説明

腫瘍と関連している遺伝的変異

プロテインキナーゼにおける腫瘍に関連する変異を提供する。前記変異を検出するための組成物及び方法、並びに腫瘍を診断及び治療するための組成物及び方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、出典明記によってその開示内容の全体が本明細書中に援用される、2007年1月11日に出願した米国仮特許出願第60/884479号の優先権を主張するものである。
(発明の分野)
本発明は概して、プロテインキナーゼにおける腫瘍に関連する変異に関する。
【背景技術】
【0002】
多型性は生物のゲノム中に存在する遺伝的差異(variation)である。多型性には、制限断片長多形性(RFLP)(短いタンデムリピート(STR)、及び単一のヌクレオチド多型性(SNP)が含まれる。特にSNPは癌を含む特定の疾患の罹病性と関係しうる。(例としてZhu et al. (2004) Cancer Research 64:2251-2257を参照)。ゆえに、癌と関係している多型性を同定することは引き続き必要である。
チロシンキナーゼ2、又は「TYK2」は、非受容型チロシンキナーゼのファミリーであるJanus又は「Jak」のメンバーであり、JAK1、JAK2およびJAK3が含まれる。Jakキナーゼは、通常、いくつかのドメインを含む共通の構造を共有する巨大タンパク質(およそ1100のアミノ酸)である。これらのドメインにはC末端キナーゼドメイン、「pseudokinase」ドメインおよび「FERM」ドメインが含まれ、後者2つのドメインはみかけ上は相互作用し、キナーゼドメインの触媒活性を制御している。概要については、例としてYamaoka et al. (2004) Genome Biol. 5:253を参照。
【0003】
Jakキナーゼは、サイトカインおよびホルモンレセプターと会合(associate)し、それらのレセプターにリガンドが結合することにより活性化される。活性化されたJakは、それらの結合したレセプターおよび他の基質をリン酸化する。リン酸化されたレセプターは、転写のシグナルトランスデューサーおよび活性化因子(STAT)に結合する。JAK1、JAK2および特定のSTATの恒常的活性化は、癌と相関している。例えば、上掲;Verma et al. (2003) Cancer and Metastasis Rev. 22: 423-434を参照。ゆえに、癌と関係しているTYK2変異体(例えば多形性変異体)を同定することは引き続き必要である。
本明細書において記述される本発明は、上記の必要性を満たし、他の利点を提供するものである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の組成物及び方法は、少なくともある程度、プロテインキナーゼにおける腫瘍に関連する差異(variation)の発見に基づく。ある例では、TYK2遺伝子の新しい生殖細胞系突然変異が、4つの独立したヒト腫瘍組織試料において発見されている。この変異により触媒キナーゼドメインのアミノ酸の置換が生じる。更なる例では、MAST2およびRIOK2の2つの他のヒトキナーゼにおいて、腫瘍に関連する差異が発見された。
【0005】
本発明の一態様では、患者の腫瘍を診断する方法であって、患者から得られる生体試料におけるTYK2の触媒キナーゼドメイン中のアミノ酸変化の存在を検出することを含む方法が提供される。一実施態様では、方法は、生体試料中のTYK2のP1104、P1105又はW1067でのアミノ酸変化の存在を検出することを含む。そのような実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、検出には、生体試料から得られるTYK2ポリヌクレオチドにおいて、アミノ酸変化が生じるヌクレオチド変化の存在を検出することが含まれる。そのような実施態様では、ヌクレオチド変化はC3651G置換である。別の実施態様では、TYK2ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド変化は、配列番号:1ないしはそのコード領域にヌクレオチド変化を含む。別の実施態様では、検出には、プライマー伸長アッセイ;アレル特異的プライマー伸長アッセイ;アレル特異的ヌクレオチド取込みアッセイ;アレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイ;5'ヌクレアーゼアッセイ;分子ビーコンを使用するアッセイ;及びオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイから選択される方法を行うことが含まれる。他の実施態様では、生体試料は、腫瘍細胞を含むか、含むことが疑われる。他の実施態様では、腫瘍は、胸部、大腸又は胃の腫瘍である。
【0006】
他の態様では、患者の腫瘍がTYK2又はTYK2ポリヌクレオチドを標的とする治療薬に応答するか否かを決定するための方法であって、患者から得られた生体試料中のTYK2の触媒キナーゼドメインにおけるアミノ酸変化の有無を検出することを含み、このときアミノ酸変化の存在により、腫瘍が該治療薬に応答することが示唆される方法が提供される。一実施態様では、方法は、生体試料中のTYK2のP1104、P1105又はW1067でのアミノ酸変化の有無を検出することを含む。そのような実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、腫瘍は、胸部、大腸又は胃の腫瘍から選択される。他の実施態様では、アミノ酸変化は、生体試料から得られるTYK2ポリヌクレオチドにおいて、アミノ酸変化が生じるヌクレオチド変化を検出することによって検出される。そのような実施態様では、ヌクレオチド変化はC3651G置換である。別の実施態様では、TYK2ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド変化は、配列番号:1ないしはそのコード領域にヌクレオチド変化を含む。別の実施態様では、検出には、プライマー伸長アッセイ;アレル特異的プライマー伸長アッセイ;アレル特異的ヌクレオチド取込みアッセイ;アレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイ;5'ヌクレアーゼアッセイ;分子ビーコンを使用するアッセイ;及びオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイから選択される方法を実施することが含まれる。
【0007】
他の態様では、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、腫瘍細胞は触媒キナーゼドメインにアミノ酸変化を有するTYK2を含むものであり、腫瘍細胞をTYK2のアンタゴニストにさらすことを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化は、TYK2のP1104、P1105又はW1067で起こる。他の実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、腫瘍細胞は、胸部、大腸又は胃の腫瘍細胞である。他の実施態様では、TYK2のアンタゴニストは小分子アンタゴニストである。他の実施態様では、TYK2のアンタゴニストはアンタゴニスト抗体である。他の実施態様では、方法はさらに、患者に細胞障害性薬、化学療法薬又は増殖阻害性薬を投与することを含む。
【0008】
他の態様では、触媒キナーゼドメインにアミノ酸変化を有するTYK2を含む腫瘍を治療する方法であって、腫瘍を有する患者にTYK2のアンタゴニストを含有する製薬製剤の有効量を投与することを含む。一実施態様では、アミノ酸変化は、P1104、P1105およびW1067で起こる。そのような実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、腫瘍は、胸部、大腸又は胃の腫瘍である。他の実施態様では、TYK2のアンタゴニストは小分子アンタゴニストである。他の実施態様では、TYK2のアンタゴニストはアンタゴニスト抗体である。他の実施態様では、方法は、患者に細胞障害性薬剤、化学療法剤又は増殖阻害性薬剤を投与することを更に含む。
【0009】
他の態様では、(a)少なくともおよそ10ヌクレオチド長であって、TYK2のP1104、P1105又はW1067にアミノ酸変化が生じるヌクレオチド変化を含むTYK2ポリヌクレオチドないしその断片、又は(b)(a)の相補鎖を含む単離されたポリヌクレオチドが提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、ヌクレオチド変化はC3651G置換である。他の実施態様では、TYK2ポリヌクレオチドないしその断片は、配列番号:1ないしその断片の配列にヌクレオチド変化を含む。他の実施態様では、単離されたポリヌクレオチドはプライマーである。他の実施態様では、単離されたポリヌクレオチドはオリゴヌクレオチドである。
【0010】
他の態様では、(a)TYK2のP1104、P1105又はW1067にアミノ酸変化を起こすヌクレオチド変化を含むTYK2ポリヌクレオチドの領域にハイブリダイズするアレル特異的オリゴヌクレオチド、又は(b)(a)の相補鎖であるオリゴヌクレオチドが提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104のアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、ヌクレオチド変化はC3651G置換である。他の実施態様では、TYK2ポリヌクレオチドは、配列番号:1ないしそのコード領域の配列にヌクレオチド変化を含む。他の実施態様では、アレル特異的オリゴヌクレオチドはアレル特異的なプライマーである。他の実施態様では、オリゴヌクレオチドおよび少なくとも一の酵素を具備する診断用キットが提供される。そのような実施態様では、少なくとも一の酵素はポリメラーゼである。別の実施態様では、少なくとも一の酵素はリガーゼである。他の実施態様では、オリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイが提供される。
【0011】
他の態様では、生体試料における腫瘍の検出方法であって、生体試料から得られるTYK2ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド変化の存在を検出することを含み、該ヌクレオチド変化によりTYK2のP1104、P1105又はW1067でアミノ酸変化が生じている、方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、ヌクレオチド変化はC3651G置換である。他の実施態様では、TYK2ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド変化は、配列番号:1ないしそのコード領域にヌクレオチド変化を含む。他の実施態様では、腫瘍は、胸部、大腸又は胃の腫瘍から選択される。他の実施態様では、検出には、プライマー伸長アッセイ;アレル特異的プライマー伸長アッセイ;アレル特異的ヌクレオチド取込みアッセイ;アレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイ;5'ヌクレアーゼアッセイ;分子ビーコンを使用するアッセイ;及びオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイから選択される方法を行うことが含まれる。
【0012】
他の態様では、TYK2ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド変化の存在を検出する方法であって、該ヌクレオチド変化によりTYK2のP1104、P1105又はW1067にアミノ酸変化が生じるものであり、(a)核酸に対するアレル特異的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに適切な条件下で、ヌクレオチド変化に特異的であるアレル特異的オリゴヌクレオチドに、ヌクレオチド変化を含むと思われる核酸を接触させ、そして、(b)TYK2ポリヌクレオチドにヌクレオチド変化が存在することを表す、アレル特異的ハイブリダイゼーションの存在を検出することを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、ヌクレオチド変化はC3651G置換である。他の実施態様では、TYK2ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド変化は、配列番号:1ないしそのコード領域にヌクレオチド変化を含む。
【0013】
他の態様では、ヌクレオチド変化を含む核酸を増幅する方法であって、該ヌクレオチド変化によりTYK2のP1104、P1105又はW1067でアミノ酸変化が生じるものであり、(a)ヌクレオチド変化の3'配列にハイブリダイズするプライマーに該核酸を接触させ、そして(b)プライマーを伸長させてヌクレオチド変化を含む増幅産物を生成することを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、ヌクレオチド変化はC3651G置換である。他の実施態様では、核酸は、配列番号:1ないしその断片にヌクレオチド変化を含む。
更なる態様では、組成物および方法は、TYK2において腫瘍に関連する変化を発見したことに関しており、セリン−スレオニンキナーゼMAST2およびRIOK2は後述するように提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】MAST2(A)およびRIOK2(B)遺伝子の配列トレースファイルを示す。フォワード及びリバースのトレースを標識して示す。各パネルの矢印は変化の位置を示す。各ヒストグラムの上にヌクレオチドを示し、NはA/G(パネルA)又はT/C(パネルB)の野生型/変異型ヌクレオチドを表す。変化のいずれかの側に隣接する10の塩基対のトレースデータを示し、これらの領域の配列の信頼性の高さを表す。
【図2】ヒトTYK2(NM_003331.3;配列番号:1(ヌクレオチド配列)および配列番号:2(アミノ酸配列))における、癌関連の生殖細胞系突然変異の同定と特徴づけを示す。(A) Sequenomプラットフォームに基づく質量分析方法を用いて、無関係な腫瘍試料からのゲノムDNAにおいてC3651G(P1104A)突然変異をスクリーニングした。代表的な陽性質量スペクトルは、腫瘍組織試料においてヘテロ接合性C/Gの存在を示唆することを示す。この変異体は、3つの癌ライブラリのうち4つのESTクローンにおいて最初に観察された。この位置を含む通常のライブラリから得た29のEST配列はいずれもこの突然変異を含有しない。パネル(B)の表は、スクリーニングした腫瘍試料において観察されたTYK2突然変異の発生と頻度を示す。C3651G突然変異が観察された4つすべての症例において、一致する正常組織にも同じ突然変異が観察された。これは、この突然変異が生殖細胞系の突然変異であることを示唆する。TYK2キナーゼドメインの予測された構造をパネル(C)に示す。TYK2モデルは、Jak2およびJak3キナーゼドメイン(それぞれPDBファイル2B7Aおよび1YVJ)のX線構造を鋳型として用いたプログラムModellerにより生成した。プロリン1104は囲んだ領域内で黒色で表し、相互作用するプロリン1105とトリプトファン1067の残基は囲んだ領域内で灰色で表す。変異したP1104残基はTYK2の基質-結合溝に存在し、活性化ループに拘束された保存されたW1067残基とリング状に積み重なって(ring-stacking)相互作用する状態で密接に集まる(pack)。P1104も、隣接するα−ヘリックスを配置するのを助ける隣接P1105残基のリングと接触する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施態様の詳細な説明)
I.定義
ここで交換可能に用いる「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体(アナログ)、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼによりポリマー中に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの集合化(「アセンブリ」とも言う)の前又は後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは合成後に、例えば標識成分との結合によりさらに修飾されてもよい。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ(caps)」、類似体との自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)及び荷電連結(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジン等)を含むもの、インターカレータ(intercalators)を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤を含むもの(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(一又は複数)の未修飾形態が含まれる。さらに、糖類中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへのさらなる連結を調製するように活性化されてもよく、もしくは固体支持体に結合していてもよい。5'及び3'末端のOHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有するアミン又は有機キャップ基部分で置換することもできる。また他のヒドロキシルは標準的な保護基に誘導体化されてもよい。さらにポリヌクレオチドは当該分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のものをさらに含み、これらには例えば2’−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ又は2’−アジド−リボース、炭素環式糖の類似体、アルファ−アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び非塩基性ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル連結は代替の連結基で置き換えてもよい。これらの代替の連結基には、限定されるものではないが、ホスファートがP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、「(O)NR2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH2(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのR及びR'は独立して、H又は、エーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1−20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記述は、RNA及びDNAを含むここで引用される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0016】
本明細書中で用いる「オリゴヌクレオチド」とは、短く、少なくとも7ヌクレオチド長であって約200未満のヌクレオチド長の一本鎖ヌクレオチドを意味する。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドについての上述した記載はオリゴヌクレオチドと等しく、十分に適用可能である。
「プライマー」は、核酸にハイブリダイズし、一般に遊離した3'-OH基を供給することにより、相補的なポリヌクレオチドの重合を促進する一本鎖ポリヌクレオチドである。
【0017】
本明細書で用いる「TYK2」なる用語は、特に明記しない限り、霊長類(例えばヒトおよびサル)および齧歯動物(例えばマウスおよびラット)のような哺乳動物を含む、任意の脊椎動物の供与源からの任意の天然のチロシンキナーゼ2を指す。この用語には、「完全長」、プロセシングされていないTYK2、並びに細胞におけるプロセシングから生じるTYK2の任意の形状が包含される。この用語には、TYK2の天然に生じる変異体、例えばスプライス変異体、対立遺伝子変異体および他のアイソフォームも包含される。また、この用語には、TYK2の少なくとも一の生物学的活性、例えばキナーゼ活性を維持する天然のTYK2の断片ないしは変異体も包含される。
「TYK2ポリヌクレオチド」なる用語は、特に明記しない限り、TYK2をコードする遺伝子又はコード配列(例えばRNA又はcDNAコード配列)を指す。
【0018】
本明細書中で用いる「MAST2」は、特に明記しない限り、霊長類(例えばヒトおよびサル)および齧歯動物(例えばマウスおよびラット)のような哺乳動物を含む、任意の脊椎動物の供与源からの任意の微小管関連セリン/スレオニンキナーゼ2を指す。この用語には、「完全長」、プロセシングされていないMAST2、並びに細胞におけるプロセシングから生じるMAST2の任意の形状が包含される。この用語には、MAST2の天然に生じる変異体、例えばスプライス変異体、対立遺伝子変異体および他のアイソフォームも包含される。また、この用語には、MAST2の少なくとも一の生物学的活性、例えばキナーゼ活性を維持する天然のMAST2の断片ないしは変異体も包含される。
「MAST2ポリヌクレオチド」なる用語は、特に明記しない限り、MAST2をコードする遺伝子又はコード配列(例えばRNA又はcDNAコード配列)を指す。
【0019】
本明細書中で用いる「RIOK2」は、特に明記しない限り、霊長類(例えばヒトおよびサル)および齧歯動物(例えばマウスおよびラット)のような哺乳動物を含む、任意の脊椎動物の供与源からの任意のセリン/スレオニンプロテインキナーゼRIO2を指す。この用語には、「完全長」、プロセシングされていないRIOK2、並びに細胞におけるプロセシングから生じるRIOK2の任意の形状が包含される。この用語には、RIOK2の天然に生じる変異体、例えばスプライス変異体、対立遺伝子変異体および他のアイソフォームも包含される。また、この用語には、RIOK2の少なくとも一の生物学的活性、例えばキナーゼ活性を維持する天然のRIOK2の断片ないしは変異体も包含される。
「RIOK2ポリヌクレオチド」なる用語は、特に明記しない限り、RIOK2をコードする遺伝子又はコード配列(例えばRNA又はcDNAコード配列)を指す。
【0020】
「PRO」なる用語は、特に明記しない限り、TYK2、MAST2又はRIOK2のいずれかを指す。
「PROポリヌクレオチド」なる用語は、特に明記しない限り、PROをコードする遺伝子又はコード配列(例えばRNA又はcDNAコード配列)を指す。
「変化(variation)」なる用語は、ヌクレオチド変化(変異)又はアミノ酸変化(変異)を指す。
「ヌクレオチド変化(変異)」なる用語は、参照ポリヌクレオチド配列(例えば野生型配列)と比較した場合の、ポリヌクレオチド配列における変化(例えば、単一のヌクレオチド多型性(SNP)のようなヌクレオチド挿入、欠失、逆位又は置換)を指す。この用語には、特に明記しない限り、ポリヌクレオチド配列の相補鎖における対応する変化も包含される。ヌクレオチド変化は、生殖細胞系又は体細胞系の変異であってもよい。
「アミノ酸変化(変異)」なる用語は、参照ポリペプチド配列(例えば野生型配列)と比較した場合の、ポリペプチド配列の特定のアミノ酸位(一又は複数)での変化(例えば一又は複数のアミノ酸の欠失、挿入又は置換によって生じる変化)を指す。
「活性化変異」は、野生型の遺伝子産物と比較して、結果として遺伝子産物のより活性な形態となる遺伝子又は遺伝子産物の変異を指す。
【0021】
「アレイ」又は「マイクロアレイ」は、基質上でのハイブリダイズ可能なアレイ成分、好ましくはポリヌクレオチドプローブ(例えばオリゴヌクレオチド)の規則正しい整列を意味する。基質は、スライドグラスなどの固体基質、又はニトロセルロースメンブレンなどの半固体基質であってもよい。ヌクレオチド配列は、DNA、RNA又は何れかのその並べ換えでありうる。
「増幅」は、基準核酸配列又はその相補鎖の一又は複数のコピーを製造する過程を意味する。増幅は、一次関数的、又は指数関数的(例えばPCR)であり得る。「コピー」は、鋳型配列に対して必ずしも完全に相補的又は同一な配列を意味するものではない。例えば、コピーは、例えばデオキシイノシンなどのヌクレオチド類似体、意図的配列変化(鋳型に完全に相補的ではないがハイブリダイズすることができる配列を含むプライマーにより導入された配列変化など)及び/又は増幅中に起こる配列エラーを含みうる。
【0022】
「アレル特異的オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチド変異(一般的に置換)を含む標的核酸の領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを指す。「アレル特異的ハイブリダイゼーション」は、アレル特異的オリゴヌクレオチドがその標的核酸にハイブリダイズした場合に、アレル特異的オリゴヌクレオチドのヌクレオチドが特異的にこの変異に塩基対合することを意味する。特定の変異についてアレル特異的ハイブリダイゼーションが可能なアレル特異的オリゴヌクレオチドは、その変異に対して「特異的」であるという。
「アレル特異的プライマー」は、プライマーであるアレル特異的オリゴヌクレオチドを意味する。
【0023】
「プライマー伸長アッセイ」は、ヌクレオチドが核酸に付加され、より長い核酸又は「伸長産物」を生じるアッセイで、直接的又は間接的に検出されるものを意味する。
「アレル特異的ヌクレオチド取り込みアッセイ」は、(a)プライマーがヌクレオチド変異の3’の領域で標的核酸にハイブリダイズし、(b)ポリメラーゼにより伸長されることにより、変異に相補的なヌクレオチドが伸長産物に取り込まれる、プライマー伸長アッセイを指す。
「アレル特異的プライマー伸長アッセイ」は、アレル特異的プライマーが標的核酸にハイブリダイズして伸長する、プライマー伸長アッセイを指す。
「アレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイ」は、(a)アレル特異的オリゴヌクレオチドが標的核酸にハイブリダイズし、(b)ハイブリダイゼーションが直接的又は間接的に検出される、アッセイを指す。
【0024】
「5’ヌクレアーゼアッセイ」は、アレル特異的オリゴヌクレオチドの標的核酸へのハイブリダイゼーションの後に、ハイブリダイゼーションプローブの核酸分解切断が起こり、その結果検出可能なシグナルが生じる、アッセイを指す。
「分子ビーコンを用いたアッセイ」は、アレル特異的オリゴヌクレオチドの標的核酸へのハイブリダイゼーションが、遊離オリゴヌクレオチドから出される検出シグナルレベルよりも高い検出シグナルレベルを生じる、アッセイを指す。
「オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ」は、アレル特異的オリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが互いに標的核酸上で隣接してハイブリダイズし、共にライゲートし、ライゲーション産物が直接的又は間接的に検出されるアッセイを指す。
【0025】
「標的配列」、「標的核酸」又は「標的核酸配列」は、一般的に、変異が存在すると推測される、又は知られている対象のポリヌクレオチドを指し、増幅により生成される標的核酸などのコピーも含む。
「検出」は、直接的及び間接的な検出を含む検出する任意の手段を含む。
本明細書中で用いる「診断」なる用語は、分子の同定、又は病理学的状態、疾患ないしは症状の同定、例えば癌(例えば大腸癌)ないしは特定の種類の癌(例えば特定の変異に特徴を有する大腸癌)の同定を指す。本明細書中で用いる「予後」なる用語は、癌のような腫瘍性疾患の再発、転移拡散、及び薬剤耐性を含む癌に起因し得る死又は進行の可能性の予測を意味する。本明細書中で用いる「予測」なる用語は、患者が薬剤又は一連の薬剤に対して有利又は不利に応答する可能性を意味する。一実施態様では、予測はその応答の程度に関する。他の一実施態様では、予測は、例えば特定の治療的薬剤による治療及び/又は原発性腫瘍の外科的切除、及び/又は癌の再発を伴わない一定期間の化学療法などの治療の後に患者が生存しているか改善しているかどうか、及び/又はその可能性に関する。本発明の予測方法は、任意の特定の患者のために最も好適な治療様式を選択することによって、治療決定を臨床的に行うことができる。本発明の予測方法は、患者が、治療投薬計画、例えば特定の治療剤や組み合わせの投与、外科的介入、化学療法などを含む特定の治療投薬計画に有利に応答するかどうか、又は治療投薬計画の後に患者が長期に生存しているかどうかを予測する際の有用なツールである。
【0026】
「細胞増殖性疾患」及び「増殖性疾患」は、無視できない程の異常な細胞増殖に関連した疾患を意味する。一実施態様において、細胞増殖性疾患は癌である。
本明細書中で用いる「腫瘍」なる用語は、悪性、良性を問わず全ての腫瘍性細胞成長及び増殖、及び全ての前癌性及び癌性細胞及び組織を意味する。「癌」、「癌性」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」及び「腫瘍」は、ここで述べられるように、相互に排他的ではない。
「癌」及び「癌性」は、一般的に、無秩序な細胞成長及び増殖により特徴付けられる哺乳動物の生理的状況を意味する。癌の例には、これに限定されないが、カルシノーマ、リンパ腫(例えばホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫及び白血病を含む。癌のより詳細な例は、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、腎細胞癌、消化管癌、胃癌、食道癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、メラノーマ、白血病及び他のリンパ球増殖性疾患、及び様々な型の頭部癌及び頸部癌が含まれる。
【0027】
「結腸直腸腫瘍」又は「結腸直腸癌」なる用語は、大腸(盲腸から直腸までの大腸(large intestine))および直腸を含む大腸(large bowel)の任意の腫瘍又は癌、例えば、腺癌およびリンパ腫および扁平上皮癌などのより一般的でない形態を指す。
「結腸直腸腫瘍細胞」又は「結腸直腸癌細胞」なる用語は、インビボ又はインビトロの、結腸直腸腫瘍細胞又は結腸直腸癌細胞を指し、このような細胞から得られる細胞株を包含する。
「大腸腫瘍」又は「大腸癌」なる用語は、大腸(盲腸から直腸までの大腸)の任意の腫瘍又は癌を指す。
「大腸腫瘍細胞」又は「大腸癌細胞」なる用語は、インビボ又はインビトロの、大腸腫瘍細胞又は大腸癌細胞を指し、このような細胞から得られる細胞株を包含する。
「胃腫瘍」又は「胃癌」なる用語は、例えば腺癌(例えば広汎性タイプおよび腸管のタイプ)および、リンパ腫、平滑筋肉腫および扁平上皮癌などのより一般的でない形態を含む、胃の任意の腫瘍又は癌を指す。
「胃腫瘍細胞」又は「胃癌細胞」なる用語は、インビボ又はインビトロの、胃腫瘍細胞又は胃癌細胞を指し、このような細胞から得られる細胞株を包含する。
【0028】
「胸部腫瘍」又は「乳癌」なる用語は、例えば腺癌、例えば浸潤性ないしは非浸潤性の腺管癌、浸潤性ないしは非浸潤性の小葉癌、髄質癌、膠質癌および乳頭癌;及び、cytosarcoma phylloides、肉腫、扁平上皮癌および癌肉腫などのより一般的でない形態を含む、胸部の任意の腫瘍又は癌を指す。
「胸部腫瘍細胞」又は「乳癌細胞」なる用語は、インビボ又はインビトロの、胸部腫瘍細胞又は乳癌細胞を指し、このような細胞から得られる細胞株を包含する。
「新生物」又は「腫瘍性細胞」は、対応する正常組織又は細胞よりも激しく増殖する、又は増殖を惹起する刺激の除去後にも増殖し続ける異常な組織又は細胞を指す。
「腫瘍細胞」又は「癌細胞」は、インビボ又はインビトロの腫瘍細胞又は癌細胞を指し、該細胞由来の細胞株を包含する。
【0029】
ここで使用される「治療」(及び「治療する」又は「治療している」などの変形)とは、治療される個体又は細胞の自然の経過を変化させる試みにおける臨床的介入を意味し、予防のため、又は臨床病理経過中に実施することができる。治療の所望する効果には、疾患の発症又は再発の予防、症状の緩和、疾病の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の減少、転移の予防、疾病の進行速度の低減、病状の回復又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。
「個体」、「被検体」又は「患者」は脊椎動物である。特定の実施態様では、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物には、これに限定されないが、家畜(例えばウシ)、スポーツ用動物、愛玩動物(例えばネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(ヒト及び非ヒト霊長類を含む)及び齧歯類(例えばマウス及びラット)が含まれる。特定の実施態様では、哺乳動物はヒトである。
【0030】
「有効量」とは、所望される治療的又は予防的結果を達成するのに必要な期間、必要な用量での有効量を意味する。
個体に所望する反応を引き出すための本発明の物質/分子の「治療的有効量」は、病状、年齢、性別、個体の体重、及び物質/分子の能力等の要因に応じて変わり得る。また、治療的有効量とは、物質/分子の任意の毒性又は有害な影響を、治療的に有益な効果が上回る量を含む。「予防的有効量」は、所望する予防的結果を達成するのに必要な期間、用量で有効な量を意味する。必ずではないが、典型的には、予防的用量は、疾病の前又は初期の段階に患者に使用されるために、予防的有効量は治療的有効量よりも少ない。
【0031】
本明細書中で用いる「長期の」生存なる用語は、治療的治療の後、少なくとも1年、5年、8年又は10年の生存を指す。
本発明に従って用いられる場合、特定の治療薬又は治療選択に対する「耐性の増加」なる用語は、薬剤の標準的な用量又は標準的な治療手順に対する応答の減少を意味する。
本発明に従って用いられる場合、特定の治療薬又は治療選択に対する「感受性の減少」なる用語は、薬剤の標準的な用量又は標準的な治療手順に対する応答の減少を意味し、この応答の減少は薬剤の用量や治療の強度を増やすことによって、(少なくとも部分的に)補われうるものである。
【0032】
「患者応答」は、限定するものではないが以下のものを含む患者に利益を示す任意のエンドポイントを使用して評価できる。(1)緩徐化及び完全な増殖停止を含む、ある程度の腫瘍増殖の阻害、(2)腫瘍細胞数の減少、(3)腫瘍サイズの減少、(4)近接する末梢器官及び/又は組織への腫瘍細胞浸潤の阻害(すなわち減少、緩徐化又は完全な停止)、(5)転移の阻害(すなわち減少、緩徐化又は完全な停止)、(6)必ずではないが腫瘍の退縮又は拒絶が生じ得る抗腫瘍免疫応答の亢進、(7)腫瘍と関連する一又は複数の症状の、ある程度の軽減、(8)治療後の生存期間の増加、及び/又は(9)治療後の特定の時点での死亡率の減少。
治療的薬剤に「応答する」腫瘍は、限定するものではないが、(1)緩徐化及び完全な成長停止を含む、腫瘍成長のある程度の阻害、(2)腫瘍細胞数の減少、(3)腫瘍サイズの減少、(4)隣接した末梢器官および/または組織への腫瘍細胞の浸潤の阻害(すなわち低減、緩徐化又は完全な中止)、および/または(5)転移の阻害(すなわち還元、緩徐化又は完全な中止)を含む腫瘍発達の任意の低減を示す腫瘍である。
【0033】
「アンタゴニスト」は最も広い意味で用いられ、ポリペプチド(例えばPRO)の生物学的活性(例えばキナーゼ活性)を部分的又は完全に阻害又は中和する、もしくはポリペプチドをコード化する核酸の転写又は翻訳を部分的又は完全に阻害するあらゆる分子が含まれる。好適なアンタゴニスト分子には、これに限定されないが、アンタゴニスト抗体、ポリペプチド断片、オリゴペプチド、有機分子(小分子を含む)及びアンチセンス核酸が含まれる。
「アゴニスト」は最も広い意味で用いられ、ポリペプチドの生物学的活性を部分的又は完全に模倣する、もしくはポリペプチドをコード化する核酸の転写又は翻訳を部分的又は完全に増加するあらゆる分子が含まれる。好適なアゴニスト分子には、これに限定されないが、アゴニスト抗体、ポリペプチド断片、オリゴペプチド、有機分子(小分子を含む)及びポリヌクレオチド、ポリペプチド及びポリペプチド−Fc融合物が含まれる。
【0034】
「PRO又はPROポリヌクレオチドを標的とする治療薬」は、PRO又はPROポリヌクレオチドの発現又は活性に影響する任意の薬剤を意味し、当業者に既知の治療薬及び後に開発される治療薬を含む、ここで述べられるPROアンタゴニストを含むが、これに限定されるものではない。
【0035】
ここで用いられる「細胞障害性剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞死又は破壊を生ずる物質を意味する。この用語は、放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位元素)、化学治療薬、例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤、酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素、抗生物質、及び毒素、例えばその断片及び/又は変異体を含む小分子毒素又は細菌、糸状菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素、そして下記に開示する種々の抗腫瘍又は抗癌剤を含むように意図されている。他の細胞毒性剤を以下に記載する。殺腫瘍性剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
「毒素」は、細胞の成長又は増殖に対して有害な影響を有する任意の物質である。
【0036】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商標登録))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビロール、MARINOL(登録商標));β−ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標)、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン、及び9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドゥオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えばAgnew, Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)参照);ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリンアナログ、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidainine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELIDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド類、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、ABRAXANETMパクリタキセルのクレモフォー無添加アルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)、及びTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲムシタビン(gemcitabine)(GEMZAR(登録商標));6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;プラチナアナログ、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標);プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボリン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド;カペシタビン(capecitabine)(XELODA(登録商標));及び上述したものの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体、並びに、上記のうちの2つ以上の組み合わせ、例えば、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略称)、及びFOLFOX(5−FU及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATINTM)を用いる治療計画の略称)が含まれる。
【0037】
またこの定義に含まれるものには、癌の増殖を促進するホルモンの影響を調節、低減、遮断又は阻害するように働く抗ホルモン剤で、多くの場合全身性の治療の形態のものがある。それらはそれ自体がホルモンであり、例えば抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びFARESTON(登録商標)トレミフェン;抗プロゲステロン;エストロゲンレセプター下方制御(ERD)、卵巣を抑制又は停止させる機能を有する薬剤、例えば、LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標)等の黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、リュープロリド酢酸塩、ゴセレリン酢酸塩、ブセレリン酢酸塩及びトリプトレリン;フルタミド、ニルタミド及びビカルタミド等のその他抗アンドロゲン;及び副腎のエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールを含む。加えて、このような化学療法剤の定義には、クロドロン酸等のビスホスホネート(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標)、DIDROCAL(登録商標)エチドロン酸、NE-58095、ZOMETA(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロン酸、FOSAMAX(登録商標)アレンドロン酸、AREDIA(登録商標)パミドロン酸、SKELID(登録商標)チルドロン酸、又はACTONEL(登録商標)リセドロン酸、並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に付着細胞の増殖に結びつくシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-α、Ralf、H-Ras、及び上皮成長因子受容体(EGF−R);THERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン等のワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ラパチニブditosylate(GW572016としても知られるErbB−2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤)及び上記のものの製薬的に許容される塩類、酸類又は誘導体を含む。
【0038】
ここで用いられる際の「増殖阻害剤」は、細胞(例えばPROを発現する細胞)の増殖をインビトロ又はインビボの何れかで阻害する化合物又は組成物を意味する。よって、増殖阻害剤は、S期で細胞(例えばTYK2を発現する細胞)の割合を有意に減少させるものである。増殖阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン類、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。またG1停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びアラ-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle regulation, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakami et al., (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)は、共にイチイに由来する抗癌剤である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、ローン・プーラン ローラー)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ブリストル-マイヤー スクウィブ)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体から微小管の集合を促進し、細胞の有糸分裂を阻害する結果となる脱重合を防ぐことによって微小管を安定化にする。
【0039】
「抗体」(Ab)及び「免疫グロブリン」(Ig)は、類似の構造的特徴を有する糖タンパク質を意味する。抗体は、特定の抗原に対して結合特異性を示すが、免疫グロブリンは、抗体と、一般に抗原特異性を欠く抗体様分子の双方を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えばリンパ系では低レベルで、骨髄腫では高レベルで産出される。
「抗体」及び「免疫グロブリン」なる用語は、最も広義で相互に交換可能に使用され、モノクローナル抗体(例えば、全長又は無傷のモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、一価抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、所望の生物活性を示す限り二重特異性抗体)が含まれ、さらにある種の抗体断片(ここに詳細に記載されるもの)も含まれ得る。抗体は、キメラ、ヒト、ヒト化及び/又は親和成熟したものであってよい。
【0040】
「抗PRO抗体」又は「PROに結合する抗体」は、抗体がPROをターゲッティングする際に診断用及び/又は治療用の薬剤として有用である程度に十分な親和性を有してPROを結合することが可能である抗体を指す。好ましくは、関係がなくPROでないタンパク質への抗PRO抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定するところの、PROへの抗体の結合のおよそ10%未満である。ある実施態様では、PROに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。ある実施態様では、抗PRO抗体は、異なる種のPRO間で保存されるPROのエピトープに結合する。
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、実質的にインタクトな形態の抗体を指し、以下に定義するような抗体断片は意味しない。この用語は、特にFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0041】
「抗体断片」はインタクトな抗体のある一部のみを含み、この部分は、インタクトな抗体に存在する場合に該部分に通常関連する機能の少なくとも一、できるだけ多く、又はすべてを保持する。一実施態様では、抗体断片は、インタクトな抗体の抗原結合部位を含み、ゆえに抗原を結合する能力を保持する。他の実施態様では、抗体断片、例えばFc領域を含むものは、インタクトな抗体に存在する場合にFc領域に通常関連する生物学的機能の少なくとも一、例えばFcRn結合、抗体半減期調節、ADCC機能および補体結合を保持する。一実施態様では、抗体断片は、インタクトな抗体と実質的に類似するインビボ半減期を有する一価抗体である。例えば、このような抗体断片は、断片にインビボ安定性を与えることが可能なFc配列に連結した抗原結合アームを含んでもよい。
【0042】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab')断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。ある実施態様では、二本鎖Fv種は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、一つの重鎖と一つの軽鎖の可変ドメインがフレキシブルなペプチドリンカーによって共有的に結合し、軽鎖と重鎖が二本鎖Fv種と類似の「二量体」構造で結合しうる。この構造では、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH−VL二量体の表面上に抗原結合部位を定める。集合的に、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
【0043】
またFab断片は、重鎖及び軽鎖の可変ドメインを含み、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が一つの遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。通常、scFvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはscFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。scFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照のこと。
【0044】
「ダイアボディ」なる用語は、2つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を指し、その断片は同一のポリペプチド鎖(VH−VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)が結合してなる。非常に短いために同一鎖上で2つのドメインの対形成が可能であるリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、2つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディは二価でも二特異性であってもよい。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号;国際公開第93/11161号;Hudson et al. (2003) Nat. Med. 9:129-134;及びHollinger et al., Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。トリアボディ及びテトラボディもまたHudson et al. (2003) Nat. Med. 9:129-134に記載されている。
【0045】
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在しうる可能性がある変異、例えば自然に生じる突然変異を除いて同一である。従って、「モノクローナル」との形容は、個別の抗体の混合物ではないという抗体の性質を示す。ある実施態様では、このようなモノクローナル抗体は、通常、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、この場合、標的に結合するポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスにより得られる。例えば、この選択プロセスは、雑種細胞クローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールのような複数のクローンからの、唯一のクローンの選択とすることができる。重要なのは、選択された標的結合配列を更に変化させることにより、例えば標的への親和性の向上、標的結合配列のヒト化、細胞培養液中におけるその産生の向上、インビボでの免疫原性の低減、多選択性抗体の生成等が可能になること、並びに、変化させた標的結合配列を含む抗体も、本発明のモノクローナル抗体であることである。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体の調製物とは異なり、モノクローナル抗体の調製物の各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体の調製物は、それらが他の免疫グロブリンで通常汚染されていないという点で有利である。
【0046】
「モノクローナル」との形容は、抗体の、実質的に均一な抗体の集団から得られたものであるという特性を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は様々な技術によって作製することができ、それらの技術には、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975);Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988);Hammerling et al.: Monoclonal Antibodies and T-Cell hybridomas 563-681 (Elsevier, N. Y., 1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1992);Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004);Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5);1073-1093 (2004);Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);及びLee et al., J. Immounol. Methods 284(1-2): 119-132 (2004))、並びに、ヒト免疫グロブリン座位の一部又は全部、或るいはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子を有する動物にヒト又はヒト様抗体を生成する技術(例えば、国際公開第98/24893号;国際公開第96/34096号;国際公開第96/33735号;国際公開第91/10741号;Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 2551 (1993);Jakobovits et al., Nature 362: 255-258 (1993);Bruggemann et al., Year in Immunol. 7:33 (1993);米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;同第5661016号; Marks et al., Bio.Technology 10: 779-783 (1992);Lonberg et al., Nature 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature 368: 812-813 (1994);Fishwild et al., Nature Biotechnol. 14: 845-851 (1996);Neuberger, Nature Biotechnol. 14: 826 (1996)及びLonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93 (1995)参照)が含まれる。
【0047】
ここでモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において、対応する配列に一致する又は類似する重鎖及び/又は軽鎖の一部であり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において、対応する配列に一致するか又は類似するものである(米国特許第4816567号;及びMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855(1984))。
【0048】
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。一実施態様では、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び/又は能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFRが、ヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも一又は典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、Jones et al., Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al., Nature 332:323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596(1992)を参照のこと。また次の文献とそこに引用されている文献を参考のこと:Vaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle及びGross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994)。
【0049】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を含むもの、及び/又はここに開示されたヒト抗体を作製する任意の技術を使用して製造されたものである。そのような技術には、ファージディスプレイのようなヒト由来組み合わせライブラリーのスクリーニング(Marks et al., J. Mol. Biol., 222: 581-597 (1991)及びHoogenboom et al., Nucl. Acids Res., 19: 4133-4137 (1991)参照);ヒトモノクローナル抗体産生のためのヒトミエローマ及びマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株の使用(Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987)及びBoerner et al., J. Immunol., 147: 86 (1991)参照);及び内因性の免疫グロブリンを産生しない、ヒト抗体の完全なレパートリーを産生可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)におけるモノクローナル抗体の生成(Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 90: 2551 (1993); Jakobovits et al., Nature, 362: 255 (1993); Bruggermann et al., Year in Immunol., 7: 33 (1993)参照)が含まれる。ヒト抗体のこの定義は、特に非ヒト動物由来の抗原結合残基を含むヒト化抗体を除く。
【0050】
「親和成熟」抗体とは、その改変を有していない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性に改良を生じさせる、その一又は複数のCDRにおいて一又は複数の改変を持つものである。一実施態様では、親和成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はピコモルの親和性を有する。親和成熟抗体は、当該分野において知られている手順によって生産される。Marks et al., Bio/Technology, 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和成熟について記載している。HVR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘導は、Barbas et al., Proc Nat Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier et al., Gene, 169:147-155(1995);Yelton et al., J. Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson et al., J. Immunol.154(7):3310-9(1995);及びHawkins et al., J. Mol. Biol.226:889-896(1992)に記載されている。
【0051】
「阻止(ブロック)抗体」又は「アンタゴニスト抗体」は、結合する抗原の生物学的活性を阻害するか又は低下させる抗体である。特定の阻止抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を、部分的又は完全に阻害する。
「小分子」又は「有機小分子」は、本明細書において500ダルトン以下の分子量を有する有機分子と定義される。
【0052】
「PRO結合オリゴペプチド」又は「PROに結合するオリゴペプチド」は、PROを標的とした診断薬及び/又は治療薬として有用な程度にPROと十分な親和性で結合可能なオリゴペプチドである。ある実施態様では、関連のない非PORタンパク質へのPRO結合オリゴペプチドの結合の程度は、PROへのPRO結合オリゴペプチドの結合の約10%より低く、その程度は例えば表面プラズモン共鳴アッセイにより測定される。ある実施態様では、PRO結合オリゴペプチドは、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。
「PRO結合有機分子」又は「PROに結合する有機分子」は、PROを標的とした診断薬及び/又は治療薬として有用な程度にPROと十分な親和性で結合可能な有機分子である。ある実施態様では、関連のない非PORタンパク質へのPRO結合有機分子の結合の程度は、PROへのPRO結合有機分子の結合の約10%より低く、その程度は例えば表面プラズモン共鳴アッセイにより測定される。ある実施態様では、PRO結合有機分子は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。
【0053】
標的ポリペプチドに結合する任意の分子の解離定数(Kd)は、便宜上表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定され得る。そのようなアッセイは、25℃で、〜10反応単位(RU)の固定した標的ポリペプチドCM5チップと共に、BIAcoreTM−2000又はBIAcoreTM−3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を用いてもよい。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, BIAcore Inc.)を、提供者の指示書に従ってN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化した。標的ポリペプチドを10mM 酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(〜0.2μM)に希釈し、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流速で注入した。標的ポリペプチドの注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入した。動力学的な測定のために、2倍の段階希釈した結合分子(0.78nMから500nM)を25℃、およそ25μl/分の流速で0.05%Tween20(PBST)を含むPBSに注入した。会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model) (BIAcore Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出した。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として算出した。Chen, Y. et al., (1999) J. Mol Biol 293:865-881を参照のこと。上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる抗体の結合速度が10−1−1を上回る場合、分光計、例えば、流動停止を備えた分光光度計(stop-flow equipped spectrophometer)(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、漸増濃度の抗原の存在下にて、PBS(pH7.2)、25℃の、20nMの抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)における増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて結合速度を測定することができる。
【0054】
「リポソーム」は、例えば薬剤などの剤を哺乳動物に送達するのに有用な、様々な型の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤から成る小さいベシクルである。リポソームの成分は、通常生体膜における脂質の配置と同様に、二重層構造に配置される。
本明細書で用いられる単語「標識」は、検出可能な化合物又は組成物を意味する。標識は、それ自体(例えば放射性同位元素標識又は蛍光標識)が検出可能であってもよく、酵素的な標識においては検出可能な生成物を生じる基質化合物又は組成物の触媒化学変化であってもよい。検出可能な標識としての機能を果たす放射性核種には、例えばI−131、I−123、I−125、Y−90、Re−188、Re−186、At−211、Cu−67、Bi−212及びPd−109が含まれる。
核酸、ポリペプチド又は抗体のような「単離された」生物学的分子は、少なくとも1つの自然環境の構成成分から同定及び分離、及び/又は回収されたものである。
【0055】
II. 特定の実施態様の説明
腫瘍の診断および治療のための方法および組成物が提供される。本発明の方法および組成物は、プロテインキナーゼにおける新規の腫瘍関連の変化の発見に少なくともある程度基づく。
本明細書中で示される変化(variation)は、癌及び/又は素因のバイオマーカーとして役立ち、又は腫瘍形成又は腫瘍促進に寄与する。したがって、本明細書において開示される変化は、例えば、癌診断および療法に関連する方法および組成物の様々な環境において有用である。
【0056】
A. TYK2変化
ある例では、ヒトTYK2遺伝子における新規の生殖細胞系突然変異が同定された。その突然変異によりTYK2にP1104A置換が生じる。プロリン1104はTYK2の触媒キナーゼドメイン内にあり、そのドメインはおよそアミノ酸897からおよそアミノ酸1176に伸長している。具体的には、P1104は、TYK2の基質-結合溝にあり、W1067およびP1105と密接に相互作用する。さらに本明細書において記述されるように、P1104又は相互作用する残基(一又は複数)の突然変異により、TYK2の活性化された、発癌性の形態となりうる。
【0057】
1. 組成物
一態様では、TYK2ポリヌクレオチドの断片を少なくとも含む単離されたポリヌクレオチドであって、該断片はTYK2のP1104、P1105又はW1067でアミノ酸変化を生じるヌクレオチド変化を含んでいる単離されたポリヌクレオチドが提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。本明細書中で指定するアミノ酸位は、配列番号:2に示されるヒトTYK2アミノ酸配列中のアミノ酸位を指す。また、所定のアミノ酸位は、配列番号:2の断片又は変異体(例えば対立遺伝子変異体又はスプライス変異体)において対応するアミノ酸位を指し、その位置は配列アラインメント又は同種の技術を使用して慣例的に同定されうる。
他の実施態様では、TYK2ポリヌクレオチドないしその断片は、配列番号:1ないし配列番号:1の断片の配列にヌクレオチド変化を含む。一実施態様では、配列番号:1の断片は、ヌクレオチド342−3905からの配列番号:1のコード領域である。他の実施態様では、ヌクレオチド変化はC3651G置換である。本明細書中で指定するヌクレオチド位置は、配列番号:1に示されるヒトTYK2ポリヌクレオチド配列内のヌクレオチド位置を指す。また、所定のヌクレオチド位は、配列番号:1の断片又は変異体(例えば対立遺伝子変異体又はスプライス変異体)において対応するヌクレオチド位を指し、その位置は配列アラインメント又は同種の技術を使用して慣例的に同定されうる。
【0058】
他の実施態様では、TYK2ポリヌクレオチドの断片は、少なくともおよそ10のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ15のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ20のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ30のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ40のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ50のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ60のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ70のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ80のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ90のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ100のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ110のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ120のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ130のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ140のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ150のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ160のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ170のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ180のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ190のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ200のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ250のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ300のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ350のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ400のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ450のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ500のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ600のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ700のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ800のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ900のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ1000のヌクレオチド長、あるいはおよそコード配列の完全長である。この文脈において、「およそ」なる用語は、参照したヌクレオチド配列の長さに参照した長さの±10%したものを意味する。他の実施態様では、TYK2ポリヌクレオチドは、配列番号:1ないしそのコード領域の核酸配列を含む。他の実施態様では、上記いずれかのポリヌクレオチドの相補鎖が提供される。他の実施態様では、上記いずれかのポリヌクレオチドによってコードされるTYK2が提供される。
【0059】
一実施態様では、本明細書において提供される単離されたポリヌクレオチドは、例えば、放射性同位体、蛍光剤又は色素生産性剤にて検出可能に標識される。他の実施態様では、単離されたポリヌクレオチドはプライマーである。他の実施態様では、単離されたポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド、例えばアレル特異的オリゴヌクレオチドである。他の実施態様では、オリゴヌクレオチドは、例えば、7−60のヌクレオチド長、9−45のヌクレオチド長、15−30のヌクレオチド長、又は18−25のヌクレオチド長であってもよい。他の実施態様では、オリゴヌクレオチドは、例えば、PNA、モルホリノ-ホスホラミデート、LNA又は2'−アルコキシアルコキシであってもよい。本明細書中に示すオリゴヌクレオチドは、例えば腫瘍に関連する変化を検出するためのハイブリダイゼーションプローブとして有用である。
【0060】
他の態様では、TYK2のP1104、P1105又はW1067でアミノ酸変化を起こすヌクレオチド変化(例えば置換)を含むTYK2ポリヌクレオチドの領域にハイブリダイズするアレル特異的オリゴヌクレオチドが提供される。アレル特異的オリゴヌクレオチドは、TYK2ポリヌクレオチドの領域にハイブリダイズした場合に、塩基がヌクレオチド変化と対になるヌクレオチドを含む。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、ヌクレオチド変化はC3651Gである。他の実施態様では、アレル特異的オリゴヌクレオチドの相補鎖が提供される。他の実施態様では、マイクロアレイは、アレル特異的オリゴヌクレオチドないしその相補鎖を含む。他の実施態様では、アレル特異的オリゴヌクレオチドないしその相補鎖はアレル特異的プライマーである。
【0061】
アレル特異的オリゴヌクレオチドは、該アレル特異的オリゴヌクレオチドと同一であるコントロールオリゴヌクレオチドとともに用いられ得、このとき、ヌクレオチド変化と特異的に塩基対形成するヌクレオチドが、野生型TYK2ポリヌクレオチドに存在する対応するヌクレオチドと特異的に塩基対形成するヌクレオチドに置換されている点で異なる。このようなオリゴヌクレオチドは、該オリゴヌクレオチドが、ヌクレオチド変化を含むTYK2ポリヌクレオチドと対応する野生型ヌクレオチドを含むTYK2ポリヌクレオチドとを区別することが可能なハイブリダイゼーション条件下で競合的結合アッセイに用いられてもよい。例えばオリゴヌクレオチドの長さおよび塩基組成に基づく慣例的な方法を用いて、当業者は、(a)アレル特異的オリゴヌクレオチドが野生型TYK2ポリヌクレオチドと比較してヌクレオチド変化を含むTYK2ポリヌクレオチドに選択的に結合し、(b)コントロールオリゴヌクレオチドがヌクレオチド変化を含むTYK2ポリヌクレオチドと比較して野生型TYK2ポリヌクレオチドに選択的に結合する、適切なハイブリダイゼーション条件に想到することができる。例示的な条件には、高いストリンジェンシーの条件、例えば55℃で5×標準生理食塩リン酸塩EDTA(SSPE)および0.5%NaDodSO(SDS)でハイブリダイゼーションした後、55℃又は室温で2×SSPEおよび0.1%SDSにて洗浄するハイブリダイゼーション条件が含まれる。
【0062】
他の態様では、野生型TYK2ポリヌクレオチドによってコードされるTYK2と比較して、P1104、P1105又はW1067でアミノ酸変化を含むTYK2に選択的に結合する結合剤が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、結合剤は抗体である。他の実施態様では、結合剤は、P1104、P1105又はW1067にアミノ酸変化を含むTYK2を結合するオリゴペプチドである。
他の態様では、診断用キットが提供される。一実施態様では、キットは前述のいずれかのポリヌクレオチドおよび酵素を具備する。一実施態様では、酵素は、ヌクレアーゼ、リガーゼおよびポリメラーゼから選択される少なくとも一の酵素である。
【0063】
2. 方法
一態様では、患者から得られる生体試料において腫瘍の存在を検出する方法であって、生体試料中のTYK2の触媒キナーゼドメインにおけるアミノ酸変化を検出することを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化は、P1104、P1105又はW1067で起こる。アミノ酸変化の検出には、直接(例えば、対応する野生型ポリペプチドと比較してアミノ酸変化を含むポリペプチドを選択的に認識する、又はその逆の抗体を用いて)又は、間接的に(例えば、アミノ酸変化を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにおいてヌクレオチド変化を検出することによって)アミノ酸変化を検出することが包含される。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、アミノ酸変化は、アミノ酸変化が生じる生体試料中のヌクレオチド変化を検出することによって検出される。そのような実施態様では、ヌクレオチド変化はC3651G置換である。別の実施態様では、ヌクレオチド変化は、配列番号:1ないしそのコード領域におけるヌクレオチド変化を含む。他の実施態様では、生体試料は、生検(例えば癌であることが疑われる細胞を含有する組織試料)である。他の実施態様では、腫瘍は、胸部、大腸又は胃の腫瘍である。
【0064】
他の態様では、患者の腫瘍を診断する方法であって、患者から得られる生体試料中のTYK2の触媒キナーゼドメインにおいてアミノ酸変化の存在を検出することを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化は、P1104、P1105又はW1067で起こる。他の実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、生体試料は、腫瘍細胞を含む、又は含むことが疑われるものである。そのような実施態様では、腫瘍細胞は、胸部、大腸又は胃の腫瘍細胞から選択される。他の実施態様では、アミノ酸変化は、アミノ酸変化が生じる生体試料においてヌクレオチド変化を検出することによって検出される。そのような実施態様では、ヌクレオチド変化は、C3651G置換である。他の実施態様では、ヌクレオチド変化は、配列番号:1ないしそのコード領域にヌクレオチド変化を含む。
【0065】
他の態様では、患者の腫瘍がTYK2又はTYK2ポリヌクレオチドを標的とする治療薬に応答するか否かを決定するための方法であって、患者から得られた生体試料中のTYK2の触媒キナーゼドメインにおけるアミノ酸変化の有無を検出することを含み、このときアミノ酸変化の存在により、腫瘍が該治療薬に応答することが示唆される方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104、P1105又はW1067で起こる。そのような実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、アミノ酸変化は、生体試料から得られるTYK2ポリヌクレオチドにおいて、アミノ酸変化が生じるヌクレオチド変化を検出することによって検出される。そのような実施態様では、ヌクレオチド変化はC3651G置換である。他の実施態様では、TYK2ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド変化は、配列番号:1ないしそのコード領域にヌクレオチド変化を含む。他の実施態様では、腫瘍は、胸部、大腸又は胃の腫瘍である。
【0066】
他の態様では、生体試料中のTYK2のP1104、P1105又はW1067でのアミノ酸変化の有無を検出する方法であって、(a)上記いずれかのポリヌクレオチドと生体試料から得た核酸とのハイブリダイゼーション複合体の形成に適切な条件下で、上記いずれかのポリヌクレオチドに生体試料から得た核酸を接触させ、そして、(b)該核酸中の少なくとも一のヌクレオチドがハイブリダイゼーション複合体中のポリヌクレオチドと特異的に塩基対を形成するか否かを検出することを含み、このとき少なくとも一のヌクレオチドがアミノ酸変化を生じるヌクレオチド変化を含むことが予測され、特定の塩基対形成の存在からアミノ酸変化の存在が示される方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、ヌクレオチド変化はC3651G置換である。他の実施態様では、ヌクレオチド変化は、配列番号:1ないしその断片にヌクレオチド変化を含む。
【0067】
他の態様では、生体試料中のTYK2のP1104、P1105又はW1067でのアミノ酸変化の有無を検出する方法であって、(a)核酸に対するアレル特異的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに適切な条件下で、アミノ酸変化を起こすヌクレオチド変化に特異的であるアレル特異的オリゴヌクレオチドに、生体試料から得た核酸を接触させ、そして、(b)アレル特異的ハイブリダイゼーションの有無を検出することを含み、アレル特異的ハイブリダイゼーションの存在がアミノ酸変化の存在を示す方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、ヌクレオチド変化はC3651G置換である。他の実施態様では、ヌクレオチド変化は、配列番号:1ないしその断片にヌクレオチド変化を含む。他の実施態様では、アレル特異的オリゴヌクレオチドは、アレル特異的プライマーである。
【0068】
他の態様では、ヌクレオチド変化を含む核酸を増幅する方法であって、該ヌクレオチド変化によりTYK2のP1104、P1105又はW1067でアミノ酸変化が生じるものであり、(a)ヌクレオチド変化の3'配列にハイブリダイズするプライマーに該核酸を接触させ、そして(b)プライマーを伸長させてヌクレオチド変化を含む増幅産物を生成することを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、ヌクレオチド変化はC3651G置換である。他の実施態様では、核酸は、配列番号:1ないしその断片にヌクレオチド変化を含む。他の実施態様では、該方法はさらに、ヌクレオチド変化の配列3'にハイブリダイズする二次プライマーと増幅産物を接触させ、二次プライマーを伸長させて二次増幅産物を生成することを含む。そのような実施態様では、該方法はさらに、例えばPCRによって増幅産物および二次増幅産物を増幅することを含む。
【0069】
他の態様では、TYK2の活性を評価する方法であって、(a)P1104、P1105又はW1067にアミノ酸変化を含むTYK2の活性を決定し、そして、(b)そのTYK2の活性を野生型TYK2の活性と比較することを含む方法が提供される。一実施態様では、活性はキナーゼ活性である。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。
他の態様では、腫瘍の治療のための薬剤を同定する方法であって、(a)P1104、P1105又はW1067にアミノ酸変化を含むTYK2を試験薬と接触させ、そして、(b)試験薬が存在する場合のTYK2の活性を、試験薬が存在しない場合のTYK2の活性によって評価することを含み、試験薬が存在する場合にTYK2の活性が減少することにより、試験薬が腫瘍の治療のための薬剤であることが示される方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、腫瘍は、胸部、大腸又は胃の腫瘍である。
他の態様では、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、腫瘍細胞は触媒キナーゼドメインにアミノ酸変化を有するTYK2を含むものであり、腫瘍細胞をTYK2のアンタゴニストにさらすことを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はP1104、P1105又はW1067で起こる。他の実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、腫瘍細胞は、胸部、大腸又は胃の腫瘍細胞である。他の実施態様では、TYK2のアンタゴニストは小分子アンタゴニストである。他の実施態様では、TYK2のアンタゴニストはアンタゴニスト抗体である。他の実施態様では、方法はさらに、腫瘍細胞を細胞障害性薬、化学療法薬又は増殖阻害性薬にさらすことを含む。
【0070】
様々なキナーゼアンタゴニストが当分野で公知である。このようなキナーゼアンタゴニストには、限定するものではないが、アンタゴニスト抗体および小分子アンタゴニスト、例えば3-[2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデン]−インドリン−2−オン(「SU5416」);イマチニブ(Gleevec(登録商標))、2−フェニルアミノピリミジン;1−tert−ブチル−3−[6(3,5−ジメトキシ−フェニル)−2−(4−ジメチルアミノ−ブチルアミノ)−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−ウレア(「PD173074」)(例としてMoffa et al. (2004) Mol. Cancer Res. 2: 643-652を参照);及び、3−[3−(2−カルボキシエチル)−4−メチルピロール−2−メチリデニル]−2−インドリノン(「SU5402」)などのインドリノン類(例としてBernard-Pierrot (2004) Oncogene 23:9201-9211を参照)が含まれる。
特に、Jakキナーゼの特定の小分子アンタゴニストが当分野で公知である。このようなJakキナーゼの小分子アンタゴニストには、限定するものではないが、ZM449829、ZM39923、インディルビン、WHI−P131、PP1、TDZD−8、メタ−ヒドロキシベンジルアミド インドール(2k)、チロホスチン25(A25)及びAG490(Luo et al. (2004) Drug Discovery Today 9:268-275中において検討される)(化学構造については図1を参照のこと)が含まれる。
【0071】
他の態様では、触媒キナーゼドメインにアミノ酸変化を有するTYK2を含む腫瘍を治療する方法であって、腫瘍を有する患者にTYK2のアンタゴニストを含有する製薬製剤の有効量を投与することを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化は、P1104、P1105又はW1067で起こる。他の実施態様では、アミノ酸変化はP1104でのアミノ酸置換である。そのような実施態様では、アミノ酸置換はP1104Aである。他の実施態様では、腫瘍は、胸部、大腸又は胃の腫瘍である。他の実施態様では、TYK2のアンタゴニストは小分子アンタゴニストである。他の実施態様では、TYK2のアンタゴニストはアンタゴニスト抗体である。他の実施態様では、方法はさらに、患者に細胞障害性薬、化学療法薬又は増殖阻害性薬を投与することを含む。
【0072】
B. MAST2変化
他の例では、ヒト微小管に関連するセリン/スレオニンキナーゼ2(MAST2)遺伝子における突然変異が同定された。その突然変異によりMAST2にV1304M置換が生じる。
【0073】
1. 組成物
一態様では、MAST2ポリヌクレオチドの断片を少なくとも含む単離されたポリヌクレオチドであって、該断片はMAST2のV1304でアミノ酸変化を生じるヌクレオチド変化を含んでいる単離されたポリヌクレオチドが提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はV1304M置換である。本明細書中で指定する位置は、配列番号:4に示されるヒトMAST2アミノ酸配列中のアミノ酸位を指す。また、所定のアミノ酸位は、配列番号:4の断片又は変異体(例えば対立遺伝子変異体又はスプライス変異体)において対応するアミノ酸位を指し、その位置は配列アラインメント又は同種の技術を使用して慣例的に同定されうる。
他の実施態様では、MAST2ポリヌクレオチドないしその断片は、配列番号:3ないし配列番号:3の断片の配列にヌクレオチド変化を含む。一実施態様では、配列番号:3の断片は、ヌクレオチド258−5651からの配列番号:3のコード領域である。
【0074】
他の実施態様では、MAST2ポリヌクレオチドの断片は、少なくともおよそ10のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ15のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ20のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ30のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ40のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ50のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ60のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ70のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ80のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ90のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ100のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ110のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ120のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ130のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ140のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ150のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ160のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ170のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ180のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ190のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ200のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ250のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ300のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ350のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ400のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ450のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ500のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ600のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ700のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ800のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ900のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ1000のヌクレオチド長、あるいはおよそコード配列の完全長である。この文脈において、「およそ」なる用語は、参照したヌクレオチド配列の長さに参照した長さの±10%したものを意味する。他の実施態様では、MAST2ポリヌクレオチドは、配列番号:3ないしそのコード領域の核酸配列を含む。他の実施態様では、上記いずれかのポリヌクレオチドの相補鎖が提供される。他の実施態様では、上記いずれかのポリヌクレオチドによってコードされるMAST2が提供される。
【0075】
一実施態様では、本明細書において提供される単離されたポリヌクレオチドは、例えば、放射性同位体、蛍光剤又は色素生産性剤にて検出可能に標識される。他の実施態様では、単離されたポリヌクレオチドはプライマーである。他の実施態様では、単離されたポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド、例えばアレル特異的オリゴヌクレオチドである。他の実施態様では、オリゴヌクレオチドは、例えば、7−60のヌクレオチド長、9−45のヌクレオチド長、15−30のヌクレオチド長、又は18−25のヌクレオチド長であってもよい。他の実施態様では、オリゴヌクレオチドは、例えば、PNA、モルホリノ-ホスホラミデート、LNA又は2'−アルコキシアルコキシであってもよい。本明細書中に示すオリゴヌクレオチドは、例えば腫瘍に関連する変化を検出するためのハイブリダイゼーションプローブとして有用である。
【0076】
他の態様では、MAST2のV1304でアミノ酸変化を起こすヌクレオチド変化(例えば置換)を含むMAST2ポリヌクレオチドの領域にハイブリダイズするアレル特異的オリゴヌクレオチドが提供される。アレル特異的オリゴヌクレオチドは、MAST2ポリヌクレオチドの領域にハイブリダイズした場合に、塩基がヌクレオチド変化と対になるヌクレオチドを含む。一実施態様では、アミノ酸変化はV1304M置換である。他の実施態様では、アレル特異的オリゴヌクレオチドの相補鎖が提供される。他の実施態様では、マイクロアレイは、アレル特異的オリゴヌクレオチドないしその相補鎖を含む。他の実施態様では、アレル特異的オリゴヌクレオチドないしその相補鎖はアレル特異的プライマーである。
【0077】
アレル特異的オリゴヌクレオチドは、該アレル特異的オリゴヌクレオチドと同一であるコントロールオリゴヌクレオチドとともに用いられ得、このとき、ヌクレオチド変化と特異的に塩基対形成するヌクレオチドが、野生型MAST2ポリヌクレオチドに存在する対応するヌクレオチドと特異的に塩基対形成するヌクレオチドに置換されている点で異なる。このようなオリゴヌクレオチドは、該オリゴヌクレオチドが、ヌクレオチド変化を含むMAST2ポリヌクレオチドと対応する野生型ヌクレオチドを含むMAST2ポリヌクレオチドとを区別することが可能なハイブリダイゼーション条件下で競合的結合アッセイに用いられてもよい。例えばオリゴヌクレオチドの長さおよび塩基組成に基づく慣例的な方法を用いて、当業者は、(a)アレル特異的オリゴヌクレオチドが野生型MAST2ポリヌクレオチドと比較してヌクレオチド変化を含むMAST2ポリヌクレオチドに選択的に結合し、(b)コントロールオリゴヌクレオチドがヌクレオチド変化を含むMAST2ポリヌクレオチドと比較して野生型MAST2ポリヌクレオチドに選択的に結合する、適切なハイブリダイゼーション条件に想到することができる。例示的な条件には、高いストリンジェンシーの条件、例えば55℃で5×標準生理食塩リン酸塩EDTA(SSPE)および0.5%NaDodSO(SDS)でハイブリダイゼーションした後、55℃又は室温で2×SSPEおよび0.1%SDSにて洗浄するハイブリダイゼーション条件が含まれる。
【0078】
他の態様では、野生型MAST2ポリヌクレオチドによってコードされるMAST2と比較して、V1304でアミノ酸変化を含むMAST2に選択的に結合する結合剤が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はV1304M置換である。他の実施態様では、結合剤は抗体である。他の実施態様では、結合剤は、V1304にアミノ酸変化を含むMAST2を結合するオリゴペプチドである。
他の態様では、診断用キットが提供される。一実施態様では、キットは前述のいずれかのポリヌクレオチドおよび酵素を具備する。一実施態様では、酵素は、ヌクレアーゼ、リガーゼおよびポリメラーゼから選択される少なくとも一の酵素である。
【0079】
2. 方法
一態様では、患者から得られる生体試料において腫瘍の存在を検出する方法であって、生体試料中のMAST2のV1304でのアミノ酸変化を検出することを含む方法が提供される。アミノ酸変化の検出には、直接(例えば、対応する野生型ポリペプチドと比較してアミノ酸変化を含むポリペプチドを選択的に認識する、又はその逆の抗体を用いて)又は、間接的に(例えば、アミノ酸変化を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにおいてヌクレオチド変化を検出することによって)アミノ酸変化を検出することが包含される。一実施態様では、アミノ酸変化はV1304M置換である。他の実施態様では、アミノ酸変化は、アミノ酸変化が生じる生体試料中のヌクレオチド変化を検出することによって検出される。そのような実施態様では、ヌクレオチド変化は、配列番号:3ないしそのコード領域におけるヌクレオチド変化を含む。他の実施態様では、生体試料は、生検(例えば癌であることが疑われる細胞を含有する組織試料)である。
【0080】
他の態様では、患者の腫瘍を診断する方法であって、患者から得られる生体試料中のMAST2のV1304でのアミノ酸変化の存在を検出することを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸置換はV1304M置換である。他の実施態様では、生体試料は、腫瘍細胞を含む、又は含むことが疑われるものである。他の実施態様では、アミノ酸変化は、アミノ酸変化が生じる生体試料においてヌクレオチド変化を検出することによって検出される。そのような実施態様では、ヌクレオチド変化は、配列番号:3ないしそのコード領域にヌクレオチド変化を含む。
【0081】
他の態様では、患者の腫瘍がMAST2又はMAST2ポリヌクレオチドを標的とする治療薬に応答するか否かを決定するための方法であって、患者から得られた生体試料中のMAST2のV1304でのアミノ酸変化の有無を検出することを含み、このときアミノ酸変化の存在により、腫瘍が該治療薬に応答することが示唆される方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸置換はV1304M置換である。他の実施態様では、アミノ酸変化は、生体試料から得られるMAST2ポリヌクレオチドにおいて、アミノ酸変化が生じるヌクレオチド変化を検出することによって検出される。そのような実施態様では、ヌクレオチド変化は、配列番号:3ないしそのコード領域にヌクレオチド変化を含む。
【0082】
他の態様では、生体試料中のMAST2のV1304でのアミノ酸変化の有無を検出する方法であって、(a)上記いずれかのポリヌクレオチドと生体試料から得た核酸とのハイブリダイゼーション複合体の形成に適切な条件下で、上記いずれかのポリヌクレオチドに生体試料から得た核酸を接触させ、そして、(b)該核酸中の少なくとも一のヌクレオチドがハイブリダイゼーション複合体中のポリヌクレオチドと特異的に塩基対を形成するか否かを検出することを含み、このとき少なくとも一のヌクレオチドがアミノ酸変化を生じるヌクレオチド変化を含むことが予測され、特定の塩基対形成の存在からアミノ酸変化の存在が示される方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はV1304M置換である。そのような実施態様では、ヌクレオチド変化は、配列番号:3ないしその断片にヌクレオチド変化を含む。
【0083】
他の態様では、生体試料中のMAST2のV1304でのアミノ酸変化の有無を検出する方法であって、(a)核酸に対するアレル特異的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに適切な条件下で、アミノ酸変化を起こすヌクレオチド変化に特異的であるアレル特異的オリゴヌクレオチドに、生体試料から得た核酸を接触させ、そして、(b)アレル特異的ハイブリダイゼーションの有無を検出することを含み、アレル特異的ハイブリダイゼーションの存在がアミノ酸変化の存在を示す方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はV1304M置換である。他の実施態様では、ヌクレオチド変化は、配列番号:3ないしその断片にヌクレオチド変化を含む。他の実施態様では、アレル特異的オリゴヌクレオチドは、アレル特異的プライマーである。
【0084】
他の態様では、ヌクレオチド変化を含む核酸を増幅する方法であって、該ヌクレオチド変化によりMAST2のV1304でアミノ酸変化が生じるものであり、(a)ヌクレオチド変化の3'配列にハイブリダイズするプライマーに該核酸を接触させ、そして(b)プライマーを伸長させてヌクレオチド変化を含む増幅産物を生成することを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はV1304M置換である。他の実施態様では、核酸は、配列番号:3ないしその断片にヌクレオチド変化を含む。他の実施態様では、該方法はさらに、ヌクレオチド変化の配列3'にハイブリダイズする二次プライマーと増幅産物を接触させ、二次プライマーを伸長させて二次増幅産物を生成することを含む。そのような実施態様では、該方法はさらに、例えばPCRによって増幅産物および二次増幅産物を増幅することを含む。
【0085】
他の態様では、MAST2の活性を評価する方法であって、(a)V1304にアミノ酸変化を含むMAST2の活性を決定し、そして、(b)そのMAST2の活性を野生型MAST2の活性と比較することを含む方法が提供される。一実施態様では、活性はキナーゼ活性である。一実施態様では、アミノ酸変化はV1304M置換である。
他の態様では、腫瘍の治療のための薬剤を同定する方法であって、(a)V1304にアミノ酸変化を含むMAST2を試験薬と接触させ、そして、(b)試験薬が存在する場合のMAST2の活性を、試験薬が存在しない場合のMAST2の活性によって評価することを含み、試験薬が存在する場合にMAST2の活性が減少することにより、試験薬が腫瘍の治療のための薬剤であることが示される方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はV1304M置換である。
他の態様では、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、腫瘍細胞はV1304にアミノ酸変化を有するMAST2を含むものであり、腫瘍細胞をMAST2のアンタゴニストにさらすことを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はV1304M置換である。他の実施態様では、MAST2のアンタゴニストは小分子アンタゴニストである。他の実施態様では、MAST2のアンタゴニストはアンタゴニスト抗体である。他の実施態様では、方法はさらに、腫瘍細胞を細胞障害性薬、化学療法薬又は増殖阻害性薬にさらすことを含む。
【0086】
様々なキナーゼアンタゴニストが当分野で公知である。このようなキナーゼアンタゴニストには、限定するものではないが、アンタゴニスト抗体および小分子アンタゴニスト、例えば3-[2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデン]−インドリン−2−オン(「SU5416」);イマチニブ(Gleevec(登録商標))、2−フェニルアミノピリミジン;1−tert−ブチル−3−[6(3,5−ジメトキシ−フェニル)−2−(4−ジメチルアミノ−ブチルアミノ)−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−ウレア(「PD173074」)(例としてMoffa et al. (2004) Mol. Cancer Res. 2: 643-652を参照);及び、3−[3−(2−カルボキシエチル)−4−メチルピロール−2−メチリデニル]−2−インドリノン(「SU5402」)などのインドリノン類(例としてBernard-Pierrot (2004) Oncogene 23:9201-9211を参照)が含まれる。
【0087】
他の態様では、V1304にアミノ酸変化を有するMAST2を含む腫瘍を治療する方法であって、腫瘍を有する患者にMAST2のアンタゴニストを含有する製薬製剤の有効量を投与することを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はV1304M置換である。他の実施態様では、MAST2のアンタゴニストは小分子アンタゴニストである。他の実施態様では、MAST2のアンタゴニストはアンタゴニスト抗体である。他の実施態様では、方法はさらに、患者に細胞障害性薬、化学療法薬又は増殖阻害性薬を投与することを含む。
【0088】
C. RIOK2変化
他の例では、セリン−スレオニンプロテインキナーゼRIOK2(RIOK2)遺伝子における突然変異が同定された。その突然変異によりRIOK2にY11H置換が生じる。
【0089】
1. 組成物
一態様では、RIOK2ポリヌクレオチドの断片を少なくとも含む単離されたポリヌクレオチドであって、該断片はRIOK2のY11でアミノ酸変化を生じるヌクレオチド変化を含んでいる単離されたポリヌクレオチドが提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はY11H置換である。本明細書中で指定する位置は、配列番号:6に示されるヒトRIOK2アミノ酸配列中のアミノ酸位を指す。また、所定のアミノ酸位は、配列番号:6の断片又は変異体(例えば対立遺伝子変異体又はスプライス変異体)において対応するアミノ酸位を指し、その位置は配列アラインメント又は同種の技術を使用して慣例的に同定されうる。 他の実施態様では、RIOK2ポリヌクレオチドないしその断片は、配列番号:5ないし配列番号:5の断片の配列にヌクレオチド変化を含む。一実施態様では、配列番号:5の断片は、ヌクレオチド50−1708からの配列番号:5のコード領域である。
【0090】
他の実施態様では、RIOK2ポリヌクレオチドの断片は、少なくともおよそ10のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ15のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ20のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ30のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ40のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ50のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ60のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ70のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ80のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ90のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ100のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ110のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ120のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ130のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ140のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ150のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ160のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ170のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ180のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ190のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ200のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ250のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ300のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ350のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ400のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ450のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ500のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ600のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ700のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ800のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ900のヌクレオチド長、あるいは少なくともおよそ1000のヌクレオチド長、あるいはおよそコード配列の完全長である。この文脈において、「およそ」なる用語は、参照したヌクレオチド配列の長さに参照した長さの±10%したものを意味する。他の実施態様では、RIOK2ポリヌクレオチドは、配列番号:5ないしそのコード領域の核酸配列を含む。他の実施態様では、上記いずれかのポリヌクレオチドの相補鎖が提供される。他の実施態様では、上記いずれかのポリヌクレオチドによってコードされるRIOK2が提供される。
【0091】
一実施態様では、本明細書において提供される単離されたポリヌクレオチドは、例えば、放射性同位体、蛍光剤又は色素生産性剤にて検出可能に標識される。他の実施態様では、単離されたポリヌクレオチドはプライマーである。他の実施態様では、単離されたポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド、例えばアレル特異的オリゴヌクレオチドである。他の実施態様では、オリゴヌクレオチドは、例えば、7−60のヌクレオチド長、9−45のヌクレオチド長、15−30のヌクレオチド長、又は18−25のヌクレオチド長であってもよい。他の実施態様では、オリゴヌクレオチドは、例えば、PNA、モルホリノ-ホスホラミデート、LNA又は2'−アルコキシアルコキシであってもよい。本明細書中に示すオリゴヌクレオチドは、例えば腫瘍に関連する変化を検出するためのハイブリダイゼーションプローブとして有用である。
【0092】
他の態様では、RIOK2のY11でアミノ酸変化を起こすヌクレオチド変化(例えば置換)を含むRIOK2ポリヌクレオチドの領域にハイブリダイズするアレル特異的オリゴヌクレオチドが提供される。アレル特異的オリゴヌクレオチドは、RIOK2ポリヌクレオチドの領域にハイブリダイズした場合に、塩基がヌクレオチド変化と対になるヌクレオチドを含む。一実施態様では、アミノ酸変化はY11H置換である。他の実施態様では、アレル特異的オリゴヌクレオチドの相補鎖が提供される。他の実施態様では、マイクロアレイは、アレル特異的オリゴヌクレオチドないしその相補鎖を含む。他の実施態様では、アレル特異的オリゴヌクレオチドないしその相補鎖はアレル特異的プライマーである。
【0093】
アレル特異的オリゴヌクレオチドは、該アレル特異的オリゴヌクレオチドと同一であるコントロールオリゴヌクレオチドとともに用いられ得、このとき、ヌクレオチド変化と特異的に塩基対形成するヌクレオチドが、野生型RIOK2ポリヌクレオチドに存在する対応するヌクレオチドと特異的に塩基対形成するヌクレオチドに置換されている点で異なる。このようなオリゴヌクレオチドは、該オリゴヌクレオチドが、ヌクレオチド変化を含むRIOK2ポリヌクレオチドと対応する野生型ヌクレオチドを含むRIOK2ポリヌクレオチドとを区別することが可能なハイブリダイゼーション条件下で競合的結合アッセイに用いられてもよい。例えばオリゴヌクレオチドの長さおよび塩基組成に基づく慣例的な方法を用いて、当業者は、(a)アレル特異的オリゴヌクレオチドが野生型RIOK2ポリヌクレオチドと比較してヌクレオチド変化を含むRIOK2ポリヌクレオチドに選択的に結合し、(b)コントロールオリゴヌクレオチドがヌクレオチド変化を含むRIOK2ポリヌクレオチドと比較して野生型RIOK2ポリヌクレオチドに選択的に結合する、適切なハイブリダイゼーション条件に想到することができる。例示的な条件には、高いストリンジェンシーの条件、例えば55℃で5×標準生理食塩リン酸塩EDTA(SSPE)および0.5%NaDodSO(SDS)でハイブリダイゼーションした後、55℃又は室温で2×SSPEおよび0.1%SDSにて洗浄するハイブリダイゼーション条件が含まれる。
【0094】
他の態様では、野生型RIOK2ポリヌクレオチドによってコードされるRIOK2と比較して、Y11でアミノ酸変化を含むRIOK2に選択的に結合する結合剤が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はY11H置換である。他の実施態様では、結合剤は抗体である。他の実施態様では、結合剤は、Y11にアミノ酸変化を含むRIOK2を結合するオリゴペプチドである。
他の態様では、診断用キットが提供される。一実施態様では、キットは前述のいずれかのポリヌクレオチドおよび酵素を具備する。一実施態様では、酵素は、ヌクレアーゼ、リガーゼおよびポリメラーゼから選択される少なくとも一の酵素である。
【0095】
2. 方法
一態様では、患者から得られる生体試料において腫瘍の存在を検出する方法であって、生体試料中のRIOK2のY11でのアミノ酸変化を検出することを含む方法が提供される。アミノ酸変化の検出には、直接(例えば、対応する野生型ポリペプチドと比較してアミノ酸変化を含むポリペプチドを選択的に認識する、又はその逆の抗体を用いて)又は、間接的に(例えば、アミノ酸変化を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにおいてヌクレオチド変化を検出することによって)アミノ酸変化を検出することが包含される。一実施態様では、アミノ酸変化はY11H置換である。他の実施態様では、アミノ酸変化は、アミノ酸変化が生じる生体試料中のヌクレオチド変化を検出することによって検出される。そのような実施態様では、ヌクレオチド変化は、配列番号:5ないしそのコード領域におけるヌクレオチド変化を含む。他の実施態様では、生体試料は、生検(例えば癌であることが疑われる細胞を含有する組織試料)である。
【0096】
他の態様では、患者の腫瘍を診断する方法であって、患者から得られる生体試料中のRIOK2のY11でのアミノ酸変化の存在を検出することを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸置換はY11H置換である。他の実施態様では、生体試料は、腫瘍細胞を含む、又は含むことが疑われるものである。他の実施態様では、アミノ酸変化は、アミノ酸変化が生じる生体試料においてヌクレオチド変化を検出することによって検出される。そのような実施態様では、ヌクレオチド変化は、配列番号:5ないしそのコード領域にヌクレオチド変化を含む。
【0097】
他の態様では、患者の腫瘍がRIOK2又はRIOK2ポリヌクレオチドを標的とする治療薬に応答するか否かを決定するための方法であって、患者から得られた生体試料中のRIOK2のY11でのアミノ酸変化の有無を検出することを含み、このときアミノ酸変化の存在により、腫瘍が該治療薬に応答することが示唆される方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸置換はY11H置換である。他の実施態様では、アミノ酸変化は、生体試料から得られるRIOK2ポリヌクレオチドにおいて、アミノ酸変化が生じるヌクレオチド変化を検出することによって検出される。そのような実施態様では、RIOK2ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド変化は、配列番号:5ないしそのコード領域にヌクレオチド変化を含む。
【0098】
他の態様では、生体試料中のRIOK2のY11でのアミノ酸変化の有無を検出する方法であって、(a)上記いずれかのポリヌクレオチドと生体試料から得た核酸とのハイブリダイゼーション複合体の形成に適切な条件下で、上記いずれかのポリヌクレオチドに生体試料から得た核酸を接触させ、そして、(b)該核酸中の少なくとも一のヌクレオチドがハイブリダイゼーション複合体中のポリヌクレオチドと特異的に塩基対を形成するか否かを検出することを含み、このとき少なくとも一のヌクレオチドがアミノ酸変化を生じるヌクレオチド変化を含むことが予測され、特定の塩基対形成の存在からアミノ酸変化の存在が示される方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はY11H置換である。他の実施態様では、ヌクレオチド変化は、配列番号:5ないしその断片にヌクレオチド変化を含む。
【0099】
他の態様では、生体試料中のRIOK2のY11でのアミノ酸変化の有無を検出する方法であって、(a)核酸に対するアレル特異的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに適切な条件下で、アミノ酸変化を起こすヌクレオチド変化に特異的であるアレル特異的オリゴヌクレオチドに、生体試料から得た核酸を接触させ、そして、(b)アレル特異的ハイブリダイゼーションの有無を検出することを含み、アレル特異的ハイブリダイゼーションの存在がアミノ酸変化の存在を示す方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はY11H置換である。他の実施態様では、ヌクレオチド変化は、配列番号:5ないしその断片にヌクレオチド変化を含む。他の実施態様では、アレル特異的オリゴヌクレオチドは、アレル特異的プライマーである。
【0100】
他の態様では、ヌクレオチド変化を含む核酸を増幅する方法であって、該ヌクレオチド変化によりRIOK2のY11でアミノ酸変化が生じるものであり、(a)ヌクレオチド変化の3'配列にハイブリダイズするプライマーに該核酸を接触させ、そして(b)プライマーを伸長させてヌクレオチド変化を含む増幅産物を生成することを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はY11H置換である。他の実施態様では、核酸は、配列番号:5ないしその断片にヌクレオチド変化を含む。他の実施態様では、該方法はさらに、ヌクレオチド変化の配列3'にハイブリダイズする二次プライマーと増幅産物を接触させ、二次プライマーを伸長させて二次増幅産物を生成することを含む。そのような実施態様では、該方法はさらに、例えばPCRによって増幅産物および二次増幅産物を増幅することを含む。
【0101】
他の態様では、RIOK2の活性を評価する方法であって、(a)Y11にアミノ酸変化を含むRIOK2の活性を決定し、そして、(b)そのRIOK2の活性を野生型RIOK2の活性と比較することを含む方法が提供される。一実施態様では、活性はキナーゼ活性である。一実施態様では、アミノ酸変化はY11H置換である。
他の態様では、腫瘍の治療のための薬剤を同定する方法であって、(a)Y11にアミノ酸変化を含むRIOK2を試験薬と接触させ、そして、(b)試験薬が存在する場合のRIOK2の活性を、試験薬が存在しない場合のRIOK2の活性によって評価することを含み、試験薬が存在する場合にRIOK2の活性が減少することにより、試験薬が腫瘍の治療のための薬剤であることが示される方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はY11H置換である。
他の態様では、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、腫瘍細胞はY11にアミノ酸変化を有するRIOK2を含むものであり、腫瘍細胞をRIOK2のアンタゴニストにさらすことを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はY11H置換である。他の実施態様では、RIOK2のアンタゴニストは小分子アンタゴニストである。他の実施態様では、RIOK2のアンタゴニストはアンタゴニスト抗体である。他の実施態様では、方法はさらに、腫瘍細胞を細胞障害性薬、化学療法薬又は増殖阻害性薬にさらすことを含む。
【0102】
様々なキナーゼアンタゴニストが当分野で公知である。このようなキナーゼアンタゴニストには、限定するものではないが、アンタゴニスト抗体および小分子アンタゴニスト、例えば3-[2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデン]−インドリン−2−オン(「SU5416」);イマチニブ(Gleevec(登録商標))、2−フェニルアミノピリミジン;1−tert−ブチル−3−[6(3,5−ジメトキシ−フェニル)−2−(4−ジメチルアミノ−ブチルアミノ)−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−ウレア(「PD173074」)(例としてMoffa et al. (2004) Mol. Cancer Res. 2: 643-652を参照);及び、3−[3−(2−カルボキシエチル)−4−メチルピロール−2−メチリデニル]−2−インドリノン(「SU5402」)などのインドリノン類(例としてBernard-Pierrot (2004) Oncogene 23:9201-9211を参照)が含まれる。
【0103】
他の態様では、Y11にアミノ酸変化を有するRIOK2を含む腫瘍を治療する方法であって、腫瘍を有する患者にRIOK2のアンタゴニストを含有する製薬製剤の有効量を投与することを含む方法が提供される。一実施態様では、アミノ酸変化はY11H置換である。他の実施態様では、RIOK2のアンタゴニストは小分子アンタゴニストである。他の実施態様では、RIOK2のアンタゴニストはアンタゴニスト抗体である。他の実施態様では、方法はさらに、患者に細胞障害性薬、化学療法薬又は増殖阻害性薬を投与することを含む。
【0104】
D.一般的な技術
上記方法のいずれかによると、核酸は、ゲノムDNA;ゲノムDNAから転写されるRNA;又はRNAから生成されるcDNAであってもよい。核酸は、脊椎動物(例えば哺乳動物)に由来してもよい。核酸は、その供給源から直接得られる場合、又はそれがその供給源において見出される核酸のコピーである場合、特定の供給源に「由来する」という。
【0105】
核酸は、核酸のコピー(例えば増幅により生じるコピー)を含む。例えば、変異を検出するための材料の所望の量を得るために、場合により増幅が望ましいことがある。例えば、TYK2ポリヌクレオチド又はその一部は、核酸材料から増幅され得る。変異がアンプリコン内に存在するかどうか決定するために、アンプリコンを、後述するような変異検査法に供してもよい。
【0106】
変異は、特定の周知の方法によって検出され得る。この種の方法は、DNA塩基配列決定、アレル特異的ヌクレオチド取り込みアッセイ及びアレル特異的プライマー伸長アッセイ(例えばアレル特異的PCR、アレル特異的ライゲーション連鎖反応(LCR)及びgap−LCR)を含むプライマー伸長アッセイ;アレル特異的オリゴヌクレオチド・ハイブリダイゼーション検定法(例えばオリゴヌクレオチド・ライゲーション・アッセイ);切断剤からの保護を核酸デュプレックスのミスマッチ塩基を検出するために用いる切断保護アッセイ;MutSタンパク質結合の分析;変異体及び野生型核酸分子の可動性を比較する電気泳動的解析;、変性こう配ゲル電気泳動(DGGE、例えばMyers et al. (1985) Nature 313:495に記載);ミスマッチ塩基対のRNアーゼ切断の分析;ヘテロ二本鎖DNAの化学的又は酵素による切断の分析;マススペクトル分析(例えばMALDI−TOF);遺伝子のビット分析(GBA);5’ヌクレアーゼ・アッセイ(例えばTaqMan(登録商標));及び分子ビーコンを用いたアッセイを含むが、これに限定されるものではない。これらの方法のいくつかは、以下でより詳細に検討される。
【0107】
標的核酸変異の検出は、その分野で公知の技術を用いて、標的核酸分子クローニング及び配列決定により達成され得る。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)のような増幅技術を、腫瘍組織のゲノムDNA標本から直接標的核酸配列を増幅するために用いることができる。増幅された配列の核酸配列が決定され、変異が同定される。増幅技術はその分野で公知であり、例えば、PCRはSaiki et al., Science 239:487, 1988;米国特許第4683203号及び同第4683195号において記載される。
【0108】
その分野で公知であるリガーゼ連鎖反応もまた、標的核酸配列を増幅するために用いることができる。Wu et al., Genomics 4:560-569 (1989)参照。さらにアレル特異的PCRとして公知の技術もまた、変異(例えば置換)を検出するために用いることができる。Ruano and Kidd (1989) Nucleic Acids Research 17:8392; McClay et al. (2002) Analytical Biochem. 301:200-206参照。この技術のある実施態様において、アレル特異的プライマーを用いることができ、そのプライマーの3’末端ヌクレオチドは標的核酸における特定の変異に相補的である(すなわち、特異的に塩基対合できる)。特定の変異がない場合、増幅産物は観察されない。Amplification Refractory Mutation System(ARMS)もまた、変異(例えば置換)を検出するために用いることができる。ARMSは、例えば、ヨーロッパ特許出願公開番号0332435及びNewton et al., Nucleic Acids Research, 17:7, 1989において記載される。
【0109】
変異(例えば置換)を検出するために有用な他の方法は(1)単一塩基伸長アッセイなどのアレル特異的ヌクレオチド取り込みアッセイ(Chen et al. (2000) Genome Res. 10: 549-557;Fan et al. (2000) Genome Res. 10: 853-860;Pastinen et al. (1997) Genome Res. 7: 606-614;及びYe et al. (2001) Hum. Mut. 17: 305-316)参照);(2)アレル特異的PCRを含むアレル特異的プライマー伸長アッセイ(Ye et al. (2001) Hum. Mut. 17: 305-316;及びShen et al. Genetic Engineering News, vol. 23, Mar. 15, 2003参照);(3)5’ヌクレアーゼアッセイ(De La Vega et al. (2002) BioTechniques 32:S48-S54(TaqMan(登録商標)アッセイを記載); Ranade et al. (2001) Genome Res. 11: 1262-1268;及びShi (2001) Clin. Chem. 47:164-172参照);(4)分子ビーコンを用いるアッセイ(Tyagi et al. (1998) Nature Biotech. 16:49-53;及びMhlanga et al. (2001) Methods 25:463-71参照);及び、(5)オリゴヌクレオチド・ライゲーション・アッセイ(Grossman et al. (1994) Nuc. Acids Res. 22: 4527-4534;米国特許出願公開番号US2003/0119004 A1;PCT国際公開番号WO01/92579 A2;及び米国特許第6027889号参照)を含むが、これに限定されるものではない。
【0110】
変異は、ミスマッチ検出法によってもまた検出され得る。ミスマッチは、100%相補的でないハイブリダイズされた二本鎖核酸である。完全な相補性の欠如は、欠失、挿入、逆転又は置換に起因している場合がある。これらの技術は配列決定法よりも感受性が低いかもしれないが、多くの数の組織試料に対して実施が容易である。ミスマッチ検出法の1つの例は、例えば、Faham et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 102:14717-14722 (2005)及びFaham et al., Hum. Mol. Genet. 10:1657-1664 (2001)において記載されるMismatch Repair Detection(MRD)アッセイである。他のミスマッチ切断技術の例は、RNアーゼ保護法であり、Winter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:7575, 1985及びMyers et al., Science 230:1242, 1985においてその詳細が記載される。例えば、本発明の方法は、ヒト野生型標的核酸に相補的な標識化されたリボプローブを用いてもよい。組織サンプルの由来される標的核酸及びリボプローブは、共にアニール(ハイブリダイズ)され、二本鎖RNA構造におけるいくつかのミスマッチを検出することが可能な酵素RNアーゼAによってその後消化される。ミスマッチがRNアーゼAによって検出されると、ミスマッチの部位で切断される。したがって、アニールされたRNA標本が電気泳動的ゲルマトリックスに分離され、ミスマッチが検出されてRNアーゼAによって切断された場合、リボプローブ及びmRNAもしくはDNAに対して全長二本鎖RNAより小さいRNA産物が確認される。リボプローブは、標的核酸の完全長である必要はなく、それが変異を有すると推測される位置を含むならば標的核酸の一部であってもよい。
【0111】
これと同様の方法で、例えば酵素的もしくは化学的な切断を通して、ミスマッチを検出するためにDNAプローブを用いることができる。Cotton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:4397, 1988;及びShenk et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 72:989, 1975参照。あるいは、ミスマッチは、マッチする二本鎖と比較して、ミスマッチ二本鎖の電気泳動易動度の変動によって検出することができる。Cariello, Human Genetics, 42:726, 1988参照。変異を含むと推測される標的核酸は、リボプローブ又はDNAプローブのいずれかにより、ハイブリダイゼーションの前に増幅されてもよい。特に標的核酸の変化が、大きな再配列(例えば欠失及び挿入)である場合、その変化はサザンハイブリダイゼーションを用いても検出できる。
【0112】
標的核酸又は周囲のマーカー遺伝子に対する制限断片長多形性(RFLP)プローブを、変異(例えば挿入又は欠失)の検出に用いることができる。挿入及び欠失を、標的核酸のクローニング、配列決定及び増幅により検出することができる。一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)分析もまた、アレルの塩基変化変異体の検出に用いることができる。Orita et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2766-2770, 1989及びGenomics, 5:874-879, 1989参照。
アミノ酸変異は、例えば、対応する野生型のポリペプチドと比較したときのアミノ酸変異を含むポリペプチドを選択的に認識する抗体を用いて直接検出してもよい。
【0113】
本発明は、本発明の方法を行うのに適した種々の組成物をも提供する。例えば、本発明は、この種の方法で用いられるアレイを提供する。一実施形態において、本発明のアレイは、本発明の変異を検出するために有用な、個人の核酸分子又は核酸分子のコレクションを含む。例えば、本発明のアレイは、一連の別々に配置された個々のアレル特異的オリゴヌクレオチド又はアレル特異的オリゴヌクレオチドのセットを含んでもよい。固体基質(例えばスライドグラス)に核酸を結合させるためのいくつかの技術は、その分野において周知である。1つの方法は、固体基質(例えばアミン基、アミン基の誘導体又は正電荷を有する他のグループ)に給合可能な反応性成分を含む修飾塩基又はアナログを、合成される核酸分子に組み込むことである。それから、合成された産物を、固体基質(例えばアルデヒド又は他の反応基を有するコーティング付きスライドグラス)に接触させる。アルデヒド又は他の反応基は、増幅された産物上で反応性成分と共有結合を形成し、スライドグラスに共有結合する。アミノプロピルシリカ(amino propryl silican)界面化学を用いるような他の方法もまた公知技術である。
【0114】
上記の方法のいずれかによると、生体試料は当業者に周知である特定の方法を用いて得られる。生体試料は、脊椎動物、特に哺乳動物から得られてもよい。組織生検は、腫瘍組織の典型的な試験片を得るために、たびたび用いられる。あるいは、腫瘍細胞は、公知の、又は興味がある腫瘍細胞を含むと考えられる組織又は体液の形で間接的に得られることができる。例えば、肺癌病変の試料は、切除、気管支鏡検査法、微細な針穿刺吸引、気管支擦過法によるか、痰肋膜体液又は血液から、得られてもよい。標的核酸(又はコード化されたポリペプチド)の変異は、腫瘍試料又は他の体試料(例えば尿、痰又は血清)から検出され得る。(癌細胞は、腫瘍から脱落し、この種の体試料に出現する。)
この種の体試料のスクリーニングにより、疾患(例えば癌)の簡潔な早期診断が達成される。さらに、治療の進捗は、標的核酸(又はコード化されたポリペプチド)における変異について、この種の体試料を検査することによって、より容易にモニターすることができる。さらに腫瘍細胞の組織標本を拡充するための方法は、この分野において公知である。例えば、組織は、パラフィン又はクリオスタット切片から単離されてもよい。癌細胞は、フローサイトメトリー又はレーザーキャプチャーマイクロダイセクションにより正常細胞から分離され得る。
【実施例】
【0115】
III.実施例
A. 癌に関連する変化の同定
癌に関連する変化は、計算分類指標又は「ランダムフォレスト」(RF)分類指標を用いたESTにおいて同定するものであり、公知の癌に関連する変化のトレーニング群に応用されるように、SIFT、PfamベースのLogR.E-値および遺伝子オントロジー類似性スコア(Gene Ontology Similarity Score)測定基準からの情報を使用して構築される。RF分類指標は、共通の多型性から癌に関連する変化を識別することが可能である。Kaminker et al. (2007) Cancer Researchを参照。RF分類指標を用いて、癌ライブラリからのESTに特異的に存在する2600の候補変化の集まりを分析した。2600の候補変化のうち、RF分類指標は494(19%)を癌に関連するものとして同定した。494の癌に関連する変化には、p53のC135F変異などの多くの公知の癌関連突然変異が含まれる。
同定された癌関連変化がEST配列決定人工産物によるものでないことを確認するために、8つの変異体を、対応するゲノム配列に存在するか否かを決定することによって確認した。また、別々のEST組織供給源からのゲノムDNAにおいて、MAST2のV1304M変化およびRIOK2のY11H変化の2つの変化が同定された。(図1を参照)。
関係のない腫瘍DNA試料に存在する癌関連の突然変異を同定するために、スクリーニングに用いたいずれのESTライブラリとも関係のない128の腫瘍組織試料群に対して65の予測される癌関連突然変異について、質量分析遺伝子タイピングを行った。この分析から、4つの別々の腫瘍組織(1つは胸部腫瘍、2つは大腸腫瘍、1つは胃腫瘍)においてTYK2遺伝子のキナーゼドメインに新規の変化が同定された。(図2Aおよび2Bを参照)。このP1104A変化はC3651G突然変異から生じる。この突然変異は、一致する正常組織試料においても同定されたので、生殖細胞系変化として分類された。
【0116】
図2Cは、TYK2キナーゼドメインの予測された構造を示す。プロリン1104は囲った領域内で黒色で示し、プロリン1105およびトリプトファン1067は囲った領域内で灰色で示す。図2Cに示すように、P1104は、C末端のTYK2キナーゼドメインの螺旋形の葉の基質−結合溝にある保存された残基である。それは、活性化ループの不活性高次構造を安定化させるリング−スタッキング相互作用において、重要なトリプトファン残基(W1067)の下に位置する。したがって、P1104の突然変異は、TYK2の活性化された触媒状態を助長し、発癌性表現型を引き起こしうる。また、P1104は隣接するP1105残基のリングと接触し、隣接したα−ヘリックスを配置するのを助ける。アミノ酸のこの密接にパックされたトリオのいずれかが破壊すると、基質結合溝を変えるか又は活性なループの高次構造によってTYK2の触媒活性に作用するかもしれない。
【0117】
前述の本発明は、明確な理解を促すために図と実施例とをあげていくらか詳細に記述されているが、この記載や実施例は本発明の範囲を制限するものと解されるものではない。本明細書中で引用するすべての特許及び科学文献の開示内容は、出典明記によってその全体が特別に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から得られる生体試料におけるTYK2の触媒キナーゼドメイン中のアミノ酸変化の存在を検出することを含む、患者の腫瘍の診断方法。
【請求項2】
アミノ酸変化がP1104、P1105又はW1067で起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アミノ酸変化がP1104でのアミノ酸置換である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アミノ酸置換がP1104Aである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
検出に、生体試料から得られるTYK2ポリヌクレオチドにおいて、アミノ酸変化が生じるヌクレオチド変化の存在を検出することが含まれる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ヌクレオチド変化がC3651G置換である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
TYK2ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド変化が、配列番号:1ないしはそのコード領域にヌクレオチド変化を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
生体試料が、腫瘍細胞を含むか、含むことが疑われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
腫瘍が、胸部、大腸又は胃の腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
患者の腫瘍がTYK2又はTYK2ポリヌクレオチドを標的とする治療薬に応答するか否かを決定するための方法であって、患者から得た生体試料中のTYK2の触媒キナーゼドメインにおけるアミノ酸変化の有無を検出することを含み、このときアミノ酸変化の存在により、腫瘍が該治療薬に応答することが示唆される方法。
【請求項11】
アミノ酸変化がP1104、P1105又はW1067で起こる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アミノ酸変化がP1104でのアミノ酸置換である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アミノ酸置換がP1104Aである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
腫瘍が、胸部、大腸又は胃の腫瘍である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
アミノ酸変化が、生体試料から得たTYK2ポリヌクレオチドにおいて、アミノ酸変化が生じるヌクレオチド変化を検出することによって検出される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
ヌクレオチド変化がC3651G置換である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
TYK2ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド変化が、配列番号:1ないしはそのコード領域にヌクレオチド変化を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、腫瘍細胞は触媒キナーゼドメインにアミノ酸変化を有するTYK2を含むものであり、腫瘍細胞をTYK2のアンタゴニストにさらすことを含む方法。
【請求項19】
アミノ酸変化が、P1104、P1105又はW1067で起こる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
アミノ酸変化がP1104でのアミノ酸置換である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
アミノ酸置換がP1104Aである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
腫瘍細胞が胸部、大腸又は胃の腫瘍細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
TYK2のアンタゴニストが小分子アンタゴニストである、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
TYK2のアンタゴニストがアンタゴニスト抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
さらに、細胞に細胞障害性薬、化学療法薬又は増殖阻害性薬をさらすことを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
触媒ドメインにアミノ酸変化を有するTYK2を含む腫瘍を治療する方法であって、腫瘍を有する患者にTYK2のアンタゴニストを含有する製薬製剤の有効量を投与することを含む方法。
【請求項27】
アミノ酸変化がP1104、P1105又はW1067で起こる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
アミノ酸変化がP1104でのアミノ酸置換である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
アミノ酸置換がP1104Aである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
腫瘍が胸部、大腸又は胃の腫瘍である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
TYK2のアンタゴニストが小分子アンタゴニストである、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
TYK2のアンタゴニストがアンタゴニスト抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
さらに、患者に細胞障害性薬、化学療法薬又は増殖阻害性薬を投与することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
(a)少なくともおよそ10ヌクレオチド長であって、TYK2のP1104、P1105又はW1067にアミノ酸変化が生じるヌクレオチド変化を含むTYK2ポリヌクレオチドないしその断片、又は(b)(a)の相補鎖、を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項35】
アミノ酸変化がP1104でのアミノ酸置換である、請求項34に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項36】
アミノ酸置換がP1104Aである、請求項35に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項37】
ヌクレオチド変化がC3651Gである、請求項34に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項38】
TYK2ポリヌクレオチドないしその断片のヌクレオチド変化が、配列番号:1ないしその断片の配列にヌクレオチド変化を含む、請求項34に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項39】
生体試料における腫瘍の検出方法であって、生体試料から得たTYK2ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド変化の存在を検出することを含み、該ヌクレオチド変化によりTYK2のP1104、P1105又はW1067でアミノ酸変化が生じる方法。
【請求項40】
アミノ酸変化がP1104のアミノ酸置換である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
アミノ酸置換がP1104Aである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ヌクレオチド変化がC3651G置換である、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
TYK2ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド変化が、配列番号:1ないしそのコード領域にヌクレオチド変化を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
腫瘍が胸部、大腸又は胃の腫瘍である、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
TYK2ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド変化の存在を検出する方法であって、該ヌクレオチド変化によりTYK2のP1104、P1105又はW1067にアミノ酸変化が生じるものであり、(a)核酸に対するアレル特異的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに適切な条件下で、ヌクレオチド変化に特異的であるアレル特異的オリゴヌクレオチドに、ヌクレオチド変化を含むと思われる核酸を接触させ、そして、(b)TYK2ポリヌクレオチドにヌクレオチド変化が存在することを表す、アレル特異的ハイブリダイゼーションの存在を検出することを含む方法。
【請求項46】
アミノ酸変化がP1104でのアミノ酸置換である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
アミノ酸置換がP1104Aである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ヌクレオチド変化がC3651G置換である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
TYK2ポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド変化は、配列番号:1ないしそのコード領域にヌクレオチド変化を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
ヌクレオチド変化を含む核酸を増幅する方法であって、該ヌクレオチド変化によりTYK2のP1104、P1105又はW1067でアミノ酸変化が生じるものであり、(a)ヌクレオチド変化の配列3'にハイブリダイズするプライマーに該核酸を接触させ、そして(b)プライマーを伸長させてヌクレオチド変化を含む増幅産物を生成することを含む方法。
【請求項51】
アミノ酸変化がP1104のアミノ酸置換である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
アミノ酸置換がP1104Aである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
ヌクレオチド変化がC3651G置換である、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
核酸が配列番号:1ないしその断片にヌクレオチド変化を含む、請求項50に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2010−515921(P2010−515921A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545679(P2009−545679)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/050725
【国際公開番号】WO2008/089035
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】