説明

腕時計型受信機ならびに電波時計

【課題】
高周波信号を受信するパッチアンテナ等の厚みのあるアンテナを腕時計に組み込む場合、アンテナの厚みが一般的時計モジュールと比べてほぼ同等に近いので、アンテナを配置して一般的な基板配置構造を採用した場合には一般的な時計から見て巨大な厚みの時計サイズになってしまう。
【解決手段】
GPS等の高周波信号を受信するパッチアンテナと、そのパッチアンテナを保持しアンテナグランドとして作用する金属製の保持板を備え、該保持板と基板が電気的に導通し、且つ該アンテナのパッチ面より下且つパッチアンテナグランド面より上なる範囲に基板を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電波を受信する腕時計型受信機のアンテナ配置に関する。
【背景技術】
【0002】
時刻情報を含む標準電波を受信し、ここから正確な時刻を取得し、修正することのできる電波時計は既に広く使用されている。特に近年急速に普及した背景には既存の時計と変わらないデザインを有し、金属外装からなるアナログ式の電波腕時計が実用化されたことが契機である。また、これ以外にもGPSやBluetooth等の電波を受信し情報を処理する腕時計も数は少ないが実用化されている。
【0003】
図5は、電波時計の構成を示す斜視図である。この電波時計は、カバーガラス500、文字盤501、ソーラーセル502、アンテナ503、基板504、RF受信IC505、デコーダーIC511、輪列506、モーター507、電池508、外装509、竜頭510から構成されている。
【0004】
この電波時計においては、アンテナ503で標準電波を受信し、RF受信部505にてベースバンド周波数への変換を行い、デコーダー511にて時刻情報を得る。ここで得られた時刻情報に基づき、所望の時刻へとモーター507を駆動し、輪列506にて針を駆動せしめ、時刻を修正するものである。これら一連の動作に必要なエネルギーは、文字盤501に近接して配置されたソーラーセル502にて光エネルギーから電気エネルギーへと変換され、電池508に蓄えられ、利用時に供出される仕組みである。
【0005】
腕時計には機能もさる事ながら、デザインが強く要求される装飾品の観点も強く、外装509や文字盤501等外見を左右する部品の色、素材、デザイン性等の本質的な機能とは無関係な要素が非常に大事である。これにより製品の価値、販売数が大きく変化するのでメーカーは機能とデザインの両立に大きな資本を投下し、日々開発を進めている。特に外装509に関しては受信性能確保から樹脂等の非金属材料が好適であるが、質感を伴わない安物時計として認識されるが故に、許容できる限界までの性能劣化を受け入れ、敢えて金属製外装を採用しているのが現実である。
【0006】
外装509が金属の場合、到来する電磁波は文字盤501方向から来るが、アンテナ503の配置や外装509との位置関係、内部に有する金属部品等の影響を受ける事により、これらの僅かな位置関係の変化や配置によってアンテナ特性が大きく変化(大抵は劣化する方向)してしまい、開発の中での解決すべき重要な課題となっている。
【0007】
他方、今日では多様な周波数帯域にて情報のやりとりが行われ、その中に時刻情報を含む電波信号もある。こうした一例として、1.5GHz帯域でのGPS電波、2GHz帯域でのCDMA携帯電話電波、同じくBluetooth電波等の所謂高周波をベースにした電波信号を利用して時刻情報やその他の有用な情報を得ることが可能である。
【0008】
上述したような概ね1GHz以上の高周波信号は波長が短く、直進性が強いのと、電磁波の電界成分を主に利用し、共振現象を巧みに利用した小型アンテナが利用される。だが、そのようなアンテナは周囲の金属配置がアンテナ特性を決定付ける特徴を有し、アンテナ周囲の金属部材との関係は緻密な設計に基づいた配置がなされているのが現実である。こうした観点から、特に腕時計型受信機にした場合、小型且つ腕に装着して性能が出せる等の腕時計特有の課題を解決せねばならない。特に上述したようにデザインや質感等の外見との整合を図りつつ腕に装着可能なサイズにする事は非常に大事であり、小型化と性能の両
立を成立させるのは至難の業である。前述した電波時計はこの観点から見て成功した希有な例であり、時計サイズに見合うアンテナや性能を引き出せる配置、設計等数々の進歩の上に成り立っている。他方、電波時計以外で受信を行う腕時計型受信機には時計らしさの観点から見て合格レベルに達していないのが実情である。これらは受信機特有の問題を解決出来ずに時計サイズにしてしまう事に起因しており、特に電波を阻害する金属外装が使えない事、受信に必要な消費電力が時計の一般的消費電力から見て数百〜千倍大きい事、受信性能を決定付けるアンテナの配置や大きさに腕時計のサイズ的な制約が大きい事等である。このような課題に対して、特にパッチアンテナを用いたGPS腕時計型受信機に関して受信性能の面から課題を解決することが可能な配置構造として以下の先行技術文献が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−274247号公報
【0010】
特許文献1は、GPS信号を受信する腕時計型受信機に関しての受信方法に関する特許であるが、その文献の中で配置構造が提案されている。時計の上面(文字盤側)に向けてパッチアンテナが配置されており、そのアンテナを支え、且つアンテナグランドとして作用する基板がその下に配置され、基板上面に時計駆動部品、下面に電池、アンテナを取り付けた基板のアンテナ取り付け反対面に受信IC、デコーダーが配置されている。
【0011】
こうした構造により、腕をかざして時計を見る姿勢にて文字盤がほぼ天頂方向を向くことになり、文字盤と平行する面にパッチアンテナのパッチ面が配置されたアンテナの最大ゲインとなる方向と合致するので合理的である。また、パッチアンテナを支える基板はアンテナGNDを兼用しており、基板と一体となってアンテナの性能が発揮される。この配置の場合、腕の有無等によって本来影響を受ける筈のアンテナが基板によって遮断されている効果により、基板裏の金属物やアンテナに影響を与える物質の影響を受けることなくアンテナ特性を引き出す事が出来るのである。その為、時計内部で最大の金属物であろう電池も基板裏側に配置することが合理的であることが判り、腕時計型受信機においてアンテナ性能を確保できる理に叶った構造であることが判る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような理想的配置をした場合、内容物の厚さが腕時計の一般的寸法から見て厚くなってしまい、それ故に時計としてのデザイン性に欠ける事が質感の低下に結びつき、装飾品的要素や嗜好性の高い腕時計として見た場合に通用しない問題がある。
【0013】
更にアンテナ近傍の金属がアンテナ特性に与える影響が大きく、近傍に金属が配置された場合に性能が劣化することが決定的な小型受信機においては周辺金属をどの様に配置するかは非常に重要な課題である。特に腕時計型受信機では腕時計と言う限られた大きさの制約の中でアンテナ、電池、モーター、輪列等の金属部品を高密度実装せねばならず、アンテナ特性を引き出しつつ、アンテナに対して影響を及ぼす金属部品の配置方法、並びに構成方法は開発の中でも最重要課題である。
【0014】
本発明は、高周波信号を受信する腕時計型受信機において、パッチアンテナを有し、且つ腕時計にふさわしいモジュール厚を実現しつつも、受信性能を損なうことなく、腕時計としての質感やデザインを兼ね備え得る腕時計型受信機を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための手段として、本発明は、
GPS等の高周波信号を受信するパッチアンテナと、
そのパッチアンテナを保持しアンテナグランドとして作用する導電性材料の保持板を備え、
該保持板と基板が電気的に導通し、且つ、
断面視で、該アンテナのパッチ面より下且つパッチアンテナグランド面より上なる範囲に回路基板が配置される事を特徴とする。
【0016】
前記保持板が、
前記パッチアンテナを保持し、パッチアンテナグランドとして機能する保持部と、
該保持部から立ち上がる第1の立ち上がり部と、
前記回路基板と前記保持板を固定し、かつ電気的導通を取るために、
該第1の立ち上がり部から屈曲させた立ち上がり部上面と、を有し、
該立ち上がり部上面が前記パッチ面より下に配置されることを特徴とする。
【0017】
前記保持板が、前記第1の立ち上がり部の他に、第2の立ち上がり部を有することを特徴とする。
【0018】
前記回路基板の複数の辺が前記パッチアンテナの辺と対向し、
前記保持板が、前記パッチアンテナと対向する各辺において、
前記第1の立ち上がり部と前記立ち上がり部上面を有していることを特徴とする。
【0019】
前記回路基板の裏面に受信回路を実装したことを特徴とする。
【0020】
電池を有し、
該電池と前記回路基板が平面的に重なる領域の前記回路基板部分を切り欠くと共に
前記パッチ面より下になるように、該切り欠き部に該電池が配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、パッチアンテナと、そのパッチアンテナを保持しアンテナグランドとして作用する金属製の保持板を備え、該保持板と基板が電気的に導通し、且つ該アンテナのパッチ面より下且つパッチアンテナグランド面より上なる範囲に基板が配置されている。このような配置によりアンテナに影響を及ぼす基板の配置がアンテナパッチ面より下に配置されることになり、アンテナ性能が確保される。
また、モジュール断面方向から見た基板の位置はアンテナ厚みの範囲の中に納まっていることにより、従来のアンテナグランド面下に基板を配置したのと比べてモジュール全体の総厚を薄くすることが出来、時計デザインの自由度の向上や腕時計としての小型化の要求に応える事が出来る。
【0022】
また、本発明は、前記基板と前記保持板が平面的に重なる領域の基板部分を切り欠き、該アンテナのパッチ面より下且つパッチアンテナグランド面より上なる範囲に基板が配置されている。このような切り欠きを加えることにより、平面方向から見て大凡3〜4cm程度の直径しか許容されない腕時計の基板実装エリアが保持板サイズを除いた領域で可能になり、小型化の要求に応える事が出来る。
また、断面方向を上記の如く構成することにより受信性能を確保することが可能となり、全体の総厚を薄くすることが出来、時計デザインの自由度の向上や腕時計としての小型化の要求に応える事が出来る。
【0023】
また、本発明の効果として、前記基板と前記保持板が平面的に重なる領域の基板部分を切
り欠き、該アンテナのパッチ面より下且つパッチアンテナグランド面より上なる範囲に基板が配置され、基板裏面に受信IC、又はデコードICを配置している。
GPS等の微弱な電波を受信する場合、基板に搭載されたICや信号線等からのノイズによって感度が阻害されることは良く起こる現象である。本構成では、受信IC又はデコードICは基板裏面に配置されており、基板とアンテナの間に保持板が構成されており、保持板によりアンテナが支持されている。
これによりアンテナは基板から保持板によって空間的に遮断された状態となり、特に基板裏面への実装部品からアンテナがシールドされているのと同様の効果をすることが判る。これにより、アンテナ性能が向上する。また、断面方向や平面方向を上記の如く構成することで受信性能と小型化を確保することが可能となり、全体の総厚を薄くすることが出来、時計デザインの自由度の向上や腕時計としての小型化の要求に応える事が出来る。
【0024】
また、本発明の効果として、
前記基板と前記保持板が平面的に重なる領域の基板部分を切り欠き、更に、電池と前記基板が平面的に重なる領域の基板部分を切り欠き、該アンテナのパッチ面より下且つパッチアンテナグランド面より上なる範囲に基板が配置され、且つ該アンテナのパッチ面より下に電池が配置されている。時計におけるライフタイムは通常の家電製品と異なりかなりの長寿命が一般的であり、そのような要請から電池サイズが大型化することがある。本発明ではアンテナと同等もしくはそれよりも大きな部品となる電池の配置に関して、従来の基板下に配置するだけではなく、基板と電池が平面的に重なる領域の基板部分を切り欠き、断面方向でのアンテナと電池を含めた総厚を薄くしている。だが、受信性能を確保する為にパッチ面より下側に電池を配置する制約を付与することにより受信性能を確保している。また、断面方向や平面方向を上記の如く構成することで受信性能と小型化を確保することが可能となり、全体の総厚を薄くすることが出来、時計デザインの自由度の向上や腕時計としての小型化の要求に応える事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る腕時計型受信機の斜視図である。
【図1a】図1における腕時計型受信機の断面図である。
【図1b】図1における腕時計型受信機の変形例を示す斜視図である。
【図1c】図1における腕時計型受信機の変形例を示す斜視図である。
【図1d】図1における腕時計型受信機の変形例を示す斜視図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る腕時計型受信機の斜視図である。
【図2a】図2における腕時計型受信機の断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る腕時計型受信機の基板裏側から見た斜視図である。
【図3a】図3における腕時計型受信機の断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る腕時計型受信機の基板裏側から見た斜視図である。
【図4a】図4における腕時計型受信機の断面図である。
【図5】従来例を示す長波電波修正時計の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1の実施の形態:基本実施形態〕
以下、本発明の実施の形態に係わる腕時計型受信機を図面に基づいて説明する。
なお、以下に示すいずれの実施例の受信機も従来技術と同様に、金属外装を有する時計内に配置され、そのアンテナ上面に非導電性・非磁性の文字板が配置されているものとする。
本第1の実施の形態は、本発明の基本実施形態を示すものである。
【0027】
[第1の実施形態における腕時計型受信機の構成]
第1の実施形態における腕時計型受信機は、図1、図1aに示すようにアンテナ103、アンテナ103を保持している保持板100、保持板100と電気的に導通し、保持板100に取り付けられる回路基板104、回路基板に実装された信号処理IC105、保持板100と回路基板104とを接続保持する止めネジ106からなる。これらの部品以外にも受信機を構成する部品はたくさんあるが、本発明の趣旨に直接的に関わらないので省略する。
【0028】
保持板100は金属製の薄板材から構成されており、代表的な素材として銅板、黄銅板、SUS材等がある。アンテナ103はパッチアンテナであり、代表的なサイズとして12〜18mmの略正方形、厚さ4mm程度であり、アンテナ表面にはパッチ面103aがある。回路基板104は4〜6層の多層基板で構成されており、厚みは0.5〜1mm程度である。時計に用いられるモジュールの一般的な厚みは大柄な外装サイズの物でも5mm程度以下で構成されており、厚さ4mmのアンテナ103を収蔵し、その下に回路基板104を配置しただけでも既に5mmになってしまう。
【0029】
そのため、保持板100は金属製の薄板材から構成されており、アンテナ103と一体化してもアンテナ103の厚みにほぼ等しくなる様に構成されている。また保持板100は折り曲げで構成された立ち上がり部101を介して回路基板104と接続される。立ち上がり部101の高さはアンテナ103の厚みである4mm以下に設計されており、2〜3mm程度が受信機厚みとアンテナ特性の確保のバランスから好適である。立ち上がり部101の立ち上がり部上面101aがアンテナ103のパッチ面103a以下の高さに抑えられていることにより、アンテナ103のパッチ面103aと基板104や保持板100の立ち上がり部上面101a等の金属部品との電気的な結合が抑えられている。これにより、アンテナ特性を良好に保つ効果が発揮されている。
【0030】
アンテナ103は保持板100がアンテナグランドとして電気的に作用することにより性能を発揮している。一般的にアンテナグランドと回路基板の高周波グランドは同一電位であり、物理的に互いを分離して存在させることもあるが(カーナビ本体と本体外にあるアンテナ等)、小型受信機では高周波グランドが不足することにより、グランド電位の安定性が損なわれる場合が多く、それを補う為に回路基板が多層化され、全面グランド層が設けられているのが普通である。アンテナ103はアンテナグランド込みにて性能を発揮し、アンテナからの電力が受信ICに効率的に伝えられる事により高感度化を達成しているので、アンテナグランドになっている保持板100と回路基板104のグランドは電気的なインピーダンスギャップが少なくなるように接続される必要がある。その為、本実施例では基板104と保持板100は止めネジ106によって圧着して接続をしている。止めネジ106は非金属材料、金属材料何れでも良いが、金属材料からなる場合、前述した理由から、止めネジ上面106aがパッチ面103aを越えない様に構成する事が望ましい。接続方法に関しては、他にも半田固定等がある。いずれにせよ電気的なインピーダンスギャップを少なくして接続することにより、アンテナグランドが有効に作用し、受信機の受信性能を確保する事に貢献しているのである。
【0031】
[第1の実施形態の効果]
(1)モジュール厚みの減少
本実施形態の腕時計型受信機では、保持板100は折り曲げで構成された立ち上がり部101を介して回路基板104と接続されており、立ち上がり部上面101aの高さはアンテナ103の厚みである4mm以下に設計されている。その為、回路基板104はアンテナ103の断面厚の範囲内に収まっており、従来例の様なアンテナの下面に基板を配置した時と比べ薄型化が可能となり、一般的な時計モジュールとして許容できる厚みにすることが可能となる。
【0032】
(2)受信性能の確保
本実施形態の腕時計型受信機では、保持板100は折り曲げで構成された立ち上がり部101を介して回路基板104と接続されており、立ち上がり部上面101aの高さはアンテナ103の厚みである4mm以下に設計されている。立ち上がり部上面101aがパッチ面103a以下の高さに抑えられていることにより、パッチ面103aと基板104や保持板101等の金属部品との電気的な結合が抑えられることによりアンテナ特性が確保される。
【0033】
[第1の実施形態の変形例]
保持板100の構成方法も本実施例以外にも幾つか挙げることが出来る。図1bはアンテナグランドに相当する部分が一部分削減されたものである。本例はアンテナ103が有効に作用する為に必要なグランドサイズに合わせて保持板の形状を変えた例に相当する。アンテナによって必要とされるグランドサイズは使用するアンテナに対して適したサイズがあり、その適したサイズになるように保持板の一部分をカットした切り欠き部102を構成している。こうすることにより、アンテナメーカーから出荷された標準的なアンテナに対して、保持板100側の調整によってアンテナ性能を合わせ込むことが可能となる。一般的にパッチアンテナは製品としての最終的な組み込み形態が確保された状態で、アンテナメーカーによる微調整を施されたカスタマイズ状態で出荷されるが、本実施例ではそれを保持板側の調整で済ませることも可能になり、設計の自由度に繋がる。
【0034】
また、図1cは保持板100の周辺部に強度補強の為の補強用立ち上がり部107を設けた例である。保持板100の薄板だけでアンテナ103を保持するのに強度面から不都合が生じた場合に有効な手法である。強度補強に必要な補強用立ち上がり部107は、実施例1にて述べたように、アンテナ103のパッチ面103aとの電気的結合が起こらない程度に留める必要がある。望ましくはアンテナ周囲から2〜3mm離れた場所で高さがアンテナ103のパッチ面103aを超えないことである。本図ではアンテナ103と一番近接する部分の補強用立ち上がり部107を意図的に抜いており、アンテナ103のパッチ面103aと補強用立ち上がり部107の電気的結合を排除している。勿論、意図的に抜く事が必要かどうかはアンテナとの距離等によっても状況が変化する。よって、本図に示した形状以外の変形例であっても本発明の趣旨を逸脱しない範囲において本変形例に含まれるのは明白である。
【0035】
また、図1dは保持板100の一部分を切り欠き、更にそこに補強用立ち上がり部107を設けた例である。アンテナ103の特性を引き出すのに必要とされるアンテナグランドが小さい場合に一部分を切り欠いてアンテナ性能を合わせ込むが、その切り欠いた場所に何か部品を配置する事が可能になる。こうした場合、配置した部品が何らかのノイズ源になる場合、または何らかの金属、及び金属的な部品が配置される場合にノイズ源や金属部品とアンテナとの間のシールド機能を併せ持つ作用が発揮される。ノイズを遮断するのは勿論、アンテナから見て補強用立ち上がり部107の裏側に配置された金属部品は補強用立ち上がり部107とアンテナとの電気的結合によってマスキングされ、補強用立ち上がり部107の裏側に配置された金属部品の形状や大きさ等の変化がアンテナ特性に影響を及ぼさない効果が発揮される。

【0036】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
なお、以下の各実施形態において、前述した第1実施形態と同一または同様の構成については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0037】
[第2の実施形態における腕時計型受信機の構成]
第2の実施形態における腕時計型受信機は、図2、図2aに示すように構成されている。第1の実施形態における腕時計型受信機との差異は、保持板200の3方向に立ち上がり部201を設けており、回路基板204と止めネジ206にて圧着接続していることである。3方向の立ち上がり部の高さは実施例1同様にアンテナ203のパッチ面203aを超えない高さに設計されているのは同様である。また、アンテナとの結合を抑える為に、立ち上がり部はアンテナ203の外周から適切な距離を離して立ち上げている。アンテナの配置やその他の構造設計から最適値は異なるが、概ね2〜3mm離れた位置にて立ち上げる事が望ましい。また回路基板204は保持板200の投影面を切り欠いた形状であり、そこに保持板200が収まる。また、電池209を基板204の裏側に配置している。電池209はアンテナ203と同等の容積を持つ大きな金属部品の一つであるが、アンテナ203のパッチ面203aからは基板204と保持板200によってシールドされているので、電池209の配置によるアンテナ特性への影響が抑えられている。
[第2の実施形態の効果]
【0038】
本実施形態の腕時計型受信機は、第1の実施形態の変形例であるので、第1の実施形態にて触れた効果に関しては全て包含している。よって、第2の実施形態によって追加された特有の効果を以下に示す。
(1)実装面積の向上
【0039】
本実施形態の腕時計型受信機では、回路基板204は保持板200との投影面を切り欠いた形状である。実施例1と異なり、アンテナグランドの作用をする保持板の領域を小さくし、その代わりに基板面積を増大させている。この様な配置においてもパッチアンテナ側での調整を施すのと、保持板200の立ち上げ部201とアンテナ203の外周との距離、及び高さの関係を適切に設計し、バランスを取る事により受信性能を確保することが可能となり、基板面積の増大を図ることが可能になる。この結果、腕時計の小さな容積の中で、基板実装面積をより大きく確保する事が可能となり、ICや電子部品等の実装面積が確保され、より小型な時計型受信機が可能となる。
【0040】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
なお、以下の各実施形態において、前述した第2実施形態と同一または同様の構成については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0041】
[第3の実施形態における腕時計型受信機の構成]
第3の実施形態における腕時計型受信機は、図3、図3aに示すように構成されている。第2の実施形態における腕時計型受信機との差異は、受信IC305や信号配線307が基板裏側(裏蓋側)に配置されており、アンテナ303のパッチ面303aへと空間的に飛び込むノイズが保持板300によってシールドされていることである。全てのICや電子部品、並びに信号配線等を基板裏側に配置する事が出来ればノイズ抑止効果は最大となるが、受信性能に特に影響を与えるICや配線等を裏側に配置し、本実施例の様なアンテナ保持構造を施す事によって十分な効果が得られる。よって、本発明の意図する受信IC305や信号配線307の配置は全てを裏側に配置することではない。
【0042】
[第3の実施形態の効果]
本実施形態の腕時計型受信機は、第2の実施形態の変形例であるので、第1及び第2の実施形態にて触れた効果に関しては全て包含している。よって、第3の実施形態によって追加された特有の効果を以下に示す。
【0043】
(1)IC等実装部品からのノイズ抑止
本実施形態の腕時計型受信機では、回路基板304は保持板300との投影面を切り欠いた形状であり、保持板300は3方向の立ち上げ部301を有している。更に、発生ノイズにより受信性能を劣化させる受信IC305、信号配線307、及びその他実装部品を基板裏側に配置することにより、アンテナ303のパッチ面303aに飛び込むノイズが保持板300を介して遮断される効果が得られる。この効果により受信IC305、信号配線307、及びその他実装部品からのノイズ抑止効果が得られ、受信機の受信性能を確保することが可能となる。
【0044】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
なお、以下の各実施形態において、前述した第3実施形態と同一または同様の構成については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0045】
[第4の実施形態における腕時計型受信機1の構成]
第4の実施形態における腕時計型受信機1は、図4、図4aに示すように構成されている。第3の実施形態における腕時計型受信機との差異は、電池409を包含した構造にした時に薄型になる様に回路基板404を電池409の投影面を切り欠いた構成にしていることである。
【0046】
電池409はコイン型リチウム電池等が好適であるが、厚みが1.6〜3.2mm程度あり、基板裏側に単純に配置しただけではモジュールが厚くなってしまう。その為基板404を切り欠き電池409をそこにはめ込む構造としている。この場合、電池409をはめ込むんだ時のアンテナ403との高さ方向においてアンテナ性能を確保する為に制約を設けており、望ましくはアンテナ403のパッチ面403aを超えない高さで配置することである。図面中では(アンテナパッチ面高さ)−(電池面高さ)を示す段差410にて示してあり、この段差410が正の範囲になる様に電池409の配置をする事が望ましい。電池409をアンテナ外周から相当の距離を離して配置した場合はその限りではないが、直径方向が3〜4cm程度しかない腕時計ではアンテナ403から電池409を離して配置する事は難しいので、上述した配置構造が性能を出す上で望ましい。
【0047】
[第4の実施形態の効果]
本実施形態の腕時計型受信機は、第3の実施形態の変形例であるので、第1、第2及び第3の実施形態にて触れた効果に関しては全て包含している。よって、第4の実施形態によって追加された特有の効果を以下に示す。
【0048】
(1)電池を含めた薄型構造の実現
本実施形態の腕時計型受信機では、回路基板404を電池409の投影面を切り欠いた構成にしている。これにより電池409の厚みに関して従来例の様に基板404に積み重ねる構造と比べて薄くすることが可能になる。また、その場合に受信性能を確保するためにはめ込んだ電池409の高さ方向はアンテナ403のパッチ面403aを超えないことが望ましく、これにより電池を含めても従来と比べて薄型且つ、より実現性のあるモジュール構造が実施可能になる。電池相当分の実装面積の減少は、実施例2にて開示した構成からアンテナ403のサイド部分を活用することにより補う事が可能となり、実施例3に示した如く保持板400がシールド作用を持つのでアンテナ近くのサイド部分に受信IC等を配置した場合においても良好な受信性能を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
100、200、300、400 アンテナ保持板
500 カバーガラス
501 文字盤
101、201、301、401 立ち上がり部
101a、201a、301a、401a 立ち上がり部上面
102 切り欠き部
502 ソーラーセル
103、203、303、403、503 アンテナ
103a、203a、303a、403a パッチ面
104、204、304、404、504 基板
105、205、305、405 信号処理IC
505 RF受信IC
106、206 止めネジ
106a 止めネジ上面
506 輪列
107 補強用立ち上がり部
307、407 信号配線
507 モーター
409、508 電池
509 外装
410 段差
510 竜頭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を受信するパッチアンテナと、
そのパッチアンテナを保持しアンテナグランドとして作用する導電性材料の保持板を備え、
該保持板と基板が電気的に導通し、且つ、
断面視で、該アンテナのパッチ面より下且つパッチアンテナグランド面より上なる範囲に回路基板が配置される事を特徴とする、腕時計型受信機。
【請求項2】
前記保持板が、
前記パッチアンテナを保持し、パッチアンテナグランドとして機能する保持部と、
該保持部から立ち上がる第1の立ち上がり部と、
前記回路基板と前記保持板を固定し、かつ電気的導通を取るために、
該第1の立ち上がり部から屈曲させた立ち上がり部上面と、を有し、
該立ち上がり部上面が前記パッチ面より下に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の腕時計型受信機。
【請求項3】
前記保持板が、前記第1の立ち上がり部の他に、第2の立ち上がり部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の腕時計型受信機。
【請求項4】
前記回路基板の複数の辺が前記パッチアンテナの辺と対向し、
前記保持板が、前記パッチアンテナと対向する各辺において、
前記第1の立ち上がり部と前記立ち上がり部上面を有している
ことを特徴とする請求項2に記載の腕時計型受信機。
【請求項5】
前記回路基板の裏面に受信回路を実装した
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の腕時計型受信機。
【請求項6】
電池を有し、
該電池と前記回路基板が平面的に重なる領域の前記回路基板部分を切り欠くと共に
前記パッチ面より下になるように、該切り欠き部に該電池が配置される
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の腕時計型受信機。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の腕時計型受信機を、
金属製の外装内に配置した電波時計。



【図1】
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【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【図3a】
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【図4】
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【図4a】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−185894(P2011−185894A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54204(P2010−54204)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】