説明

腫瘍の免疫療法のための方法

樹状細胞を抗原反応性にする方法は樹状細胞の試料を得、該細胞を抗原および少なくとも1のToll様レセプター刺激薬と接触させることを含む。本方法により活性化した樹状細胞は腫瘍を治療し、自己免疫疾患動物モデルを作製する手段をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性樹状細胞の製造方法、具体的には腫瘍ワクチン接種(ワクチネーション)、臓器不全の動物モデルの作製、およびin vitro薬剤スクリーニングへの使用のための該反応性樹状細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
感染および炎症は、西洋社会の主な死亡原因である心臓血管疾患の重要な危険因子であることが現在明らかになってきた1。実際に、血清中の炎症マーカーの上昇は冠状動脈性心臓病2および拡張型心筋症3-4の患者の予後を予測する。特に、若い患者における心不全の最も一般的な原因である拡張型心筋症5,6,7は、これら患者の多くは心臓タンパク質に対する自己抗体を示すため6,7,8、カルディオトロピック(cardiotropic)ウイルス感染後の自己免疫反応と関連がある。同様の自己免疫機序が原生動物のTrypanozoma cruzii感染後の心不全に関与している7。自己免疫は、確定した自己抗原、臓器特異性、および自己反応性T細胞、および/または疾病を伝達することができる自己抗体を含む多くの伝統的分類により特徴付けられる24
【0003】
動物モデルは、微生物感染が心臓組織に対する自己免疫反応を誘発しうるという理論を支持する7。明確な遺伝的背景を有するマウスは、Coxsackie B37およびTrypanozoma cruzii9感染後の自己反応性T細胞を伴う持続性心筋炎を発現する。同じマウス系において、心臓特異的α-ミオシンまたは16アミノ酸、α-ミオシン重鎖エピトープを強力なアジュバントと共に免疫するとT細胞性(介在性)心筋炎を誘導する7,10,11。重要なことは、正常マウスから得た心臓は内因性心臓特異的ペプチドを提示する多数の組織レジデント細胞を含むことが示されてきた12。しかしながら、内因性自己抗原を提示する樹状細胞が自己免疫性心臓病(疾患)およびおそらく心不全に寄与するか否かは知られていない。必要なのは、研究者が心筋症が若い患者に発現する機序を研究し、より重要なことはその発現を妨げる化合物を同定するのを可能にする動物モデルである。
【0004】
樹状細胞は、抗原特異的免疫反応の誘導における中心的存在である16,17。未熟樹状細胞は、末梢組織に存在し、エンドサイトーシスおよびマクロピノサイトーシスによりその環境を活発にサンプリングする。病原体に出会うと、未熟樹状細胞は発生プログラムと呼ばれる樹状細胞成熟を受けるが、これには、同時刺激活性の誘導、抗原プロセシング、MHC分子の発現の増加、およびリンパ節への移動が含まれ、これによりそれらはナイーブ抗原特異的T細胞をプライムすることができる13。樹状細胞もデブリスおよび死細胞から内因性抗原をプロセスする13,15,16。したがって、樹状細胞は適切に活性化されると自己反応性T細胞を誘発するかもしれないと提案されてきた13,17。適切な刺激の非存在下で死滅しかけの細胞および自己組織のプロセシングが樹状細胞をCD8+T細胞性18およびCD4+T細胞性19免疫反応に対して寛容原性にする証拠が増しつつある。したがって、最近の研究は、自己寛容の維持における樹状細胞の役割に集中してきた。いくつかの研究は、樹状細胞がウイルス抗原発現のトランスジェニックモデルにおける臓器特異的炎症を誘導することができることを示唆しているが、活性化樹状細胞は自己抗原に対する自己免疫を誘導することができることついてはまだ間接的証拠しかない13,21。さらに、自己タンパク質でパルスした樹状細胞が実際に「ナイーブ」マウスに自己免疫を誘導することができることはまだ示されていない。樹状細胞は複数のToll様レセプターを発現し、したがって、これら細胞は適応免疫と先天性免疫の接点に重要に位置づけられる21。先天性免疫系は、感染に対する普遍的および古来の形の宿主防御である21
【0005】
樹状細胞は、広範囲の組織分布を有する異種細胞ポピュレーションからなる。研究のための樹状細胞の使用およびより実用的な応用は、末梢血に樹状細胞が低頻度であり、リンパ器官の接近可能性が限られており、樹状細胞の分化の終末期により限られてきた。現在の方法により活性化するのに必要な樹状細胞の数は、少なくとも1x106個のオーダーである。必要なものは、5x104〜2x105個のオーダーのより少ない細胞を必要とする樹状細胞の活性化方法である。
【0006】
研究は、免疫系がある程度腫瘍細胞を殺すことができるが、それでも腫瘍は優性なことが多いことを示した。癌を治療するための免疫療法のための種々の方法が示唆されてきたが、標的腫瘍に対する有効で特異的な免疫療法的反応をうまく誘発する治療法はまだ実現していない。in vivoで腫瘍に対する免疫反応を一貫して特異的に生じ、腫瘍の根絶をもたらす方法が求められる。
【0007】
本明細書で引用するすべての刊行物および特許出願は矛盾のない程度に本明細書の一部を構成する。
(本発明の要約)
【0008】
樹状細胞を活性化し、選択した抗原(選択抗原)に反応性になるようにする方法を開示する。この方法では、樹状細胞を選択抗原およびToll様レセプター(TLR)刺激薬に曝露し、樹状細胞のTLR経路を活性化する。
【0009】
樹状細胞を曝露する選択抗原が自己抗原または組織特異抗原である場合、その組織が該抗原を保持する動物に活性化樹状細胞を再導入すると該動物に自己免疫疾患の発現をもたらす。これは、自己免疫疾患または組織特異的自己免疫損傷の動物モデルの作製方法を提供する。自己免疫疾患に関連する自己抗原の選択は、本明細書に記載の自己免疫疾患モデルを可能にする。
【0010】
樹状細胞を曝露する選択抗原が腫瘍抗原である場合、活性化樹状細胞の腫瘍対象への再導入は、本明細書の新規免疫療法を提供する。
【0011】
本発明のある態様によれば、樹状細胞の試料を得、該樹状細胞を抗原および少なくとも1のToll様レセプター(TLR)刺激薬と接触させることを含む抗原反応性樹状細胞の作製方法を提供する。
【0012】
本発明の別の態様によれば、腫瘍により発現された腫瘍抗原を得、動物から樹状細胞の試料を得、上記方法により樹状細胞を腫瘍抗原に反応性にし、該反応性樹状細胞を該動物に再導入することを含む動物の腫瘍を治療する方法を提供する。
【0013】
本発明のさらなる態様によれば、自己免疫疾患関連抗原を得、非ヒト動物由来の樹状細胞試料を得、樹状細胞を上記方法により自己免疫疾患関連抗原に反応性にし、次いで該反応性樹状細胞を該動物に再導入することを含む自己免疫疾患動物モデルの製造方法を提供する。
【0014】
本発明の別の態様によれば、臓器特異的自己抗原を得、非ヒト動物から樹状細胞試料を得、樹状細胞を上記方法により自己免疫疾患関連抗原に反応性にし、次いで該反応性樹状細胞を該動物に再導入することを含む臓器不全の動物モデルの作製方法を提供する。
【0015】
本発明のさらなる態様によれば、該抗原がmyhc-αペプチドである上記方法を提供する。
【0016】
本発明の別の態様によれば、自己免疫疾患関連自己抗原を得、非ヒト動物から樹状細胞の試料を得、請求項1〜12のいずれかに記載の方法により該樹状細胞を該自己抗原に反応性にし、該樹状細胞を該動物に再導入し(ここで、該樹状細胞を、自己抗原との接触前、自己抗原との接触中、自己抗原との接触後、ならびにTLR刺激薬との接触前、およびTLR刺激薬との接触中、およびTLR刺激薬との接触後、から選ばれる時に候補化合物と接触させる)、次いで該動物の自己免疫反応を、該自己抗原に反応性にし、該化合物に曝露していない樹状細胞で処理した動物の自己免疫反応と比較することを含む動物における自己免疫疾患の発現を調節することができる能力について候補化合物をスクリーニングする方法が提供される。
(図面の要約)
【0017】
本発明は、さらに図面を参照して本発明のある種の態様の以下の詳細な説明から理解されよう。
【0018】
図1は、倍率0x(パネルaおよびb)、140x(パネルcおよびd)、および560x(パネルeおよびf)のマウス心臓組織切片の顕微鏡写真を示す。パネル1aおよび1cは正常心臓組織を示し、パネル1b、1d、1e、および1fは、ミオシン重鎖α(myhc-α)の部分ペプチド残基614〜629でパルスした活性化樹状細胞に反応して生じた炎症心臓組織を示す。
【0019】
図2、パネルaは、myhc-αまたはOVAでパルスした活性化樹状細胞を接種したマウスからのCD4+T細胞のIFN-γおよびIL-4産生(pg/mlで表す)を示す。パネル2bは、myhc-αまたはコントロールova-ペプチド(OVA)でパルスした活性化樹状細胞を接種したマウスの自己IgG抗体のin vivo産生を示す。パネル2cは、OVA-プライムCD4+T細胞を注射したマウスではみられない、myhc-αプライムCD4+T細胞を注射したSCIDマウスにおける心筋炎を示す心臓組織の切片を示す。
【0020】
図3は、myhc-αでパルスした活性化dcを接種したマウスにおける拡張型心筋症の発症および収縮機能不全を示すデータを示す。図3aは心臓重量/体重比を示し、図3bは左心室拡張末期直径(LVEDD)を示し、図3cはコントロールおよび試験マウスの心エコー図を示す。図3dは、円周短縮速度(velocity of circumferential fiber shortening)(VCFC)を示し、図3eは左室径短縮率(fractional shortening)(FC)を示す。
【0021】
図4は、myhc-αでパルス後の活性化dcを接種後の倍率0xおよび140xの横断面のマウス心臓組織を示す。図4aおよび4dは、CD40-/-樹状細胞をCD40+/+宿主に接種したときの心臓組織を示す。図4bおよび4eは、CD40+/+樹状細胞をCD4-/-宿主に接種したときの心臓組織を示す。図4cおよび4fは、CD40+/+樹状細胞をCD40+/+宿主に接種した時の心臓組織を示す。
【0022】
図5は、(パネルa) LPS/抗CD40;(パネルb) dsRNA/抗CD40;(パネルc) CpG/抗CD40;および(パネルd) PGN/抗CD40で活性化したmyhc-αパルスdcを接種して10日後の倍率560xのマウス心臓組織の横断面を示す。
【0023】
図6a、6b、および6cは、LPS/抗CD40で12時間刺激後のCD40+/+(青)およびCD40-/-(赤)樹状細胞上の同時刺激分子の発現を示す。FACSヒストグラムをCD11c+CD11b+MHCクラスII+生細胞(ICAM、B7.1、B7.2)、またはCD11c+CD11b+生細胞上にゲートした。
【0024】
図7は、刺激抗CD40抗体(αCD40:5μg/ml)の存在下または非存在下で示したToll様レセプター刺激薬(1μg/ml LPS、100μg/mlポリ(I:C)(dsRNA)、または10μM CpG-ODN)で12時間刺激した樹状細胞によるサイトカインのTNF-α、IL-12p 70、IL6、およびIL1βの産生を示す。データは、四重の培養ウェルからの平均(±SD)で示し、同様なデータを示す数回の実験の1つを示す。
【0025】
図8、パネルaは、組織損傷が、樹状細胞により捕捉され、提示される自己抗原を放出する、提案する自己免疫病因モデルを模式図で示す。Toll様レセプター活性化の場合は、自己反応性T細胞反応が生じ、これがCD40-CD40L相互作用により増幅される。
【0026】
図8bは、2x106個のアポトーシスの心筋細胞を注射し(i.p.)、LPSを投与しなかったコントロールマウスの心臓組織は心筋炎を誘導しない(6匹中0匹)ことを示す。図8cは、LPS(第0、1、2日に10μg i.p.)と共に2x106個のアポトーシスの心筋細胞を注射(i.p.)したマウスの心臓組織は、8匹中7匹に心臓に炎症(矢印)を生じたことを示す。注目すべきは、LPSのみの接種は心臓の炎症を誘導しなかった(5匹中0匹、示さず)。LPS/心筋細胞vs.心筋細胞でp<0.0001(フィッシャーの直接確率検定)。図8dは、LPSおよび2x106個のアポトーシスの心筋細胞(LPS)をi.p.接種して10日後のまたはまさにアポトーシスの心筋細胞のコントロールの抗myhc-αIgG自己抗体価を示す。心筋細胞のみの接種は、関連抗体価を誘導しなかった(コントロール)。個々のマウスからのデータを示す。
(発明の説明)
【0027】
ある態様において、本発明は樹状細胞を抗原に対して反応性になるように刺激する方法を提供する。
【0028】
当業者に知られている「樹状細胞」は、自己抗原および外来抗原を捕捉および提示し、成熟中に樹状突起を形成する免疫系の細胞である。
【0029】
樹状細胞は、科学文献に記載の種々の方法により得ることができよう。適切な組織供給源には、末梢血、骨髄、およびリンパ組織、例えば脾臓またはリンパ節が含まれる。樹状細胞は、例えばLutzら40に記載のごとく骨髄から培養により得るか、または樹状細胞表面マーカー、例えばCD11c+に特異的な磁性ビーズを用いて豊富化することにより脾臓またはリンパ節細胞の浮遊液から直接単離することができよう。
【0030】
ネズミ骨髄からLutzらの方法により単離した樹状細胞ポピュレーションの大部分(〜80%)がCD11c+CD11b+であることがわかった。本発明は、樹状細胞のこのサブセットに限定されず、本発明の方法はあらゆる供給源からの樹状細胞のあらゆるポピュレーションに適用することができよう。未熟樹状細胞が好ましい。
【0031】
単離樹状細胞は、所望により例えば磁性ビーズ(MACS(登録商標)、Miltenyi Biotech)を用いてCD11c+陽性選択によりさらに豊富化することができよう。そのようなより純粋な細胞ポピュレーションは、ヒトでの臨床使用に好ましいかもしれない。
【0032】
本発明のある態様において、単離樹状細胞を、該細胞を反応性にしたい選択抗原、および少なくとも1のToll様レセプター(TLR)刺激薬と接触させる。
【0033】
単離樹状細胞を選択抗原と適切な期間接触させ、次いで該樹状細胞を少なくとも1のToll様レセプター(TLR)刺激薬とさらにある期間接触させることができよう。
【0034】
樹状細胞によるプロセシングを必要としない短ペプチドである抗原では、30〜60分間の抗原の曝露時間で十分である、より複雑な抗原、例えば全タンパク質または粗細胞調製物では、抗原の曝露は約12〜24時間にすべきである。
【0035】
一般に、1〜20μg/mLの範囲の抗原濃度が抗原曝露に適している。高レベルのいくつかの抗体は、樹状細胞に毒性があるかもしれないが当業者は最適抗原濃度または範囲を容易に決定することができる。
【0036】
TLR刺激薬によるTLR活性化の期間は、特に本明細書に記載のごとく高濃度のTLR刺激薬を用いる場合は1〜4時間、好ましくは約1〜2時間であってよい。
【0037】
TLRファミリーのメンバーを刺激または活性化する物質は当業者によく知られており、科学文献に記載されている。あらゆるTLRリガンドを本発明の方法においてTLR刺激薬として用い樹状細胞を活性化することができよう。適切なTLRには、例えばリポ多糖 (LPS: E. coli 0111:B4:Sigma)、ポリ(I:C)(Amersham)、CpG-ODN、またはペプチドグリカン(PGN: S. aureus:Fluka)が含まれる。
【0038】
本明細書に記載のデータが示すように、本発明の方法による樹状細胞の活性化は、異なるTLRを刺激する刺激薬を用いることができるので1の特定のTLRの刺激に限定されない。
【0039】
本発明のさらなる態様において、該樹状細胞をTLR刺激薬および抗CD40抗体の両方と接触させる。抗CD40抗体は市販品を得てもよい。
【0040】
樹状細胞のTLR刺激薬および抗CD40抗体による同時活性化はTLR刺激薬のみによる活性化に比べて処理細胞の反応性と寿命をともに増強した。3〜5μg/mLの範囲の抗CD40抗体濃度がよい結果をもたらしたが、その範囲外の濃度も用いることができよう。
【0041】
上記方法により作製される反応性樹状細胞は多くの新規方法の基礎である。
【0042】
例えば、樹状細胞を曝露する選択抗原が腫瘍抗原である場合は、この抗原に反応性の樹状細胞を該抗原が由来する腫瘍の免疫療法に用いることができよう。
【0043】
この態様によれば、本発明は、腫瘍が発現した腫瘍抗原を得、動物から樹状細胞の試料を得、該樹状細胞を該腫瘍抗原と適切な期間接触させ、上記のごとく該樹状細胞を少なくとも1のTLR刺激薬および所望により抗CD40抗体と適切な期間接触させ、次いで活性化樹状細胞を該動物に再導入することにより動物、例えばヒトの腫瘍を治療する方法を提供する。
【0044】
最初に、生検試料を腫瘍から得、該腫瘍が発現した1またはそれ以上の抗原を同定することができる。生検試料を、既知の特徴付けられた腫瘍抗原についてスクリーニングすることができよう。これらの1またはそれ以上を同定したら、対応する合成抗原性タンパク質またはペプチドを用いて樹状細胞と接触させてよい。未知の腫瘍抗原が同定されたら、単細胞浮遊液を腫瘍生検から調製し、該細胞浮遊液を、既知の方法、例えばX線照射または化合物の添加によりアポトーシスにする。該アポトーシスの細胞調製物を用いて対象の樹状細胞と接触させ、該細胞を腫瘍抗原に曝露する。
【0045】
樹状細胞の試料を上記のごとく腫瘍保有動物、例えば末梢血もしくは骨髄から得る。好ましくは、該樹状細胞をサイトカイン、例えばIL-10の存在下で培養して成熟を抑制し、該細胞をin vitroで合成腫瘍抗原またはアポトーシスの細胞調製物と12〜24時間接触させる。腫瘍保持動物はヒトであってよい。
【0046】
樹状細胞を洗浄してサイトカイン(使用した場合は)を除去し、上記のごとく少なくとも1のTLR刺激薬および所望により抗CD40抗体と接触させる。該処理細胞を洗浄し、次いで例えば静脈注入または皮下注射により腫瘍保持動物に再導入する。腫瘍に対する動物の免疫反応を維持するには細胞の反復送達が必要かもしれない。ヒト免疫療法では、細胞の適切な用量および反復送達のタイミングは、治療する医師が適切な用量を決定するための常套的方法にしたがって決定することができる。
【0047】
本発明の方法により処置することができる腫瘍には、限定されるものではないがメラノーマ、腎細胞癌、白血病、およびリンパ肉腫が含まれる。
【0048】
本発明の方法を用いて、種々の自己免疫疾患の動物モデルを作製してこれら疾病の発現の理解を助け、該疾病プロセスを停止または妨害する能力について候補化合物を評価するためのスクリーニング手段を提供し、疾病治療のための潜在的医薬化合物の同定法をもたらすことができよう。
【0049】
そのような動物モデルを作製するには該動物から得られた樹状細胞を本明細書に記載の方法により刺激して自己免疫疾患関連自己抗原と反応性にし、次いで該動物に再導入して該疾患を発現させる。
【0050】
例えば自己免疫性心臓疾患の動物モデルを作製するには、非ヒト動物由来の樹状細胞を心特異的抗原、例えば本明細書に記載のmyhc-αペプチドおよびTLR刺激薬と接触させ、次いで本明細書に記載のごとく該動物に再導入して心筋炎を生じさせる。
【0051】
同様に、他の疾患、例えば喘息または関節炎の動物モデルを作製することができよう。例えば、関節軟骨のマトリックスを作るコラーゲンまたは他の構造タンパク質を関節炎の動物モデルを作製するための抗原として用い、また糖尿病モデルのための抗原としてプロインスリン、自己免疫心筋炎のモデルのための抗原としてミオシンペプチド、自己免疫脳脊髄炎についてMOGまたは他のミエリン由来ペプチド、および喘息について外来気道抗原を用いることができよう。
【0052】
動物モデルは、マウス、ラット、およびブタを含む種々の哺乳動物を用いて作製することができよう。
【0053】
本発明の別の態様において、臓器不全を研究するためのモデルとして用いることができる臓器特異的自己免疫を誘導するために樹状細胞を活性化する方法を提供する。上記方法は、樹状細胞をパルスするのに用いる自己抗原が臓器特異的であり、該活性化樹状細胞を該動物に再導入した後に臓器不全が生じるよう修飾して用いられる。ネズミα-ミオシン重鎖ペプチド(myhc-α614-629)[Ac-SLKLMATLFSTYASAD-OH]11,23(myhc-α)を、拡張型心筋症、次いで心不全を誘導するための自己抗原として用いた。該モデル系を用いて臓器不全が自己免疫要素、例えば糖尿病、関節炎、狼瘡などを有する疾病に関与する機序を解明することができる。
【0054】
本発明の別の態様において、樹状細胞を活性化し、これら細胞をin vitro薬剤スクリーニングアッセイに用いて臓器特異的自己免疫の発現に影響を及ぼすことができる化合物を同定する方法を提供する。上記方法は、例えば自己免疫疾患動物モデルを用い、さらに、TLR活性化前、TLR活性化中、またはTLR活性化後に、抗原でパルスする前、パルス中、パルスした後に試験化合物を樹状細胞に適用する工程を含む。適用化合物は標的臓器の自己免疫の発現または進行に影響を及ぼし阻害または促進することができよう。該活性化樹状細胞を被検動物に再導入した後、適用した化合物が動物の自己免疫の発現または進行に影響を及ぼすか否かについて検討する。
【0055】
心筋特異的自己ペプチドでパルスした樹状細胞の接種がCD4+T細胞性自己免疫心筋炎を誘導することが示された。樹状細胞は、心臓の炎症に介在し、急性炎症性浸潤の解消後でも拡張型心筋症および心不全に進行および悪化させた。重要なことは、樹状細胞は自己免疫に介在し、樹状細胞がToll様レセプターを通して活性化した時だけに心臓病が発生した。さらに、疾病の病因はCD40の同時刺激に依存する。すなわち、先天性および適応免疫系の共同活性化は樹状細胞を自己攻撃性にする。
(自己免疫および心不全)
【0056】
myhc-αパルスした樹状細胞による免疫は、心腔の拡張、収縮不全を生じ、急性炎症性浸潤の解消後の繊維性変化をもたらした。これらデータは、移植心臓または感染後心筋症の患者の生検が自己抗体の存在下でも必ずしも炎症性浸潤を表現しない事実と一致する5。すなわち、この結果はヒトにおける感染後拡張型心筋症の病因を反映する。マウスの樹状細胞免疫後、myhc-αエピトープおよび他のミオシンエピトープに対する自己抗体が生じた。これら自己抗体が急性炎症性浸潤の解消後の心不全に寄与または介在するか否かについて疑問が生じる。例えば、心筋細胞の表面タンパク質に対する自己抗体は負の免疫調節的PDAレセプターを欠くBALB/cマウスの心不全に介在する31。あるいはまた、心機能不全は、病的リモデリングおよび線維症をもたらす組織破壊に心臓が対抗できないことを反映するかもしれない。
【0057】
感染症および炎症は、西洋社会における主要な死亡原因である心臓血管疾患の重要な危険因子であることが明らかになってきた1。これらの結果は、自己抗原の提示とともに樹状細胞におけるTLRの刺激が自己免疫性心臓疾患を引き起こすに十分であることを示唆し、敗血症の患者における心機能不全32および心筋梗塞後の予後不良と全身炎症反応の規模の間の臨床的関連1,2,3,4を説明するかもしれない。さらに、自己免疫機序は、原生動物のTrypanozoma cruzii感染後の心不全で示唆されている9。本発明の実験系は、炎症後心不全の病態生理学を研究し、新規治療戦略を開発するための新規in vivo疾患モデルを樹立する。重要なことは、本データは自己免疫性心臓疾患と拡張型心筋症および心不全との直接の因果関係を示す。
先天性免疫、感染、および自己免疫
【0058】
自己免疫疾患は全人口の10%までに障害を与える。遺伝的感受性に加え、環境的引き金および感染物質が複数の自己免疫疾患の病因において示唆されてきた7,33。しかしながら、ほとんどの自己免疫疾患において原因となる感染物質が未だ同定されておらず、どのような異なる病原体が免疫トレランスを破壊し、組織特異的自己免疫を引き起こしうるのか知られていない。
【0059】
これらの結果は、TLRの活性化が組織特異的自己免疫性心疾患を誘導するのに必須であることを示唆し、自己免疫の病因に対する分子フレームワークを提供する。心損傷および微生物感染の文脈において、自己ペプチドでパルスした樹状細胞は、TLR3を介して作用するウイルスRNA(細菌はペプチドグリカン、LPSのような細胞壁生成物を通してTLR2、4、および9を誘導するかもしれないが)、または非メチル化DNAのいずれかにより刺激されるかもしれない21。さらに、カルディオトロピック原生動物T.cruzii由来の生成物が樹状細胞上のTLR2を活性化することが最近示された34。すなわち、自己免疫は必ずしも細菌抗原と自己タンパク質の間に抗原的模倣(mimicry)は必要でない33。むしろ、先天性免疫系の活性化に合わせて組織損傷が遺伝的感受性個体における自己免疫を引き起こすようである(図7a)。反対に、定常期条件下または最小限の樹状細胞刺激のみの存在下での放出された自己抗原の取り込みは、自己反応性T細胞のトレランスおよび下方調節をもたらすかもしれない17,18,19
【0060】
ヒトおよび実験動物モデルにおける自己免疫は再燃性疾病パターンを示すことが多い7,33。例えば、拡張型心筋症の患者はあらゆる原因の感染後の心機能の急激な悪化を示すことが多い4。興味深いことに、myhc-α誘導心筋炎の解消後のマウスにおけるTLRのin vivo活性化は、心臓浸潤の再発と心機能の急激な悪化をもたらす(U. Edksson & Josef M. Penninger、未発表)。したがって、先天性免疫系の非特異的in vivo刺激は予めプライムした動物における組織特異的炎症を速やかに誘導することができる。したがって、本発明者らは、自己免疫疾患の悪化と再発がin vivoのTLRの非特異的刺激を経験する遺伝的に感受性のヒトに生じるかもしれないことを提唱する。
【0061】
これらの結果は、樹状細胞が内因性抗原に反応してナイーブマウスにおける急速に発現する臓器特異的自己免疫を誘導しうることを示す。提唱する樹状細胞誘導心筋炎モデルは自己免疫および心不全を誘導する新規な実験の理論的枠組みをもたらす。自己抗原パルス樹状細胞の大規模な自己免疫誘導能は、喘息や関節炎のような他の系に拡大する必要がある。該モデル系の使用は、樹状細胞に選択的に作用し、組織特異的樹状細胞に基づく癌のワクチネーションプロトコールを最適化する、自己免疫疾患の新規治療戦略の設計および開発を助けるであろう。樹状細胞介在自己免疫および心疾患は共に樹状細胞がToll様レセプターを介して活性化するときだけに生じるので、これらの結果は、どのように組織損傷および複数の感染性の誘因が自己免疫疾患および慢性心筋症を誘導しうるかについて統一理論をもたらす。
【実施例】
【0062】
実施例は例示のために記載するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0063】
本開示および実施例で参照しているが、明示的に記載されていない化学、分子生物学、タンパク質およびペプチド生化学、および免疫学の方法は科学文献に記載されており、当業者によく知られている。
【0064】
統計学的分析では二分データをフィッシャーの直接確率検定により分析した。Mann-Whitney U検定を重症度スコアの評価に用いた。増殖反応およびサイトカインレベルをANOVAおよびt検定を用いて比較した。
実施例1
自己抗原パルスした活性化樹状細胞は心筋炎を誘導する。
【0065】
自己タンパク質パルスしたDCが内因性抗原に対する自己免疫を引き起こしうるかを検討するため、先に同定した心筋特異的アルファミオシンペプチド、残基614〜62911,23(myhc-α)を用いてマウスに接種した。用いたすべてのマウスは、野生型マウス、BおよびT細胞欠損SCIDマウス、またはIL4Rα-/-マウスのいずれかであり、すべてBALB/cのバックグラウンドを有し、Jackson Laboratoriesから購入した。マウスは、特定病原体未感染条件下に維持した。骨髄由来樹状細胞はLutzら40に記載のごとく作製した。Fluorescent Activated Cell Sorting(蛍光活性化セルソーティング)(FAGS)分析は80%以上の樹状細胞がCD11c+CD11b+樹状細胞であることを示し、これをさらに磁性ビーズ(MACS(登録商標)、Miltenyi Biotech)を用いるCD11c+陽性選択により豊富化した。10μg/mlのネズミα-ミオシン重鎖ペプチド(myhc-α614-629[Ac-SLKLMATLFSTYASAD-OH]11,21で一夜パルスした後、樹状細胞を、5μg/mlの抗CD40抗体(クローン3/23、Pharmingen)または1μg/ml RANK-L (R&D Biosystems)のいずれかの存在下または非存在下で1μg/ml LPS (E.coli 0111:B4; Sigma), 100μg/mlポリ(I:C)(Amersham)、10μM CpG-ODN、または10μg/ml PGN (S.aureus;Fluka)のいずれかを含むTLR刺激薬で4時間活性化した。いくつかの実験では、樹状細胞を抗CD40抗体の存在下または非存在下、500U/ml TNF-αまたは10ng/mlのIL-1β(共にPeproTech)で刺激した。
【0066】
BALB/c(H2dハプロタイプ)マウスに、TLRトリガーLPSおよび/または刺激性抗CD40抗体で活性化した同系myhc-αパルスしたCD11c+CD11b+CD80+CD86+CD8-MHCクラスII+骨髄由来樹状細胞を注射した。マウスに50,000〜200,000個/マウスの樹状細胞を注射した。コントロールマウスには、ova-ペプチド(OVA)でパルスした活性化樹状細胞を投与した。マウスを、最初のDC接種後の異なる時点で屠殺し、心臓を除去した。心筋炎を0〜4のグレードにスコア付けした:0は炎症浸潤なしを示し、1は筋細胞間の炎症性細胞の小病巣を意味し、2は100個以上の炎症性細胞の大病巣を意味し、3は病変横断面が10%以上であることを意味し、4は横断面の30%以上が病変であることを意味する。
【0067】
myhc-αまたはOVAペプチドパルスしたLPS/抗CD40で活性化した樹状細胞を接種して10日後にマウスから得た心臓切片を図1に示す。OVAパルスした樹状細胞で免疫したマウスに炎症がないことを示すコントロール心臓を図1aおよび1cに示す。図1bおよび1dにおいて、myhc-αパルスした樹状細胞の接種後の大規模な炎症を矢印で示す。典型的全心臓画像と高倍率(x140)(H&E染色)を示す。心臓の凍結切片の免疫化学には以下の抗体を用いた:抗MHCII(ビオチン化、Serotec、MCA46B)、抗CD3(KT3-1.1)、抗CD4(YTS191)、抗CD8(YTS169)、および抗CD11c(2.5mg/ml、クローンHL3、Pharmingen)。図1eおよび1fは、浸潤物が少数のCD8+細胞(1e、矢印)と多量のCD4+細胞(1f、矢印)からなることを示す免疫化学染色横断面を示す。原倍率x560。
【0068】
非特異的OVAペプチドでパルスした活性化樹状細胞の接種および非活性化myhc-αパルスした樹状細胞の接種はいずれも心臓の炎症を誘導しなかった(図1a、c、表1)。樹状細胞の抗CD40抗体のみによる活性化も心筋炎の誘導に効果がなかった。さらに、先に樹立された成熟プロトコール13,14を用いてLPSおよび抗CD40で24時間活性化したmyhc-αパルスした樹状細胞の接種は心臓の炎症を生じなかった(データ示さず)。
【0069】
myhc-αによる樹状細胞のパルス、次いで抗CD40およびLPSによる4時間の非常に短いin vitro活性化は樹状細胞を反応性にした。これら樹状細胞の接種はBalb/cマウスに大規模な心筋炎を誘導した(図1b、d、表1)。疾病の発現は樹状細胞免疫の5日後に非常に速やかに始まり、第10日でピークに達した。注目すべきは、myhc-αパルスした樹状細胞の単回接種でも疾病を誘導したが、反復接種に比べて罹病率は低かった。さらに、LPSのみで4時間活性化したmyhc-αパルスした樹状細胞も低有病率で中程度の心臓の炎症を誘導した(表1)。これらの結果は、樹状細胞が内因性抗原に反応してナイーブマウスに急速な臓器特異的炎症の発現を誘導することができる実験的証拠を提供する。
【0070】
【表1】

実施例2
樹状細胞免疫は自己免疫を誘導する。
【0071】
樹状細胞が心筋炎を誘導し、自己免疫の基準を満たすか否かを検討するため、最初に明確な自己抗原が存在するか否かを決定することが必要であった。CD4+T細胞は、myhc-αパルスし、LPS/抗CD40抗体で活性化した樹状細胞で免疫したマウスの脾臓から磁性ビーズ(CD4+T細胞単離キット;Miltenyi Biotech GmbH)を用いて単離した。The CD4+T細胞をX線照射(2000rad)同系脾細胞および無血清AIM-V(Gibco)培地中の10μg/ml myhc-αまたはオボアルブミンと40時間培養した。サイトカインレベルを市販のQuantikine ELISAキット(R&D Biosystems, Minneapolis, U.S.A)を用いて測定した。あるいはまた、増殖は、72時間培養後の[3H]メチル-チミジンの取り込みを測定することにより評価した。サイトカイン測定では、樹状細胞を24ウェルプレートに1x106個/ml播き、5μpg/mlの抗CD40を含むか含まず、1μg/ml LPS、100μg/mlポリ(I:C)、10μM CpG-ODN、または10μg/ml PGNを含む種々のTLR刺激薬で12時間インキュベーションした。サイトカインをQuantikine ELISAキット(R&D Biosystems, Minneapolis)を用いて測定した。FACS分析では、樹状細胞調製物をFc-ブロック(Pharmingen)およびPharmingen染色緩衝液中1%ラット血清で4℃、30分間プレインキュベーションし、次いでPharmingenから得た適切な蛍光色素抗体を用いて染色した。
【0072】
IFN-γおよびIL-4を40時間後に測定し、データを図2aに示す。値は5匹の個々のマウスの平均(±SD)を示す。OVAパルスした樹状細胞(n.d.=検出不能)を注射したマウスと比べたmyhc-αパルスした樹状細胞注射マウスから単離したCD4+T細胞の、IL-4産生:** p<0.005、およびIFN-γ産生:* p<0.0001(ANOVAおよび対応のないt検定)。
【0073】
非関連抗原でパルスした樹状細胞は疾病を誘導しないので樹状細胞誘導心筋炎は抗原特異的であった(表1)。さらに、骨格筋、肺、または腎臓のような他の臓器に浸潤はみられず(示さず)、樹状細胞誘導炎症は臓器特異的であり、心臓に限定されたことを示す。免疫組織化学は、罹患動物の心臓に浸潤するT細胞のほとんどがCD4+であり、僅かの細胞がCD8+陽性であった(図1e、f)。DC注射マウスから精製したCD4+T細胞のmyhc-αによるin vitro再刺激は、増殖(示さず)およびIFN-γおよびIL-4産生(図2a)を生じた。反対に、非特異的OVAペプチドで再刺激したCD4+T細胞は増殖せず、IL-4を産生せず、低量のIFN-γのみ産生した。これらデータは、樹状細胞がmyhc-α-特異的CD4+T細胞をin vivoでプライムすることを示す。
【0074】
樹状細胞誘導心筋炎が自己免疫の基準を満たすか否かを検討するため、疾病を伝達できる自己抗体が存在するか否かを決定する必要があった。抗体は心特異的myhc-αに反応し、kkペプチドをHRP標識ヤギ抗マウスIgG抗体(Southern Biotechnology Associates)を用いて記載のごとく11ELISAで評価した。力価を半値(half maximum)OD405nmで検出した。抗myhc-αおよび抗kk IgG自己抗体を活性化myhc-αパルスした樹状細胞の接種後第10日に検出したが、OVAパルスした樹状細胞接種後には検出されなかった。個々のマウスからの力価を図2bに示す。
【0075】
樹状細胞誘導心筋炎は、心特異的myhc-αペプチドに対する強いIgG自己抗体を伴った(図2b)。免疫myhc-αペプチド非依存性のkk25と呼ばれる心特異的ペプチドに対する自己抗体も検出され(図2b)、樹状細胞が心臓の炎症を誘導でき、この事象は内因性心ペプチドに対する自己抗体の生成を伴うことが確認された。重要なことは、myhc-αプライムされたCD4+T細胞の同系免疫不全SCIDマウスへのin vitro再刺激および伝達は宿主動物の心筋炎を生じたがOVAプライムされたCD4+T細胞では生じなかった(図2c)。反対に、CD8+T細胞の伝達は疾病を誘導しなかった(示さず)。さらに、IFN-γ-/-およびIL-4Rα-/-マウスへのmyhc-α-パルスした野生型樹状細胞の接種は両系統に強い心筋炎を生じた(表1)。すなわち、樹状細胞による疾病の誘導はTh1/Th2分極化とは無関係のようである。すなわち、この樹状細胞誘導心筋炎モデルは、CD4+T細胞性自己免疫疾患のすべての基準を満たし、自己免疫を誘導するための新規実験理論的枠組みを提供する。
【0076】
CD4+およびCD8+T細胞は、myhc-αパルスした活性化樹状細胞で免疫したマウスの脾臓から磁性ビーズ(MACS(登録商標)、Miltenyi Biotech)を用いて単離された。myhc-αパルスしたX線照射(1500Rad)同系DCを5μg/mlの抗CD28mAb (Pharmingen)存在下で48時間培養後、CD4+T細胞1x107個/マウス(>98% CD4+細胞)をSCID (BALB/c)レシピエントマウスにi.p.伝達した。すべてのレシピエントを10日後に屠殺した。OVAパルスした樹状細胞で免疫したマウスから単離したCD4+T細胞を伝達後のSCIDマウス (n=5)には心筋炎は観察されなかった。p<0.05、フィッシャーの直接確立検定。
実施例3
myhc-αパルスした活性化樹状細胞による免疫は収縮機能不全および拡張型心筋症を生じた。
【0077】
拡張型心筋症と感染後自己免疫心筋炎の因果関係はまだ立証されていない。本発明のマウスモデルにおいて、炎症は樹状細胞接種後5〜10日でピークになり、最後の樹状細胞接種後約第12日に消散し始めた(結果示さず)。樹状細胞誘発性心筋炎が炎症性浸潤の消散後に心筋症に進行するかどうかを決定することが重要であった。
【0078】
心エコー図法を記載のごとく行った41。イソフルラン麻酔マウスを12-MHzプローブ(Hewlett Packard)を用いる経胸腔的心エコー検査により試験した。放出速度、左(心)室収縮終期(LVEDD)、および拡張終期(LVEDD)容積を記録し、下記式に従って短縮率(FS)パーセンテージを計算した:FS(%)=(LVEDD-LVEDD)/LVEDD。VCFCをFS/心拍数補正駆出時間として計算した。
【0079】
図3aは、免疫4週間後にOVAパルスした樹状細胞を注射したコントロールと比較した活性化myhc-αパルス樹状細胞を注射したマウスから得た心臓の、心臓/体重比(mg/g)および心エコー検査データを示す。平均値±SDを示す。心臓/体重比(n=8/群および*p<0.005)。図3bは、myhc-αパルス樹状細胞を注射したマウスの左室拡張終期直径(LVEDD)の増加を示す(n=8/群および**p<0.05)。図3cは、myhc-αパルス樹状細胞免疫動物およびOVAパルス樹状細胞免疫コントロールマウスの典型的心エコー図を示す。矢印は収縮期収縮(LVESD)と拡張期弛緩(LVEDD)の距離を示す。拡張型心筋症の徴候を示すmyhc-α樹状細胞免疫動物における心容積の大規模な拡張に注意のこと。図3dは左室円周短縮速度(velocity of circumferential fiber shortening)(VCFC)(n=5、**p<0.05)の低下を示し、図3eは収縮不全の機能的計測値としてmyhc-αパルス樹状細胞免疫マウスにおける短縮率(%FS)の低下を示す(n=8、*p<0.005)。
【0080】
OVAパルス樹状細胞を注射したコントロールマウスと対照的に、心臓/体重比は、myhc-αパルス樹状細胞を注射したマウスで次第に増加した(図3a)。これら拡張した心臓は炎症性浸潤はないが、しばしば心不全にみられる間質性繊維症を示した(データ示さず)。意外にも、樹状細胞免疫の4週間後のマウスの心エコー検査は、拡張型心筋症を示す左室拡張終期(LVEDD)および左室収縮終期(LVESD)容積の増大を示した(図3b、c)。さらに、myhc-αパルス樹状細胞で免疫したマウスは、左室円周短縮速度(VCFC)不全(図3d)と収縮率(FS)の低下(図3e)で判断される重度の心機能不全を生じた。すなわち、myhc-αパルス樹状細胞による免疫は、繊維性変化、心腔の拡張、および収縮不全をもたらす。これらデータは、自己免疫心疾患と拡張型心筋症および心不全の発現との直接の因果関係をもたらす。
実施例4
樹状細胞介在性自己免疫におけるCD40の役割
【0081】
CD154-CD4026,27、4-1BB-4-1BB-L28、またはRANK-RANK-L29リガンドレセプター相互作用を介した樹状細胞の活性化は、樹状細胞の成熟、および同時刺激分子の発現、およびサイトカイン産生に重要である。これら分子相互作用のどれが注射した樹状細胞の「自己攻撃性」反応を開始する能力に関与するかを決定する必要があった。
【0082】
in vivo CD40-CD40Lブロッキングのために、200μgの抗CD40Lブロッキング抗体(MR-1)をマウスに注射した30。4-1BBL-4-1BB相互作用を記載したTKS-1モノクローナル抗体[200μg]を用いてブロックした28。コントロールには非特異的アイソタイプ抗体(Pharmingen)を投与した。RANK-RANKL相互作用は、ヒトOPG融合タンパク質250μg/マウスを用いてin vivoでブロックされた39。すべてのブロッキング剤は200μl PBS/マウスを隔日でi.p.注射した。
【0083】
LPS活性化中にmyhc-αパルス樹状細胞培養に組換えRANK-Lを加えても、LPS単独でみられた以上の心筋炎感受性の増大はみられなかった(表1)。さらに、デコイレセプターOPGによるRANK-RANK-L相互作用のin vivoブロックにおいても、樹状細胞介在性疾患の重症度または発生率に明らかな効果はみられなかった(表2およびデータ示さず)。RANKL-RANKと同様に、ブロッキングTSK-1-抗体28(示さず)を用いるin vitro 樹状細胞培養(示さず)またはin vivoにおける4-1BBの阻害は疾病の発生率または疾病の重症度に明らかな影響がなかった。
【0084】
反対に、myhc-α 樹状細胞のLPSおよび刺激抗CD40抗体のin vitro同時刺激は、樹状細胞誘発性の心臓の炎症を顕著に増大した(表1)。活性化樹状細胞がCD40L発現T細胞とin vivoで相互作用することから、本発明者らは樹状細胞接種マウスをCD40Lブロッキング抗体で処理した30。CD40-CD40L相互作用のin vivoブロッキングはほぼ完全に疾病を予防した(表2)。次に、CD40同時刺激の役割は、myhc-αパルスCD40-/-樹状細胞がCD40+/+マウスで心筋炎を誘導しないことにより遺伝的に確認された(表2、図4a、d)。図4aおよび4dは、CD40-/-樹状細胞を野生型レシピエントマウスに接種後の心臓組織中に心臓の炎症がないことを示す。重要なことは、CD40+/+樹状細胞のCD40-/-マウスへの接種は(図4b、e)、野生型レシピエントと同程度に心臓の炎症を誘発した(図4c、f、および表2)。図4bおよび4eは野生型樹状細胞のCD40-/-レシピエントへの接種後の心臓の炎症(矢印)を示す。図4cおよび4fは、野生型樹状細胞の野生型レシピエントへの接種後の両心室の炎症性浸潤(矢印)を示す。典型的全心画像および高倍率(x140)を示す。H&E染色。データは、myhc-αパルスLPS/抗CD40処理樹状細胞の接種の10日後のマウスからのデータである。
【0085】
【表2】

実施例5
TLR刺激は樹状細胞を自己攻撃的にする。
【0086】
CD40刺激は自己免疫性心疾患の発現に重要であることが分かったが、心臓の炎症はToll様レセプター4(TLR4)を刺激するLPSで樹状細胞を同時活性化したときのみ生じることができた。さらに、LPSのみで活性化したmyhc-αパルス樹状細胞は、中程度の心臓の炎症を低有病率で誘導することができた(表1)。多様な種類の病原体が自己免疫の病因に関与しており、種々の感染要因が異なるTLRを介して先天性の免疫系を活性化することができる21。したがって、この効果がLPSに特異的か、または他のTLRの活性化も樹状細胞介在性自己免疫の誘導に十分であるか否かを試験した。
【0087】
myhc-αパルス樹状細胞のLPS(TLR4)またはペプチドグリカン(TLR1、TLR2、およびTLR6を刺激する)またはdsRNA(TLR3を刺激する)、またはCpGs(TLR9を刺激する)ref.21による刺激は、重症の心筋炎を生じた(図5a-e)。それぞれLPS/抗CD40(図5a); dsRNA/抗CD40 (図5b); CpG/抗CD40 (図5c); およびPGN/抗CD40 (図5d)で活性化したmyhc-αパルス樹状細胞を接種して10日後のマウスからの心臓の切片を図5a〜5d(倍率x560)に示す。個々のマウスにおける炎症の有病率および重症度を図5の下段の表に示す。典型的心臓の画像(H&E染色)を示す。
【0088】
炎症性浸潤は単核細胞、主としてマクロファージおよびCD4+T細胞、顆粒球およびいくらかの好酸球からなった。試験したすべてのTLRについて、疾病の誘導は養子移入実験を用いるCD4+T細胞に依存した(示さず)。すなわち、TLRは、樹状細胞を「自己攻撃性」にする共通シグナルを与えることができる。これらの知見は、3つの分子的事象、遺伝的感受性の背景における自己タンパク質の摂取、CD40を介した宿主免疫系による特異的同時刺激、および最も重要なのがTLRの活性化、が樹状細胞介在性自己免疫心筋炎に関して同時に生じなければならないことを示す。意外にも、樹状細胞における試験したすべてのTLRの刺激は自己攻撃性反応を起こすのに十分であった。
実施例6
CD40およびTLRは、樹状細胞によるIL-1βおよび1L-12産生に協力する。
【0089】
図6aおよび6bは、LPS/抗CD40で12時間刺激後のCD40+/+(6a)およびCD40-/-(6b)樹状細胞における同時刺激分子の発現を示す。FACSヒストグラムは、CD11c+CD11b+MHCクラスII+生細胞(ICAM、B7.1、B7.2)またはCD11c+CD11b+生細胞にゲートした。CD40同時刺激の疾病促進効果は同時刺激分子の発現促進によらないようである。
【0090】
図6cに示すように、MHCクラスII分子様の活性化マーカー、CD80、CD86、およびICAM-1の上方調節はCD40+/+またはCD40-/-樹状細胞の抗CD40およびLPSによる刺激後差がなかった。さらに、野生型樹状細胞を種々のTLR刺激でCD40活性化の存在下または非存在下にて刺激後にTNF-αまたはIL-6産生に観察可能な差はなかった(図6c)。図6cは、示したTLR刺激薬(1μg/ml LPS、100μg/mlポリ(I:C)、10μM CpG-ODN、または10μg/ml PGN)で12時間、抗CD40抗体刺激(5μg/ml)の存在下または非存在下にて刺激した樹状細胞におけるサイトカインの産生レベルを示す。データは4重培養ウェルの平均(±SD)として表現し、同様のデータが得られたいくつかの実験のひとつを示す。
【0091】
対照的に、IL-1βおよびIL-12p70レベルは、図6cに示すようにCD40またはTLRのみで刺激した樹状細胞とTLR刺激および抗CD40で活性化した樹状細胞で有意に異なった。これらの相違は、24時間までのin vitro培養において樹状細胞アポトーシスの変動によるものではなかった(示さず)。すなわち、CD40およびTLR刺激は、樹状細胞におけるサイトカインIL-1βおよびIL-12p70の誘導に同時に作用する。
【0092】
IL-1βおよびIL-12p70が樹状細胞介在性炎症性心疾患に重要か否かを検討するため、IL-1R1およびIL-12β1レセプター突然変異マウスをペプチドパルスした抗CD40およびTLR活性化樹状細胞で免疫した。すべての場合において、IL-1レセプタータイプ1およびIL12-IL12R系を介した両情報伝達が自己免疫を誘発するのに必要であることがわかった(表3)。しかしながら、野生型樹状細胞の接種は、IL-1R1-/-マウスで心筋炎および自己攻撃性CD4+T細胞を誘導したが、IL-12Rβ1-/-マウスでは誘導しなかった。反対に、野生型レシピエントはIL12Rβ-/-樹状細胞接種後に心筋炎を発現したが、IL-1R1-/-樹状細胞接種後には発現しなかった(表3)。すなわち、CD4+T細胞介在性心筋炎の誘導には、樹状細胞に対するIL-1R1の情報伝達が必要であるがCD4+T細胞に対しては必要でない。反対に、抗原パルスした活性化樹状細胞に対するIL-12情報伝達は、これら細胞の自己免疫誘導能に必須ではない。むしろ、IL-12Rβ1+/+樹状細胞で免疫したIL-12Rβ1-/-マウスから単離したin vitro再刺激IL-12Rβ1-/-CD4+T細胞の養子伝達は同系SCIDマウスに疾病を誘導しないことから(示さず)、IL-12レセプターの情報伝達はCD4+エフェクターT細胞に重要である。本発明の新規実験系は初めて自己免疫疾患モデルにおいてin vivoで樹状細胞対エフェクター細胞に対するサイトカインおよび/または同時刺激分子の本質的機能を選択的に分析するのを可能にする。
【0093】
【表3】

実施例7
先天性免疫系の活性化を伴う組織損傷はin vivoの心臓の炎症を誘導するのに十分である。
【0094】
遺伝的感受性以外に環境的および感染的誘因が動物モデルおよびヒトにおける複雑な自己免疫疾患の病因に関与している7,33。しかしながら、そのような感染的誘因はまだ明確に確認されておらず、異なる病原体が自己免疫を誘発するメカニズムはまだわかっていない。上記結果は、自己抗原パルスしたDCのCD40およびTLRによる刺激がこれら抗原提示細胞を自己攻撃性にすることを示唆する。試験したすべてのTLRの活性化は樹状細胞誘導性自己免疫性心臓疾患の発現に十分であったため、理論に拘束されることなく、非特異的炎症の誘因と共に組織損傷はin vivoで自己免疫を生じるものと仮定される。図7aに模式的に示した自己免疫の病因の提唱モデルにおいて、組織損傷は樹状細胞により捕捉され、提示される自己抗原を放出する。Toll様レセプター活性化の場合は、自己反応性T細胞反応が生じ、CD40-CD40L相互作用により増幅される。
【0095】
この仮説を検討するため、マウスに、親マウスから精製した種々の数のアポトーシスの心筋細胞を、単独または100μg/マウスの抗CD40および10μg/マウスのLPSと共に3日間連続注射した。心筋細胞のアポトーシスはUVA(10J/m2)照射かまたは培養ウェルに10μmol/LのH2O2を添加することにより誘導した。
【0096】
次いで、アポトーシス心筋細胞を同系Balb/cマウスに注射し、次いでTLRのin vivo刺激を行った。LPSを伴わない2x106個のアポトーシス心筋細胞の接種(i.p.)それ自体は、図7bに示すようにいかなる疾病も生じなかった(0/6マウス)。しかしながら、2x106個のアポトーシス心筋細胞のみのi.p.接種、次いでLPSによるTLR4のin vivo活性化は、図7cに示すように心臓に炎症病巣を生じた。2x106個のアポトーシス心筋細胞(i.p.)をLPS(10μg i.p.、第0、1、2日)と共に接種するとマウス8匹中7匹に心臓の炎症を生じた(図7cの矢印)。注目すべきは、LPSのみの接種は心臓の炎症を誘発しなかった(0/5マウス、示さず)(心筋細胞のみと比較したLPSおよび心筋細胞についてp<0.0001)(Fisherの直接確立検定)。さらに、UV照射またはH2O2処理心筋細胞の両i.p.接種、次いでTLR4のLPSによるin vivo活性化は心臓の炎症を誘導するのに十分であった。重要なことは、この心臓の炎症は、図7dに示すように心臓特異的myhc-αペプチドに対するIgG自己抗体の生成を伴った。図7dは、LPSおよび2x106個のアポトーシス心筋細胞のi.p.接種(LPS)の10日間後の抗myhc-αIgG自己抗体価を示す。心筋細胞のみの接種は当該抗体価を誘導しなかった(コントロール)。個々のマウスからのデータを示す。反対に、TLR活性化を伴わないアポトーシス心筋細胞のコントロール接種は心臓の自己抗体を誘導しなかった。in vivo LPSまたはCpG接種、またはCD40およびLPS接種のみでは心筋炎が生じなかったことに注目すべきである(示さず)。これらの結果は、損傷心筋細胞の全身放出は先天性免疫系の非特異的活性化と共同して心臓の炎症を誘導するのに十分であることを示す。
【0097】
本発明は、本明細書に記載の態様の特徴に限定されるものではなく、特許請求の範囲内のすべての変化および修飾を含む。
(参考文献)
【0098】
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【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】倍率0x(パネルaおよびb)、140x(パネルcおよびd)、および560x(パネルeおよびf)のマウス心臓組織切片の顕微鏡写真を示す。
【図2】パネルaは、myhc-αまたはOVAでパルスした活性化樹状細胞を接種したマウスからのCD4+T細胞のIFN-γおよびIL-4産生(pg/mlで表す)を示す。パネル2bは、myhc-αまたはコントロールova-ペプチド(OVA)でパルスした活性化樹状細胞を接種したマウスの自己IgG抗体のin vivo産生を示す。パネル2cは、OVA-プライムCD4+T細胞を注射したマウスではみられない、myhc-αプライムCD4+T細胞を注射したSCIDマウスにおける心筋炎を示す心臓組織の切片を示す。
【図3】myhc-αでパルスした活性化dcを接種したマウスにおける拡張型心筋症の発症および収縮機能不全を示すデータを示す。
【図4】myhc-αでパルス後の活性化dcを接種後の倍率0xおよび140xの横断面のマウス心臓組織を示す。
【図5】(パネルa)LPS/抗CD40;(パネルb) dsRNA/抗CD40;(パネルc) CpG/抗CD40;および(パネルd) PGN/抗CD40で活性化したmyhc-αパルスdcを接種して10日後の倍率560xのマウス心臓組織の横断面を示す。
【図6A】LPS/抗CD40で12時間刺激後のCD40+/+(青)およびCD40-/-(赤)樹状細胞上の同時刺激分子の発現を示す。
【図6B】LPS/抗CD40で12時間刺激後のCD40+/+(青)およびCD40-/-(赤)樹状細胞上の同時刺激分子の発現を示す。
【図6C】LPS/抗CD40で12時間刺激後のCD40+/+(青)およびCD40-/-(赤)樹状細胞上の同時刺激分子の発現を示す。
【図7】刺激抗CD40抗体(αCD40:5μg/ml)の存在下または非存在下で示したToll様レセプター刺激薬(1μg/ml LPS、100μg/mlポリ(I:C)(dsRNA)、または10μM CpG-ODN)で12時間刺激した樹状細胞によるサイトカインのTNF-α、IL-12p 70、IL6、およびIL1βの産生を示す。
【図8】パネルaは、組織損傷が、樹状細胞により捕捉され、提示される自己抗原を放出する、提案する自己免疫病因モデルを模式図で示す。bは、2x106個のアポトーシスの心筋細胞を注射し(i.p.)、LPSを投与しなかったコントロールマウスの心臓組織は心筋炎を誘導しない(6匹中0匹)ことを示す。cは、LPS(第0、1、2日に10μg i.p.)と共に2x106個のアポトーシスの心筋細胞を注射(i.p.)したマウスの心臓組織は、8匹中7匹に心臓に炎症(矢印)を生じたことを示す。dは、LPSおよび2x106個のアポトーシスの心筋細胞(LPS)をi.p.接種して10日後のまたはまさにアポトーシスの心筋細胞のコントロールの抗myhc-αIgG自己抗体価を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹状細胞の試料を得、該樹状細胞と抗原および少なくとも1のToll様レセプター(TLR)刺激薬と接触させることを含む樹状細胞を抗原反応性にする方法。
【請求項2】
該樹状細胞を抗原と適切な期間接触させ、次いで該樹状細胞と少なくとも1のTLR刺激薬を適切な期間接触させることを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
該樹状細胞が末梢血、骨髄、脾臓、およびリンパ節からなる群から選ばれる動物組織から得られる請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
該TLR刺激薬がリポ多糖、ポリ(I:C)、CpG-ODN、およびペプチドグリカンからなる群から選ばれる請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該樹状細胞を該抗原と約30分間〜約24時間接触させる請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該樹状細胞をTLR刺激薬と最大4時間まで接触させる請求項5記載の方法。
【請求項7】
該樹状細胞をTLR刺激薬と最大2時間まで接触させる請求項6記載の方法。
【請求項8】
該樹状細胞がCD11C+、CD11b+である請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
該樹状細胞がCD11c+である請求項8記載の方法。
【請求項10】
該樹状細胞を抗原と約1〜20μg/mlの濃度範囲で接触させる請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
該樹状細胞を抗CD40抗体と接触させる請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
抗CD40抗体が約3〜5μg/mlの範囲の濃度である請求項11記載の方法。
【請求項13】
該抗原が自己抗原または腫瘍抗原である請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
腫瘍に発現した腫瘍抗原を得、動物から樹状細胞の試料を得、請求項1〜12のいずれかに記載の方法により該樹状細胞を該腫瘍抗原に反応性にし、次いで該反応性樹状細胞を動物に再導入することを含む動物の腫瘍を処置する方法。
【請求項15】
該動物がヒトである請求項14記載の方法。
【請求項16】
該樹状細胞を静脈注入または皮下注射により動物に再導入する請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
該樹状細胞をサイトカインの存在下で培養し、次いで該抗原と接触させる請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
該サイトカインが1L-10である請求項17記載の方法。
【請求項19】
該腫瘍がメラノーマ、腎細胞癌、白血病、およびリンパ肉腫からなる群から選ばれる請求項14〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
自己免疫疾患関連抗原を得、非ヒト動物から樹状細胞の試料を得、請求項1〜12のいずれかに記載の方法により該樹状細胞を自己免疫疾患関連抗原に反応性にし、次いで該反応性樹状細胞を動物に再導入することを含む自己免疫疾患動物モデルの作製方法。
【請求項21】
該抗原がコラーゲンまたは軟骨マトリックスタンパク質であり、該自己免疫疾患が関節炎である請求項20記載の方法。
【請求項22】
該抗原が心臓特異抗原であり、該自己免疫疾患が心筋炎である請求項20記載の方法。
【請求項23】
該抗原がmyhc-αペプチドである請求項22記載の方法。
【請求項24】
該動物がマウス、ラット、およびブタからなる群から選ばれる請求項20〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
臓器特異自己抗原を得、非ヒト動物由来の樹状細胞の試料を得、請求項1〜12のいずれかに記載の方法により該樹状細胞を自己抗原に反応性にし、次いで該反応性樹状細胞を動物に再導入することを含む臓器不全動物モデルの作製方法。
【請求項26】
該抗原がmyhc-αペプチドである請求項25記載の方法。
【請求項27】
請求項20〜26のいずれかに記載の方法により作製される自己免疫疾患動物モデル。
【請求項28】
自己免疫疾患関連自己抗原を得、非ヒト動物から樹状細胞の試料を得、請求項1〜12のいずれかに記載の方法により該樹状細胞を該自己抗原に反応性にし、該樹状細胞を該動物に再導入し(ここで、該樹状細胞を、自己抗原との接触前、自己抗原との接触中、自己抗原との接触後、ならびにTLR刺激薬との接触前、およびTLR刺激薬との接触中、およびTLR刺激薬との接触後から選ばれる時に候補化合物と接触させる)、次いで該動物の自己免疫反応を、該自己抗原に反応性にし、該化合物に曝露していない樹状細胞で処理した動物の自己免疫反応と比較することを含む動物における自己免疫疾患の発現を調節する能力について候補化合物をスクリーニングする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6AandB】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−501607(P2007−501607A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522445(P2006−522445)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002788
【国際公開番号】WO2005/012509
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506039900)イーエムベーアー−インスティトゥート・フューア・モレクラレ・ビオテヒノロギー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (5)
【氏名又は名称原語表記】IMBA−INSTITUT FUER MOLEKULARE BIOTECHNOLOGIE GMBH
【Fターム(参考)】