説明

脱穀装置

【課題】 本発明の目的は、自脱型コンバインの脱穀装置の扱室後端の送塵口の奥部開口縁に、搬送茎稈の穂先や扱き処理中に離脱した切れ藁が引っ掛かって滞留しないようにして詰まり発生による脱穀性能の低下を防止することにある。
【解決手段】 本発明の自脱型コンバインにおける脱穀装置の構成は、下扱き式の扱胴で扱き処理された茎稈を扱室後壁の送塵口から排出する送塵口の排出部付近の構造であて、扱室後部の後壁に形成した送塵口の近傍に、挾持搬送茎稈や扱き処理中に離脱した切れ藁が送塵口の奥部開口縁へ引っ掛かるのを防止する引っ掛かり防止手段を設けた点にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取装置で刈取った茎稈をフィードチェーンで挾持搬送しながら脱穀装置の扱室内で下扱き式の扱胴によって扱き処理し、扱き処理を終えた茎稈を扱室後部の後壁に形成した送塵口から排出するように構成した自脱型コンバインにおける脱穀装置に関し、殊に扱室後端の送塵口から扱き処理を終えた茎稈を排出する送塵口の付近の処理物排出部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の下扱き式の脱穀装置を備えた自脱型コンバインでは、刈取装置で刈取った茎稈を扱室内の扱胴下部に挿入してフィードチェーンで挾持搬送しながら扱き処理をし、扱ぎ処理を終えた茎稈を扱室後端の送塵口から排出するようにしていた(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−235331号公報(図3及び図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したコンバインの脱穀装置においては、扱室にて扱き処理された脱穀物のうち、扱き処理中に茎稈から離脱した切れ藁等の藁屑は送塵口から選別装置に送られるとともに、フィードチェーンで挾持搬送される茎稈も送塵口から排出されるが、比較的長くて腰の弱い茎稈の場合は脱穀中に茎稈が長手方向中間部から引きちぎられやすく、引きちぎられた切れ藁が送塵口の開口の奥部の開口縁に引っ掛かって多量に堆積して詰まりやすい。特に、長い茎稈を扱き処理するときには送塵口の開口縁やその周辺に挾持搬送されている茎稈の穂先が引っ掛かって切れ藁が生じやすく、ときにはフィードチェーンに挾持されている茎稈が引き抜かれ、それが送塵口の奥部開口縁に堆積して詰まることがある。
【0005】
本発明の目的は、自脱型コンバインの脱穀装置の扱室後端の送塵口の開口奥部の開口縁に、挾持搬送茎稈より離脱した切れ藁や挾持搬送中の茎稈の穂先が送塵口の開口奥部の開口縁やその周辺に引っ掛からないようにし、もって引っ掛かりによる藁の堆積で詰まりが生じて脱穀性能が低下するということのないようにすることにある。
具体的には、挾持搬送中の茎稈の穂先を切断することによって、又切れ藁を短くなくように切断することによって送塵口の奥部開口縁に引っ掛からないようにしようとするものである。
又、挾持搬送中の茎稈の穂先側の藁や切れ藁が送塵口の奥部開口縁に引っ掛からないように扱室から扱室後壁後方に案内することによって藁が送塵口奥部の開口縁に引っ掛かるのを防止しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔第1発明の構成〕
請求項1に係る発明(第1発明)の特徴構成は、刈取装置で刈取った茎稈をフィードチェーンで挾持搬送しながら脱穀装置の扱室内で下扱き式の扱胴によって扱き処理し、扱き処理を終えた茎稈を扱室後部の後壁に形成した送塵口から排出するように構成してある自脱型コンバインにおける脱穀装置において、扱室後部の後壁に形成した送塵口の近傍に、扱き処理時に離脱した藁が送塵口の扱胴回転方向下手側の奥部開口縁へ引っ掛かるのを防止する引っ掛かり防止手段を設けた点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
第1発明によれば、脱穀中に扱室後部の後壁に形成した送塵口の扱胴回転方向下手側の奥部開口縁に、フィードチェーンで挾持されている茎稈の穂先や切れ藁が引っ掛かるのを防止する引っ掛かり防止手段を設けたので、挾持搬送茎稈から離脱した切れ藁が生じてもそれが送塵口の開口縁に引っ掛かって藁詰まりが生じるという不都合が少ない。
【0008】
〔発明の効果〕
したがって、第1発明では、作業中に送塵口付近で藁詰まりが生じることが少ないから、選別性能を阻害するという不都合が少なく、作業中に詰まり藁を取り除くという作業も少なくなるから、作業能率を低下させることが少ないだけでなく、詰まりが少ないことによって刈取速度も速くでき、能率よく良好な作業を継続することができるに至ったものである。
【0009】
〔第2発明の構成〕
請求項2に係る発明(第2発明)の特徴構成は、請求項1の発明において、引っ掛かり防止手段は、扱胴の後端部に設けた回転藁切り体と、送塵口の奥部開口縁よりも扱胴回転方向上手側における受網後端部に設けた固定藁切り体とからなる切断装置である点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
第2発明によれば、扱胴の後端部に設けた回転藁切り体と、送塵口の奥部開口縁よりも扱胴回転方向上手側における受網後端部に設けた固定藁切り体とからなる切断装置を設けたことにより、刈取られた茎稈がフィードチェーンで挾持搬送されている扱き処理中に、比較的長い切れ藁が発生しても、切れ藁は送塵口奥部の開口縁に引っ掛かる前に切断されて短くなるので、切れ藁を含む藁屑が送塵口奥部の開口縁に引っ掛かってそれが堆積して詰まりが生じるということが少ない。
【0011】
又、フィードチェーンで挾持されて扱室に挿入される茎稈が長稈の場合、送塵口の開口縁やその周辺に穂先が引っ掛かりやすいが、第2発明では、切断装置によって長稈の穂先側を切断するので、フィードチェーンに挾持されている茎稈が引き抜かれてそれが堆積するという不都合も回避でき、良好に詰まりを防止できる。
したがって、第2発明によれば、詰まりにより扱胴に高負荷が掛って回転が停止したり、扱き処理された脱穀処理物が選別装置側に送られずに選別不良が生じるということも回避でき、能率よく作業を行えるに至ったものである。
【0012】
〔第3発明の構成〕
請求項3に係る発明(第3発明)の特徴構成は、請求項2の発明において、固定藁切り体を構成する固定刃を機体前後方向に一対設け、その間を回転藁切り体が通過して茎稈を切断するように構成した点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0013】
〔作用効果〕
第3発明によれば、一対の固定藁切り体の間を回転藁切り体が通過して茎稈を切断するように構成してあるので、藁切り体の切断刃の切れ味が多少悪くなっても、回転藁切り体による一対の固定藁切り体の間への押し込みにより、稈長の長い挾持茎稈の穂先や切れ藁を切断することが可能であり、長期に亘って良好に藁の切断性能を維持することができ、長期に亘って藁詰まりを少なくして良好な脱穀選別作業を行えるに至ったものである。
【0014】
〔第4発明の構成〕
請求項4に係る発明(第4発明)の特徴構成は、請求項2または3の発明において、扱胴外周に多数設けた扱き歯のうち扱胴後端部に設けた扱き歯を、回転藁切り体に兼用した点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0015】
〔作用効果〕
第4発明によれば、扱き歯を回転藁切り体に兼用してあるので、別途、回転藁切り体を設けなくても藁の切断機能を発揮することができる。
【0016】
〔第5発明の構成〕
請求項5に係る発明(第5発明)の特徴構成は、請求項4の発明において、回転藁切り体を扱胴周方向外周に複数個設けた点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0017】
〔作用効果〕
第5発明によれば、回転藁切り体を扱胴周方向外周に複数個設けたので、複数の回転藁切り体を構成する各扱き歯と一緒に回転している切れ藁がそれぞれ固定藁切り体との協働によって切断されることになるから、一回転に一回纏めて切断される場合に比べて、少しづつ連続的に切断されることになり、切れ藁が多量に発生した場合であっても切断不良が生じ難い。したがって、切れ藁の多い場合であっても良好に切断でき、詰まりが発生することが少ない。
又、長い挾持茎稈が連続的に搬送されてきても複数ある回転藁切り体によって、穂先を順次切断できるので、長稈の存在で穂先が送塵口の開口縁に引っ掛かって詰まるという不都合を生じることが少ない。
【0018】
〔第6発明の構成〕
請求項6に係る発明(第6発明)の特徴構成は、請求項2または3の発明において、回転藁切り体は、扱胴周方向外周に設けた扱き歯とは別の形状のもので構成した点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0019】
〔作用効果〕
第6発明によれば、切断部が鋭利な刃を備える等、切断専用の回転藁切り体を採用することにより、挾持された長稈の穂先や切れ藁を切断するのに適切な切断装置とすることが可能である。又、固定刃が切れ味のよいものである場合は、藁切れがよくて、構造が簡単で長期に使用できる回転刃を採用することができる。
【0020】
〔第7発明の構成〕
請求項7に係る発明(第7発明)の特徴構成は、回転藁切り体を、扱胴後端部における扱胴周方向外周に複数個設けた扱き歯と、扱き歯とは別の形状の回転藁切り体とで構成した点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0021】
〔作用効果〕
第7発明によれば、扱胴周方向外周に個設けた複数の扱き歯によって、切れ藁の切断が扱胴一回転に対して複数回に分散されるので切れ藁が多量に発生した場合であっても一度の多量の切れ藁を切断することがないから、連続的に円滑に切断することができる。又、扱き歯とは別形状の回転藁切り体を備えていることにより、当該回転藁切り体により、扱き歯で切断できずに固定刃に滞留している切れ藁を切断することができるので、確実な切断機能を発揮することができ、扱き処理中にフィードチェーンで挾持搬送されている茎稈の穂先や離脱した切れ藁を良好に切断することができ、これによって扱室後壁の開口縁に藁が引っ掛かって堆積し藁詰まりが生じるという不都合を回避することができる。
【0022】
〔第8発明の構成〕
請求項8に係る発明(第8発明)の特徴構成は、請求項1の発明において、引っ掛かり防止手段は、送塵口の奥部開口縁よりも扱胴回転方向上手側の位置における受網後端部に扱胴回転方向下手側で且つ機体後方側に向かう藁ガイド部材を設けて構成したものであり、その作用効果は次の通りである。
【0023】
〔作用効果〕
第8発明によれば、藁ガイドがない場合、扱室から後方に排出される切れ藁は、扱胴の回転力で扱胴回転方向下手に放出されるので、扱室後端の後壁に開設された送塵口の奥部開口縁に切れ藁が引っ掛かりやすくなるが、送塵口範囲の部分において受網後端部から扱胴回転方向下手側で且つ機体後方側に向かう方向に藁ガイド部材を設けることによって、扱室から送塵口を通して後方に排出される切れ藁は、そのまま扱胴回転方向下手側に放出されず、その前に藁ガイド部材に引っ掛かってこの藁ガイド部材を伝って、扱胴による回転力による放出方向とは異なる藁ガイド部材に沿った後方に放出されるので、切れ藁が送塵口奥部の開口縁に引っ掛かって堆積することが少なくなり、比較的長期に亘って詰まりを少なくした状態で作業を継続することができる利点がある。
【0024】
又、扱き処理されたフィードチェーンで挾持搬送されている茎稈が扱室から送塵口を通って後方に搬送されるときに、扱胴回転力の作用を受けている茎稈が受網から外れた途端に下方に放り出されるということなく、藁ガイド部材に案内されながら送塵口を抜けるので挾持搬送茎稈が送塵口の開口縁やその周辺に引っ掛かって引き抜かれて詰まりが生じるという不都合もなく、挾持搬送茎稈は円滑に後方に搬送される。
【0025】
〔第9発明の構成〕
請求項9に係る発明(第9発明)の特徴構成は、請求項8の発明において、藁ガイド部材を受網に沿って扱胴周方向に複数個設けた点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0026】
〔作用効果〕
第9発明によれば、藁ガイド部材を受け網に沿う扱胴周方向に複数個設けることにより、切れ藁が送塵口奥部の開口縁に引っ掛かって堆積することが少なくなり、比較的長期に亘って詰まりを少なくした状態で作業を継続することができる利点がある。
この場合、藁ガイド部材を、送塵口の奥部開口縁近くにも設けて、扱胴回転力により扱胴回転方向下手側に放出された切れ藁が送塵口の奥部開口縁に引っ掛かるのを回避できる位置に設けることによって、長期に亘って詰まりを回避できることになり、作業性を向上させることができる利点がある。
又、挾持搬送茎稈は、複数の藁ガイド部材に案内されて送塵口を通過して扱室後壁後方に円滑に搬送される。
【0027】
〔第10発明の構成〕
請求項10に係る発明(第10発明)の特徴構成は、請求項1の発明において、引っ掛かり防止手段は、送塵口の奥部開口縁近傍であって、送塵口の奥部開口縁よりも扱胴回転方向上手側の位置における受網後端部に当該受網後端部から扱胴の径方向外方側で且つ送塵口の奥部開口縁よりも機体後方側に向かう藁ガイド板を設けた点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0028】
〔作用効果〕
第10発明によれば、藁ガイド板を送塵口の奥部開口縁よりも扱胴回転方向上手側の位置でのこの奥部開口縁近傍に設けることによって、奥部開口縁に挾持搬送中の茎稈の穂先や切れ藁が引っ掛かることが回避でき、藁詰まりによって、作業を中断させなければならないという不都合が回避できる利点がある。
【0029】
〔第11発明の構成〕
請求項11に係る発明(第11発明)の特徴構成は、送塵口の奥部開口縁よりも扱胴回転方向上手側の位置における受網後端部に、請求項8または9の藁ガイド部材と請求項10の藁ガイド板とを設けた点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0030】
〔作用効果〕
第11発明によれば、藁ガイド部材によって送塵口の奥部開口縁に飛散する切れ藁の量が少なくなるとともに、更に藁ガイド板を設けたことによって、送塵口の奥部開口縁に切れ藁が引っ掛かって詰まりが生じるという不都合を回避することが出来る利点がある。
そして、挾持搬送されている茎稈の中間部及び穂先部が藁ガイド部材や藁ガイド板で案内されるので、送塵口の開口縁に茎稈が引っ掛かることなく、扱室から扱室後壁後方に円滑に案内される。
【0031】
〔第12発明の構成〕
請求項12に係る発明(第12発明)の特徴構成は、送塵口の奥部開口縁よりも扱胴回転方向上手側の位置における受網後端部に、請求項8乃至11の藁ガイド部材や藁ガイド板を設けるとともに、請求項2乃至請求項7の何れかの切断装置を備えた点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0032】
〔作用効果〕
第12発明によれば、藁ガイド部材を設けることによって、送塵口の奥部開口部に放出される切れ藁の量が少なくなるとともに、切断装置を設けたことによって長い切れ藁が切断されるから送塵口の奥部開口縁側に放出されても切断された切れ藁が混入している藁屑が送塵口の奥部開口縁に引っ掛かることが少なく、更に藁ガイド板を設けると送塵口側に放出された藁屑が藁ガイド板に沿って後方に放出され藁屑の排出が速やかに行われるので、詰まりが生じること少なく長期に良好な脱穀作業を行うことができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明の実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。
〔全体の構成〕
図1および図2の1はコンバインに搭載された脱穀装置1を示している。この脱穀装置1は、図示しないクローラ走行装置に支持された機台の左側に搭載してある。脱穀装置1は上部側に扱室A、中間部側に選別装置B及び下部側に回収装置Cを配設して構成してある。扱室Aには、刈取処理された茎稈をフィードチェーン4で挟持搬送しながら扱処理する扱胴5を備え、その下方に扱処理された処理物を漏下させる受網6を備えている。扱胴5は扱室Aの前壁7と後壁8に軸架してある。選別装置Bには、受網6から漏下した処理物を受け止めるグレンパン9、このグレンパン9の後方に順に位置させたチャフシーブ10及びストローラック11、チャフシーブ10の下方に位置するグレンシーブ12を、前後揺動駆動される左右の枠板に架設するとともに、グレンパン9の下方側に唐箕13を設けている。回収部Cには、グレンシーブ12の下方にグレンシーブ12からの漏化物を回収して横一側に横送りする一番物搬送スクリュー14を配設するとともに、グレンシーブ12の上部後端から後方に放出される選別物(二番物)やチャフシーブ10等からの漏化物(二番物)を回収して横一側に横送りする二番物横送り装置としての二番物搬送スクリュー15を配設している。
【0034】
二番物搬送スクリュー15の搬送終端部には、二番物を選別装置Bへ還元するための二番物還元装置16が連設され、この二番物還元装置16によって二番物搬送スクリュー15から選別装置Bへ二番物を還元搬送する還元用搬送経路17が構成されている。図示しない刈取装置で刈取った茎稈を搬送装置で合流搬送して、フィードチェーン4に受継がせ、受継がれた茎稈を扱胴5とその下の受網6との間に挿入してフィードチェーン4で挾持搬送しながら脱穀装置1の扱室A内で下扱き式扱胴5の図2の矢印方向への回転によって扱き処理し、扱き処理を終えた茎稈を扱室A後部の後壁8に形成した送塵口20から排出して後方の図示しない排藁カッターで切断処理されて圃場に放出され、扱き処理された処理物は選別装置Bで選別処理され回収装置Cで回収された穀粒は図示しない穀粒タンクに貯留されるように構成してある。
【0035】
図2は扱室A後端部を示す背面図、図3は扱胴後端部を示す縦断面図である。扱胴5の外周にはボルト締めされた多数の扱き歯21を植設してある。扱胴5は、扱胴軸22をベアリング23を介して開閉自在な可動前壁と可動後壁24とに亘って回転自在に支持してある。可動後壁24は固定の後壁25とは図2のように閉じた状態で壁面が面一になるように合わせてある。
【0036】
扱胴後壁8には扱き処理した藁屑等の処理物やフィードチェーン4で挾持搬送されている茎稈を扱室Aから後方に移送するための開口となる送塵口20を設けてある。この送塵口20のうち、可動後壁24側部分については扱胴5の下端よりも上の位置まで開放してあり、その右側の固定後壁25側部分については、送塵口20の奥部開口縁26をフィードチェーンで挾持搬送されている茎稈の穂先が通過できるように扱胴5のドラム27の右側の位置よりも奥部(図中右側)に位置させてある。
【0037】
扱室Aの後端部には、扱き処理中に引きちぎられた長い切れ藁を切断するための切断装置Dを装備してある。この切断装置Dは扱胴5後端部外周に備えられた回転藁切り体28と受網6の後端に固設された固定藁切り体29とで構成している。
固定藁切り体29は、U字状に形成した一対の鋭利な刃部30を備えた固定刃31からなり、U字状の底部平面部の中央にボルト挿通用の孔を穿設してある。そして、受網6を構成する後端の受網支持枠32に固定刃取付けブラケット33を溶接し、これに穿設したボルト挿通孔に固定藁切り体29の底部に穿設した前記ボルト挿通用の孔を合せてこれらの孔に取付けボルト34を挿通してダブルナット35で締付け固定して固定藁切り体29を取付けてある。固定藁切り体29は背面視で送塵口20の奥部開口縁26より、多少のスペースを空けて、扱胴回転方向上手側に位置させてあり、上記切断装置Dで切断させた切れ藁を後壁8の後方に飛散させやすくしてある。
【0038】
回転藁切り体28は、ドラム27に植設された多数の扱き歯21のうち、後端部に位置する周方向に植設された複数の扱き歯21と回転刃36とから構成されている。回転刃36は、L型材で形成されL型底部をドラム面に取付け位置を前後にずらせた扱き歯21と一緒に固定してあり、背面視で刃部37が回転方向下手側から、扱胴中心から径方向外方に離れるほど回転方向上手側に大きく後退した傾斜状に形成してある。回転刃36の刃部37は固定刃31の刃部30のように鋭利なものでなくてもよい。回転刃35は側面視で二又の固定刃31の中央を通過するように取付けてあり、回転刃36とともに回転藁切り体28を構成する後端の扱き歯21は、二又の固定刃31の間で回転刃36よりも僅かに前寄りに配置してある。後端の複数の扱き歯21を回転藁切り体28として利用しているので、切れ藁の切断が扱胴一回転に対して複数回に分散され、切れ藁が多量に発生した場合であっても一度に多量の切れ藁を切断することがなく、連続的にスムーズに切断することができる。回転藁切り体として本実施例のように扱き歯21と回転刃36とを備えている場合は、扱き歯21はそれに引っ掛かった切れ藁を主に切断することになり、刃部37が傾斜した回転刃36は固定刃31に滞留している切れ藁を主に切断するように機能する。
【0039】
受網6後端の支持枠32には、固定刃31の取付け位置よりも扱胴回転方向上手側に丸棒からなる藁ガイド部材41を備えている。この藁ガイド部材41は、切れ藁が送塵口20の奥部開口縁26に引っ掛かり難くするために、又、受網6から外れた挾持搬送されている茎稈を下方に垂れ下がらないようにするために設けたものである。上記藁ガイド部材41により、挾持搬送される茎稈は受網から後方に搬送されたときに姿勢が乱れて穂先が送塵口の開口縁やその周辺部に引っ掛かって引き抜かれることを抑制する機能と、この藁ガイド部材41に引っ掛かった切れ藁を扱室後方に案内する機能を有するものである。奥部開口縁26の近くに設けた切断装置Dは、挾持搬送された長稈の穂先を切断するとともに、切れ藁を切断することによって藁が奥部開口縁26に引っ掛からないようにしたものである。上記の藁ガイド部材41および切断装置Dの何れも扱室A後部の後壁8に形成した前記送塵口20の近傍に、扱き処理時に藁が送塵口20の扱胴5の回転方向下手側の奥部開口縁26へ引っ掛かるのを防止する引っ掛かり防止手段Eを構成するものである。
【0040】
〔他の実施の形態〕
引っ掛かり防止手段Eとしては、上記藁ガイド部材41を備えずに、切断装置Dだけで構成してもよい。
【0041】
切断装置Dを構成する回転藁切り体28としては、前記回転刃36を備えないで、扱胴5の周端部に設けた扱き歯21を兼用する構成だけでもよい。この場合、回転藁切り体を兼用する扱き歯を上記実施例のように複数個設けるものでもよいし、周方向1個だけ設けるものでもよい。
【0042】
切断装置Dを構成する回転藁切り体28としては、扱胴5に設けた扱き歯21を兼用しないで固定刃36を1個だけにしてもよく、又、固定刃36を周方向に複数個設けるものでもよい。
扱き歯21とは別の形状の回転藁切り体28としては、図3に示すL型の板体の他、鋭利な刃部を備えた切断刃や刃部を備えていない無頭ボルトや丸棒、四角形、六角形等の角棒、V字板など種々な構造のものを採用できる。
【0043】
上記切断装置Dは何れも切れ藁が送塵口20の奥部開口縁26へ引っ掛かるのを防止する引っ掛かり防止手段Eとして機能するものである。
【0044】
図5は別実施例の扱室後端部を示す背面図、図6は背面図、図7は平面図、図8は側面図である。
符号41は丸棒からなる藁ガイド部材で、前記実施例のものと同じ構造である。図では、藁ガイド部材41は3本備えているが、それ以上でも或いは1本でもよい。
【0045】
この実施例は、前述した実施例のように切断装置Dは備えられておらず、扱室Aの後壁8に形成した送塵口20の奥部開口縁26の近傍であって、送塵口20の奥部開口縁26よりも扱胴5の回転方向上手側の位置における受網後端部に当該受網後端部から扱胴5の径方向外方側で且つ送塵口20の奥部開口縁26よりも機体後方側に向かう藁ガイド板42を設けてある。この藁ガイド板42は、藁ガイド棒41とともに、扱き処理時に茎稈から離脱した切れ藁が送塵口20の扱胴回転方向下手側の奥部開口縁26へ引っ掛かるのを防止する引っ掛かり防止手段Eとして機能するものである。
【0046】
扱室Aの後壁8のうち、固定後壁25は前述の実施例の場合よりも大きく切り上げて送塵口20の奥部側の開口を大きくして、全体として送塵口20を開口面積を大きくして、送塵口20から切れ藁などの藁屑を排出しやすくしてある。また、これによってフィードチェーン4で挾持搬送される茎稈が相当長い長稈であってもその穂先が送塵口20の開口縁に引っ掛かりにくくなり、茎稈の抜けがよくなって扱室Aから後壁8の後方に円滑に移動できるようになる。
【0047】
藁ガイド板42は、送塵口20の奥部開口縁26の近傍位置における受網6後端の支持枠32の外面から後方下方に向かう傾斜面43を備え、藁ガイド板42における扱胴回転方向上手側の板端縁44を受網6の支持枠32から扱胴回転方向下手側方向で、且つ機体後方側に向かうように形成してある。
この実施例構造のものによると、受網下端部分から送塵口20後方に排出される切れ藁は送塵口20を通して藁ガイド棒41に沿って扱室Aから後壁8の後方に案内されるとともに、送塵口20の奥部の開口縁26付近で扱室Aから後方に排出されようとしている切れ藁は藁ガイド板42の端縁44や傾斜面43に沿って後方に排出され、奥部開口縁26に引っかかって詰まりが生じるような不都合を回避することができる。
【0048】
上記実施例は、藁ガイド板42を藁ガイド棒41と一緒に設けてあるが、藁ガイド棒41をなくして、藁ガイド42のみを設けてもよい。
【0049】
上記藁ガイド棒41と藁ガイド42に加えて、前記実施例で示した切断装置Dを備えてもよい。この場合は、切断装置Dの固定藁切り体32は、藁ガイド棒41と藁ガイド板42との間に設ける等、少なくとも藁ガイド板41よりも扱胴回転方向上手側に設ければよい。
又、藁ガイド棒41をなくして、藁ガイド板42と切断装置Dだけを設けるようにしてもよい。
【0050】
藁ガイド板42も切断装置Dもなくして、藁ガイド棒41だけを1本乃至複数本設けてもよい。この場合、藁ガイド棒41を図5〜図8に示す送塵口20の形状をした実施例構造の場合において送塵口26奥部の開口縁近くに藁ガイド棒41を設けた場合の当該藁ガイド棒41は藁ガイド板42の代用品となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】脱穀装置を示す縦断側面図
【図2】扱室後端部を示す背面図
【図3】扱胴後端部を示す縦断側面図
【図4】扱胴後端部の一部分解斜視図
【図5】別実施例の扱室後端部を示す背面図
【図6】別実施例の扱室後端部を示す要部背面図
【図7】別実施例の図6のVII矢視を示す平面図
【図8】別実施例の扱室後端部を示す要部平断面図
【図9】別実施例の扱室後端部を示す要部縦断側面図
【図10】別実施例の扱胴後端部の一部分解斜視図
【符号の説明】
【0052】
1 脱穀装置
5 扱胴
6 受網
8 扱室の後壁
20 送塵口
21 扱き歯
26 送塵口奥部の開口縁
28 回転藁切り体
29 固定藁切り体
31 固定刃
41 藁ガイド部材
42 藁ガイド板
A 扱室
D 切断装置
E 引っ掛かり防止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取装置で刈取った茎稈をフィードチェーンで挾持搬送しながら脱穀装置の扱室内で下扱き式の扱胴によって扱き処理し、扱き処理を終えた茎稈を扱室後部の後壁に形成した送塵口から排出するように構成してある自脱型コンバインにおける脱穀装置において、
扱室後部の後壁に形成した前記送塵口の近傍に、搬送茎稈や扱き処理時に離脱した藁が前記送塵口の扱胴回転方向下手側の奥部開口縁へ引っ掛かるのを防止する引っ掛かり防止手段を設けてあることを特徴とする自脱型コンバインにおける脱穀装置。
【請求項2】
前記引っ掛かり防止手段は、前記扱胴の後端部に設けた回転藁切り体と、前記送塵口の奥部開口縁よりも扱胴回転方向上手側における受網後端部に設けた固定藁切り体とからなる切断装置であることを特徴とする請求項1記載の自脱型コンバインにおける脱穀装置。
【請求項3】
前記切断装置は、前記固定藁切り体を構成する固定刃を機体前後方向に一対設け、その間を前記回転藁切り体が通過して茎稈を切断するように構成してあることを特徴とする請求項2記載の自脱型コンバインにおける脱穀装置。
【請求項4】
扱胴外周に多数設けた扱き歯のうち扱胴後端部に設けた扱き歯を、前記回転藁切り体に兼用していることを特徴とする請求項2または3記載の自脱型コンバインにおける脱穀装置。
【請求項5】
前記回転藁切り体を扱胴周方向外周に複数個設けてあることを特徴とする請求項4記載の自脱型コンバインにおける脱穀装置。
【請求項6】
前記回転藁切り体は、扱胴周方向外周に設けた前記扱き歯とは別の形状のもので構成してあることを特徴とする請求項2または3記載の自脱型コンバインにおける脱穀装置。
【請求項7】
請求項6に記載の回転藁切り体を備えていることを特徴とする請求項5記載の自脱型コンバインにおける脱穀装置。
【請求項8】
前記引っ掛かり防止手段は、前記送塵口の奥部開口縁よりも扱胴回転方向上手側の位置における受網後端部に、扱胴回転方向下手側で且つ機体後方側に向かう藁ガイド部材を設けて構成したものであることを特徴とする請求項1記載の自脱型コンバインにおける脱穀装置。
【請求項9】
前記藁ガイド部材は受網に沿って扱胴周方向に複数個設けてあることを特徴とする請求項8記載の自脱型コンバインにおける脱穀装置。
【請求項10】
前記引っ掛かり防止手段は、前記送塵口の奥部開口縁近傍であって、送塵口の奥部開口縁よりも扱胴回転方向上手側の位置における受網後端部に当該受網後端部から扱胴の径方向外方側で且つ前記送塵口の奥部開口縁よりも機体後方側に向かう藁ガイド板を設けてあることを特徴とする請求項1記載の自脱型コンバインにおける脱穀装置。
【請求項11】
請求項10に記載の藁ガイド板を設けてあることを特徴とする請求項8または9記載の自脱型コンバインにおける脱穀装置。
【請求項12】
請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載の切断装置を備えていることを特徴とする請求項8乃至11に記載のいずれか1項に記載の自脱型コンバインにおける脱穀装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−306853(P2007−306853A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139388(P2006−139388)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】