説明

脱酸油脂の製造方法またはそれによって得られる精製油脂

【課題】本発明は、油脂の脱酸方法に関して、新たな設備を必要とすることなく、γ−オリザノール、トコフェロール類の残存量が多く、品質の良好な脱酸油脂の製造方法を提供すること、更にはそれによって得られる精製油脂を提供することを目的とする。
【解決手段】濃度が20〜40重量%のアルカリ水溶液を、原料油脂の酸価に対しアルカリ過剰率が0.8〜1.2となる量を、原料油脂に対して添加し、65〜85℃の温度に処することを特徴とする脱酸油脂の製造方法を提供した。また、γ−オリザノール、トコフェロール類の含有割合の多い精製油脂を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ脱酸による脱酸油脂の製造方法またはそれによって得られる精製油脂に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂の精製では、原料となる穀物や種子などから圧搾およびヘキサン抽出により分離した搾油原料油脂に対して脱ガム、脱ロウ、脱酸、脱色、脱臭工程を施すことが一般的である(但し、一部順序が変更されることがある)。通常、脱ガム工程とは、水または水蒸気、酸などを添加して搾油原料油脂中のガム質を水和分離させる操作である。脱ロウ工程とは、油脂を緩やかに冷却撹拌して、例えば脱ガム油脂中のロウ分や高融点油脂を濾過分離させる操作である。脱酸工程とは、アルカリ水溶液を添加して脱ガムまたは脱ロウ油脂中の遊離脂肪酸をケン化除去させる操作である。脱色工程とは、活性白土や活性炭を添加して脱酸油脂中の色素成分およびその他の微量な夾雑物を吸着除去させる操作である。脱臭工程とは、減圧条件下で高温に処することで脱色油脂中の臭気成分および微量の遊離脂肪酸を留去させる操作である。
【0003】
γ−オリザノールは、薬理作用として成長促進や性腺刺激など、外用剤として抗酸化や防カビ、紫外線吸収などの機能が報告されており、化粧品や医薬品素材として広く利用されている。また、トコフェロール類(トコトリエノール含む)は、生体および油脂の抗酸化物質として重要な成分である。
【0004】
オリザノールは搾油原料油脂中に1.5〜2.9%含まれると報告されているが、従来の精製方法、特に、苛性ソーダを用いて遊離脂肪酸を除去するアルカリ脱酸においては、その大部分が除去されてしまい、また、トコフェロール類も一部分解が進んでしまう。
【0005】
そこで、オリザノールを高度に残存させる脱酸方法として、水蒸気により物理的に遊離脂肪酸を除去する蒸留脱酸が挙げられる。例えば、特許文献1では、蒸留脱酸をアルカリ脱酸の代わりに用いる、または脱酸工程を行わずに脱臭工程にて蒸留脱酸を行うことにより脱酸、脱臭を同時に行う方法を挙げているが、前者では新たに大規模な設備が必要であり、また、高温処理する工程の追加が必要になると考えられ、また、後者では遊離脂肪酸を十分に除去し良好な品質を得るためには高温または長時間の処理が必要になると考えられ、両者共にトコフェロール類の損失や油脂の劣化、色調変化、生産効率の点で問題となると考えられる。更に、蒸留脱酸で得られたオリザノール高含有の米油は風味が強く、場合によっては消費者にくどい印象を与えることも考えうる。また特許文献2は、特許文献1の後者の欠点を改善するものであるが、酸価20以下という低酸価の原料油脂に限定されており、一般的に酸価20以上となる米油では実施が難しい。
【0006】
また、特許文献3では、弱アルカリによる脱酸処理法でオリザノールおよびトコフェロール類を多く残存させる方法があるが、弱アルカリによる脱酸は脱色力が弱く、良好な色調の精製油を得るためには脱色工程で使用する活性白土の増量が避けられず、それに伴い生産コストの増大やトコフェロール類など有効成分の損失を受ける。
【0007】
特許文献4では、色調の改善のため蒸留脱酸前に残留ガム質を酸処理し、蒸留脱酸後にアルカリ脱酸を行う方法があるが、やはり新たな設備が必要となる上、工程が追加されることで手間が掛かり生産効率に劣る。
【0008】
特許文献5では、アルカリを徐々に添加してpH9〜11に維持することでオリザノールの損失を防ぐ方法があるが、pHを維持するためにアルカリを徐々に添加することや中和反応を約60min行うことで時間がかかる問題が生じ、操作も煩雑となる。
【特許文献1】特開平6−340889号公報
【特許文献2】特開平7−216381号公報
【特許文献3】特開2000−119682号公報
【特許文献4】特開2002−238455号公報
【特許文献5】特表2002−522627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
オリザノールなどのフェルラ酸エステル類、およびトコフェロール類は、通常のアルカリ脱酸処理を施すと一部または大部分が除去されてしまい、効率よく残存させることができなかった。また、蒸留脱酸を行うことも考えられるが、これには新たな設備が必要であったり、品質の低下を招く欠点があった。本発明は、油脂の脱酸方法に関して、新たな設備を必要とすることなく、γ−オリザノール、トコフェロール類の残存量が多く、品質の良好な脱酸油脂の製造方法を提供すること、更にはそれによって得られる精製油脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アルカリ脱酸におけるアルカリ水溶液の添加方法を特定の条件で行うことにより、オリザノールおよびトコフェロール類を高濃度に残存させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の第一は、濃度が20〜40重量%のアルカリ水溶液を、原料油脂の酸価に対しアルカリ過剰率が0.8〜1.2となる量を、原料油脂に対して添加し、65〜85℃の温度に処することを特徴とする脱酸油脂の製造方法に関する。
【0012】
好ましい実施態様は、原料油脂の酸価をA、重量をX(g)としたとき、下記式1で表される範囲の水分の重量W(g)となるアルカリ水溶液を添加することを特徴とする請求項1に記載の脱酸油脂の製造方法に関する。
【0013】
0.0009AX < W < 0.0018AX (式1)
【0014】
より好ましい実施態様は、油脂のアルカリ脱酸を実施する前の原料油脂中のγ−オリザノールの含有量に対し、添加した後の脱酸油脂中のγ−オリザノールの含有量の比が0.9以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の脱酸油脂の製造方法である。
【0015】
更に好ましくは、油脂のアルカリ脱酸を実施する前の原料油脂中のトコフェロール類の含有量に対し、添加した後の脱酸油脂中のトコフェロール類の含有量の比が0.9以上であることを特徴とする請求項1〜3に記載の脱酸油脂の製造方法である。
【0016】
最も好ましくは、前記脱酸油脂が米油であることを特徴とする請求項1〜4に記載の脱酸油脂の製造方法。
【0017】
本発明の第二は、前記請求項1〜7の油脂の製造方法により得られたことを特徴とする精製油脂に関する。
【0018】
本発明の第三は、前記請求項8〜12の精製油脂または精製米油を使用することを特徴とする油脂加工食品に関する。
【発明の効果】
【0019】
新たな設備を必要とすることなく、一般的な精製油脂の製造装置でも実施可能で、品質が良好な、γ−オリザノールまたはトコフェロール類を豊富に含有する精製油脂が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の脱酸油脂の製造方法は、濃度が20〜40重量%のアルカリ水溶液を、原料油脂の酸価に対しアルカリ過剰率が0.8〜1.2となる量を、原料油脂に対して添加し、65〜85℃の温度に処することを特徴としている。
【0021】
ここでアルカリ水溶液を添加する原料油脂は、一般に食用に用いられるものであればその種類は何ら限定されるものではないが、例えば米油、コーン油、ナタネ油などが挙げられ、中でも、特にγ−オリザノールの含有量が多い点で米油が好ましい。
【0022】
また、本発明で使用するアルカリは、苛性ソーダ、苛性カリなど、遊離脂肪酸を中和するものであれば良く、その種類は何ら限定されるものではないが、脱酸効率や脱色効果などの点から、強アルカリ性のものが望ましい。
【0023】
一方、本発明の脱酸油脂の製造方法においては、添加するアルカリ水溶液のアルカリ濃度が重要なファクターとなる。すなわち、発明者の推測によれば、アルカリ濃度は、低いと水分量が増加し、その結果、アルカリ塩となって水相へ移行するγ−オリザノールやトコフェロール類が増加する。水相は、生成した石鹸分や中性油脂を取り込んで油脂に不溶な油滓となるため、水相中の有効成分の取り込みに伴い再分配を繰り返して油相中の有効成分が減少すると考えている。また、アルカリ濃度が高すぎると遊離脂肪酸の除去が不十分となるため、特に20〜40重量%の範囲に調整する必要があり、特に24〜38重量%、更に28〜36重量%の範囲に調整されていることが好ましい。尚、通常脱酸に用いるアルカリ濃度は十数%であり、それ以上高いと中性油脂の分解を起こしやすくなる。しかし、本発明においては、後述するアルカリ過剰率を通常の1.3程度よりも低くすることで、実際には1.2以下とすることで、分解を抑えることが出来る。
【0024】
次に、アルカリ過剰率について説明する。本発明におけるアルカリ過剰率とは、添加するアルカリ水溶液中のアルカリのモル数aと価数vの積に対する、遊離脂肪酸のモル数fの比であり、下記式2で表される。即ち、アルカリ過剰率が1であるとき遊離脂肪酸とアルカリの数が等しくなり、1以上になるとアルカリ過剰となる。
【0025】
アルカリ過剰率=av/f (式2)
【0026】
本発明においては、アルカリ過剰率は、小さくなると遊離脂肪酸の除去が不十分となり、大きくなるとγ−オリザノールが除去されてしまうため、0.8〜1.2の範囲に調整する必要があり、特に0.9〜1.15、更に1.0〜1.1の範囲に調整されていることが好ましい。
【0027】
また、本発明においては、アルカリ水溶液が添加された原料油脂の温度は、低くなるとγ−オリザノールが除去されやすく、高すぎると油脂の品質が低下するため、65〜85℃の範囲に調整する必要があり、特に75〜80℃の範囲に調整されていることが好ましい(尚、本発明者の推測によれば、反応温度が低いと、遊離脂肪酸とアルカリとの反応が遅くなり、γ−オリザノールとアルカリが反応して水相へと移行する量が増加し、その結果、γ−オリザノールの含有割合が低下するものと考えている)。
【0028】
また、非連続式脱酸において、生成した油滓を効果的に分離させ生産効率を上昇させるためには、原料油脂の酸価をA、重量をX(g)としたとき、下記式1で表される範囲の重量W(g)の水分を含むアルカリ水溶液を添加することが好ましい。
【0029】
0.0009AX < W < 0.0018AX (式1)
【0030】
非連続式脱酸とは、タンク中に一定量の油脂とそれに対応するアルカリ水溶液を全量投入し、反応、油滓分離を行うもので、一連の操作に区切りがある。これに対して連続式脱酸があるが、これは、油脂とそれに対応するアルカリ水溶液を一定流量で混合しながら遠心分離により油滓分離を行うもので、一連の操作に区切りがない。非連続式脱酸の場合、アルカリ脱酸により生じた油滓は静置分離もしくは遠心分離により除去される。通常行われるアルカリ脱酸の条件では生成する石鹸に対して水分が過剰なため油滓は軟らかいガム状をしており、油脂中に分散、残留しやすく、反応後に完全に分離できない場合があった。しかし、式1の範囲に水分量を調整することで、生じる油滓が半固形状となり、油脂中に残らず完全に分離しやすくなる。これにより、石鹸分を完全に除去するための水洗操作が容易になるか、水洗操作自体を行わなくても次の脱色工程で十分に除去できるレベルにまで残留石鹸量を下げられ、工程が簡便になる。また、硬く分離しやすい性質の油滓は中性油脂の取り込みも少なく、収率が向上する。
【0031】
ここで、本発明の脱酸油脂の製造方法は上述の条件を満たしていれば可能であるが、通常は、原料油脂に対して、アルカリ水溶液を添加した後に、油滓を除去して液状分を取得することが好ましい。
【0032】
尚、ここで取得した液状分(脱酸油脂)は、必要により脱色工程や脱臭工程を実施して精製油脂とすることができる。
【0033】
上述した通り、本発明の脱酸油脂の製造方法によれば、新たな設備を必要とすることなく一般的な精製油脂の製造装置で、品質が良好で、γ−オリザノールまたはトコフェロール類を豊富に含有する精製油脂を得ることが可能である。
【0034】
特に、脱酸前の原料油脂中のγ−オリザノールの含有割合に対する、脱酸後の油脂中のγ−オリザノールの含有割合の比を0.9以上とする様に、γ−オリザノールを高残存率で保持した上で、脱酸を完了することが可能である。また、これにより、γ−オリザノールの含有割合が1%以上となる精製油脂を簡便な方法で得ることが可能である。
【0035】
また、脱酸前の原料油脂中のトコフェロール類の含有割合に対する、脱酸後の油脂中のトコフェロール類の含有割合の比を0.9以上とする様に、トコフェロール類を高残存率で保持した上で、脱酸を完了することが可能である。また、これにより、トコフェロール類の含有割合が50mg/油脂100g以上となる精製油脂を簡便な方法で得ることが可能である。
【0036】
また、γ−オリザノールの含有割合が1.5%以上でかつ、トコフェロール類の含有割合が120mg/油脂100g以上である精製米油を容易に製造することが可能である。
【0037】
尚、上述の脱酸油脂の製造方法を実施した後に、真空度5torr以下、200〜250℃に処することが好ましい。これは通常、脱臭工程により達成される処置であるため、脱臭工程を兼ねて実施することが効率の面から好ましい。これにより幾分かの脱酸が生じることから、脱酸の工程における脱酸を、脱臭工程で十分に酸価を下げられるレベルにとどめておき(アルカリ過剰率0.8〜1.0、特に0.8〜0.95)、その分、γ−オリザノールまたはトコフェロール類を効率良く残す条件とすることも可能である。
【0038】
本発明の油脂の製造方法により得られた精製油脂は、例えば、マーガリン、クリーム、マヨネーズ、ドレッシング等の各種油脂加工食品の用途に用いることが出来る。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0040】
また、実施例において、γ−オリザノールおよびトコフェロール類の定量、酸価の測定は、以下の方法で行った。
【0041】
1.γ−オリザノールの定量
油脂を約2g秤量し、n−ヘキサンで100mlとする。この内の2mlを採り、n−ヘキサンで100mlに希釈したものについて、吸光光度計で315nmの吸光度を測定する。油脂重量をM(g)、吸光度をNとすると、γ−オリザノール含有量G(%)は、下記式3で求められる。
【0042】
G=(N×5000)/(M×359) (式3)
【0043】
2.トコフェロール類の定量
高速液体クロマトグラフィーを用い、標準溶液のピーク面積により作成した検量線をもとに算出した。
【0044】
3.酸価
基準油脂分析試験法2003年版の方法に従って滴定により求めた。但し、米油およびコーン油はγ−オリザノールを含むため、ブロモチモールブルー指示薬を用いた。
【0045】
(実施例1)
脱ガム、脱ロウ処理した原料米油(酸価22、オリザノール含有割合1.9%、トコフェロール類含有割合153mg/100g)2000gを80℃に昇温後、アルカリ濃度32%、アルカリ過剰率1.0の苛性ソーダ水溶液(水分の重量56g)を添加し、80℃で20min反応させた。遠心分離によりアルカリ油滓を除去した後、水洗して脱酸米油(酸価1.13、オリザノール含有割合2.0%、トコフェロール類含有割合156mg/100g)を得た。この脱酸米油を2%活性白土で80℃、20min、真空度5torrで脱色後、250℃、90min、真空度1torr、吹き込み蒸気量3%で脱臭した精製米油は、酸価0.10、オリザノール含有割合1.9%、トコフェロール類含有割合133mg/100gであった。
【0046】
脱酸油脂の評価結果を表1に示した。また、脱臭油脂(精製油脂)の評価結果を表2に示した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
(実施例2)
脱ガム、脱ロウ処理した原料コーン油(酸価6、トコフェロール類含有割合77mg/100g)2000gを80℃に昇温後、アルカリ濃度32%、アルカリ過剰率1.0の苛性ソーダ水溶液(水分の重量15g)を添加し、80℃で20min反応させた。遠心分離によりアルカリ油滓を除去した後、水洗して得られた脱酸コーン油は、酸価0.23、トコフェロール類含有割合77mg/100gであった。
【0050】
(比較例1)
脱ガム、脱ロウ処理した原料米油(酸価22、オリザノール含有割合1.9%、トコフェロール類含有割合153mg/100g)2000gを80℃に昇温後、アルカリ濃度16%、アルカリ過剰率1.3の苛性ソーダ水溶液(水分の重量183g)を添加し、80℃で20min反応させた。遠心分離によりアルカリ油滓を除去した後、水洗して脱酸米油(酸価0.24、オリザノール含有割合0.5%、トコフェロール類含有割合102mg/100g)を得た。この脱酸米油を2%活性白土で80℃、20min、真空度5torrで脱色後、250℃、90min、真空度1torr、吹き込み蒸気量3%で脱臭した精製米油は、酸価0.08、オリザノール含有割合0.5%、トコフェロール類含有割合82mg/100gであった。
【0051】
(比較例2)
脱ガム、脱ロウ処理した原料米油(酸価22、オリザノール含有割合1.9%、トコフェロール類含有割合153mg/100g)2000gを80℃に昇温後、アルカリ濃度16%、アルカリ過剰率1.0の苛性ソーダ水溶液(水分の重量141g)を添加し、80℃で20min反応させた。遠心分離によりアルカリ油滓を除去した後、水洗して得られた脱酸米油は、酸価1.41、オリザノール含有割合1.2%、トコフェロール類含有割合125mg/100gであった。
【0052】
(比較例3)
脱ガム、脱ロウ処理した原料米油(酸価22、オリザノール含有割合1.9%、トコフェロール類含有割合153mg/100g)2000gを80℃に昇温後、アルカリ濃度32%、アルカリ過剰率1.5の苛性ソーダ水溶液(水分の重量84g)を添加し、80℃で20min反応させた。遠心分離によりアルカリ油滓を除去した後、水洗して得られた脱酸米油は、酸価0.11、オリザノール含有割合1.1%、トコフェロール類含有割合118mg/100gであった。
【0053】
(比較例4)
脱ガム、脱ロウ処理した原料米油(酸価22、オリザノール含有割合1.9%、トコフェロール類含有割合153mg/100g)2000gを30℃に昇温後、アルカリ濃度32%、アルカリ過剰率1.0の苛性ソーダ水溶液(水分の重量56g)を添加し、30℃で20min反応させた。遠心分離によりアルカリ油滓を除去した後、水洗して得られた脱酸米油は、酸価1.17、オリザノール含有割合1.3%、トコフェロール類含有割合129mg/100gであった。
【0054】
(比較例5)
脱ガム、脱ロウ処理した原料コーン油(酸価6、トコフェロール類含有割合77mg/100g)2000g50℃に昇温後、アルカリ濃度16%、アルカリ過剰率1.3の苛性ソーダ水溶液(水分の重量50g)を添加し、50℃で20min反応させた。遠心分離によりアルカリ油滓を除去した後、水洗して得られた脱酸コーン油は、酸価0.16、トコフェロール類含有割合64mg/100gであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度が20〜40重量%のアルカリ水溶液を、原料油脂の酸価に対しアルカリ過剰率が0.8〜1.2となる量を、原料油脂に対して添加し、65〜85℃の温度に処することを特徴とする脱酸油脂の製造方法。
【請求項2】
原料油脂の酸価をA、重量をX(g)としたとき、下記式1で表される範囲の重量W(g)の水分を含むアルカリ水溶液を添加することを特徴とする請求項1に記載の脱酸油脂の製造方法。
0.0009AX < W < 0.0018AX (式1)
【請求項3】
脱酸前の原料油脂中のγ−オリザノールの含有割合に対する、脱酸後の油脂中のγ−オリザノールの含有割合の比が、0.9以上であることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の脱酸油脂の製造方法。
【請求項4】
脱酸前の原料油脂中のトコフェロール類の含有割合に対する、脱酸後の油脂中のトコフェロール類の含有割合の比が0.9以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の脱酸油脂の製造方法。
【請求項5】
脱酸前の原料油脂が、米糠由来の油脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の脱酸油脂の製造方法。
【請求項6】
原料油脂に対して、アルカリ水溶液を添加し、65〜85℃の温度に処した後に、油滓を除去して液状分を取得することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の脱酸油脂の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の脱酸油脂の製造方法を実施した後に、真空度5torr以下、200〜250℃に処することを特徴とする精製油脂の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の脱酸油脂の製造方法、あるいは請求項7に記載の精製油脂の製造方法を利用して得られたことを特徴とする精製油脂。
【請求項9】
精製油脂中のγ−オリザノールの含有割合が、1%以上であることを特徴とする請求項8に記載の精製油脂。
【請求項10】
精製油脂中のトコフェロール類の含有割合が、50mg/油脂100g以上であることを特徴とする請求項8または9のいずれか一項に記載の精製油脂。
【請求項11】
前記精製油脂が米糠由来の油であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の精製油脂。
【請求項12】
精製油脂中のγ−オリザノールの含有割合が1.5%以上で、トコフェロール類の含有割合が120mg/油脂100g以上である精製米油。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一項に記載の精製油脂を使用して作製したことを特徴とする油脂加工食品。

【公開番号】特開2009−102491(P2009−102491A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274524(P2007−274524)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】