説明

腐食センサ、液体の検出方法、腐食センサの製造方法及び腐食検出装置

【課題】課題は、微量な液体であっても、また液体流路からセンサ12が離れた場所に設置しても、液体の侵入が検出できる腐食センサ2を提供することである。
【解決手段】腐食センサ2は、センサ12と、このセンサ12に液体を導く収集材13とを備える。そして、収集材13は、液体を吸水して、毛細管現象によりセンサに導く。これにより、腐食センサ2は、この腐食センサ2のセンサ12を液体の流路から離れた場所に設置しても、微量な液体が検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を検出する腐食センサ、液体の検出方法、腐食センサの製造方法及び腐食検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナと通信回路を収容したケースとが、屋外に設置された通信装置がある。アンテナは、通信ケーブルにより、ケースに取り付けられたコネクタを介して、ケース内部の通信回路と接続されている。
【0003】
このような場合、雨水が、コネクタを設けた箇所等からケース内に侵入して、通信回路に達することがある。これにより、通信回路は、雨水により回路ショートや部品の腐食を起して、通信傷害を起こすことがある。そこで、コネクタを設けた箇所等の雨水の侵入路となる恐れのある箇所は、防水作用を示すパッキン等の部材を備えている。
【0004】
ところが、例えばケースがアルミニウムであり、コネクタがステンレスである場合、これらの金属が接触する箇所で腐食電位が発生して、アルミニウムは、電気腐食を起こす。電気腐食によりパッキンが緩むので、雨水は、この緩んだ部分からケース内に侵入する。これにより通信回路は、通信障害を起こす。特に、海岸地帯の雨水は塩化ナトリウムイオンを含むことがあるため、上述した電気腐食は、発生しやすい。
【0005】
電気腐食を防止する観点から、特許文献1は、図8に示すようなコネクタを提案している。このコネクタは、銅201とアルミニウム202との異種金属が接触する接触領域203を備えている。特許文献1は、この接触領域203での電気腐食を対策するものである。複数の部材を組立ててなるコネクタは、各部材の継目に隙間を持っている。この隙間に付着した雨水は、隙間が示す毛細管現象により導かれて、接触領域203に付着する。このため、雨水が付着した接触領域203は、腐食する。そこで、特許文献1は、液体が接触領域203に付着しないように、接触領域203を樹脂で覆う構成を提案している。
一方、電気腐食による故障を事前に検出する観点から、特許文献2は、図9に示すような腐食評価方法を提案している。この提案は、孔211を備えるアルミニウム基材210と、孔211を埋設する塩化物213と、孔211以外のアルミニウム基材210の表面を覆う厚さ5〜50μmの絶縁層212と、塩化物213に挿着した導電電極214と、無抵抗電流計215とを備えた構成である。
導電電極214と孔211との間には腐食電位が発生して、電気腐食が起きる。電気腐食により流れる電流の検出は、導電電極214とアルミニウム基材210との間を接続する無抵抗電流計215により行われる。従って、この電流の検出により腐食評価が、可能になる。
【0006】
また、他の腐食評価の方法として、特許文献3は、図10に示すような方法を提案している。この提案は、細線パターン224を備える絶縁性基板220に、調湿剤を含むシリコーン樹脂を塗膜した構成である。なお、調湿剤は、腐食を起こす溶液を含んでいる。細線パターン224は、銀221、アルミニウム222及び銅223のテスト金属を直列接続したパターンである。そして、腐食評価は、細線パターン224の電気抵抗の変化を検出して行う。
【0007】
【特許文献1】特開2004−111058号公報
【特許文献2】特開平11−237358号公報
【特許文献3】特開2005−214766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1にかかる提案は、樹脂の経年劣化により、長期間の防水機能を期待することができない問題を有している。また、腐食が発生してしまうと、封止に用いた樹脂を除去してコネクタを分解修理しなければならないため、修理が、困難となる問題を有している。
一方、特許文献2や特許文献3では、下記のような課題を有する。
【0009】
特許文献2では、電気腐食を検出するためには、絶縁層212に囲われた孔211内に埋設された塩化物213に、検出するための液体が届く必要がある。そのため、検出するための液体が微量である場合、特許文献2では構造上、液体が孔211内の塩化物213に届きにくく、検出が困難であるという問題がある。また、特許文献3では、電気腐食を検出するためには、腐食性ガス雰囲気に調湿剤が曝される必要がある。このように、特許文献3では、大気中に拡散された腐食性ガスを検出するものであり、ガス状となっていない微量な液体を検出するには有効な構成ではない。よって、これらの提案では、微量な液体を効率よく検出することを考慮されたものではない。
【0010】
そこで、本発明は、液体が微量であっても、効率よく液体を収集して検出できる腐食センサ、液体の検出方法、腐食センサの製造方法及び腐食検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、腐食センサにかかる発明は、液体により腐食して、この液体を検出するセンサと、センサに液体を導く収集材と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、液体の検出方法にかかる発明は、液体を毛細管現象により収集する工程と、収集した液体により腐食して、この液体を検出する工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、腐食センサの製造方法にかかる発明は、センサを形成するセンサ形成工程と、収集材を設ける収集材取付工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
さらに、腐食検出装置にかかる発明は、液体により腐食して、この液体を検出するセンサ及びセンサに液体を導く収集材を具備した腐食センサと、腐食センサの電気的特性を検出する検出部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の腐食センサにかかる発明は、収集材により液体を収集するため、微量な液体の検出が可能となる効果を奏する。また、この収集した液体をセンサに導くため、センサを液体流路から離れた場所に設置しても、液体の検出が可能になる効果を奏する。
【0016】
液体の検出方法にかかる発明は、液体を毛細管現象により収集してセンサに導くので、センサを液体流路から離れた場所に設置しても、液体の検出が可能になると共に、微量な液体の検出ができる効果を奏する。
【0017】
腐食センサの製造方法にかかる発明は、センサを形成し、その上に収集材を設けるので、少ない工程で腐食センサの製造が可能になる効果を奏する。
【0018】
腐食検出装置にかかる発明は、腐食センサの電気的特性の変化を検出するので、簡単な回路で腐食状態が検出できる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施の形態) 第1の実施の形態は、腐食センサに関する実施の形態である。図1は、腐食センサの上面図である。また図2は、図1におけるA−A矢視方向の断面図である。
【0020】
腐食センサ2は、基板11上に形成したセンサ12と、このセンサ12に液体を導く収集材13とを有している。また、腐食センサ2は、この腐食センサ2を被検出箇所に取り付けるための固定部14を有している。センサ12は、異種金属のパターンを順次積層した積層体である。なお、被検出箇所とは、液体を検出する箇所を言う。
【0021】
本実施の形態では、塩化ナトリウムイオンを含む液体を例とする説明である。しかし、本発明は、かかる液体により限定を受けない。例えば、塩化ナトリウムイオンを含まないが腐食反応を起す薬液等の検出にも、本発明は、適用可能である。
【0022】
本明細書では、アルミニウム又はアルミニウムの合金をアルミニウム系金属と記載し、ニッケル又はニッケルの合金をニッケル系金属と記載し、銀又は銀の合金を銀系金属と記載する。
【0023】
基板11の材料は、ポリエチレンテレフタラート(PET:Polyethylene Terephthalate)やポリイミド(polyimide)等の絶縁材である。腐食センサ2を実際に取り付ける場所(被検出箇所)は、平坦面ばかりでなく、パイプの側面のような湾曲した曲面である場合もある。従って、基板11が可撓性を有すると、曲面にも腐食センサ2を取り付けることができるため、腐食センサ2の取付自由度が、大きくなる。
【0024】
ところで、この基板11はセンサ12を支持する部材であるため、基板11の絶縁性は、要求されない。導電性の基板11の場合は、例えばセンサ12の一方の面(液体が接しない面)に絶縁材を塗布等し、基板11で支持するといった構成が、可能である。
【0025】
腐食センサ2は、液体の収集口をなす収集端部15を備えている。この収集端部15は、型抜きによる円形状の開口である。収集端部15の形状決定は、被検出箇所の形状に対応して決定する。例えば、被検出箇所が図6に示すような円形のコネクタ102の場合は、収集端部15の形状は、円形状である。また、例えば被検出箇所が図3に示すような平面である場合は、収集端部15の形状は、直線状である。
【0026】
センサ12は、第1の金属12aと、第3の金属12cと、第2の金属12bとの線状の金属パターンを順次積層した積層体である。また、第1の金属12a等は、ヘアピン形状の細線である。第1の金属12aの両端は、接続端子16である。
【0027】
センサ12の出力は、このセンサ12を構成する第1の金属12a等の抵抗値の変化に対応している。第1の金属12a等をヘアピン形状にして全長を長くすると、センサ12の抵抗値は、大きくなる。また、第1の金属12aを細線とすると、センサ12の抵抗値は、腐食度合いに応じて大きく変化する。これらにより腐食検出は、高感度で検出できる。なお、腐食は第1の金属12aで生じるので、少なくとも第1の金属12aのみを細線化しておくならば、腐食検出感度の向上が、可能になる。
【0028】
第1の金属12aは、評価対象であるアルミニウム系金属で、アノードとして作用する。第2の金属12bは、銀系金属で、カソードとして作用する。この第2の金属12bは、アルミニウム系金属に対して低い腐食電位を示す。第2の金属12bとして、上述した銀以外に、例えば銅、白金、パラジウム等の金属又はその合金が、利用できる。
【0029】
第3の金属12cは、ニッケル系金属である。アルミニウム系金属とニッケル系金属との間に発生する電位は、アルミニウム系金属と銀系金属との間の腐食電位より小さい電位を示す。これにより、第3の金属12cは、アルミニウム系金属の腐食速度を調整する。言い換えると、ニッケル系金属は、腐食電位においてアルミニウム系金属と銀系金属との中間値を有する。そのため、ニッケル系金属をアルミニウム系金属と銀系金属の間に設置することで、隣接する金属間の電位差が小さくなり、アルミニウム系金属の腐食速度が遅くなる。腐食速度が速いことは、センサ12の応答性が高いことを意味する。
【0030】
本発明は、第3の金属12cを設けることを必須要件としない。第3の金属12cを設けるか否かの判断は、検出対象により決定する。例えば、海岸地帯で風雨に曝されるアルミニウムケースの腐食を検出する場合は、数ヶ月、数ヶ年の時間をかけて進む腐食により侵入する雨水が、検出対象である。メンテナンス中に雨水などの一過性の液体は、検出対象から除外しなければならない。そこで、第3の金属12cを設けることで、一過性の液体によりセンサ12が、速く腐食しないようにする。一方、薬品が漏れ出たか否かを検出する場合は、漏れ出た薬品が、検出対象である。この場合は、第3の金属12cを設けないで腐食速度が速くして、薬品漏れに対する対策が、速やかに行えるようにする。
【0031】
収集材13は、厚さは数μm〜100μmの繊維状物質である。なお、繊維状物質としてガラス繊維、カーボン繊維、無機繊維、有機繊維や不織布が、例示できる。以下の説明は、ガラス繊維を用いた場合の例である。
【0032】
収集材13が示す毛細管現象は、微量な液体でも収集する。ガラス繊維は、直線状に延びた繊維である。このためガラス繊維は、繊維に沿って直線状に液体を導く。従って、液体がセンサ12に到達する時間は、短時間である。また、不織布の繊維は、ランダムである。このため不織布は、液体をセンサ12の全面に導く。加えて、不織布は、弗酸に対して耐薬品性を持ち、安価である利点を持つ。
【0033】
このような繊維状物質は、上述した毛細管現象ばかりでなく濾過作用も示す。雨水は、塵や砂等の異物を含むことがある。また、ケース103を伝わってきた雨水は、このケース103に付着していた異物を取り込みながらケース103内に侵入することがある。異物がセンサ12に付着することにより、センサ12は、局部的に腐食することがある。また、異物がセンサ領域を覆うことにより、センサ12の検出感度は、鈍る。しかし、液体を毛細管現象により導く際に、繊維状物質の濾過作用により異物の除去が、行われる。よって、上述したような局部的な腐食や検出感度の低下等の不都合が、防止できる。
【0034】
固定部14の取付位置は、液体の収集口をなす収集端部15と対向した端部側(センサ12の外周側)である。固定部14を収集端部15と対向した端部側に設けることにより、固定部14は、収集端部15での液体の吸水を阻害しない。被検出箇所への腐食センサ2の取付は、固定部14により行う。従って、例えばビスなどによりセンサ12を被測定箇所に固着できる場合には、この固定部14は、不要である。また、固定部14は、長期間にわたり固定機能を保つものがよい。
【0035】
上述したように、毛細管現象により液体を吸水して収集するので、微量な液体の収集が、可能になる。また、液体を毛細管現象により導くので、センサ12の設置は、液体流路から離れた場所でも可能になる。従って、センサ12の設置自由度が、増大する。また、収集材13の濾過作用によりセンサ12に導いた液体は異物を含まないので、センサ12が局部的に腐食したり異物がセンサ領域を覆ったりする不都合が、生じない。従って、腐食検出の信頼性が、向上する。さらに、第1の金属12aと第2の金属12bとによる腐食電位に対する中間電位を発生する第3の金属12cを設けたので、第1の金属12aの腐食速度の調整が、可能になる。従って、一過性の液体による腐食の進行が、防止できる。
【0036】
(第2の実施の形態)第2の実施の形態は、腐食センサ2の製造方法に関する実施の形態である。図4(a)は、製造方法を示す工程図である。図4(b)は、各工程における腐食センサ2の部分断面図である。なお、図4(a)と図4(b)とにおいて、同じ符号は、同じ工程を示している。
【0037】
腐食センサ2の製造方法は、基板11の上に金属のパターンを形成するセンサ形成工程SAと、収集材13を取付ける収集材取付工程SBとを主要工程としている。さらに、腐食センサ2の製造方法は、固定部14を取り付ける固定部取付工程SCを含んでいる。なお、この固定部取付工程SCは、固定部14を取り付ける必要がある場合に行われる工程である。
【0038】
センサ形成工程SAは、パターニング工程SA1と、メッキ工程SA2とを含む。パターニング工程SA1は、第1の金属12aを形成する工程S1〜工程S4を含む。
【0039】
工程S1は、厚みが数μm〜100μmのPETを基板11として、その上にアルミニウム系金属21を加熱蒸着して金属膜を形成する工程である。加熱蒸着の温度は、約1000度以上である。また、アルミニウム系金属21の膜厚は、0.08μm〜0.12μmである。
【0040】
工程S2は、このアルミニウム系金属21の上にフォトレジスト22を塗布する工程である。工程3は、フォトレジスト22に対し、露光、現像してフォトレジストパターン23を形成する工程である。工程4は、フォトレジストパターン23をエッチングマスクとしてアルミニウム系金属21をエッチングする工程である。アルミニウム系金属21のエッチングによる形成物は、第1の金属12aである。
【0041】
メッキ工程SA2は、メッキにより第2の金属12bや第3の金属12cを形成する工程5及び工程6を含む。なお、メッキは、密着性の高い光沢メッキであってもよい。
【0042】
工程5は、第1の金属12aにニッケル系金属をメッキする工程である。メッキ物のニッケル系金属は、第3の金属12cとなる。第3の金属12cのメッキ厚は、0.8μm〜1.2μmの範囲である。
【0043】
工程6は、第3の金属12cを形成した後に銀系金属をメッキする工程である。メッキ物の銀系金属は、第2の金属12bである。第2の金属12bのメッキ厚は、1.6μm〜2.4μmである。
【0044】
メッキ物は、既に存在する金属に付着する。従って、メッキは、リソグラフィを用いてパターニングする場合のように、既に存在するパターンに露光マスクを位置合わせしたりする手間が不要となる利点を有する。この利点により、製造工程の簡略化が、図れる。従って、製造コストが、安価になる。なお、本発明は、露光技術を用いて第2の金属12bや第3の金属12cを製造することを妨げない。
【0045】
収集材取付工程SBは、完成したセンサ12に収集材13を取り付ける工程である。熱圧着により収集材13と基板11とは、密着する。
【0046】
固定部取付工程SCは、腐食センサ2を被検出箇所に固定するための固定部14を基板11に取り付ける工程である。固定部14の厚みは、約数μm〜100μmである。
【0047】
以上説明したように、センサ12を露光技術及びメッキ技術を用いて形成するので、第1の金属12aの形状に応じた第2の金属12bや第3の金属12cの製造が、容易になる。従って、製造コストは、安価になる。
【0048】
(第3の実施の形態)第3の実施の形態は、腐食センサ2を用いた腐食検出装置3に関する実施の形態である。図5は、腐食検出装置3の回路図である。腐食検出装置3は、上述した腐食センサ2と、この腐食センサ2の電気的特性を検出する検出部4とを有している。また、腐食検出装置3は、警報部5を有している。
【0049】
検出部4は、電源41と、腐食センサ2の電気抵抗の変化を検出するブリッジ回路42とを有している。なお、検出部4は、図5に示すような直流電源により動作する直流ブリッジ回路42である。しかし、検出部4として電源41を交流とした交流ブリッジ回路が、適用可能である。また、電源41として蓄電池や太陽電池が、適用可能である。
【0050】
このブリッジ回路42は、2つの固定抵抗42a,42bと、抵抗値の変えることができる1つの調整抵抗42cとを備えている。またブリッジ回路42は、端子43a,43b、44a,44b、45a,45bを備えている。そして、腐食センサ2と端子43a,43bとは、接続状態にある。電源41と端子44a,44bとは、接続状態にある。警報部5と端子45a,45bとは、接続状態にある。そして、調整抵抗42cは、初期状態で端子45aと端子45bとの電位差がゼロとなるように調整する。従って、腐食により腐食センサ2の抵抗値が変化したり断線したりすると、端子45aと端子45bと間に電位差が、発生する。
【0051】
警報部5は、端子45aと端子45bと間の電位差に基づき警報を発する。警報の発報例は、ランプの点滅のような光による警報やブザーのような音による警報等である。
【0052】
図6は、上記腐食検出装置3を通信装置のケース103に取り付けた際の、取付状態を示す断面図である。また図7は、上記通信装置100をポール101に取り付けた際の、取付状態を示す断面図である。通信装置100のケース103は、アルミニュームを材料としている。このケース103は、コネクタ102を備えている。また、ケース103は、このケース103の内部に通信回路104を収納している。内部ケーブル105は、通信回路104とコネクタ102とを接続している。
【0053】
コネクタ102は、フランジ110と、ねじ軸111と、このねじ軸111に螺合するナット112と、内部ケーブル105と接続する内側コネクタ114と、外側ケーブル106と接続する外側コネクタ115とを備えている。ねじ軸111は、ねじ軸に沿って、その内部に端子121,122を備えている。中心導体123は、端子121と端子122とを接続している。
【0054】
内側コネクタ114及び外側コネクタ115は、ねじ軸111と螺合する。フランジ110は、フランジパッキン125を装着するパッキン溝を備える。また、コネクタ側パッキン127は、外側コネクタ115とねじ軸111との間に位置する。さらに、ケース103のコネクタ穴120には、ねじ軸111が、挿通している。そして、ナット112は、座金128,129を介してねじ軸111と螺合している。これにより、フランジパッキン125は、外からの液体の侵入を防止する。
【0055】
内側コネクタ114と内部ケーブル105とは、接続状態にある。この内部ケーブル105の中心導体と端子122とは、接続状態にある。また、外側コネクタ115と外側ケーブル106とは、接続状態にある。この外側ケーブル106の中心導体と端子121とは、接続状態にある。センサ12の収集端部15の取付状態は、コネクタフランジ110の外周部に挿入した状態である。
【0056】
腐食検出装置3の取付は、コネクタフランジ110に収集端部15が填った状態とし、その後にケース103にセンサ12を固定部14により固定する工程を含んでいる。
【0057】
検出部4及び警報部5は、ケース103の内部に配置する。但し、警報が認識しやすいように、警報部5の設置は、外部から見えたり聞こえたりできる場所の方がよい。
【0058】
以上により、腐食検出装置3の設置が、完了する。腐食検出装置3の動作は、以下の通りである。
【0059】
雨水などの液体が座金128,129等に付着すると、この座金128,129が接している部分のケース103は、腐食する。特に、海岸地帯のように塩化ナトリウムイオンを含むの雨水は、腐食を起こしやすい。座金128,129が接している部分のケース103が腐食すると、コネクタ102は、緩んだ状態となる。このため、フランジパッキン125による防水作用が低下し、雨水が、ケース103内に侵入する(図6における矢印A)。収集材13は、ケース103内に侵入してコネクタフランジ110の外周面を流動する雨水を吸水する。収集材13は、毛細管現象により吸水した雨水をセンサ12に導き、このセンサ12を濡らす。センサ12のアルミニウム系金属の第1の金属12aと、銀系金属の第2の金属12bとの間には、−0.7ボルトの腐食電位が発生している。なお、この腐食電位は、アルミニウム系金属を0ボルトとしたときの銀系金属の電位である。
【0060】
アルミニウム系金属は、腐食してアルミナとなる。このアルミナは絶縁体であるため、センサ12の抵抗値は、腐食度合いに応じて増大する。また、アルミニウム系金属の体積は、腐食すると約5〜10倍に増大する。このため、アルミニウム系金属の上層の第2の金属12bや第3の金属12cは、腐食部分で盛り上がり剥離したり、断線したりする。センサ12の抵抗値が変動するとブリッジ回路42の抵抗バランスが崩れて、端子45a,45b間に電位差が、発生する。この電位差により警報部5に電流が、流れる。これにより警報部5は、腐食が進行したことを光や音等により報知する警報を発する。
【0061】
このように、腐食検出装置3を被検出箇所に取り付けて腐食を検出するので、腐食センサ2が液体の流路から離れていても、簡単な回路で腐食状態が、検出できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、腐食センサとしてだけでなく、薬液の漏れ検出センサ、封止部分やシールド部分の液体漏れ検出センサ等の液体を検出する検出センサとしても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明にかかる腐食センサの平面図を示す。
【図2】図2は、図1におけるA−A矢視断面図を示す。
【図3】図3は、図1に示す腐食センサの変形例を示す平面図を示す。
【図4】図4(a)は腐食センサの製造方法の工程図を示し、図4(b)はそのときの腐食センサの部分断面図を示す。
【図5】図5は、腐食検出装置の回路図を示す。
【図6】図6は、腐食検出装置を通信装置のケースに取り付けた際の様子を示す断面図を示す。
【図7】図7は、通信装置をポールに取り付けた状態を示す断面図を示す。
【図8】図8は、腐食防止技術に関する関連技術の説明図を示す。
【図9】図9は、腐食評価技術に関する関連技術の説明図を示す。
【図10】図10は、腐食評価技術に関する関連技術の説明図を示す。
【符号の説明】
【0064】
SA センサ形成工程
SB 収集材取付工程
SC 固定部取付工程
SA1 パターニング工程
SA2 メッキ形成工程
2 腐食センサ
3 腐食検出装置
4 検出部
5 警報部
11 基板
12 センサ
12a 第1の金属
12b 第2の金属
12c 第3の金属
13 収集材
14 固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体により腐食して、この液体を検出するセンサと、
前記センサに前記液体を導く収集材と、を有することを特徴とする腐食センサ。
【請求項2】
前記センサは、少なくとも2つの金属を含むことを特徴とする請求項1に記載の腐食センサ。
【請求項3】
前記収集材は、毛細管現象により前記液体を収集することを特徴とする請求項1又は2に記載の腐食センサ。
【請求項4】
前記収集材は、繊維状物質を含むことを特徴とする請求項3に記載の腐食センサ。
【請求項5】
前記収集材が含む繊維状物質は、ガラス繊維、カーボン繊維、無機繊維、有機繊維、不織布のいずれか1つであることを特徴とする請求項4に記載の腐食センサ。
【請求項6】
前記液体は、イオン物質を含むことを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載の腐食センサ。
【請求項7】
前記液体が含むイオン物質は、塩化ナトリウムイオンであることを特徴とする請求項6に記載の腐食センサ。
【請求項8】
前記センサは、電気腐食を起こす第1の金属を含むことを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項に記載の腐食センサ。
【請求項9】
前記センサは、前記第1の金属との間で腐食電位を発生する第2の金属を含むことを特徴とする請求項8に記載の腐食センサ。
【請求項10】
前記センサは、前記第1の金属と前記第2の金属との間で発生する腐食電位の中間電位を発生する第3の金属を含むことを特徴とする請求項9に記載の腐食センサ。
【請求項11】
前記第1の金属は、アルミニウム又はアルミニウムの合金であることを特徴とする請求項8乃至10いずれか1項に記載の腐食センサ。
【請求項12】
前記第2の金属は、銀又は銀の合金であることを特徴とする請求項9乃至11いずれか1項に記載の腐食センサ。
【請求項13】
前記第3の金属は、ニッケル又はニッケルの合金であることを特徴とする請求項10乃至12いずれか1項に記載の腐食センサ。
【請求項14】
被検出箇所に前記センサを固定する固定部を有することを特徴とする請求項1乃至13いずれか1項に記載の腐食センサ。
【請求項15】
前記センサを支持する基板を有することを特徴とする請求項1乃至14いずれか1項に記載の腐食センサ。
【請求項16】
被検出箇所の形状に対応した形状の端部を備え、この端部が前記液体の収集端をなす収集端部を有することを特徴とする請求項14に記載の腐食センサ。
【請求項17】
被検出箇所の形状に対応した形状の端部を備え、この端部が前記液体の収集端をなす収集端部を有することを特徴とする請求項15に記載の腐食センサ。
【請求項18】
前記センサの配置は、前記収集端部に沿って設けた位置であることを特徴とする請求項16又は17に記載の腐食センサ。
【請求項19】
前記センサの形状は、線状であることを特徴とする請求項1乃至18いずれか1項に記載の腐食センサ。
【請求項20】
前記固定部の配置は、前記収集端部と対向する端部側の位置であることを特徴とする請求項16に記載の腐食センサ。
【請求項21】
液体を毛細管現象により収集する工程と、
収集した前記液体により腐食して前記液体を検出する工程と、を有することを特徴とする液体の検出方法。
【請求項22】
液体により腐食して、この液体を検出するセンサを形成するセンサ形成工程と、
収集材を設ける収集材取付工程と、を有することを特徴とする腐食センサの製造方法。
【請求項23】
前記センサ形成工程は、金属膜をエッチングするパターニング工程を含むことを特徴とする請求項22に記載の腐食センサの製造方法。
【請求項24】
前記センサ形成工程は、前記パターニング工程でエッチングが行われた金属膜にメッキを施すメッキ工程を含むことを特徴とする請求項23に記載の腐食センサの製造方法。
【請求項25】
前記パターニング工程でエッチングする金属膜は、電気腐食を起こす第1の金属であることを特徴とする請求項23又は24に記載の腐食センサの製造方法。
【請求項26】
前記メッキ工程によりメッキする材料は、前記第1の金属との間で腐食電位を発生させる第2の金属であることを特徴とする請求項24又は25に記載の腐食センサの製造方法。
【請求項27】
前記メッキ工程によりメッキする材料は、前記第1の金属と前記第2の金属との間で発生する腐食電位の中間電位を発生する第3の金属を含むことを特徴とする請求項26に記載の腐食センサの製造方法。
【請求項28】
液体により腐食して、この液体を検出するセンサ及び前記センサに前記液体を導く収集材を具備した腐食センサと、
前記腐食センサの電気的特性を検出する検出部と、を有することを特徴とする腐食検出装置。
【請求項29】
前記センサが腐食したことを示す警報を発する警報部を有することを特徴とする請求項28に記載の腐食検出装置。
【請求項30】
前記収集材は、毛細管現象により前記液体を収集して前記センサに導くことを特徴とする請求項28又は29に記載の腐食検出装置。
【請求項31】
前記腐食センサは、電気腐食を起こす第1の金属を含むことを特徴とする請求項28乃至30いずれか1項に記載の腐食検出装置。
【請求項32】
前記腐食センサは、前記第1の金属との間で腐食電位が発生する第2の金属を含むことを特徴とする請求項31に記載の腐食検出装置。
【請求項33】
前記腐食センサは、前記第1の金属と前記第2の金属との間で発生する腐食電位の中間電位を発生する第3の金属を含むことを特徴とする請求項32に記載の腐食検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−150806(P2009−150806A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329807(P2007−329807)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】