説明

脱穀装置

【課題】排塵処理室から排出される藁くずなどの被処理物の排出量に応じて、円滑に被処理物の排出を行うことができる脱穀装置を提供すること。
【解決手段】穀稈から穀粒を分離するための扱胴69を軸架した扱室66の後方に扱胴69と平行する方向に排塵処理胴71を軸架した排塵処理室68を設け、高負荷がかかったときの排塵調節が容易に行え排塵排出量の調整を容易にするために扱室66の天井部内側に被処理物を排塵処理室68側に強制的に誘導する送塵板72を複数個並列配置し、該全ての送塵板72の被処理物誘導方向を同時に手動で変更可能な操作部材76を設け、送塵播72が被処理物の移送を促進する方向に向けられた場合にはシャッター78を開放する連繋手段を設けた脱穀装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に搭載される脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは穀稈の刈取装置と、脱穀装置と、脱穀後一時的に貯留するグレンタンクと、グレンタンクに貯留されている穀粒を排出するオーガなどから構成される。
脱穀装置の主脱穀部である扱室には刈取装置で刈り取った穀稈が挿入され、穀稈は扱室に軸架された扱胴の表面に多数設けられた扱歯と扱網との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁くず)は扱網を通過して、選別室の揺動棚で受け止められ、二番穀粒(二番物という場合がある)や藁屑などを分離して穀粒のみをグレンタンクに搬送する。
【0003】
二番穀粒は扱室の側方に設けられた二番処理室に送られ二番処理胴により穀粒、枝梗粒などに分離され、再び揺動棚に落下して比重選別や送風選別されて穀粒、藁屑などに分離される。扱室で発生した藁くずなど短尺のものは排塵処理室に搬送され、排塵処理胴により処理される。
【0004】
脱穀装置の中で最初に穀稈が挿入される扱室においては、被処理物が搬送されながら扱胴が回転することで穀稈の大部分が脱穀される。そして、扱室から落下する被処理物は、選別室において、上下前後方向に揺動する揺動棚上を移動しながら、後方のシーブで唐箕からの送風を受けて風力選別される。
【0005】
選別室においては、揺動棚上を移動してきた被処理物や扱室から落下する被処理物を濾過選別し、枝梗粒や穂切れ粒、稈切れ粒などと単粒とを分別して枝梗粒や穂切れ粒、稈切れ粒のみ二番処理室に送り、単粒はグレンタンクへと送る。また、二番処理室で処理されて穀粒をほとんど含まない被処理物は排塵処理室に送られた後、裁断されて機体外部へ排出される。
【特許文献1】特開2003−61448号公報
【特許文献2】特開平9−187159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の脱穀装置の構成によれば、排塵処理室から排出される藁くずなどの排出の円滑化を図り、穀粒を機体外部に排出しないように排塵処理室の終端部を後側に向けてほぼ全面開口して排塵処理室により処理した後の排塵などを直接機体外部に排出する排塵出口を設けている。
【0007】
特許文献2記載の脱穀装置の構成によれば、機体の方向転換時に不当に揺動棚終端から被処理物が機体外部に排出されないように、揺動棚終端部の開口部を開閉するシャッタを設け、機体の方向転換時に不当に揺動棚終端から被処理物が機体外部に排出されないようにシャッタを閉じるようにしている。
【0008】
しかし、扱室から排塵処理室へ送られる被処理物が多くなり、排塵処理室から揺動棚上へ漏下および排出される被処理物量が増えた状態で、揺動棚終端部のシャッタを閉じると、多量の藁屑によって選別が阻害され、選別不良や選別棚上での詰まりが発生しやすくなってしまう問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は次の解決手段により解決できる。
即ち、扱胴(69)を軸架した扱室(66)の後方に、扱胴(69)と平行する方向に排塵処理胴(71)を軸架した排塵処理室(68)を備えた脱穀装置において、扱室(66)の天井部内側に、該扱室(66)内の被処理物を後方へ移送誘導して排塵処理室(68)側に案内する送塵板(72)を複数個並列配置し、全ての送塵板(72)を被処理物の移送を促進する側と移送に抵抗を掛ける側とに手動で姿勢変更可能な操作部材(76)を設け、排塵処理室(68)後端の排出口部に、該排出口部を脱穀装置の外部へ向けて開閉するシャッター(78)を設け、前記操作部材(76)の操作によって送塵板(72)が移送促進側に姿勢変更された場合に前記シャッター(78)を開放させる連繋手段を設けたことを特徴とする脱穀装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作部材76の操作により並列配置される複数の送塵板72が移送促進側に姿勢変更されると、シャッター78が開放されて排塵処理室68内の藁屑が後端の排出口部から外部へ排出され、揺動棚上へ落ちる藁屑の量が減って選別不良の発生や揺動棚上での詰まりの発生を防止することができる。また、送塵板72が移送に抵抗を掛ける側に姿勢変更されると、シャッター78が閉鎖されて排塵処理室68から穀粒が外部へ排出されてしまうことを防止でき、収穫損失の発生を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1には本発明の実施の形態の穀類の収穫作業を行うコンバインの左側面図を示し、図2には図1のコンバイン(操縦室枠体を省いて図示)の平面図を示し、図3には図1のコンバインの脱穀装置の左側面一部断面図を示し、図4には図1のコンバインの脱穀装置の一部切り欠き平面図を示し、図5には図1のコンバインの脱穀装置の背面図を示す。本明細書ではコンバイン1の前進方向を前、後進方向を後、前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右という。
【0012】
図1ないし図5に示すコンバイン1の走行フレーム2の下部には、ゴムなどの可撓性材料を素材として無端帯状に成型した左右一対のクローラ4を持ち、乾田はもちろんのこと、湿田においてもクローラ4が若干沈下するだけで自由に走行できる構成の走行装置3を備え、走行フレーム2の前部には刈取装置6を搭載し、走行フレーム2の上部にはエンジン(図示せず)、脱穀装置15、操縦席20およびグレンタンク30を搭載する。
【0013】
刈取装置6は、図示しない刈取昇降シリンダの伸縮作用により刈取装置6全体を昇降して、圃場に植生する穀稈を所定の高さで刈取りができる構成としている。刈取装置6の前端下部に分草具7を、その背後に傾斜状にした穀稈引き起こし装置8を、その後方底部には刈刃(図示せず)を配置している。刈刃と脱穀装置15のフィードチェン14の始端部との間に、図示しない前部搬送装置、扱深さ調節装置、供給搬送装置などを順次穀稈の受継搬送と扱深さ調節とができるように配置している。
【0014】
コンバイン1の刈取装置6の作動は次のように行われる。まず、エンジンを始動して変速用、操向用などの操作レバー(図示せず)をコンバイン1が前進するように操作し、刈取・脱穀クラッチ(図示せず)を入り操作して機体の回転各部を伝動しながら、走行フレーム2を前進走行させると、刈取、脱穀作業が開始される。圃場に植立する穀稈は、刈取装置6の前端下部にある分草具7によって分草作用を受け、次いで穀稈引き起こし装置8の引起し作用によって倒伏状態にあれば直立状態に引起こされ、穀稈の株元が刈刃に達して刈取られ、前部搬送装置に掻込まれて後方に搬送され、扱深さ調節装置、供給搬送装置に受け継がれて順次連続状態で後部上方に搬送される。
【0015】
穀稈は供給搬送装置からフィードチェン14の始端部に受け継がれ、脱穀装置15に供給される。脱穀装置15は、上側に扱胴69を軸架した扱室66を配置し、扱室66の下側に選別室50を一体的に設け、供給された刈取穀稈を脱穀、選別する。
【0016】
脱穀装置15に供給された穀稈は、後で詳細に説明するが、主脱穀部である扱室66に挿入され、扱室66に軸架され回転する扱胴69の多数の扱歯69aと、フィードチェン14による移送と、扱網74との相互作用により脱穀され、被処理物(穀粒や藁くず)は脱穀装置15内の選別部の揺動棚51で受け止められ、上下前後方向に揺動する揺動棚51上を寄せ板88で揺動棚51の幅方向に均一な層厚になるように拡散されて後方へ送られながら、唐箕79のファン79aからの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒はシーブ53および選別網63から漏下して、一番棚板64上を流下し、一番螺旋65aから、搬送螺旋65b(図5)を内蔵している一番揚穀筒65を経てグレンタンク30へ搬送され、グレンタンク30に一時貯留される。
【0017】
脱穀装置15の扱室66の終端に到達した脱穀された残りの穀稈で長尺のままのものは、排藁チェーン80および図示しない排藁穂先チェーンに挟持されて搬送され、脱穀装置15の後部の排藁処理室95の藁用カッター81a、81b(図3、図4)に投入された後、切断され、圃場に放出される。
【0018】
グレンタンク30内の底部に穀粒移送用のグレンタンク螺旋(図示せず)を設け、グレンタンク螺旋を駆動する螺旋駆動軸(図示せず)に縦オーガ18および横オーガ19からなる排出オーガを連接し、グレンタンク30内に貯留した穀粒を排出オーガ排出口19aからコンバイン1の外部に排出する。グレンタンク螺旋、縦オーガ螺旋(図示せず)および横オーガ螺旋(図示せず)は、エンジンの動力の伝動を受けて回転駆動され、それぞれの螺旋羽根のスクリュウコンベヤ作用により貯留穀粒を搬送する。
【0019】
刈取装置6で刈り取った穀稈は刈取装置6に装着された穀稈搬送、調節装置で扱深さが調節され、脱穀装置15の主脱穀部である扱室66内に挿入される。扱室66に軸架された扱胴69は、その表面に多数の扱歯69aが設けられており、エンジンからの動力が扱胴・処理胴入力ギアケース25内の伝動機構(詳細は後述)を経由して扱胴69の回転軸69bに伝達され、矢印B方向(図4)に回転する。扱室66に挿入された穀粒の付いた穀稈は、移動するフィードチェン14とフィードチェン挟扼杆12(図3)との間に挟扼され、図3、図4の矢印A方向に移送されながら、矢印B方向に回転する扱胴69の扱歯69aと扱網74との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁くず)は扱網74を通過して、揺動棚51で受け止められる。
【0020】
また、揺動棚51は揺動棚駆動機構の作動により上下前後方向に揺動するので、被処理物は矢印D方向(図3)に移動しながら、移送棚52上に漏下した比重の重い穀粒は選別網63を矢印E方向に通過し、一番棚板64で集積され、一番螺旋65aから一番揚穀筒65を経てグレンタンク30へ搬送される。グレンタンク30に貯留された穀粒は、オーガ18、19を経由してコンバイン1の外部へ搬送される。
【0021】
図3、図4などに示すように本実施例の脱穀装置15は扱室66内の扱胴69の軸方向と並列して回転軸を有する排塵処理胴71を有する排塵処理室68を備えている。排塵処理室68は扱室66の後部壁66aで仕切られて、扱室66の後方の右側寄りに配置されている。前記排塵処理胴71は扱胴・処理胴入力ギアケース25からシャフト40及びギアケース41を介して伝動される動力により駆動する。
【0022】
図6に図1のコンバインの脱穀装置の扱室と排塵処理室天井部ケーシングを示す平面図(図6(a))と側面図(図6(b))を示し、図7にシャッターを開放した状態の脱穀装置の背面図(図7(a))とシャッターを閉じた状態の脱穀装置の背面図(図7(b))を示す。
扱胴69は背面視で反時計回りに回転するので、扱室66の右側壁66bの終端部で藁屑が右後方に排出されるように藁屑を誘導する送塵板72を複数個並列配置して扱室66の天井壁66cの裏面側に設ける。
【0023】
送塵板72を複数個設ける理由は、藁屑発生が多くなると扱室66内で騒音が発生し、多量の藁屑により扱室66に高負荷が掛かったときの排塵調節がし難くなることがあるので、これを防いで排塵処理室68に多くなった排塵量を速やかに送り出すためである。
【0024】
並列配置された各送塵板72は、その右側端部よりの中間部に天井壁66cに支持される揺動支点72aを設けている。また各送塵板72の右側端部は共通する1本のロッド73に支点73aで回動自在に連結されている。そして最前列の送塵板72に排塵調節レバー76の先端を固着し、該排塵調節レバー76の他端76aを手動操作するか、または該レバー76の中間部にワイヤ77を連結しておき、該ワイヤ77を押し引きすることでレバー76を矢印G1方向に動かすと、すべての送塵板72が同時に矢印G2方向に動き、排藁を排塵処理室68側に向けて誘導する構成である。
【0025】
このとき図7(a)の脱穀装置15の背面図に示すように、ワイヤ77又はレバー76の動きに連動してモータ75を駆動させて排塵処理室68の後端排出部を閉じるシャッター78を大きく開き、藁屑を排塵処理室68から排出しやすくなっている。このような構成で高負荷がかかったときの排塵調節が容易に行え排塵排出量の調整が容易となる。
【0026】
反対に藁屑が多くない場合は図6(a)に示すワイヤ77又はレバー76を矢印H1方向に動かすと、すべての送塵板72が支点72aを中心として同時に矢印H2方向に動き、また図7(b)の脱穀装置の背面図に示すように、シャッター78が閉まる方向に動き、排塵処理室68の排塵出口部(排出口部)を閉じる。
【0027】
また、手動又はワイヤ77の動きに連動するレバー76にリミットスイッチ82を設けておき、リミットスイッチ82の「入り」により作動するモータ75とレバー76を連動させておくと、前記の送塵板72の揺動とシャッター78の駆動制御が容易に行える。これを連繋手段と称する。
【0028】
図8の排塵調節レバー76部分の拡大平面図に示すように、レバー76に直交する方向に板材83を設ける。該板材83の上部に形成した凹部に、レバー76を係合させて該レバー76の調節位置を固定することができ、この凹部は多数設けており、レバー76の位置を多段階調節できる。なお、図8には排塵調節レバー76を矢印G1方向に動かすときのレバー76の移動幅は標準位置とそれ以外の位置(=標準位置からずれた位置)が区別できるようにリミットスイッチ82を配置した場合の構成例を示す。
【0029】
図5の背面図に示すように、排塵処理胴71のケーシング(排塵処理室68の外枠体)68aの上半分は円筒状とし、該ケーシング68aの下半分は網状とする。また、図4に示すように扱室後部壁66aの出口開口部に扱室66からの排塵処理物を送ることができるように、扱胴69の終端部には後方の排塵処理室68に排塵処理物を誘導する羽根69cを設ける。また扱室66から排塵処理室68へのつなぎ部には複数のガイド84(図4)を設ける。
【0030】
該ガイド84は扱胴69の後端部の外周に均等な間隔で複数個設置し、扱室66からの排塵処理物を排塵処理室68へ導くように扱胴69の回転軸69bの軸方向に対して傾斜させて配置しているので、藁屑などをスムーズに排塵処理室68内に送ることができる。
【0031】
また、排塵処理胴71の終端部は横断流ファン91の空気吸引口の側方まで伸びているので、排塵処理胴71の後端から後方に排出される藁屑が揺動棚51に載ることなく、横断流ファン91により吸引されて外部に排出されるので被処理物の選別性が従来より良くなる。
【0032】
さらに、排塵処理胴71の終端部に、その外周に均等な間隔で複数個の羽根71b(図4参照)を設けることで藁屑を横断流ファン91により外部に排出するダクト94に誘導する。こうして、排塵処理室68から排出した藁屑の選別性が従来より良くなる。
【0033】
また、、排塵処理胴71の終端部の外周に設けた複数個の羽根71bの下方であって、ストローラック62の上方にはジャンプラック96を複数列設けているので、ジャンプラック96により揺動棚51に藁屑が落下しなくなるので、風の流れを妨げず、被処理物の選別性が従来より向上する。
【0034】
穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁くず)は扱網74を通過して、揺動棚51で受け止められるが、揺動棚51は扱室66の扱網74の下方に配置した複数個の三角形状の選別板52aを備えた移送棚52とその後方に配置した上方のシーブ53とその下方の選別網63と最後端部に配置したストローラック62などから構成されている。
【0035】
扱網74の前方の約1/3の領域で漏下する脱穀初期に脱粒した穀粒は単粒であり夾雑物も含んでいないので図3などに示すシーブ53上で粗選別する必要が無く、直接選別網63で唐箕79からの送風により風選することができ、シーブ53の負荷を軽くし、能率的な脱穀が可能となる。唐箕79からは、送風流路に風割部105を設け、該風割部105で送風を分け、分割された上下で風量を調整している。
【0036】
揺動棚51の上の被処理物のうち軽量のものは、揺動棚51の揺動作用と唐箕79のファン79aによる送風に吹き飛ばされて、移送棚52からシーブ53に向けて矢印D方向に移動し、ストローラック62の上で大きさの小さい二番穀粒は矢印G方向に漏下して二番棚板85上を通り、二番螺旋86の設置部分に集められ、二番還元筒87へ搬送される。さらに軽いものは横断流ファン91で矢印F方向の機外に排出される。
【0037】
揺動棚51に取り付けたストローラック62は、揺動棚51の後部側に、その前側の基部が取り付けられ、ストローラック62の後部側を自由端とする構成である。そして、ストローラック62から漏下した被処理物は二番棚板85側に集められ、二番螺旋86で二番還元筒87へ搬送される(図3)。
【0038】
図9(a)に示すように、二番螺旋86の後方の二番棚板85の壁面に接する揺動棚51のシール部材97を真下に向けるより後方にずらして取り付けると、シール部材97を後方向に向けて取り付けることができる。このようにすると2番棚板85の上端部よりも揺動棚51へのシール部材97の取付位置が後方にあることとなり、2番棚板85の上端部とシール部材との間に隙間が無いように構成できる。
【0039】
従来は図9(b)に示すように、揺動棚51のシール部材97を真下に向けて取り付けていたので、揺動棚51の揺動時にシール部材97と二番棚板85の上端部との間に隙間ができて、シール部材97が浮いてしまうことがあった。これは揺動棚51がクランク軸51aを中心とする揺動駆動に応じて揺動する場合に、揺動棚51の揺動軸の近くにあるため、揺動棚51の動きが揺動というよりほぼ回動であるので二番棚板85の上端の位置とシール部材97の間に隙間ができるためであり、この隙間から二番物が外部に漏れ出るおそれがあった。
【0040】
しかし図9(a)に示すように、二番螺旋86の後方の二番棚板85の壁面に接する揺動棚51のシール部材97を後方にずらして押け付ける折れ曲がり状の補助板98(丸枠内参照)を用いると、シール部材97を二番棚板85の壁面に押し付けるように後方向きに取り付けることができるので、二番棚板85がどの位置にあっても前記シール部材97との間に隙間ができないので被処理物が漏れないようになる。
【0041】
また、参考例では、図10(a)の側面図と図10(b)の正面図に示すように排塵処理胴71の前方で、該排塵処理胴71の回転軸と同軸上に二番処理胴70を配置した脱穀装置を備えている。
【0042】
この場合の脱穀装置は、扱室66の被処理物の搬送方向終端部に到達した被処理物の中で、藁くずなど短尺のものは、扱室66と排塵処理室68の図示しない連通口から排塵処理室68に入り、排塵処理室68では回転する排塵処理胴71の螺旋71aにより矢印K方向に搬送されながら処理される。
【0043】
排塵処理室68に入った少量の穀粒を含む藁くずを主体とする被処理物の中の漏下物(穀粒)は受け網(図示せず)から揺動棚51上に漏下し、ストローラック62に誘導されて二番棚板85から二番揚穀筒87を経由して二番処理室67に送られて、二番処理胴70の処理歯70aで処理される。なお、同軸上にある二番処理胴70と排塵処理胴71の駆動はエンジンから駆動力をプーリを介して行われる。
【0044】
図10(a)の脱穀装置の左側面図に示すように、脱穀装置15の後部に横断流ファン91を設け、排塵処理室68を含む脱穀装置15内で発生する排塵のうち、比重の軽い藁くず、枝梗および塵埃を含む空気を横断流ファン91の回転による送風で吸引し、横断流ファン出口から矢印L方向へ吹き出して、コンバイン1の外部へ放出する。
【0045】
排塵処理室68から揺動棚51の終端部に矢印Mのように落ちた排塵のうち二番穀粒、三番穀粒など小径で比重の重いものは、揺動棚51の終端部のストローラック62あるいはシーブ53を矢印G方向へ通過して二番棚板85に漏下し、再び二番処理室67において処理される。
【0046】
また、排塵処理室68から揺動棚51の終端部に矢印Mのように落ちた排塵のうち、やや長めの藁くずはストローラック62で受けとめられ、揺動棚51の揺動運動と、唐箕79の送風力により矢印Fのように揺動棚51の後方から排出され圃場に放出される。
【0047】
図10(b)の脱穀装置の正面図に示すように、扱室66の受網74を3分割で構成し、扱胴69の軸心69aよりも下側の2つの受網74a,74bはクリンプ網(丸い線材を編んだ網)で構成し、扱胴軸心69aよりも上側の受網74cは格子状の濾過部材(格子網)で構成した。
【0048】
受網74cを格子網で構成したので、受網74cから被処理物が通過し易く、格子網で構成した受網74cを使用することで上記3分割した受網74により、扱室66からの被処理物の濾過率の増加が図られ、クリンプ網だけで受網74を構成した場合に比べて、3番飛散物(揺動棚51の終端から排出される被処理物)の割合が減少する。
藁屑の刺さりやすい上記クリンプ網部分の受網74a,74bは着脱可能とし、藁屑の刺さり難い格子網部分の受網74cは機体に固定としたので扱室66内の清掃性が従来より向上する。
また、図11に示すように切刃100を取り付けた切刃取付フレーム101に受網74cを固定することで、格子網を簡単な構成としても、格子網の強度を保つことができる。
【0049】
さらに、クリンプ網74a,74bの目合よりも格子網74cの目合を大きくすると、扱室66から2番処理室67への被処理物の濾過率の増加が図られ、3番飛散の減少につながる。
【0050】
また、扱胴69の回転軸69bよりも下側の2つの受網74a,74bのクリンプ網の中で扱室66への穀稈の入口側の受網74aのクリンプ網(下)の目合よりも格子網側の受網74bのクリンプ網(中)の目合いを大きくし、さらに格子網側の受網74bのクリンプ網(中)よりも受網74cの格子網の目合を大きくすると、扱室66からの被処理物の濾過率の増加が図られ、3番飛散の減少につながる。
【0051】
図11の扱室66の平面図に示すように、扱室66の格子網の取付部には扱胴69の円周方向に円弧を形成する板体からなる仕切部材103、104を設ける。この仕切部材103、104により、籾が扱胴69で後ろに送られるのに抵抗を与えて2番処理室67に送り易くして、扱室66からの被処理物の濾過率の増加を図りながら3番飛散の減少につなける。
【0052】
また、扱室66の前側から第一仕切部材103までの格子網の目合いより、第一仕切部材103から第二仕切部材104までの目合を大きくし、第一仕切部材103から第二仕切部材104までの格子網の目合よりも、第二仕切部材104から後側の格子網の目合を大きくする。これは扱室66内で処理される被処理物の大きさが後ろ側ほど大きいので、格子網の目合いを扱室66の後ろ側ほど大きくすることで、扱室66からの被処理物の濾過率の増加を図ることができ3番飛散物の発生を抑えることができる。
【0053】
格子網74cの縦部材74c1を固定で構成し、格子の横部材を扱室66の後ろ側から差込可能とすることで、格子網74cの摩耗しやすい横部材74c2を簡単に交換できる。また、後部壁(中側板)66aを格子の横部材74c2の抜止部材として用いることで別途抜止部材が必要でなくなり、コストダウンになる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の脱穀装置はコンバインなどの収穫した穀粒の処理装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態の穀類の収穫作業を行うコンバインの左側面図である。
【図2】図1のコンバインの平面図である。
【図3】図1のコンバインの脱穀装置の左側面断面図である。
【図4】図1のコンバインの脱穀装置の一部切り欠き平面図である。
【図5】図1のコンバインの脱穀装置の一部切り欠き背面図である。
【図6】図1のコンバインの脱穀装置の扱室と排塵処理室天井部ケーシングを示す平面図(図6(a))と側面図(図6(b))である。
【図7】図1のコンバインの脱穀装置のシャッターを開いた場合の背面図(図7(a))とシャッターを閉じた場合の背面図(図7(b))である。
【図8】図6の扱室天井部の一部拡大平面図である。
【図9】図3の脱穀装置の二番螺旋付近の側面図(図9(a))と従来の脱穀装置の二番螺旋付近の側面図(図9(b))である。
【図10】図1のコンバインの参考例の脱穀装置の左側面断面図(図10(a))と一部切り欠き正面図である。
【図11】図10の脱穀装置の扱室の受網の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 コンバイン 2 走行フレーム
3 走行装置 4 クローラ
6 刈取装置 7 分草具
8 穀稈引き起こし装置 12 フィードチェン挟扼杆
14 フィードチェン 15 脱穀装置
18 縦オーガ 19 横オーガ
19a オーガ排出口 20 操縦席
25 扱胴・処理胴入力ギアケース
30 グレンタンク 40 シャフト
41 ギアケース 50 選別室
51 揺動棚 52 移送棚
52a 選別板 53 シーブ
62 ストローラック 63 選別網
64 一番棚板 65 一番揚穀筒
65a 一番螺旋 65b 搬送螺旋
65e 支持部 66 扱室
66a 後部壁 66b 右側壁
66c 天井壁 67 二番処理室
68 排塵処理室 68a 排塵処理胴ケーシング
69 扱胴 69a 扱歯
69b 回転軸 70 二番処理胴
69c 羽根 70a 処理歯
71 排塵処理胴 71a 螺旋
71b 羽根 72 送塵板
72a 揺動支点 73 ロッド
73a 支点 74 扱網
74a,74b クリンプ網
74c 格子網 74c1 縦部材
74c2 横部材 75 モータ
76 排塵調節レバー 77 ワイヤ
78 シャッター 79 唐箕
79a 唐箕ファン 80 排藁チェーン
81 排藁カッター 82 リミットスイッチ
83 板材 84 ガイド
85 二番棚板 86 二番螺旋
87 二番還元筒 88 寄せ板
91 横断流ファン 95 排藁処理室
94 ダクト 96 ジャンプラック
97 シール部材 98 補助板
100 切刃 101 切刃取付フレーム
103,104 仕切部材 105 風割部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(69)を軸架した扱室(66)の後方に、扱胴(69)と平行する方向に排塵処理胴(71)を軸架した排塵処理室(68)を備えた脱穀装置において、
扱室(66)の天井部内側に、該扱室(66)内の被処理物を後方へ移送誘導して排塵処理室(68)側に案内する送塵板(72)を複数個並列配置し、全ての送塵板(72)を被処理物の移送を促進する側と移送に抵抗を掛ける側とに手動で姿勢変更可能な操作部材(76)を設け、
排塵処理室(68)後端の排出口部に、該排出口部を脱穀装置の外部へ向けて開閉するシャッター(78)を設け、
前記操作部材(76)の操作によって送塵板(72)が移送促進側に姿勢変更された場合に前記シャッター(78)を開放させる連繋手段を設けたことを特徴とする脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−29159(P2010−29159A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197408(P2008−197408)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】