説明

脱穀装置

【課題】従来、扱室の受網から濾過する殆どの処理物は、直接扱室下方の揺動選別棚上に落下させるものであるため、揺動選別に負担がかかり、選別性能の悪化を招く問題がある。
【解決手段】本発明は、扱胴2を内装軸架した扱室3の一側に、扱室受網5からの濾過物を受け入れて後方搬送しながら処理する第1処理胴12を内装軸架した第1処理室13を並設する。第1処理室13の後方には扱室終端の排塵口10からの排塵物を受け入れて後方に送りながら処理する排塵処理胴17を内装軸架した排塵処理室18を設ける。前記第1処理室13及び排塵処理室18の下方には上方からの処理物を受け入れて前方に向けて搬送しながら処理する第2処理胴22を有した第2処理室23を設ける。第2処理室23内には2番還元装置29からの2番処理物をも受け入れて処理する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインやハ−ベスタ等に利用される脱穀装置に関し、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、扱室の終端側一側から後方にわたり、該扱室終端の排塵口からの排塵処理物を受け入れて後方搬送しながら処理する排塵処理室を設け、排塵処理室の下方で且つその前方には、排塵処理室から漏下する処理物と2番還元装置からの2番処理物を受け入れて前方に向けて搬送しながら処理する2番処理室を設けた構成ものがある。
【特許文献1】特開2005−110690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンバインの大型化に伴い脱穀装置の脱穀容量が大きくなり、扱室内でのかぎ又や枝梗などの発生も多くなる。
従来、扱室の受網から濾過する殆どの処理物は、直接扱室下方の揺動選別棚上に落下させるものであるため、揺動選別に負担がかかり、選別性能の悪化を招く問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上述した課題を解決するために、次の如き技術手段を講じた。すなわち、請求項1記載の本発明は、扱胴(2)を内装軸架した扱室(3)の一側に、扱室受網(5)からの濾過物を受け入れて後方搬送しながら処理する第1処理胴(12)を内装軸架した第1処理室(13)を並設し、第1処理室(13)の後方には扱室終端の排塵口(10)からの排塵物を受け入れて後方に送りながら処理する排塵処理胴(17)を内装軸架した排塵処理室(18)を構成して設け、前記第1処理室(13)及び排塵処理室(18)の下方には上方からの処理物を受け入れて前方に向けて搬送しながら処理する第2処理胴(22)を有した第2処理室(23)を設けると共に、この第2処理室(23)内には2番還元装置(29)からの2番処理物を受け入れて処理する構成としてあることを特徴とする。
【0005】
扱室(3)の受網(5)から濾過する脱穀処理物のうち、受網の下壁部から濾過するものは下方の揺動選別棚(30)上に落下し、受網の上壁部から濾過するものは第1処理室(13)内に受け入れられて第1処理胴(12)により後方に向けて搬送しながら処理する。扱室終端の排塵口(10)からの排塵処理物は、排塵処理室(18)の始端部に受け入れられて排塵処理胴(17)の回転によって後方に搬送しながら処理する。また、排塵処理室(18)の受網(19)から濾過する処理物及び第1処理室(13)からの処理物並びに2番還元装置(29)から還元される2番物は、共に第2処理室(23)内に受け入れられ第2処理胴(22)により前方に向けて搬送しながら処理する。
【0006】
請求項2記載の本発明は、請求項1において、第1処理室(13)の処理物還元口(15)は扱室(3)の中側板(7)側に設け、第2処理室(23)の処理物還元口(25)は扱室の前側板(6)側に設けてあることを特徴とする。
【0007】
第1処理室(13)内での処理物は搬送終端の還元口(15)から第2処理室(23)内の途中部に還元して再処理することができ、第2処理室(23)内での処理物は搬送終端の還元口(25)から揺動選別棚(30)の始端側に還元して選別処理することができる。
【0008】
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2において、前記第1処理胴(12)、排塵処理胴(17)及び第2処理胴(22)は、それらの外周に設ける処理歯を不連続の処理歯(11),(16),(21)に構成してあることを特徴とする。
【0009】
各処理胴の処理歯が不連続に構成されているため、充分な脱粒処理によって単粒化が確実に行え、以後の選別処理を効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
要するに、請求項1の本発明によれば、扱室(3)には、第1処理室、排塵処理室、第2処理室を有機的に配置構成することにより、大容量、高能率型の脱穀装置を具現することができ、特に、扱室の受網から濾過する処理物の一部を第1処理室によって更に脱粒処理するものであるため、揺動選別棚上での選別処理に負担が軽減でき、選別性能の向上を図ることができる。
【0011】
また、請求項2の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、第1処理室内での処理物は第2処理室内の途中部に還元して再処理することができ、第2処理室内での処理物は揺動選別棚の始端側に還元して選別処理することができるので、3番飛散が減少し、選別性能がより向上するものとなった。
【0012】
更に、請求項3の本発明によれば、請求項1又は請求項2の発明効果を奏するものでありながら、各処理胴の処理歯を不連続の処理歯としているので、連続する処理歯に比べ、脱粒処理が充分に行え、単粒化が容易となり、以後の選別処理が効果的に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、図1に示すコンバインの構成について述べる。
走行クロ−ラWを具備する車体上には、前部に昇降可能な刈取部Hを、後部に脱穀装置(脱穀機)Dを搭載している。刈取部Hの横側部にはキャビンC付運転部が設置され、その後方にはグレンタンクGが装備されている。
【0014】
つぎに、脱穀装置Dの構成につき説明する。
図2、図3に示す構成例において、扱歯1付き扱胴2を内装軸架せる扱室3の扱ぎ口4側には、穀稈の株元部を挟持移送するフィードチエン9を張設してあり、このフィードチエン9の移送作用に伴って扱室内に供給される穀稈の穂先側部を扱胴2の回転によって脱穀処理する構成としている。
【0015】
扱室始端側の前側板6と終端側中程の中側板7との間には、扱室3の下半周部に沿って受網5が張設されてあり、前記中側板7と扱室終端の後側板8との間には、下方の選別室に通ずる排塵口や後記する排塵処理室への連通路が構成される排塵経路部10が設けられている。
【0016】
扱室3のフィードチエン9側とは反対側一側には、処理歯11付の第1処理胴12を内装軸架した第2処理室13を並設し、第2処理胴12の後方にはこれと同一軸芯上において処理歯16付排塵処理胴17を内装軸架した排塵処理室18を構成して設けている。
【0017】
第1処理胴17は、扱室受網5の上壁側部から濾過する処理物を受け入れて後方に向け搬送しながら処理歯11と処理室受網14とで処理し、搬送終端の還元口15から下方に落下させる構成としている。排塵処理胴17は、扱室3の排塵経路部10からの処理物を受け入れて後方に搬送しながら処理歯16と処理室受網19とによって処理し、単粒は処理室受網19から漏下させ、排出すべきわら屑などはわら屑排出口20から機外に排出する構成としている。
【0018】
第1処理胴12及び排塵処理胴17の下方には、上方からの処理物を受け入れて前方に向けて搬送しながら脱粒処理する処理歯21付第2処理胴22を第2処理室23内に軸架させて設けた構成としている。排塵処理室18の受網19から漏下する処理物及び第1処理室13の第1還元口15から落下する処理物を第2処理胴22の処理歯21によって前方に送りながら無孔の受網24との間で脱粒処理し、この搬送終端の第2還元口25から揺動選別棚30の始端側に落下させて揺動選別処理する構成としている。また、第2処理室23の途中部には2番還元装置29からの2番処理物を受け入れて処理できる構成としている。このように第2処理室23内で処理された処理物は、揺動選別棚30の始端側に還元されるので、3番飛散が減少し、選別性能が向上する。
【0019】
第1処理室13の還元口15は、扱室3の中側板7側に開口して設けられ、第2処理室23の還元口25は、扱室3の前側板6側に開口して設けられている。そして、第1処理胴12、排塵処理胴17、第2処理胴22の各処理歯11,16,21は、全て不連続の処理歯に構成することで、脱粒処理効果を高めるようにしている。
【0020】
なお、第1処理室13の受網14は、図2に示す本例では、穀粒の漏れない無孔としているが、穀粒の漏れる有孔の受網としても良く、また、第2処理室23の受網24は、図2のように全て無孔とする構成であっても良く、第2処理室の始端側より下方のチャフシーブ30bに対応する位置までは無孔とし、移送棚30aに対応する部位では有孔にする構成であっても良い。
【0021】
図4に示す実施例では、第1処理室13の受網14は穀粒の漏れる有孔14aとし、第2処理室23の受網24は、この始端側位置から扱室の中側板7位置までにわたる範囲内24bを無孔とし、扱室の中側板7位置から終端側にかけての範囲内24aを有孔とすることで、排塵処理室18からの濾過物を揺動選別棚30のチャフシーブ30bより前方始端側まで送って移送棚30a上に漏下させて選別処理することができ、選別効果を高めることができる。
【0022】
上記図4に示す実施例において、図5に示すように、第2処理室23の有孔受網24aの目合を、第1処理室13の有孔受網14aの目合よりも大きくすることで、2番物の脱ぷ率が低減し、枝梗の除去が可能となる。また、逆に、受網24aの目合を、受網14aの目合よりも小さくすると、枝梗の除去が確実に行なえる。
【0023】
また、図6に示す実施例は、第1処理室13の受網14を、有孔受網14aとすると共に、この有孔受網14aの目合を前半部より後半部を小さくした構成としている。逆に、前半部の目合を小とし後半部の目合を大とすることもできる。また、この受網14の前半部を無孔とし後半部を有孔とすることもできる。更に、これとは逆に、前半部を有孔とし後半部を無孔とすことも可能である。
【0024】
図7に示す実施例は、扱室3の一側で扱胴2と平行して、扱室受網からの濾過物を受け入れて後方搬送しながら処理する第1処理胴12付第1処理室13を並設し、第1処理室13の後方には扱室終端の排塵口からの排塵物を受け入れて後方に送りながら処理する排塵処理胴17付排塵処理室18を構成して設け、前記第1処理室13及び排塵処理室18の下方に処理物を前方に向けて搬送しながら処理する第2処理胴22を有した第2処理室23を設けると共に、この第2処理室23内には2番還元装置29からの2番処理物を受け入れて処理する構成とし、更に、第1処理室13の処理物還元口15を扱室の中側板7側に設け、第2処理室23の処理物還元口25は扱室の前側板6側に設けた構成とし、また、第1処理胴12、排塵処理胴17及び第2処理胴22の処理歯を不連続の処理歯11,16,21とした構成のものにおいて、第1処理室の受網14を有孔とし、第2処理室23の受網24を無孔24bとし、そして、前記第1処理室13の受網14は、前半部を有孔14aとし、後半部を無孔14bとした構成としている。かかる構成においても枝梗の除去が確実に行なえ、3番飛散が減少し、選別性能が向上する。なお、前記第1処理室13の受網14において、前半部を無孔とし、後半部を有孔とすることもできる。また、第1処理室13の受網14を全て有孔とするものにおいて、前半部の目合を大とし、後半部の目合を小とするか、又は前半部を小、後半部を大にすることもでき、上記同様の効果を奏することができる。
【0025】
また、図2の本例及び図4〜図7に示す実施例において、第1処理胴12の処理歯11先端速度と、第2処理胴22の処理歯21先端速度とは任意に設定変更することができる。例えば、第1処理歯11の先端速度を第2処理歯21の先端速度より遅くしたり、逆に、第1処理歯11の先端速度を第2処理歯21の先端速度より速くしたり、また、両者同一速度に設定することもできる。
【0026】
図8に示す実施例は、扱室3の一側に並設されていて扱室受網からの濾過物を受け入れて後方搬送しながら処理する第1処理胴12付第1処理室13と、第1処理室13の後方に設けられていて扱室終端の排塵口からの排塵物を受け入れて後方に送りながら処理する排塵処理胴17付排塵処理室18と、前記第1処理室13及び排塵処理室18の下方に設けられ上方からの処理物及び2番還元装置29からの2番処理物を受け入れて前方に向けて搬送しながら処理する第2処理胴22付第2処理室23を備え、また、第1処理室13の処理物還元口15を扱室の中側板7側に設け、第2処理室23の処理物還元口25は扱室の前側板6側に設けた構成とし、更に、前記第1処理胴12の処理歯を連続する螺旋処理歯11aとし、排塵処理胴17及び第2処理胴22の処理歯は不連続の処理歯16,21とした構成としている。
【0027】
そして、上記構成のものにおいて、第1処理室の受網14は、全て無孔、全て有孔、或は、前半部を無孔14b(又は有孔)とし、後半部を有孔14a(又は無孔)とし、又は、受網14全て有孔とするものにおいて、前半部の目合を大(又は小)とし、後半部の目合を小(又は大)とすることもできる。また、第2処理室23の受網24は、全て無孔、或は、第2処理室23の始端側大半を無孔24bとし、終端側を有孔24aとすることができる。また、第2処理室23の有孔受網24aの目合は、第1処理室13の有孔受網14aの目合よりも大きくするか、又は小さくすることもできる。
【0028】
揺動選別棚30は、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚30a、チャフシ−ブ30b、ストロ−ラック30cの順に配置し、且つ、前記チャフシ−ブ30bの下方にグレンシ−ブ30dを配置して設けた構成としている。
【0029】
また、揺動選別棚30の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕31、1番移送螺旋32、2番移送螺旋33と、その上方一側に吸引排塵フアン(横断流フアン)34を設けて選別室を構成している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】コンバインの側面図
【図2】脱穀装置の要部の側面図
【図3】脱穀装置の要部の切断正面図
【図4】脱穀装置の要部の側面図
【図5】脱穀装置の要部の側面図
【図6】脱穀装置の要部の側面図
【図7】脱穀装置の要部の側面図
【図8】脱穀装置の要部の側面図
【符号の説明】
【0031】
1 扱歯 2 扱胴
3 扱室 5 扱室受網
6 前側板 7 中側板
8 後側板 10 排塵経路部(排塵口)
11 第1処理歯 12 第2処理胴
13 第1処理室 14 第1処理室受網
15 第1還元口 16 排塵処理歯
17 排塵処理胴 18 排塵処理室
19 排塵処理室受網 21 第2処理歯
22 第2処理胴 23 第2処理室
24 第2処理室受網 25 第2還元口
29 2番還元装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(2)を内装軸架した扱室(3)の一側に、扱室受網(5)からの濾過物を受け入れて後方搬送しながら処理する第1処理胴(12)を内装軸架した第1処理室(13)を並設し、第1処理室(13)の後方には扱室終端の排塵口(10)からの排塵物を受け入れて後方に送りながら処理する排塵処理胴(17)を内装軸架した排塵処理室(18)を構成して設け、前記第1処理室(13)及び排塵処理室(18)の下方には上方からの処理物を受け入れて前方に向けて搬送しながら処理する第2処理胴(22)を有した第2処理室(23)を設けると共に、この第2処理室(23)内には2番還元装置(29)からの2番処理物を受け入れて処理する構成としてあることを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記第1処理室(13)の処理物還元口(15)は扱室(3)の中側板(7)側に設け、第2処理室(23)の処理物還元口(25)は扱室の前側板(6)側に設けてあることを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記第1処理胴(12)、排塵処理胴(17)及び第2処理胴(22)は、それらの外周に設ける処理歯を不連続の処理歯(11),(16),(21)に構成してあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−330217(P2007−330217A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168913(P2006−168913)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】