説明

脈拍計測装置、脈拍計測プログラムおよび脈拍計測方法

【課題】高精度に安定して脈拍を計測することを課題とする。
【解決手段】脈拍計測装置は、脈動に応じた振幅値を持つ入力画像を受け付けて、受け付けた入力画像に含まれる振幅における輝度値の極大と極小とのそれぞれの間隔毎の出現頻度を求め、求められた出現頻度が最大である間隔値を特定し、特定された最大である間隔値に基づいて振幅の時間方向の間隔値を決定し、決定された間隔値に基づいて、脈拍を算出し、算出された脈拍を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈拍計測装置、脈拍計測プログラムおよび脈拍計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康管理のための器具に興味を持つ人が増えており、体脂肪計や脈波計だけでなく、簡易に心電を計測できる心電計測器など、個人で所有できる様々な健康管理器具が増えている。例えば、脈波計としては、指や耳たぶなどに挟んで計測するクリップ式のセンサなどがある。
【0003】
また、脈拍を測定する一般的な医療機器として血圧計(血圧と脈拍とを測定可能)がある。血圧計の技術としては、被測定者が体を動かしたり呼吸をしたりする際に発生するノイズによって、血圧測定誤差が生じ易くなっている場合に、当該血圧測定誤差が生じ易くなっていることを被測定者に認識させる振動法による電子血圧計が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平1−190335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、高精度に安定して脈拍を計測することができないという課題があった。具体的には、上記従来技術は、ノイズが検出された場合に、当該ノイズが検出されたことを被測定者に通知したり、再測定したりすることを目的としている。つまり、上記従来技術は、ノイズが検出されたとしても、当該ノイズを抑制することはなく、再測定する必要があるために、高精度に安定して脈拍を測定することができない。
【0006】
また、指や耳たぶなどに挟んで計測するクリップ式のセンサや指を受光・発光素子部に押し当てるタイプなどの脈波計では、二峰性を有する波形(本来はピークが現れないはずの位置にノイズなどにより生じる小さなピークを含んだ波形)として検出されてしまう場合に、正確な脈拍を出力することが困難であった。なお、二峰性を有する波形が現れる場合としては、上記脈波計だけでなく、例えば、保護カバー付きカメラなどで指先の画像を取得する場合などがあり、指圧が高くなることによって二峰性を有する波形が現れる。
【0007】
そこで、本発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、高精度に安定して脈拍を計測することが可能である脈拍計測装置、脈拍計測プログラムおよび脈拍計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本願の開示する脈拍計測装置は、脈波を計測した結果であって、脈動に応じた振幅値を持つ入力信号を受け付ける入力部と、前記入力信号に含まれる振幅ピークの時間方向の間隔値につき間隔値毎の出現頻度を求め、該出現頻度が最大である間隔値を特定し、該特定した最大である間隔値に基づいて、前記入力信号に含まれる振幅の時間方向の間隔値を特定し、該特定した間隔値に基づいて第一の間隔値を決定する決定部と、前記決定部により決定された前記第一の間隔値に基づいて、脈拍を算出する脈拍算出部と、前記脈拍算出部により算出された脈拍数を出力する出力部と、を有することを要件とする。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する脈拍計測装置、脈拍計測プログラムおよび脈拍計測方法によれば、高精度に安定して脈拍を計測することが可能であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る脈拍計測装置の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
[脈拍計測装置の概要]
最初に、実施例1に係る脈拍計測装置の概要を説明する。本願の開示する脈拍計測装置は、例えば、接続される装置によって計測された脈波に応じた信号に基づいて脈拍数を計測するものであり、特に、ノイズを含んだ入力信号である場合でも、高精度に安定して脈拍を計測することができる。
【0012】
また、例えば、脈拍計測装置は、カメラなどの撮像手段と接続されており、当該撮像手段が有する画像取得部(例えば、レンズや、レンズを保護するためにレンズ外部に設けられている光透過性のある保護カバー部など)に、人体の一部(例えば、指など)を押し当てた状態で撮影された画像を入力信号とする。そして、このようにして取得された画像は、脈動に応じて輝度値が変化するため、当該輝度値の変動を時系列に記録することで、脈動に応じた振幅を持つ入力信号となり得る。
【0013】
なお、利用されるデータは、脈波を捉えられるものであれば、輝度成分に限られるものではなく、例えば、RGB(Red‐Green‐Blue)のR成分やYUV(輝度信号:Y、輝度信号と青色成分との差:U、輝度信号と赤色成分との差:V)のV成分などでもよい。
【0014】
上述した構成において、脈拍計測装置は、脈動に応じた振幅値を持つ脈波を計測した結果である入力信号を受け付ける。そして、脈拍計測装置は、入力信号に含まれる振幅ピークの時間方向の間隔値につき間隔値毎の出現頻度を求め、該出現頻度が最大である間隔値を特定し、該特定した最大である間隔値に基づいて、入力信号に含まれる振幅の時間方向の間隔値を特定し、該特定した間隔値に基づいて第一の間隔値を決定する。続いて、脈拍計測装置は、決定された第一の間隔値に基づいて、脈拍を算出する。その後、脈拍計測装置は、算出された脈拍数を出力する。
【0015】
具体的には、脈拍計測装置は、接続される装置によって計測された脈波に応じた入力信号を受け付ける。そして、脈拍計測装置は、受け付けた入力信号に含まれる振幅ピーク値と振幅ピークの時間方向の間隔とに基づいて、ノイズとなる脈波ピークを除去し、除去できなかったノイズを含む脈波間隔から正常なデータを抽出する。
【0016】
上述したように、脈拍計測装置は、ノイズを含んだ入力信号である場合でも、当該ノイズを除去する、および/または、正常なデータを抽出することができる結果、高精度に安定して脈拍を計測することが可能である。
【0017】
[脈拍計測装置の構成]
次に、図1を用いて、実施例1に係る脈拍計測装置の構成を説明する。図1は、実施例1に係る脈拍計測装置の構成例を示す図である。
【0018】
図1に示すように、脈拍計測装置10は、出力部20と、記憶部30と、制御部40とを有し、例えば、接続される装置によって計測された脈波に応じた信号に基づいて脈拍数を計測する。
【0019】
出力部20は、モニタ(若しくはディスプレイ、タッチパネルなど)やスピーカを有し、各種の情報を出力するとともに、特に、脈拍数表示部21と、ファイル22と、脈動表示部23と、エラー表示部24とを有する。例えば、出力部20は、制御部40による各種処理結果をユーザに表示・通知したり、制御部40による各種処理から得られるデータをファイルとして出力したりする。
【0020】
脈拍数表示部21は、後述する脈拍数計算部42bによって算出された脈拍数を表示する。また、ファイル22は、後述する脈拍数計算部42bによって算出された脈拍数のデータをファイルとして出力する。また、脈動表示部23は、後述するピーク検出部42aによって検出された脈動を表示する。また、エラー表示部24は、後述するピーク検出部42aによる検出エラーや後述するエラー判定部42cによるエラー内容などを表示する。
【0021】
記憶部30は、制御部40による各種処理に必要なデータや、制御部40による各種処理結果を記憶するとともに、特に、輝度情報記憶部31と、エラー情報記憶部32と、ピーク情報記憶部33とを有する。例えば、記憶部30は、後述する画像処理部41によって処理された画像一枚ごとの画像処理結果を記憶したり、後述する波形処理部42によって処理された波形データやエラー情報などを記憶したりする。
【0022】
輝度情報記憶部31は、後述する画像処理部41によって算出された入力画像の輝度情報を記憶する。また、エラー情報記憶部32は、後述する画像処理部41によって画像処理された際のエラー情報を記憶する。また、ピーク情報記憶部33は、後述するピーク検出部42aによって検出された入力画像に基づいた脈波情報を記憶する。
【0023】
制御部40は、制御プログラム、各種の処理手順などを規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有するとともに、特に、画像処理部41と、波形処理部42とを有し、これらによって種々の処理を実行する。
【0024】
画像処理部41は、入力される画像一枚ごとに画像処理を実施する。例えば、画像処理部41は、入力画像を受け付けて、受け付けた画像から輝度成分を抽出したり、受け付けた画像を縮小したりするなどして画像データを生成する。そして、画像処理部41は、生成された画像データの輝度平均を算出して、輝度情報記憶部31に格納する。
【0025】
また、画像処理部41は、生成された画像データのエッジ量の総和を算出したり、輝度分布の評価値を算出したり、重心位置の評価値を算出したりして、画像データの各特性から評価点を決定して、エラー情報記憶部32に格納する。
【0026】
波形処理部42は、エラー情報や波形データなどを処理し、特に、ピーク検出部42aと、脈拍数計算部42bと、エラー判定部42cとを有する。
【0027】
波形処理部42に入力される波形は、例えば、図2−1に示すように、正常な極大と極小との間に小さな極大と極小が出現する二峰性を有するものも含まれる。なお、図2−1は、二峰性を持つ波形例を示す図であり、縦軸は輝度値、横軸は入力信号として取得した画像フレームのフレーム番号(即ち、横軸は時間方向を表す軸)を示している。例えば、横軸360付近で現れている小さなピークは、正常な極大と極小との間に現れた小さな極大と極小である。
【0028】
ピーク検出部42aは、輝度情報記憶部31に記憶された画像データの輝度情報から、当該画像データの波形におけるピークを検出する。例えば、ピーク検出部42aは、輝度情報記憶部31に記憶された画像データの時系列の輝度情報から、極大値と極小値とを算出して、当該画像データの波形におけるピーク(ピーク間隔)を検出してピーク情報記憶部33に格納したり、脈動表示部23に出力したりする。
【0029】
また、ピーク検出部42aは、二峰性を有する波形(図2−1参照)をスムージング処理して、図2−2に示すような波形を出力する。そして、ピーク検出部42aは、図2−2に示すようなスムージング処理後においても見られ、ノイズとなる二峰性を検出して、当該ノイズを除去する。なお、図2−2は、二峰性を持つ波形をスムージングした場合の波形例を示す図であり、縦軸、横軸は図2−1と同様に、輝度値とフレーム番号とを示している。例えば、図2−1の横軸360付近で現れている小さなピークは、スムージング後の図2−2でも小さなピークとして残っており、当該小さなピークがノイズとなるピークである。
【0030】
脈拍数計算部42bは、ピーク情報記憶部33に記憶されたピーク間隔(ピーク間の時間方向の間隔)に基づいて、脈拍数を算出する。例えば、脈拍数計算部42bは、ピーク情報記憶部33に記憶されたピーク間隔のヒストグラム「H0」を作成する。そして、脈拍数計算部42bは、作成されたヒストグラム「H0」をスムージングしてヒストグラム「H1」を作成する。
【0031】
続いて、脈拍数計算部42bは、ヒストグラム「H1」の最頻値「M1」を求めて、当該「M1」に対応するフィルタ「F1」を求める。その後、脈拍数計算部42bは、ヒストグラム「H0」をフィルタ「F1」でスムージングしてヒストグラム「H2」を作成する。そして、脈拍数計算部42bは、ヒストグラム「H2」の最頻値「M2」を求めて、当該「M2」に対応する脈拍数計算幅「W」を算出する。続いて、脈拍数計算部42bは、ヒストグラム「H0」から脈拍数を算出して、脈拍数表示部21やファイル22などに出力する。
【0032】
エラー判定部42cは、エラー情報記憶部32に記憶された輝度、エッジ量および重心のいずれか、または、複数が所定の状態であるかを判定する。例えば、エラー判定部42cは、画像処理部41によって算出された輝度、エッジ量および重心などの各特性と所定閾値とを比較して、入力画像に対して評価点を決定する。
【0033】
[ピーク検出処理]
次に、図3〜図7を用いて、実施例1に係るピーク検出処理を説明する。まず、図3を用いて、実施例1に係るピーク検出処理の前処理を説明する。図3は、実施例1に係るピーク検出処理の前処理を示すフローチャートである。
【0034】
(ピーク検出処理の前処理)
図3に示す「orgSig」は、生波形(オリジナル脈波)を表しており、既定の長さ「N1」の保存領域がある。また、「filtSig」は、フィルタリング後の脈波を現しており、既定の長さ「M」の保存領域がある。また、「filtC」は、既定の長さ「N2」のフィルタ係数を表しており、N1≧N2である。
【0035】
また、「diffSig」は、フィルタリング後の脈波の差分データを表しており、既定の長さ「L」の保存領域がある。また、M>K2、L>K2である。
【0036】
さて、以降は、以下のデータ領域における添え字が「0」から開始されることとして説明するが、当該添え字の開始は「0」に限られるものではない。また、データは、添え字が小さい方を新しいデータとして記載するが、逆順であってもよい。
【0037】
図3に示すように、ピーク検出部42aは、生波形「orgSig」と、フィルタリング後の脈波「filtSig」と、差分情報「diffSig」とを更新するために、データ列をシフトして最も古いデータを捨てる(ステップS101、ステップS103、ステップS105)。
【0038】
そして、ピーク検出部42aは、画像処理部41によって算出された輝度平均「meanY」を最新データとして「orgSig(0)」に保存する(ステップS102)。続いて、ピーク検出部42aは、生波形「orgSig」の最新データを含み、最近のN2個のデータと、フィルタ係数「filtC」とから最新のフィルタリング後の脈波を計算して「filtSig(0)」に保存する(ステップS104)。
【0039】
その後、ピーク検出部42aは、最新のフィルタリング後の脈波「filtSig(0)」と、当該最新のフィルタリング後の脈波「filtSig(0)」のK1個前のデータ「filtSig(K1)」との差分を最新の差分情報「diffSig(0)」に保存する(ステップS106)。なお、ピーク検出部42aによる前処理において実施されるフィルタリングは、スムージングするとともに、デトレンドすることが望ましい。
【0040】
また、上記ピーク検出部42aによる前処理では、実際にデータをコピーしているように記載したが、リングバッファを用いることとしてもよい。また、生波形「orgSig」、フィルタリング後の脈波「filtSig」、差分情報「diffSig」の更新前のシフト処理は、最新データを保存する前であればどこにおいてもよい。
【0041】
(ピーク検出処理)
次に、図4を用いてピーク検出処理を説明する。図4は、実施例1に係るピーク検出処理を示すフローチャートである。
【0042】
図4に示すように、ピーク検出部42aは、上記前処理を実施して(ステップS201)、最新の差分情報「diffSig(0)」が0よりも大きい、および、K2個前の差分情報「diffSig(K2)」が0以下である場合に(ステップS202肯定)、極小値処理を実施する(ステップS205)。
【0043】
また、ピーク検出部42aは、上記前処理を実施して(ステップS201)、最新の差分情報「diffSig(0)」が0よりも小さい、および、K2個前の差分情報「diffSig(K2)」が0以上である場合に(ステップS203肯定)、極大値処理を実施する(ステップS204)。
【0044】
つまり、ピーク検出部42aは、最新の差分情報と既定個前の差分情報との符号から、極大または極小であるか否かの判定を行ない、極大値である場合に極大値処理、極小値である場合に極小値処理を実施する。
【0045】
(極大値処理)
次に、図5を用いて極大値処理を説明する。図5は、実施例1に係る極大値処理を示すフローチャートである。
【0046】
図5に示すように、ピーク検出部42aは、一つ前で検出された極小値と極大値との差の絶対値が規定値以上である場合に(ステップS301肯定)、当該極小値と極大値との間隔が規定値以上であるか否かを判定する(ステップS302)。そして、ピーク検出部42aは、極小値と極大値との間隔が規定値以上である場合に(ステップS302肯定)、検出された極大値情報が正しいとみなして極大値情報を更新する(ステップS303)。
【0047】
(極小値処理)
次に、図6を用いて極小値処理を説明する。図6は、実施例1に係る極小値処理を示すフローチャートである。
【0048】
図6に示すように、ピーク検出部42aは、一つ前で検出された極大値と極小値との差の絶対値が規定値以上である場合に(ステップS401肯定)、当該極大値と極小値との間隔が規定値以上であるか否かを判定する(ステップS402)。
【0049】
そして、ピーク検出部42aは、極大値と極小値との間隔が規定値以上である場合に(ステップS402肯定)、前回の極大・極小間の振幅が期待する規定値倍以上であるか否かを判定する(ステップS403)。
【0050】
続いて、ピーク検出部42aは、前回の極大・極小間の振幅が期待する規定値倍以下である場合に(ステップS403否定)、前回の極大・極小情報を削除して(ステップS404)、検出された極小値情報を正しいとみなして極小値情報を更新する(ステップS405)。
【0051】
なお、ピーク検出部42aは、前回の極大・極小間の振幅が期待の規定倍以上である場合に(ステップS403肯定)、検出された極小値情報を正しいとみなして極小値情報を更新する(ステップS405)。
【0052】
(極小値処理時の振幅計算処理)
次に、図7を用いて極小値処理時の振幅計算処理を説明する。図7は、実施例1に係る極小値処理時の振幅計算を説明するための図である。なお、図7においては、縦軸を輝度値、横軸を時間(横軸の数値は、フレーム番号を表す)とする。
【0053】
図7に示すように、ピーク検出部42aは、前回の極大が現れた時間において、今回検出された極小と、前々回の極小とを結ぶ直線上での輝度平均を期待する前回の極小値とみなして処理する。また、ピーク検出部42aは、前回の極大が現れた時間において、今回検出された極大と前々回の極大とを結ぶ直線上での輝度平均を期待する前回の極大値とみなして処理する。
【0054】
また、期待する振幅は、期待する極大値と期待する極小値との差とする。なお、期待する振幅は、前回の極小が現れた時間、若しくは、前回の極大が現れた時間ではなく、今回と前々回との極値をとった時間の中間としてもよい。
【0055】
[脈拍数算出処理]
次に、図8を用いて、実施例1に係る脈拍数算出処理を説明する。図8は、実施例1に係る脈拍数算出処理を示すフローチャートである。
【0056】
図8に示すように、脈拍数計算部42bは、検出されたピーク間隔のデータ数が規定値以上である場合に(ステップS501肯定)、図9−1に示すようなピーク間隔のヒストグラム「H0」を作成する(ステップS502)。なお、図9−1は、実施例1に係る脈拍数算出処理時に利用されるピーク間隔のヒストグラムを示す図である。なお、図9−1に示すデータは、携帯端末に搭載されているカメラの画像を入力として、輝度平均を図3に示す「orgSig」としたものである。また、縦軸は、出現頻度数を表しており、横軸は、ピーク間隔(振幅の極大間若しくは極小間のいずれかまたは両方のフレーム数)を表している。
【0057】
そして、脈拍数計算部42bは、作成されたヒストグラム「H0」をスムージングして、図9−2に示すようなヒストグラム「H1」を作成する(ステップS503)。なお、図9−2は、実施例1に係る脈拍数算出処理時に利用されるスムージングしたピーク間隔のヒストグラムを示す図である。
【0058】
続いて、脈拍数計算部42bは、作成されたヒストグラム「H1」の最頻値「M1」を求めて(ステップS504)、当該最頻値「M1」に対応するフィルタ「F1」を求める(ステップS505)。その後、脈拍数計算部42bは、作成されたヒストグラム「H0」をフィルタ「F1」でスムージングして、図9−3に示すようなヒストグラム「H2」を作成する(ステップS506)。なお、図9−3は、実施例1に係る脈拍数算出処理時に利用されるスムージングしたピーク間隔のヒストグラムを示す図である。
【0059】
そして、脈拍数計算部42bは、作成されたヒストグラム「H2」の最頻値「M2」を求めて(ステップS507)、当該最頻値「M2」に対応する脈拍数計算幅「W」を求め(ステップS508)、ヒストグラム「H0」から脈拍数を算出する(ステップS509)。
【0060】
例えば、脈拍数計算部42aは、図9−3に示すヒストグラム「H2」において、「M2」が9、「W」が5と計算された結果を利用し、図9−1のヒストグラム「H0」から、「M2」の値であるピーク間隔フレーム数「9」を中心として、「W」の値である「5」個分のピーク間隔フレームに相当するピーク間隔フレーム数7〜11の頻度値を参照し、頻度4、7、12、16、6を抽出する。
【0061】
そして、脈拍数計算部42aは、例えば、フレームレートが15FPS(Frame Per Second)である場合に、脈拍数R=60×15×(4+7+1+2+16+6)÷(4×7+7×8+12×9+16×10+6×11)=「97拍/分」を算出する。また、脈拍数算出に用いるデータ数は、下限値を設定することが望ましい。
【0062】
なお、上記スムージング処理を複数回行う理由は、二峰性を有するノイズ部分(図2−1、図2−2参照)を除去するためであるのと、サンプリングの間隔が粗いことによりピーク位置がずれている可能性があるためである。
【0063】
また、スムージングの幅は、例えば、ヒストグラム「H0」からヒストグラム「H1」の場合に「2」とし、ヒストグラム「H0」からヒストグラム「H2」の場合に「3」などとする。スムージングの幅は、例えば、図10に示すようなピーク間隔と脈拍数との関係(15FPS(Frame Per Second))であるため、ピーク間隔が小さい場合にスムージング幅を小さくして、ピーク間隔が大きい場合にスムージング幅を大きくする必要がある。なお、図10は、実施例1に係るピーク間隔と脈拍数との関係を示す図である。
【0064】
[実施例1による効果]
上述したように、実施例1に係る脈拍計測装置10は、ノイズを有する入力信号(入力画像)であっても、当該ノイズを除去、および/または、ノイズを有していても正常な脈拍数出力するので、高精度に安定して脈拍を計測することが可能である。
【0065】
例えば、脈拍計測装置10は、脈動に応じた振幅値を持つ入力画像を受け付ける。そして、脈拍計測装置10は、受け付けた入力画像に含まれる振幅における輝度値の極大と極小とのそれぞれの間隔毎の出現頻度を求める。続いて、脈拍計測装置10は、求められた出現頻度が最大である間隔値を特定し、特定された最大である間隔値に基づいて振幅の時間方向の間隔値を決定する。その後、脈拍計測装置10は、決定された間隔値に基づいて、脈拍を算出して出力する。この結果、脈拍計測装置10は、高精度に安定して脈拍を計測することが可能である。
【実施例2】
【0066】
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも
種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、(1)脈拍計測装置の構成、(2)プログラム、において異なる実施例を説明する。
【0067】
(1)脈拍計測装置の構成
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメタを含む情報(例えば、図1に示した「エラー情報記憶部32」などに記憶される情報)については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0068】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、例えば、エラー判定部42cを有する波形処理部42として記載したが、当該エラー判定部42cを画像処理部41に組み込んだり、当該エラー判定部42cを「エラー処理部」として独立させたりするなど、その全部または一部を、各種の負担や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0069】
(2)プログラム
ところで、上記実施例では、ハードウェアロジックによって各種の処理を実現する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータで実行することによって実現するようにしてもよい。そこで、以下では、図11を用いて、上記実施例に示した脈拍計測装置10と同様の機能を有する脈拍計測プログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。図11は、脈拍計測プログラムを実行するコンピュータを示す図である。
【0070】
図11に示すように、脈拍計測装置としてのコンピュータ110は、HDD130、CPU140、ROM150およびRAM160をバス180などで接続される。
【0071】
ROM150には、上記実施例1に示した脈拍計測装置10と同様の機能を発揮する脈拍計測プログラム、つまり、図11に示すように入力プログラム150aと、決定プログラム150bと、脈拍算出プログラム150cと、出力プログラム150dとが、あらかじめ記憶されている。なお、これらのプログラム150a〜プログラム150dについては、図1に示した脈拍計測装置10の各構成要素と同様、適宜統合または、分散してもよい。
【0072】
そして、CPU140がこれらのプログラム150a〜プログラム150dをROM150から読み出して実行することで、図11に示すように、プログラム150a〜プログラム150dは、入力プロセス140aと、決定プロセス140bと、脈拍算出プロセス140cと、出力プロセス140dとして機能するようになる。なお、プロセス140a〜プロセス140dは、図1に示した、画像処理部41と、ピーク検出部42aと、脈拍数計算部42bと、出力部20とに対応する。
【0073】
そして、CPU140はRAM160に記録されたデータに基づいて脈拍計測プログラムを実行する。
【0074】
なお、上記各プログラム150a〜プログラム150dについては、必ずしも最初からROM150に記憶させておく必要はなく、例えば、コンピュータ110に挿入されるフレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」、またはコンピュータ110の内外に備えられるHDDなどの「固定用の物理媒体」、さらには公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介してコンピュータ110に接続される「他のコンピュータ(またはサーバ)」などに各プログラムを記憶させておき、コンピュータ110がこれから各プログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1に係る脈拍計測装置の構成例を示す図である。
【図2−1】二峰性を持つ波形例を示す図である。
【図2−2】二峰性を持つ波形をスムージングした場合の波形例を示す図である。
【図3】実施例1に係るピーク検出処理の前処理を示すフローチャートである。
【図4】実施例1に係るピーク検出処理を示すフローチャートである。
【図5】実施例1に係る極大値処理を示すフローチャートである。
【図6】実施例1に係る極小値処理を示すフローチャートである。
【図7】実施例1に係る極小値処理時の振幅計算を説明するための図である。
【図8】実施例1に係る脈拍数算出処理を示すフローチャートである。
【図9−1】実施例1に係る脈拍数算出処理時に利用されるピーク間隔のヒストグラムを示す図である。
【図9−2】実施例1に係る脈拍数算出処理時に利用されるスムージングしたピーク間隔のヒストグラムを示す図である。
【図9−3】実施例1に係る脈拍数算出処理時に利用されるスムージングしたピーク間隔のヒストグラムを示す図である。
【図10】実施例1に係るピーク間隔と脈拍数との関係を示す図である。
【図11】脈拍計測プログラムを実行するコンピュータを示す図である。
【符号の説明】
【0076】
10 脈拍計測装置
20 出力部
21 脈拍数表示部
22 ファイル
23 脈動表示部
24 エラー表示部
30 記憶部
31 輝度情報記憶部
32 エラー情報記憶部
33 ピーク情報記憶部
40 制御部
41 画像処理部
42 波形処理部
42a ピーク検出部
42b 脈拍数計算部
42c エラー判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈波を計測した結果であって、脈動に応じた振幅値を持つ入力信号を受け付ける入力部と、
前記入力信号に含まれる振幅ピークの時間方向の間隔値につき間隔値毎の出現頻度を求め、該出現頻度が最大である間隔値を特定し、該特定した最大である間隔値に基づいて、前記入力信号に含まれる振幅の時間方向の間隔値を特定し、該特定した間隔値に基づいて第一の間隔値を決定する決定部と、
前記決定部により決定された前記第一の間隔値に基づいて、脈拍を算出する脈拍算出部と、
前記脈拍算出部により算出された脈拍数を出力する出力部と、
を有することを特徴とする脈拍計測装置。
【請求項2】
前記入力信号は、撮像手段が有する画像取得部に人体の一部を接触させた状態で取得された画像であって、
前記入力信号に含まれる振幅は、前記画像の輝度値の振幅であることを特徴とする請求項1に記載の脈拍計測装置。
【請求項3】
脈波を計測した結果であって、脈動に応じた振幅値を持つ入力信号を受け付ける入力手順と、
前記入力信号に含まれる振幅ピークの時間方向の間隔値につき間隔値毎の出現頻度を求め、該出現頻度が最大である間隔値を特定し、該特定した最大である間隔値に基づいて、前記入力信号に含まれる振幅の時間方向の間隔値を特定し、該特定した間隔値に基づいて第一の間隔値を決定する決定手順と、
前記決定手順により決定された前記第一の間隔値に基づいて、脈拍を算出する脈拍算出手順と、
前記脈拍算出手順により算出された脈拍数を出力する出力手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする脈拍計測プログラム。
【請求項4】
脈波を計測した結果であって、脈動に応じた振幅値を持つ入力信号を受け付ける入力工程と、
前記入力信号に含まれる振幅ピークの時間方向の間隔値につき間隔値毎の出現頻度を求め、該出現頻度が最大である間隔値を特定し、該特定した最大である間隔値に基づいて、前記入力信号に含まれる振幅の時間方向の間隔値を特定し、該特定した間隔値に基づいて第一の間隔値を決定する決定工程と、
前記決定工程により決定された前記第一の間隔値に基づいて、脈拍を算出する脈拍算出工程と、
前記脈拍算出工程により算出された脈拍数を出力する出力工程と、
を含んだことを特徴とする脈拍計測方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図10】
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【図11】
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