説明

脱酸素剤

【課題】 原料が安価で、食品等の鮮度保持のために広く利用でき、かつ、金属探知機による金属混入検査が可能な脱酸素剤を提供すること。
【解決手段】 本発明の脱酸素剤は、不飽和脂肪酸を含む油脂の少なくとも一種からなる主剤と金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の少なくとも一種からなる触媒と水分を含む混合物であり、さらに水分の担体としての不溶性物質や脱臭剤を加えることもできる。金属としては、鉄、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品等の鮮度保持に用いられる脱酸素剤に関し、特に金属探知機に応答せず、かつ安価で実用上十分な酸素吸収速度と酸素吸収量を有する脱酸素剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の鮮度保持のために、従来から鉄粉を主成分とする脱酸素剤が使用され、特に食品分野において酸化作用を防止することによって、味の変質や商品の変色に対して著しい防止効果を発揮し食生活に多大な貢献をなしている。しかし、鉄粉を主成分とする脱酸素剤は金属探知機に応答するため、製品中に混入した金属を検出し製品の良否を判別するための金属探知機による検査の際に同封したすべての脱酸素剤が応答してしまい、本来の検査が出来ないという欠点を有している。そこで、金属探知機に応答しない脱酸素剤が求められ、有機化合物を主剤とするものや無機化合物を主剤とするものが提案されている。
【0003】
有機化合物を主剤とするものとしては、フェノール類を主剤とする脱酸素剤(特許文献1)、アスコルビン酸を主剤とする脱酸素剤(特許文献2)、さらには、グリセリンを主剤とする脱酸素剤(特許文献3)、糖アルコールを主剤とする脱酸素剤(特許文献4)、不飽和脂肪酸を主剤とする脱酸素剤(特許文献5および6)等がある。しかし、これらの脱酸素剤は、主剤の安全性を保証しにくかったり、主剤の原料コストが高価であったり、酸素吸収速度や酸素吸収量が不十分であるという欠点を有していた。これらの提案のうち、不飽和脂肪酸を主剤とする脱酸素剤(特許文献5および6)は、本発明と同様な主剤を用いる提案であるが、特許文献5の提案は、酸素吸収速度が不十分であり、特許文献6の提案は、触媒を改良するなどして酸素吸収速度を向上しているが、酸素吸収の際に脱酸素剤の発熱があり、発熱対策を講じたとはいえ十分に発熱を抑えたとは言いがたい。
【0004】
一方、無機化合物を主剤とするものは、ハイドロサルファイトを主剤に用いた脱酸素剤(特許文献7)があり、また磁性を持たない多種の金属を還元して酸素吸収能力を付与し主剤とした脱酸素剤の提案(特許文献8)がある。これらの脱酸素剤は、急激な反応による発熱が激しく発熱反応の制御が難しかったり、還元金属の場合には、脱酸素能力に乏しかったり、脱酸素能力の高いものは発熱や場合により発火の恐れがある等、反応の制御が難しい欠点があった。
【0005】
したがって、鉄系脱酸素剤と同等な酸素吸収能を有し、原料が安全かつ安価で、酸素吸収に際し発熱を防止でき、かつ、金属探知機に応答しない脱酸素剤が求められている。
【0006】
【特許文献1】 特公昭61−39098号公報(第1〜3頁)
【特許文献2】 特開昭51−136845号公報(第1〜2頁)
【特許文献3】 特開平2−284646号公報(第1〜5頁)
【特許文献4】 特開平2−284647号公報(第1〜6頁)
【特許文献5】 特公昭62−60936号公報(第1〜2頁)
【特許文献6】 特開平10−130643号公報(第1〜9頁)
【特許文献7】 特公昭47−19729号公報(第1〜4頁)
【特許文献8】 特開平8−38884号公報(第1〜6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、金属探知機に応答せず、製造コストが安価で、かつ酸素吸収能が実用上十分であり、さらに発熱せず、安全性の面においても食品と共存可能な脱酸素剤の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は背景技術に記載の状況に鑑み鋭意研究を進めた結果、第一の形態として、不飽和脂肪酸を含有する油脂と、触媒として金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の少なくとも一種からなる混合物に、従来添加の必要がないと言われていた水分を添加することで、顕著な酸素吸収速度の増加効果が発現することを見出した。
【0009】
また、第二の形態として、不飽和脂肪酸を含有する油脂と、触媒として遷移金属以外の金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の少なくとも一種との混合物において、水分が無くとも、脱酸素剤として十分な酸素吸収能を有することを見出した。
【0010】
さらに、第三の形態として、不飽和脂肪酸を含有する油脂と、遷移金属以外の金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の少なくとも一種とを一体化することで、脱酸素剤として十分な酸素吸収能を有し、容積が小さく、多様な利用形態に適応可能な脱酸素剤となることを見出した。
【0011】
その上、第一〜第三の形態の脱酸素剤は、金属探知機に応答せず、酸素吸収時に発熱せず、製造コストが安価で、さらに安全性の面においても食品と共存可能な脱酸素剤であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
このように、本発明の脱酸素剤は、不飽和脂肪酸を主剤とする系で新たに水分を併用する点と、触媒として従来、提案されたことがない遷移金属以外の金属を使用する点で全く新しい脱酸素剤であり、酸素吸収反応時に発熱しない触媒を用いる脱酸素剤としては、非常に大きな酸素吸収速度を有している点においても、優れた脱酸素剤である。
【0013】
即ち、本発明は、以下の内容をその要旨とするものである。
(1)不飽和脂肪酸を含有する油脂と
金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の少なくとも一種と
水、結晶水、水蒸気の少なくとも一種からなる脱酸素剤
(2)不飽和脂肪酸を含有する油脂と
遷移金属を除く金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の少なくとも一種からなる脱酸素剤
(3)不飽和脂肪酸を含有する油脂と
遷移金属を除く金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の少なくとも一種を一体化したこと を特徴とする脱酸素剤
(4)不飽和脂肪酸を含有する油脂が、亜麻仁油および/または大豆油である(1)〜( 3)に記載の脱酸素剤
(5)金属がアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉄である(1)に記載の 脱酸素剤
(6)遷移金属を除く金属がアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムである(2 )および(3)に記載の脱酸素剤
【発明の効果】
【0014】
本発明の脱酸素剤は、プラスチック袋に入れた食品と共に同封しても金属探知機に応答せず、したがって金属異物が混入した場合に応答するという金属探知機本来の検査機能を実現できるものである。また、原料コストを含めた製造コストが安価で、かつ酸素吸収速度や酸素吸収量が実用上十分であり、さらに安全性の面においても食品と共存可能な脱酸素剤であるので、食品分野はもとより空気中の酸素による酸化作用により影響を受ける商品に対しても広く適用できる。さらに、一体化した脱酸素剤は、通常用途の小袋入りで使用する際に容積を小さくできる利点と共に紙や不織布等に付着させて使用でき、またプラスチックに混入させるなどして脱酸素機能を有する薄片や容器に用途展開することが出来る。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0015】
本発明の脱酸素剤の好ましい形態としては、3通りの形態があり、おのおの好ましい特徴を有している。
【0016】
好ましい第一の形態は、不飽和脂肪酸を含有する油脂と、触媒として金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の少なくとも一種と水分からなる混合物であり、必要とあれば不飽和脂肪酸および水分の担体としての不溶性物質や脱臭剤を加えた混合物である。
【0017】
また、第二の形態として、不飽和脂肪酸を含有する油脂と、触媒として遷移金属以外の金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の少なくとも一種との混合物であり、必要とあれば不飽和脂肪酸の担体としての不溶性物質や脱臭剤を加えた混合物である。
【0018】
さらに、第三の形態として、不飽和脂肪酸を含有する油脂と、遷移金属以外の金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の少なくとも一種とを一体化したものである。この形態の場合には不飽和脂肪酸を含有する油脂および{遷移金属以外の金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の水溶液}を不溶性物質に含浸、乾燥させる。
【0019】
脱酸素剤として使用する際の形態としては、前記混合物または一体化物を通気性の袋状物に収納し、鮮度保持すべき商品や無酸素状態を必要とする物質と共にガスバリア性を有する袋状物または容器に収納する。ここで、使用時の形態として述べた通気性の袋状物やガスバリア性を有する袋状物および容器は、すでに公知であり一般的に用いられているものを使用できるので、本発明は、脱酸素剤すなわち酸素吸収能を有する混合物または一体化物に関するものである。
【0020】
本願において脱酸素と酸素吸収は同じ意味で用いる。また、酸素吸収能とは、酸素吸収速度と酸素吸収量を含み両者を満たす性能である。通常、酸素吸収速度が大の時に所定時間後の酸素吸収量も大となる傾向がある。脱酸素剤は通常24時間または48時間程度の短時間で大きな酸素吸収量を求められるので、酸素吸収速度が大であることが必須である。
【0021】
本発明者は、金属探知機に応答しない脱酸素剤として不飽和脂肪酸を含む油脂を主剤とする脱酸素剤が安価で安全性が高い点に着目し鋭意研究を重ねた結果、不飽和脂肪酸と酸素吸収時に発熱しない触媒の混合物に、さらに不飽和脂肪酸を主剤とする脱酸素剤の構成要素としては従来全く取り上げられなかった水分を加えることで酸素吸収速度が顕著に増大することを見出した。また、酸素吸収時に発熱しない触媒として従来提案されていない{アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム}の硫酸塩、炭酸塩、塩化物が有効であることを見出し本発明を完成した。
【0022】
さらに本発明の脱酸素剤の性能を詳細に調査した結果、常温で高性能な脱酸素剤であることに加えて、約5℃の低温においても酸素吸収速度が実用上十分に大きく、優れた脱酸素剤であることを見出した。このことから、金属探知機による検査が可能で、常温、低温のいかなる温度条件でも利用可能な理想的な脱酸素剤であることが明らかとなった。
【0023】
本発明において主剤として用いる原料のうち、不飽和脂肪酸を有する油脂としては亜麻仁油、大豆油、桐油、胡麻油、綿実油、菜種油、トール油などが使用できるが、不飽和結合を多く有し、かつ安全性に優れる点から亜麻仁油と大豆油が好ましい。これらの油脂は液体であるから、油脂を含浸しやすい担体に含浸して用いるのが良く、担体としては油脂含浸性の粉体であれば種類を問わず使用できるが、特に珪藻土が好ましい。
【0024】
第一の形態の場合、触媒としての金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物に使用できる金属としては、遷移金属、非遷移金属のいずれでもよいが、安価に入手でき安全性に優れる点から、鉄、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムが好ましい。金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物は、粉体の場合にはそのまま所定量を混合してもよく、または、水溶性の化合物であれば水溶液の形態で加えても良い。第二の形態および第三の形態の場合には、触媒として{アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム}の硫酸塩、炭酸塩、塩化物を用いるのがよい。
【0025】
水分は、イオン交換水、純水、水道水、工業用水、市販のミネラルウォーター等を用いることができる。また、金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物が結晶水を有する場合には結晶水を水分の一部としても良い。さらに、食品が十分な水分を有する場合には食品から遊離した水蒸気を水分とすることもできる。
【0026】
次に、本発明の脱酸素剤の調整方法について説明する。本発明の脱酸素剤は、原料の形態としては、一般に流通している形態のままか、あるいは水溶液の形態で用いればよい。
つまり、不飽和脂肪酸を有する油脂と水以外は粉体のままで用いることができ、必要な原料を所定の量だけ計量して混合すればよく、金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物は水溶性の場合には所定量を飽和濃度以下の水溶液にして混合してもよい。いずれも原料の形態のままか水溶液で計量出来るものであるが、不飽和脂肪酸を有する油脂と水は、水に不溶性の担体に担持させて用いるのがよく、担体としては珪藻土が好ましい。また、混合装置への投入順序も特に規定するものではなく、作業性等を考慮して決めればよい。
【0027】
混合は、大気中で行えるが、窒素雰囲気中や減圧状態など酸素がないか、ほとんどない状態で行うのがより好ましい。
【0028】
第三の実施形態の場合には、主剤である不飽和脂肪酸を有する油脂および触媒である金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の少なくとも一種の水溶液を混合し乾燥するが、乾燥は窒素雰囲気中や減圧状態など酸素がないか、ほとんどない状態で行うか、または乾燥した低温条件下で行うのが好ましい。
【0029】
水分量は、袋に同封する食品などの物品が有する水分によって異なる。つまり、乾燥した物品と同封する場合には脱酸素剤の調整時に湿り気をおびる程度に水分を加え、また、脱酸素剤を構成する成分が結晶水を含む場合には、調整後に遊離の水分が増加するので調整時に水分を加えすぎないように注意する。鮮魚類や野菜の漬物等の水分を多く含む物品と同封する場合には、調整時に特に水分を加えず、必要なら過剰な水分を吸収するために珪藻土や吸水性樹脂や吸水性の不織布などの水分吸収剤を添加または付加してもよい。
【0030】
このように、本発明の脱酸素剤は、第一の形態および第三の形態においては調整時に水分を添加する形態としてもよく、同封する物品の水分を利用する形態としてもよく、どちらにも対応できるものである。第二の形態においては、包装した袋内に水分を添加する必要はなく乾燥した状態のままでよいが特に強制的に脱水乾燥させる必要はない。
【0031】
脱臭剤を加える場合には、脱臭剤として活性炭や珪藻土を用いることができ、併用することもできる。
【0032】
以上、本発明の脱酸素剤の調整方法について説明したが、ここで各成分の必要量について説明する。
【0033】
主剤である不飽和脂肪酸を有する油脂の量は、袋状製品の内部に含まれる空気量に応じて余裕を持って決定する。
【0034】
触媒としての金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の合計の使用量は、主剤である不飽和脂肪酸を有する油脂1重量部に対し0.05から1重量部であり好ましくは、0.3から0.8重量部である。0.05重量部以下だと酸素吸収量が不十分になり、1重量部以上では、酸素吸収速度が飽和してしまいコストアップになる。
【0035】
不飽和脂肪酸および水分の担体としての不溶性物質の使用量は、不飽和脂肪酸や水分の保持に多いほどよいが、経済性を考慮して、主剤1重量部に対して0.5重量部から5重量部であり、好ましくは、0.5重量部から2重量部である。0.5重量部以下だとペースト状態になって作業性が極端に悪くなり、5重量部以上では、脱酸素剤の総容量を増やしてしまう。
【0036】
脱臭剤は、実用上必要になる場合が多い。その使用量は、臭気の吸収のために多いほどよいが、経済性を考慮して、主剤1重量部に対して0.1重量部から5重量部であり、好ましくは、0.2重量部から2重量部である。0.1重量部以下だと脱臭効果が乏しく、5重量部以上では、脱酸素剤の総容量を増やしてしまう。また、本発明においては、活性炭を添加する場合に酸素吸収速度が低下する場合があるので使用量が多すぎるのは好ましくない。
【0037】
以上本発明の脱酸素剤の調整方法について説明したが、本発明の脱酸素剤は、プラスチック袋に入れた食品と共に袋に同封しても金属探知機に応答せず、したがって金属異物が混入した場合に応答するという金属探知機本来の検査機能を実現できるものである。また、市販の比較的安価な原料が使用でき、特にきびしい製造管理を必要としないため、原料コストを含めた製造コストが安価で、かつ酸素吸収速度と酸素吸収量が実用上十分であり、さらに安全性の面においても食品と共存可能な脱酸素剤であるので、食品分野はもとより空気中の酸素による酸化作用により影響を受ける商品に対して広く適用でき、商品が水分を有していても、乾燥状態であっても適用できる。
【0038】
本発明の脱酸素剤は密封することにより酸素吸収能を保持できる。したがって、本発明の脱酸素剤の保存形態および利用形態としては、本発明の脱酸素剤を通気性を有する袋状等の包装材料に充填後、さらに酸素と湿度を遮断する機密性包装材料にて密封し内部の空気を抜いておき、使用時に開封するようにすればよい。
【0039】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「%」は特に別途注記しない限り質量基準である。
【0040】
実施例、比較例において、酸素吸収能の評価は脱酸素剤を入れたバリヤー袋内空気(初期1000ml)の24時間および48時間後の酸素濃度の測定により行った。酸素濃度の値が低いほど酸素吸収が進んでおり高性能な脱酸素剤といえる。なお、酸素吸収量を知りたければ酸素濃度の値から計算で求めることができる。大気中の酸素濃度は20.7%であるから測定値が20.7%を示せば酸素吸収量はゼロであり、最初に脱酸素剤を入れたバリヤー袋に1000mlの空気を注入するので酸素濃度が0%の時、酸素吸収量は1000×0.207=207mlである。
酸素濃度がX%の時は、酸素吸収量は{1000×(20.7−X)/100}mlである。
【0041】
なお、全実施例において、酸素吸収前後に磁性は検出されず、また、酸素吸収反応中の発熱も認められなかった。
【0042】
1. 第一の形態の場合
【実施例1】
【0043】
磁製皿に関東化学製の珪藻土1.0gを取り純水1.0gを加えて良くかきまぜバリヤー袋(大倉工業、OE−4)に入れる。磁性皿に珪藻土1.0gを取り、関東化学製試薬の亜麻仁油1.0gを加えて良くかきまぜ、関東化学製試薬特級の硫酸鉄(II)七水和物0.5gを加え良くかきまぜてバリヤー袋に加え、熱シールし、バリヤー袋にウレタン製テープを貼り、注射針を差し込んで空気を抜き、新たな空気1000mlを注入し25℃のインキュベータに入れ、1日後と2日後の酸素濃度をmocon製酸素濃度計PAC CHECKMODEL302にて測定した。
測定結果は、表1の通りであった。なお以下の実施例、比較例においても酸素濃度の測定には、mocon製酸素濃度計PAC CHECK MODEL302を用いた。
【実施例2】
【0044】
磁製皿に関東化学製の珪藻土1.0gを取り純水1.0gを加えて良くかきまぜバリヤー袋に入れる。磁性皿に珪藻土1.5gを取り、関東化学製試薬の亜麻仁油1.0gを加えて良くかきまぜ、関東化学製試薬特級の硫酸鉄(II)七水和物0.5gと関東化学製試薬の活性炭0.8gを加え良くかきまぜてバリヤー袋に加え、熱シールし、バリヤー袋にウレタン製テープを貼り、注射針を差し込んで空気を抜き、新たな空気1000mlを注入し25℃のインキュベータに入れ、1日後と2日後の酸素濃度を測定した。
測定結果は、表1の通りであった。2日後に開封したところ袋内の臭気は認められなかった。

【0045】
主剤として大豆油を用いて実施例1と同様に実施した場合および主剤として亜麻仁油を用いて、触媒を変えて実施例1と同様に実施した場合は表1の通りであった。
【0046】
【表1】


【0047】
主剤として亜麻仁油を用い、触媒を変えて実施例1と同様に実施した場合は表2に示す通りであった。
【比較例1】
【0048】
磁製皿に関東化学製の活性白土0.5gを取り関東化学製塩化カルシウム二水和物(試薬1級)を純水に溶解して40%溶液にしたもの0.25gを加えて良くかきまぜ、純水0.25gを加え、関東化学製食品添加物グレードの水酸化カルシウム0.2gと関東化学製試薬特級の硫酸鉄(II)七水和物0.17gと関東化学製の活性炭0.34gを加えて良くかきまぜ、関東化学製試薬特級L(+)−アスコルビン酸1.0gを加えて良くかき混ぜ、バリヤー袋に入れ、熱シールし、バリヤー袋にウレタン製テープを貼り、注射針を差し込んで空気を抜き、新たな空気1000mlを注入し25℃のインキュベータに入れ、1日後と2日後の酸素濃度を測定した。
測定結果は、表2に示す通りであった。
【0049】
【表2】

【0050】
2. 第二の形態の場合
【実施例10】
【0051】
磁性皿に珪藻土1.0gを取り、関東化学製試薬の亜麻仁油1.0gを加えて良くかきまぜ、関東化学製試薬特級の炭酸カルシウム0.5gを加え良くかきまぜてバリヤー袋に加え、熱シールし、バリヤー袋にウレタン製テープを貼り、注射針を差し込んで空気を抜き、新たな空気1000mlを注入し25℃のインキュベータに入れ、1日後と2日後の酸素濃度を測定した。
測定結果は、表3の通りであった。
【実施例11】
【0052】
磁性皿に珪藻土1.5gを取り、関東化学製試薬の亜麻仁油1.0gを加えて良くかきまぜ、関東化学製試薬特級の炭酸カルシウム0.5gと活性炭0.5gを加え良くかきまぜてバリヤー袋に加え、熱シールし、バリヤー袋にウレタン製テープを貼り、注射針を差し込んで空気を抜き、新たな空気1000mlを注入し25℃のインキュベータに入れ、1日後と2日後の酸素濃度を測定した。
測定結果は、表3の通りであった。二日後に開封したところ袋内の臭気は認められなかった。

【0053】
主剤として亜麻仁油を用い、触媒を変えて実施例10と同様に実施した場合は表3に示す通りであった。
【比較例2】
【0054】
磁性皿に関東化学製試薬の活性炭1.0gを取り、関東化学製試薬の亜麻仁油1.0gを加えて良くかきまぜ、関東化学製試薬特級の硫酸鉄(II)七水和物0.5gを加え良くかきまぜてバリヤー袋に加え、熱シールし、バリヤー袋にウレタン製テープを貼り、注射針を差し込んで空気を抜き、新たな空気1000mlを注入し25℃のインキュベータに入れ、1日後と2日後の酸素濃度を測定した。
測定結果は、表3に示す通りであった。
【0055】
【表3】

【0056】
<実施例1〜13と比較例1および2の比較>
実施例(本発明の脱酸素剤)1〜14は、比較例1(従来提案されている代表的な脱酸素剤)よりも酸素濃度が低く酸素吸収能が優れていることがわかる。また比較例2(不飽和脂肪酸を主剤に用い、酸素吸収反応時に発熱しない触媒を用いた従来提案されている脱酸素剤)よりも酸素濃度が低く酸素吸収能が優れていることがわかる。
【0057】
3. 第三の形態の場合
【実施例14】
【0058】
磁性皿に珪藻土1.0gを取り、関東化学製試薬の亜麻仁油1.0gを加えて良くかきまぜ、関東化学製試薬特級の硫酸ナトリウムの25%水溶液2.0gを加え良くかきまぜ、冷蔵庫内に8時間保存して乾燥し、バリヤー袋に移す。別に磁性皿に珪藻土1.0gを取り、純水1.0gを加えて良くかきまぜてバリヤー袋に加え熱シールし、バリヤー袋にウレタン製テープを貼り、注射針を差し込んで空気を抜き、新たな空気1000mlを注入し25℃のインキュベータに入れ、1日後と2日後の酸素濃度を測定した。
測定結果は、表4の通りであった。
【実施例15】
【0059】
磁性皿に珪藻土1.0gを取り、関東化学製試薬の亜麻仁油1.0gを加えて良くかきまぜ、関東化学製試薬特級の硫酸ナトリウムの25%水溶液2.0gを加え良くかきまぜ、冷蔵庫内に8時間保存して乾燥し、バリヤー袋に移し熱シールし、バリヤー袋にウレタン製テープを貼り、注射針を差し込んで空気を抜き、新たな空気1000mlを注入し25℃のインキュベータに入れ、1日後と2日後の酸素濃度を測定した。
測定結果は、表4の通りであった。
【実施例16】
【0060】
磁性皿に珪藻土1.0gを取り、関東化学製試薬の亜麻仁油1.0gを加えて良くかきまぜ、関東化学製試薬特級の硫酸マグネシウム七水和物の25%水溶液2.0gを加え良くかきまぜ、冷蔵庫内に8時間保存して乾燥し、バリヤー袋に移す。別に磁性皿に珪藻土1.0gを取り、純水1.0gを加えて良くかきまぜてバリヤー袋に加え熱シールし、バリヤー袋にウレタン製テープを貼り、注射針を差し込んで空気を抜き、新たな空気1000mlを注入し25℃のインキュベータに入れ、1日後と2日後の酸素濃度を測定した。
測定結果は、表4の通りであった。
【0061】
【表4】

【0062】
<実施例14〜16と比較例1の比較>
実施例(本発明の脱酸素剤)14〜16はバリヤー袋内に水分が存在していても、存在していなくても、比較例1(従来提案されている代表的な脱酸素剤)よりも酸素濃度が低く酸素吸収能が優れていることがわかる。
【0063】
4. 低温保存の場合
【実施例17】
【0064】
磁製皿に関東化学製の珪藻土1gを取り純水1.0gを加えて良くかきまぜバリヤー袋に入れる。磁性皿に珪藻土1.0gを取り、関東化学製試薬の亜麻仁油1.0gを加えて良くかきまぜ、関東化学製試薬特級の硫酸鉄(II)七水和物0.5gを加え良くかきまぜてバリヤー袋に加え、熱シールし、バリヤー袋にウレタン製テープを貼り、注射針を差し込んで空気を抜き、新たな空気1000mlを注入し5℃の冷蔵庫内に入れ、1日後と2日後の酸素濃度を測定した。
測定結果は、24時間後で10.5%、48時間後で8.1%、48時間後の酸素吸収量は126mlであった。
この値は、比較例1のアスコルビン酸を主剤に用いて25℃で保存した場合よりも、酸素濃度は小で、酸素吸収量は大であり、低温でも優れた脱酸素剤であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の脱酸素剤は、金属探知機に反応しないので、食品等とともに袋に入れた状態で用いても、金属の混入を検出でき、金属混入検査が可能となる。また、原料が安価なため従来脱酸素剤を利用できなかった製品にも脱酸素による鮮度保持や酸化防止等の利用が可能になる。さらに、低温でも酸素吸収速度が速いので低温で保存する用途にも対応できる。さらに加えて、一体化することで酸素吸収能を有する粉体となるので紙や不織布に付着させて用いたり、プラスチックに練りこんで酸素吸収能を有する薄片や容器を形成することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和脂肪酸を含有する油脂と
金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の少なくとも一種と
水、結晶水、水蒸気の少なくとも一種からなる脱酸素剤
【請求項2】
不飽和脂肪酸を含有する油脂と
遷移金属を除く金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の少なくとも一種からなる脱酸素剤
【請求項3】
不飽和脂肪酸を含有する油脂と
遷移金属を除く金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物の少なくとも一種を一体化したことを特徴とする脱酸素剤
【請求項4】
不飽和脂肪酸を含有する油脂が、亜麻仁油および/または大豆油である請求項1〜3に記載の脱酸素剤
【請求項5】
金属が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉄である請求項1に記載の脱酸素剤
【請求項6】
遷移金属を除く金属が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムである請求項2および請求項3に記載の脱酸素剤

【公開番号】特開2009−50248(P2009−50248A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243017(P2007−243017)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(505393614)
【Fターム(参考)】