脈波伝播速度計測装置及び脈波伝播速度計測方法
【課題】局所的な計測範囲で脈波伝播速度を計測できる脈波伝播速度計測装置及び脈波伝播速度計測方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、第1センサ部と、第2センサ部と、基体と、演算部と、を含む脈波伝播速度計測装置が提供される。前記第1センサ部は、管の内部を伝播する脈波を検知する。前記第2センサ部は、前記第1センサ部と離間し前記脈波を検知する。前記基体は、前記第1センサ部と前記第2センサ部とを保持し前記第1センサ部と前記第2センサ部との間の距離を規定する。前記演算部は、前記第1センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、前記第2センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、の差を導出する。
【解決手段】実施形態によれば、第1センサ部と、第2センサ部と、基体と、演算部と、を含む脈波伝播速度計測装置が提供される。前記第1センサ部は、管の内部を伝播する脈波を検知する。前記第2センサ部は、前記第1センサ部と離間し前記脈波を検知する。前記基体は、前記第1センサ部と前記第2センサ部とを保持し前記第1センサ部と前記第2センサ部との間の距離を規定する。前記演算部は、前記第1センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、前記第2センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、の差を導出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、脈波伝播速度計測装置及び脈波伝播速度計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧などの測定のために、例えば、脈波伝播速度(PWV:pulse wave velocity)を測定することが行われる。この方法では、例えば、心臓の近傍の測定点と、心臓から離れた例えば手首などの測定点と、における脈波の測定時刻の差から、PWVを求める。この例では、大きく離れた2つの測定点から配線が延びるため、被検者は煩雑さを感じる。また、装置の小型化は困難であり、日常生活をしながらの連続的な測定も困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−321253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、局所的な計測範囲で脈波伝播速度を計測できる脈波伝播速度計測装置及び脈波伝播速度計測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、第1センサ部と、第2センサ部と、基体と、演算部と、を含む脈波伝播速度計測装置が提供される。前記第1センサ部は、管の内部を伝播する脈波を検知する。前記第2センサ部は、前記第1センサ部と離間し前記脈波を検知する。前記基体は、前記第1センサ部と前記第2センサ部とを保持し前記第1センサ部と前記第2センサ部との間の距離を規定する。前記演算部は、前記第1センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、前記第2センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、の差を導出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の使用状態を示す模式図である。
【図3】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の使用状態を示す模式図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を示す模式的断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置を示す模式図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を示す模式的斜視部である。
【図7】図7(a)〜図7(d)は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の一部を示す模式的斜視図である。
【図8】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作状態を示す模式的斜視図である。
【図9】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を示すグラフ図である。
【図10】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を示すフローチャート図である。
【図11】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を示すグラフ図である。
【図12】第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置を示す模式的断面図である。
【図13】第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置を示す模式的断面図である。
【図14】第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置を示す模式図である。
【図15】図15(a)〜図15(d)は、第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置の構成及び使用状態を示す模式図である。
【図16】第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置を示す模式的断面図である。
【図17】第2の実施形態に係る脈波伝播速度計測方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の構成を例示する模式図である。 図1に表したように、本実施形態に係る脈波伝播速度計測装置410は、第1センサ部50aと、第2センサ部50bと、基体60と、演算部70と、を含む。
【0009】
第1センサ部50aは、管(例えば血管)の内部を伝播する脈波を検知する。第2センサ部50bは、第1センサ部50aと離間している。第2センサ部50bも、その脈波を検知する。第1センサ部50aは、例えば、管の内部を伝播する脈波による歪を検知する。第2センサ部50bは、例えば、その脈波による歪を検知する。
【0010】
基体60は、第1センサ部50aと第2センサ部50bとを保持する。基体60は、第1センサ部50aと第2センサ部50bとの間の距離dを規定する。
【0011】
基体60には、例えば、第1センサ部50a及び第2センサ部50bを製造する際に用いられる基板(例えばシリコン基板など)を用いることができる。また、基体60には、例えば、第1センサ部50a及び第2センサ部50bを実装するためのプリント基板などを用いることができる。基体60には、プラスチック基板などを用いることもでき、基体60は可撓性を有していても良い。
【0012】
第1センサ部50aから第2センサ部50bに向かう方向を第1方向とする。本願明細書においては、第1センサ部50aと第2センサ部50bとの間の距離dは、便宜的に、第1方向に沿った第1センサ部50aの中心と、第1方向に沿った第2センサ部50bの中心と、の間の距離とする。
【0013】
基体60は、第1センサ部50aと第2センサ部50bとの間の距離dが実質的に一定になるように、第1センサ部50aと第2センサ部50bとを保持する。基体60が可撓性を有している場合も、基体60は、第1センサ部50aと第2センサ部50bとの間の距離dを実質的に一定に規定している。
【0014】
第1センサ部50a、第2センサ部50b及び基体60は一体的である。本実施形態に係る計測センサ310は、第1センサ部50a、第2センサ部50b及び基体60を含むものとする。
【0015】
本実施形態に係る計測センサ310は、管の内部を伝播する脈波による歪を検知する第1センサ部50aと、第1センサ部50aと離間し脈波による歪を検知する第2センサ部50bと、第1センサ部50aと第2センサ部50aとを保持し第1センサ部50aと第2センサ部50bとの間の距離を規定する基体60と、を含む。
【0016】
また、説明を簡単にするために、第1センサ部50a及び第2センサ部50bを合わせてセンサ部50と呼ぶ場合がある。
【0017】
演算部70は、第1センサ部50aによる脈波の検知の時刻と、第2センサ部50bによる脈波の検知の時刻と、の差を導出する。
【0018】
本実施形態においては、1つの基体60に2つ以上のセンサ部50が設けられる。このため、実質的に1箇所で脈波が検出される。本実施形態によれば、局所的な計測範囲で脈波伝播速度を計測できる脈波伝播速度計測装置が提供できる。
【0019】
距離dは、1mm以上5cm以下である。距離dは、5mm以上2cm以下であることがさらに好ましい。測定するときに、実質的に一体ものとして扱うためには、この程度の小さいサイズが好ましいからである。
【0020】
図2は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の使用状態を例示する模式図である。
図2においては、計測センサ310が図示されているが、演算部70は省略されている。
【0021】
図3に表したように、計測センサ310は、例えば手首に接触して装着される。手首の動脈血管210(管)に対向して第1センサ部50a及び第2センサ部50bが配置される。動脈血管210の中には、血液220(液体)が流れる。血液220の流れは、脈波による流れである。
【0022】
距離dを小さく(例えば5cm以下)に設定することで、実質的に1箇所の測定点で、脈波を検出することができる。
【0023】
計測センサ310は、手首だけでなく、種々の位置に配置できる。計測センサ310は、例えば血圧測定部位に配置される。例えば、計測センサ310は、皮膚表面に、例えば粘着剤などにより、付着される。計測センサ310は、皮膚上に接するように配置される。計測センサ310は、例えば、皮膚の表面の近傍に動脈血管210が存在しているような皮膚の上に配置される。例えば、計測センサ310が配置される部位は、被検者の体の表面から脈動を検知できる部位である。
【0024】
この部位(および体表下にある動脈)は、例えば、以下の通りである。内側上腕二頭筋溝(上腕動脈)、前腕外側下端で橈側手根屈筋腱と腕橈骨筋腱との間(橈骨動脈)、前腕内側下端で尺側手根屈筋腱と浅指屈筋腱との間(尺骨動脈)、長母指伸筋腱の尺側(第1背側中手動脈)、腋窩(腋窩動脈)、大腿三角部(大腿動脈)、下腿前面の下部で前脛骨筋腱の外側(前脛骨動脈)、内果の後下部(後脛骨動脈)、長母指伸筋腱の外側(足背動脈)、頚動脈三角(総頚動脈)、咬筋停止部の前(顔面動脈)、胸鎖乳突筋停止部の後ろで僧帽筋起始部との間(後頭動脈)、外耳孔の前(浅側頭動脈)。計測センサ310は、例えば、このような部位に配置される。
【0025】
これに対して、例えば、従来のPWVの測定においては、心臓の近傍の測定点と、心臓から離れた例えば手首などの測定点と、が用いられる。このため、煩雑さがあり、装置の小型化が困難である。さらに、日常生活をしながらの連続的な測定も困難である。また、血管をモデル化して血圧を算出しているが、実際には心臓と腕などの2点間において血管は単一モデルで扱うことはできない。このため、測定誤差が大きい。例えば、10mmHg程度の誤差がある。
【0026】
本願発明者は、このように、大きく離れた2つ測定点で測定することは煩雑なため使い難く、また、測定精度が低いことに着目した。人間の感覚として実質的に1点と感じられる測定箇所で、高い精度でPWVを測定することを新たな課題として見出した。
【0027】
本実施形態においては、大きく離れた2つの測定点での測定ではなく、局所的な計測範囲で測定を行う。局所的な計測範囲で脈波伝播速度を計測できることから、被検者が感じる煩雑さが著しく低減できる。また、装置が小型化できる。さらに、日常生活をしながらの連続的な測定も容易になる。そして、局所的な計測であるため、血管は単一モデルとして扱うことができ、高い測定精度が得られる。
【0028】
図3は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の使用状態を例示する模式図である。
図3に表したように、被験者の体230の皮膚231の下に動脈血管210がある。動脈血管210の中を血液220が流れる。動脈血管210の脈波を局所的に配置された第1センサ部50a及び第2センサ部50bで検知する。第1センサ部50aにおける脈波の検知信号(第1信号50sa)と、第2センサ部50bにおける脈波の検知信号(第2信号50sb)と、が、演算部70に供給される。演算部70は、それらの信号に基づいて、第1センサ部50aによる脈波の検知の時刻と、第2センサ部50bによる脈波の検知の時刻と、の差を導出する。さらに、演算部70では、その時刻の差と、距離dと、からPWVを求めることができる。演算部70は、演算結果70s(例えば、時刻の差、及び、PWVの少なくともいずれか)を出力する。
脈波伝播速度計測装置410によれば、局所的な計測範囲で脈波伝播速度を計測できる。
【0029】
第1センサ部50a及び第2センサ部50bと、演算部70と、は、例えば、有線または無線(電波信号または光信号による通信を含む)で接続される。例えば、第1センサ部50aの第1信号50sa及び第2センサ部50bの第2信号50sbは、配線などで、演算部70に供給される。また、例えば、基体60上に無線送信回路が設けられ、第1信号50sa及び第2信号50sbは、その無線送信回路によって、演算部70に供給されても良い。
【0030】
図4(a)及び図4(b)は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を例示する模式的断面図である。
図4(a)は、動脈血管210の収縮を例示している。図4(b)は、測定時のセンサ部50の状態を例示している。
【0031】
図4(a)に表したように、動脈血管210内を血液220が脈波により流れることで、動脈血管210が径方向に対して伸縮して血圧が作用する。
【0032】
図4(b)に表したように、動脈血管210が径方向に対して拡張すると、皮膚231が押し上げられる。このとき、血圧が働く方向に対して垂直方向に皮膚231は、引っ張り応力を受ける。それと同時に、センサ部50にも引っ張り応力が一定の方向に働く。
【0033】
後述するように、センサ部50に電流が流される。センサ部50に加わる引っ張り応力に応じて、センサ部50の電気抵抗が変化する。これに基づいて、センサ部50により、脈波が検出される。
【0034】
以下、センサ部50の構成の1つの例について説明し、その動作について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の構成を例示する模式図である。 図5は、本実施形態に係る計測センサ310の1つの例である計測センサ311の断面の構成を例示している。
図5に表したように、第1センサ部50aは、第1強磁性層10aと、第2強磁性層20aと、第1強磁性層10aと第2強磁性層20aとの間に設けられた非磁性の第1中間層30aと、を含む。第2センサ部50bは、第3強磁性層10bと、第4強磁性層20bと、第3強磁性層10bと第4強磁性層20bとの間に設けられた非磁性の第2中間層30bと、を含む。
【0035】
例えば、第3強磁性層10bには、第1強磁性層10aに用いられる材料と同じ材料を用いることができる。例えば、第4強磁性層20bには、第3強磁性層20aに用いられる材料と同じ材料を用いることができる。例えば、第2中間層30bには、第1中間層30aに用いられる材料と同じ材料を用いることができる。この例では、第3強磁性層10bは、第1強磁性層10aと同層である。第4強磁性層20bは、第2強磁性層20aと同層である。第2中間層30bは、第1中間層30aと同層である。
【0036】
第1センサ部50aは、第1電極51aと第2電極52aとをさらに含むことができる。第1電極51aと第2電極52aとの間に第1強磁性層10aが配置され、第1強磁性層10aと第2電極52aとの間に第2強磁性層20aが配置される。
【0037】
第2センサ部50bは、第3電極51bと第4電極52bとをさらに含むことができる。第3電極51bと第4電極52bとの間に第3強磁性層10bが配置され、第3強磁性層10bと第4電極52bとの間に第4強磁性層20bが配置される。
【0038】
以下では、説明を簡単にするために、第1強磁性層10a及び第3強磁性層10bを、便宜的に下磁性層10と言うことにする。第2強磁性層20a及び第4強磁性層20bを、便宜的に上磁性層20と言うことにする。第1中間層30a及び第2中間層30bを、便宜的に中間層30と言うことにする。また、下磁性層10、中間層30及び上磁性層20を、適宜、センサ部積層体50sと言うことにする。第1電極51a及び第3電極51bを、便宜的に下電極51と言うことにする。第2電極52a及び第4電極52bを、便宜的に上電極52と言うことにする。
【0039】
上記において、「上」及び「下」に関して、基体60との相対的な上下関係は任意である。例えば、基体60の上に「上磁性層20」が配置され、その上に中間層30が配置され、その上に「下磁性層10」が配置されていても良い。
【0040】
センサ部50において、例えば、下磁性層10及び上磁性層20のいずれか一方は、磁化自由層である。下磁性層10及び上磁性層20のいずれか他方は、例えば、磁化固定層である。ただし、後述するように、下磁性層10及び上磁性層20の両方が磁化自由層でも良い。
【0041】
以下では、センサ部50の動作の例について、下磁性層10が磁化固定層であり、上磁性層20が磁化自由層である場合について説明する。センサ部50においては、強磁性体が有する「逆磁歪効果」と、センサ部積層体50sで発現する「MR効果」と、が利用される。
【0042】
「MR効果」は、センサ部積層体50sに電流を流すことで、磁化の向きの相対角度の変化を電気抵抗変化として読み取ることで発現する。既に説明したように、脈波によりセンサ部50に引っ張り応力が加わる。上磁性層20(磁化自由層)の磁化の向きと、上磁性層20に加わる引っ張り応力の方向と、が異なるときに、逆磁歪効果によりMR効果が発現する。MR効果によって変化する電気抵抗の変化量は、「MR変化量」である。抵抗変化量ΔRを、最小抵抗値Rで除した値、すなわち、ΔR/Rを「MR変化率」という。
【0043】
図6(a)〜図6(c)は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を例示する模式的斜視部である。
これらの図は、センサ部50のセンサ部積層体50sにおける磁化の方向と、引っ張り応力の方向と、の関係を例示している。
【0044】
図6(a)は、引っ張り応力が印加されていない状態を示す。このとき、この例では、下磁性層10(磁化固定層)の磁化の向きは、上磁性層20(磁化自由層)の磁化の向きと、同じである。
【0045】
図6(b)は、引っ張り応力が印加された状態を示している。この例では、X軸方向に沿って引っ張り応力が印加されている。このとき、引っ張り応力の方向と同じ方向になるように、上磁性層20(磁化自由層)の磁化が回転する。これを「逆磁歪効果」という。このとき、下磁性層10(磁化固定層)の磁化は固定されている。上磁性層20(磁化自由層)の磁化が回転することで、下磁性層10(磁化固定層)の磁化の向きと、上磁性層20(磁化自由層)の磁化の向きと、の相対角度が変化する。
【0046】
この図には、下磁性層10(磁化固定層)の磁化の方向が一例として図示されており、磁化の方向は、この図に示した方向でなくても良い。
【0047】
逆磁歪効果においては、強磁性体の磁歪定数の符号によって磁化の容易軸が変化する。大きな逆磁歪効果を示す多くの材料は、磁歪定数が正の符号を持つ。磁歪定数が正の符号である場合には、上述のように引っ張り応力が加わる方向が磁化容易軸となる。このときには、上記のように、上磁性層20(磁化自由層)の磁化は、磁化容易軸の方向に回転する。
【0048】
例えば、上磁性層20(磁化自由層)の磁歪定数が正である場合には、上磁性層20(磁化自由層)の磁化の方向は、引っ張り応力が加わる方向とは異なる方向に設定する。
【0049】
一方、磁歪定数が負である場合には、引っ張り応力が加わる方向に垂直な方向が磁化容易軸となる。
図6(c)は、磁歪定数が負である場合の状態を例示している。この場合には、上磁性層20(磁化自由層)の磁化の方向は、引っ張り応力が加わる方向(この例ではX軸方向)に対して垂直な方向とは異なる方向に設定する。
この図には、下磁性層10(磁化固定層)の磁化の方向が一例として図示されており、磁化の方向は、この図に示した方向でなくても良い。
【0050】
下磁性層10の磁化と上磁性層20の磁化との間の角度に応じて、センサ部積層体50sの電気抵抗が、例えば、MR効果によって変化する。
【0051】
このように、第1センサ部50a及び第2センサ部50bの電気抵抗は、脈波により第1センサ部50a及び第2センサ部50bに加えられる応力に応じた逆磁歪効果により生じる磁化方向の変化によって変化する。
【0052】
磁歪定数(λs)は、外部磁界を印加して強磁性層をある方向に飽和磁化させたときの形状変化の大きさを示す。外部磁界がない状態で長さLであるときに、外部磁界が印加されたときにΔLだけ変化したとすると、磁歪定数λsは、ΔL/Lで表される。この変化量は外部磁界の大きさによって変わるが、磁歪定数λsは、十分な外部磁界が印加され、磁化が飽和された状態のΔL/Lとしてあらわす。
【0053】
以下、下磁性層10(第1強磁性層10a及び第3強磁性層10b)、上磁性層20(第2強磁性層20a及び第4強磁性層20b)、中間層30(第1中間層30a及び第2中間層30b)、下電極51(第1電極51a及び第3電極51b)、及び、上電極52(第2電極52a及び第4電極52b)の構成の例について説明する。
【0054】
例えば、下磁性層10が磁化固定層である場合、下磁性層10には、例えば、CoFe合金、CoFeB合金及びNiFe合金等を用いることができる。下磁性層10の厚さは、例えば2ナノメートル(nm)以上6nm以下である。
【0055】
中間層30には、金属または絶縁体を用いることができる。金属としては、例えば、Cu、Au及びAg等を用いることができる。金属の場合、中間層30の厚さは、例えば1nm以上7nm以下である。絶縁体としては、例えば、マグネシウム酸化物(MgO等)、アルミ酸化物(Al2O3等)、チタン酸化物(TiO等)、及び、亜鉛酸化物(ZnO等)を用いることができる。絶縁体の場合、中間層30に厚さは、例えば0.6nm以上2.5nm以下である。
【0056】
また、中間層30には、上記のような絶縁体の層の一部に、その層を貫通するナノオーダーの金属電流パスが多数ある、CCP(Current-Confined-Path)中間層の構成を用いても良い。具体的には、アルミ酸化物(Al2O3等)の一部に、Cu,Au,Ag,Ni,Fe,Coなどを含むナノ電流パス構造が形成された場合などである。このときの中間層30の厚さは、例えば1nm以上3nm以下である。また、ナノ電流パスの直径は、0.5nm以上10nm以下である。より具体的には、1nm以上7nm以下である。
【0057】
上磁性層20が磁化自由層である場合、上磁性層20には、例えば、FeCo合金、及び、NiFe合金等を用いることができる。この他、第2強磁性層20には、Fe−Co−Si−B合金、λs>100ppmを示すTb−M−Fe合金(Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er)、Tb−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、M2は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta)、Fe−M3−M4−B合金(M3は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta、M4は、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−Feやフェライト(Fe3O4、(FeCo)3O4)など)等を用いることができる。上磁性層20の厚さは、例えば2nm以上である。
【0058】
上磁性層20は、2層構造を有することができる。この場合、上磁性層20は、FeCo合金の層と、FeCo合金の層と積層された以下の層と、を含むことができる。FeCo合金の層と積層されるのは、Fe−Co−Si−B合金、λs>100ppmを示すTb−M−Fe合金(Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er)、Tb−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、M2は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta)、Fe−M3−M4−B合金(M3は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta、M4は、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−Feやフェライト(Fe3O4、(FeCo)3O4)など)等から選択される材料の層である。
【0059】
下電極51及び上電極52には、例えば、非磁性体であるAu、Cu、Ta、Al等を用いることができる。下電極51及び上電極52として、軟磁性体の材料を用いることで、センサ部積層体50sに影響を及ぼす外部からの磁気ノイズを低減することができる。軟磁性体の材料としては、例えば、パーマロイ(NiFe合金)や珪素鋼(FeSi合金)を用いることができる。センサ部50は、アルミ酸化物(例えばAl2O3)やシリコン酸化物(例えばSiO2)等の絶縁体で覆われる。
【0060】
例えば、中間層30が金属の場合は、GMR(Giant Magnetoresistance)効果が発現する。中間層30が絶縁体の場合は、TMR(Tunneling Magnetoresistance)効果が発現する。例えば、センサ部50においては、例えば、センサ部積層体50sの積層方向に沿って電流を流すCPP(Current Perpendicular to Plane)−GMR効果が用いられる。
【0061】
このように、本実施形態においては、センサ部50における逆磁歪現象が用いられる。これにより、高感度な検出が可能になる。逆磁歪効果を用いる場合、例えば、外部から加えられる歪に対して、下磁性層10及び上磁性層20の少なくともいずれかの磁性層の磁化方向が変化させられる。外部から加えられる歪の有無によって、2つの磁性層の磁化の相対的な角度が変わる。外部から加えられる歪によって電気抵抗が変わるため、センサ部50は、歪センサとして機能する。
【0062】
すなわち、下磁性層10及び上磁性層20の少なくともいずれかの磁性層の磁化方向は、応力に応じて変化する。少なくともいずれかの磁性層(応力に応じて磁化方向が変化する磁性層)の磁歪定数の絶対値は、例えば、10−5以上に設定する。これにより、逆磁歪効果によって、外部から加えられる歪みに応じて磁化の方向が変化する。例えば、下磁性層10及び上磁性層20の少なくともいずれかには、Fe、Co及びNiなどのような金属または、それらを含む合金などが用いられる。用いる元素や添加元素などによって、磁歪定数は大きく設定される。
【0063】
例えば、中間層30としてMgOのような酸化物が用いられる。MgO層上の磁性層は、一般的にプラスの磁歪定数を有する。例えば、中間層30の上に上磁性層20を形成する場合、上磁性層20として、CoFeB/CoFe/NiFeの積層構成の磁化自由層を用いる。最上層のNiFe層をNiリッチにすると、NiFe層の磁歪定数はマイナスでその絶対値が大きくなる。酸化物層上のプラスの磁歪が打ち消されることを抑制するために、最上層のNiFe層のNi組成は、一般的なNiFe合金材料として知られるパーマロイの標準組成Ni81Fe19(atomic%)よりもNiリッチにしない。具体的には、最上層のNiFe層におけるNiの比率は、80原子パーセント(atomic%)未満とすることが好ましい。上磁性層20を磁化自由層とする場合には、上磁性層20の厚さは、例えば、1nm以上20nm以下が好ましい。
【0064】
上磁性層20が磁化自由層である場合において、下磁性層10は、磁化固定層でも磁化自由層でも良い。下磁性層10が磁化固定層である場合、外部から歪が加えられても下磁性層10の磁化の方向は実質的に変化しない。そして、下磁性層10と上磁性層20との間での相対的な磁化の角度によって電気抵抗が変化する。電気抵抗の違いによって歪が検知される。
【0065】
下磁性層10及び上磁性層20の両方が磁化自由層である場合には、例えば、下磁性層10の磁歪定数は、上磁性層20の磁歪定数とは異なるように設定される。
【0066】
下磁性層10が磁化固定層である場合も磁化自由層である場合も、下磁性層10の厚さは、例えば1nm以上20nm以下が好ましい。
【0067】
例えば、下磁性層10が磁化固定層である場合、例えば、下磁性層10には、反強磁性層/磁性層/Ru層/磁性層の積層構造を用いたシンセティックAF構造などを用いることができる。反強磁性層には、例えばIrMnなどが用いられる。また、下磁性層10が磁化固定層である場合に、反強磁性層を用いる代わりに、下磁性層10に、ハード膜を用いる構成を適用しても良い。ハード膜には、例えば、CoPt及びFePtなどが用いられる。
【0068】
センサ部50は、磁性層のスピンが用いられる。センサ部50に必要な面積は、極めて小さいサイズで十分である。センサ部50の面積は、例えば、50nm×50nm〜10μm×10μm以下程度で十分である。製造コストと十分な位置分解能とを得るという観点では、100nm×100nm〜5μm×5μmが好ましい素子サイズである。
【0069】
図7(a)〜図7(d)は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図7(a)に示した例では、センサ部50において、下地層41、反強磁性層42、下磁性層10(例えば磁化固定層)、中間層30、上磁性層20(例えば磁化自由層)及び保護層43が、この順で積層されている。この構成は、例えば、ボトム型スピンバルブ膜と呼ばれる。
【0070】
下地層41は、例えば、下地層41の上に積層される膜の結晶配向性を高める。下地層41には、例えば、アモルファスのTaなどのバッファ効果を有する材料を用いることができる。アモルファスのTaは、例えば、形成する基板との密着性が高い。下地層41には、これらバッファ効果を有する材料に積層して、結晶質のシード効果を有する、Ru、NiFe及びCu等を用いることができる。これらの材料の単層または積層膜を下地層41として用いることで、下地層41の上に形成される層の結晶配向性を向上させることができる。アモルファスTa膜と、結晶質の、Ru、NiFe及びCu等の膜と、の積層構造を採用することで、ぬれ性と結晶配向性とを両立できる。下地層41の厚さは、例えば0.5nm以上5nm以下である。
【0071】
保護層43は、センサ部積層体を製造する際のダメージからセンサ部積層体を保護する。保護層43には、例えば、Cu、Ta及びRu等や、それらの積層膜を用いることができる。保護層43の厚さは、例えば1nm以上20nm以下である。
【0072】
図7(b)に示した例では、下地層41、反強磁性層42、磁化固定層44、反平行結合層45、下磁性層10(例えば磁化固定層)、中間層30、上磁性層20(例えば磁化自由層)及び保護層43が、この順で積層されている。この構成は、例えば、ボトム型シンセティックバルブ膜と呼ばれる。この構成により、下磁性層10(磁化固定層)の磁化の固定力を強めることができる。
【0073】
磁化固定層44の磁化は、反強磁性層42からの交換結合によって、一方向に固定される。磁化固定層44には、下磁性層10(磁化固定層)に用いられる材料と同じ材料を用いることができる。磁化固定層44の厚さは、下磁性層10(磁化固定層)の磁気膜厚(飽和磁化と厚さとの積)と実質的に同じになるように設定される。磁化固定層44の厚さは、例えば2nm以上6nm以下である。
【0074】
反平行結合層45は、下磁性層10(磁化固定層)の磁化と、磁化固定層44の磁化と、を反平行に結合させる。この構成により、反強磁性層42からの交換結合エネルギーが一定でも、下磁性層10(磁化固定層)の磁化の固定磁界を強めることができる。したがって、センサ部積層体50sに加わる磁気ノイズに対する影響を低減できる。反平行結合層45には、例えばRu及びIr等を用いることができる。反平行結合層45の厚さは、例えば0.8nm以上1nm以下である。
【0075】
図7(c)に示した例では、下地層41、上磁性層20(例えば磁化自由層)、中間層30、下磁性層10(例えば磁化固定層)、反強磁性層42及び保護層43が、この順で積層されている。この構成は、例えば、トップ型スピンバルブ膜と呼ばれる。
【0076】
図7(d)に示した例では、下地層41、上磁性層20(例えば磁化自由層)、中間層30、下磁性層10(例えば磁化固定層)、反平行結合層45、磁化固定層44、反強磁性層42及び保護層43が、この順で積層される。この構成は、例えば、トップ型シンセティックスピンバルブ膜と呼ばれる。
【0077】
トップ型スピンバルブ膜及びトップ型シンセティックスピンバルブ膜に含まれる層は、ボトム型スピンバルブ膜及びボトム型シンセティックスピンバルブ膜に含まれる層と同様であるので説明は省略する。
【0078】
上磁性層20の磁化を引っ張り応力と異なる方向に向けておく方法として、下磁性層10の磁化との層間結合を用いる方法がある。中間層30が金属の場合には3nm以下、絶縁体の場合は1.5nm以下で、上磁性層20の磁化が下磁性層10の磁化と平行に揃うように層間結合が働く。従って、下磁性層10の磁化を引っ張り応力と異なる方向に固定することによって、上磁性層20の磁化を弱いエネルギーで同じ方向に向けることが出来る。
【0079】
上磁性層20(磁化自由層)をスパッタ装置で成膜する際に、磁界を印加することによっても上磁性層20の磁化を一方向に向けておくことが出来る。成膜時の磁界の方向に磁化が向きやすくなるので、引っ張り応力と異なる方向に磁界を印加しながらスパッタ法で成膜することが好ましい。
【0080】
本実施形態においては、このようなスピンを用いたセンサ部50が用いられる。これにより、極短距離での脈波伝播速度を計測することが可能になる。
【0081】
本願発明者の検討によると、極短距離での計測の場合、例えば、人体の脈波伝播速度においては、2μs(マイクロ秒)と数mm程度の位置分解能とが必要である。このような時間分解能と、位置分解能と、の2つの観点で、既存のセンサ部の性能は十分ではない。本実施形態においては、上記のようなスピンを用いたセンサ部50を用いることで、時間分解能及び位置分解能の点で十分な性能を発揮できる。例えば、本実施形態に係るセンサ部50を用いることで、数百MHz程度の時間分解能が得られる。また、センサ部50の位置分解能は、前述のような素子サイズで規定されるので、最小で10nm程度である。実質的には、動脈血管210の血流の歪を直接測定しているわけではなく、動脈血管210及び皮膚231を介して歪を測定しているため、それらの間接材料の影響がある。このため、素子サイズの大きさを極限まで小さくしても、そのときの素子サイズが位置分解能になるわけではない。
【0082】
図8は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作状態を例示する模式的斜視図である。
図8に表したように、第1センサ部50aと第2センサ部50bとが、被験者の体230の皮膚231の下の動脈血管210に対向して配置される。そして、動脈血管210の中を流れる血液220の脈波をこれらのセンサ部50で検知する。
【0083】
図9は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を例示するグラフ図である。
図9の横軸は時間tである。縦軸はセンサ部50で検知された歪値Yである。
図9に表したように、例えば、第1センサ部50aで得られる歪値Yに関する第1信号50saの例えばピーク値を示す時刻t1は、第2センサ部50bで得られる歪値Yに関する第2信号50sbの例えばピーク値を示す時刻t2と異なる。
【0084】
例えば、第1センサ部50aによる脈波の検知の時刻を時刻t1とする。第2センサ部50bによる脈波の検知の時刻を時刻t2とする。演算部70は、時刻t1と時刻t2との間の時間(センサ部50間の信号伝播遅れ時間ΔT)を求める。この信号伝搬遅れ時間ΔTから脈波伝播速度を求めることができる。
【0085】
実施形態においては、極短距離(例えば、センサ部50どうしの距離dが1cmなど)での計測により、実質的に1箇所で測定可能である。これにより測定の際煩雑さがなくなる。その一方で、極短距離での計測においては、脈波の検出の時間差は極めて短い。このため、第1信号50saの波形は、第2信号50sbの波形とほとんど一致してしまう。第1信号50sa及び第2信号50sbから正確に脈波伝播速度を算出するために、例えば、自己相関信号処理を行う。これにより、正確に脈波伝播速度を算出することができる。第1信号50saの波形は、第2信号50sbの波形と殆ど同じであり、時間的に少しのズレがあるだけである。自己相関信号処理を行うことで、このような波形のずれ量を高い精度で検出することができる。
【0086】
図10は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を例示するフローチャート図である。
図10は、自己相関信号処理の例を表している。
図10に表したように、第1センサ部50aと第2センサ部50bとで、脈波に応じた歪値Yを検知する(ステップS110)。すなわち、第1測定点(位置=x)と、第2測定点(位置=x+d)と、におけるセンサ部50の歪値Yを求める。具体的には、第1センサ部50aで第1歪値Y1を求め、第2センサ部50bで第2歪値Y2を求める。
【0087】
この結果から、それぞれの測定点における圧力値、すなわち、以下の第1圧力値P1(x)及び第2圧力値P2(x+d)を導出する(ステップS120)。
P1(x)=aY1、
P2(x+d)=aY2
ここで、aは、ひずみ値から圧力値への変換係数である。演算は、一般的にマトリックス計算となる。
【0088】
血圧Pとして、この2点の圧力値(第1圧力値P1(x)及び第2圧力値P2(x+d))の平均値を求める(ステップS130)。
【0089】
なお、血流速度(脈波伝播速度)を求めるだけの場合は、圧力値に変換しても変換しなくてよい。この場合は、得られた歪値Yの時間遅れだけを検出する。
【0090】
時間遅れτに関して、遅れ時間ΔTが同定できるまで相互相関値Iを算出する。すなわち、第1歪値Y1及び第2歪値Y2を比較するときに、時間tをずらして比較したそれぞれの値を算出する。具体的な演算は、平均化処理も加えて、それぞれの時間tに対して以下の式となる。
【0091】
【数1】
ここで、Nは、総測定回数である。2点間の測定位置で信号の到達速度が確定するまで、すなわち、I1,2(τ)が最も大きいτが確定するまで、測定を繰り返す(ステップS140)。
【0092】
この結果により得られたτが、遅れ時間ΔTとなる。すなわち、遅れ時間ΔTを決定する(ステップS150)。
【0093】
さらに、血流速度(脈波伝播速度)Vを、d/ΔTにより算出する(ステップS160)で求める。
【0094】
図11は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を例示するグラフ図である。
図11の横軸は時間tである。縦軸は、第1信号50saと第2信号50sbとの歪値Y(第1歪値Y1及び第2歪値Y2)を求める。第1の相互相関値Iである。
【0095】
このように、相互相関値Iは、ずらした時間tが遅れ時間ΔTのときに最大になる。このようにして、遅れ時間ΔTを求めることができる。
【0096】
このような相互相関処理は、例えば、演算部70において実施することができる。すなわち、演算部70における検知の時刻の差の導出は、第1センサ部50aによる脈波の検知の信号(第1信号50sa)と、第2センサ部50bによる脈波の検知の信号(第2信号50sb)と、を自己相関信号処理することを含むことができる。
【0097】
図12は、第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置の構成を例示する模式的断面図である。
この図では、計測センサ310の部分だけを図示しており、演算部70は省略している。
図12に表したように、本実施形態に係る脈波伝播速度計測装置411においては、第1センサ部50a及び第2センサ部50bは、ダイアフラムをさらに含む。すなわち、第1センサ部50aは、第1センサ部50aのセンサ部積層体50sに接続された第1ダイアフラム50Daを有する。第2センサ部50bは、第1センサ部50bのセンサ部積層体50sに接続された第2ダイアフラム50Dbを有する。
【0098】
この例では、第1ダイアフラム50Daは、基体60上に設けられた第1支持体50Haの上に設けられている。第2ダイアフラム50Dbは、基体60上に設けられた第2支持体50Hbの上に設けられている。第1ダイアフラム50Da及び第2ダイアフラム50Dbは、基体60と離間しており、動くことができる。これにより脈波を圧力で受けることができ、検知の感度が向上する。
【0099】
図13は、第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置の構成を例示する模式的断面図である。
この図では、計測センサ310の部分だけを図示しており、演算部70は省略している。
図13に表したように、本実施形態に係る脈波伝播速度計測装置412においては、基体60は、粘着層61を有する。粘着層61により、計測センサ310を被験者の体230へ固定する。これにより、より便利になる。
【0100】
図14は、第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置の構成を例示する模式図である。
図14に表したように、本実施形態に係る脈波伝播速度計測装置413においては、基体60として、柔らかいフィルムが用いられている。そのフィルム上に2つ以上のセンサ部50が設けられている。この例では、センサ部50の近傍に演算部70が設けられている。センサ部50及び演算部70の周囲のフィルム上に粘着層61が設けられている。脈波伝播速度計測装置413を使用する前には、粘着層61はセパレータフィルム63で覆われている。使用するときに、セパレータフィルム63を剥がして、粘着層61によって、脈波伝播速度計測装置413を体230に付着させる。基体60として柔らかいフィルムを用いることで、使用者によって違和感が少なくなる。脈波伝播速度計測装置413は、例えば、絆創膏のように体230に貼り付けることができる。これにより、日常生活をしながらの連続的な測定がより容易になる。この例において、演算部70は、基体60とは別に設けても良い。
【0101】
図15(a)〜図15(d)は、第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置の構成及び使用状態を例示する模式図である。
図15(a)は、本実施形態に係る脈波伝播速度計測装置414の構成を例示する模式的分解斜視図である。図15(b)は、脈波伝播速度計測装置414の使用状態を表す模式図である。図15(c)及び図15(d)は、脈波伝播速度計測装置414の使用状態を表す模式的断面図である。
【0102】
図15(a)に表したように、脈波伝播速度計測装置413は、4つのセンサ部50を有する。例えば、計測センサ310を体230に付着させるときの不具合などにより、例えば1つのセンサ部50が動脈血管210の脈波を検知し難い場合が生じる。このとき、3つ以上のセンサ部50を設けることで、このような場合においても、それ以外のセンサ部50で脈波を検知できるため、所望の動作を実施し易くなる。
【0103】
この例では、センサ部50の周囲にスペーサ63が設けられている。スペーサ63は、例えば柔らかいゴム製であり、厚さは例えば約0.5mmである。このようなスペーサ63を設けることで、使用者の違和感を低減することができる。スペーサ63を必要に応じて設けられ省略しても良い。
【0104】
図15(b)に表したように、計測センサ310は、体230(例えば手首など)に付着させる。計測センサ310のサイズは、例えば約20mm×約20mmである。
【0105】
図15(c)に表したように、基体60が柔らかい場合は、基体60が、体230(例えば手首)の形状に沿って曲がる。ただし、図15(d)に表したように、基体60の剛性が比較的高く、基体60は実質的に平面状を維持しても良い。
【0106】
図16は、第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置の構成を例示する模式的断面図である。
図16に表したように、本実施形態に係る脈波伝播速度計測装置415においては、演算部70が、基体60上に設けられている。これにより、装置がより小型化できより、便利になる。
【0107】
(第2の実施形態)
本実施形態は、脈波伝播速度計測方法に係る。
図17は、第2の実施形態に係る脈波伝播速度計測方法を例示するフローチャート図である。
図17に表したように、本測定方法では、基体60と、基体60に保持された第1センサ部50aと、第1センサ部50aと離間して基体60に保持され第1センサ部50aとの距離が基体60により規定された第2センサ部50bと、を有する計測センサ310を、被検体に接触させてその被検体が有する管(例えば動脈血管210)の内部を伝播する脈波を第1センサ部50aと第2センサ部50bとで検知する(ステップ210)。
【0108】
本測定方法では、第1センサ部50aによる脈波の検知の時刻t1と、第2センサ部50bによる脈波の検知の時刻t2と、の差に基づいて脈波伝播速度を導出する。
例えば、図10に関して説明した処理を実施する。
【0109】
これにより、局所的な計測範囲で脈波伝播速度を計測できる脈波伝播速度計測方法が提供できる。
【0110】
上記の第1及び第2の実施形態において、センサ部50は、管の内部を伝播する脈波を検知する。上記の例では、この管が血管である場合として説明したが、実施形態はこれに限らない。例えば、センサ部50は、リンパ管の内部を伝播する脈波を検知しても良い。実施形態は、生物(動植物など)が有する、脈波が伝達する任意の管に適用できる。また、実施形態は、非生物に設けられる、脈波が伝達する任意の管に適用できる。
【0111】
実施形態によれば、局所的な計測範囲で脈波伝播速度を計測できる脈波伝播速度計測装置及び脈波伝播速度計測方法が提供される。
【0112】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、脈波伝播速度計測装置に含まれる第1センサ部、第2センサ部、基体、演算部、第1〜第4強磁性層、第1、第2中間層、ダイアフラム及び粘着層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0113】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0114】
その他、本発明の実施の形態として上述した脈波伝播速度計測装置及び脈波伝播速度計測方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての脈波伝播速度計測装置及び脈波伝播速度計測方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0115】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
10…下磁性層、 10a…第1強磁性層、 10b…第3強磁性層、 20…上磁性層、 20a…第2強磁性層、 20b…第4強磁性層、 30…中間層、 30a…第1中間層、 30b…第2中間層、 41…下地層、 42…反強磁性層、 43…保護層、 44…磁化固定層、 45…反平行結合層、 50…センサ部、 50Da、50Db…第1及び第2ダイアフラム、 50Ha、50Hb…第1及び第2支持体、 50a、50b…第1及び第2センサ部、 50s…センサ部積層体、 50sa、50sb…第1及び第2信号、 51…下電極、 51a…第1電極、 51b…第3電極、 52…上電極、 52a…第2電極、 52b…第4電極、 60…基体、 61…粘着層、 62…セパレータフィルム、 63…スペーサ、 70…演算部、 70s…演算結果、 210…動脈血管(管)、 220…血液、 230…体、 231…皮膚、 310、311…センサ、 410〜413…脈波伝播速度計測装置、 ΔT…遅れ時間、 Y…歪値、 d…距離、 t…時間、 t1、t2…時刻
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、脈波伝播速度計測装置及び脈波伝播速度計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧などの測定のために、例えば、脈波伝播速度(PWV:pulse wave velocity)を測定することが行われる。この方法では、例えば、心臓の近傍の測定点と、心臓から離れた例えば手首などの測定点と、における脈波の測定時刻の差から、PWVを求める。この例では、大きく離れた2つの測定点から配線が延びるため、被検者は煩雑さを感じる。また、装置の小型化は困難であり、日常生活をしながらの連続的な測定も困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−321253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、局所的な計測範囲で脈波伝播速度を計測できる脈波伝播速度計測装置及び脈波伝播速度計測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、第1センサ部と、第2センサ部と、基体と、演算部と、を含む脈波伝播速度計測装置が提供される。前記第1センサ部は、管の内部を伝播する脈波を検知する。前記第2センサ部は、前記第1センサ部と離間し前記脈波を検知する。前記基体は、前記第1センサ部と前記第2センサ部とを保持し前記第1センサ部と前記第2センサ部との間の距離を規定する。前記演算部は、前記第1センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、前記第2センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、の差を導出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の使用状態を示す模式図である。
【図3】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の使用状態を示す模式図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を示す模式的断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置を示す模式図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を示す模式的斜視部である。
【図7】図7(a)〜図7(d)は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の一部を示す模式的斜視図である。
【図8】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作状態を示す模式的斜視図である。
【図9】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を示すグラフ図である。
【図10】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を示すフローチャート図である。
【図11】第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を示すグラフ図である。
【図12】第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置を示す模式的断面図である。
【図13】第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置を示す模式的断面図である。
【図14】第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置を示す模式図である。
【図15】図15(a)〜図15(d)は、第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置の構成及び使用状態を示す模式図である。
【図16】第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置を示す模式的断面図である。
【図17】第2の実施形態に係る脈波伝播速度計測方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の構成を例示する模式図である。 図1に表したように、本実施形態に係る脈波伝播速度計測装置410は、第1センサ部50aと、第2センサ部50bと、基体60と、演算部70と、を含む。
【0009】
第1センサ部50aは、管(例えば血管)の内部を伝播する脈波を検知する。第2センサ部50bは、第1センサ部50aと離間している。第2センサ部50bも、その脈波を検知する。第1センサ部50aは、例えば、管の内部を伝播する脈波による歪を検知する。第2センサ部50bは、例えば、その脈波による歪を検知する。
【0010】
基体60は、第1センサ部50aと第2センサ部50bとを保持する。基体60は、第1センサ部50aと第2センサ部50bとの間の距離dを規定する。
【0011】
基体60には、例えば、第1センサ部50a及び第2センサ部50bを製造する際に用いられる基板(例えばシリコン基板など)を用いることができる。また、基体60には、例えば、第1センサ部50a及び第2センサ部50bを実装するためのプリント基板などを用いることができる。基体60には、プラスチック基板などを用いることもでき、基体60は可撓性を有していても良い。
【0012】
第1センサ部50aから第2センサ部50bに向かう方向を第1方向とする。本願明細書においては、第1センサ部50aと第2センサ部50bとの間の距離dは、便宜的に、第1方向に沿った第1センサ部50aの中心と、第1方向に沿った第2センサ部50bの中心と、の間の距離とする。
【0013】
基体60は、第1センサ部50aと第2センサ部50bとの間の距離dが実質的に一定になるように、第1センサ部50aと第2センサ部50bとを保持する。基体60が可撓性を有している場合も、基体60は、第1センサ部50aと第2センサ部50bとの間の距離dを実質的に一定に規定している。
【0014】
第1センサ部50a、第2センサ部50b及び基体60は一体的である。本実施形態に係る計測センサ310は、第1センサ部50a、第2センサ部50b及び基体60を含むものとする。
【0015】
本実施形態に係る計測センサ310は、管の内部を伝播する脈波による歪を検知する第1センサ部50aと、第1センサ部50aと離間し脈波による歪を検知する第2センサ部50bと、第1センサ部50aと第2センサ部50aとを保持し第1センサ部50aと第2センサ部50bとの間の距離を規定する基体60と、を含む。
【0016】
また、説明を簡単にするために、第1センサ部50a及び第2センサ部50bを合わせてセンサ部50と呼ぶ場合がある。
【0017】
演算部70は、第1センサ部50aによる脈波の検知の時刻と、第2センサ部50bによる脈波の検知の時刻と、の差を導出する。
【0018】
本実施形態においては、1つの基体60に2つ以上のセンサ部50が設けられる。このため、実質的に1箇所で脈波が検出される。本実施形態によれば、局所的な計測範囲で脈波伝播速度を計測できる脈波伝播速度計測装置が提供できる。
【0019】
距離dは、1mm以上5cm以下である。距離dは、5mm以上2cm以下であることがさらに好ましい。測定するときに、実質的に一体ものとして扱うためには、この程度の小さいサイズが好ましいからである。
【0020】
図2は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の使用状態を例示する模式図である。
図2においては、計測センサ310が図示されているが、演算部70は省略されている。
【0021】
図3に表したように、計測センサ310は、例えば手首に接触して装着される。手首の動脈血管210(管)に対向して第1センサ部50a及び第2センサ部50bが配置される。動脈血管210の中には、血液220(液体)が流れる。血液220の流れは、脈波による流れである。
【0022】
距離dを小さく(例えば5cm以下)に設定することで、実質的に1箇所の測定点で、脈波を検出することができる。
【0023】
計測センサ310は、手首だけでなく、種々の位置に配置できる。計測センサ310は、例えば血圧測定部位に配置される。例えば、計測センサ310は、皮膚表面に、例えば粘着剤などにより、付着される。計測センサ310は、皮膚上に接するように配置される。計測センサ310は、例えば、皮膚の表面の近傍に動脈血管210が存在しているような皮膚の上に配置される。例えば、計測センサ310が配置される部位は、被検者の体の表面から脈動を検知できる部位である。
【0024】
この部位(および体表下にある動脈)は、例えば、以下の通りである。内側上腕二頭筋溝(上腕動脈)、前腕外側下端で橈側手根屈筋腱と腕橈骨筋腱との間(橈骨動脈)、前腕内側下端で尺側手根屈筋腱と浅指屈筋腱との間(尺骨動脈)、長母指伸筋腱の尺側(第1背側中手動脈)、腋窩(腋窩動脈)、大腿三角部(大腿動脈)、下腿前面の下部で前脛骨筋腱の外側(前脛骨動脈)、内果の後下部(後脛骨動脈)、長母指伸筋腱の外側(足背動脈)、頚動脈三角(総頚動脈)、咬筋停止部の前(顔面動脈)、胸鎖乳突筋停止部の後ろで僧帽筋起始部との間(後頭動脈)、外耳孔の前(浅側頭動脈)。計測センサ310は、例えば、このような部位に配置される。
【0025】
これに対して、例えば、従来のPWVの測定においては、心臓の近傍の測定点と、心臓から離れた例えば手首などの測定点と、が用いられる。このため、煩雑さがあり、装置の小型化が困難である。さらに、日常生活をしながらの連続的な測定も困難である。また、血管をモデル化して血圧を算出しているが、実際には心臓と腕などの2点間において血管は単一モデルで扱うことはできない。このため、測定誤差が大きい。例えば、10mmHg程度の誤差がある。
【0026】
本願発明者は、このように、大きく離れた2つ測定点で測定することは煩雑なため使い難く、また、測定精度が低いことに着目した。人間の感覚として実質的に1点と感じられる測定箇所で、高い精度でPWVを測定することを新たな課題として見出した。
【0027】
本実施形態においては、大きく離れた2つの測定点での測定ではなく、局所的な計測範囲で測定を行う。局所的な計測範囲で脈波伝播速度を計測できることから、被検者が感じる煩雑さが著しく低減できる。また、装置が小型化できる。さらに、日常生活をしながらの連続的な測定も容易になる。そして、局所的な計測であるため、血管は単一モデルとして扱うことができ、高い測定精度が得られる。
【0028】
図3は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の使用状態を例示する模式図である。
図3に表したように、被験者の体230の皮膚231の下に動脈血管210がある。動脈血管210の中を血液220が流れる。動脈血管210の脈波を局所的に配置された第1センサ部50a及び第2センサ部50bで検知する。第1センサ部50aにおける脈波の検知信号(第1信号50sa)と、第2センサ部50bにおける脈波の検知信号(第2信号50sb)と、が、演算部70に供給される。演算部70は、それらの信号に基づいて、第1センサ部50aによる脈波の検知の時刻と、第2センサ部50bによる脈波の検知の時刻と、の差を導出する。さらに、演算部70では、その時刻の差と、距離dと、からPWVを求めることができる。演算部70は、演算結果70s(例えば、時刻の差、及び、PWVの少なくともいずれか)を出力する。
脈波伝播速度計測装置410によれば、局所的な計測範囲で脈波伝播速度を計測できる。
【0029】
第1センサ部50a及び第2センサ部50bと、演算部70と、は、例えば、有線または無線(電波信号または光信号による通信を含む)で接続される。例えば、第1センサ部50aの第1信号50sa及び第2センサ部50bの第2信号50sbは、配線などで、演算部70に供給される。また、例えば、基体60上に無線送信回路が設けられ、第1信号50sa及び第2信号50sbは、その無線送信回路によって、演算部70に供給されても良い。
【0030】
図4(a)及び図4(b)は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を例示する模式的断面図である。
図4(a)は、動脈血管210の収縮を例示している。図4(b)は、測定時のセンサ部50の状態を例示している。
【0031】
図4(a)に表したように、動脈血管210内を血液220が脈波により流れることで、動脈血管210が径方向に対して伸縮して血圧が作用する。
【0032】
図4(b)に表したように、動脈血管210が径方向に対して拡張すると、皮膚231が押し上げられる。このとき、血圧が働く方向に対して垂直方向に皮膚231は、引っ張り応力を受ける。それと同時に、センサ部50にも引っ張り応力が一定の方向に働く。
【0033】
後述するように、センサ部50に電流が流される。センサ部50に加わる引っ張り応力に応じて、センサ部50の電気抵抗が変化する。これに基づいて、センサ部50により、脈波が検出される。
【0034】
以下、センサ部50の構成の1つの例について説明し、その動作について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の構成を例示する模式図である。 図5は、本実施形態に係る計測センサ310の1つの例である計測センサ311の断面の構成を例示している。
図5に表したように、第1センサ部50aは、第1強磁性層10aと、第2強磁性層20aと、第1強磁性層10aと第2強磁性層20aとの間に設けられた非磁性の第1中間層30aと、を含む。第2センサ部50bは、第3強磁性層10bと、第4強磁性層20bと、第3強磁性層10bと第4強磁性層20bとの間に設けられた非磁性の第2中間層30bと、を含む。
【0035】
例えば、第3強磁性層10bには、第1強磁性層10aに用いられる材料と同じ材料を用いることができる。例えば、第4強磁性層20bには、第3強磁性層20aに用いられる材料と同じ材料を用いることができる。例えば、第2中間層30bには、第1中間層30aに用いられる材料と同じ材料を用いることができる。この例では、第3強磁性層10bは、第1強磁性層10aと同層である。第4強磁性層20bは、第2強磁性層20aと同層である。第2中間層30bは、第1中間層30aと同層である。
【0036】
第1センサ部50aは、第1電極51aと第2電極52aとをさらに含むことができる。第1電極51aと第2電極52aとの間に第1強磁性層10aが配置され、第1強磁性層10aと第2電極52aとの間に第2強磁性層20aが配置される。
【0037】
第2センサ部50bは、第3電極51bと第4電極52bとをさらに含むことができる。第3電極51bと第4電極52bとの間に第3強磁性層10bが配置され、第3強磁性層10bと第4電極52bとの間に第4強磁性層20bが配置される。
【0038】
以下では、説明を簡単にするために、第1強磁性層10a及び第3強磁性層10bを、便宜的に下磁性層10と言うことにする。第2強磁性層20a及び第4強磁性層20bを、便宜的に上磁性層20と言うことにする。第1中間層30a及び第2中間層30bを、便宜的に中間層30と言うことにする。また、下磁性層10、中間層30及び上磁性層20を、適宜、センサ部積層体50sと言うことにする。第1電極51a及び第3電極51bを、便宜的に下電極51と言うことにする。第2電極52a及び第4電極52bを、便宜的に上電極52と言うことにする。
【0039】
上記において、「上」及び「下」に関して、基体60との相対的な上下関係は任意である。例えば、基体60の上に「上磁性層20」が配置され、その上に中間層30が配置され、その上に「下磁性層10」が配置されていても良い。
【0040】
センサ部50において、例えば、下磁性層10及び上磁性層20のいずれか一方は、磁化自由層である。下磁性層10及び上磁性層20のいずれか他方は、例えば、磁化固定層である。ただし、後述するように、下磁性層10及び上磁性層20の両方が磁化自由層でも良い。
【0041】
以下では、センサ部50の動作の例について、下磁性層10が磁化固定層であり、上磁性層20が磁化自由層である場合について説明する。センサ部50においては、強磁性体が有する「逆磁歪効果」と、センサ部積層体50sで発現する「MR効果」と、が利用される。
【0042】
「MR効果」は、センサ部積層体50sに電流を流すことで、磁化の向きの相対角度の変化を電気抵抗変化として読み取ることで発現する。既に説明したように、脈波によりセンサ部50に引っ張り応力が加わる。上磁性層20(磁化自由層)の磁化の向きと、上磁性層20に加わる引っ張り応力の方向と、が異なるときに、逆磁歪効果によりMR効果が発現する。MR効果によって変化する電気抵抗の変化量は、「MR変化量」である。抵抗変化量ΔRを、最小抵抗値Rで除した値、すなわち、ΔR/Rを「MR変化率」という。
【0043】
図6(a)〜図6(c)は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を例示する模式的斜視部である。
これらの図は、センサ部50のセンサ部積層体50sにおける磁化の方向と、引っ張り応力の方向と、の関係を例示している。
【0044】
図6(a)は、引っ張り応力が印加されていない状態を示す。このとき、この例では、下磁性層10(磁化固定層)の磁化の向きは、上磁性層20(磁化自由層)の磁化の向きと、同じである。
【0045】
図6(b)は、引っ張り応力が印加された状態を示している。この例では、X軸方向に沿って引っ張り応力が印加されている。このとき、引っ張り応力の方向と同じ方向になるように、上磁性層20(磁化自由層)の磁化が回転する。これを「逆磁歪効果」という。このとき、下磁性層10(磁化固定層)の磁化は固定されている。上磁性層20(磁化自由層)の磁化が回転することで、下磁性層10(磁化固定層)の磁化の向きと、上磁性層20(磁化自由層)の磁化の向きと、の相対角度が変化する。
【0046】
この図には、下磁性層10(磁化固定層)の磁化の方向が一例として図示されており、磁化の方向は、この図に示した方向でなくても良い。
【0047】
逆磁歪効果においては、強磁性体の磁歪定数の符号によって磁化の容易軸が変化する。大きな逆磁歪効果を示す多くの材料は、磁歪定数が正の符号を持つ。磁歪定数が正の符号である場合には、上述のように引っ張り応力が加わる方向が磁化容易軸となる。このときには、上記のように、上磁性層20(磁化自由層)の磁化は、磁化容易軸の方向に回転する。
【0048】
例えば、上磁性層20(磁化自由層)の磁歪定数が正である場合には、上磁性層20(磁化自由層)の磁化の方向は、引っ張り応力が加わる方向とは異なる方向に設定する。
【0049】
一方、磁歪定数が負である場合には、引っ張り応力が加わる方向に垂直な方向が磁化容易軸となる。
図6(c)は、磁歪定数が負である場合の状態を例示している。この場合には、上磁性層20(磁化自由層)の磁化の方向は、引っ張り応力が加わる方向(この例ではX軸方向)に対して垂直な方向とは異なる方向に設定する。
この図には、下磁性層10(磁化固定層)の磁化の方向が一例として図示されており、磁化の方向は、この図に示した方向でなくても良い。
【0050】
下磁性層10の磁化と上磁性層20の磁化との間の角度に応じて、センサ部積層体50sの電気抵抗が、例えば、MR効果によって変化する。
【0051】
このように、第1センサ部50a及び第2センサ部50bの電気抵抗は、脈波により第1センサ部50a及び第2センサ部50bに加えられる応力に応じた逆磁歪効果により生じる磁化方向の変化によって変化する。
【0052】
磁歪定数(λs)は、外部磁界を印加して強磁性層をある方向に飽和磁化させたときの形状変化の大きさを示す。外部磁界がない状態で長さLであるときに、外部磁界が印加されたときにΔLだけ変化したとすると、磁歪定数λsは、ΔL/Lで表される。この変化量は外部磁界の大きさによって変わるが、磁歪定数λsは、十分な外部磁界が印加され、磁化が飽和された状態のΔL/Lとしてあらわす。
【0053】
以下、下磁性層10(第1強磁性層10a及び第3強磁性層10b)、上磁性層20(第2強磁性層20a及び第4強磁性層20b)、中間層30(第1中間層30a及び第2中間層30b)、下電極51(第1電極51a及び第3電極51b)、及び、上電極52(第2電極52a及び第4電極52b)の構成の例について説明する。
【0054】
例えば、下磁性層10が磁化固定層である場合、下磁性層10には、例えば、CoFe合金、CoFeB合金及びNiFe合金等を用いることができる。下磁性層10の厚さは、例えば2ナノメートル(nm)以上6nm以下である。
【0055】
中間層30には、金属または絶縁体を用いることができる。金属としては、例えば、Cu、Au及びAg等を用いることができる。金属の場合、中間層30の厚さは、例えば1nm以上7nm以下である。絶縁体としては、例えば、マグネシウム酸化物(MgO等)、アルミ酸化物(Al2O3等)、チタン酸化物(TiO等)、及び、亜鉛酸化物(ZnO等)を用いることができる。絶縁体の場合、中間層30に厚さは、例えば0.6nm以上2.5nm以下である。
【0056】
また、中間層30には、上記のような絶縁体の層の一部に、その層を貫通するナノオーダーの金属電流パスが多数ある、CCP(Current-Confined-Path)中間層の構成を用いても良い。具体的には、アルミ酸化物(Al2O3等)の一部に、Cu,Au,Ag,Ni,Fe,Coなどを含むナノ電流パス構造が形成された場合などである。このときの中間層30の厚さは、例えば1nm以上3nm以下である。また、ナノ電流パスの直径は、0.5nm以上10nm以下である。より具体的には、1nm以上7nm以下である。
【0057】
上磁性層20が磁化自由層である場合、上磁性層20には、例えば、FeCo合金、及び、NiFe合金等を用いることができる。この他、第2強磁性層20には、Fe−Co−Si−B合金、λs>100ppmを示すTb−M−Fe合金(Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er)、Tb−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、M2は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta)、Fe−M3−M4−B合金(M3は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta、M4は、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−Feやフェライト(Fe3O4、(FeCo)3O4)など)等を用いることができる。上磁性層20の厚さは、例えば2nm以上である。
【0058】
上磁性層20は、2層構造を有することができる。この場合、上磁性層20は、FeCo合金の層と、FeCo合金の層と積層された以下の層と、を含むことができる。FeCo合金の層と積層されるのは、Fe−Co−Si−B合金、λs>100ppmを示すTb−M−Fe合金(Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er)、Tb−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、M2は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta)、Fe−M3−M4−B合金(M3は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta、M4は、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−Feやフェライト(Fe3O4、(FeCo)3O4)など)等から選択される材料の層である。
【0059】
下電極51及び上電極52には、例えば、非磁性体であるAu、Cu、Ta、Al等を用いることができる。下電極51及び上電極52として、軟磁性体の材料を用いることで、センサ部積層体50sに影響を及ぼす外部からの磁気ノイズを低減することができる。軟磁性体の材料としては、例えば、パーマロイ(NiFe合金)や珪素鋼(FeSi合金)を用いることができる。センサ部50は、アルミ酸化物(例えばAl2O3)やシリコン酸化物(例えばSiO2)等の絶縁体で覆われる。
【0060】
例えば、中間層30が金属の場合は、GMR(Giant Magnetoresistance)効果が発現する。中間層30が絶縁体の場合は、TMR(Tunneling Magnetoresistance)効果が発現する。例えば、センサ部50においては、例えば、センサ部積層体50sの積層方向に沿って電流を流すCPP(Current Perpendicular to Plane)−GMR効果が用いられる。
【0061】
このように、本実施形態においては、センサ部50における逆磁歪現象が用いられる。これにより、高感度な検出が可能になる。逆磁歪効果を用いる場合、例えば、外部から加えられる歪に対して、下磁性層10及び上磁性層20の少なくともいずれかの磁性層の磁化方向が変化させられる。外部から加えられる歪の有無によって、2つの磁性層の磁化の相対的な角度が変わる。外部から加えられる歪によって電気抵抗が変わるため、センサ部50は、歪センサとして機能する。
【0062】
すなわち、下磁性層10及び上磁性層20の少なくともいずれかの磁性層の磁化方向は、応力に応じて変化する。少なくともいずれかの磁性層(応力に応じて磁化方向が変化する磁性層)の磁歪定数の絶対値は、例えば、10−5以上に設定する。これにより、逆磁歪効果によって、外部から加えられる歪みに応じて磁化の方向が変化する。例えば、下磁性層10及び上磁性層20の少なくともいずれかには、Fe、Co及びNiなどのような金属または、それらを含む合金などが用いられる。用いる元素や添加元素などによって、磁歪定数は大きく設定される。
【0063】
例えば、中間層30としてMgOのような酸化物が用いられる。MgO層上の磁性層は、一般的にプラスの磁歪定数を有する。例えば、中間層30の上に上磁性層20を形成する場合、上磁性層20として、CoFeB/CoFe/NiFeの積層構成の磁化自由層を用いる。最上層のNiFe層をNiリッチにすると、NiFe層の磁歪定数はマイナスでその絶対値が大きくなる。酸化物層上のプラスの磁歪が打ち消されることを抑制するために、最上層のNiFe層のNi組成は、一般的なNiFe合金材料として知られるパーマロイの標準組成Ni81Fe19(atomic%)よりもNiリッチにしない。具体的には、最上層のNiFe層におけるNiの比率は、80原子パーセント(atomic%)未満とすることが好ましい。上磁性層20を磁化自由層とする場合には、上磁性層20の厚さは、例えば、1nm以上20nm以下が好ましい。
【0064】
上磁性層20が磁化自由層である場合において、下磁性層10は、磁化固定層でも磁化自由層でも良い。下磁性層10が磁化固定層である場合、外部から歪が加えられても下磁性層10の磁化の方向は実質的に変化しない。そして、下磁性層10と上磁性層20との間での相対的な磁化の角度によって電気抵抗が変化する。電気抵抗の違いによって歪が検知される。
【0065】
下磁性層10及び上磁性層20の両方が磁化自由層である場合には、例えば、下磁性層10の磁歪定数は、上磁性層20の磁歪定数とは異なるように設定される。
【0066】
下磁性層10が磁化固定層である場合も磁化自由層である場合も、下磁性層10の厚さは、例えば1nm以上20nm以下が好ましい。
【0067】
例えば、下磁性層10が磁化固定層である場合、例えば、下磁性層10には、反強磁性層/磁性層/Ru層/磁性層の積層構造を用いたシンセティックAF構造などを用いることができる。反強磁性層には、例えばIrMnなどが用いられる。また、下磁性層10が磁化固定層である場合に、反強磁性層を用いる代わりに、下磁性層10に、ハード膜を用いる構成を適用しても良い。ハード膜には、例えば、CoPt及びFePtなどが用いられる。
【0068】
センサ部50は、磁性層のスピンが用いられる。センサ部50に必要な面積は、極めて小さいサイズで十分である。センサ部50の面積は、例えば、50nm×50nm〜10μm×10μm以下程度で十分である。製造コストと十分な位置分解能とを得るという観点では、100nm×100nm〜5μm×5μmが好ましい素子サイズである。
【0069】
図7(a)〜図7(d)は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図7(a)に示した例では、センサ部50において、下地層41、反強磁性層42、下磁性層10(例えば磁化固定層)、中間層30、上磁性層20(例えば磁化自由層)及び保護層43が、この順で積層されている。この構成は、例えば、ボトム型スピンバルブ膜と呼ばれる。
【0070】
下地層41は、例えば、下地層41の上に積層される膜の結晶配向性を高める。下地層41には、例えば、アモルファスのTaなどのバッファ効果を有する材料を用いることができる。アモルファスのTaは、例えば、形成する基板との密着性が高い。下地層41には、これらバッファ効果を有する材料に積層して、結晶質のシード効果を有する、Ru、NiFe及びCu等を用いることができる。これらの材料の単層または積層膜を下地層41として用いることで、下地層41の上に形成される層の結晶配向性を向上させることができる。アモルファスTa膜と、結晶質の、Ru、NiFe及びCu等の膜と、の積層構造を採用することで、ぬれ性と結晶配向性とを両立できる。下地層41の厚さは、例えば0.5nm以上5nm以下である。
【0071】
保護層43は、センサ部積層体を製造する際のダメージからセンサ部積層体を保護する。保護層43には、例えば、Cu、Ta及びRu等や、それらの積層膜を用いることができる。保護層43の厚さは、例えば1nm以上20nm以下である。
【0072】
図7(b)に示した例では、下地層41、反強磁性層42、磁化固定層44、反平行結合層45、下磁性層10(例えば磁化固定層)、中間層30、上磁性層20(例えば磁化自由層)及び保護層43が、この順で積層されている。この構成は、例えば、ボトム型シンセティックバルブ膜と呼ばれる。この構成により、下磁性層10(磁化固定層)の磁化の固定力を強めることができる。
【0073】
磁化固定層44の磁化は、反強磁性層42からの交換結合によって、一方向に固定される。磁化固定層44には、下磁性層10(磁化固定層)に用いられる材料と同じ材料を用いることができる。磁化固定層44の厚さは、下磁性層10(磁化固定層)の磁気膜厚(飽和磁化と厚さとの積)と実質的に同じになるように設定される。磁化固定層44の厚さは、例えば2nm以上6nm以下である。
【0074】
反平行結合層45は、下磁性層10(磁化固定層)の磁化と、磁化固定層44の磁化と、を反平行に結合させる。この構成により、反強磁性層42からの交換結合エネルギーが一定でも、下磁性層10(磁化固定層)の磁化の固定磁界を強めることができる。したがって、センサ部積層体50sに加わる磁気ノイズに対する影響を低減できる。反平行結合層45には、例えばRu及びIr等を用いることができる。反平行結合層45の厚さは、例えば0.8nm以上1nm以下である。
【0075】
図7(c)に示した例では、下地層41、上磁性層20(例えば磁化自由層)、中間層30、下磁性層10(例えば磁化固定層)、反強磁性層42及び保護層43が、この順で積層されている。この構成は、例えば、トップ型スピンバルブ膜と呼ばれる。
【0076】
図7(d)に示した例では、下地層41、上磁性層20(例えば磁化自由層)、中間層30、下磁性層10(例えば磁化固定層)、反平行結合層45、磁化固定層44、反強磁性層42及び保護層43が、この順で積層される。この構成は、例えば、トップ型シンセティックスピンバルブ膜と呼ばれる。
【0077】
トップ型スピンバルブ膜及びトップ型シンセティックスピンバルブ膜に含まれる層は、ボトム型スピンバルブ膜及びボトム型シンセティックスピンバルブ膜に含まれる層と同様であるので説明は省略する。
【0078】
上磁性層20の磁化を引っ張り応力と異なる方向に向けておく方法として、下磁性層10の磁化との層間結合を用いる方法がある。中間層30が金属の場合には3nm以下、絶縁体の場合は1.5nm以下で、上磁性層20の磁化が下磁性層10の磁化と平行に揃うように層間結合が働く。従って、下磁性層10の磁化を引っ張り応力と異なる方向に固定することによって、上磁性層20の磁化を弱いエネルギーで同じ方向に向けることが出来る。
【0079】
上磁性層20(磁化自由層)をスパッタ装置で成膜する際に、磁界を印加することによっても上磁性層20の磁化を一方向に向けておくことが出来る。成膜時の磁界の方向に磁化が向きやすくなるので、引っ張り応力と異なる方向に磁界を印加しながらスパッタ法で成膜することが好ましい。
【0080】
本実施形態においては、このようなスピンを用いたセンサ部50が用いられる。これにより、極短距離での脈波伝播速度を計測することが可能になる。
【0081】
本願発明者の検討によると、極短距離での計測の場合、例えば、人体の脈波伝播速度においては、2μs(マイクロ秒)と数mm程度の位置分解能とが必要である。このような時間分解能と、位置分解能と、の2つの観点で、既存のセンサ部の性能は十分ではない。本実施形態においては、上記のようなスピンを用いたセンサ部50を用いることで、時間分解能及び位置分解能の点で十分な性能を発揮できる。例えば、本実施形態に係るセンサ部50を用いることで、数百MHz程度の時間分解能が得られる。また、センサ部50の位置分解能は、前述のような素子サイズで規定されるので、最小で10nm程度である。実質的には、動脈血管210の血流の歪を直接測定しているわけではなく、動脈血管210及び皮膚231を介して歪を測定しているため、それらの間接材料の影響がある。このため、素子サイズの大きさを極限まで小さくしても、そのときの素子サイズが位置分解能になるわけではない。
【0082】
図8は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作状態を例示する模式的斜視図である。
図8に表したように、第1センサ部50aと第2センサ部50bとが、被験者の体230の皮膚231の下の動脈血管210に対向して配置される。そして、動脈血管210の中を流れる血液220の脈波をこれらのセンサ部50で検知する。
【0083】
図9は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を例示するグラフ図である。
図9の横軸は時間tである。縦軸はセンサ部50で検知された歪値Yである。
図9に表したように、例えば、第1センサ部50aで得られる歪値Yに関する第1信号50saの例えばピーク値を示す時刻t1は、第2センサ部50bで得られる歪値Yに関する第2信号50sbの例えばピーク値を示す時刻t2と異なる。
【0084】
例えば、第1センサ部50aによる脈波の検知の時刻を時刻t1とする。第2センサ部50bによる脈波の検知の時刻を時刻t2とする。演算部70は、時刻t1と時刻t2との間の時間(センサ部50間の信号伝播遅れ時間ΔT)を求める。この信号伝搬遅れ時間ΔTから脈波伝播速度を求めることができる。
【0085】
実施形態においては、極短距離(例えば、センサ部50どうしの距離dが1cmなど)での計測により、実質的に1箇所で測定可能である。これにより測定の際煩雑さがなくなる。その一方で、極短距離での計測においては、脈波の検出の時間差は極めて短い。このため、第1信号50saの波形は、第2信号50sbの波形とほとんど一致してしまう。第1信号50sa及び第2信号50sbから正確に脈波伝播速度を算出するために、例えば、自己相関信号処理を行う。これにより、正確に脈波伝播速度を算出することができる。第1信号50saの波形は、第2信号50sbの波形と殆ど同じであり、時間的に少しのズレがあるだけである。自己相関信号処理を行うことで、このような波形のずれ量を高い精度で検出することができる。
【0086】
図10は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を例示するフローチャート図である。
図10は、自己相関信号処理の例を表している。
図10に表したように、第1センサ部50aと第2センサ部50bとで、脈波に応じた歪値Yを検知する(ステップS110)。すなわち、第1測定点(位置=x)と、第2測定点(位置=x+d)と、におけるセンサ部50の歪値Yを求める。具体的には、第1センサ部50aで第1歪値Y1を求め、第2センサ部50bで第2歪値Y2を求める。
【0087】
この結果から、それぞれの測定点における圧力値、すなわち、以下の第1圧力値P1(x)及び第2圧力値P2(x+d)を導出する(ステップS120)。
P1(x)=aY1、
P2(x+d)=aY2
ここで、aは、ひずみ値から圧力値への変換係数である。演算は、一般的にマトリックス計算となる。
【0088】
血圧Pとして、この2点の圧力値(第1圧力値P1(x)及び第2圧力値P2(x+d))の平均値を求める(ステップS130)。
【0089】
なお、血流速度(脈波伝播速度)を求めるだけの場合は、圧力値に変換しても変換しなくてよい。この場合は、得られた歪値Yの時間遅れだけを検出する。
【0090】
時間遅れτに関して、遅れ時間ΔTが同定できるまで相互相関値Iを算出する。すなわち、第1歪値Y1及び第2歪値Y2を比較するときに、時間tをずらして比較したそれぞれの値を算出する。具体的な演算は、平均化処理も加えて、それぞれの時間tに対して以下の式となる。
【0091】
【数1】
ここで、Nは、総測定回数である。2点間の測定位置で信号の到達速度が確定するまで、すなわち、I1,2(τ)が最も大きいτが確定するまで、測定を繰り返す(ステップS140)。
【0092】
この結果により得られたτが、遅れ時間ΔTとなる。すなわち、遅れ時間ΔTを決定する(ステップS150)。
【0093】
さらに、血流速度(脈波伝播速度)Vを、d/ΔTにより算出する(ステップS160)で求める。
【0094】
図11は、第1の実施形態に係る脈波伝播速度計測装置の動作を例示するグラフ図である。
図11の横軸は時間tである。縦軸は、第1信号50saと第2信号50sbとの歪値Y(第1歪値Y1及び第2歪値Y2)を求める。第1の相互相関値Iである。
【0095】
このように、相互相関値Iは、ずらした時間tが遅れ時間ΔTのときに最大になる。このようにして、遅れ時間ΔTを求めることができる。
【0096】
このような相互相関処理は、例えば、演算部70において実施することができる。すなわち、演算部70における検知の時刻の差の導出は、第1センサ部50aによる脈波の検知の信号(第1信号50sa)と、第2センサ部50bによる脈波の検知の信号(第2信号50sb)と、を自己相関信号処理することを含むことができる。
【0097】
図12は、第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置の構成を例示する模式的断面図である。
この図では、計測センサ310の部分だけを図示しており、演算部70は省略している。
図12に表したように、本実施形態に係る脈波伝播速度計測装置411においては、第1センサ部50a及び第2センサ部50bは、ダイアフラムをさらに含む。すなわち、第1センサ部50aは、第1センサ部50aのセンサ部積層体50sに接続された第1ダイアフラム50Daを有する。第2センサ部50bは、第1センサ部50bのセンサ部積層体50sに接続された第2ダイアフラム50Dbを有する。
【0098】
この例では、第1ダイアフラム50Daは、基体60上に設けられた第1支持体50Haの上に設けられている。第2ダイアフラム50Dbは、基体60上に設けられた第2支持体50Hbの上に設けられている。第1ダイアフラム50Da及び第2ダイアフラム50Dbは、基体60と離間しており、動くことができる。これにより脈波を圧力で受けることができ、検知の感度が向上する。
【0099】
図13は、第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置の構成を例示する模式的断面図である。
この図では、計測センサ310の部分だけを図示しており、演算部70は省略している。
図13に表したように、本実施形態に係る脈波伝播速度計測装置412においては、基体60は、粘着層61を有する。粘着層61により、計測センサ310を被験者の体230へ固定する。これにより、より便利になる。
【0100】
図14は、第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置の構成を例示する模式図である。
図14に表したように、本実施形態に係る脈波伝播速度計測装置413においては、基体60として、柔らかいフィルムが用いられている。そのフィルム上に2つ以上のセンサ部50が設けられている。この例では、センサ部50の近傍に演算部70が設けられている。センサ部50及び演算部70の周囲のフィルム上に粘着層61が設けられている。脈波伝播速度計測装置413を使用する前には、粘着層61はセパレータフィルム63で覆われている。使用するときに、セパレータフィルム63を剥がして、粘着層61によって、脈波伝播速度計測装置413を体230に付着させる。基体60として柔らかいフィルムを用いることで、使用者によって違和感が少なくなる。脈波伝播速度計測装置413は、例えば、絆創膏のように体230に貼り付けることができる。これにより、日常生活をしながらの連続的な測定がより容易になる。この例において、演算部70は、基体60とは別に設けても良い。
【0101】
図15(a)〜図15(d)は、第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置の構成及び使用状態を例示する模式図である。
図15(a)は、本実施形態に係る脈波伝播速度計測装置414の構成を例示する模式的分解斜視図である。図15(b)は、脈波伝播速度計測装置414の使用状態を表す模式図である。図15(c)及び図15(d)は、脈波伝播速度計測装置414の使用状態を表す模式的断面図である。
【0102】
図15(a)に表したように、脈波伝播速度計測装置413は、4つのセンサ部50を有する。例えば、計測センサ310を体230に付着させるときの不具合などにより、例えば1つのセンサ部50が動脈血管210の脈波を検知し難い場合が生じる。このとき、3つ以上のセンサ部50を設けることで、このような場合においても、それ以外のセンサ部50で脈波を検知できるため、所望の動作を実施し易くなる。
【0103】
この例では、センサ部50の周囲にスペーサ63が設けられている。スペーサ63は、例えば柔らかいゴム製であり、厚さは例えば約0.5mmである。このようなスペーサ63を設けることで、使用者の違和感を低減することができる。スペーサ63を必要に応じて設けられ省略しても良い。
【0104】
図15(b)に表したように、計測センサ310は、体230(例えば手首など)に付着させる。計測センサ310のサイズは、例えば約20mm×約20mmである。
【0105】
図15(c)に表したように、基体60が柔らかい場合は、基体60が、体230(例えば手首)の形状に沿って曲がる。ただし、図15(d)に表したように、基体60の剛性が比較的高く、基体60は実質的に平面状を維持しても良い。
【0106】
図16は、第1の実施形態に係る別の脈波伝播速度計測装置の構成を例示する模式的断面図である。
図16に表したように、本実施形態に係る脈波伝播速度計測装置415においては、演算部70が、基体60上に設けられている。これにより、装置がより小型化できより、便利になる。
【0107】
(第2の実施形態)
本実施形態は、脈波伝播速度計測方法に係る。
図17は、第2の実施形態に係る脈波伝播速度計測方法を例示するフローチャート図である。
図17に表したように、本測定方法では、基体60と、基体60に保持された第1センサ部50aと、第1センサ部50aと離間して基体60に保持され第1センサ部50aとの距離が基体60により規定された第2センサ部50bと、を有する計測センサ310を、被検体に接触させてその被検体が有する管(例えば動脈血管210)の内部を伝播する脈波を第1センサ部50aと第2センサ部50bとで検知する(ステップ210)。
【0108】
本測定方法では、第1センサ部50aによる脈波の検知の時刻t1と、第2センサ部50bによる脈波の検知の時刻t2と、の差に基づいて脈波伝播速度を導出する。
例えば、図10に関して説明した処理を実施する。
【0109】
これにより、局所的な計測範囲で脈波伝播速度を計測できる脈波伝播速度計測方法が提供できる。
【0110】
上記の第1及び第2の実施形態において、センサ部50は、管の内部を伝播する脈波を検知する。上記の例では、この管が血管である場合として説明したが、実施形態はこれに限らない。例えば、センサ部50は、リンパ管の内部を伝播する脈波を検知しても良い。実施形態は、生物(動植物など)が有する、脈波が伝達する任意の管に適用できる。また、実施形態は、非生物に設けられる、脈波が伝達する任意の管に適用できる。
【0111】
実施形態によれば、局所的な計測範囲で脈波伝播速度を計測できる脈波伝播速度計測装置及び脈波伝播速度計測方法が提供される。
【0112】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、脈波伝播速度計測装置に含まれる第1センサ部、第2センサ部、基体、演算部、第1〜第4強磁性層、第1、第2中間層、ダイアフラム及び粘着層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0113】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0114】
その他、本発明の実施の形態として上述した脈波伝播速度計測装置及び脈波伝播速度計測方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての脈波伝播速度計測装置及び脈波伝播速度計測方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0115】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
10…下磁性層、 10a…第1強磁性層、 10b…第3強磁性層、 20…上磁性層、 20a…第2強磁性層、 20b…第4強磁性層、 30…中間層、 30a…第1中間層、 30b…第2中間層、 41…下地層、 42…反強磁性層、 43…保護層、 44…磁化固定層、 45…反平行結合層、 50…センサ部、 50Da、50Db…第1及び第2ダイアフラム、 50Ha、50Hb…第1及び第2支持体、 50a、50b…第1及び第2センサ部、 50s…センサ部積層体、 50sa、50sb…第1及び第2信号、 51…下電極、 51a…第1電極、 51b…第3電極、 52…上電極、 52a…第2電極、 52b…第4電極、 60…基体、 61…粘着層、 62…セパレータフィルム、 63…スペーサ、 70…演算部、 70s…演算結果、 210…動脈血管(管)、 220…血液、 230…体、 231…皮膚、 310、311…センサ、 410〜413…脈波伝播速度計測装置、 ΔT…遅れ時間、 Y…歪値、 d…距離、 t…時間、 t1、t2…時刻
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内部を伝播する脈波を検知する第1センサ部と、
前記第1センサ部と離間し前記脈波を検知する第2センサ部と、
前記第1センサ部と前記第2センサ部とを保持し前記第1センサ部と前記第2センサ部との間の距離を規定する基体と、
前記第1センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、前記第2センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、の差を導出する演算部と、
を備えた脈波伝播速度計測装置。
【請求項2】
前記第1センサ部及び前記第2センサ部は、磁性材料を含む請求項1記載の脈波伝播速度計測装置。
【請求項3】
前記第1センサ部は、第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間に設けられた非磁性の第1中間層と、を含み、
前記第2センサ部は、第3強磁性層と、第4強磁性層と、前記第3強磁性層と前記第4強磁性層との間に設けられた非磁性の第2中間層と、を含む請求項1または2に記載の脈波伝播速度計測装置。
【請求項4】
前記第1センサ部及び前記第2センサ部の電気抵抗は、前記脈波により前記第1センサ部及び前記第2センサ部に加えられる応力に応じた逆磁歪効果により生じる磁化方向の変化によって変化する請求項1〜3のいずれか1つに記載の脈波伝播速度計測装置。
【請求項5】
前記第1センサ部及び前記第2センサ部は、ダイアフラムをさらに含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の脈波伝播速度計測装置。
【請求項6】
前記基体は、粘着層を有する請求項1〜5のいずれか1つに記載の脈伝播速度計測装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記基体上に設けられている請求項1〜6のいずれか1つに記載の脈波伝播速度計測装置。
【請求項8】
前記演算部は、前記差の導出は、前記第1センサ部による前記脈波の前記検知の信号と、前記第2センサ部による前記脈波の前記検知の信号と、を自己相関信号処理することを含む請求項1〜7のいずれか1つに記載の脈波伝播速度計測装置。
【請求項9】
基体と、前記基体に保持された第1センサ部と、前記第1センサ部と離間して前記基体に保持され前記第1センサ部との距離が前記基体により規定された第2センサ部と、を有する計測センサを、被検体に接触させて前記被検体が有する管の内部を伝播する脈波を前記第1センサ部と前記第2センサ部とで検知し、
前記第1センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、前記第2センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、の差に基づいて脈波伝播速度を導出する脈波伝播速度計測方法。
【請求項1】
管の内部を伝播する脈波を検知する第1センサ部と、
前記第1センサ部と離間し前記脈波を検知する第2センサ部と、
前記第1センサ部と前記第2センサ部とを保持し前記第1センサ部と前記第2センサ部との間の距離を規定する基体と、
前記第1センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、前記第2センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、の差を導出する演算部と、
を備えた脈波伝播速度計測装置。
【請求項2】
前記第1センサ部及び前記第2センサ部は、磁性材料を含む請求項1記載の脈波伝播速度計測装置。
【請求項3】
前記第1センサ部は、第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間に設けられた非磁性の第1中間層と、を含み、
前記第2センサ部は、第3強磁性層と、第4強磁性層と、前記第3強磁性層と前記第4強磁性層との間に設けられた非磁性の第2中間層と、を含む請求項1または2に記載の脈波伝播速度計測装置。
【請求項4】
前記第1センサ部及び前記第2センサ部の電気抵抗は、前記脈波により前記第1センサ部及び前記第2センサ部に加えられる応力に応じた逆磁歪効果により生じる磁化方向の変化によって変化する請求項1〜3のいずれか1つに記載の脈波伝播速度計測装置。
【請求項5】
前記第1センサ部及び前記第2センサ部は、ダイアフラムをさらに含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の脈波伝播速度計測装置。
【請求項6】
前記基体は、粘着層を有する請求項1〜5のいずれか1つに記載の脈伝播速度計測装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記基体上に設けられている請求項1〜6のいずれか1つに記載の脈波伝播速度計測装置。
【請求項8】
前記演算部は、前記差の導出は、前記第1センサ部による前記脈波の前記検知の信号と、前記第2センサ部による前記脈波の前記検知の信号と、を自己相関信号処理することを含む請求項1〜7のいずれか1つに記載の脈波伝播速度計測装置。
【請求項9】
基体と、前記基体に保持された第1センサ部と、前記第1センサ部と離間して前記基体に保持され前記第1センサ部との距離が前記基体により規定された第2センサ部と、を有する計測センサを、被検体に接触させて前記被検体が有する管の内部を伝播する脈波を前記第1センサ部と前記第2センサ部とで検知し、
前記第1センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、前記第2センサ部による前記脈波の前記検知の時刻と、の差に基づいて脈波伝播速度を導出する脈波伝播速度計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−70732(P2013−70732A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210317(P2011−210317)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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