説明

脱水袋体

【課題】土木工事や、ガス管や水道管などの埋設工事などにおいて、掘削工事に伴う水分を含む土を脱水して袋詰めする際、脱水袋体から水分が滲み出しのための長時間静置や、脱水袋体の加圧圧搾機械を必要とせず、袋体内に溜まった水分を比較的短い時間で簡単に排水できる脱水袋体を安価に提供することを目的とする。
【解決手段】水分を含む土1を入れ脱水し袋詰する、透水性を有する素材2で形成した袋体3に開閉切替自在な排水口部4を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水袋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木工事や、ガス管や水道管などの埋設工事などにおいて、掘削工事に伴う水分を含む土を脱水して袋詰めする際、水分を含む土を、透水性を有する素材で形成した脱水袋体に入れて一定期間放置或いは圧搾することで土に含まれる水分を滲み出させて脱水する方法が一般に採られている。
【0003】
この脱水袋体は、透水性を有する素材の織物或いは不織布製の袋体であり、例えば、合成繊維のマルチフィラメント糸織物を用いたものがある(特許文献1)。この特許文献1には、織物のカバーファクターを適切な値とすることで、ろ過効率を改善できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−175642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このようなものでも透水性の脱水袋体から自然に水分が滲みでてくるのを長時間待たなければならず、手間が掛かり、また、脱水袋体を加圧圧搾する場合においては、編目が拡大してろ過効率が低下したり、編目が破れないように加圧圧搾機械を操作する必要があった。
【0006】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、袋体内に溜まった水分を比較的短い時間で簡単に排水できる脱水袋体を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
水分を含む土1を入れ脱水し袋詰する、透水性を有する素材2で形成した袋体3に開閉切替自在な排水口部4を設けたことを特徴とする脱水袋体に係るものである。
【0009】
また、前記袋体3には、前記土1を投入する上部開口部5を開閉可能に設け、この上部開口部5から土1を投入する際に立設した状態とした際の袋体3の中程の高さに前記排水口部4を設けたことを特徴とする請求項1記載の脱水袋体に係るものである。
【0010】
また、前記排水口部4を前記袋体3の高さの異なる複数箇所に設けたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の脱水袋体に係るものである。
【0011】
また、前記排水口部4を前記袋体3の側面周囲方向に複数設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱水袋体に係るものである。
【0012】
また、前記排水口部4は、前記袋体3に形成された排水口用開口部6に注水部材7を付設し、この注水部材7に、放水状態と止水状態とに切替して開閉切替自在とする止水部8を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱水袋体に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述のように構成したから、排水口部を開閉操作して、袋体に水分を含む土を入れ溜まった水だけをこの排水口部から容易に排水できるため、速やかに脱水できる扱い易い脱水袋体になる。
【0014】
また、請求項2の発明においては、上部開口部から土をいれ、袋体の中程の高さを越える量の水が溜まると排水口部から排水することができるから効率よく脱水することが可能になる。
【0015】
また、請求項3の発明においては、袋体内に溜まった水の量が所定の排水口部の高さを越えると夫々の状態で排水できて土1の量を適宜に設定できるから、所望の大きさにし易い一層実用的な脱水袋体になる。
【0016】
また、請求項4の発明においては、袋体内に溜まった水を更に速やかに排出でき排水効率が高まり一層扱いやすいものになる。
【0017】
また、請求項5の発明においては、簡単な操作で水だけを排出するように止水部を開閉できるから、土の流出を低減して効率よく脱水できる実用的なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施例に係る脱水袋体の斜視図である。
【図2】本実施例に係る脱水袋体の排水口部の分解斜視図である。
【図3】本実施例に係る脱水袋体の排水口部の断面図である。
【図4】本実施例に係る脱水袋体の要部の説明図である。
【図5】本実施例に係る脱水袋体の使用状態を示す説明図である。
【図6】本実施例に係る脱水袋体の使用状態を示す説明図である。
【図7】本実施例に係る脱水袋体の使用状態を示す説明図である。
【図8】本実施例に係る脱水袋体の使用状態を示す説明図である。
【図9】本実施例に係る脱水袋体の使用状態を示す説明図である。
【図10】本実施例に係る脱水袋体の使用状態を示す説明図である。
【図11】本実施例に係る脱水袋体の使用状態を示す説明図である。
【図12】別実施例に係る脱水袋体の斜視図である。
【図13】別実施例に係る脱水袋体の排水口部の斜視図である。
【図14】本実施例に係る脱水袋体を濁水の連続処理工程に用いた説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0020】
本発明者は、水分を多く含む土を脱水して袋詰めする際、この土を袋に入れて暫くすると、多くの場合、速やかに土1は沈殿して水と土とに分離することに着眼し、この上澄みの水を排水することにより速やかな脱水を可能とした本発明を完成した。
【0021】
脱水袋体の袋体3に、水分を含む土1を入れると、土1は沈殿して水と土1とに分離するようになると共に透過性の袋体3から土1に含まれていた水分の滲みだしが始まる。土1に含まれる水分が少ない場合には、袋体3に水分を含む土1を入れ放置して脱水させればよいが、水分1が多い場合に単に土1を入れて放置して透過性の袋体3から水分を滲みださせ脱水する従来方法では多大な時間を要する。
【0022】
また、単に袋体3に開いた状態の排水口部を設けた場合には、この袋体3に水分を含む土1を入れると、この袋体3の中に土1が溜まるが、同時にこの排水口部から多量の水分を含む土1が排出されてしまう。
【0023】
そこで、本発明は、袋体3に開閉可能な排水口部4を設け、この袋体3に水分1が多い土1を入れる際、はじめ袋体3の排水口部4を閉めておいて土1を入れ、例えば、沈殿した土1が排水口部4の高さに達せず且つ溜まった水が排水口部4の高さを越えるようになった場合に排水口部4を開いて土1の上に溜まった水を排水口部4から排出させると、土1は流れ出さずにこの土1に含まれていた水だけを速やかに排水することができる。この土1の上の水が排水できたらこの排水口部4を閉じて、袋体3表面から水分の滲み出しを行わせるだけの脱水に較べて脱水に要する時間を大幅に短縮できることになり、また加圧圧搾機械は必要としないから極めて安価で効率的に脱水が可能になる。
【0024】
従って、本発明は、排水口部4を開閉して、袋体3に水分を含む土1を入れ、溜まった水だけを排水口部4から容易に排水できるため速やかに脱水して袋詰めできる扱い易い安価な脱水袋体になる。
【0025】
また、例えば、上部開口部5を開閉可能に設け、この袋体3の中程の高さに排水口部4を設けると、この袋体3を立設した状態で上部開口部5から土1を入れ、沈殿した土1が排水口部4の高さに達せず且つ袋体3の中程の高さを越える量の水が溜まったら排水口部4から排水が可能になるから、この排水後、排水口部4を閉めて袋体3の上部開口部5を閉じて土嚢とする。ここで、排水口部4が袋体3の下端位置に設ける場合には、土1を投入した際に排水口部4が埋没して土1で詰まったりして排水効率が悪かったり、或いは、土1を沈殿させて水と土1とに分離させても排水と同時に土1も一緒に排出され易いため土1の投入効率が悪く、作業効率が低い。一方、上端位置に排水口部4を設けた場合には、上端に溜まった水しか排出できず排水効率が悪いことになる。そこで、本発明は、上端位置でも下端位置でもなく、袋体3の中程の高さに排水口部4を設けることで、土1の投入効率及び水の排水効率を高め、土1を沈殿させて水と土1とに分離させた際にこの土1の上に溜まった水を排出するようにすることで、土1の流出を防止して土1の投入を効率的に行えると共に、効率的に排水を行えることになり、しかも、袋体3の中程の高さに土1を入れられることになるから、脱水後の土1も多すぎもせず少なすぎもせず容易に適切な量にすることができることになり、扱い易い実用的な脱水袋体になる。
【0026】
また、例えば、排水口部4を袋体3の高さの異なる複数箇所に備えることで、適宜な量の土1を投入しでも土1を沈殿させて水と土1とに分離させた際、排水可能な適切な高さ位置の排水口部4を選べるため、投入した土1の量やこの土1に含まれる水分量の多少によらず排水し易くなり、一層使い易く実用的な脱水袋体になる。
【0027】
また、例えば、排水口部4を袋体3の側面周囲の複数方向に備えると、袋体3内に溜まった水を複数箇所から排出できるから、排水時間の短縮が可能となり、速やかに水を排出して脱水時間を短縮できるから一層扱いやすいものになる。
【0028】
また、例えば、袋体3に形成された排水口用開口部6に付設した注水部材7に開閉切替を行う止水部8を設けて放水状態と止水状態とに切替る場合には、水分を含む土1を入れて、水と土1とが分離し、沈殿した土1が排水口部4の高さに達せず且つ溜まった水が排水口部4の高さを越えた場合に止水部8を放水状態にして袋体3に溜まった水だけを注水部材7から排出し、水が排出できなくなったら止水部8を止水状態にすることで、簡単な操作で止水部を開閉して注水部材7からの土1の流出を可及的に低減しながら効率よく脱水できる実用的な脱水袋体になる。
【実施例】
【0029】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0030】
本実施例は、水分を含む土1を入れ脱水し袋詰する、透水性を有する素材2で形成した袋体3に開閉切替自在な排水口部4を設けたことを特徴とする脱水袋体10である。
【0031】
本実施例の脱水袋体10は、水分を含む土1を入れ脱水処理して袋詰する土嚢袋10であり、詳細には、ポリプロピレン製のマルチフィラメント糸を織って、上部が開口し、この開口部及び底面が略矩形の大型の土嚢袋10であるが、開口部及び底面が円形であってもよい。
【0032】
なお、このマルチフィラメント糸としては、ポリプロピレンの他、ポリエステル、ナイロン、ビニロンでもよいし、更に、再生ポリエステルや生分解性繊維でもよい。
【0033】
図1に示す本実施例の土嚢袋10は、土1を投入する上部開口部5を開閉可能に設け、この上部開口部5から土1を投入する際に立設した状態とした際の袋体3の側面部11に排水口部4を設けたものであり、この排水口部4は、袋体3に排水口用開口部6を形成し、この排水口用開口部6に注水部材7を付設し、更に、この注水部材7に、放水状態と止水状態とに切替して開閉切替自在とする止水部8を設けたものである。
【0034】
図2はこの排水口部4の詳細を示し、この排水口部4は、排水口用開口部6として円形の穴を袋体3の側面部11に設け、この排水口用開口部6に注水部材7を袋体3と一体に取り付けたものである。具体的には、この注水部材7は互いに凹凸嵌合して連通する中空筒の凹体12,中空筒の凸体13,二個のパッキン14・15及び環状押圧部材16から構成され、排水口部4は、排水口用開口部6の穴に二個のパッキン14・15及び環状押圧部材16を介して凸体13を挿通して凹体12と螺着することで形成されている。
【0035】
中空筒の凸体13は一端に鍔付き六角頭部17が形成されていると共に、他端に雄螺子部18を備えている。また、中空筒の凹体12は、一端にこの凹体12の中空と連通し内側に雌螺子を備えた六角ナット部19を備えて、この六角ナット部19に前記凸体13の雄螺子18を螺着し、他端には止水部8としての蓋体24を螺合する雄螺子部20を備えている。
【0036】
この蓋体24は有底の円筒の内周壁に前記凹体12の螺子部20と螺合する雌螺子部21が形成され、また、この蓋体24は可撓性の紐様若しくは帯様の連結体22で注水部材7に連結して、蓋体24を雄螺子部20から着脱した際の蓋体24の紛失を防止する構成である。
【0037】
本実施例の排水口部4の構成は、より簡易化してもよい。
【0038】
また、図2及び3の注水部材7に代えて、図13の注水部材7を取り付けることでもよく、この注水部材7は、円筒状若しくは蛇口状の注水部材7の管に止水部8として放水状態と止水状態とに切替るレバー栓25を蛇口として設けたものである。このようにすると排水口部4の開閉操作が極めて楽に行うことができる。
【0039】
また、この袋体3の上部開口部5から土1を投入する際に立設した状態とした際の袋体3の側面の中程の高さ位置に上述の排水口部4を設け、上部開口部5から土1をいれて、土1が排水口部4に達しない状態且つ袋体3の中程の高さを越える量の水23が溜まると排水口部4から排水が可能になるから効率よく脱水できるものとなる。
【0040】
即ち、本実施例の土嚢袋10に、水分を含む土1を入れると、土1は沈殿して水と土1とに分離するようになると共に透過性の袋体3から土1に含まれていた水分の滲みだしが始まる。土1に含まれる水分が少ない場合には、袋体3に水分を含む土1を入れ放置して更に脱水させればよい。しかし、水分1が多い場合に単に土1をいれて放置して透過性の袋体3から水分を滲みださせ脱水する従来方法では多大な時間を要する。
【0041】
この水分1が多い土1を土嚢袋10に投入する場合、排水口部4を開けたままでもよいが、そのような状態で土1を入れても排水口部4から水と一緒に土1が流れ出すため土嚢袋10の製造には効率が悪い。
【0042】
そこで、本実施例の土嚢袋10の製造を行うにあたっては、水分1が多い土1を袋体3入れる際、はじめ排水口部4を閉めておく。次いでこの土嚢袋10に土1を排水口部4の高さ程まで入れ、沈殿した土1が排水口部4の高さに達せず且つ溜まった水23が排水口部4の高さを越えるようになった場合に排水口部4を開いて土1の上に溜まった水23を排水口部4から排出させると、土1は流れ出さずに水23だけを排水することができる。この土1の上の水23が排水できたらこの排水口部4を閉じて、更に、この排水された土1の上に、水分を含んだ土1を加えて上記と同じ操作を行って水23を排出することで、袋体3表面のみから水分の滲み出しを行わせる脱水に較べて脱水に要する時間を大幅に短縮できることになり、また加圧圧搾機械は必要としないから極めて安価で効率的に脱水が可能になる。
【0043】
また、本実施例は、上部開口部5を開閉可能に設け、この袋体3の中程の高さに排水口部4を設けているから、この袋体3を立設した状態で上部開口部5から土1を入れ、沈殿した土1が排水口部4の高さに達せず且つ袋体3の中程の高さを越える量の水23が溜まったら排水口部4から排水し、この排水後、排水口部4を閉め袋体3の上部開口部5を閉じて土嚢袋10とする。ここで、排水口部4が袋体3の下端位置にある場合には、土1を投入した際に排水口部4が埋没して土1で詰まったりして排水効率が悪かったり、或いは、土1を沈殿させて水と土1とに分離させても排水と同時に土1も一緒に排出され易いため土1の投入効率が悪く、作業効率が低い。一方、上端位置に排水口部4を設けた場合には、上端に溜まった水しか排出できず排水効率が悪いことになる。そこで、本発明は、上端位置でも下端位置でもなく、袋体3の中程の高さに排水口部4を設けることで、土1の投入効率及び水の排水効率を高め、土1を沈殿させて水と土1とに分離させた際にこの土1の上に溜まった水を排出するようにすることで、土1の流出を防止して土1の投入を効率的に行えると共に、効率的に排水を行えることになり、しかも、袋体3の中程の高さに土1を入れられることになるから、脱水後の土1も多すぎもせず少なすぎもせず容易に適切な量にすることができることになり、扱い易い実用的な脱水袋体、即ち、土嚢袋10になる。
【0044】
本実施例は、排水口部4を袋体3の高さの異なる複数箇所に備えることで、適宜な量の土1を投入しでも土1を沈殿させて水と土1とに分離させた際、排水可能な適切な高さ位置の排水口部4を選べるため、投入した土1の量やこの土1に含まれる水分量の多少によらず排水し易くなり、一層使い易く実用的な土嚢袋10になる。
【0045】
或いは、水分を含む土1を投入して土1を沈殿させて、水23と土1とに分離した後の土1が複数箇所のうち適宜な位置の排水口部4の高さに達しないように土1を入れてもよく、このようにすると水23がこの排水口部4の高さを越えるため、この土1の上の水23をこの排水口部4から確実に排水できるから、袋体3に入れる土1を適宜な量にして所望の大きさにできてしかも脱水が容易な一層実用的な土嚢袋10にすることができる。
【0046】
また、排水口部4を袋体3の同一高さ位置の側面周囲方向に複数備えることで、時間あたりの水23の排出量を側面位置に依らずほぼ均一に増大することができ、図12の土嚢袋10は、一側面に高さの異なる三個の排水口部4を周方向に四箇所設けて排水効率を高めたものである。
【0047】
以上のように構成したから、止水部8を止水状態にしてから土嚢袋10に水分を含む土1を入れると、土1は沈殿しながら水23と土1とに徐々に分離するようになる。そこで、適宜な位置の排水口部4までこの水分を含む土1を入れて、土1が沈殿して溜まった水23が排水口部4の高さを越えた場合にこの排水口部4の止水部8を放水状態にして、水23を注水部材7から排水させることで、土1に含まれていた水23だけを可及的に低減できることになる。この後、止水部8を止水状態にして、更に、透水性を有する素材2で形成した袋体3から水分の滲み出しをさせて脱水すると、脱水に要する時間を短縮できることになる。従って、本発明は、袋体3に溜まった水分を排水口部4から容易に排水できるため速やかに脱水できる扱い易い土嚢袋10になる。
【0048】
また、袋体3に形成された排水口用開口部6に付設した注水部材7に開閉切替を行う止水部8を設けて放水状態と止水状態とに切替るようにしたから、上部開口部5から水分を含む土1を入れて、水23と土1とが分離し、沈殿した土1が排水口部4の高さに達せず且つ溜まった水23が排水口部4の高さを越えた場合には、止水部8を放水状態にして袋体3に溜まった水23だけを注水部材7から排出し、水23が排出できなくなったら止水部8を止水状態にすることで、注水部材7からの土1の流出を可及的に低減しながら効率よく脱水できる実用的な土嚢袋10になる。
【0049】
本実施例は、この排水口部4を、袋体3の中程の高さの異なる複数箇所、具体的には、袋体3の上段、中段、下段の高さに備えたから、土1の量を適宜に設定が可能であり、排水口部4が無い場合に較べて脱水時間を約1/3以下に低減するころができて速やかに脱水できることになる。
【0050】
水分を含んだ土1を投入して脱水する手順の一例を図5〜11によって説明する。
【0051】
まず、土1を投入する際には全ての排水口部4を閉めて止水状態にしておいて下段の排水口部4まで土1を投入する。土1が沈殿して水23と土1とが分離して、沈殿した土1がこの下段の排水口部4の下端以下で且つ水23が排水口部4を越えている場合は、これより上に溜まった水23だけをこの下段の排水口部4の止水部8を開いて水23を排水する。この水23を排排水できたら一旦、この止水部8を閉じて止水状態にする。次いで、更に土1を投入して沈殿した土1が中段の排水口部4の下端に達するまで入れ、これより上に溜まった水23だけを中段の排水口部4の止水部8を開いて放水状態にして排出する。この水23を排出できたら、この中段の排水口部4の止水部8を閉じて止水状態にする。次いで、更に土1を投入して沈殿した土1が上段の排水口部4の下端に達するまで入れ、これより上に溜まった水23だけをこの上段の排水口部4の止水部8を開いて放水状態にして排出し、この水23を排出できたら、この上側の止水部8を閉じて止水状態にする。
【0052】
以降は、全ての排水口部4を閉じた状態にして自然放置して脱水を行ってもよいが、更に脱水時間を短縮するために、この土嚢袋10に入れた土1が自重により押圧された状態になったら、排水口部4を再度開けて排水を行って脱水を行ってから排水口部4を閉じてから自然放置することで、袋体3からの土1の流出が少なくした状態で、更に、効率的な脱水を行えることになる。このように土嚢袋10内の水23を排出した状態では、土嚢袋10に入れた土1は自重によって上下方向に押圧され、また、土嚢袋10内の水23は少なくなっているため、土1が水23と一緒に排水口部4から流出することは少なくすることができる。
【0053】
上記の手順は、土1の投入を三回に分けて行ったものであるが、勿論、土1を投入する際には全ての排水口部4を閉めて止水状態にしておいて、一気に所定の、例えば、図9に示すように上段の排水口部4まで土1を投入し、土1を沈殿させてか水23と土1とに分離した後、排水口部4から水23を排水することで、更に効率的に排水できる。
【0054】
また、本実施例では排水口部4を袋体3の上中下の異なる高さに設けたが、中段だけに設けることで、脱水時間を低減すると共に、製造が容易且つ安価に製造が可能な土嚢袋10とすることもできるし、排水口部4の数を増やすことで、適宜の大きさの土嚢袋10を容易に得られるようにしてもよい。
【0055】
また、排水口部4を袋体3の同一高さ位置の各側面毎に備えた図12のようにすることで、更に脱水時間を低減できるものとなる。
【0056】
なお、排水口部4を設ける上下位置や周方向の位置は、脱水時間及び経済的観点から適宜に設定することが可能である。
【0057】
また、本実施例の土嚢袋10には、土1を投入する開閉可能な上部開口部5にはこの上部開閉部5を巾着様に締め上げて土1を袋詰めできると共に、この土嚢袋10の側面11に吊下部26を設けた構成としてクレーンなどによっての搬送を容易にしている。
【0058】
なお、排水口部4の高さ方向の個数と脱水時間の相対比は以下のように評価した。但し、沈殿及び排水に要する時間は土嚢袋10の袋体3の表面から水が滲み出す脱水時間より十分に短いとして説明する。
【0059】
例えば、この排水口部4を袋体3の側面の1/2の高さ位置に設けてこの袋体3一杯に水分を含んだ土1をいれた場合の脱水に要する時間は、排水口部4を設けない場合の約1/2の時間であり、同様に、袋体3の側面の1/3の高さ位置及び2/3の高さ位置に排水口部4を一個ずつ設けた場合には、排水時間は約1/3に低減可能となる。概算上は、排水口部4の高さの異なるN個の複数箇所に設け、上述の方法で各排水口部4を夫々開閉操作して排水する場合には、脱水時間は概算1/(N+1)に低減可能であり、このことは、袋体3が比較的大きく、Nが4乃至5個であれば、概ね成り立つ。袋体3が小さい場合やNが大きくなりすぎると誤差が大きくなる。
【0060】
次に、本実施例の土嚢袋10を現場における濁水の連続処理工程に用いた事例を示す。
【0061】
土木建設現場では、現場で発生する濁水は沈澱処理などを行って排水可能な状態の清水にすると共に、無害な沈殿物とに分離することが求められている。清水処理した水は河川に戻すことができるが、沈殿物は水分を除去した後、現場に埋め戻すか、産業廃棄物として処理される。産業廃棄物として処理する場合には十分に水分除去すればダンプ搬送できるが、そうでないと汚泥吸引車などが必要になる。
【0062】
図14に、本事例の濁水連続処理システム27を示す。
【0063】
この濁水連続処理システム27は、濁水29を連続的に吸い上げるポンプ28と、このポンプ28で吸い上げられた濁水29と凝集剤供給機30から供給される凝集剤とを所定長さの管路中を攪拌しながら搬送する攪拌管路31と、この攪拌管路31から搬送された凝集剤が添加された濁水29を固液分離する固液分離機32とから構成されて、この固液分離機32で所定に濁度以下の処理水33と沈殿物34とに分離するものである。
【0064】
この処理水33は所定の濁度以下となるように処理することで河川35に放水できるが、沈殿物34には水分が多量に含まれているため、更に脱水処理して埋め戻すか廃棄物として処理する必要がある。
【0065】
本事例の濁水連続処理システム27では、この水分を多量に含んだ沈殿物34の脱水処理を本実施例の土嚢袋10を用いて行い、まず、この土嚢袋10の排水口部4を閉めた状態にしてこの土嚢袋10にこの水分を多量に含んだ沈殿物34を入れ、次いで、静置して水23と沈殿物34とに分離した後、排水口部4を開いて排水した後、再び、排水口部4を閉めて更に放置して脱水処理するものである。
【0066】
このように濁水連続処理システム27で本実施例の土嚢袋10を用いると短時間に沈殿物34の脱水処理を行え、沈殿物34はダンプ運搬によって産業廃棄物として搬出することが可能になる。従って、汚泥吸引車を用いずとも一般的なダンプで済むため、現場の濁水処理作業の経費低減に寄与できることになる。
【0067】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0068】
1 土
2 素材
3 袋体
4 排水口部
5 上部開口部
6 排水口用開口部
7 注水部材
8 止水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含む土を入れ脱水し袋詰する、透水性を有する素材で形成した袋体に開閉切替自在な排水口部を設けたことを特徴とする脱水袋体。
【請求項2】
前記袋体には、前記土を投入する上部開口部を開閉可能に設け、この上部開口部から土を投入する際に立設した状態とした際の袋体の中程の高さに前記排水口部を設けたことを特徴とする請求項1記載の脱水袋体。
【請求項3】
前記排水口部を前記袋体の高さの異なる複数箇所に設けたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の脱水袋体。
【請求項4】
前記排水口部を前記袋体の側面周囲方向に複数設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱水袋体。
【請求項5】
前記排水口部は、前記袋体に形成された排水口用開口部に注水部材を付設し、この注水部材に、放水状態と止水状態とに切替して開閉切替自在とする止水部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱水袋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−17960(P2013−17960A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153901(P2011−153901)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(391007747)株式会社興和 (17)
【Fターム(参考)】