説明

脱穀装置の扱胴構造

【課題】 扱胴の組上げを容易に行うことができるようにする。
【解決手段】 円筒状の胴本体15の前後に前側板16と後側板17とを連結し、胴本体15を、部分円弧状に形成された複数の分割片15aを周方向に互いに連結して構成し、各分割片15aに扱歯19をカシメ付け固定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置の扱室に装着される扱胴の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
扱胴は、円筒状の胴本体の前後に前側板と後側板とを連結して構成されており、胴本体の外周に突設される扱歯は、例えば、特許文献1に示されているように、扱歯基部から延出された一対のネジ軸部を胴本体の取付け孔に挿通して、胴内に突出したネジ軸部にナットを装着して締め上げ固定するのが一般的である。
【特許文献1】特開平8−256581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成の扱胴の製作においては、打ち抜き加工された1枚の板金素材をロール成形機にかけ、その両端部をスポット溶接等によって連結して円筒状の胴本体を形成し、この胴本体に数十本の扱歯を取付けた後、胴本体の前後に側板を取付けるとともに前側板および後側板の中心に亘って支軸を挿通装着するのであるが、胴本体への扱歯取付け行程において胴本体の内側からのナット締め操作に多大な労力と時間を要するものであった。
【0004】
また、扱胴の外周面には蓋板によって開閉される点検口が形成され、破損あるいは摩損した扱歯を交換するために、点検口から工具を差し入れてナット操作を行うようになっているのであるが、扱歯の配列や扱胴の強度、等の関係で点検口は小さいものにならざるを得ず、このため、扱歯の交換作業、特に点検口から遠い箇所の扱歯交換作業には相当手間取るものとなっていた。
【0005】
また、交換する扱歯の位置によっては、扱胴を脱穀装置から取り外して広い作業空間へ持ち出す必要があり、このためには扱胴を吊り上げ支持するホイストなどの吊下げ装置が必要であるとともに、扱胴駆動装置との分離操作も別途必要となり、相当大がかりで一層手間のかかる作業となる。
【0006】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、扱胴の組上げを容易に行うことができるようにすることを主たる目的とし、また、脱穀装置に装着された後の扱胴の点検整備作業を容易に行えるようにすることを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る脱穀装置の扱胴構造は、円筒状の胴本体の前後に前側板と後側板とを連結し、前記胴本体を、部分円弧状に形成された複数の分割片を周方向に互いに連結して構成し、各分割片に扱歯をカシメ付け固定してあることを特徴とする。
【0008】
上記構成によると、各分割片は部分円弧状に湾曲形成した板金部材であるので、プレス機によって簡単かつ能率よく成形することができる。また、表裏が開放された部材である分割片へ扱歯をカシメ付け連結する作業は広い作業空間で容易に行うことができる。そして、扱歯が装着された各分割片の前後の端辺を、支軸に連結した前側板と後側板とに亘って連結するとともに分割片の周方向の端辺同士を互いに連結することで支軸付きの扱胴を完成させることができる。
【0009】
従って、第1の発明によると、胴内の狭い作業空間からの扱歯取付け操作を要することなく扱胴を組上げることが容易となり、生産性の向上およびコスト低減に有効となる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、
複数の分割片を互いに脱着可能にボルト連結してあるものである。
【0011】
上記構成によると、一部の扱歯が損傷した場合、損傷した扱歯が装着されている分割片だけを取外し、取外した分割片から損傷した扱歯を除去して新しい扱歯をカシメ付けて再び扱胴に組付けたり、あるいは、予め扱歯を取付けた新たな分割片と取り替えたりすることが可能となる。また、取外した分割片は任意の作業空間に持ち運ぶことができるので、扱胴を脱穀装置から脱着する必要はなく、脱穀装置に装着された後の扱胴の点検整備作業を容易に行うことができる。
【0012】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
複数の各分割片を同一の仕様に形成してあるものである。
【0013】
上記構成によると、分割片を製作するプレス金型が一種類ですみ、第1または2の発明の上記効果をもたらすとともに、製作コスト低減に有効となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に、自脱型コンバインに搭載される脱穀装置の縦断した側面図が示されている。この脱穀装置は、図1中の図外左方の刈取り部からで搬送されてきた横倒れ姿勢の刈取り穀稈をフィードチェーン1で受取り、その穂部を扱室2に挿入した状態で図中左方から右方に通過搬送することで、扱室2に支軸3を介して前後水平に軸支した扱胴4によって脱穀処理し、穀稈から分離した処理物を扱室下部に沿って張設した受網5で選別し、受網5を漏下した処理物を扱室2の下方に配備された揺動選別部6の前半部に落下供給するとともに、受網5を漏下しなかった処理物を扱室終端の送塵口7から搬出して揺動選別部6の前後中間部に落下供給し、揺動選別部6に落下供給された処理物を前後に長いシーブケース8で受け止め、載置した処理物を後方(図1では右方)に向けて揺動搬送しながら篩い選別するとともに、揺動選別部6の前端部に備えた唐箕9から後方上方に向けて供給された選別風を吹き付けて風選処理し、選別漏下した1番物を1番回収部10に、また、2番物を2番回収部11にそれぞれ選別回収し、1番回収部10に回収した1番物を横スクリュー12によって機外にまで横送りした後、穀粒タンクなどの回収部に供給し、2番回収部11に回収した2番物を横スクリュー13によって横送りした後、スクリュー式の2番還元装置35によってシーブケース8の前部に還元供給して再選別処理を行うように構成されている。
【0015】
また、扱室2の後方で揺動選別部6の後部上方箇所には、排ワラ搬送経路の下側に位置させて横断流ファンからなる排塵ファン14が横架されており、送塵口7から吹き出てきた浮塵やワラ屑、選別風によって揺動選別部6の後部上方に吹き上げられた浮塵やワラ屑が排塵ファン14に吸引されて強制的に機体後方に排出されるようになっている。
【0016】
図2に示すように、前記扱胴4は、円筒状の胴本体15の前後に皿状にプレス成形された前側板16と円盤状に成形された後側板17とを連結して構成され、前側板16と後側板17とに亘って前記支軸3が貫通止着されるようになっている。そして、図3に示すように、前記胴本体15が、部分円弧状にプレス成形された4枚の分割片15aを周方向に互いに連結して構成されている。
【0017】
各分割片15aは外形が同一で各種孔類が同じパターンで形成された同一仕様の共通部品として構成されており、各分割片15aには、一対づつの扱歯取付け孔18が所定の配列パターンで打ち抜き形成されるとともに、各扱歯取付け孔18に棒材をV形に屈曲形成してなる扱歯19の連結基部19aが挿入されてカシメ付け固定されている。
【0018】
また、各分割片15aにおける周方向の一端辺bにはボルト挿通孔20が設けられるとともに、周方向の他端辺cは板厚分の段差をもって一段低く形成され、ここに裏ナット21を備えた連結孔22が設けられ、他端辺cの上に隣接する分割片15aの一端辺bを重ねてボルト23を連結孔22に締め込むことで、4枚の分割片15aが円筒状に連結されるようになっている。また、各分割片15aの前後の端辺f,rにはボルト挿通孔24,25がそれぞれ設けられるとともに、前側板16および後側板17の外周部には裏ナット26,27を備えた連結孔28,29が設けられており、各分割片15aの前後の端辺f,rを前側板16および後側板17の外周部に重ねてボルト30,31をそれぞれ連結孔28,29に締め込むように構成されている。
【0019】
扱胴4の組上げに際しては、先ず、支軸3の所定位置に前側板16および後側板17を挿通止着し、予め扱歯19がカシメ付け連結された4枚の分割片15aを前側板16および後側板17の外周に亘ってボルト締め連結するとともに、隣接する分割片15aの周方向の端辺同士を重ねてボルト絞め連結する。
【0020】
上記のように組上げられた扱胴4を扱室2に支承して使用している間に、一部の扱歯19が損傷あるいは摩損すると、その損傷あるいは摩損した扱歯19を備えた分割片15aだけを扱胴4から取り外し、取外した分割片15aから損傷した扱歯19のカシメ箇所を切除して新しい扱歯19をカシメ付けて再び扱胴4に組付けたり、あるいは、予め扱歯19が装着された新たな分割片15aと取り替えたりすることができる。
【0021】
なお、前側板16には扱室2に導入された穀稈を梳き伸ばす整梳歯33が従来と同様に内側からナット締め固定されており、この整梳歯33の交換は、一部の分割片15aを扱胴4から取外して周方向に約90°の位相をもって大きく開口された点検口を開けて行うことになる。
【0022】
〔他の実施例〕
【0023】
(1)前記胴本体15は、4以下の複数、あるいは、4以上の複数に分割して実施することもできる。
【0024】
(2)複数の分割片15aは必ずしも同一の仕様である必要はなく、例えば4分割の場合、2種類の仕様に構成して実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】脱穀装置の縦断側面図
【図2】扱胴の縦断側面図
【図3】扱胴の縦断正面図
【図4】扱胴構成部材の展開平面図
【図5】扱歯取付け部の縦断正面図
【図6】扱胴における胴本体の一部を示す縦断正面図
【図7】扱胴前部を示す縦断側面図
【図8】扱胴後部を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0026】
15 胴本体
15a 分割片
16 前側板
17 後側板
19 扱歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴本体の前後に前側板と後側板とを連結し、前記胴本体を、部分円弧状に形成された複数の分割片を周方向に互いに連結して構成し、各分割片に扱歯をカシメ付け固定してあることを特徴とする脱穀装置の扱胴構造。
【請求項2】
複数の分割片を互いに脱着可能にボルト連結してある請求項1記載の脱穀装置の扱胴構造。
【請求項3】
複数の各分割片を同一の仕様に形成してある請求項1または2記載の脱穀装置の扱胴構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−67910(P2006−67910A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255728(P2004−255728)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】