説明

脱水素された炭化水素化合物の製造方法

脱水素触媒が反応器中で脱水素条件下で気体状反応物である炭化水素類と接触する、不飽和炭化水素化合物、例えばオレフィンもしくはビニル芳香族化合物、またはそれらの混合物を製造するための、パラフィン系炭化水素化合物、例えばアルカン、またはアルキル芳香族炭化水素化合物の脱水素方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1)発明の分野:
本発明は一般的に炭化水素転化の分野に、そして特にパラフィン系炭化水素類からオレフィン系炭化水素類へのおよび/または低級アルキル芳香族炭化水素類からビニル芳香族炭化水素類への脱水素に関する。数種の好ましい態様では、本発明は、低級アルカン類、例えばエタン、イソプロパン、プロパンおよびブタン類からそれらの対応するオレフィン類、例えばエチレン、プロピレンおよびブチレン類への脱水素、並びに/または低級アルキル芳香族炭化水素化合物、例えばエチルベンゼン、プロピルベンゼンおよびメチルエチルベンゼンからそれらの対応するビニル芳香族(すなわち「アルケニル芳香族」)炭化水素化合物、例えばそれぞれ、スチレン、クメンおよびアルファ−メチルスチレンへの脱水素に関する。本発明は、さらに、アルキル化および脱水素段階を包含するオレフィン系およびビニル芳香族炭化水素類の一体化された製造方法も包含する。
【背景技術】
【0002】
2)関連技術の記述
特許文献1およびその対応する特許文献2は、ベンゼンおよび再循環されたエチレンをアルキル化反応器に供給してエチルベンゼンを製造し、アルキル化流出物をエタンと混合しそして混合物をエチレンおよびエチルベンゼンを同時に脱水素可能な触媒を含有する脱水素反応器に供給することによるスチレンの一体化された製造方法を記載している。生じる生成物を分離してスチレンおよびエチレンの流を製造し、エチレンはアルキル化反応器に再循環される。脱水素反応器は好ましくは、触媒がそこから再生器および脱水素反応器の間に向流で循環される流動床再生器に連結された流動床反応器である。すなわち、触媒は脱水素反応器に頂部から導入されそして反応器中で上昇する気相反応物と向流で底に下降する。この下降中に、触媒は不活性化される。不活性化された触媒は脱水素反応器の底から除去されそして再生器の頂部に移され、そこでそれは上昇する熱空気と向流で底に下降する。この下降中に、触媒上に存在する炭素質残渣が燃焼されそして再生された触媒が再生器の底で集められ、そこでそれは引き続き脱水素反応器の頂部に逆に循環される。
【0003】
特許文献3は、脱水素触媒が再生器から脱水素反応器に低級アルキル炭化水素担体、例えばエタンにより移送されるこの方法の改良を記載している。移送中に、担体の一部が脱水素され(例えばエタンがエチレンに転化され)、そして触媒が冷却される。
【0004】
特許文献4(および対応する現在出願継続中の特許文献5、両者とも本出願の譲渡人により出願された)は、ベンゼンおよびエタンを原料物質として使用するスチレンの一体化された製造方法を記載している。しかしながら、この方法は効率を改良するために設計される追加の分離および再循環段階を包含する。例えば、脱水素反応器を出た脱水素された流出物はその芳香族および非−芳香族成分に分離される。非−芳香族成分、すなわちエタン、エチレンおよび水素はアルキル化反応器に再循環され、そこでそれらはベンゼンと組み合わされる。芳香族成分はさらに分離され、例えばスチレンは回収されそしてエチルベンゼンは脱水素反応器に再循環される。アルキル化流出物はその成分に分離され、水素は除去され、そしてエタンおよびエチルベンゼンは脱水素反応器に向かう。脱水素反応器は、固定、流動、および移送床を包含する種々の一般的デザインを有することができる。
【0005】
記載された脱水素方法はエタンおよびベンゼンを出発物質として使用するスチレンおよびエチレンの製造の一体化において有効である。それ故、これらの方法はエチレン用の原料として軽質炭化水素流分解剤の存在下または近接部からのスチレンの製造を効果的にデカップリングするのに有効である。しかしながら、記載された脱水素方法は炭化水素類お
よび触媒の間の比較的長い接触時間を使用するが、反応温度において望ましくない副反応である熱分解を生じそしてタールおよび他の重質生成物を生成する。
【0006】
特許文献3は併流すなわち「同流(equicurrent)」方式で操作される分離した「上昇管−タイプ」(“riser−type”)脱水素反応器の概念を導入しており、そこでは触媒は気相反応物により脱水素反応器中を気体作用で上方に運ばれる。そのような反応器の空間速度(GHSV)は500h−1より大きい。触媒は反応器中に例えばエタンの如きアルキル炭化水素と共に導入されるが、アルキル炭化水素の多くが脱水素されそして触媒の温度が低下した後にアルキル芳香族化合物、例えばエチルベンゼン、は適切な高さにおいて上昇管に沿って導入される。具体的な例または操作条件は示されていないが、そのような上昇管反応器の使用は多分反応器にある間の反応物および触媒の間の短縮された接触時間をもたらす。
【0007】
脱水素温度および滞在時間は典型的には接触反応および気相(熱)反応の両者の反応動力学を均衡させるように最適化される。接触反応は所望する生成物への高い選択率を生ずるが、気相反応は多くの望ましくない生成物および不純物を生ずる。すなわち、所望する生成物への接触反応動力学は気相反応動力学を実行するように温度につれて指数関数的に増加し、従って、適切な滞在時間および反応時間特徴を選択して接触反応を所望する転化率まで推進しながら非−選択的気相反応が全体的な生成物選択率を圧倒しないようにしなければならない。反応物および触媒が反応温度にある間に互いに接触する期間を最短にする装置および方法を提供することが有用であろう。これは特に、急速に不活性化しうる高反応性触媒を利用する場合にそうである。
【0008】
上記の文献に記載されているような「脱水素化方法」に関するものではないが、特許文献6はベンゼンおよび「再循環された」エチレンがアルキル化装置中で組み合わされ、生じたエチルベンゼンの生成物流がエタンと組み合わされるスチレンの一体化された製造方法を記載している。これまでに記載された文献とは異なり、この方法は酸化的脱水素(オキソ脱水素)反応を利用する。すなわち、アルキル化装置からの生成物流がエタンおよび酸素と組み合わされ、そして次に同時に酸化的に脱水素されてエチレンおよびスチレンを与える。生じたエチレンはアルキル化装置に再循環される。オキソ脱水素反応器は300〜550℃の温度範囲、1〜30バールの圧力範囲、2000〜6000h−1の気体毎時空間速度、1〜60秒間の流動床領域内の触媒の滞在時間で操作される流動床反応器として記載されている。
【特許文献1】米国特許第6,031,143号明細書
【特許文献2】欧州特許第0905112号明細書
【特許文献3】国際公開第02/096844号パンフレット
【特許文献4】欧州特許第1255719号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0028059号明細書
【特許文献6】国際公開第03/050065号パンフレット
【発明の開示】
【0009】
発明の要旨
先行技術の上記の欠点は、炭化水素の気体流を反応温度において比較的短い「接触時間」にわたり脱水素触媒と接触させることを含んでなる本発明により克服することができる。好ましい態様では、低級アルカン類、例えばエタン、プロパンおよびブタン類はそれらの対応するオレフィン類、例えばエチレン、プロピレンおよびブチレン類に脱水素され、並びに/または低級アルキル芳香族炭化水素化合物、例えばエチルベンゼン、プロピルベンゼンおよびメチルエチルベンゼンはそれらの対応するビニル芳香族炭化水素化合物、例えば、それぞれ、スチレン、クメンおよびアルファ−メチルスチレンに脱水素される。
【0010】
別の態様では、上記の脱水素方法は、一体化された方法の一部として、アルキル化段階と組み合わされる。多くの別の態様も記載される。
【0011】
図面の簡単な記述
図1は、触媒再生も包含する、上昇管反応器が1)パラフィン系炭化水素(例えばエタン)供給だけ、2)アルキル芳香族炭化水素(例えばエチルベンゼン)供給だけ、または3)混合供給(例えばエタンおよびエチルベンゼン)のために使用することができる単一炭化水素供給点で使用される、本発明の態様の図式的ブロック・フロー・ダイアグラムである。
【0012】
図2は、触媒再生も包含する、上昇管反応器が複数供給点配置、すなわち分離されているエチルベンゼンおよびエタン供給配置で使用される、本発明の別の態様の図式的ブロック・フロー・ダイアグラムである。
【0013】
図3は、連続配置での触媒再生を含む複数上昇管反応器を包含する、本発明の別の態様の図式的ブロック・フロー・ダイアグラムである。
【0014】
図4は、平行配置での触媒再生を含む複数上昇管反応器を包含する、本発明の別の態様の図式的ブロック・フロー・ダイアグラムである。
【0015】
図5は、図4と同様であるが触媒再循環配置をさらに包含する、本発明の別の態様の図式的ブロック・フロー・ダイアグラムである。
【0016】
発明の詳細な記述
本発明は、1)パラフィン系炭化水素化合物、好ましくは炭素数2〜6であるがより好ましくは炭素数5より少ない低級アルカン、例えばエタン、プロパン、イソプロパンおよびブタン類から対応するオレフィン、すなわち、それぞれ、エチレン、プロピレン、およびブチレン類への、並びに2)アルキル芳香族炭化水素化合物、好ましくは低級アルキル芳香族炭化水素化合物、例えば、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、およびメチルエチルベンゼンから対応するビニル芳香族炭化水素化合物、(すなわち「アルケニル芳香族」)、すなわち、スチレン、クメンまたはアルファ−メチルスチレンへの、少なくとも一方のまたは好ましくは両方の脱水素に関する。低級アルカン類およびアルキル芳香族の同時および別個の脱水素を包含する本発明の数種の態様が記載される。本発明は、スチレンおよびエチレンを、それぞれ、エチルベンゼンおよびエタンから製造するために有用である。同様に、クメンおよびプロピレンは、それぞれ、プロピルベンゼンおよびプロパンから製造されうる。
【0017】
本発明における脱水素反応は、望ましくない副反応および生成物分解を防止するために、比較的短い接触時間で行われる。ここで使用される用語「平均接触時間」または「接触時間」は、反応物が所望される生成物に転化されるかどうかにかかわらず、モル平均の気体状炭化水素分子が反応時間の間に触媒と接触している時間をさすことが意図される。用語「反応温度」は、化学反応が反応物からそれらのオレフィンおよびビニル芳香族生成物への所望する脱水素であるかどうかにかかわらず、有意な量の化学反応が起きる温度を意味することが意図される。換言すると、反応温度は炭化水素類がもはや安定でない温度である。用語「有意な量」(“significant amount”)は、方法に対して経済的な利点を有する検出可能な量を意味することが意図される。本発明のほとんどの態様では、反応温度は約500、そして好ましくは550℃より高い。平均接触時間は許容可能な量の炭化水素反応物を脱水素するのに充分なほど長いが許容できない量の副生物を生ずるほど長くないことが必要である。必要な接触時間は具体的な反応物、触媒および反応温度に関連しており、本発明の好ましい態様では、脱水素反応器内の接触時間は60秒間より短く、好ましくは約0.5〜約10秒間、より好ましくは約1〜約8秒間、そしてさらにより好ましくは約1〜約4秒間である。
【0018】
好ましい触媒の活性性質によるが、脱水素反応器内の触媒の平均滞在時間は好ましくは約60秒間未満、好ましくは約0.5〜約40秒間、より好ましくは約1.0〜約12.0秒間、そしてさらにより好ましくは約1.0〜約10秒間である。
【0019】
脱水素反応器中のそのような短い触媒滞在時間および平均接触時間では、熱い新しいまたは再生された触媒により大部分が与えられる反応混合物の温度は好ましくは約500〜約800℃である。低級アルカン類に関すると、反応混合物は好ましくは約600〜約750℃であり、そしてアルキル芳香族に関すると約550〜700℃、より好ましくは約570〜約660℃である。一般的に、反応器中の最高温度はその下端で得られそして反応が進行し且つ触媒および反応混合物が上昇するにつれて、温度は反応器の上端に向かって低下するであろう。
【0020】
脱水素反応器の適用可能な操作圧力はきわめて広く、すなわち約3.7〜約64.7psiaである。反応が進行する圧力は典型的には約14.7〜約64.7psia、そして好ましくは約14.7〜約44.7psiaである。しかしながら、本発明の数種の好ましい態様では、脱水素反応器の操作圧力は大気圧より低くてもよく、すなわち約3.7〜14.7psia、より好ましくは約6.0〜14.7psiaでもよい。
【0021】
本方法に関する気体毎時空間速度(GHSV)は、立方メートルの触媒当たりかさ密度で約1,000〜約150,000正規立方メートル/時の炭化水素供給量の範囲であることが見出された。界面気体速度は約5〜約80フィート/秒、好ましくは約15〜約70フィート/秒である。触媒流量は好ましくは約10〜約120ポンド/フィート−秒であり、触媒対原料比は重量対重量基準で約5対約100である。触媒を好ましくは反応システム中に好ましくは不活性希釈剤流体または気体形態の反応物の1種のいずれかである担体流体により気体作用で移動させる。或いは、触媒を反応器中に希釈剤なしで大気圧以下で移送させることもできる。不活性希釈剤担体気体の例は、窒素、揮発性炭化水素類、例えばメタン、および反応を妨害しない他の担体、水蒸気、二酸化炭素、アルゴンなどである。本発明の方法における反応物として有用なパラフィン系炭化水素化合物も好ましい担体流体であり、そしてエタン、プロパン、およびブタンが最も好ましい。水蒸気は好ましくは本発明では使用されない。担体気体の必要量は、触媒粒子を流動状態に保ちそして触媒を再生器から反応器に移送するのに必要な量だけである。好ましくは、担体気体の使用量は約0〜約0.2kgの気体/kgの触媒の範囲でありうる。担体気体、特に反応物原料物質担体気体に関する注入点は、再生器を上昇管反応器の下端に連結している新しいまたは再生された触媒の移送管に沿った複数の点に製造できる。担体気体は反応器から生成物気体と共にまたは再生器の排気流を通って出るであろう。担体気体も反応物である場合には、担体気体のかなりの部分が反応しそして生成物気体流と共に反応器から出ることができる。
【0022】
本発明により必要な短い接触時間は、急速流動、上昇管および下降管反応器を包含する多くの既知の反応器デザインにより実現できる。上昇管反応器は既知でありそして流動床接触分解(FCC)方法におけるある種の石油画分からガソリンへの転化において普遍的に使用されている。例えば、約10秒間の接触時間用に設計された短時間希釈相上昇管反応器を記載しておりそして触媒再生および再循環配置をさらに包含している、引用することにより本発明の内容となる、米国特許第3,888,762号明細書を参照のこと。米国特許出願公開第2004/0082824号明細書、国際公開第2001/85872号パンフレットおよび国際公開第2004/029178号パンフレットも参照のこと。FCC方法では、固体粒状触媒、一般的には酸性クレイ、シリカ−アルミナまたは合成も
しくは天然ゼオライトタイプの触媒が担体流体と共に、長い、円筒状のまたは管状の反応容器の下端に、石油画分と一緒に、高められた温度および中程度の圧力において導入される。液体石油が熱い触媒により気化されそして両者が反応器シリンダー中を上昇するにつれて、分解工程が石油内で起きる。上昇管反応器の頂部で、触媒および炭化水素生成物が分離されそして分離およびガソリンへの処理および油画分の加熱用の排気管を通ってガソリン生成物流が出る。触媒は上昇管の外壁と反応器ハウジングの内壁との間の環状空間に沈殿し、そのハウジングを通ってストリッパー気体が触媒と、触媒の沈殿を妨害しない速度で、接触し、そして追加の石油生成物を触媒表面からストリッピング除去する。触媒は次に再生器/再活性化器に送られ、そこで触媒は再生流体、一般的には残存する炭化水素類、重質残渣またはタールの燃焼用の酸素−含有気体と接触し、そして再生された触媒は上昇管反応器の下端に逆に送られて分解用の追加の石油と接触する。使用済み触媒は再生なしに反応器の下端に直接再循環させることもできる。
【0023】
同様な方法で、本発明の好ましい態様では、アルキル芳香族炭化水素化合物および/またはパラフィン系炭化水素化合物が反応器の下端に導入されそして担体気体により気体作用で移動させうる熱い新しいまたは再生された触媒と接触する。1種もしくは複数の炭化水素化合物が触媒を有する円筒状反応器中を上昇するにつれて、脱水素反応が起きそして上昇器の頂部または上端においてビニル芳香族炭化水素化合物および/または低級オレフィンが触媒から分離される。上昇管反応器はFCCまたは石油化学処理で使用される普遍的な材料から構成することができ、そして簡便には使用される温度、圧力および流速を考慮に入れて反応の炭化水素物質を含有するのに充分な合金を使用する鋼容器でありそして耐火張りされていてもよい。上昇管反応器の寸法は、提示された能力または生産量、気体毎時空間速度(GHSV)、温度、圧力、触媒効率および所望する選択率で生成物に転化される原料の単位比を包含する処理設備の工程デザインに依存する。
【0024】
気体状炭化水素および触媒の分離は簡便には遠心衝突分離器、例えばサイクロン分離器、により行われるが、分離は濾過および液体懸濁を包含する固体−気体分離用のいずれかの普遍的な手段により行うことができる。触媒および炭化水素が脱水素反応器を出る際の触媒および炭化水素の間の平均接触時間を最短にすることが重要である。これは好ましくは2つの手段である炭化水素からの触媒の物理的分離並びに触媒および/または炭化水素の存在する炭化水素の反応温度以下の温度への冷却の少なくとも一方により行われる。分離装置中の反応温度における触媒および炭化水素の平均接触時間は、典型的には60秒間未満、好ましくは約10秒間未満、そしてより好ましくは約5秒間未満、そしてさらにより好ましくは約3秒間未満である。分離装置は普遍的な固体−気体衝突分離器、例えばFCC用途で一般的に使用されているサイクロン分離器でありうる。好ましいサイクロン分離器は、正および負の両方の圧力デザインを包含する二段階または「一緒にした」デザインを包含する。さらなる例は米国特許第4,502,947号明細書、第4,985,136号明細書および第5,248,411号明細書に示されている。分離されたら、触媒は脱水素反応器に再循環されるかまたは再生器に移送される。
【0025】
触媒および炭化水素の分離に加えて、分離装置は熱交換器、および/または流体を送達して触媒および/または炭化水素類を反応温度より低い温度に冷却するための冷却装置を包含しうる。そのような流体は、冷却流体、例えば液体スチレン、水などを送達するための加圧されたノズルを包含する普遍的な冷却デザインにより送達されうる。そのような冷却技術はストーン・アンド・ウェブスター(Stone & Webster)およびBP・アモコ(BP Amoco)から入手可能である。
【0026】
反応温度における間の脱水素反応器および分離装置全体中の触媒および炭化水素類の間の平均接触時間は、好ましくは60秒間未満、より好ましくは約20秒間未満、そしてさらにより好ましくは約10秒間未満、そしてさらにより好ましくは約7秒間未満である。
【0027】
分離されたら、気体状炭化水素はさらに分離され、すなわち芳香族および非−芳香族などに分離され、それらは米国特許第6,031,143号明細書、国際公開第02/096844号パンフレットおよび米国特許第2003/0028059号明細書に記載されているような一体化された方法の一部でありうる。使用済み触媒は場合によりストリッパーに、そして次に再生器または再循環ループに送られ、その後に触媒は脱水素反応器に戻される。再生中に、触媒は再生流体、一般的には酸素を含有する気体、および場合により燃料原料、例えばメタンまたは天然ガスと接触し、そこで残存する炭化水素類、コーク、重質残渣、タールなどが触媒から除去され、そして生じる再生された触媒が脱水素反応器に逆に循環される。使用済み触媒の一部を再生なしに再循環ループを介して脱水素反応器に逆に循環させることもできる。再循環された使用済み触媒を脱水素反応器内の温度および触媒活性を調節する手段として再生された触媒と組み合わせることができる。再循環されそして再生された触媒の組み合わせは脱水素反応器の生産量からのフィードバックに基づき最適化しうる。この組み合わせを調節するための手段の一例は、引用することにより本発明の内容となる国際公開第03/083014号パンフレットに記載されている。再生および再循環の両者の配置の例は、これらも引用することにより本発明の内容となる米国特許第3,888,762号明細書および米国特許第2003/0196933号明細書に示されている。
【0028】
本発明における使用に好ましい触媒は非常に活性でありそしてパラフィンおよびアルキル芳香族炭化水素類を数秒間以内で理想的な反応温度において脱水素しうる。好ましい触媒は、流動可能である固体粒状タイプおよび、好ましくは、当該工業において既知であるようなゲルダート(Geldart)A性質を示すものを包含する。引用することにより本発明の内容となる米国特許第6,031,143号明細書および国際公開第2002/096844号パンフレットに記載されているガリウムをベースとした触媒が本方法において特に好ましい。脱水素反応用の好ましい触媒の1種は、シリカで改質された、デルタもしくはテータ相、またはデルタおよびテータ相の、もしくはテータおよびアルファ相の、もしくはデルタおよびテータおよびアルファ相の混合物状のアルミナ上に担持されそして当該分野の専門家に既知であるBET方法により測定した好ましくは約100m/g未満の表面積を有するガリウムおよび白金をベースとしている。より好ましくは、触媒はi)0.1〜34重量%、好ましくは0.2〜3.8重量%の酸化ガリウム(Ga)、
ii)1〜200重量ppm、好ましくは100〜150重量ppmの白金、
iii)0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜1重量%のアルカリおよび/またはアルカリ土類、例えばカリウム、
iv)0.08〜3重量%のシリカ、
v)100%にするための量のアルミナ
を含んでなる。同様なガリウムをベースとした触媒は、さらにマンガンを包含する国際公開第2003/053567号パンフレット、およびさらに亜鉛を包含する米国特許第2004/02242945号明細書、および欧州特許第B1−0,637,578号明細書に記載されている。これらの文献からの触媒の記述は引用することにより本発明の内容となる。
【0029】
脱水素反応用の別の適する触媒はクロムをベースとしており、そして
i)6〜30重量%、好ましくは、13〜25重量%の酸化クロム(Cr)、
ii)0.1〜3.5重量%、最も好ましくは、0.2〜2.8重量%の酸化第一錫(SnO)、
iii)0.4〜3重量%、最も好ましくは、0.5〜2.5重量%のアルカリ酸化物、例えば、酸化カリウム、
iv)0.08〜3重量%のシリカ、
v)100%にするための量の、デルタもしくはテータ相、またはデルタおよびテータ相の、もしくはテータおよびアルファ相の、もしくはデルタおよびテータおよびアルファ相の混合物状のアルミナ
を含んでなる。
【0030】
上記の触媒はそのままで使用することもまたは不活性物質、例えば、可能ならアルカリ金属の酸化物および/またはシリカで改質されていてもよい、アルファ−アルミナ、で0〜50重量%の間の不活性生成物の濃度で希釈されてもよい。
【0031】
上記触媒の製造およびそれらのより好ましい種に関する詳細は、米国特許第6,031,143号明細書および欧州特許第B1−0,637,578号明細書に見られる。典型的には、上記脱水素触媒の製造方法は、触媒金属の前駆体、例えば、触媒金属の可溶性塩の溶液、をアルミナまたはシリカよりなる担体上に分散させることを含んでなる。分散の例は、ガリウムおよび白金の前駆体を含有する1種もしくはそれ以上の溶液またはクロムおよび錫の前駆体の1種もしくはそれ以上の溶液による担体の含浸、並びにその後の乾燥および焼成を含んでなりうる。別の方法は、イオン吸着、その後の吸着溶液の液体部分の分離、乾燥、および生じた固体の活性化を含んでなる。別の代替法として、担体を所望する金属の揮発性種で処理することができる。アルカリまたはアルカリ土類金属が加えられる場合には、添加工程は主要触媒金属(すなわち、GaおよびPt、またはCrおよびSn)によるアルカリまたはアルカリ土類金属の同時含浸、或いは、主要触媒金属の分散前の担体に対するアルカリまたはアルカリ土類金属の添加およびその後の固体の可能な焼成を含んでなる。
【0032】
酸化鉄をベースとした、他の適する脱水素触媒は、欧州特許第1216219号明細書に記載されている。これらの触媒は
(i)1〜60重量%、好ましくは1〜20重量%の酸化鉄、
(ii)0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%の少なくとも1種のアルカリまたはアルカリ土類金属酸化物、より好ましくは、酸化カリウム、
(iii)0〜15重量%、好ましくは、0.1〜7重量%の好ましくは酸化セリウム、酸化ランタン、酸化プラセオジム、およびそれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも1種の希土類酸化物、
(iv)100%にするための量の、好ましくは0.08〜5.0重量%のシリカで改質された、デルタもしくはテータ相、またはデルタおよびテータ相の、もしくはテータおよびアルファ相の、もしくはデルタおよびテータおよびアルファ相の混合物状のものから選択されるある直径を有する微球状アルミナ
を含んでなる。好ましい酸化鉄触媒中の担体はより好ましくは、最終生成物がゲルダート(Geldart)(Gas Fluidization Technology,D.Geldart,John Wiley & Sons)に従いA群と分類されうる平均粒子直径および粒子密度並びに当業者に既知であるBET方法により測定した約150m/gより小さい表面積を有する。酸化鉄触媒の製造方法は既知でありそして欧州特許第1216219号に完全に記載されている。
【0033】
別の適用可能な脱水素触媒は、引用することにより本発明の内容となる米国特許第5,430,211号明細書に記載されているような、場合によりガリウム、亜鉛、白金族金属、またはそれらの組み合わせから選択される金属で強化されている、モルデナイト・ゼオライトより構成される。モルデナイトは好ましくは酸抽出されそしてその後にガリウム、亜鉛、および白金族金属、より好ましくは、ガリウムから選択される1種もしくはそれ以上の金属を含浸させるかまたはイオン交換させる。この触媒では、合計金属充填量は典型的には、触媒の合計重量を基準として、0.1〜20重量%の範囲である。
【0034】
上記のように、本発明での使用に好ましい触媒は非常に活性でありそして脱水素反応を比較的短い反応時間で、例えば数秒間で完了させうる。従って、触媒が炭化水素混合物と反応温度において脱水素反応を完了させるのに必要なものより長い期間にわたり接触させたままにするなら、望ましくない副生物が未反応の出発物質から生成され、および/または所望する生成物が工程条件下で触媒への持続露呈により変性される。反応温度における間の脱水素反応器中での炭化水素および触媒の間の短い接触時間の使用は予期せぬ有利な転化率、選択率および生成する副生物の量における減少をもたらす。この予期せぬ効果は、反応温度における間の分離装置中での炭化水素および触媒の間の短い接触時間の使用により増大される。さらに、比較的短い接触または滞在時間の反応器の使用は工程に必要な触媒の量を減少させる。より少ない触媒は先行技術方法と比べて価値あることに操作および資金上の利点を与える。
【0035】
数枚の図面の簡単な記述
本発明の数種の好ましい態様を添付図面で説明する。図1を参照すると、下端12および上端14を有する管状の円筒状上昇管反応器10がその下端12において新しいまたは再生された触媒の移送管16にそして上端14において生成物気体出口管18に連結される。使用済みまたは不活性化された触媒は生成物気体から上端14において、普遍的な固体−気体衝突分離器、例えば前記のようなサイクロン分離器、でありうる分離装置(示されていない)により除去され、そして触媒は使用済み触媒の移送管20を介して再生器22に送られ、それは燃焼空気が再生器22内に空気管24により吹き付けられている反応容器である。補充燃料を燃料管62を介して加えて、上昇管反応器10中の液体原料の場合には気化熱を包含する反応熱および必要な顕熱を与えることができる。触媒上の炭化水素の酸化からの燃焼生成物は再生器22から排気管28により除去される。廃棄または追加の熱回収用に送られる前に、排気は触媒微細物および塵の除去のために示されていない普遍的な装置により濾過することができる。燃焼および炭化水素除去の結果として、触媒は再生されそして炭化水素原料物質を脱水素するのに充分な温度に加熱され、そして再生器22から再生触媒出口管30により除去される。流動化は、窒素注入管26および32並びに担体気体注入管34、36、および38による、希釈剤または担体気体、例えば窒素、の注入により保たれるため、触媒は上昇管反応器10の下端12に導入され、そこでそれは炭化水素供給管40を介して導入されるエタンと接触する。
【0036】
図1はエタンの脱水素に関して記載されていたが、本発明は、図1の態様と同様に低級アルカン類、例えばプロパンおよびブタン、並びに低級アルキル芳香族、例えばエチルベンゼン、プロピルベンゼンおよびメチルエチルベンゼンを包含する他の炭化水素類の脱水素用にも適用可能である。
【0037】
操作中に、再生された触媒を約600〜約800℃の温度において再生器22から再生触媒出口管30により新しいまたは再生された触媒の移送管16中に供給することにより図1に示された態様は進行し、窒素注入管26および32を通して供給される流動用不活性気体、例えば窒素、並びに担体気体注入管34、36、および38を介する不活性であっても(ここでも、例えば窒素)または反応物気体、例えばパラフィン系炭化水素、例えば、低級アルカン、好ましくはエタン、プロパン、もしくはブタンであってもよい担体気体により、触媒はゲルダートA固体粒状物質の流体状態に保たれる。この触媒および担体気体混合物が上昇管反応器10の下端12に導入され、そして炭化水素供給管40により導入された液体または気体形態の炭化水素原料と接触する。触媒および炭化水素原料、例えば、低級アルカン、例えばエタン、プロパンもしくはブタン、またはアルカリ芳香族炭化水素化合物、または低級アルカンとアルキル芳香族炭化水素化合物の両者の混合物が触媒と接触しそして上昇管反応器10中を触媒、原料(この時点では気体に転換されていた)および担体気体と共に上昇する。触媒−原料−担体気体混合物が反応器中を上昇するにつれて、脱水素反応が起きそして原料物質によって原料が低級オレフィンおよび/またはビニル芳香族化合物に転化される。気体および触媒を含有する反応混合物が上昇管反応器10の上端14に到達するにつれて、触媒および気体状反応混合物は固体−気体分離装置、例えば普遍的でありそして示されていないがFCC工業の専門家には既知であるサイクロン気体−固体分離器でありうる衝突分離装置、により分離される。分離された生成物気体は回収および精製に送られ、そして触媒は使用済みまたは不活性化された触媒の移送管20により再生および再加熱用に送られる。使用済みまたは不活性化された触媒が再生器22に導入されるにつれて、それは空気管24により導入される加熱された燃焼空気および燃料管26により導入される補充燃料と接触して、触媒の表面上に残存する炭化水素物質が燃焼除去されそして再生器から排気管28を介して出る。燃焼工程は第二の目的のためにも、すなわち、触媒を加熱して触媒が熱転移剤または媒体として上昇管反応器10中で機能しうるようにすることもできる。この態様で使用されているように、炭化水素原料40はパラフィン系炭化水素、例えば低級アルカン、アルキル芳香族炭化水素化合物、または2種の混合物でありうる。
【0038】
図2は、図1に関して記載されているものと同様な上昇管反応器10を用いる本発明の方法の変法である別の好ましいが非限定用の態様を説明する。この態様では、パラフィン系炭化水素(例えばエタン)は上昇管反応器10に下端12においてまたは隣接してエタン供給管44により供給されそして低級アルキル芳香族炭化水素化合物(例えばエチルベンゼン)はそれより高い点で上昇管反応器10に、例えばエチルベンゼン供給管42で、供給される。それ故、図2の方法により説明されている反応のタイプは、スチレン、およびアルキル段階に戻されて追加のベンゼンと反応してさらにエチルベンゼンを製造することができる副生物、例えばエチレンを製造する一体化された方法の一部としての「分離供給」上昇管反応器方法である。
【0039】
図3は本発明のさらに別の好ましい非限定用の態様を説明する。この態様では、「二重上昇管」反応器構造が説明されており、そこでは上昇管反応器10および48が連続して連結されている。図3に示されているように、上昇管反応器10は下端12および上端14を有する。下端12には新しいまたは再生された触媒の管16が連結され、そして触媒は管34および36を介する担体気体の注入により流動状態に保たれる。炭化水素原料物質、例えばエタンは上昇管反応器10の下端12に炭化水素供給管40により導入される。工程のこの段階で、配置は図1のものと非常に類似しているが、図3における上昇管反応器10からの生成物気体は分離および回収部分(示されていない)に生成物気体出口管18により供給され、そこから副生物管46がアルキル芳香族炭化水素化合物供給管、例えばエチルベンゼン供給管42に通ずる。或いは、副生物および担体気体の他に上昇管反応器10中で製造された低級オレフィンを主として担持する両側副生物気体管46が別個に下端50および上端52を有する第二の上昇管反応器、例えば48の中に供給することもできる。第二の上昇管反応器48の下端50には部分的に不活性化された触媒管54も入り、それは上昇管反応器10の上端14から第二の上昇管反応器48の下端50に通ずる。担体気体管38を使用して流動用担体気体を部分的に不活性化された触媒管54に1つもしくは複数の点において部分的に不活性化された触媒管54に沿って導入することができる。エチレンおよびエチルベンゼンが第二の上昇管反応器48中を触媒および担体気体と共に上昇するにつれて、触媒は最初に上昇管反応器10の下端12に加えられたものより低い温度となる。上昇管反応器10中より比較的低い温度はアルキル芳香族炭化水素化合物に関する満足な反応速度を可能にしそして脱水素反応の収率、転化率および選択率を減少させる望ましくない副生物への反応を防止する。第二の上昇管反応器48の上端52は第二の生成物気体出口管56に連結されそしてビニル芳香族炭化水素化合物、例えば生成物気体中に含有される粗製スチレン単量体を普遍的であるがここではさらに記載または同定されていない生成物気体分離および回収区域に導く。第二の上昇管反応器48から出る前に、反応混合物を不活性化された触媒から分離しなければならず、そしてこれは示されていない固体−気体分離装置、例えばサイクロン分離器中で行われる。分離されそして不活性化された触媒は再生器22に使用済みまたは不活性化された触媒の移送管20により逆に供給され、それはこの態様では第二の上昇管反応器48の上端52から再生器22に通じており、そこで触媒は前記のごとく再生される。操作中に、上昇管反応器10の上端14からの生成物気体が分離されそして一部が第二の上昇管反応器48の下端50に導入されること以外は、工程は図1および2で説明された工程に関して記載されたものと非常に類似している。エチルベンゼンも第二の上昇管反応器48の下端50に部分的に不活性化された触媒と共に部分的に不活性化された触媒管54を介して導入され、そしてエチルベンゼンの脱水素は第二の上昇管反応器48では上昇管反応器10中より幾分穏やかな条件下で進行する。第二の上昇管反応器48の上端52において、生成物気体が触媒から固体気体分離器装置、例えばサイクロン分離器(これは普遍的でありそして示されていない)の中で分離され、そして生成物気体が第二の生成物気体出口管56を介して出てそして触媒は再生および再加熱のために使用済みまたは不活性化された触媒の移送管20を介して再生器22に逆に送られる。
【0040】
図4に示された本発明のさらに別の好ましい態様では、第二の上昇管反応器48がそれ自体の触媒供給および除去移送管、すなわち第二の新しいまたは再生された触媒の移送管58および第二の使用済みまたは不活性化された触媒の移送管60を有しており、それらが活性触媒を第二の上昇管反応器48に供給しそして触媒をそこから除去しそして不活性化されたまたは使用済み触媒を再生器に逆に送ること以外は、反応器/再生器構造は図3のものと同様である。共通の再生器22を使用するとして示されているが、各反応器が別個の再生器を包含しうることは認識されよう。
【0041】
操作中にそして図4に示されているように、再生器22からの触媒は再生された触媒の出口管30により上昇管反応器10または第二の上昇管反応器48のいずれかに、それぞれ、新しいもしくは再生された触媒の移送管16または第二の新しいもしくは再生された触媒の移送管58を介して導かれる。上昇管反応器10への原料は炭化水素供給管40を介するエタンであり、第二の上昇管反応器へはエチルベンゼン供給管42を介するエチルベンゼンである。上昇管反応器中で触媒と接触すると、エタンおよびエチルベンゼンは、それぞれ、エチレンおよびスチレン単量体に転化され、そして粗製気体状生成物が触媒から気体−固体分離器、例えばサイクロン分離器(示されていない)の中で分離されそして生成物気体分離および回収操作(示されていない)に送られて、再循環用のエチレンを製造して、それぞれ、追加のエチルベンゼンおよびスチレン単量体を製造する。同様な方法でそしてエタン原料の代わりにプロパンもしくはブタンを使用すると、本発明の方法は原料を、それぞれ、プロピレンもしくはブチレン類に脱水素するであろうし、または原料物質としてイソプロピルベンゼンもしくはメチルエチルベンゼンを使用すると、本発明の方法は原料を、それぞれ、クメンもしくはアルファ−メチルスチレンに脱水素するであろう。
【0042】
図5は、触媒移送管64、担体気体注入管66および流量弁68を含んでなる触媒再循環ループを追加したこと以外は、図4に示されたものと同様な本発明のさらに別の態様を説明する。使用済み触媒は生成物気体から脱水素反応器48の上端52において分離装置(示されていない)を介して除去されそして反応器48の底端部40に触媒移送管64を介して逆に再循環される。使用済み触媒の流動化は、モジュール66中の注入管による担体気体、例えば窒素の注入により保たれる。担体気体の提供の他に、触媒を部分的に再活性化するために酸素を含有する気体を導入することができ、その場合にはモジュール66は炭化水素残渣の反応および除去のための室を包含するであろう。再循環ループ中の触媒の流れは1個もしくはそれ以上の弁、例えば68により調節され、それは反応器48の温度、触媒活性などを包含する予め決められた性能基準に応じて遠隔調節されうる。再循環された触媒を反応器48の底への導入前に再生された触媒と組み合わすことができ、または別個の流入点(示されていない)を介して導入することもできる。
【0043】
1つもしくは複数の反応器、再生器および再循環ループの別の配置は当業者に推量されうる。例えば、当業者は複数の反応器を配置して共有するかまたは別個の触媒再生器および種々の再循環ループを有する共通の分離装置中に供給できることを認識するであろう。本発明は添付された特許請求の範囲の法律的範囲によってのみ限定されることが望まれる。
【0044】
本発明は好ましくは酸化的な脱水素、すなわちオキソ脱水素を包含しない。実際に、酸素化剤はあるタイプの触媒にとって有害でありうるが、酸素を使用して再生工程中に触媒を再生または再活性化することはできる。さらに、本発明は好ましくは普遍的なスチレン製造方法で典型的に使用されているような水蒸気を利用しない。
【0045】
本発明の別の好ましい態様は、上記の脱水素方法をオレフィン類およびビニル芳香族の一体化された製造方法の一部として利用する。より具体的には、上記の脱水素を(再生および/または再循環工程と共に)使用して米国特許第6,031,143号明細書、国際公開第02/096844号パンフレット、および現在出願継続中の米国特許第2003/0028059号明細書に記載された脱水素スキームを代替しうる。そのような一体化方法では、パラフィン系炭化水素、例えば低級アルカン、例えばエタン、およびベンゼンが主要な原料物質である。好ましくは「再循環された」エチレンおよびベンゼンが、当該技術で既知でありそして引用することにより本発明の内容となる上記の文献に記載されているような普遍的なアルキル化反応器に供給される。エチレンを用いるベンゼンのアルキル化は典型的には塩化アルミニウムまたはゼオライト触媒の存在下で行われる。変法は希釈エチレンおよび接触蒸留方式の使用を包含し、ここでは液相アルキル化および生成物分離が同時に起きる。具体例は、ABB・ルンムス(ABB Lummus)/UOPから入手可能な「イービーワン(EBOne)方法」、エキソンモービル(ExxonMobil)/バジャー(Badger)から入手可能な「イービーマックス(EB Max)方法」、並びに、ABBルンムス・グローバル・インコーポレーテッド(ABB Lummus Global Inc.)およびケミカル・リサーチ・アンド・ライセンシング(Chemical Research and Licensing)の間の合弁会社であるシーディーテク(CDTECH)から入手可能な同様なアルキル化技術を包含する。
【0046】
アルキル化流出物は回収されそして場合により分離、すなわち非−芳香族からの芳香族の分離、水素の除去などに付される。アルキル芳香族、例えばエチルベンゼン、およびパラフィン系炭化水素、例えばエタンは次に前記のように脱水素される。脱水素の気体状生成物は回収されそして分離され、例えば非−芳香族から芳香族が分離され、ビニル芳香族、例えばスチレンは回収され、オレフィン類、例えばエチレン(および多分パラフィン系炭化水素類、例えばエタン)はアルキル化反応器に再循環され、そしてアルキル芳香族は脱水素反応器に再循環される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、触媒再生も包含する、上昇管反応器が1)パラフィン系炭化水素(例えばエタン)供給だけ、2)アルキル芳香族炭化水素(例えばエチルベンゼン)供給だけ、または3)混合供給(例えばエタンおよびエチルベンゼン)のために使用することができる単一炭化水素供給点で使用される、本発明の態様の図式的ブロック・フロー・ダイアグラムである。
【図2】図2は、触媒再生も包含する、上昇管反応器が複数供給点配置、すなわち分離されているエチルベンゼンおよびエタン供給配置、で使用される、本発明の別の態様の図式的ブロック・フロー・ダイアグラムである。
【図3】図3は、連続配置での触媒再生を含む複数上昇管反応器を包含する、本発明の別の態様の図式的ブロック・フロー・ダイアグラムである。
【図4】図4は、平行配置での触媒再生を含む複数上昇管反応器を包含する、本発明の別の態様の図式的ブロック・フロー・ダイアグラムである。
【図5】図5は、図4と同様であるが触媒再循環配置をさらに包含する、本発明の別の態様の図式的ブロック・フロー・ダイアグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素類の少なくとも1種を含有する気体流を反応温度においてそして併流で脱水素反応器中で脱水素触媒と接触させ、ここで脱水素反応器内の炭化水素および触媒の間の平均接触時間が約0.5〜約10秒間であることを含んでなる、
i)パラフィン系炭化水素類、および
ii)アルキル芳香族炭化水素類
の少なくとも1種から選択される炭化水素の脱水素化方法。
【請求項2】
触媒が約0.5〜約40秒間の脱水素反応器内の平均滞在時間を有する請求項1の方法。
【請求項3】
炭化水素および触媒を脱水素反応器から分離装置に移し、そこで分離装置中の反応温度における間の炭化水素および触媒の間の平均接触時間が約10秒間未満である請求項2の方法。
【請求項4】
反応温度における間の炭化水素、触媒および生じる炭化水素類の間の合計平均接触時間が約20秒間未満である請求項3の方法。
【請求項5】
合計平均接触時間が約10秒間未満である請求項4の方法。
【請求項6】
パラフィン系炭化水素類がエタン、プロパン、イソプロパン、およびブタンから選択され、そしてアルキル芳香族炭化水素類がエチルベンゼン、プロピルベンゼンおよびメチルエチルベンゼンから選択される請求項1の方法。
【請求項7】
脱水素反応器が上昇管反応器である請求項1の方法。
【請求項8】
炭化水素が脱水素反応器に複数の入口点で導入される請求項1の方法。
【請求項9】
パラフィン系炭化水素類およびアルキル芳香族炭化水素類の両者が同一の脱水素反応器に導入され、パラフィン系炭化水素がアルキル芳香族炭化水素より相対的に低い入口点で導入される請求項8の方法。
【請求項10】
脱水素反応器内の温度が約500〜約800℃であり、そして圧力が約3.7〜約64.7psiaである請求項1の方法。
【請求項11】
圧力が約3.7〜約14.7psiaである請求項10の方法。
【請求項12】
温度が約570〜約750℃である請求項10の方法。
【請求項13】
分離装置からの触媒を、触媒が再生されそして脱水素反応器に戻される触媒再生器、および触媒が分離装置から逆に脱水素反応器に再循環される再循環ループ、の1つに移す請求項3の方法。
【請求項14】
再循環ループおよび再生器からの触媒が組み合わせそして脱水素反応器に導入する請求項13の方法。
【請求項15】
脱水素触媒がアルミナまたはアルミナシリカ担体により担持されたガリウムを含んでなる請求項1の方法。
【請求項16】
触媒がナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムの少なくとも1種から選択されるアルカリまたはアルカリ土類金属を含んでなり、そしてマンガンおよび白金の少なくとも1種から選択される促進剤をさらに含んでなる請求項15の方法。
【請求項17】
炭化水素類の少なくとも1種を含有する気体流を反応温度においてそして併流で脱水素反応器中でアルミナまたはアルミナシリカ担体により担持されたガリウムを含んでなる脱水素触媒と接触させ、ここで脱水素反応器内の炭化水素および触媒の間の平均接触時間が約1〜約4秒間であり、触媒が約1〜10秒間の脱水素反応器内の平均滞在時間を有し、そして脱水素反応器中の温度および圧力が約570〜約750℃および約6.0〜約44.7psiaであり、そして
炭化水素および触媒を脱水素反応器から分離装置に移し、ここで分離装置中の反応温度における間の炭化水素および触媒の間の平均接触時間が約3秒間未満でありそして反応温度における間の炭化水素、触媒および生じる炭化水素類の間の合計平均接触時間が約7秒間未満であることを含んでなる、
i)エタン、プロパン、およびブタンから選択されるパラフィン系炭化水素類、並びに
ii)エチルベンゼン、プロピルベンゼンおよびメチルエチルベンゼンから選択されるアルキル芳香族炭化水素類
の少なくとも1種から選択される炭化水素の脱水素化方法。
【請求項18】
パラフィン系炭化水素およびアルキル芳香族炭化水素を反応温度においてそして併流で脱水素反応器中で脱水素触媒を用いて脱水素し、ここで脱水素反応器内の炭化水素および触媒の間の平均接触時間が約0.5〜約10秒間であり、
炭化水素および触媒を脱水素反応器から分離装置に移しそして触媒を生じる炭化水素から分離し、ここで分離装置中の反応温度における間の炭化水素および触媒の間の平均接触時間が約10秒間未満であり、
脱水素により生じるビニル芳香族炭化水素類を回収し、
アルキル芳香族炭化水素類を製造する条件下で、パラフィン系炭化水素類の脱水素により生じるオレフィン類をアルキル化反応器中の芳香族炭化水素類と組み合わせ、
アルキル芳香族炭化水素類をアルキル化反応器から脱水素反応器に移してビニル芳香族化合物を製造する
ことを含んでなる、ビニル芳香族化合物を製造するための一体化された方法。
【請求項19】
パラフィン系炭化水素およびアルキル芳香族炭化水素の脱水素を同一の脱水素反応器中で併流で行う請求項18の方法。
【請求項20】
パラフィン系炭化水素およびアルキル芳香族炭化水素の脱水素を別個の脱水素反応器中で行う請求項19の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−522216(P2007−522216A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553173(P2006−553173)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/003772
【国際公開番号】WO2005/077867
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(590000020)ザ ダウ ケミカル カンパニー (24)
【氏名又は名称原語表記】THE DOW CHEMICAL COMPANY
【Fターム(参考)】