説明

脱穀装置

【課題】受網と扱胴との隙間を調節する簡単な隙間調節手段を設けた脱穀装置を提供することを課題としている。
【解決手段】扱胴2の下方において扱胴2の外周に沿う受網6の両端の中間位置に、脱穀装置のフレーム1側に固定された固定受け部と、上記固定受け部に対し、扱胴2の軸心に向かって移動し、受網6の外周部を受け止める隙間調節部材と、受網6と扱胴2との隙間を変化させるように、固定受け部に対する隙間調節部材の位置調節を行う調節手段とからなる受網6と扱胴2との隙間を調節する隙間調節手段48を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱胴と受網とを備えた脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
扱胴の下方に、扱胴の外周に沿う円弧状の断面を有する受網を設け、該受網における両端の中間位置に、受網と扱胴との隙間を調節する隙間調節手段を設けた脱穀装置が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3437439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に示されている隙間調節手段は、前後の受網ガイドの間に、受網を当接させる受網支持杆を設けて構成し、受網支持杆を扱胴の軸心に向かって移動させることによって、受網と扱胴との隙間を調節するように構成されている。この場合受網支持杆の移動は容易ではなく、結果受網と扱胴との隙間調節が容易ではないという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の脱穀装置は、扱胴2の下方に、扱胴2の外周に沿う円弧状の断面を有する受網6を設け、該受網6における両端の中間位置に、受網6と扱胴2との隙間を調節する隙間調節手段48を設けた脱穀装置において、上記隙間調節手段48が、脱穀装置のフレーム1側に固定された固定受け部と、上記固定受け部に対し、扱胴2の軸心に向かって移動し、受網6の外周部を受け止める隙間調節部材と、受網6と扱胴2との隙間を変化させるように、固定受け部に対する隙間調節部材の位置調節を行う調節手段とからなることを第1の特徴としている。
【0005】
第2にフィードチェン10の反対側となる扱胴2の側方を覆うカバー16を着脱可能に取り付けたことを特徴としている。
【0006】
第3に固定受け部が、前後方向のステー38からなり、隙間調節部材が、ステー38に沿って取付けられる板状部材41からなることを特徴としている。
【0007】
第4に受網6を分割形成し、受網6を構成する分割網28,29の突合せ接合部分に隙間調節手段48を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成される本発明の構造によると、脱穀装置のフレーム側に一体固定された固定受け部に対して隙間調節部材を移動させて受網と扱胴との隙間を調節することができるため、受網と扱胴との隙間調節を容易に行うことができるという利点がある。
【0009】
特にフィードチェンの反対側となる扱胴の側方を覆うカバーを着脱可能に取り付けることによって、カバーを取り外すと、受網と扱胴との隙間を確認しながら、受網と扱胴との隙間調節を容易に行うことができる。
【0010】
固定受け部を、前後方向のステーから構成し、隙間調節部材を、ステーに沿って取付けられる板状部材とすることによって、固定受け部を脱穀装置の枠体の補強と兼用することもでき、高強度の固定受け部に対して板状部材からなる隙間調節部材を容易に且つ安定して移動させることができ、上記隙間調節を安定して行うことができる。
【0011】
受網を分割形成し、受網を構成する分割網の突合せ接合部分に隙間調節手段を設けることによって、各分割網の端部を位置調節することができ、上記隙間調節を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明を採用した脱穀装置の側面図、図2は要部平面断面図である。脱穀装置のフレームとなる枠体1内には、扱胴軸5によって回転駆動自在に軸支された扱胴2を上部に備えた扱室3が形成されている。扱室3の下方には、扱胴2により脱穀処理された後の処理物(脱穀粒とわら屑等の混合物)から籾を選別する選別室4が形成されている。
【0013】
枠体1の左側方には、扱胴2に対して穀稈を供給するフィードチェン10が設けられている。扱胴2の下方側には、扱胴2の外周に沿った円弧状の断面を有する受網6が設けられている。扱室3と選別室4とは受網6によって区切られている。扱室3の後方には、該扱室3に対して左右方向にオフセットして処理室7が設けられている。
【0014】
処理室7と扱室3とは、処理室7の前方部分と扱室3の後方部分とによって連通している。処理室7内には処理胴8が回転駆動自在に軸支されて内装されている。処理胴8は扱胴2の後方側に扱胴2に対して左右方向にオフセット配置されている。処理室7と選別室4とは、処理網9によって区切られている。
【0015】
枠体1のフィードチェン10の反対側の側方(右側方)は、扱胴2の側方における処理胴8の前方が開口している。この開口部は側方カバー16によって覆われている。側方カバー16は、脱穀装置の枠体1に対して着脱可能となっている。
【0016】
上記構造により処理室7の前方には、扱室3の側方に位置し、側方カバー16によって覆われる空間23が形成される。枠体1の前面には、空間23の前方位置に、処理胴8の駆動用のギヤケース17が配置されている。ギヤケース17から処理胴8に駆動力を伝動する駆動軸18が、空間23を通過している。
【0017】
図3に示されるように、空間23は、選別室4とつながっている。空間23は選別室4の一部を構成している。選別室4内には、扱胴2の下方から上記空間23の外側の端部に亘り揺動選別体24が設けられている。揺動選別体24の下方には、選別風を送風する唐箕ファン26が設けられている。扱胴2の後方には、処理胴7の側方に位置して藁屑等を強制排出する排塵ファン27が設けらている。
【0018】
本脱穀装置は、フィードチェン10により穀稈を搬送して扱胴2に供給し、扱胴2によって脱穀処理した処理物を受網6を介して選別室4に落下させる。これと共に、扱胴2により処理することができず、扱室3側から処理室7に送られる穂切れ等を処理胴8によって脱穀処理し、処理物を処理網9を介して選別室4に落下させる。扱室3及び処理室7側から選別室4に落下させた処理物を揺動選別体24に送り、揺動選別体24において順次後方に送り、チャフシーブによって濾過して風選する。
【0019】
図3に示されるように、受網6は、扱胴2における扱歯2aの先端の回転軌跡に沿って、正面視におけるフィードチェン10の下端近傍から、フィードチェン10の反対側(側方カバー16側)の側方における扱胴軸5の軸心を通過する水平線近傍に至り設けられている。
【0020】
受網6は、2つに分割され、扱胴2の下方側に位置する分割下受網28と、扱胴2の側方に位置する分割横受網29とからなる。分割下受網28と分割横受網29は共に両端部が外側に向けて、扱胴2の径方向に沿って屈曲している。分割下受網28と分割横受網29の取り付け状態において、分割下受網28の一端と分割横受網29の一端とは突き合わされている。
【0021】
分割下受網28のフィードチェン10側の端部は、枠体1側の取付部31にボルト32によって固定されている。取付部31は、正面視で扱胴2の径方向を向いている。ボルト32によって、取付部31における分割下受網28のフィードチェン10側の端部の取り付け位置を、取付部31に沿って変更することが可能となっている。
【0022】
これにより分割下受網28のフィードチェン10側の端部の固定位置が、扱胴2の径方向で調節される。この調節によって受網6(分割下受網28)は、フィードチェン10側の端部において扱胴2との隙間が変化し、受網6と扱胴2とのフィードチェン10側の端部の隙間が調節される。
【0023】
分割下受網28のフィードチェン10側の端部と取付部31とボルト32等によって、受網6と扱胴2とのフィードチェン10側の端部の隙間を調節する外側隙間調節手段33が構成されている。外側隙間調節手段33は、受網6(分割下受網28)のフィードチェン10側の端部に設けられている。
【0024】
例えば受網6と扱胴2とのフィードチェン10側の端部の隙間が大きくなった場合、受網6と扱胴2とのフィードチェン10側の端部を扱胴2の軸心(扱胴軸5)に向かって移動させて固定することによって、上記隙間を詰めて、受網6と扱胴2とのフィードチェン10側の端部の隙間を一定に維持することができる。
【0025】
分割横受網29の側方カバー16側の端部の外側(側方)には、分割横受網29の側方カバー16側の端部と当接して、分割横受網29の側方カバー16側の端部を略水平に扱胴2に向かって押圧する押接部34が設けられている。該押接部34は、ブラケット36に取り付けられている。
【0026】
ブラケット36は、水平方向にスライド可能に枠体1側に取り付けられている。ブラケット36の水平方向への移動によって、分割横受網29の側方カバー16側の端部の位置が、扱胴2の径方向で調節される。この調節によって受網6(分割横受網29)は、側方カバー16側の端部において扱胴2との隙間が変化し、受網6と扱胴2との側方カバー16側の端部の隙間が調節される。
【0027】
分割横受網29の側方カバー16側の端部と押接部34とブラケット36等によって、受網6と扱胴2との側方カバー16側の端部の隙間を調節する内側隙間調節手段37が構成されている。内側隙間調節手段37は、受網6(分割横受網29)の側方カバー16側の端部に設けられている。
【0028】
例えば受網6と扱胴2との側方カバー16側の端部の隙間が大きくなった場合、ブラケット36を扱胴2の軸心(扱胴軸5)に向かって移動させることによって、押接部34を扱胴2の軸心に向かって移動させ、受網6の側方カバー16側の端部の位置を、扱胴2の軸心に向かって移動させることにより、上記隙間を詰めて、受網6と扱胴2との側方カバー16側の端部の隙間を一定に維持することができる。
【0029】
図3,図4に示されるように、分割下受網28と分割横受網29との突合せ位置近傍には、扱胴2に沿って杆状のステー38が設けられている。該ステー38は前述の扱胴軸5と略平行に脱穀装置の枠体1に一体的に固定されている。該ステー38は上記枠体1の補強となっている。
【0030】
図3,図5に示されるように、ステー38には軸心方向に複数のブラケット39が設けられている。ブラケット39は、扱胴2の径方向に沿って外側に向かって突出している。ステー38には、逆L字状の断面をなすプレート41が、ブラケット39を介して取り付け可能となっている。プレート41は、ステー38への取り付け状態において、ステー38の略全幅に亘り、ステー38に沿う。
【0031】
このためブラケット39には、プレート41の取り付け用のボルト42の通過孔43が設けられている。ブラケット39にはボルト42の通過孔43に対応してナット44が一体的に取り付けられている。プレート41には、ブラケット39との固定用の長孔46が、ブラケット39に対応して設けられている。
【0032】
長孔46にボルト42を通し、該ボルト42を通過孔43を通過させてブラケット39のナット44に螺合させ、締め付けることによって、プレート41がステー38に取り付け固定される。ボルト42がブラケット39の長孔46を通過するため、ボルト42を緩め、長孔46の範囲でプレート41をスライドさせることができる。
【0033】
ブラケット39が、扱胴2の径方向に沿っているため、上記スライドによってプレート41は扱胴2の径方向に移動する。プレート41の扱胴2側は、分割下受網28と分割横受網29との突き合わせ部分に略垂直に接するように屈曲し、この突き合わせ部分を略垂直に受け止める受部47を構成している。
【0034】
前述のようにプレート41を扱胴2の径方向に移動させることによって、分割下受網28と分割横受網29との突き合わせ接合部分の位置が、扱胴2の径方向で調節される。この調節によって受網6は、分割下受網28と分割横受網29との突き合わせ部分において、扱胴2との隙間が変化し、受網6における両端の中間位置で、受網6と扱胴2との隙間が調節される。ステー38,プレート41,ボルト42等によって、受網6における両端の中間位置において、受網6と扱胴2との隙間を調節する中間隙間調節手段48が構成されている。
【0035】
例えば受網6と扱胴2との受網6の両端の中間位置における隙間が大きくなった場合、プレート41を扱胴2の軸心(扱胴軸5)に向かって移動させることによって、上記隙間を詰めて、受網6と扱胴2との受網6の両端の中間位置における隙間を一定に維持することができる。
【0036】
ステー38は、扱胴2の軸心より側方カバー16側に偏位して位置している。このため側方カバー16を取り外すことによって、ステー38とプレート41との固定部分の視認が容易となる。また側方カバー16を取り外すことによって、ステー38とプレート41との固定部分に容易に手や工具が届く。
【0037】
このため側方カバー16を取り外すことによって、プレート41の移動を容易に行い、受網6と扱胴2との隙間調節を容易に行うことができる。特に中間隙間調節手段48の場合、側方カバー16を取り外すと、スケール等を使用することができ、スケール等によって隙間を確認しながら、受網6と扱胴2との受網6の両端の中間位置における隙間を容易に調節することができる。
【0038】
上記のように受網6と扱胴2との隙間を調節する中間隙間調節手段48が、外側に向かって突出している分割下受網28と分割横受網29との突き合わせ部分を、板状の受部47に突き当てて、受部47で受け止める構成であるため、中間隙間調節手段48の構造が簡単である他、分割下受網28と分割横受網29の端部を位置調節することができ、上記隙間調節を効率よく行うことができ、受網6と扱胴2との隙間調節(プレート41のスライド調節)を容易に行うことができる。
【0039】
なおブラケット39とプレート41の長孔46とボルト42によって、受網6と扱胴2との隙間を変化させるように、ステー38に対するプレート41の位置調節を行う調節手段が構成されているため、プレート41の位置調節作業は容易である。またステー38が枠体1の補強を兼用しているため、枠体1の強度が向上し、脱穀装置の強度を向上させることができ、前述の受網6と扱胴2との隙間調節の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】脱穀装置の側面図である。
【図2】脱穀装置の要部平面断面図である。
【図3】脱穀装置の正面断面図である。
【図4】扱胴と中間隙間調節手段との関係を示す要部断面図である。
【図5】中間隙間調節手段の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 枠体(フレーム)
2 扱胴
6 受網
10 フィードチェン
16 側方カバー(カバー)
28 分割下受網(分割網)
29 分割横受網(分割網)
38 ステー
41 プレート(板状部材)
48 中間隙間調節手段(隙間調節手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(2)の下方に、扱胴(2)の外周に沿う円弧状の断面を有する受網(6)を設け、該受網(6)における両端の中間位置に、受網(6)と扱胴(2)との隙間を調節する隙間調節手段(48)を設けた脱穀装置において、上記隙間調節手段(48)が、脱穀装置のフレーム(1)側に固定された固定受け部と、上記固定受け部に対し、扱胴(2)の軸心に向かって移動し、受網(6)の外周部を受け止める隙間調節部材と、受網(6)と扱胴(2)との隙間を変化させるように、固定受け部に対する隙間調節部材の位置調節を行う調節手段とからなる脱穀装置。
【請求項2】
フィードチェン(10)の反対側となる扱胴(2)の側方を覆うカバー(16)を着脱可能に取り付けた請求項1の脱穀装置。
【請求項3】
固定受け部が、前後方向のステー(38)からなり、隙間調節部材が、ステー(38)に沿って取付けられる板状部材(41)からなる請求項1又は2の脱穀装置。
【請求項4】
受網(6)を分割形成し、受網(6)を構成する分割網(28),(29)の突合せ接合部分に隙間調節手段(48)を設けた請求項1又は2又は3の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−174975(P2007−174975A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377048(P2005−377048)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】