説明

脱穀装置

【課題】刺さり粒回収室内での刺さり粒の除去を十分に行い穀粒の回収効率を高める。
【解決手段】扱胴を内装した扱室の終端に該扱室の外部へ連通する排塵口を開口し、該排塵口よりも後方の位置に脱穀後の穀稈に刺さり込んだ刺さり粒を回収する刺さり粒回収室を形成し、該刺さり粒回収室の内部には扱胴を軸支する扱胴軸の後方延長線上に軸芯を有し該扱胴と一体で回転駆動される4番処理胴11を設け、該4番処理胴11の下方に穀稈の株元側を下から受けて支持する受け板16を対向配置すると共に、該受け板16の穀稈穂先側が通過する部位には下方に向けて開放する開放空間Kを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀処理後の排藁中に混入する刺さり粒を扱き落として回収する四番処理胴を備えた脱穀装置に関し、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、前側板と中側板との間に形成した扱室の後側には、中側板と後側板との間において刺さり粒回収室を設け、この刺さり粒回収室内の後端部まで扱室内の扱胴を延長させて四番処理胴を設けた構成の脱穀装置が開示され、脱穀処理後の穀稈中に混入する刺さり粒を四番処理胴の回転により扱き落して回収するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−312733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献記載の技術では、刺さり粒回収室内で、四番処理胴によって扱き作用を受ける穀稈は、扱室側から後方に向けて片持ち状に突設された2本の穀稈支持ガイドによって支持されるものであるため、穀稈の支持が不十分であり、扱き作用を受ける毎に穀稈が逃げて確実な刺さり粒の除去作用が期待できず、回収効率の低下を招く問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、扱胴(5)を内装した扱室(3)の終端に、該扱室(3)の外部へ連通する排塵口(8)を開口し、該排塵口(8)よりも後方の位置に脱穀後の穀稈に刺さり込んだ刺さり粒を回収する刺さり粒回収室(9)を形成し、該刺さり粒回収室(9)の内部には前記扱胴(5)を軸支する扱胴軸の後方延長線上に軸芯を有し該扱胴(5)と一体で回転駆動される4番処理胴(11)を設け、該4番処理胴(11)の下方に穀稈の株元側を下から受けて支持する受け板(16)を対向配置すると共に、該受け板(16)の穀稈穂先側が通過する部位には下方に向けて開放する開放空間(K)を形成したことを特徴とする脱穀装置とする。
【0006】
扱室(3)内を通過する穀稈は扱胴(5)の回転によって脱穀処理され、扱室後部の刺さり回収室(9)内では、脱穀処理後の穀稈中に混入する刺さり粒が四番処理胴(11)の回転により脱落する。
【0007】
刺さり粒回収室(9)内での穀稈の株元側は、全面が受け板(16)によって下側から支持されているので、株元側に混入する刺さり粒の除去作用が行われ易く、また、穂先側は下方へ向けて大きく開放されているので、藁屑等の処理物はそのまま開放空間を通じて速やかに下方に落下する。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記受け板(16)は、4番処理胴(11)の外周に沿わせ、且つ、脱穀フィードチェン(2)側における穀稈挟持位置近くから4番処理胴(11)の軸芯(11a)位置下方近くまで延設してあることを特徴とする請求項1記載の脱穀装置とする。
【0009】
四番処理胴(11)外周の刺さり落し歯が穀稈中に深く侵入して、株元側に多く混入する刺さり粒が取り除かれる。
請求項3記載の発明は、前記受け板(16)には刺さり粒が漏下可能な濾過孔(17)を設けてあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置とする。
【0010】
受け板(16)上で梳き落された刺さり粒は、受け板(16)の濾過孔(17)から速やかに下方に抜け落ちる。
請求項4記載の発明は、前記濾過孔(17)は、4番処理胴(11)の軸芯(11a)に沿う方向に長い長孔形状とし、且つ、刺さり粒回収室(9)内の処理物送り方向に傾斜させて設けてあることを特徴とする請求項3記載の脱穀機の脱穀装置とする。
【0011】
濾過孔(17)は、4番処理胴(11)の軸芯(11a)に沿う方向で刺さり粒回収室(9)内の処理物送り方向に傾斜させて設けているため、穀稈より除去された刺さり粒が濾過孔(17)よりスムーズに落下する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、刺さり粒回収室(9)内での穀稈の株元側は、受け板(16)によって下側から支持されているので、この株元側に混入する刺さり粒の除去を十分に行なうことができ、刺さり粒の回収効果を高めることができる。また、穂先側は大きく開放されているので、藁屑等の処理物はそのまま開放空間(K)を通じて速やかに下方に落下させることができ、刺さり粒回収室(9)内で藁屑が停滞しにくくなり、刺さり粒の回収効率および脱穀作業の能率を高めることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、四番処理胴(11)外周の刺さり落し歯が穀稈中に深く介入して扱くことになり、株元側に多く混入する刺さり粒を確実に取り除くことができ、刺さり粒の回収効率をより高めることができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加え、受け板(16)には刺さり粒の濾過孔(17)が設けられているので、受け板(16)上で梳き落された刺さり粒が、再度穀稈に刺さり込むことなく濾過孔(17)から速やかに下方に落下し、効果的に回収することができる。また、開放空間(K)より落下する藁屑を多く含んだ被処理物と、濾過孔(17)より漏下する穀粒とを、混合せずに揺動選別装置上で篩い選別することで、選別効率を向上させることができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果に加え、濾過孔(17)が前後方向に長く斜めに設けられているので、穀稈より除去された刺さり粒が濾過孔よりスムーズに落下することになり、回収効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】脱穀装置の側断面図
【図2】脱穀装置の一部破断せる平面図
【図3】脱穀装置の要部の正断面図
【図4】脱穀装置の要部の側断面図
【図5】脱穀装置の要部の切開平面図
【図6】脱穀装置の要部の側面図
【図7】脱穀装置の要部の切開平面図
【図8】脱穀装置の要部の正断面図
【図9】コンバインの正面図
【図10】コンバインの平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、脱穀装置の側断面図を示すものであり、次のような構成になっている。
すなわち、脱穀装置(脱穀部)1は、脱穀フィードチェン2により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室3内で駆動回転する扱歯4付扱胴5により脱穀処理するよう構成している。扱室3の下半周部には受網6が張設され、扱胴5の上部を覆う扱胴カバー7は、扱室の一側を支点として揺動開閉する構成である。扱室3の終端側には多量の藁屑や未処理物を含む排塵処理物を下方に落下させる排塵口8が設けられている。扱室3終端の排塵口8より後方部には、穀稈(排藁)中の刺さり粒を掻き落して回収する刺さり粒回収室9を構成して設け、この刺さり粒回収室9には、前記扱胴5と略同径で同一軸芯回りに強制回転する外周に刺さり落し歯10を有した四番処理胴11を内装軸架している。四番処理胴11は、実施例では前記扱胴5と一体的に構成してあり、該扱胴を扱室終端より長く延出させた構成としている。
【0018】
扱室3始端側の前側板12と中仕切板13との間に受網6が張設され、扱室の中仕切板13から扱室終端の後仕切板14間に排塵口8が開口して設けられ、後仕切板14と後側板15との間に刺さり粒回収室11が構成されている。
【0019】
刺さり粒回収室11の穀稈株元側通過部略全域にわたり、且つ、四番処理胴10の下側位置において穀稈を下から受けて支持する受け板16を設けている。この受け板16は、刺さり落し歯10先端の回転軌跡に沿わせてあり、しかも、脱穀フィードチェン2側における穀稈挟持位置近くから四番処理胴11の軸芯11a位置下方近くまで延設させた構成としている。
【0020】
また、刺さり粒回収室11において、受け板16のフィードチェン2と反対側端部より穂先側部(排塵処理胴側)は、下方に大きく開放してあり、刺さり粒や藁屑などを含む処理物の回収落下を容易にするための開放空間Kが設けられている。
【0021】
更に、受け板16には、しごき落された刺さり粒を下方に漏下させるための数個の濾過孔17が設けられている。濾過孔17は、四番処理胴の軸芯方向、つまり、前後方向に長い長孔形状に構成され、処理物送り方向(左右斜め方向)に角度θだけ傾斜して設けられている。
【0022】
以上の刺さり粒回収室9の構成によって、脱穀後の穀稈に刺さり込んだ穀粒を受け板16の濾過孔17及び開放空間Kから下方に落下させて選別回収することができ、穀粒の回収効率を向上させることができる。また、濾過孔17は処理物送り方向に角度θだけ傾斜させているので、穀粒の落下を妨げず、穀粒が再び穀稈に刺さり込んで機外に排出されるロスを少なくすることができる。加えて、受け板16によって、刺さり落し歯10の回転軌跡に近接させて穀稈を支持することで、扱室3で扱ぎ残した穀粒を確実に脱粒処理でき、脱穀能力を高めることができる。
【0023】
前記扱室3のフィードチェン2側とは反対側一側には二番処理胴19を内装軸架した二番処理室20を並設している。また、前記二番処理胴19の後方にはこれと同一軸芯上において外周に排塵処理歯21を備えた排塵処理胴22を内装軸架した排塵処理室23を構成して設けている。前記扱室終端の排塵口8に対応する部位から排塵処理室23始端への送塵通路には、排塵処理胴23の始端部に固着された螺旋形状の取込羽根24が介入するように設けて、排塵処理室23内への排塵物の取込みが容易に行えるようにしている。排塵処理胴18の終端には排出羽根25が設けられ、処理室終端まで送られてきた排塵処理物を前記排出羽根25によって処理室終端の横側部の排出口26から下方の揺動選別棚上に排出する構成としている。
【0024】
排塵処理室23の排塵処理胴22の下側部分には、これと対向する四番処理胴11側が大きく開放されて排塵開放口24が設けられている。四番処理胴11によって扱き処理された刺さり粒を含む四番処理物は、開放空間Kから排塵処理胴22側に向けて勢い良く投出され、排塵処理胴22によって処理される処理物の一部は、排塵開放口27から四番処理胴側に向けて勢い良く投出されるようになっている。
【0025】
扱室下方の揺動選別装置(揺動選別棚)30は、前後方向に揺動運動し、脱穀処理後の処理物を受け入れて移送しながら篩い選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚31、第一シーブ32、第二シーブ33、ストロ−ラック34の順に配置し、且つ、前記第二シーブ33の下方に精選別網35、一番戻し棚36a、二番戻し棚36bを配置して設けた構成としている。
【0026】
また、揺動選別棚30の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕37と、一番螺旋38、二番螺旋39と、その上方に排塵フアン40を設けて排塵選別室を構成している。
前記第一シーブ32は、前記刺さり粒回収室9より前方に配置され、前後方向に所定間隔を開けて上下方向に傾斜する固定状態の固定シーブ41からなる。第二シーブ33は、第一シーブ32からの処理物及び刺さり粒回収室9からの処理物を受け入れてふるい選別するように構成され、傾斜角変更自在な可動シーブ42からなる。
【0027】
ストローラック34の基端側を連結する連結板43には、この上部を上向きに折り曲げて唐箕37からの選別風を排塵ファン40の吸塵口40a側に向けて誘導案内すべく立上げ部43aを設けることによって、第二シーブ33の後方で被処理物を上方に吹上げ、揺動選別棚30の前方からの処理物を排塵ファン40に向け縦方向の垂直選別が可能となり、選別効果を高めることができる。また、排塵処理室23終端の排出口26を立上げ部43aより後方とすることで、扱室3からの漏下物及び二番処理胴19からの処理物と、排塵処理室からの排出処理物との分離もできるので、揺動棚での処理効率及び選別精度が向上する。
【0028】
第一シーブ32には、前後方向に平行で左右方向所定間隔置きに配設した拡散プレート44と、各固定シーブ板41の表面に付着する藁屑などの付着物を除去するシーブスクレーパ45とからなる複数個の拡散清掃具46,46,46…を備えている。
【0029】
また、各拡散清掃具46は、駆動モータ47の回転駆動により、互い違いに引き操作する一対の操作ケーブル48a,48b、往復回動する天秤アーム49、天秤アーム軸50、往復回動する揺動アーム51等の連動機構を介して左右方向に往復動すべく連動構成している。
【0030】
駆動モータ47の駆動により、一対の操作ケーブル48a,48b が互い違いに引き操作され、天秤アーム49の往復回動によって天秤アーム軸50を回動中心として揺動アーム51が左右に往復揺動するようになっている。
【0031】
前記駆動モータ47及び操作ケーブル48a,48b等の操作連動機構部は、前記脱穀フィードチェン2の下方空間内に配置すると共に、駆動モータ47と操作ケーブル48a,48bは、前方のフィードチェン駆動用ギヤケース52と後方のカウンタケース53とを連結保持する連結フレーム54に装着支持し、脱穀フィードチェン2のオープンによってこれらのメンテナンスが機体の外側から容易に行えるように構成している。操作連動機構部は吊下げ状態に支持しているので、振動による破損の虞が無い。
【0032】
移送棚31上に落下する処理物を二番処理胴19側一側から第一シーブ32の始端側中央位置まで寄せながら案内する寄せ案内板55が拡散清掃具46を跨ぐように設けられている。この寄せ案内板55により、揺動棚上処理物の均分化が図れると共に、シーブスクレーパによる除去作用がバランスよく効果的に行える。なお、移送棚31上の寄せ案内板55は、図7に示すように複数個設けるものであってもよく、一層の均分化が図れ、シーブ板面上の付着物の除去作用も効率よく行うことができる。
【0033】
唐箕37からの選別風の風選経路には、選別風の流れを変向する上下2段の風分流体(フラッパ)56,57が設けられている。そして、上段の風分流体56は、始端側の支点軸Q1を回動中心として上下に揺動変位する構成であり、下段の風分流体57は、中間部の支点軸Q2を回動中心として上下に揺動変位する構成になっている。風分流体57の機体外方部側には、該分流体の回動位置を視認できるインジケータ58が設けられている。このインジケータにより機体内方の分流体の回動位置や回動範囲等を機体外方より視認できるので、メンテナンスや調整が容易となる。なお、前記インジケータは支点軸Q2に直結して一体回動する構成としているが、支点軸Q2の端部を屈曲してインジケータ部とすることもできる。
【0034】
脱穀部1のシーブ調整操作部(第二シーブ33の可動シーブ板42の開度調整)59やフラッパ調整操作部(風分流体56,57の回動調整)60等は、図9、図10に示すように、運転席28の左側後方で脱穀部1の前面に配置している。これにより、コンバインの走行系、刈取系と脱穀調整部関係を分離して設けることで、捜査の煩わしさが無く、取扱い性が良くなる。
【0035】
なお、図中(図9、図10)のコンバインは、運転席28の前側に操作ボックス29が設置され、これらの前側及び左側横側部には刈取部Hが、運転席の後側にはグレンタンクGが配置されている。
【符号の説明】
【0036】
2 脱穀フィードチェン
3 扱室
5 扱胴
8 排塵口
9 刺さり粒回収室
10 刺さり落し歯
11 四番処理胴
16 受け板
17 濾過孔
K 開放空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(5)を内装した扱室(3)の終端に、該扱室(3)の外部へ連通する排塵口(8)を開口し、該排塵口(8)よりも後方の位置に脱穀後の穀稈に刺さり込んだ刺さり粒を回収する刺さり粒回収室(9)を形成し、該刺さり粒回収室(9)の内部には前記扱胴(5)を軸支する扱胴軸の後方延長線上に軸芯を有し該扱胴(5)と一体で回転駆動される4番処理胴(11)を設け、該4番処理胴(11)の下方に穀稈の株元側を下から受けて支持する受け板(16)を対向配置すると共に、該受け板(16)の穀稈穂先側が通過する部位には下方に向けて開放する開放空間(K)を形成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記受け板(16)は、4番処理胴(11)の外周に沿わせ、且つ、脱穀フィードチェン(2)側における穀稈挟持位置近くから4番処理胴(11)の軸芯(11a)位置下方近くまで延設してあることを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記受け板(16)には刺さり粒が漏下可能な濾過孔(17)を設けてあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記濾過孔(17)は、4番処理胴(11)の軸芯(11a)に沿う方向に長い長孔形状とし、且つ、刺さり粒回収室(9)内の処理物送り方向に傾斜させて設けてあることを特徴とする請求項3記載の脱穀機の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−12(P2012−12A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135226(P2010−135226)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】