説明

腎・尿管結石形成予防剤

【課題】 安全性が高く、効果的な腎・尿管結石形成予防剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 キダチコミカンソウ抽出物に顕著な予防作用があることを見出した。本発明は、キダチコミカンソウ抽出物を含有する、腎・尿管結石形成予防剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キダチコミカンソウ抽出物を有効成分とする腎・尿管結石形成予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腎・尿路結石症の治療は近年めざましく発展し、今やほとんどの結石に対し治療がなされるようになった。また、その予防については種々の方法が検討され、特に漢方薬は、その利尿作用のために結石予防に用いられている(特許文献1)。このように、腎・尿路結石症を予防するために種々の方法が検討されているが、例えば、漢方薬については、排尿の回数が増え、頻尿になるといった問題などがあり、未だに十分に満足できるような予防剤は見出されていない。
【0003】
【特許文献1】特開2003−252776号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、キダチコミカンソウ抽出物を有効成分とすることで、安全性が高く、効果的な腎・尿管結石形成予防剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、腎・尿管結石形成予防作用を調べた結果、キダチコミカンソウ抽出物に顕著な予防作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、キダチコミカンソウ抽出物を含有する、腎・尿管結石形成予防剤に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安全性が高く、効果的な腎・尿管結石形成予防剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、下記実施形態の記載により限定して解釈するべきでなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0009】
本発明の腎・尿管結石形成予防剤は、キダチコミカンソウ抽出物を含有する。キダチコミカンソウ(Phyllanthus niruri)は、インドネシアではマラリアの民間治療薬として使用されてきた植物である。本発明では、キダチコミカンソウの全ての部分を使用することができ、例えば、根、葉、茎、花、実、種子、芽を使用することができる。有効成分が豊富で、安定しているために、好ましくは、葉を乾燥したものを使用する。
【0010】
本発明における抽出物とは、特に限定されず、キダチコミカンソウを任意の抽出溶媒を用いて、当業者が通常に使用する方法で、抽出して得られたものをいう。さらに、得られた抽出物を、必要に応じて希釈、濃縮または乾燥して使用することができる。
【0011】
本発明で使用する抽出溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、アセトンなどのケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、またはこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、水、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、またはこれらの混合物が挙げられ、さらに好ましくは、水、エタノール、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0012】
本発明の腎・尿管結石形成予防剤の形態は、特に限定されず、任意の形態で医薬または飲食品として提供することができる。例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤などの形態で提供することができる。さらに、ガム、キャンディー、ゼリー、錠菓、飲料などの形態で食品として提供することも可能である。これらは、いずれも当業者が一般に用いる技術により製造することができる。投与の経路としては、経口投与、非経口投与(皮下投与、静脈内投与、鼻腔内投与、注入など)、経皮投与などの一般的な経路が挙げられる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定して解釈すべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0014】
本発明の予防剤の腎・尿管結石形成予防効果を評価するために、以下の実験を行った。具体的には、高カルシウム尿モデルラットを用い、腎臓および尿管内結石形成の抑制効果を検討した。
【0015】
高カルシウム尿モデルラットは、エチレングリコールおよび活性型ビタミンDをラットに投与し、尿路結石を形成させることにより作製した。エチレングリコールの投与により過蓚酸尿症を惹起し、活性型ビタミンDの投与により過カルシウム尿症を惹起した。エチレングリコールおよび活性型ビタミンDの併用投与により、蓚酸カルシウム結石の形成が促進できる。
【0016】
上記の高カルシウム尿モデルラットに、試験物質(キダチコミカンソウ抽出物)を経口投与した。投与には、ラット用の胃ゾンデを装着したディスポーザブル注射筒を用いた。投与量は、0.25mL/体重100gとした。投与期間は4週間とし、午前、午後の1日2回投与を行った。
【0017】
試験群は、試験物質を投与する2群、結石群、さらに媒体(蒸留水)のみを投与する溶媒対照群の計4群とした。なお、溶媒対照群のラットには、エチレングリコールおよび活性型ビタミンDを投与せず、それ以外は他の群のラットと同様の方法で投与を行った。一日あたり、500mg/kgの試験物質を投与した群を実施例1とし、1500mg/kgの試験物質を投与した群を実施例2とした。また、結石群を比較例1とし、溶媒対照群を比較例2とした。投与量の詳細を表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
(1.測定項目)
以下の項目に関して、実施例および比較例の各群のラットの測定を行った。
【0020】
(1−1.一般状態)
ラットの一般状態を、視診および触診によって、毎日観察した。
【0021】
(1−2.体重)
各群のラットの体重を、週に一度測定した。
【0022】
(1−3.摂水量)
最終投与日の摂水量を以下の式により算出した。
(前日測定時の給水量)−(残水量)=(摂水量)
【0023】
(1−4.尿量)
最終投与日における各群のラットの1日の尿を採取した。
【0024】
(1−5.腎臓および尿管)
投与期間終了時に、各ラットの最終体重を測定し、その後、エーテルで麻酔し、採血した。さらに放血により安楽死させ、腎臓および尿管の剖検を行った。
【0025】
腎臓は重量を測定した後、腎臓組織中のカルシウム濃度を測定するため、凍結保存した。凍結保存された腎臓を湿重量で1g秤量し、2N塩酸5mLを加えてホモジナイザーでホモジナイズし、10分間遠心分離(3000rpm)した後、その上清2mLに6%スルホサリチル酸2mLを加え、再度10分間遠心分離(3000rpm)し、得られた上清を測定試料とした。
【0026】
(2.試験結果)
(2−1.一般状態)
試験期間を通じて死亡はみられず、いずれの動物にも一般状態の異常は観察されなかった。
【0027】
(2−2.体重)
体重の測定結果を表2に示した。
【0028】
【表2】

【0029】
実施例および比較例の各群におけるラットの平均体重(g)を示した。投与開始時には各群には大きな差がなかったが、投与期間を通じて、各群とも体重は順調に増加した。比較例1(結石群)は比較例2(溶媒対照群)より低値で推移し、実施例(試験物質投与群)の両群は、比較例1および比較例2の中間で推移した。
【0030】
(2−3、4.摂水量および尿量)
最終投与日における摂水量および尿量の平均値を表3に示した。
【0031】
【表3】

【0032】
摂水量および尿量ともに、いずれの群の間にも有意な差は認められなかった。
【0033】
(2−5.腎臓および尿管)
剖検の結果を表4に示した。
【0034】
【表4】

【0035】
比較例1では、腎臓ならびに尿管において明らかな結石形成が認められ、また、それに起因すると考えられる水尿管が観察された。実施例1では、比較例1とほぼ同様の結石形成が、腎臓および尿管において認められたが、実施例2では、腎臓での結石形成は軽度であり、尿管には結石が全く認められなかった。
【0036】
腎臓重量の測定結果を表5に示した。
【0037】
【表5】

【0038】
実施例両群の腎臓は、左右ともに比較例2より重く、実施例両群の腎臓重量は、結石群と比較した場合、用量依存的に軽い傾向が認められた。
【0039】
腎臓中Ca濃度の測定結果を表6に示した。
【0040】
【表6】

【0041】
実施例群においては、用量依存的に腎臓中Ca濃度の上昇を抑える傾向が認められた。また、比較例1の腎臓中Ca濃度は、比較例2より高かった。
【0042】
(考察)
腎臓重量および腎臓中のCa濃度に関しては、比較例1と比較した場合、実施例群では、用量依存的な抑制傾向が認められた。これらのことから、本発明のキダチコミカンソウ抽出物を含有する腎・尿管結石形成予防剤が、結石形成抑制効果を有することが示唆された。
【0043】
本発明のキダチコミカンソウ抽出物を含有する腎・尿管結石形成予防剤において認められた結石形成抑制作用の作用機序は、現時点では明確ではない。しかし、尿量に影響を及ぼさないことから、利尿作用によるものではないと考えられる。
【0044】
本発明のキダチコミカンソウ抽出物を含有する腎・尿管結石形成予防剤は、安全性が高く、かつ結石形成抑制効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、安全性が高く、効果的な腎・尿管結石形成予防剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キダチコミカンソウ抽出物を含有する、腎・尿管結石形成予防剤。

【公開番号】特開2008−239564(P2008−239564A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84090(P2007−84090)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 日本薬学会127年会 主催者名 社団法人 日本薬学会 開催日 平成19年3月28、29、30日
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】