説明

脱穀機の排稈搬送装置

【課題】排稈搬送装置によって搬送される排稈が水分を多く含んだ湿潤度の高い濡れ材であっても、排稈中に紛れ込んだ「刺さり粒」を十分に振るい落とすことができガイド杆を設ける。
【解決手段】株元搬送チェン22で搬送される排稈の穂先側を下方から支持案内するガイド部材25を、基端側の弾性を有する板状体25aと、先端側の棒状体25bで構成すると共に、このガイド部材25に振動を伝播せしめる起振手段として機体振動を利用した排稈搬送装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインやハーベスタ等に搭載される脱穀機の排稈搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの脱穀機では、フィードチェンで搬送される排稈の株元を受け継いで後方に搬送する株元搬送チェンを備えた排稈搬送装置によって排稈を搬送する際、前記排稈中に穀粒が紛れ込んだ所謂「刺さり粒」が存在すると、この「刺さり粒」が排稈と共に機外へ放出されてしまうので収穫量が減少する。そこで、排稈搬送装置ないしその周辺に、当該排稈搬送装置によって搬送される排稈の稈身を揺動させる揺動手段を設けることによって、排稈中に紛れ込んだ「刺さり粒」を振るい落として回収できるように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−231351号公報(第3−4頁、図4−図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そして、上述した特許文献1の揺動手段は、排稈搬送装置を構成する穂先側搬送装置と株元側搬送装置との間に配置した弾性を有する細い棒状のガイド杆の長手方向に所定間隔で設けた複数の突起で構成し、これらの突起と、穂先側搬送装置の無端チェンのラグに係合しながらガイド杆に沿って搬送される排稈の穂先側とを当接させることによって、排稈中に紛れ込んだ「刺さり粒」を振るい落として回収できるようにしている。
【0004】
ところが、排稈搬送装置によって搬送される排稈が水分を多く含んだ湿潤度の高い濡れ材の場合は、揺動手段であるガイド杆の複数の突起に排稈が絡み付き易いことから、排稈中に紛れ込んだ「刺さり粒」を十分に振るい落とすことができないといった欠点を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、フィードチェンで搬送される穀稈を扱室の前後側板間に支持した扱胴の回転により脱粒処理し、この脱粒処理された排稈によって送出される穀粒を回収する4番漏斗を扱室の後側板の後方に設けると共に、前記フィードチェンで搬送される排稈の株元を受け継いで後方に搬送する株元搬送チェンを備えた脱穀機の排稈搬送装置において、前記株元搬送チェンで搬送される排稈の穂先側を下方から支持案内するガイド部材と、このガイド部材に振動を伝播せしめる起振手段を設けたことを第1の特徴としている。
そして、前記ガイド部材を、基端側の弾性を有する板状体と、先端側の棒状体で構成すると共に、前記起振手段として機体振動を利用したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、排稈搬送装置の株元搬送チェンで搬送される排稈の穂先側を下方から支持案内するガイド部材と、このガイド部材に振動を伝播せしめる起振手段を設けたことによって、前記株元搬送チェンで搬送される排稈が水分を多く含んだ湿潤度の高い濡れ材であっても、ガイド部材全体が振動することによりこのガイド部材に排稈が絡み付き難くなると共に、排稈中に紛れ込んだ「刺さり粒」を効率よく振るい落とすことができる。
そして、請求項2の発明によれば、前記ガイド部材を、基端側の弾性を有する板状体と、先端側の棒状体で構成すると共に、前記起振手段として機体振動を利用したことによって、安価で効率のよい起振手段を構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、コンバインやハーベスタ等に搭載される脱穀機1であって、脱穀機1は、扱室2に沿ってフィードチェン3を前後方向に張設してあり、このフィードチェン3によって搬送される穀稈が扱室2の前後側板4f,4rに支持した扱胴5の回転により脱穀処理される。
【0008】
また、扱室2後側の側方には、処理胴6と処理網7により形成される処理室8を連通し、扱室2下方には、前後に配置した送風ファン9及び一番流板11等からなる選別風路Aを形成している。そして、選別風路A中には、図示しない揺動支持機構を備えた揺動選別体12を装架すると共に、受網13、及び処理網7を漏下した脱穀物を送風ファン9による風選別と揺動選別体12による篩選別によって選別し、選別分離された夾雑物は横断流
(吸引排塵)ファン14を介して機外に排出される。そして、一番樋15に落下した穀粒を図示しない揚穀筒を介して穀粒タンクへ揚上搬送せしめ、また二番樋16に落下した穀粒を図示しない二番還元筒を介して揺動選別体12上に還元できるように構成している。
【0009】
また、扱室2の後側板4rの後方には、扱胴5の回転により脱粒処理された排稈によって送出される穀粒を回収する4番口17及び4番漏斗18を設けている。そして、脱粒処理された排稈は、後述する排稈搬送装置21へ受け継がれ、その後方の図示しない排稈カッタ等の排稈処理装置に送られる。
【0010】
更に詳しくは、上述した排稈搬送装置21は、フィードチェン3で搬送される排稈の株元を株元搬送チェン22と挟持レール23で受け継いで挟持搬送する株元搬送装置と、排稈の穂先部分を爪付きベルト24(穂先搬送体)とガイド部材25により支持案内する穂先搬送装置によって構成している。
【0011】
そして、ガイド部材25は、図3〜図5に示すように、基端側の弾性を有するバネ材からなる板状体25aと先端側の2本の棒状体25bとで構成している。板状体25aは、その基端部を略L字状に折り曲げて取付け部を形成してあり、この取付け部を扱胴5の中心よりフィードチェン3側で、且つ扱室2の後側板4rの下側に形成される排稈口26の下縁にボルト27とナット28を用いて取付けている。
【0012】
また、板状体25aは、図3に示すように、背面視において排稈の株元側が高く穂先側が低くなるように横方向に傾斜させて取付けてあり、それによって当該板状体25aに堆積しようとする切藁等が滑って4番口17に容易に落下するように構成している。
【0013】
更に、板状体25aは、図4及び図5に示すように、その取付け基部側のA矢印で示す部分を一段折り曲げて、この板状体25aと4番漏斗18の間に切藁等の落下スペースHを形成してあり、それによって板状体25aと4番漏斗18の間に入った切藁等が引っ掛かって堆積することなく容易に4番口17に落下する。
【0014】
また、板状体ガイド25aの先端側裏面には、上述した2本の棒状体25bが溶接してあり、この2本の棒状体25bを、上方の排稈搬送装置21の爪付きベルト24に対向して株元側と穂先側に配設することによって、排稈の穂先側が2本の棒状体25bでもって確実に支持案内されながら排稈搬送装置21の爪付きベルト24で搬送されるようになっている。
【0015】
尚、爪付きベルト24は、その搬送始端部を棒状体25bの基端部に位置させると共に、爪付きベルト24の搬送終端部を棒状体25bの先端部に位置させることによって、棒状体25bに堆積しようとする切藁等を爪付きベルト23で掻き落とすことができるように構成している。
【0016】
上述の如く排稈搬送装置21を構成することにより、扱室2における扱胴5の回転により脱粒処理された排稈は、フィードチェン3から排稈搬送装置21に受け継がれ、その株元側は株元搬送チェン22と挟持レール23によって挟持搬送される。一方、排稈の穂先側は、爪付きベルト24とガイド部材25によって支持案内されるが、このガイド部材25の基端側(始端側)では、扱室2の後側板4rの下側に形成される排稈口26の下縁に取付けた板状体25aによって、当該排稈口26から排出される排稈をスムーズに支持案内することができるようになっており、この時排稈に送出される切藁等は、板状体25a上に堆積したり、板状体25aと4番漏斗18の間に堆積することなく4番口17に落下する。
【0017】
そして、ガイド部材25は、基端側の弾性を有する板状体25aと、先端側の棒状体25bで構成すると共に、本発明では、この板状体25aに振動を伝播せしめる起振手段として機体振動を利用することによって、株元搬送チェン22で搬送される排稈が水分を多く含んだ湿潤度の高い濡れ材であっても、ガイド部材25全体が振動することによりこのガイド部材25に排稈が絡み付き難くなると共に、排稈中に紛れ込んだ「刺さり粒」を効率よく振るい落とすことができ、しかも機体振動を利用した安価で効率のよい起振手段を構成できる。
【0018】
尚、ガイド部材25の先端(終端)側では、爪付きベルト24と棒状体25bにより排稈が支持案内されるが、棒状体25bに堆積しようとする切藁等は爪付きベルト24により掻き落とされて4番口に落下するようになっている。
【0019】
また、図6(a)に示すものは、ガイド部材25を構成する棒状体25bの先端部にウェイトWを螺設できる取付プレート25cを溶接固定したものであり、この取付プレート25cに設けた長孔Hの許容するウェイトWの取付位置を無段階に調整することによって、ガイド部材25を機体振動と共振させるように構成したものである。同様に、図6(b)に示すものは、ガイド部材25を構成する棒状体25bの先端部にウェイトWを螺設できる複数の調節孔H1を備えた取付プレート25c´を溶接固定したものであり、この複数の調節孔H1によりウェイトWの取付位置を段階的に調整することによって、ガイド部材25を機体振動と共振させることができるようにしたものである。
【0020】
そして、上述した実施例では、ガイド部材25を構成する板状体25aに振動を伝播せしめる起振手段として機体振動を利用したが、図7(a),(b)に示すように、ガイド部材25を構成する板状体25aの下面側に、電動モータ31から出力される動力により回転するカム32のカム面を当接可能に構成し、当該カム32の回転によりガイド部材25を実線で示す状態から二点鎖線で示す状態まで強制的に揺動(振動)させることができるように構成してもよい。
【0021】
また、図8に示すものは、ガイド部材25を構成する板状体25aの下面側に当接可能な棒状体33を揺動選別体12から立設したものであって、このものでは選別風路A中で揺動する揺動選別体12と一体的に揺動する棒状体33を介して当該板状体25aに振動を伝播せしめてもよい。
【0022】
ところで、図1に示すように、揺動選別体12のチャフシーブ36を構成する複数のフィン36aの上方に、選別風路Aから送られる選別風の風量を検出する風量検出センサ37をそれぞれ配設すると共に、一番流板11の上方に電動モータ38を介して自在に回動する風向き変更板39を設置し、前記風量検出センサ37により検出する選別風の風量に基づいて、チャフシーブ36を構成する各フィン36aを通過する選別風の風量が一定となるように風向き変更板39の回動角を自動的に変更できるように構成すれば、従来のように、扱室2から揺動選別体12へ落下する被選別物の増減に伴って複数のフィン36aの開度を調節するといった複雑な装置構成や制御形態を簡素化することができる。尚、上述した電動モータ38と風向き変更板39は、揺動選別体12に直接設置してもよく、また脱穀機1の図示しない側板に設置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一部を省略した脱穀装置の側面図。
【図2】一部を省略した脱穀装置の平面図。
【図3】一部を省略した脱穀装置の背面図。
【図4】ガイド部材周辺の斜視図。
【図5】ガイド部材の取付状態を示す断面図。
【図6】(a),(b)ガイド部材へのウェイト取付方法を示す正面図と側面図。
【図7】(a),(b)起振手段の第二実施例を示す側面図と作動図。
【図8】起振手段の第三実施例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0024】
2 扱室
3 フィードチェン
4f 前側板
4r 後側板
5 扱胴
18 4番漏斗
22 株元搬送チェン
25 ガイド部材
25a 板状体
25b 棒状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードチェン(3)で搬送される穀稈を扱室(2)の前後側板(4f,4r)間に支持した扱胴(5)の回転により脱粒処理し、この脱粒処理された排稈によって送出される穀粒を回収する4番漏斗(18)を扱室(2)の後側板(4r)の後方に設けると共に、前記フィードチェン(3)で搬送される排稈の株元を受け継いで後方に搬送する株元搬送チェン(22)を備えた脱穀機の排稈搬送装置において、前記株元搬送チェン(22)で搬送される排稈の穂先側を下方から支持案内するガイド部材(25)と、このガイド部材(25)に振動を伝播せしめる起振手段を設けたことを特徴とする脱穀機の排稈搬送装置。
【請求項2】
前記ガイド部材(25)を、基端側の弾性を有する板状体(25a)と、先端側の棒状体(25b)で構成すると共に、前記起振手段として機体振動を利用した請求項1に記載の脱穀機の排稈搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−72106(P2009−72106A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243845(P2007−243845)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】