説明

脱穀装置の受網脱着構造

【課題】 扱胴の下方に沿って配備した受網を周方向に分割するとともに、脱穀装置の側部にカバーで開閉される点検口を形成し、受網の点検口側の受網部分を開放した点検口から脱着可能に構成した脱穀装置の受網脱着構造において、受網部分の脱着作業を容易に行えるようにする。
【解決手段】 受網部分18bの内端部37を扱胴下方に固定された支持枠28に脱着自在に係止するとともに、受網部分18bの外端部を閉じられたカバー34によって所定取り付け位置に押圧固定するよう構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置の側部に揺動自在なカバーで開閉される点検口を形成し、扱胴の下方に沿って配備した周方向分割式の受網の前記点検口側の受け網部分を開放した点検口から脱着可能に構成した脱穀装置の受網脱着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記受網脱着構造としては、例えば、特許文献1に開示されているように、脱着される受網部分をカバーに一体支持して、カバーを開けることで受網部分を扱胴下方の取り付け位置から点検口の外方にまで移動させるように構成したものや、あるいは、特許文献2に開示されているように、脱着される受網部分を脱穀フレームにねじ締め連結し、カバーを開けて露出した受網部分を脱穀フレームから脱着するよう構成したものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−70680号公報
【特許文献2】特開平11−155347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で示される前者の構造においては、カバーを開放するだけで受網部分もカバーと一体に外されるので、扱室の内部の詰まりを除去するような作業には便利であるが、受網部分を単体で補修したり交換するためには工具を使ってカバーから受網部分を取り外したり取り付けたりする必要があり、煩わしい作業となるものであった。
【0005】
また、扱室下方の選別部の整備や清掃を行う場合、カバーと一体に受網部分が外されて扱室の一部が開放されるために、カバーを開いたとたんに扱室に残留している処理物が選別部に落下してしまい、選別部の整備や清掃の邪魔になることがあった。
【0006】
また、特許文献2で示される前者の構造においては、カバーを開けたとたんに扱室の一部が開放されることはないが、受網部分を単体で補修したり交換するためには、受網部分の内端部と外端部でネジ操作を行って受網部分を取り外したり取り付けたりする必要があり、煩わしい作業となるものであった。
【0007】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、受網部分の脱着作業を容易に行えるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、扱胴の下方に沿って配備した受網を周方向に分割するとともに、脱穀装置の側部にカバーで開閉される点検口を形成し、前記受網の前記点検口側の受網部分を開放した点検口から脱着可能に構成した脱穀装置の受網脱着構造であって、
脱着される受網部分の内端部を扱胴下方に固定された支持枠に脱着自在に係止するとともに、受網部分の外端部を閉じられたカバーによって所定取り付け位置に押圧固定するよう構成してあることを特徴とする。
【0009】
上記構成によると、カバーを開放すると受網部分の外端部の押圧支持が解除されることになり、受網部分の内端部を支持枠から外すことで受網部分を点検口から抜き出すことができる。逆に、点検口から挿し入れた受網部分の内端部を支持枠に係止して受網部分の外端部を所定取り付け位置にしてカバーを閉じることで、受網部分を所定の姿勢に固定することができる。
【0010】
従って、第1の発明によると、開閉自在なカバーが脱着自在な受網部分を所定姿勢に固定保持する部材として利用するので、受網部分を脱着するために工具が不要であり、受網部分の脱着作業性に優れたものとなった。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記受網部分の外端部を所定取り付け位置に仮り受け支持する係止部材を脱穀フレームに装備するとともに、この係止部材を受網係止方向に付勢してあるものである。
【0012】
上記構成によると、受網部分の外端部は係止部材で弾性係止されているので、カバーを開放しただけでは受網部分は所定の取り付け姿勢に保持されており、扱室内に残っている処理物が直ちに下方の選別部に落下してしまうことはない。また、係止部材を付勢力に抗して係止解除位置に移動操作することで受網部分の外端部が自由となり、受網部分を点検口から抜き出すことが可能となる。
【0013】
受網部分の装着に際しては、先ず、受網部分を点検口に挿入してその内端部を支持枠に係止し、次に、受網部分の外端部を所定の取り付け位置に移動させる。この場合、係止部材を付勢力に抗して移動させておき、受網部分の外端部を所定の取り付け位置に移動させた状態で係止部材を付勢揺動させることで、受網部分の外端部を所定の取り付け位置に仮り受け保持しておくことができる。その後、カバーを閉じて固定することで受網部分が適正な作用位置に固定されることになる。
【0014】
従って、カバーの開閉と受網部分の脱着を工具なしに順番に行うことができ、受網部分の脱着作業性が一層に優れたものとなる。
【0015】
第3の発明は、上記第2の発明において、
前記係止部材の係止解除方向への移動を、閉じ位置の前記カバーで押圧阻止するよう構成してあるものである。
【0016】
上記構成によると、カバーを閉じることで係止部材が受網部分の外端部を係止した位置に強固に固定されることになり、受網部分の外端部以外の箇所をカバーで直接に押圧支持する場合に比べて受網部分の漏下面積を確保しておくことができる。
【0017】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか一つの発明において、
前記カバーを脱穀フレームに揺動開閉可能に枢支し、このカバーの支点近傍に受け網押圧固定用の押圧作用部を備えてあるものである。
【0018】
上記構成によると、脱穀作業中に受網部分に作用する外向きの力はカバーの枢支部近傍、つまり、強度の高いカバー部位で受け止められることになり、カバーを変形させるようなことなく受網部分の固定機能が確実に発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に、本発明に係るコンバインの全体側面が、また、図2に、その全体平面がそれぞれ示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2にキャビン付きの運転部3、全稈投入式に構成された軸流型の脱穀装置4、および、スクリュー式のアンローダ5を備えた穀粒タンク6が搭載されるとともに、脱穀装置4の前部に支点p周りに上下揺動自在に連結された刈取り作物搬送用のフィーダ7が配備され、このフィーダ7の前端に機体横幅と略同幅の刈幅を有する刈取り部8が連結された構造となっている。
【0020】
前記刈取り部8は、バリカン型の刈取り装置9と、刈り取った作物を横送りして前記フィーダ7の始端部に送り込むオーガ10が架設された構造となっており、フィーダ7と走行機体2との間に架設された油圧シリンダ11の伸縮作動によって刈取り部8がフィーダ7と一体に揺動昇降されるようになっている。また、刈取り部8の前部上方に、植立した作物を後方に掻き込む掻込みリール12が装備されている。
【0021】
図3に示すように、前記脱穀装置4の上半部には、扱歯15を螺旋状に植設した扱胴16が前後水平に軸支された扱室17が設けられるとともに、扱室17の下方に沿って受網(コンケーブ)18が配備され、また、扱室17の下方には、受網18から漏下した処理物を1番物(精粒)、2番物、および、排塵とに選別する選別部19が配備されている。
【0022】
前記選別部19には、受網18から漏下した処理物を後方に揺動移送しながら篩い選別する選別ケース20が装備されるとともに、選別部19の前端部には選別ケース20に向けて選別風を供給する唐箕21が配備されており、また、脱穀装置4の後端には、扱室17の後端下部に形成された送塵口22から排出された大きいワラ屑類、および、選別部の後端に形成された排塵口23から排出されたワラ屑類を細断処理する回転チョッパ24が配備されている。
【0023】
前記受網18は、前後方向に2分割されるとともに、前半部および後半部がそれぞれ周方向に2分割された2枚づつの受網部分18a,18bで構成されている。図5〜8に示すように、各受網部分18a,18bは、部分円弧状の支持枠26に打抜き鋼板27を張付けて構成されており、これら受網部分18a,18bが以下のように脱着されるようになっている。
【0024】
図9〜11に示すように、前記扱室17の下部には、受網取付け用の支持枠28が固定配備されており、受網18を構成する4枚の受網部分18a,18bのうち、内側に位置する受網部分18aは扱室17の上部を覆う扱胴カバー29を機体内側の支点a周りに揺動開放することで、支持枠28に備えられた円弧状レール部分28aに沿って扱室上方から挿抜することができるようになっている。また、前記支持枠28には扱胴16の略直下に位置して扱室全長に亘る断面形状U形の支持枠部分28bが備えられており、この支持枠部分28bに形成された係止溝39に、外側に位置する受網部分18bの内端部37が係入支持されている。なお、外側に位置する受網部分18bの内端部37は筒状に屈曲形成されている。
【0025】
扱室17の横外側上部には、扱室全長に亘って角パイプ構造の脱穀フレーム30が配備されており、この脱穀フレーム30に受網支持用の係止部材31が支点b周りに揺動開閉自在に装着されている。この係止部材31は、その支点bに備えたねじりバネ32によって揺動付勢されており、揺動付勢された係止部材31で受網部分18bの外端部が係止されることで所定の取り付け位置に仮り受け支持されるようになっている。
【0026】
扱室17の横外側には、外側の受網部分18bの脱着や選別部19の掃除、等を行う点検口33が扱室全長に亘って形成されるとともに、点検口33が開閉自在なカバー34で閉塞されている。このカバー34は前記脱穀フレーム30に支点c周りに揺動開閉可能に連結されており、上方へ持ち上げ揺動してガススプリング35で保持しておくことで、点検口33を開放状態に維持しておくことができ、ガススプリング35に抗してカバー34を引き下げ揺動して、その下部を係止ロック機構36に係止固定することで点検口33を閉じることができるようになっている。
【0027】
また、前記カバー34の支点c近傍の内側面が押圧作用部34aに構成されており、カバー34が閉じ位置にある時、前記押圧作用部34aが前記係止部材31を外側から接当支持することで係止部材31が係止解除方向に揺動することが阻止されるようになっている。
【0028】
外側の受網部分18bを脱着する場合には、先ず、カバー34の下方の取っ手38を操作して係止ロック機構36の係止を解除し、カバー34を持ち上げ揺動して開放姿勢に保持する。このカバー34の開放によって押圧作用部34aが係止部材31の接当押圧を解除するが、係止部材31が揺動付勢力によって受網支持状態を維持する。次に、手作業で係止部材31をねじりバネ32に抗して上方に揺動操作することで受網部分18bの外端部の係止を解除することができ、受網部分18bを内端部37の係止箇所を支点にして外方に揺動させた後、受網部分18bを係止溝39から抜き外して点検口33から取り出すことができる。
【0029】
受網部分18bの取り付けにおいては、先ず、受網部分18bを少し横倒しした姿勢で点検口33に挿入してその内端部37を係止溝39に係入し、次に、その係止箇所を支点にして受網部分18bを上方に振り上げる。この場合、係止部材31をねじりバネ32に抗して持ち上げ揺動させておき、振り上げた受網部分18bの外端部を所定の取り付け位置に移動させる。この状態で係止部材31を付勢揺動させることで受網部分18bの外端部を所定の取り付け位置に仮り受け保持しておくことができる。その後、カバー34を閉じて固定することで、カバー34の押圧作用部34aが係止部材31を外側から接当押圧することで受網部分18bが適正な作用位置に固定される。
【0030】
〔別実施例〕
【0031】
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0032】
(1)上記実施例では、受網部分18bの外端部を所定の取付け位置に係止部材31で仮り受けした状態で、この係止部材31の後退移動をカバー34の押圧作用部34aで接当阻止する構造としているが、係止部材31で仮り受けした受網部分18bの外端部あるいは漏下面から外れたその他の適所をカバー34の押圧作用部34aで押圧支持する構造で実施することもできる。
【0033】
(2)受網部分18bの外端部を所定の取付け位置に仮り受け支持する係止部材31として、スライド出退自在かつ係止方向に突出付勢されたピン状のものに構成し、これを受網部分18bの外端部などに形成した係止孔に係入させる形態で実施することもできる。この場合、カバー34の押圧作用部34aは受網部分18bの外端部あるいは漏下面から外れたその他の適所に作用させるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】脱穀装置の縦断側面図
【図4】脱穀装置の縦断正面図
【図5】内側の受網部分の展開図
【図6】内側の受網部分受網の正面図
【図7】外側の受網部分の展開図
【図8】外側の受網部分受網の正面図
【図9】脱穀装置の開放状態を示す縦断正面図
【図10】受網装着途中状態を示す縦断正面図
【図11】受網装着状態を示す縦断正面図
【符号の説明】
【0035】
16 扱胴
18 受網
18b 受網部分
28 支持枠
30 脱穀フレーム
31 係止部材
33 点検口
34 カバー
34a 押圧作用部
37 内端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴の下方に沿って配備した受網を周方向に分割するとともに、脱穀装置の側部にカバーで開閉される点検口を形成し、前記受網の前記点検口側の受網部分を開放した点検口から脱着可能に構成した脱穀装置の受網脱着構造であって、
脱着される受網部分の内端部を扱胴下方に固定された支持枠に脱着自在に係止するとともに、受網部分の外端部を閉じられたカバーによって所定取り付け位置に押圧固定するよう構成してあることを特徴とする脱穀装置の受網脱着構造。
【請求項2】
前記受網部分の外端部を所定取り付け位置に仮り受け支持する係止部材を脱穀フレームに装備するとともに、この係止部材を受網係止方向に付勢してある請求項1記載の脱穀装置の受網脱着構造。
【請求項3】
前記係止部材の係止解除方向への移動を、閉じ位置の前記カバーで押圧阻止するよう構成してある請求項2記載の脱穀装置の受網脱着構造。
【請求項4】
前記カバーを脱穀フレームに揺動開閉可能に枢支し、このカバーの支点近傍に受網押圧固定用の押圧作用部を備えてある請求項1〜3のいずれか一項に記載の脱穀装置の受網脱着構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−311820(P2006−311820A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136163(P2005−136163)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】