脱穀装置
【課題】この発明の課題は、簡単な構成でささり落し並びにささり粒の回収を効果的に効率よく行い、4番ロスの低減を図ることにある。
【解決手段】本発明は、扱胴2を内装軸架せる扱室3終端の穀稈排出口部10には、排出される穀稈に接当してその排出方向に弾性変位可能な穀粒飛散防止用起立案内体15を下側から上方に向けて突出すべく起立状態に付設してあることを特徴とする脱穀装置の構成とする。また、前記穀粒飛散防止用起立案内体15は、排出される穀稈の穂先側に対応する部位で、扱胴軸芯2aより株元側寄り位置まで及ぶ範囲内に設けてあることを特徴とする脱穀装置の構成とする。
【解決手段】本発明は、扱胴2を内装軸架せる扱室3終端の穀稈排出口部10には、排出される穀稈に接当してその排出方向に弾性変位可能な穀粒飛散防止用起立案内体15を下側から上方に向けて突出すべく起立状態に付設してあることを特徴とする脱穀装置の構成とする。また、前記穀粒飛散防止用起立案内体15は、排出される穀稈の穂先側に対応する部位で、扱胴軸芯2aより株元側寄り位置まで及ぶ範囲内に設けてあることを特徴とする脱穀装置の構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインやハ−ベスタ等に利用される脱穀装置に関し、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、扱室終端の穀稈排出口部に設けられた穀粒飛散防止用案内体は、上側から下方に向けて垂下させた構成のものが一般的で、排出される穀稈に対し接当抵抗を付与しながらささり落しを行うものである。また、ささり落し手段として、特許文献1に開示されているように、突起付の無端ベルトの回転によって排出される穀稈層中に突入させてささり粒を強制的に掻き落すようにした構成のもが知られている。
【特許文献1】実開平5−41号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前者の案内体を上側から下方に垂下させたものでは、穀稈に対する接当抵抗にムラが生じ、しかも充分な接当抵抗が付与されないまま排出されることになってささり粒の持ち出しが多く効果的なささり落しや回収効果が得られない。また、後者のものでは、装置が大がかりで複雑化し実用化に乏しい。
【0004】
この発明は、上記問題点を解消し、簡単な構成でささり落しを効果的に効率よく行い、4番ロスの低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するために、次の如き技術手段を講じた。すなわち、請求項1記載の本発明は、扱胴(2)を内装軸架せる扱室(3)終端の穀稈排出口部(10)には、排出される穀稈に接当してその排出方向に弾性変位可能な穀粒飛散防止用起立案内体(15)を下側から上方に向けて突出すべく起立状態に付設してあることを特徴とする。
【0006】
扱室(3)内をフィードチエン(14)により挟持移送される穀稈は、扱胴(2)の回転によって脱粒処理され、扱室(3)終端に至って穀稈排出口(10)から排出される。脱穀処理後の穀稈は、扱室の穀稈排出口部(10)から4番受板(12)上を経てなおも後方に移送されるが、この穀稈排出口部から排出される時、穀稈の穂先側部は排出口部(10)の下側から起立する起立案内体(15)によって接当抵抗を受け、該起立案内体(15)を後方に押し開けながら通過する。そして、このときの起立案内体(15)の弾性復元力によって穀稈がばらけられて、ささり粒が下方にふるい落されることになる。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1において、前記穀粒飛散防止用起立案内体(15)は、排出される穀稈の穂先側に対応する部位で、扱胴軸芯(2a)より株元側寄り位置まで及ぶ範囲内に設けてあることを特徴とする。
【0008】
穀粒飛散防止用起立案内体(15)を穀稈の稈身方向に幅広く設けることで、穀稈排出口より排出される穀稈を穂先部から株元側まで幅広く接触させることができ、ささり粒の持ち出しが極めて少なくなり、4番ロスが低減される。
【発明の効果】
【0009】
要するに、請求項1の本発明によれば、扱室(3)終端の穀稈排出口部(10)に設けられた弾性変位可能な穀粒飛散防止用起立案内体(15)は、下側から上方に起立させた構成のものであるため、排出される穀稈には程好い接触抵抗が付与され、穀稈は起立案内体の弾性力に抗して押し開けながら排出されるので、この起立案内体の弾性反発力によって穀稈が叩かればらけられることになり、ささり粒のふるい落しが効果的且つ効率よく行われ、ささり粒の持ち出しが少なくなり、4番ロスの低減を図ることができる。
【0010】
また、請求項2の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、穀稈排出口(10)には穀粒飛散防止用起立案内体(15)を幅広く設けることで、穀稈排出口より排出される穀稈を穂先部から株元側まで幅広く接触させることができ、ささり粒の持ち出しが極めて少なくなり、4番ロスを大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、図1に示すコンバインの構成について述べる。
走行クロ−ラWを具備する車体上には、前部に昇降可能な刈取部Hを、後部に脱穀装置(脱穀部)Dを搭載している。刈取部Hの横側部には運転部Uが設置され、その後方にはグレンタンクGが装備されている。
【0012】
つぎに、脱穀装置Dの構成につき説明する。扱歯1付き扱胴2を内装軸架せる扱室3の前側板5と中側板6との間における下半周部に沿って受網4を張設している。扱室3の終端側における前記中側板6と後側板7との間には、扱室下方の選別室及び排塵処理胴を内装軸架せる排塵処理室の始端に通ずる排塵経路8が設けられている。
【0013】
扱室3始端側の前側板5には穀稈供給口9が開口され、扱室終端の後側板7には穀稈排出口10が開口されている。穀稈供給口9の前側には入口受板11が連接され、排出口10の後方には4番受板12が斜設されている。
【0014】
扱室3の上方部を覆う扱胴カバ−は13は、扱胴軸方向に平行な軸芯回りに揺動開閉可能に構成されている。また、扱室3の扱ぎ口側には、該扱ぎ口に沿って穀稈の株元側を挟持搬送するフイ−ドチエン14とこの上側に対設する挟持レ−ル14aを配設している。この挟持レール14aは扱胴カバー13側に装着して該カバーと共に揺動開閉する構成としている。
【0015】
穀稈排出口部10には、ゴム等の弾性材からなり、穀稈の移送圧によって弾性変位可能な穀粒飛散防止用起立案内体15が下側から上方に向けて起立状に立設されている。この穀粒飛散防止用起立案内体15は、図4に示すように、排出口10から排出される穀稈の穂先側に対応する部位で、扱胴軸芯2aより稍株元側寄り(L)位置まで及ぶ範囲内に設けられ、そして、起立案内体上方への突出度は、株元側より穂先側が順次高くなるように構成され、しかも、この起立案内体15には所定間隔おきに切れ目(スリット)10aが設けられている。かかる案内体15は、上記のように排出口の下側から突設されているため、上側から垂下されるものに比べて、扱室外後方への穀粒飛散が確実に防止され、扱歯によって掻き落されるささり粒は排塵経路に沿って流れ下方の揺動選別棚上へ速やかに落下することになる。
【0016】
図5及び図6に示す起立案内体15は、図4に示す構成例とは若干異なり、排出口10に対応する穂先側部位からフィードチエン14近くの株元側部位までより幅広く延出させた構成とし、且つ、該起立案内体の上面は扱胴軸芯2aを半径とする略円弧形状とし、若しくは、穂先側ほど稍高くなる円弧形状としている。これにより、排出口からの穀稈の通路幅が略均一となり、穀稈の排出作用がスムースに行え、しかも、略均しい強さで株元側から穂先まで穀稈を接当させることができるので、ささり粒の回収効果を高めることができる。また、起立案内体の排出口への突出幅(A)は、排出口下縁と扱胴外周との間の穀稈通路幅(B)より幅狭くし、案内体上面は穀稈通路幅の略中間位置とすることで、扱室からの穀稈の排出抵抗が大きくなり、穀稈排出時に詰ったりするなどの不具合が生じない。
【0017】
更に、図6に示すように、案内体15に設けたスリット間ピッチP1,P2は、株元側のピッチP2よりも穂先側のピッチP1を密にすることで、穂先側の後方への弾性変位を株元側より容易にし、稈身の細い穂先部分を折ることなくスムースに排出でき、株元側は粗くすることで抵抗を強くしてささり粒の脱落効果を高めるようにしている。なお、この案内体15の株元側は、図7に示すように、スリット15aの代わりに切欠部15bとすることで、接当抵抗のバランス化を図るようにしている。
【0018】
また、図8及び図9に示す実施例は、起立案内体を前後2重に配置した構成としたもので、両者には高低差を設け、前側起立案内体15に対し後側起立案内体16を上方に高くしている。排出口より排出される穀稈は少なくとも2度の接当抵抗、つまり、しごき抵抗を受けることになり、ささり落し効果がより向上することになる。
【0019】
前後の起立案内体15,16間には所定幅の空間部を設けるおくことで、起立案内体の作用にて穀稈より回収した穀粒やわら屑などが前後の起立案内体間に溜まることがなく、空間部を通じて下方の揺動棚上へ速やかに導くことができる。また、前後の起立案内体の弾性力を異ならしめる構成とし、つまり、前側起立案内体15の弾性力は後側起立案内体16のそれよりも弱くして適宜柔軟性をもたせることで、前側起立案内体により後方へ大きく弾性変位させて4番ささり粒を穀稈表面に導き出し、弾性力の強い後側起立案内体でささり粒を叩き落すことが容易にできる。
【0020】
図10及び図11に示す実施例は、排出口部10の下側から上方に向けて突設する起立案内体15に対し、該排出口部の上側から下方に向けて垂下する垂下案内体17を設けた構成としている。起立案内体15と垂下案内体17との両者で排出される穀稈を挟むように上下両面から作用させることができるので、ささり粒の回収が良好に行える。起立案内体15の上端と垂下案内体17の下端とは前後に重複してあり、両作用によって排出される穀稈が上下に揺す振られるようになり、穀稈中に入り込んだ穀粒が落下し易くなる。また、上下案内体15,17ともにスリット(切れ目)15a…,17a…を設けることで、穀稈の排出抵抗が大きくなりすぎたり、穀稈の折れや排ワラ搬送装置への引継ぎ姿勢の乱れを防止することができる。起立案内体15及び垂下案内体17の株元側に傾斜面S1,S2を設け、背面視(図11参照)において株元側に向かうほど開口部を広げたV字型の開放空間を構成することで、穀稈の株元側を確実に扱室より引き出すことができ、穀稈搬送に支障をきたさない。
【0021】
また、起立案内体15と垂下案内体17の左端の開口部幅D1と穀稈排出口10の開口部幅D2をほぼ均しくすることで、穀稈排出量が増加しても後側板からの穀稈の排出に支障がなく整然と排出することができる。起立案内体15は排出口10側で前方位置とし、垂下案内体17は起立案内体15よりも後方配置とすることで、排塵経路部での処理物は起立案内体で阻止しながら扱室内に留めて処理し、起立案内体上面にてささり粒を掻き出し、更に後側の垂下案内体でささり粒を回収することができる。
【0022】
扱室3終端の前記排塵経路部8は、図12〜図14に示すように、数個の濾過孔8a…を開口して設けた排塵ガイド板8bによって形成され、各濾過孔8a…の送塵方向上手側(扱胴回転方向上手側)には処理物の仕切抵抗体18…が突設されている。扱室終端の排塵経路部では、排塵ガイド板に濾過孔を設けることで、扱歯の作用によってこなされ粗選別された穀粒や塵芥などを各濾過孔から下方の揺動選別棚上へ濾過し、扱室や排塵処理室内での過負荷を防止するようにしている。そして、各濾過孔の送塵方向上手側には処理物の仕切抵抗体を設けることで、排塵経路内を持ち回りされる処理物は扱歯と仕切抵抗体との共同作用によって確実に解きほぐされることになり、分離脱粒処理が良好に行え、穀粒や塵芥などの濾過作用を促進することができ、能率の向上が図れる。また、仕切抵抗体18は平面視で傾斜角θを保持すべく形成してあり、仕切抵抗体の先端を櫛歯状18aに形成することによって、この櫛歯18a,18a間を扱歯1が通過するようにオーバラップさせた構成としている。従って、これにより、排塵処理物の扱き作用が高まり、分離脱粒処理作用が効果的に行えることになる。
【0023】
扱室3下方の選別室20には、揺動選別棚21が架設されてあり、扱室受網4からの濾過物及び前記排塵経路8からの濾過物を受け入れてふるい選別する構成としている。
扱室3のフィードチエン14側とは反対側一側には2番処理胴22を内装軸架した2番処理室23を並設し、2番処理胴22の後方にはこれと同一軸芯上において排塵処理胴24を内装軸架した排塵処理室25を構成して設けている。排塵処理胴24は、扱室3の排塵経路8からの処理物を受け入れて後方に搬送しながら処理し、2番処理胴24は、2番還元装置32からの2番処理物を前方に向けて搬送しながら処理する構成としている。前記排塵処理胴24の始端部には排塵経路8に対応する連通口幅にわたって取込スパイラー26を設けて、取り込んだ処理物を速やかに処理室内後方に向けて送塵する構成としている。
【0024】
揺動選別棚21は、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、図2に示すように、選別方向上手側から移送棚21a、チャフシ−ブ21b、ストロ−ラック21cの順に配置し、且つ、前記チャフシ−ブ21bの下方にグレンシ−ブ21dを配置して設けた構成としている。
【0025】
また、揺動選別棚21の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕27と、1番移送螺旋28、2番移送螺旋29と、その上方一側に吸引排塵フアン30を設けて選別室20を構成している。前記1番移送螺旋28からの1番穀物は1番揚穀装置31を介してグレンタンクG内に収容される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】コンバインの側面図
【図2】脱穀装置の側断面図
【図3】同上要部の側断面図
【図4】脱穀装置の背面図
【図5】他の実施例を示す脱穀装置の要部の側断面図
【図6】同上要部の背面図
【図7】脱穀装置の要部の背面図
【図8】更に他の実施例を示す脱穀装置の要部の側断面図
【図9】同上要部の背面図
【図10】脱穀装置の要部の側断面図
【図11】同上要部の背面図
【図12】脱穀装置の要部の破断平面図
【図13】同上要部の切断正面図
【図14】同上要部の側断面図
【符号の説明】
【0027】
1 扱歯 2 扱胴
3 扱室 7 後側板
10 穀稈排出口部 15 穀粒飛散防止用起立案内体
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインやハ−ベスタ等に利用される脱穀装置に関し、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、扱室終端の穀稈排出口部に設けられた穀粒飛散防止用案内体は、上側から下方に向けて垂下させた構成のものが一般的で、排出される穀稈に対し接当抵抗を付与しながらささり落しを行うものである。また、ささり落し手段として、特許文献1に開示されているように、突起付の無端ベルトの回転によって排出される穀稈層中に突入させてささり粒を強制的に掻き落すようにした構成のもが知られている。
【特許文献1】実開平5−41号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前者の案内体を上側から下方に垂下させたものでは、穀稈に対する接当抵抗にムラが生じ、しかも充分な接当抵抗が付与されないまま排出されることになってささり粒の持ち出しが多く効果的なささり落しや回収効果が得られない。また、後者のものでは、装置が大がかりで複雑化し実用化に乏しい。
【0004】
この発明は、上記問題点を解消し、簡単な構成でささり落しを効果的に効率よく行い、4番ロスの低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するために、次の如き技術手段を講じた。すなわち、請求項1記載の本発明は、扱胴(2)を内装軸架せる扱室(3)終端の穀稈排出口部(10)には、排出される穀稈に接当してその排出方向に弾性変位可能な穀粒飛散防止用起立案内体(15)を下側から上方に向けて突出すべく起立状態に付設してあることを特徴とする。
【0006】
扱室(3)内をフィードチエン(14)により挟持移送される穀稈は、扱胴(2)の回転によって脱粒処理され、扱室(3)終端に至って穀稈排出口(10)から排出される。脱穀処理後の穀稈は、扱室の穀稈排出口部(10)から4番受板(12)上を経てなおも後方に移送されるが、この穀稈排出口部から排出される時、穀稈の穂先側部は排出口部(10)の下側から起立する起立案内体(15)によって接当抵抗を受け、該起立案内体(15)を後方に押し開けながら通過する。そして、このときの起立案内体(15)の弾性復元力によって穀稈がばらけられて、ささり粒が下方にふるい落されることになる。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1において、前記穀粒飛散防止用起立案内体(15)は、排出される穀稈の穂先側に対応する部位で、扱胴軸芯(2a)より株元側寄り位置まで及ぶ範囲内に設けてあることを特徴とする。
【0008】
穀粒飛散防止用起立案内体(15)を穀稈の稈身方向に幅広く設けることで、穀稈排出口より排出される穀稈を穂先部から株元側まで幅広く接触させることができ、ささり粒の持ち出しが極めて少なくなり、4番ロスが低減される。
【発明の効果】
【0009】
要するに、請求項1の本発明によれば、扱室(3)終端の穀稈排出口部(10)に設けられた弾性変位可能な穀粒飛散防止用起立案内体(15)は、下側から上方に起立させた構成のものであるため、排出される穀稈には程好い接触抵抗が付与され、穀稈は起立案内体の弾性力に抗して押し開けながら排出されるので、この起立案内体の弾性反発力によって穀稈が叩かればらけられることになり、ささり粒のふるい落しが効果的且つ効率よく行われ、ささり粒の持ち出しが少なくなり、4番ロスの低減を図ることができる。
【0010】
また、請求項2の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、穀稈排出口(10)には穀粒飛散防止用起立案内体(15)を幅広く設けることで、穀稈排出口より排出される穀稈を穂先部から株元側まで幅広く接触させることができ、ささり粒の持ち出しが極めて少なくなり、4番ロスを大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、図1に示すコンバインの構成について述べる。
走行クロ−ラWを具備する車体上には、前部に昇降可能な刈取部Hを、後部に脱穀装置(脱穀部)Dを搭載している。刈取部Hの横側部には運転部Uが設置され、その後方にはグレンタンクGが装備されている。
【0012】
つぎに、脱穀装置Dの構成につき説明する。扱歯1付き扱胴2を内装軸架せる扱室3の前側板5と中側板6との間における下半周部に沿って受網4を張設している。扱室3の終端側における前記中側板6と後側板7との間には、扱室下方の選別室及び排塵処理胴を内装軸架せる排塵処理室の始端に通ずる排塵経路8が設けられている。
【0013】
扱室3始端側の前側板5には穀稈供給口9が開口され、扱室終端の後側板7には穀稈排出口10が開口されている。穀稈供給口9の前側には入口受板11が連接され、排出口10の後方には4番受板12が斜設されている。
【0014】
扱室3の上方部を覆う扱胴カバ−は13は、扱胴軸方向に平行な軸芯回りに揺動開閉可能に構成されている。また、扱室3の扱ぎ口側には、該扱ぎ口に沿って穀稈の株元側を挟持搬送するフイ−ドチエン14とこの上側に対設する挟持レ−ル14aを配設している。この挟持レール14aは扱胴カバー13側に装着して該カバーと共に揺動開閉する構成としている。
【0015】
穀稈排出口部10には、ゴム等の弾性材からなり、穀稈の移送圧によって弾性変位可能な穀粒飛散防止用起立案内体15が下側から上方に向けて起立状に立設されている。この穀粒飛散防止用起立案内体15は、図4に示すように、排出口10から排出される穀稈の穂先側に対応する部位で、扱胴軸芯2aより稍株元側寄り(L)位置まで及ぶ範囲内に設けられ、そして、起立案内体上方への突出度は、株元側より穂先側が順次高くなるように構成され、しかも、この起立案内体15には所定間隔おきに切れ目(スリット)10aが設けられている。かかる案内体15は、上記のように排出口の下側から突設されているため、上側から垂下されるものに比べて、扱室外後方への穀粒飛散が確実に防止され、扱歯によって掻き落されるささり粒は排塵経路に沿って流れ下方の揺動選別棚上へ速やかに落下することになる。
【0016】
図5及び図6に示す起立案内体15は、図4に示す構成例とは若干異なり、排出口10に対応する穂先側部位からフィードチエン14近くの株元側部位までより幅広く延出させた構成とし、且つ、該起立案内体の上面は扱胴軸芯2aを半径とする略円弧形状とし、若しくは、穂先側ほど稍高くなる円弧形状としている。これにより、排出口からの穀稈の通路幅が略均一となり、穀稈の排出作用がスムースに行え、しかも、略均しい強さで株元側から穂先まで穀稈を接当させることができるので、ささり粒の回収効果を高めることができる。また、起立案内体の排出口への突出幅(A)は、排出口下縁と扱胴外周との間の穀稈通路幅(B)より幅狭くし、案内体上面は穀稈通路幅の略中間位置とすることで、扱室からの穀稈の排出抵抗が大きくなり、穀稈排出時に詰ったりするなどの不具合が生じない。
【0017】
更に、図6に示すように、案内体15に設けたスリット間ピッチP1,P2は、株元側のピッチP2よりも穂先側のピッチP1を密にすることで、穂先側の後方への弾性変位を株元側より容易にし、稈身の細い穂先部分を折ることなくスムースに排出でき、株元側は粗くすることで抵抗を強くしてささり粒の脱落効果を高めるようにしている。なお、この案内体15の株元側は、図7に示すように、スリット15aの代わりに切欠部15bとすることで、接当抵抗のバランス化を図るようにしている。
【0018】
また、図8及び図9に示す実施例は、起立案内体を前後2重に配置した構成としたもので、両者には高低差を設け、前側起立案内体15に対し後側起立案内体16を上方に高くしている。排出口より排出される穀稈は少なくとも2度の接当抵抗、つまり、しごき抵抗を受けることになり、ささり落し効果がより向上することになる。
【0019】
前後の起立案内体15,16間には所定幅の空間部を設けるおくことで、起立案内体の作用にて穀稈より回収した穀粒やわら屑などが前後の起立案内体間に溜まることがなく、空間部を通じて下方の揺動棚上へ速やかに導くことができる。また、前後の起立案内体の弾性力を異ならしめる構成とし、つまり、前側起立案内体15の弾性力は後側起立案内体16のそれよりも弱くして適宜柔軟性をもたせることで、前側起立案内体により後方へ大きく弾性変位させて4番ささり粒を穀稈表面に導き出し、弾性力の強い後側起立案内体でささり粒を叩き落すことが容易にできる。
【0020】
図10及び図11に示す実施例は、排出口部10の下側から上方に向けて突設する起立案内体15に対し、該排出口部の上側から下方に向けて垂下する垂下案内体17を設けた構成としている。起立案内体15と垂下案内体17との両者で排出される穀稈を挟むように上下両面から作用させることができるので、ささり粒の回収が良好に行える。起立案内体15の上端と垂下案内体17の下端とは前後に重複してあり、両作用によって排出される穀稈が上下に揺す振られるようになり、穀稈中に入り込んだ穀粒が落下し易くなる。また、上下案内体15,17ともにスリット(切れ目)15a…,17a…を設けることで、穀稈の排出抵抗が大きくなりすぎたり、穀稈の折れや排ワラ搬送装置への引継ぎ姿勢の乱れを防止することができる。起立案内体15及び垂下案内体17の株元側に傾斜面S1,S2を設け、背面視(図11参照)において株元側に向かうほど開口部を広げたV字型の開放空間を構成することで、穀稈の株元側を確実に扱室より引き出すことができ、穀稈搬送に支障をきたさない。
【0021】
また、起立案内体15と垂下案内体17の左端の開口部幅D1と穀稈排出口10の開口部幅D2をほぼ均しくすることで、穀稈排出量が増加しても後側板からの穀稈の排出に支障がなく整然と排出することができる。起立案内体15は排出口10側で前方位置とし、垂下案内体17は起立案内体15よりも後方配置とすることで、排塵経路部での処理物は起立案内体で阻止しながら扱室内に留めて処理し、起立案内体上面にてささり粒を掻き出し、更に後側の垂下案内体でささり粒を回収することができる。
【0022】
扱室3終端の前記排塵経路部8は、図12〜図14に示すように、数個の濾過孔8a…を開口して設けた排塵ガイド板8bによって形成され、各濾過孔8a…の送塵方向上手側(扱胴回転方向上手側)には処理物の仕切抵抗体18…が突設されている。扱室終端の排塵経路部では、排塵ガイド板に濾過孔を設けることで、扱歯の作用によってこなされ粗選別された穀粒や塵芥などを各濾過孔から下方の揺動選別棚上へ濾過し、扱室や排塵処理室内での過負荷を防止するようにしている。そして、各濾過孔の送塵方向上手側には処理物の仕切抵抗体を設けることで、排塵経路内を持ち回りされる処理物は扱歯と仕切抵抗体との共同作用によって確実に解きほぐされることになり、分離脱粒処理が良好に行え、穀粒や塵芥などの濾過作用を促進することができ、能率の向上が図れる。また、仕切抵抗体18は平面視で傾斜角θを保持すべく形成してあり、仕切抵抗体の先端を櫛歯状18aに形成することによって、この櫛歯18a,18a間を扱歯1が通過するようにオーバラップさせた構成としている。従って、これにより、排塵処理物の扱き作用が高まり、分離脱粒処理作用が効果的に行えることになる。
【0023】
扱室3下方の選別室20には、揺動選別棚21が架設されてあり、扱室受網4からの濾過物及び前記排塵経路8からの濾過物を受け入れてふるい選別する構成としている。
扱室3のフィードチエン14側とは反対側一側には2番処理胴22を内装軸架した2番処理室23を並設し、2番処理胴22の後方にはこれと同一軸芯上において排塵処理胴24を内装軸架した排塵処理室25を構成して設けている。排塵処理胴24は、扱室3の排塵経路8からの処理物を受け入れて後方に搬送しながら処理し、2番処理胴24は、2番還元装置32からの2番処理物を前方に向けて搬送しながら処理する構成としている。前記排塵処理胴24の始端部には排塵経路8に対応する連通口幅にわたって取込スパイラー26を設けて、取り込んだ処理物を速やかに処理室内後方に向けて送塵する構成としている。
【0024】
揺動選別棚21は、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、図2に示すように、選別方向上手側から移送棚21a、チャフシ−ブ21b、ストロ−ラック21cの順に配置し、且つ、前記チャフシ−ブ21bの下方にグレンシ−ブ21dを配置して設けた構成としている。
【0025】
また、揺動選別棚21の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕27と、1番移送螺旋28、2番移送螺旋29と、その上方一側に吸引排塵フアン30を設けて選別室20を構成している。前記1番移送螺旋28からの1番穀物は1番揚穀装置31を介してグレンタンクG内に収容される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】コンバインの側面図
【図2】脱穀装置の側断面図
【図3】同上要部の側断面図
【図4】脱穀装置の背面図
【図5】他の実施例を示す脱穀装置の要部の側断面図
【図6】同上要部の背面図
【図7】脱穀装置の要部の背面図
【図8】更に他の実施例を示す脱穀装置の要部の側断面図
【図9】同上要部の背面図
【図10】脱穀装置の要部の側断面図
【図11】同上要部の背面図
【図12】脱穀装置の要部の破断平面図
【図13】同上要部の切断正面図
【図14】同上要部の側断面図
【符号の説明】
【0027】
1 扱歯 2 扱胴
3 扱室 7 後側板
10 穀稈排出口部 15 穀粒飛散防止用起立案内体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(2)を内装軸架せる扱室(3)終端の穀稈排出口部(10)には、排出される穀稈に接当してその排出方向に弾性変位可能な穀粒飛散防止用起立案内体(15)を下側から上方に向けて突出すべく起立状態に付設してあることを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記穀粒飛散防止用起立案内体(15)は、排出される穀稈の穂先側に対応する部位で、扱胴軸芯(2a)より株元側寄り位置まで及ぶ範囲内に設けてあることを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項1】
扱胴(2)を内装軸架せる扱室(3)終端の穀稈排出口部(10)には、排出される穀稈に接当してその排出方向に弾性変位可能な穀粒飛散防止用起立案内体(15)を下側から上方に向けて突出すべく起立状態に付設してあることを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記穀粒飛散防止用起立案内体(15)は、排出される穀稈の穂先側に対応する部位で、扱胴軸芯(2a)より株元側寄り位置まで及ぶ範囲内に設けてあることを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−289099(P2007−289099A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122099(P2006−122099)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]