説明

脱気装置

【課題】液体の脱気処理量を簡易に且つ低コストで可変でき、占有スペースが小さく、真空配管が容易な脱気装置を提供すること。
【解決手段】本発明の脱気装置100は、2箇所の開口部111,112が設けられた減圧チャンバー110を有する脱気ユニット101と、真空吸引口102aが設けられ、開口部111を密閉する第1密閉部材102と、開口部112を密閉する第2密閉部材103とを備え、液体の脱気処理量に基づいて脱気ユニットの配置数の増減が可能となっている。これにより、1つの減圧チャンバーに1つの真空吸引口が設けられた構成であるため、真空配管の取り回しを簡易なものとすることができ、占有スペースを小さなものとすることができる。また、脱気ユニットの配置数を簡易に増減することができる構成であるため、液体の脱気処理量が変化しても手間やコストを掛けずに容易に対応することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の脱気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体中の溶存ガスを脱気処理する脱気装置のひとつに、減圧チャンバー内に気体透過性チューブを収容し、この気体透過性チューブの両端を減圧チャンバーに設けられた液体流入口及び液体排出口に接続したものがある。この脱気装置によれば、減圧チャンバーに設けられた真空吸引口から減圧チャンバー内を真空吸引して減圧し、液体流入口から気体透過性チューブへ液体を流入することにより、液体中の溶存ガスを脱気処理して該液体を液体排出口から排出させることができる。
【0003】
このような構成の脱気装置において、脱気処理液体の大流量化及び脱気処理の高性能化を図るためには、例えば、減圧チャンバー内における気体透過性チューブを長くするかチューブ本数を増やす必要がある。ところが、チューブ長を長くする場合は、チューブ内での圧力損失が増大するという問題がある。一方、チューブ本数を増やす場合は、圧力損失の増大は回避できるが、単純にチューブ本数を増やすとチューブ端末を融着する際に融着不良が起きて液漏れの発生するおそれ、あるいはそれに伴って、減圧チャンバ−内の真空吸引に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0004】
そこで、数十本の所定本数の気体透過性チューブを両端部において結束してチューブ束とし、1つのチューブ束を1つの減圧チャンバー内に収容してチューブ束の両端を液体流入口及び液体排出口に接続した脱気装置が提案されている(特許文献1参照)。この脱気装置を複数並列配置し、各脱気装置の液体流入口を並列接続すると共に液体排出口を並列接続することにより、脱気処理液体の大流量化及び脱気処理の高性能化を図ることができる。ところが、この並列型の脱気装置では、各脱気装置の真空吸引口も並列接続する必要があるため、真空配管の取り回しに手間が掛かり、また、減圧チャンバーも個々に必要なため、占有スペースが大きくなるという問題がある。そこで、かかる問題を解消する脱気装置として、複数の液体流入口及び液体排出口を減圧チャンバーに設け、複数のチューブ束を1つの減圧チャンバー内に収容して各チューブ束の両端を各液体流入口及び各液体排出口に接続した一体型の脱気装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−57946号公報
【特許文献2】特開平11−28307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献2に記載の一体型の脱気装置では、該脱気装置の最大処理量を超えた量の液体を脱気処理しなければならない場合、もしくは液体の脱気処理量が減少した場合、最大処理量の異なる同様の脱気装置を多数用意しておき、これらの脱気装置から必要な脱気装置を選択して、元の脱気装置に並列接続し、もしくは元の脱気装置と交換する必要がある。このため、最大処理量の異なる多数の脱気装置を保存管理しなければならず、手間やコストが掛かるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、液体の脱気処理量を簡易に且つ低コストで可変でき、占有スペースが小さく、真空配管が容易な脱気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、本発明の脱気装置では、液体流入口、液体排出口、及び2箇所の開口部が設けられた減圧チャンバー、並びに一端が前記液体流入口に接続され、他端が前記液体排出口に接続されて前記減圧チャンバー内に収納された気体透過性チューブを有する脱気ユニットと、真空吸引口が設けられ、一方の前記開口部を密閉する第1密閉部材と、他方の前記開口部を密閉する第2密閉部材とを備え、前記減圧チャンバー内を前記真空吸引口から真空吸引して減圧し、前記液体流入口から前記気体透過性チューブを介して前記液体排出口へと流される液体を脱気処理する脱気装置であって、前記液体の脱気処理量に基づいて前記脱気ユニットの配置数の増減が可能であり、前記脱気ユニットが複数のときは、各減圧チャンバーの前記開口部同士が対向するように該脱気ユニットを並列配置して、対向する前記開口部同士を密着し、並列配置した前記脱気ユニットの両側の前記開口部のうち一方を前記第1密閉部材で密閉し他方を前記第2密閉部材で密閉し、各減圧チャンバーの前記液体流入口を並列接続し前記液体排出口を並列接続した構成とすることを特徴としている。
【0009】
この脱気装置によれば、1つの減圧チャンバーに1つの真空吸引口が設けられた構成であるため、従来の並列型の脱気装置のように各脱気装置の真空吸引口を並列接続する必要がなく、真空配管の取り回しを簡易なものとすることができ、また、従来の並列型の脱気装置のように減圧チャンバーも個々に必要はなく、占有スペースを小さなものとすることができる。また、脱気ユニットの配置数を簡易に増減することができる構成であるため、従来の一体型の脱気装置のように最大処理量の異なる多数の脱気装置を保存管理する必要はなく、液体の脱気処理量が変化しても手間やコストを掛けずに容易に対応することができる。
【0010】
また、本発明の脱気装置では、前記気体透過性チューブは、外周に薄肉チューブが配設されていることを特徴としている。これにより、気体透過性チューブの折れ曲がりを防止することができると共に、隣接する気体透過性チューブの干渉による傷付けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る脱気装置の断面平面図である。
【図2】(A)、(B)は、図1の脱気装置を構成する脱気ユニットの断面側面図及び断面平面図である。
【図3】(A)、(B)は、図1の脱気装置の継手の接続例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の成立に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る脱気装置の断面平面図、図2(A)、(B)は、図1の脱気装置を構成する脱気ユニットの断面側面図及び断面平面図、図3(A)、(B)は、図1の脱気装置の継手の接続例を示す断面図である。この脱気装置100は、図1に示すように、複数(本例では5つ)の脱気ユニット101と、2つのカバー(第1及び第2密閉部材)102,103とを備えている。脱気ユニット101は、中空の直方体状に形成された減圧チャンバー110と、複数本(本例では91本)の気体透過性の中空糸体121の端末部において、その断面がハニカム構造となるように束ねた気体透過性チューブ120とを備えている。脱気装置100は、5つの脱気ユニット101が並列配置されて密着され、その両側にカバー102,103がそれぞれ配置されて密着され、それらが図略のボルト及びナットにより締結されて一体化された構成となっている。
【0014】
減圧チャンバー110は、図2に示すように、例えばポリプロピレン(PP)等の樹脂により、対向する2つの側面が開口部111,112となるように形成されている。そして、一方の開口部112の端面には、Oリング等のパッキング材104が嵌め込まれるパッキング溝112aが形成されている。これにより、複数の減圧チャンバー110を並列配置して隣接する減圧チャンバー110の開口部111の端面と開口部112の端面とを密着したときに、該密着面の気密性をパッキング材104により持たせることができる。
【0015】
また、減圧チャンバー110の上面には、液体流入口113及び液体排出口114が形成されている。液体流入口113及び液体排出口114には、並列接続用の継手115,116が嵌挿されている。継手115,116は、例えばテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂によりT字状に形成されて上部両端が並列接続可能に形成されているが、終端部分のみはL字状(図1参照)に形成されて上部片端のみが接続可能に形成されている。継手115,116の挿入端部には、オネジ115a,116aが螺設されており、ナット117,118が螺合されていると共に、気体透過性チューブ120に接続されている袋ナット122,123がOリング等のパッキング材124及びフランジ125を介して螺合されている。これにより、継手115,116と気体透過性チューブ120とを接続したときに、該接続部の気密性をパッキング材124により持たせることができる。
【0016】
継手115,116の並列接続方法としては、図3(A)に示すように、隣接する継手115,116の上部端面同士を密着して密着外周部分を全周にわたって溶接115b,116bにより接合して継手115,116を並列接続する方法がある。また、図3(B)に示すように、継手115,116の上部一端に円筒状の凹部115c,116c及びOリング等のパッキング材105が嵌め込まれるパッキング溝115d,116dを形成し、継手115,116の上部他端に凹部115c,116cに嵌め込み可能な円筒状の凸部115e,116eを形成することにより継手115,116を並列接続する方法がある。これにより、複数の減圧チャンバー110を並列配置して隣接する減圧チャンバー110の継手115,116を並列接続したときに、継手115,116の気密性を溶接115b,116bもしくはパッキング材105により持たせることができる。
【0017】
気体透過性チューブ120は、例えばPFA等のフッ素樹脂でなる複数本の気体透過性の中空糸体121が端末部において、その断面がハニカム構造となるように束ねられ、中空糸体121束の外周がPFAでなる薄肉チューブ126で被覆されている。さらに、中空糸体121束の両端部が熱溶着によって溶着されて、該両端部に袋ナット122,123、フランジ125及びパッキング材124が挿入された構成となっている。中空糸体121は、例えば内径0.45mm、外径0.6mm、長さ900mmのものが使用される。
【0018】
薄肉チューブ126により、中空糸体121の折れ曲がりを防止することができると共に、隣接する気体透過性チューブ120の干渉による中空糸体121の傷付けを防止することができる。さらに、薄肉チューブ126には、長手方向に破線状のスリットが形成されており、これにより中空糸体121の脱気性能は担保されている。なお、薄肉チューブ126の代わりにPFAでなる薄肉テープや薄肉シートを用いても良い。そして、気体透過性チューブ120は、減圧チャンバー110内部にコイル形状に巻かれた状態で収納され、チューブ両端部が継手115,116の挿入端部にそれぞれ接続されている。
【0019】
カバー102は、例えばPP等の樹脂により矩形板状に形成されており、下部に真空吸引口102aが設けられ、減圧チャンバー110の開口部111の端面と密着する側の面の部分には、Oリング等のパッキング材106が嵌め込まれるパッキング溝102bが形成されている。これにより、カバー102の面と減圧チャンバー110の開口部111の端面とを密着したときに、該接合面の気密性をパッキング材106により持たせることができる。カバー103は、例えばPP等の樹脂により矩形板状に形成されている。なお、カバー102と複数の脱気ユニット101とカバー103とを締結するボルト及びナットは、例えばステンレス等の金属もしくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の樹脂により作成されている。
【0020】
この脱気装置100は、以下の手順で組み立てられる。先ず、減圧チャンバー110の液体流入口113及び液体排出口114に継手115,116を嵌挿し、継手115,116の挿入端部のオネジ115a,116aにナット117,118を螺合して締結する。これにより、継手115,116を減圧チャンバー110に固定することができる。そして、気体透過性チューブ120をコイル形状に巻回し、パッキング材124を有するチューブ両端部の袋ナット122,123を継手115,116の挿入端部のオネジ115a,116aに螺合して締結する。これにより、気体透過性チューブ120を気密性を担保しながら減圧チャンバー110内に収納することができる。以上の手順を必要な減圧チャンバー110の数分繰り返す。
【0021】
次に、各減圧チャンバー110の開口部112のパッキング溝112aにパッキング材104を嵌め込むと共に、カバー102のパッキング溝102bにパッキング材106を嵌め込む。そして、各減圧チャンバー110を、開口部111と開口部112とが密着するように、かつT字状の継手115,116(図1の右端の減圧チャンバー110はL字状の継手115,116)の上部端部同士が密着するように並列配置する。そして、図1の左端の減圧チャンバー110の開口部111にカバー102のパッキング溝102b側の面を密着させ、図1の右端の減圧チャンバー110の開口部112にカバー103を密着させる。最後に、図略のボルトをカバー102側から挿入し、各脱気ユニット101からカバー103へ貫通させて図略のナットを螺合して締結する。そして、隣接する継手115,116の上部端面の密着外周部分を全周にわたって溶接115b,116b等により接合する。以上により脱気装置100の組み立てが完了する。
【0022】
このような構成の脱気装置100では、各液体流入口113から各気体透過性チューブ120に流入した液体は、一体化された減圧チャンバー110内部が減圧されているので、各気体透過性チューブ120内を通過している間に溶存ガスが脱気され、各液体排出口114から排出される。この脱気装置100によれば、脱気ユニット101に配置される気体透過性チューブ120は、複数本の気体透過性の中空糸体121を束ねた構造であるため、チューブ長を増大する場合と比較して、単位容積当たりの膜面積を広くすることができると共に圧力損失を低減することができ、脱気処理液の大流量化及び脱気処理の高性能化を図ることができる。
【0023】
さらに、1つの減圧チャンバー110に1つの真空吸引口102aが設けられた構成であるため、従来の並列型の脱気装置のように各脱気装置の真空吸引口を並列接続する必要がなく、真空配管の取り回しを簡易なものとすることができ、また、従来の並列型の脱気装置のように減圧チャンバーも個々に必要はなく、占有スペースを小さなものとすることができる。また、脱気ユニット101の配置数を簡易に増減することができる構成であるため、従来の一体型の脱気装置のように最大処理量の異なる多数の脱気装置を保存管理する必要はなく、液体の脱気処理量が変化しても手間やコストを掛けずに容易に対応することができる。
【0024】
なお、本発明の実施形態の減圧チャンバー110は、直方体状に形成したが、円筒状に形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の脱気装置は、脱気された液体を必要とする機器であれば、どのような機器でも適用可能である。例えば、半導体ウエハへのフォトレジスト等の塗布装置や現像装置、液晶製造装置に使用される液体の脱気装置にも適用可能である。特に、高精度の脱気性能を必要とする機器に適用した場合に大きな効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0026】
100 脱気装置、101 脱気ユニット、102,103 カバー、102a 真空ク吸引口、110 減圧チャンバー、111,112 開口部、113 液体流入口、114 液体排出口、115,116 継手、120 気体透過性チューブ、121 中空糸体、126 薄肉テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体流入口、液体排出口、及び2箇所の開口部が設けられた減圧チャンバー、並びに一端が前記液体流入口に接続され、他端が前記液体排出口に接続されて前記減圧チャンバー内に収納された気体透過性チューブを有する脱気ユニットと、
真空吸引口が設けられ、一方の前記開口部を密閉する第1密閉部材と、
他方の前記開口部を密閉する第2密閉部材とを備え、
前記減圧チャンバー内を前記真空吸引口から真空吸引して減圧し、前記液体流入口から前記気体透過性チューブを介して前記液体排出口へと流される液体を脱気処理する脱気装置であって、
前記液体の脱気処理量に基づいて前記脱気ユニットの配置数の増減が可能であり、前記脱気ユニットが複数のときは、各減圧チャンバーの前記開口部同士が対向するように該脱気ユニットを並列配置して、対向する前記開口部同士を密着し、並列配置した前記脱気ユニットの両側の前記開口部のうち一方を前記第1密閉部材で密閉し他方を前記第2密閉部材で密閉し、各減圧チャンバーの前記液体流入口を並列接続し前記液体排出口を並列接続した構成とすることを特徴とする脱気装置。
【請求項2】
前記気体透過性チューブは、外周に薄肉チューブが配設されていることを特徴とする請求項1に記載の脱気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−194423(P2010−194423A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40114(P2009−40114)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000145530)株式会社潤工社 (71)
【Fターム(参考)】