説明

脳卒中及び神経変性疾患の予防及び治療ための神経保護活性を有する複合生薬材抽出物を含む組成物

本発明は、神経細胞保護活性を有する高麗人参抽出物、刺五加抽出物、当帰抽出物、及び黄ごん抽出物からなる複合生薬材抽出物を含む脳卒中及び神経変性疾患の予防及び治療用組成物及び複合生薬材抽出物の製造方法に関するもので、前記複合生薬材抽出物は、脳虚血によって誘導される神経細胞損傷を保護する効果が優れているだけではなく人体に無害で、神経細胞の死滅によって発生する神経変性疾患、すなわち、卒中、中風、老年認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンテントン病、ピック(Pick)病、及びクロイツフェルト・ヤコブ(Creutzfeldt−Jakob)病などを予防及び治療するための医薬品及び機能性健康食品として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳卒中及び神経変性疾患の予防及び治療効果を有する複合生薬材抽出物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
20世紀になって、人間の平均寿命が生命科学と医学の急速な発達によって長くなり、老齢人口増加が社会問題化してきている。特に、神経系の致命的な機能性疾病である脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病など老人性神経疾患が増加した。
【0003】
神経系における神経細胞の成長、分化及び死滅は、一般的な発達、組織的特異的な機能の確立及び恒常性維持にそれぞれ重要な調節過程である。
【0004】
脳血管疾患は、大きく2種類の形態に分類することができる。一つは、脳出血などに見られる出血性脳疾患で、もう一つは脳血管の閉鎖などによって現れる虚血性脳疾患である。出血性脳疾患は、交通事故などによって主に現れ、虚血性脳疾患は主に老齢の人々によく現れる疾患である。
【0005】
大脳に一時的な脳虚血が誘発される場合、酸素とブドウ糖の供給が遮断されて神経細胞ではATP減少、浮腫(edema)が発生して、結局、脳の広範囲な損傷が誘発される。神経細胞の死滅は、脳虚血があった後、相当な時間経過後に現れる。これを遅延性神経細胞死(delayed neuronal death)と言う。遅延性神経細胞死は、モンゴリアン・ジャービル(Mongolian gerbil)を使用した一過性前脳虚血モデル(transient forebrain ischemic model)を通じた実験で詳しく見ると、5分間脳虚血誘導4日後、海馬(hippcampus)のCA1領域で神経細胞死が観察されると報告されている(Kirino T,Sano K.Acta Neuropathol.,1984年,第62巻,201〜208頁;Kirino T.Brain Res.,1982年,第239巻,57〜69頁)。
【0006】
今まで最も多くの人々が受け入れている脳虚血による神経細胞死の機序には、2種類がある。一つは、脳虚血によって細胞外に過度なグルタメート(glutamate)が蓄積されるようになって、このようなグルタメートが細胞内に流入し、結局過度な細胞内カルシウムの蓄積により神経細胞死が誘発されるという、興奮性神経細胞死の機序(Kang TC,等,J Neurocytol.,2001年,第30巻,945〜955頁)であり、もう一つは、虚血・再潅流時に急激な酸素供給によって生体内ラジカルの増加によるDNA及び細胞質に損傷を受けて誘発されるという酸化性神経細胞死の機序である(Won MH,等,Brain Res.,1999年,第836巻,70〜78頁;Sun AY,Chen YM.J.Biomed.Sci.,1998年,第5巻,401〜414頁;Flowers F,Zimmerman JJ.New Horiz.,1998年,第6巻,169〜180頁)。
【0007】
このような機序的な研究を土台にして脳虚血時に現れる神経細胞死を効果的に抑制する物質を探索する研究、または物質に対する機序を明らかにする研究が多く遂行されている。しかし、いまだに効果的に脳虚血による神経細胞死を抑制する物質は、ほとんどないのが実情である。
【0008】
今まで唯一、脳虚血治療剤としてFDA公認の市販中の組織プラスミノゲンアクチベータ(tissue plasminogen activator,t−PA)は、脳虚血を誘発させる血栓を血栓溶解剤で溶かして酸素及びブドウ糖の早期供給を誘導する物質である。したがって、直接的に神経細胞を保護するのではないので、早期使用が必要であり、血栓溶解剤という特徴のため過量の使用や頻繁な使用時には、血管壁が薄くなって結局は出血性脳血管疾患を誘発するようになる。
【0009】
また、初期のカルシウム流入を効果的に抑制するためのカルシウムチャンネル抑制剤(calcium channel blocker)であるMK−801の場合、臨床的テストが実行されたが、その副作用のため薬物が廃棄されたことがある。
【0010】
一方、韓国国内の場合、多数の天然物質が脳卒中予防に効果がある健康食品として市販されているが、これらの大部分は、科学的な検証を経ていないものが多く、かえって健康食品乱用の原因になり、社会的な問題になっている。
【0011】
したがって、長期間使用されてその安全性が立証された天然資源を客観的に検証して、脳疾患治療及び予防効果を有する天然物質を開発しようとする努力が早急に求められている。
【0012】
高麗人参(Panax ginseng C. A. Meyer)は、五加皮科に属する多年生薬草であり、各種生理活性を有するサポニン(Saponin)系誘導体化合物が主要薬効を有し、ジンセノサイド(Ginsenoside)の含量が品質の指標になると報告されている。漢方処方では、健胃消化薬、整腸止瀉薬、陣痛鎮痙薬からなる処方などに使用され、薬理作用では血糖降下作用、抗癌効果、血清蛋白合成促進、抗体生産促進作用、中枢興奮作用、抗疲労作用などがある(Chung B.S.and Shin M.K.HyangyakDaesachcheon, Youngrimsa,1998年,439〜444頁)。
【0013】
刺五加は、刺五加皮(Acanthopanax senticosus HARMAS)とも言って、韓国国内で五加皮(オガピ)またはオガルピとして知られている。五加皮は、たらの木科で多数の種があるが、それらの中で刺があるものを刺五加皮という。動物実験の結果、刺五加皮はひどい血液循環障害と酸素欠乏症状がある生命体の抵抗性を増進させる機能と効果を示し、物理的(寒さ、熱と循環運動、強制的浮動等)、化学的、生物学的悪影響に対して抵抗力を増進させるのみならず、体内の大量の抗体形成にも効果を示した(Chung B.S.and Shin M.K.HyangyakDaesachcheon,Youngrimsa,1998年,433〜435頁)。
【0014】
当帰(Angelica sinensis DIELS)は、セリ科に属する多年生薬草で、漢方処方では各種婦人科疾患、更年期障害、不妊などを治療する目的に使用されてきた。現在は、不整脈、虚血性中風、脳動脈硬化、貧血、血栓閉塞性血管炎、高血圧及び不眠症等に応用されている。薬理作用では、抗血栓作用、造血作用、心臓収縮抑制作用、血管弛緩作用、血中脂質濃度降下による粥状動脈硬化抑制作用、免疫調節作用、抗癌作用及び抗炎症作用などが報告されている(Chung B.S.and Shin M.K.HyangyakDaesachcheon,Youngrimsa,1998年,406〜408)。
【0015】
黄ごん(Scutellaria baicalensis GEORGI)は、双葉植物筒花植物目ウツボグサ科の多年生草で山地の草原で育ち、韓国、中国、モンゴル及びシベリア東部等に分布する。漢方では、根を解熱、利尿、止瀉、利膽及び消炎剤に使用して、薬用植物として栽培する(Chung B.S.and Shin M.K.HyangyakDaesacheon,Youngrimsa,1998年,864〜865頁)。
【0016】
しかし、高麗人参、刺五加、当帰及び黄ごんを含む複合生薬材抽出物の脳疾患治療効果に対しては、参考文献として本文に挿入した前記引用文献のどこにも報告または記載されていない。
【0017】
いくつかの生化学的実験を通じて、神経成長及び分化に対する効果を観察し、前記複合生薬材抽出物が、脳卒中及び神経変性疾患の主な原因である神経細胞死滅を抑制する役割をするのかを確認するために、本発明者等は、動物モデルを使用して4種の感覚運動機能テストを実施し、最後に前記抽出物が神経細胞死滅を抑制することを確認することにより本発明を完成した。
【0018】
本発明のこのような目的は、下記の本発明の詳細な説明によってさらに明確になるだろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
大脳に一時的な脳虚血が誘発される場合、酸素とブドウ糖の供給が遮断されて神経細胞ではATP減少、浮腫(edema)が発生して、結局、脳の広範囲な損傷が誘発される。神経細胞の死滅は、脳虚血があった後、相当な時間経過後に現れる。これを遅延性神経細胞死(delayed neuronal death)と言う。遅延性神経細胞死は、モンゴリアン・ジャービル(Mongolian gerbil)を使用した一過性前脳虚血モデル(transient forebrain ischemic model)を通じた実験で詳しく見ると、5分間脳虚血誘導4日後、海馬(hippcampus)のCA1領域で神経細胞死が観察されると報告されている(Kirino T,Sano K.Acta Neuropathol.,1984年,第62巻,201〜208頁;Kirino T.Brain Res.,1982年,第239巻,57〜69頁)。
【0020】
今まで最も多くの人々が受け入れている脳虚血による神経細胞死の機序には、2種類がある。一つは、脳虚血によって細胞外に過度なグルタメート(glutamate)が蓄積されるようになって、このようなグルタメートが細胞内に流入し、結局過度な細胞内カルシウムの蓄積により神経細胞死が誘発されるという、興奮性神経細胞死の機序(Kang TC,等,J Neurocytol.,2001年,第30巻,945〜955頁)であり、もう一つは、虚血・再潅流時に急激な酸素供給によって生体内ラジカルの増加によるDNA及び細胞質に損傷を受けて誘発されるという酸化性神経細胞死の機序である(Won MH,等,Brain Res.,1999年,第836巻,70〜78頁;Sun AY,Chen YM.J.Biomed.Sci.,1998年,第5巻,401〜414頁;Flowers F,Zimmerman JJ.New Horiz.,1998年,第6巻,169〜180頁)。
【0021】
このような機序的な研究を土台にして脳虚血時に現れる神経細胞死を効果的に抑制する物質を探索する研究、または物質に対する機序を明らかにする研究が多く遂行されている。しかし、いまだに効果的に脳虚血による神経細胞死を抑制する物質は、ほとんどないのが実情である。
【0022】
今まで唯一、脳虚血治療剤としてFDA公認の市販中の組織プラスミノゲンアクチベータ(tissue plasminogen activator,t−PA)は、脳虚血を誘発させる血栓を血栓溶解剤で溶かして酸素及びブドウ糖の早期供給を誘導する物質である。したがって、直接的に神経細胞を保護するのではないので、早期使用が必要であり、血栓溶解剤という特徴のため過量の使用や頻繁な使用時には、血管壁が薄くなって結局は出血性脳血管疾患を誘発するようになる。
【0023】
また、初期のカルシウム流入を効果的に抑制するためのカルシウムチャンネル抑制剤(calcium channel blocker)であるMK−801の場合、臨床的テストが実行されたが、その副作用のため薬物が廃棄されたことがある。
【0024】
一方、韓国国内の場合、多数の天然物質が脳卒中予防に効果がある健康食品として市販されているが、これらの大部分は、科学的な検証を経ていないものが多く、かえって健康食品乱用の原因になり、社会的な問題になっている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記目的を達成するために、本発明は、高麗人参、刺五加、当帰及び黄ごんを含む複合生薬材抽出物を有効成分として含む、神経細胞保護によって脳卒中及び神経変性疾患を治療及び予防するための薬学的組成物を提供する。
【0026】
好ましくは、前記高麗人参、刺五加、当帰及び黄ごんを含む複合生薬材抽出物は、1〜5:2〜7:2〜7:1、より好ましくは、2:5:4:1の割合である。
【0027】
前記抽出物は、水、メタノール、エチルアルコールのような低級アルコール、好ましくは、メタノールまたはその混合物で植物を抽出して取得された抽出物を含む。
【0028】
本発明の目的は、高麗人参(Panax ginseng C.A.Meyer)、刺五加皮(Acanthopanax senticosus HARMS)、当帰(Angelica sinensis DIELS)、黄ごん(Scutellaria baicalensis GEORGI)を含む複合生薬材抽出物の、ヒトまたは哺乳動物での神経細胞を保護することによる脳卒中の治療及び予防のための治療剤製造への用途を提供するものである。
【0029】
本発明の目的は、高麗人参(Panax ginseng C.A.Meyer)、刺五加(Acanthopanax senticosus HARMS)、当帰(Angelica sinensis DIELS)、黄ごん(Scutellaria baicalensis GEORGI)を含む複合生薬材の抽出物の治療的有効量を薬学的に許容可能な担体とともに哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の神経細胞を保護することによって脳卒中及び神経変性疾患を治療または予防する方法を提供するものである。
【0030】
本発明は、生理学的に許容可能な添加剤とともに、高麗人参、刺五加、当帰及び黄ごんを含む複合生薬材抽出物を有効成分として含む、神経細胞保護によって脳卒中及び神経変性疾患を治療及び予防するための健康食品または食品添加剤を提供する。
【0031】
神経細胞死によって誘発される神経変性疾患では、卒中、中風、老年認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンテントン病、ピック(Pick)病、及びクロイツフェルト・ヤコブ(Creutzfeldt−Jakob)病が含まれ得る。
【0032】
本発明の薬学的組成物は、組成物全体重量に対して前記抽出物を約0.01〜50重量%で含むことができる。
【0033】
本発明の健康食品は、全体組成物の重量に対して上記組成物を0.01〜80%、好ましくは1〜50%含む。
【0034】
前記健康食品は、健康食品、健康飲料などに作ることができ、粉末、顆粒、錠剤、チューイング錠、カプセル、飲料などに使用することができる。
【0035】
本発明の抽出物は、下記の好ましい実施例によって製造できる。
【0036】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の抽出物は、詳細には下記の過程によって製造される。
【0037】
本発明の高麗人参、刺五加、当帰及び黄ごんを含む複合生薬材抽出物は、次のように製造することができる。黄ごんを除いて乾燥し、切って粉砕して5〜35倍、好ましくは約10倍容積の蒸留水、メタノール、エチルアルコール、ブタノールなどまたはそれらの混合物、好ましくは熱水と混合する。溶液は、摂氏20〜100度、好ましくは摂氏60〜100度で1〜24時間熱水処理して、熱水、冷水、還流抽出超音波抽出を1〜5回、好ましくは2〜3回連続的に抽出する。残余物は、ハチ蜜と残っている乾燥した黄ごんに追加して熱水と48〜120時間、好ましくは96時間追加的に抽出する。取得した抽出物は、ろ過して上澄み液を取得して摂氏20〜100度、好ましくは50〜70度で回転蒸発器で濃縮した後、水、低級アルコールまたはその混合物に溶解することができる複合生薬の乾燥抽出粉末を取得するために、真空凍結乾燥、熱風乾燥または噴霧乾燥によって乾燥して熱風乾燥する。
【0038】
本発明のまた他の実施例として、本発明の生薬材抽出物は、以下により構成される工程を含む。(a)高麗人参、刺五加に約5〜25倍、好ましくは2〜8倍の蒸留水、メタノール、エチルアルコール、ブタノールなどのような低級アルコールまたはそれらの混合物、好ましくは熱水を追加して、摂氏20度〜100度、好ましくは60度〜100度の温度で1〜24時間還流抽出して抽出物を取得し、ろ過及び乾燥して濃縮された抽出物を取得する工程。(b)白茯苓パウダー及びハチ蜜を生地黄汁とよく混合して添加した後、48〜120時間、好ましくは96時間熱水で抽出しながら黄ごんを添加して本発明の複合生薬材抽出物を取得する工程。
【0039】
したがって、本発明はまた、前記製造方法による複合生薬材抽出物を提供する。
【0040】
追加的に極性溶媒及び非極性溶媒に溶解可能な本発明の抽出物は、次の工程の過程によって製造することができる。前記工程によって製造された抽出物を水に懸濁して1〜100、好ましくは1〜5倍容積の非極性溶媒(エチルアセテート、クロロホルム、ヘキサンなど)と混合して、非極性溶媒溶解層を集めて本発明の非極性溶媒溶解性抽出物を取得し、残っている極性溶媒溶解性層は集めて、水、低級アルコールまたはそれらの混合物に溶解可能な本発明の極性溶媒溶解可能抽出物を取得する。また、前記過程は変更されてもよく、またはさらなる段階に供されてもよく、当技術分野で通常のよく知られた方法、例えば、文献(Harborne J.B.,Phytochemical methods:A guide to modern techniques of plant analysis.,3rd Ed.,1998年,6〜7頁)に記載された方法によって、より潜在的な画分または化合物を分画または分離することができる。
【0041】
前記複合生薬材抽出物が、MCAo動物モデルで発生した局所脳虚血による神経損傷に効果があるかどうか調べるための実験を通じて、抽出物が局所脳虚血による神経細胞死滅を抑制して神経保護活性を示すことを確認した。
【0042】
また、本発明は、前記製造方法によって製造された活性成分で神経細胞を保護し、脳卒中及び神経変性疾患を治療及び予防するための前記複合生薬材抽出物を含む薬学的組成物を提供する。
【0043】
したがって、本発明は、前記製造方法で取得される神経細胞保護活性を有する複合生薬材抽出物を提供する。
【0044】
本発明のまた他の目的は、前記製造方法によって製造された前記複合生薬材の抽出物を有効量で哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の神経細胞を保護することによって脳卒中及び神経変性疾患を治療または予防する方法を提供するものである。
【0045】
本発明の神経細胞を保護することによって脳卒中及び神経変性疾患を治療及び予防するための組成物は、全体組成物の重量に対して前記抽出物を0.01〜50%含む。
【0046】
本発明の組成物は、追加的に通常の担体、アジュバントまたは希釈剤を当技術分野でよく知られた方法を使用して一緒に含むことができる。前記担体は、用法及び服用法によって適合した成分を使用するのが好ましいが、それに限定されるものではない。適当な希釈剤は、レミントンの製薬(Mack Publishing co,Easton PA)テキストに目録で記載されている。
【0047】
下記の製剤化方法及び添加剤は、単なる例であって、本発明を制限するものではない。
【0048】
本発明による組成物は、薬学的に許容可能な担体、アジュバントまたは希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キリシトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油を含む薬学的組成物として提供することができる。剤形は、追加的に、充填剤、抗凝固剤、増量剤、湿潤剤、香辛料、崩壊剤、防腐剤などを使用して調剤される。本発明の組成物は、当技術分野でよく知られた方法を使用して患者に投与後、活性成分を早く持続的に徐々に放出するように(速放型、持続徐放型、徐放型)製剤化することができる。
【0049】
例えば、本発明の組成物は、一般的に注射のために使用される油、プロピレングリコール(propylene glycol)または他の溶媒に溶解することができる。担体の適切な例は、生理学的食塩水、ポリエチレングリコール、エチルアルコール、植物性油、イソプロピルミリステートなどを含むが、これに限定されるものではない。局所投与のための本発明の抽出物は、軟膏やクリーム形態に製剤化することができる。
【0050】
本組成物を含む薬学的製剤は、それぞれ通常の方法によって散剤、錠剤、カプセル剤、軟性カプセル剤、水性薬剤、エリキシルピル(elixir pill)、シロップ、エアゾールなどの経口型剤形、またはクリーム、軟膏、ローション、ゲル、バーム、パッチ、ペースト、噴霧液、エアゾールなどの局所剤形または溶液、懸濁液、エマルジョンなどの注射剤形に製剤化することができる。
【0051】
薬学的服用形態の本発明の組成物は、薬学的に許容可能な塩の形態で使用することができ、単独でまたは適当に一緒に使用することができ、他の薬学的に活性がある成分とともに使用することができる。
【0052】
本発明の抽出物または組成物の好ましい服用量は、患者の状態及び体重、重症度、剤形、経路及び投与期間によって変えることができ、当業者によって選択されうる。しかし、好ましい効果を得るためには、本発明の抽出物が1日当り体重1kg当たり10g/kg、好ましくは1〜3g/kgの量で投与されることが勧奨される。外用剤、座剤及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用することができる。服用量は、一日に一度または何回に分けて投与することができる。組成物において、本発明の抽出物の量は、全体組成物の重量に対して0.01〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量%で含まれる。
【0053】
本発明の薬学的組成物は、多様な経路を通じて哺乳類のような動物(ラット、マウス、飼育用動物または人間)に投与することができる。投与のすべての方式が意図される。例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜、髄膜腔内、硬膜外または脳血管内(intracerebroventricular)注射によって投与することができる。
【0054】
また、本発明は、神経細胞保護活性を有する高麗人参抽出物、刺五加抽出物、当帰抽出物及び黄ごん抽出物からなる複合生薬材抽出物を含む、脳卒中及び神経変性疾患の予防及び改善用健康食品を提供する。健康食品は、前記抽出物0.01〜80重量%、アミノ酸0.001〜5重量%、ビタミン0.001〜2重量%、糖0.01〜20重量%、有機酸0.001〜10重量%及び薬学的に許容可能な食品添加剤である適量の甘味料及び香料を添加して製造することができる。
【0055】
前記複合生薬材抽出物は、神経細胞保護活性によって脳卒中及び神経変性疾患を予防及び改善するための食品及び飲料に添加することができる。
【0056】
健康食品を開発するための本発明の抽出物を含む食品添加物の例としては、多様な食物、飲料、ガム、ビタミン複合剤、健康増進食品及びその類似物などがあり、粉末、顆粒、錠剤、チューイング錠、カプセルまたは飲料の形態で使用することができる。
【0057】
また、本発明の抽出物は、例えば、粉乳、成長期粉乳、成長期食餌のような子供及び乳児の食品に含ませて、神経細胞保護によって脳卒中及び神経変性疾患を予防及び向上させることができる。
【0058】
前記組成物は、食物、添加剤または飲料に添加することができる。ここで、食品や飲料内の前記抽出物の量は、一般的に健康食品組成物の全体食品質量に対して約0.1〜80w/w%、好ましくは1〜50w/w%であって、健康飲料組成物100mLに対して1〜30g、好ましくは3〜10gである。
【0059】
本発明の健康飲料組成物は、基本成分で前記抽出物を表示された割合で含み、他の液体成分には特別な制限がなく、他の成分は多様な防臭剤または通常の飲料のような天然の炭水化物であり得る。前記天然炭水化物の例は、グルコース、フルクトースなどのような単糖類;マルトース、スクロースなどの二糖類;デキストリン、クロデキストリンなどのような通常の糖;及びキリシトール及びエリスリトールなどの糖アルコールである。前記の外に他の防臭剤として、タウマチンのような天然防臭剤、レバウジオシドA、グリシリジンなどのようなステビア抽出物及びサッカリン、アスパルテームなどのような防臭剤を使用することができる。前記天然炭水化物は、一般的に本発明の飲料組成物100mLに対して約1〜20g、好ましくは5〜12gである。
【0060】
前記組成物の外に多様な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含むことができる。前記の外に他の成分は、天然果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料を製造するための果物ジュースであり得る。前記成分は、独立的にまたは混合して使用することができる。成分比は、あまり重要ではないが、一般的に本発明の組成物100w/w%当り約0〜20w/w%である。前記抽出物を含む食品の例は、多様な食品、飲料、ガム、ビタミン総合剤、健康改善食品などである。
【0061】
本発明の組成物は、追加的にクエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸、リンゴ酸のような有機酸、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ピロホスファート、ポリホスファートのようなリン酸、ポリフェノール、カテキン、アルファトコフェロール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、緑茶抽出物、リコリス根抽出物、キトサン、タンニン酸、フィト酸などのような天然抗酸化物中の一つまたはそれ以上を含むことができる。
【0062】
前記本発明の抽出物は、20〜90%の高濃度液体、粉末または顆粒型であり得る。
【0063】
同様に、本発明の前記抽出物は、追加的に少なくても一つのラクトース、カゼイン、デキストロース、グルコース、スクロース及びソルビトールを含むことができる。
【0064】
本発明の抽出物は、毒性及び副作用がない。したがって、安全に使用することができる。
【0065】
本発明の組成物、用途及び製造において、多様な変形及び変化が可能であることは、当業者には自明なことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下、本発明を下記実施例及び実験例によって詳細に説明する。
但し、下記の実施例及び実験例は本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が下記実験例によって限定されるものではない。
【0067】
実施例1.複合生薬材抽出物の製造(1)
高麗人参、刺五加、当帰及び黄ごんは、市販品を購入して慶煕大学校漢方医科大学本草学教室の検証を受けて実験に使用した。まず、高麗人参660gを3Lの3次蒸留水で2時間還流抽出した後、取得された抽出物を減圧濃縮及び凍結乾燥器(Spec 3000,Bio−Rad Co.米国)で凍結乾燥して抽出物200gを得た。刺五加は、300gを前記と同じ方法を遂行して抽出物20gを得た。当帰は、350gで抽出物50gを得た。黄ごんは、80gで抽出物10gを得た。
【0068】
前記の抽出物を抽出する前の薬剤の用量にして2:5:4:1の割合で混合して下記の実験試料に使用した。
【0069】
実施例2.複合生薬材抽出物の製造(2)
高麗人参、刺五加、当帰及び黄ごんは、市販品を購入して慶煕大学校漢方医科大学本草学教室の検証を受けて実験に使用した。
【0070】
高麗人参、刺五加、当帰及び黄ごん薬剤を2:5:4:1の割合で混合して混合薬剤1,200gを3Lの3次蒸留水で2時間還流抽出した。取得された抽出物を減圧濃縮及び凍結乾燥器(Speed Spec 3000,Bio−Rad Co.米国)で凍結乾燥して抽出物(163.54g)を得て試料に使用した。
【0071】
前記の工程を通じて製造された四種類の生薬材の抽出物は、後述する実験の試験例に使用した。
【0072】
実験例1:MCAo実験モデル
前記実施例1で取得した複合生薬材抽出物の神経細胞損傷防御効果を測定するためにゼア等(Zea LE.,等,Stroke,1989年,第20巻,84〜91頁)の方法を応用した血管内縫合糸挿入法(intraluminal suture method)を使用した。
実験方法を下記に示す。
【0073】
方法
実験動物に約280g、8週齢のスプラーグ・ドーリー(Sprague−Dowley)雄のマウスを韓国セムタゴ社から購入して飼料と水を充分に供給しながら1週間実験環境に適応させた後、実験に使用した。
【0074】
マウスを70%NOと30%Oが混じった混合ガスに5%のイソフルラン(isoflurane)で全身麻酔をした後、一方は採血のための注射器を、もう一方は血圧測定用プローブ(probe)を挿入して血圧を観察した。採血をした後、血糖及び血液ガスを分析して観察した。首前方部位中央の皮膚を切開して右側頚動脈と外頚動脈(ECA)を周囲組織と神経から注意深く分離した。外頚動脈分枝である上部甲状腺動脈と喉頭動脈を電気焼灼器で焼灼して内径動脈の分枝である翼突筋口蓋動脈を電気焼灼して外頚動脈を切ってプローブを外頚動脈から内径動脈に挿入した。プローブは、4−0ナイロン糸が23mmの血管に対する接着力を増加させるために活性化剤で固形化されたポリシロキサンのようなシリコン成分でコーティングされる工程によって作った。ICAは、コーティングされたプローブの約10mm結紮して挿入地点から20mmまたはそれ以下に至るようにして抵抗が感じられるように挿入した。プローブは、閉鎖不全を防ぐために同時に固定した。皮膚切開部位は再び縫合し、マウスは麻酔された状態から自然に回復した。挿入されたプローブは、MCA血液の流れを妨害して局所虚血を誘発した。2時間後に、マウスは頚動脈の血液流れを除去するために再び麻酔した。それから22時間後に、マウスを屠殺して脳を摘出し、脳組織を顕微鏡で観察した。
【0075】
体温が、37±0.5℃になるように維持しながら観察した。尾を切開し、末端組織は除去してブレインマトリックスによって2mm厚の6枚の脳切片を取得した。2%のトリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)溶液適正量を生理食塩水で希釈して、9ウェルプレートに入れた。脳切片を添加して摂氏37度で30分間染色した。染められた組織は、デジタルカメラ(Olympus Co.c2500Lモデル, 米国)で撮影した。脳梗塞部位の体積は、OPTIMASプログラム(Media Cybernetics Co.,6.51バージョン)で計算した。浮腫の体積を除いた右半球の拡散した脳梗塞部位体積(A)を測定するために脳梗塞の実際体積は次の数式1及び2で計算した。
【0076】
(数1)
脳梗塞の割合(%)=(A−B/A)×100
A:正常左半球の体積(mm)、B:校正された脳梗塞の体積(mm
【0077】
(数2)
校正された脳梗塞の体積(mm)=(正常左半球の体積)−(損傷半球の正常部位体積)
【0078】
薬物処理
誘発直後及び120分後に、対照群には水を、試験群には前記実施例1の複合生薬材抽出物を試料として経口投与した。ここで、脳動脈の膨脹を避けて薬物の用量による効能を調べるために、複合生薬材抽出物を80、400及び2000mg/kgでそれぞれマウス体重100g当たり0.3mLずつの体積で3次蒸留水に希釈して、閉塞2時間及び4時間後に二度投与した。陽性対照群動物は、同じ方法で45mg/kgのミノサイクリン(minocycline)で処理した。
【0079】
複合生薬材抽出物の脳組織及び脳神経保護効果を測定した結果を、図1及び図2に示した。図1で二つの脳組織切片を比べて見ると、対照群に比べて複合生薬材抽出物を投与した群は、TTC染色されない死滅した部位の面積が少なく、TTC染色されて黒赤色になった部位の面積が少ないことが分かった。参考に、TTCで脳組織を染色すると、損傷によって組織が死滅した部位は、染色されない白い状態になり、正常部位の組織は黒赤色の状態になる。
【0080】
また、図2を見ると、水投与した対照群は脳梗塞割合(%)が34.7±1.77%であったのに比べて、陽性対照群で使用したミノサイクリンを45mg/kg投与時の脳梗塞割合は20.5±2.85%であった。また、複合生薬材抽出物80、400及び2000mg/kg投与時、それぞれ34.7±4.19%、25.6±1.86%及び23.4±2.40%の脳組織損傷を示し、濃度依存的に脳組織損傷に対する保護効果を示した。特に、複合生薬材抽出物400及び2000mg/kg投与時は、対照群に比べてそれぞれ29%及び34%の神経組織保護効果を示し、陽性対照群であるミノサイクリン45mg/kgに比べて70及び81%の保護効果を示した。
【0081】
実験例2.複合生薬材抽出物の感覚運動機能回復効果
脳損傷は、身体感覚運動機能損失ももたらすため、前記実施例1の複合生薬材抽出物の脳損傷による均衡感覚、運動機能及び筋肉調和など感覚運動機能失調に対する保護(回復)効果を下記のような様々な実験を通じて測定した。
文献に記載されたよく知られた方法を変形して使用した。
【0082】
2−1.ロータロッドテスト(rotarod test)
前記実施例1の複合生薬材抽出物が、脳虚血誘発20時間後に感覚運動機能に及ぼす効果を評価するためにロータロッドテスト(rotarod test)を実施した。ロータロッドテストは、脳損傷モデル特に中風モデルや脊髄神経損傷モデルにおいて、脳損傷と非常に密接な結果を示すテスト中の一つで、感覚運動機能失調を評価するのに非常に適している。ロータロッドテストのためにバジレ社(basile社,イタリア)のロータロッドを使用した。2分にRPMが25まで上がる加速回転で実験に臨んだ。実験動物で中風を誘発したマウスは、棒の中央に均衡を取るようにおいた後、ロッドが回転を始めた時間からマウスが落ちる時までの時間を測定して評価した。マウスごとに5回実施して最高値と最低値を除いた中間3回の値を平均してデータに使用した。
【0083】
図3に中風誘発後20時間に測定したロータロッドテスト結果を示した。シャム群が92.4±15.92秒(p<0.01)、対照群が24.8±6.32秒間運動した一方、複合生薬材抽出物は80、400及び2000mg/kg投与時にそれぞれ15±7.14秒、74.1±12.59秒及び63.1±10.08秒を示し、400mg/kgの投与用量で対照群に比べて有意性のある感覚運動機能失調に対する保護効果を示した(P<0.001)。
【0084】
2−2.プレヘンシルトラクションテスト(prehensile traction test)
前記実施例1の複合生薬材抽出物が、脳虚血誘発後21時間に筋肉の筋力に及ぼす影響を評価するために、ワラス(Wallace.J.E.,等, J.Gerontol.,1980年,第35巻,364〜370頁)の方法を変形したプレヘンシルトラクションテスト(prehensile traction test)を実施した。この方法は、マウスの足筋肉の筋力を評価するのに良い方法である。
【0085】
まず、マウスを3cmの四角棒にぶら下がるようにして落ちる時までの時間を測定し、毎回5回実施して中間の3回の値を平均してデータに使用した。
【0086】
その結果、図4に示したように対照群は6.6±0.90秒を持ち堪えた。一方、複合生薬材抽出物は80、400及び2000mg/kg投与時にそれぞれ7.2±2.08秒、11.0±1.58秒及び7.0±2.31秒を示し、400mg/kgの投与用量で対照群に比べて有意性をもって運動機能失調に対する保護効果を示した(P<0.05)。
【0087】
2−3.平均台テスト(balance beam test)
前記実施例1の複合生薬材抽出物が、脳虚血誘発後22時間に均衡感覚に及ぼす効果を測定するために均衡台テスト(balance beam test)をプルネン等(Puurunen K.,等,Neuropharmacology,2001年、第40巻,597〜606頁)の方法を若干変形して下記のように実施した。本テストは、マウスの均衡感覚を測定して前庭運動(vestibulomotor)の機能を測定する方法で中風誘発後脳機能損傷を測定するのに良いテスト中の一つである。
【0088】
まず、幅2.5cm、長さ122cmの木の棒を床から約42cmの高さにかけておいて、中心にマウスを均衡を取るようにおいた後、30秒間マウスの行動を見て3人の観察者がその点数を付ける。点数の評価基準を下記に示す。0点;棒で均衡を取ることができない状態。1点;30秒間均衡を取るだけで他の動きがない状態。2点;30秒間均衡を取って棒の長さ方向に身を向ける状態。3点;2点で身を向けた状態で棒の長さ方向に歩くがステップの50%以上が滑る状態。4点;3点で滑るのが50%以下の状態。5点;4点で1ステップ程度滑る状態。6点:5点で滑るステップなしに自由に歩く状態と決めて実施した。マウスごとに3回実施して平均値をデータに使用した。
【0089】
その結果、図5に示したように、シャム群は3.4±0.39点、対照群は1.5±0.19点を示した。一方、複合生薬材抽出物は80、400及び2000mg/kg投与時にそれぞれ1.6±0.25点、2.7±0.18点及び2.1±0.23点を示し、400mg/kgの投与用量で対照群に比べて有意性のある運動機能失調に対する保護効果を示した(P<0.001,P<0.05)。
【0090】
2−4.フットフォルトテスト(Foot fault test)
前記実施例1の複合生薬材抽出物が、中風誘発後23時間に運動機能に及ぼす効果を測定するためにマークグラフ(Markgraf CG.,等,Brain Res.,1992年,第575巻,238〜246頁)のフットフォルトテスト(Foot fault test)の方法を若干変形して下記のように実施した。このテストは、中風誘発後運動調和と精緻な運動を測定するのに良い方法である。
【0091】
まず、間隔が2.5cm、直径2mmの針金からなる幅23.5cm、長さ43.5cmの格子を床から約92cm上にかけておき、マウスを中央においた後、60秒間前足の全体のステップから一方のステップで滑って格子の間にはまる数の割合とし、3回実施して平均値をデータに使用した。
【0092】
その結果、図6に示したように、シャム群は1.6±0.14%(p<0.01)、対照群は16.6±2.87%のフットスリップ(foot slip)を示した。一方、複合生薬材抽出物は80、400及び2000mg/kg投与時それぞれ20.5±6.25%、10.7±2.25%(p<0.01)及び15.4±2.12%を示し、400mg/kgの投与用量で対照群に比べて運動機能失調に対する保護傾向を示した。
【0093】
実験例3.急性毒性実験
方法(1)
ICR系マウス(体重25±5g)とスプラーグ・ドーリーラット(235±10g、中央実験動物)をそれぞれ10匹ずつ4群に分けて、本発明の複合生薬材抽出物それぞれ250、500、1000及び5000mg/kg及び溶媒(0.2mL)を経口投与した後、2週間毒性の有無を観察した結果、4群全てで死亡した例が一匹もなく、外見上対照群と何ら変わった症状を見いだすことができなかった。
【0094】
方法(2)
ICR系マウスとスプラーグ・ドーリーラットをそれぞれ10匹ずつ4群に分けて、本発明の複合生薬材抽出物それぞれ25、250、500及び725mg/kg及び溶媒(0.2mL)を経口投与した後、24時間の毒性有無を観察した。結果は、4群全てで死亡した例が一匹もなく、外見上対照群と何ら変わった症状を見いだすことができなかった。
【0095】
結果
本発明の複合生薬材抽出物は、急性毒性がほとんどないことが確認された。
【0096】
下記に本発明の複合生薬材抽出物を含む薬学的組成物の製剤例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらは単に具体的に説明するためのものである。
【0097】
散剤の製造
複合生薬材抽出物粉末 50mg
乳糖 100mg
タルク 10mg
前記の成分を混合して密封パッケージに充填して散剤を製造する。
【0098】
錠剤の製造
複合生薬材抽出物粉末 50mg
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常の錠剤製造方法にしたがって打錠して錠剤を製造する。
【0099】
カプセル剤の製造
複合生薬材抽出物粉末 50mg
とうもろこし澱粉 100mg
ラクトース 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
通常のカプセル剤の製造方法によって前記の成分を混合してゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造する。
【0100】
注射剤の製造
複合生薬材抽出物粉末 50mg
注射用滅菌蒸留水 適量
pH調節剤 適量
注射剤は、活性成分を溶解させてpHを約7.5に調節し、すべての成分を2mLアンプルに充填して滅菌し、通常の注射剤製造方法によって製造する。
【0101】
液剤の製造
複合生薬材抽出物粉末 0.1〜80g
糖 5〜10g
クエン酸 0.05〜0.3%
カラメル 0.005〜0.02%
ビタミンC 0.1〜1%
精製水 79〜94%
二酸化炭素ガス 0.5〜0.82%
通常の液剤の製造方法によって精製水にそれぞれの成分を加えて溶解させて前記の成分を混合した後、精製水を加えて全体を充填し、滅菌して液剤を製造する。
【0102】
健康食品の製造
複合生薬材抽出物粉末 1000mg
ビタミン混合物 適量
ビタミンAアセテート 70mg
ビタミンE 1.0mg
ビタミンB1 0.13mg
ビタミンB2 0.15mg
ビタミンB6 0.5mg
ビタミンB12 0.2mg
ビタミンC 10mg
ビオチン 10mg
アミドニコチン酸 1.7mg
葉酸(Folic acid) 50mg
カルシウムパントテン酸 0.5mg
ミネラル混合物 適量
硫酸第一鉄 1.75mg
酸化亜鉛 0.82mg
炭酸マグネシウム 25.3mg
リン酸モノカリウム 15mg
リン酸二カルシウム 55mg
クエン酸カリウム 90mg
炭酸カルシウム 100mg
塩酸マグネシウム 24.8mg
前記ビタミン及びミネラル混合物は、非常に多様に使用することができるが、それは本発明の範疇を逸脱するものではない。
【0103】
健康飲料の製造
複合生薬材抽出物粉末 1000mg
クエン酸 1000mg
オリゴ糖 100g
アプリコット濃縮 2g
タウリン 1g
蒸留水 900mL
通常の健康飲料製造方法によって前記の成分を混合した後、約1時間85℃で撹拌加熱した後、作られた溶液をろ過し、滅菌された2L容器に取得して密封滅菌した後、冷蔵保管し、本発明の健康飲料組成物製造に使用する。
【0104】
前記組成比は、比較的嗜好飲料に適合した成分を好ましい実施例として混合組成したが、需要階層や、需要国家、使用用途など、地域的、民族的嗜好度によってその配合比を任意に変形実施してもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上詳しく見たように、本発明の高麗人参抽出物、刺五加抽出物、当帰抽出物及び黄ごん抽出物は、脳虚血時に発生する神経細胞死を阻害する効果が優れているだけではなく、人体に無害であり、神経細胞の壊死によって発生する神経変性疾患を予防及び治療するために使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
本発明の前記及び他の目的、特性及び他の利点は、下記の詳細な説明とそれに伴った図面を通じて、より明らかに理解されるだろう。
(図1)MCAo2時間後及び再潅流24時間後にTTCで染色してデジタルカメラで撮影した結果、脳梗塞を示す脳切片写真である。
(図2)対照群、陽性対照群、及び本発明の抽出物の、マウスMCAoモデルで神経保護活性に対する比較グラフである(それぞれの黒い点は、各マウスに対する個別値を示す)。
(図3〜図6)感覚運動機能に対する本発明の抽出物の回復効果を示したグラフである。
(図3)20時間目に測定されたロータロッドテスト結果を示したグラフである。
(図4)21時間目に測定されたプレヘンシルトラクション(prehensile traction)テスト結果を示したグラフである。
(図5)22時間目に測定された平均台テスト結果を示したグラフである。
(図6)MCAo後、23時間目に測定されたフットフォルト(foot fault)テスト結果を示したグラフである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高麗人参抽出物、刺五加抽出物、当帰抽出物、及び黄ごん抽出物を含む複合生薬材抽出物を有効成分として含む、脳卒中及び神経変性疾患の神経細胞保護による予防及び治療のための薬学的組成物。
【請求項2】
前記抽出物が、水、低級アルコール、及びそれらの混合物からなる群より選択される溶媒で抽出される、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記神経変性疾患が、卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック(Pick)病、クロイツフェルト・ヤコブ(Creutzfeldt−Jakob)病、及び老年認知症を含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項4】
高麗人参抽出物、刺五加抽出物、当帰抽出物、及び黄ごん抽出物からなる複合生薬材抽出物、並びに食品学的に許容可能な添加剤を含む、脳卒中及び神経変性疾患の予防及び改善のための健康食品。
【請求項5】
粉末、顆粒、錠剤、チューイング錠、カプセル、または飲料の形態として提供される、請求項4記載の健康食品。

【公表番号】特表2008−528481(P2008−528481A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552045(P2007−552045)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000199
【国際公開番号】WO2006/080590
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(507250335)ユニバーシティー−インダストリー コーペレーション グループ オブ キュン ヒー ユニバーシティー (2)
【Fターム(参考)】