説明

脱穀装置

【課題】枝梗付着粒の処理精度が低く、全体の脱穀精度および効率が低いという課題がある。
【解決手段】脱穀室11の網15をその母線方向および円周方向においてその目合を変更して構成し、該扱網15の円周方向の前記穀稈供給搬送装置12側の下方受網部40と反穀稈供給搬送装置12側の上方受網部41の夫々を前記穀稈供給搬送装置12の搬送方向の始端側の目合に比し、終端側部分の目合を大きく形成すると共に、前記上方受網部41の始端側部分の目合は前記下方受網部40の終端側部分の目合と略同じ目合に設定したことを特徴とする脱穀装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等の脱穀装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軸装した扱胴の周囲を扱網により包囲して脱穀室を形成し、該脱穀室の一側には穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置を設け、前記脱穀室の下方に唐箕からの送風により風選する風選室を設け、該風選室に往復揺動する揺動選別棚により構成した揺動選別装置を設け、前記揺動選別棚の下方所定位置には一番コンベアを設け、該一番コンベアの後側には二番コンベアを設け、二番コンベアの終端に接続した二番還元装置は前記穀稈供給搬送装置と反対側の扱網の側方に設けた二番処理装置に接続し、該二番処理装置の二番処理胴は前記穀稈供給搬送装置の搬送方向と反対に揺動選別棚の始端部側上方に向けて被処理物を搬送するようにした構成は、公知である(特許文献1参照)。
また、従来、穀稈供給搬送装置の搬送方向に沿って扱網の目合を変更して構成し、穀稈供給搬送装置の搬送方向の始端側に比し、終端側の目合を大きく形成した構成は、公知である(特許文献2参照)。
また、従来、扱胴の回転方向で扱網の目合を変更し、回転方向上手側に比し、下手側の目合を大きく形成した構成は、公知である(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2007−60927号公報
【特許文献2】特許2549652号公報
【特許文献3】特開平10−178873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公知例のうち、特開2007−60927号公報記載のものは、単に、脱穀室の側方に二番処理装置を設けているので、スペース効率は向上しているが、脱穀装置の作業効率を向上させたものではないという課題がある。
前記公知例のうち、特許2549652号公報記載のものは、脱穀室の始端側で単粒化した穀粒を回収し、脱穀室の終端側では藁屑の漏下を促進させるが、脱穀室の始端側で扱胴と持ち回った被処理物の処理効率が低いという課題がある。
前記公知例のうち、特開平10−178873号公報記載のものは、扱胴の回転方向の扱網の目合を変更しているので、脱穀室の始端側で扱胴と持ち回った被処理物が扱網から漏下する効率は高いが、扱網から揺動選別棚に漏下するので、揺動選別棚の負荷が増加するという課題がある。また、扱胴の回転方向下手側の扱網から漏下するのは枝梗付着粒が多く、枝梗の除去がされず、処理精度が低いという課題がある。
本願は、二番処理装置と扱網の構成を工夫して、脱穀処理精度および処理効率を向上させると共に、脱穀および選別の負荷を軽減するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、扱胴10の下部外周に扱網15を配置して脱穀室11を形成し、該脱穀室11の一側には穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置12を設け、前記脱穀室11の下方に唐箕16からの送風により風選する風選室18を設け、該風選室18に往復揺動する揺動選別棚20を設け、該揺動選別棚20の下方所定位置に一番コンベア26を設け、該一番コンベア26の後側に二番コンベア27を設け、該二番コンベア27の終端に接続した二番還元装置33を前記穀稈供給搬送装置12と反対側の脱穀室11の側方に設けた二番処理装置32に接続し、該二番処理装置32の二番処理胴34を前記穀稈供給搬送装置12の搬送方向と反対に揺動選別棚20の始端部側上方に向けて被処理物を搬送する構成とし、前記扱網15をその母線方向および円周方向においてその目合を変更して構成し、該扱網15の円周方向の前記穀稈供給搬送装置12側の下方受網部40と反穀稈供給搬送装置12側の上方受網部41の夫々を前記穀稈供給搬送装置12の搬送方向の始端側の目合に比し、終端側部分の目合を大きく形成すると共に、前記上方受網部41の始端側部分の目合は前記下方受網部40の終端側部分の目合と略同じ目合に設定したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、刈り取られた穀稈は、脱穀室11で回転する扱胴10により脱穀され、脱穀された被処理物は、扱網15から漏下して風選室18内で往復揺動する揺動選別棚20により選別され、穀粒は、揺動選別棚20から落下して一番コンベアに回収され、二番物は二番コンベア27から二番還元装置33を経由して二番処理装置32の二番処理胴34により穀稈供給搬送装置12の搬送方向と反対に揺動選別棚20の始端部側上方に向けて搬送されながら処理されて揺動選別棚20の始端部に再供給され、再び、揺動選別棚20により選別される。
脱穀室11内の始端側では穀粒が多く落下するが、脱穀室11の終端側では藁屑が多くなるので、下方受網部40の下方始端側網部40Aより下方終端側網部40Bの目合は大きく形成し、同様に、上方受網部41の上方始端側網部41Cの目合より上方受網部41の上方終端側網部41Dの目合を大きく形成しているので、藁屑の落下を促進させて、脱穀室11内の負荷を減少させる。
更に、上方受網部41の上方始端側網部41Cの目合は下方受網部40の下方終端側網部40Bの目合と略同じにして、下方始端側網部40Aの目合より大きく形成して、脱穀中の穂先側の特に枝梗付着粒が上方受網部41の目合を通過して二番処理装置32へ移行するのを促進させて、全体の処理効率および処理精度を向上させる。
即ち、扱網15上に落下する脱穀物のうち穀粒は、扱胴10の回転方向上手側に落下し、扱胴10の回転方向下手側には枝梗付着粒や藁屑が落下する傾向にあり、扱網15の上方受網部41の始端側の目合は下方受網部40の終端側の目合と略同じに大きくしているので、扱胴10の回転方向下手側となる扱網15の始端部の大きい目合から被処理物が漏下し、漏下した被処理物は二番処理装置32内に入って処理される。
したがって、扱胴10の回転方向下手側の大きい目合の扱網15から漏下する枝梗付着粒であっても、二番処理装置32で処理されるので、処理精度が向上する。
本発明は、前記下方受網部40は少なくとも下方始端側網部40Aよりも下方終端側網部40Bの目合を大きく形成し、前記上方受網部41の上方始端側網部41Cの目合よりも前記上方受網部41の上方終端側網部41Dの目合を大きく形成すると共に、上方受網部41の上方始端側網部41Cの目合を下方受網部40の下方終端側網部40Bの目合と略同じ目合に設定したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、下方受網部40と上方受網部41のそれぞれにおいて始端側に比し終端側の目合を大きくしているので、脱穀室11内の始端側で穀粒の漏下を促進し、終端側では藁屑の漏下を促進し、始端側と終端側の夫々において、下方受網部40に比し上方受網部41の目合を大きく形成しているので、扱胴10の回転方向下手側の上方受網部41から二番処理装置32への穀粒の通過を促進させる。
本発明は、前記下方始端側網部40Aと下方終端側網部40Bと上方始端側網部41Cと上方終端側網部41Dのうち、前記上方終端側網部41Dの目合を最も大きく設定したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、二番処理装置32の搬送方向の始端部となる上方終端側網部41Dが大きく開口した目合なので、二番処理装置32への被処理物の移行を促進し、二番処理装置32の作用長さ(作用域)を有効利用して、枝梗付着粒から枝梗を除去し、全体の処理効率および処理精度を向上させる。
本発明は、前記二番処理装置32の二番処理胴34の下方にガイド板45を設け、該ガイド板45の先側に被処理物を落下させる落下口46を形成し、前記上方受網部41の上方始端側網部41Cと上方終端側網部41Dとの目合変化位置を前記ガイド板45の終端位置と略一致するように構成としたことを特徴とする脱穀装置としたものであり、二番処理胴34の作用が良好に行われるガイド板45が存在する部分の上方受網部41の目合を大きくして、二番処理装置32への移行を促進することにより、全体の処理効率および処理精度を向上させる。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明では、始端部の扱網15の目合を大きくして二番処理装置32への脱穀物の移行を促進することにより、脱穀処理精度および処理効率を向上させると共に、脱穀および選別の負荷を軽減させることができる。
請求項2の発明では、上記発明の効果に加えて、扱網15の始端側と終端側では、始端側で穀粒の漏下を、終端側では藁屑の漏下を夫々促進させることができ、処理効率および脱穀負荷を軽減でき、また、始端側と終端側の夫々において、扱胴10の回転方向下手側の上方受網部41から二番処理装置32への漏下を促進させることにより、処理精度および処理効率を向上させることができる。
請求項3の発明では、上記発明の効果に加えて、二番処理装置32の処理能力を充分に発揮させることができ、枝梗付着粒からの枝梗除去効率を向上させ、全体の処理効率および処理精度を向上させることができる。
請求項4の発明では、上記発明の効果に加えて、目合の境界を二番処理装置32の作用域に一致させているので、一層、二番処理装置32を有効活用でき、全体の処理効率および処理精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の一実施例をコンバインの例にて図面により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は左右一対のクローラにより走行する走行装置、3は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、4は脱穀装置3の前側に設けた刈取部、5は脱穀装置3の側部に設けたグレンタンク、7はグレンタンク5の前方に設けた操縦部である。
前記脱穀装置3は、上部に扱胴10を略水平に軸装した脱穀室11を設け、脱穀室11の一側には前記刈取部4により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置12の穀稈を挾持搬送する挾扼杆13Aと供給搬送チエン13B(図2)を設けている。14は穀稈供給搬送装置12から引き継いだ脱穀済みの排藁を搬送する排藁搬送装置である。
なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
扱胴10の主として下方側は扱網15により包囲し、扱網15の下方には唐箕16の唐箕ケーシング17を設ける。前記脱穀室11の下方には前記唐箕16の送風により穀粒と異物とを風選し得る風選室18を形成し、風選室18内には唐箕16の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚20により構成した揺動選別装置21を設ける。
【0007】
揺動選別装置21は、その揺動選別棚20の始端部(前端部)を唐箕ケーシング12の上方に位置させて移送棚部22に形成する。移送棚部22の構成は任意であり、移送方向下手側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚部22の上面に突起や凹凸を設けて、揺動選別装置21の移送方向下手側の始端側グレンシーブ23に向けて扱網15からの落下物を移送できればよい。
前記始端側グレンシーブ23は、扱網15より落下した穀粒と異物とを選別するものであり、所定間隔をおいて揺動方向に複数並設する。始端側グレンシーブ23は、薄い平板形状に形成し、移送方向の下手側(後側)が高くなるように傾斜させて設ける。
始端側グレンシーブ23の下方から移送方向の下手側(後側)の揺動選別棚20には終端側グレンシーブ24を複数並設する。終端側グレンシーブ24は任意の構成により前記揺動選別棚20に傾斜角度調節自在に取付ける。なお、始端側グレンシーブ23は終端側グレンシーブ24より間隔を狭くして並設し、藁屑の落下を抑制している。終端側グレンシーブ24の下手側にはストローラック25を設ける。
揺動選別棚20の下方所定位置には一番コンベア26を設け、一番コンベア26の後側には二番コンベア27を設ける。
【0008】
前記脱穀室11の後方の一側(右側)の側部には排塵処理装置30を設ける。排塵処理装置30は、扱胴10の軸心と略平行な排塵処理胴31を軸装して構成する。排塵処理装置30の前側には、二番コンベア27により回収された二番物を処理する二番処理装置32を設ける。
二番処理装置32の二番処理胴34は、排塵処理胴31と同心状に配置する。二番処理装置32の二番処理胴34は、穀稈供給搬送装置12の搬送方向と反対に揺動選別棚20の始端部側上方に向けて被処理物を搬送するように構成し、扱網15の側方に位置している。
二番処理装置32の二番処理胴34の始端部側上方には二番還元装置33の先端を開口させ、二番還元装置33の基部は二番コンベア27の終端に接続している。
前記排塵処理装置30の反対側の側部には吸引排塵ファン35を設ける。36は吸引排塵ファン35のケーシング、37はケーシング36の排風口である。脱穀装置3の後側にはカッター装置38を設ける。カッター装置38は公知の構成であり、一対のカッター刃39を設けている。
【0009】
しかして、前記扱網15は扱胴10の周囲を包囲するように円弧形状に形成し、扱網15の母線方向および円周方向(扱胴10の回転方向)においてその目合を変更して構成する。
即ち、扱網15は、円周方向の手前側の下方受網部40と奥側の上方受網部41との二つの部分で目合を変更するようにし、下方受網部40と上方受網部41の夫々は穀稈供給搬送装置12の搬送方向の始端側に比し、終端側の目合を大きく形成すると共に、上方受網部41の始端側の目合は下方受網部40の終端側の目合と略同じに設定する。
この場合、一例を示すと、下方受網部40の下方始端側網部40Aよりも下方受網部40の下方終端側網部40Bは大きく形成し、同様に、上方受網部41の上方始端側網部41Cよりも上方受網部41の上方終端側網部41Dの目合を大きく形成すると共に、上方受網部41の上方始端側網部41Cの目合は下方受網部40の下方終端側網部40Bの目合と略同じに設定する。
【0010】
実施例では穀稈供給搬送装置12の搬送方向(母線方向)において二段階に目合を変更しているが、扱網15の長さによっては更に複数段階に分けて変更しても良いが、上方受網部41の上方始端側網部41Cの目合と下方受網部40の下方終端側網部40Bの目合とが略同じに設定するように構成する。
脱穀室11内の手前側では穀粒が多く落下するが、脱穀室11の終端側では藁屑が多くなるので、下方受網部40の下方始端側網部40Aの目合よりも下方受網部40の下方終端側網部40Bの目合は大きく形成し、同様に、上方受網部41の上方始端側網部41Cの目合より上方受網部41の上方終端側網部41Dの目合を大きく形成して、藁屑の落下を促進させて、脱穀室11内の負荷を減少させる。
更に、上方受網部41の上方始端側網部41Cの目合は下方受網部40の下方終端側網部40Bの目合と略同じにして、下方始端側網部40Aの目合より大きく形成して、脱穀中の穂先側の特に枝梗付着粒が上方受網部41より二番処理装置32へ移行するのを促進させて、全体の処理効率および処理精度を向上させる。
なお、下方受網部40と上方受網部41とは、実施例では別体に形成しているが、一体に形成しても良い。
43は脱穀室11の落下口、44は落下口43の後方に形成した開口部に設けたガイド体である。
【0011】
また、下方始端側網部40Aと下方終端側網部40Bと上方始端側網部41Cと上方終端側網部41Dでは、上方終端側網部41Dの目合が最も大きくなるように構成する。
二番処理装置32の二番処理胴34は、穀稈供給搬送装置12の搬送方向と反対に揺動選別棚20の始端部側上方から被処理物を落下させるように搬送しているため、二番処理装置32の搬送方向の始端部となる上方終端側網部41Dの目合を大きく形成して、二番処理装置32への被処理物の移行を促進するように構成している。
したがって、二番処理装置32の作用長さ(作用域)を有効利用して、枝梗付着粒から枝梗を除去し、全体の処理効率および処理精度を向上させる。
また、45は二番処理胴34の下方に位置するガイド板、46は二番処理装置32の被処理物を落下させる落下口であるが、上方受網部41の上方始端側網部41Cと上方終端側網部41Dとの目合変化位置Mをガイド板45の終端位置と略一致させる(図5)。
【0012】
即ち、二番処理装置32ではガイド板45がある位置での二番処理胴34の作用が良好に行われるので、ガイド板45が存在する部分の上方受網部41の上方終端側網部41Dとして目合を大きくして二番処理装置32への移行を促進して、全体の処理効率および処理精度を向上させる。
また、落下口46に臨む上方始端側網部41Cの目合は上方終端側網部41Dの目合より小さくして、藁屑が落下口46に入るのを抑制する。
しかして、前記扱網15の上面には穀稈の搬送方向に複数の主仕切板47を設ける。主仕切板47は上方に所定高さを有して起立させて設け、所謂打ち抜き加工で形成したクリンプ網の扱網15上を移動する被処理物の移送に抵抗を与え、濾過性能を向上させる。
主仕切板47は、下方受網部40および上方受網部41に平面視連続して直線状になるように配置して設ける。上方受網部41の終端側の主仕切板47より更に終端側の上方受網部41(上方終端側網部41D)には、補助仕切り板48を設ける。
【0013】
補助仕切り板48は、打ち抜き加工のクリンプ網の扱網15上を移動する被処理物の移送に抵抗を与え、二番処理装置32の始端部への被処理物の漏下を促進して処理性能を向上させ、下方受網部40上に補助仕切り板48を設けないことにより、下方受網部40からの藁屑の落下を抑制する。
即ち、一番コンベア26の上方の始端側グレンシーブ23上に藁屑が落下するのを抑制して、一番コンベア26に藁屑が混入するのを抑制する。
補助仕切り板48は上方受網部41の左右方向の略全幅に渡って前記主仕切板47と略同じ左右幅で設ける。
補助仕切り板48は上方終端側網部41D上を移動する全体の被処理物の移送に抵抗を与えることができ、漏下性能を向上させる。
この場合、補助仕切り板48の高さは、主仕切板47の高さより低く形成すると共に、正面視扱胴10の扱歯49の先端軌跡と重なる高さに構成する。
補助仕切り板48の高さを主仕切板47の高さより低く形成することにより移送抵抗を減少させて、脱穀室11の終端の負荷を減少させ、異音発生を抑制する。
【0014】
補助仕切り板48は、扱胴10を軸装した前板50と後板51との間の中板52より始端側であって、終端側の主仕切板47よりも終端側に寄って設ける。
揺動選別装置21の始端側グレンシーブ23の上方に終端の主仕切板47と補助仕切り板48を設けて、始端側グレンシーブ23上に藁屑が落下するのを抑制する。
即ち、始端側の下方始端側網部40Aおよび上方始端側網部41Cからの被処理物の落下を始端側の主仕切板47により促進して揺動選別棚20の始端部に漏下させることにより始端側グレンシーブ23に移送して、始端側グレンシーブ23からの単粒の回収効率を向上させ、終端側の下方終端側網部40Bおよび上方終端側網部41Dからの被処理物の落下を終端側の主仕切板47および補助仕切り板48により促進して終端側グレンシーブ24上に落下させて選別回収する。
しかして、脱穀室11の上方の上方カバー53の下面には被処理物の移送を調節する送塵ガイド体54を設ける。送塵ガイド体54は側面視前記前後に設けた主仕切板47の前後位置と一致するように、各主仕切板47夫々の上方に位置させて、主仕切板47と相俟って送塵ガイド体54は被処理物の移送に抵抗を与えるように構成すると共に、補助仕切り板48の上方には送塵ガイド体54を設けずに省略して構成する。
そのため、脱穀室11内の始端側では主仕切板47と送塵ガイド体54が作用して被処理物の移送に抵抗を与えて処理精度を向上させ、脱穀室11の終端側では送塵ガイド体54を省略して過負荷になるのを抑制する。
【0015】
(実施例の作用)
刈り取られた穀稈は、脱穀室11で回転する扱胴10により脱穀され、脱穀された被処理物は、扱網15から漏下して風選室18内で往復揺動する揺動選別棚20により選別される。
穀粒は揺動選別棚20から落下して一番コンベアに回収され、二番物は二番コンベア27から二番還元装置33を経由して二番処理装置32の二番処理胴34に還元される。
還元された二番物は、穀稈供給搬送装置12の搬送方向と反対に揺動選別棚20の始端部側上方に向けて搬送されながら二番処理胴34により処理され、二番処理装置32の落下口46から揺動選別棚20の始端部に再供給され、再び、揺動選別棚20により選別される。
【0016】
しかして、扱網15の母線方向において目合を変更して構成しているから、下方受網部40および上方受網部41の何れにおいても脱穀室11の始端側で穀粒の漏下を促進して藁屑の漏下を抑制し、脱穀室11の終端側では藁屑の漏下を促進させる。
しかも、扱網15の円周方向においても目合を変更して構成しているから、脱穀室11の始端部でも、扱網15の上方受網部41では下方受網部40より目合が大きいので枝梗付着粒であっても漏下し、漏下した漏下物は二番処理装置32に供給されて二番処理胴34により再処理されて揺動選別棚20の選別負荷を増大させない。
しかして、下方始端側網部40Aと下方終端側網部40Bと上方始端側網部41Cと上方終端側網部41Dでは、上方終端側網部41Dの目合が最も大きくなるように構成しているから、二番処理装置32の二番処理胴34が、穀稈供給搬送装置12の搬送方向と反対に揺動選別棚20の始端部側上方から被処理物を落下させるように搬送する構成と相俟って、二番処理装置32への被処理物の移行を促進しつつ、二番処理装置32の作用長さ(作用域)を有効利用して、枝梗付着粒から枝梗を除去し、全体の処理効率および処理精度を向上させる。
【0017】
また、上方受網部41の上方始端側網部41Cと上方終端側網部41Dとの目合変化位置をガイド板45の終端位置と略一致させているから、二番処理装置32への扱網15からの漏下物の移行を、ガイド板45が存在する部分の上方受網部41の上方終端側網部41Dを介して合理的に行われ、二番処理装置32への移行を促進して、全体の処理効率および処理精度を向上させる。
しかして、扱網15の上面には穀稈の搬送方向に複数の主仕切板47を設けているから、所謂打ち抜き加工で形成したクリンプ網の扱網15上を移動する被処理物の移送に抵抗を与え、濾過性能を向上させる。
主仕切板47は下方受網部40および上方受網部41に平面視連続して直線状になるように配置しているから、下方受網部40上の被処理物は主仕切板47により抵抗を受けて下方受網部40から上方受網部41に移動しながら漏下する。
【0018】
この場合、上方受網部41の終端側の主仕切板47より更に終端側の上方受網部41(上方終端側網部41D)には、補助仕切り板48を設けているから、補助仕切り板48は上方受網部41上を移動する被処理物の移送に抵抗を与え、二番処理装置32の始端部への被処理物の漏下を促進して処理性能を向上させる。
一方、上方終端側網部41D上には補助仕切り板48を設けていないので、上方終端側網部41D上に多く存在する藁屑の移送に抵抗を与えず、藁屑の排出を促進して脱穀室11内の負荷を軽減させる。
また、上方終端側網部41D上に補助仕切り板48を設けていないので、上方終端側網部41Dから一番コンベア26の上方の始端側グレンシーブ23上に藁屑が落下するのを抑制させ、一番コンベア26に藁屑が混入するのを抑制する作用も期待する。
【0019】
しかして、補助仕切り板48は上方受網部41の左右方向の略全幅に渡って前記主仕切板47と略同じ左右幅で設けているから、補助仕切り板48は上方終端側網部41D上を移動する全体の被処理物の移送に抵抗を与えることができ、漏下性能を向上させる。
この場合、補助仕切り板48の高さは、主仕切板47の高さより低く形成すると共に、正面視扱胴10の扱歯49の先端軌跡と重なる高さに構成しているから、主仕切板47に比し補助仕切り板48の移送抵抗を減少させて藁屑の排出を促進し、脱穀室11の終端の負荷を減少させ、異音発生を抑制する。
また、補助仕切り板48は、扱胴10を軸装した前板50と後板51との間の中板52より始端側であって、終端側の主仕切板47よりも終端よりに設けているから、揺動選別装置21の始端側グレンシーブ23Aの上方に終端の主仕切板47と補助仕切り板48を設けて、始端側グレンシーブ23A上に藁屑が落下するのを抑制する。
【0020】
即ち、穀粒の多く存在する脱穀室11の始端側の下方始端側網部40Aおよび上方始端側網部41Cからの被処理物の落下を始端側の主仕切板47により促進して揺動選別棚20の始端部に漏下させる。このことにより穀粒を始端側グレンシーブ23Aに移送し、始端側グレンシーブ23Aからの単粒の回収効率を向上させる。
また、終端側の主仕切板47および補助仕切り板48により下方終端側網部40Bおよび上方終端側網部41Dからの被処理物の落下を促進し、終端側グレンシーブ24上に落下させて選別回収する。
【0021】
しかして、脱穀室11の上方の上方カバー53の下面には被処理物の移送を調節する送塵ガイド体54を設け、送塵ガイド体54は側面視前記前後に設けた主仕切板47の前後位置と一致させているから、主仕切板47と相俟って送塵ガイド体54は被処理物の移送に抵抗を与える。
そして、補助仕切り板48の上方には送塵ガイド体54を設けずに省略しているので、脱穀室11内の始端側では主仕切板47と送塵ガイド体54が作用して被処理物の移送に抵抗を与えて処理精度を向上させ、脱穀室11の終端側では送塵ガイド体54を省略して過負荷になるのを抑制する。
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】脱穀装置の側面図。
【図3】同平面図。
【図4】同正面図。
【図5】同平面図。
【図6】脱穀室の側面図および扱網の展開状態図。
【図7】扱網の展開状態図。
【符号の説明】
【0023】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取部、5…グレンタンク、7…操縦部、10…扱胴、11…脱穀室、12…穀稈供給搬送装置、13A…挾扼杆、13B…供給搬送チエン、14…排藁搬送装置、15…扱網、16…唐箕、17…唐箕ケーシング、18…風選室、20…揺動選別棚、21…揺動選別装置、22…移送棚部、23…始端側グレンシーブ、24…終端側グレンシーブ、25…ストローラック、26…一番コンベア、27…二番コンベア、30…排塵処理装置、31…処理胴、32…二番処理装置、33…二番還元装置、35…吸引排塵ファン、36…ケーシング、38…カッター装置、39…カッター刃、40…下方受網部、41…上方受網部、43…排出口、44…ガイド体、45…ガイド板、46…落下口、47…主仕切板、48…補助仕切り板、49…扱歯、50…前板、51…後板、52…中板、53…上方カバー、54…送塵ガイド体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(10)の下部外周に扱網(15)を配置して脱穀室(11)を形成し、該脱穀室(11)の一側には穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置(12)を設け、前記脱穀室(11)の下方に唐箕(16)からの送風により風選する風選室(18)を設け、該風選室(18)に往復揺動する揺動選別棚(20)を設け、該揺動選別棚(20)の下方所定位置に一番コンベア(26)を設け、該一番コンベア(26)の後側に二番コンベア(27)を設け、該二番コンベア(27)の終端に接続した二番還元装置(33)を前記穀稈供給搬送装置(12)と反対側の脱穀室(11)の側方に設けた二番処理装置(32)に接続し、該二番処理装置(32)の二番処理胴(34)を前記穀稈供給搬送装置(12)の搬送方向と反対に揺動選別棚(20)の始端部側上方に向けて被処理物を搬送する構成とし、前記扱網(15)をその母線方向および円周方向においてその目合を変更して構成し、該扱網(15)の円周方向の前記穀稈供給搬送装置(12)側の下方受網部(40)と反穀稈供給搬送装置(12)側の上方受網部(41)の夫々を前記穀稈供給搬送装置(12)の搬送方向の始端側の目合に比し、終端側部分の目合を大きく形成すると共に、前記上方受網部(41)の始端側部分の目合は前記下方受網部(40)の終端側部分の目合と略同じ目合に設定したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
請求項1において、前記下方受網部(40)は少なくとも下方始端側網部(40A)よりも下方終端側網部(40B)の目合を大きく形成し、前記上方受網部(41)の上方始端側網部(41C)の目合よりも前記上方受網部(41)の上方終端側網部(41D)の目合を大きく形成すると共に、上方受網部(41)の上方始端側網部(41C)の目合を下方受網部(40)の下方終端側網部(40B)の目合と略同じ目合に設定したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項3】
請求項2において、前記下方始端側網部(40A)と下方終端側網部(40B)と上方始端側網部(41C)と上方終端側網部(41D)のうち、前記上方終端側網部(41D)の目合を最も大きく設定したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項4】
請求項3において、前記二番処理装置(32)の二番処理胴(34)の下方にガイド板(45)を設け、該ガイド板(45)の先側に被処理物を落下させる落下口(46)を形成し、前記上方受網部(41)の上方始端側網部(41C)と上方終端側網部(41D)との目合変化位置を前記ガイド板(45)の終端位置と略一致するように構成としたことを特徴とする脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−72160(P2009−72160A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246328(P2007−246328)
【出願日】平成19年9月23日(2007.9.23)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】