説明

脱臭体および脱臭体を用いた脱臭装置および空気調和機

【課題】従来の白金系の触媒では作動温度が高く、空気調和機や空気清浄機などに応用できないという課題があり、また光触媒は吸着剤などと比較して脱臭速度が遅いことや、光源が必要であるためサイズを小さくできない、コストが高い、耐衝撃性が弱いなどの課題を有していた。
【解決手段】物理吸着作用を有する吸着剤とコバルトを含み触媒作用を有する酸化物とにより、生活空間で発生する臭気を物理吸着作用を有する吸着剤で吸着除去でき、特に有害なアセトアルデヒドをコバルトを含む酸化物触媒により常温で酢酸へ転化し、吸着剤により吸着除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部屋や車などの生活空間の気体に含まれる臭気物質を吸着除去でき、特にタバコの主成分で、VOCの一種でもある有害性の高いアセトアルデヒドを有害性の小さい酢酸へ転化し、それを吸着除去することができる脱臭体および脱臭体を用いた脱臭装置および空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、白金属を用いた触媒を高温(200℃以上)で作動させ、臭気物質などを水や二酸化炭素などへ分解する白金系の熱触媒が広く知られている。また、特許文献1にはマンガンを主体とする遷移金属による複合酸化物を用いた脱臭用の触媒について開示されている。これによるとマンガンとコバルトの複合酸化物により、50℃でアセトアルデヒドを80%分解されるとしている。さらには、常温での臭気の分解触媒として、比表面積が大きな担体に光触媒を担持した光触媒脱臭フィルターとして特許文献2および特許文献3が開示されている。
【特許文献1】特開平10−180108号公報
【特許文献2】特開平6−343875号公報
【特許文献3】特開2003−53196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の白金系の触媒や特許文献1に開示の脱臭体では作動温度が高く、空気調和機や空気清浄機などに応用できないという課題があり、また光触媒は吸着剤などと比較して脱臭速度が遅いことや、光源が必要であるためサイズを小さくできない、コストが高い、耐衝撃性が弱いなどの課題を有していた。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、部屋や車などの生活空間で発生する臭気を物理吸着作用を有する吸着剤により吸着除去でき、特に有害なアセトアルデヒドをCo3O4を主成分とする酸化物触媒により常温で酢酸へ転化し、物理吸着作用を有する吸着剤により吸着除去できる脱臭体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、このような課題を解決するものであり、物理吸着作用を有する吸着剤と、コバルトを含み触媒作用を有する酸化物と、前記吸着剤および前記酸化物とを担持する担体とから構成され、前記酸化物がアルデヒド類をカルボン酸へ転化後、前記吸着剤で吸着除去することを特徴とした脱臭体とするもので、部屋や車などの生活空間で発生する臭気を物理吸着作用を有する吸着剤により吸着除去でき、特に有害なアセトアルデヒドをCo3O4を主成分とする酸化物の触媒作用により常温で酢酸へ転化し、吸着剤により吸着除去できる脱臭体を実現できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の脱臭体は、部屋や車などの生活空間で発生する臭気を吸着除去でき、特に有害なアセトアルデヒドを常温で有害性の小さい酢酸へと転化し、吸着除去できる脱臭体を提供することができる。また、本発明の脱臭装置は、人の手を煩わすことなく自動的に吸脱着を制御し、メンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭装置を提供することができる。さらに、本発明の空気調和機は、吸着剤を担持した脱臭体に高温の空気を通気することにより、吸着剤から臭気が脱着し、メンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭機能を備えた空気調和機を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の発明は、物理吸着作用を有する吸着剤と、コバルトを含み触媒作用を有する酸化物と、前記吸着剤および前記酸化物とを担持する担体とから構成され、前記酸化物がアルデヒド類をカルボン酸へ転化後、前記吸着剤で吸着除去することを特徴とした脱臭体とするもので、部屋や車などの生活空間で発生する臭気を物理吸着作用を有する吸着剤により吸着除去でき、特に有害なアルデヒド類をCo3O4を主成分とする酸化物の触媒作用により常温でカルボン酸へ転化し、吸着剤により吸着除去できる脱臭体を実現できる。
【0008】
第2の発明は、吸着剤が疎水性ゼオライトである請求項1記載の脱臭体とするもので、シリカ分を高めたゼオライトは極性が小さくなるため、非極性の臭気分子を吸着できるようになり、また雰囲気の湿度に依存することなく臭気分子を吸脱着できるようになるため、多様な臭気分子を吸着除去できる脱臭体を実現できる。
【0009】
第3の発明は、担体が有機繊維から構成されるハニカム構造体である請求項1記載の脱臭体とするもので、耐衝撃性が高く、通気抵抗が小さく、比表面積が大きいため、圧損を抑え、臭気の吸脱着効率が高く衝撃に強い脱臭体を実現できる。
【0010】
第4の発明は、酸化物が少なくとも吸着剤表面に担持されている請求項1もしくは請求項2記載の脱臭体とするもので、さらに触媒作用を有する酸化物の分散性を高め、比表面積を大きくすることができ、また吸着剤と近接しているため転化により生成したカルボン酸を速やかに吸着剤へ移動させることで酸化物表面が清浄になるためにカルボン酸への転化率の高い脱臭体を実現できる。
第5の発明は、吸着剤へ吸着したカルボン酸は通気により脱着し、繰り返し使用可能な請求項1もしくは請求項2記載の脱臭体とするもので、吸脱着しやすい吸着剤であるゼオライトを担持した脱臭体に通気することにより、飽和吸着に達したゼオライトが脱着再生され、メンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭体を実現できる。
【0011】
第6の発明は、酸化物はスピネル型構造である請求項1もしくは請求項4記載の脱臭体とするもので、スピネル型構造の酸化物触媒がアルデヒド類を酸化し岩塩型構造となり、次に岩塩型構造が空気中の酸素により酸化されスピネル型構造に戻り、その繰り返しで触媒作用を発揮するため、スピネル型構造を選択することでアルデヒド類をカルボン酸へ転化する性能が高く、カルボン酸への転化率の高い脱臭体を実現できる。
【0012】
第7の発明は、酸化物中のナトリウムおよびカリウム成分は1wt%未満である請求項1、4、6いずれか1項に記載の脱臭体とするもので、ナトリウムやカリウムなどが陽イオンの状態で存在すると、電子の授受を阻害し触媒作用の低下をまねくため、その量を少なくすることでアルデヒド類をカルボン酸へ効率良く転化できる脱臭体を実現できる。
【0013】
第8の発明は、アルデヒド類はアセトアルデヒドであり、カルボン酸は酢酸である請求項1記載の脱臭体とするもので、アセトアルデヒドはタバコや建材の接着剤等に多く含まれている発ガン性を有すると言われている有害な物質で、それを有害性が少ない酢酸に転化し、ゼオライトにより除去できる脱臭体を実現できる。
【0014】
第9の発明は、少なくとも臭気を含む空気を導入する吸気口と、前記臭気を含む空気を吸気する吸気手段と、前記吸気手段により吸気した空気に含まれる臭気を脱臭するフィルタと、前記フィルタにより脱臭された空気を室内あるいは車内へ導入する導入口と、前記フィルタから脱着した臭気を室外あるいは車外へ排気する排気口とを備え、前記フィルタが請求項1〜8いずれか1項に記載の脱臭体である脱臭装置とするもので、吸着剤を担持した脱臭体に通気することにより、飽和吸着に達した吸着剤から脱着した臭気が室外もし
くは車外に排気されることで、メンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭装置を実現できる。
【0015】
第10の発明は、吸込部から吹出部に至る通風路に、室内熱交換器と前記室内熱交換器にて温度調整された空気を室内に送り出す室内送風機と、吸入した空気に含まれる臭気を脱臭するフィルターを備え、空気調和機の空調運転停止中に、室内熱交換器を加熱し、前記室内熱交換機により暖められた空気の少なくとも一部が室内機内を循環する、クリーニング運転機能を設け、前記フィルターが請求項1〜8いずれか1項に記載の脱臭体である空気調和機とするものである。吸着剤を担持した脱臭体に高温の空気を通気することにより、吸着剤から臭気が脱着し、メンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭機能を備えた空気調和機を実現できる。
【0016】
第11の発明は、請求項10において、室内機通風路内の空気を室外に排気する排気機能を備え、クリーニング運転の実施中乃至は実施後に、前記排気手段を動作させる空気調和機とするものである。吸着剤を担持した脱臭体に高温の空気を通気させ、吸着剤から脱着した臭気を室外に排気することで、脱着した臭気成分により室内環境を著しく損ねることを更に緩和、あるいは防ぐことができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1(a)は本発明の第1の実施の形態における脱臭体を示す外観模式図であり、(b)は脱臭体表面の拡大模式図である。脱臭体1は、担体3としてポリエチレンテレフタレートを代表とするポリエステル繊維やセルロース繊維などの有機繊維から構成される平板および波形板を交互に積層されたハニカム構造体であり、通気方向2へ低い通気抵抗で通気することができる。
【0019】
担体3は、物理吸着作用を有する吸着剤4(以下、本実施の形態では物理吸着剤4という)および触媒作用を有する酸化物5(以下、本実施の形態では触媒酸化物5という)を表面に担持する。物理吸着剤4や触媒酸化物5を担体3にアンカー効果もしくは物理的な結合もしくは化学的な結合などの作用により結合させ、担持されている。このときバインダを添加し、前記効果を高めると良いが、添加量が多い場合、吸着効果や触媒活性を低下させる原因となり、少ない場合、担体3との密着力が低下し、剥がれ落ちやすくなる。望ましくは、物理吸着剤4とバインダとの固形分が重量比で1:1〜20:1程度である。また、バインダは無機系としてはナトリウムやカリウム成分を極力除去したコロイダルシリカ、リン酸アルミニウムなどが適しており、有機系としては水に酢酸ビニル、アクリル、エチレン、ビニルアルコール、変性ウレタンなどの樹脂粒子や、これらの樹脂からなる共重合樹脂粒子を分散させた水系エマルジョン型接着剤を用いるのが望ましい。この有機系バインダは、水を蒸発させることにより、樹脂粒子や共重合樹脂粒子の濃度が高くなり、そしてこれら粒子の表面同士がくっつき始め、粒子表面が互いに溶け合い、被膜を形成することで接着作用が発揮される。このように樹脂皮膜となるため、有機繊維に担持後も加工性に優れる一方で、無機系バインダより触媒性能は劣るという短所もある。
【0020】
物理吸着剤4は、ゼオライト、シリカゲル、セピオライト、アルミナ、活性炭等の物理吸着作用を有する物質が用いられるが、臭気物質の吸脱着速度が速いゼオライトが最も望ましく、特にシリカ/アルミナ比が大きいため極性が小さい疎水性ゼオライトを用いるとよい。これにより、非極性の臭気分子も吸着するようになり、また雰囲気の湿度に依存することなく臭気分子を吸脱着できるため、多様な臭気分子を吸脱着できる脱臭体を実現できる。また、ゼオライトやセピオライト等にはナトリウムやカリウム成分を極力除去した
ものを用いることが望ましい。これによりアルデヒド類からカルボン酸への転化率が向上する。
【0021】
本実施の形態で用いた疎水性ゼオライトは0.1〜10μm程度の径であるが、この大きさに限定されるものではない。しかしながら、大きさを小さくした方が、同体積での表面積を大きくとることができるので好ましい。さらに、物理吸着剤4の形は図中にあるような球状に限定されるものではなく、また実際は物理吸着剤4の一次粒子が集まり、二次粒子を形成したり、さらには三次粒子を形成したりした粒子が担体3へ担持されていると考えられる。脱臭体の表面に凹凸を設けることにより、単位体積あたりの表面積を増やすことができるようになり、より効果的である。
【0022】
本実施の形態では、脱臭体1に有機繊維で構成される平板および波形板を交互に積層されたハニカム構造体を用いたが、物理吸着剤4と触媒酸化物5との混合物を格子状に押出成型を行ったハニカム構造体を用いても良い。これにより、バインダを用いることがなくハニカム構造体全体を物理吸着剤4と触媒酸化物5とにすることができるので、吸着効果およびカルボン酸への転化率が高い脱臭体を実現できる。
【0023】
触媒酸化物5は、コバルトを主成分とする酸化物でスピネル型の結晶構造のCo3O4とすることが望ましい。その他、Mn、Fe、Ni、Cu、Znなどの遷移金属を加え、スピネル型構造の複合酸化物としても良い。これは、スピネル型構造の酸化物触媒がアルデヒド類を酸化し岩塩型構造となり、次に岩塩型構造が空気中の酸素により酸化されスピネル型構造に戻り、その繰り返しで触媒作用を発揮するため、スピネル型構造を選択することでアルデヒド類をカルボン酸へ転化する性能が高く、カルボン酸への転化率の高い脱臭体を実現できる。また、本実施の形態で用いた触媒酸化物5も0.1〜10μm程度の径であるが、この大きさに限定されるものではない。しかしながら、大きさを小さくした方が、同体積での表面積を大きくとることができるので好ましい。さらに、触媒酸化物5の形も図中にあるような球状に限定されるものではなく、また実際は触媒酸化物5の一次粒子が集まり、二次粒子を形成したり、さらには三次粒子を形成したりした粒子が担体3へ担持されていると考えられる。触媒酸化物5もアンカー効果もしくは物理的な結合もしくは化学的な結合などの作用により、担体3あるいは物理吸着剤4に担持されている。
【0024】
次に担持方法について説明する。物理吸着剤4と触媒酸化物5との担体3への担持方法については、スプレーなどを用いた噴霧法、ディップ法などあるが、担体3が無機繊維の場合、物理吸着剤4と触媒酸化物5と必要に応じてバインダを水や溶剤などに分散させ、ハニカム構造体をそのスラリーに浸漬することで担持するディップ法が望ましい。また担体3が有機繊維の場合、抄紙工程中に有機繊維に加えて物理吸着剤4と触媒酸化物5とを混合しておくことで抄紙を行い、これらを担持させることができる。ディップ法の場合、粉末状の物理吸着剤4と触媒酸化物5とを分散させスラリーを作製するが、物理吸着剤4および触媒酸化物5の平均径は小さい方が望ましく、一次粒子の平均径で1μm以下程度が望ましい。さらには、なるべく凝集が起こらないように水や溶媒に分散させることが望ましく、必要に応じて分散剤を添加すると良い。
【0025】
以下、脱臭体に対する実験例を示す。
(実験1)
疎水性ゼオライトと、四三酸化コバルトCo3O4(以下、本実施の形態ではコバルト触媒Aという)を水に分散させ、バインダとして固形分濃度20wt%のナトリウムフリーのコロイダルシリカ(以下、本実施の形態ではバインダAという)を加え、水と疎水性ゼオライトとコバルト触媒AとバインダAとの比が8:1:1:1のスラリー(以下、本実施の形態ではスラリーAという)を作製した。
【0026】
また、疎水性ゼオライトと、コバルト触媒Aを水に分散させ、バインダとしてナトリウム安定型コロイダルシリカ(以下、本実施の形態ではバインダBという)を加え、水と疎水性ゼオライトとコバルト触媒AとバインダBとの比が8:1:1:1のスラリー(以下、本実施の形態ではスラリーBという)を作製した。
【0027】
また、コバルト触媒Aを水に分散させ、バインダAを加え、水とコバルト触媒AとバインダAとの比が4:1:1のスラリー(以下、本実施の形態ではスラリーCという)を作製した。
【0028】
次に、セルロース繊維からなるハニカム構造体(120×36×t10、160セル/inch2)を3つ用意した(以下、本実施の形態ではそれぞれ、ハニカムA、ハニカムB、ハニカムCという)。ハニカムAをスラリーAへ、ハニカムBをスラリーBへ、ハニカムCをスラリーCへ各々浸漬し、130℃での乾燥を2回繰り返し、各々に0.1g/ccで担持した。なおハニカムBは、重量が9.8gで計算上ナトリウム分が約1wt%含有しているものである。
【0029】
また、白金を30mg担持したセルロース繊維からなるハニカム構造体と、マンガン:コバルトが3:1の複合酸化物を0.05g/cc担持したハニカム構造体(120×36×t10、160セル/inch2)を用意した(以下、本実施例ではそれぞれハニカムD、Eという)。
【0030】
作製した3種類および用意した2種類のハニカムサンプルそれぞれにアセトアルデヒドを空間速度(以下、SVという)1200、濃度100ppmで連続通気を行い、入口側と出口側のアセトアルデヒド濃度をガスクロマトグラフ(検出器FID)により測定した。また、出口側の酢酸濃度を検知管により測定した。結果を(表1)に示す。なお、ハニカムAを用いた実験が実施例1、ハニカムBを用いた実験が実施例2、ハニカムCを用いた実験が実施例3、ハニカムDを用いた実験が比較例1、ハニカムEを用いた実験が比較例2である。
【0031】
【表1】

【0032】
(表1)より、コバルト触媒Aはアセトアルデヒドを酢酸に変える触媒として働き、また白金などと比較して高い活性を有している。また、アセトアルデヒドから変わった酢酸はゼオライトに吸着保持されることが可能である。さらには、ナトリウムを含む実施例2は一度活性が落ち、また元に戻っている。これは、ナトリウムがイオン状態となり、コバルト触媒A、酸素、アセトアルデヒド間の電子の授受を阻害するためであると考えられ、酢酸ナトリウムなどの化合物を形成することでカチオンが少なくなり、電子授受の影響をなくすことができると考えられる。
(実験2)
疎水性ゼオライトとコバルト触媒Aを水に分散させ、バインダAを加え、水と疎水性ゼオライトとコバルト触媒AとバインダAとの比が8:1:1:1のスラリー(以下、本実施の形態ではスラリーDという)と、活性炭とコバルト触媒Aとを水に分散させ、バインダAを加え、水と活性炭とコバルト触媒AとバインダAとの比が8:1:1:1のスラリー(以下、本実施の形態ではスラリーEという)を作製した。
【0033】
次に、セルロース繊維からなるハニカム構造体(120×36×t10、160セル/inch2)を2つ用意した(以下、本実施の形態ではそれぞれ、ハニカムD、ハニカムEという)。ハニカムDをスラリーDへ、ハニカムEをスラリーEへ各々浸漬し、130℃での乾燥を2回繰り返し、各々に0.1g/ccで担持した。
【0034】
作製した2種類のハニカムサンプルにファンを取り付け、各サンプルをそれぞれ10ppmのアセトアルデヒド濃度に調整した40L容器の中へ入れた。容器内の温度は約20℃であった。270L/minの流量でサンプルを通過するようにファンを調整し、実験開始から60分後の酢酸濃度を検知管により測定した。
【0035】
実験後、それぞれのサンプルを容器から取り出し、臭気のない場所でファンを作動させ、約20℃で40分間通気を行った。その後、上記実験を行った。これら一連の実験、通気を10回繰り返した。(表2)に実験結果を示す。なお、ハニカムDを用いた実験が実施例4、ハニカムEを用いた実験が比較例3である。なお「N.D」は検出限界(0.05ppm)以下を示す。
【0036】
【表2】

【0037】
(表2)より、実施例4については10回目の酢酸濃度が0.1ppmと小さく、比較例3は1.0ppmと大きい。これは、ゼオライトは活性炭と比較して、通気により酢酸が脱着され再生率が高いことを示している。
【0038】
これらより、酸化コバルト触媒とゼオライトによりアセトアルデヒドを常温で酢酸へと転化し、吸着除去できる脱臭体を実現でき、また通気による脱着で物理吸着作用を有する吸着剤を再生させることができるので、メンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭体を提供することができる。
【0039】
(実施の形態2)
図2は本発明の第2の実施例における脱臭体の模式図である。部屋あるいは車10内部に脱臭装置11が設置されている。脱臭装置11は吸気手段13と、吸気口14と、脱臭用のフィルタ15と、脱臭された空気を部屋に戻す導入口17と、臭気を含む空気20を部屋あるいは車内から排気する排気口19からなる。また、導入口17と排気口19との間には、これらを切り替える切替弁18がある。なお、本発明の脱臭装置は空気調和機や換気扇等に取り付けて、あるいは組み込んで用いることもできる。
【0040】
吸気手段13はシロッコファン、ターボファン、プロペラファン、クロスフローファン、貫流ファン等が一般の吸気手段として使用され、特に限定するものではない。本実施の形態ではプロペラファンを用いた。また、吸気手段13はフィルター15への送風手段としても用いることができる。
【0041】
次に動作方法について説明する。部屋あるいは車10内で臭気が発生した場合、脱臭装置11は臭気を含む空気12を吸気手段13により吸気口14を通して吸い込み、フィルタ15を通り脱臭され、脱臭された空気16は導入口17を通り、部屋10へ戻される。フィルタ15が飽和吸着に達し、部屋あるいは車10内に臭気がない場合、切替弁18によって通気方向を室外へ排出する排気口19側へ切り替え、吸気手段13を作動させ通気させることにより、臭気が飽和吸着した物理吸着作用を有する吸着剤から臭気を脱着させ、脱着させた臭気を含む空気20を室外あるいは車外へ排出することができる。
したがって、この動作を繰り返すことにより、メンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭装置を実現できる。
【0042】
(実施の形態3)
図3は、本発明の第10および11の実施の形体における空気調和機の冷凍サイクル構成図、図4は、同空気調和機の室内機の構成を示す概略断面図、図5は、同空気調和機の制御内容を示すブロック図である。
【0043】
図3において、301は圧縮機、302は四方弁、303は室外熱交換器、304は減圧機、305は室内熱交換器であり、順次冷媒を通す冷媒配管で接続してヒートポンプ式の冷凍サイクルを形成している。また、306は室内熱交換器305に通風する送風手段となる室内ファン、307は室内熱交換器305を構成する配管(図示せず)の温度を検知する配管温センサ、308は室外熱交換器303に通風する室外ファンである。309は、室内と室外とを連通するダクト(図示せず)を介して、室内機313の通風路中の空気を室外に排出するための排気ファンである。圧縮機301と、四方弁302と、室外熱交換器303と、室外ファン308は、本実施の形態における空気調和機の室外機(図示せず)に内蔵されている。
【0044】
室内機313は、図4に示すように、室内熱交換器305と、室内ファン306と、排気ファン309と、通風路を形成するケーシング310と、室内熱交換器305で熱交換された空気を吹き出す吹出部314に設けられ吹き出される風の向きを変える風向偏向羽根311と、通風路を通過する空気の臭気を除去する脱臭体のフィルタ312から構成されている。また、315は、空気調和機の運転をリモートコントロールするためのリモコンであり、ユーザがリモコン315上で様々な操作をおこなうことが可能となっている。
【0045】
次に、上記構成による空気調和機の空調作用について説明する。
【0046】
暖房運転時においては、圧縮機301で吸入し圧縮された冷媒は、四方弁302を経て室内熱交換器305に送られ、ここで凝縮液化する。室内熱交換器305を出た冷媒は減
圧機304で減圧され室外熱交換器303に導かれ、ここで冷媒が蒸発して室外空気(外気)から蒸発潜熱を奪い気化する。そして室外熱交換器303を経た冷媒は、再び四方弁302を経て圧縮機301に吸入される。
【0047】
以上のように構成された空気調和機において、以下にその実施の形態について詳述する。
【0048】
図4(a)は空気調和機の室内機313が空調運転をしている様子を概略断面図に示したものである。
【0049】
ユーザがリモコン315を操作し、空気調和機の空調運転を指示すると、該指令を受け図5の320に示す室内機313に内蔵された制御装置により、配管温センサ307で室内熱交換器305の温度を検知しながら圧縮機301や四方弁302、室内ファン306、風向偏向羽根311などに必要に応じて制御信号が送られ空調運転を開始する。
【0050】
このとき室内機313の据え付けられた室内に各種の臭気が存在している場合、吸込部から吹出部314に至る通風路中に配置されているフィルタ312によって室内の臭気成分を吸着除去することができる。
【0051】
なお、空気調和機においては冷房運転中は室内機内部が多湿環境となるため、フィルタ312を構成する吸着剤は疎水性ゼオライトがもっとも望ましいが、吸着剤の種類はこれに限定するものではない。
【0052】
次に、本実施の形態の空気調和機に設けられている、クリーニング運転機能について詳述する。
【0053】
図5において、室内機313に内蔵された制御装置320は、室内熱交換器305を加熱する暖房運転をおこなうことにより、前記室内熱交換機305に付着した臭気の脱着乃至は室内機313の内部の乾燥もしくはヒートショックによりカビ類の繁殖を抑制するクリーニング運転をおこなわせる、クリーニング運転指示手段321を備えている。制御装置320からは、圧縮機301、室内ファン306、排気ファン309、風向偏向羽根311に必要に応じて制御信号が送られる。
【0054】
空気調和機の運転中にリモコン315から停止指令が出されたとき、該指令を受けクリーニング運転指示手段321により、所定の温度T[℃](例えば40℃)を、クリーニング運転における室内熱交換器305の目標温度に設定し、クリーニング運転指示手段321により、配管温センサ307で室内熱交換器305の温度を検知しながら圧縮機301や室内ファン306を制御し、室内熱交換器305の温度を目標温度T[℃]に調節し、クリーニング運転を所定の時間M[分](例えば60分)おこなう。
【0055】
このとき同時に、図4(b)に示すように、臭気除去運転指示手段321により、吹出部314から吹き出される空気をショートサーキットさせる位置へ風向偏向羽根311の位置の制御をおこなう
この結果、室内機313の通風路を室内熱交換機305により加熱された空気が循環し、フィルタ312を高温の空気が通気することとなり、フィルタ312を構成する飽和吸着した物理吸着作用を有する吸着剤から臭気を脱着させることができる。
【0056】
したがって、運転終了毎にクリーニング運転として暖房運転を実施することにより、空気調和機においてメンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭機能を実現できる。
【0057】
ここで示したのは、リモコン315から発せられた空気調和機の空調運転停止指令を受けて自動的にクリーニング運転としての暖房運転を実施する形態であるが、クリーニング運転の開始をユーザが手動で指示する形態や空調運転開始前にクリーニング運転を自動的に実施する形態など、クリーニング運転を実施するタイミングを任意に定めても同様の効果が期待できるのはいうまでもない。
【0058】
こうしてクリーニング運転により、フィルタ312から臭気成分発生量が徐々に増加してくるが、このとき同時に臭気除去運転指示手段321により排気ファン309に運転指令を出し、室内機313の通風路内の空気を空気をダクトを介して室外に排気するようにすると、吹出部314から吹き出される空気は、風向偏向羽根311によりショートサーキットしており、また排気ファン309の動作により臭気成分が室外に放出され、臭気成分の室内放出を低下させることができるため、室内環境の快適性を損なうことなく、メンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭機能を空気調和機に付加することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明にかかる脱臭体および脱臭体を用いた脱臭装置は、上述したように生活空間で発生する臭気を吸着除去でき、特に有害なアセトアルデヒドを常温で有害性の小さい酢酸へと転化し、吸着除去できる脱臭体を提供することができ、また人の手を煩わすことなく自動的に吸脱着を制御し、メンテナンスフリーで長期間使用できる脱臭装置を提供することができる。
【0060】
さらに、脱臭体は空気調和機、生ごみ処理機、VOC分解機、介護用脱臭機などへ搭載することにより、メンテナンスフリーで長期間利用できる脱臭機能、有害物質分解機能を付加することができるものである。また、脱臭装置は部屋に設置された空気調和機や換気扇、車のカーエアコン等と連動させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(a)本発明の第1の実施の形態における脱臭体を示す外観模式図(b)本発明の第1の実施の形態における脱臭体表面の拡大模式図
【図2】本発明の第2の実施の形態における脱臭装置を示す模式図
【図3】本発明の第3の実施の形態における空気調和機の冷凍サイクル構成図
【図4】本発明の第3の実施の形態における空気調和機の室内機の構成を示す概略断面図
【図5】本発明の第3の実施の形態における空気調和機の制御内容を示すブロック図
【符号の説明】
【0062】
1 脱臭体
2 通気方向
3 担体
4 物理吸着作用を有する吸着剤
5 触媒作用を有する酸化物
10 部屋あるいは車
11 脱臭装置
12 臭気を含む空気
13 吸気手段
14 吸気口
15 フィルター
16 脱臭された空気
17 導入口
18 切替弁
19 排気口
20 臭気を含む空気
301 圧縮機
302 四方弁
303 室外熱交換機
304 減圧機
305 室内熱交換機
306 室内ファン
307 配管温センサ
308 室外ファン
309 排気ファン
310 ケーシング
311 風向偏向羽根
312 フィルタ
313 室内機
314 吹出部
315 リモコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理吸着作用を有する吸着剤と、コバルトを含み触媒作用を有する酸化物と、前記吸着剤および前記酸化物とを担持する担体とから構成され、前記酸化物がアルデヒド類をカルボン酸へ転化後、前記吸着剤で吸着除去することを特徴とした脱臭体。
【請求項2】
吸着剤が疎水性ゼオライトである請求項1記載の脱臭体。
【請求項3】
担体が有機繊維から構成されるハニカム構造体である請求項1記載の脱臭体。
【請求項4】
酸化物が少なくとも吸着剤表面に担持されている請求項1もしくは請求項2記載の脱臭体。
【請求項5】
吸着剤へ吸着したカルボン酸は通気により脱着し、繰り返し使用可能な請求項1もしくは請求項2記載の脱臭体。
【請求項6】
酸化物はスピネル型構造である請求項1もしくは請求項4記載の脱臭体。
【請求項7】
酸化物中のナトリウムおよびカリウム成分は1wt%未満である請求項1、4、6いずれか1項に記載の脱臭体。
【請求項8】
アルデヒド類はアセトアルデヒドであり、カルボン酸は酢酸である請求項1記載の脱臭体。
【請求項9】
少なくとも臭気を含む空気を導入する吸気口と、前記臭気を含む空気を吸気する吸気手段と、前記吸気手段により吸気した空気に含まれる臭気を脱臭するフィルタと、前記フィルタにより脱臭された空気を室内あるいは車内へ導入する導入口と、前記フィルタから脱着した臭気を室外あるいは車外へ排気する排気口とを備え、前記フィルタが請求項1〜8いずれか1項に記載の脱臭体である脱臭装置。
【請求項10】
吸込部から吹出部に至る通風路に、室内熱交換器と前記室内熱交換器にて温度調整された空気を室内に送り出す室内送風機と、吸入した空気に含まれる臭気を脱臭するフィルタを備え、空気調和機の空調運転停止中に、室内熱交換器を加熱し、前記室内熱交換機により暖められた空気の少なくとも一部が室内機内を循環する、クリーニング運転機能を設け、前記フィルタが請求項1〜8いずれか1項に記載の脱臭体であることを特徴とする空気調和機。
【請求項11】
室内機通風路内の空気を室外に排気する排気機能を備え、クリーニング運転の実施中乃至は実施後に、前記排気手段を動作させることを特徴とする請求項10に記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−105215(P2007−105215A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298646(P2005−298646)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】