説明

脱揮押出機、並びに、それを用いた重合体組成物の脱揮押出方法及び重合体の製造方法

【課題】 運転時に未反応単量体及びその重合物が軸封軸受け部近傍に付着することを抑制できる脱揮押出機を提供する。
【解決手段】 重合体組成物供給口12、ガス排出口14、重合体出口16及び貫通穴18を有するシリンダ10と、貫通穴18を貫通してシリンダ10内に挿入されたスクリュー20と、スクリュー20のシリンダ10外部に伸びたシャフト部分20aを支持する軸封軸受け部30とを備え、軸封軸受け部30は、軸シール部32、軸シール部32とシリンダ10との間に形成された空隙部34及び空隙部34に重合禁止剤を含有する液体を導入する液体導入口36を有し、貫通穴18の内壁面とスクリュー20のシャフト部分20a表面との間に、液体導入口36から空隙部34に導入された液体がシリンダ10内に排出される流路FPとなる隙間を有する、脱揮押出機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体を製造する際に使用する脱揮押出機、並びに、それを用いた重合体組成物の脱揮押出方法及び重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル系重合体等の重合体の製造方法として、溶液重合法や塊状重合法により重合体及び揮発成分を含む重合体組成物を得た後、これをスクリュー式脱揮押出機に供給して揮発成分を除去し、重合体を得る方法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−49925号公報
【特許文献2】特開2003−96105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脱揮押出機の内部に挿入されているスクリューは、シャフト部が脱揮押出機の軸封軸受け部により支持されており、軸封軸受け部において、スクリューのシャフト部の周囲には軸シール部が設けられている。従来の脱揮押出機を用いた脱揮押出方法では、長期間連続して運転を行った場合、この軸封軸受け部に重合体組成物中の未反応単量体やその重合物が付着し、スクリューの回転不良が生じて脱揮押出機の運転が困難になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、運転時に未反応単量体及びその重合物が軸封軸受け部に付着することを抑制できる脱揮押出機、並びに、それを用いた重合体組成物の脱揮押出方法及び重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、重合体組成物供給口、ガス排出口、重合体出口、及び、貫通穴を有するシリンダと、上記貫通穴を貫通して上記シリンダ内に挿入された回転可能なスクリューと、上記スクリューの上記貫通穴から上記シリンダの外部に伸びたシャフト部分を支持する軸封軸受け部と、を備える脱揮押出機であって、上記軸封軸受け部は、軸シール部、該軸シール部と上記シリンダとの間に形成された空隙部、及び、該空隙部に重合禁止剤を含有する液体を導入する液体導入口を有し、上記貫通穴の内壁面と上記スクリューの上記シャフト部分表面との間に、上記液体導入口から上記空隙部に導入された液体が上記シリンダ内に排出される流路となる隙間を有する、脱揮押出機を提供する。
【0007】
従来の脱揮押出機では、重合体の製造を長期間連続して行うと、脱揮押出機内の軸封軸受け部付近に揮発成分に含まれる未反応単量体やその重合物等が付着し、スクリューの回転不良を引き起こすという問題があった。このとき、軸封軸受け部付近では、揮発成分に含まれる未反応単量体が軸封軸受け部付近に付着し、熱等により重合して重合物となっていると考えられる。本発明の脱揮押出機では、軸封軸受け部内の軸シール部とシリンダとの間の空隙部に液体を導入するための液体導入口が設けられているため、導入された液体は、貫通穴とスクリューのシャフト部分との間の隙間を通ってシリンダ内へ導入されることとなる。そのため、軸封軸受け部からシリンダへ向けた液体の流れが形成され、軸封軸受け部近傍に未反応単量体が到達し難くなる。加えて、シリンダ内へ導入される液体は重合禁止剤を含むため、軸封軸受け部近傍での未反応単量体の重合反応も抑制される。その結果、未反応単量体及びその重合物の軸封軸受け部近傍への付着が十分に抑制され、長期間の運転を連続して行った場合であっても、スクリューの回転不良を十分に抑制することが可能となる。
【0008】
本発明の脱揮押出機において、上記軸シール部はメカニカルシールにより形成されていることが好ましい。これにより、高温下においても軸シール部の劣化がなく、長期間の連続運転を安定して行うことができる。
【0009】
本発明はまた、重合体及び揮発成分を含む重合体組成物を、上記本発明の脱揮押出機における上記重合体組成物供給口から上記シリンダ内に供給し、且つ、上記液体を上記液体導入口から上記空隙部に供給して、揮発成分を上記ガス排出口から、脱揮後の重合体を上記重合体出口からそれぞれ排出する、重合体組成物の脱揮押出方法を提供する。
【0010】
かかる脱揮押出方法によれば、上記本発明の脱揮押出機を用いているため、脱揮押出機の軸封軸受け部近傍に揮発成分に含まれる未反応単量体やその重合物等が付着することを十分に抑制でき、スクリューの回転不良等の問題が生じることなく長期間にわたって連続して重合体組成物の脱揮押出処理を行うことができる。
【0011】
本発明は更に、単量体、ラジカル重合開始剤、及び連鎖移動剤を含む原料を重合反応槽へ連続的に供給する工程と、上記重合反応槽内で上記単量体を重合させて、重合体と、未反応単量体を含有する揮発成分とを含む重合体組成物を得る工程と、上記重合体組成物を、上記本発明の脱揮押出機における上記重合体組成物供給口から上記シリンダ内に供給し、且つ、上記液体を上記液体導入口から上記空隙部に供給して、揮発成分を上記ガス排出口から、脱揮後の重合体を上記重合体出口からそれぞれ排出する工程と、を有する、重合体の製造方法を提供する。
【0012】
かかる重合体の製造方法によれば、上記本発明の脱揮押出機を用いているため、脱揮押出処理を行う工程において、脱揮押出機の軸封軸受け部近傍に揮発成分に含まれる未反応単量体やその重合物等が付着することを十分に抑制でき、スクリューの回転不良等の問題が生じることなく長期間にわたって連続して重合体を製造することができる。
【0013】
上述した本発明の重合体組成物の脱揮押出方法及び重合体の製造方法において、上記液体導入口から供給する上記液体は、上記重合禁止剤を上記重合体の原料として使用される単量体に溶解させた液体であることが好ましい。かかる液体においては、重合体組成物に含まれる未反応単量体と同一成分である上記単量体が、重合禁止剤を溶解する溶媒として使用されている。そのため、他の溶媒を用いた場合と比較して、得られる重合体中に不純物が混入することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、運転時に未反応単量体及びその重合物が軸封軸受け部に付着することを抑制でき、スクリューの回転不良の問題が生じることなく長期間にわたって連続運転が可能な脱揮押出機、並びに、それを用いた重合体組成物の脱揮押出方法及び重合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る脱揮押出機の内部構造を示す概略図である。
【図2】本発明の好適な実施形態に係る脱揮押出機の軸封軸受け部の部分断面図である。
【図3】本発明の脱揮押出機を用いた重合体の製造システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0017】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る脱揮押出機の内部構造を示す概略図である。図1に示すように、脱揮押出機100は、重合体及び揮発成分を含む重合体組成物を供給するための重合体組成物供給口12、揮発成分を排出するためのガス排出口14、脱揮後の重合体を排出するための重合体出口16、並びに、貫通穴18を有するシリンダ10と、貫通穴18を貫通してシリンダ10内に挿入された回転可能なスクリュー20と、スクリュー20の貫通穴18からシリンダ10の外部に伸びたシャフト部分20aを支持する軸封軸受け部30と、を備えている。シリンダ10には、4つのガス排出口14が設けられており、重合体組成物供給口12から見て軸封軸受け部30側に1つのガス排出口(バックベント)14aが、重合体出口16側に3つのガス排出口(フォアベント)14b,14c,14dが、それぞれ設けられている。また、軸封軸受け部30は、軸シール部32、該軸シール部とシリンダ10との間に形成された空隙部34、及び、該空隙部34に重合禁止剤を含有する液体を導入する液体導入口36を有している。
【0018】
図2は、本発明の好適な実施形態に係る脱揮押出機の軸封軸受け部の部分断面図である。本実施形態においては、軸シール部32はメカニカルシールにより形成されている。また、軸シール部32とシリンダ10との間には、空隙部34が形成されている。軸封軸受け部30の内部とシリンダ10の内部とは貫通穴18で繋がっており、この貫通穴18をスクリュー20のシャフト部分20aが貫通している。軸シール部32のシリンダ10とは反対側には、スクリュー20を回転駆動させるための駆動装置(図示せず)が設けられている。図2に示すように、軸封軸受け部30とシリンダ10との境界部分において、貫通穴18の内壁面とスクリュー20のシャフト部分20a表面との間には隙間が存在し、この隙間を流路FPとして、液体導入口36から空隙部34に導入された重合禁止剤を含有する液体がシリンダ10内に排出される。シリンダ10内に排出された液体は、重合体組成物中の揮発成分とともにガス排出口14からシリンダ10の外部に排出される。なお、液体中の重合禁止剤は、一部がガス排出口14から排出されるが、重合体中にも残留し、重合体と共に重合体出口16から排出される。
【0019】
軸シール部32は、公知の軸シールの形態で形成されていればよいが、空隙部34に導入された液体の影響でシール不良等の問題が生じ難いことから、メカニカルシールにより形成されていることが好ましい。なお、メカニカルシールの形式は特に限定されず、公知の形式のメカニカルシールを用いることができる。例えば、図2に示すように、メカニカルシールは、スクリュー20側に固定された回転環32aと、軸封軸受け部本体(ケーシング)側に固定された固定環32bとを有し、スプリング(図示せず)等により回転環32aと固定環32bとが一定の力で押し付けられて密着するように構成されている。また、回転環32aと固定環32bとの接触面の摩擦を低減するために、メカニカルシール32の内部にはメカニカルシール液32cが充填されている。図2では、回転環32aと固定環32bとの組み合わせを二組有するメカニカルシール、すなわちダブルメカニカルシールによる構成が示されている。メカニカルシール液32cは、通常、メカニカルシール液投入口(図示せず)からポンプ等を使用して連続的に供給され、メカニカルシール液排出口(図示せず)から連続的に排出される。メカニカルシール液は、循環供給されるのが好ましい。充填圧力は、脱揮押出機のサイズや押出条件等によって適宜設定されるが、空隙部34に導入される液体の圧力よりも高く設定する。
【0020】
メカニカルシール液32cとしては、公知のメカニカルシール液を特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、アジピン酸エステル、フタル酸エステル、ジイソ酪酸エステル、アセチル化グリセライド等が挙げられる。アジピン酸エステルとしては、例えば、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル等が挙げられる。フタル酸エステルとしては、例えば、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル等が挙げられる。ジイソ酪酸エステルとしては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラート等が挙げられる。アセチル化グリセライドとしては、例えば、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンジアセトモノリノレート、グリセリンジアセトモノ12−ヒドロキシステアレート、グリセリンジアセトモノミリステート、グリセリンジアセトモノパルミテート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンモノアセトモノミリステート、グリセリンモノアセトモノパルミネート、グリセリンモノアセトモノリシノレート、グリセリンモノアセトモノ12−ヒドロキシステアレート、グリセリンモノアセトモノベヘネート、グリセリンモノアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトジオレート、グリセリンモノアセトジリシノレート、グリセリンモノアセトジカプリレート、グリセリンモノアセトジラウレート、グリセリンモノアセトジステアレート等が挙げられる。中でも、アジピン酸エステル、ジイソ酪酸エステルが好ましく、アジピン酸エステルが特に好ましい。アジピン酸エステルは、重合体として(メタ)アクリル系重合体、特にポリメタクリル酸メチル(PMMA)を製造する場合において、重合体組成物中に混入しても未反応単量体の重合反応を促進せず、また、得られる重合体の着色を引き起こす等の悪影響が生じ難いといった利点がある。
【0021】
なお、軸シール部32は、メカニカルシールの他、グランドパッキン、ウィルソンシール、オイルシール、ラビリンスシール、Oリングシール、ベローズシール等によって形成することもできる。
【0022】
液体導入口36から空隙部34に導入する液体は、重合禁止剤を含有する液体であり、未反応単量体の重合反応を促進しない溶媒に重合禁止剤を溶解させた液体であることが好ましい。上記溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、オクタン、デカン、シクロヘキサン、デカリン、酢酸ブチル、酢酸ペンチル等の有機溶媒、及び、製造する重合体の原料として使用される単量体が挙げられ、中でも製造する重合体の原料として使用される単量体が用いられる。製造する重合体の原料として使用される単量体は、通常、液状である。上記単量体を溶媒として用いた場合、得られる重合体中に不純物が混入することを抑制することができる。なお、上記液体が重合禁止剤を含有しているため、上記液体においても溶媒である単量体の重合反応が抑制される。
【0023】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイロドキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、4−メトキシ−1−ナフトール、1,4−ナフトキノン、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、フェノチアジン、ベンゾフェノチアジン、ジニトロベンゼン、p−フェニルジアミン、ジメチルジチオカルバミン酸塩等が挙げられる。これらの中でも、重合体に残留しても着色等の悪影響を及ぼしにくい等の観点から、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノールが好ましい。なお、使用する重合禁止剤は、製造する重合体及びその原料として使用される単量体に応じて適宜選択される。
【0024】
上記液体における重合禁止剤の含有量は、液体全量を基準として5〜2000質量ppmであることが好ましく、10〜500質量ppmであることがより好ましい。この含有量が上記範囲よりも大きいと、重合体中に含まれる重合禁止剤の割合が高くなり、重合体がわずかながら着色する傾向がある。また、この含有量が上記範囲よりも小さいと、軸封軸受け部30近傍での未反応単量体の重合反応を抑制する効果が低下する傾向があるとともに、溶媒として単量体を用いた場合には、当該単量体の重合反応を抑制する効果も低下する傾向がある。
【0025】
導入する液体の流量は、脱揮押出機のサイズや押出条件等に応じて適宜設定されるが、通常、スクリュー一本当たり、0.01〜5L/minであり、好ましくは0.1〜3L/minである。液体の流量が上記範囲よりも大きいと、重合体中に含まれる重合禁止剤の割合が高くなり、重合体がわずかながら着色する傾向があり、上記範囲よりも小さいと、未反応単量体や重合体が軸封軸受け部30に侵入することを抑制する効果が低下する傾向がある。
【0026】
脱揮押出機100では、空隙部34に液体導入口36が設けられており、液体の導入によって空隙部34内を加圧状態とし、脱揮押出機100のガス排出口14aよりも高い圧力とする。このため、流路FPから未反応単量体や重合体が軸封軸受け部30に侵入することを十分に抑制することができる。なお、空隙部34内の圧力の好適な範囲については、脱揮押出機のサイズや押出条件等に応じて適宜設定されるが、脱揮押出機100のガス排出口14aの圧力よりも高くし、且つメカニカルシール液32cの充填圧力よりも低くする。圧力が上がりすぎないように、液体の送液ポンプ本体に、リリーフ弁などの安全装置を設置することが好ましい。また、脱揮押出機には、最高使用圧力に応じて圧力計及び安全弁が設けられるので、安全弁が作動しない範囲で空隙部34内の圧力を設定する。
【0027】
貫通穴18の内壁面とスクリュー20のシャフト部分20a表面との間隔は、脱揮押出機のサイズや押出条件等に応じて適宜設定されるが、通常、0.1〜2.0mmであり、好ましくは0.1〜1.5mmである。この間隔が上記範囲よりも大きいと、流路FP内に未反応単量体や重合体が侵入しやすくなる傾向があり、上記範囲よりも小さいと、空隙部34に導入した液体がシリンダ10内に排出され難くなり、軸封軸受け部30近傍に未反応単量体の重合物が付着することを抑制する効果が低下する傾向がある。
【0028】
脱揮押出機100において、重合体組成物は重合体組成物供給口12から供給される。このとき、液状の重合体組成物は重合体組成物供給口12付近で圧力の調整により霧状になり、重合体組成物に含まれる揮発成分の少なくとも一部が重合体組成物供給口12に近いガス排出口14a,14bから排出される。また、液体導入口36から導入され、空隙部34を通過して流路FPからシリンダ10内に排出された液体は、揮発成分の一部とともに、主としてガス排出口(バックベント)14aから排出される。また、重合体組成物はスクリュー20の回転により重合体出口16側に進み、重合体出口16に到達するまでに、重合体組成物に含まれる揮発成分の大部分が気化し、ガス排出口14b,14c,14dから排出される。また、ガス排出口14から排出する揮発成分には、未反応単量体の他に、必要に応じて用いられる溶剤や添加剤、重合過程で生成する揮発性副生物などが含まれる。以上により、揮発成分の大部分が除去された脱揮後の重合体を、重合体出口16から得ることができる。重合体は、例えばペレットの状態で得ることができる。
【0029】
上述した脱揮押出機100は、重合体の中でも(メタ)アクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物を重合して得られる(メタ)アクリル系重合体の製造に好適に使用することができる。
【0030】
脱揮押出機100において、シリンダ10に形成されるガス排出口14の数は特に限定されない。図1では4つのガス排出口14が設けられた構成を示したが、ガス排出口14の数は1〜3つであってもよく、5つ以上であってもよい。液体導入口36から導入された液体と重合体組成物中の揮発成分とを効率的に排出する観点では、シリンダ10は、重合体組成物供給口12と軸封軸受け部30との間に設けられたガス排出口(バックベント)と、重合体組成物供給口12と重合体出口16との間に設けられたガス排出口(フォアベント)とを、それぞれ1つ以上有していることが好ましく、1つのバックベントと1〜3つのフォアベントを有していることがより好ましい。
【0031】
脱揮押出機100に用いるスクリュー20の本数は特に限定されないが、1〜2本であることが好ましく、2本であることがより好ましい。スクリュー20を2本備える二軸脱揮押出機は、(メタ)アクリル系重合体を効率的に製造できるため好ましい。スクリュー20の直径は特に制限されないが、通常、φ100〜450mmである。
【0032】
次に、本発明の重合体組成物の脱揮押出方法及び重合体の製造方法について説明する。
【0033】
本発明の重合体の製造方法は、単量体、ラジカル重合開始剤、及び連鎖移動剤を含む原料を重合反応槽へ連続的に供給する工程と、重合反応槽内で単量体を重合させて、重合体と、未反応単量体を含有する揮発成分とを含む重合体組成物を得る工程と、重合体組成物を、上記本発明の脱揮押出機における重合体組成物供給口からシリンダ内に供給し、且つ、重合禁止剤を含有する液体を液体導入口から空隙部に供給して、揮発成分をガス排出口から、脱揮後の重合体を重合体出口からそれぞれ排出する工程と、を有する方法である。以下、各工程について詳細に説明する。
【0034】
図3は、重合体の製造システムを示す概略構成図である。図3に示すように、まず、開始剤調合槽101及び単量体調合槽102において、開始剤組成物と単量体組成物とをそれぞれ調合する。開始剤組成物は、ラジカル重合開始剤、単量体及び連鎖移動剤を混合したものである。単量体組成物は、単量体及び連鎖移動剤を混合したものである。そして、調合した開始剤組成物と単量体組成物とを重合反応槽103へ連続的に供給し、重合反応を行う。
【0035】
ここで、単量体、ラジカル重合開始剤及び連鎖移動剤としては、製造する重合体に応じて選択される。以下、好適な実施形態として、ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル系重合体を製造する場合について説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味する。
【0036】
(メタ)アクリル系重合体の原料として使用される単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)単独、または、(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)80質量%以上と、これと共重合可能な他のビニル単量体20質量%以下との混合物が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)のアルキルとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルのなかでも、(メタ)アクリル酸メチルであることが好ましい。
【0037】
上記の共重合可能なビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の、上記(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)以外の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはこれらの酸無水物;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸モノグリセロール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸モノグリセロールなどのヒドロキシル基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等の窒素含有モノマー;アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体が挙げられる。
【0038】
本発明を(メタ)アクリル酸エステル系重合体の生成に適用する場合において、反応槽に供給される重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤が挙げられる。上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸などのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、カプリエルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシビパレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキシジカーボネート、s−ブチルパーオキシジカーボネート、n−ブチルパーオキシジカーボネート、2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサエノート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−エチルヘキサノエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソノナエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−イソノナエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
ラジカル重合開始剤の配合量としては、特に限定されるものではないが、通常、原料の単量体100質量部に対して0.001〜1質量部である。2種以上のラジカル重合開始剤を混合して使用する場合、その合計使用量がこの範囲となるようにすればよい。反応槽に供給する重合開始剤は、生成する重合体や使用する原料単量体の種類に応じて選定されるものであって、本発明において特に限定されるものではないが、例えば、ラジカル重合開始剤については、重合温度での半減期が1分以内であるものが好ましい。重合温度での半減期が1分を超えると、反応速度が遅くなるために、連続重合装置での重合反応に適さなくなるおそれがある。ラジカル重合開始剤の温度と半減期の関係は、ラジカル重合開始剤の種類毎に各種文献や製造会社の技術資料に記載がある。本発明では、和光純薬(株)または化薬アクゾ(株)等の公知の製品カタログに記載の値を用いた。
【0040】
本発明を(メタ)アクリル酸エステル系重合体の生成に適用する場合において、反応槽には、生成する重合体の分子量を調整するために、連鎖移動剤を配合することができる。上記連鎖移動剤としては、単官能および多官能のいずれの連鎖移動剤であってもよく、具体的には、例えば、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、2−エチルヘキシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、などのアルキルメルカプタン;フェニルメルカプタン、チオクレゾールなどの芳香族メルカプタン;エチレンチオグリコールなどの炭素数18以下のメルカプタン類;エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール類;水酸基をチオグリコール酸または3−メルカプトプロピオン酸でエステル化したもの、1,4−ジヒドロナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロナフタレン、β−テルピネン、テルピノーレン、1,4−シクロヘキサジエン、1,4シクロヘキサジエン、硫化水素などが挙げられる。これらは、単体で使用してもよく、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0041】
連鎖移動剤の配合量としては、使用する連鎖移動剤の種類などによって相違することから、特に限定されるものではないが、例えば、メルカプタン類を使用する場合には、原料の単量体100質量部に対して0.01〜3質量部であることが好ましく、0.05〜1質量部であることがより好ましい。この範囲の使用量が、重合体の機械的性質を損なわず、熱安定性を良好に保つので好ましい。2種以上の連鎖移動剤を組み合わせて使用する場合、その合計使用量がこの範囲となるようにすればよい。
【0042】
本実施形態で用いられる重合反応槽103は、攪拌装置を備えた槽型反応器である。そして、該攪拌装置は、槽内溶液を実質的に完全混合状態とするものである。攪拌翼の形状としては、住友重機械工業(株)マックスブレンド翼、パドル翼、ダブルヘリカルリボン翼、MIG(ミグ)翼、神鋼パンテック(株)のフルゾーン翼等が用いられるが、特に限定されない。なお、攪拌効果を高めるためにも、バッフルを取り付けることが望ましい。
【0043】
攪拌効率が高い程、好ましいことは言うまでもないが、必要以上の攪拌動力は、反応槽に余分な熱量を加えるだけであり好ましくない。従って、攪拌動力は0.5〜20kW/m、好ましくは1〜15kW/mである。この攪拌動力は、内容液の粘度、つまり重合体の含有率が高くなる程大きくする必要がある。
【0044】
重合反応槽103の内部は、実質的に気相のない満液状態とすることが好ましい。満液にすることにより、気相部や気液界面の槽内壁面での重合体の付着、生成が抑制され、これらの製品への混入による品質低下を抑制することができる。その上、重合反応槽103の容積を全て有効利用できるので、生産性を向上させることができる。
【0045】
重合反応槽103内を満液とするには、槽内溶液の出口を反応槽の最上部に設置するのが最も簡便である。この場合、原料(開始剤組成物及び単量体組成物)の供給口は、重合反応槽103の下部に設けることが好ましい。なお、重合反応槽103内に単量体の気体が発生しないようにするにことが望ましく、そのために、槽内の圧力を、内容液の温度における蒸気圧以上の圧力とすることが好ましい。この圧力としては、概ね10〜20kg/cm程度である。
【0046】
また、重合反応槽103内は、外側から実質的に熱の出入りのない断熱状態にすることが好ましい。つまり、反応槽内の温度と反応槽外壁面側の温度とをほぼ同じ温度にすることが好ましい。具体的には、例えば反応槽外壁面側にジャケットを設置し、スチームや他の熱媒等を用いて反応槽外壁温度を反応槽内温度に追従させてほぼ同じ温度とすることによって行うことができる。
【0047】
重合反応槽103を、断熱状態とするのは、反応槽内壁面に重合体が形成するのを防止できることと、重合反応を安定化させ、暴走反応を抑制する自己制御性をもたらすためである。なお、反応槽内壁面の温度を内溶液の温度よりも高くし過ぎるのは、反応槽内に余分な熱が加わるので好ましくない。反応槽内と反応槽外壁の両者の温度差が少ない程好ましいが、現実的には±5℃程度の振れ幅の範囲内で調整すればよい。
【0048】
本実施形態において重合反応槽103内で発生する熱、つまり重合熱及び攪拌熱は、重合反応槽103から出ていく液状(シロップ状)の重合体組成物が持ち去る熱量とでバランスさせることが好ましい。重合体組成物が持ち去る熱量は、重合体組成物の量、比熱、温度(重合温度)によって定まる。
【0049】
重合温度は、用いるラジカル重合開始剤の種類にもよるが、好ましくは120〜180℃程度であり、より好ましくは130〜180℃である。この温度が高過ぎると、得られる重合体のシンジオタクチック性が低くなり、オリゴマーの生成量が増え、樹脂の耐熱性が低くなる傾向がある。
【0050】
重合反応槽103内での平均滞留時間は、好ましくは15分以上2時間以下、より好ましくは20分以上1.5時間以下である。この時間が必要以上に長いと、ダイマー、トリマー等のオリゴマーの生成量が多くなり、製品の耐熱性が低下する傾向がある。平均滞留時間は、単位時間当たりの単量体の供給量を変更することにより調節できる。
【0051】
本実施形態で用いられる開始剤調合槽101及び単量体調合槽102は、上述した重合反応槽103と同様の攪拌装置を備えた調合槽を使用することができる。開始剤調合槽101では、ラジカル重合開始剤を単量体に完全に溶解させて開始剤液とする。また、開始剤調合槽101内の温度は、重合反応が進行しない温度に維持し、好ましくは−20〜10℃に維持する。一方、単量体調合槽102内の温度は、単量体が揮発しない温度に維持し、好ましくは−20〜10℃に維持する。これら開始剤調合槽101及び単量体調合槽102から、重合体の原料である開始剤組成物及び単量体組成物がポンプ等によって重合反応槽103に連続的に供給される。
【0052】
開始剤調合槽101から重合反応槽103への開始剤組成物の供給量は、重合反応槽103の容量等により異なるが、例えば重合反応槽103の容量を10Lとした場合、好ましくは0.1〜10kg/hrであり、より好ましくは0.5〜5kg/hrである。また、単量体調合槽102から重合反応槽103への単量体組成物の供給量は、重合反応槽103の容量等により異なるが、例えば重合反応槽103の容量を10Lとした場合、好ましくは4〜40kg/hrであり、より好ましくは10〜30kg/hrである。
【0053】
なお、重合反応槽103で調合する単量体としては、新鮮な単量体だけでなく、図3に示すように、未反応で分離回収された単量体を用いてもよい。また、単量体調合の際に、溶存酸素による影響を防ぐために、単量体調合槽102中に不活性ガスをバブリングしたり、減圧脱気して溶存酸素を除去するのが一般的であるが、本実施形態の方法では、必ずしも厳密に除去する必要はなく、1.5〜3ppm程度存在していても重合反応を安定して行うことができる。調合した単量体組成物を重合反応槽103に供給する際に、異物除去のため、目的に応じた大きさのフィルターでろ過することが、得られる重合体を光学機器用材料に用いる場合、特に望ましい。
【0054】
本実施形態の重合体の製造方法では、上述のように、開始剤調合槽101及び単量体調合槽102から重合体の原料である開始剤組成物及び単量体組成物を重合反応槽103へ連続的に供給し、重合反応槽103内で単量体の少なくとも一部を重合させて、重合体と未反応単量体とを含む重合体組成物を得る。重合反応槽103において、重合体の重合方法は、溶媒を使用しない塊状重合でも、溶媒を使用した溶液重合でも良いが、特に好ましくは塊状重合である。
【0055】
連続溶液重合法にて重合を行う場合、重合反応に溶媒が使用される以外は、上述の連続塊状重合法と同様に実施される。重合反応に使用する溶媒としては、連続溶液重合反応の原料単量体などに応じて適宜設定されるものであって、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、オクタン、デカン、シクロヘキサン、デカリン、酢酸ブチル、酢酸ペンチルなどが挙げられる。中でも、トルエン、メタノール、エチルベンゼン、酢酸ブチルが好ましい。溶媒は、開始剤組成物及び単量体組成物の一方又は両方に添加して用いることができる。溶媒の割合は、特に限定されないが、重合体組成物全体の5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0056】
重合体組成物の重合体含有率は、40〜70質量%であることが好ましい。重合体含有率が高すぎると、混合および伝熱の効率が低下し安定性が悪くなる傾向がある。重合体含有率が低すぎると、未反応単量体を主成分とする揮発成分の分離が難しくなる傾向がある。
【0057】
重合反応槽103で製造された重合体組成物は、重合反応槽103から連続的に抜き出され、必要に応じて加熱器104に導かれる。加熱器104では、続く脱揮押出機100での脱揮効率を高める目的で液状の重合体組成物を予熱する。このときの予熱温度は、180〜220℃とすることが好ましい。予熱温度が上記範囲より高いと、揮発成分がガス化し、一定流量での送液が困難になる可能性がある。
【0058】
次に、重合体組成物を脱揮押出機100に供給する。脱揮押出機100には、上述した本発明の脱揮押出機100が用いられる。脱揮押出は、重合体組成物を脱揮押出機100における重合体組成物供給口12からシリンダ10内に連続的に供給し、且つ、重合禁止剤を含有する液体を液体導入口36から空隙部34に供給して、未反応単量体を主成分とする揮発成分をガス排出口14から、脱揮後の重合体を重合体出口16からそれぞれ排出することにより行われる。供給する液体の種類や流量は、先に説明した通りである。
【0059】
脱揮押出は、連続的に供給される重合体組成物を、200〜290℃に加熱することで、未反応単量体を主成分とする揮発成分の大部分を連続的に分離除去することで実施できる。脱揮押出時の圧力条件としては、例えば、ガス排出口(バックベント)14aの圧力を−0.05〜0.15MPaG(ゲージ圧表記)程度に、ガス排出口(フォアベント)14b,14c,14dの圧力を−0.09〜−0.02MPaG(ゲージ圧表記)程度にそれぞれ調整される。ガス化した揮発成分と重合体とが、重合体組成物供給口12から脱揮押出機100内に入るが、このとき、バックベントの圧力が−0.05MPaGより減圧状態であると、バックベントで飛沫同伴現象(エントレインメント)が起きるため、上記範囲の圧力とすることが好ましい。一方、揮発成分を除去するために、フォアベントの圧力は上記範囲とすることが好ましい。通常、加熱器104と脱揮押出機100との間には、圧力調整弁が設置され、脱揮押出時の圧力が調整される。
【0060】
上記の脱揮押出と同時に、またはその後に、必要に応じて、高級アルコール類、高級脂肪酸エステル類等の滑剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、帯電防止剤等を、重合体に添加することができる。
【0061】
ガス排出口14から排出された未反応単量体を主成分とする揮発成分は、単量体回収塔105に送られる。未反応単量体を主成分とする揮発成分中には、単量体に元々含まれる不純物や、ダイマー及びトリマーなどのオリゴマー、ラジカル重合開始剤残渣などの不純物が含まれている。また、連続溶液重合法により重合が行われた場合は、これらの不純物に加え、溶媒も含まれ得る。不純物が蓄積してくると、得られる重合体が着色してくるので、単量体回収塔105において蒸留や吸着等の手段によって未反応単量体から不純物を除去し、重合用の単量体として再利用される。例えば、単量体回収塔105では、連続蒸留により単量体回収塔105の塔頂からの留出液として単量体を回収し、単量体調合槽102へリサイクルされる。単量体回収塔105で除去された不純物は、廃棄物として廃棄される。なお、未反応単量体を主成分とする揮発成分とは、通常、揮発成分中に30質量%以上の未反応単量体を含有するものをいう。
【0062】
以上説明した重合体組成物の脱揮押出方法及び重合体の製造方法においては、脱揮押出機の軸封軸受け部近傍に未反応単量体やその重合体等が付着することを十分に抑制できるため、スクリューの回転不良等の問題が生じることなく長期間にわたって連続して重合体を製造することができる。
【0063】
上述した重合体組成物の脱揮押出方法及び重合体の製造方法は、重合体の中でも(メタ)アクリル系重合体の製造に好適に使用することができ、特に(メタ)アクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物を重合して得られる(メタ)アクリル系重合体の製造に好適に使用することができる。
【0064】
上記の方法で得られた(メタ)アクリル系重合体等の重合体は、優れた透明性や耐候性が得られるため、照明、看板、車両等の多くの分野で好適に使用できる。特に、(メタ)アクリル系重合体は、光ディスク基盤用材料、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、液晶ディスプレイのバックライトシステムに使用される導光板、拡散板や、液晶ディスプレイの保護前面板などの光学機器用材料、テールランプカバー、ヘッドランプカバー、バイザー、メーターパネル等の車両部材などに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10…シリンダ、12…重合体組成物供給口、14…ガス排出口、16…重合体出口、18…貫通穴、20…スクリュー、20a…シャフト部分、30…軸封軸受け部、32…軸シール部、34…空隙部、36…液体導入口、100…脱揮押出機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体組成物供給口、ガス排出口、重合体出口、及び、貫通穴を有するシリンダと、
前記貫通穴を貫通して前記シリンダ内に挿入された回転可能なスクリューと、
前記スクリューの前記貫通穴から前記シリンダの外部に伸びたシャフト部分を支持する軸封軸受け部と、
を備える脱揮押出機であって、
前記軸封軸受け部は、軸シール部、該軸シール部と前記シリンダとの間に形成された空隙部、及び、該空隙部に重合禁止剤を含有する液体を導入する液体導入口を有し、
前記貫通穴の内壁面と前記スクリューの前記シャフト部分表面との間に、前記液体導入口から前記空隙部に導入された液体が前記シリンダ内に排出される流路となる隙間を有する、脱揮押出機。
【請求項2】
前記軸シール部がメカニカルシールにより形成されている、請求項1記載の脱揮押出機。
【請求項3】
重合体及び揮発成分を含む重合体組成物を、請求項1又は2記載の脱揮押出機における前記重合体組成物供給口から前記シリンダ内に供給し、且つ、前記液体を前記液体導入口から前記空隙部に供給して、揮発成分を前記ガス排出口から、脱揮後の重合体を前記重合体出口からそれぞれ排出する、重合体組成物の脱揮押出方法。
【請求項4】
前記液体が、前記重合禁止剤を前記重合体の原料として使用される単量体に溶解させた液体である、請求項3記載の重合体組成物の脱揮押出方法。
【請求項5】
単量体、ラジカル重合開始剤、及び連鎖移動剤を含む原料を重合反応槽へ連続的に供給する工程と、
前記重合反応槽内で前記単量体を重合させて、重合体と、未反応単量体を含有する揮発成分とを含む重合体組成物を得る工程と、
前記重合体組成物を、請求項1又は2記載の脱揮押出機における前記重合体組成物供給口から前記シリンダ内に供給し、且つ、前記液体を前記液体導入口から前記空隙部に供給して、前記揮発成分を前記ガス排出口から、脱揮後の重合体を前記重合体出口からそれぞれ排出する工程と、
を有する、重合体の製造方法。
【請求項6】
前記液体が、前記重合禁止剤を前記単量体に溶解させた液体である、請求項5記載の重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−17406(P2012−17406A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155690(P2010−155690)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】