説明

脱色・脱染剤組成物

【課題】脱色・脱染剤を構成する各剤の混合性が良好で毛髪に対する均一な脱色・脱染性を確保でき、毛髪の感触も良好に仕上がる脱色・脱染剤組成物を提供する。
【解決手段】下記(A)成分〜(C)成分を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤を含んで構成される脱色・脱染剤組成物。
(A)混合調製時の含有量が1.0〜20質量%であるデンプンの1種以上。
(B)過硫酸塩の1種以上。
(C)過硫酸塩以外のアルカリ剤の1種以上であって、混合調製時の含有量が0.5〜10質量%であり、その100質量部中の95質量部以上が炭酸塩、リン酸塩、塩基性アミノ酸によって占められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪の脱色・脱染を行うための脱色・脱染剤組成物に関し、更に詳しくは、過硫酸塩や炭酸塩が配合された場合や、とりわけ炭酸塩が多く配合された場合でも、毛髪に対する均一な脱色・脱染性が確保される脱色・脱染剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の脱色・脱染剤においては、通常、酸化剤(過酸化水素)による毛髪の脱色・脱染作用を強化する目的で、酸化剤とは別の製剤に炭酸塩等のアルカリ剤を配合し、又、アルカリ剤の一種である過硫酸塩を脱色助剤として配合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−169203号公報。この特許文献1では、28%アンモニア水等のアルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤と、過硫酸塩を含有する第3剤とからなる3剤式の毛髪脱色剤を開示している。そして例えば実施例1では、過硫酸塩と共に、3剤混合調製時の含有量が0.1重量%程度である少量のデンプン末を含有する粉末状の第3剤を開示している。
【特許文献2】特開平7−324021号公報。この特許文献2の実施例1では、過酸化水素溶液と混合調製される顆粒状ブリーチ剤組成物として、過硫酸カリウム、過酸化水素溶液との混合調製時の含有量が0.4重量%である炭酸ナトリウム、同含有量が1.4重量%であるデンプン粉末の他に、同含有量が過硫酸塩以外のアルカリ剤の過半量を占める2.4重量%であるメタケイ酸ナトリウムを含有する組成物を開示している。
【特許文献3】特開平6−009353号公報。この特許文献3の実施例1では、過酸化水素溶液と混合調製されるべき粉末の毛髪ブリーチ組成物として、過硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、デンプン粉末に関しては上記特許文献2の実施例1と同一内容のものを開示している。
【特許文献4】特開2006−342125号公報。この特許文献4では、アルカリ剤や過硫酸塩を含有する第1剤と過酸化水素を含有する第2剤とからなる2剤式の毛髪脱色剤を開示している。そして例えば実施例1では、炭酸マグネシウムや各種の過硫酸塩と共に、2剤混合調製時の含有量が0.2重量%程度である少量のデンプン末を含有する粉末状の第1剤を開示している。
【特許文献5】特開2006−225354号公報。この特許文献5の例えば実施例4では、アルカリ剤であるアンモニア水を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤と、各種の過硫酸塩及び3剤混合調製時の含有量が1.3重量%程度である炭酸マグネシウムを含有する第3剤からなる毛髪脱色剤を開示している。
【特許文献6】特開2003−306515号公報。この特許文献6の実施例27では、アルカリ剤であるアンモニア水を含有する第1剤と、過酸化水素水を含有する第2剤と、過硫酸塩及び3剤混合調製時の含有量が3.5重量%程度である炭酸ナトリウムを含有する第3剤からなる脱色剤を開示している。
【発明の概要】
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の脱色・脱染剤組成物においては一般的に、脱色・脱染ムラができてしまい均一に脱色・脱染することが困難な場合が多かった。一方、脱色・脱染力を高めるためにアルカリ剤としてメタケイ酸塩を用いると毛髪の感触がかなり悪くなるという問題もあった。反面、メタケイ酸塩に代えて炭酸塩等のアルカリ剤を配合した脱色・脱染剤組成物においては、毛髪感触の顕著な悪化は防止できるものの、脱染力を高めるために炭酸塩等を多く配合することにより、過酸化水素を含有する第2剤との混合性が低下し、その結果、脱色・脱染ムラが生じてしまう傾向が強かった。
【0006】
そこで本発明は、脱色・脱染剤を構成する各剤の混合性が良好で毛髪に対する均一な脱色・脱染性を確保でき、しかも毛髪の感触も良好に仕上がる脱色・脱染剤組成物を提供することを、解決すべき技術的課題とする。
【0007】
本願発明者は、脱色・脱染剤組成物において過硫酸塩に加えて炭酸塩等の特定のアルカリ剤を配合し、更に一定量のデンプンを配合することにより、各剤の混合性が顕著に向上し、毛髪に対する均一な脱色・脱染性が確保され、仕上がり後の毛髪の感触も向上することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、使用時に混合調製される第1剤と第2剤を含んで構成され、前記第1剤が下記の(A)成分〜(C)成分を含有し、前記第2剤が過酸化水素を含有する、脱色・脱染剤組成物である。
(A)デンプンの1種以上。(A)成分の混合調製時の含有量は1.0〜20質量%の範囲内である。
(B)過硫酸塩の1種以上。
(C)前記(B)成分以外のアルカリ剤の1種以上。(C)成分の混合調製時の含有量は0.5〜10質量%の範囲内であり、かつ(C)成分100質量部中の95質量部以上が炭酸塩、リン酸塩及び塩基性アミノ酸から選ばれる1種以上のアルカリ剤によって占められる。
【0009】
以上の第1発明に関連して、本願発明者は、デンプンのもつ保水力が脱色・脱染剤組成物に適度な粘度・粘性を与えることで、第1剤と第2剤との混合性が向上することを見出した。又、デンプンには、毛髪に塗布した際の液渇きを防ぐ作用があるため、施術中の有効成分の浸透効果を損なわず、脱色・脱染の均一性を高める効果がある。更に、デンプンには、脱色・脱染剤組成物の成分の毛髪への浸透を緩和する作用があるため、ダメージを最低限に抑え、感触向上を実現することができる。
【0010】
その結果、有効量のデンプンを含有する脱色・脱染剤組成物においては、脱色・脱染剤を構成する各剤の混合性が良好で、毛髪に対する均一な脱色・脱染性を確保できる。特に(B)成分たる過硫酸塩や(C)成分たる炭酸塩等が配合された場合、とりわけ脱染力を高めるために(C)成分たる炭酸塩等が多く配合された場合でも、これらの特性が確保される。更に、仕上がり後の毛髪の感触も向上する
脱色・脱染剤組成物におけるデンプンは、混合調製時の含有量が1.0〜20質量%の範囲内となるように第1剤に配合される。なお、本発明において、「混合調製時の含有量」とは、脱色・脱染剤組成物を構成する各剤(第1剤と第2剤、あるいは第1剤〜第3剤等)が混合調製された状態における含有量をいう。デンプンの含有量が混合調製時において1.0質量%未満であると、第1剤と第2剤との混合性の向上効果が不十分である。デンプンの含有量が混合調製時において20質量%を超えても、デンプンの配合効果が飽和する一方で、結果的に他の有効成分の配合割合が低くなり、脱色・脱染性能が十分に得られない。
【0011】
又、脱色・脱染剤組成物においては(C)成分として過硫酸塩以外のアルカリ剤を所定量含有し、しかも(C)成分100質量部中の95質量部以上が炭酸塩、リン酸塩及び塩基性アミノ酸から選ばれる1種以上のアルカリ剤によって占められるので、毛髪の感触の悪化を防止したもとで、デンプンの配合による上記の効果が確保され、脱色・脱染性能も確保される。
【0012】
仮に、炭酸塩、リン酸塩及び塩基性アミノ酸から選ばれる1種以上のアルカリ剤が(C)成分100質量部中の95質量部未満であった場合には、本発明の効果は確保されない。例えば(C)成分100質量部中の5質量部以上がメタケイ酸塩で占められる場合には、脱色・脱染性能は発揮されるとしても、デンプンの配合下においても毛髪の感触がかなり悪くなり、本発明の効果を実現できない。
【0013】
(C)成分は、混合調製時の含有量が0.5〜10質量%の範囲内となるように、第1剤に配合される。(C)成分の含有量が混合調製時において0.5質量%未満であると、脱色・脱染剤組成物の脱色・脱染性能が十分に得られない。(C)成分の含有量が混合調製時において10質量%を超えると、毛髪のダメージが許容範囲を超えて大きくなる。
【0014】
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る脱色・脱染剤組成物の(B)成分である過硫酸塩、(C)成分である炭酸塩及びリン酸塩がそれぞれアルカリ金属塩である、脱色・脱染剤組成物である。
【0015】
脱色・脱染剤組成物の(B)成分である過硫酸塩、(C)成分である炭酸塩及びリン酸塩の種類は必ずしも限定されないが、第2発明のように、これらの塩がそれぞれアルカリ金属塩であることが好ましい。
【0016】
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る脱色・脱染剤組成物が更に下記の(D)成分を含有する、脱色・脱染剤組成物である。
(D)カチオン性高分子化合物の1種以上。
【0017】
脱色・脱染剤組成物が、第3発明のように、更に(D)成分としてカチオン性高分子化合物を含有していると、脱色・脱染処理後の毛髪の感触が一層向上する。
【0018】
(第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る脱色・脱染剤組成物における過酸化水素の混合調製時の含有量が3.0質量%以下である、脱色・脱染剤組成物である。
【0019】
脱色・脱染剤組成物の第2剤における過酸化水素の含有量は必ずしも限定されないが、脱色・脱染処理による毛髪のダメージを軽減する観点から、第4発明のように、混合調製時の含有量が3.0質量%以下となるように過酸化水素を第2剤に配合することが好ましい。なお、混合調製時における過酸化水素の含有量が0.5質量%以下であると、脱色・脱染剤組成物の脱色・脱染性能が不十分となりがちである。反面、混合調製時における含有量が3.0質量%を超えると、毛髪へのダメージが大きくなりがちである。
【0020】
(第5発明)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、前記第1発明〜第4発明のいずれかに係る脱色・脱染剤組成物の第1剤:第2剤の質量基準での混合比が1:10〜1:2の範囲内である、脱色・脱染剤組成物である。
【0021】
本発明の脱色・脱染剤組成物における第1剤と第2剤の混合比は特段に限定されないが、例えば第5発明のように、第1剤:第2剤の質量基準での混合比が1:10〜1:2の範囲内である場合を好ましく例示することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の脱色・脱染剤組成物によれば、脱色・脱染剤を構成する各剤の混合性が良好で、毛髪に対する均一な脱色・脱染性を確保でき、更に仕上がり後の毛髪の感触も向上する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。
【0024】
〔脱色・脱染剤組成物〕
本発明の脱色・脱染剤組成物は、毛髪の脱色を行い、又は毛髪の脱染を行い、又は毛髪の脱色及び脱染を行う処理剤である。
【0025】
脱色・脱染剤組成物は、使用時に混合調製されるべき第1剤と第2剤を含む2剤式として構成される場合もあるが、これらの第1剤と第2剤の他に、使用時に混合調製される第3剤等であって、本発明の効果を阻害しない限りにおいて任意の組成を有するものを含む3剤式等として構成される場合もある。
【0026】
第1剤及び第2剤(あるいは第3剤)の剤型は必ずしも限定されないが、通常は、第1剤は粉末状ないしは顆粒状、タブレット状であり、第2剤は液状である。
【0027】
これらの第1剤と第2剤(あるいは更に第3剤等)の混合調製時における混合比は特段に限定されないが、例えば2剤式の脱色・脱染剤組成物において第1剤と第2剤の質量基準での混合比を1:10〜1:2の範囲内とすることが好ましい。その理由は、第1剤:第2剤=1:10の範囲よりも第2剤の割合が増すと、脱色・脱染剤組成物の粘度・粘性が過度に低くなり易いために、第1剤と第2剤の混合性が悪くなりがちであって、好ましくないからである。又、第1剤:第2剤=1:2の範囲よりも第2剤の割合が減ると、逆に脱色・脱染剤組成物の粘度・粘性が過度に高くなり易いため、第1剤と第2剤の混合性が悪くなりがちであって好ましくないからである。
【0028】
〔脱色・脱染剤組成物の必須成分〕
本発明の脱色・脱染剤組成物においては、第1剤が少なくとも下記の(A)成分〜(C)成分を含有し、第2剤が少なくとも過酸化水素を含有する。
【0029】
((A)成分)
(A)成分はデンプンであり、より具体的には由来植物種の異なる各種デンプンから選ばれる1種以上である。由来植物種の異なる各種デンプンとしては、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、オオムギデンプン、タピオカデンプン、カラスムギデンプン、サツマイモデンプン、クズデンプン、アズキデンプン等が挙げられる。このうち、バレイショデンプンが、第1剤と第2剤の混合性の向上や、仕上がり後の毛髪の感触向上の面で、特に好ましい。デンプンとしては、限定はされないが、α化していないもの、即ちβデンプンあるいはデンプン粒と呼ばれるものが好ましい。
【0030】
デンプンは、混合調製時の含有量(1種以上のデンプンの合計含有量)が1.0〜20質量%の範囲内となるように第1剤に配合されるが、より好ましくは2.0〜15質量%の範囲内、とりわけ好ましくは3.0〜10質量%の範囲内となるように第1剤に配合される。
【0031】
((B)成分)
(B)成分は過硫酸塩であり、より具体的には過硫酸の各種の塩から選ばれる1種以上である。過硫酸の各種の塩のうち、過硫酸アルカリ金属塩がより好ましく、過硫酸カリウムあるいは過硫酸ナトリウムがとりわけ好ましい。
【0032】
過硫酸塩の配合量は限定されないが、その混合調製時の含有量(1種以上の過硫酸塩の合計含有量)が好ましくは2.0〜25質量%の範囲内、より好ましくは3.0〜20質量%の範囲内、とりわけ好ましくは3.5〜18質量%の範囲内となるように第1剤に配合される。過硫酸塩の混合調製時の含有量が2.0質量%未満であると脱色・脱染剤組成物の脱色・脱染性能が不十分となりがちであり、25質量%を超えると毛髪へのダメージが大きくなりがちである。
【0033】
((C)成分)
(C)成分は、過硫酸塩以外のアルカリ剤の1種以上である。(C)成分の具体的な種類は限定されないが、各種の炭酸塩、各種のリン酸塩及び各種の塩基性アミノ酸から選ばれる1種以上のアルカリ剤が(C)成分100質量部中の95質量部以上を占める必要があり、より好ましくは98質量部以上を占める。
【0034】
過硫酸塩以外のアルカリ剤に関する上記の組成上の限定を外れる場合、換言すれば、炭酸塩、リン酸塩及び塩基性アミノ酸以外のアルカリ剤(例えばメタケイ酸塩、あるいはアンモニア水)が(C)成分100質量部中の5質量部以上を占める場合には、後述する(C)成分の混合調製時の含有量が適正な範囲内であっても、本発明の効果を確保できない。
【0035】
各種の炭酸塩のうちでは炭酸アルカリ金属塩がより好ましく、炭酸カリウムあるいは炭酸ナトリウムがとりわけ好ましい。各種のリン酸塩のうちではリン酸アルカリ金属塩がより好ましく、リン酸カリウムあるいは炭酸ナトリウムがとりわけ好ましい。塩基性アミノ酸とは塩基性側鎖を有するアミノ酸を言い、塩基性側鎖を有するα−アミノ酸が好ましく例示される。具体的にはアルギニン、リジン、ヒスチジン等が挙げられる。なかでもアルギニンが好ましい。
【0036】
(C)成分は混合調製時の含有量(1種以上の(C)成分の合計含有量)が0.5〜10質量%の範囲内となるように第1剤に配合されるが、より好ましくは0.5〜7質量%の範囲内、とりわけ好ましくは0.7〜5質量%の範囲内となるように第1剤に配合される。
【0037】
(過酸化水素)
過酸化水素は、限定はされないが、混合調製時の含有量が3.0質量%以下、好ましくは0.5〜3.0質量%の範囲内、より好ましくは1.0〜3.0質量%の範囲内、とりわけ好ましくは1.5〜2.5質量%の範囲内となるように、第2剤に配合される。
【0038】
〔脱色・脱染剤組成物におけるその他の重要成分〕
((D)成分)
本発明の脱色・脱染剤組成物は、更に(D)成分として、各種のカチオン性高分子化合物から選ばれる1種以上を含有することが、特に好ましい。
【0039】
カチオン性高分子化合物の種類は限定されず、例えば、各種のカチオン化セルロース誘導体、カチオン化グアーガム、塩化ジメチルジアリルアンモニウム重合体、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合体等が例示される。カチオン化セルロース誘導体としては、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリドが例示される。
【0040】
(D)成分は、限定はされないが、混合調製時の含有量(1種以上の(D)成分の合計含有量)が好ましくは0.01〜3.0質量%の範囲内、より好ましくは0.1〜2.5質量%の範囲内、とりわけ好ましくは0.5〜2.0質量%の範囲内となるように、第1剤、第2剤(あるいは、3剤式の場合には第3剤)のいずれか1以上の剤に配合される。
【0041】
(D)成分の混合調製時の含有量が0.01質量%未満であると、(D)成分による毛髪感触向上の付加効果が不十分であり、3.0質量%を超えると、混合性を悪化させるおそれがある。
【0042】
〔脱色・脱染剤組成物におけるその他の任意成分〕
本発明の脱色・脱染剤組成物を構成する第1剤、第2剤、あるいは3剤式の場合における第3剤の内の1以上の剤には、上記した各成分の他に、水、油性成分、界面活性剤、(A)成分や(D)成分以外の高分子化合物、pH調整剤、ポリペプタイドや植物抽出物等の保湿剤、帯電防止剤、毛髪柔軟剤、酸化防止剤、パラベン等の防腐剤、EDTA−Na等の金属封鎖剤、ビタミン類、賦形剤、着色剤、香料、低級アルコールや多価アルコール等の消泡剤、紫外線吸収剤等を任意に選択して、任意の混合調製時含有量となるように配合することができる。これらの成分の幾つかについて、以下に詳しく述べる。
【0043】
(油性成分)
油性成分としては、高級アルコール類、油脂類、ロウ類、炭化水素類、エステル類、脂肪酸類、シリコーン類等が例示される。
【0044】
高級アルコール類の具体例としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルドデカノール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール等が挙げられる。
【0045】
油脂類の具体例としては、ホホバ油、オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。
【0046】
ロウ類の具体例としては、ミツロウ、ラノリン、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ラノリン、鯨ロウ、コメヌカロウ、サトウキビロウ、パームロウ、モンタンロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、カポックロウ、セラックロウ等が挙げられる。
【0047】
炭化水素類の具体例としては、流動パラフィン、固形パラフィン、イソパラフィン、スクワラン、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、ポリブテン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。
【0048】
エステル類の具体例としては、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸トリイソデシル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、脂肪酸(C10−30)(コレステリル/ラノステリル)、乳酸ラウリル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ラノリン誘導体等が挙げられる。
【0049】
脂肪酸類の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0050】
シリコーン類の具体例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0051】
アミノ変性シリコーンとしては、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アモジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(トリメチルシリルアモジメチコン)等が挙げられる。
【0052】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0053】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレン(以下、POEという)アルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・ポリオキシプロピレン(以下、POPという)アルキルエーテル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0054】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0055】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のPOEアルキル硫酸塩、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩等が挙げられる。
【0056】
両性界面活性剤の具体例としては、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
(高分子化合物)
(A)成分や(D)成分以外の高分子化合物として、カルボキシビニルポリマー等のアニオン性高分子化合物、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合体等の両性高分子化合物、水溶性高分子化合物等が挙げられる。
【0057】
水溶性高分子化合物の具体例としては、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、ローカストビーンガム、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸とその塩類、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。
【0058】
(pH調整剤)
pH調整剤としては、リン酸、硫酸、塩酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ピロリン酸、グルコン酸、グルクロン酸及び安息香酸並びにそれらのナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩、塩化アンモニウム等が挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下に本発明の実施例を比較例と共に説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例及び比較例によって限定されない。
【0060】
(脱染剤組成物の第1剤の調製)
末尾の表1に示す実施例1〜実施例11、表2に示す実施例12〜実施例22、表3に示す比較例1〜比較例12の各例に係る組成の脱染剤組成物第1剤を調製した。第1剤の各成分はいずれも粉末状であるため、第1剤の調製に当たっては、各実施例及び各比較例ごとに各粉末成分を精確に秤量して適宜な容量の栓付き容器中に収容し、更に同容器中に混合用のアルミナボールを適量入れて密栓した後、容器を約3分間上下に大きく振って混合した。その後、アルミナボールを分離して、第1剤の調製を完了した。
【0061】
表1〜表3の「脱染剤組成物第1剤」、「脱染剤組成物第2剤」の欄において、各成分の組成割合を示す数値はいずれも質量%での表記である。表1〜表3の成分名を記載した項に付記した「(A)」、「(B)」、「(D)」の表記は、それらの成分がそれぞれ(A)成分、(B)成分、(D)成分であることを示す。(C)成分については、炭酸塩、リン酸塩、塩基性アミノ酸のいずれかに該当するものは「(C特)」の表記で示し、これらに該当しないものは「(C他)」の表記で示した。「(A比)」の表記は、その成分が(A)成分に対する比較用の成分であることを示す。
【0062】
(脱染剤組成物の第2剤の調製)
表1に示す実施例1〜実施例11、表2に示す実施例12〜実施例22、表3に示す比較例1〜比較例12の各例に係る組成の脱染剤組成物第2剤を常法により調製した。
【0063】
(脱染剤組成物の混合調製及び混合性の評価)
表1に示す実施例1〜実施例11、表2に示す実施例12〜実施例22、表3に示す比較例1〜比較例12の各例に係る粉末状の脱染剤組成物第1剤と液体状の脱染剤組成物第2剤とを、それぞれ、表1〜表3の「1剤:2剤混合比」の欄に記載した混合比(質量基準)で混合して、各例に係る脱染剤組成物を調製した。
【0064】
なお、「1剤:2剤混合比」の欄には、併せて「混合時のデンプン含有量(質量%)」、「混合時の(C)成分含有量(質量%)」、「混合時の過酸化水素濃度(質量%)」及び「(C)成分中の(C特)成分の割合」の項を設けて、前記第1発明、第4発明で規定したこれらの混合調製時含有量の目標値や(C)成分中の(C特)成分の組成目標値を記載した。なお、「混合時の(C)成分含有量」とは、「混合時の(C特)成分と(C他)成分の合計含有量」を意味する。そして、各例に係る脱染剤組成物が所定の1剤:2剤の混合比に従い混合調製された際のこれらの各項目の実際の含有量、(C)成分中の(C特)成分の実際の組成比(100質量部中の質量部数)を数値で表記した。
【0065】
一方、上記のように1剤と2剤を混合して各例に係る脱染剤組成物を調製する際、下記の評価方法によって第1剤と第2剤との混合性を評価した。
<混合性>
各例の第1剤組成物10gに対し第2剤を各例ごとの混合比となる量を加え、刷毛を用いて30秒間混合し、混ぜやすさを、パネラー10名によって評価した。パネラー10名のうち10名が混ぜやすいと回答した場合を「5」、8〜9名が混ぜやすいと回答した場合を「4」、6〜7名が混ぜやすいと回答した場合を「3」、3〜5名が混ぜやすいと回答した場合を「2」、2名以下が混ぜやすいと回答した場合を「1」として評価した。これらの評価結果を各表の「評価」の欄における「混合性」の項に示す。
<均一な脱染性>
長さ15cmの黒色人毛毛束を準備し、酸化染毛剤(ホーユー株式会社製 プロマスターEX N−6/5)を用いて常法により染毛した。この毛束を1週間放置したのち、各例の脱染剤組成物により脱染処理をおこなった。各例の脱染剤組成物を毛束に対して重量比で浴比1:1.5となるように均一に塗布し、25℃にて20分間放置後に洗浄し、乾燥後目視にて脱染未処理の毛束と比較し、均一に脱染されているかどうかを、パネラー10名により評価した。パネラー10名のうち、10名が均一に脱染されていると回答した場合を「5」、8〜9名が均一に脱染されていると回答した場合を「4」、6〜7名が均一に脱染されていると回答した場合を「3」、3〜5名が均一に脱染されていると回答した場合を「2」、2名以下が均一に脱染されていると回答した場合を「1」として評価をおこなった。これらの評価結果を各表の「評価」の欄における「均一な脱染性」の項に示す。
<感触>
均一な脱染性評価において用いた毛束について、パネラーが指を通し、脱染未処理の毛束と比較し、毛髪の感触が同等またはそれ以上であるかどうかを、パネラー10名により評価した。パネラー10名のうち、10名が感触が同等またはそれ以上であると回答した場合を「5」、8〜9名が感触が同等またはそれ以上であると回答した場合を「4」、6〜7名が感触が同等またはそれ以上であると回答した場合を「3」、3〜5名が感触が同等またはそれ以上であると回答した場合を「2」、2名以下が感触が同等またはそれ以上であると回答した場合を「1」として評価をおこなった。これらの評価結果を各表の「評価」の欄における「感触」の項に示す。
【0066】
(脱染剤組成物の脱染力の確認)
なお、表には示さないが、全ての実施例に係る脱染剤組成物は満足すべき脱染力が認められた。一方、メタケイ酸塩を含有せず、炭酸塩、リン酸塩又は塩基性アミノ酸も不足あるいは欠如した比較例7,9は、脱染力の不足が認められた。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によって、脱色・脱染剤を構成する各剤の混合性が良好で毛髪に対する均一な脱色・脱染性を確保でき、しかも毛髪の感触も良好に仕上がる脱色・脱染剤組成物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に混合調製される第1剤と第2剤を含んで構成され、前記第1剤が下記の(A)成分〜(C)成分を含有し、前記第2剤が過酸化水素を含有することを特徴とする脱色・脱染剤組成物。
(A)デンプンの1種以上。(A)成分の混合調製時の含有量は1.0〜20質量%の範囲内である。
(B)過硫酸塩の1種以上。
(C)前記(B)成分以外のアルカリ剤の1種以上。(C)成分の混合調製時の含有量は0.5〜10質量%の範囲内であり、かつ(C)成分100質量部中の95質量部以上が炭酸塩、リン酸塩及び塩基性アミノ酸から選ばれる1種以上のアルカリ剤によって占められる。
【請求項2】
前記脱色・脱染剤組成物の(B)成分である過硫酸塩、(C)成分である炭酸塩及びリン酸塩がそれぞれアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の脱色・脱染剤組成物。
【請求項3】
前記脱色・脱染剤組成物が更に下記の(D)成分を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脱色・脱染剤組成物。
(D)カチオン性高分子化合物の1種以上。
【請求項4】
前記脱色・脱染剤組成物における過酸化水素の混合調製時の含有量が3.0質量%以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の脱色・脱染剤組成物。

【公開番号】特開2010−173982(P2010−173982A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19793(P2009−19793)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】