説明

脱酸素脱炭酸装置

【課題】 高い脱酸素脱炭酸性能を低い設備コストで得ることができる高効率な脱酸素脱炭酸装置を提供する。
【解決手段】 例えばボイラー供給水中の酸素成分及び炭酸成分を処理塔10により除去する。処理塔10は水槽11a,11bと、それらの上に接続された気液接触筒12a,12bを有し、原水を気液接触筒12aに導入すると共に、窒素ガスを水槽12bに導入し、水槽12bから処理水を排出する。水槽11a内の被処理水を気液接触筒12a,12bに循環させ、気液接触筒12bから排出される窒素ガスを水槽11a内の被処理水中に自吸式散気装置14により分散注入して循環させる。窒素ガスが分散注入される水槽11a内の被処理水中にH2SO4などのpH低下剤を注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラー等へ供給する原水中の酸素成分及び炭酸成分を事前に除去する脱酸素脱炭酸装置に関し、特に被処理水のpH調整と窒素ガスとの接触処理とにより脱酸素脱炭酸処理を行う脱酸素脱炭酸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラー給水等の水処理分野では、給水中の溶存酸素がボイラーや配管の腐食の原因になる。また、給水中の炭酸ガス、及び重炭酸イオン、炭酸イオンが熱分解して生じる炭酸ガスも、ボイラーや配管の腐食の原因になる。このため、ボイラー給水等に対しては、脱酸素脱炭酸処理が行われており、その一つが特許文献1、2に記載されているようなpH調整と窒素ガスとの接触との組合せ処理である。また、窒素ガスとの接触による脱酸素装置の一つが特許文献3に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−129305号公報
【特許文献2】特開2003−047950号公報
【特許文献3】特開2005−95791号公報
【0004】
pH調整と窒素ガスとの接触処理とによる従来の脱酸素脱炭酸処理は次のようにして行われる。原水中の酸素成分及び炭酸成分としては、溶存酸素、炭酸ガスの他、重炭酸イオン、炭酸イオンが存在している。溶存酸素、炭酸ガスは窒素ガスとの接触により除去されるが、イオン類は窒素ガスとの接触によっても除去されない。
【0005】
そこで先ず、原水を窒素ガスによる脱気処理塔に送る前に、その原水をpHが6.5以下の酸性に調整する。そうすると、化学式1に示すように原水中の重炭酸イオン及び炭酸イオンが遊離の炭酸ガスとなる。
【0006】
【化1】

【0007】
この状態で原水を窒素ガスによる脱気処理塔に送る。脱気処理塔では、原水に大量の窒素ガスが接触させられる。その結果、原水中の炭酸ガス及び溶存酸素が窒素ガスと置換され、原水中から除去される。特許文献1、2に記載された脱酸素脱炭酸処理では、この手順で脱酸素・脱炭酸処理が行われている。
【0008】
一方、特許文献3に記載された脱酸素装置は、原水を窒素ガスと接触させることにより、原水中の溶存酸素を除去するものであり、水槽上に気液接触筒が接続された対向流型の処理塔を使用すると共に、塔内に被処理水及び窒素ガスを循環させることにより、高効率な脱酸素処理を行う。
【0009】
しかしながら、特許文献1、2に記載されたように、pH調整、窒素ガス接触の順で順列的に脱酸素脱炭酸処理を行うと次のような問題がある。硫酸等のpH低下剤を原水に混合するために、注入攪拌機構を備えた大規模なpH調整槽が、脱気処理塔の上流側に必要になり、設備規模及び設備コストが増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高い脱酸素脱炭酸性能を小規模、低コストで得ることができる高効率な脱酸素脱炭酸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明者は前述した諸問題の根源がpH調整、窒素ガス接触の順列処理にあると考え、窒素ガス接触を行う脱気処理塔へのpH低下剤の直接注入を企画し、その直接注入に適した脱気処理塔の形式、注入箇所等について比較検討を行った。その結果、特許文献3に記載された脱酸素装置の処理塔、特に水槽上に気液接触筒が接続された対向流型処理塔の水槽内にpH低下剤を直接供給するのが、有効性が非常に高いことが判明した。
【0012】
すなわち、特許文献3に記載された脱酸素装置では、水槽上に気液接触筒が接続され、被処理水が気液接触筒内に導入されて下方の水槽を経て外部へ排出されると共に、窒素ガスが水槽内に導入されて気液接触筒内を経て外部へ排出される対向流型の処理塔が使用される。そして、処理塔の気液接触筒から排出される使用済みの窒素ガスの一部が、水槽内に滞留する被処理水中に拡散導入されて塔内を循環すると共に、処理塔の水槽内の被処理水が気液接触筒内に再導入されて塔内を循環する。
【0013】
被処理水を脱炭酸処理するためのpH低下剤を、前記処理塔の水槽内に供給すると、その水槽内では窒素ガスが被処理水中に拡散導入され、被処理水の攪拌が行われているために、格別の攪拌混合槽を用いずとも、pH低下剤を攪拌混合槽に投入したのと同様にpH低下剤の混合が進行し、被処理水中の重炭酸イオン及び炭酸イオンが遊離の炭酸ガスとなる。そして、その炭酸ガスが溶存酸素と共に窒素ガスと置換されて分離排出される。このとき、処理塔内を窒素ガス及び被処理水が循環し、気液接触を繰り返すので、炭酸ガス及び酸素ガスの分離排出効率も高い。
【0014】
ちなみに、被処理水の循環が行われない場合に、処理塔の水槽内にpH低下剤を供給すると、窒素ガスの拡散注入により水槽内で被処理水から分離除去された炭酸ガスが、窒素ガスと共に気液接触筒内を上昇する過程で、中性の新規導入水と接触することより、炭酸ガスが被処理水中に再吸収され、炭酸ガスの分離排出効果が特に低下する。しかるに、被処理水を循環させると、気液接触筒内において新規導入水と酸性の循環水とが混合し、酸性の被処理水となるため、炭酸ガスの再吸収が防止される。処理塔の水槽へpH低下剤を直接供給する場合の被処理水の循環操作は、気液接触の繰り返しだけでなく、気液接触筒内のpH上昇による炭酸ガスの再吸収を阻止する点からも重要である。
【0015】
本発明の脱酸素脱炭酸装置は、かかる知見を基礎として開発したものであり、脱酸素脱炭酸処理すべき原水を原水タンクから原水消費部へ供給する給水系に付設されて、原水消費部へ供給する原水中の酸素成分及び炭酸成分を事前に除去する脱酸素脱炭酸装置であって、水槽上に気液接触筒が接続され、被処理水が気液接触筒内を下降し下方の水槽を経て外部へ排出されると共に、窒素ガスが気液接触筒内を上昇して外部へ排出される対向流型の処理塔と、処理塔の気液接触筒から排出される使用済みの窒素ガスの一部を、水槽内に滞留する被処理水中に拡散導入して塔内循環させる窒素ガス循環系と、処理塔の水槽内の被処理水を気液接触筒内に再導入して塔内循環させる被処理水循環系とを具備しており、被処理水を脱炭酸処理するために被処理水を酸性に調整するpH低下剤を、水槽内の窒素ガスが拡散導入される被処理水に注入する構成を採用している。
【0016】
本発明の脱酸素脱炭素装置においては、処理塔の気液接触筒内に導入された被処理水が気液接触筒内を経て下方の水槽内に一時滞留する。水槽内の被処理水の一部は処理水として塔外へ排出され、残りは気液接触筒内に再導入され、塔内を循環する。同時に、窒素ガスが処理塔の気液接触筒内を上昇し、被処理水と向流接触する。気液接触筒内を上昇した窒素ガスの一部は塔外へ排出され、残りは水槽内の被処理水中に拡散導入され、気液接触筒内を再度上昇し、塔内を循環する。そして、この状態で水槽内の被処理水中にpH低下剤が注入される。
【0017】
水槽内の被処理水は、窒素ガスの拡散導入により攪拌されており、この状態でpH低下剤が注入されることにより、両者の混合が促進される。水槽内でpH低下剤が攪拌混合されることにより、被処理水中の炭酸イオン、重炭酸イオンは遊離した炭酸ガスとなる。この被処理水は気液接触筒内に導入され、窒素ガスと接触する。これを繰り返すことにより、被処理水中の炭酸ガス、溶存酸素が窒素ガスと置換され、被処理水中から分離除去される。炭酸ガス、溶存酸素を除去された被処理水は処理水として処理塔外へ排出される。
【0018】
このように、本発明の脱酸素脱炭酸装置においては、処理塔の気液接触筒内において処理水と窒素ガスの接触が繰り返されるだけでなく、処理塔の水槽内においても、窒素ガスの拡散導入により被処理水と窒素ガスの接触が繰り返され、脱酸素・脱炭酸処理が行われる。その上、炭酸ガスの拡散導入によって激しく攪拌される被処理水中にpH低下剤が注入されることにより、攪拌混合機能を有する専用のpH調整槽を用いずに、pH低下剤の高効率な攪拌混合が行われ、被処理水中の重炭酸イオン及び炭酸イオンのガス遊離が促進される。
【0019】
すなわち、本発明の脱酸素脱炭素装置においては、処理塔の水槽がpH調整槽、脱酸素槽及び脱炭素槽を兼ね、本来の脱酸素装置及び脱炭酸装置である気液接触筒が加わることより、小型の設備で高効率な脱酸素脱炭酸処理が行われるのである。処理塔の水槽へpH低下剤を直接供給する場合の被処理水の循環操作の更なる重要性については前述したとおりである。しかも、処理塔内でpH調整を行うので、応答性がよく、制御精度も高い。
【0020】
本発明の脱酸素脱炭酸装置における処理塔としては、処理塔が第1処理塔と第2処理塔とからなる2塔式のものが、脱酸素効率が高く好ましい。この場合、第1処理塔及び第2処理塔においては、第1処理塔の気液接触筒内に給水系からの被処理水が導入されると共に、第2処理塔の気液接触筒内に窒素ガスが導入され、窒素ガス循環系は第2処理塔の気液接触筒から排出される使用済みの窒素ガスを第1処理塔の水槽内の被処理水中に拡散導入し、被処理水循環系は第1処理塔の水槽内の被処理水を第1処理塔の気液接触筒内及び第2処理塔の気液接触筒内に導入する構成が望ましい。第1処理塔の水槽内の被処理水は酸性にpH調整されている。一方、給水系からの被処理水は基本的に中性である。両者が第1処理塔の気液接触筒内に導入されることにより、両者が混合し、酸性となるため、同気液接触筒内を上昇する窒素ガス中の炭酸ガスの被処理水への再吸収が防止される。
【0021】
被処理水のpH調整のためのpH計については、処理槽の水槽内に滞留する被処理水のpH調整のため、pH計を水槽又は被処理水循環系に設けるのが好ましく、被処理水循環系に設けるのが特に好ましい。なぜなら、被処理水循環系に設ける方が、pH計内の電極への窒素ガスの気泡によるハンチングの影響を受けにくいからである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の脱酸素脱炭酸装置は、水槽上に気液接触筒が接続された対向流式の処理塔に窒素ガス及び被処理水を循環させると共に、循環する窒素ガスを水槽内の被処理水中に拡散導入する形式の脱ガス装置において、被処理水を酸性に調整するpH低下剤の注入を前記水槽内の被処理水に対して行うので、処理塔の水槽がpH調整槽、脱酸素槽及び脱炭素槽を兼ね、本来の脱酸素装置及び脱炭酸装置である気液接触筒が加わることより、高い脱酸素脱炭酸性能を小規模、低コストで得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を示す脱酸素脱炭酸装置の構成図である。
【0024】
本実施形態の脱酸素脱炭酸装置は、ボイラー供給水等の原水をpH調整と窒素源からの窒素ガスとにより脱酸素脱炭酸処理するするものであり、処理装置本体として処理塔10と、処理塔10に窒素ガスを循環させる窒素ガス循環系20と、同じく処理塔10に被処理水を循環させる被処理水循環系30と、被処理水のpH調整を行うpH調整系40とを備えている。
【0025】
処理塔10は第1処理塔10aと第2処理塔10bを並列設置した2塔式である。第1処理塔10aは、被処理水を貯留する水槽11aの上に垂直な気液接触筒12aが連結された構成である。第2処理塔10bは、第1処理塔10aと同様に、被処理水を貯留する水槽11bの上に垂直な気液接触筒12bが連結された構成であり、それぞれの水槽11a,11bは並設されて一体化されると共に、両者を仕切る仕切り壁13の下部おいて連通している。気液接触筒12a,12b内には被処理水と窒素ガスの接触面積、接触時間を増大させるために、ラッシヒリング材などからなる静止型の接触促進部材(リアクタ)が充填されている。
【0026】
第1処理塔10aの容量は第2処理塔10bの容量より大きく、ここでは約1.5倍である。第1処理塔10aの水槽11aの反水槽31b側の側壁には、エアレータと呼ばれる自吸式散気装置14が取付けられている。自吸式散気装置14は、水平軸により支持された水槽11a内の回転羽根と槽外の羽根駆動モータとからなり、水槽11a内の被処理水中で回転羽根が回転駆動されることにより窒素ガスを吸引して槽内の被処理水中に拡散注入する。
【0027】
本脱酸素脱炭酸装置においては、原水が、図示されない供給ポンプを備えた原水供給系50により、第1処理塔10aの気液接触筒11a内に上部から導入される。一方、溶存酸素、炭酸ガス等のガス類を除去する窒素ガスは、図示されない窒素源から窒素ガス供給系60により第2処理塔10bの水槽11b内、特に水槽11b内の被処理水の水面より上方の槽内空間に導入され、この空間部を経由して第2処理塔10bの気液接触筒11b内に最下部から導入される。脱酸素脱炭酸処理を終えた処理水は、第2処理塔10bの水槽11bの下部から、処理水ポンプ71を備えた処理水排出系70により塔外へ排出される。
【0028】
処理塔10に装備される窒素ガス循環系20は、第2処理塔10bの気液接触筒11bの頂部から排出される窒素ガスの全部を、第1処理塔10aの水槽11aに取付けられた自吸式散気装置14に供給する。また、第1処理塔10aの水槽11a内の液面より上方の槽内空間、及び気液接触筒12aの上部から一部の窒素ガスを自吸式散気装置14に供給する。窒素ガス循環系20と共に処理塔10に装備される被処理水循環系30は、第1処理塔10aの水槽11aの底部から被処理水を循環ポンプ31より抜き出し、第2処理塔10bの気液接触筒12bの上部、及び第1処理塔10aの気液接触筒12aの上部へ導入する。
【0029】
pH調整系40は、硫酸水溶液等の周知のpH低下剤を収容するタンク41と、タンク41内のpH低下剤を第1処理塔10aの水槽11a内の被処理水中に注入する流量調節が可能なポンプ42と、水槽11a内の被処理水のpH値を測定するpH計43とを有している。pH計43は、被処理水循環系30における循環ポンプ31の下流側から分流された被処理水のpH測定をする。pH測定を終えた被処理水は、第1処理塔30aの水槽31a内に戻される。pH計43の出力信号はマスフローコントローラーと呼ばれる制御器44に送られる。制御器44は測定されたpH値が目標値に一致するようにポンプ42の能力を制御する。これにより、第1処理塔30aの水槽31a内の被処理水のpH値が、例えば6.5以下の目標とする酸性値に管理される。
【0030】
次に、本実施形態の脱酸素脱炭酸装置の機能について説明する。
【0031】
本実施形態の脱酸素脱炭酸装置の稼働中は、原水が原水導入系50を経由して第1処理塔10aの気液接触筒12a内に上部から導入される。導入された被処理水は気液接触筒12a内を流下し、水槽11a内に滞留する。水槽11a内の被処理水は、pH調整系40によりpH6.5以下の目標とする酸性に管理される。処理を終えた処理水は、第2処理塔10bの水槽11bから処理水排出系70により排出される。原水導入量と処理水排出量は実質同一である。
【0032】
また、被処理水循環系30における循環ポンプ31が作動することにより、水槽11a内の被処理水か、第2処理塔10bの気液接触筒12b内、及び第1処理槽10aの気液接触筒11a内にそれぞれ上部から導入される。第2処理塔10bの気液接触筒12bに導入された被処理水は気液接触筒12b内を流下し、水槽11b内に滞留する。第1処理塔10aの気液接触筒12aに導入された被処理水は、原水と共に気液接触筒12a内を流下し、水槽11a内に滞留する。水槽11a,11b内は、下部で連通しているので同じ液面レベルとなる。かくして、処理塔10内を被処理水が循環する。被処理水の循環量は、通常は原水導入量(処理水排出量)の0.5〜5倍である。
【0033】
これと共に、窒素ガスが窒素ガス供給系20により第2処理塔10bの水槽11b内の液面より上方の空間部に導入されると共に、第1処理塔10aの水槽11aに取付けられた自吸式散気装置14が作動する。水槽内11b内の空間部に導入された窒素ガスは、第2処理槽10bの気液接触筒12b内を上昇し、気液接触筒12b内を流下する循環被処理水と対向流接触する。第2処理槽10bの気液接触筒12bから排出された窒素ガスは、第1処理塔10aの水槽11aに設けられた自吸式散気装置14に吸引され、水槽11a内の被処理水中に拡散注入される。かくして、処理塔10内を窒素ガスも循環する。窒素ガスの循環量は通常は窒素ガス供給量(窒素ガス排出量)の1.5〜20倍である。
【0034】
このような運転が行われる結果、被処理水が次のようなプロセスを経て脱酸素・脱炭酸処理される。
【0035】
第1処理塔10aの水槽11a内に滞留する被処理水に対してpH調整系40によりpH低下剤が注入される。水槽11a内の被処理水は、自吸式散気装置14から窒素ガスが拡散導入されていることにより攪拌されている。このため、格別の攪拌混合装置を用いずとも、水槽11a内の被処理水にpH低下剤が攪拌混合される。これにより、被処理水中の炭酸イオン、重炭酸イオンが遊離した炭酸ガスとなる。
【0036】
この被処理水は、被処理水循環系30を経て気液接触筒12a,12b内を流下する。このとき、気液接触筒12a,12b内を上昇する窒素ガスと向流接触する。これにより、気液接触筒12a,12b内を流下する被処理水中の炭酸ガス及び溶存酸素が窒素ガスによって置換されて被処理水中から分離除去される。気液接触筒12aにおいては原水も流下するが、pH調整された被処理水と混合し、酸性の混合液となるため、炭酸ガスの再吸収は生じない。
【0037】
第1処理塔10aの水槽11aにおいては、窒素ガスが自吸式散気装置14から細かい気泡となって、pH調整された被処理水に注入されるので、ここでも被処理水中の炭酸ガス及び溶存酸素の分離除去が行われる。分離除去された炭酸ガス及び酸素ガスは、第1処理塔10aの気液接触筒12aから排出される窒素ガスと共に塔外へ排出される。
【0038】
このように、本実施形態の脱酸素脱炭酸装置においては、窒素ガスが被処理水との接触に繰り返し使用される。その接触は、処理塔10の気液接触筒12a、12bだけでなく、第1処理塔10aの水槽11aでの自吸式散気装置33による拡散注入によっても行われるので、接触効率が高い。しかも、その水槽11aでは窒素ガスの拡散注入により被処理水が攪拌されている。この被処理水にpH低下剤が注入されるので、格別の攪拌混合装置を用いずとも、pH低下剤が被処理水中に均一に混合される。また、処理塔10内での混合であるために、応答性が高く、制御精度も高い。
【0039】
自吸式散気装置14は、窒素ガス循環用の注入装置であると共に、水槽11a中の被処理水の攪拌機でもある。また、第1処理塔10aの水槽11aは、pH低下剤を被処理水に混合するpH調整槽、窒素ガスの拡散注入による脱ガス槽(脱酸素槽及び脱炭酸槽)を兼ねる。
【0040】
したがって、本実施形態の脱酸素脱炭酸装置は小型で経済的であるにもかかわらず、高い脱酸素脱炭酸処理効率を示す。具体的には、窒素ガスの使用量は、基本的に、原水導入量及び処理水排出量に見合う量とされるが、自吸式散気装置14を用いた循環使用により気液接触筒12a、12b及び水槽11aで繰り返し使用されるので、その削減が可能となる。
【実施例】
【0041】
図1に示す脱酸素脱炭酸装置を使用してボイラー供給水中の酸素成分及び炭酸成分を除去した。原水の水温は25℃、pHは7.5、原水中の溶存酸素濃度は7.8mg/L、炭酸・重炭酸イオン濃度はMアルカリ度で表して60mg/Lである。第1処理塔における水槽の有効容量は100L、第2処理塔における水槽の有効容量は75Lである。単位時間あたりの原水処理量(原水供給量・処理水排出量)は3.0m3 /h、処理塔における循環量は6.0m3 /hとした。窒素ガス量は単位時間あたりでは0.45Nm3 /h、単位処理量あたりでは0.15Nm3 /m3 とし、循環量は4.5Nm3 /hとした。pH低下剤としては硫酸水溶液を用い、pH調整値は5.5とした。
【0042】
pH低下剤の攪拌混合槽を使用していないにもかかわらず、処理水中の溶存酸素濃度は0.25mg/L、炭酸・重炭酸イオン濃度はMアルカリ度で表して7mg/Lとなった。
【0043】
図1に示す脱酸素脱炭酸装置を使用してボイラー供給水の脱酸素脱炭酸処理を行ったときの調整pH値と処理水中の炭酸・重炭酸イオン濃度との関係を図2に示す。pH調整値以外の条件は上記と同じである。pH低下剤の攪拌混合槽を使用していないにもかかわらず、被処理水のpHの低下に伴って処理水中の炭酸・重炭酸イオン濃度は低下する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態を示す脱酸素脱炭酸装置の構成図である。
【図2】同脱酸素脱炭酸装置の性能図で、調整pH値と処理水中の炭酸・重炭酸イオン濃度との関係を示す。
【符号の説明】
【0045】
10 処理塔
10a 第1処理塔
10b 第2処理塔
11a,11b 水槽
12a,12b 気液接触筒
13 仕切り壁
14 自吸式散気装置
20 窒素ガス循環系
30 被処理水循環系
31 循環ポンプ
40 pH調整系
41 タンク
42 ポンプ
43 pH計
44 制御器
50 原水供給系
60 窒素ガス供給系
70 処理水排出系
71 処理水ポンプ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱酸素脱炭酸処理すべき原水を原水タンクから原水消費部へ供給する給水系に付設されて、原水消費部へ供給する原水中の酸素成分及び炭酸成分を事前に除去する脱酸素脱炭酸装置であって、
水槽上に気液接触筒が接続され、被処理水が気液接触筒内を下降し下方の水槽を経て外部へ排出されると共に、窒素ガスが気液接触筒内を上昇して外部へ排出される対向流型の処理塔と、
処理塔の気液接触筒から排出される使用済みの窒素ガスの一部を、水槽内に滞留する被処理水中に拡散導入して塔内循環させる窒素ガス循環系と、
処理塔の水槽内の被処理水を気液接触筒内に再導入して塔内循環させる被処理水循環系とを具備しており、
被処理水を脱炭酸処理するために被処理水を酸性に調整するpH低下剤を、水槽内の窒素ガスが拡散導入される被処理水に注入する構成としたことを特徴とする脱酸素脱炭酸装置。
【請求項2】
請求項1に記載の脱酸素脱炭酸装置において、処理塔が第1処理塔と第2処理塔とからなり、第1処理塔及び第2処理塔においては、第1処理塔の気液接触筒内に給水系からの被処理水が導入されると共に、第2処理塔の気液接触筒内に窒素ガスが導入され、窒素ガス循環系は第2処理塔の気液接触筒から排出される使用済みの窒素ガスを第1処理塔の水槽内の被処理水中に拡散導入し、被処理水循環系は第1処理塔の水槽内の被処理水を第1処理塔の気液接触筒内及び第2処理塔の気液接触筒内に導入することを特徴とする脱酸素脱炭酸装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の脱酸素脱炭酸装置において、処理槽の水槽内に滞留する被処理水のpH調整のためのpH計を被処理水循環系に設けたことを特徴とする脱酸素脱炭酸装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−131536(P2010−131536A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310471(P2008−310471)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(593012181)東洋紡エンジニアリング株式会社 (20)
【Fターム(参考)】