照合する比較マーク欄を設けて形成されていることを特徴とする脆弱な堆積膜厚の確認ラベル。

【請求項11】
表面に作業記録記入欄が形成され、裏面に再剥離を可能とする第1粘着剤層が形成されたラベル本体と、
裏面に再剥離を可能とする第2粘着剤層が形成され、前記ラベル本体に着脱自在に接着されて前記ラベル本体の前記作業記録記入欄を被覆するカバーシールを備え、
前記ラベル本体は、表面にグラデ−ションパターン欄が形成され、
該グラデ−ションパターン欄は明度差変化によって形成される濃淡勾配をもち、
前記グラデーションパターン欄の濃淡勾配の勾配位置を段階的に表示する基準表示部を前記グラデ−ションパターン欄に複数個設け、
前記基準表示部の段階を表示する識別符号を前記基準表示部に付し、
検査体表面の欠陥の種類、寸法、形状等により現われる指示模様と比較照合する比較マーク欄を設け、
現像剤の塗布作業の後に目標とするラベル本体に隠蔽された前記基準表示部に付される前記識別符号と前記比較マーク欄の現像剤を払拭し検査結果とともに現像状態を写真等で記録保存することを特徴とする脆弱な堆積膜厚の確認ラベルの使用方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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