説明

脱酸素水の供給システム

【課題】 システム構成の単純化を図って、設備コスト及び運転コストを下げることができるとともに、設備の設置エリアも小さくすることができる脱酸素水供給システムを提供する。
【解決手段】 ボイラー側の要求に応じて、必要な脱酸素水をボイラー給水としてボイラー側に供給する脱酸素水の供給システムであって、上部に外気への連通部10dが設けられ、内部にボイラーへの給水が貯められる給水タンク10と、給水タンク10と一体となるように設けられ、不活性ガスNを用いて溶存酸素が除去された脱酸素水W1を給水タンク10に供給する脱酸素塔12とを有すとともに、脱酸素塔12下部の脱酸素水W2を給水タンク10に供給する供給部123が、この給水タンク10の水面M下に水没するように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボイラー側の要求に応じて、必要な脱酸素水をボイラー給水としてボイラー側に供給する脱酸素水の供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラー給水中の溶存酸素は、ボイラーの給水系統、ボイラー、復水系統等に腐食を引き起こす。このため、ボイラーへの給水設備には、例えば、不活性ガスとして窒素ガスを用いた脱酸素装置(特許文献1、特許文献2)が設けられる場合も多い。このような給水設備では、ボイラーの給水タンク(ホットウェルタンク)内の水を脱酸素装置に導き、この脱酸素装置で作った脱酸素水を再び給水タンク側に戻して、給水タンク内のボイラー給水の脱酸素処理を行っている。なお、脱酸素装置は、給水タンクの後付けになる場合が多いので、これが、直接、給水タンクへの補給水を脱酸素処理することはない。
【0003】
図5はボイラーに脱酸素処理したボイラー給水W3を供給する、従来の脱酸素水供給システム200を示している。この脱酸素水供給システム200は、ボイラー側の要求に応じて必要量のボイラー給水W3をボイラーに供給する給水タンク210と、給水タンク210内の水(以下、タンク水W1という)を一部循環させるようにしつつ脱酸素処理する脱酸素装置220とを有している。この脱酸素水供給システム200では、補給水W0は、水位検出器211からの信号によって開閉が制御される電磁弁201を介して給水タンク210に供給され、ボイラー給水W3は、給水タンク210出口側の給水ポンプ202を用いてボイラー側に送られる。
【0004】
また、この脱酸素水供給システムで200では、給水タンク210内のタンク水W1は、ポンプ203と流量調節弁204とを介して脱酸素装置220の脱酸素塔221上部に供給される。そして、脱酸素塔221内で脱酸素処理された脱酸素水処理W2は、この脱酸素装置220の処理水タンク222に一時的に貯められた後、ポンプ205で給水ポンプ202の上流側に供給される。この脱酸素装置220では、脱酸素用の窒素ガスNが処理水タンク222の上部に供給される。この窒素ガスNは、脱酸素塔221の下部から上部に移動して、この脱酸素塔221を下降するタンク水W1と接触し、このタンク水W1の脱酸素処理を行った後、脱酸素塔221の上部から排出される。なお、図中符号223は、水位が一定になるように流量調節弁204の開度を制御する水位計であり、符号212は、給水タンク210内を大気と連通させるベント管である。
【0005】
この脱酸素水供給システム200では、給水タンク210内のタンク水W1は、脱酸素装置220に送られて脱酸素処理されるが、できた脱酸素処理水W2は、ボイラーが運転中の場合には、一部が給水ポンプ202によりボイラー側に送られ、残りが給水タンク210に戻され、ボイラーが停止中の場合には、全量が給水タンク210に戻される。ボイラーが運転中の場合には、給水タンク210の水位は低下するが、これが低レベルL2に達すると、電磁弁201が開かれ、溶存酸素濃度の高い補給水W0が給水タンク210に供給され、その後、給水タンク210の水位が高レベルL1に達すると電磁弁201が閉じて、補給水W0の供給が停止される。したがって、給水タンク210に補給水W0が供給されている場合には、給水タンク210内のタンク水W1の溶存酸素濃度は急に大きくなる。また、給水タンク210の水位が低下すると、ベント管212を介して給水タンク210内には外気が導入され、給水タンク210の上部は常に空気で満たされているため、給水タンク210内のタンク水W1の水面近くでの溶存酸素濃度は上昇する。
【0006】
なお、この脱酸素装置220では、処理水タンク222中の脱酸素処理水W2の液面レベルが変動すると、隙間等から処理水タンク222内に外気が侵入して、装置の処理能力を低下させる。このため、この脱酸素装置220では、流量調節弁204や水位計223を介して、処理水タンク222の水面レベルが変動しないように給水の制御がなされる。
【0007】
【特許文献1】特開2004−261691
【特許文献2】特開2006−136756
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の脱酸素水供給システム200には、以下のような問題点がある。
まず、この脱酸素水供給システム200では、給水タンク210とは別個に脱酸素装置220を設ける必要があるため、脱酸素機能を有する脱酸素塔221の他に、処理水タンク222、ポンプ205、流量調節弁204、水位計223、連絡配管といった種々の機器が必要となる。このため、この脱酸素水供給システム200では、システム構成が複雑になって、設備及び運転コストとも割高になっているとともに、設備の設置エリアも余分に必要になっているという問題があった。
【0009】
また、この脱酸素水供給システム200では、給水タンク210内の溶存酸素濃度が補給水W0の供給によって大きく上昇するため、脱酸素処理水W2に関して、給水タンク210を余分の脱酸素処理水W2を貯めるバッファーとして使用することができず、かつ、処理水タンク222もバッファーとしての機能を果たさない。したがって、脱酸素装置220には、ボイラーの瞬間的給水使用量の最大値、すなわち、給水ポンプ202能力に合わせた脱酸素処理能力が要求される。このため、例えば、小型貫流ボイラーの場合、給水ポンプは最大連続蒸発量の約2倍の容量を有しており、かつ、ボイラーの平均蒸発量は最大連続蒸発量の約1/3程度であることから、脱酸素装置220には、ボイラーの実際的な蒸気の発生量の6倍もの処理能力が必要となり、脱酸素装置220の処理能力が、ボイラーの実際の運転に比べて、大きくなりすぎているという問題があった。
【0010】
さらに、この脱酸素水供給システム200では、脱酸素装置220が給水タンク210内のタンク水W1の脱酸素処理を行っているにもかかわらず、タンク水W1の溶存酸素濃度は、給水タンク210への補給水W0の供給によって大きく上昇し、脱酸素装置220の運転が効率的になされていないという問題があった。また、この脱酸素装置220は、溶存酸素濃度の高い補給水W0の脱酸素処理を行うのでなく、溶存酸素濃度の低いタンク水W1の脱酸素処理を行うものであるため、この点でも、この脱酸素水供給システム200では、脱酸素装置220の運転が効率的になされていないという問題があった。
【0011】
この発明は、以上の点に鑑み、システム構成の簡単化を図って、設備コスト及び運転コストを下げることができるとともに、設備の設置エリアも小さくすることができる脱酸素水供給システムを提供することを目的とする。
【0012】
また、この発明は、上記目的に加え、脱酸素処理能力をボイラーの容量に対して適正に定めることができ、かつ、機器も効率的に運転できる脱酸素水供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の請求項1記載の発明は、ボイラー側の要求に応じて、必要な脱酸素水をボイラー給水としてボイラー側に供給する脱酸素水の供給システムであって、上部に外気への連通部が設けられ、内部にボイラーへの給水が貯められる給水タンクと、前記給水タンクと一体となるように設けられ、不活性ガスを用いて溶存酸素が除去された脱酸素水を前記給水タンクに供給する脱酸素塔とを有すとともに、前記脱酸素塔下部の前記脱酸素水を前記給水タンクに供給する供給部が、この給水タンクの水面下に水没するように形成されていることを特徴とする。
【0014】
この発明では、脱酸素塔で脱酸素処理して作った脱酸素水は、この脱酸素塔の下部の供給部から直接給水タンク内に供給される。この場合、脱酸素塔の供給部は給水タンクの水面下に水没しているので、この脱酸素水は、給水タンク内の水(以下タンク水という)の内方に供給され、これが給水タンク上部の空気に触れて、直ぐに溶存酸素を有してしまうということはない。すなわち、この発明では、給水タンク上部の空気の影響を受けにくい、ボイラーへの給水取り出し口近くの給水タンク下部に、脱酸素塔からの脱酸素水を供給できるため、この給水取り出し口付近の溶存酸素濃度を、ボイラーに供給できる程度の値に低く維持することができる。
【0015】
この発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の場合において、前記脱酸素塔の上部側気液接触部の上方に、前記給水タンクへの補給水が脱酸素処理のために供給され、前記脱酸素塔の前記気液接触部直下に、前記不活性ガスが供給されることを特徴とする。
【0016】
この発明では、脱酸素塔の上部側気液接触部の上方から供給された補給水は、脱酸素塔の気液接触部直下から上昇するように供給される不活性ガスと接触して脱酸素処理され、脱酸素塔の下部側供給部から給水タンク内に供給される。したがって、この発明では、多くの溶存酸素を含む未処理の補給水が直接給水タンク内に供給されることはないので、給水タンク内のタンク水は、水面側においては空気と接触して溶存酸素濃度が上がることはあるものの、ボイラーへの給水取り出し口が設けられる給水タンクの下部側では、その溶存酸素濃度を低く維持することができる。このため、この発明では、脱酸素塔による脱酸素水の供給量以上にボイラー側の負荷が増大しても、給水タンクからボイラー側に脱酸素水を供給でき、脱酸素水を供給するという点に関しても、給水タンクをボイラーの負荷変動に対するバッファーとして用いることができる。
【0017】
また、この発明では、ボイラーの負荷が上昇すると給水タンクの水面レベルが下がり、この水面より上方にある脱酸素塔内の容積が増加するが、脱酸素塔の断面積は給水タンクに比べ充分に小さいため、不活性ガスを従来の使用量だけしか使用していなくても、この脱酸素塔内に外気を吸引したり、この脱酸素塔の処理能力が低下することはない。さらに、この発明では、不活性ガスを給水タンク上部の空間部に直接供給するものではないため、不活性ガス中に空気が混ざり込むこともない。
【0018】
この発明の請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明の場合において、前記給水タンクと前記脱酸素塔の上部とを接続して、前記給水タンク内の水を脱酸素処理のために前記脱酸素塔に供給するとともに、前記補給水の補給ラインと接続されて、この補給水を脱酸素処理のために前記脱酸素塔に供給する水処理ラインが設けられていることを特徴とする。
【0019】
この発明では、脱酸素塔は、給水タンクの水面レベルが低く、補給ラインから補給水が供給される場合には、この補給水の脱酸素処理を行うが、給水タンクの水面レベルが高く、補給水の供給が無い場合でも、水処理ラインを使用して、給水タンク内のタンク水の脱酸素処理を行うことができる。
【0020】
この発明の請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の場合において、前記脱酸素塔の前記供給部が、前記給水タンクのボイラーへの給水取り出し口近傍まで延びていることを特徴とする。
【0021】
この発明の請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の場合において、前記脱酸素塔から排出される脱酸素処理後の不活性ガスが、前記給水タンクの上部側空間部に導入されていることを特徴とする。
【0022】
この発明の請求項6記載の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の発明の場合において、前記給水タンク内の水面上には、この水面上方の空間部内の気体と給水タンク内の水との接触を抑える遮蔽材が浮かべられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
この発明の請求項1記載の発明によれば、脱酸素塔を給水タンクと一体的に形成し、この脱酸素塔で作った脱酸素水を、この脱酸素塔の下部側供給部から直接給水タンクに供給しているので、脱酸素水を一時的に貯める処理水タンクや、これに付随して生じる制御機器、ポンプ、及び連絡配管等を無くすことができる。したがって、この発明では、システム構成の簡単化を図ることができ、このことにより、設備コストや運転コストを下げることができるとともに、設備の設置エリアも小さくすることができる。
【0024】
この発明の請求項2記載の発明によれば、脱酸素水を供給するという点に関しても、給水タンクをボイラーの負荷変動に対するバッファーとして用いることができるので、脱酸素塔は、基本的に給水タンクへの補給水の量だけこれを脱酸素処理できればよく、脱酸素塔の処理能力もボイラーの現実の運転に合わせたものとすることができる。また、この発明では、脱酸素塔は、基本的に溶存酸素濃度の高い補給水の脱酸素処理を行えばよく、従来のシステムのように、補給水の供給のたびに溶存酸素濃度が高められるような、給水タンク内のタンク水を脱酸素処理する必要がないので、脱酸素塔の運転も効率的に行うことができる。
【0025】
この発明の請求項3記載の発明によれば、給水タンク側に補給水が供給されない場合でも、給水タンク内のタンク水の溶存酸素濃度を減少でき、脱酸素塔を効率的に使用することができる。
【0026】
この発明の請求項4記載の発明によれば、給水タンクの給水取り出し口周りの溶存酸素濃度を、脱酸素塔により作られた脱酸素水の溶存酸素濃度に、より近づけることができ、その分、ボイラー側に、より溶存酸素濃度の低いボイラー給水を供給できる。
【0027】
この発明の請求項5記載の発明によれば、給水タンクの水面の上昇時には、給水タンクの水面上方の空間部を脱酸素処理後の不活性ガスで満たすことができるとともに、給水タンクの水面の下降時にも、連通部を介して給水タンク内への空気の吸引がある程度はあるかもしれないが、給水タンクの水面上方の空間部を、酸素濃度の低いガスで満たすことができる。したがって、この発明では、給水タンクの水面側におけるタンク水と酸素の接触を抑えることができ、その分、タンク水中の溶存酸素濃度の上昇を抑えることができる。
【0028】
この発明の請求項6記載の発明によれば、給水タンク内のタンク水とその上部側空間部におけるガス(空気や、酸素を含んだ窒素ガス)との接触を抑えることができ、その分、タンク水の溶存酸素濃度の上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
実施形態1.
図1はこの発明の一実施の形態に係る脱酸素水供給システムを示している。
【0030】
脱酸素水供給システム1は、図1で示されるように、給水タンク10と、水位検出器11と、気液接触部121を有する脱酸素塔12と、循環ポンプ13、逆止弁14、定流量弁15、及び循環配管16からなる水処理ラインRと、流量調節弁17、電磁弁18、及び補給水配管19からなる補給ラインSと、給水ポンプ20、及び給水配管21からなる給水ラインTと、窒素ガス供給ラインUとから構成されている。
【0031】
なお、図1中ボイラーの記載はないが、給水ライン50の端部には、例えば、最大連続蒸発量2,100kg/h(換算蒸発量2,500/h)の小型貫流ボイラーが5台設けられているものとする。
【0032】
給水タンク10は、ボイラー給水W3となる水を一定量貯め、ボイラー側の要求に応じて、必要な脱酸素水をボイラー給水W3として供給するためのものであり、例えば、ボイラーの瞬間最大負荷、すなわち給水ポンプ20の最大給水流量(この実施の形態では、4,200kg/hの5倍で21,000kg/h)の30分程度のボイラー給水W3(約10ton)をタンク水W1として貯えている。この給水タンク10は、例えば、上面が覆われた有底の円筒状をしており、側面下部に、給水ラインTへの給水取り出し口となる給水ノズル10aと、水処理ラインRへのタンク水W1の取り出し口となる循環水ノズル10bとが設けられている。また、この給水タンク10には、上面に、水位検出器11の取付部10cが設けられているとともに、外気との連通部となるベント管10dが取り付けられている。
【0033】
なお、給水タンク10には、タンク水W1の水位が低下してくると、上部の空間部Vの容積が増加するため、ベント管10dを介して内部に外気が取り込まれるととも、タンク水W1の水位が上昇してくると、この空間部Vの容積が減少するため、内部の空気がベント管10dを介して外部に排出される。
【0034】
水位検出器11は、給水タンク10内に貯えられているタンク水W1の水位(水面レベル)のうち、所定の高レベルL1と低レベルL2とを検知するものである。この水位検出器12は、タンク水W1の水位が、低レベルL1に達した場合には、補給ラインSの電磁弁18にこれを開けさせるような信号を発し、給水タンク10側へ補給水W0を供給させ、これが、高レベルL2に達した場合には、補給ラインSの電磁弁18にこれを閉じさせるような信号を発し、給水タンク10側への補給水W0の供給を停止させる。なお、給水タンク10の高レベルL1と低レベルL2間の水位変動幅hによって生じるタンク水W1の量は、ボイラーの瞬間最大負荷(給水ポンプ20の最大給水量)の数分分となる。
【0035】
脱酸素塔12は、不活性ガスの一つである窒素ガスNを用いて、水中の溶存酸素を除去するものであり、気液接触部121の上方側から水を、気液接触部121の下方側から窒素ガスNを供給することにより、下降する水と上昇する窒素ガスNとが気液接触部121で接触して、水中の溶存酸素を窒素ガスN側に取り出すものである。この脱酸素塔12の主要部は、上部の水供給部120から下方に、例えば3段からなる上部側の気液接触部121と、気液接触部121直下のガス供給部122と、下部側の処理水排出部123とが設けられたもので、全体として、細長い同径の筒状に形成されている。 この脱酸素塔12は、給水タンク10の上面側から、これを立てた状態で差し込むようにして、この給水タンク10の上面に、この給水タンク10と一体となるように取り付けられる。この場合、ガス供給部122がタンク水W1の水面M上に位置するように位置決めされるとともに、処理水排出部123がタンク水W1の水面M下に水没するように位置決めされる。また、この場合、ガス供給部122のガスノズル122a(後述)は、給水タンク10の上面上に突出するように位置決めされる。
【0036】
水供給部120は、側面に脱酸素処理する水の取入ノズル120aが設けられているとともに、球面状の上端部に、脱酸素処理によって僅かに酸素ガスを含むようになった処理済窒素ガスを排出するガス排出部124が取り付けられている。この、ガス排出部124は、大気解放されたパイプ124aに逆止弁124bが設けられたものである。気液接触部121は、内部に、気液接触用ミキシングエレメント(例えば、特開2004−261691号公報参照)が設けられているか、又は、気液接触用のラシヒリングが設けられたものである。ガス供給部122は、気液接触部121の直下に設けられるものであり、側面に、窒素ガス供給用のガスノズル122aが設けられている。処理水排出部123は、給水タンク10への脱酸素水の供給部となるものであり、筒状をしていて、下端の吐出口123aが給水タンク10の下部に位置するように長めに形成されている。
【0037】
水処理ラインRは、一端が給水タンク10の循環水ノズル10bに接続され、他端が脱酸素塔12の取入ノズル120aに接続されているとともに、逆止弁14と定流量弁15との間に補給ラインSが接続されている。この水処理ラインRでは、補給ラインSの電磁弁18が閉じている場合には、循環ポンプ13の作動により、給水タンク10内のタンク水W1が逆止弁14と定流量弁15とを通って、一定の処理流量Q1で脱酸素塔12に供給される。また、この水処理ラインRでは、補給ラインSの電磁弁18が開いている場合には、所定の流量Q2の補給水W0と、タンク水W1とが、一定の処理流量Q1(したがって、タンク水W1の流量は、Q1−Q2となる)となるように脱酸素塔12に供給される。
【0038】
補給ラインSは、脱酸素塔12を介して給水タンク10側に流量Q2の補給水W0を供給するものである。流量調節弁17は、補給水W0が流量Q2になるように弁開度を制御する。ここで、処理流量Q1は、ボイラーの最大連続蒸発量(この実施形態では、2,100kg/hの5倍で、10,500kg/h=0.175m3/min)よりやや大きなものとなるが、補給水W0の流量Q2は、ボイラーの最大連続蒸発量とほぼ同程度のものとなる。
【0039】
窒素ガス供給ラインUは、脱酸素塔12のガスノズル122aと接続されて、脱酸素塔12のガス供給部122に、脱酸素処理用の窒素ガスNを一定流量(一般的に水処理ラインRにおける処理流量Q1の1/5程度(例えば、0.04m3/min))で供給する。
【0040】
つぎに、この脱酸素水供給システム1の作用効果について説明する。
まず、補給ラインSの電磁弁18が開けられて、給水タンク10側、すなわち、脱酸素塔12に補給水W0が供給されている場合について説明する。この場合、補給水ラインSは、流量調節弁17により、補給水W0を所定の流量Q2で水処理ラインRに供給し、水処理ラインRは、連続的に運転される循環ポンプ13と定流量弁15とにより、水を一定の処理流量Q1で脱酸素塔12に供給する。このため、脱酸素塔12の水供給部120には、流量Q2の補給水W0と、流量Q1−Q2のタンク水W1とが混合した混合水が供給される。また、この脱酸素塔12には、気液接触部121直下のガス供給部122に一定流量の窒素ガスNが供給される。このため、この脱酸素塔12では、上部側から下降する上記混合水と下部側から上昇する窒素ガスNとが、気液接触部121で接触して、混合水が脱酸素処理され、脱酸素処理水W2が下部の処理水排出部123から給水タンク10内に排出されるとともに、処理後の酸素を含んだ処理済窒素ガスが、上部のガス排出部124から外気中に放出される。
【0041】
一方、給水タンク10の上部側の空間部Vは、ベント管10dを介して外気と連通しているため、タンク水W1の水面M近傍は空気にさらされていることになる。したがって、給水タンク10内のタンク水W1が脱酸素処理されていても、タンク水W1の水面M近傍の溶存酸素濃度はやや高くなる。ところが、この脱酸素水供給システム1では、給水タンク10の下部側まで延びる処理水排出部123を介して、脱酸素塔12からの脱酸素処理水W2をタンク水W1の下部に常時供給し続けているため、タンク水W1の下部側の溶存酸素濃度は低く抑えられる。このため、給水タンク10の給水ノズル10a近傍のタンク水W1中の溶存酸素濃度は低く抑えられ(例えば、0.5mg/Lを超えることはない)、このタンク水W1をボイラー給水W3として不都合なく利用できる。
【0042】
脱酸素塔12を介した給水タンク10側への補給水W0の供給に伴い、給水タンク10の水位が上昇し、これが高レベルL2に達すると、水位検出器11がこれを検知し、補給ラインSの電磁弁18を閉じさせる。このことにより、給水タンク10内のタンク水W1のみが、水処理ラインRを介して一定の処理流量Q1で脱酸素塔12に供給され、この脱酸素塔12によりタンク水W1の脱酸素処理がなされる。ここで、ボイラー側の給水使用量が最大連続蒸発量(補給水W0の流量Q2)と同じであれば、給水タンク10の水面Mの上昇は生じないが、一般に、ボイラー側の平均的給水使用量は最大連続蒸発量より小さいので、補給水W0の供給によって、給水タンク10の水位の上昇が生じる。なお、補給水W0の流量Q2を、ボイラーの最大連続蒸発量よりやや多くして、給水タンク10の水位が確実に上昇するようにしてもよい。
【0043】
つづいて、ボイラーの運転に伴い、給水タンク10の水位が下降し、これが底レベルL2に達すると、水位検出器11がこれを検知して、補給ラインSの電磁弁18が開けられ、脱酸素塔12側への補給水W0の供給がなされる。このことにより、再び、流量Q2の補給水W0と、流量Q1−Q2のタンク水W1との混合水が、一定の処理流量Q1で脱酸素塔12側に供給される。なお、脱酸素塔12に供給される水の流量が一定なので、脱酸素塔12に供給される窒素ガスの流量も、変動させる必要はない。
【0044】
ところで、給水タンク10の水位が減少すると、給水タンク10に連通する脱酸素塔12内の水面Mの位置もこれに対して下降し、脱酸素塔12の水面Mより上の空間部分の体積もその分増加する。この場合、ボイラーの稼働状態を考えると、この体積の増加には数分の時間を要すため、このときの体積変化量が窒素ガスNの供給量を上回ることはあり得ない。したがって、給水タンク10の水位の減少によって、脱酸素塔12のガス排出部124等から外気を吸引してしまうことはない。例えば、断面積5m2の給水タンク10から、ボイラーの瞬間的給水使用量の最大値、すなわち、給水ポンプ202の能力(21ton/h=0.35m3/min)だけボイラー給水W3が流出した場合、給水タンク10の水位の下降速度は、0.07m/minとなるが、この時の脱酸素塔12内の体積増加速度は、塔の内径を0.1m(面積は0.0079m2)とすると、0.55m3×10-33/minとなり、この値は窒素ガスNの流量(0.04m3/min)に比べて充分に小さい。
【0045】
以上のように、この脱酸素水供給システム1では、窒素ガスNを用いて水を脱酸素処理するする脱酸素塔12を給水タンク10と一体となるように設け、かつ、脱酸素塔12の処理水排出部123を給水タンク10の水面M下に水没させるように形成しているので、脱酸素塔12側に、従来のような処理水タンクを設ける必要が無く、この処理水タンクとともに、これに関連する、ポンプ、流量調節弁、水位計、連絡配管を無くすことができる。すなわち、この脱酸素水供給システム1では、システム構成の簡単化を図ることができ、このことにより、設備コスト及び運転コストを下げることができるとともに、設備の設置エリアも小さくすることができる。
【0046】
この場合、例えば、脱酸素塔12にはタンク水W1のみを供給して、給水タンクに溶存酸素濃度の高い補給水W0を直接供給したり、給水タンク内で、タンク水W1表面を空気にさらしたりして、タンク水W1の溶存酸素濃度が高められることもあり得るが、このような場合でも、例えば、脱酸素塔12の処理量を増加させて、タンク水W1内部の溶存酸素濃度をできるだけ減少させたり、処理水排出部123の吐出口123aの位置を給水タンク10の給水ノズル10aの近くまで伸ばす(例えば、図2参照)ことにより、給水ノズル10aから取り出されるボイラー給水W3中の溶存酸素濃度を、ボイラー給水W3として適正な値まで下げることができる。なお、この場合、後述するように、処理済窒素ガスを給水タンク10の空間部Vに導入したり(図3参照)、給水タンク10内に遮蔽材Gを浮かべるようにしてもよい(図4参照)。
【0047】
また、この脱酸素水供給システム1では、脱酸素塔12の上部側気液接触部121の上方に補給水W0を供給し、脱酸素塔12の気液接触部121直下に脱酸素用の窒素ガスNを供給しているので、補給水W0の脱酸素処理をスムーズに行なうことができるとともに、溶存酸素濃度の高い補給水W0を一度に脱酸素処理できるので、脱酸素処理の効率を高めることができる。この場合、溶存酸素濃度の高い補給水W0が直接給水タンク10に供給されないので、給水タンク10内の溶存酸素濃度を常に下げることができ、脱酸素処理水W2に関しても、給水タンク10をボイラーの負荷変動に対するバッファーとして用いることができるようになる。このため、脱酸素塔12の処理能力を、従来の脱酸素塔12のように、給水ポンプの容量と同程度の容量まで上げる必要は無く、給水タンク10への補給水W0の流量又はこれより少し多い程度の流量まで下げることができる。
【0048】
さらに、この脱酸素水供給システム1では、給水タンク10と前記脱酸素塔12とを接続して、給水タンク10内のタンク水W1を脱酸素処理のために脱酸素塔12に供給する水処理ラインRを設けるとともに、この水処理ラインRに、補給水W0の補給ラインSを接続している。このため、この脱酸素水供給システム1では、補給水W0が供給される場合はもちろん、補給水W0の供給が無い場合でも、水処理ラインRを使用して、脱酸素塔12により、給水タンク10内のタンク水W1の脱酸素処理を行うことができる。すなわち、この脱酸素水供給システム1では、補給水W1が供給されない場合でも、給水タンク10内のタンク水W1の溶存酸素濃度を減少でき、この脱酸素塔12を効率的に使用することができる。
【0049】
なお、この実施の形態では、脱酸素塔12の気液接触部121は3段となっているが、これは、1段であってもよいし、他の複数段であってもよい。
【0050】
また、この実施の形態では、脱酸素塔12は、1塔だけが給水タンク10上に設置されているが、これを複数塔並列に、給水タンク10上に設置するようにしてもよい。
【0051】
さらに、この実施の形態では、脱酸素塔12を給水タンク10の上面部上に設置しているが、これを、給水タンクの側面部や底面部上に設置してもよい。なお、脱酸素塔12を給水タンク10の側面部に設置した場合、処理水排出部123はクランク状に曲げられて、給水タンク10内に差し込まれる。
【0052】
また、この脱酸素水供給システム1では、タンク水W1等に脱酸素剤や清缶剤の注入は行っていないが、この脱酸素水供給システム1において、脱酸素塔12の使用のほかに、タンク水W1やボイラー給水W3に脱酸素剤や清缶剤を注入するようにしてもよい。
【0053】
実施形態2.
図2はこの発明の他の実施の形態に係る脱酸素水供給システム2を示している。なお、この脱酸素水供給システム2と脱酸素水供給システム1との違いは、脱酸素塔12の処理水排出部123の大きさや形状の違いのみである。
【0054】
この脱酸素水供給システム2では、脱酸素塔12の処理水排出部123を長く延ばすとともに、L形に曲げ、その吐出口123aを、給水タンク10からボイラー給水W3を取り出す給水ノズル10aの近傍まで近づけている。このため、この脱酸素水供給システム2では、脱酸素塔12にて脱酸素処理された脱酸素処理水W2が、給水タンク10の給水ノズル10a近傍に供給され、給水ノズル10aから取り出されるタンク水W1中の溶存酸素濃度を、脱酸素処理水W2と同程度まで下げることができる。このことにより、ボイラー側に、より溶存酸素濃度の低いボイラー給水W3を供給できるとともに、脱酸素塔12の処理能力を、補給水W0の流量Q2に近づくように下げることもできる。
【0055】
実施形態3.
図3はこの発明の他の実施の形態に係る脱酸素水供給システム3を示している。なお、この脱酸素水供給システム3と脱酸素水供給システム1との違いは、脱酸素塔12のガス排出部124に関するもののみである。
【0056】
この脱酸素水供給システム3では、脱酸素塔12のガス排出部124のパイプ124aを延長し、このガス排出部124を給水タンク10の空間部Vと連通させている。このため、この脱酸素水供給システム3では、脱酸素塔12から排出される処理済窒素ガスが、給水タンク10の空間部Vに導入され、この空間部Vをある程度窒素ガスで満たすことができる。すなわち、この脱酸素水供給システム3では、給水タンク10の水位の上昇時には、幾分酸素を含むものの、大部分の窒素ガスで給水タンク10の水面Mを覆うことができ、この水面Mからタンク水W1への酸素の溶け込みを防止できる。また、給水タンク10の水位の下降時には、これに見合う量だけ処理済窒素ガスが供給されない場合もあるため、給水タンク10の空間部V中にベント管10dを介して一部外気を吸引することもあるが、この空間部V内のガスを、空気に比べて酸素濃度の低いものとすることができ、この点からも、給水タンク10の水面Mからのタンク水W1への酸素の溶け込みを防止できる。
【0057】
実施形態4.
図4はこの発明の他の実施の形態に係る脱酸素水供給システム4を示している。なお、この脱酸素水供給システム4と脱酸素水供給システム1との違いは、給水タンク10内の遮蔽材に関するもののみである。
【0058】
この脱酸素水供給システム4では、給水タンク10の水面Mを覆うように、例えばファインボール(日本紙パック(株)の登録商標)のような遮蔽材Gを多数タンク水W1上に浮かべ、この遮蔽材Gによって、給水タンク10内のタンク水W1と空間部V中の空気との接触面積を小さくなるようにしている。このため、この脱酸素水供給システム4では、給水タンク10中の水面M側のタンク水W1の溶存酸素濃度の上昇を抑えることができ、その分、タンク水W1全体の溶存酸素濃度を下げることができる。
【0059】
なお、脱酸素水供給システムは、実施形態2の特徴と実施形態3の特徴とを組み合わせたもの、実施形態3の特徴と実施形態4の特徴とを組み合わせたもの、又は、実施形態2の特徴と実施形態3の特徴と実施形態4の特徴とを組み合わせたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の実施形態1に係る脱酸素水供給システムを示す流れ図である。
【図2】この発明の実施形態2に係る脱酸素水供給システムを示す流れ図である。
【図3】この発明の実施形態3に係る脱酸素水供給システムを示す流れ図である。
【図4】この発明の実施形態4に係る脱酸素水供給システムを示す流れ図である。
【図5】従来の脱酸素水供給システムを示す流れ図である。
【符号の説明】
【0061】
1,2,3,4 脱酸素水供給システム
10 給水タンク
10a 給水ノズル(給水取り出し口)
10d ベント管(連通部)
12 脱酸素塔
123 処理水排出部(供給部)
G 遮蔽材
M 水面
N 窒素ガス(不活性ガス)
R 水処理ライン
S 補給ライン
W0 補給水
W1 タンク水(脱酸素水)
W2 脱酸素処理水(脱酸素水)
W3 ボイラー給水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラー側の要求に応じて、必要な脱酸素水をボイラー給水としてボイラー側に供給する脱酸素水の供給システムであって、
上部に外気への連通部が設けられ、内部にボイラーへの給水が貯められる給水タンクと、前記給水タンクと一体となるように設けられ、不活性ガスを用いて溶存酸素が除去された脱酸素水を前記給水タンクに供給する脱酸素塔とを有すとともに、
前記脱酸素塔下部の前記脱酸素水を前記給水タンクに供給する供給部が、この給水タンクの水面下に水没するように形成されていることを特徴とする脱酸素水の供給システム。
【請求項2】
前記脱酸素塔の上部側気液接触部の上方に、前記給水タンクへの補給水が脱酸素処理のために供給され、前記脱酸素塔の前記気液接触部直下に、前記不活性ガスが供給されることを特徴とする請求項1記載の脱酸素水の供給システム。
【請求項3】
前記給水タンクと前記脱酸素塔の上部とを接続して、前記給水タンク内の水を脱酸素処理のために前記脱酸素塔に供給するとともに、前記補給水の補給ラインと接続されて、この補給水を脱酸素処理のために前記脱酸素塔に供給する水処理ラインが設けられていることを特徴とする請求項2記載の脱酸素水の供給システム。
【請求項4】
前記脱酸素塔の前記供給部が、前記給水タンクのボイラーへの給水取り出し口近傍まで延びていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の脱酸素水の供給システム。
【請求項5】
前記脱酸素塔から排出される脱酸素処理後の不活性ガスが、前記給水タンクの上部側空間部に導入されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の脱酸素水の供給システム。
【請求項6】
前記給水タンク内の水面上には、この水面上方の空間部内の気体と給水タンク内の水との接触を抑える遮蔽材が浮かべられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の脱酸素水の供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−241074(P2008−241074A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79265(P2007−79265)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】