説明

脱臭装置

【課題】脱臭と消音の両方の効果を得ると共に、イニシャルコスト及びランニングコストの低減化を図る。
【解決手段】本発明に係る脱臭装置4は、円筒形状の外筒10と、外筒10の内部に設けられる通気性を有する中筒14と、中筒14の内部に設けられる通気性を有する内筒15と、中筒14と内筒15との間空間に脱臭剤16が充填されて形成される脱臭剤層と、流路13に連通するように外筒10の外周側面に設けられる吸込口6と、中筒14の吸気口6に対応する位置に設けられる非通気性の分流板19と、内筒15の内部に形成される空洞部9の上部に連通する排出口8と、を備え、側方断面視において、流路13の断面積が吸込口6の断面積より大きくなるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気を除去するための脱臭装置に関するものであって、具体的には、集塵装置の排気側に設けた脱臭装置において、脱臭剤である活性炭を搭載して脱臭すると共に、集塵装置の排気音や、脱臭装置から発生する騒音を低減することのできる脱臭装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋳物を製造する鋳造ラインでは、製造時に発生する塵埃と共に、アンモニア、ホルムアルデヒド、フェノールなどを含んだ独特の鋳物臭が発生するため、作業現場の環境改善が求められている。
【0003】
これらの塵埃、鋳物臭を集塵脱臭除去するための従来の装置は、一般的に、塵埃を集塵するための集塵装置と、鋳物臭を除去するための脱臭装置と、空気を吸引するための駆動源となるブロアーと、を備えて構成されている。
【0004】
このうち脱臭装置は、集塵装置に比べて様々な付帯設備が必要な場合が多く、例えば、薬液を用いた薬液散布装置、充填材などを備えた脱臭装置、薬液を循環するための循環ポンプ、薬液や水を供給する流路、排液を処理するための廃液処理槽などの付帯装置から構成されているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、他の脱臭装置としては、通気性のある内筒と外筒とで形成した円筒状の間隙に、吸着濾材を充填して該間隙の上下端を閉鎖し、前記内筒の空洞上方部に該内筒上端との気密を保って軸流ファンの風洞部を設け、下端部から吸着濾材を経て風洞部に至る通気路を形成するように構成されたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−194351号公報
【特許文献2】実開昭60−91230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載の薬液洗浄による脱臭装置は、上記したように様々な付帯装置が必要となり、イニシャルコストが増大するといった問題がある。また、稼働する際に、薬液を供給したり、使用済みの薬液を廃液したりする必要があるため、ランニングコストが増大し、さらに、廃液の処分が必要となるため、ユーザ側の負担が大きくなるといった問題もある。
【0008】
また、脱臭装置などの設備から発生する騒音については、工場周辺の居住者の生活環境が損なわれないように「騒音規制法」によって規制され、騒音防止対策が求められているが、特許文献1に記載の脱臭装置からは、臭気ガスが脱臭装置内で脱臭されて排気される際に発生する騒音や、散布装置から薬液が散布される際に発生する騒音や、循環ポンプが運転する際に発生する騒音など、多くの騒音が発生するため、例えば、騒音源の周囲にグラスウールなどの防音材を巻きつけたり、排気箇所に消音器を取付けたりするなどの騒音対策を施す必要がある。そのため、騒音対策のためのコストが増大し、脱臭装置のコストアップの要因になるといった問題が生じている。
【0009】
一方、特許文献2に記載の脱臭装置は、電動機や排気音の騒音対策として、例えば、排気口に消音器を取付けたり、脱臭装置全体から発せられる騒音対策として、例えば、装置周囲にグラスウールなどの防音材を巻きつけたりする必要があるため、上記した特許文献1に記載の脱臭装置の場合と同様に、騒音対策のためのコストが増大し、脱臭装置のコストアップの要因になるといった問題がある。
【0010】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、鋳物臭などの臭気を除去するための脱臭装置において、イニシャルコスト及びランニングコストの低減化を図り、廃液の処分などの負担をユーザ側に掛けるのを防止すると共に、騒音を低減するために新たに防音材や消音器などの騒音対策部品を設置する必要のない騒音低減機能を備えた脱臭装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る脱臭装置は、円筒形状の外筒と、該外筒の内部に設けられる通気性を有する中筒と、中筒の内部に設けられる通気性を有する内筒と、前記中筒と前記内筒との間空間に脱臭剤が充填されて形成される脱臭剤層と、前記流路に連通するように前記外筒の外周側面に設けられる吸込口と、前記中筒の前記吸込口に対応する位置に設けられる非通気性の分流板と、前記内筒の内部に形成される空洞部の上部に連通する排出口と、を備え、側方断面視において、前記流路の断面積が前記吸込口の断面積より大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、比較的、簡素な構造のため、イニシャルコストの低減化を図ることができる。また、外筒及び中筒、内筒が円筒形状を有しているため、それらの周辺を流れる旋回気流に対する抵抗が少なく、効率の向上を図ることができる。さらに、吸込口より進入する臭気を含んだ空気が分流板に衝突することにより、流路内の気流を分流させるため、脱臭剤の負荷の偏りをなくし均一化させ、脱臭剤の効果を延ばすことができる。さらにまた、吸込口に対応する位置に分流板を設けることによって、吸込口から流路内に流入する勢いのある空気が直接、脱臭剤に接触することを防ぐことができるため、脱臭剤が気流により破砕することを防止することができる。さらにまた、円筒形状の中筒と内筒の間の空間に脱臭剤を充填させて脱臭剤層を円筒形状に形成しているため、平面視円周上における空気抵抗が同じになり、ムラ無く平均的に脱臭剤を利用することができ、経済的である。さらに、側方断面視において、流路の断面積が吸込口の断面積より大きくなるように構成することにより、膨張型(拡張型)マフラーの構成となり、防音材や消音器などの騒音対策部品を使用することなく、コストを掛けずに脱臭装置から発生する騒音を低下させることができ、経済性を高めることができる。
【0013】
また、本発明に係る脱臭装置は、側方断面視において、前記流路の断面積が前記吸込口の断面積の2倍以上となるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、吸込口を通過する風速に対して流路の断面積を通過する風速が1/2以下に下がるため、膨張マフラーの効果がより大きくなり、消音効果をさらに高めることができる。
【0015】
また、本発明に係る脱臭装置は、前記中筒と前記脱臭剤層との間と、前記内筒と前記脱臭剤層との間に、それぞれ、非金属製のメッシュ部材が介装されており、該メッシュ部材は前記脱臭剤より細かい網目により構成されていることを特徴とする。
【0016】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、内筒や中筒が金属製の場合、酸性ガス脱臭剤と内筒及び中筒が直接接触し、長期間その状態が継続すると、電蝕(電腐)が発生して、接触部分である内筒及び中筒が腐食してしまうおそれがあるが、非金属製のメッシュ部材をその間に設けることにより、脱臭剤と内筒及び中筒との直接接触を防ぎ、電蝕(電腐)の発生を抑制し、内筒及び中筒を腐食から防ぐことができる。また、脱臭剤より細かい網目を有するメッシュ部材を設けることによって、脱臭剤が外部に漏れ出す危険性が無くなり、特に排出口から脱臭剤が洩れて大気に飛散する大気汚染などの事故を防止することができる。
【0017】
また、本発明に係る脱臭装置は、前記脱臭剤は活性炭により構成されていることを特徴とする。
【0018】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、脱臭剤に再使用可能な活性炭を使用しているため、ランニングコストの低減化を図ることができる。また、活性炭は、脱臭効果とともに、消音効果も備えているので、コストを掛けずに騒音を低下させることができ、経済性をさらに高めることができる。
【0019】
また、本発明に係る脱臭装置は、前記中筒及び前記内筒が、多数の小孔が一定間隔毎に形成されたパンチング材により構成されていることを特徴とする。
【0020】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、パンチング材に設けた規則正しい多孔により、脱臭剤層を偏り無く均一に使用することができるため、脱臭剤を有効に使用することができ、経済性をさらに高めることができる。
【0021】
また、本発明に係る脱臭装置は、前記中筒及び前記内筒が、上方に向かって次第に孔径が大きくなるように多数の小孔が形成されたパンチング材により構成されていることを特徴とする。
【0022】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、脱臭装置内の気流は、下方に比べて上方に流れやすくなるため、気流を上方向に制御して上部の脱臭剤に流すことにより、脱臭剤の使用効率を向上させる共に、騒音を上方に逃がすことで、大地に伝播して感じる騒音や振動を低減させることができる。
【0023】
また、本発明に係る脱臭装置は、側方視において、前記分流板の面積が前記吸込口の開口面積より大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0024】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、吸込口から進入した気流は、分流板に接触することにより、衝突時の衝撃を緩和しながら、スムーズに脱臭装置内で左右に分流、拡散し、円筒形状に形成された脱臭剤層を偏り無く均一に使用することができ、全体的な脱臭剤の脱臭性能を向上させることができる。また、側面視において、分流板の面積を吸込口の開口面積よりも大きくすることにより、吸込口から勢い良く進入してくる臭気を帯びた空気を、確実に分流板に衝突させて左右又は上下に分流させることができ、直接、その空気が脱臭剤層に接触することを防ぎ、脱臭層の破砕を防止することができる。
【0025】
また、本発明に係る脱臭装置は、前記吸込口が、前記外筒の高さ方向の中間位置に設けられていることを特徴とする。
【0026】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、吸込口を高さ方向の中間位置付近に設けることにより、吸込口を境にした流路の上下のスペースが同程度の広さとなるため、分流板に衝突して上下方向に分流される空気量もほぼ同程度となり、気流の速度及び圧力損失も偏りなく同程度となり、圧力損失が上下いずれか一方のスペースだけ高くなるようなことがない。したがって、バランス良く均一に空気量を分流可能とし、駆動源であるブロアーに余分な負荷を掛けることがなく、さらに効率を高めることができる。
【0027】
また、本発明に係る脱臭装置は、前記外筒と前記中筒と前記内筒とが一体となって高さ方向に複数段に分割可能に設けられており、該分割された外筒と中筒と内筒とから成る各ユニット同士はフランジ継手を介して接続されていることを特徴とする。
【0028】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、外筒、中筒、内筒で構成されたユニット同士がフランジ継手を介して容易に着脱可能となるため、用途(脱臭能力、消音能力)に合わせて簡単にユニットの段数を増減させることができ、適宜、最適なユニット数に選定、変更することができる。
【0029】
また、本発明に係る脱臭装置は、前記吸込口が、前記ユニットのうち、高さの中間位置に最も近いユニットに設けられていることを特徴とする。
【0030】
この特徴を備えた脱臭装置によれば、吸込口を境にして流路の上下のスペースが同程度の広さとなるため、分流板に衝突して上下方向に分流される空気量も、ほぼ同程度となり、気流の速度及び圧力損失も偏りなく同程度となり、圧力損失が一方だけ高くなるようなことがない。したがって、バランス良く均一に空気量を分流可能とし、駆動源であるブロアーに余分な負荷を掛けることがなく、さらに効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る脱臭装置によれば、優れた脱臭効果を得ることができると共に消音効果を得ることができる。また、イニシャルコスト及びランニングコストを低減することができ、防音材や消音器などの騒音対策部品を使用することなく、コストを掛けずに騒音を低下させることができ、経済性を高めることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る脱臭装置と集塵装置及びブロアーを備えた集塵・脱臭システムを示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る脱臭装置を示す正面図である。
【図3】図2のB部分を拡大して示す断面図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】図4のC−C断面図である。
【図6】図5のD−D断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る脱臭装置において、吸込口を設ける最適なユニットの位置を示す側面図であり、(a)はユニットが2段の場合を示し、(b)はユニットが3段の場合を示し、(c)はユニットが4段の場合を示し、(d)はユニットが5段の場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る脱臭装置について説明する。
【0034】
先ず、図1を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る脱臭装置を備えた集塵・脱臭システムについて説明する。
【0035】
この集塵・脱臭システムは、鋳物を製造・加工する際に発生するアセトアルデヒドやアンモニアなどの臭気と塵埃を含んだ空気(以下、「含塵空気」と称す。)を処理するためのシステムであり、フィルタ1を搭載した集塵装置2と、集塵装置2の下流側に配置されるブロアー3と、ブロアー3の下流側に配置される脱臭装置4と、により構成されている。そして、集塵装置2の吸込側には含塵空気を集塵装置2に搬送するためのダクト5が接続され、さらに、集塵装置2の排出側とブロアー3の吸込側との間及びブロアー3の排出側と脱臭装置4の吸込口6との間にはそれぞれダクト7が接続され、脱臭装置4の上部には円筒形状の排出口8が接続されている。
【0036】
このように構成された除塵・脱臭システムにおいて、鋳物を製造・加工する設備(図示省略)から発生した含塵空気は、ブロアー3の吸引力によって、集塵装置2内に吸引され、集塵装置2内に搭載されたフィルタ1によって塵埃が集塵濾過される。その後、塵挨が除去された空気は、ブロアー3を経由し、脱臭装置4内において臭気成分が除去され、清浄空気となって排出口8から外部に放出される。
【0037】
次に、図2〜図7を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る脱臭装置4について説明する。
【0038】
本実施の形態に係る脱臭装置4は、円筒形状の外筒10と、外筒10の下方開口部を閉塞するように設けられる底板11と、外筒10の上方開口部を閉塞するように設けられる天板12と、外筒10の内部に外筒10と同心円状に設けられる中筒14と、中筒14の内部に中筒14と同心円状に設けられる内筒15と、中筒14と内筒15との間空間に脱臭剤16が充填されて形成される脱臭剤層17と、流路13に連通するように外筒10の外周側面に接続される円筒形状の吸込口6と、中筒14の吸込口6に対応する位置に設けられる分流板19と、内筒15の内部に形成される円柱形状の空洞部9に連通するように天板12に接続される円筒形状の排出口8と、を備えて構成されている。
【0039】
本実施の形態では、外筒10の直径が3400mm、中筒14の直径が1600mm、内筒15の直径が1300mmで、外筒10と中筒14と内筒15の高さがいずれも7200mmとなるように形成されている。中筒14及び内筒15は、いずれもステンレス製で、孔径が5mmの多数の小孔21,22が8mmの一定間隔毎に形成された開口率34.5%のパンチング材により構成され、通気性を有している。また、このパンチング材には、強度を向上させるために、適宜の間隔で縦横方向に補強板(図示省略)が取り付けられている。
【0040】
外筒10と中筒14と内筒15は、上段、中断、下段の高さ方向3段に分割可能に設けられており、該分割された外筒10と中筒14と内筒15とにより構成される各ユニット27同士はフランジ継手23を介してボルト24及びナット25により互いに締結されている。このように、各ユニット27はフランジ継手23を介して接続される着脱容易な構造を有しているため、ユニット27を簡単に増減することができ、脱臭能力、消音能力に応じて、適宜、最適なユニット27数に選定、変更することができる。
【0041】
各ユニット27の端部には、外筒10と中筒14及び中筒14と内筒15を接続及び補強するため連結板26が、それぞれ、中心角が30度を成すように放射状に12枚ずつ取り付けられており、この連結板26によりユニット27の外筒10と中筒14と内筒15とは一体化されている。なお、連結板26の高さは、脱臭性能や消音性能に影響を与えないようにできる限り低く形成するのが好ましい。
【0042】
脱臭剤層17の脱臭剤16は、活性炭により構成されており、この活性炭としては、例えば、中性ガス用のヤシ殻を原料とした、サイズ4−8メッシュ(1/4インチ四方の目開きを通過し、1/8インチ四方の目開きを通過できない大きさ)の破砕状活性炭を使用することができる。なお、活性炭の種類及びサイズは、含塵空気中に含まれる臭気物質に対応したものを適宜選択すれば良い。
【0043】
脱臭剤層17の上方の天板12には、中筒14と内筒15との間の前記空間に活性炭を充填するための投入口(図示省略)が設けられており、該投入口には開閉可能な蓋(図示省略)が取り付けられ、該蓋を開放させることにより前記空間に活性炭を充填可能となっている。また、脱臭剤層17の下方の底板11には、活性炭の抜取口(図示省略)が設けられており、一定期間経過することによって脱臭能力が衰えて交換時期に達した使用済みの活性炭を前記抜取口から抜き取ることができるようになっている。なお、使用済みの活性炭は、焼成再生技術等により再生して使用することができるので、脱臭剤16として活性炭を使用することにより、ランニングコストの低減化を図ることができる。また、本実施の形態では、脱臭剤層17の径方向の幅は150mmに設定され、流路13の径方向の幅は脱臭剤層17の径方向の幅の2倍の300mmに設定されている。
【0044】
中筒14と脱臭剤層17との間及び内筒15と脱臭剤層17との間には、それぞれ、非金属製のメッシュ部材28が介装されており、メッシュ部材28は、中筒14及び内筒15に対して、適宜の間隔で留め具(図示せず)を用いて固定されている。メッシュ部材28は、通気性に優れたものが使用され、脱臭剤16より細かい網目により形成されている。このように、メッシュ部材28の網目の寸法は、脱臭剤(活性炭)16がメッシュ部材28の外部に漏れ出さないように適宜選択されているため、脱臭剤(活性炭)16がメッシュ部材28の網目を通過することがなく、排出口8から飛散することもない。
【0045】
メッシュ部材28の材質は、耐薬品性に優れたポリプロピレンであり、脱臭剤(活性炭)16と中筒14及び内筒15との間にメッシュ部材28を介装することにより、直接、脱臭剤(活性炭)16と金属製の中筒14及び内筒15とが接触するのを防止することができるため、電蝕(電腐)を防止するこができる。より具体的に説明すると、例えば、長期間その状態が継続することにより、電蝕(電腐)が発生し、脱臭剤(活性炭)16と接触している金属製の中筒14及び内筒15が腐食するおそれがあるが、非金属性のメッシュ部材28を脱臭剤(活性炭)16と中筒14及び内筒15との間に設けることにより、脱臭剤(活性炭)16と中筒14及び内筒15とが直接接触することを防ぐことができるため、電蝕(電腐)の発生を抑制し、中筒14及び内筒15の腐食を防ぐことができる。
【0046】
吸込口6は、側方断面視における断面積X(図5参照)が平面断面視における内筒15の断面積Y(図6参照)及び平面断面視における排出口8の断面積(図示省略)にほぼ等しく、且つ、外筒10の側方断面視における断面積から中筒14の側方断面視における断面積を引いた流路13の断面積Z(図5参照)が吸込口6の前記断面積X及び内筒15の前記断面積Yより大きくなるように形成されている。さらに言うと、吸込口6は、前記断面積Zが吸込口6の前記断面積Xの2倍より大きくなるように形成されているのがより好ましい。
【0047】
このように、外筒10の側方断面視における断面積から中筒14の側方断面視における断面積を引いた流路13の断面積Z(図5参照)が吸込口6の側方断面視における断面積X(図5参照)より大きくなるように形成することにより、集塵装置2から排気された臭気を含んだ空気は、脱臭装置4の吸込口6から流路13内に進入すると、断面積が急激に大きくなることで膨張(拡張)して、速度と圧力が減少し、エネルギーが減衰されて減音される。さらに、前記断面積Zが吸込口6の前記断面積Xの2倍より大きくなるように形成することにより、吸込口6の風速に対して前記断面積Zを通過する風速が1/2以下に下がり、膨張マフラーの効果がより大きくなり、消音に大いに貢献することができる。
【0048】
また、前記断面積Zが内筒15の前記断面積Yより大きくなるように形成することによって、膨張(拡張)して薄くなったエネルギーの空気のうちの内筒15の面積に相当する分だけの空気が脱臭剤層17を通過し、残りの空気は外筒10と中筒14の間で、反射して減衰されて減音されるため、騒音をさらに低減させることができる。
【0049】
また、吸込口6は、外筒10の高さ方向中間位置に設けられており、前記ユニットが高さ方向に複数段に分割可能に設けられている場合には、図7(a)〜(d)に示されているように、ユニット27のうち、外筒10の高さ(h)の中間位置(1/2・h)に最も近いユニット27に設けられているのが好ましい。
【0050】
具体的には、吸込口6は、図7(a)に示されているように2段ユニットの場合には、下から1段目又は2段目(以降、ユニット27の段数は下から数えた段数とする。)のいずれかのユニット27の外筒10に設けられ、また、図7(b)に示されているように3段ユニットの場合には、2段目のユニット27の外筒10に設けられ、また、図7(c)に示されているように4段ユニットの場合には、2段目又は3段目のいずれかのユニット27の外筒10に設けられ、また、図7(d)に示されているように5段ユニットの場合には、3段目のユニット27の外筒10に設けられる。
【0051】
すなわち、ユニット27を積み重ねる段数をnとすると、nが奇数の場合には、(n+1)/2段目に相当するユニット27に吸込口6を設け、nが偶数の場合には、n/2段目または(n/2)+1段目に相当するユニット27に吸込口6を設けるのが良い。そして、ユニット27の段数nが偶数の場合には、高さ方向の中間位置がフランジ継手23の位置に一致してしまうため、フランジ継手23の位置を避けて、できる限り中間位置に近いユニット27の外筒10に吸込口6を設けるのが良い。例えば、4段ユニットにおいて、2段目のユニット27の外筒10に吸込口6を設ける場合には2段目のユニット27の外筒10のできるだけ中間位置に近い上方側に設け、3段目のユニット27の外筒10に吸込口6を設ける場合には3段目のユニット27の外筒10のできるだけ中間位置に近い下方側に設けるのが望ましい。
【0052】
この場合、仮に、吸込口6を高さ方向(上下方向)の中間位置付近に設けずに、例えば吸込口6を高さ方向(上下方向)の中間位置より下方寄りに設けた場合には、吸込口6を境にして流路13内の下方のスペースは上方のスペースに比べて狭くなるため、下方のスペースにおける気流の速度が上昇し、圧力損失が大きくなり、結果的に駆動源であるブロアー3に負荷を掛けてしまい効率が悪くなってしまう。しかしながら、上記したように、吸込口6を高さ方向(上下方向)の中間位置付近に設けることにより、吸込口6を境にした流路13内の上下のスペースがほぼ同程度の広さになると共に、分流板19に衝突して上下方向に分流される空気量がほぼ同程度となるため、流路13内での気流の速度及び圧力損失も偏りなく同程度となり、圧力損失が上下いずれか一方のスペースだけ高くなるようなことがない。したがって、流路13内において均一に空気量を分流可能とし、駆動源であるブロアー3に余分な負荷を掛けることがなく、効率の向上を図ることができる。
【0053】
分流板19は、側方視において、矩形を成し、分流板19の面積が吸込口6の開口面積より大きくなるように形成されている。より具体的には、分流板19は、平面視で中心角が略120度の円弧状に湾曲した金属板により形成されており、中筒14の吸込口に対応した箇所で小孔21を塞ぐように中筒14の外面に沿って取り付けられている。
【0054】
このように分流板19を構成することにより、流路13に進入した空気が脱臭剤層17の周囲の円筒形状の流路13内全体を満遍なく行き渡るようになるため、脱臭剤(活性炭)16の負荷を均一に保つことができる。また、吸込口6から勢い良く外筒10内に進入してくる臭気を含んだ空気を分流板に最初に衝突させることにより、前記空気が直接、脱臭剤層17に進入して脱臭剤(活性炭)16を破砕させてしまうことを防止することもできる。
【0055】
なお、この場合、分流板19の吸込口6側の外面に突部(図示省略)を設けることにより、吸込口6から進入してくる臭気を含んだ空気を左右に分流して強制的に上方に気流を制御すると共に、分流板の反対側の流路13内において気流同士を衝突させて騒音を打ち消しあうように構成することも騒音低下対策として有効である。
【0056】
また、多数の少孔21,22を一定間隔毎に設けて整流効果の優れたパンチング材を円環状に形成することにより中筒14及び内筒15を構成することにより、脱臭効果と消音効果を安定的に、且つ、脱臭剤層17を下部から上部において、偏り無く均一に使用することができる。
【0057】
次に、上記した構成を備えた本発明の実施の形態に係る脱臭装置4の作用について説明する。
【0058】
前記集塵・脱臭システムにおいて集塵装置1から排気された臭気を含んだ空気は、ブロアー3の吐出力によって吸込口6から脱臭装置4の外筒10内に進入すると、分流板19に衝突し、図4に示すように、平面視で左右両側に均等に分流し、流路13内を流通する。
【0059】
その後、前記臭気を含んだ空気は、図3に示すように、中筒14の小孔21から脱臭剤層17に進入し、脱臭剤(活性炭)16と接触することにより脱臭されて、清浄空気となり、内筒15の小孔22から空洞部9内を上昇し、排出口8から排出される。
【0060】
この時、脱臭剤層17の下部では上部の脱臭剤(活性炭)16の重量により充填密度が密状態となる一方、脱臭剤層17の上部では下部に比べて充填密度が粗状態となることが想定できるが、実際に計を用いて、脱臭剤層17の上部、中間部、下部のを測定したところ、ほぼ同じ値となった。これは、脱臭剤(活性炭)16の充填密度の状態とパンチング材の開口面積のバランスが良い状態であるために、脱臭剤層17の下部から上部に至るすべての脱臭剤(活性炭)16を偏り無く均一に使用することができるためであり、このことからも経済性が優れていることが分かる。
【0061】
また、この時、実際に吸込口6と排出口8の臭気濃度を測定したところ、吸込口6における入口臭気濃度が17000であったのに対して、排出口8における出口臭気濃度は98となり、脱臭効率は、99.4%と極めて良好な結果となった。なお、脱臭効率は、次式によって算出した。
【0062】
脱臭効率(%)={(入口臭気濃度−出口臭気濃度)/入口臭気濃度}×100
さらに、この時、実際に吸込口6における騒音と排出口8における騒音を比較した結果、30dB(A)の減少となった。また、騒音の周波数帯域毎の測定結果から、200Hz以下の周波数領域について効果が高く、吸音材(消音材)として一般的に知られているグラスウールと比較した場合、特に低周波領域に対して消音効果が高いことが分かった。これは、脱臭剤16である活性炭が、1g当たりに約700mの面積に相当する微孔を有しており、臭気を含んだ空気の音のエネルギーが、活性炭の微孔を通過する際に、接触、反射を繰り返すことで分散され、騒音が減衰されるためであると考えられる。
【0063】
このように、脱臭剤16の活性炭は、消臭効果の他に、減音(消音)効果も備えているので、臭気を含んだ空気が脱臭剤層17を通過することによって消臭と減音の両方の効果を得ることができる。したがって、臭気を含んだ空気は、脱臭剤層17を通過し、内筒15の空洞部9を経由して、排出口8より大気に排出される際には、減音(消音)且つ無臭化された清浄空気となる。
【0064】
上記したように本発明の実施の形態に係る脱臭装置4によれば、優れた脱臭効果を得られると共に消音効果も得られることができる。
【0065】
また、イニシャルコスト及びランニングコストを低減することができ、防音材や消音器などの騒音対策部品を使用することなく、コストを掛けずに騒音を低下させることができ、経済性の高い脱臭装置を提供することができる。
【0066】
なお、上記した実施の形態に係る脱臭装置において、中筒14及び内筒15は、多数の小孔21,22が一定間隔毎に形成されたパンチング材により構成されているが、本発明はこの形態に限定されるものではなく、例えば、上方に向かって次第に孔径が大きくなるように多数の小孔が形成されたパンチング材や、或いは、孔径は同一だが上方に向かって次第に孔の間隔が狭くなるように多数の小孔が形成されたパンチング材等により構成されていても良い。そして、パンチング材をこのように構成した場合には、脱臭装置4内の気流が下方に比べて上方に流れやすくなるため、気流を上方向に制御して上部の脱臭剤(活性炭)16に流すことにより、脱臭剤(活性炭)16の使用効率を向上させる共に、騒音を上方に逃がすことで、大地に伝播して感じる騒音や振動を低減させることができる。
【0067】
なお、上記した本発明の実施の形態では、鋳物から発生する含塵空気を脱臭するシステムに本発明を適用した場合について説明したが、これは、単なる例示に過ぎず、本発明は、臭気成分と塵埃(粉塵)を含んだ空気一般を集塵濾過脱臭するシステム全般に適用可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る脱臭装置の技術は、鋳物を製造する鋳造ラインや、比較的住宅地に隣接した臭気と騒音を発する工場などで利用されることが見込まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
4 脱臭装置
6 吸込口
8 排出口
10 外筒
13 流路
14 中筒
15 内筒
16 脱臭剤
17 脱臭剤層
19 分流板
21 小孔
22 小孔
23 フランジ継手
27 ユニット
28 メッシュ部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の外筒と、
該外筒の内部に設けられる通気性を有する中筒と、
中筒の内部に設けられる通気性を有する内筒と、
前記中筒と前記内筒との間空間に脱臭剤が充填されて形成される脱臭剤層と、
前記流路に連通するように前記外筒の外周側面に設けられる吸込口と、
前記中筒の前記吸込口に対応する位置に設けられる非通気性の分流板と、
前記内筒の内部に形成される空洞部の上部に連通する排出口と、
を備え、側方断面視において、前記流路の断面積が前記吸込口の断面積より大きくなるように構成されていることを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
側方断面視において、前記流路の断面積が前記吸込口の断面積の2倍以上となるように構成されていることを特徴とする脱臭装置。
【請求項3】
前記中筒と前記脱臭剤層との間と、前記内筒と前記脱臭剤層との間には、それぞれ、非金属製のメッシュ部材が介装されており、該メッシュ部材は前記脱臭剤より細かい網目により構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱臭装置。
【請求項4】
前記脱臭剤は活性炭により構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の脱臭装置。
【請求項5】
前記中筒及び前記内筒は、多数の小孔が一定間隔毎に形成されたパンチング材により構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1の請求項に記載の脱臭装置。
【請求項6】
前記中筒及び前記内筒は、上方に向かって次第に孔径が大きくなるように多数の小孔が形成されたパンチング材により構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1の請求項に記載の脱臭装置。
【請求項7】
側方視において、前記分流板の面積が前記吸込口の開口面積より大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1の請求項に記載の脱臭装置。
【請求項8】
前記吸込口は、前記外筒の高さ方向の中間位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1の請求項に記載の脱臭装置。
【請求項9】
前記外筒と前記中筒と前記内筒とは一体となって高さ方向に複数段に分割可能に設けられており、該分割された外筒と中筒と内筒とから成る各ユニット同士はフランジ継手を介して接続されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1の請求項に記載の脱臭装置。
【請求項10】
前記吸込口は、前記ユニットのうち、高さの中間位置に最も近いユニットに設けられていることを特徴とする請求項9に記載の脱臭装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−6127(P2013−6127A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138599(P2011−138599)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000101617)アマノ株式会社 (174)
【Fターム(参考)】