説明

脱穀装置

【課題】排藁の停滞を少なくして円滑に後方に搬送できる排藁搬送装置を提供する。
【解決手段】上記課題は、株元搬送部(80)の株元搬送装置(81)の搬送終端部を脱穀装置の後側に配置された排藁カッタ(96)の上方に臨ませ、穂先搬送部(60)の穂先搬送装置(61)の搬送終端部を排藁搬送装置(50)の下側に配置された吸引排塵ファン(90)の回転軸(90A)の前側上方の部位に配置したことにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に設けられる脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀後の排藁をフィードチェンから受け継いで後方へ搬送する株元側搬送装置と穂先側搬送装置とからなる排藁搬送装置を設け、該排藁搬送装置を搬送終端側から駆動する構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−55827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の搬送終端側から駆動する排藁搬送装置の穂先側搬送装置の全長は長く、脱穀装置の後部に該排藁搬送装置を配置する大きな空間が必要となり、扱室の空間が制限される。その為、扱室に長尺な扱胴を設けることが困難となり脱穀能率が低下する恐れがある。
又、穂先側搬送装置の終端部が排藁処理装置の排藁カッタの上側まで臨んでいる。その為、特に排藁の穂先が穂先側搬送装置の終端部に絡まり、排藁カッタに排藁を能率良く供給できない虞がある。
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、かかる問題点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、扱胴(12)を有する扱室(10)の下方に揺動選別装置(21)を設け、前記扱室(10)の左右一側に穀稈搬送用のフィードチェン(18)を設け、該フィードチェン(18)の搬送終端部から脱穀後の排稈を受け継いで脱穀装置の外部へ搬送する排藁搬送装置(50)を設け、該排藁搬送装置(50)の下側に前記揺動選別装置(21)上の塵埃を吸引する吸引排塵ファン(90)を設けた脱穀装置であって、前記排藁搬送装置(50)には、株元搬送装置(81)と穂先搬送装置(61)とを備え、前記株元搬送装置(81)の搬送終端部を脱穀装置の後側に配置された排藁カッタ(96)の上方に臨ませ、前記穂先搬送装置(61)の搬送終端部を前記吸引排塵ファン(90)の回転軸(90A)の前側上方の部位に配置したことを特徴とする脱穀装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記吸引排塵ファン(90)の前側を覆い後上がり傾斜する傾斜面(91A)と吸引排塵ファン(90)の上側を覆う上面(91B)とからなるケーシング(91)を設け、前記穂先搬送装置(61)の搬送終端部を傾斜面(91A)の後側上方の部位に配置した請求項1記載の脱穀装置である。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記ケーシング(91)の上面(91B)を水平または緩やかに後下がり傾斜させた請求項1または2記載の脱穀装置である。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記穂先搬送装置(61)を、吸引排塵ファン(90)の前側を覆う傾斜面(91A)よりも緩やかに後上がり傾斜させて設けた請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱穀装置である。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記穂先搬送装置(61)の後部に設けられ、該穂先搬送装置(61)を駆動する穂先駆動軸(63A)と、株元搬送装置(81)の中間部に設けられ、該株元搬送装置(81)を駆動する株元駆動軸(83A)を連結した請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱穀装置である。
【0011】
請求項6記載の発明は、前記穂先搬送装置(61)の搬送始端側の部位を、該穂先搬送装置(61)の搬送終端側に備える穂先駆動軸(63A)を中心として上下に回動自在な構成とした請求項1〜5のいずれか1項に記載の脱穀装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、排藁搬送装置(50)の穂先搬送装置(61)の搬送終端部を、排藁搬送装置(50)の下側に配置された吸引排塵ファン(90)の回転軸(90A)の前側上方の部位に配置しているので、脱穀装置の全高を低く抑えることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、穂先搬送装置(61)の搬送終端部を傾斜面(91A)の後側上方の部位に配置しているので、排藁の穂先と傾斜面(91A)の干渉を防止し、穂先を傾斜面(91A)の後方まで確実に搬送することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明による効果に加えて、ケーシング(91)の上面(91B)を水平または緩やかに後下がり傾斜して設けているので、穂先搬送部(60)で搬送された穀稈の穂先を排藁カッタ(96)の上方まで効率良く搬送でき、搬送時の停滞を防止することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、穂先搬送装置(61)を傾斜面(91A)よりも緩やかな後上がり傾斜姿勢で設けているので、フィードチェン(18)から排藁を円滑に受け継ぐことができ、また、排藁の搬送姿勢の乱れを防止することができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、穂先搬送装置(61)の後部に設けられ、該穂先搬送装置(61)を駆動する穂先駆動軸(63A)と、該穂先駆動軸(63A)と同軸上かつ株元搬送装置(81)の中間部に設けられ、該株元搬送装置(81)を駆動する株元駆動軸(83A)を連結して、一体として駆動するので、搬送時に生じる駆動軸(63A,83A)への排藁の絡まりを低減でき、また、穂先搬送装置(61)と株元搬送装置(81)の取付け構造を簡易にでき、製造コストも削減することができる。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、穂先搬送装置(61)の搬送始端側の部位を、搬送終端側に備える穂先駆動軸(63A)を中心として上下に回動自在な構成としているので、脱穀された排藁の量に応じて穂先搬送部(60)の傾斜角度を簡易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】コンバインの背面図である。
【図5】コンバインの縦断面図である。
【図6】排藁搬送装置の拡大左側面図である。
【図7】コンバインの横断面図である。
【図8】排藁搬送装置の拡大平面図である。
【図9】(a)は穂先搬送装置、(b)は株元搬送装置の左側面図である。
【図10】排藁搬送装置の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施例について添付図面を参照しつつ詳説する。なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0020】
コンバインは、図1〜図4に示すように、コンバインの機体フレーム1の下側には土壌面を走行する為の左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の上方左側には脱穀・選別を行なう脱穀装置3が設けられ、脱穀装置3の前側には圃場の穀桿を収穫する刈取装置4が設けられている。刈取装置4で刈取られた穀桿は供給搬送装置8によって脱穀装置3に搬送され、脱穀装置3で脱穀・選別された穀粒は脱穀装置3の右側に設けられたグレンタンク5に貯留され、貯留された穀粒は排出筒7により機外へ排出される。又、機体フレーム1の上方右側には操作者が搭乗する操作席を備えた操縦部6が設けられている。
【0021】
脱穀装置3は、図5、図7に示すように、前側上部に穀稈の脱穀を行う扱室10を備え、扱室10の下側に脱穀された穀粒の選別を行なう選別室20を備えている。また、扱室10で脱穀された排藁は、フィードチェン18によって後方に搬送された後、フィードチェン18から排藁搬送装置50に受け継がれ、排藁搬送装置50によってさらに後方に搬送された後、排藁搬送装置50の終端部から排藁処理装置95に落下し排藁処理装置95の排藁カッタ96によって細かく裁断された後、機外に排出される。
【0022】
(扱室)
扱室10には複数の扱歯11を有する扱胴12が前後方向に延伸する扱胴軸13に軸支されている。そして、扱室10の前板10Aの左側下部には穀稈供給口15が開口して形成され、左板10Bの下部には穀稈供給口15に連通し、扱胴12に沿うように扱ぎ口16が開口して形成され、後板10Cの左側下部には扱ぎ口16に連通する排藁口17が開口して形成されている。また、扱室10の左板10Bの左側には扱ぎ口16に沿うように、給搬送装置8によって揚上搬送された穀桿の株元を挟持して後方に搬送するフィードチェン18が設けられている。
【0023】
(選別室)
扱室10の下側には、扱室10から漏下する脱穀処理物を穀粒とそれ以外の藁屑等とに選別するための選別室20が設けられている。選別室20の上部には揺動選別装置21が設けられ、選別室20の下部には揺動選別装置21に空気を送風する唐箕25と、揺動選別装置21から漏下する穀粒を回収する一番受樋28と、揺動選別装置21から漏下する枝梗等が付着した穀粒を回収する二番受樋29とが、前側から後側に向かって設けられている。なお、一番受樋28で回収された穀粒はグレンタンク5に移送され、二番受樋29で回収された穀粒等は二番処理室40に移送される。
【0024】
揺動選別装置21は、唐箕25の上方に配置された移送棚22と、移送棚22の下流側に配置された固定シーブ23と、さらに固定シーブ23の下流側に配置されたストローラック24とによって構成されている。
【0025】
移送棚22は、扱室10から漏下する穀粒を下流側に配置された固定シーブ23に移送できればよく、移送棚22の後部を後下がりに傾斜させたり、移送棚22の上面に突起や凹凸を設けたりすることができる。
【0026】
固定シーブ23は、移送棚22から移送された穀粒又は扱室10から直接漏下する穀粒と藁屑等の異物とを選別する篩であり、下流側が高くなるように傾斜した薄い板状体からなる固定シーブ部材を揺動選別装置21の揺動方向に所定の間隔を空けて平行に複数並設したものである。
【0027】
ストローラック24は、固定シーブ23から漏下しなかった比較的大きな藁屑中から枝梗等が付着した穀粒等を篩い選別する篩である。
【0028】
なお、本実施形態の揺動選別装置21は、移送棚22と、固定シーブ23と、ストローラック24からなるが、穀粒と藁屑を効率的に選別する為に、固定シーブ23と、ストローラック24の間に可動シーブを設けることもできる。可動シーブは、固定シーブ23から移送されてくる穀粒を選別する篩であり、下流側が高くなるように傾斜した薄い板状体からなるシーブ部材を揺動方向に所定の間隔を空けて平行に複数並設したものである。
【0029】
唐箕25の送風口26には、風割27によって上下に形成された上側風路26Aと下側風路26Bとが設けられている。また、送風口26の後側に設けられた一番受樋28の内部にはグレンタンク5に連通する螺旋コンベア式の一番コンベア28Aが配置され、二番受樋29の内部には二番処理室40に連通する螺旋コンベア式の二番コンベア29Aが配置されている。
【0030】
(排塵処理室)
扱室10の右側後部は排塵処理室30に連通し、排塵処理室30の内部には外周面にスクリュー羽根体31を備える排塵処理胴32が前後方向に軸架されている。排塵処理室30に供給された被処理物は、回転する排塵処理胴32によって後方に搬送されつつ解砕処理される過程で、揺動選別装置21の固定シーブ23上に漏下されるか、又は排塵処理室30の終端部に至った後に揺動選別装置21のストローラック24上に排出される。
【0031】
(二番処理室)
排塵処理室30の前側には二番物を処理して還元するための二番処理室40が設けられている。二番処理室40の内部には外周面に間欠螺旋羽根41を備える二番処理胴42が軸架されている。二番処理室40に供給された二番物は、回転する二番処理胴42によって前方に搬送されつつ穀粒と枝梗とが分離され、二番処理物還元口から揺動選別装置21の移送棚22に落下し、扱室10からの被処理物と合流して再選別される。
【0032】
(排藁搬送装置)
排藁搬送装置50は、図5〜図8に示すように、排藁の穂先を後方に搬送する穂先側の穂先搬送部60と、排藁の株元を挟持して後方に搬送する株元側の株元搬送部80からなる。
【0033】
(穂先搬送装置)
穂先搬送部60は、穂先搬送装置61と、第1穂先案内杆75と、第2穂先案内杆78からなり、穂先搬送装置61は、図9(a)に示すように、前部従動スプロケット62と、後部駆動スプロケット63にチェン64が巻き掛けられている。また、チェン64には所定間隔毎に起立・倒伏自在な搬送ラグ64Aが枢着されており、搬送ラグ64Aの案内部材によって、穂先搬送装置61の下側の搬送径路では搬送ラグ64Aは起立し、穂先搬送装置61の上側では搬送ラグ64Aは倒伏して移動する。なお、穂先搬送装置61の後部は、排藁処理装置95の左側前部から右側前方に延伸するフレーム65に長孔66Aが形成されたブラケット66によって上下調整自在に取付けられており、また、ブラケット66の上部にはフレーム65を貫通させる溝66Bが形成されており、後部駆動スプロケット63の穂先駆動軸(駆動軸)63Aを中心として穂先搬送装置61の前部を上下方向に回転させることができる。
【0034】
穂先搬送装置61は、図6、図10等に示すように、後上がり傾斜して配置されており、穂先搬送装置61の前部は、搬送方向のフィードチェン18の下方に臨み、穂先搬送装置61の後部は、吸引排塵ファン90を包囲するケーシング91の傾斜面91Aよりも緩やかに後上がり傾斜し、傾斜面91Aの終端部の近傍に臨んでいる。また、穂先搬送装置61の終端部は、側面視において吸引排塵ファン90を軸支する回転軸(軸)90Aの前側近傍に位置している。さらに、穂先搬送装置61の前部に位置する穂先チェン作用始端部68(排藁の穂先と搬送ラグ64Aの接触位置)は、株元搬送装置81の前部に位置する株元チェン作用始端部86(排藁の株元とチェン85の接触位置)よりも前側下方に設けられ、扱室10の後板10Cを後側から投影した下端部よりも若干下方に設けられている。
【0035】
穂先搬送装置61は、図8等に示すように、穂先搬送装置61の前部から後部に向かいフィードチェン18と反対側に傾斜して配置されており、株元搬送装置81と略平行に併置されている。穂先搬送装置61の前部は、扱室10の排藁口17の近傍に臨み、穂先搬送装置61の後部は、吸引排塵ファン90の上面91Bの左右中間部の前部に臨んでいる。
【0036】
穂先搬送装置61の後部駆動スプロケット63には、図8等に示すように、扱室10の扱胴12を軸支する扱胴軸13の回転が伝動される。エンジンの回転は扱室10の前板10Aの前側に設けられたギヤボックス14を介して扱胴軸13に伝動され、扱胴軸13の回転は扱室10の後板10Cの後側に延伸した扱胴軸13に軸支されたプーリ70Aと排塵処理室30の左側に設けられたフレーム71に支持された伝動装置(ギヤボックス)72の入力軸72Aに軸支されたプーリ70Bに巻き掛けられたベルト70Cを介してギヤボックス72に伝動される。また、ベルト70Cは扱室10の後板10Cと略平行に設けられている。
【0037】
ギヤボックス72に伝動された回転は、一端がギヤボックス72の出力軸72Bに連結され、他端が穂先搬送装置61の後部駆動スプロケット63を軸支する駆動軸63Aに連結された第1連結軸73を介して穂先搬送装置61に伝動される。
また、穂先搬送装置61の後部駆動スプロケット63を軸支する駆動軸63Aは、株元搬送部80の株元搬送装置81の中間部駆動スプロケット83を軸支する株元駆動軸(駆動軸)83Aと第2連結軸74によって連結されており、ギヤボックス72に伝動された回転は、第1連結軸73と、後部駆動スプロケット63の駆動軸63Aと、第2連結軸74を介して株元搬送装置81に伝動される。
【0038】
第1穂先案内杆75は、図6等に示すように、穂先搬送装置61の右側下方に穂先搬送装置61と略平行に後上がり傾斜して配置されており、第1穂先案内杆75の前部は、搬送方向のフィードチェン18の下方に臨み、後上がり傾斜しフィードチェン18の上方に至り、第1穂先案内杆75の中間部は、穂先搬送装置61と略平行に延伸し、吸引排塵ファン90を包囲する傾斜面91Aの終端部に臨み、第1穂先案内杆75の後部は、吸引排塵ファン90の上面91Bの上側で緩やかに後下がり傾斜している。また、第1穂先案内杆75の前部は、穂先搬送装置61の左側に位置する上端部から下方に向かって延伸した後、右側に傾斜しながら後上がり急傾斜し穂先搬送装置61の右側に延伸し中間部に至っている。なお、第1穂先案内杆75は、鋼材等の金属材料によって形成されている。
【0039】
第1穂先案内杆75の前部に位置する第1穂先作用始端部76(排藁の穂先と第1穂先案内杆75の接触位置)は、第2穂先案内杆78の前部に位置する第2穂先作用始端部79(排藁の穂先と第2穂先案内杆78の接触位置)及び株元挟持案内杆88の前部に位置する株元作用始端部89(排藁の株元と株元挟持案内杆88の接触位置)よりも下方に設けられ、また、第1穂先案内杆75の第1穂先作用始端部76は、第2穂先案内杆78の第2穂先作用始端部79及び株元挟持案内杆88の株元作用始端部89よりも後方に設けられている。なお、第1穂先案内杆75の第1穂先作用始端部76は、穂先搬送装置61よりも右側下方に設けられている。
【0040】
第1穂先案内杆75は、図8等に示すように、穂先搬送装置61の右側に穂先搬送装置61と略平行に第1穂先案内杆75の前部から後部に向かってフィードチェン18と反対側に傾斜して配置されている。また、第1穂先案内杆75の前部は、扱室10の排藁口17の近傍に臨み、第1穂先案内杆75の後部は、排藁処理装置95の前側近傍に臨んでいる。
【0041】
第2穂先案内杆78は、図6等に示すように、穂先搬送装置61の左側下方に穂先搬送装置61及び第1穂先案内杆75と略平行に後上がり傾斜して配置されており、第2穂先案内杆78の前部は、搬送方向のフィードチェン18の下方に臨み、後上がり傾斜しフィードチェン18の上方に至り、第2穂先案内杆78の後部は、吸引排塵ファン90のケーシング91の傾斜面91Aの終端部の近傍に臨んでいる。また、第2穂先案内杆78の前部は、吸引排塵ファン90の傾斜面91Aよりも緩やかに後上がり傾斜し、第2穂先案内杆78の後部は、側面視において吸引排塵ファン90を軸支する軸90Aよりも後方近傍まで設けられている。なお、第2穂先案内杆78は、鋼材等の金属材料によって形成されている。
【0042】
第2穂先案内杆78の第2穂先作用始端部79は、株元挟持案内杆88の株元作用始端部89よりも下方で、且つ、第1穂先案内杆75の第1穂先作用始端部76よりも上方に設けられ、また、第2穂先案内杆78の第2穂先作用始端部79は、株元挟持案内杆88の株元作用始端部89よりも後方で、且つ、第1穂先案内杆75の第1穂先作用始端部76よりも前方に設けられている。
すなわち、本実施形態においては、機体の上側から下側に向かって株元挟持案内杆88の株元作用始端部89、第2穂先案内杆78の第2穂先作用始端部79、第1穂先案内杆75の第1穂先作用始端部76が順に設けられ、機体の前側から後側にむかって株元挟持案内杆88の株元作用始端部89、第2穂先案内杆78の第2穂先作用始端部79、第1穂先案内杆75の第1穂先作用始端部76が順に設けられている。
【0043】
第2穂先案内杆78は、図8等に示すように、穂先搬送装置61と株元搬送装置81の間に、穂先搬送装置61と略平行に第2穂先案内杆78の前部から後部に向かってフィードチェン18と反対側に傾斜して配置されている。また、第2穂先案内杆78の前部は、扱室10の排藁口17の近傍に臨み、第2穂先案内杆78の後部は、穂先搬送装置61よりも若干後方まで延伸し、吸引排塵ファン90のケーシング91の上面91Bの前部まで設けられている。
【0044】
(株元搬送装置)
株元搬送部80は、株元搬送装置81と、株元挟持案内杆88とからなり、株元搬送装置81は、図9(b)に示すように、前部従動スプロケット82と、中間部駆動スプロケット83と、後部従動スプロケット84にチェン85が巻き掛けられている。なお、株元搬送装置81の中間部は、排藁処理装置95の左側前部から右側前方に延伸するフレーム65に長孔87Aが形成されたブラケット87によって上下調整自在に取付けられており、また、また、ブラケット87の上部にはフレーム65を貫通させる溝87Bが形成されており、中間部駆動スプロケット83の駆動軸87Aを中心として株元搬送装置81の前部を上下方向に回転させることができる。
【0045】
株元搬送装置81は、図6等に示すように、穂先搬送装置61よりも緩やかに後上がり傾斜して配置されており、株元搬送装置81の前部は、搬送方向のフィードチェン18の上方の近傍に臨み、株元搬送装置81の後部は、排藁処理装置95の上側に臨んでいる。
【0046】
株元搬送装置81は、図8等に示すように、株元搬送装置81の前部から後部に向かってフィードチェン18と反対側に傾斜して配置されている。また、株元搬送装置81の前部は、フィードチェン18の右側近傍に臨み、株元搬送装置81の後部は、吸引排塵ファン90のケーシング91の上面91Bを延伸し、排藁処理装置95の右側後部に臨んでいる。
【0047】
株元挟持案内杆88は、図6等に示すように、株元搬送装置81の下側に株元搬送装置81と略平行に後上がり傾斜して配置されており、株元挟持案内杆88の前部は、搬送方向のフィードチェン18の下方に臨み、後上がり傾斜しフィードチェン18の上方に至り、株元挟持案内杆88の後部は、株元搬送装置81の中間部の後側まで延伸し、排藁処理装置95の排藁カッタ96をなす上側ロータリカッタ刃96Aの上側に臨んでいる。また、株元挟持案内杆88の前部は、下端部から略垂直に上方に向かって延伸し、後上がり急傾斜し後部に至っている。なお、株元挟持案内杆88は、鋼材等の金属材料によって形成されている。
【0048】
株元挟持案内杆88は、図8等に示すように、株元搬送装置81の下側に株元搬送装置81と略平行に株元挟持案内杆88の前部から後部に向かってフィードチェン18と反対側に傾斜して配置されている。また、株元挟持案内杆88の前部は、フィードチェン18の右側に沿って延伸し、扱室10の後板10Cを超えて扱胴12の後部に臨み、株元挟持案内杆88の前部の株元作用始端部89は、扱胴12の終端部よりも前方に設けられ、株元挟持案内杆88の後部は、排藁処理装置95の上側ロータリカッタ刃96Aの上側に臨んでいる。なお、株元挟持案内杆88の株元作用始端部89は、穂先搬送装置61の穂先チェン作用始端部68よりも下方に設けられ、株元挟持案内杆88は、側面視において、第1穂先案内杆75の前部の第1穂先作用始端部76よりも後方ではフィードチェン18よりも上方に設けられている。
【0049】
(排藁搬送装置の搬送速度)
エンジンの回転は、図示省略のギヤボックスを介してフィードチェン18に伝動され、図6に示すように、フィードチェン18を周速度V1で時計方向に回転させる。また、前述したとおり、エンジンの回転は、ギヤボックス72を介して、穂先搬送装置61と、株元搬送装置81に伝動され、図6に示すように、株元搬送装置81のチェン85を周速度V2で反時計方向に回転させ、穂先搬送装置61のチェン64を周速度V3で反時計方向に回転させる。また、ギヤボックス72等に伝動される回転数は、それぞれ操縦部6に設けられた中央制御装置によって制御することができ、株元搬送装置81のチェン85を周速度V2は、株元搬送装置81の中間部駆動スプロケット83等を変更することによって任意に設定でき、穂先搬送装置61のチェン64を周速度V3は、穂先搬送装置61の後部駆動スプロケット63等を変更することによって任意に設定できる。
【0050】
扱室10で脱穀された排藁をフィードチェン18から排藁搬送装置50に能率的に引継ぎ、搬送する為に、「フィードチェン18の移動速度V1 < チェン85の移動速度V2 < チェン64の移動速度V3」または「フィードチェン18の移動速度V1 = チェン85の移動速度V2 < チェン64の移動速度V3」の速度にそれぞれ設定するのが好ましく、「フィードチェン18の移動速度V1 < チェン85の移動水平速度Vx2 < チェン64の移動水平速度Vx3」または「フィードチェン18の移動速度V1 = チェン85の移動水平速度Vx2 < チェン64の移動水平速度Vx3」の速度にそれぞれ設定するのがより好ましい。なお、移動水平速度Vx2は、移動速度V2の前後方向の水平速度であり、移動水平速度Vx3は、移動速度V3の前後方向の水平速度であり、「Vx=Vcosθ(θはチェンと仮想水平方向線のなす角度)」で算出される。
【0051】
(吸引排塵ファン)
脱穀・選別時に発生する藁屑等を吸引し機外に排出する吸引排塵ファン90は、図5に示すように、排藁搬送装置50の下側で、且つ、扱室10の後側に左右方向に軸架して設けられている。吸引排塵ファン90は、下部に吸塵口が開口して形成されたケーシング91によって覆われている。ケーシング91は、吸引排塵ファン90の前側を覆い後上がり傾斜する傾斜面91Aと、吸引排塵ファン90の上側を覆い水平または緩やかに後下がり傾斜する上面91Bによって形成されている。
【0052】
(排藁処理装置)
脱穀装置3の後側には左右方向に複数の排藁カッタ96を軸架する排藁処理装置95が配置されている。排藁搬送装置50によって後方に搬送された排藁は、排藁搬送装置50の終端部から排藁処理装置95に供給される。排藁カッタ96は、一対の上側ロータリカッタ刃96Aと下側ロータリカッタ刃96Bからなり、排藁搬送装置50から供給された排藁は、一対のロータリカッタ刃96A,96Bの間を通過する際に細かく裁断された後に機外に排出される。
【0053】
一対のロータリカッタ刃96A,96Bの外部側はフードにより覆われており、また上側ロータリカッタ刃96Aの前側には、切断した排藁の切断藁屑を後方に落下するように案内するための切藁案内板97が設けられている。切藁案内板97の上部は上側ロータリカッタ刃96Aの下部とほぼ同じ高さに設けられ、切藁案内板97の下部は下側ロータリカッタ刃96Bの下部より下側に設けられている。
【符号の説明】
【0054】
3 脱穀装置
10 扱室
12 扱胴
13 扱胴軸
15 穀稈供給口
16 扱ぎ口
17 排藁口
18 フィードチェン
20 選別室
21 揺動選別装置
25 唐箕
28 一番受樋
29 二番受樋
32 排塵処理胴
42 二番処理胴
50 排藁搬送装置
60 穂先搬送部
61 穂先搬送装置
62 前部従動スプロケット
63 後部駆動スプロケット
63A 穂先駆動軸(駆動軸)
72 伝動装置(ギヤボックス)
72A 入力軸
72B 出力軸
73 第1連結軸
74 第2連結軸
75 第1穂先案内杆
78 第2穂先案内杆
80 株元搬送部
81 株元搬送装置
82 前部従動スプロケット
83 中間部駆動スプロケット
83A 株元駆動軸(駆動軸)
84 後部従動スプロケット
88 株元挟持案内杆
90 吸引排塵ファン
90A 回転軸(軸)
91 ケーシング
91A 傾斜面
91B 上面
95 排藁処理装置
96 排藁カッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(12)を有する扱室(10)の下方に揺動選別装置(21)を設け、前記扱室(10)の左右一側に穀稈搬送用のフィードチェン(18)を設け、該フィードチェン(18)の搬送終端部から脱穀後の排稈を受け継いで脱穀装置の外部へ搬送する排藁搬送装置(50)を設け、該排藁搬送装置(50)の下側に前記揺動選別装置(21)上の塵埃を吸引する吸引排塵ファン(90)を設けた脱穀装置であって、
前記排藁搬送装置(50)には、株元搬送装置(81)と穂先搬送装置(61)とを備え、
前記株元搬送装置(81)の搬送終端部を脱穀装置の後側に配置された排藁カッタ(96)の上方に臨ませ、
前記穂先搬送装置(61)の搬送終端部を前記吸引排塵ファン(90)の回転軸(90A)の前側上方の部位に配置したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記吸引排塵ファン(90)の前側を覆い後上がり傾斜する傾斜面(91A)と吸引排塵ファン(90)の上側を覆う上面(91B)とからなるケーシング(91)を設け、
前記穂先搬送装置(61)の搬送終端部を傾斜面(91A)の後側上方の部位に配置した請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記ケーシング(91)の上面(91B)を水平または緩やかに後下がり傾斜させた請求項1または2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記穂先搬送装置(61)を、吸引排塵ファン(90)の前側を覆う傾斜面(91A)よりも緩やかに後上がり傾斜させて設けた請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記穂先搬送装置(61)の後部に設けられ、該穂先搬送装置(61)を駆動する穂先駆動軸(63A)と、株元搬送装置(81)の中間部に設けられ、該株元搬送装置(81)を駆動する株元駆動軸(83A)を連結した請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱穀装置。
【請求項6】
前記穂先搬送装置(61)の搬送始端側の部位を、該穂先搬送装置(61)の搬送終端側に備える穂先駆動軸(63A)を中心として上下に回動自在な構成とした請求項1〜5のいずれか1項に記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−9634(P2013−9634A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144802(P2011−144802)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】