説明

脱穀処理装置

【課題】排塵処理室から排出すべき大きな藁屑などは極力機外に拡散排出するが、細かい排塵処理物は揺動選別棚上に取り込むことにより、3番ロスの低減を図る。
【解決手段】 排塵処理室(12)の終端に開口して設けた排塵口(17)からの排塵処理物を後方下方に向けて案内落下させる排塵ガイド板(20,21)を左右に配置し、これら左右の排塵ガイド板(20,21)の間の間隔部には、排塵処理物を受けて後方下方に拡散案内しながら下方の揺動選別棚(25)上に漏下させる複数の排塵ガイド杆(22,23)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、排塵処理室終端の排塵口から排出される排塵処理物は、例えば、特許文献1に示されているように、機内の揺動選別棚上に排出することなく、その排塵処理物全てを機外に排出する構成になっている。
【特許文献1】特開2004−41020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる従来構成のものでは、団子状になった大きなわら屑や、穀粒の混じった細かい排塵処理物も全て機外に排出するので、多大の3番ロスを招く問題があった。
本発明は、かかる問題点を解消することにあり、排出すべき大きなわら屑は極力機外に排出するが、細かい排塵処理物は有効に拡散処理しながら機内の揺動選別棚上に取り込んで3番ロスの低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、扱室(3)の後部一側に、該扱室(3)から排出される排塵処理物を受け入れて後方に搬送しながら脱粒処理する排塵処理胴(11)を備えた排塵処理室(12)を設け、該排塵処理室(12)の後端部に排塵口(17)を開口して設け、該排塵口(17)から排出される排塵処理物を後方下方の機外に向けて案内して落下させる複数の排塵ガイド板(20,21)を左右方向に間隔をおいて配置し、これら左右の排塵ガイド板(20,21)の間隔部には、前記排塵口(17)から排出される排塵処理物を受けて後方下方の機外に拡散案内しながら下方の揺動選別棚(25)上に漏下させる複数の排塵ガイド杆(22,23)を設けたことを特徴とする脱穀処理装置とする。
【0005】
扱室(3)の終端部より排塵処理室(12)内に取り込まれた排塵処理物は、回転する排塵処理胴(11)によって後方に搬送されながら脱粒処理される。そして、排塵処理室(12)の終端部に達すると、細かい排塵物は、排塵口(17a)からの排出落下時において、背面視左側の排塵ガイド板(20)及び複数の排塵ガイド杆(22,23)によって受け止められ、後方下方に拡散案内されながら下方の揺動選別棚(25)の終端側に漏下するものと、それを越えて後方の機外に排出されるものとに別れる。また、排塵処理室内を持ち回りされる団子状の大きなわら屑などは、主として排塵口(17b)から排出されると共に背面視右側の排塵ガイド板(21)上に受けられ揺動選別棚(25)の終端を越えて後方下方の既刈地側に向けて排出される。
【0006】
請求項2記載の本発明は、前記複数の排塵ガイド杆(22,23)を、互いに上下方向の傾斜角度を異ならせて設けたことを特徴とする請求項1記載の脱穀処理装置とする。
排塵ガイド杆(22,23)は、一方側を急傾斜とし他方側を緩傾斜とすることで、排塵物の偏りがなく、拡散作用が促進される。
【0007】
請求項3記載の本発明は、前記排塵ガイド杆(22,23)を、排塵処理胴(11)の回転方向(イ)の上手側と下手側とで位相をずらせて配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀処理装置とする。
【0008】
排塵ガイド杆(22,23)の各始端位置が排塵処理胴(11)の回転方向(イ)の上手側と下手側とで位相がずれているため、排塵口(17a)から排出される排塵物の案内が円滑に行える。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、左右の排塵ガイド板(20,21)の間隔部には、排塵口(17)から排出される排塵処理物を受けて後方下方の機外に拡散案内しながら下方の揺動選別棚(25)上に漏下させる複数の排塵ガイド杆(22,23)を設けてあるので、細かい排塵処理物が有効に拡散処理され、揺動選別棚(25)上に満遍なく取り込まれ、選別効果を高め、3番ロスの低減を図ることができる。また、大きな藁屑等は、排塵ガイド杆(22,23)上を案内されて後方下方の機外へ排出されるため、左右の排塵ガイド板(20,21)と共に藁屑を機外へ拡散して排出することができ、圃場面上に落下する藁屑を均平化して、刈り跡の美観を向上でき、また、耕うんによる土質の均一化に寄与して収量を増加させることができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1の発明の効果を奏するものでありながら、複数の排塵ガイド杆(20,21)は上下方向の傾斜角を異にしているため、排塵物の集中的な偏りがなくなり、拡散作用が促進されて揺動選別棚(25)上への分散効果を高めることができ、選別精度を向上させることができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2記載の発明の効果を奏するものでありながら、各排塵ガイド杆(20,21)の始端位置が排塵処理胴(11)の回転方向(イ)の上手側と下手側とで位相がずれているため、排塵口(17a)から排出される排塵物の流れが促進され、排出作用が円滑になって排塵物の詰まりを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、脱穀装置の側断面図を示すものであり、次のような構成になっている。
すなわち、脱穀装置1は、脱穀フィードチエン2により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室3内で駆動回転する扱胴4により脱穀処理するよう構成している。扱室3の下半周部には受網5が張設され、扱胴4の上部を覆う扱胴カバー6は、扱室の一側を支点として揺動開閉する構成である。扱室3の終端側には多量のわら屑や未処理物を含む排塵処理物を下方に落下させる排塵落下口7が設けられている。
【0013】
前記扱室3のフィードチエン2側とは反対側一側には2番処理胴8を内装軸架した2番処理室を並設している。また、前記2番処理胴8の後方にはこれと同一軸芯上において外周に螺旋処理歯10を備えた排塵処理胴11を内装軸架した排塵処理室12を構成して設けている。前記扱室終端の排塵落下口7に対応する部位から排塵処理室12始端への送塵路14には、排塵処理胴11の始端部に固着されたスパイラー形状の取込羽根15が介入するように設けて、排塵処理室内への排塵物の取込みが容易に行えるようにしている。
【0014】
排塵処理胴11の終端には排出羽根16が設けられ、処理室終端まで送られてきた排塵処理物を前記排出羽根16によって処理室終端の横側部(一部の底部を含む)を開口した排塵口(側方排塵口17a)17から後記する揺動選別装置の揺動選別棚終端及び機外に排出する構成としている。また、排塵処理室12終端の後側板19部には、排塵処理室終端まで送られてきた長わらや団子状になった大きなわら屑などを後方機外に排出する排塵口(後方排塵口17b)17が設けられ、この後方排塵口17bから排出される排塵処理物は、後記する右側の排塵ガイド板21によって機外後方下方に向けて排出案内するよう構成している。
【0015】
前記排塵口17からの排塵処理物は、左右に配置して設けられた排塵ガイド板20,21によって受け入れて後方下方に向けて排出案内するよう構成されている。左側の排塵ガイド板20は、側方排塵口17aからの排塵物を受け入れて後方下方に案内し、下方の揺動選別棚上及び右側の排塵ガイド板21上及び機外に向けて導くように構成してあり、排塵ファン30の右側板31にボルト32などを介して着脱自在に装着している。排塵口からの排塵処理物が右側に寄り過ぎる場合は、着脱自在な排塵ガイド板20を取り外せば、処理物を左側に落下させることができる。また、右側の排塵ガイド板21は、主として後方排塵口17bからの排塵物を受け入れ、揺動選別棚の終端を越える後方位置まで後方下方に案内し、且つ、これと一体に形成された側方傾斜案内面21aによって右側(既刈地側)斜め後方下方に向けて排出案内するよう構成している。
【0016】
左側の排塵ガイド板20と右側の排塵ガイド板21との間の間隔部には、側方排塵口17aからの排塵処理物を受けて後方下方に拡散案内しながら下方の揺動選別棚25上に漏下させる複数の排塵ガイド杆22,23が設けられている。これら左右のガイド杆22,23は、基端部(案内始端側)が処理網13の側方排塵口17a側端部に対し処理胴11の下向き回転方向(イ)に位相をずらせて取り付けられ、しかも、それぞれの上下方向の傾斜角度が異なるように構成されている。つまり、左側のガイド杆22は、基端側の案内始端位置が右側のガイド杆23に対して処理胴下向き回転方向(イ)の上手側高位に位置し、右側ガイド杆23は、この案内始端位置が左側のガイド杆22に対して処理胴下向き回転方向(イ)の下手側低位に位置するように配置され、しかも、右側ガイド杆23の傾斜角度は急傾斜の左側ガイド杆22よりも緩傾斜に構成されている。
【0017】
前記処理室後側板19に設けられた後方排塵口17bは、処理胴軸芯より左側の開口部H1を右側の開口部H2よりも上方に大きく開口することで、排塵ガイド杆22,23等による処理物の排出案内作用がスムースに行えるようにしている。
【0018】
揺動選別棚25は、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚26、チャフシ−ブ27、ストロ−ラック28の順に配置し、且つ、前記チャフシ−ブ27の下方にグレンシ−ブ29を配置して設けた構成としている。また、揺動選別棚25の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕34と、1番移送螺旋35、2番移送螺旋36と、その上方に排塵フアン30を設けて選別室を構成している。
【0019】
図5及び図6は、脱穀装置における外装カバーの構成例を示したもので、38はフィードチエンカバー、39はベルトカバー、40はカッタカバーを示す。フィードチエンカバー38とベルトカバー39との間には中継カバー41を設けてあり、そして、この中継カバー41はフィードチエンカバー38又はベルトカバー39側に取り付けて前後方向に調整できるように構成している。遅延カバーとベルトカバーは取り付け状態によって取付隙間が変化するので、中継カバーを前後に調整することで、隙間調整が容易にできる。
【0020】
図7及び図8に示す実施例は、排塵処理室の下方に排塵処理物を受け入れてふるい選別する排塵処理選別専用の排塵処理用ストローラック(又はストローネット)42を配設し、下方の揺動選別棚25と一体的に揺動する構成とし、処理網13から濾過する排塵処理物を受け入れて後方に揺動搬送しながらふるい選別すると共に、穀粒は下方の揺動選別棚25上にふるい落とし、細かいわら屑などはそのまま後方機外に排出するようになっている。また、処理室終端に至った大きなわら屑は、わら屑排出口43から直接機外に排出する構成としている。これにより、3番ロスを大幅に軽減することができる。
【0021】
なお、図例では、扱胴4の後端部に線材(又は羽根板)44を取り付け、扱胴と受網の間から後方へ落ちる大きなわら屑を前記排塵処理用ストローラック42上に送るようにし、揺動選別棚25上への大きなわら屑の落下が少なくなるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】脱穀装置の側断面図
【図2】同上要部の側断面図
【図3】同上要部の背面図
【図4】左側排塵ガイド板の側面図
【図5】脱穀装置の外装カバーの側面図
【図6】同上要部のS1−S1断面図
【図7】別実施例を示す脱穀装置要部の側断面図
【図8】同上要部の切断背面図
【符号の説明】
【0023】
3 扱室
11 排塵処理胴
12 排塵処理室
17 排塵口
17a 側方排塵口
17b 後方排塵口
20 排塵ガイド板(左)
21 排塵ガイド板(右)
22 排塵ガイド杆(左)
23 排塵ガイド杆(右)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(3)の後部一側に、該扱室(3)から排出される排塵処理物を受け入れて後方に搬送しながら脱粒処理する排塵処理胴(11)を備えた排塵処理室(12)を設け、該排塵処理室(12)の後端部に排塵口(17)を開口して設け、該排塵口(17)から排出される排塵処理物を後方下方の機外に向けて案内して落下させる複数の排塵ガイド板(20,21)を左右方向に間隔をおいて配置し、これら左右の排塵ガイド板(20,21)の間隔部には、前記排塵口(17)から排出される排塵処理物を受けて後方下方の機外に拡散案内しながら下方の揺動選別棚(25)上に漏下させる複数の排塵ガイド杆(22,23)を設けたことを特徴とする脱穀処理装置。
【請求項2】
前記複数の排塵ガイド杆(22,23)を、互いに上下方向の傾斜角度を異ならせて設けたことを特徴とする請求項1記載の脱穀処理装置。
【請求項3】
前記排塵ガイド杆(22,23)を、排塵処理胴(11)の回転方向(イ)の上手側と下手側とで位相をずらせて配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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