説明

脱酸素剤組成物

【課題】 特定炭酸ガス濃度下、その炭酸ガス濃度に影響を与えず脱酸素状態で物品を保存できる炭酸ガスの発生量及び吸収量を調節した脱酸素剤を提供する。
【解決手段】 (a)不飽和脂肪酸化合物又は不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物及び(b)触媒を(c)多孔体に含浸したもの、(d)アルカリ土類金属の水酸化物、(e)水分供与剤及び(f)脱臭剤を混合したものからなり、(a)不飽和脂肪酸化合物又は不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物100重量部に対して、(b)触媒が0.01〜0.5重量部、(c)多孔体が50〜300重量部、(d)アルカリ土類金属の水酸化物が0.3〜10重量部、(e)水分供与剤が30〜100重量部、(f)脱臭剤が10〜100重量部である脱酸素剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガスの発生量及び吸収量を調節した新規脱酸素剤に関する。例えば、大気組成下で脱酸素剤から実質的に炭酸ガスを発生しない事、及び、炭酸ガス濃度10%下で脱酸素剤が実質的に炭酸ガスを吸収しない事などが要求される脱酸素剤の用途に用いられる。なお、「実質的に」とは、例えば、大気組成下で脱酸素剤からの炭酸ガス発生量が1ml/g以下であり、炭酸ガス濃度10%下での脱酸素剤の炭酸ガス吸収量が5ml/g以下である事をここでは意味するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品や医薬品の酸化防止、保存性向上等の為にこれら対象物を脱酸素剤と共に容器に密閉し、密閉容器内を無酸素状態にする方法が用いられている。その対象物の中には炭酸ガスを実質的に吸収及び発生しない脱酸素剤が必要とされる場合がある。
例えば、特許文献1〜3には、制酸薬、アシドーシス治療薬等として炭酸水素ナトリウム注射薬等が薬液のpH変動を避けるためにガスバリアーフィルムで密閉され、鉄系やアスコルビン酸系の脱酸素剤と共に使用された発明が開示されている。
【0003】
しかし、これらの脱酸素剤は酸素を吸収するのみではなく、炭酸ガスを吸収又は発生する反応を伴う。例えば、鉄系の脱酸素剤は鉄が酸素のみでなく炭酸ガスとも反応し炭酸鉄化合物が形成されるため、炭酸ガスを吸収する。脱酸素剤が炭酸ガスを吸収すると、薬液から炭酸ガスが放出されるため、薬効を維持するために必要な薬液のpHが維持できない問題点があった。また、鉄と炭酸ガスが反応することにより、鉄と酸素の反応が阻害されるため、脱酸素剤の酸素吸収性能が低下する問題点があった。
【0004】
一方、アスコルビン酸系の脱酸素剤は、酸素吸収に伴い酸素吸収量の50%〜95%程度の炭酸ガスを発生し、発生した炭酸ガスが薬液中に溶け込むため、薬効を維持するために必要な薬液のpHが維持できない問題点があった。
【0005】
炭酸ガスは静菌・防虫作用があり、好気性菌、カビ、害虫などの発生を抑え、腐敗、虫害防止に効果を発揮する。炭酸ガス濃度が30%で一応の効果があり、50%以上ではカビが防止できる事が知られている。例えば、生肉、ウィンナーソーセージ、和・洋生菓子、半生菓子、豆類、穀類等では炭酸ガス置換密閉包装が用いられており、脱酸素剤が併用される場合もある。この場合、密閉容器内は特定の炭酸ガス濃度を維持することが必要であるため、炭酸ガスを吸収又は放出する脱酸素剤は使用が困難である問題点があった。
【0006】
特許文献4、5および6には不飽和脂肪酸化合物又は不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物を酸化反応物質とする脱酸素剤に関する発明が開示されている。これらの酸化反応物質は酸素吸収に伴い若干の炭酸ガスを発生するため、炭酸ガスを吸収する手段を施さなければ炭酸ガスの発生量、吸収量が調節されず、密閉容器内の特定の炭酸ガス濃度を実質的に一定に保つことができなかった。
【特許文献1】特開平5-049675号公報
【特許文献2】特開2001-192069
【特許文献3】特開平8-164185号公報
【特許文献4】特開平4-029741号公報
【特許文献5】特開2003-128151
【特許文献6】特開平8-282739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、酸素、炭酸ガス共存下のガス組成における物品の保存において、密閉容器内及び対象物中の炭酸ガス濃度に依存しない脱酸素保存のため、大気組成下で炭酸ガスを実質的に発生せず、高濃度の炭酸ガス存在下で炭酸ガスを実質的に吸収しない脱酸素剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的のため、不飽和脂肪酸系の脱酸素剤をベースとして鋭意検討した結果、大気組成下で炭酸ガスを実質的に発生せず、高濃度の炭酸ガス存在下で炭酸ガスを実質的に吸収しないものを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、(a)不飽和脂肪酸化合物又は不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物及び(b)触媒を(c)多孔体に含浸したもの、(d)アルカリ土類金属の水酸化物、(e)水分供与剤及び(f)脱臭剤を混合したものからなり、(a)不飽和脂肪酸化合物又は不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物100重量部に対して、(b)触媒が0.01〜0.5重量部、(c)多孔体が50〜300重量部、(d)アルカリ土類金属の水酸化物が0.3〜10重量部、(e)水分供与剤が30〜100重量部、(f)脱臭剤が10〜100重量部である脱酸素剤である。
【0009】
本発明においては、大気組成下での炭酸ガス発生量が1ml/g以下であり、かつ、炭酸ガス濃度10%下での炭酸ガス吸収量が5ml/g以下であることが好ましい。また、(c)多孔体及び(e)水分供与剤の多孔体が珪藻土であること、(d)アルカリ土類金属の水酸化物が消石灰である脱酸素剤が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本脱酸素剤は、実質的に炭酸ガス濃度の変化に関与しないので、特定の炭酸ガス濃度下での保存を必要とする食品、医薬品等の物品についても、安定して長期保存することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における脱酸素剤の各成分の割合は、(a)不飽和脂肪酸化合物または不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物(以下、酸化反応物質)100重量部に対して、(b)触媒が0.01〜0.5重量部、好ましくは0.01〜0.1重量部、(c)多孔体が50〜300重量部、好ましくは100〜250重量部、(d)アルカリ土類金属の水酸化物が0.3〜10重量部、好ましくは0.5〜7重量部、(e)水分供与剤が30〜100重量部、好ましくは50〜80重量部、(f)脱臭剤が10〜100重量部、好ましくは10〜80重量部である。密閉包装時の初期酸素量、包装材料の酸素透過量に応じ、各成分の使用量を最適化する。
【0012】
(b)触媒が少ない場合は酸素吸収性能が低下し、多い場合は酸素吸収速度が過剰に早くなり、大気中での取り扱い時に酸素を吸収するため酸素吸収性能が低下する。(e)多孔体が少ない場合は(a)酸化反応物質を含浸することができず酸素吸収性能が低下し、多い場合は脱酸素剤の体積が大きくなりコスト増となる。(d)アルカリ土類金属の水酸化物が少ない場合は、(a)酸化反応物質の酸化反応に伴い発生する炭酸ガスを吸収することができず、大気組成下での容器内の炭酸ガス濃度が上昇し、多い場合は過剰に炭酸ガスを吸収するため容器内の炭酸ガス濃度が低下する。(e)水分供与剤が少ない場合は(d)アルカリ土類金属の水酸化物の炭酸ガス吸収性能が低下し、多い場合は脱酸素剤の体積が大きくなりコスト増となる。(f)脱臭剤が少ない場合は酸素吸収反応に伴い副生成するカルボン酸等の臭気ガスを吸収できず臭気が強くなり、多い場合は炭酸ガス吸収量が多くなり容器内の炭酸ガス濃度が低下する。
【0013】
本発明における脱酸素剤の酸化反応物質は、(a)不飽和脂肪酸化合物または不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物である。これらは、必ずしも単一物質である必要はなく、二種以上の混合物でも良い。また、これらは置換基を有していても良い。
【0014】
不飽和脂肪酸化合物として、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、パリナリン酸、ダイマー酸、植物油、動物油から得られる脂肪酸、即ち、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、桐油脂肪酸、糠油脂肪酸、胡麻油脂肪酸、綿実油脂肪酸、菜種油脂肪酸、トール油脂肪酸、及びこれらのエステルを含有する油脂や金属塩を使用することができる。
【0015】
不飽和基を有する鎖状炭化水素系重合物として、液状ブタジエンオリゴマー、液状イソプレンオリゴマー、スクアレン、液状アセチレンオリゴマー、液状ペンタジエンオリゴマー、液状オリゴエステルアクリレート、液状ブテンオリゴマー、液状BR、液状SBR、液状NBR、液状クロロプレンオリゴマー、液状サルファイドオリゴマー、液状イソブチレンオリゴマー、液状ブチルゴム、液状シクロペンタジエン系石油樹脂、液状オリゴスチレン、液状ヒドロキシポリオレフィンオリゴマー、液状アルキド樹脂、液状不飽和ポリエステル樹脂、天然ゴム等の液状の各種分子量のポリマーを使用することができる。
【0016】
本発明における酸化反応物質の酸化反応を促進する(b)触媒として、Cu、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Pb、Zn及びその化合物群から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。例えば、硫酸塩、塩化物塩、硝酸塩等の無機塩、亜麻仁油、大豆油菜種油、トール油脂肪酸等の脂肪酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、ロジン酸塩、アセチルアセトン金属塩等の有機塩、アルキル金属化合物等を使用することができる。これらCu、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Pb、Zn及びその化合物の中でも、酸化反応促進性能及び安全性の観点から、Fe、Co、Mn及びZnの塩が好ましい。
【0017】
本発明において、(a)不飽和脂肪酸化合物または不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物及び(b)触媒は(c)多孔体に含浸して用いることが好ましい。
(c)多孔体として、天然ゼオライト等の炭酸ガスの吸脱着量が比較的多い物質を用いた場合は、温度変化により炭酸ガスを物理的に吸脱着するため、容器内の炭酸ガス濃度が安定しない。一方、炭酸ガスの吸脱着しないか極めて少ない多孔体の場合は、温度変化による容器内の炭酸ガス濃度の変化がなく安定しており、かつ、容器内の炭酸ガス濃度に依存することなく酸素を吸収することができた。
【0018】
本発明における炭酸ガスを吸脱着しない(c)多孔体として、ホワイトカーボン、珪酸カルシウム、コロイダルシリカ、バーミキュライト、珪藻土などを使用することができる。これらの中でも安価で酸化反応物質の含浸率が高い珪藻土が好ましい。
【0019】
本発明に用いる(a)不飽和脂肪酸化合物または不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物は酸素吸収に伴い炭酸ガスを若干発生する。このため、(d)アルカリ土類金属の水酸化物により若干発生する炭酸ガスを吸収させる。
炭酸ガスを吸収する物質としては一般に、生石灰、消石灰、鉄、活性炭、モレキュラーシーブス等の合成ゼオライト、モルデナイト、エリオナイト等の天然ゼオライト等が知られている。密閉容器内の酸素濃度、炭酸ガス濃度は対象物ごとに異なるが、炭酸ガス吸収成分は容器内の炭酸ガス濃度に依存することなく一定量の炭酸ガスを吸収する必要がある。これより、炭酸ガス吸収量が炭酸ガス濃度に依存するゼオライト等の物理吸着系の物質は、本発明には不適当であり、化学反応により炭酸ガスを吸収するアルカリ土類金属の水酸化物が好ましく、これらの中でも炭酸ガス吸収速度が速い消石灰が好ましい。
【0020】
しかし、(d)アルカリ土類金属の水酸化物が、炭酸ガスを吸収するには水が必要であり、雰囲気からの水分補給の場合には相対湿度70%以上の水分が必要である事が確認された。そこで、適用する物品の水分活性や雰囲気相対湿度に依存することなく一定量の炭酸ガスを吸収させる方法について検討した結果、多孔体に水を含浸させたものなどの(e)水分供与剤を混合することにより、適用物品に依存しない方法を見出した。
【0021】
本発明の(e)水分供与剤として、水を保持(含浸)させた多孔体を用いる場合の多孔体としては、炭酸ガスを物理吸着しないもので、さらに、上記した好ましい態様である(a)酸化反応物を含浸する為に使用する(c)多孔体と同一のものが好ましい。酸素吸収剤と水分供与剤の粒径を揃え均一に混合することにより容易に機械で包装することができる。
【0022】
水を多孔体に含浸してなる(e)水分供与剤の場合、各成分の割合は(d)アルカリ土類金属の水酸化物100重量部に対し、多孔体は600〜6000重量部、水は300〜4000重量部である。
【0023】
本発明における(f)脱臭剤として、活性炭、活性炭素繊維、モレキュラーシービンカーボン、骨炭などから選択することができ、25℃、1/10大気圧(0.1atm)での炭酸ガス吸収量が5ml/g以下のものが好ましい。炭酸ガス吸収量が5ml/gより大きくなると炭酸ガス吸収量が多くなり、容器内の炭酸ガス濃度が低下する。
【0024】
本発明に用いられる脱酸素剤は、通気性包装材料により充填包装して脱酸素剤包装体として使用することができる。その際に用いられる通気性包装材料としては、脱酸素剤用途に用いられる包装材料であれば特に制限はないが、速やかに酸素を吸収し、それに応じて発生する炭酸ガスを吸収させ、容器内のガス組成を一定に保つ為にもできるだけ通気性の高い包装材料が好ましい。
【0025】
本発明が使用される容器は酸素バリア性を有した包装材料からなる。包装材料は、アルミニウム箔等の金属箔をラミネートしたフィルム、酸化珪素や酸化アルミニウム等を蒸着したフィルムをラミネートしたフィルム、バリアナイロンフィルムやKコートナイロンフィルムをラミネートしたフィルム等のガスバリアフィルム、また、HDPE、PP、PET、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン重合体、Kコート樹脂、酸化ケイ素蒸着樹脂、酸化アルミ蒸着樹脂又はアルミ蒸着樹脂などを用いた容器を使用することができる。
【実施例】
【0026】
以下に本発明の具体的実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1
桐油(不飽和脂肪酸含量95 wt%)50g及びトール油脂肪酸Mn(Mn濃度4%)1.25gからなる液体混合物を珪藻土100gに加え攪拌、混合し、更に粒状活性炭37gを添加、混合し流動性のある粉粒体Aを得た。
次に水60gを上記と同種の珪藻土100gに含浸させた流動性のある粉粒体Bを得た。
最後に、粉粒体A100gに粉粒体B15gと微粉末の消石灰1.8gを均一混合し粉粒体Cを得た。
【0028】
粉粒体C 1.9gを紙の内面に開孔したポリエチレンフィルムをラミネートした小袋(外寸;25mm×55mm、内寸25mm×38mm)に充填して開孔部をヒートシールし、脱酸素剤包装体を得た。
この脱酸素剤包装体を、炭酸ガス10%、酸素18.5%に調整した混合ガス280mlと共にアルミ箔ラミネート袋(120mm×150mm)に同封し、開口部をヒートシールして密閉し、保存用包装袋を得た。この包装袋を25℃環境下で保存した。
【0029】
保存開始時(初期)および5日後、保存用包装袋中のガス濃度をガスクロマトグラフィーにて測定した結果を表1に示した。
5日後においては、実質無酸素状態であることが確認された(実質無酸素状態とは酸素濃度0.1%以下の状態を意味する)。また、炭酸ガス吸収量を表1に記載した。
【0030】
実施例2、3
実施例1の25℃環境下に保存を5℃、40℃環境下へ保存する点を除き、実施例1と同様とした。
【0031】
比較例1、2、3
実施例1の粉粒体に用いた珪藻土を天然ゼオライトに変更した点を除き、実施例1と同様として保存用包装袋を得た。比較例2、3も実施例2、3と同様に25℃環境下に保存を5℃、40℃環境下へ保存する点を除き、実施例1と同様とした。
【0032】
5日後に保存用包装袋中のガス濃度は表1のとおりであり、本発明品は炭酸ガス吸収量が3.1〜4.2mlだったが、比較品は15.8〜17.8mlと多量の炭酸ガスを吸収していた。
【0033】
[表1]
実施例 比較例
1 2 3 1 2 3
保存温度 (℃) 25 5 40 25 5 40
初期混合ガス量 (ml) 280 ← ← ← ← ←
初期 酸素 (%) 18.90 18.45. 18.04 18.99 18.71 17.99
炭酸ガス (%) 9.74 10.50 9.21 10.26 10.11 10.91
酸素 (ml) 52.9 51.7 50.5 53.2 52.4 50.4
炭酸ガス (ml) 27.3 29.4 25.8 28.7 28.3 30.5
5日後 酸素濃度 (%) 0.07 0.03 0.03 0.07 0.02 0.05
炭酸ガス濃度(%) 10.67 11.22 10.00 5.68 5.01 6.90
酸素吸収量 (ml) 52.8 51.6 50.4 53.0 52.3 50.3
炭酸ガス吸収量(ml) 3.4 4.2 3.1 16.8 17.8 15.8
【0034】
実施例4、5
実施例1と同様の保存用包装袋を用い、実施例4では保存開始時(初期)および2日後、実施例5では保存開始時(初期)および6日後、保存用包装袋中のガス濃度をガスクロマトグラフィーにて測定した。結果を表2に示した。
【0035】
比較例4、5
実施例4、5に用いた粉粒体C1.9gを同等の酸素吸収量である鉄粉0.8gと水分供与剤0.6gの混合物に変更した点を除き、それぞれ実施例4、5と同様にした。結果を表2に示した。
【0036】
本発明品は2日目で実質無酸素状態であったが、比較品は酸素が残留していた(実質無酸素状態とは酸素濃度0.1%以下の状態を意味する)。
また、炭酸ガス濃度においては本発明品が2日目、6日目共に5ml程度と安定していたが、比較品は26〜32mlと多量の炭酸ガスを吸収し、炭酸ガス吸収量が経時的に変化したことが確認された。
【0037】
[表2]
実施例 比較例
4 5 4 5
保存温度 (℃) 25 ← ← ←
初期混合ガス量 (ml) 280 ← ← ←
初期 酸素 (%) 18.07 18.07 18.06 18.06
炭酸ガス (%) 11.67 11.67 11.70 11.70
酸素 (ml) 50.6 50.6 50.6 50.6
炭酸ガス (ml) 32.7 32.7 32.8 32.8
保存後 (保存日数) 2日 6日 2日 6日
酸素濃度 (%) 0.04 0.04 5.22 0.03
炭酸ガス濃度(%) 12.43 12.43 3.05 0.25
酸素吸収量 (ml) 50.5 50.5 39.4 50.5
炭酸ガス吸収量(ml) 4.8 4.8 26.2 32.3
【0038】
実施例6
脱酸素剤包装体に用いた混合ガス280mlを空気250mlへ変更した点を除き、実施例1と同様とした。結果を表3に示した。
【0039】
比較例6
実施例6に用いた粉粒体C1.9gから水分供与剤粉粒体B0.25gを除いた粉粒体を1.65gに変更した点を除き、実施例6と同様とした。
【0040】
5日後、本発明品は炭酸ガス吸収量が0.1ml、炭酸ガス濃度0.0%であったが、比較例6の炭酸ガス発生量は1.9ml、炭酸ガス濃度0.9%と、水分供与剤がない場合は大気組成下で炭酸ガスを発生することが確認された。
【0041】
[表3]
実施例 比較例
6 6
保存温度 (℃) 25 25
初期混合ガス量(ml) 250 ←
初期 酸素 (%) 20.90 20.09
炭酸ガス (%) 0.03 0.03
酸素 (ml) 52.3 53.2
炭酸ガス (ml) 0.1 0.1
5日後 酸素濃度 (%) 0.02 0.03
炭酸ガス濃度(%) 0.0 0.9
酸素吸収量 (ml) 52.2 52.2
炭酸ガス吸収量(ml) 0.1 -1.9
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、酸素、炭酸ガス共存雰囲気下で物品を保存する際に、炭酸ガス濃度に影響を与えずに酸素を吸収させ、無酸素状態で物品を保存することが可能となった。これにより食品、健康食品、医薬品等を特定炭酸ガス濃度下、脱酸素状態で長期間保存することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)不飽和脂肪酸化合物又は不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物及び(b)触媒を(c)多孔体に含浸したもの、(d)アルカリ土類金属の水酸化物、(e)水分供与剤及び(f)脱臭剤を混合したものからなり、(a)不飽和脂肪酸化合物又は不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物100重量部に対して、(b)触媒が0.01〜0.5重量部、(c)多孔体が50〜300重量部、(d)アルカリ土類金属の水酸化物が0.3〜10重量部、(e)水分供与剤が30〜100重量部、(f)脱臭剤が10〜100重量部である脱酸素剤。
【請求項2】
大気組成下での炭酸ガス発生量が1ml/g以下であり、炭酸ガス濃度10%下での炭酸ガス吸収量が5ml/g以下である請求項1記載の脱酸素剤。
【請求項3】
(e)水分供与剤が、水を多孔体に含浸したものである請求項1記載の脱酸素剤。
【請求項4】
(c)多孔体が、珪藻土である請求項1または3記載の脱酸素剤。
【請求項5】
(d)アルカリ土類金属の水酸化物が、消石灰である請求項1記載の脱酸素剤。

【公開番号】特開2007−307451(P2007−307451A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137161(P2006−137161)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】